(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】バッテリー試験装置及びバッテリー充電試験方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20221227BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20221227BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20221227BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20221227BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20221227BHJP
【FI】
H02J7/00 Q
H02J7/10 B
H02J7/10 H
H01M10/44 P
H01M10/48 P
G01R31/385
(21)【出願番号】P 2021094564
(22)【出願日】2021-06-04
【審査請求日】2022-06-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595098011
【氏名又は名称】東洋システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨澤 豊
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】高木 利彦
(72)【発明者】
【氏名】庄司 秀樹
【審査官】山本 香奈絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-220896(JP,A)
【文献】特開2014-102890(JP,A)
【文献】特開平06-141475(JP,A)
【文献】特開2020-184880(JP,A)
【文献】特開2007-259632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 7/10
H01M 10/44
H01M 10/48
G01R 31/385
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧を出力する直流電源部と、
複数のスイッチング素子と、前記直流電圧が印加される2つの入力端子と、バッテリーの正端子及び負端子が接続される2つの出力端子とを有するフルブリッジ回路と、
前記フルブリッジ回路の前記複数のスイッチング素子各々のオンオフを所定の周期でデューティ比制御し、充電試験モード時に前記フルブリッジ回路を介して前記バッテリーに充電電流を供給させることにより前記バッテリーを充電させる制御部と、を備えるバッテリー試験装置であって、
前記制御部は、
前記充電試験モードにおける定電流・定電圧制御の開始指令に応答して前記充電電流が設定電流値に等しくなるように前記充電電流を前記バッテリーに供給させる定電流充電制御を実行し、
前記定電流充電制御の実行中に前記バッテリーの前記正端子及び前記負端子の端子間電圧が設定電圧値まで上昇したときに前記定電流充電制御を停止し、前記端子間電圧が前記設定電圧値に維持されるように前記充電電流を前記バッテリーに供給させる定電圧充電制御を実行し、
前記定電圧充電制御の実行中に前記充電電流が0[A]まで低下したときに前記定電圧充電制御を停止し、前記充電電流を0[A]に維持させるゼロアンペア制御を実行し、
前記ゼロアンペア制御の実行中に前記端子間電圧が前記設定電圧値より上昇したときに前記ゼロアンペア制御を停止し、前記バッテリーから微小の放電電流を流し出させる微小放電制御を実行することを特徴とするバッテリー試験装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記微小放電制御の実行中に前記端子間電圧が前記設定電圧値まで低下したときに前
記微小放電制御を停止し、前記ゼロアンペア制御を実行することを特徴とする請求項1記載のバッテリー試験装置。
【請求項3】
前記フルブリッジ回路は、第1スイッチング素子、第2スイッチング素子、第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子からなり、
前記第1スイッチング素子の一端と前記第3スイッチング素子の一端とが前記2つの入力端子の一方に接続され、
