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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20221227BHJP
   A61L 2/24 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
A61L2/10
A61L2/24
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018137418
(22)【出願日】2018-07-23
(65)【公開番号】P2020014498
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】502025680
【氏名又は名称】株式会社イングスシナノ
(74)【代理人】
【識別番号】100100055
【弁理士】
【氏名又は名称】三枝 弘明
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 享
(72)【発明者】
【氏名】若林 謙一
(72)【発明者】
【氏名】荒井 健一郎
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-028450(JP,A)
【文献】登録実用新案第3161985(JP,U)
【文献】特開2017-209397(JP,A)
【文献】特開平11-000386(JP,A)
【文献】国際公開第2015/020041(WO,A1)
【文献】特開2018-068313(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103082901(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00 - 2/28
A61L 11/00 - 12/14
H01L 33/00
H01L 33/48 - 33/64
F21S 2/00
F21V 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な蓋部を備える筐体と、
該筐体の内部に設けられ、前記蓋部の開放によって外部に連通するように構成され、殺菌対象物を収容するための収容空間と、
該収容空間を挟んで相互に対面する一方の内面部と他方の内面部にそれぞれ光出射面部を配置してなる導光体と、
該導光体の前記光出射面部と異なる方位に向いた入射面部に向けて紫外線を放出し、紫外線を前記導光体の内部に入射させる紫外線光源と、
を具備し、
前記導光体は、紫外線に対する正透過性を呈する媒質からなり、
前記導光体の前記光出射面部の少なくとも一部の表面上には、紫外線に対する拡散透過性を呈する拡散シートが配置され
前記拡散シートはフッ素樹脂からな、前記フッ素樹脂からなる拡散シートは、前記導光体の表面上に着脱可能に取り付けられる、
殺菌装置。
【請求項2】
開閉可能な蓋部を備える筐体と、
該筐体の内部に設けられ、前記蓋部の開放によって外部に連通するように構成され、殺菌対象物を収容するための収容空間と、
該収容空間を挟んで相互に対面する一方の内面部と他方の内面部にそれぞれ光出射面部を配置してなる導光体と、
該導光体の前記光出射面部と異なる方位に向いた入射面部に向けて紫外線を放出し、紫外線を前記導光体の内部に入射させる紫外線光源と、
を具備し、
前記一方の内面部に配置された一方の光出射面部を備える一方の前記導光体と、前記他方の内面部に配置された他方の光出射面部を備える他方の前記導光体とを具備し、
前記収容空間の周囲には、前記一方の光出射面部と前記他方の光出射面部の対面方向に沿った軸線の周りを包囲する形状の紫外線反射面を備える反射内面部をさらに具備する、
殺菌装置。
【請求項3】
開閉可能な蓋部を備える筐体と、
該筐体の内部に設けられ、前記蓋部の開放によって外部に連通するように構成され、殺菌対象物を収容するための収容空間と、
該収容空間を挟んで相互に対面する一方の内面部と他方の内面部にそれぞれ光出射面部を配置してなる導光体と、
該導光体の前記光出射面部と異なる方位に向いた入射面部に向けて紫外線を放出し、紫外線を前記導光体の内部に入射させる紫外線光源と、
を具備し、
前記導光体は、前記一方の内面部と前記他方の内面部にそれぞれ配置される前記一方と他方の光出射面部を一体に構成する筒状光出射内面部を有し、
前記収容空間の周囲には、前記筒状光出射内面部の軸線方向の両側にそれぞれ配置された紫外線反射面を備える反射内面部をさらに具備する、
殺菌装置。
【請求項4】
開閉可能な蓋部を備える筐体と、
該筐体の内部に設けられ、前記蓋部の開放によって外部に連通するように構成され、殺菌対象物を収容するための収容空間と、
