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特許72012733-(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンジリデン)-5-ヨード-1,3-ジヒドロインドール-2-オンのアンモニウム塩及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】3-(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンジリデン)-5-ヨード-1,3-ジヒドロインドール-2-オンのアンモニウム塩及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 209/34 20060101AFI20221227BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221227BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221227BHJP
   A61K 31/404 20060101ALI20221227BHJP
   A61K 31/44 20060101ALI20221227BHJP
   A61K 31/452 20060101ALI20221227BHJP
   A61K 31/5375 20060101ALI20221227BHJP
   A61K 31/4425 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
C07D209/34 CSP
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K31/404
A61K31/44
A61K31/452
A61K31/5375
A61K31/4425
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021505263
(86)(22)【出願日】2019-07-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 CN2019097525
(87)【国際公開番号】W WO2020029799
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】62/715,296
(32)【優先日】2018-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521038555
【氏名又は名称】メタゴン バイオテック インク.
【氏名又は名称原語表記】Metagone Biotech Inc.
【住所又は居所原語表記】3F., No.11, Ln.77, Xing’ai Rd., Neihu Dist.,Taipei City 114, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】チャー, タイ・ラング
(72)【発明者】
【氏名】ライ, タイ・ウェー
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ, イー・ター
(72)【発明者】
【氏名】リン, シェング・チエ
(72)【発明者】
【氏名】ユー, ヤン
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-536353(JP,A)
【文献】BASTIN,R.J. et al,"Salt selection and optimization procedures for pharmaceutical new chemical entities",ORGANIC PROCESS RESEARCH & DEVELOPMENT,2000年,Vol.4,No.5,pp.427-435
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物であって、
【化1】
は水素であり、R はベンジルであり、R は-NH-ベンジルで置換されたエチルである、又は
、R、R及び窒素が統合されて、ピペラジン、モルホリン又は4-(ジメチルアミノ)ピリジンを形成する、化合物。
【請求項2】
癌を治療するための薬学的キットであって
ソラフェニブ及び薬学的に許容可能な担体を備える第1の処方と、
請求項1に記載の化合物及び薬学的に許容可能な担体を備える第2の処方と、
を備える薬学的キット。
【請求項3】
前記癌が細胞死関連プロテインキナーゼ(DAPK)のセリン308のリン酸化を有し;前記癌が腎細胞癌、腎芽細胞腫、移行上皮癌、前立腺癌、乳癌、肺癌、子宮頸癌、口腔癌、神経膠腫、尿路上皮細胞癌及び黒色腫からなる群から選択される、請求項に記載の薬学的キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0002】
本開示は、概略として3-(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンジリデン)-5-ヨード-1,3-ジヒドロインドール-2-オン(GW5074)のアンモニウム塩及びGW5074のアンモニウム塩を使用して癌を治療する方法に向けられる。
【背景技術】
【0003】
