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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】防音パネル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20221227BHJP
   B32B 3/12 20060101ALI20221227BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20221227BHJP
   G10K 11/172 20060101ALI20221227BHJP
   G10K 11/168 20060101ALI20221227BHJP
   B60R 13/08 20060101ALI20221227BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
G10K11/16 130
B32B3/12 B
B32B15/08 E
G10K11/172
G10K11/168
B60R13/08
B32B5/24
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018096640
(22)【出願日】2018-05-18
(65)【公開番号】P2019200401
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】福島 伸二
(72)【発明者】
【氏名】新海 達也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 紘規
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-065026(JP,A)
【文献】特開2014-041242(JP,A)
【文献】特開2015-187632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/16-11/172
B32B 3/12
B32B 15/08
B60R 13/08
B32B 5/24
E04B 1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に複数のセルが並設された樹脂製板状の中空構造体からなる防音パネルであって、
前記中空構造体は、凹凸形状を有する第1シート材が折り畳まれてなるとともに前記セルが並設されたコア層と、前記コア層の厚み方向において前記セルの端部を閉塞するとともに前記中空構造体の主面を構成する閉塞壁を備え、
前記中空構造体における前記主面に沿う方向の端部には、前記コア層が厚み方向に圧縮されてなる圧縮部分が形成されており、
前記中空構造体の少なくとも一方の主面の一部には、接着層を介して鋼板が接合されており、
前記鋼板が接合された前記主面は、前記鋼板が接合された前記閉塞壁と、前記鋼板が接合されていない前記閉塞壁とを有しており、
前記中空構造体において前記鋼板が接合された部分では前記コア層が前記鋼板の厚み分圧縮されて、前記中空構造体において前記鋼板が接合された部分と、前記鋼板が接合されていない部分とが面一となっており、
前記鋼板が接合されていない前記閉塞壁には、前記セルの内外を連通する連通孔が貫設されている防音パネル。
【請求項2】
前記中空構造体は、厚み方向において前記セルの端部を閉塞する壁部を備えた前記コア層と、前記コア層の両主面に接合された一対のシート層を備え、
前記閉塞壁は、前記シート層と前記壁部で構成されており、
前記鋼板は、その両面に形成された接着層を介して前記シート層と前記壁部との間に接合されている請求項1に記載の防音パネル。
【請求項3】
前記鋼板が接合された前記主面では、前記シート層は不織布で形成されており、
前記不織布は、接着層を介して前記コア層に接合されている
請求項2に記載の防音パネル。
【請求項4】
前記中空構造体における前記主面に沿う方向の端面は、前記主面に対する傾斜角度が70゜以上である
請求項1~3のいずれか一項に記載の防音パネル。
【請求項5】
内部に複数のセルが並設された樹脂製板状の中空構造体からなる防音パネルであって、
前記中空構造体は、その厚み方向において前記セルの端部を閉塞するとともに前記中空構造体の主面を構成する閉塞壁を備え、
前記中空構造体には、厚み方向に圧縮されて薄くされたヒンジ部が形成されており、
前記中空構造体の少なくとも一方の主面の一部には、前記ヒンジ部に沿うように鋼板が接合されており、
前記鋼板が接合された前記主面は、前記鋼板が接合された前記閉塞壁と、前記鋼板が接合されていない前記閉塞壁とを有しており、
前記鋼板が接合されていない前記閉塞壁には、前記セルの内外を連通する連通孔が貫設されている防音パネル。
【請求項6】
車両のラゲッジボードに適用され、
前記鋼板が接合された前記主面は、前記ラゲッジボードの下面を構成する請求項1~のいずれか一項に記載の防音パネル。
【請求項7】
内部に複数のセルが並設された樹脂製板状の中空構造体からなる防音パネルの製造方法であって、
凹凸形状を有する第1シート材を折り畳むことにより前記セルが並設された中空板状のコア層を形成する工程と、
前記コア層に対して、鋼板及びシート材を、接着層を介して接合する接合工程と、
前記コア層、前記鋼板、及び前記シート材を成形して中空板材を得る成形工程と、
前記中空板材の一方の面に連通孔を形成する連通孔形成工程と
を備え、
前記接合工程では、前記コア層の少なくとも一方の主面の一部に前記鋼板を接合するとともに、前記コア層の前記主面の全体に前記シート材を接合し、
前記成形工程では、前記コア層の端部を厚み方向に圧縮して圧縮部分を形成し、
前記連通孔形成工程では、前記中空板材の一方の面において、前記鋼板が接合されていない部分に前記連通孔を形成する防音パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音パネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内部に複数のセルが並設された中空構造体は、軽量でありながら適度な強度を備えているため、各種車両の構成部材や建材等に使用する場合がある。また、中空構造体の表面に複数の連通孔を形成して吸音性能を付加することで、中空構造体を吸音材として利用することが知られている。特許文献1には、中空構造体を吸音材として車両のラゲッジボードに適用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-187632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される吸音材は、3層構造をなす樹脂製板状の中空構造体で構成されている。中空構造体は、複数の突起を有するキャップシートと、突起の開放側に添接されたバックシートと、突起の先端側に添接されたライナーシートを備えており、バックシートには、突起内に形成された空気室を外部に連通させる複数の連通孔が形成されている。そのため、連通孔の開口部に存在する空気の塊に対して空気室がバネのような働きをすることにより、いわゆるヘルムホルツ共鳴器として機能し、吸音効果が得られるとされている。こうした吸音材を車両のラゲッジボードに適用すると、車両走行時の道路との摩擦音等、車両下部からの騒音を吸音することができるため、車室内を快適な空間にすることができる。
【0005】
ところで、通常、車両のラゲッジボードは、ラゲッジルームの下方に形成された支持部上に支持されている。ラゲッジボードが支持部上に支持されることにより、ラゲッジボードより上側がラゲッジルームとして区画され、ラゲッジボードより下側が工具等の収納スペースとして区画される。こうしたことから、ラゲッジボードを支持するための支持部はラゲッジルームの下方周縁に形成されており、ラゲッジボードは、その周縁部で支持部上に支持されることになる。そのため、ラゲッジボードには、重量物を載置したような場合にも耐えられるだけの十分な曲げ剛性が要求される。
【0006】
しかし、特許文献1に記載される吸音材のように、従来から知られている中空構造体からなる吸音材では、中空の複数のセルが中空構造体の厚み方向と直交する方向に並設されているため、厚み方向に加わる曲げに対して十分な剛性を保てない場合がある。
【0007】
本発明は、従来のこうした問題を解決するためになされたものであり、その目的は、曲げ剛性に優れた防音パネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は、内部に複数のセルが並設された樹脂製板状の中空構造体からなる防音パネルであって、前記中空構造体は、その厚み方向において前記セルの端部を閉塞するとともに前記中空構造体の主面を構成する閉塞壁を備え、前記中空構造体の少なくとも一方の主面の一部には、鋼板が接合されており、前記鋼板が接合された前記主面は、前記鋼板が接合された前記閉塞壁と、前記鋼板が接続されていない前記閉塞壁とを有しており、前記鋼板が接合されていない前記閉塞壁には、前記セルの内外を連通する連通孔が貫設されている。
【0009】
