(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】物品移設装置及び物品陳列システム
(51)【国際特許分類】
B25J 9/02 20060101AFI20221227BHJP
A47F 5/00 20060101ALI20221227BHJP
B65G 47/90 20060101ALI20221227BHJP
B25J 15/08 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
B25J9/02 C
A47F5/00 Z
B65G47/90 A
B25J15/08 C
(21)【出願番号】P 2018194168
(22)【出願日】2018-10-15
【審査請求日】2021-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2017214349
(32)【優先日】2017-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2017年5月11日ビッグパレットふくしまにおいて開催されたロボティクス・メカトロニクス講演会2017で発表
(73)【特許権者】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100150876
【氏名又は名称】松山 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】和田一義
(72)【発明者】
【氏名】北澤大樹
(72)【発明者】
【氏名】寺口朝弥
(72)【発明者】
【氏名】冨沢哲雄
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-218313(JP,A)
【文献】特開2012-176461(JP,A)
【文献】特開昭62-120992(JP,A)
【文献】特開平08-113315(JP,A)
【文献】特開平06-320374(JP,A)
【文献】特開昭64-020985(JP,A)
【文献】特開2013-158888(JP,A)
【文献】特開平11-139512(JP,A)
【文献】国際公開第2016/167886(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
B65G 1/00 - 1/20
47/80
47/84 - 47/86
47/90 - 47/96
A47F 5/00 - 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の物品を移送して所定箇所に配置する物品移設装置であって、
上記物品を収納する収納部と、
上記収納部を上下方向に移動させる昇降部と、
上記収納部内に収納された上記物品を所定箇所に移送するための物品移送部とを具備し、
上記物品移送部は、
物品を保持する物品把持部と、
上記物品把持部を垂直方向に上下動可能に支持する支持部と、
上記支持部を前後左右に移動させる移動部とを具備
し、
上記物品移送部は、物品を保持する物品把持部と、該物品把持部を垂直方向に上下動可能に支持する支持部と、支持部を前後左右に移動させる移動部とを具備
し、
上記支持部と上記移動部とは、それぞれ上記収納部の天部に配されており、該天部から上記物品把持部を懸下した状態で支持するように構成されており、
上記支持部は、上記物品把持部に連結された棒状体と、該棒状体を安定的に挟持して且つ上下にスライドさせる送り機構部とからなり、
上記移動部は、縦方向移動部及び横方向移動部からなり、
上記縦方向移動部は、上記収納部の上端の左右両端に位置し縦方向に向けて配された縦スライドフレーム、上記収納部の上端両側部に懸架された固定ロッド、該固定ロッドに沿ってスライド可能に該固定ロッドを把持する左右一対のロッドスライド部、及び該縦スライドフレームを正面側に押し出す押出部からなり、
上記横方向移動部は、上記縦方向移動部の左右一対の上記ロッドスライド部間に懸架された2本の懸架ロッド、該懸架ロッドの下方において該懸架ロッドと平行に且つ該縦スライドフレームを架橋するように設けられた2本の横スライドフレーム、2本の該懸架ロッド間に橋渡しされて設けられ、上記支持部を保持すると共に該懸架ロッドに沿って該ロッドスライド部間を自在に移動して、上記支持部を横方向に移動させる保持スライド部からなる、
物品移設装置。
