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特許7201186水酸基を有するポリエン化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】水酸基を有するポリエン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/09 20060101AFI20221227BHJP
   C07C 59/42 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
C07C51/09
C07C59/42
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021202117
(22)【出願日】2021-12-14
(62)【分割の表示】P 2018052792の分割
【原出願日】2018-03-20
(65)【公開番号】P2022037094
(43)【公開日】2022-03-08
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000149435
【氏名又は名称】株式会社大塚製薬工場
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 雄一
(72)【発明者】
【氏名】難波 祐太郎
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/026106(WO,A1)
【文献】特表2008-515978(JP,A)
【文献】特開平08-005843(JP,A)
【文献】国際公開第2018/035208(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1A):
【化1】
(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアルケニル基を示し、kは0~10の整数を示し、*は、紙面に対し酸素原子がα-配置、β-配置、又はα-配置及びβ-配置の任意の混合物(等量混合物を含む)であることを意味する。)
で表される化合物の製造方法であって、
(1)式(8T):
【化2】
(式中、Rは水酸基の保護基を示す。R及び*は前記に同じ。)
で表される化合物、及び式(11):
【化3】
(式中、Rはアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。kは前記に同じ。)
で表される化合物をカップリングさせて、式(12):
【化4】
(式中、R、R、R、k及び*は前記に同じ。)
で表される化合物を得る工程、
(2)上記工程(1)で得られた式(12)で表される化合物を還元して、式(13):
【化5】
(式中、R、R、R、k及び*は前記に同じ。)
で表される化合物を得る工程、並びに
(3)上記工程(2)で得られた式(13)で表される化合物の水酸基の保護基(R)を除去し、エステル(CO)を加水分解して、式(1A)で表される化合物を得る工程、
を含む製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸基を有するポリエン化合物を製造する方法に関する。具体的には、18(R)-ヒドロキシエイコサペンタエン酸(以下、「18R-HEPE」と表記する)等の水酸基を有するポリエン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エイコサペンタエン酸(EPA)などのω3系脂肪酸には、古くから抗炎症作用を有することが知られている。その作用機構は、ω3系脂肪酸が代謝物に変換されて抗炎症性を発揮する。
【0003】
EPA由来の抗炎症性代謝物として、例えば、レゾルビンE1(RvE1)やレゾルビンE2(RvE2)が同定されており、これらは、EPAの18位(ω3位)に水酸基が付加した代謝物である18(R)-ヒドロキシエイコサペンタエン酸(18R-HEPE)を共通の前駆体とし、好中球の5-リポキシゲナ一ゼ(5-LOX)活性により生成することが知られている。つまり、18R-HEPEを起点とする代謝経路が抗炎症機能に関連しているとされている。
【化1】
【0004】
このように、18R-HEPE、その代謝産物、その周辺化合物等を探索することにより、より有効な抗炎症性物質等の薬理活性を有する化合物を見出すことができる可能性がある。そのため、18R-HEPEをはじめその多様な誘導体を簡便且つ立体選択的に製造できる手法が望まれている。
非特許文献1には、18R-HEPEの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】M. Inoue, J. Org. Chem. 2015, 80, 7713.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、水酸基を有するポリエン化合物(18R-HEPE等)を、簡便且つ立体選択的に製造する方法を提供することを課題とする。具体的には、水酸基を有するポリエン化合物を合成する鍵中間体である、後述する式(6)~式(8)で表される(保護されていてもよい)水酸基を有するエンイン化合物を簡便且つ立体選択的に製造する方法、及びその鍵中間体を経て簡便且つ立体選択的に水酸基を有するポリエン化合物を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討をした結果、後述する式(3)で表されるエポキシアルコール化合物に式(9)で表される化合物を反応させることにより、立体選択的に式(6)~(8)で表される(保護されていてもよい)水酸基を有するエンイン化合物を製造できることを見出した。
【0008】
具体的には、式(3T)で表されるトランス体の1,2-ジ置換エポキシアルコール化合物に、式(9)で表される化合物を反応させると、式(6T)で表されるトランス体のエンイン化合物を製造できること、及び、式(3C)で表されるシス体の1,2-ジ置換エポキシアルコール化合物に、式(9)で表される化合物を反応させると、式(6C)で表されるシス体のエンイン化合物を製造できることを見出した。これらの式(6T)及び式(6C)で表されるエンイン化合物は、それぞれ式(8T)及び式(8C)で表される水酸基を有するエンイン化合物に変換される。
【0009】
この反応を利用して、式(3)で表されるエポキシアルコール化合物から式(1A)で表されるポリエン化合物(18-HEPE等)を簡便且つ立体選択的に製造できることを見出した。また、原料として光学活性なエポキシアルコール化合物を用いることにより、光学活性な水酸基を有するエンイン化合物(18R-HEPE、プロテクチンD1、それらの誘導体等を含む)を簡便且つ立体選択的に製造できることをも見出した。これらの知見に基づいて更に検討を加えることにより、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、以下の水酸基を有するエンイン化合物の製造方法、水酸基を有するポリエン化合物の製造方法等を提供する。
[1] 式(20T):
【化2】
(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアルケニル基を示し、Rは、トリメチルシリル基、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を示し、*は、紙面に対し酸素原子がα-配置、β-配置、又はα-配置及びβ-配置の任意の混合物(等量混合物を含む)であることを意味する。)
で表される化合物の製造方法であって、塩基の存在下、式(3T):
【化3】
(式中、TMSはトリメチルシリル基を示し、R及び*は前記に同じ。)
で表される化合物(当該化合物中の水酸基は保護基で保護されていてもよい)、及び式(19):
【化4】
(式中、Rは前記に同じ。)
で表される化合物を反応させて、必要に応じ水酸基の保護基を除去することを特徴とする、製造方法。
[2] 式(6T):
【化5】
(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアルケニル基を示し、TMSはトリメチルシリル基を示し、*は、紙面に対し酸素原子がα-配置、β-配置、又はα-配置及びβ-配置の任意の混合物(等量混合物を含む)であることを意味する。)
で表される化合物の製造方法であって、塩基の存在下、式(3T):
【化6】
(式中、R、TMS及び*は前記に同じ。)
で表される化合物、及び式(9):
【化7】
(式中、TMSは前記に同じ。)
で表される化合物を反応させることを特徴とする、製造方法。
[3] 式(12):
【化8】
(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアルケニル基を示し、Rはアルキル基を示し、Rは水酸基の保護基を示し、kは0~10の整数を示し、*は、紙面に対し酸素原子がα-配置、β-配置、又はα-配置及びβ-配置の任意の混合物(等量混合物を含む)であることを意味する。)
で表される化合物の製造方法であって、
(1)塩基の存在下、式(3T):
【化9】
(式中、TMSはトリメチルシリル基を示す。R及び*は前記に同じ。)
で表される化合物、及び式(9):
【化10】
(式中、TMSは前記に同じ。)
で表される化合物を反応させて、式(6T):
【化11】
(式中、R、TMS及び*は前記に同じ。)
で表される化合物を得る工程、
(2)上記工程(1)で得られた式(6T)で表される化合物の水酸基をRで保護し、TMS基を除去して、式(8T):
【化12】
(式中、R、R及び*は前記に同じ。)
で表される化合物を得る工程、並びに
(3)上記工程(2)で得られた式(8T)で表される化合物、及び式(11):
【化13】
(式中、Xはハロゲン原子を示す。R及びkは前記に同じ。)
で表される化合物をカップリングさせて、式(12)で表される化合物を得る工程、
を含む製造方法。
[4] 式(1A):
【化14】
(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアルケニル基を示し、kは0~10の整数を示し、*は、紙面に対し酸素原子がα-配置、β-配置、又はα-配置及びβ-配置の任意の混合物(等量混合物を含む)であることを意味する。)
で表される化合物の製造方法であって、
(1)塩基の存在下、式(3T):
【化15】
(式中、TMSはトリメチルシリル基を示す。R及び*は前記に同じ。)
で表される化合物、及び式(9):
【化16】
(式中、TMSは前記に同じ。)
で表される化合物を反応させて、式(6T):
【化17】
(式中、R、TMS及び*は前記に同じ。)
で表される化合物を得る工程、
(2)上記工程(1)で得られた式(6T)で表される化合物の水酸基をRで保護し、TMS基を除去して、式(8T):
【化18】
(式中、Rは水酸基の保護基を示す。R及び*は前記に同じ。)
で表される化合物を得る工程、
(3)上記工程(2)で得られた式(8T)で表される化合物、及び式(11):
【化19】
(式中、Xはハロゲン原子を示す。R及びkは前記に同じ。)
で表される化合物をカップリングさせて、式(12):
【化20】
(式中、R、R、R、k及び*は前記に同じ。)
で表される化合物を得る工程、
(4)上記工程(3)で得られた式(12)で表される化合物を還元して、式(13):
【化21】
(式中、R、R、R、k及び*は前記に同じ。)
で表される化合物を得る工程、並びに
(5)上記工程(4)で得られた式(13)で表される化合物の水酸基の保護基(R)を除去し、エステル(CO)を加水分解して、式(1A)で表される化合物を得る工程、
を含む製造方法。
[5] 式(1A):
【化22】
(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアルケニル基を示し、kは0~10の整数を示し、*は、紙面に対し酸素原子がα-配置、β-配置、又はα-配置及びβ-配置の任意の混合物(等量混合物を含む)であることを意味する。)
で表される化合物の製造方法であって、
(1)式(8T):
【化23】
(式中、Rは水酸基の保護基を示す。R及び*は前記に同じ。)
で表される化合物、及び式(11):
【化24】
(式中、Rはアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。kは前記に同じ。)
で表される化合物をカップリングさせて、式(12):
【化25】
(式中、R、R、R、k及び*は前記に同じ。)
で表される化合物を得る工程、
(2)上記工程(1)で得られた式(12)で表される化合物を還元して、式(13):
【化26】
(式中、R、R、R、k及び*は前記に同じ。)
で表される化合物を得る工程、並びに