前記第2スイッチング素子の一端と前記第4スイッチング素子の一端とが前記2つの入力端子の他方に接続され、
前記第1スイッチング素子の他端と前記第2スイッチング素子の他端とが前記2つの出力端子の一方に接続され、
前記第3スイッチング素子の他端と前記第4スイッチング素子の他端とが前記2つの出力端子の他方に接続され、
前記2つの出力端子がインダクタ及びキャパシタを含む平滑回路を介して前記バッテリーの前記正端子及び前記負端子に各々接続され、
前記制御部は、
前記所定の周期内に充電電流期間、前記充電電流期間の終了直後の第1転流電流期間、放電電流期間、前記放電電流期間の終了直後の第2転流電流期間を構成し、
前記充電電流期間において前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子をオンに制御し、前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子をオフに制御して前記バッテリーに前記充電電流を供給させ、
前記第1転流電流期間において前記第1乃至前記第4スイッチング素子をオフに制御して前記インダクタに蓄積されたエネルギーにより前記充電電流の方向に第1転流電流を前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子各々の還流ダイオードを介して流させ、
前記放電電流期間において前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子をオフに制御し、前記第2スイッチング素子及び前記第3スイッチング素子をオンに制御して前記バッテリーから前記放電電流を流させ、
前記第2転流電流期間において前記第
1乃至前記第
4スイッチング素子をオフに制御して前記インダクタに蓄積されたエネルギーにより前記放電電流の方向に第2転流電流を前記第1スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子各々の還流ダイオードを介して流させ、
前記充電電流期間と前記放電電流期間との比率によって前記デューティ比制御を行うことを特徴とする請求項1又は2記載のバッテリー試験装置。
【請求項4】
前記ゼロアンペア制御の実行中には前記充電電流期間は前記放電電流期間より大であることを特徴とする請求項3記載のバッテリー試験装置。
【請求項5】
直流電圧を出力する直流電源部と、
複数のスイッチング素子と、前記直流電圧が印加される2つの入力端子と、バッテリーの正端子及び負端子が接続される2つの出力端子とを有するフルブリッジ回路と、
前記フルブリッジ回路の前記複数のスイッチング素子各々のオンオフを所定の周期でデューティ比制御し、充電試験モード時に前記フルブリッジ回路を介して前記バッテリーに充電電流を供給させることにより前記バッテリーを充電させる制御部と、を備えるバッテリー試験装置のバッテリー充電試験方法であって、
前記制御部は、
前記充電試験モードにおける定電流・定電圧制御の開始指令に応答して前記充電電流が設定電流値に等しくなるように前記充電電流を前記バッテリーに供給させる定電流充電制御を実行するステップと、
前記定電流充電制御の実行中に前記バッテリーの前記正端子及び前記負端子の端子間電圧が設定電圧値まで上昇したときに前記定電流充電制御を停止し、前記端子間電圧が前記設定電圧値に維持されるように前記充電電流を前記バッテリーに供給させる定電圧充電制御を実行するステップと、
前記定電圧充電制御の実行中に前記充電電流が0[A]まで低下したときに前記定電圧充電制御を停止し、前記充電電流を0[A]に維持させるゼロアンペア制御を実行するステップと、
前記ゼロアンペア制御の実行中に前記端子間電圧が前記設定電圧値より上昇したときに前記ゼロアンペア制御を停止し、前記バッテリーから微小の放電電流を流し出させる微小放電制御を実行するステップと、を含むことを特徴とするバッテリー充電試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーの特性試験のためにバッテリーの充電を制御するバッテリー試験装置及びバッテリー充電試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリー試験装置は、試験対象のバッテリーに対して充電試験及び放電試験を各々行っての充放電特性を測定するものである。バッテリー試験装置としては、特許文献1に開示されているように、双方向DC-DCコンバータが用いられているものがある。