(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】ウエットブラスト用噴射ガン
(51)【国際特許分類】
B24C 5/02 20060101AFI20221227BHJP
B24C 5/04 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
B24C5/02 B
B24C5/04 A
(21)【出願番号】P 2019023742
(22)【出願日】2019-02-13
【審査請求日】2021-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】396019631
【氏名又は名称】株式会社チップトン
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大脇 五郎
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第97/007378(WO,A2)
【文献】特開平11-077545(JP,A)
【文献】実開昭62-001764(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C 5/02
B24C 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガン本体の前端部に取り付けられた噴射ノズルと、
前記ガン本体内において前記噴射ノズルと同軸状に配され、前記ガン本体内に圧送されたスラリーを前記噴射ノズルの後端部に供給する供給ノズルと、
前記ガン本体の内周面と前記供給ノズルの外周面との間に形成され、前記噴射ノズル内に連通する環状空間と、
前記噴射ノズルの後方において前記環状空間内に高圧ガスを供給するガス供給部
と、
前記噴射ノズルと前記供給ノズルに形成され、前後方向に突き当たることが可能な位置決め部とを備え、
前記噴射ノズルの後端部内周面と前記供給ノズルの前端部外周面との間には、前記環状空間と前記供給ノズルより前方の空間とを連通させる環状のガス流路が構成され、
前記噴射ノズルと前記供給ノズルが前後方向に相対変位することで、前記ガス流路の断面積が増減することを特徴とするウエットブラスト用噴射ガン。
【請求項2】
前記ガン本体に形成され、軸線を前後方向に向けた固定側ネジ部と、
前記噴射ノズルと前記供給ノズルのうち少なくとも一方に形成され、前記固定側ネジ部に対しねじ込み可能な可動側ネジ部と、
前記固定側ネジ部に対する前記可動側ネジ部の相対回転を規制可能なロックナットとを備えていることを特徴とする請求項1に記載のウエットブラスト用噴射ガン。
【請求項3】
前記ロックナットは、前記可動側ネジ部又は前記固定側ネジ部よりも硬度の高い材料からなることを特徴とする請求項2に記載のウエットブラスト用噴射ガン。
【請求項4】
前記ガン本体と前記噴射ノズルとの間、又は前記ガン本体と前記供給ノズルとの間で前後方向に挟み付けられるスペーサを備えていることを特徴とする
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のウエットブラスト用噴射ガン。
【請求項5】
前記噴射ノズルの後端部内周面に形成され、前方に向かって次第に小径となるように傾斜したガイド内周面と、
前記供給ノズルの前端部外周のうち前記ガイド内周面と対向する領域に形成され、前方に向かって次第に小径となるように傾斜したガイド外周面を備えていることを特徴とする
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のウエットブラスト用噴射ガン。
【請求項6】
前記供給ノズルの前端部に形成され、前記供給ノズルの内周面と前記ガイド外周面に対して角度をなして連なる環状前端面を備えていることを特徴とする
請求項5に記載のウエットブラスト用噴射ガン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエットブラスト用噴射ガンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ワークの表面処理を行う手段として、砥粒と液体とが混合されたスラリーを、ノズルの内部で高圧ガスにより固気液三相流状態とし、噴射ノズルの噴射口からワークに向けて噴射するウエットブラスト装置が開示されている。ノズルは、筒状のノズルホルダと、ノズルホルダの中心部に配置されて高圧ガスを供給するガスノズルと、ノズルホルダの前端部にガスノズルと同軸状に取り付けられた噴射ノズルとを備えている。スラリーは、ノズルホルダのブラスト媒体導入部からガスノズルの前端部外周に向けて供給され、噴射ノズルの内部で高圧ガスと混合され、高圧ガスの圧力により加速されて噴射ノズルから噴射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のノズルでは、スラリーが、噴射ノズルの内周面とガスノズルの外周面との間の狭いリング状空間内に供給され、リング状空間からガスノズルの前方へ送り出される。ところが、一般に、スラリーの供給圧は、ガスノズルの前端から噴射される高圧ガスの圧力より低いので、リング状空間からガスノズルの前方へ向かおうとするスラリーが高圧ガスに押し戻され、噴射ノズルへのスラリーの供給量が不十分となる。そのため、噴射後のスラリーが拡散し易く、加工力が低下する虞がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、加工力に優れたウエットブラスト用噴射ガンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のウエットブラスト用噴射ガンは、