【請求項2】
上記物品把持部は、
所定間隔を空けて配置された2つ以上の指部と、
上記指部それぞれを支持する指基部と、を具備し、
上記指部は、上記指基部との連結点を支点として回動自在に設置されており、
上記指基部は、所定の水平方向に移動可能に設置されており、
上記指部及び上記指基部は、それぞれ駆動機構が設置されたハウジングの下方において、左右両側にそれぞれ2つずつ、合計4つ設けられており、
上記ハウジングの内部には上記支持部に連結されるモーター収納治具が設けられており、
上記モーター収納治具の横に駆動モーターと該駆動モーターの先端に設けられた第1歯車が設けられていると共に、上記モーター収納治具の先端に設けられた第2歯車と、第2歯車の左右両側に配された2つのラックとが設けられており、
上記の2つのラックのそれぞれは、左右両側の指基部のいずれか一方に連結部材を介して連結されており、
上記の第1歯車は一つのラックのみと噛合っている
請求項1記載の物品移設装置。
【請求項3】
請求項1記載の物品移設装置と、上記物品の移設対象物としての陳列棚とからなる物品陳列システムであって、
上記陳列棚における各棚板は、上記陳列棚から突出するように所定方向に向けて移動可能に形成されており、
移動された上記棚板における所定箇所に上記物品を配置するように、上記昇降部と上記物品移送部が動作する
物品陳列システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の物品を所定の陳列棚などの所定箇所に適切に配置することができる物品移設装置及び物品陳列システムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンビニやスーパーマーケット等多数の商品陳列棚のある店舗において商品を陳列棚に効率的に配置することは、店舗運営に際して重要な課題となっている。
このような課題を解消するために、自動的に商品を陳列棚に陳列するロボットハンドなど商品陳列システムの開発が要望されており、種々開発がなされている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、障害物があっても組付部に被組付体を組み付け可能なロボットハンドとして、組付部と障害物との間の空間内で被組付体を組付部に組み付けるロボットハンドであって、少なくとも2つの把持部材を相対的にスライド移動して開閉することにより、被組付体を2つの把持部材で把持するハンドと、ハンドを動かして被組付体を組付部に組み付けるアームと、を備え、アームは、ハンドに把持された被組付体を組付部に組み付ける際、ハンドの2つの把持部材の開閉方向が、被組付体を空間内に挿入する際の挿入方向と略平行になるようにハンドの姿勢を制御し、被組付体を組付部に組み付けるロボットハンドが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの従来提案されている商品陳列システムにおいては、商品等の物品を如何にして把持して目的とする位置まで搬送するかが重要であるところ、未だ十分に要求されている程度に物品を良好に把持することができていなかった。
すなわち、多指ハンドはその自由度の高さから様々な物体を扱うことが出来るが、機構や制御が複雑になること、把持力や耐久性に問題がある。また、1自由度開閉式のグリッパーにおいては、大きな物体を把持する際、スライド機構の場合は対象とする物体よりハンド本体を大きくする必要があり、リンク機構の場合は、リンク長を長くしたり、リンク数を増やしたりする必要があり、結果として必要な把持力を得るために、大きなトルクを出力するアクチュエーターが必要となり、大型化が必要になり、コンビニやスーパーなどで使用することができないという問題がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、おにぎりやサンドウィッチなどの柔らかい商品や不定形の商品群をそれらの形を崩したりせずに良好に把持して、目的とする位置にまで搬送することができる物品移設装置、及び該物品移設装置を用いてなる物品陳列システムを手一驚することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解消すべく鋭意検討した結果、物品を保持する物品把持部を上下方向に昇降させると共に左右方向に移動させるように機構を構成すること、更には、物品把持部の機構を単に指部により形成するのではなく、指部と指基部とにより構成し、指部は回動させ、指基部は水平方向に移動させることにより、上記目的を達成し得ることを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は以下の各発明を提供するものである。
