(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】フットスイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 21/26 20060101AFI20221227BHJP
G05G 1/30 20080401ALI20221227BHJP
H01H 13/16 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
H01H21/26
G05G1/30 Z
H01H13/16 A
(21)【出願番号】P 2021103212
(22)【出願日】2021-06-22
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】596148032
【氏名又は名称】日本エルゴノミクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 勇
【審査官】藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】実公昭38-004439(JP,Y1)
【文献】特開平08-249983(JP,A)
【文献】特開2013-101913(JP,A)
【文献】中国実用新案第202549638(CN,U)
【文献】中国実用新案第201708046(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/00 - 13/88
H01H 19/00 - 21/88
G05G 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延び
、後側の上壁部における上面が前側の上壁部における上面よりも高い位置となるペダル部材と、
回転軸部を介して前記ペダル部材と接続されるベースユニットと、を備えるフットスイッチであって、
前記ベースユニットは、
前記ペダル部材に対して弾性力を付与する弾性力付与部と、
前記ペダル部材が踏まれて前記回転軸部周りに回転することで、前記ペダル部材に操作されるスイッチ部と、
前記ペダル部材が踏まれる前の状態において、前記弾性力付与部から弾性力を付与された前記ペダル部材を支持する支持部と、を備え、
前記弾性力付与部及び前記支持部は、前記回転軸部に対して前記前後方向における
前側に配置され、
前記支持部は、前記ペダル部材
において前記前後方向に延びる側壁部を支持する、フットスイッチ。
【請求項2】
前後方向に延びるペダル部材と、
回転軸部を介して前記ペダル部材と接続されるベースユニットと、を備えるフットスイッチであって、
前記ベースユニットは、
前記ペダル部材に対して弾性力を付与する弾性力付与部と、
前記ペダル部材が踏まれて前記回転軸部周りに回転することで、前記ペダル部材に操作されるスイッチ部と、
前記ペダル部材が踏まれる前の状態において、前記弾性力付与部から弾性力を付与された前記ペダル部材を支持する支持部と、を備え、
前記弾性力付与部及び前記支持部は、前記回転軸部に対して前記前後方向における一方側に配置され、
前記支持部は、前記ペダル部材の側壁部を支持し、
前記ベースユニットは、
前記弾性力付与部及び前記スイッチ部が設けられたベース部材と、
前記ベース部材の幅方向における端部に接続される接続部材と、を備え、
前記支持部は、前記ペダル部材の前記側壁部を前記幅方向における内側から係止する係止部を有し、
前記回転軸部及び前記係止部は、前記接続部材に設けられる
、フットスイッチ。
【請求項3】
前記ペダル部材及び前記ベースユニットを備えるスイッチユニットを複数有し、
隣り合う前記スイッチユニットの前記接続部材同士は、連結部を介して連結されている、請求項2に記載のフットスイッチ。
【請求項4】
前記ベースユニットは、前記前後方向における一方側に壁部を有し、
前記壁部は、前記ペダル部材が踏まれた状態において前記ペダル部材と当接する当接面を有し、