ガン本体の前端部に取り付けられた噴射ノズルと、
前記ガン本体内において前記噴射ノズルと同軸状に配され、前記ガン本体内に圧送されたスラリーを前記噴射ノズルの後端部に供給する供給ノズルと、
前記ガン本体の内周面と前記供給ノズルの外周面との間に形成され、前記噴射ノズル内に連通する環状空間と、
前記噴射ノズルの後方において前記環状空間内に高圧ガスを供給するガス供給部と、
前記噴射ノズルと前記供給ノズルに形成され、前後方向に突き当たることが可能な位置決め部とを備え、
前記噴射ノズルの後端部内周面と前記供給ノズルの前端部外周面との間には、前記環状空間と前記供給ノズルより前方の空間とを連通させる環状のガス流路が構成され、
前記噴射ノズルと前記供給ノズルが前後方向に相対変位することで、前記ガス流路の断面積が増減する。
【発明の効果】
【0007】
高圧ガスは、環状空間内から噴射ノズルに向けて前向きに供給される。供給ノズルは噴射ノズルと同軸状に配されているので、供給ノズルを通して噴射ノズルの後端部に供給されたスラリーは、高圧ガスにより加速された状態で噴射ノズルから噴射される。本発明の噴射ガンは、噴射ノズルへのスラリーの供給量が不足することがないので、加工力に優れている。また、ガス流路の断面積を増減させることにより、高圧ガスの流量を調節することができる。さらに、位置決め部同士が突き当たった状態を噴射ノズルの原点位置として設定することにより、供給ノズルに対する噴射ノズルの相対位置を高い精度で且つ容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1のウエットブラスト用噴射ガンが用いられるブラスト処理装置の概略図である。
【
図3】噴射ノズルが原点位置にある状態をあらわす噴射ガンの側断面図である。
【
図5】噴射ノズルが原点位置にある状態をあらわす噴射ガンの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、前記ガン本体に形成され、軸線を前後方向に向けた固定側ネジ部と、前記噴射ノズルと前記供給ノズルのうち少なくとも一方に形成され、前記固定側ネジ部に対しねじ込み可能な可動側ネジ部と、前記固定側ネジ部に対する前記可動側ネジ部の相対回転を規制可能なロックナットとを備えていてもよい。この構成によれば、噴射ノズルと供給ノズルの前後方向への相対位置を微調節することができるとともに、位置調節済みの噴射ノズルと供給ノズルの位置ずれを防止することができる。
【0011】
本発明は、前記ロックナットは、前記可動側ネジ部又は前記固定側ネジ部よりも硬度の高い材料からなっていてもよい。この構成によれば、噴射ノズルと供給ノズルの前後方向への位置ずれを、確実に防止することができる。
【0013】
本発明は、前記ガン本体と前記噴射ノズルとの間、又は前記ガン本体と前記供給ノズルとの間で前後方向に挟み付けられるスペーサを備えていてもよい。この構成によれば、前後方向の寸法の異なる複数のスペーサを複数用意して、適宜交換することにより、ガス流路の断面積を変更、調節することができる。
【0014】
本発明は、前記噴射ノズルの後端部内周面に形成され、前方に向かって次第に小径となるように傾斜したガイド内周面を備えていてもよい。この構成によれば、環状空間から噴射ノズル内に供給される高圧ガスは、噴射ノズル内においてスラリーの流れに沿うように流れるので、噴射ノズルに対するスラリーの供給量の低下を抑制することができる。
【0015】
本発明は、前記供給ノズルの前端部外周のうち前記ガイド内周面と対向する領域に形成され、前方に向かって次第に小径となるように傾斜したガイド外周面を備えていてもよい。この構成によれば、ガイド内周面とガイド外周面との間を通過する高圧ガスが、層流状態で噴射ノズルに流入するので、スラリーの流れが乱されることがなく、スラリーの過剰な拡散を抑制できる。
【0016】
本発明は、前記ガイド内周面の傾斜角度と前記ガイド外周面の傾斜角度が、同じ角度であってもよい。この構成によれば、ガイド内周面とガイド外周面の間を通過する高圧ガスを、より安定した層流状態にすることができる。
【0017】
本発明は、前記供給ノズルの前端部に形成され、前記供給ノズルの内周面と前記ガイド外周面に対して角度をなして連なる環状前端面を備えていてもよい、この構成によれば、供給ノズルの前端部は、楔状に尖った肉薄形状ではなく、所定の肉厚寸法を有する形状をなしているので、高圧ガスやスラリーの圧力によって不正な変形を来す虞はない。
【0018】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を
図1~
図3を参照して説明する。尚、以下の説明において、前後の方向については、
図2,3における左方を前方と定義する。また、前後方向と軸線方向は同義で用いる。
【0019】
本実施例1の噴射ガン20(請求項に記載のウエットブラスト用噴射ガン)は、ワークWの上面に対し、砥粒と液体とが混合させたスラリーSを高圧で吹き付けることで研磨等のブラスト処理を施すためのブラスト処理装置10を構成するものである。
図1に示すように、ブラスト処理装置10の処理室11内には、噴射ガン20と、ワークWを載置するためのネット12が設けられている。噴射ガン20は、ブラケット17(