双方向DC-DCコンバータは、4つのスイッチング素子をブリッジ接続したフルブリッジ回路からなる。双方向DC-DCコンバータの一方の端子に直流電源が接続され、他方の端子にチョークコイルを介してバッテリーが接続される。双方向DC-DCコンバータの各スイッチング素子のオンオフは制御部によって所定の周期でデューティ比制御される。デューティ比制御では、直流電源から双方向DC-DCコンバータのフルブリッジ回路、そしてチョークコイルを介してバッテリーに充電電流を供給する充電電流期間と、バッテリーからの放電電流をチョークコイル、そして双方向DC-DCコンバータのフルブリッジ回路を介して直流電源側の回路に供給する放電電流期間との割合が制御される。通常、バッテリーに対する充電試験モードでは充電電流期間が放電電流期間より大きくなり、所定の周期毎にバッテリーが充電され、バッテリーに対する放電試験モードでは放電電流期間が充電電流期間より大きくなり、所定の周期毎にバッテリーが放電される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリー試験装置においては、充電試験モードにおける定電流・定電圧制御では、バッテリーの端子間電圧が予め定められた設定電圧値に達するまでバッテリーを充電させ、その後、バッテリーの端子間電圧を設定電圧値のままで長時間に亘って維持させることが行われている。
【0005】
しかしながら、充電試験モードにおける定電流・定電圧制御では時間経過と共にバッテリーが設定電圧値まで充電された後は微小な充電電流の増減により、端子間電圧が比較的変動し易くなるので、バッテリーの充電制御及びその後のバッテリーの端子間電圧の維持制御が高精度で実行されることが望まれていた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、充電試験モードおいてバッテリーの充電制御及びその後のバッテリーの端子間電圧の維持制御を高精度で実行することができるバッテリー試験装置及びバッテリー充電試験方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のバッテリー試験装置は、直流電圧を出力する直流電源部と、複数のスイッチング素子と、前記直流電圧が印加される2つの入力端子と、バッテリーの正端子及び負端子が接続される2つの出力端子とを有するフルブリッジ回路と、前記フルブリッジ回路の前記複数のスイッチング素子各々のオンオフを所定の周期でデューティ比制御し、充電試験モード時に前記フルブリッジ回路を介して前記バッテリーに充電電流を供給させることにより前記バッテリーを充電させる制御部と、を備えるバッテリー試験装置であって、前記制御部は、前記充電試験モードの開始指令に応答して前記充電電流が設定電流値に等しくなるように前記充電電流を前記バッテリーに供給させる定電流充電制御を実行し、前記定電流充電制御の実行中に前記バッテリーの前記正端子及び前記負端子の端子間電圧が設定電圧値まで上昇したときに前記定電流充電制御を停止し、前記端子間電圧が前記設定電圧値に維持されるように前記充電電流を前記バッテリーに供給させる定電圧充電制御を実行し、前記定電圧充電制御の実行中に前記充電電流が0[A]まで低下したときに前記定電圧充電制御を停止し、前記充電電流を0[A]に維持させるゼロアンペア制御を実行し、前記ゼロアンペア制御の実行中に前記端子間電圧が前記設定電圧値より上昇したときに前記ゼロアンペア制御を停止し、前記バッテリーから微小の放電電流を流し出させる微小放電制御を実行することを特徴としている。
【0008】
本発明のバッテリー充電試験方法は、直流電圧を出力する直流電源部と、複数のスイッチング素子と、前記直流電圧が印加される2つの入力端子と、バッテリーの正端子及び負端子が接続される2つの出力端子とを有するフルブリッジ回路と、前記フルブリッジ回路の前記複数のスイッチング素子各々のオンオフを所定の周期でデューティ比制御し、充電試験モード時に前記フルブリッジ回路を介して前記バッテリーに充電電流を供給させることにより前記バッテリーを充電させる制御部と、を備えるバッテリー試験装置のバッテリー充電試験方法であって、前記制御部は、前記充電試験モードの開始指令に応答して前記充電電流が設定電流値に等しくなるように前記充電電流を前記バッテリーに供給させる定電流充電制御を実行するステップと、前記定電流充電制御の実行中に前記バッテリーの前記正端子及び前記負