癌患者をc-Raf阻害剤(例えば、ソラフェニブ)で早期に治療することは、腫瘍のサイズを効果的に阻害し得るが、まだ腫瘍を完全に排除できない。そこで、治療されることを目的とする癌が細胞死関連プロテインキナーゼ(DAPK)のリン酸化を有する場合に、ソラフェニブ及びGW5074の併用療法による癌を治療する改善された方法が提案されている(米国特許第9,273,034号及び第9,393,234号参照)。
【0004】
したがって、本開示は、癌の治療のために単独で又はc-Raf阻害剤との組合せで使用され得るGW5047の新規塩を提供することを目的としている。驚くべきことに、本開示で同定されたGW5047の新規塩は、非塩形態のものと比較して、改善された薬物動態(PK)特性を示す。
【発明の概要】
【0005】
以下に、基本的な理解を読者に与えるために開示の簡略化した概要を提示する。この概要は、開示の網羅的な概観ではなく、本発明の鍵となる/重要な要素を特定するものでも本発明の範囲を記述するものでもない。その専らの目的は、ここに開示される幾つかの概念を、後述のさらに詳細な説明の序章としての簡略な形態で提示することである。
【0006】
本開示は、3-(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシベンジリデン)-5-ヨード-1,3-ジヒドロインドール-2-オン(GW5074)の新規アンモニウム塩、及び単独で又はc-Raf阻害剤(例えば、ソラフェニブ)との組合せのいずれかでGW5074のアンモニウム塩を使用して癌を治療する方法に関する。
【0007】
より具体的には、本開示は、GW5074のアンモニウム塩である式(I)の化合物に関し、
【化1】

、R及びRは、独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール若しくはヘテロアリールであり、又は
、R、R及び窒素を統合して6員環ヘテロシクリルを形成し、
アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール若しくは6員環ヘテロシクリルは、選択的に、-OH、-NR及びその組合せからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換され、R及びRは独立して水素、アルキル、アリール又はヘテロアリールである。
【0008】
本開示のある好ましい実施形態によれば、式(I)において、R及びRは独立して水素であり、Rは少なくとも1つのヒドロキシルで置換されたターシャリーブチルである。
【0009】
本開示の更なる好ましい実施形態によれば、式(I)において、R及びRは独立して水素であり、Rは選択的に少なくとも1つのアミノ又はヒドロキシで置換されたエチルである。
【0010】
本開示の更なる好ましい実施形態によれば、式(I)において、R、R及びRは、独立してヒドロキシルで置換されたエチルである。
【0011】
本開示の更なる好ましい実施形態によれば、式(I)において、Rは水素であり、Rはメチルであり、Rは6個のヒドロキシ基で置換されたヘキシルである。
【0012】
本開示の更なる好ましい実施形態によれば、式(I)において、Rは水素であり、Rはベンジルであり、Rは-NH-ベンジルで置換されたエチルである。
【0013】
本開示の更なる好ましい実施形態によれば、式(I)において、R、R、R及び窒素が統合されて、ピペラジン、モルホリン又は4-(ジメチルアミノ)ピリジンを形成する。
【0014】
本開示は、癌の治療に対して有用な薬学的キットにも関する。キットは、ソラフェニブ及び薬学的に許容可能な担体を備える第1の処方と、上記の式(I)の化合物及び薬学的に許容可能な担体を備える第2の処方とを含む。
【0015】
本開示のある好ましい実施形態によれば、第2の処方の式(I)の化合物において、R及びRは独立して水素であり、Rは少なくとも1つのヒドロキシルで置換されたターシャリーブチルである。
【0016】
本開示の更なる好ましい実施形態によれば、第2の処方の式(I)の化合物において、R及びRは独立して水素であり、Rは選択的に少なくとも1つのアミノ又はヒドロキシルで置換されたエチルである。
【0017】
本開示の更なる好ましい実施形態によれば、第2の処方の式(I)の化合物において、R、R及びRは、独立してヒドロキシルで置換されたエチルである。
【0018】
本開示の更なる好ましい実施形態によれば、第2の処方の式(I)の化合物において、Rは水素であり、Rはメチルであり、Rは6個のヒドロキシ基で置換されたヘキシルである。
【0019】
本開示の更なる好ましい実施形態によれば、第2の処方の式(I)の化合物において、Rは水素であり、Rはベンジルであり、Rはベンジルアミノで置換されたエチルである。
【0020】
本開示の更なる好ましい実施形態によれば、第2の処方の式(I)の化合物において、R、R、R及び窒素が統合されて、ピペラジン、モルホリン又は4-(ジメチルアミノ)ピリジンを形成する。
【0021】
癌を有する被検体を処置する方法も、本開示に包含される。方法は、
(a)被検体の癌細胞が細胞死関連プロテインキナーゼ(DAPK)のセリン308のリン酸化を有するか否かを検出するステップと、
(b)ステップ(a)の検出に基づいて、
癌細胞におけるDAPKのセリン308のリン酸化が検出された場合に、(i)有効量のソラフェニブ及び(ii)有効量の式(I)の化合物を被検体に投与することにより、被検体を処置するステップと、
を含む。
【0022】