上記の構成によれば、内部に複数のセルが並設された中空構造体は、少なくとも一方の主面の一部に接合された鋼板によって補強されている。また、音源からの音を鋼板が遮音するため、鋼板が接合された部分では中空構造体を介して音が透過しにくい。一方、主面を構成する閉塞壁のうち、鋼板が接合されていない閉塞壁には、セルの内外を連通する連通孔が形成されている。そのため、連通孔が形成された部分では、セルがヘルムホルツ共鳴器として機能し、中空構造体に吸音性能を付加することができる。このように、少なくとも一方の主面には、鋼板が接合された閉塞壁と連通孔が貫設された閉塞壁とが共存している。そのため、鋼板によって中空構造体の補強効果と、音源からの音に対する遮音効果が得られ、連通孔によって音源からの音に対する吸音効果が得られる。曲げ剛性に優れた防音パネルが得られる。
【0010】
上記の発明において、前記中空構造体は、一枚のシート材から形成してなるコア層と、前記コア層の両主面に接合された一対のシート層を備え、前記コア層は、その厚み方向において前記セルの端部を閉塞する壁部を備え、前記閉塞壁は、前記シート層と前記壁部で構成されており、前記鋼板は、前記シート層と前記壁部との間に接合されていることが好ましい。
【0011】
上記の発明において、前記鋼板が接合された前記主面では、前記シート層は不織布で形成されていることが好ましい。
上記の発明において、車両のラゲッジボードに適用され、前記鋼板が接合された前記主面は、前記ラゲッジボードの下面を構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、曲げ剛性に優れた防音パネルが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)は本実施形態の防音パネルとしてのラゲッジボードの上面図、(b)は(a)のA‐A線断面での断面図。
図2】(a)は図1(a)のラゲッジボードのA‐A線断面での部分斜視図であり、ラゲッジボードを上面側から見た部分斜視図、(b)は(a)におけるβ‐β線断面図、(c)は(a)におけるγ‐γ線断面図。
図3図1(a)のラゲッジボードのA‐A線断面での部分斜視図であり、ラゲッジボードを下面側から見た部分斜視図。
図4】(a)は図1(a)のラゲッジボードのB‐B線断面での部分斜視図、(b)は図1(a)のラゲッジボードのB‐B線断面での部分断面図。
図5】(a)はコア層を構成するシート材の斜視図、(b)は同シート材の折り畳み途中の状態を示す斜視図、(c)は同シート材を折り畳んだ状態を示す斜視図。
図6】(a)~(f)はラゲッジボードを製造する方法について説明する図。
図7】(a)~(d)は連通孔を形成する工程について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態では、防音パネルとして、自動車の後部に設けられたラゲッジルームの底面を形成するラゲッジボード1について説明する。ラゲッジルームの周縁下方には支持部が設けられており、ラゲッジボード1は、支持部上に載置されて支持されている。
【0015】
図1(a)及び図1(b)に示すように、ラゲッジボード1は、左右対称で左右方向に長い略長方形板状に形成されており、車両後側の後板部2と車両前側の前板部3とがヒンジ部4を介して一体的に接続された形状とされている。ヒンジ部4は、ラゲッジボード1を構成する板材の板厚が薄くされることによって形成されており、ヒンジ部4を回動軸として後板部2を上方に持ち上げると、ラゲッジボード1の下側の空間に保管された工具等を出し入れすることができる。ここで、ラゲッジボード1の前後とは、自動車の進行方向の前後を言うものとし、ラゲッジボード1の左右とは、自動車の進行方向前方に向かって車幅方向の左右を言うものとし、ラゲッジボード1の上下とは、自動車の上下を言うものとする。また、図1(b)においてラゲッジボード1の上方に位置する面を上面1a、下方に位置する面を下面1bと言うものとする。本実施形態のラゲッジボード1は、上面1aを上側に向けた状態で支持部上に載置されて、その上側をラゲッジルームとして区画するものである。
【0016】
図1(b)に示すように、ラゲッジボード1の上面1aは平坦面として形成されている。また、ラゲッジボード1の下面1bはヒンジ部4以外の部分は平坦面として形成されている。一般的なラゲッジボードは、自動車内に形成された凹凸形状を吸収するために、その表面に凹凸形状が形成されている場合が多いが、ここでは説明の便宜上、ヒンジ部4以外は平坦面として形成されているものとする。なお、ラゲッジボード1の上面1a及び下面1bが平坦面でなくてもよい。
【0017】
図2(a)に示すように、ラゲッジボード1は、内部に複数のセルSが並設された略長方形板状の熱可塑性樹脂製のコア層20と、コア層20の上面に接合された上シート層30と、コア層20の下面に接合された下シート層40を備えている。上シート層30は、コア層20におけるラゲッジボード1の上面1a側でコア層20全体を覆うように接合されたシート層である。下シート層40は、コア層20におけるラゲッジボード1の下面1b側でコア層20全体を覆うように接合されたシート層である。上シート層30及び下シート層40は、図示しない熱可塑性樹脂製の接着層を介してコア層20に接合されている。
【0018】
図2(b)及び図2(c)に示すように、コア層20は、所定形状に成形された1枚の熱可塑性樹脂製のシート材を折り畳んで形成されている。そして、コア層20は、上壁部21と、下壁部22と、上壁部21及び下壁部22の間に立設されてセルSを六角柱形状に区画する側壁部23とで構成されている。以下で説明するように、コア層の上壁部21及び下壁部22は、1層構造と2層構造とが混在した構造とされているが、図2(a)、図3図4(a)及び図4(b)では、コア層20の上壁部21及び下壁部22を1層構造で示している。
【0019】
図2(b)及び図2(c)に示すように、コア層20の内部に区画形成されるセルSには、構成の異なる第1セルS1及び第2セルS2が存在する。図2(b)に示すように、第1セルS1においては、側壁部23の上部に2層構造の上壁部21が設けられている。この2層構造の上壁部21の各層は互いに接合されている。また、2層構造の上壁部21には、コア層20成形時の熱可塑性樹脂の熱収縮により、図示しない開口部が形成されている。第1セルS1においては、側壁部23の下部に1層構造の下壁部22が設けられている。したがって、第1セルS1では、その上端部が2層構造の上壁部21と上シート層30からなる閉塞壁によって閉塞され、その下端部が1層構造の下壁部22と下シート層40からなる閉塞壁によって閉塞されている。
【0020】
一方、図2(c)に示すように、第2セルS2においては、側壁部23の上部に1層構造の上壁部21が設けられている。また、第2セルS2においては、側壁部23の下部に2層構造の下壁部22が設けられている。この2層構造の下壁部22の各層は互いに接合されている。2層構造の下壁部22には、コア層20成形時の熱可塑性樹脂の熱収縮により、図示しない開口部が形成されている。したがって、第2セルS2では、その上端部が1層構造の上壁部21と上シート層30からなる閉塞壁によって閉塞され、その下端部が1層構造の下壁部22と下シート層40からなる閉塞壁によって閉塞されている。
【0021】
また、図2(b)及び図2(c)に示すように、隣接する第1セルS1同士の間、及び隣接する第2セルS2同士の間は、それぞれ2層構造の側壁部23によって区画されている。この2層構造の側壁部23は、コア層20の厚み方向中央部に互いに熱溶着されていない部分を有する。したがって、コア層20の各セルSの内部空間は、2層構造の側壁部23の間を介して他のセルSの内部空間に連通している。なお、図2(b)及び図2(c)では、図示されている複数のセルSのうち、最も左側のセルSに代表して符号を付しているが、他のセルSについても同様である。
【0022】
図2(a)に示すように、第1セルS1はX方向に沿って列を成すように並設されている。同様に、第2セルS2はX方向に沿って列を成すように並設されている。第1セルS1の列及び第2セルS2の列は、X方向に直交するY方向において交互に配列されている。そして、これら第1セルS1及び第2セルS2により、コア層20は、全体としてハニカム構造をなしている。
【0023】
コア層20を構成する熱可塑性樹脂は、従来周知の熱可塑性樹脂であればよく、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体樹脂、アクリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。本実施形態のコア層20はポリプロピレン樹脂製とされている。
【0024】
ラゲッジボード1の上面1a側の上シート層30は、ラゲッジボード1の上面1aに意匠性を付与するためのシート層であり、その材質としては、従来周知の合成樹脂、合成皮革、合成繊維、金属、天然皮革、天然繊維等が挙げられる。また、その形態としては、不織布、織物、編物や、合成樹脂シート(例えば、合成樹脂を延伸してなる平滑な延伸シート)、金属シート等が挙げられる。さらに、意匠性を付与する観点から、模様や文字がプリントされていたり、異なる色の繊維で構成されていたりしてもよい。本実施形態の上シート層30は、ポリプロピレン樹脂製の不織布シートとされており、ポリプロピレン樹脂と相溶性のある樹脂からなる図示しない熱可塑性樹脂製の接着層を介してコア層20に接合されている。
【0025】