端子の端子間電圧が設定電圧値まで上昇したときに前記定電流充電制御を停止し、前記端子間電圧が前記設定電圧値に維持されるように前記充電電流を前記バッテリーに供給させる定電圧充電制御を実行するステップと、前記定電圧充電制御の実行中に前記充電電流が0[A]まで低下したときに前記定電圧充電制御を停止し、前記充電電流を0[A]に維持させるゼロアンペア制御を実行するステップと、前記ゼロアンペア制御の実行中に前記端子間電圧が前記設定電圧値より上昇したときに前記ゼロアンペア制御を停止し、前記バッテリーから微小の放電電流を流し出させる微小放電制御を実行するステップと、を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のバッテリー試験装置及びバッテリー充電試験方法によれば、定電流充電制御及び定電圧充電制御を実行してバッテリーの端子間電圧が設定電圧値に達するようにバッテリーを効率良くかつ高精度で充電させることができ、定電流充電制御及び定電圧充電制御の終了後、ゼロアンペア制御及び微小放電制御を実行するのでバッテリーの端子間電圧を設定電圧値に高精度で維持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明が適用されたバッテリー充放電試験装置の回路構成を示す図である。
【
図2】
図1の装置内のフルブリッジ回路内の各スイッチング素子のオンオフ状態を示すタイムチャートである。
【
図3】
図2の充電電流期間TAにおけるバッテリー充放電試験装置内の充電電流経路を示す図である。
【
図4】
図2の転流電流期間TBにおけるバッテリー充放電試験装置内の転流電流経路を示す図である。
【
図5】
図2の放電電流期間TCにおけるバッテリー充放電試験装置内の放電電流経路を示す図である。
【
図6】
図2の転流電流期間TDにおけるバッテリー充放電試験装置内の転流電流経路を示す図である。
【
図7】
図1のバッテリー充放電試験装置内の制御部の制御動作を示すフローチャートである。
【
図8】ゼロアンペア制御中のフルブリッジ回路内のスイッチング素子のオンオフ状態を示すタイムチャートである。
【
図9】制御部の制御動作によるバッテリーの端子間電圧及びバッテリーを流れる電流の変化を示す図である。
【
図10】微小放電制御を設けない充電試験モードでの制御動作の場合にバッテリーの端子間電圧及びバッテリーを流れる電流の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明が適用されたバッテリー充放電試験装置を示している。このバッテリー充放電試験装置は、バッテリーに対して充電試験と共に放電試験を可能にしている。バッテリー充放電試験装置は、1次電源である交流電源11の供給を受けて試験対象のバッテリー15に対して充放電試験を行う部分である。バッテリー15の定格電圧は例えば、4.0[V]であるが、それ以下の電圧でも良い。
【0013】
バッテリー充放電試験装置は、AC/DC変換部21と、フルブリッジ回路35と、チョークコイル36、37、コンデンサ38、39、電流検出部40と、電圧検出部50と、制御部51とを含む。
【0014】
AC/DC変換部21は、直流電源部を構成し、交流電源11に接続されている。AC/DC変換部21は、交流電源11の出力交流電圧が入力端子21A、21Bに入力されると、交流電圧を整流することにより所定の直流電圧に変換し、その直流電圧を出力端子21C、21Dから出力する。交流電源11の交流電圧は例えば、100[V]、又は200[V]である。AC/DC変換部21の出力直流電圧は例えば、24.0[V]である。
【0015】
AC/DC変換部21の正極側の出力端子21Cと負極側の出力端子21Dとの間には、コンデンサ38が接続されている。また、その正極側及び負極側の出力端子21C、21D間には、フルブリッジ回路35が接続されている。フルブリッジ回路35は、4個のIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)等の半導体スイッチング素子31~34(第1~第4スイッチング素子)からなる。
【0016】