本開示のある実施形態によれば、式(I)の化合物において、R及びRは独立して水素であり、Rは少なくとも1つのヒドロキシルで置換されたターシャリーブチルである。
【0024】
本方法によって治療可能な例示的な癌は、腎細胞癌、腎芽細胞腫、移行上皮癌、前立腺癌、乳癌、肺癌、子宮頸癌、口腔癌、神経膠腫、尿路上皮細胞癌及び黒色腫を含むが、これに限定されない。
【0025】
本開示の付随する構成及び効果の多くは、添付図面との関連で検討される以下の詳細な説明を参照してより深く理解されることになる。
【0026】
本説明は、添付の図面に照らして読まれる以下の詳細な説明からより深く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の一実施形態による、実施例1のGW5074の塩でそれぞれ(A)48時間及び(B)72時間処置されたSUN-1細胞の生存率を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
添付図面との関連で以下に与えられる詳細な説明は、本実施例の説明としてのものであり、本実施例が構成又は利用され得る形態のみを示すものではない。その説明は、実施例の機能及び実施例を構成及び動作させるステップのシーケンスを説明する。ただし、同一又は同等の機能及びシーケンスが、異なる実施例によって実現されてもよい。
【0029】
1.定義
便宜上、明細書、実施例及び付随の特許請求の範囲で採用される所定の用語をここにまとめる。特に断りがない限り、ここで使用する全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。
【0030】
用語「アルキル」は、1~10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐飽和炭化水素基のラジカルをいう(「C1-10アルキル」)。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~6個の炭素原子を有する(「C1-6アルキル」)。C1-6アルキル基の例は、メチル(C)、エチル(C)、プロピル(C)(例えば、n-プロピル、イソプロピル)、ブチル(C)(例えば、n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル)、ペンチル(C)(例えば、n-ペンチル、3-ペンタニル、アミル、ネオペンチル、3-メチル-2-ブタニル、ターシャリーアミル)及びヘキシル(C)(例えば、n-ヘキシル)を含む。アルキル基の追加の例は、n-ヘプチル(C)及びn-オクチル(C)などを含む。特に断りがない限り、アルキル基の各例は、1以上の置換基(例えば、ヒドロキシル又はClのようなハロゲン)で独立して選択的に置換される(「置換アルキル」又は「非置換アルキル」)。ある実施形態では、アルキル基は、置換されたCアルキル(例えば、-CHCHOH)である。他の実施形態では、アルキルは、置換されたCアルキル(例えば、ヒドロキシで置換されたtert-ブチル)である。
【0031】
用語「アルケニル」は、2~10個の炭素原子を有し、1以上の炭素-炭素二重結合を有し、三重結合を有さない直鎖又は分岐炭化水素基のラジカルをいう(「C2-10アルケニル」)。いくつかの実施形態では、アルケニル基は2~9個の炭素原子を有する(「C2-9アルケニル」)。いくつかの実施形態では、アルケニル基は2~8個の炭素原子を有する(「C2-8アルケニル」)。いくつかの実施形態では、アルケニル基は2~7個の炭素原子を有する(「C2-7アルケニル」)。いくつかの実施形態では、アルケニル基は2~6個の炭素原子を有する(「C2-6アルケニル」)。いくつかの実施形態では、アルケニル基は2~5個の炭素原子を有する(「C2-5アルケニル」)。いくつかの実施形態では、アルケニル基は2~4個の炭素原子を有する(「C2-4アルケニル」)。いくつかの実施形態では、アルケニル基は2~3個の炭素原子を有する(「C2-3アルケニル」)。いくつかの実施形態では、アルケニル基は2個の炭素原子を有する(「Cアルケニル」)。1以上の炭素-炭素二重結合は、(2-ブテニルなどの)内部又は(1-ブテニルなどの)末端であり得る。C2-4アルケニル基の例は、エテニル(C)、1-プロペニル(C)、2-プロペニル(C)、1-ブテニル(C)、2-ブテニル(C)及びブタジエニル(C)などを含む。C2-6アルケニル基の例は、ペンテニル(C)、ペンタジエニル(C)及びヘキセニル(C)などと同様に前述のC2-4アルケニル基を含む。アルケニルの追加の例は、ヘプテニル(C)、オクテニル(C)及びオクタトリエニル(C)などを含む。特に断りがない限り、アルケニル基の各例は、1以上の置換基で独立して選択的に置換され、すなわち、非置換(「非置換アルケニル」)であり又は置換(「置換アルケニル」)される。ある実施形態では、アルケニル基は、非置換C2-10アルケニルである。ある実施形態では、アルケニル基は、置換C2-10アルケニルである。アルケニル基において、立体化学が特定されていないC=C二重結合(例えば、-CH=CHCH又は
【化2】

)は、(E)-又は(Z)-二重結合であり得る。
【0032】
