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特許7201218シール部材、浴室用シール構造、シール部材セット、およびシール部材セットの製造方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】シール部材、浴室用シール構造、シール部材セット、およびシール部材セットの製造方法。
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/20 20060101AFI20221227BHJP
   E04H 1/12 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
E03C1/20 B
E04H1/12 301
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018214544
(22)【出願日】2018-11-15
(65)【公開番号】P2019094768
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2017222554
(32)【優先日】2017-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 貴洋
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-144147(JP,A)
【文献】特開平10-088637(JP,A)
【文献】特開2000-337029(JP,A)
【文献】特開2014-205995(JP,A)
【文献】特開2003-239406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/20
E04H 1/12
E04B 1/68
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
L字状に折り曲げられた薄板からなり、互いに交差して連なる第1支持片と第2支持片とを有する支持板と、
上記第1支持片と第2支持片に接するようにして上記支持板に支持された非硬化型防水材と、
を備え、
上記支持板が樹脂からなり、可撓性を有していることを特徴とするシール部材。
【請求項2】
L字状に折り曲げられた薄板からなり、互いに交差して連なる第1支持片と第2支持片とを有する支持板と、
上記第1支持片と第2支持片に接するようにして上記支持板に支持された非硬化型防水材と、
を備え、
上記第1支持片に、切欠または穴からなる、上記非硬化型防水材を通すための通過部が形成されていることを特徴とするシール部材。
【請求項3】
L字状に折り曲げられた薄板からなり、互いに交差して連なる第1支持片と第2支持片とを有する支持板と、
上記第1支持片と第2支持片に接するようにして上記支持板に支持された非硬化型防水材と、
を備え、
上記第2支持片に、上記第2支持片と同一平面上に突出する把手部が形成されていることを特徴とするシール部材。
【請求項4】
L字状に折り曲げられた薄板からなり、互いに交差して連なる第1支持片と第2支持片とを有する支持板と、
上記第1支持片と第2支持片に接するようにして上記支持板に支持された非硬化型防水材と、
を備え、
上記第1支持片と上記第2支持片と上記非硬化型防水材が直線状に延びていることを特徴とするシール部材。
【請求項5】
L字状に折り曲げられた薄板からなり、互いに交差して連なる第1支持片と第2支持片とを有する支持板と、
上記第1支持片と第2支持片に接するようにして上記支持板に支持された非硬化型防水材と、
を備え、
上記第1支持片がL字形をなし、その外側の互いに交差する2つの側縁のそれぞれに、上記第2支持片が連なっており、上記非硬化型防水材が上記第1支持片に対応してL字形をなしていることを特徴とするシール部材。
【請求項6】
浴室を囲む複数の浴室構成体を浴室用防水パンの周縁の載置部に設置した状態で、隣り合う上記浴室構成体と上記載置部との間の隙間をシールするシール構造において、
請求項に記載のシール部材が、上記浴室用防水パンの辺の中間部において、上記第1支持片を水平にして上記浴室用防水パンの載置部に載せ、上記第2支持片を起立させた状態で、設置されており、当該シール部材の上記非硬化型防水材が、同一垂直面上において隣り合う上記浴室構成体の下端の角部により押し潰されていることを特徴とする浴室用シール構造。