また、ラゲッジボード1の下面1b側の下シート層40の材質としては、上シート層30と同様、従来周知の合成樹脂、合成皮革、合成繊維、金属、天然皮革、天然繊維等が挙げられる。その形態についても、上シート層30と同様、不織布、織物、編物や、合成樹脂シート(例えば、合成樹脂を延伸してなる平滑な延伸シート)、金属シート等が挙げられる。本実施形態の下シート層40は、ポリプロピレン樹脂製の不織布シートとされており、ポリプロピレン樹脂と相溶性のある樹脂からなる図示しない熱可塑性樹脂製の接着層を介してコア層20に接合されている。
【0026】
図1(b)、図2(a)及び図3に示すように、ラゲッジボード1の下面1b側には、コア層20と下シート層40の間に長方形薄板状の鋼板10が設けられている。鋼板10は、ラゲッジボード1の下面1b側の一部に設けられている。鋼板10は、その両面に設けられた図示しない熱可塑性樹脂製の接着層を介してコア層20及び下シート層40に接合されている。本実施形態の接着層は、ポリプロピレン樹脂と相溶性のある樹脂で構成されている。
【0027】
図1(a)に示すように、鋼板10は、長板状に形成されて、ラゲッジボード1の後板部2及び前板部3にそれぞれ2枚ずつ接合されている。後板部2では、後板部2の前後方向のほぼ中間部で左右方向に延びる1枚の鋼板10aと、後板部2の前部で左右方向に延びる1枚の鋼板10bが接合されている。鋼板10aの長手方向の長さは、後板部2の左右方向の長さより僅かに短く、後板部2の左右両端部の各近傍から設けられている。具体的には、下シート層40の平坦部分であって、後に説明する下シート層40側のR形状の角部42の各近傍から設けられている。鋼板10aの左右方向の接合端縁の位置は、下シート層40の平坦部分とR形状の角部42との境界線から、10mm以内の位置であることが好ましく、5mm以内の位置であることがより好ましく、境界線の位置に鋼板10の接合端縁が位置していることがさらに好ましい。また、鋼板10aの幅は、後板部2の前後方向の長さの約1/3程度である。
【0028】
前板部3では、後板部2の前部から後部近傍に至る位置で左右方向に延びる1枚の鋼板10cと、後板部2の後部で左右方向に延びる1枚の鋼板10dが接合されている。鋼板10cの長手方向の長さは、前板部3の左右方向の長さより僅かに短く、前板部3の左右両端部の各近傍から設けられている。鋼板10cの左右方向の接合端縁の位置は、後板部2の鋼板10aの左右方向の接合端縁の位置と同様である。鋼板10cの幅は、前板部3の前後方向の長さより少し短く、前端部の近傍から設けられている。
【0029】
また、後板部2の前部に接合された鋼板10b、前板部3の後部に接合された鋼板10dは、それぞれヒンジ部4周辺の曲げ剛性を向上させるために設けられている。そのため、図1(a)及び図1(b)に示すように、ヒンジ部4の近傍でヒンジ部4に沿うように設けられている。
【0030】
鋼板10は、例えばアルミニウム合金、鉄合金、銅合金などの金属製の薄板であり、その厚みは0.05mm~0.5mm程度であることが好ましい。本実施形態では、後板部2に接合された鋼板10a、10b及び前板部3に接合された鋼板10c、10dは、いずれも同一の材質、同一の厚みとされており、約0.4mmのアルミニウム合金製とされている。
【0031】
鋼板10が接合された部分では、鋼板10の厚み分、コア層20が僅かに押し潰されている。鋼板10の厚みは、コア層20の厚みに比べて僅かであるが、コア層20が鋼板10の厚み分押し潰されていることにより、ラゲッジボード1の下面1b側では、鋼板10が接合されている部分の鋼板10の表面(下面)と、鋼板10が接合されていない部分のコア層20の表面(下面)とは面一となり、ラゲッジボード1の下面1b全体が平坦面として形成されている。
【0032】
図3に示すように、ラゲッジボード1の下面1bには、複数の連通孔15が貫設されている。連通孔15は、ラゲッジボード1の下面1b側で各セルSを閉塞する閉塞壁(コア層20の下壁部22及び下シート層40)であって、鋼板10が接合されていない閉塞壁に貫設されている。つまり、鋼板10が接合されていない部分の第1セルS1においては、1層構造の下壁部22及び下シート層40からなる閉塞壁を貫通するように形成されて、第1セルS1の内外を連通する。鋼板10が接合されていない部分の第2セルS2においては、2層構造の下壁部22及び下シート層40からなる閉塞壁を貫通するように形成されて、第2セルS2の内外を連通する。
【0033】
図3に示すように、連通孔15は、上面視略円形状に形成され、各セルSのほぼ中心となる位置に1箇所ずつ形成されている。連通孔15の形成される間隔は、隣り合うセルSの中心同士の間隔と略同一に設定されている。図3に示すラゲッジボード1は、図2(a)に示すラゲッジボード1を上下左右反転させた状態であり、ラゲッジボード1を下面1b側から見た部分斜視図である。
【0034】
図2(b)及び図2(c)に示すように、各連通孔15の開口縁15aは、ラゲッジボード1の下面1bに対して窪むような形状をなしている。その結果として、連通孔15の開口縁15aは、下壁部22の内面よりも上側の空間であるセルSの内部空間に位置している。各連通孔15の開口径は、セルSを上面視した場合の六角形の一辺の長さ以下に設定されている。具体的には、X方向に隣り合うセルSの中心同士の間隔の数分の1程度(例えば1~2mm程度)に設定されている。
【0035】
図4(a)に示すように、ラゲッジボード1のすべての端部では、後に説明する成形工程においてコア層20が熱圧縮されてなる圧縮部分20aが形成されている。また、ラゲッジボード1のすべての端部では、上面1a側の上シート層30は、コア層20の圧縮部分20aに向かって下方に曲げられている。同様に、下面1b側の下シート層40は、ラゲッジボード1のすべての端部で、コア層20の圧縮部分20aに向かって上方に曲げられている。そして、上シート層30の端縁31と下シート層40の端縁41は、コア層20の圧縮部分20aを間に挟んで突き合わされた状態とされている。
【0036】
図4(b)に示すように、上シート層30が下方に曲げられた部分は、ラゲッジボード1における上側の端面33を形成し、下シート層40が上方に曲げられた部分は、ラゲッジボード1における下側の端面43を形成している。そのため、コア層20の端縁では、上シート層30の端面33と下シート層40の端面43とでコア層20が封止されており、端面33、43、及びコア層20の圧縮部分20aにより、ラゲッジボード1の端面1cが形成されている。
【0037】
図4(b)に示すように、ラゲッジボード1の上面1a側の上シート層30が曲げられた部分である角部32はR形状とされており、その曲率は1~5程度である。上シート層30の端面33は、R形状の角部32より端縁31側の部分であり、ラゲッジボード1の上面1aに対して急な傾斜角度の斜面として形成されている。上シート層30の上面1aに対する端面33の傾斜角度θ1は、70゜以上であることが好ましく、80゜以上であることがより好ましく、85゜以上であることがさらに好ましい。
【0038】
また、ラゲッジボード1の下面1b側の下シート層40が曲げられた部分である角部42はR形状とされており、その曲率は1~5程度である。下シート層40の端面43は、R形状の角部42より端縁41側の部分であり、ラゲッジボード1の下面1bに対して急な傾斜角度の斜面として形成されている。下シート層40の下面1bに対する端面43の傾斜角度θ2は、70゜以上であることが好ましく、80゜以上であることがより好ましく、85゜以上であることがさらに好ましい。
【0039】
このように、本実施形態では、ラゲッジボード1の下面1b側の端面43が急斜面として形成されているため、ラゲッジルームの周縁下方に設けられた支持部上に安定して支持される。また、ラゲッジボード1の下面1bの下シート層40が不織布シートで形成され、下面1b側を上側に向ける使用態様も可能なリバーシブルラゲッジボードとすることができる。その際、上面1a側の端面33が急斜面として形成されているため、支持部上に安定して支持される。
【0040】
本実施形態のラゲッジボード1の作用について説明する。
ラゲッジボード1は、後板部2と前板部3がヒンジ部4を介して一体的に接続された形状をなしている。ラゲッジボード1をラゲッジルームの周縁下方に設けられた支持部上に載置すると、ラゲッジボード1がラゲッジルームの底部を構成し、ラゲッジボード1の上側が荷物の収容空間を構成する。また、ラゲッジボード1の後板部2を、ヒンジ部4を回動軸として上方に回動させれば、ラゲッジボード1の下側の空間に保管された工具等を出し入れすることができる。
【0041】
ラゲッジボード1の下面1b側の一部には、コア層20の下壁部22と下シート層40との間に鋼板10が接合されている。そのため、車両走行時に発生するタイヤと路面との摩擦音や、車両周辺の気流が乱されることによって発生する車両下部の風切り音等が鋼板10で反射される。これにより、ラゲッジボード1を介したラゲッジルーム側への透過音が小さくなる。
【0042】
また、ラゲッジボード1の下面1b側の一部であって、鋼板10が接合されていない部分には、セルSを閉塞する閉塞壁(下シート層40及びコア層20の下壁部22)にセルSの内外を連通する連通孔15が貫設されている。連通孔15は、各セルSに1箇所ずつ形成され、連通孔15の開口径は、セルSの中心同士の間隔の数分の1程度(例えば1~2mm程度)に設定されている。そのため、連通孔15が形成された部分(鋼板10が接合されていない部分)では、ラゲッジボード1のコア層20に区画された各セルSがヘルムホルツ共鳴器として機能する。これにより、車両走行時に発生する車両下部での各種騒音が吸音され、ラゲッジボード1を介したラゲッジルーム側への透過音が小さくなる。