「アルキニル」は、2~10個の炭素原子、1以上の炭素-炭素三重結合及び選択的に1以上の二重結合を有する直鎖又は分岐炭化水素基のラジカルをいう(「C2-10アルキニル」)。いくつかの実施形態では、アルキニル基は2~9個の炭素原子を有する(「C2-9アルキニル」)。いくつかの実施形態では、アルキニル基は2~8個の炭素原子を有する(「C2-8アルキニル」)。いくつかの実施形態では、アルキニル基は2~7個の炭素原子を有する(「C2-7アルキニル」)。いくつかの実施形態では、アルキニル基は2~6個の炭素原子を有する(「C2-6アルキニル」)。いくつかの実施形態では、アルキニル基は2~5個の炭素原子を有する(「C2-5アルキニル」)。いくつかの実施形態では、アルキニル基は2~4個の炭素原子を有する(「C2-4アルキニル」)。いくつかの実施形態では、アルキニル基は2~3個の炭素原子を有する(「C2-3アルキニル」)。いくつかの実施形態では、アルキニル基は2個の炭素原子を有する(「Cアルキニル」)。1以上の炭素-炭素三重結合は、(2-ブチニルなどの)内部又は(1-ブチニルなどの)末端であり得る。C2-4アルキニル基の例は、エチニル(C)、1-プロピニル(C)、2-プロピニル(C)、1-ブチニル(C)及び2-ブチニル(C)などを限定することなく含む。C2-6アルケニル基の例は、ペンチニル(C)及びヘキシニル(C)などと同様に前述のC2-4アルキニル基を含む。アルキニルの追加の例は、ヘプチニル(C)及びオクチニル(C)などを含む。特に断りがない限り、アルキニル基の各例は、1以上の置換基で独立して選択的に置換され、すなわち、非置換(「非置換アルキニル」)であり又は置換(「置換アルキニル」)される。ある実施形態では、アルキニル基は、非置換C2-10アルキニルである。ある実施形態では、アルキニル基は、置換C2-10アルキニルである。
【0033】
「アリール」は、芳香族環系で与えられた6~14個の炭素原子の環及び0個のヘテロ原子を有する(例えば、環状アレイにおいて共有される6、10又は14個のパイ電子を有する)単環式又は多環式(例えば、二環式又は三環式)の4n+2芳香族環系のラジカルをいう(「C6-14アリール」)。いくつかの実施形態では、アリール基は、6個の炭素原子の環を有する(「Cアリール」、例えば、フェニル)。いくつかの実施形態では、アリール基は、10個の炭素原子の環を有する(「C10アリール」、例えば、1-ナフチル及び2-ナフチルのようなナフチル)。いくつかの実施形態では、アリール基は、14個の炭素原子の環を有する(「C14アリール」、例えば、アントラシル)。「アリール」は環系も含み、アリール環が1以上のカルボシクリル又はヘテロシクリル基と融合し、そのラジカル又は結合点がアリール環上にあり、そのような例では、炭素原子の数は、引き続きアリール環系における炭素原子の数を示す。特に断りがない限り、アリール基の各例は、1以上の置換基で独立して選択的に置換され、すなわち、非置換(「非置換アリール」)であり又は置換(「置換アリール」)される。ある実施形態では、アリール基は、非置換C6-14アリールである。ある実施形態では、アリール基は、置換C6-14アリールである。
【0034】
用語「ヘテロシクリル」、「ヘテロサイクル」又は「ヘテロサイクリック」は、炭素原子の環及び1~4個のヘテロ原子の環を有する5~10員環の芳香族環又は非芳香族環系のラジカルをいい、各ヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄、ホウ素、リン及びケイ素から独立して選択される(「5~10員環ヘテロシクリル」)。ヘテロシクリル基は、飽和又は部分的に不飽和であり得る。ヘテロシクリルはヘテロアリールを含む。特に断りがない限り、ヘテロシクリルの各例は、1以上の置換基で独立して選択的に置換され、すなわち、非置換(「非置換ヘテロシクリル」)であり又は置換(「置換ヘテロシクリル」)される。ある実施形態では、ヘテロシクリル基は、非置換5~10員環ヘテロシクリルである。ある実施形態では、ヘテロシクリル基は、置換5~10員環ヘテロシクリルである。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリル基は、炭素原子の環及び1~4個のヘテロ原子の環を有する5~8員環の環系であり、各ヘテロ原子は、窒素、酸素及び硫黄から独立して選択される(「5~8員環ヘテロシクリル」)。いくつかの実施形態では、ヘテロシクリル基は、炭素原子の環及び1~4個のヘテロ原子の環を有する5~6員環の環系であり、各ヘテロ原子は、窒素、酸素及び硫黄から独立して選択される(「5~6員環ヘテロシクリル」)。いくつかの実施形態では、5~6員環ヘテロシクリルは、窒素、酸素及び硫黄から選択される1~3個のヘテロ原子の環を有する。いくつかの実施形態では、5~6員環ヘテロシクリルは、窒素、酸素及び硫黄から選択される1~2個のヘテロ原子の環を有する。いくつかの実施形態では、5~6員環ヘテロシクリルは、窒素、酸素及び硫黄から選択される1個のヘテロ原子の環を有する。1個のヘテロ原子を含む例示の5員環ヘテロシクリル基は、限定することなく、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ジヒドロチオフェニル、フラニル、ピロリジニル、ジヒドロピロリル、チエニル及びピロリル-2,5-ジオンを含む。2個のヘテロ原子を含む例示の5員環ヘテロシクリル基は、限定することなく、ジオキソラニル、オキサスルフラニル、ジスルフラニル、チアゾリル及びオキサゾリジン-2-オンを含む。3個のヘテロ原子を含む例示の5員環ヘテロシクリル基は、限定することなく、トリアゾリニル、オキサジアゾリニル及びチアジアゾリニルを含む。1個のヘテロ原子を含む例示の6員環ヘテロシクリル基は、限定することなく、ピペリジニル、テトラヒドロピラニル、オピラニル、ジヒドロピリジニル、ピリジニル及びチアニルを含む。2個のヘテロ原子を含む例示の6員環ヘテロシクリル基は、限定することなく、ピペラジニル、モルホリニル、ジチアニル、ジオキサニルを含む。2個のヘテロ原子を含む例示の6員環ヘテロシクリル基は、限定することなく、トリアジナニルを含む。1個のヘテロ原子を含む例示の7員環ヘテロシクリル基は、限定することなく、アゼパニル、オキセパニル及びチエパニルを含む。1個のヘテロ原子を含む例示の8員環ヘテロシクリル基は、限定することなく、アゾカニル、オキセカニル及びチオカニルを含む。
