(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】空気注入用バルブ及びこれを用いた中空体
(51)【国際特許分類】
A63B 41/12 20060101AFI20221227BHJP
【FI】
A63B41/12 A
(21)【出願番号】P 2019206956
(22)【出願日】2019-11-15
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】594001801
【氏名又は名称】株式会社ミカサ
(74)【代理人】
【識別番号】100121795
【氏名又は名称】鶴亀 國康
(72)【発明者】
【氏名】小川 龍太郎
(72)【発明者】
【氏名】松野 修三
(72)【発明者】
【氏名】武藤 浩司
(72)【発明者】
【氏名】山本 優太
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0283055(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102600582(CN,A)
【文献】実公昭36-010119(JP,Y1)
【文献】特開2012-143421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 41/12
F16K 15/00-15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央の張出部分の長さが全長の40~60%である段付き円柱状のバルブコアと、そのバルブコアが密着状態に内蔵される有底の本体及びその本体の上端部に中空体の内壁面に接合されるフランジを備える円筒状の保持体と、を有する空気注入用バルブであって、
前記バルブコアは、中心部を貫通するスリットを有してその先端部が前記保持体から突出し、
前記保持体は、前記バルブコアの座面となる本体の底部に、前記バルブコアのスリットを挿通させた前記中空体
に空気を注入する空気注入針が貫通する針穴を有してなる空気注入用バルブ。
【請求項2】
中央の張出部分の長さが全長の40~60%である段付き円柱状のバルブコアと、そのバルブコアが密着状態に内蔵される有底の本体及びその本体の上端部に中空体の内壁面に接合されるフランジを備える円筒状の保持体と、を有する空気注入用バルブであって、
前記バルブコアは、
お椀形状に開口する空気注入針受入口の底部からその中心部を貫通するスリットを有してその先端部が前記保持体から突出し、
前記保持体は、前記バルブコアの座面となる本体の底部に、前記バルブコアのスリットを挿通させた前記中空体
に空気を注入する空気注入針が貫通する針穴を有してなる空気注入用バルブ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の空気注入用バルブを有し、所定内圧で使用される中空体のへそ穴部にバルブコアの先端部を嵌合させ、保持体のフランジを中空体の内壁面に接合させてなる中空体。
【請求項4】
中空体の所定内圧は、0.03~0.3MPaであることを特徴とする請求項3に記載の中空体。
【請求項5】
中空体の空気注入用バルブであって、
上端部が前記中空体の内壁面に接合されて吊下する有底円筒体に
中央の張出部分の長さが全長の40~60%である段付き円柱状のバルブコアを内蔵し、そのバルブコアが座する前記有底円筒体の底部に、前記バルブコアのスリットを挿通させた前記中空体
に空気を注入する空気注入針が貫通する針穴を有してなる空気注入用バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定内圧で使用される中空体に用いられる空気を注入する空気注入用バルブ及びこれを用いた中空体に関する。
【背景技術】
【0002】
バレボール、サッカーボール又はバスケットボール等の中空体には空気を注入するための空気注入用バルブが用いられており、所定の内圧を有する中空体を使用に供することができる。この空気注入用バルブは、中空体のへそ穴部分の内壁面に吊り下げられた状態で接合されており、中空体のバランスを崩さないように小さく、また、空気漏れがなく、空気を注入しやすい空気注入用バルブが求められている。このため、かかる各種機能の向上を図るための提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1に、中空ボールに装着され、空気注入用の注入針が刺通される刺通孔を有する針刺通弁であって、前記針刺通弁は、シリコーンオイルを含有するシリコーンゴムで形成され、前記刺通孔は、軸線方向に延設され、前記注入針の外径よりも大きな外径を有する案内穴と、前記案内穴の底部から前記軸線方向に沿って連設され、前記注入針の断面形状に相似する断面形状を有する挿通孔とを有している針刺通弁が提案されている。この針刺通弁は、基層と補強層と表皮層の3層構造からなる球殻の前記基層の内側に接着された管状の中空筐体の内側に設けられた嵌合凹部にその鍔部が径方向に圧縮されて収納されるので、高い気密性を有するとされる。