【0043】
本実施形態のラゲッジボード1は、コア層20の上面に上シート層30が接合され、下面に下シート層40が接合された中空構造体であり、コア層20は、複数のセルSが側壁部23によって区画されて、ラゲッジボード1の厚み方向と直交する方向にセルSが並設されている。ラゲッジボード1の下面1b側に接合された鋼板10は、ラゲッジボード1の後板部2の鋼板10a、10b及び前板部3の鋼板10c、10dからなり、それぞれラゲッジボード1の左右方向の端部近傍から設けられている。そのため、鋼板10によりラゲッジボード1が補強され、ラゲッジボード1の厚み方向に曲げる力が作用しても反りや折れ等の発生が効果的に抑制される。
【0044】
次に、ラゲッジボード1を製造する方法を、図5図7に従って、その作用とともに説明する。ラゲッジボード1を製造する方法は、コア層20を形成する工程、コア層20、鋼板10、上シート層30、及び下シート層40を加熱する加熱工程、コア層20、鋼板10、上シート層30、及び下シート層40を接合する接合工程、コア層20、鋼板10、上シート層30、及び下シート層40を成形して中間体60を得る成形工程、中間体60の端面の形状を整えて中空板材70を得る後加工工程、中空板材70の一方の面に連通孔15を形成してラゲッジボード1を得る連通孔形成工程に分けることができる。本実施形態では、鋼板10、上シート層30、及び下シート層40を接合する接合工程と、コア層20、鋼板10、上シート層30、及び下シート層40を成形して中間体60を得る成形工程とを同時に行っている。
【0045】
先ず、コア層20を形成する工程について説明する。本実施形態のコア層20は、第1シート材100を折り畳むことによって形成される。
図5(a)に示すように、第1シート材100は、1枚の熱可塑性樹脂製のシートを所定の形状に成形することにより形成されている。第1シート材100には、帯状をなす平面領域110及び膨出領域120が、第1シート材100の長手方向(X方向)に交互に配置されている。膨出領域120には、上面と一対の側面とからなる断面下向溝状をなす第1膨出部121が膨出領域120の延びる方向(Y方向)の全体にわたって形成されている。なお、第1膨出部121の上面と側面とのなす角度は90度であることが好ましく、その結果として、第1膨出部121の断面形状は下向コ字状となる。また、第1膨出部121の幅(上面の短手方向の長さ)は平面領域110の幅と等しく、かつ第1膨出部121の膨出高さ(側面の短手方向の長さ)の2倍の長さとなるように設定されている。
【0046】
また、膨出領域120には、その断面形状が正六角形を最も長い対角線で二分して得られる台形状をなす複数の第2膨出部122が、第1膨出部121に直交するように形成されている。第2膨出部122の膨出高さは第1膨出部121の膨出高さと等しくなるように設定されている。また、隣り合う第2膨出部122間の間隔は、第2膨出部122の上面の幅と等しくなっている。
【0047】
なお、こうした第1膨出部121及び第2膨出部122は、シートの塑性を利用してシートを部分的に上方に膨出させることにより形成されている。また、第1シート材100は、真空成形法や収縮成形法等の周知の成形方法によって1枚のシートから成形することができる。
【0048】
図5(a)及び図5(b)に示すように、上述のように構成された第1シート材100を、境界線P、Qに沿って折り畳むことでコア層20が形成される。具体的には、第1シート材100を、平面領域110と膨出領域120との境界線Pにて谷折りするとともに、第1膨出部121の上面と側面との境界線Qにて山折りしてX方向に収縮する。そして、図5(b)及び図5(c)に示すように、第1膨出部121の上面と側面とが折り重なるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なることによって、一つの膨出領域120に対して一つのY方向に延びる角柱状の区画体130が形成される。こうした区画体130がX方向に連続して形成されていくことにより中空板状のコア層20が形成される。
【0049】
上記のように第1シート材100を収縮するとき、第1膨出部121の上面と側面とによってコア層20の上壁部21が形成されるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とによってコア層20の下壁部22が形成される。なお、図5(c)に示すように、上壁部21における第1膨出部121の上面と側面とが折り重なって2層構造を形成する部分、及び下壁部22における第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なって2層構造を形成する部分がそれぞれ重ね合わせ部131となる。
【0050】
また、第2膨出部122が折り畳まれて区画形成される六角柱形状の領域が第2セルS2となるとともに、隣り合う一対の区画体130間に区画形成される六角柱形状の領域が第1セルS1となる。本実施形態では、第2膨出部122の上面及び側面が第2セルS2の側壁部23を構成するとともに、第2膨出部122の側面と、膨出領域120における第2膨出部122間に位置する平面部分とが第1セルS1の側壁部23を構成する。そして、第2膨出部122の上面同士の当接部位、及び膨出領域120における上記平面部分同士の当接部位が2層構造をなす側壁部23となる。なお、こうした折り畳み工程を実施するに際して、第1シート材100を加熱処理して軟化させた状態としておくことが好ましい。
【0051】
次に、コア層20、鋼板10、上シート層30、及び下シート層40を加熱する加熱工程について説明する。
図6(a)に示すように、まず、ラゲッジボード1に使用するコア層20として、先に製造したコア層20を、ラゲッジボード1より大きな形状に切断したものを準備する。例えば、ラゲッジボード1の大きさより、長手方向及び短手方向にそれぞれ50mm程度大きな長方形状に切断したものを準備する。なお、図6では、コア層20の中空構造を省略して示している。また、図6では、図1(a)のB‐B線断面に対応する部分を模式図として示しており、コア層20、鋼板10(10a)、上シート層30、下シート層40等の厚み、大きさ、形状等は、実際のものとは異なっている。
【0052】
鋼板10aは、所定の大きさに切断したものを準備する。鋼板10aの両面には、熱可塑性樹脂(本実施形態では、ポリプロピレン樹脂)製の接着層がコーティングされている。図6では、ラゲッジボード1に使用する鋼板10として、ラゲッジボード1の後板部2に使用する1枚の鋼板10aのみを示している。また、以下の説明でも、ラゲッジボード1の後板部2に鋼板10aを接合する場合についてのみ説明する。実際には、後板部2の鋼板10b、前板部3の鋼板10c、10dについても全ての工程を後板部2の鋼板10aと同時に行う。
【0053】
ラゲッジボード1に使用する上シート層30及び下シート層40は、ラゲッジボード1より大きな形状、具体的にはコア層20と同程度の大きさに切断する。上シート層30の一方の面には、ポリプロピレン樹脂製の図示しない接着層が積層されている。また、下シート層40の一方の面には、ポリプロピレン樹脂製の図示しない接着層が積層されている。
【0054】
図6(b)に示すように、コア層20、鋼板10a、上シート層30、及び下シート層40をそれぞれ加熱する。コア層20を加熱する場合には、所定温度に設定された加熱炉71内にコア層20を入れて、所定時間保持する。また、鋼板10aを加熱する場合には、所定温度に設定された加熱炉72内に鋼板10aを入れて、所定時間保持する。上シート層30及び下シート層40も同様に、所定温度に設定された加熱炉73内に上シート層30及び下シート層40を入れて、所定時間保持する。加熱炉71、72、73内の温度は、コア層20、上シート層30及び下シート層40を構成する熱可塑性樹脂(ポリプロピレン樹脂)が溶融する程度に設定されている。また、鋼板10aを加熱する加熱炉72内の温度は、コア層を加熱する加熱炉71内の温度、上シート層30及び下シート層40を加熱する加熱炉73内の温度より高く設定されている。
【0055】
本実施形態では、加熱工程において、加熱炉71内に保持されたコア層20の表面温度が、部位によって異なるように調整している。これは、コア層20の表面に、部分的に遮蔽材を設置することによって行う。遮蔽材には孔が形成されており、孔の大きさや数を調整することによって、遮蔽材を設置した部分の表面温度が、加熱炉71内の温度より低くなるよう調整することができる。なお、表面温度の調整は、孔が形成された遮蔽材に限らず、孔が形成されていない遮蔽材を設置することによって行ってもよい。
【0056】
次に、遮蔽材を設置することによりコア層20の表面温度を調整する方法について説明する。コア層20は、ラゲッジボード1より大きな形状に切断してあることから、最初に切断されたコア層20の周辺端部を除いた部分が、各工程を経て製造されるラゲッジボード1に対応する。切断されたコア層20において、各工程を経て製造されるラゲッジボード1に対応する部分には、遮蔽材を設置する一方で、その他の部分には、遮蔽材を設置しない。こうすることにより、加熱炉71内での加熱温度に対して、ラゲッジボード1に対応する部分の表面温度を相対的に低く調整し、その他の部分の表面温度を加熱炉71内の加熱温度と同程度に調整することができる。ここで言うその他の部分とは、コア層20の周辺端部であり、後に説明する中間体60の圧縮部分61に対応する部分である。なお、ラゲッジボード1のヒンジ部4に対応する部分でも、その表面温度を相対的に高く調整し、後に説明する成形工程では、熱圧縮された形状のヒンジ部4を成形するが、ここでは、ヒンジ部4の成形についての具体的な説明は省略する。