該収容空間を挟んで相互に対面する一方の内面部と他方の内面部にそれぞれ光出射面部を配置してなる導光体と、
該導光体の前記光出射面部と異なる方位に向いた入射面部に向けて紫外線を放出し、紫外線を前記導光体の内部に入射させる紫外線光源と、
を具備し、
操作がなされることにより前記紫外線光源を点灯可能状態と消灯状態に切り替えるための操作部と、前記蓋体の開閉状態を検出する開閉検出手段と、前記操作部に対する操作により前記紫外線光源の点灯可能状態にあるときに、前記蓋体の閉鎖時には前記紫外線光源を点灯させ、前記蓋体の開放時には前記紫外線光源を消灯する制御部と、をさらに具備
前記導光体の前記入射面部に向けて可視光を放出し、可視光を前記導光体に入射する可視光源をさらに具備し、
前記制御部は、前記操作部に対する操作により前記紫外線光源の点灯可能状態にあるときに、前記蓋体の開放時には前記可視光源を点灯させる、
殺菌装置。
【請求項5】
前記導光体は、紫外線に対する正透過性を呈する媒質からなる、
請求項2-4のいずれか一項に記載の殺菌装置。
【請求項6】
前記導光体の前記光出射面部の少なくとも一部の表面上には、紫外線に対する拡散透過性を呈する拡散シートが配置される、

請求項5に記載の殺菌装置。
【請求項7】
前記拡散シートはフッ素樹脂からなる、
請求項6に記載の殺菌装置。
【請求項8】
前記一方の内面部に配置された一方の光出射面部を備える一方の前記導光体と、前記他方の内面部に配置された他方の光出射面部を備える他方の前記導光体とを具備し、
前記収容空間の周囲には、前記一方の光出射面部と前記他方の光出射面部の対面方向に沿った軸線の周りを包囲する形状の紫外線反射面を備える反射内面部をさらに具備する、
請求項4に記載の殺菌装置。
【請求項9】
前記導光体は、前記一方の内面部と前記他方の内面部にそれぞれ配置される前記一方と他方の光出射面部を一体に構成する筒状光出射内面部を有し、
前記収容空間の周囲には、前記筒状光出射内面部の軸線方向の両側にそれぞれ配置された紫外線反射面を備える反射内面部をさらに具備する、
請求項4に記載の殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は殺菌装置に係り、特に、紫外線を利用して物品の殺菌を行うための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紫外線の照射により、各種の物品や空気或いは水などを対象物として殺菌する装置が製造されている。紫外線は、水銀灯などの紫外線ランプやLEDなどの発光素子から放出され、上述の殺菌を行う対象物に照射される(例えば、以下の特許文献1及び2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-193045号公報
【文献】特開2016-193059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような装置において、空気や水などの流動性を有する対象物に対しては均一に殺菌することができるが、医療器具や歯科器具などの固体物を対象物として殺菌する場合には、影ができるなどの理由により紫外線を均一に照射することが困難であるという問題があった。
【0005】
上記のような固体物を均一に殺菌するためには、紫外線ランプなどの光源を周囲に配置して影が生じないようにする必要があるために、装置全体が大型化し、製造コストも増大するという問題があった。
【0006】
また、光源を周囲に配置したとしても、対象物自体が凹凸や細孔などの隙間を有する構造を備えていたりする場合には、凹部や孔などの隙間の内部を確実に殺菌することが難しいという問題が依然として残ることになる。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するものであり、その課題は、装置の大型化やコストの増大を抑制しつつ、殺菌対象物に対して周囲より均一に紫外線を照射することができるとともに、凹部や孔などの隙間の内部をも殺菌することができる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の殺菌装置は、開閉可能な蓋部を備える筐体と、該筐体の内部に設けられ、前記蓋部の開放によって外部に連通するように構成され、殺菌対象物を収容するための収容空間と、該収容空間を挟んで相互に対面する一方の内面部と他方の内面部にそれぞれ光出射面部を配置してなる導光体と、該導光体の前記光出射面部と異なる方位に向いた入射面部に向けて紫外線を放出し、紫外線を前記導光体の内部に入射させる紫外線光源と、を具備する。ここで、前記導光体は、紫外線に対する正透過性を呈する媒質からなることが好ましい。