【請求項7】
浴室を囲む複数の浴室構成体を浴室用防水パンの周縁の載置部に設置した状態で、隣り合う上記浴室構成体と上記載置部との間の隙間をシールするシール構造において、
請求項に記載のシール部材が上記浴室用防水パンのコーナー部において、上記第1支持片を水平にして上記浴室用防水パンの載置部に載せ、上記第2支持片を起立させた状態で、設置されており、当該シール部材の上記非硬化型防水材が、互いに直角をなして隣り合う上記浴室構成体の下端の角部により押し潰されていることを特徴とする浴室用シール構造。
【請求項8】
浴室用防水パンが浴槽側防水パンと洗い場側防水パンを接続してなり、上記浴槽側防水パンの周縁の載置部と上記洗い場側防水パンの周縁の載置部の境部をシールするシール構造において、
請求項に記載のシール部材の上記第1支持片と上記第2支持片と上記非硬化型防水材が直線状に延びており、当該シール部材が上記境部を跨るようにして設置され、この設置状態で、上記第1支持片が水平をなして上記浴槽側防水パンと上記洗い場側防水パンの上記載置部に載り、上記通過部が上記境部に位置し、上記第2支持片が起立しており、上記非硬化型防水材が浴室を囲む浴室構成体により押し潰されていることを特徴とする浴室用シール構造。
【請求項9】
上記浴室用防水パンの周縁には受入溝が形成されており、この受入溝の底面が上記載置部として提供されており、
上記シール部材のそれぞれは、上記第1支持片が上記受入溝の底面に載り、上記第2支持片が上記受入溝の外側の側面に接した状態で、上記非硬化型防水材が上記受入溝内に配置されていることを特徴とする請求項6~8のいずれかに記載の浴室用シール構造。
【請求項10】
請求項1~5に記載の複数のシール部材に対応した平面形状をなす複数の収容凹部が形成された容器を用意する工程と、
上記収容凹部に上記シール部材の支持板を収容し、この収容状態で、上記支持板の上記第1支持片を上記収容凹部の底部に載置し、上記支持板の上記第2支持片を上記収容凹部の側面に沿わせる工程と、
上記収容凹部の全域にわたり所定高さまで上記非硬化型防水材を充填する工程と、
を備えたことを特徴とするシール部材セットの製造方法。
【請求項11】
請求項に記載の複数のシール部材と、上記複数のシール部材を収容する容器とを備えたシール部材セットにおいて、
上記容器は、上記複数のシール部材にそれぞれ対応した平面形状をなす複数の収容凹部を有し、上記複数のシール部材は、対応する上記収容凹部に収容され、この収容状態において、上記第1支持片が上記収容凹部の底面に載り、上記第2支持片と上記把手部が上記収容凹部の側面に当たり、上記非硬化型防水材が上記収容凹部の全域にわたって、上記第2支持片の高さまで充填されていることを特徴とするシール部材セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材およびこのシール部材を用いて浴室を囲む壁パネル等の浴室構成体間をシールする構造、並びにシール部材セットおよびシール部材セットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、浴室用防水パンの周縁には浴室を囲む壁パネルやドア等の浴室構成体が設置されている。簡単に説明すると、浴室用防水パンの周縁に受入溝が形成されており、この受入溝に浴室構成体の下端縁部が挿入されている。
隣り合う浴室構成体の下端の角部と受入溝の底面との間の隙間は、成形された弾性材料のシール材ではシールが難しいので、非硬化型防水材をコーキングすることによりシールしている。すなわち、非硬化型防水材を予め受入溝に充填しておき、壁パネルを受入溝に設置する際に、壁パネルの下端の角部で非硬化型防水材を押し潰すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-153513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、非硬化型防水材を現場施工時に受入溝に充填する場合、適切な量の非硬化型防水材を充填するのが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、シール部材において、
L字状に折り曲げられた薄板からなり、互いに交差して連なる第1支持片と第2支持片とを有する支持板と、
上記第1支持片と第2支持片に接するようにして上記支持板に支持された非硬化型防水材と、