フルブリッジ回路35では、スイッチング素子31、33の一端(入力端子35A)が出力端子21Cに接続され、スイッチング素子32、34の一端(入力端子35B)が出力端子21Dに接続されている。スイッチング素子31、32の他端(出力端子35C)が互いに接続され、その接続点がチョークコイル36、そして電流検出部40を直列に介してバッテリー15の正端子に接続されている。また、スイッチング素子33、34の他端(出力端子35D)が互いに接続され、その接続点がチョークコイル37を介してバッテリー15の負端子に接続されている。バッテリー15の正端子及び負端子間にはコンデンサ39が接続されている。インダクタであるチョークコイル36、37とキャパシタであるコンデンサ39は平滑回路を構成している。
【0017】
スイッチング素子31~34は、構造上の理由から寄生ダイオード(ボディダイオード)が形成されるため、ターンオフ時の破損を防ぐ還流ダイオード(フリーホイーリングダイオード)41~44を各々有している。具体的にはスイッチング素子31~34に環流ダイオード41~44が各々並列接続されている。この還流ダイオードは、半導体スイッチング素子としてIGBTを用いた場合には、IGBTのコレクタに環流ダイオードのカソードを接続し、エミッタに環流ダイオードのアノードを接続している。
【0018】
フルブリッジ回路35は、基本的に、スイッチング素子31、34がオンであり、スイッチング素子32、33がオフである充電電流期間TAと、スイッチング素子31~34がオフであり、ダイオード42、43がオンとなる転流電流期間TBと、スイッチング素子31、34がオフであり、スイッチング素子32、33がオンである放電電流期間TCと、スイッチング素子31~34がオフであり、ダイオード41、44がオンとなる転流電流期間TDとかなる期間を1周期T1(所定の周期)とし、それを繰り返す。スイッチング素子31~34のオンオフ(スイッチング)は制御部51によって制御される。充電電流期間TAと放電電流期間TCとはデューティ比制御される。本実施例では、この制御部51のデューティ比はDRで表され、充電電流期間TAと転流期間TBと放電電流期間TCと転流期間TDとの合計期間に対応する充電電流期間TAの割合である。
【0019】
電流検出部40はフルブリッジ回路35とバッテリー15との間を流れる電流値を検出し、それをバッテリー電流Idecとして出力する。すなわち、充電試験モードではバッテリー15を充電させる充電電流値を検出し、放電試験モードではバッテリー15の放電の際の放電電流値を検出する。電流検出部40は例えば、抵抗や電流センサからなる。電圧検出部50はバッテリー15の正負の端子間電圧Vdecを検出する。
【0020】
制御部51は例えば、マイクロコンピュータから構成される。制御部51には電流検出部40及び電圧検出部50の各々の検出出力が接続され、電流検出部40によって検出されたバッテリー電流Idec及び電圧検出部50によって検出された端子間電圧Vdecが供給される。制御部51はフルブリッジ回路35に接続され、フルブリッジ回路35内の半導体スイッチング素子31~34のオンオフを制御する制御信号を生成する。制御信号はフルブリッジ回路35内において半導体スイッチング素子31~34のゲートに供給される。
【0021】
次に、このような構成を有する本発明によるバッテリー充放電試験装置の動作について説明する。
【0022】
交流電源11の出力交流電圧がAC/DC変換部21に供給されると、AC/DC変換部21は直流電圧を出力する。AC/DC変換部21の出力直流電圧はフルブリッジ回路35の入力端子35A、35B間に供給される。入力端子35Aに正電位24.0[V]が印加され、入力端子35Bに電位0[V]が印加される。
【0023】
制御部51は、例えば、一定間隔毎に、電流検出部40から得られる充電電流又は放電電流であるバッテリー電流Idecと、電圧検出部50から得られるバッテリー15の端子間電圧Vdecとに応じて、例えば、バッテリー15の端子間電圧Vdecが予め定められた設定電圧値になるように、又は充電電流及び放電電流の各々が予め定められた設定電流値になるようにデューティ比DRを決定し、そのデューティ比DRを示す制御信号をフルブリッジ回路35に供給する。
【0024】
図2に示すように、フルブリッジ回路35ではスイッチング素子31~34のオンオフ制御は充電電流期間TA、転流電流期間TB(第1転流電流期間)、放電電流期間TC、転流電流期間TD(第2転流電流期間)を1周期T