(3)上記工程(2)で得られた式(13)で表される化合物の水酸基の保護基(R)を除去し、エステル(CO)を加水分解して、式(1A)で表される化合物を得る工程、
を含む製造方法。
[6] 式(20C):
【化27】
(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアルケニル基を示し、Rはトリメチルシリル基、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を示し、*は、紙面に対し酸素原子がα-配置、β-配置、又はα-配置及びβ-配置の任意の混合物(等量混合物を含む)であることを意味する。)
で表される化合物の製造方法であって、塩基の存在下、式(3C):
【化28】
(式中、TMSはトリメチルシリル基を示し、R及び*は前記に同じ。)
で表される化合物(当該化合物中の水酸基は保護基で保護されていてもよい)、及び式(19):
【化29】
(式中、Rは前記に同じ。)
で表される化合物を反応させて、必要に応じ水酸基の保護基を除去することを特徴とする、製造方法。
[7] 式(6C):
【化30】
(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアルケニル基を示し、TMSはトリメチルシリル基を示し、*は、紙面に対し酸素原子がα-配置、β-配置、又はα-配置及びβ-配置の任意の混合物(等量混合物を含む)であることを意味する。)
で表される化合物の製造方法であって、塩基の存在下、式(3C):
【化31】
(式中、R、TMS及び*は前記に同じ。)
で表される化合物、及び式(9):
【化32】
(式中、TMSは前記に同じ。)
で表される化合物を反応させることを特徴とする、製造方法。
[8] 式(18):
【化33】
(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアルケニル基を示し、Rは水酸基の保護基を示し、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアルケニル基を示し、*は、紙面に対し酸素原子がα-配置、β-配置、又はα-配置及びβ-配置の任意の混合物(等量混合物を含む)であることを意味する。)
で表される化合物の製造方法であって、
(1)塩基の存在下、式(3C):
【化34】
(式中、TMSはトリメチルシリル基を示す。R及び*は前記に同じ。)
で表される化合物、及び式(9):
【化35】
(式中、TMSは前記に同じ。)
で表される化合物を反応させて、式(6C):
【化36】
(式中、R、TMS及び*は前記に同じ。)
で表される化合物を得る工程、
(2)上記工程(1)で得られた式(6C)で表される化合物の水酸基をRで保護し、TMS基を除去して、式(8C):
【化37】
(式中、R、R及び*は前記に同じ。)
で表される化合物を得る工程、
(3)上記工程(2)で得られた式(8C)で表される化合物、及び式(15):
【化38】
(式中、Rは、水素原子、又は鎖状、分岐状若しくは環状アルキル基を示し、或いは2個のRが互いに結合して隣接するホウ素原子と共に環を形成していてもよく、当該環は置換基を有していてもよい。)
で表される化合物を反応させて、式(16):
【化39】
(式中、R、R、R及び*は前記に同じ。)
で表される化合物を得る工程、並びに
(4)上記工程(3)で得られた式(16)で表される化合物、及び式(17):
【化40】
(式中、Xはハロゲン原子を示す。R及び*は前記に同じ。)
で表される化合物を反応させて、式(18)で表される化合物を得る工程、
を含む製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明において、式(3T)で表されるトランス体の1,2-ジ置換エポキシアルコール化合物に、式(19)で表される化合物(式(9)で表される化合物を含む)を反応させると、式(20T)で表されるトランス体のエンイン化合物(式(6T)で表される化合物を含む)を選択的に製造できる。
【0012】
また、式(3C)で表されるシス体の1,2-ジ置換エポキシアルコール化合物に、式(19)で表される化合物(式(9)で表される化合物を含む)を反応させると、式(20C)で表されるシス体のエンイン化合物(式(6C)で表される化合物を含む)を選択的に製造できる。
【0013】
また、この反応を利用して、式(3)で表されるエポキシアルコール化合物から式(1A)及び(1B)で表される水酸基を有するポリエン化合物(18R-HEPE等)等を簡便且つ立体選択的に製造できる。
【0014】
さらに、原料として入手容易な光学活性なエポキシアルコール化合物を用いることにより、光学活性な水酸基を有するエンイン化合物(18R-HEPE、プロテクチンD1等)を簡便且つ立体選択的に製造できる。
【0015】
本発明の反応は汎用性が高く、種々の置換基を導入することができるため、18R-HEPE等の生理活性物質の周辺化合物を探索するツールとして好適である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.記号の説明
本明細書では、化学構造式において、特に断りのない限り、炭素原子(C)と原子(A)との結合手を
【化41】
で表した場合、紙面に対し原子(A)が向こう側に結合していること(α-配置)を意味し、該結合手を
【化42】
で表した場合、紙面に対し原子(A)が手前に結合していること(β-配置)を意味し、該結合手を
【化43】
で表した場合、紙面に対し原子(A)がα-配置、β-配置、又はα-配置及びβ-配置の任意の混合物(等量混合物を含む)のいずれをも意味する。
【0017】
本明細書では、1,2-ジ置換のC-C二重結合の幾何異性体を、シス(C)又はトランス(T)と表記する。
【0018】
本明細書では、1,2-ジ置換のエポキシの立体化学を、エポキシの酸素原子が除かれた1,2-ジ置換のC-C二重結合の幾何異性体とみなして、シス(C)又はトランス(T)と表記する。
【0019】
本明細書では、式(3)で表されるエポキシアルコール化合物において、エポキシの酸素原子と2つの炭素原子が実線で表されている場合、エポキシの酸素原子が、紙面に対し向こう側に結合している(α-配置である)、及び/又は、紙面に対し手前に結合している(β-配置である)ことを意味する。
【0020】
本明細書では、式(3)で表されるエポキシアルコール化合物において、水酸基及びエポキシの酸素原子がともに紙面に対し向こう側に結合している(α-配置である)場合、又は水酸基及びエポキシの酸素原子がともに紙面に対し手前に結合している(β-配置である)場合にシン(syn)と表記し、水酸基及びエポキシの酸素原子のいずれか一方がα-配置であり他方がβ-配置である場合に、アンチ(anti)と表記する。
【0021】
本明細書で用いる用語「エンイン化合物」とは、分子内にC-C二重結合及びC-C三重結合を有する化合物を意味し、用語「ポリエン化合物」とは、分子内にC-C二重結合を2以上有する化合物を意味する。
【0022】
2.水酸基を有するポリエン化合物の合成
2.1 式(1A)で表されるポリエン化合物の合成
式(1A)で表されるポリエン化合物(18R-HEPEを含む)は、反応式1に従って製造することができる。
【化44】
【0023】
(式中、TMSはトリメチルシリル基を示し、Rは置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアルケニル基を示し、Rはアルキル基を示し、Rは水酸基の保護基を示し、Xはハロゲン原子を示し、kは0~10の整数を示す。*は、紙面に対し酸素原子がα-配置、β-配置、又はα-配置及びβ-配置の任意の混合物(等量混合物を含む)であることを意味する。)
【0024】
(3T)+(9)→(6T):
式(3T)で表される化合物を、塩基の存在下、式(9)で表される化合物と反応させることにより、式(6T)で表される化合物を製造することができる。
【0025】
Rで示される「置換基を有していてもよいアルキル基」における「アルキル基」としては、例えば、鎖状又は分岐状のC1~C10アルキル基が挙げられる。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。好ましくはC1~C6アルキル基であり、より好ましくはC1~C4アルキル基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基又はn-プロピル基である。
【0026】
当該「アルキル基」は置換基を有していてもよく、当該置換基としては、例えば、カルボキシル基、エステル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のC1~C3アルコキシカルボニル基等)、保護されていてもよい水酸基、オキソ基(=O)、エポキシ基等が挙げられる。「アルキル基」は、これらの置換基からなる群より選ばれる少なくとも1個(好ましくは1~3個)の基を有していてもよい。
【0027】
「置換基を有していてもよいアルキル基」として、具体的には、エチル基、3-カルボキシルプロピル基、3-(メトキシカルボニル)プロピル基、3-(エトキシカルボニル)プロピル基等が挙げられる。
【0028】
Rで示される「置換基を有していてもよいアルケニル基」における「アルケニル基」としては、例えば、鎖状又は分岐状のC2~C12アルケニル基が挙げられる。当該アルケニル基は、1個以上(特に1~3個)のC-C二重結合を有している。当該C-C二重結合の幾何異性体は、トランス又はシス、或いはE又はZの何れであってもよい。具体的には、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2―ブテニル基(クロチル基)、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、オクタ-2,5-ジエニル基等が挙げられる。
【0029】
当該「アルケニル基」は置換基を有していてもよく、当該置換基としては、例えば、カルボキシル基、エステル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のC1~C3アルコキシカルボニル基等)、保護されていてもよい水酸基、オキソ基(=O)、エポキシ基、アミド基(例えば、式:-CON(Rで表される基(式中、Rは水素原子、又は水酸基を有していてもよいアルキル基を示し、Rは同一又は異なっていてもよい。))等が挙げられる。「アルケニル基」は、これらの置換基からなる群より選ばれる少なくとも1個(好ましくは1~3個)の基を有していてもよい。
【0030】
「置換基を有していてもよいアルケニル基」として、具体的には、(Z)-2-ペンテニル基、(2Z,5Z)-オクタ-2,5-ジエニル基等が挙げられる。
【0031】
*が付された炭素原子の立体化学は、α-配置、β-配置、α-配置及びβ-配置の等量混合物(化合物としてラセミ体)であることが好ましく、β-配置であることがより好ましい。
【0032】
式(3T)で表される化合物は、Tetrahedron Letters 50 (2009) 6079-6082、Org. Biomol. Chem., 2017, 15, 8614-8626等の記載、或いは、後述する「3.原料化合物の合成」の記載に従い又は準じて製造することができる。また、式(9)で表される化合物は、公知の化合物又は当業者が容易に入手可能な化合物である。
【0033】
本反応は、通常、溶媒中で実施することができる。溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル(Et2O)、ジイソプロピルエーテル(iPr2O)、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、4-メチルテトラヒドロピラン、等のエーテル系溶媒;n-ヘキサン、n-ペンタン等の炭化水素系溶媒等が挙げられる。この中から、1種又は2種以上の溶媒を用いることができる。好ましくは、THFである。
【0034】
塩基としては、式(9)で表される化合物のアルキンのsp炭素に結合した水素原子(プロトン)を引き抜く程度の塩基性を有していればよく、例えば、アルキルリチウム(メチルリチウム、エチルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム等)、アルカリ金属水素化物(水素化ナトリウム、水素化リチウム等)、リチウムジアルキルアミド(リチウムジイソプロピルアミド等)等が挙げられる。好ましくは、n-ブチルリチウムである。塩基の使用量は、式(9)で表される化合物1モルに対し、通常2~4モル、好ましくは2~3モルである。
【0035】
本反応は、反応を促進するためさらに添加剤を用いてもよい。添加剤としては、例えば、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)、N,N’-ジメチルプロピレン尿素等が挙げられる。添加剤を用いる場合、その使用量は、式(9)で表される化合物1モルに対し、通常0~5モル、好ましくは0~2モルである。