前記当接面は、幅方向における外側へ向かうに従って、前記ペダル部材から遠ざかるように傾斜する、請求項1~3の何れか一項に記載のフットスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フットスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンピュータ等の電子機器に接続されて、当該電子機器を操作するためのフットスイッチとして、特許文献1に示されたものが知られている。このフットスイッチは、前後方向に延びるペダル部材と、回転軸部を介してペダル部材と接続されるベースユニットと、を備える。ベースユニットは、ペダル部材に対して弾性力を付与する弾性力付与部と、ペダル部材が踏まれて回転軸部周りに回転することで、ペダル部材に操作されるスイッチ部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、フットスイッチにおいては、弾性力付与部のストロークを短くすると共に弾性力を強くすることが求められる場合がある。しかしながら、弾性力が強すぎて、ペダル部材の剛性が不足するという問題が発生する場合がある。
【0005】
本発明は、弾性力を強くしてもペダル部材の剛性が不足することを抑制できるフットスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係るフットスイッチは、前後方向に延びるペダル部材と、回転軸部を介してペダル部材と接続されるベースユニットと、を備えるフットスイッチであって、ベースユニットは、ペダル部材に対して弾性力を付与する弾性力付与部と、ペダル部材が踏まれて回転軸部周りに回転することで、ペダル部材に操作されるスイッチ部と、ペダル部材が踏まれる前の状態において、弾性力付与部から弾性力を付与されたペダル部材を支持する支持部と、を備え、弾性力付与部及び支持部は、回転軸部に対して前後方向における一方側に配置され、支持部は、ペダル部材の側壁部を支持する。
【0007】
フットスイッチは、前後方向に延びるペダル部材と、回転軸部を介してペダル部材と接続されるベースユニットと、を備える。ベースユニットは、ペダル部材に対して弾性力を付与する弾性力付与部を備える。従って、使用者がペダル部材を踏むと、ペダル部材は弾性力付与部を圧縮するように回転軸部周りに回転しながら、ベースユニットに近づく。これにより、ペダル部材がスイッチ部を操作する。ここで、ベースユニットは、ペダル部材が踏まれる前の状態において、弾性力付与部から弾性力を付与されたペダル部材を支持する支持部を備える。また、弾性力付与部及び支持部は、回転軸部に対して前後方向における一方側に配置される。支持部は、ペダル部材の側壁部を支持する。この場合、支持部が、弾性力付与部の近くにおける側壁部でペダル部材を支持することができる。回転軸部についてのトルクの釣り合いを考慮すると、ペダル部材が支持部から受ける力の大きさは、ペダル部材が弾性力付与部から受ける力に近い大きさにまで抑えることができる。そのため、上下方向の力の釣り合いを考慮すると、ペダル部材が回転軸部から受ける力の大きさを抑制することができる。そのため、弾性力を強くしてもペダル部材の剛性が不足することを抑制できる。
【0008】
フットスイッチにおいて、ベースユニットは、弾性力付与部及びスイッチ部が設けられたベース部材と、ベース部材の幅方向における端部に接続される接続部材と、を備え、支持部は、ペダル部材の側壁部を幅方向における内側から係止する係止部を有し、回転軸部及び係止部は、接続部材に設けられてよい。このように、ベース部材とは別部材である接続部材に回転軸部及び係止部が設けられている。従って、ペダル部材の側壁部に対して、接続部材を幅方向の内側から取り付けることで、ペダル部材の側壁部に回転軸部を接続すると共に、係止部で側壁部を係止する構造が組立可能となる。
【0009】
ペダル部材及びベースユニットを備えるスイッチユニットを複数有し、隣り合うスイッチユニットの接続部材同士は、連結部を介して連結されていてよい。この場合、接続部材を隣り合うスイッチユニットを連結するための部材として流用することができる。
【0010】