1.所定の物品を移送して所定箇所に配置する物品移設装置であって、
上記物品を収納する収納部と、
上記収納部を上下方向に移動させる昇降部と、
上記収納部内に収納された上記物品を所定箇所に移送するための物品移送部とを具備し、
上記物品移送部は、
物品を保持する物品把持部と、
上記物品把持部を垂直方向に上下動可能に支持する支持部と、
上記支持部を前後左右に移動させる移動部とを具備する
物品移設装置。
2.上記物品把持部は、
所定間隔を空けて配置された2つ以上の指部と、
上記指部それぞれを支持する指基部と、を具備し、
上記指部は、上記指基部との連結点を支点として回動自在に設置されており、
上記指基部は、所定の水平方向に移動可能に設置されている、
1記載の物品移設装置。
3.1記載の物品移設装置と、上記物品の移設対象物としての陳列棚とからなる物品陳列システムであって、
上記陳列棚における各棚板は、上記陳列棚から突出するように所定方向に向けて移動可能に形成されており、
移動された上記棚板における所定箇所に上記物品を配置するように、上記昇降部と上記物品移送部が動作する
物品陳列システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明の物品移設装置は、おにぎりやサンドウィッチなどの柔らかい商品や不定形の商品群をそれらの形を崩したりせずに良好に把持して、目的とする位置にまで搬送することができるものである。
また、本発明の物品陳列システムは、本発明の物品移設装置を用いてなるものであり、所望の商品を所定位置に適切に且つ迅速に陳列することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の物品移設装置の1実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す物品移設装置の要部を示す一部拡大図である。
【
図3】
図3は、
図2の矢視IIIに示す部分を拡大して示す拡大図である。
【
図4】
図4は、
図2の矢視IVに示す部分を拡大して示す拡大図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す物品把持部の昇降部の昇降状態を示す使用態様説明図であり、(a)は最も低い状態を示す図(側面図)、(b)は最も高い状態を示す図(側面図)である。
【
図6】
図6は、
図2に示す物品移設装置の要部において、通常時と物品を移設する際の状態とを示す図であり、(a)は通常時を示す図(側面図)、(b)は前方にせり出した状態を示す図(側面図)である。
【
図7】
図7は、本発明の物品移設装置における物品把持部を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7に示す物品把持部の内部構造を示す内部透視正面図である。
【
図9】
図9は、
図7に示す物品把持部の内部構造を示す内部透視上面図(モーターを省略して示す図)である。
【
図10】
図10(a)~(d)は、それぞれ
図7に示す物品把持部の使用態様を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の物品陳列システムの1実施形態を示す側面図である。
【
図13】
図13は、
図12に示す棚板の矢視図であって、一部を透視した状態を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、本発明の第2の実施形態の要部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0010】
物品移設装置1、収納部10、昇降部20、物品移送部30、物品把持部40、支持部50、移動部60、物品陳列システム100、陳列棚101
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
<全体構造>
図1に示す本実施形態の物品移設装置1は、所定の物品を移送して所定箇所に配置する物品移設装置である。そして
図1に示すように、物品を収納する収納部10と、収納部10を上下方向に移動させる昇降部20と、収納部10内に収納された物品を所定箇所に移送するための物品移送部30とを具備する。