【0009】
本発明において、前記一方の内面部に配置された一方の光出射面部を備える一方の前記導光体と、前記他方の内面部に配置された他方の光出射面部を備える他方の前記導光体とを具備し、
前記収容空間の周囲には、前記一方の光出射面部と前記他方の光出射面部の対面方向に沿った軸線の周りを包囲する形状の紫外線反射面を備える反射内面部をさらに具備することが好ましい。ここで、前記反射内面部は、紫外線を正反射する表面と拡散反射する表面のいずれであってもよい。
【0010】
本発明において、前記導光体は、前記一方の内面部と前記他方の内面部にそれぞれ配置される前記一方と他方の光出射面部を一体に構成する筒状光出射内面部を有し、
前記収容空間の周囲には、前記筒状光出射内面部の軸線方向の両側にそれぞれ配置された紫外線反射面を備える反射内面部をさらに具備することが好ましい。ここで、前記反射内面部は、紫外線を正反射する表面と拡散反射する表面のいずれであってもよい。
【0011】
本発明において、前記導光体の前記光出射面部の少なくとも一部の表面上には、紫外線に対する拡散透過性を呈する拡散シートが配置されることが好ましい。この場合に、拡散シートは、フッ素樹脂からなることが望ましい。また、前記拡散シートは前記光出射面部の全体を覆うことが望ましい。さらに、前記拡散シートは、前記導光体の表面上に着脱可能に取り付けられることが望ましい。
【0012】
本発明において、操作がなされることにより前記紫外線光源を点灯可能状態と消灯状態に切り替えるための操作部と、前記蓋体の開閉状態を検出する開閉検出手段と、前記操作部に対する操作により前記紫外線光源の点灯可能状態にあるときに、前記蓋体の閉鎖時には前記紫外線光源を点灯させ、前記蓋体の開放時には前記紫外線光源を消灯する制御部と、をさらに具備することが好ましい。この場合において、前記導光体の前記入射面部に向けて可視光を放出し、可視光を前記導光体に入射する可視光源をさらに具備し、前記制御部は、前記操作部に対する操作により前記紫外線光源の点灯可能状態にあるときに、前記蓋体の開放時には前記可視光源を点灯させることが望ましい。なお、前記制御部は、前記操作部に対する操作により前記紫外線光源の点灯可能状態にあるときに、前記蓋体の閉鎖時には前記可視光源を消灯させることがさらに望ましい。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、装置の大型化やコストの増大を抑制しつつ、周囲より均一に紫外線を照射することができるとともに、凹部や孔などの隙間の内部をも殺菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態の殺菌装置の外観を示す斜視図である。
図2】第1実施形態の殺菌装置の内部に殺菌対象物を収容した状態を示す斜視図である。
図3】第1実施形態の殺菌装置の分解斜視図である。
図4】第1実施形態の導光ユニットの内部構造を示す分解斜視図である。
図5】第2実施形態の導光ユニットの内部構造を示す分解斜視図である。
図6】第2実施形態の拡散シートと、その取付枠を示す斜視図である。
図7】第3実施形態の導光ユニットの内部構造を示す分解斜視図である。
図8】第4実施形態の殺菌装置の斜視図である。
図9】第4実施形態の殺菌装置の分解斜視図である。
図10】第4実施形態の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。最初に、図1乃至図4を参照して、本発明に係る殺菌装置の第1実施形態について説明する。
【0016】
第1実施形態の殺菌装置10は、筐体11を有する。筐体11は、上部が開閉可能に構成された蓋部11aを構成し、下部が本体部11bを構成する。図示例では、蓋部11aと本体部11bは同一の平面形状を備えている。蓋部11aと本体部11bの一方の端部にはヒンジ部11cが設けられ、このヒンジ部11cにより蓋部11aが本体部11bに対して回動可能に取り付けられている。
【0017】
操作部12は、図示例では蓋部11aの手前部分に取り付けられている。ただし、操作部12の位置は特に限定されず、例えば、本体部11bの前面であってもよい。操作部12は、押釦式スイッチ等により構成される操作ボタン12aと、この操作ボタン12aの操作により設定された状態を示すLEDなどからなる表示灯12bとを有する。内部に構成された制御部により、操作ボタン12aを一回押圧すると、オフ状態からオン状態へ移行し、表示灯12bが点灯する。操作ボタン12aをさらにもう一回押圧すると、オン状態からオフ状態へと戻り、表示灯12bは消灯する。ここで、オフ状態とは、後述する紫外線光源を消灯した状態であり、オン状態とは、紫外線光源を点灯可能にした状態である。
【0018】