【0036】
式(3T)で表される化合物の使用量は、式(9)で表される化合物1モルに対し、通常1~2モル、好ましくは1~1.5モルである。
【0037】
反応は、通常、-50℃~50℃(好ましくは、-20℃~20℃)で、30分~5時間程度で実施することができる。
【0038】
本反応では、原料である式(3T)で表される化合物のエポキシの立体化学(トランス体:T)が、式(6T)で表される化合物のトランス体に反映される点に特徴を有している。本反応は、次のような反応機構で進行していると考えられる。下記式中の化合物のα-配置及びβ-配置の表記は相対配置である。
【化45】
(式中、R、TMS及び*は前記に同じ。)
【0039】
なお、本反応は、式(3T)で表される化合物の水酸基を、適切な保護基(例えば、tert-ブチルジメチルシリル(TBS)基等)で保護した後、塩基の存在下、式(9)で表される化合物と反応させ、その後当該保護基を除去することにより、式(6T)で表される化合物を製造することもできる。水酸基の保護は公知の方法により実施できる。但し、反応性及び工程数の短縮の観点から、水酸基を保護せずに反応させることが好ましい。
【0040】
或いは、式(3T)で表される化合物の水酸基を、適切な保護基(例えば、tert-ブチルジメチルシリル(TBS)基等)で保護した後、塩基の存在下、式(9)で表される化合物と反応させることにより、式(7T)で表される化合物を製造することもできる。
【0041】
(6T)→(7T):
式(6T)で表される化合物の水酸基を保護基で保護することにより、式(7T)で表される化合物を製造することができる。
【0042】
で示される「水酸基の保護基」としては、例えば、tert-ブチルジメチルシリル(TBS)、トリエチルシリル(TES)基、トリイソプロピルシリル(TIPS)基、tert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)基等のシリル系保護基;α-エトキシエチル基、テトラヒドロピラニル(THP)基等のアセタール系保護基等が挙げられる。
【0043】
水酸基を保護基で保護する反応は、公知の方法を使用することができる。例えば、Org. Biomol. Chem., 2017, 15, 8614-8626、J. Org. Chem., 2015, 80, 7713-7726等の記載に従い又は準じて実施することができる。
【0044】
例えば、シリル系保護基の場合、対応するシリルハライド(特にシリルクロライド等)等の脱離基を有するケイ素化合物を塩基(イミダゾール等)の存在下に反応させることにより、水酸基を保護することができる。また、アセタール系保護基の場合、対応するビニルエーテル化合物(エチルビニルエーテル、ジヒドロピラン(DHP)等)を酸触媒(p-トルエンスルホン酸等)の存在下に反応させることにより、水酸基を保護することができる。
【0045】
(7T)→(8T):
式(7T)で表される化合物からトリメチルシリル(TMS)基を除去することにより、式(8T)で表される化合物を製造することができる。
【0046】
TMS基を除去する反応は、公知の方法を使用することができる。例えば、J. Org. Chem., 2011, 76, 5433-5437、J. Org. Chem., 2015, 80, 7713-7726等の記載に従い又は準じて実施することができる。
【0047】
反応は、例えば、溶媒(メタノール等のアルコール)中、式(7T)で表される化合物を塩基(炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩)と、0~50℃で反応させることにより実施することができる。
【0048】
(11)+(8T)→(12):
式(11)で表される化合物及び式(8T)で表される化合物をカップリング反応(カストロ-ステフェンスカップリング反応等)に付することにより、式(12)で表される化合物を製造することができる。
【0049】
で示される「アルキル基」としては、例えば、鎖状又は分岐状のC1~C6アルキル基が挙げられる。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、等が挙げられる。好ましくはC1~C3アルキル基であり、より好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0050】
で示されるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくは臭素原子である。
【0051】
kは好ましくは1~5の整数であり、より好ましくは1~3の整数、特に好ましくは1である。
【0052】
原料の式(11)で表される化合物は、公知の化合物又は当業者が容易に入手可能な化合物であり、例えば、Chem. Commun., 2017, 53, 1813-1816等に記載の方法に従い又は準じて製造することができる。
【0053】
本反応は、通常、溶媒中、銅化合物、塩基、及び活性化剤の存在下で実施することができる。
【0054】
溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチルピロリドン(NMP)等のアミド系溶媒;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル系溶媒等が挙げられる。この中から、1種又は2種以上の溶媒を用いることができる。好ましくは、DMFである。
【0055】
式(8T)で表される化合物の使用量は、式(11)で表される化合物1モルに対し、通常0.5~2モル、好ましくは0.8~1.5モルである。
【0056】
銅化合物としては、1価の銅(I)化合物が挙げられ、具体的には、例えば、塩化銅(CuCl)、臭化銅(CuBr)、ヨウ化銅(CuI)、シアン化銅(CuCN)等が挙げられる。銅化合物の使用量は、式(11)で表される化合物1モルに対し、通常1~3モル、好ましくは1~1.5モルである。
【0057】
塩基としては、有機塩基、無機塩基が挙げられる。有機塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等が挙げられる。無機塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;炭酸カルシウム、炭酸セシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩;リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム等のアルカリ金属のリン酸塩等が挙げられる。塩基の使用量は、式(11)で表される化合物1モルに対し、通常1~3モル、好ましくは1~2モルである。
【0058】
活性化剤としては、例えば、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等のハロゲン化アルカリ金属が挙げられ、好ましくはヨウ化ナトリウムである。活性化剤の使用量は、式(11)で表される化合物1モルに対し、通常1~3モル、好ましくは1~2モルである。
【0059】
反応は、通常、-20℃~50℃(好ましくは、0℃~40℃)で、30分~12時間程度で実施することができる。
【0060】
(12)→(13):
式(12)で表される化合物を還元反応(C-C三重結合へのシス水素付加反応)に付することにより、式(13)で表される化合物を製造することができる。
【0061】
還元反応は、C-C三重結合を還元してシス体のC-C二重結合を形成し得るものであれば特に限定はなく、公知の方法を使用することができる。例えば、Org. Biomol. Chem., 2017, 15, 8614-8626、J. Org. Chem., 2015, 80, 7713-7726等の記載に従い又は準じて実施することができる。
【0062】
還元反応は、例えば、還元剤として、例えば、Ni(OAc)2・4H2O/水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)/エチレンジアミンを用いることができる。溶媒は、例えば、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等)等を用いることができる。反応は、通常0℃~30℃で、1分~2時間程度で実施することができる。
【0063】
また、還元反応は、水素雰囲気下にリンドラー触媒を用いて実施することもできる。溶媒は、例えば、炭化水素系溶媒(n-ヘキサン等)、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等)等を用いることができる。反応は、通常-20℃~30℃で、1分~2時間程度で実施することができる。
【0064】
還元反応では、式(13)で表される化合物とともに、原料の式(12)で表される化合物のC14-C15位の三重結合が還元されずに残った式(13a)で表される化合物を含む混合物が得られる場合がある。その場合、その混合物をさらに還元反応(Zn(Cu/Ag)、Zn(Cu)等)等に付することにより、当該C14-C15位の三重結合がシス還元された式(13)で表される化合物を得ることができる。
【化46】
(式中、R、R、R、k及び*は前記に同じ。)
【0065】
(13)→(14):
式(13)で表される化合物の水酸基の保護基(R)を脱保護することにより、式(14)で表される化合物を製造することができる。脱保護反応は、公知の方法を使用することができる。
【0066】
例えば、保護基がシリル系保護基である場合、フッ化物イオンを含む化合物、有機酸又はその塩等と反応させることにより脱保護することができる。フッ化物イオンを含む化合物としては、例えば、テトラブチルアンモニウムフルオライド(TBAF)、フッ化カリウム(KF)、ジフルオロトリメチルケイ酸トリス(ジメチルアミノ)スルホニウム(TASF)、トリエチルアミン三フッ化水素酸塩、ピリジンフッ化水素酸塩等が挙げられる。有機酸又はその塩としては、例えば、p-トルエンスルホン酸(p-TsOH)、ピリジニウムp-トルエンスルホネート(PPTS),酢酸等が挙げられる。溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒等が挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合溶媒を用いることができる。
【0067】
保護基がアセタール系保護基である場合、酸と反応させることにより脱保護することができる。酸としては、例えば、塩酸、硫酸等の無機酸、p-トルエンスルホン酸(p-TsOH)、ピリジニウムp-トルエンスルホネート(PPTS)、酢酸等の有機酸が挙げられる。溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒等が挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合溶媒を用いることができる。
【0068】
(14)→(1A):
式(14)で表される化合物のエステルを加水分解することにより、式(1A)で表される化合物を製造することができる。加水分解反応は、公知の方法を使用することができる。
【0069】
例えば、溶媒中で、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下で加水分解することができる。溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒等が挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合溶媒を用いることができる。
【0070】
反応式1で示される工程を経て、式(1A)で表される化合物を合成することができる。式(1A)で表される化合物の*で示される炭素原子の立体化学(R体、S体又は両者の混合物)は、原料である式(3T)で表される化合物の*で示される炭素原子の立体化学に由来する。つまり、式(3T)で表される化合物の立体化学は、式(1A)で表される化合物にまで維持される。後述する「3.原料化合物の合成」の項に記載されるように、式(3T)で表される化合物の*で示される炭素原子の立体化学は任意に作り分けることができるため、種々の立体化学を有する式(3T)で表される化合物を原料に用いることにより、式(1)で表される化合物の立体化学を任意に制御することができる。
【0071】
例えば、式((R)-3T)で表される化合物から、式((R)-1A)で表される化合物を製造することができる。
【化47】
(式中、TMS、R及びkは前記に同じ。)
【0072】
また、式((S)-3T)で表される化合物から、式((S)-1A)で表される化合物を製造することができる。