フットスイッチにおいて、ベースユニットは、前後方向における一方側に壁部を有し、壁部は、ペダル部材が踏まれた状態においてペダル部材と当接する当接面を有し、当接面は、幅方向における外側へ向かうに従って、ペダル部材から遠ざかるように傾斜してよい。この場合、使用者がペダル部材を踏んだときに、ペダル部材がベースユニットに対して傾いた場合、当接面の傾斜した部分が、ペダル部材の傾きを受容することができる。そのため、ペダル部材が傾いた状態で踏み込まれた場合であっても、ペダル部材がスイッチ部を操作する前段階で当接面によって移動を規制されることを抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、弾性力を強くしてもペダル部材の剛性が不足することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図2は、フットスイッチの展開斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1のIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】
図4(a)は、本実施形態に係るフットスイッチのベース部材の前壁部を前側から見た概略図であり、
図4(b)(c)は、比較例に係るフットスイッチのベース部材の前壁部を前側から見た概略図である。
【
図5】
図5は、比較例に係るフットスイッチの側面図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るフットスイッチの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1~
図3を参照して、本発明の実施形態に係るフットスイッチ1について説明する。
図1は、フットスイッチ1の斜視図である。
図2は、フットスイッチ1の展開斜視図である。
図3は、
図1のIII-III線に沿った断面図である。
【0015】
フットスイッチ1は、コンピュータ等の電子機器に接続されて、当該電子機器を操作するための装置である。
図1に示すように、本実施形態に係るフットスイッチ1は、二つのスイッチユニット2A,2Bを有する。スイッチユニット2A,2Bは、左右に互いに離間した状態で並べられる。スイッチユニット2A,2Bは、互いに独立して操作可能な操作ユニットである。使用者から見て、スイッチユニット2Aは左側に配置され、スイッチユニット2Bは右側に配置される。なお、以降の説明においても「左」「右」の語を用いる場合は、使用者から見たときの状態を基準とする。スイッチユニット2A,2Bは、コネクタユニット3によって、互いに左右に離間した状態で接続される。
【0016】
次に、
図2及び
図3を参照して、左側のスイッチユニット2Aの構成について説明する。なお、右側のスイッチユニット2Bは左側のスイッチユニット2Aと同趣旨の構成を有するため説明を省略する。また、
図2では、接続部材30A,30Bの様子を示すために、右側のスイッチユニット2Bのペダル部材6及びベース部材20を省略している。なお、スイッチユニット2Aを説明するために、使用者からスイッチユニット2Aを見たときの状態を基準として、前後方向D1、幅方向D2、及び上下方向D3を設定する。なお、前後方向D1のうち、使用者から見て手前側を「前」とし、奥側を「後」とする。
図2に示すように、スイッチユニット2Aは、ペダル部材6と、ベースユニット7と、を備える。
【0017】
ペダル部材6は、使用者が足を載せて踏む部材である。ペダル部材6は、前後方向D1に延びると共に、幅方向D2に広がる。ペダル部材6は、上壁部11と、前壁部12と、後壁部13と、側壁部14A,14Bと、を備える。上壁部11は、ペダル部材6の上端部において板状に広がる。上壁部11は、幅方向D2から見たときに、後側から前側へ向かうに従って下方へ向かうように湾曲している。上壁部11は、当該湾曲形状にて幅方向D2へ広がる。前壁部12、後壁部13、及び側壁部14A,14Bは、上壁部11の前端部、後端部、及び左右の端部からそれぞれ下方へ延びる壁部である。側壁部14A,14Bには、後述の回転軸部41を挿入するための貫通孔16が形成される。貫通孔16は、側壁部14A,14Bの後端付近に形成される。また、貫通孔16は、側壁部14A,14Bを幅方向D2に貫通する。
【0018】
ベースユニット7は、回転軸部41を介してペダル部材6と接続される。ベースユニット7は、使用時において、床などの設置面に配置されるユニットである。ベースユニット7は、ベース部材20と、接続部材30A,30Bと、を備える。
【0019】