図2,3参照)によって所定位置に固定されている。ネット12は噴射ガン20の下方に配置されている。処理室11の下端部(噴射ガン20及びワークWより下方の領域)は、スラリーSを貯留するための貯留部13となっている。
【0020】
処理室11の外部には、ブラスト処理装置10を構成するポンプPとコンプレッサCが設けられている。貯留部13と噴射ガン20の接続ポート38との間にはスラリー圧送路14が配設され、スラリー圧送路14の途中にポンプPが設けられている。ポンプPは、貯留部13内のスラリーSを噴射ガン20の供給ノズル28内に供給する。
【0021】
スラリー圧送路14のうちポンプPより下流側(噴射ガン20側)には、スラリー圧送路14内のスラリーSを、噴射ガン20を経由させずに貯留部13へ戻し、貯留部13内のスラリーSを吐出圧によって撹拌するためのバイパス流路15が接続されている。コンプレッサCと噴射ガン20に取り付けた接続部材27との間にはガス圧送路16が配設されている。コンプレッサCは、高圧ガスG(例えば、空気)を噴射ガン20内の環状空間41に圧送する。
【0022】
噴射ガン20は、ガン本体21と、接続部材27と、供給ノズル28と、固定部材34と、噴射ノズル42と、ロックナット51とを備えて構成されている。ガン本体21は、アルミニウム等の金属材料や、ウレタン等の樹脂材料からなり、前後方向に貫通した円形断面の中心孔22を有する筒形状をなしている。ガン本体21の内周面のうち後端より少し前方の位置には、部分的に内径を小さくした形態の小径部23が形成されている。ガン本体21の内周面の後端部には、小径部23よりも内径の大きい凹部24が形成されている。ガン本体21の内周面(中心孔22)の前端部には、軸線を前後方向に向けた雌ネジ部25(請求項に記載の固定側ネジ部)が形成されている。
【0023】
ガン本体21には、ガン本体21の外周面から内周面まで径方向に貫通した形態のガス供給孔26(請求項に記載のガス供給部)が形成されている。ガス供給孔26は、ガン本体21の内周面のうち小径部23よりも前方の位置において、ガン本体21の内周面(中心孔22)に開口している。ガン本体21の外周には、ガス供給孔26と連通する接続部材27が取り付けられている。接続部材27には、ガス圧送路16の下流端が接続されるようになっている。
【0024】
供給ノズル28は、後述する噴射ノズル42よりも硬度の高い材料、具体的には、U-PE(超高分子量ポリエチレン)等の合成樹脂材料からなる。供給ノズル28は、軸線を前後方向に向けた円筒形をなしている。供給ノズル28の内部は、供給ノズル28を前後方向に貫通した円形断面のスラリー供給孔29となっている。供給ノズル28の後端部外周には、外径を部分的に大きくした形態の拡径部30が形成されている。
【0025】
供給ノズル28の外周面の前端部には、外径寸法が前方に向かって次第に小さくなるように傾斜したテーパ状のガイド外周面31が形成されている。ガイド外周面31は、スラリー供給孔29と同軸状である。供給ノズル28の外周面のうちガイド外周面31の後端に連なる位置には、供給ノズル28の軸線(前後方向)と直角な平面からなり、前方に臨む受け面32(請求項に記載の位置決め部)が形成されている。
【0026】
供給ノズル28のうち受け面32よりも前方の先端部は、前端側に向かって径寸法が小さくなるように傾斜したテーパ状のガイド外周面31が形成されているので、径方向の厚さが前端に向かって次第に薄くなるような形状をなす。しかし、供給ノズル28の材料は比較的硬度の高いU-PE等が用いられているので、高圧ガスGの圧力やスラリーSの圧力を受けても、供給ノズル28の前端部が径方向に不正な変形を生じるおそれがない。
【0027】
供給ノズル28の前端部には、環状前端面33が形成されている。環状前端面33は、側面視(側断面)において、供給ノズル28(スラリー供給孔29)の内周面前端部と直角に連なっている。また、環状前端面33は、側面視(側断面)において、ガイド外周面31の前端部と鈍角をなして連なっている。
【0028】
供給ノズル28は、ガン本体21に対し、ガン本体21の後方から中心孔22内に同軸状に挿入された状態で取り付けられている。ガン本体21に取り付けた供給ノズル28は、拡径部30が、ガン本体21の凹部24に嵌入されて小径部23に対し後方から当接することにより、ガン本体21に対して前後方向に位置決めされる。また、供給ノズル28は、供給ノズル28の外周面を小径部23の内周に嵌合させることにより、ガン本体21に対して径方向(軸線方向と直交する二次元方向)に位置決めされる。
【0029】
固定部材34は、円筒部35と、円筒部35の外周から径方向外方へ張り出した形態のフランジ部36とを有する。円筒部35の内部は、円筒部35を前後方向に貫通した形態のスラリー流入孔37となっている。スラリー流入孔37の内径は、スラリー供給孔29の内径と同じ寸法である。円筒部35の後端部には接続ポート38が形成され、接続ポート38には、スラリー圧送路14の下流端が接続されるようになっている。
【0030】
固定部材34は、ガン本体21の後端面と供給ノズル28の後端面に対し、後方から当接するようにして取り付けられている。ガン本体21に取り付けた固定部材34は、フランジ部36に貫通させたボルト40をガン本体21にねじ込んで締め付けることにより、ガン本体21に固定される。固定部材34をガン本体21に固定することにより、供給ノズル28がガン本体21に対し前後方向への相対変位を規制された状態で固定される。
【0031】