【0057】
次に、コア層20、鋼板10a、上シート層30、及び下シート層40を接合する接合工程、及びコア層20、鋼板10a、上シート層30、及び下シート層40を成形して中間体60を得る成形工程について説明する。
【0058】
図6(c)に示すように、接合工程及び成形工程に使用する金型は、上型51及び下型52を備えている。本実施形態の上型51及び下型52は、全体が加熱されることなく常温に保持されている。
【0059】
下型52に形成された凹部52aは、上面視略長方形状をなし、その長手方向の長さは、ラゲッジボード1の長手方向(左右方向)の長さとほぼ同一とされ、その短手方向の長さは、ラゲッジボード1の短手方向(前後方向)の長さとほぼ同一とされている。また、凹部52aの深さは、ラゲッジボード1の厚みの約半分とされている。凹部52aは、後に説明する成形工程において、ラゲッジボード1を成形するための部分である。なお、コア層20、鋼板10a、上シート層30、及び下シート層40の熱収縮を考慮して、凹部52aの大きさを設定することが好ましい。以下、同様である。
【0060】
上型51に形成された凹部51a、51bは、上面視略長方形状をなしている。凹部51aの深さは、ラゲッジボード1の厚みの約半分とされている。また、凹部51bの深さは、後に説明する中間体60の圧縮部分61の厚みとほぼ同一とされている。凹部52aは、後に説明する成形工程において、ラゲッジボード1を成形するための部分であり、凹部51bは、中間体60の圧縮部分61を成形するための部分である。つまり、上型51及び下型52を型締めしたときに、凹部51a及び凹部52aでラゲッジボード1に対応する大きさの空間を形成し、凹部51bは凹部51a及び凹部52aの外縁より外方に位置する。
【0061】
図6(c)に示すように、まず、加熱されたコア層20、鋼板10a、上シート層30、及び下シート層40を、下から、下シート層40、鋼板10a、コア層20、及び上シート層30の順に、下型52の凹部52aの上に載置する。コア層20、上シート層30、及び下シート層40は、ラゲッジボード1より大きな長方形状に切断されていることから、凹部52aの上に載置した状態では、長手方向両端部及び短手方向両端部が凹部52aから外方に突出した状態となる。
【0062】
また、先の加熱工程では、切断されたコア層20の表面温度を、ラゲッジボード1に対応する部分とその他の部分とで異ならせていることから、コア層20、鋼板10a、上シート層30、及び下シート層40を載置する際には、コア層20の表面温度に応じて、金型51、52に対して位置決めする。具体的には、ラゲッジボード1に対応する部分として表面温度を調整した部分を、凹部51a及び凹部52aの位置に合わせ、その他の部分、つまり、中間体60の圧縮部分61に対応する部分として加熱炉71内の加熱温度と同程度とした部分を凹部51bに合わせる。このように、コア層20、鋼板10a、上シート層30、及び下シート層40の位置決めは、上型51及び下型52を型締めしたときに形成される上型51と下型52の間の空間の高さに応じてなされ、空間の高さが高い凹部51a及び凹部52aの部分には、先の加熱工程で相対的に低い表面温度に調整された部分を配置し、空間の高さが低い凹部51bの部分には、先の加熱工程で相対的に高い表面温度とされた部分を配置する。裏返せば、加熱工程では、型締め時の上型51と下型52の間の空間の高さに応じて、コア層20の表面温度を調整することになる。
【0063】
コア層20、鋼板10a、上シート層30、及び下シート層40を下型52の上に載置した状態では、加熱された鋼板10aの両面にコーティングされた接着層の熱可塑性樹脂が一部熱溶融された状態となっている。また、上シート層30や下シート層40に積層された接着層の熱可塑性樹脂が一部熱溶融された状態となっている。そのため、コア層20、鋼板10a、上シート層30、及び下シート層40は、下型52の上で仮接合された状態で位置決めされる。
【0064】
続いて、図6(d)に示すように、上型51を下型52に向けて下降させて型締めして、コア層20、鋼板10a、上シート層30、及び下シート層40をプレスすることにより接合工程と成形工程を同時に行う。上型51及び下型52には図示しない吸引孔が複数形成されており、型締め時にはコア層20、鋼板10a、上シート層30、及び下シート層40を吸引することで、金型51、52内部に位置決め状態で密着させることができる。プレス時の圧力、プレス時間は、適宜設定すればよい。
【0065】
本実施形態の加熱工程では、鋼板10aを加熱する加熱炉71内の温度が、コア層20を加熱する加熱炉71内の温度及び上シート層30と下シート層40を加熱する加熱炉73内の温度より高く設定されている。そのため、型締めしたときには、鋼板10aの両面の接着層が熱溶融するとともに、鋼板10aの熱がコア層20、上シート層30、及び下シート層40に伝搬して、熱可塑性樹脂の一部が熱溶融している。その結果、金型51、52の型締めによって、コア層20、鋼板10a、上シート層30、及び下シート層40が接合され、鋼板10aが接合された部分のコア層20は鋼板10aの厚み分押し潰されている。
【0066】
また、このとき、コア層20の第1セルS1の2層構造の上壁部21、及び第2セルS2の2層構造の下壁部22には、開口部が形成され、コア層20の厚み方向中央部は、側壁部23が互いに熱溶着されていない部分を有している。そのため、コア層20と、鋼板10a、上シート層30、及び下シート層40との間の空気が、コア層20の上壁部21、下壁部22の開口部や、コア層20内の隙間から抜けやすくなる。これにより、空気溜まりの発生が抑制され、コア層20と、鋼板10a及びシート層30、40との接合強度が向上する。
【0067】
図6(d)に示すように、コア層20、鋼板10a、上シート層30、及び下シート層40は、上型51及び下型52の内面形状、すなわち、凹部51a、51b、52aの形状に成形されて中間体60となる。
【0068】
図6(c)に示すように、上型51の凹部51bは、凹部51aより浅く、型締めしたときに対応する位置の下型52には凹部は形成されていない。そのため、この部分は、型締め時の上型51と下型52の間の空間の高さが低い部分となる。この部分では、型締めによって、コア層20を構成する熱可塑性樹脂が溶融してコア層20が熱圧縮され、中間体60の圧縮部分61が形成される。圧縮部分61では、上壁部21、下壁部22、及び側壁部23を構成する熱可塑性樹脂が溶融して一体化した状態となっている。
【0069】
上型51の凹部51aと下型52の凹部52aでは、型締め時の上型51と下型52の間の空間の高さが高い部分となり、加熱工程において、表面温度が相対的に低くなるように調整された部分が配置されている。この部分では、型締めによって、コア層20を構成する熱可塑性樹脂が溶融せず、コア層20が上下方向に変形することなく、その高さ寸法を維持した形状となる。
【0070】
型締めによって、コア層20、鋼板10a、上シート層30、及び下シート層40が下型52の凹部52a内に押し込まれると、上側の上シート層30が下側の下シート層40側に曲げられて、その曲げられた角部32がR形状に形成される。また、下側の下シート層40が上側の上シート層30側に曲げられて、その曲げられた角部42がR形状に形成される。このとき、コア層20、上シート層30及び下シート層40は、ラゲッジボード1に対応する部分が低い表面温度に調整されており、中間体60の圧縮部分61に対応する部分が高い表面温度に調整されているため、上シート層30、下シート層40が曲げられるとき、ラゲッジボード1に対応する部分と、中間体60の圧縮部分61に対応する部分との温度差が大きくなる。そのため、熱可塑性樹脂の溶融状態に差ができる。上シート層30に形成される角部32、下シート層40に形成される角部42が、小さなR形状で曲げられることになる。
【0071】
図6(e)に示すように、下型52から上型51を離間させて中間体60を冷却した後、中間体60を下型52から取り出す。以上の説明では、接合する鋼板10として鋼板10aのみについて説明したが、鋼板10b、10c、10dについても全ての工程を後板部2の鋼板10aと同時に行っている。そのため、接合工程、成形工程を経て得られた中間体60は、コア層20の上面に上シート層30が接合され、コア層20の下面に鋼板10a、10b、10c、10d及び下シート層40が接合され、ラゲッジボード1に相当する大きさ、形状を有する部分の端部全周に亘って圧縮部分61が形成された形状となる。
【0072】
中間体60では、上シート層30にはR形状の角部32が形成されるとともに、下シート層40にはR形状の角部42が形成されて、コア層20を側方から覆う端面33、43が形成されている。圧縮部分61では、端面33の下端縁と端面43の下端縁から水平方向に延びた上シート層30及び下シート層40の間に、コア層20の圧縮部分20aが介在している。
【0073】
次に、中間体60の端面の形状を整えて中空板材70を得る後加工工程について説明する。