ベース部材20は、ペダル部材6に対して上下方向D3に対向した状態で、ペダル部材6の下側に配置される部材である。ベース部材20は、ペダル部材6によって上方から覆われる。ベース部材20は、内部にスイッチユニット2Aの各種構成要素が設けられる部材である。ベース部材20は、前後方向D1に延びると共に、幅方向D2に広がる。ベース部材20は、本体部21と、前壁部22と、後壁部23と、側壁部24A,24Bと、を備える。本体部21は、前後方向D1及び幅方向D2に広がる。前壁部22、後壁部23、及び側壁部24A,24Bは、本体部21の前端部、後端部、及び左右の端部からそれぞれ上方へ延びる壁部である。ベース部材20の前壁部22はペダル部材6の前壁部12に対して後側から対向するように配置される。ベース部材20の後壁部23はペダル部材6の後壁部13に対して前側から対向するように配置される。ベース部材20の側壁部24A,24Bは、ペダル部材6の側壁部14A,14Bに対して幅方向D2における内側から対向するように配置される。
【0020】
接続部材30A,30Bは、ベース部材20の幅方向D2における端部に接続される部材である。接続部材30Aは、ベース部材20の左側の端部に接続される。接続部材30Bは、ベース部材20の右側の端部に接続される。また、接続部材30A,30Bは、ベース部材20の底面側に設けられる。具体的には、
図3に示すように、ベース部材20の本体部21の底面21aには、上方へ持ち上がる段差部26が形成される。接続部材30Bは、ベース部材20の段差部26に潜り込んだ状態で配置される。なお、
図3には、ベース部材20の右側の端部付近の断面が示されているが、左側の端部付近にも段差部26が設けられ、当該段差部26に接続部材30Aが潜り込んだ状態で配置される。
【0021】
図2に戻り、左側のスイッチユニット2Aに対する右側の接続部材30Bと、右側のスイッチユニット2Bに対する左側の接続部材30Aとは、幅方向D2に延びる連結部31を介して連結されている。これにより、接続部材30A,30B及び連結部31によって、スイッチユニット2Aとスイッチユニット2Bとを接続するコネクタユニット3が形成される。一方、左側のスイッチユニット2Aに対する左側の接続部材30Aには連結部31は設けられておらず、接続部材30Aが単独の部材として構成されている。右側のスイッチユニット2Bに対する右側の接続部材30Bには連結部31は設けられておらず、接続部材30Bが単独の部材として構成されている。これらの単独の部材として構成された接続部材30A,30Bは、フットスイッチ1の幅方向D2の両端部に配置される。
【0022】
ベースユニット7は、回転軸部41と、弾性力付与部42と、スイッチ部43と、支持部44と、を備える。
【0023】
回転軸部41は、ペダル部材6を回転可能に支持する。一つのペダル部材6は、一対の回転軸部41によって支持される。左側の回転軸部41は、左側の接続部材30Aから上方に延びる突出部53に設けられる。左側の回転軸部41は、接続部材30Aの突出部53から左側へ延びて、左側の側壁部14Aの貫通孔16に挿入される。右側の回転軸部41は、右側の接続部材30Bから上方に延びる突出部53に設けられる。右側の回転軸部41は、接続部材30Bの突出部53から右側へ延びて、右側の側壁部14Bの貫通孔16に挿入される。なお、ベース部材20の側壁部24A,24Bには、突出部53を通過させるための凹部27が形成される。
【0024】
弾性力付与部42は、ペダル部材6に対して弾性力を付与する。弾性力付与部42は、ペダル部材6の上壁部11とベース部材20の本体部21との間に配置されるスプリング46によって構成される。弾性力付与部42は、本体部21の幅方向D2における略中央位置に配置される。弾性力付与部42は、回転軸部41に対して前後方向D1における前側に配置される。
図3に示すように、スプリング46の下端部は、本体部21から上方へ延びる突出部47が挿入されることで支持される。スプリング46の上端部は、上壁部11から下方へ延びる突出部48が挿入されることで支持される。
【0025】
図2に示すように、スイッチ部43は、ペダル部材6が踏まれて回転軸部41周りに回転することで、ペダル部材6に操作される。スイッチ部43は、本体部21の弾性力付与部42の後側であって、幅方向D2における中央位置に配置される。スイッチ部43は、本体部21に固定されるスイッチボディ51と、スイッチボディ51に設けられたレバー52と、を備える。ペダル部材6が踏まれると、上壁部11にレバー52が押されることによって、スイッチ部43のスイッチが作動する。