以下の説明において、縦横方向(左右、正面裏面)及び上下方向については
図1の矢印方向の通りに解釈するものとする。
本実施形態の物品移設装置1は、複数の柱材3aと梁材3b(両者共にアルミやステンレスなどの金属により形成できる)とからなるフレーム体で構成された本体3に上述の収納部10、昇降部20及び物品移送部30がそれぞれ配されて構成されている。本体3は、長方体状の形態となっており、正面と上面とには柱材3aや梁材3bが設けられておらず、開放されている。また4本の柱材3aは、それぞれ幅方向中央部分に長手方向船体に亘って凹部3a-1が設けられ、この凹部3а-1を車輪が回動できるように形成されたレール状の部材からなり、昇降部20の一部を兼ねている。
また、本体の下部の4隅には、縦横に本体を移動させるための駆動キャスター5が配置されており、任意の方向に移動可能となされている。このような駆動キャスター5は公知の駆動機構付の車輪を特に制限なく採用して構成することができる。
また、本発明の物品移設装置により移設することができる物品(特に図示しない)は任意であり、ガムや飴玉等の小さい物品から洗剤や家具類などの大きなものまで適用可能である。ただし、物品の大きさにより本体や収納部の大きさも変更する必要があり、その場合には後述する寸法については、適宜修正する必要がある。
【0012】
<収納部>
収納部10は、
図1に示すように、上面が全面開口とされた長方形状の箱体11と箱体11を支持するフレーム13からなる。フレーム13は、箱体11を支持すると共に、箱体11を昇降部20や物品移送部30を設けるか又はこれらと連結させるためのものであり、本実施形態においては金属(アルミやステンレスを好ましく用いることができる)の棒状体51を
図1に示すように組み込んで箱体11を載置する底部13aを構成している。
【0013】
<昇降部>
昇降部20は、
図1に示すように、本体の両側縁に設けられた柱材3aと、本体の両側縁間中央に設置され、幅方向中央に凹部21aの形成されたレール材21とからなる、片面3本のレールと、これらのレールを介して上下動させるために各レールに設置された昇降駆動体23とからなる。これらの構造は本体の左右両側に同様に設けられている。各昇降駆動体23はそれぞれ収納部10のフレーム13に取り付けられており、それぞれ同じ高さになるようになされている。また、各昇降駆動体23は、レールの凹部21a、3a-1に嵌合する左右両側に2個ずつ設けられた車輪と、車輪に駆動力を伝達するモーターを内部に備えた駆動体ハウジングとからなる(図面上見づらくなるので符号は付与しない)。このような昇降駆動体の機構としては公知のモーターが連結されたガイドローラー機構を特に制限なく採用することができる。
【0014】
<物品移送部>
物品移送部30は、
図1及び
図2に示すように、物品を保持する物品把持部40と、物品把持部40を垂直方向に上下動可能に支持する支持部50と、支持部50を前後左右に移動させる移動部60とを具備する。
支持部50と移動部60とは、それぞれ収納部の天部に配されており、天部から物品把持部を懸下した状態で指示するように構成されている。以下、各部材について詳述する。
【0015】
(支持部)
支持部50は、
図2に示すように、物品把持部40に連結された棒状体51と、この棒状体51を安定的に挟持して且つ上下にスライドさせる送り機構部52とからなる。棒状体51は、円柱状であるが、その対向する2方向において長手方向に切り取られて2つの細長い対向面が形成されている。そして、この送り機構部52は、送り機構部52のハウジングの内部において、この対向面を把持しつつ棒状体51を上下に送るために配された2つのローラー(図示せず)と、これらのローラーに駆動力を伝達するためにハウジング内に配されたモーターとからなる(図示せず)。さらに安定的に棒状体51を支持するために、ハウジングにおける棒状体51が挿入されている部分の上下両端は棒状体51が摺動可能な程度に棒状体51を押さえている。また、送り機構部52は、後述する移動部60の構成部材を介して、収納部10の上部を移動可能に設けられている。
【0016】
(移動部)
移動部60は、
図2~