供給ノズル28をガン本体21に取り付けた状態では、固定部材34のスラリー流入孔37と供給ノズル28のスラリー供給孔29は、ガン本体21の中心孔22と同軸状に配され、供給ノズル28の前端部が中心孔22内に位置する。また、ガン本体21(中心孔22)の内周面と供給ノズル28の外周面との間には、環状空間41が構成される。環状空間41には、ガス供給孔26が連通している。
【0032】
噴射ノズル42は、全体として軸線をガン本体21と同軸状に向けた円筒形をなす。噴射ノズル42は、ガン本体21及び供給ノズル28よりも硬度の低い材料(例えば、ウレタン樹脂等)からなる。噴射ノズル42の内部空間のうち前端から前後方向中央部に至る前端側領域は、内径寸法が前後方向全長に亘って一定の定径孔43となっている。定径孔43の内径は、スラリー供給孔29の内径よりも小さい寸法である。
【0033】
噴射ノズル42(定径孔43)の内周前端部は、噴射口44として前方に開口している。噴射ノズル42の内周面のうち前後方向における略中央部から後端に至る領域(後端側領域)には、内径寸法が前方に向かって次第に小さくなるように傾斜したテーパ状のガイド内周面45が形成されている。供給ノズル28及び噴射ノズル42の軸線と平行に切断した側面視(側断面)において、軸線に対するガイド内周面45の傾斜角度は、ガイド外周面31の傾斜角度と同じ角度である。ガイド内周面45は定径孔43と同軸状をなしている。ガイド内周面45の前端の最小内径は、定径孔43の内径と同一寸法である。
【0034】
噴射ノズル42の外周面のうち前後方向における略中央部から後端に至る後端側領域には、噴射ノズル42(定径孔43及びガイド内周面45)と同軸状の雄ネジ部47(請求項に記載の可動側ネジ部)が形成されている。噴射ノズル42の後端面には、噴射ノズル42の軸線と直角な平面からなり、後方に臨む突当面48(請求項に記載の位置決め部)が形成されている。
【0035】
噴射ノズル42は、ガン本体21の前方から雄ネジ部47を雌ネジ部25にねじ込むことにより、ガン本体21に取り付けられる。ガン本体21に取り付けた噴射ノズル42は、スラリー供給孔29と同軸状をなす。雌ネジ部25に対する雄ネジ部47のねじ込み(ガン本体21に対する噴射ノズル42のねじ込み)を進めると、噴射ノズル42の後端部が供給ノズル28の前端部を包囲し、ガイド内周面45の後端部とガイド外周面31の前端部とが全周に亘って一定間隔を空けて径方向に対向する位置関係となる。噴射ノズル42の内部空間のうち供給ノズル28の前端よりも前方の領域(即ち、供給ノズル28の前端から噴射口44に至る領域)は、スラリーSと高圧ガスGが噴射口44へ流動しながら混合される混合空間49となっている。
【0036】
ガイド内周面45とガイド外周面31との間の環状の隙間は、ガス流路50となっている。ガス流路50の上流端(後端)は環状空間41の下流端(前端)と連通している。ガス流路50の下流端(前端)は混合空間49の上流端(後端)と連通している。したがって、環状空間41と混合空間49はガス流路50を介して連通している。噴射ノズル42(環状空間41)に供給された高圧ガスGは、ガス流路50を通過して混合空間49に流入するようになっている。
【0037】
ガス流路50を前後方向の軸線と直角に切断したときのガス流路50の断面積(即ち、ガイド内周面45とガイド外周面31との径方向の対向間隔)は、雌ネジ部25に対する雄ネジ部47のねじ込み量、即ち、供給ノズル28と噴射ノズル42の前後方向の位置関係を変えることによって調整することができる。換言すると、ガス流路50を前後方向の軸線と平行に切断したときのガス流路50の断面積は、雌ネジ部25に対する雄ネジ部47のねじ込み量、即ち、供給ノズル28と噴射ノズル42の前後方向の位置関係を変えることによって調整することができる。ガス流路50の断面積を増減することにより、ガス流路50における高圧ガスGの単位時間当たりの流量(以下、単に「流量」という)を増減することができる。
【0038】
高圧ガスGの流量調節に際しては、原点を設定し、原点を基準としてガン本体21に対する噴射ノズル42の相対回転角度又は回転数を決めておく方法がある。まず、ガン本体21に対して噴射ノズル42を最も深くねじ込んだときの噴射ノズル42の位置を、原点として設定する。この状態では、噴射ノズル42の突当面48が供給ノズル28の受け面32に突き当たり、それ以上、噴射ノズル42を回転させて後方へ変位させることができない。また、ガイド内周面45とガイド外周面31が面当たり状態に当接するので、ガス流路50の断面積が0となり、環状空間41から混合空間49への高圧ガスGの流入が不能となる。
【0039】
噴射ノズル42が原点位置にある状態から、噴射ノズル42を所定角度又は所定回転数だけ回転させると、その回転角度又は回転数に比例して、噴射ノズル42が供給ノズル28に対して前方へ相対変位する。噴射ノズル42の前進に伴い、ガス流路50の断面積が拡大していく。したがって、噴射ノズル42を、原点位置から所定角度又は所定回転数だけ回転させることにより、高圧ガスGの流量調節を容易に行うことができる。
【0040】
ガス流路50が所定の断面積となるように雄ネジ部47と雌ネジ部25のねじ込み量を調整した後は、雄ネジ部47にねじ込んだロックナット51をガン本体21の前端面に密着させるようにして締め付ける。ロックナット51の締付けにより、ガン本体21に対する噴射ノズル42の相対回転が規制され、噴射ノズル42がガン本体21に対して前後方向に位置決めされる。以上により、ガン本体21に対する噴射ノズル42の取付けが完了すると同時に、噴射ガン20の組付けが完了する。
【0041】