【0026】
支持部44は、ペダル部材6が踏まれる前の状態において、弾性力付与部42から弾性力を付与されたペダル部材6を支持する。一つのペダル部材6は、一対の支持部44によって支持される。左側の支持部44は左側の接続部材30Aに設けられ、右側の支持部44は右側の接続部材30Bに設けられる。左右の支持部44は、ペダル部材6の側壁部14A,14Bを幅方向D2における内側から係止する係止部54を有する。左側の支持部44の係止部54は、左側の接続部材30Aから上方に延びる突出部56に設けられる。左側の係止部54は、接続部材30Aの突出部56から左側へ延びて、左側の側壁部14Aを支持する。右側の支持部44の係止部54は、右側の接続部材30Bから上方に延びる突出部56に設けられる。右側の係止部54は、接続部材30Bの突出部56から右側へ延びて、右側の側壁部14Bを支持する。なお、ベース部材20の側壁部24A,24Bには、突出部56を通過させるための凹部28が形成される。
図3に示すように、ペダル部材6の側壁部14Bの下端部のうち、支持部44と対応する位置には、左側へ延びる爪部57が形成される。支持部44は、係止部54で爪部57と上側から接触することで、側壁部14Bを幅方向D2の内側から係止する。左側の側壁部14Aにも同趣旨の爪部57が形成される。
【0027】
図2に示すように、弾性力付与部42及び支持部44は、回転軸部41に対して前後方向D1における前側に配置される。弾性力付与部42及び支持部44は、前後方向D1において略同位置に配置される。すなわち、回転軸部41からの弾性力付与部42の前後方向D1における距離は、回転軸部41からの支持部44の前後方向D1における距離と略同じとなる。
【0028】
ベースユニット7のベース部材20は、前後方向D1における前側に前壁部22を有する。前壁部22は、ペダル部材6が踏まれた状態においてペダル部材6と当接する当接面60を有する。当接面60は、幅方向D2における外側へ向かうに従って、ペダル部材6から遠ざかるように傾斜する。当接面60は、頂部60aと、傾斜部60b,60cと、を備える。頂部60aは、幅方向D2における中央位置に幅方向D2と平行に広がる。傾斜部60bは、頂部60aの左側の領域において、左側へ向かうに従って、下側へ下がるように傾斜する(
図4(a)も参照)。傾斜部60cは、頂部60aの右側の領域において、右側へ向かうに従って、下側へ下がるように傾斜する(
図4(a)も参照)。
【0029】
次に、本実施形態に係るフットスイッチ1の作用・効果について説明する。
【0030】
フットスイッチ1は、前後方向D1に延びるペダル部材6と、回転軸部41を介してペダル部材6と接続されるベースユニット7と、を備える。ベースユニット7は、ペダル部材6に対して弾性力を付与する弾性力付与部42を備える。従って、使用者がペダル部材6を踏むと、ペダル部材6は弾性力付与部42を圧縮するように回転軸部41周りに回転しながら、ベースユニット7に近づく。これにより、ペダル部材6がスイッチ部43を操作する。ここで、ベースユニット7は、ペダル部材6が踏まれる前の状態において、弾性力付与部42から弾性力を付与されたペダル部材6を支持する支持部44を備える。また、弾性力付与部42及び支持部44は、回転軸部41に対して前後方向D1における前側(一方側)に配置される。この場合、支持部44が、弾性力付与部42の近くの側壁部14A,14Bでペダル部材6を支持することができる。回転軸部41についてのトルクの釣り合いを考慮すると、ペダル部材6が支持部44から受ける力の大きさは、ペダル部材6が弾性力付与部42から受ける力に近い大きさにまで抑えることができる。そのため、上下方向D3の力の釣り合いを考慮すると、ペダル部材6が回転軸部41から受ける力の大きさを抑制することができる。そのため、弾性力を強くしてもペダル部材6の剛性が不足することを抑制できる。
【0031】
上述の効果について、
図5及び
図6を参照して、具体的に説明する。
図5は、比較例に係るフットスイッチ100の側面図である。
図6は、実施形態に係るフットスイッチ1の側面図である。