を備えたことを特徴とする。
【0006】
上記構成によれば、予め支持板に非硬化型防水材を装着しておき、支持板と一緒にシールすべき箇所に設置することができるので、最適な量の非硬化型防水材を供給することができる。また、支持板は薄板からなるので、シールすべき箇所の構成部材の納まりが損なわれることがない。
【0007】
好ましくは、上記支持板が樹脂からなり、可撓性を有している。
上記構成によれば、シールすべき箇所の構成部材間に若干の段差があっても、可撓性を有する支持板がこの段差に追従することができ、確実なシールを行うことができる。
【0008】
好ましくは、上記第1支持片に、切欠または穴からなる、上記非硬化型防水材を通すための通過部が形成されている。
上記構成によれば、支持板の第1支持片に接する構成部材が分断されている場合に、非硬化型防水材が第1支持片の透過部から上記分断された構成部材間の隙間に侵入するので、より一層良好なシールが得られる。
【0009】
好ましくは、上記第2支持片に、上記第2支持片と同一平面上に突出する把手部が形成されている。
上記構成によれば、把手を手で掴んでシール部材をシールすべき箇所に設置することができるので、設置作業が楽である。
【0010】
一具体例では、上記第1支持片と上記第2支持片と上記非硬化型防水材が直線状に延びている。
【0011】
他の具体例では、上記第1支持片がL字形をなし、その外側の互いに交差する2つの側縁のそれぞれに、上記第2支持片が連なっており、上記非硬化型防水材が上記第1支持片に対応してL字形をなしている。
【0012】
本発明の他の態様は、浴室を囲む複数の浴室構成体を浴室用防水パンの周縁の載置部に設置した状態で、隣り合う上記浴室構成体と上記載置部との間の隙間をシールするシール構造において、上記直線状に延びるシール部材が、上記浴室用防水パンの辺の中間部において、上記第1支持片を水平にして上記浴室用防水パンの載置部に載せ、上記第2支持片を起立させた状態で、設置されており、当該シール部材の上記非硬化型防水材が、同一垂直面上において隣り合う上記浴室構成体の下端の角部により押し潰されていることを特徴とする。
上記構成によれば、同一垂直面上において隣り合う浴室構成体間を、良好にシールすることができる。
【0013】
本発明のさらに他の態様は、浴室を囲む複数の浴室構成体を浴室用防水パンの周縁の載置部に設置した状態で、隣り合う上記浴室構成体と上記載置部との間の隙間をシールするシール構造において、上記L字形をなすシール部材が上記浴室用防水パンのコーナー部において、上記第1支持片を水平にして上記浴室用防水パンの載置部に載せ、上記第2支持片を起立させた状態で、設置されており、当該シール部材の上記非硬化型防水材が、互いに直角をなして隣り合う上記浴室構成体の下端の角部により押し潰されていることを特徴とする。
上記構成によれば、直角をなして隣り合う浴室構成体間を、良好にシールすることができる。
【0014】
本発明のさらに他の態様は、浴室用防水パンが浴槽側防水パンと洗い場側防水パンを接続してなり、上記浴槽側防水パンの周縁の載置部と上記洗い場側防水パンの周縁の載置部の境部をシールするシール構造において、
通過部を有するシール部材の上記第1支持片と上記第2支持片と上記非硬化型防水材が直線状に延びており、当該シール部材が上記境部を跨るようにして設置され、この設置状態で、上記第1支持片が水平をなして上記浴槽側防水パンと上記洗い場側防水パンの上記載置部に載り、上記通過部が上記境部に位置し、上記第2支持片が起立しており、上記非硬化型防水材が浴室を囲む浴室構成体により押し潰されていることを特徴とする。
上記構成によれば、通過部を通る非硬化型防水材の一部により、浴槽側防水パンの周縁の載置部と上記洗い場側防水パンの周縁の載置部の境部を、良好にシールすることができる。
【0015】
好ましくは、上記浴室用防水パンの周縁には受入溝が形成されており、この受入溝の底面が上記載置部として提供されており、上記シール部材のそれぞれは、上記第1支持片が上記受入溝の底面に載り、上記第2支持片が上記受入溝の外側の側面に接した状態で、上記非硬化型防水材が上記受入溝内に配置されている。
上記構成によれば、シール部材を正確に位置決めすることができる。
【0016】
本発明のさらに他の態様は、シール部材セットの製造方法において、
複数のシール部材に対応した平面形状をなす複数の収容凹部が形成された容器を用意する工程と、