ロックナット51は、ロックナット51のねじ込み対象である雄ネジ部47が形成された噴射ノズル42の材料よりも硬度の高い材料からなる。尚、ロックナット51と雄ネジ部47との締付けにより噴射ノズル42を回転規制して固定する機能の信頼性を担保するためには、噴射ノズル42(雄ネジ部47)とロックナット50のうち少なくとも一方は、90度以上のショアA硬度を有することが好ましい。
【0042】
ワークWに対してブラスト加工を施す際には、供給ノズル28(スラリー供給孔29)の後端にスラリーSを供給するとともに、環状空間41に高圧ガスGを圧送する。スラリー供給孔29に供給されたスラリーSは、供給ノズル28の前端から混合空間49内に流入する。スラリー供給孔29と混合空間49は、同軸状をなして前後方向に直接的に連なっているので、スラリーSは混合空間49内を層流状に流れる。
【0043】
また、環状空間41内に圧送された高圧ガスGは、ガス流路50を通過して混合空間49に流入し、スラリーSと混合される。高圧ガスGの供給圧力はスラリーSの供給圧力より高いため、混合空間49へのスラリーSの流入が高圧ガスGの圧力によって阻害されることが懸念される。しかし、ガス流路50は、スラリー供給孔29と同軸状の円筒状をなしているので、混合空間49内における後端部(供給ノズル28の前端部に近い領域)では、高圧ガスGが、スラリーSの流れに沿うように、且つスラリーSを包み込む状態となる。したがって、スラリーSの流れが高圧ガスGの圧力に妨げられることはない。
【0044】
また、ガス流路50を構成するガイド外周面31とガイド内周面45は、互いに平行をなして径方向に対向しているので、ガス流路50を通過する高圧ガスGは層流状となる。これにより、スラリーSと高圧ガスGは、混合空間49内で均一に混合されて固気液三相流となり、定径孔43内を通過することにより層流状に整流され、スラリーSが過剰に拡散することなく、噴射口44からワークWに向けて噴射される。噴射口44が形成されている噴射ノズル42は、比較的硬度の低い材料からなるので、スラリーSが噴射口44の内周面に摺接することに起因する摩耗が低減される。
【0045】
本実施例1のウエットブラスト用の噴射ガン20は、ガン本体21と、ガン本体21の前端部に取り付けられた噴射ノズル42と、供給ノズル28とを有する。供給ノズル28は、ガン本体21内において噴射ノズル42と同軸状に配され、ガン本体21内に圧送されたスラリーSを噴射ノズル42の後端部に供給するものである。ガン本体21の内周面と供給ノズル28の外周面との間には、噴射ノズル42内に連通する環状空間41が形成されている。ガン本体21には、噴射ノズル42の後方において環状空間41内に高圧ガスGを供給するガス供給孔26が設けられている。
【0046】
高圧ガスGは、環状空間41内から噴射ノズル42内の混合空間49に向けて前向きに供給される。供給ノズル28は噴射ノズル42と同軸状に配されているので、供給ノズル28を通して噴射ノズル42の後端部(混合空間49)に供給されたスラリーSは、高圧ガスGにより噴射口44へ向けて前方(即ち、高圧ガスGの流動方向下流側)へ加速された状態で噴射ノズル42(噴射口44)から噴射される。本実施例1の噴射ガン20は、高圧ガスGの供給圧力がスラリーSの供給圧力より高くても、噴射ノズル42へのスラリーSの供給量が不足することがないので、加工力に優れている。
【0047】
また、噴射ノズル42の後端部内周面(ガイド内周面45)と供給ノズル28の前端部外周面(ガイド外周面31)との間には、環状空間41と供給ノズル28より前方の空間(混合空間49)とを連通させる環状のガス流路50が構成されている。噴射ノズル42と供給ノズル28を前後方向に相対変位させることで、ガス流路50の断面積を増減させることができる。ガス流路50の断面積を増減させることにより、高圧ガスGの流量を調節することができる。
【0048】
また、ガン本体21には、軸線を前後方向に向けた雌ネジ部25が形成され、噴射ノズル42には、雌ネジ部25に対しねじ込み可能な雄ネジ部47が形成されている。雄ネジ部47には、雌ネジ部25に対する雄ネジ部47の相対回転を規制可能なロックナット51がねじ込まれている。この構成によれば、噴射ノズル42と供給ノズル28の前後方向への相対位置を微調節することができるとともに、位置調節済みの噴射ノズル42と供給ノズル28の位置ずれを防止することができる。また、ロックナット51は、雄ネジ部47よりも硬度の高い材料からなるので、噴射ノズル42と供給ノズル28の前後方向への位置ずれを、確実に防止することができる。
【0049】
噴射ノズル42の後端部内周面には、前方に向かって次第に小径となるように傾斜したガイド内周面45が形成されている。環状空間41から噴射ノズル42内(混合空間49)に供給される高圧ガスGは、噴射ノズル42内においてスラリーSの流れに沿うようように流れるので、噴射ノズル42に対するスラリーSの供給量の低下を抑制することができる。
【0050】
供給ノズル28の前端部外周のうちガイド内周面45と対向する領域には、前方に向かって次第に小径となるように傾斜したガイド外周面31が形成されている。この構成によれば、ガイド内周面45とガイド外周面31との間(ガス流路50)を通過する高圧ガスGが、層流状態で噴射ノズル42(混合空間49)に流入するので、スラリーSの流れが乱されることがなく、スラリーSの過剰な拡散を抑制できる。また、ガイド内周面45の傾斜角度とガイド外周面31の傾斜角度が同じ角度なので、ガス流路50(ガイド内周面45とガイド外周面31の間)を通過する高圧ガスGを、より安定した層流状態にすることができる。