図5及び
図6には、回転軸部41周りの力の釣り合いの関係が記載されている。
【0032】
図5に示す比較例に係るフットスイッチ100は、本実施形態のような支持部44を有しておらず、ベースユニット7の後壁部23が支持部144として機能する点で、本実施形態に係るフットスイッチ1と相違している。使用者がペダル部材6を踏んでいないときにおけるペダル部材6の力の釣り合いについて説明する。まず、回転軸部41から弾性力付与部42のスプリング46までの距離を「Ds=48.4mm」とする。スプリング46からペダル部材6が上向きに押される力を「Fs=2.0kg」とする。回転軸部41から後壁部23までの距離を「Dr=9.8mm」とする。この場合、後壁部23からペダル部材6が上向きに押される力を「Fr」とすると、回転軸部41周りのトルクの釣り合いより式(1)が成り立つ。これにより、式(2)が成り立つため、当該式(2)に値を代入することで、「Fr=9.9kg」という結果が得られる。また、回転軸部41からペダル部材6の貫通孔16に加えられる下向きの力を「Fa」とすると、上下方向の力の釣り合いより、式(3)が成り立つため、当該式(3)に値を代入することで、「Fa=11.9kg」という結果が得られる。
Fs×Ds=Fr×Dr …(1)
Fr=(Fs×Ds)/Dr …(2)
Fa=Fs+Fr …(3)
【0033】
以上のように、比較例に係るフットスイッチ100においては、後壁部23及び回転軸部41からペダル部材6に作用する力が大きくなることが理解される。このような力は、部品の間で作用するため、他の部品に作用する力も大きくなる。従って、フットスイッチ100における様々な部品の破壊につながる可能性がある。また、製品寿命が短くなるという問題や、時間の経過とともに部品の形状が変化してしまうという問題も生じる。
【0034】
ここで、フットスイッチ100では、スプリング46の力を小さくすることにより、部品に作用する力が大きくなることを抑制する場合がある。しかし、スプリング46の力が小さいと、使用者の足がペダル部材6に少し触れただけで、フットスイッチ100から信号が出力されてしまうという問題が生じる。一般的なフットスイッチ100では、少し触れたぐらいでは信号が出力されないように、ある程度ペダル部材6を踏み込まなくては信号が出力されないようになっている。しかし、このような構成では、踏み込みを開始してスイッチが押されるまでのストロークが長くなってしまう。当該構成では、素早く信号を出力することができないという問題が生じる。
【0035】
また、比較例に係るフットスイッチ100では、部品の位置が設計値からずれてしまう問題や、ペダル部材6とベースユニット7との間が開いてしまうという問題を生じやすい。すなわち、ペダル部材6が後壁部23から受ける力(Fr)及び回転軸部41から受ける力(Fa)が大きいため、それらの力を受ける部分が弾性変形や塑性変形を起こしやすくなってしまう。例えば、後壁部23が、「Fr」による下向きの反力によって、例えば0.2mm低くなったとする。ペダル部材6の前端部の回転軸部41からの距離の設計値を「Dt=85mm」とする。ペダル部材6の前端部の位置のずれ量Tは、式(4)に値を代入することで1.7mmとなる。すなわち、回転軸部41がしっかりと作られて上下方向に移動しない場合であっても、ペダル部材6の前端部が上側へ1.7mmもずれることが理解される。実際には回転軸部41も変形する。従って、回転軸部41が上向きの反力(Faに対する反力)によって、例えば0.2mm移動したとすると、ペダル部材6の前端部のずれ量Tは、式(5)に値を代入することで3.6mmも上に上がることが理解される。ペダル部材6の前端部が上がると、ペダル部材6とベースユニット7との間が開いて、フットスイッチ100の中の部品が見えてしまったり、異物が入り込むなどの問題が生じる。
T=0.2×(Dt/Dr) …(4)
T=1.7+0.2×(Dt+Dr)/Dr …(5)
【0036】
なお、比較例に係るフットスイッチ100の問題点は、ペダル部材6に大きな力が作用することによる問題であったが、部品の精度が悪いと同様の問題が生じる。すなわち、後壁部23の高さや、回転軸部41の高さを正確に作成しないと、それらの誤差が10倍近くに拡大されて、ペダル部材6の前端部の位置の誤差として表れることになる。しかし、部品を十分な精度で作成することは容易ではないという問題がある。