図2に示すように、筐体11の内部には、蓋部11aの開放により外部に連通する収容空間11sが設けられる。図示例では、収容空間11sは隅丸直方体状に構成される。収容空間11sは、図示例の場合、蓋部11aの内部に凹状に構成される上側空間部11saと、本体部11bの内部に凹状に構成される下側空間部11sbとから構成される。
【0019】
上記上側空間部11saは、図示例では隅丸長方形状の平坦な上側内面部11iaと、この周囲を取り巻くように構成された上側内側面部11icとを備える凹部によって画成される。また、上記下側空間部11sbは、図示例では隅丸長方形状の平坦な下側内面部11ibと、この周囲を取り巻くように構成された下側内側面部11idとを備える凹部によって画成される。上記収容空間11sは、蓋部11aを閉鎖し、上下の各凹部の上側開口縁部11ieと下側開口縁部11ifを相互に当接させることにより、一体に形成されるとともに密閉されて、外部と隔絶される。
【0020】
図3は、本実施形態の分解斜視図である。蓋部11a内には、上記操作部12を構成する操作ボタン12a及び表示灯12bと、これらを実装する操作部の回路基板12cとが内蔵される。また、蓋部11aの内部には、導光ユニット13Aと、導光ユニット13Aを内側(図示下方)から保持する、枠状に構成された被覆部材14Aとが配置される。一方、本体部11bの内部には、装置全体の制御を行う制御部を構成する主回路基板15と、上記と同様の導光ユニット13Bと、この導光ユニット13Bを内側(図示上方)から保持する、枠状に構成された被覆部材14Bとが配置される。被覆部材14Bには、マイクロスイッチなどからなる開閉検出器16が取り付けられる。この開閉検出器16は、上記下側開口縁部11ifに開口した検出口11ioを通して、上記上側開口縁部11ieに設けられた突起状の被検出部11ipを検出することにより、蓋部11aが本体部11bに対して閉鎖されたことを検出できるように構成される。この開閉検出器16は、筐体11において、本体部11bに対する蓋部11aの開閉状態を検出する手段を構成する。
【0021】
図4は、上記導光ユニット13A,13Bの内部構造を示す分解斜視図である。ここで、導光ユニット13Aと13Bは基本的に同一の構造を備えているので、図4を用いた説明においては、導光ユニット13Aについて説明し、導光ユニット13Bについては同様に構成されているものとして、その説明は省略する。導光ユニット13Aは、図示例では板状の導光体131を備える。導光体131は、図示例では直方体形状を有し、この導光体131の入出射面部となる第1の端面131a、これと対向する第2の端面131b、第1及び第2の端面の間にある第3及び第4の端面131c、最も大きな面積を備える相互に対向する一対の主面のうち、背面側に設けられる一方の主面131d、及び、光出射面部となる他方の主面131eを有する。主面131dの背後には反射シート132が配置される。これらの導光体131及び反射シート132は紫外線の発光素子(LED)133aを実装した光源基板133とともに、ユニット枠134に取り付けられる。
【0022】
発光素子133aは、近紫外線と呼ばれる200~380nm又は遠紫外線と呼ばれる10~200nmの波長領域の紫外線を放出可能なものであればよい。ここで、発光素子133aは、深紫外線(D-UV)と呼ばれる300nm以下の波長を有する紫外線が望ましい。特に、100~300nmの波長域の紫外線を主として放出するものは、殺菌性が高いために好ましい。例えば、200~280nmの波長域の光は殺菌性が高く、とりわけ、240~280nmの波長域がDNAの吸収率も高いために有効であるとされる。
【0023】
導光体131は、発光素子133aから放出された紫外線を光入射面部(第1の端面131a)から内部へ取り込み、主面131d、131eに沿って伝搬させる。光入射面部から直接内部に入射した上記紫外線は、基本的に上記主面131d、131eに対しては全反射し、その結果、導光体131の内部に閉じ込められる。ただし、上記紫外線のうちの一部は、上記主面131d、131eやいずれかの端面131a~131cにて散乱される結果、全反射条件が崩れることにより、主面131d、131eから出射する。これらの出射光のうち、主面131dから出射した光は、反射シート132によって反射されて再び導光体131の内部に戻る。また、各端面131a~131cから出射した光は、ユニット枠134の内側面(反射面として構成される)により反射され、再び導光体131の内部に戻る。全体としては、上記主面131d、131eに沿って伝搬する紫外線の一部が、その伝搬方向に進行しつつ光出射面部である主面131eから徐々に出射することにより、紫外線は主面131eの全体にわたりほぼ均一な強度分布で出射する。