図6(f)に示すように、中間体60に形成された圧縮部分61を、図示しない切断冶具で切断する。図2(a)及び図2(b)に示すように、切断された部分では、上シート層30の端縁31と下シート層40の端縁41との間にコア層20の圧縮部分20aが介在しており、上シート層30の端面33、下シート層40の端面43、及びコア層20の圧縮部分20aによって、中空板材70の端面(ラゲッジボード1の端面1c)が形成されている。その後、切断された部分を研磨、塗装等して、端面1cの形状を整える。なお、圧縮部分61を切断する切断冶具としてトムソン刃やレーザー等を使用し、研磨、塗装等を行わなくてもよい。
【0074】
次に、中空板材70の下面(ラゲッジボード1の下面1b)に連通孔15を形成する連通孔形成工程について説明する。
図7(a)に示すように、得られた中空板材70を、鋼板10が接合された下面側を上方に向けた状態で台上に載置する。図7(a)では、図1(a)のA‐A線断面図に対応する部分を、下面1bを上にした状態で模式図として示している。コア層20、鋼板10a、10b、10c、10d、上シート層30、下シート層40等の厚み、大きさ、形状等は、実際のものとは異なっている。また、ヒンジ部4についての図示及び具体的説明は省略する。
【0075】
中空板材70が載置された台の上方には貫通冶具Tが配置されている。貫通冶具Tは先鋭針状に形成されており、台上に載置された中空板材70のセルSの並設方向に複数配列されている。各貫通冶具Tの間隔は、セルSの中心同士の間隔と略同一に設定されている。複数の貫通冶具Tは、例えば図7(a)に示すように、台上に載置された中空板材70の前後方向(ラゲッジボード1の前後方向)に列をなして、中空板材70の鋼板10が接合されていない部分に対応するように設けられている。そして、複数の貫通冶具Tは同時に下降移動するとともに、中空板材70の上方で中空板材70の左右方向に順次移動可能に構成されている。
【0076】
図7(b)に示すように、貫通冶具Tを中空板材70に向かって下降移動させ、下シート層40及びコア層20の下壁部22を貫通させる。このとき、貫通冶具Tは先鋭針状に形成されているため、セルSを閉塞する閉塞壁(下シート層40及び下壁部22)に貫通冶具Tの先端が突き刺さる。その後、さらに下降移動すると、各貫通冶具Tの先端部が閉塞壁を押し広げながら貫通する。また、各貫通冶具Tの周面との摩擦により、貫通冶具Tが下降移動するのにしたがって、閉塞壁がセルSの内方へと窪むように変形する。
【0077】
図7(c)及び図7(d)に示すように、各貫通冶具Tが閉塞壁を貫通した後、各貫通冶具Tを上昇移動させて中空板材70から抜き取る。複数の貫通冶具Tは、中空板材70の鋼板10が接合されていない部分に対応する位置に設けられて、同時に下降移動するため、鋼板10が接合されていない閉塞壁(下シート層40及び下壁部22)には、列状に複数の連通孔15が形成される。抜き取られた貫通冶具Tは、中空板材70の上方で中空板材70の左右方向に順次移動しながら、下降移動と上昇移動を繰り返すことにより、中空板材70の下面側には順次連通孔15が貫設されていく。これにより、下面1b側における鋼板10が接合されていない閉塞壁に、複数の連通孔15が形成されたラゲッジボード1が得られる。
【0078】
図2図7では、形成された複数の連通孔15が下シート層40に略円形状に開口しているように示しているが、実際には、連通孔15は下シート層40を構成する不織布シートを介して明確に視認できない状態となっている。これは、本実施形態の下シート層40がポリプロピレン樹脂製の不織布シートで形成されていることによる。不織布シートは様々な長さの繊維が織られることなく絡み合った状態になっているため、連通孔15が形成された後には、不織布シートを構成するポリプロピレン樹脂製の繊維が連通孔15の開口を覆うように移動しやすい。また、連通孔15の開口径は、X方向に隣り合うセルSの中心同士の間隔の数分の1程度(例えば1~2mm程度)に設定されている。そのため、ラゲッジボード1の下面1bに複数の連通孔15が形成されていても、連通孔15の開口部を明確に視認できず、ラゲッジボード1の下面1bの意匠性が連通孔15の形成によって低下することが抑制される。
【0079】
一方、不織布シートは、繊維が絡み合った状態であるため、通気性に優れている。そのため、繊維が連通孔15の開口部に移動したとしても、連通孔15を介しての吸音効果が低下することは抑制される。
【0080】
本実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態のラゲッジボード1の下面1b側の一部には、コア層20の下壁部22と下シート層40の間に鋼板10が接合されている。そのため、ラゲッジボード1が鋼板10によって補強されている。また、車両走行時に発生するタイヤと路面との摩擦音や、車両周辺の気流が乱されることによって発生する車両下部の風切り音等が鋼板10で反射される。そのため、ラゲッジボード1を介したラゲッジルーム側への透過音が小さくなって遮音される。曲げ剛性と遮音性に優れたラゲッジボード1が得られる。
【0081】
(2)本実施形態のラゲッジボード1の下面1b側の一部には、コア層20に並設されたセルSの内外を連通する連通孔15が複数貫設されている。連通孔15は、ラゲッジボード1の下面1bにおいて鋼板10が接合されていない部分の閉塞壁に形成されている。そのため、車両走行時に発生する騒音が、連通孔15が形成された部分で吸音される。吸音性に優れたラゲッジボード1が得られる。
【0082】
(3)本実施形態のラゲッジボード1の下面1bには、その一部に鋼板10が接合されており、鋼板10が接合されていない部分に複数の連通孔15が形成されている。そのため、防音性に優れるとともに曲げ剛性に優れたラゲッジボード1が得られる。
【0083】
(4)鋼板10は、ラゲッジボード1の後板部2では、ラゲッジボード1の左右方向のほぼ全長に亘って鋼板10a、10bが連続的に設けられ、前板部3では、ラゲッジボード1の左右方向のほぼ全長に亘って鋼板10c、10dが連続的に設けられている。そのため、ラゲッジボード1の剛性が向上し、ラゲッジボード1を効果的に補強することができる。ラゲッジボード1の上面1a上に重量物を置いたとしても、ラゲッジボード1の撓みが抑制される。
【0084】
(5)ラゲッジボード1の上面1aに接合された上シート層30はポリプロピレン樹脂製の不織布シートで構成されている。そのため、ラゲッジボード1の意匠性を向上させることができる。
【0085】
(6)ラゲッジボード1の下面1bに接合された下シート層40はポリプロピレン樹脂製の不織布シートで構成されている。そのため、複数の連通孔15が貫設されていても、外部から連通孔15が目立ちにくい。ラゲッジボード1の下面1bの意匠性が低下することを抑制することができる。また、連通孔15が目立ちにくくても通風性は確保されるため、吸音性能が低下することは抑制される。
【0086】
(7)鋼板10が接合されていることにより、ラゲッジボード1が補強され、反りが発生することが抑制される。そのため、ラゲッジボード1の外観形状の低下が抑制されるとともに、ラゲッジルームの周縁下方に設けられた支持部上でのラゲッジボード1のがたつきの発生が抑制される。
【0087】
(8)ラゲッジボード1の前板部3では、前後方向の全長に亘って鋼板10cが設けられている一方、後板部2では、前後方向のほぼ中間部に、前後方向の長さの約1/3程度の長さで鋼板10が設けられている。そのため、鋼板10をラゲッジボード1の全体に接合する場合に比べて、ラゲッジボード1を軽量化することができ、ひいては自動車の軽量化に寄与することができる。
【0088】
(9)鋼板10は、その厚みが0.05mm~数mm程度の薄板状とされている。そのため、鋼板10で補強していても、ラゲッジボード1全体の重さが重くなることが抑制される。
【0089】
(10)本実施形態のラゲッジボード1は、その端面1cが、上シート層30の端面33、コア層20の圧縮部分20a、及び下シート層40の端面43で形成され、コア層20は、上シート層30の端面33と下シート層40の端面43とで封止されている。そのため、コア層20内に並設されたセルS内にゴミや埃等が入ることが抑制される。
【0090】
(12)本実施形態のラゲッジボード1は、上シート層30の端面33の傾斜角度θ1及び下シート層40の端面43の傾斜角度θ2が、それぞれ70゜以上であり、端面33、43は急斜面として形成されている。そのため、ラゲッジルームの周縁下方に設けられた支持部を小型化しても、ラゲッジボード1は支持部に対して安定して支持されることができる。また、支持部とラゲッジボード1との接地面積が増えることによっても、ラゲッジボード1は安定して支持されることができる。さらに、ラゲッジボード1と支持部との間にゴミや埃等が溜まりにくい。
【0091】
(13)本実施形態のラゲッジボード1は、その端面1cは、上シート層30の端縁31と下シート層40の端縁41とが、コア層20の圧縮部分20aを挟んで突き合わされている。コア層20の圧縮部分20aは、コア層20を構成する熱可塑性樹脂が溶融して冷却固化することにより、上壁部21、下壁部22、及び側壁部23が一体化された塊状となっている。そのため、端面1cの剛性が向上し、ラゲッジボード1は支持部に対して安定して支持されることができる。
【0092】
(14)ラゲッジボード1を製造する際には、まず、コア層20、鋼板10、上シート層30、及び下シート層40を加熱工程であらかじめ加熱した後、下型52上に載置する。このとき、鋼板10の両面にコーティングされた熱可塑性樹脂製の接着層、上シート層30及び下シート層40に積層された熱可塑性樹脂製の接着層は、熱溶融された状態となっている。そのため、コア層20、鋼板10、上シート層30及び下シート層40がそれぞれ仮接合された状態となり、コア層20に対して、鋼板10、上シート層30及び下シート層40を精度よく位置決めすることができる。