【0037】
次に、本実施形態に係るフットスイッチ1について説明する。本実施形態に係るフットスイッチ1において、支持部44は、回転軸部41からの距離が弾性力付与部42のスプリング46とほぼ等しくなるように設計されている。使用者がペダル部材6を踏んでいないときにおけるペダル部材6の力の釣り合いについて説明する。まず、回転軸部41から弾性力付与部42のスプリング46までの距離を「Ds=39.3mm」とする。スプリング46からペダル部材6が上向きに押される力を「Fs=2.0kg」とする。回転軸部41から支持部44までの距離を「Dp=38.6mm」とする。この場合、支持部44からペダル部材6が下向きに引っ張られる力を「Fp」とすると、回転軸部41周りのトルクの釣り合いより式(6)が成り立つ。これにより、式(7)が成り立つため、当該式(7)に値を代入することで、「Fp=2.04kg」という結果が得られる。Fpの方がFsより僅かに大きいので、回転軸部41から貫通孔16に作用する力は、上向きであって大きさは0.04kgという小さい値になる。
Fs×Ds=Fp×Dp …(6)
Fp=(Fs×Ds)/Dp …(7)
【0038】
以上のように、部品に作用する力の最大値は、スプリング46が出す力と同じくらいになるため、部品が破壊される可能性は小さく、製品寿命を長くすることができ、形状が変化することを抑制することができる。
【0039】
また、支持部44には小さな力しか作用しないため、支持部44の変形も小さく抑えることができる。比較例に係るフットスイッチ100の支持部144である後壁部23に作用する力は「Fr=9.9kg」であったため、支持部44の変形量vは、式(8)で示され、当該式(8)に値を代入することで、「v=0.04mm」という結果が得られる。ペダル部材6の前端部の回転軸部41からの距離の設計値を「Dt=88mm」とする。ペダル部材6の前端部の位置のずれ量Tは、式(9)に値を代入することで0.09mmだけとなる。回転軸部41に作用する力はほぼゼロであるため、回転軸部41の移動量はほぼゼロとなる。以上のように、本実施形態のフットスイッチ1においては、ペダル部材6の前端部の上側へのずれ量は0.09mmだけとなり、比較例に係るフットスイッチ100のペダル部材6の前端部の上側へのずれ量が3.6mmとなるのに比べてかなり小さく抑えることができる。
v=0.2×(Fp/Fr) …(8)
T=0.04×(Dt/Dp) …(9)
【0040】
また、フットスイッチ1において、ベースユニット7は、弾性力付与部42及びスイッチ部43が設けられたベース部材20と、ベース部材20の幅方向D2における端部に接続される接続部材30A,30Bと、を備え、支持部44は、ペダル部材6の側壁部14A,14Bを幅方向D2における内側から係止する係止部54を有し、回転軸部41及び係止部54は、接続部材30A,30Bに設けられている。このように、ベース部材20とは別部材である接続部材30A,30Bに回転軸部41及び係止部54が設けられている。従って、ペダル部材6の側壁部14A,14Bに対して、接続部材30A,30Bを幅方向D2の内側から取り付けることで、ペダル部材6の側壁部14A,14Bに回転軸部41を接続すると共に、係止部54で側壁部14A,14Bを係止する構造が組立可能となる。
【0041】
ペダル部材6及びベースユニット7を備えるスイッチユニット2を複数有し、隣り合うスイッチユニット2の接続部材30同士は、連結部31を介して連結されていてよい。この場合、接続部材30を隣り合うスイッチユニット2を連結するための部材として流用することができる。
【0042】
フットスイッチ1において、ベースユニット7は、前後方向D1における前側に前壁部22を有し、前壁部22は、ペダル部材6が踏まれた状態においてペダル部材6と当接する当接面60を有し、当接面60は、幅方向D2における外側へ向かうに従って、ペダル部材6から遠ざかるように傾斜してよい。
【0043】
まず、比較例について説明する。例えば、