【化48】
(式中、TMS、R及びkは前記に同じ。)
【0073】
式(1A)で表される化合物は、薬理活性を有する18R-HEPE及びその周辺化合物を包含することから、医薬又はその前駆体として有用である。式(1A)で表される化合物は、所望の物性(薬理効果等)を発揮させるために、公知の方法を用いてさらに化学変換することができる。例えば、カルボキシル基を塩、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド等に変換したり、水酸基をカルボン酸エステル、リン酸エステル等に変換したりすることができる。当該リン酸エステルとしては、水酸基の酸素原子に下記に示すリン脂質からなる基が結合したものが例示される。
【化49】
(式中、R10はアルキル基を示す。)
【0074】
10で示される「アルキル基」としては、例えば、鎖状又は分岐状のC1~C30アルキル基が挙げられる。より好ましくはC1~C20アルキル基である。
【0075】
また、これらの化学変換の手法を用いて、式(1A)で表される化合物をプロドラッグ等に変換することもできる。プロドラッグとは、哺乳動物(特にヒト)の体内又は目標部位に到達してから薬理活性をもつ化合物に変換され、薬理効果を発揮(活性化)するように化学的に修飾された薬物を意味する。
【0076】
反応式1で示される、式(3T)で表される化合物及び式(9)で表される化合物から、式(6T)で表される化合物を製造する反応において、式(9)で表される化合物のTMS基をより汎用性の高い基にしても、同様に反応が進行する。即ち、当該反応は次の式で表される。なお、式(19)で表される化合物は、公知の化合物又は当業者が容易に入手可能な化合物である。
【化50】
(式中、Rは、トリメチルシリル(TMS)基、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を示し、TMS、R及び*は前記に同じ。)
【0077】
で示される「置換基を有していてもよいアルキル基」における「アルキル基」としては、例えば、鎖状又は分岐状のC1~C10アルキル基が挙げられる。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。
【0078】
当該「アルキル基」は置換基を有していてもよく、当該置換基としては、本反応に悪影響を与えない基であれば特に限定はなく、例えば、アルコキシ基(C1~C6アルコキシ基等)、アリール基(フェニル基、トルイル基、キシリル基等)等が挙げられる。「アルキル基」は、これらの置換基からなる群より選ばれる少なくとも1個(好ましくは1~3個)の基を有していてもよい。
【0079】
で示される「置換基を有していてもよいアリール基」における「アリール基」としては、例えば、単環又は2以上の環が縮環したアリール基が挙げられる。具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0080】
当該「アリール基」は置換基を有していてもよく、当該置換基としては、本反応に悪影響を与えない基であれば特に限定はなく、例えば、アルキル基(C1~C6アルキル基等)、アルコキシ基(C1~C6アルコキシ基等)等が挙げられる。「アリール基」は、これらの置換基からなる群より選ばれる少なくとも1個(好ましくは1~3個)の基を有していてもよい。
【0081】
なお、本反応は、式(3T)で表される化合物の水酸基を、適切な保護基(例えば、tert-ブチルジメチルシリル(TBS)基等)で保護した後、塩基の存在下、式(19)で表される化合物と反応させ、当該保護基を除去することにより、式(20T)で表される化合物を製造することもできる。水酸基の保護は公知の方法により実施できる。但し、反応性及び工程数の短縮の観点から、水酸基を保護せずに反応させることが好ましい。
【0082】
2.2 式(1B)で表されるポリエン化合物の合成
式(1B)で表されるポリエン化合物は、特徴的な(Z、E、E)-トリエンジオール骨格を有する化合物であり、公知の薬理活性物質であるプロテクチンD1、マレシン1、レゾルビンE1、及びその周辺化合物等を包含する。
【化51】
【0083】
式(1B)で表されるポリエン化合物は、反応式2に従って製造することができる。
【化52】
(式中、Rは、水素原子、又は鎖状、分岐状若しくは環状アルキル基を示し、或いは2個のRが互いに結合して隣接するホウ素原子と共に環を形成していてもよく、当該環は置換基を有していてもよい。Rは、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアルケニル基を示し、Xは、ハロゲン原子を示す。TMS、R、R及び*は前記に同じ。)
【0084】
(3C)→(6C):
式(3C)で表される化合物を、塩基の存在下、式(9)で表される化合物と反応させることにより、式(6C)で表される化合物を製造することができる。
【0085】
式(3C)で表される化合物は、Y. Kobayashi, Tetrahedron Lett. 2009, 50, 6079、Y. Kobayashi, Tetrahedron Lett. 2011, 52, 3001、Y. Kobayashi, Tetrahedron Lett. 2014, 55, 2738等の記載、或いは、後述する「3.原料化合物の合成」の記載に従い又は準じて製造することができる。また、先に述べた通り、式(9)で表される化合物は、公知の化合物又は当業者が容易に入手可能な化合物である。
【0086】
本反応は、反応式1における、式(3T)で表される化合物から式(6T)で表される化合物を製造する反応と同様にして実施することができる。
【0087】
本反応では、原料である式(3C)で表される化合物のエポキシの立体化学(シス体:C)が、式(6C)で表される化合物のシス体に反映される点に特徴を有している。本反応は、次のような反応機構で進行していると考えられる。下記式中の化合物のα-配置及びβ-配置の表記は相対配置である。
【化53】
(式中、R及びTMSは前記に同じ。)
【0088】
なお、本反応は、式(3C)で表される化合物の水酸基を、適切な保護基(例えば、tert-ブチルジメチルシリル (TBS)基等)で保護した後、塩基の存在下、式(9)で表される化合物と反応させ、その後当該保護基を除去することにより、式(6C)で表される化合物を製造することもできる。水酸基の保護は公知の方法により実施できる。但し、反応性及び工程数の短縮の観点から、水酸基を保護せずに反応させることが好ましい。
【0089】
或いは、式(3C)で表される化合物の水酸基を、適切な保護基(例えば、tert-ブチルジメチルシリル(TBS)基等)で保護した後、塩基の存在下、式(9)で表される化合物と反応させることにより、式(7C)で表される化合物を製造することもできる。
【0090】
(6C)→(7C):
式(6C)で表される化合物の水酸基を保護基で保護することにより、式(7C)で表される化合物を製造することができる。
【0091】
本反応は、反応式1における、式(6T)で表される化合物から式(7T)で表される化合物を製造する反応と同様にして実施することができる。
【0092】
(7C)→(8C):
式(7C)で表される化合物からトリメチルシリル基(TMS基)を除去することにより、式(8C)で表される化合物を製造することができる。
【0093】
本反応は、反応式1における、式(7T)で表される化合物から式(8T)で表される化合物を製造する反応と同様にして実施することができる。
【0094】
(8C)+(15)→(16):
式(8C)で表される化合物を、式(15)で表される化合物でヒドロホウ素化(ハイドロボレーション)することにより、式(16)で表される化合物を製造することができる。
【0095】
本反応は、例えば、Tetrahedron Letters, 50 (2009) 6079-6082、Tetrahedron Letters,52 (2011) 3001-3004、Tetrahedron Letters, 55 (2014) 2738-2741等の記載に従い又は準じて実施することができる。
【0096】
で示される「鎖状、分岐状又は環状アルキル基」としては、C1~C12アルキル基が挙げられる。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、シアミル基(Me2CHCHMe-)、n-ヘキシル基、テキシル基(Me2CHCMe2-)、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、イソピノカンフェイル基等が挙げられる。好ましくはシアミル基(Me2CHCHMe-)、テキシル基(Me2CHCMe2-)、シクロヘキシル基等が挙げられる。2個のRのうち1つが分岐状又は環状アルキル基であり、もう1つが水素原子であるか、或いは、2個のRが分岐状又は環状アルキル基であることが好ましい。
【0097】
で示される「2個のRが互いに結合して隣接するホウ素原子と共に環を形成し、当該環は置換基を有していてもよい」場合、基:-B(Rとしては、例えば、以下の基が挙げられる。
【化54】
【0098】
本反応は、C-C三重結合に対し、H-Bをアンチマルコフニコフ付加させる反応であるから、Rは嵩高い基であることが好ましい。式(15)で表される化合物として、具体的には、ジシアミルボラン(Sia2BH)、テキシルボラン(ThexBH2)、ジシクロヘキシルボラン(Cy2BH)、ボラビシクロ[3,3,1]ノナン(9-BBN)、カテコールボラン(CatBH)、ピナコールボラン(PinBH)、ジイソピノカンフェイルボラン(Ipc2BH)等が挙げられる。
【0099】
本反応は、通常、テトラヒドロフラン(THF)等の溶媒中、式(8C)で表される化合物1モルに対し、式(15)で表される化合物1~2モルを反応させることにより実施できる。反応温度は、通常-10~30℃であり、反応時間は、通常0.5~5時間程度である。
【0100】
式(16)で表される化合物は、そのまま次の工程である鈴木カップリングに付すこともできるが、基:-B(Rが、カテコールボラン又はピナコールボラン等に由来するボロン酸エステル基である場合には、当該ボロン酸エステルを加水分解して、基:-B(OH)に変換してから、鈴木カップリングに付すこともできる。
【0101】
(16)+(17)→(18):
式(16)で表される化合物及び式(17)で表される化合物を、触媒の存在下にカップリング(鈴木カップリング等)反応に付すことにより、式(18)で表される化合物を得る。
【0102】
で示される「置換基を有していてもよいアルキル基」及び「置換基を有していてもよいアルケニル基」は、前述したRで示される「置換基を有していてもよいアルキル基」及び「置換基を有していてもよいアルケニル基」の定義と同じである。なお、RとRは同一又は異なっていてもよい。
【0103】
で示されるハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、臭素原子が好ましい。
【0104】
本反応は、例えば、Tetrahedron Letters, 50 (2009) 6079-6082、Tetrahedron Letters,52 (2011) 3001-3004、Tetrahedron Letters, 55 (2014) 2738-2741等の記載に従い又は準じて実施することができる。
【0105】
本反応は、通常、溶媒中、触媒及び塩基の存在下で実施することができる。
【0106】
溶媒としては、例えば、水;芳香族炭化水素系溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレン等)、脂肪族炭化水素系溶媒(ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン等)、エーテル系溶媒(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等)等が挙げられる。溶媒は、1種又は2種以上の混合物を用いることができる。好ましくはエーテル系溶媒(特に、テトラヒドロフラン)である。
【0107】
式(17)で表される化合物の使用量は、式(16)で表される化合物1モルに対し、通常0.5~2モルであり、好ましくは0.8~1.5モルである。
【0108】
触媒としては、パラジウム触媒が挙げられる。パラジウム触媒としては、0価又は2価のパラジウム触媒が挙げられ、例えば、Pd(PPh3)4、PdCl2(PPh3)2、Pd2(dba)3、Pd[P(t-Bu)3]2、Pd(OAc)2等が挙げられる。パラジウム触媒の使用量は、式(16)で表される化合物に対し、通常1~30モル%程度である。
【0109】