【0035】
「ヘテロアリール」は、芳香族環系で与えられた炭素原子の環及び1~4個のヘテロ原子の環を有する(例えば、環状アレイにおいて共有される6又は10個のパイ電子を有する)5~10員環の単環式又は二環式の4n+2芳香族環系のラジカルをいい、各ヘテロ原子は窒素、酸素及び硫黄から独立して選択される(「5~10員環ヘテロアリール」)。ヘテロアリール二環式の環系は、一方又は双方の環に1以上のヘテロ原子を含み得る。「ヘテロアリール」は環系を含み、ヘテロアリール環が1以上のカルボシクリル又はヘテロシクリル基と融合し、その結合点がヘテロアリール環上にあり、そのような例では、環員数は引き続きヘテロアリール環系の環員数を示す。「ヘテロアリール」はまた環系を含み、ヘテロアリール環が1以上のアリール基と融合し、その結合点がアリール又はヘテロアリール環のいずれかにあり、そのような例では、環員数は融合された(アリール/ヘテロアリール)環系の環員数を示す。二環式ヘテロアリール基において、1つの環がヘテロ原子を含まず(例えば、インドリル、キノリニル及びカルバゾリルなど)、その結合点がいずれかの環上、すなわち、ヘテロ原子を含む環(例えば、2-インドリル)又はヘテロ原子を含まない環(例えば、5-インドリル)のいずれかにあってもよい。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール基は、芳香族環系で与えられた炭素原子の環及び1~4個のヘテロ原子の環を有する5~10員環の芳香族環系であり、各ヘテロ原子は、窒素、酸素及び硫黄から独立して選択される(「5~10員環ヘテロアリール」)。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール基は、芳香族環系で与えられた炭素原子の環及び1~4個のヘテロ原子の環を有する5~8員環の芳香族環系であり、各ヘテロ原子は、窒素、酸素及び硫黄から独立して選択される(「5~8員環ヘテロアリール」)。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール基は、芳香族環系で与えられた炭素原子の環及び1~4個のヘテロ原子の環を有する5~6員環の芳香族環系であり、各ヘテロ原子は、窒素、酸素及び硫黄から独立して選択される(「5~6員環ヘテロアリール」)。いくつかの実施形態では、5~6員環ヘテロアリールは、窒素、酸素及び硫黄から選択される1~3個のヘテロ原子の環を有する。いくつかの実施形態では、5~6員環ヘテロアリールは、窒素、酸素及び硫黄から選択される1~2個のヘテロ原子の環を有する。いくつかの実施形態では、5~6員環ヘテロアリールは、窒素、酸素及び硫黄から選択される1個のヘテロ原子の環を有する。特に断りがない限り、ヘテロアリール基の各例は、1以上の置換基で独立して選択的に置換され、すなわち、非置換(「非置換ヘテロアリール」)であり又は置換(「置換ヘテロアリール」)される。ある実施形態では、ヘテロアリール基は、非置換5~14員環ヘテロアリールである。ある実施形態では、ヘテロアリール基は、置換5~14員環ヘテロアリールである。1個のヘテロ原子を含む例示の5員環ヘテロアリール基は、限定することなく、ピロリル、フラニル及びチオフェニルを含む。2個のヘテロ原子を含む例示の5員環ヘテロアリール基は、限定することなく、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル及びイソチアゾリルを含む。3個のヘテロ原子を含む例示の5員環ヘテロアリール基は、限定することなく、トリアゾリル、オキサジアゾリル及びチアジアゾリルを含む。4個のヘテロ原子を含む例示の5員環ヘテロアリール基は、限定することなく、テトラゾリルを含む。1個のヘテロ原子を含む例示の6員環ヘテロアリール基は、限定することなく、ピリジニルを含む。2個のヘテロ原子を含む例示の6員環ヘテロアリール基は、限定することなく、ピリダジニル、ピリミジニル及びピラジニルを含む。3又は4個のヘテロ原子を含む例示の6員環ヘテロアリール基は、限定することなく、それぞれトリアジニル及びテトラジニルを含む。1個のヘテロ原子を含む例示の7員環ヘテロアリール基は、限定することなく、アゼピニル、オキセピニル及びチエピニルを含む。例示の5,6-二環式ヘテロアリール基は、限定することなく、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾチオフェニル、ベンゾフラニル、ベンゾイソフラニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンズチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズチアジアゾリル、インドリジニル及びプリニルを含む。例示の6,6-二環式ヘテロアリール基は、限定することなく、ナフチリジニル、プテリジニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キノキサリニル、フタラジニル及びキナゾリニルを含む。