上記収容凹部に上記シール部材の支持板を収容し、この収容状態で、上記支持板の上記第1支持片を上記収容凹部の底部に載置し、上記支持板の上記第2支持片を上記収容凹部の側面に沿わせる工程と、
上記収容凹部の全域にわたり所定高さまで上記非硬化型防水材を充填する工程と、
を備えたことを特徴とする。
上記方法によれば、適量の非硬化型防水材を支持板に確実に供給することができる。
【0017】
本発明のさらに他の態様は、把手部を有する複数のシール部材と、上記複数のシール部材を収容する容器とを備えたシール部材セットにおいて、
上記容器は、上記複数のシール部材にそれぞれ対応した平面形状をなす複数の収容凹部を有し、上記複数のシール部材は、対応する上記収容凹部に収容され、この収容状態において、上記第1支持片が上記収容凹部の底面に載り、上記第2支持片と上記把手部が上記収容凹部の側面に当たり、上記非硬化型防水材が上記収容凹部の全域にわたって、上記第2支持片の高さまで充填されていることを特徴とする。
上記構成によれば、シール部材セットを施工現場まで運び、施工現場において、容器からシール部材を円滑に取り出すことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、最適な量の非硬化型防水材を、シールすべき箇所の構成部材の納まりを損なうことなく、供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るシール構造が適用される浴室用防水パンを示す平面図であり、浴室用防水パンは浴槽側防水パンと洗い場側防水パンを接続してなる。
図2図1の浴槽側防水パンの長辺中央部におけるシール構造の縦断面図ある。
図3図1の浴槽側防水パンの長辺中央部およびコーナー部のシール構造を示す平断面図である。
図4図1の浴槽側防水パンと洗い場側防水パンの周縁部の境部におけるシール構造を示す平面図である。
図5】上記長辺中央部のシール構造に用いられるシール部材の製造工程を順に示す斜視図であり、(A)は樹脂製の薄板をトムソン加工で打ち抜くことにより得られたブランクを示し、(B)は上記ブランクを折り曲げることにより得られた支持板を示し、(C)は上記支持板に非硬化型防水材を取り付けることにより得られたシール部材の完成品を示す。
図6】上記コーナー部のシール構造に用いられるシール部材の製造工程を順に示す斜視図であり、(A)は樹脂製の薄板をトムソン加工により打ち抜くことにより得られたブランクを示し、(B)は上記ブランクを折り曲げることにより得られた支持板を示し、(C)は上記支持板に非硬化型防水材を取り付けることにより得られたシール部材の完成品を示す。
図7】(A)、(B)は、図5のシール部材の変形例を示す斜視図である。
図8】浴室で用いられる、シール部材セットを示す平面図であり、非硬化型防水材とカバーを省略して示す。
図9図8におけるA-A矢視拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
浴室ユニットが納められる建物内の空間の床スラブもしくは浴室ユニット用基礎には、浴室用防水パン1が設置されている。浴室用防水パン1は、それぞれ平面長方形をなす浴槽側防水パン1Aと洗い場側防水パン1Bの隣接する長辺同士を接続することにより、構成されている。
浴槽側防水パン1Aには浴槽(図示しない)が設置されている。浴槽側防水パン1Aは、支持脚を有する架台(図示しない)に支持されており、洗い場側防水パン1Bも支持脚に支持されている。
【0021】
浴槽側防水パン1Aは、底部11とその周縁部に全周にわたって形成された立ち上がり部12,13とを有している。底部11には、洗い場側防水パン1B寄りに排水口11aが形成され、この排水口11aには排水ユニット(図示しない)が装着されている。
洗い場側防水パン1Bには、浴槽側防水パン1A寄りに、立ち上がり部12’が形成されるとともに排水口(図示しない)が形成されている。
【0022】
浴槽側防水パン1Aの一方の長辺に対応する立ち上がり部12と、洗い場側防水パン1Bの立ち上がり部12’が、互いに接続されている。
本実施形態では、浴槽側防水パン1Aの他方の長辺に対応する立ち上がり部13に2枚の壁パネル20(浴室構成体)が設置され、2つの短辺の立ち上がり部13にそれぞれ1枚の壁パネル20が設置されている。洗い場側防水パン1Bにも、その周縁部における他方の長辺に2枚の壁パネル20(図示しない)が設置され、一方の短辺に1枚の壁パネル20(図示しない)が設置され、他方の短辺にドア(浴室構成体;図示しない)が設置されている。これら壁パネル20とドアにより浴室が囲われている。