本反応では、必要に応じ配位子を添加してもよい。配位子しては、ホスフィン配位子が好ましく、例えば、トリフェニルホスフィン(PPh3)、トリ(o-トルイル)ホスフィン(P(o-tol)3)、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(dppp)、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf)、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(BINAP)、ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテル等が挙げられる。配位子を用いる場合その使用量は、式(16)で表される化合物に対し、通常1~30モル%程度である。
【0110】
塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物等の無機塩基が挙げられる。本反応では、通常、無機塩基はその水溶液(例えば、0.5~4規定(N)水溶液)として用いることができる。塩基の使用量は、式(16)で表される化合物に対し、通常2~20モル、好ましくは4~15モルである。
【0111】
反応は、通常0~50℃程度で、0,5~10時間程度で実施できる。
【0112】
(18)→(1B):
式(18)で表される化合物の水酸基の保護基(R)を脱保護することにより、式(1B)で表される化合物を製造することができる。
【0113】
本反応は、反応式1における、式(13)で表される化合物から式(14)で表される化合物を製造する反応と同様にして実施することができる。或いは、本反応は、例えば、Tetrahedron Letters, 50 (2009) 6079-6082、Tetrahedron Letters,52 (2011) 3001-3004、Tetrahedron Letters, 55 (2014) 2738-2741等の記載に従い又は準じて実施することができる。
【0114】
上記の式(1B)で表される化合物の製造方法において、R又はRで示される基にカルボキシル基、水酸基等の置換基を有する場合、必要に応じて、任意の工程において、本発明の反応に悪影響を与えない範囲で、当該置換基を公知の方法により保護基で保護し、又は保護された当該置換基を脱保護することができる。
【0115】
反応式2で示される、式(3C)で表される化合物及び式(9)で表される化合物から、式(6C)で表される化合物を製造する反応において、式(9)で表される化合物のTMS基をより汎用性の高い基にしても、同様に反応が進行する。即ち、当該反応は次の式で表される。なお、式(19)で表される化合物は、公知の化合物又は当業者が容易に入手可能な化合物である。
【化55】
(式中、R、TMS、R及び*は前記に同じ。)
【0116】
なお、本反応は、式(3C)で表される化合物の水酸基を、適切な保護基(例えば、tert-ブチルジメチルシリル(TBS)基等)で保護した後、塩基の存在下、式(19)で表される化合物と反応させ、当該保護基を除去することにより、式(20C)で表される化合物を製造することもできる。
【0117】
3.原料化合物の合成
上記反応式1及び2で用いた原料化合物である式(2)及び式(3)で表される化合物は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0118】
式(2)及び式(3)で表される化合物のトランス体である式(2T)及び式(3T)で表される化合物は、例えば、反応式3のようにして製造することができる。
【化56】
(式中、TMS及びRは前記に同じ。)
【0119】
(rac-2T)→(anti(R)-3T)+((S)-2T):
式(rac-2T)で表される化合物をシャープレス不斉エポキシ化反応に付すことにより、式(anti(R)-3T)で表される化合物、及び式((S)-2T)で表される化合物を得ることができる。換言すれば、本反応では、ラセミ体の式(rac-2T)で表される化合物を速度論的光学分割して、式(anti(R)-3T)で表される化合物、及び式((S)-2T)で表される化合物を得る。本反応は、通常、溶媒中、不斉配位子を有する金属触媒の存在下で酸化剤を反応させることにより実施することができる。
【0120】
本反応は、例えば、Tetrahedron Letters 50 (2009) 6079-6082、Org. Biomol. Chem., 2017, 15, 8614-8626等の記載に従い又は準じて実施することができる。原料である式(rac-2T)で表される化合物は、これらの文献の記載に従い又は準じて製造することができる。
【0121】
溶媒としては、例えば、ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム等)等が挙げられる。好ましくは、塩化メチレンである。
【0122】
不斉配位子としては、D-(-)-酒石酸ジエステルが挙げられる。具体的には、D-(-)-酒石酸ジメチル(DMT)、D-(-)-酒石酸ジエチル(DET)、D-(-)-酒石酸ジイソプロピル(DIPT)等が挙げられる。D-(-)-酒石酸ジエステルの使用量は、式(rac-2T)で表される化合物1モルに対し、通常1~2モル、好ましくは1~1.5モルである。
【0123】
金属触媒として用いられる金属としては、チタン(IV)が挙げられる。反応系中で不斉配位子との錯体を形成する前駆体として、チタンテトラエトキシド(Ti(OEt)4) 、チタンテトラn-プロポキシド(Ti(OnPr)4)、チタンテトライソプロポキシド(Ti(OiPr)4)、チタンテトラtert-ブトキシド(Ti(OtBu)4)等のチタンテトラC1~C6アルコキシドが挙げられる。金属触媒の使用量は、金属(チタン(IV))換算にて(即ち、チタンテトラC1~C6アルコキシドの使用量は)、式(rac-2T)で表される化合物1モルに対し、通常1~2モル、好ましくは1~1.5モルである。
【0124】
酸化剤としては、例えば、tert-ブチルペルオキシド(TBHP)、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物が挙げられる。酸化剤の使用量は、式(rac-2T)で表される化合物1モルに対し、通常1~2モル、好ましくは1~1.5モルである。
【0125】
本反応は、無水条件下で実施することが好ましく、例えば、モレキュラーシーブス(MS3A、MS4A)等の脱水剤の存在下で実施することが望ましい。本反応は、通常、-30~0℃で、1~20時間で進行する。
【0126】
本反応により得られた式(anti(R)-3T)で表される化合物及び式((S)-2T)で表される化合物はそれぞれ、エナンチオ過剰率(ee)は95%以上(さらに97%以上、特に99%以上)である。
【0127】
なお、不斉配位子としてD-(-)-酒石酸ジエステルに代えて、その鏡像体であるL-(+)-酒石酸ジエステルを用いた場合には、反応式3で得られる式(anti(R)-3T)で表される化合物及び式((S)-2T)で表される化合物に代えて、それぞれ式(anti(S)-3T)で表される化合物、及び式((R)-2T)で表される化合物を得ることができる。
【0128】
((S)-2T)→((S)-3T):
式((S)-2T)で表される化合物を酸化反応(オレフィンのエポキシ化反応)に付すことにより、式((S)-3T)で表される化合物を得ることができる。本反応は、通常、溶媒中、酸化剤を反応させることにより実施することができる。
【0129】
溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶媒;ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロロホルム等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。
【0130】
酸化剤としては、例えば、過酸化水素、m-クロロ過安息香酸(mCPBA)、過安息香酸、モノペルオキシフタル酸マグネシウム(MMPP)、過酢酸、tert-ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)等が挙げられる。酸化剤の使用量は、式((S)-2T)で表される化合物1モルに対し、通常1~2モル、好ましくは1~1.2モルである。
【0131】
反応は、通常、-20~30℃で、0.5~4時間で進行する。
【0132】
((S)-3T)→((R)-3T):
式((S)-3T)で表される化合物を光延反応に付してカルボン酸化合物を反応させてエステル化合物とし、これを加水分解反応に付することにより、水酸基が結合する炭素の立体が反転した式((R)-3T)で表される化合物を得ることができる。
【0133】
光延反応は、当業者によく知られた反応であり、通常、溶媒中、アゾジカルボン酸ジアルキル(例えば、アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)等)、トリフェニルホスフィンの存在下、カルボン酸化合物(例えば、酢酸、4-ニトロ安息香酸等)を反応させることにより実施することができる。
【0134】
光延反応で得られたエステル化合物を、公知の方法(例えば、LiOH、NaOH等のアルカリ金属水酸化物)で加水分解することにより、式((R)-3T)で表される化合物を得る。
【0135】
式(2)及び式(3)で表される化合物のトランス体である式(2T)及び式(3T)で表される化合物、またそのシス体である式(2C)及び式(3C)で表される化合物は、例えば、反応式4のようにして製造することができる。
【化57】
(式中、R及びTMSは前記に同じ。)
【0136】
(4)→((R)-5):
式(4)で表される化合物を不斉還元反応に付すことにより、式((R)-5)で表される化合物を製造することができる。
【0137】
本反応は、例えば、J. Org. Chem., 2011, 76, 5433-5437、Org. Biomol. Chem., 2017, 15, 8614-8626、Tetrahedron Letters 55 (2014) 2738-2741、J. Am.Chem. Soc. 1997, 119, 8738-8739等の記載に従い又は準じて実施することができる。
【0138】
具体的には、本反応は、通常、溶媒中、不斉配位子を有する金属触媒の存在下で実施することができる。
【0139】
溶媒としては、例えば、アルコール(特に、イソプロピルアルコール等)等が挙げられる。
【0140】
不斉配位子有する金属触媒としては、ケトン選択的不斉水素化ルテニウム触媒が挙げられ、例えば、
・クロロ[(R,R)-N-[2-[2-(4-メチルベンジルオキシ)エチル]アミノ-1,2-ジフェニルエチル]-p-トルエンスルホンアミド]ルテニウム(II)、
【化58】
・[(R,R)-N-(2-アミノ-1,2-ジフェニルエチル)-p-トルエンスルホンアミド]クロロ(p-シメン)ルテニウム(II)(RuCl[(R,R)-Tsdpen](p-cymene))、
【化59】
・[(R,R)-N-(2-アミノ-1,2-ジフェニルエチル)-p-トルエンスルホンアミド]クロロ(メシチレン)ルテニウム(II)(RuCl[(R,R)-Tsdpen](mesitylene))、
【化60】
・[(R,R)-N-(2-アミノ-1,2-ジフェニルエチル)ペンタフルオロベンゼンスルホンアミド]クロロ(p-シメン)ルテニウム(II)(RuCl[(R,R)-Fsdpen](p-cymene))、
【化61】
等が挙げられる。
【0141】
不斉配位子有する金属触媒の使用量は、式(4)で表される化合物に対し、通常0.1~20モル%、好ましくは0.5~10モル%である。
【0142】
なお、これらの不斉配位子有する金属触媒に代えて、その鏡像体の不斉配位子を有する金属触媒である、
・クロロ[(S,S)-N-[2-[2-(4-メチルベンジルオキシ)エチル]アミノ-1,2-ジフェニルエチル]-p-トルエンスルホンアミド]ルテニウム(II)、
・[(S,S)-N-(2-アミノ-1,2-ジフェニルエチル)-p-トルエンスルホンアミド]クロロ(p-シメン)ルテニウム(II)(RuCl[(S,S)-Tsdpen](p-cymene))、・[(S,S)-N-(2-アミノ-1,2-ジフェニルエチル)-p-トルエンスルホンアミド]クロロ(メシチレン)ルテニウム(II)(RuCl[(S,S)-Tsdpen](mesitylene))、・[(S,S)-N-(2-アミノ-1,2-ジフェニルエチル)ペンタフルオロベンゼンスルホンアミド]クロロ(p-シメン)ルテニウム(II)(RuCl[(S,S)-Fsdpen](p-cymene))、等を用いた場合には、反応式4で得られる式((R)-5)で表される化合物に代えて、その鏡像体である式((S)-5)で表される化合物を得ることができる。
【化62】
(式中、TMS及びRは前記に同じ。)
【0143】