【0036】
ここに説明される原子、部位又は基は、明示の断りがない限り、原子価が許す限り、非置換であってもよいし又は置換されてもよい。用語「選択的に置換された」は、置換され又は非置換であることをいう。明示の断りがない限り、基は選択的に置換される。用語「選択的に置換された」は、置換され又は非置換であることをいう。ある実施形態では、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル及びヘテロアリール基は、選択的に置換される(例えば、「置換」若しくは「非置換」アルキル、「置換」若しくは「非置換」アルケニル、「置換」若しくは「非置換」アルキニル、「置換」若しくは「非置換」アリール、「置換」若しくは「非置換」ヘテロシクリル、又は「置換」若しくは「非置換」ヘテロアリール基)。一般に、用語「置換(された)」は、用語「選択的に」が前に付くか否かに関わらず、基(例えば、炭素又は窒素原子)に存在する少なくとも1つの水素が、許容可能な置換基、例えば、置換が安定な化合物、例えば、転位、環化、脱離又は他の反応などによる自発的な変換を受けない化合物をもたらす置換基で置換されることを意味する。特に断りがない限り、「置換(された)」基は、基の1以上の置換可能な位置に置換基を有し、任意の所与の構造において2以上の位置が置換される場合、置換基は各位置で同一又は異なるいずれかである。用語「置換(された)」は、有機化合物のすべての許容可能な置換基、安定な化合物の形成をもたらすここに説明する置換基のいずれかによる置換を含むものと考えられる。本開示は、安定な化合物に到達するために、いずれか及びすべてのそのような組合せが考えられる。本開示の目的のために、窒素のようなヘテロ原子は、ヘテロ原子の原子価を満たし、安定な部位の形成をもたらす、ここに説明されるような水素置換基及び/又は任意の適切な置換基を有し得る。ある実施形態では、置換基は炭素原子の置換基である。ある実施形態では、置換基は窒素原子の置換基である。ある実施形態では、置換基は酸素原子の置換基である。ある実施形態では、置換基は硫黄原子の置換基である。
【0037】
本開示で使用するように、用語「Cmax」は、血漿中の活性化合物又は薬物(例えば、GW5074)の最大濃度のことをいうのに対し、用語「Tmax」は、上記活性化合物又は薬物の最大血漿濃度を達成する時間を意味する。用語「AUC0-t」は、ゼロから測定可能な薬物濃度の最後の測定時点までの曲線下面積のことをいう。
【0038】
単数形「a」、「an」及び「the」は、そうでないことを文脈が明示しない限り、複数の参照を含むものとして使用される。ここで使用する用語「約」は、所与の値又は範囲の10%、5%、1%又は0.5%内を一般に意味する。あるいは、用語「約」は、当業者によって考慮される場合の平均の許容標準誤差内を意味する。有効な/効果的な実施例以外においても、明示の断りがない限り、ここに開示されるその材料の量、継続時間、温度、動作条件、量の比率又は反射角に対するものなどの数値範囲、量、値及び割合の全ては、いずれの場合においても用語「約」によって変更されるものとして理解されるべきである。したがって、逆のことが示されない限り、本開示及び添付の特許請求の範囲で説明される数値パラメータは、所望のように変化し得る概数である。少なくとも、各数値パラメータは、報告される有効数字の数を考慮してかつ通常の四捨五入手段を適用して少なくとも解釈されるべきである。
【0039】
ここで使用する用語「治療/処置(treatment)」は、例えば、被検体における腫瘍のサイズを低減する所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを意味する。効果は、疾患若しくはその症状を完全に若しくは部分的に防止する観点では予防的であり、並びに/又は疾患及び/若しくはその疾患に起因する有害な影響の部分的若しくは完全な治癒の観点では治療的となり得る。ここで使用する「治療/処置」は、哺乳類、特にヒトにおける疾患の防止的(例えば、予防的)、治癒的又は一時的な緩和の処置を含み、それに限定されないが、(1)疾患に罹患しやすいが未だにそれを有しているとは診断されていない個人において疾患又は状態(例えば、癌)が発生することの防止的(例えば、予防的)、治癒的又は一時的な緩和の処置、(2)疾患を(例えば、癌細胞の増殖を抑制することによって)阻害すること、又は(3)疾患を軽減すること(例えば、その疾患に関連する症状を軽減すること)を含む。
【0040】
用語「投与され」、「投与する」又は「投与」は、限定することなく、本発明の薬剤(例えば、化合物又は組成物)を経口的に、静脈内に、筋肉内に、腹腔内に、動脈内に、頭蓋内に、経粘膜的(例えば、吸入及び鼻腔内)に、又は皮下に投与することを含む送達のモードをいうのにここでは互換可能に使用される。好ましい実施形態では、GW5074のアンモニウム塩は、経口投与に適した組成物に処方される。
【0041】