図4に示すように、収納部の上端の左右両端に位置し縦方向に向けて配された縦スライドフレーム61、収納部の上端両側部に懸架された固定ロッド62、固定ロッド62に沿ってスライド可能に固定ロッド62を把持する左右一対のロッドスライド部63、及び縦スライドフレーム61を正面側に押し出す押出部64からなる縦方向移動部61Aと、左右一対のロッドスライド部63間に懸架された2本の懸架ロッド66、懸架ロッド66の下方において懸架ロッド66と平行に且つ縦スライドフレーム61を架橋するように設けられた2本の横スライドフレーム67、2本の懸架ロッド66間に橋渡しされて設けられ、支持部50を保持すると共に懸架ロッド66に沿ってロッドスライド部62間を自在に移動して、支持部50を横方向に移動させる保持スライド部68からなる横方向移動部61Bとからなる。また、縦スライドフレーム61はスライドレール61bに嵌合させて設置されており、このスライドレール61bに嵌合された状態で縦スライドレール61が縦方向にスライドするように構成されている。
ロッドスライド部63は、縦スライドフレーム61に嵌合された2つのローラー63aと、それぞれのローラー63aに連結されて、回転駆動力を伝達する2つのサーボモーター(図示せず)とを有し、これらのローラー63a及びサーボモーターをH状のフレーム63bに設置して構成されている。また、フレームを貫通するように固定ロッド62が配されており、フレームの左右両側の上端部に懸架ロッド66が配されている。
保持スライド部68は、12本のフレームからなるほぼ正方体形状の枠体68aであり、その上方の4隅にそれぞれ懸架ロッド66を貫通保持するロッド支持部68bが形成されており、また、下方の4隅に横スライドフレーム67の凹部に嵌合するローラー68cが設置されている。この枠体の内方に支持部50が設置されている。また、
図3に示すように、ロッドスライド部63を懸架して配されたラックフレーム69におけるラック部69aに噛み合うピニオン68dを、枠体の裏面側内方に有しており、このピニオンは図示しないサーボモーターに連結されており、所望の回転力をもって駆動することができ、それによって支持部50を伴って横方向に移動可能となされている。
押出部64は、
図4に示すように先端にピニオン64aが配されたサーボモーター64bからなり、縦スライドフレーム61の下方に設けられたラック61aと噛合い、サーボモーター64bの回転力によりピニオン64aを回転させて、ラック61aを縦方向に移動させることで縦スライドフレーム61を縦方向にスライドさせる。これにより、支持部50及び支持部50により支持されている物品把持部40を縦方向に移動させることができる。このように動かすことができるように縦スライドフレーム61は、ラック61aよりも内側に位置するように配されている。また、フレーム取付け部64cが縦スライドフレーム61の上方に設けられており、図示しない横方向フレームを取り付け可能にしている。
【0017】
(昇降部、支持部及び移動部の作用)
上述のように構成された昇降部20、支持部50及び移動部60は、
図5及び6に示すように作用する。
すなわち、
図5に示すように、昇降部20を最も低い位置に下げた場合、
図5(a)に示す位置に収納部10が下がり、昇降部20を最も高い位置に上げた場合には
図5(b)に示すように収納部10が高い位置に上がることになる。本実施形態においては最も低い位置は地面から270mm、最も高い位置は地面から1270mmの位置に収納部の下部が位置するように設定されている。この高さの設定は移設対象物の高さや物品に応じて任意であり、1m以内の高さや4~5mの高さにまで種々の高さに設定することが可能である。
特に図示しないが、支持部50のハウジング内に設けられたモーターを駆動させることにより棒状体51を上下動させることができ、収納部10の箱体11内にある物品を把持する際には下方に降ろし、物品を移設する際には上方に上げることとなる。
また、ロッドスライド部63のローラー63aを回転させることによりロッドスライド部63を縦方向に移動させることができ、結果支持部50を縦方向に移動させることができる。これにより、収納部10の箱体11内の物品を把持する際には物品の存在する縦方向位置までロッドスライド部63を動かす。また、保持スライド部68に設けられたピニオン68aを、サーボモーターを駆動させることで回転させることで固定されたラック69aに噛合いながら移動して、その結果支持部50を横方向に移動させる。これにより収納部10の箱体11内の物品を把持する際には、物品の存在する横方向位置まで保持スライド部68を移動させることで支持部50を所定の横方向位置に移動させることができる。