【0024】
主面131d、131eや各端面131a~131cには、紫外線を散乱させるための微細な表面凹凸構造、ドットパターンなどに形成される印刷層などを形成することにより、紫外線の光出射分布を制御することができる。また、導光体131の内部に紫外線を散乱させるための光散乱性粒子を分散させてもよい。例えば、発光素子133aの光放出部が対面する入射面部である第1の端面131aの近傍では、光出射面部である主面133eから出射される光量は、発光素子133aに隣接する部位では高く、発光素子133aの間隙位置に隣接する部位では低くなるため、第1の端面131aに沿った方向に強弱を繰り返す光量分布が形成される。このため、発光素子133aの間隙位置に隣接する部位の主面133e若しくは133dに紫外線を散乱させるためのドットパターンを形成したり、当該部位の内部に光散乱性粒子を分散させたりすることが好ましい。
【0025】
導光体131は、殺菌作業の高い波長域の紫外線を高い透過率で透過させることのできる素材で構成されることが好ましい。このような素材としては、石英ガラス、サファイア、フリントガラス、ホウケイ酸ガラス、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。特に、面状光源を構成するための導光体131の素材としては、石英ガラス、サファイアなどのように、紫外線透過率が広い紫外線波長領域にわたり高く、しかも、光拡散性の低いものが望ましい。特に、導光材料としては、石英ガラス、サファイアなどのように、紫外線に対して正透過性を呈する媒質、すなわち、紫外線に対する拡散性や散乱性の低いものが望ましい。
【0026】
反射シート132やユニット枠134の内側面は、殺菌作用の高い波長域の紫外線を高い反射率で反射することのできる素材で構成されることが好ましい。このような素材としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、大理石、花崗岩、石膏、ACLパネル、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、カオリン、タルク、アクリル系樹脂などが挙げられる。この場合、反射特性に関しては、紫外線に対して正反射性を呈する反射表面であっても、拡散性、散乱性を呈する反射表面であっても構わない。結果として、高い反射率で上記の紫外線を反射し、導光体131の光出射面部から出射される紫外線強度を高めることができればよい。ただし、ユニット枠134の内側面は、導光体131の光出射面部131eの光出射分布を均一化するために、アルミニウムやアルミニウム合金などの正反射性を呈する反射面で構成されることが好ましい。
【0027】
上記被覆部材14A,14Bは、上記の上側内側面部11ic,下側内側面部11idを構成する内面部分が殺菌作業の高い波長域の紫外線を高い反射率で反射することのできる素材で構成されることが好ましい。当該素材の例や反射特性に関しては前述の反射シート132と同様である。この内面部分は、上記の上側内面部11ia及び下側内面部11ibを取り巻くように形成されている。すなわち、上側内面部11iaと下側内面部11ibの対向する方向に沿った軸線(図示垂直線)を考えた場合、上記内面部分は、当該軸線の周りを包囲するように形成される。この場合、上記の内面部分に隣接する、上記の上側開口縁部11ie及び下側開口縁部11ifの表面も上記と同様の素材で構成されることが望ましい。
【0028】
以上のように構成された殺菌装置10において、上記制御部は、上記操作部12、開閉検出器16、及び、発光素子133aに接続される。そして、操作ボタン12aを押圧すると、表示灯12bを点灯させるとともに、発光素子133aを点灯可能なオン状態となり、開閉検出器16により蓋部11aが本体部11bに対して開放されているときにはそのまま発光素子133aを消灯し、蓋部11aが本体部11bに対して閉鎖されているときには発光素子133aを点灯させる。これにより、蓋部11aが開放されているときに紫外線が照射されることが防止され、操作者が紫外線を浴びることが防止される。一方、制御部は、操作部12に対する操作がない場合、あるいは、上記オン状態でさらに操作ボタン12aが押圧された場合、オフ状態となる。このときには、蓋部11aの開閉如何に拘わらず、発光素子133aは点灯しない。
【0029】