ここで使用される用語「有効量」は、高血糖症からもたらされる疾患の処置に関して所望の結果を達成するのに必要な期間にわたる用量での有効量のことである。例えば、癌の治療において、癌に関連するいずれかの症状を軽減させ、予防し、遅延させ、抑制し又は停止させる薬剤(すなわち、GW5074のアンモニウム塩)が有効となる。薬剤の有効量は、疾患又は状態を治癒することは要件とされないが、疾患若しくは状態の発症が遅延、妨害若しくは予防され、又は疾患若しくは状態の症状が改善されるように、疾患又は状態に対する処置を与えることになる。具体的な有効又は充分な量は、処置されている特定の状態、患者の肉体的状態(例えば、患者の体重、年齢又は性別)、処置されている哺乳類又は動物の種類、処置の継続期間、(それがある場合には)同時に行われる処置の性質、並びに採用される具体的処方などの要因で変化することになる。有効量は、例えば、活性薬剤の(例えば、グラム、ミリグラム又はマイクログラムを単位とする)一日あたりの合計質量又は体重1キログラムあたりの活性薬剤の重量として表現され得る。有効量は、指定期間を通じて1回、2回又はそれ以上の回数で投与される適切な形態で1又は2以上の用量に分割され得る。また、当業者であれば、本開示の効果的な実施例で説明される動物モデルから決定された用量に基づいて(本開示の化合物のような)医薬品についてのヒト等価用量(HED)を計算できるはずである。例えば、ヒト被検体での使用に対する最大安全用量を推定する際に、米国食品医薬品局(FDA)によって発行された工業用ガイダンス「Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers」に従うことができる。
【0042】
用語「被検体」又は「患者」は、ここでは互換可能に使用され、本発明の化合物によって処置可能なヒト種を含む哺乳類を意味するものとする。用語「哺乳類」は、ヒト、霊長類、ウサギ、ブタ、ヒツジ及びウシのような飼育動物及び家畜、その他動物園、競技用又はペット用動物並びにマウス及びラットのような齧歯類を含む哺乳網の全てのメンバーのことである。また、用語「被検体」又は「患者」は、ある性別が具体的に示されない限り雄及び雌の両性別をいうものとする。したがって、用語「被検体」又は「患者」は、本開示の処置方法から利益を得ることができる任意の哺乳類からなる。「被検体」又は「患者」の例は、これに限定されないが、ヒト、ラット、マウス、モルモット、サル、ブタ、ヤギ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、トリ及び家禽を含む。好ましい実施形態では、被検体はヒトである。
【0043】
ここで使用する用語「担体」は、活性薬剤のビヒクルを形成する任意の不活性物質(粉末又は液体など)を意味する。担体は、一般に、安全で非毒性であり、広義には、充填剤、希釈剤、凝着剤、結合剤、潤滑剤、滑剤、安定化剤、着色剤、湿潤剤、崩壊剤などのような薬学的組成物を調製するのに有用な製薬業において公知の任意の物質も含み得る。
【0044】
II.GW5074のアンモニウム塩
本発明は、一般に、GW5074の新規の薬学的塩に関する。GW5047は酸又は電子供与体であるため、GW5047の所望の薬学的に許容可能な塩は、GW5047を無機塩基(例えば、NaOH)又は有機塩基(例えば、第一級、第二級又は第三級アミン)で処理して薬学的に許容可能な塩を形成することにより調製され得る。したがって、本発明は、式(I)の構造を有するGW5047の新規のアンモニウム塩に関し、
【化3】

、R及びRは、独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール若しくはヘテロアリールであり、又は
、R、R及び窒素を統合して6員環ヘテロシクリルを形成し、
アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール若しくは6員環ヘテロシクリルは、選択的に、-OH、-NR及びその組合せからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換され、R及びRは独立して水素、アルキル、アリール又はヘテロアリールである。
【0045】
式(I)の化合物は、効果的な実施例において説明される手順によって調製され得る。一般に、式(I)の化合物は、アミン、好ましくはヒドロキシルで置換されたアミンを懸濁液に添加してGW5047を溶解する前に、最初にGW5047を極性非プロトン性溶媒(例えば、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジクロロメタン(DCM)及びテトラヒドロフラン(THF)など)又は極性非プロトン性溶媒(例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール及びプロパノールなど)に懸濁することにより得られ得る。結果として得られた混合物を、GW5047の所望のアンモニウム塩が形成されるまで激しく撹拌する。GW5047の本発明のアンモニウム塩の生成に適切なアミンの例は、エタノールアミン(例えば、モノ-、ジ-及び/又はトリ-エタノールアミン)、プロパノールアミン(例えば、1-アミノ-2-プロパノール)、ブタノールアミン(例えば、1-アミノ-2-ブタノール、1-アミノ-3-ブタノール、1-アミノ-4-ブタノール、2-アミノ-1-ブタノール、ヒドロキシルsec-ブチルアミン、ヒドロキシルter-ブチルアミン)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、エチレンジアミン、ピペラジン、モルホリン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、N、N’-ジベンジルエチルジアミン並びにN-メチルグルカミンなどを含むが、これらに限定されない。