【0023】
図2図3に示すように、浴槽側防水パン1Aの上記3つの辺の立ち上がり部13には、壁パネル20の下端縁部を受け入れるための受入溝15が形成されている。受入溝15は、底面15aと、垂直をなす外側の側面15bおよび内側の側面15cを有している。
【0024】
受入溝15の外側に隣接する浴槽側防水パン1Aの最外縁部16は、受入溝15の底面15aから上方に突出している。
図1に示すように、受入溝15および最外縁部16は浴槽側防水パン1Aの各辺に沿って直線状に延び、コーナー部Bにおいて連なっている。
【0025】
図1に示すように、洗い場側防水パン1Bにも、浴槽側防水パン1Aから離れた長辺および2つの短辺に沿って直線状に延びコーナー部において連なる受入溝15’と最外縁部16’を有している。これら受入溝15’、最外縁部16’の断面形状は、浴槽側防水パン1Aの受入溝15、最外縁部16の断面形状と同じである。
浴槽側防水パン1Aの短辺と洗い場側防水パン1Bの短辺の境部C(浴室用防水パン1の辺の中間部)では、受入溝15と受入溝15’が一直線をなして連なっている。
【0026】
図2に示すように、浴槽側防水パン1Aは、ビーズ発泡成形により発泡ポリスチレン(EPS)製(熱可塑性樹脂製)の発泡体層10aとこの発泡体層10aの上側を覆うスチレン系樹脂製(熱可塑性樹脂製)シートからなる表皮層10bにより構成されている。浴槽側防水パン1Aの受入溝15、最外縁部16は、表皮層10bにより画成されている。
洗い場側防水パン1Bも発泡体層を備えているが、本実施形態では浴槽側防水パン1Aと異なる構造を有している。図示しないが、洗い場側防水パン1Bの受入溝15’、最外縁部16’は、辺に沿って延びる直線状の押出成形品と、コーナー部の射出成形品により画成されている。
【0027】
浴槽側防水パン1Aの長辺中央部A(辺中間部)では、図2図3に示すように、同一垂直面上において隣接する壁パネル20の側縁が支持構造30により支持されており、浴槽側防水パン1Aのコーナー部Bでは、図3に示すように、互いに直角をなす長辺側の壁パネル20と短辺側の壁パネル20の側縁が支持構造40により支持されている。
【0028】
長辺中央部Aの支持構造30は、支持金具31と連結板32と支柱35を有している。支持金具31には、高さ方向中間部にL字形をなす引掛部31aが切り起こされている。この引掛部31aを浴槽側防水パン1Aの最外縁部16に引っ掛け、下側の板部31bを発泡体層10aに係止された連結板32にネジ38で連結することにより、支持金具31が浴槽側防水パン1Aに取り付けられている。支持金具31の上側の板部31cは、浴槽側防水パン1Aの最外縁部16から上方に垂直に延びている。
支柱35は中空をなし、外側の板部35aの下端部がネジ39により支持金具31の板部31cに連結され、これにより垂直に支持されている。
【0029】
コーナー部Bの支持構造40も、支持金具41と連結板(図示しない)と支柱45を有している。支持金具41は、一対の連結片41A,41Bを有している。各連結片41A,41Bは、それぞれ上述した支持金具30と同様の構成を有しており、引掛部41aと、発泡体層10aに係止された連結板(図示略)に連結される下側の板部(図示略)と、上側の板部41cとを有している。連結片41A,41Bの板部41c同士は直角をなして連なっている。
【0030】
支柱45は中空をなし、互いに直角をなす外側の2つの板部45aを有しており、これら板部45aの下端部がネジ(図示しない)により支持金具41の2つの板部41cにそれぞれ連結され、これにより垂直に支持されている。
図3に示すように支柱35,45の内側には上下方向に延びる嵌合スリット35b,45bがそれぞれ形成されている。
【0031】
壁パネル20は、表側の面に表層材が積層された鋼板21と、鋼板21の裏側の面に設けられた石膏ボード等からなる基材22と、を有している。鋼板21の両側縁には裏側に折り曲げられた嵌合部21aが形成されており、下端縁には裏側に水平に折り曲げられたフランジ21bが形成されている。
【0032】
浴槽側防水パン1Aの長辺中央部Aでは、同一垂直面上で隣り合う2枚の壁パネル20の側縁の嵌合部21aを支柱35の嵌合スリット35bに嵌め込むことにより、これら壁パネル20の側縁が支柱35に支持されている。