【0004】
特許文献2に、貫通孔を有する袋状の空気保持体を含むボール本体と、前記貫通孔の部分に取り付けられる空気注入用のバルブと、を備えた球技用のボールであって、前記バルブが、前記ボール本体の内面に取り付けられるホルダと、前記貫通孔から挿入されて、前記ホルダに支持される略円柱状のムシと、を含み、前記ホルダが、前記ムシが圧入される支持孔を有する略円筒状のホルダ本体と、前記ホルダ本体の基端部の周りから張り出して、前記ボール本体の内面に取り付けられるベース部と、前記支持孔の中間に、該支持孔よりも大径に形成された溝部と、を有し、前記ムシが、前記溝部に嵌り込むように形成された鍔部と、前記ボール本体の外側に臨む外端面に形成された球面状の凹部と、前記ボール本体の内側に臨む内端面から前記凹部に向かって延びるように形成された筒状の空洞部と、前記凹部の最深部と前記空洞部とに連なる切り込み部と、を有している球技用のボールが提案されている。この球技用のボールは、非力な女性等でも容易に空気を注入することができ、異物の入り込みも効果的に防ぐことができるとされる。
【0005】
特許文献3に、ケーシングと、前記ケーシングの内部に少なくとも部分的に配置されたコアと、を含むボール用バルブであって、前記コアが、複数の部分を備えた第1の封止領域を含み、前記部分が、交互になった凹面と凸面との曲率を有し、前記ケーシングが、第2の封止領域を含み、前記第2の封止領域が前記第1の封止領域に係合することを特徴とするバルブが提案されている。このバルブは、コアの内端がケーシングを越えて延在し、その内端は、半球体になっており、ボール内部の空気圧により均等に圧縮されるので、空気漏れが回避されるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-143421号公報
【文献】特開2011-239875号公報
【文献】特開2013-176617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
空気注入用バルブの機能向上は、特許文献1に記載の針刺通弁、特許文献2に記載のムシ又は引用文献3に記載のコア(バルブコア)に示されるように、バルブコアの形状に特徴をもたせることにより行われており、概してバルブコアが長手方向に長くなるという問題がある。このため空気注入用バルブについて、コンパクト・軽量で空気漏れし難く、また空気が注入しやすい等のいずれの特性をも向上させることは容易でない。また、バルブコアの劣化について考慮されていないという問題がある。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点及び要請に鑑み、コンパクト・軽量で空気漏れし難く、空気が注入しやすく、かつ劣化し難い空気注入用バルブ及びこれを用いた中空体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る空気注入用バルブは、円柱の中央部分が張り出した段付き円柱状のバルブコアと、そのバルブコアが密着状態に内蔵される有底の本体及びその本体の上端部に中空体の内壁面に接合されるフランジを備える円筒状の保持体と、を有する空気注入用バルブであって、前記バルブコアは、中心部を貫通するスリットを有してその先端部が前記保持体から突出し、前記保持体は、前記バルブコアの座面となる本体の底部に、前記バルブコアのスリットを挿通させた前記中空体の空気注入針が貫通する針穴を有してなる。
【0010】
上記発明において、バルブコアの張出し中央部分のスリットの長さは、スリットの全長の40~60%にすることができる。
【0011】
また、上記発明に係る空気注入用バルブを有し、所定内圧で使用される中空体のへそ穴部にバルブコアの先端部を嵌合させ、保持体のフランジを中空体の内壁面に接合させてなる中空体を成形することができる。
【0012】
上記発明に係る中空体の所定内圧は、0.03~0.3MPaにすることができる。
【0013】
また、本発明に係る中空体の空気注入用バルブは、上端部が前記中空体の内壁面に接合されて吊下する有底円筒体にバルブコアを内蔵し、そのバルブコアが座する前記有底円筒体の底部に、前記バルブコアのスリットを挿通させた前記中空体の空気注入針が貫通する針穴を有してなるものとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる空気注入用バルブは、コンパクト・軽量で空気漏れし難く、空気が注入しやすく、かつ劣化し難い。そして、本発明にかかる空気注入用バルブを用いた中空体は、高い内圧で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る空気注入用バルブが中空体の内壁面に取り付けられた状態を示す説明図である。