【0051】
供給ノズル28の前端部には、供給ノズル28の内周面とガイド外周面31に対して角度をなして連なる環状前端面33が形成されている。即ち、供給ノズル28の前端部は、楔状に尖った肉薄形状ではなく、所定の肉厚寸法を有する形状をなしている。したがって、高圧ガスGやスラリーSの圧力によって、供給ノズル28の前端部が不正な変形を来す虞がない。これにより、高圧ガスGの流れやスラリーSの流れが安定する。
【0052】
噴射ノズル42は、供給ノズル28に対する前後方向への位置調節が可能である。この構成によれば、スラリー供給孔29へのスラリーSの供給圧力、噴射口44の内径、スラリーSの粘度、高圧ガスGの供給圧力等に応じて、供給ノズル28に対する噴射ノズル42の前後方向の位置を調節することで、ガイド内周面45と供給ノズル28の前端部外周面(ガイド外周面31)との間の間隔(即ち、ガス流路50の断面積)を調節することができる。これにより、高圧ガスGの流量を調節して、良好なブラスト加工を実行することができる。
【0053】
供給ノズル28はガン本体21に固定して取り付けられており、ガン本体21には軸線を前後方向に向けた雌ネジ部25が形成され、噴射ノズル42には、雌ネジ部25に対しねじ込み可能な雄ネジ部47が形成されている。雄ネジ部47と雌ネジ部25は、ねじ込まれて相対回転することにより、ガン本体21及び供給ノズル28に対する噴射ノズル42の相対変位を可能にするものである。また、雄ネジ部47には、雌ネジ部25に対する雄ネジ部47の相対回転を規制可能なロックナット51がねじ込まれている。ロックナット51は、雄ネジ部47にねじ込まれた状態でガン本体21の前端面に密着することにより、ガン本体21に対する噴射ノズル42の相対回転を規制する。
【0054】
この構成によれば、噴射ノズル42の前後方向への位置調節を高い精度で行うことができるとともに、噴射ノズル42の位置ずれを防止することができる。また、ロックナット51は、噴射ノズル42よりも硬度の高い材料からなるので、噴射ノズル42の前後方向への位置ずれを確実に防止することができる。
【0055】
供給ノズル28には受け面32が形成され、噴射ノズル42には、受け面32に対して前方から突き当たることが可能な突当面48が形成されている。受け面32と突当面48が前後方向に突き当たった状態を、噴射ノズル42の原点位置に設定することにより、供給ノズル28に対する噴射ノズル42の相対位置を高い精度で且つ容易に調整することができる。
【0056】
<実施例2>
次に、本発明を具体化した実施例2を
図4~
図5を参照して説明する。尚、以下の説明において、前後の方向については、
図4,5における左方を前方と定義する。また、前後方向と軸線方向は同義で用いる。本実施例2の噴射ガン60(請求項に記載のウエットブラスト用噴射ガン)は、噴射ノズル61を上記実施例1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0057】
本実施例2の噴射ノズル61は、ノズル本体62とネジ部材66と抜止めリング68とを組み付けて構成されている。ノズル本体62は、実施例1の噴射ノズル42と同じくウレタン樹脂等の比較的硬度の低い合成樹脂材料からなる。ネジ部材66と抜止めリング68は、金属等の比較的硬度の高い材料からなる。
【0058】
ノズル本体62は、実施例1の噴射ノズル42と同じく、噴射口44と、定径孔43と、ガイド内周面45と、突当面48(請求項に記載の位置決め部)と、混合空間49とを有している。噴射ノズル61をガン本体21に取り付けた状態では、定径孔43とガイド内周面45は、供給ノズル28のスラリー供給孔29と同軸状に配置される。ノズル本体62の外周後端部には、外径寸法を部分的に大きくした大径部63が形成されている。ノズル本体62の外周のうち大径部63の前方に隣接する領域には、非円形断面の嵌合部64が形成されている。ノズル本体62の外周のうち嵌合部64の前方に隣接する領域には、周方向の係止溝65が形成されている。
【0059】
ネジ部材66は、前後方向に貫通した筒状をなす。ネジ部材66の内周は、嵌合部64に対し周方向への相対変位を規制された状態で嵌合可能な非円形断面の嵌合孔67となっている。ネジ部材66の外周には、定径孔43及びガイド内周面45と同軸状の雄ネジ部47が形成されている。ノズル本体62の嵌合部64に取り付けられたネジ部材66は、大径部63と、係止溝65に嵌合した抜止めリング68との間で前後方向に挟み付けられることにより、ノズル本体62に対して前後方向への相対変位を規制された状態に保持されている。
【0060】
噴射ノズル61をガン本体21に取り付ける際には、ガン本体21の前方から雄ネジ部47を雌ネジ部25にねじ込む。雌ネジ部25に対する雄ネジ部47のねじ込み(ガン本体21に対する噴射ノズル61のねじ込み)を進めると、噴射ノズル61の後端部が供給ノズル28の前端部を包囲し、ガス流路50が構成される。噴射ノズル61の内部空間のうち供給ノズル28の前端よりも前方の領域には、スラリーSと高圧ガスGが噴射口44へ流動しながら混合される混合空間49が構成される。
【0061】
本実施例2の噴射ノズル61は、スラリーSの摺接による摩耗が避けられないノズル本体62と、スラリーSによる摩耗の虞がないネジ部材66とを別々の部品とした。これにより、定径孔43、噴射口44、ガイド内周面45が摩耗したときには、ノズル本体62だけを交換すれば済むので、コスト低減を図ることができる。
【0062】
<実施例3>