浴槽側防水パン1Aのコーナー部Bでは、互いに直角をなして隣り合う長辺側の壁パネル20と短辺側の壁パネル20の側縁の嵌合部21aを、支柱45の嵌合スリット45bに嵌め込むことにより、これら壁パネル20の側縁が支持されている。
【0033】
壁パネル20の下端縁部は、受入溝15に挿入されており、そのフランジ21bが受入溝15の底面15aに載っている。
長辺中央部Aにおいて隣り合う2枚の壁パネル20の側縁間には、シール部材25が嵌め込まれている。コーナー部Bにおいて隣り合う2枚の壁パネル20の側縁間には、シール部材26が嵌め込まれている。
【0034】
洗い場側防水パン1Bの長辺中央部(図示しない)でも、浴槽側防水パン1Aの長辺中央部Aと略同様に支持金具と支柱を用いて同一垂直面上において隣り合う2枚の壁パネル20の側縁(または壁パネル20とドアの側縁)が支持される。
洗い場側防水パン1Bの短辺において、浴槽側防水パン1Aの短辺と洗い場側防水パン1Bの短辺の境部Cから所定距離離れた箇所でも、支持金具と支柱を用いて同一垂直面上において隣り合う2枚の壁パネル20の側縁が支持される。
洗い場側防水パン1Bのコーナー部でも、浴槽側防水パン1Aのコーナー部Bと略同様に、支持金具と支柱を用いて互いに直角をなして隣り合う2枚の壁パネル20の側縁(または壁パネル20とドアの側縁)が支持される。
【0035】
長辺中央部Aにおいて、隣り合う壁パネル20の下端角部と浴槽側防水パン1Aの受入溝15の底面15aとの間には、シール部材25でシールすることができない隙間が形成されている。この隙間をシールするために、図5(C)に示すシール部材5が用いられる。
【0036】
シール部材5は、樹脂製の薄板からなる支持板50と、この支持板50に支持された非硬化型防水材60とを備えている。
最初に、支持板50について説明する。図5(A)に示すように、0.2~0.4mmの薄肉の樹脂製(PET、PP,PE,PVC等)のシートをトムソン加工(打ち抜き加工)することにより、平板形状のブランク50Aを得る。このブランク50Aは 略長方形をなし、その長手方向に延びる罫線59(折り曲げライン、図において破線で示す)により、第1支持片51と、第2支持片52とが区分けされている。罫線59は、例えば直線状に延びる薄肉部により構成されており、他の部位に比べて曲げ剛性が低くなっている。第1支持片51において罫線59とは反対側の辺の中央には、例えば三角形の切欠53(通過部)が形成されている。第2支持片52において罫線59とは反対側の辺の中央には、把手部54が形成されている。
【0037】
上記ブランク50Aを、罫線59において第1支持片51と第2支持片52が直角をなすように折り曲げることにより、図5(B)に示す断面L字形の支持板50を得る。
上記支持板50に非硬化型防水材60を装着することにより、図5(C)に示すシール部材5が得られる。非硬化型防水材60は、例えば硬化剤を含まないシリコーンからなり、粘着性を有するとともに低弾性である。
非硬化型防水材60は断面が略正方形であり、第1支持片51、第2支持片52に沿って直線状に延び、その2つの面が第1支持片51、第2支持片52に接している。
【0038】
また、コーナー部Bにおいて、隣り合う壁パネル20の下端角部と浴槽側防水パン1Aの受入溝15の底面15aとの間の隙間をシールするために、図6(C)に示すシール部材7が用いられる。
【0039】
シール部材7は、樹脂製の薄板からなる支持板70と、この支持板70に支持された非硬化型防水材80とを備えている。
最初に、支持板70について説明する。支持板50と同様に樹脂製のシートをトムソン加工することにより、図6(A)に示す平板形状のブランク70Aを得る。このブランク70Aは 、L字形をなす第1支持片71と、この第1支持片71の外側の2つの辺に
罫線79(折り曲げライン、図において破線で示す)を介して連なる2つの第2支持片72とを有している。第1支持片71において内側の2つの辺の中間部には切欠73(通過部)が形成されており、第2支持片72において罫線79とは反対側の辺には、把手部74が形成されている。
【0040】
上記ブランク70Aを、罫線79において第2支持片72と第1支持片71が直角をなすように折り曲げることにより、図6(B)に示す支持板70が得られる。
上記支持板70に非硬化型防水材80を装着することにより、図6(C)に示すシール部材7が得られる。非硬化型防水材80の材料はシール部材5の非硬化型防水材50と同様である。