【
図2】本発明に係る空気注入用バルブの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図面を基に説明する。
図1は、本発明に係る空気注入用バルブが中空体の内壁面に取り付けられた状態を示す。
図2は、本空気注入用バルブの構成を示す。
図1に示すように、本空気注入用バルブ10は、中空体20に組み込まれて使用される。空気注入用バルブ10は、そのフランジ152を中空体20の内壁面に接合することにより中空体20に組み込まれる。空気注入用バルブ10は、バルブコア11が保持体15の本体151に内蔵された形態をしており、バルブコア11の先端部は中空体20のへそ穴部25に嵌合している。
【0017】
空気注入用バルブ10は、
図2に示すように、バルブコア11と保持体15を有してなる。バルブコア11は、円柱の中央部分が張り出した段付き円柱状をしており、円柱112の中央部分113が張り出した形態をしている。そして、バルブコア11は、中心部を貫通するスリット115を有し、その先端部分に空気注入用針を受け入れる空気注入針受入口114が設けられている。本バルブコア11は、中央部分113の占める割合が大きく、その長さは全長の40~60%を占めており、従来のバルブコアのような円柱に鍔状の張出し部を有するものと外観が異なる。すなわち、空気注入用バルブ10の漏れ防止性を高めるため、バルブコア11を貫通するスリットの全長の40~60%が中央部分113を介して保持体15により締め付けられるようになっている。そして、本バルブコア11の空気注入針受入口114は、半球状のお椀形状をしている。バルブコア11の材質は、例えば天然ゴムが用いられる。
【0018】
保持体15は、有底の円筒の上端部にフランジを有する形態をしており、本体151とフランジ152を有している。保持体15の材質は、例えばブチルゴムなどの合成ゴムが用いられる。本体151は、内部にバルブコア穴155を有する有底円筒で、バルブコア11を入れ込む開口部156を有し、底部153に針穴157を有している。バルブコア穴155は、空気注入用バルブ10の空気漏れが無いようにバルブコア11が本体151に密着状態で内蔵されるように形成される。針穴157は、中空体20に空気を注入するためバルブコア11のスリット115に挿通された空気注入針がバルブコア11を突き抜けたとき、底部153を損傷させないように設けられており、その穴径は空気注入針の外径よりわずかに小さくなっている。例えば、針穴157の穴径を1.5mmとすることができる。
【0019】
フランジ152は、空気注入用バルブ10が中空体20から剥離することなく一体に接合されるように、例えば本体151の外径が17mmであるとき、40~60mmの大きさに設けられる。フランジ152の形状は、円板状あるいは角板状とすることができるが、中空体20に接合しやすいように、中空体20の内壁面に倣う形状をしているのがよい。球形の中空体20であれば、その内壁面と同等の曲率を有する彎曲状のフランジ152が好ましい。
【0020】
中空体20は、例えばバレボール、サッカーボール、バスケットボール又はラグビーボールとすることができる。中空体20は、球形のものに限らず、楕円形又は円筒形状のものであってもよい。中空体20は、一般に層構造からなり、内壁面はブチルゴムなどからなるチューブ層になっている。空気注入用バルブ10は、例えばそのフランジ152をチューブ層に接着剤で接着し、加硫処理することにより一体に接合される。中空体20は、
図1に示すように、バルブコア11先端が嵌合するへそ穴部25を有している。このへそ穴部25に嵌合しているバルブコア11の空気注入針受入口114から空気注入針を挿通し、中空体20に空気を注入する。
【0021】
以上、本発明に係る空気注入用バルブ及びこれを組み込んだ中空体について説明した。本発明に係る空気注入用バルブは、バルブコアが保持体又は有底円筒体に内蔵されていることに特徴を有する。このため、本発明に係る空気注入用バルブは、コンパクト・軽量で空気漏れし難く、空気が注入しやすく、かつ劣化し難い。本発明に係る空気注入用バルブは、従来品に対し2割以上(20~40%)の重量軽減を図ることができる。そして、本発明に係る空気注入用バルブが組み込まれた中空体は、その内圧を0.03~0.3MPaとすることができる。
【符号の説明】
【0022】
10 空気注入用バルブ
11 バルブコア
112 円柱
113 中央部分
114 空気注入針受入口
115 スリット
15 保持体
151 本体
152 フランジ
153 底部
155 バルブコア穴
156 開口部
157 針穴
20 中空体
25 へそ穴部