このように、ロッドスライド部63と保持スライド部68とを動かすことで保持スライド部68に保持されている支持部50を所定の位置にまで縦横に移動させることができる。
そして、物品を把持した後は、
図6(a)に示す状態から物品を移設する位置にまで上述のロッドスライド部63と保持スライド部68との動きに準じて縦横に移動させるが、この際収納部10よりも外側に把持した物品を出して、所定の位置に載置する必要がある。その際、
図6(b)に示すように押出部64のピニオンを回転させることで縦スライドレールを正面外方に押出して、支持部50並びに支持部50に支持されている物品把持部を押出し、上述のようにロッドスライド部と保持スライド部68とを移動させることで物品把持部を所定位置まで縦横に移動させた後、支持部50を下方に下げることで所定位置に物品を下すことができる。
なお、物品把持部の作用については後述する。
【0018】
(物品把持部)
物品把持部40は、
図7~10に示すように、所定間隔を空けて配置された2つ以上の指部41と、指部41それぞれを支持する指基部42と、を具備する。指部41は、指基部42との指部連結部材43を支点として回動自在に設置されており、指基部42は、所定の水平方向に移動可能に設置されている。
指部41及び指基部42は、それぞれ駆動機構が設置されたハウジング44の下方において、左右両側にそれぞれ2つずつ、合計4つ設けられている。4つの指部には、それらの先端に爪部41aが設けられており、対向する指部41の爪部41aはそれぞれの先端が対向する指部を向くように設置されている(
図8等)。指部41は、細い棒状の部材により構成されているが、指基部42は四角柱状の部材により形成されており図示しないが内部にサーボモーターが配置されている。これらを形成する材料は特に制限されず、アルミやステンレスなどの金属の他、各種プラスチック材料も用いることができる。
爪部41aは、指部41の先端に金属片をネジ等の締結部材により固定することにより形成されている。また指部41と指基部42との指部連結部材43を構成する連結部分はワッシャーを介してボルトとナット等の締結部材により、指部41を回動自在に且つ任意の角度で保持できるように連結されている。このような回動自在な連結構造は公知の駆動力によるトルクをかけ続けることが可能な連結構造を制限なく採用することができる。また爪部41aや指部41、指基部42の大きさは所望の物品により任意である。
図8及び9(なお
図8においてモーターは省略して示す)に示すように、ハウジング44の内部には支持部50に連結されるモーター収納治具45と、モーター収納治具45の先端に設けられた第2歯車46と、第2歯車46の左右両側に配され、各指基部42に連結部材47を介して連結された、ラック48a,48bとが設けられている。また、モーター収納治具内にはモーターが収納されており(図示せず)、このモーターの作用により物品保持部40を支持部50との連結点において上下方向に回転させることができる。なお、このモーターと第2歯車46とは連結されていない。第2歯車46はラック48a及びラック48bの両方と噛合っている。このモーター収納治具45の横に駆動モーター49aとこの駆動モーター49aの先端に設けられ、ラック48aと噛合っている第1歯車49bとが設けられている。
これらの構成により、駆動モーター49aを回転させることにより、第1歯車49aが回転し、ラック48aが
図9の矢印方向に移動する。ラック48aが移動することにより第2歯車46が回転し、かかる回転力によりラック48bが矢印方向(ラック48aと逆方向)に移動する。
また、
図7に示すように、指基部42には別途サーボモーター42aが設置されており指部41に回転力を付与するようになされている。
【0019】
そして、このように構成されている物品把持部40は、
図10に示すように、別途設けられたコンピュータ等の指令部(図示せず)等の指令を受けて第1歯車49aに回転力を付与するように駆動モーター49bを回転させることで、(a)に示す指部41の間隔が30mmの閉じた状態から、(b)に示す指部41の間隔が130mmの状態まで指基部42をスライドさせて開閉することができる。また、更に指基部42に設けられたサーボモータ42aの駆動力により指部41に回動力を付与することで指部41を回転させることができ、(c)に示すように指基部42を開いた状態で指部41を閉じることができると共に、(d)に示すように指基部42を開いた状態で指部41を開放状態とすることができる。