非硬化型防水材80は断面が略正方形であり、第1支持片71に沿ってL字形をなし、その2つの面が第1支持片71、第2支持片72に接している。
【0041】
上記壁パネル20やドアを浴槽側防水パン1Aおよび洗い場側防水パン1Bに設置する前に、上記シール部材5を浴槽側防水パン1Aの長辺中央部Aおよび洗い場側防水パン1Bの長辺中央部および境部Cに設置し、上記シール部材7を浴槽側防水パン1Aのコーナー部Bおよび洗い場側防水パン1Bのコーナー部に、設置する。
【0042】
浴槽側防水パン1Aの長辺中央部Aを例にとって説明すると、図2図3に示すように、シール部材5を受入溝15内に設置する。具体的には、第1支持片51を水平にして受入溝15の底面15aに載せ、第2支持片52を垂直にして受入溝15の外側の側面15bに当てる。洗い場側防水パン1Bの長辺中央部でも同様にしてシール部材5を設置する。
【0043】
図4に示すように、浴槽側防水パン1Aと洗い場側防水パン1Bの周縁部の境部Cでは、この境部Cに架け渡されるようにしてシール部材5を受入溝15,15’内に設置する。シール部材5の設置状態は、上述した長辺中央部Aと同様である。すなわち、第1支持片51が水平をなして浴槽側防水パン1Aと洗い場側防水パン1Bの受入溝15,15’の底面15a,15a’に載り、第2支持片52が受入溝15,15’の外側の側面15b、15b’に当たる。切欠53は、上記境部Cに位置している。
【0044】
浴槽側防水パン1Aのコーナー部Bを例にとって説明すると、図3に示すように、上記シール部材7を、受入溝15内に設置する。具体的には、第1支持片71を水平にしてコーナー部BのL字形をなす受入溝15の底面15aに載せ、2つの第2支持片72を垂直にして長辺と短辺の受け入れ溝15の側面15bにそれぞれ当てる。洗い場側防水パン1Bのコーナー部でも同様にしてシール部材7を設置する。
【0045】
上記シール部材5,7の設置後に、壁パネル20とドアを浴槽側防水パン1Aおよび洗い場側防水パン1Bに設置する。この際、長辺中央部あやコーナー部Bでは、隣り合う2枚の壁パネル20の下端の角部(すなわちフランジ部21bの端部)が、シール部材5,7の防水材60,80を押し潰すことにより、防水材60,80は隣り合う2枚の壁パネル20(または壁パネル20とドア)の下端角部間に入り込んで、確実に両者の隙間を埋めることができ、良好な水密性を確保することができる。
【0046】
上記シール部材5,7では、予め最適な量の防水材60,80を支持板50,70に取り付けることができるので、最適な量の防水材60を、隣り合う壁パネル20間、および隣り合う壁パネル20とドアとの間に、充填することができる。
シール部材5,7の支持板50,70は薄板からなるので、壁パネル20やドアの納まりを阻害することはない。
上記シール部材5,7の受入溝15内へ設置する際に、把手54,74を手で掴むことができるので、設置作業が楽である。また、非硬化型防水材60、80が手に付着するのを防止でき、その量が減じられるのを防止できる。
【0047】
浴槽側防水パン1Aと洗い場側防水パン1Bの境部Cでは、受入溝15,15’の底面15aや側面15bに若干の段差が生じることがある。この場合でも、シール部材5の支持板50が樹脂製の薄板をなして可撓性を有しているので、第1支持片51、第2支持片52がこの段差に追従して変形し、受入溝15,15’の底面15a,15a’や側面15b,15b’に接することができ、良好なシール性を確保することができる。
【0048】
浴槽側防水パン1Aと洗い場側防水パン1Bの境部Cでは、受入溝15,15’が分断されており両者の間に僅かな隙間が形成されている。本実施形態では、上記隙間に対応した位置に第1支持板50の切欠53が配置されており、壁パネルによって押し潰された非硬化型防水材60の一部がこの切欠53を通って上記隙間に侵入するので、上記隙間のシールを確実に行なうことができる。
【0049】
洗い場側防水パン1Bのコーナー部では受入溝15’、最外縁部16’を画成する辺の押出成形品とコーナー部の射出成形品との間に若干の段差が形成されることがあるが、可撓性を有する支持板70の第1支持片71、第2支持片72が、段差に追従して変形することができる。また、成形品間のわずかな隙間には、この隙間に対応した位置にある切欠73から非硬化型防水材80が侵入するようになっている。
【0050】