図4(b)のように、当接面60が傾斜部60b,60cを有していない場合について説明する。使用者がペダル部材6を踏んだときに、ペダル部材6がベースユニット7に対して左側に傾いた場合、当該傾いたペダル部材6の左側の端部は、当接面60の左側の端部付近に当接する。これにより、ペダル部材6の移動が規制されて、それ以上下側へ踏み込まれなくなる。その一方、ペダル部材6の中央位置では、ペダル部材6が当接面60から浮いた状態となる。この場合、ペダル部材6がスイッチ部43を押せなくなってしまう。
【0044】
図4(b)の構成の問題を解決するため、
図4(c)のように、当接面60全体を下げる構成を採用し得る。なお、
図4(c)では、
図4(b)の当接面60の位置が一点鎖線で示されている。使用者がペダル部材6を踏んだときに、ペダル部材6がベースユニット7に対して左側に傾いた場合、当該傾いたペダル部材6の左側の端部は、当接面60の左側の端部付近に当接する。このとき、当接面60全体が下方に下がっているため、ペダル部材6の中央位置も十分に下がることができるため、スイッチ部43を押すことができる。しかし、ペダル部材6が傾くことなく真っ直ぐに踏まれた場合、ペダル部材6がスイッチ部43にとって適切な位置まで踏み込まれても、当該ペダル部材6に対するストッパが存在していないため、更に下方まで踏み込み可能となる。従って、スイッチ部43が必要以上に押されてしまい、故障等の原因となる。
【0045】
図4(a)に示す本実施形態に係るフットスイッチ1においては、使用者がペダル部材6を踏んだときに、ペダル部材6がベースユニット7に対して傾いた場合、当接面60の傾斜した部分である傾斜部60b,60cが、ペダル部材6の傾きを受容することができる。そのため、ペダル部材6が傾いた状態で踏み込まれた場合であっても、
図4(b)の構造とは異なり、ペダル部材6がスイッチ部43を操作する前段階で当接面60によって移動を規制されることを抑制できる。一方、ペダル部材6が傾くことなく真っ直ぐに踏み込まれた場合、当接面60の中央位置における頂部60aが適切な位置に配置されているため、ペダル部材6がスイッチ部43を押したら、適切な位置で頂部60aによってそれ以上の移動を規制される。
【0046】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0047】
フットスイッチ1のスイッチユニットの構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更してもよい。例えば、弾性力付与部と支持部との前後方向における位置関係は上述の実施形態に限定されず、離間距離を大きくしてもよい。
【0048】
また、フットスイッチ1のスイッチユニットの数は二つに限定されず、一つであってもよく、三つ以上であってもよい。
【0049】
上述の実施形態では、弾性力付与部42として、1つのスプリング46を本体部21の幅方向D2の略中央に配置した。これに代えて、ほぼ同じ弾性力を有する2つのスプリングを左右対称な位置に配置してもよい。
【0050】
また、上述の実施形態では、スイッチ部43は、本体部21の弾性力付与部42の後側に配置されていた。これに代えて、スイッチ部43は、本体部21の弾性力付与部42の前側に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…フットスイッチ、6…ペダル部材、7…ベースユニット、14A,14B…側壁部、20…ベース部材、22…前壁部、30A,30B…接続部材、41…回転軸部、42…弾性力付与部、43…スイッチ部、44…支持部、54…係止部、60…当接面。
【要約】
【課題】弾性力を強くしてもペダル部材の剛性が不足することを抑制できるフットスイッチを提供する。
【解決手段】弾性力付与部42及び支持部44は、回転軸部41に対して前後方向D1における前側(一方側)に配置される。この場合、支持部44が、弾性力付与部42の近くにおける側壁部14A,14Bでペダル部材6を支持することができる。回転軸部41についてのトルクの釣り合いを考慮すると、ペダル部材6が支持部44から受ける力の大きさは、ペダル部材6が弾性力付与部42から受ける力に近い大きさにまで抑えることができる。そのため、上下方向D3の力の釣り合いを考慮すると、ペダル部材6が回転軸部41から受ける力の大きさを抑制することができる。そのため、弾性力を強くしてもペダル部材6の剛性が不足することを抑制できる。
【選択図】
図6