本実施形態では、図2に示すように、蓋部11aを開放し、医療機器や歯科機器などの殺菌対象物Xを収容空間11sに投入すると、殺菌対象物Xは下側内面部11ib上に載置された状態となる。この状態で、蓋部11aを閉鎖し、操作ボタン12aを押圧すると、発光素子133aが点灯するので、殺菌対象物Xに紫外線を照射することができる。発光素子133aから放出された紫外線は、導光体131の光入射面部から入射し、前述のように導光体131の内部を伝搬しながら、徐々に光出射面部から出射される。本実施形態では、導光体131の光出射面部は上記上側内面部11ia及び下側内面部11ibを構成しているので、導光体131の光出射面部から出射した紫外線はそのまま殺菌対象物Xに照射される。殺菌対象物Xは、上下両側の上側内面部11iaと下側内面部11ibからそれぞれ出射される紫外線を受けるため、紫外線照射時の影となる部分が少なくなる。これにより、殺菌対象物Xには、十分かつ効率的な殺菌処理が施される。特に、上下の内面部11iaと11ibの対面方向に沿った軸線(図中では垂線)の周囲を取り巻くように構成された反射性内面部を備える上側内側面部11ic及び下側内側面部11idが設けられているため、周囲からも紫外線を効率的に照射することができることから、殺菌対象物Xにおける紫外線の非照射領域をさらに低減し、高レベルの殺菌処理を行うことができる。なお、上記の反射シート132や上側内側面部11ic及び下側内側面部11idの表面を拡散性や散乱性の反射面として構成することにより、紫外線の照射方向をさらにランダムに分散させることができるので、紫外線の非照射領域をさらに低減できる。さらに、上記反射性内面部は、装置の寸法の増大やコストの増大を招くことなく構成することができる。
【0030】
図5は、第2実施形態の殺菌装置における導光ユニット13A,13Bの構造を示す分解斜視図である。第2実施形態において、導光ユニット以外の構造については第1実施形態と同様であるので、その説明は省略する。また、図4と同様に、図5及びその説明では導光ユニット13Aのみについて図示し、説明を行う。第2実施形態では、導光ユニット13Aには、導光体131の光出射面部上に拡散シート135が配置される。この拡散シート135は、導光体131の光出射面部から出射される紫外線を透過するが、その過程で紫外線を拡散し、紫外線の照射方向を分散させる作用を果たす。拡散シート135としては、実質的な紫外線の透過率が高いとともに殺菌作用も高いフッ素樹脂で構成されるものが好ましい。フッ素樹脂は結晶性高分子であるため、石英などの透過特性である正透過性とは異なり、拡散透過性を呈する。
【0031】
上記のフッ素樹脂としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、FEP(パーフルオロエチレンプロペンコポリマー)、ETFE(エチレン―テトラフルオロエチレンコポリマー)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)などが挙げられる。
【0032】
これらのフッ素樹脂の紫外線透過率は一般的に高く、フッ素樹脂を透過した紫外線の殺菌作用も高いことが確認される。例えば、紫外線透過率は、厚さ2mmの石英(1)で波長253.7nmの紫外線について91.5%であるが、PTFE(商品名ナフロン)の場合、厚さ0.1mm(2)で0.17%、厚さ0.3mm(3)で0.09%、厚さ0.5mm(4)で0.07%、厚さ1.0mm(5)で0.04%となる。ただし、光に活性な菌の死滅速度係数k[min―1]は、直接照射の場合は2.4であるのに対して、上記石英(1)で2.3、上記PTFE(2)で1.2、上記PTFE(3)で0.63、上記PTFE(4)で0.55、上記PTFE(5)で0.25となる。また、光に不活性な菌の死滅速度係数k[min―1]は、直接照射の場合は0.57であるのに対して、上記石英(1)で0.6、上記PTFE(2)で0.32、上記PTFE(3)で0.22、上記PTFE(4)で0.18、上記PTFE(5)で0.13となる。上記のPTFEの紫外線の透過率は低いが、これは拡散透過性を有するために分光光度計ではみかけの透過率が低くなるためである。実際には紫外線に対して高い透過率を備えるともに、それに対応する高い殺菌作用を奏すると考えられる。また、99%などの高殺菌率を得るのに必要な時間は、フッ化樹脂の方が石英よりも高くなることが知られており、これは、フッ素樹脂の拡散透過性による有利な効果と考えられる。
【0033】
フッ素樹脂(フィルム)からなる拡散シート135を用いることにより、上述のように殺菌作用を確保しつつ、導光体131の表面における損傷や汚れの付着の防止を図ることができる。また、フッ素樹脂そのものも柔軟性や低摩擦性があるために、損傷を受けにくく、汚れも付着しにくい。したがって、拡散シート135を特に下側の導光ユニット13Bの下側内面部11ibに配置することにより、殺菌対象物Xに接触することによる損傷や汚れの付着を回避できる。また、拡散シート135を導光体131の光出射面上から着脱可能に構成することにより、拡散シート135そのものに汚れの付着などの支障が生じた場合でも、容易に交換することができる。特に、フッ素樹脂には、上記の非粘着性・撥水性や低摩擦性に加えて、耐候性、耐熱性、電気絶縁性、耐薬品性が高いという特性をも有するので、医療器具や歯科器具に対する適応性が高い。なお、拡散シート135としては、上記フッ素樹脂以外に、内部や表面に光散乱性粒子を分散させた樹脂フィルムを用いてもよい。