【0093】
(15)加熱工程では、コア層20、鋼板10、上シート層30、及び下シート層40をそれぞれ別個の加熱炉71、72、73で加熱している。そのため、各部材の温度調整、温度管理がしやすい。また、各部材を均質な温度に加熱することができる。
【0094】
(16)本実施形態では、金型51、52でのプレス成形により、接合工程と成形工程とを同時に行っている。工程が簡略化され、作業性、コスト面において有利である。
(17)金型51、52には、吸引孔が複数形成されている。そのため、型締め時にはコア層20、鋼板10、上シート層30、及び下シート層40を、金型51、52内部に位置決め状態で密着させることができ、金型51、52の内部空間の形状に沿うように成形することができる。
【0095】
(18)本実施形態の加熱工程では、遮蔽材を設置することにより、コア層20の表面温度が部位によって異なるように調整している。そのため、その後に続く接合工程、成形工程において、金型51、52を加熱することなく、一度のプレス成形により、圧縮部分61が形成された中間体60を成形することができる。工程が簡略化され、作業性、コスト面において有利である。
【0096】
(19)加熱工程で遮蔽材を設置することにより、コア層20において、上型51の凹部51aに位置合わせする部分と、上型51の凹部51bに位置合わせする部分との温度差を大きくしている。そのため、コア層20が熱圧縮された部分(圧縮部分61)と熱収縮されない部分との境界を明瞭にすることができる。
【0097】
(20)加熱工程で遮蔽材を設置することにより、コア層20において、ラゲッジボード1に対応する部分と、その端面1cに対応する部分との温度差を大きくしている。そのため、上シート層30の角部32のR部分、下シート層40の角部42のR部分を小さくすることができる。また、上シート層30の端面33の傾斜角度θ1、下シート層40の端面43の傾斜角度θ2を大きく形成することができる。
【0098】
(21)本実施形態のラゲッジボード1は左右対称に形成されており、各シート層30、40は不織布シートで形成されている。そのため、上面1aを上方に向けて配置する使用形態と、下面1bを上方に向けて配置する使用形態を選択して使用することができる。リバーシブルラゲッジボードとして使用することができて便利である。
【0099】
上記実施形態は、次のように変更できる。なお、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて適用することができる。
・ 上記実施形態では、防音パネルとしてラゲッジボード1に適用する場合について説明したが防音パネルを適用する対象としてはこれに限定されない。例えば、各種車両の構成部材や建材等に適用することができる。
【0100】
・ ラゲッジボード1を上下反転させ、連通孔15が形成された下面1bを上側に向けて支持部上に載置してもよい。この場合であっても、鋼板10による遮音効果が得られるとともに、上方に開口した連通孔15により、ラゲッジボード1の上側の音を効果的に吸音することができる。
【0101】
・ 鋼板10の大きさは適宜変更することができる。本実施形態では、例えば、後板部2に接合された鋼板10aは、その長手方向の長さが、後板部2の左右方向の長さより少し短く、その短手方向の幅が、後板部2の前後方向の長さの約1/3程度である。これに限定されず、長手方向の長さが上記実施形態のものより短くてもよい。この場合、1枚の鋼板10が、後板部2の左右中間部に位置していてもよく、2枚の鋼板10が、後板部2の左右両端部にそれぞれ位置していてもよい。また、短手方向の幅が、後板部2の前後方向の長さより少し短い程度であってもよい。後板部2の鋼板10b、前板部3の鋼板10c、10dについても同様であり、その大きさは適宜変更することができる。鋼板10を接合することによる補強効果、遮音性、ラゲッジボード1の重量等を考慮して、鋼板10の大きさ、接合位置等を設定することができる。
【0102】
・ 鋼板10は、ラゲッジボード1の下面1bの下シート層40とコア層20の間に接合されているが、これに加えて、上シート層30とコア層20の間に接合してもよい。鋼板10をラゲッジボード1の両面に接合することにより、ラゲッジボード1の曲げ剛性をより向上させることができる。この場合、上シート層30側の鋼板10と、下シート層40側の鋼板10とで、その厚さ、大きさ、材質等を変えてもよい。
【0103】
・ 上記実施形態では、鋼板10が接合されていない閉塞壁には、各セルSの略中央部分に1箇所ずつセルSの内外を連通する連通孔15が貫設されているが、連通孔15の形成箇所はこれに限定されない。各セルSの略中央部分からずれた位置に形成されていてもよく、各セルSに複数箇所形成されていてもよい。この場合、例えば、複数の貫通冶具Tの間隔を、セルSの中心同士の間隔より小さく設定すればよい。貫通冶具Tをこのように設定すると、複数の連通孔15が形成されたセルSも存在するとともに、各セルSの少なくとも1箇所に連通孔15が形成されることになる。
【0104】
・ 連通孔15は、鋼板10が接合されていない閉塞壁を有するセルSのすべてに形成されていてもよく、鋼板10が接合されていない閉塞壁を有するセルSの一部に形成されていてもよい。
【0105】
・ 連通孔15は、上面視円形状でなくてもよい。上面視矩形状であってもよく、上面視楕円形状であってもよく、上面視不定形状であってもよい。
・ 連通孔15の大きさはすべて同一でなくてもよく、開口径の大きい連通孔15と開口径の小さい連通孔15が混在していてもよい。開口径の大きい連通孔15では、相対的に高音域の音を吸音することができ、開口径の小さい連通孔15では、相対的に低音域の音を吸音することができる。
【0106】
・ 連通孔15は、ラゲッジボード1の下面1bでなく、上面1aに貫設されていてもよい。また、下面1bと上面1aの両面に貫設されていてもよい。連通孔15が下面1bと上面1aの両面に貫設されている場合、上部の閉塞壁のみに連通孔15が貫設されたセルSと下部の閉塞壁のみに連通孔15が貫設されたセルSが混在していてもよい。また、ヘルムホルツ共鳴器として機能できる範囲において、一つのセルSの上部の閉塞壁と下部の閉塞壁の両方に連通孔15が貫設されていてもよい。
【0107】
・ 連通孔15は、鋼板10が接合されていない閉塞壁に貫設されているが、鋼板10が接合されている閉塞壁に貫設されていてもよい。つまり、鋼板10及び閉塞壁を貫設してセルSの内外が連通されていてもよい。これにより、ラゲッジボード1の吸音性をより向上させることができる。また、鋼板10が接合されている閉塞壁に連通孔15が貫設されていても、連通孔15の開口径が小さいことから、ラゲッジボード1の曲げ剛性が低下することは抑制される。
【0108】
・ 連通孔15を形成するための貫通冶具Tは、先鋭針状でなくてもよい。例えば、先鋭針状でないドリル、加熱棒等で構成されていてもよく、連通孔15をレーザーで形成するようにしてもよい。この場合、連通孔15が筒状に形成されており、連通孔15の開口縁15aが下壁部22の内面よりも上側の空間であるセルSの内部空間に位置していなくてもよい。
【0109】
・ 本実施形態のラゲッジボード1は、上シート層30及び下シート層40が1層構造のポリプロピレン樹脂製の不織布シートで形成されている。各シート層30、40の材質、層構造はこれに限定されない。各シート層30、40の材質としては、従来周知の合成樹脂、合成皮革、金属、天然皮革、天然繊維等から適宜選択することができ、また、その形態としては、不織布、織物、編物や、合成樹脂を延伸してなる平滑な延伸シート、金属シート等から適宜選択することができる。上シート層30と下シート層40が同じ材質、同じ形態であってもよく、少なくともいずれかが異なっていてもよい。また層構造も2層構造以上の複層構造であってもよく、上シート層30と下シート層40の層構造が異なっていてもよい。例えば、下シート層40が不織布シートの1層構造で構成されており、上シート層30が、ウレタン樹脂フォーム層からなる内層と熱可塑性樹脂製の延伸シートからなる外層(表層)との2層構造で構成されていてもよい。こうすることで、ラゲッジボード1の上面1aの意匠性や触感を向上させることができる。
【0110】
・ 本実施形態のラゲッジボード1は、上面1aが平坦面であり、下面1bがヒンジ部4以外の部分が平坦面である。これに限らず、上面1a、下面1bに凹凸が形成されていてもよい。こうすることで、自動車のラゲッジルームの上方、或いは下方に形成された凹凸形状を吸収することができる。また、孔を形成して、ラゲッジボード1を持ち上げる際の持ち手としてもよい。さらに、収納用の凹部や仕切り等を形成して、例えば屋外で使用できるテーブルの天板に適用してもよい。
【0111】
上面1a、下面1bに凹凸が形成されていると、部位によってセルSの容積に大小ができることになる。相対的に容積の大きいセルSに連通孔15が形成されていると、相対的に低音域の音を吸音することができる。また、相対的に容積の小さいセルSに連通孔15が形成されていると、相対的に高音域の音を吸音することができる。幅広い音域を吸音できるラゲッジボード1が得られる。
【0112】