1として繰り返し行われている。充電電流期間TAではスイッチング素子31、34がオンであり、スイッチング素子32、33がオフであり、放電電流期間TCではスイッチング素子31、34がオフであり、スイッチング素子32、33がオンである。充電電流期間TAの終了直後の転流電流期間TBではスイッチング素子31~34が全てオフとなる。同様に放電電流期間TCの終了直後の転流電流期間TDでもスイッチング素子31~34が全てオフとなる。デューティ比DRが例えば、50%である場合の制御では、充電電流期間TAと放電電流期間TBとは互いに等しい長さ{T
1-(TB+TD)}/2である。
【0025】
図3に矢印MAで示すように、充電電流期間TAには充電電流がAC/DC変換部21の出力端子21C、スイッチング素子31、チョークコイル36、電流検出部40を順に介してバッテリー15の正端子からバッテリー15内に流れ込み、そして、バッテリー15の負端子からチョークコイル37、スイッチング素子34、そしてAC/DC変換部21の出力端子21Dの順に流れる。この充電電流の流れによりバッテリー15は充電され、バッテリー15に電荷が蓄電される。
【0026】
図4に矢印MBで示すように、転流電流期間TBには、充電電流期間TAにチョークコイル36、37に蓄積されたエネルギーが充電電流の流れ方向に転流電流を流す。この転流電流期間TBにはダイオード42、43がオンとなり、転流電流はAC/DC変換部21の出力端子21D、ダイオード42、チョークコイル36、電流検出部40、バッテリー15、チョークコイル37、ダイオード43、そしてAC/DC変換部21の出力端子21Cの経路を流れ、バッテリー15を充電させる。
【0027】
図5に矢印MCで示すように、放電電流期間TCには放電電流がAC/DC変換部21の出力端子21C、スイッチング素子33、チョークコイル37、バッテリー15の負端子に流れ、更にバッテリー15の正端子から電流検出部40、チョークコイル36、スイッチング素子32を順に介してAC/DC変換部21の出力端子21Dに至る。この放電電流はバッテリー15から流れ出る電流であり、バッテリー15の蓄電電荷を放電させる。
【0028】
図6に矢印MDで示すように、転流電流期間TDには、放電電流期間TCにチョークコイル36、37に蓄積されたエネルギーが放電電流の流れ方向に転流電流を流す。転流電流期間TDにはダイオード41、44がオンとなり、転流電流はAC/DC変換部21の出力端子21Dからダイオード44、チョークコイル37、バッテリー15、電流検出部40、チョークコイル36、ダイオード41、そしてAC/DC変換部21の出力端子21Cの経路を流れ、出力端子21C、21D間において転流による放電電力が回生電力として得られる。出力端子21C、21D間には、チョークコイル36の端子間電圧、バッテリー15の端子間電圧、及びチョークコイル37の端子間電圧の合算電圧が回生電圧として生じる。
【0029】
上記した充電電流期間TAと放電電流期間TCとの1周期T1内の比率であるデューティ比DRに応じて1周期T1の動作が充電試験モードとなるか、逆に放電試験モードとなるかが決定される。充電試験モードのデューティ比DRの制御では、1周期T1において充電電流期間TAが増大される一方、放電電流期間TCが減少されるので、充電電流期間TAの充電電流によるバッテリー15への充電電荷量が放電電流期間TCの放電電流によるバッテリー15からの放電電荷量を越える。よって、結果的に1周期T1においてバッテリー15には充電電流が流れ込んだこととなり、バッテリー15は充電される。
【0030】
逆に放電試験モードのデューティ比DRの制御では、1周期T1において充電電流期間TAが減少される一方、放電電流期間TCが増大されるので、放電電流期間TCの放電電流によるバッテリー15からの放電電荷量が充電電流期間TAの充電電流による充電電荷量を越える。よって、結果的に1周期T1においてバッテリー15から放電電流が流れ出たこととなり、バッテリー15は放電される。
【0031】
制御部51は、定電流・定電圧制御の充電試験開始の指令を外部から受けると、定電圧・定電流充電試験モードとなる。充電試験モードでは、
図7に示すように、制御部51は、先ず、定電流充電制御を実行する(ステップS11)。定電流充電制御はバッテリー15に供給される充電電流が定電流値、すなわち設定電流値Isetに等しくなるように充電電流を供給させることによりバッテリー15を充電させる制御である。定電流充電制御では一定間隔毎に電流検出部40によって検出されるバッテリー電流Idecが設定電流値Iset、例えば、1[A]となるようにデューティ比DRが制御される。例えば、バッテリー電流Idecが設定電流値Isetより高ければデューティ比DRが制御変位値ΔDR1だけ低下され、バッテリー電流Idecが設定電流値Isetより低ければデューティ比DRが制御変位値ΔDR1だけ増加され、バッテリー電流Idecが設定電流値Isetに等しければ、そのときのデューティ比DRが維持される。