次に、本発明を具体化した実施例3を
図6を参照して説明する。本実施例3の噴射ガン70(請求項に記載のウエットブラスト用噴射ガン)は、噴射ノズル76と供給ノズル28の前後方向における相対位置を変更、調節するための手段を、上記実施例1,2とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。尚、以下の説明において、前後の方向については、
図6における左方を前方と定義する。また、前後方向と軸線方向は同義で用いる。
【0063】
本実施例3の噴射ガン70は、ガン本体71と、実施例1と同一の接続部材27と、実施例1と同一の供給ノズル28と、実施例1と同一の固定部材34と、噴射ノズル76と、複数本の連結ボルト83と、スペーサ79と、保護プレート81とを備えて構成されている。
【0064】
ガン本体71は、軸線を前後方向に向けた筒状の本体部材72と、軸線を前後方向に向けた円環形のリング状部材74とを合体させた形態である。本体部材72とリング状部材74は、実施例1のガン本体21と同じく、アルミニウム等の金属材料からなる。本体部材72には、実施例1と同一の中心孔22、ガス供給孔26(請求項に記載のガス供給部)が形成されている。また、実施例1とは異なり、本体部材72(ガン本体71)には雌ネジ部25は形成されていない。また、本体部材72の外周面には、実施例1と同一の接続部材27が取り付けられている。本体部材72には、前後方向に貫通した形態の複数の貫通孔73が、周方向に間隔を空けて形成されている。
【0065】
リング状部材74には、実施例1と同一の小径部23、凹部24が形成されている。リング状部材74には、更に、前端面に開口する複数の雌ネジ孔75が、周方向に間隔を空けて形成されている。リング状部材74は、本体部材72の後端面に同軸状に密着されている。リング状部材74は、実施例1と同様の手順により、供給ノズル28と固定部材34とに組み付けられる。リング状部材74と供給ノズル28と固定部材34の組み立ては、リング状部材74と本体部材72を合体する前と後のいずれにおいても行うことができる。
【0066】
噴射ノズル76は、全体として軸線を前後方向に向けた円筒状をなす。噴射ノズル76は、実施例1の噴射ノズル42と同じく、定径孔43と、噴射口44と、ガイド内周面45と、突当面48(請求項に記載の位置決め部)と、混合空間49とを有している。また、実施例1とは異なり、噴射ノズル76には雄ネジ部47は形成されていない。噴射ノズル76の外周面のうち後端よりも少し前方の位置には、フランジ状に張り出したボルト貫通部77が形成されている。ボルト貫通部77には、ボルト貫通部77を前後方向に貫通する複数の挿通孔78が、周方向に間隔を空けて形成されている。
【0067】
スペーサ79は、軸線を前後方向に向けた円環形の板状部材である。スペーサ79は、金属等の比較的硬度の高い材料からなる。スペーサ79には、スペーサ79を前後に貫通した形態の複数の取付孔80が形成されている。スペーサ79は、その取付孔80を挿通孔78に整合させた状態で噴射ノズル76の後端部外周に同軸状に取り付けられ、ボルト貫通部77の後面に当接している。スペーサ79を噴射ノズル76に取り付けた状態では、噴射ノズル76の後端部(即ち、ガイド内周面45が形成されている領域)が、スペーサ79よりも後方へ突出した状態となる。
【0068】
保護プレート81は、軸線を前後方向に向けた円環形の板状部材である。保護プレート81は、金属等の比較的硬度の高い材料からなる。保護プレート81には、保護プレート81を前後に貫通した形態の複数の位置決め孔82が形成されている。保護プレート81は、その位置決め孔82を挿通孔78に整合させた状態で噴射ノズル76の外周に同軸状に取り付けられ、ボルト貫通部77の前面に当接している。
【0069】
噴射ノズル76をガン本体71に組み付ける際には、ガン本体71(本体部材72)の前方から噴射ノズル76の後端部を中心孔22内に挿入し、スペーサ79をガン本体71の前端面とボルト貫通部77の後端面との間で前後に挟み付ける。この状態で、連結ボルト83を位置決め孔82、挿通孔78、貫通孔73に順に挿通させ、リング状部材74の雌ネジ孔75にねじ込む。以上により、ガン本体71の組み立てと、ガン本体71に対する噴射ノズル76の取付けと、噴射ガン70全体の組み立てが、同時に完了する。
【0070】
ガイド内周面45とガイド外周面31との間のガス流路50の断面積は、供給ノズル28と噴射ノズル76の前後方向の位置関係(相対位置)を変更することにより、変更、調節することができる。供給ノズル28と噴射ノズル76の相対位置を変更する際には、前後方向の厚さ寸法が異なる複数種類のスペーサ79を用意しておき、異なる厚さのスペーサ79と交換すればよい。スペーサ79を交換することにより、ガス流路の断面積を変更、調節することができ、高圧ガスGの流量を変更することができる。
【0071】
また、噴射ノズル76はガン本体71及び供給ノズル28よりも硬度の低い材料(例えば、ウレタン樹脂等)からなるので、ボルト貫通部77の前面が、金属製の連結ボルト83の頭部84に局部的に接触した場合、ボルト貫通部77の前面が頭部84を食い込ませるような形態で不正に変形し、その結果、噴射ノズル76がガン本体71及び供給ノズル28に対して相対的に前方へ位置ずれすることが懸念される。
【0072】