反応式4における以降の工程は、いずれも式((R)-5)で表される化合物を用いて、(S)体の化合物、即ち、式((R)-2T)、((R)-3T)、((R)-2C)及び(syn(R)-3C)で表される化合物を合成するものであるが、上記の鏡像体である式((S)-5)で表される化合物を用いることにより、それぞれ対応する(S)体の化合物、即ち、((S)-2T)、((S)-3T)、((S)-2C)及び(syn(S)-3C)で表される化合物を合成することができる。
【0144】
((R)-5)→((R)-2T):
式((R)-5))で表される化合物を還元反応(C-C三重結合へのトランス水素付加反応)に付することにより、式((R)-2T)で表される化合物を製造することができる。本反応は、例えば、Tetrahedron Letters 50 (2009) 6079-6082、Org. Biomol. Chem., 2017, 15, 8614-8626等の記載に従い又は準じて実施することができる。具体的には、溶媒中、式((R)-5))で表される化合物の三重結合を還元剤で還元することにより実施することができる。
【0145】
溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、4-メチルテトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒等が挙げられる。
【0146】
還元剤としては、例えば、リチウムアルミニウムハイドライド(LAlH4)、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(Red-Al)等が挙げられる。還元剤の使用量は、式((R)-5))で表される化合物1モルに対し、通常、1~4モル、好ましくは1~2モルである。
【0147】
反応は、通常、0~30℃で、1~20時間で実施することができる。これにより、トランス体の式((R)-2T)で表される化合物を製造することができる。
【0148】
((R)-2T)→((R)-3T):
式((R)-2T)で表される化合物を酸化反応(オレフィンのエポキシ化反応)に付することにより、式((R)-3T)で表される化合物を得ることができる。
【0149】
本反応は、反応式3の式((S)-2T)で表される化合物から式((S)-3T)で表される化合物を製造する反応と同様にして実施することができる。本反応では、通常、式((R)-3T)で表される化合物は、syn及びantiの混合物として得られる。
【0150】
((R)-5)→((R)-2C):
式((R)-5)で表される化合物を還元反応(C-C三重結合へのシス水素付加反応)に付することにより、式((R)-2C)で表される化合物を製造することができる。
【0151】
本反応は、例えば、Org. Biomol. Chem., 2017, 15, 8614-8626、J. Org. Chem., 2015, 80, 7713-7726等の記載に従い又は準じて実施することができる。具体的には、溶媒中、水素雰囲気下、式((R)-5)で表される化合物の三重結合を還元剤で還元することにより実施することができる。
【0152】
還元剤として、例えば、Zn(Cu/Ag)、Zn(Cu)、リンドラー試薬等を用いることができる。その場合、溶媒として、例えば、水、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール等)等を用いることができる。反応は、通常0~50℃で、1分~2時間程度で進行する。
【0153】
((R)-2C)→(syn(R)-3C):
式((R)-2C)で表される化合物を酸化反応(オレフィンのエポキシ化反応)に付することにより、式(syn(R)-3C)で表される化合物を得ることができる。
【0154】
本反応は、反応式3の式((R)-2T)で表される化合物から式((R)-3T)で表される化合物を製造する反応と同様にして実施することができる。
【0155】
以上のようにして製造された式(2)及び式(3)で表される化合物及びその鏡像体は、前述の「2.水酸基を有するポリエン化合物の合成」の項で示された反応の原料として用いられる。
【実施例
【0156】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0157】
実施例1
(R)-1-((2R, 3R)-3-(トリメチルシリル)オキシラン-2-イル)プロパン-1-オール[(R)-3T]及び(S, E)-1-(トリメチルシリル)ペント-1-エン-3-オール[(S)-2T]の合成
【化63】
【0158】
CH2Cl2(4mL)中にTi(O-iPr)4(0.30mL、1.01mmol)を含む氷冷溶液に、D-(-)-DIPT(0.27mL、1.29mmol)を加えた。溶液を0℃で30分間撹拌し、-15℃に冷却した。CH2Cl2(1mL)中に化合物rac-2T(159mg、1.00mmol)を含む溶液を冷却した溶液に添加した。-15℃で30分間撹拌した後、溶液を-40℃に冷却し、t-BuOOH(CH2Cl2中4.34M、0.35mL、1.65mmol)を滴下した。-20℃で8時間反応を続け、Me2S(0.40mL、5.4mmol)を加えて反応を停止させた。-20℃で10分間撹拌した後、10%酒石酸水溶液(0.1mL)、NaF(296mg、7.17mmol)及びセライト(150mg)を添加した。混合物を室温で激しく撹拌し、CH2Cl2を用いてセライトのパッドを通して濾過した。濾液を1N NaOH水溶液(10mL、10mmol)と混合した。混合物を室温で30分間撹拌し、CH2Cl2で3回抽出した。合わせた抽出物を食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc)により精製してエポキシアルコール(R)-3T(70mg、40%)及びアリルアルコール(S)-2T(65mg、41%)を得た。エポキシアルコール及びアリルアルコールのエナンチオマー過剰率(ee)は、誘導されたMTPAエステルの1H NMR分光法により、それぞれ98%及び99%であった。
エポキシアルコール(R)-3T:
液体; Rf = 0.40 (hexane/EtOAc 5:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.07 (s, 9 H), 1.01 (t, J = 7.5 Hz, 3 H), 1.45-1.62 (m, 2 H), 1.86 (br s, 1 H), 2.37 (d, J = 3.8 Hz, 1 H), 2.89 (t, J = 3.6 Hz, 1 H), 3.77-3.86 (m, 1 H). アリルアルコール(S)-2T:
液体; Rf = 0.47; 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.07 (s, 9 H), 0.92 (t, J = 7.5 Hz, 3 H), 1.49-1.64 (m, 3 H), 3.96-4.07 (m, 1 H), 5.84 (dd, J = 18.7, 1.2 Hz, 1 H), 6.03 (dd, J = 18.7, 5.3 Hz, 1 H).
化合物(R)-3T及び(S)-2Tの1H NMRスペクトルは報告(Org. Biomol. Chem., 2017, 15, 8614-2626)されたものと一致した。
【0159】
実施例2
(R, E)-7-(トリメチルシリル)ヘプト-4-エン-6-イン-3-オール[(R)-6T]の合成
【化64】
【0160】
THF(2mL)中にトリメチルシリルアセチレン(2.20mL、15.9mmol)を含む氷冷溶液に、n-BuLi(ヘキサン中1.55M、8.75mL、13.6mmol)を滴下した。0℃で30分間撹拌した後、HMPA(4.8mL)、及びTHF(2mL)中に化合物(R)-3T(398mg、2.28mmol)を含む溶液を加えた。溶液を室温で4時間撹拌し、飽和NH4Cl水溶液で希釈した。混合物をEtOAcで2回抽出した。 合わせた抽出物をMgSO4で乾燥し、濃縮した。シリカゲル上の残渣のクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc)により、化合物(R)-6T(302mg、73%)を得た。
【0161】
液体; Rf = 0.53 (toluene/EtOAc 9:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.19 (s, 9 H), 0.94 (t, J = 7.5 Hz, 3 H), 1.49-1.62 (m, 3 H), 4.09 (q, J = 6.0 Hz, 1 H), 5.73 (dd, J = 15.9 Hz, 1.5 Hz, 1 H), 6.20 (dd, J = 15.9, 6.0 Hz, 1 H); 13C-APT NMR (75 MHz, CDCl3) δ -0.1 (+), 9.6 (+), 29.7 (-), 73.3 (+), 94.9 (-), 103.2 (-), 109.8 (+), 146.7 (+).
【0162】
実施例3
(R, E)-tert-ブチルジメチル((7-(トリメチルシリル)ヘプト-4-エン-6-イン-3-イル)オキシ)シラン[(R)-7T]の合成
【化65】
【0163】
CH2Cl2(2mL)中に化合物(R)-6T(231mg、1.27mmol)及びイミダゾール(213mg、3.13mmol)を含む氷冷溶液に、tert-ブチルジメチルシリルクロリド(TBSCl)(233mg、1.55mmol)を加えた。その溶液を室温で1時間撹拌し、飽和NaHCO3水溶液で希釈した。得られた混合物をCH2Cl2で3回抽出した。合わせた抽出物を食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濃縮して残渣を得て、これをシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc)で精製して化合物(R)-7T(329mg、88%)を得た。
【0164】
液体; Rf = 0.74 (hexane/EtOAc 9:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.03 (s, 3H), 0.04 (s, 3 H), 0.19 (s, 9 H), 0.87 (t, J = 7.5 Hz, 3 H), 0.90 (s, 9 H), 1.45-1.56 (m, 2 H), 4.07-4.15 (m, 1 H), 5.69 (dd, J = 15.9 Hz, 1.8 Hz, 1 H), 6.18 (dd, J = 15.9, 4.8 Hz, 1 H); 13C-APT NMR (75 MHz, CDCl3) δ -4.8 (+), -4.5 (+), -0.1 (+), 9.3 (+), 18.3 (-), 25.9 (+), 30.7 (-), 73.4 (+), 94.2 (-), 103.8 (-), 108.8 (+), 147.4 (+).
【0165】
実施例4
(R, E)-tert-ブチル(ヘプト-4-エン-6-イン-3-イルオキシ)ジメチルシラン[(R)-8T]の合成
【化66】
【0166】
MeOH(2mL)中に化合物(R)-7T(313mg、1.06mmol)を含む溶液に、K2CO3(229mg、1.66mmol)を添加した。混合物を室温で1.5時間撹拌し、飽和NH4Cl水溶液で希釈した。得られた混合物をEtOAcで2回抽出した。合わせた抽出物を食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濃縮して残渣を得て、これをシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc)で精製してTBSエーテル(R)-8T(206mg、87%)を得た。
【0167】
液体; Rf = 0.38 (hexane); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.03 (s, 3H), 0.05 (s, 3 H), 0.87 (t, J = 7.5 Hz, 3 H), 0.90 (s, 9 H)
, 1.46-1.58 (m, 2 H), 2.86 (d, J = 2.1 Hz, 1 H), 4.07-4.18 (m, 1 H), 5.65 (dm, J = 15.9 Hz, 1 H), 6.23 (dd, J = 15.9, 5.1 Hz, 1 H); 13C-APT NMR (75 MHz, CDCl3) δ -4.8 (+), -4.5 (+), 9.3 (+), 18.3 (-), 25.9 (+), 30.6 (-), 73.4 (+), 77.3 (-), 82.2 (-), 107.7 (-), 148.2 (+).