したがって、物品を把持する際には、指基部42を外方に向けてスライドさせて(b)に示す状態又は指部を回転させて(d)に示すような指部41が開いた状態とする。ついで物品を各指部41間に位置させた後爪部41aが物品に当たるまで指部41を閉じる方向に回転させて(c)に示す状態、必要に応じて指基部42を閉じる方向にスライドさせて(a)に示す状態として物品を把持する。
そして物品を所定の位置に移設する際には、これらの動作の逆を行い閉じた状態から開いた状態とすることで物品を解放して所定位置に配置することができる。
【0020】
<物品陳列システム>
本実施形態の物品陳列システム100は、
図11に示すように、上述の本発明の物品移設装置1と、物品の移設対象物としての陳列棚101とからなる。
陳列棚101における各棚板103は、
図11に示すように、陳列棚101から突出するように所定方向に向けて移動可能に形成されており、移動された棚板103における所定箇所に物品を配置するように、昇降部20と物品移送部30が動作する。これらの動作は別に設けられた指令部としてのコンピュータ(図示せず)からの指示により行われる。
さらに詳述すると、棚板は
図12及び
図13に示すように、物品を載置する載置台103a、載置台103aの左右両側に位置し、ラック103b-1(
図13)が内側に配された側部支持板103b、側部支持板103bのラックに噛合うピニオン103c-1を先端に有するサーボモーター103c、側部支持板103bをガイドすると共に外れないように押さえるガイド部103d-1を有する収容側板103dを具備する。また、側部支持板103bは、その外面にガイド部内に嵌合した状態で収容される内部ガイド部103b-2と、この内部ガイド部103b-2内に収容された細長い長方体の板体からなる送りガイド部103b-3とを有する。なお、
図13においては、内部ガイド部103b-2と送りガイド部103b-3とを実線で表しているが、実際には側部支持板の板体の裏側に位置するので本来見えない部材を透視して示している。これらガイド部103d-1、内部ガイド部103b-2及び送りガイド部103b-3の構成は通常公知の送り出し機構において採用されている構造を特に制限なく採用できる。
そして、陳列台101から棚板を突出させる際には、サーボモーター103cの駆動力によりピニオン103c-1を回転させ、ラック103b-1を陳列台の前方方向に向けて動作させることにより、まずガイド部103d-1から内部ガイド部103b-2が送り出され、さらに回転させると、内部ガイド部が限界までと繰り出された後、送りガイド部103b-3が限界まで送り出される。これにより
図12に示すように棚板103が棚板から突出した状態となる。
棚板103の収容時には、サーボモーター103cから逆の回転力をピニオン103c-1にかけるように駆動させることで、送りガイド部103b-3から順にガイド部103d-1内に収容して、棚板103を陳列棚101に収容することができる。
【0021】
(使用態様)
本実施形態の物品陳列システム100は、上述の本発明の物品移設装置を具備し、更にこの物品移設装置の動作に対応して動作する棚板を有する陳列棚を具備するものであるため、あらかじめ指令部としてのコンピュータに、所望の陳列棚の物品配置を入力しておき、物品が各種商品である場合には、商品の売り上げに応じて陳列棚における物品の在庫状況を推定し、所定の物品の不足分を補充するように物品移設装置1に指令を出し、当該不足物品の収容されるべき棚板103に向けて物品移設装置1を移動させ、昇降部20と物品移送部30とにより所定位置に把持した物品を移送し、次いで所定の棚板を突出させて、棚板における当該物品を配設すべき箇所に当該物品を載置する。その後、収納部内の物品がなくなるまでこれの動作を繰り返した後、物品移設装置を移動させて回収し、再度所定の物品を収納部内に収納して、これらの一連の動作を繰り返すことで、物品の補充を効率的に行うことができる。
また、これらの動作は冷蔵陳列棚のように裏側から商品の補充ができる場合の他、売り場内で物品移設装置を移動させつつ商品の補充を行うことができる。
【0022】
(第2の実施形態)
ついで、本発明の第2の実施形態について説明する。
以下の説明においては、上述のした実施形態と異なる点を詳細に説明する。特に説明しない点については、上述の第1の実施形態における説明が適用される。