【0032】
制御部51は、定電流充電制御の実行中には、バッテリー15の端子間電圧(バッテリー電圧)Vdecが設定電圧値Vsetに達したか否かを判別する(ステップS12)。バッテリー15の端子間電圧Vdecは上記したように電圧検出部50によって検出される。Vdec<Vsetならば、ステップS11の定電流充電制御を継続する。Vdec≧Vsetならば、制御部51は、定電流充電制御を停止し、定電圧充電制御を実行する(ステップS13)。定電圧充電制御はバッテリー15の端子間電圧Vdecが定電圧値、すなわち設定電圧値Vsetに維持されるようにバッテリー15に充電電流を供給させることによりバッテリー15を充電させる制御である。定電圧充電制御では一定間隔毎に電圧検出部50によって検出される端子間電圧Vdecが設定電圧値Vset、例えば、4.0[V]となるようにデューティ比DRが制御される。例えば、端子間電圧Vdecが設定電圧値Vsetより高ければデューティ比DRが制御変位値ΔDR2だけ低下され、検出電圧Vdecが設定電圧値Vsetより低ければデューティ比DRが制御変位値ΔDR2だけ増加され、検出電圧Vdecが設定電圧値Vsetに等しければ、そのときのデューティ比DRが維持される。
【0033】
制御部51は、定電圧充電制御の実行中には、電流検出部40によって検出されるバッテリー電流Idecが0[A]に達したか否かを判別する(ステップS14)。Idec>0[A]ならば、ステップS13の定電圧充電制御を継続する。一方、Idec≦0[A]ならば、制御部51は、ゼロアンペア制御を実行する(ステップS15)。ゼロアンペア制御はバッテリー15への充電電流を0[A]とし、バッテリー15に対して充電をほぼ行わない制御である。ゼロアンペア制御では、周期T1毎のデューティ比DRは現在値に維持される。しかしながら、バッテリー電流Idecが0[A]より低下するとデューティ比DRを制御変位値ΔDR3だけ増加することが可能である。制御変位値ΔDR3は制御変位値ΔDR1、ΔDR2に比べて非常に小さい微小値である。
【0034】
ゼロアンペア制御中においては、バッテリー15の端子間電圧Vdecが設定電圧値Vset、例えば、4.0[V]になっているので、バッテリー15に流れる電流を0[A]に維持させるためには、
図8に示すように、1周期T1内のスイッチング素子31~34のオンオフによって定まる充電電流期間TAは放電電流期間TCより大きくなる。すなわちTA>TCとなるようにデューティ比DRが設定される。
【0035】
制御部51は、ゼロアンペア制御の実行中には、バッテリー15の端子間電圧Vdecが設定電圧値Vsetより高いか否かを判別する(ステップS16)。Vdec>Vsetであるならば、制御部51は、ゼロアンペア制御を停止し、微小放電制御を実行する(ステップS17)。微小放電制御はバッテリー15から微小の放電電流を流し出させる制御である。微小放電制御では、周期T1毎のデューティ比DRは現在値から制御変位値ΔDR4だけ減少される。ΔDR4は制御変位値ΔDR3と同じ微小値でも良い。
【0036】
制御部51は、微小放電制御の実行中には、ステップS16に進んでバッテリー15の端子間電圧Vdecが設定電圧値Vsetより高いか否かを判別する。微小放電制御の実行中にVdec>Vsetであるならば、微小放電制御が継続される。
【0037】
制御部51は、ステップS16においてVdec≦Vsetならば、充電試験の終了であるか否かを判別する(ステップS18)。制御部51は、充電試験終了の指令を外部から受けた場合、或いは予め決められた充電試験時間が経過した場合には充電試験の終了と判別する。制御部51は、充電試験終了の指令を外部から受けていない場合には充電試験の終了ではないと判別し、ステップS15のゼロアンペア制御を実行する。よって、微小放電制御の実行によってVdec≦Vsetとなり、更に充電試験終了でない場合には微小放電制御が停止され、ゼロアンペア制御が再開されることになる。
【0038】
制御部51は、ステップS18において充電試験の終了と判別した場合には、ゼロアンペア制御又は微小放電制御を含む充電試験の制御動作を停止する(ステップS19)。
【0039】