・ 本実施形態のラゲッジボード1は、全周に亘って上シート層30が下方に曲げられ、下シート層40が上方に曲げられて、それぞれの端面33、43がコア層20を封止している。これに限らず、上シート層30のみが下方に曲げられて、下シート層40は曲げられることなく、下面1bに対して水平方向に延び、上シート層30の端面33がコア層20を封止していてもよい。また、下シート層40のみが上方に曲げられて、上シート層30は曲げられることなく、上面1aに対して水平方向に延び、下シート層40の端面43がコア層20を封止していてもよい。
【0113】
なお、本実施形態のラゲッジボード1は、下面1b側に鋼板10が接合され、下面1bの閉塞壁に複数の連通孔15が貫設されており、下面1bがラゲッジルーム側に面するように配置して使用するものである。そのため、上シート層30が下方に曲げられてなる端面33より、下シート層40が上方へ曲げられてなる端面43の方が大きく形成されていることが好ましい。言い方を換えれば、上シート層30の端縁31、コア層20の圧縮部分20a、下シート層40の端縁41の位置が、上シート層30側に偏倚していることが好ましい。こうすることで、ラゲッジボード1を支持部上に載置したときに、上シート層30の端面33と自動車のボディとの間に形成される隙間を小さくすることができる。ラゲッジボード1を通常使用している場合に、ラゲッジボード1と自動車のボディとの間に埃等が溜まりにくく、美観を損なうことを抑制することができる。
【0114】
・ ラゲッジボード1の端面1cは、上シート層30の端面33、下シート層40の端面43で封止されるのではなく、上シート層30及び下シート層40とは異なる別部材で封止されていてもよい。また、上シート層30の端面33、下シート層40の端面43で封止された上で、さらに別部材で覆われていてもよい。
【0115】
・ 上シート層30の端面33の傾斜角度θ1、下シート層40の端面43の傾斜角度θ2は、少なくともいずれかが70゜以上でなくてもよい。より緩やかな傾斜面であってもよい。また、上シート層30の角部32のRの曲率、下シート層40の角部42のRの曲率は、1~5の範囲でなくてもよい。
【0116】
・ コア層20は、一枚の第1シート材100を折り畳み成形して構成するものに限らない。例えば、特許第4368399号に記載されるように、断面台形状の凸部が複数列設された三次元構造体を順次折り畳んでいくことにより、ハニカム構造体としてのコア層20を形成してもよい。また、例えば、複数の帯状のシートを所定間隔毎に屈曲させて配置してセルの側壁を構成し、これら帯状のシートの上下両側にシート層を配置してセルの上壁及び下壁を構成するようにしてもよい。
【0117】
・ コア層20は、柱形状のセルSが区画されたものに限らない。例えば、所定の凹凸形状を有するコア層の上下両面にシート層を接合したものであってもよい。このような構成のコア層としては、例えば特開2014-205341号公報に記載のものが挙げられる。また、断面がハーモニカ状のプラスチックダンボール等であってもよい。
【0118】
・ 本実施形態では、コア層20の内部に六角柱状のセルSが区画形成されているが、セルSの形状は、特に限定されるものでない。例えば、四角柱状、八角柱状等の多角形状や円柱状としてもよい。また、セルSの形状は、接頭円錐形状であってもよい。その際、異なる形状のセルが混在していてもよい。また、各セルは隣接していなくともよく、セルとセルとの間に隙間(空間)が存在していてもよい。
【0119】
・ コア層20、各シート層30、40を構成する熱可塑性樹脂として、各種機能性樹脂を添加したものを使用してもよい。例えば、熱可塑性樹脂に難燃性の樹脂を添加することにより、難燃性を高めることが可能である。コア層20、シート層30、40のすべてに対して各種機能性樹脂を添加したものを使用することも可能であり、また、コア層20、シート層30、40の少なくともいずれかに対して使用することも可能である。
【0120】
・ 各シート層30、40の少なくともいずれかにタルク等の補強材を添加してもよい。この場合、各シート層30、40を、補強材を添加した熱可塑性樹脂で成形すればよい。
【0121】
・ 加熱工程における加熱温度は、上記構成に限定されるものではない。コア層20を構成する熱可塑性樹脂の材質、鋼板10を構成する金属の材質、上シート層30及び下シート層40を構成する熱可塑性樹脂の材質、及び、鋼板10、上シート層30、下シート層40に積層された接着層の材質等により適宜設定することができる。
【0122】
・ 本実施形態の加熱工程では、コア層20、鋼板10、上シート層30及び下シート層40をそれぞれ別個の加熱炉71、72、73内で加熱したが、これに限定されない。例えば、加熱温度の近い鋼板10、上シート層30及び下シート層40を同じ加熱炉内で加熱してもよい。
【0123】
・ 加熱工程での加熱は、加熱炉71、72、73内での加熱ではなく、開放された環境下での加熱であってもよい。例えば、バーナーで加熱してもよいし、IHヒータで加熱してもよいし、赤外線ヒータで加熱してもよい。
【0124】
・ 加熱工程の際、コア層20の下面にあらかじめ鋼板10を位置決めした状態で加熱してもよい。こうすることで、コア層20に対して鋼板10が仮接合されて位置決めされ、鋼板10のずれが抑制される。また、接合工程、成形工程の前に、鋼板10によってコア層20の温度低下が抑制され、コア層20の熱収縮が抑制される。金型51、52に対する転写がよくなる。なお、コア層20の上面に鋼板10を載置して位置決めした状態で加熱してもよい。この場合、接合工程、成形工程では、鋼板10が仮接合されたコア層20を、上下反転させて、下型52の凹部52aの上に載置すればよい。
【0125】
・ 本実施形態の加熱工程では、鋼板10を加熱する加熱炉72内の温度を、コア層を加熱する加熱炉71内の温度、上シート層30及び下シート層40を加熱する加熱炉73内の温度より高く設定したが、加熱炉71、72、73内の温度は、これに限定されない。加熱炉71、72、73内の温度を、すべて、コア層20、上シート層30及び下シート層40を構成する熱可塑性樹脂が溶融する程度の同じ温度としてもよい。この場合であっても、コア層20、鋼板10、上シート層30及び下シート層40を下型52の上に載置した状態では、加熱された鋼板10の両面にコーティングされた接着層の一部、上シート層30、下シート層40に積層された接着層の一部が熱溶融された状態となって、コア層20、鋼板10、上シート層30及び下シート層40が、下型52の上で仮接合された状態で位置決めされる。また、接合工程では、各接着層が熱溶融するとともに、コア層20、上シート層30及び下シート層40を構成する熱可塑性樹脂の一部が熱溶融して、コア層20、鋼板10、及びシート層30、40が接合される。
【0126】
・ 各シート層30、40は接着層を介して鋼板10及びコア層20に接合されているが、接合するものは接着層に限定されない。粘着層を介して接合されていてもよい。
・ 鋼板10の両面には接着層があらかじめコーティングされており、各シート層30、40には接着層があらかじめ積層されている構成としたが、これに限定されない。接合する際に、接着剤を塗布するようにしてもよい。
【0127】
・ 本実施形態では、加熱工程において、コア層20の表面に遮蔽材を設置することにより、コア層20の表面温度を部位によって異なるように調整したがこれに限定されない。鋼板10、上シート層30及び下シート層40についても、加熱工程において、その表面温度を部位によって異なるように調整してもよい。
【0128】
・ 本実施形態では、鋼板10、上シート層30及び下シート層40を接合する接合工程と、コア層20、鋼板10、上シート層30及び下シート層40を成形して中間体60を得る成形工程とを同時に行っているが、別々に行ってもよい。
【0129】
・ 本実施形態では、ラゲッジボード1を製造する各工程に先立って、コア層20として、ラゲッジボード1より長手方向及び短手方向にそれぞれ50mm程度大きな形状に切断したものを準備したが、ラゲッジボード1とほぼ同じ大きさに切断したものを準備してもよい。この場合、接合工程及び成形工程では、上シート層30と下シート層40が押し潰されて圧着されることで中間体60の端面が封止される。また、中間体60の圧縮部分61は、上シート層30と下シート層40が圧着されることで形成され、この圧縮部分61を切断して端面を成形することにより中空板材70を形成すればよい。
【0130】
・ 接合工程、成形工程で使用する金型51、52には、吸引孔が複数形成されているものを使用したが、吸引孔の形状は特に限定されない。スリット状の吸引溝であってもよい。
【0131】
・ 接合工程、成形工程は、金型51、52は加熱して行ってもよい。
・ 本実施形態のラゲッジボード1は、左右対称に形成されているが、その形状は特に限定されない。左右対称でなくてもよい。
【0132】
上記実施形態から把握される技術思想について以下に記載する。
(イ)樹脂製板状の中空構造体の端縁では、一対のシート層の端縁同士が突き合わされて、前記中空構造体が封止されている。
【符号の説明】
【0133】
1…ラゲッジボード、1a…上面(主面)、1b…下面(主面)、10a、10b、10c、10d…鋼板、15…連通孔、20…コア層、21…上壁部、22…下壁部、23…側壁部、30…上シート層、40…下シート層、S…セル、S1…第1セル、S2…第2セル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7