【0034】
図6には、上記拡散シート135の取付枠136を示す。導光体131の光出射面部上に拡散シート135を配置し、拡散シート135の外周縁135aに沿った形状を有する取付枠136を、拡散シート135の外周縁135a上に配置した上で、上記被覆部材14A、14Bを導光ユニット13A,13Bに取り付ける。これによって、被覆部材14A,14Bの内周縁が取付枠136上に配置され、拡散シート135及び取付枠136が導光体131と被覆部材14A,14Bとの間に挟持され、固定される。このようにすると、被覆部材14A,14Bを導光ユニット13A,13Bに対して着脱するだけで、拡散シート135を容易に着脱できる。なお、上記構造とは異なり、取付枠136を介在することなく、拡散シート135を導光体131と被覆部材14A,14Bとの間に挟持してもよく、或いは、被覆部材14A,14Bを導光ユニット13A,13Bに装着した後に、拡散シート135を露出した導光体131の光出射面上に配置し、その上から取付枠136を被覆部材14A,14Bの上側内側面部11ic、11idの内側にはめ込むように構成して、取付枠136のはめ込み抵抗により拡散シート135を保持するようにしてもよい。また、取付枠136の図示下面を粘着面とし、当該粘着面により拡散シート135及び導光体131の主面131eに付着させてもよい。このとき、上記粘着面を剥離可能なものとすることが望ましい。
【0035】
図7は、第3実施形態の殺菌装置における導光ユニット13A,13Bの構造を示す分解斜視図である。第3実施形態において、導光ユニット以外の構造については第1実施形態と同様であるので、その説明は省略する。また、図4と同様に、図7及びその説明では導光ユニット13Aのみについて図示し、説明を行う。第3実施形態では、導光ユニット13Aには、導光体131の光入射面部に対向する位置に、可視光を放出する可視光源となる発光素子137aを備えた可視光源基板137が配置される。発光素子137aは、上記発光素子133aとは異なり、人体に有害な程度の紫外線を放出しないものが好ましい。また、発光素子137aは、青色光を主として放出するものであること、すなわち、点灯時に放出光が青色に見えるものであることが望ましい。
【0036】
発光素子137aは、発光素子133aが対面する導光体131の光入射面部(第1の端面131a)に対面している。好ましくは、発光素子137aは発光素子133aの間に配置される。図示例では、3つの発光素子133aの間に2つの発光素子137aが配置され、発光素子133aと137aが交互に上記光入射面に沿って一列に配列される。発光素子137aから放出された可視光(青色光)は、発光素子133aから放出された紫外線と同様に、導光体131の内部に入射して伝搬し、その光出射面部から出射する。なお、ここで、導光体131、反射シート132、拡散シート135等は、紫外線に対する透過性や反射性とともに、可視光に対する透過性や反射性を備えるものを用いる。
【0037】
この第3実施形態においては、上記制御部は、上記可視光源基板137にも接続される。上記制御部は、上記操作ボタン12aに対する操作により上記オン状態にあるときには、蓋部11aの開放時において、発光素子137aを点灯し、発光素子133aを消灯する。また、上記オン状態にあるときには、蓋部11aの閉鎖時において、発光素子137aを消灯し、発光素子133aを点灯する。一方、操作ボタン12aによりオフ状態にあるときには、蓋部11aの開閉いずれにおいても発光素子133a、137aのいずれもが消灯される。これにより、オン状態では、蓋部11aが開放されたときには可視光が照射されるとともに紫外線は照射されないため、操作者などが紫外線を浴びることが防止されると同時に操作者に装置が作動状態であることを知らせることができる。これに対して、蓋部11aが閉鎖されると、紫外線が照射されて殺菌処理が行われる。この蓋部11aの閉鎖時において、可視光は照射されないようにすれば無駄な電力消費を抑制できるが、これを考慮する必要がなければ、発光素子137aを点灯したままとしてもよい。
【0038】