上記した制御部51の制御動作によって充電試験モードにおけるバッテリー15の端子間電圧Vdec及びバッテリー電流Idec各々は
図9に示すように時間経過と共に変化する。
図9において充電試験が時点t0において開始されると、先ず、ステップS11の定電流充電制御が実行される。定電流充電制御中においてはバッテリー15に供給される充電電流が設定電流値Isetに制御され、一定とされる。このような一定の充電電流が供給されるバッテリー15の端子間電圧Vdecは徐々に増加する。
【0040】
時点t1においてバッテリー15の端子間電圧Vdecが設定電圧値Vsetに達すると、定電流充電制御が停止され、代わってステップS13の定電圧充電制御が開始される。定電圧充電制御中においてはバッテリー15の端子間電圧Vdecが設定電圧値Vsetに維持されるように充電電流がバッテリー15に供給される。これにより充電電流、すなわちバッテリー電流Idecは低下していくことになる。
【0041】
時点t2において充電電流が0[A]まで低下すると、定電圧充電制御が停止され、代わってステップS15のゼロアンペア制御が開始される。ゼロアンペア制御中においては周期T1における実質的に充電電流を流さない。しかしながら、ゼロアンペア制御においてもフルブリッジ回路35のスイッチング素子31~34のオンオフ動作は続けて行われるので、そのオンオフ動作によるノイズ等により微小の充電電流がバッテリー15に流れることが起きることがある。そのように微小の充電電流が流れると、バッテリー15は充電されるのでバッテリー15の端子間電圧Vdecが設定電圧値Vsetより上昇する。この端子間電圧Vdecの上昇は電圧検出部50を介して制御部51に伝わるので、ゼロアンペア制御が停止され、代わってステップS17の微小放電制御が開始される。
【0042】
ところで、ステップS17の微小放電制御を設けない充電試験モードでは、
図10に示すように、時点t2以降においてゼロアンペア制御が継続されるので、スイッチング素子31~34のオンオフ動作によるノイズ等により微小の充電電流(
図10の符号X)がバッテリー15に断続的に流れる。その断続的な微小の充電電流はバッテリー15は充電させるので、
図10に符号Yで示すようにバッテリー15の端子間電圧Vdecが設定電圧値Vsetより徐々に上昇していくことになる。よって、バッテリー15の端子間電圧Vdecを設定電圧値Vsetに維持させることができなくなる。
【0043】
一方、本発明の実施例ではステップS17の微小放電制御を設けたので、ゼロアンペア制御中にバッテリー15の端子間電圧Vdecが設定電圧値Vsetより上昇すると、上記したようにゼロアンペア制御に代わってステップS17の微小放電制御が開始される。
図9においては微小放電制御中の電流特性の一部分の特性P1が拡大されて特性P2として示されている。その拡大特性P2に符号Zで示すように、微小放電制御中にVdec>Vsetであるとバッテリー15から微小の放電電流が流れ出るので、バッテリー15は僅かに放電されることになり、バッテリー15の端子間電圧Vdecは低下する。よって、
図9に示すように、時点t2以降においては、ゼロアンペア制御と微小放電制御とが繰り返されることにより、0[A]を境界にして微小充電電流と微小放電電流とが流れるので、その結果、バッテリー15の端子間電圧Vdecを設定電圧値Vsetに高精度で維持させることができる。
【0044】
なお、上記した実施例では、ステップS16においてバッテリー15の端子間電圧Vdecが設定電圧値Vsetより高くなると微小放電制御が実行されるが、設定電圧値Vsetに許容幅を設けても良い。すなわち、バッテリー15の端子間電圧Vdecが設定電圧値Vset+許容幅ΔVより高くなった場合に微小放電制御を実行するようにしても良い。
【0045】
また、上記した実施例におけるAC/DC変換部21の出力直流電圧値、設定電圧値Vset、設定電流値Iset等の具体的な数値は本発明における一例に過ぎず、本発明はそれらの数値に限定されない。本発明においてそれらの数値が、使用されるバッテリーの特性や充放電条件等によって変更されても良いことは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
11 交流電源
15 バッテリー
21 AC/DC変換部
31~34 半導体スイッチング素子
35 フルブリッジ回路
36、37 チョークコイル
38、39 コンデンサ
40 電流検出部
41~44 還流ダイオード
50 電圧検出部
51 制御部