この対策として、本実施例3では、頭部84とボルト貫通部77との間にボルト貫通部77より硬度の高い金属製の保護プレート81を介在させ、頭部84がボルト貫通部77の前面に食い込むことを回避している。これにより、ボルト貫通部77が前後に潰れるように変形することが防止され、ガン本体71及び供給ノズル28に対する噴射ノズル76の前後方向への位置ずれが防止されている。噴射ノズル76の位置ずれが防止されることで、ガス流路50の断面積が適正に保されるので、ガス流路50を通過して混合空間49に供給される高圧ガスGの流量が安定する。
【0073】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例1~3では、噴射ノズルの後端部内周面に、前方に向かって次第に小径となるように傾斜したガイド内周面を形成したが、噴射ノズルの後端部内周面は、噴射ノズルを前後方向の軸線と平行に切断した側断面において噴射ノズルの軸線と平行をなし、且つ噴射ノズルを軸線と直角に切断した断面において円形をなす形状(即ち、外径寸法が前後方向において一定の形状)であってもよい。
(2)上記実施例1~3では、噴射ノズルを軸線と平行に切断した側断面において、ガイド内周面が直線的に傾斜した形状であるが、噴射ノズルを軸線と平行に切断した側断面におけるガイド内周面の形状は、曲線からなる形状又は曲線と直線とからなる形状であってもよい。
(3)上記実施例1~3では、供給ノズルの前端部外周面に、前方に向かって次第に小径となるように傾斜したガイド外周面を形成したが、供給ノズルの前端部外周面は、供給ノズルを前後方向の軸線と平行に切断した側断面において供給ノズルの軸線と平行をなし、且つ供給ノズルを軸線と直角に切断した断面において円形をなす形状(即ち、外径寸法が前後方向において一定の形状)であってもよい。
(4)上記実施例1~3では、供給ノズルを軸線と平行に切断した側断面において、ガイド外周面が直線的に傾斜した形状であるが、供給ノズルを軸線と平行に切断した側断面におけるガイド外周面の形状は、曲線からなる形状又は曲線と直線とからなる形状であってもよい。
(5)上記実施例1~3では、軸線と平行に切断した側断面において、軸線に対するガイド内周面の傾斜角度と軸線に対するガイド外周面の傾斜角度は、同じ角度となっているが、ガイド内周面の傾斜角度とガイド外周面の傾斜角度は、互いに異なる角度であってもよい。
(6)上記実施例1~3では、供給ノズルの前端部に環状前端面を形成したが、供給ノズルの前端部は、楔状に尖った肉薄の形状であってもよい。
(7)上記実施例1~3では、供給ノズルと噴射ノズルの前後方向における相対位置を調節する手段として、供給ノズルをガン本体に固定し、噴射ノズルをガン本体に対して相対移動させるようにしたが、これに限らず、噴射ノズルをガン本体に固定し、供給ノズルをガン本体に対して相対変位させるようにしてもよく、供給ノズルと噴射ノズルの両ノズルをガン本体に対して個別に相対変位させるようにしてもよい。供給ノズルをガン本体に対して相対移動させる手段としては、実施例1~3に示すネジ部やスペーサを用いることができる。
(8)上記実施例1~3では、供給ノズルと噴射ノズルの前後方向における相対位置を調節する手段として、ネジ部又はスペーサを用いたが、供給ノズルと噴射ノズルの前後方向における相対位置の調節変更は、ネジ部やスペーサ以外の手段を用いて行ってもよい。
(9)上記実施例1,2では、ガン本体に対する噴射ノズルの位置を調節する手段として、ガン本体に雌ネジ部を形成し、噴射ノズルに雄ネジ部を形成したが、これとは逆に、ガン本体に雄ネジ部を形成し、噴射ノズルに雌ネジ部を形成してもよい。
(10)上記実施例1,2では、噴射ノズルと供給ノズルに前後方向に突き当たることが可能な位置決め部を形成したが、噴射ノズルと供給ノズルは、このような位置決め部を有しない形態であってもよい。
(11)上記実施例1~3では、供給ノズルと噴射ノズルの前後方向における相対位置を調節できるようにしたが、噴射ノズルと供給ノズルは一定の位置関係に固定されていてもよい。
(12)上記実施例1~3では、供給ノズルが噴射ノズルよりも硬度の高い材料からなるが、供給ノズルの材料は、噴射ノズルよりも硬度の低い材料、又は噴射ノズルと同じ硬度の材料でもよい。
(13)上記実施例1~3では、噴射ノズルがガン本体よりも硬度の低い材料からなるが、噴射ノズルの材料は、ガン本体よりも硬度の高い材料、又はガン本体と同じ硬度の材料でもよい。
(14)上記実施例1~3では、供給ノズルと噴射ノズルを異なる材料としたが、供給ノズルと噴射ノズルを同じ材料(例えば、両方共にU-PE)としてもよい。
(15)上記実施例1~3において、ガン本体の材料と供給ノズルの材料は、同じ硬度の材料でもよく、互いに異なる硬度の材料でもよい。
(16)上記実施例1,2では、ロックナットを噴射ノズルよりも硬度の高い材料としたが、ロックナットの材料は、噴射ノズルと同じ硬度の材料でもよく、噴射ノズルよりも硬度の低い材料であってもよい。
(17)上記実施例3では、スペーサをガン本体と噴射ノズルとの間のみに配置したが、スペーサは、ガン本体と供給ノズルとの間のみに配置してもよく、ガン本体と噴射ノズルとの間及びガン本体と供給ノズルとの間の2箇所に配置してもよい。
【符号の説明】
【0074】
20,60,70…噴射ガン
21,71…ガン本体
25…雌ネジ部(固定側ネジ部)
26…ガス供給孔(ガス供給部)
28…供給ノズル
31…ガイド外周面
32…受け部(位置決め部)
33…環状前端面
41…環状空間
42,61,76…噴射ノズル
45…ガイド内周面
47…雄ネジ部(可動側ネジ部)
48…突当面(位置決め部)
50…ガス流路
51…ロックナット
79…スペーサ
G…高圧ガス
S…スラリー