次に、図8図10を参照して、本発明に係る第4実施形態について説明する。第4実施形態では、筐体21に蓋部21aと本体部21bを有し、蓋部21aを本体部21bに対して開閉可能とするヒンジ部21cを備え、蓋部21aを開放したときに外部と連通する収容空間21sを具備する点で第1実施形態と同様である。ただし、この第4実施形態では、本体部21bが筒状(図示例では円筒状、以下同様。)に構成され、その内部に形成される収容空間21sが垂直な軸線を備える柱状(図示例では円柱状、以下同様。)に形成されている点で、第1実施形態と異なる。
【0039】
図9に示すように、本体部21bの内部には、筒状の導光体231が収容され、この導光体231の外周面231c上に反射シート232が筒状に配置される。導光体231には、光入射面部となる一方(下方)の端面231aと、この端面231aに対向する他方(上方)の端面231bと、上記外周面231cと、外周面231cと対向する内周面231dとを有する。ここで、内周面231dは光出射面部を構成する。導光体231の下方には、上記端面231aと対面する紫外線の光放出部を備える発光素子233aを実装した光源基板233が配置される。ここで、発光素子233aは導光体231の軸線周りに等角度間隔で配置されることが好ましい。図示例では、上記軸線の周りに120度間隔で3つの発光素子233aが配置される。
【0040】
光源基板133は、主回路基板25上に実装される。また、導光体231の上記端面231aよりも内側の開口領域は底板24によって閉鎖される。底板24の少なくとも内面は、蓋部21aの内面とともに、前述の紫外線を反射する素材で構成される反射内面部となっている。光源基板233、底板24及び主回路基板25は、底壁部21d及びカバー部21eによって覆われる。筐体21やカバー部21eには、図示しないが、第1実施形態の操作部12と同様の操作部を設ける。また、上記主回路基板25上には、第1実施形態と同様の制御部が構成される。
【0041】
第4実施形態では、筒状の導光体231の内周面231dから紫外線が照射されるため、導光体231の軸線(垂線)の周りの全方位から殺菌対象物Xに向けて紫外線が照射される。すなわち、本実施形態では、当該軸線の周りの全ての方位についてそれぞれ両側に光出射面部が配置される。したがって、殺菌対象物Xに対して紫外線をさらに影なく全面的に照射することができる。この場合、当該軸線に沿った両側にそれぞれ、蓋部21aの内面と底板24の内面に形成された反射内面部が設けられるため、さらに殺菌対象物Xに対する紫外線の照射を全方位的に行うことができる。
【0042】
本実施形態では、第2実施形態の拡散シート135と同様の拡散シートを導光体231の内周面231d上に配置することが好ましい。この場合、拡散シートは、第2実施形態と同様に、リング状の取付枠などを導光体231の内側に嵌合させたり貼り付けたりするなどの方法で着脱可能に保持することが望ましい。また、本実施形態では、第3実施形態の可視発光素子237aと同様の可視発光素子を設けることが好ましい。この場合、可視発光素子は、発光素子233aと同様に光入射面部である端面233aに対面する光放出部を備えることが望ましい。例えば、発光素子233aの間に可視発光素子が配置されるように、可視光源基板を配置すればよい。このときの可視発光素子の制御態様は第3実施形態と同様である。
【0043】
なお、本発明の方法及び装置は、上述の図示例のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記各実施形態はそれぞれに特徴的な構成を備えるが、各構成は、相互に支障がない限り、併用したり、置換したりすることができる。例えば、上記第2実施形態と第3実施形態の特徴的構成を共に備える実施形態を形成してもよく、また、第1実施形態~第3実施形態の導光体の形状以外の構成を、支障のない限り、それぞれ単独で、或いは、適宜の組み合わせで、第4実施形態に適用しても構わない。
【符号の説明】
【0044】
10,20…殺菌装置、11,21…筐体、11a,21a…蓋部、11b,21b…本体部、11c,21c…ヒンジ部、11s,21s…収容空間、11sa…上側空間部、11sb…下側空間部、11ia…上側内面部、11ib…下側内面部、11ic…上側内側面部、11id…下側内側面部、11ie…上側開口縁部、11if…下側開口縁部、11io…検出口、11ip…被検出部、12…操作部、12a…操作ボタン、12b…表示灯、12c…操作部の回路基板、13A,13B…導光ユニット、14A,14B…被覆部材、24…底板、15,25…主回路基板、16…開閉検出器、131,231…導光体、132,232…反射シート、133,233…光源基板、133a,233a…紫外線の発光素子、134…ユニット枠、135…拡散シート、136…取付枠、137…可視光源基板、137a…発光素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10