なお、壁パネル20やドアの設置後に、壁パネル20の鋼板21の下端縁部およびドア下枠の下端縁部と、受入溝15,15’の内側の側面15cとの間にはシール材(図示しない)が嵌め込まれるかコーキング材が充填される。
【0051】
上記実施形態において、支持板を浴室構成体と異なる色にすれば、シール部材の設置を視認することができ、設置忘れを防止することができる。
【0052】
図5図6に示すシール部材5、7の形状および長さは種々採用可能である。例えば、図5のシール部材5の代わりに、図7(A)、(B)に示すシール部材5’,5”を用いてもよい。図7には支持板50のみを示す。図7において、図5に対応する構成部には同番号を付してその説明を省略する。
【0053】
図8図9は、複数のシール部材のセットを製造する方法を示す。このシール部材のセットは、浴室単位で使用される全てのシール部材を含むことが好ましい。
樹脂製シートを成形することにより例えば長方形の容器100を得る。容器100は、4隅部に図6のシール部材7に対応した平面形状の収容凹部101を有し、長辺中央に図5のシール部材5に対応した形状の収容凹部102を有し、これら収容凹部101,102に囲まれた領域に、図7(B)に示すシール部材5”に対応した形状の収容凹部103を有している。さらに容器100は、その周縁に鍔部105を有している。
【0054】
容器100の収容凹部101にシール部材7の支持板70を収容する。この収容状態で、支持板70の第1支持片71が収容凹部101の底部に載り、第2支持片72と把手部74が収容凹部101の外側の側面に接して起立している。
同様に収容凹部102、103に、シール部材5’、5”の支持板50を収容する。この収容状態で、支持板50の第1支持片51が収容凹部102,103の底部に載り、第2支持片52と把手部54が収容凹部102,103の側面に接して起立している。
【0055】
次に、収容凹部101に非硬化型防水材80を充填する。この非硬化型防水材80の充填量は予め決められており、マシンにより収容凹部101の全域にわたり、第2支持片72の高さとほぼ同じ高さまで充填する。このようにして、シール部材7が作られる。
同様に収容凹部102、103に、非硬化型防水材60を充填する。この非硬化型防水材60の充填量も予め決められており、マシンにより収容凹部102,103の全域にわたり、第2支持片52の高さとほぼ同じ高さまで充填する。このようにして、シール部材5,5”が作られる。
【0056】
最後に、樹脂フィルムからなるカバー120を容器100に被せ、容器100の周縁の鍔部105に溶着等の手段で取り付け、収容凹部101~103を密封する。
【0057】
上記シール材セットは、容器100に収容されたまま保管され、浴室の施工現場まで運搬される。施工現場でカバー120を外し、収容凹部101~103から、シール部材7、5、5”を取り出す。この際、把手74,54を掴むことにより、容易に取り出すことができる。
【0058】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の形態を採用することが可能である。
第1支持片の通過部として、第1支持辺に切欠を形成する代わりに、穴を形成してもよい。
シール部材は、実施形態の直線状、L字形の他、あらゆる形状を採用可能である。
把手部は、第2支持片の全長にわたって形成されていてもよい。
本願における浴室は、シャワーのみが可能な浴室(シャワー室)を含む。
上記実施形態ではシール部材を浴室用シール構造に用いたが、あらゆるシール対象に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、浴室のシール構造等に適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 浴室用防水パン
1A 浴槽側防水パン
1B 洗い場側防水パン
5,5’,5”,7 シール部材
15,15’ 受入溝
15a,15a’ 底面(載置部)
15b,15b 側面
16 最外縁部
20 壁パネル(浴室構成体)
50、70 支持板
51、71 第1支持板
52、72 第2支持板
53、73 切欠(通過部)
54、74 把手部
60,80 非硬化型防水材
100 容器
101~103 収容凹部
A 長辺中央部(辺中間部)
B コーナー部
C 境部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9