【0168】
実施例5
メチル (R, E)-18-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)イコサ-16-エン-5,8,11,14-テトライノエート[(R)-12)]の合成
【化67】
【0169】
DMF(1mL)中にCuI(196mg、1.03mmol)、Cs2CO3(252mg、0.773mmol)、及びNaI(154mg、1.03mmol)を含む混合物に、エンイン化合物 (R)-8T(122mg、0.544mmol)を含むDMF(0.5mL)溶液、及び臭化物 11(151mg、0.511mmol)を含むDMF(0.5mL)溶液を加えた。室温で7時間撹拌後、混合物を飽和NH4Cl水溶液で希釈した。得られた混合物をEtOAcで2回抽出した。合わせた抽出物をMgSO4で乾燥し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc 9:1)で精製して、化合物(R)-12(141mg、63%)を得た。
【0170】
液体; Rf = 0.33 (hexane/EtOAc 9:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.02 (s, 6 H), 0.04 (s, 6 H), 0.86 (t, J = 7.5 Hz, 3 H), 0.89 (s, 9 H), 1.43-1.57 (m, 2 H), 1.81 (quint., J = 7.2 Hz, 2 H), 2.24 (t, J = 7.0 Hz, 2 H), 2.43 (t, J = 7.5 Hz, 1 H), 3.10-3.19 (m, 4 H), 3.26-3.32 (m, 2 H), 3.68 (s, 3 H), 4.04-4.13 (m, 1 H), 5.62 (d, J = 15.9 Hz, 1 H), 6.09 (dd, J = 15.9, 5.1 Hz, 1 H).
【0171】
実施例6
メチル (R,5Z,8Z,11Z,14Z,16E)-18-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)イコサ-5,8,11,14,16-ペンタエノエート[(R)-13]の合成
【化68】
【0172】
EtOH(0.5mL)中にNi(OAc)2・4H2O(105mg、0.423mmol)を含む氷冷懸濁液に、NaBH4(20mg、0.53mmol)を添加した。フラスコを水素でパージし、エチレンジアミン(0.050mL、0.74mmol)を添加した。室温で10分間撹拌した後、化合物(R)-12(149mg、0.340mmol)を含むEtOH(0.5mL)溶液を添加した。混合物を室温で90分間撹拌し、EtOAcを用いてセライトのパッドを通して濾過し、濾液を減圧濃縮して油状物を得て、これをシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc)で精製して、化合物(R)-13及び(R)-13aの混合物(94mg、62%)を得た。
【0173】
液体; Rf= 0.55(ヘキサン/EtOAc 9:1)。化合物(R)-13及び(R)-13aの存在比は、13C NMRシグナルのピーク高さの計算より4:1であった。
【0174】
H2O(6mL)中にZn(2.0g、31mmol)を含むスラリーに、Cu(OAc)2(200mg、1.1mmol)を加え、混合物を室温で15分間撹拌した。この混合物にAgNO3(202mg、1.19mmol)を加え、室温でさらに30分間撹拌し、ヒルシュ(Hirsch)漏斗を用いて濾過した。残った固体をH2O(5mL×2)、MeOH(5mL×2)、アセトン(5mL×2)、及びEt2O(5mL×2)で連続的に洗浄し、洗浄後の固体を、MeOH(2mL)及びH2O(1mL)中に化合物(R)-13及び(R)-13aの混合物(4:1, 64mg、0.143mmol)を含む溶液に窒素下で加えた。混合物を40~45℃で12時間撹拌し、EtOAcを用いてセライトのパッドを通して濾過した。濾液をEtOAcで2回抽出した。合わせた抽出物を食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濃縮して残留油状物を得て、これをシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc)で精製して、化合物(R)-13(57mg、89%)を得た。
【0175】
液体; Rf = 0.55 (hexane/EtOAc 9:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.03 (s, 6 H), 0.05 (s, 6 H), 0.87 (t, J = 7.2 Hz, 3 H), 0.90 (s, 9 H), 1.51 (quint., J = 7.0 Hz, 2 H), 1.70 (quint., J = 7.0 Hz, 2 H), 2.03-2.18 (m, 2 H), 2.32 (t, J = 7.5 Hz, 2 H), 2.71-2.88 (m, 4 H), 2.95 (t, J = 5.9 Hz, 2 H), 3.66 (s, 3 H), 4.10 (q, J = 6.0 Hz, 1 H), 5.28-5.48 (m, 7 H), 5.65 (dd, J = 15.0, 6.0 Hz, 1 H), 5.99 (t, J = 11.0 Hz, 1 H), 6.45 (dd, J = 15.0, 11.0 Hz, 1 H); 13C-APT NMR (75 MHz, CDCl3) δ -4.7 (-), -4.3 (-), 9.7 (+), 18.3 (-), 24.8 (-), 25.7 (-), 26.0 (+), 26.1 (-), 26.6 (-), 31.2 (-), 33.5 (-), 51.5 (+), 74.4 (+), 124.2 (+), 128.0 (+), 128.1 (+), 128.3 (+), 128.4 (+), 128.5 (+), 128.9 (+), 129.0 (+), 129.1 (+), 137.3 (+), 174.1 (-).
【0176】
実施例7
メチル (R,5Z,8Z,11Z,14Z,16E)-18-ヒドロキシイコサ-5,8,11,14,16-ペンタノエート[(R)-14)]の合成
【化69】
【0177】
THF(0.3mL)中に化合物(R)-13(56mg、0.125mmol)を含む氷冷溶液に、Bu4NF(TBAF)(THF中1.0M、0.40mL、0.40mmol)を添加した。溶液を室温で5時間撹拌し、飽和NH4Cl水溶液で希釈した。得られた混合物をEtOAcで3回抽出した。合わせた抽出物をMgSO4で乾燥し、濃縮して残留油状物を得て、これをシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc)で精製して、化合物(R)-14(28mg、67%)を得た。
【0178】
液体; Rf = 0.26 (hexane/EtOAc 5:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.93 (t, J = 7.2 Hz, 3 H), 1.46-1.82 (m, 4 H), 2.02-2.22 (m, 2 H), 2.32 (t, J = 7.5 Hz, 2 H), 2.74-2.90 (m, 4 H), 2.97 (t, J = 5.6 Hz, 2 H), 3.67 (s, 3 H), 4.06-4.16 (m, 1 H), 5.30-5.47 (m, 7 H), 5.70 (dd, J = 15.0, 6.9 Hz, 1 H), 6.01 (t, J = 11.0 Hz, 1 H), 6.53 (dd, J = 15.0, 11.0 Hz, 1 H); 13C-APT NMR (75 MHz, CDCl3) δ 9.8, 24.8, 25.71, 25.74, 26.2, 26.6, 30.2, 33.5, 51.6, 74.2, 125.6, 127.7, 128.0, 128.1, 128.4, 128.6, 128.9, 129.1, 130.2, 136.4, 174.2.
【0179】
実施例8
18R-HEPEの合成
【化70】
【0180】
THF(0.2mL)及びMeOH(0.2mL)中に化合物(R)-14(10mg、0.030mmol)を含む溶液に、LiOH水溶液(2.0N、0.15mL、0.30mmol)を加えた。混合物を室温で1時間撹拌し、緩衝液(pH5.0)で希釈し、得られた混合物をEtOAcで3回抽出した。合わせた抽出物を食塩水、MgSO4で洗浄し、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc)により精製して、18R-HEPE(5.4mg、56%)を得た。
【0181】
液体; Rf = 0.33 (CH2Cl2/THF 9:1); 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.93 (t, J = 7.6 Hz, 3 H), 1.52-1.64 (m, 2 H), 1.71 (quint., J = 7.4 Hz, 2 H), 2.13 (q, J = 7.0 Hz, 2 H), 2.36 (t, J = 7.2 Hz, 2 H), 2.82 (t, J = 5.8 Hz, 2 H), 2.85 (t, J = 5.5 Hz, 2 H), 2.98 (t, J = 6.4 Hz, 2 H), 4.14 (q, J = 6.6 Hz, 1 H), 5.32-5.46 (m, 7 H), 5.69 (dd, J = 15.2, 6.6 Hz, 1 H), 6.00 (t, J = 11.0 Hz, 1 H), 6.54 (dd, J = 15.2, 11.0 Hz, 1 H); 13C-APT NMR (75 MHz, CDCl3) δ 9.8, 24.5, 25.7, 25.8, 26.2, 26.5, 30.2, 33.2, 74.2, 125.7, 127.7, 128.0, 128.1, 128.3, 128.6, 128.9, 129.1, 130.4, 135.9, 178.0.
1H NMR及び13C NMRスペクトルは報告(J. Biol. Chem., 2012, 287, 10525-10534.)されたものと一致した。
【0182】
実施例9
(Z)-1-(トリメチルシリル)オクト-1-エン-3-オール[16C]の合成
【化71】
【0183】
MeOH (14 mL)中にNi(OAc)2・4H2O (2.99 g, 12.0 mmol)を含む氷冷懸濁液に、NaBH4 (456 mg, 12.1 mmol)を加えた。フラスコを水素で置換し、エチレンジアミン(1.36 mL, 20.1 mmol) をその混合物に加えた。10分後、MeOH (6 mL)中にアルコール15 (1.99 g, 10.0 mmol)を含む溶液を加えた。その混合物を室温で終夜攪拌し、シリカゲルパッドでろ過して、オレフィン16C (1.64 g, 82%)を得た。
【0184】
液体;Rf 0.62 (toluene/EtOAc 9:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.14 (s, 9 H), 0.89 (t, J = 6.6 Hz, 3 H), 1.22-1.66 (m, 9 H), 4.16-4.28 (m, 1 H), 5.66 (d, J = 14.1, 1 H), 6.23 (dd, J = 14.1, 9.0 Hz, 1 H).
【0185】
実施例10
1-[3-(トリメチルシリル)オキシラン-2-イル]ヘキサン-1-オール[17C]の合成
【化72】
【0186】
CH2Cl2(50 mL)中に化合物16C (4.72 g, 23.6 mmol) 及びNaHCO3 (4.74 g, 56.4 mmol)を含む氷冷混合物に、m-CPBA (70% purity, 7.02 g, 28.5 mmol)を加えた。その混合物を室温で4時間攪拌した後、Me2S (3.45 mL, 46.6 mmol)を加えてクエンチした。その混合物をセライトパッドでろ過した。残渣を飽和NaHCO3 水溶液で希釈し、EtOAcで2回抽出した。合わせた有機層をMgSO4で乾燥した後、濃縮して残渣を得た。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶媒:hexane/EtOAc)で精製することにより、エポキシアルコール17C (3.08 g, 60%)を得た。
【0187】
液体;Rf = 0.47 (hexane/EtOAc 5:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.14 (s, 9 H), 0.90 (t, J = 6.9 Hz, 3 H), 1.18-1.70 (m, 8 H), 2.03 (d, J = 3.3, 1 H), 2.35 (d, J = 5.4, 1 H), 3.12 (dd, J = 7.8, 5.4 Hz, 1 H), 3.30-3.40 (m, 1 H).