第2の実施形態の物品移設装置においては、物品保持部240が上述の実施形態と異なる。
すなわち、
図14に示すように、物品保持部240は、指部41に変えて、保持部材241が設けられている。保持部材241は、基部242により支持されている。保持部材241は、上述の実施形態と同様に、基部242との指部連結部材243を支点として回動自在に設置されており、また指基部42は、所定の水平方向に移動可能に設置されている。
保持部材241は、本体241aと、本体241aの左右両側において本体241aを、連結部材243を介して基部242に連結するために設けられた一対の連結棒241bとからなる。連結棒241bは、本体の左右両側において上下一対に設けられた連結棒設置部における貫通穴を貫通させて設けられている。長さは本体241aを安定して連結できる長さがあれば特に制限されないが、物品の大きさに応じて基部242から保持部材までの長さを調節できるように、ある程度の長さを有しているのが好ましい。また、特に図示しないが、連結棒241bはナットなどの締結部品を用いて固定されている。
本体241aは、中空で長方形状の本体プレート241cの中央に設けられた回転自在に軸支された物品当接部241dとからなる。物品当接部241dは、円盤状で中央に軸体が配された(図示せず)回転部241d-1と回転部241d-1の周縁に設けられたドーナツ状の当接体241d-2とからなり、当接体241d-2が物品に当接することとなる。また、回転部241d-1は、軸体のみをもって本体プレート241cに設置されており、軸体は接着や締結されずに回転自在となるように設置されている。これにより、回転部241d-1及び当接体241d-2はそれぞれ抵抗なく自在に回転可能となっている。
保持部材241の各部材は、特に制限なく、この種の製品を製造する際に用いられる金属やプラスチックを用いて形成することができるが、当接体241d-2は、ゴムやウレタンなどの弾性力のある材料を用いて形成することが、物品の保持性能を高いレベルとする点で好ましい。
そして、本実施形態の物品保持装置241は、上述の実施形態と同様にして用いることができ、所望の物品の上方に保持部材241を移動させ、物品の大きさに応じて基部242を移動させて一対の基部242の間隔を調節し、物品が一対の保持部材241で挟持することで物品を保持し、所定の位置にまで移動させ、この所定の位置に到達した際に保持部材による挟持を解除することで、物品の保持及び移動を行うことができる。この際、直に物品に当接し、物品を保持する部分である物品当接部241dが回転自在であるため、保持される物品の重心を考慮せずに物品の把持を行っても、物品が、その重心を自然と取れる位置に物品当接部241dの回転により移動する。しかも物品が当接する当接体241d-2が、弾性力のある材料により形成されているため、物品を傷つけることなくしっかりと保持することができる。
また、物品の保持を物品が斜めに偏奇した状態となるようにすれば物品当接部241dを回転させることなく、物品を保持することが可能であるため、物品を回動させることなく保持したい場合でも特にストッパー機構を設ける必要がない。
【0023】
なお、駆動キャスター、昇降駆動体、ロッドスライド部、保持スライド部、物品把持部、陳列棚等の各駆動体は、特に図示しないが、それぞれ配線を介して電源及び指示命令を出す指令部としてのコンピュータと連結されており、電力が供給されると共に、コンピュータからの指令を受信できるようになっている。そしてコンピュータからの指令に応じて上述の作用により適切な物品の適切な移設作業阿形を行う。
また、特に材料について詳述していない部材については、通常この種の装置を構成する際に用いられる金属材料やプラスチック材料を特に制限なく用いて構成することができる。また、物品によっては傷のつきやすい物や形の崩れやすいものもあるので、爪部や指部にラバー素材の緩衝部を設けてもよい。
また、これらの他においても、上述の実施形態に何ら制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの小売店において、効率的に商品補充を行う場合や、各種工場において効率的に部品の補給を行う場合などにおいて有用であり、作業員や販売員が作業又は接客を行いつつ、物品の補充を行わなければならない場合に、効率的な作業や接客を行えるようになる点で有用である。