【0188】
実施例11
化合物[20C]の合成
【化73】
【0189】
(1)化合物18C及び19Cの合成
THF (0.5 mL)中にトリメチルシリルアセチレン(0.20 mL, 1.45 mmol)を含む氷冷溶液に、n-BuLi (1.55 M in hexane, 0.80 mL, 1.24 mmol)を滴下した。0℃で30分攪拌後、HMPA (0.50 mL, 2.87 mmol)及びTHF (0.4 mL)中にエポキシアルコール17C (68 mg, 0.31 mmol)を含む溶液を加えた。その溶液を0℃で1.5時間攪拌し、飽和NH4Cl水溶液で希釈した。その混合物をEtOAcで2回抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、MgSO4で乾燥した後、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶媒:hexane/EtOAc)で精製することにより、化合物18C (34 mg, 48%)及び化合物19C (25 mg, 25%)の混合物を得た。
【0190】
液体;Rf 0.55 (hexane/EtOAc 5:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.19 (s, 9 H), 0.89 (t, J = 6.9 Hz, 3 H), 1.24-1.70 (m, 8 H), 1.87 (d, J = 3.6 Hz, 1 H), 4.60-4.74 (m, 1 H), 5.55 (dd, J = 10.8 Hz, 0.9 Hz, 1 H), 5.93 (dd, J = 10.8 Hz, 8.4 Hz, 1 H).
【0191】
(2)エンイン化合物20Cの合成
MeOH (1 mL)中に上記混合物を含む溶液に、K2CO3 (67 mg, 0.48 mmol)を加えた。その混合物を室温で1時間攪拌した後、飽和NH4Cl水溶液で希釈した。得られた混合物をEtOAcで2回抽出した。合わせた抽出物をMgSO4で乾燥した後、濃縮して残渣を得た。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶媒:hexane/EtOAc)で精製することにより、エンイン化合物20C (29 mg, 61% from 17C)を得た。
【0192】
液体;Rf= 0.30 (hexane/EtOAc 5:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.88 (t, J = 6.6 Hz, 3 H), 1.20-1.78 (m, 8 H), 1.92 (br s, 1 H), 3.13 (dd, J = 2.4 Hz, 0.9 Hz, 1 H), 4.58-4.76 (m, 1 H), 5.52 (ddd, J = 10.8 Hz, 2.4 Hz, 0.9 Hz, 1 H), 5.98 (ddd, J = 10.8 Hz, 8.4 Hz, 0.9 Hz, 1 H); 13C-APT NMR (75 MHz, CDCl3) δ 14.1 (+), 22.6 (-), 24.8 (-), 31.8 (-), 36.5 (-), 70.1 (+), 79.6 (-), 82.8 (-), 108.9 (+), 147.6 (+).
【0193】
実施例12~18
上記実施例2及び実施例11(1)に記載の手順に従い、塩基(n-BuLi)の存在下、種々のエポキシ化合物とアルキンを反応させて、エンイン化合物を合成した。以下、反応式及び生成物のデータを示す。
【0194】
実施例12
化合物[22C]の合成
【化74】
【0195】
化合物22C:
液体;Rf = 0.66 (hexane); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.05 (s, 3 H), 0.08 (s, 3 H), 0.19 (s, 9 H), 0.80-1.00 (m, 12 H), 1.20-1.62 (m, 8 H), 4.54-4.72 (m, 1 H), 5.44 (dd, J = 11.1 Hz, 0.9 Hz, 1 H), 5.87 (dd, J = 11.1 Hz, 8.7 Hz, 1 H); 13C-APT NMR (75 MHz, CDCl3) δ -4.8 (+), -4.3 (+), -0.03 (+), 14.2 (+), 18.3 (-), 22.7 (-), 24.9 (-), 26.0 (+), 31.7 (-), 37.5 (-), 70.8 (+), 99.4 (-), 101.6 (-), 108.3 (+), 148.3 (+); HRMS (FAB+) calcd for C19H37OSi2[(M-H)+] 337.2383, found 337.2380.
【0196】
実施例13
化合物[24C]の合成
【化75】
【0197】
化合物24C:
液体; Rf = 0.57 (hexane); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.04 (s, 3 H), 0.08 (s, 3 H), 0.88 (s, 9 H), 0.91 (t, J = 7.2 Hz, 6 H), 1.22-1.62 (m, 14 H), 2.33 (td, J = 6.6 Hz, 2.1 Hz, 2 H), 4.56-4.68 (m, 1 H), 5.41 (dm, J = 10.8 Hz, 1 H), 5.74 (dd, J = 10.8 Hz, 8.7 Hz, 1 H); 13C-APT NMR (75 MHz, CDCl3) δ-4.8 (+), -4.3 (+), 14.1 (+), 14.2 (+), 18.3 (-), 19.5 (-), 22.3 (-), 22.7 (-), 25.0 (-), 26.0 (+), 28.6 (-), 31.2 (-), 31.8 (-), 37.7 (-), 70.9 (+), 77.0 (-), 95.4 (-), 108.6 (+), 145.6 (+); HRMS (FAB+) calcd for C21H39OSi [(M-H)+] 335.2770, found 335.2769.
【0198】
実施例14
化合物[26T]の合成
【化76】
【0199】
化合物26T:
液体; Rf = 0.45 (hexane/EtOAc 5:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.18 (s, 9 H), 0.97 (t, J = 7.5 Hz, 3 H), 1.67 (d, J = 4.5 Hz, 1 H), 2.06 (quint., J = 7.5 Hz, 2 H), 2.31 (t, J = 6.3 Hz, 2 H), 4.14-4.26 (m, 1 H), 5.26-5.39 (m, 1 H), 5.53-5.66 (m, 1 H), 5.76 (dd, J = 15.9 Hz, 1.5 Hz, 1 H), 6.22 (dd, J = 15.9 Hz, 5.7 Hz, 1 H); 13C-APT NMR (75 MHz, CDCl3) δ-0.05 (+), 14.2 (+), 20.8 (-), 34.8 (-), 71.5 (+), 95.3 (-), 103.2 (-), 109.9 (+), 123.1 (+), 135.9 (+), 146.1 (+); HRMS (FAB+) calcd for C13H22OSiNa [(M+Na)+] 245.1338, found 245.1340.
【0200】
実施例15
化合物[28T]の合成
【化77】
【0201】
化合物28T:
液体; Rf = 0.67 (toluene/EtOAc 9:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.19 (s, 9 H), 0.97 (t, J = 7.4 Hz, 3 H), 1.65 (d, J = 4.5 Hz, 1 H), 2.06 (quint., J = 7.4 Hz, 2 H), 2.34 (t, J = 6.6 Hz, 2 H), 2.80 (t, J = 7.2 Hz, 2 H), 4.14-4.28 (m, 1 H), 5.23-5.46 (m, 3 H), 5.52-5.64 (m, 1 H), 5.76 (dd, J = 15.9 Hz, 1.5 Hz, 1 H), 6.22 (dd, J = 15.9 Hz, 5.4 Hz, 1 H); 13C-APT NMR (75 MHz, CDCl3) δ -0.05 (+), 14.3 (+), 20.6 (-), 25.8 (-), 34.9 (-), 71.4 (+), 95.3 (-), 103.1 (-), 110.0 (+), 124.1 (+), 126.6 (+), 132.3 (+), 132.4 (+), 146.0 (+); HRMS (FAB+) calcd for C16H26OSiNa [(M+Na)+] 285.1651, found 285.1655.
【0202】
実施例16
化合物[30T]の合成
【化78】
【0203】
化合物30T:
液体; Rf = 0.62 (toluene/EtOAc 9:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.07 (s, 6 H), 0.18 (s, 9 H), 0.90 (s, 9 H), 1.52-1.78 (m, 4 H), 3.03 (d, J = 4.5 Hz, 1 H), 3.65 (t, J = 5.7 Hz, 2 H), 4.14-4.26 (m, 1 H), 5.77 (dd, J = 16.0 Hz, 1.5 Hz, 1 H), 6.21 (dd, J = 16.0 Hz, 5.4 Hz, 1 H); 13C-APT NMR (75 MHz, CDCl3) δ -5.4 (+), -0.02 (+), 18.4 (-), 26.0 (+), 28.6 (-), 34.4 (-), 63.4 (-), 71.5 (+), 94.8 (-), 103.5 (-), 109.4 (+), 147.2 (+); HRMS (FAB+) calcd for C17H34O2Si2Na [(M+Na)+] 349.1995, found 349.1998.
【0204】
実施例17
化合物[32T]の合成
【化79】
【0205】
化合物32T:
液体; Rf = 0.61 (toluene/EtOAc 9:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.88 (t, J = 6.9 Hz, 3 H), 0.90 (t, J = 6.9 Hz, 3 H), 1.22-1.60 (m, 15 H), 2.29 (dt, J = 1.8, 7.2 Hz, 2 H), 4.06-4.18 (m, 1 H), 5.67 (dm, J = 15.9 Hz, 1 H), 6.04 (dd, J = 15.9, 6.3 Hz, 1 H); 13C-APT NMR (75 MHz, CDCl3) δ14.0 (+), 14.1 (+), 19.4 (-), 22.3 (-), 22.6 (-), 25.0 (-), 28.5 (-), 31.1 (-), 31.8 (-), 37.0 (-), 72.6 (+), 78.4 (-), 91.3 (-), 110.5 (+), 144.3 (+).
【0206】
実施例18
化合物[34T]の合成
【化80】
【0207】
化合物34T:
液体; Rf = 0.39 (toluene/EtOAc 9:1); 1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 0.90 (t, J = 6.9 Hz, 3 H), 1.21-1.64 (m, 9 H), 4.21 (q, J = 6.2 Hz, 1 H), 5.93 (dd, J = 16.0, 1.2 Hz, 1 H), 6.24 (dd, J = 16.0 Hz, 6.2 Hz, 1 H), 7.28-7.36 (m, 3 H), 7.39-7.46 (m, 2 H); 13C-APT NMR (75 MHz, CDCl3) δ 14.1 (+), 22.7 (+), 25.0 (-), 31.8 (-), 37.1 (-), 72.5 (+), 87.5 (-), 90.1 (-), 109.9 (+), 123.3 (-), 128.2 (+), 128.4 (+), 131.5 (+), 145.9 (+).
【産業上の利用可能性】
【0208】
本発明は、水酸基を有するポリエン化合物(18R-HEPE等)を、簡便且つ立体選択的に製造することができる。具体的には、水酸基を有するポリエン化合物を合成する鍵中間体である、式(6)~式(8)で表される(保護されていてもよい)水酸基を有するエンイン化合物を簡便且つ立体選択的に製造することができ、その鍵中間体を経て簡便且つ立体選択的に水酸基を有するポリエン化合物を製造することができる。