好ましい一実施形態では、十分な量のトリエタノールアミンが、GW5047懸濁液に添加されて対応するGW5047のアンモニウム塩を生成する。好ましい他の実施形態では、十分な量のヒドロキシルtert-ブチルアミンが、GW5047懸濁液に添加されて対応するGW5047のアンモニウム塩を生成する。更なる実施形態では、十分な量のピペラジンが、GW5047懸濁液に添加されて対応するGW5047のアンモニウム塩を生成する。また更なる実施形態では、十分な量の4-(ジメチルアミノ)ピリジンが、GW5047懸濁液に添加されて対応するGW5047のアンモニウム塩を生成する。
【0046】
本開示のGW5047のアンモニウム塩は、0.01mg/100mLから1000mg/100mL、好ましくは0.1mg/100mLから500mg/100mL、より好ましくは1mg/100mLから300mg/100mLの範囲の水溶性を有する。一実施形態では、GW5047のトリエタノールアンモニウム塩は、2.36mg/100mLの水溶性を有する。他の実施形態では、GW5047の4-(ジメチルアミノ)ピリジン塩は、1.5mg/100mLの水溶性を有する。更なる実施形態では、GW5047のピペラジン塩は、0.74mg/100mLの水溶性を有する。他の更なる実施形態では、GW5047のエチレンジアミン塩は、1.0mg/100mLの水溶性を有する。他の実施形態では、GW5047のモルホリン塩は、0.57mg/100mLの水溶性を有する。また更なる実施形態では、GW5047のN-メチルグルカミン塩は、275mg/100mLの水溶性を有する。
【0047】
薬物動態(PK)研究では、活性化合物/薬物の有効性又は生物学的同等性を評価するのに活性化合物又は薬物のAUC0-tが使用されることが多い。本開示によれば、活性化合物(すなわち、GW5074)の血中レベルは、摂取後12、24、48又は72時間で測定され得る。本開示のいくつかの実施形態によれば、GW5047の本アンモニウム塩は、約0.5時間の平均のTmaxの間に約6447ng/mLの範囲におけるGW5047の平均の血中レベルCmax及び24時間後に測定された約7936ng・h/mLの範囲におけるGW5047のAUC0-tを提供し得る。他の実施形態では、GW5047の本アンモニウム塩は、約0.5時間の平均のTmaxの間に約6844ng/mLの範囲におけるGW5047の平均の血中レベルCmax及び24時間後に測定された約8259ng・h/mLの範囲におけるGW5047のAUC0-tを提供し得る。
【0048】
III.薬学的キット
本開示の特定の実施形態において、上記の式(I)の化合物又はGW5047のアンモニウム塩は、単独で又はc-Raf阻害剤(例えば、ソラフェニブ)と組み合わせて使用され、癌、特に細胞死関連プロテインキナーゼ(DAPK)のセリン308のリン酸化を有する癌細胞を処置する。
【0049】
本開示のある実施形態によれば、式(I)の化合物は単独で胃癌細胞の増殖を抑制し、増殖した胃癌細胞の数を低減することにおいて、既知のc-Raf阻害剤(例えば、ソラフェニブ)と相乗的に作用し得る。そこで、式(I)の化合物は、癌がDAPKのセリン308のリン酸化を有する場合に、癌の処置のための任意の既知のc-Raf阻害剤との追加の薬剤として使用され得る。
【0050】
そこで、本開示は、癌の処置に対して有用な薬学的なキットにも関する。キットは、ソラフェニブ及び薬学的に許容可能な担体を備える第1の処方並びに上記の式(I)の化合物及び薬学的に許容可能な担体を含む第2の処方を含む。
【0051】
本開示のある好ましい実施形態によれば、第2の処方の式(I)の化合物において、R及びRは独立して水素であり、Rは選択的に少なくとも1つのアミノ又はヒドロキシルで置換されたエチルである。
【0052】
本開示の更なる好ましい実施形態によれば、第2の処方の式(I)の化合物において、R、R及びRは、独立してヒドロキシルで置換されたエチルである。
【0053】
本開示の更なる好ましい実施形態によれば、第2の処方の式(I)の化合物において、Rは水素であり、Rはメチルであり、Rは6個のヒドロキシ基(又は1-デオキシソルビトール)で置換されたヘキシルである。
【0054】
本開示の更なる好ましい実施形態によれば、第2の処方の式(I)の化合物において、Rは水素であり、Rはベンジルであり、Rは-NH-ベンジルで置換されたエチルである。
【0055】
本開示の更なる好ましい実施形態によれば、第2の処方の式(I)の化合物において、R、R、R及び窒素が統合されて、ピペラジン、モルホリン又は4-(ジメチルアミノ)ピリジンを形成する。
【0056】
本開示の第1及び第2の処方は、通常、任意の所望の経路による被検体への投与に適切な投薬形態で提供される。当業者は、本発明における使用に適切な種々の投薬形態に精通している。任意の所与の場合において最適な経路は、治療及び/又は管理されている疾患の性質及び重症度に依存する。例えば、処方は、経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、動脈内、頭蓋内、経粘膜(例えば、吸入、口腔内及び鼻腔内)又は皮下投与について処方され得る。好ましくは、処方は経口的に投与される。経口投与に適切な処方の投薬形態は、例えば、タブレット、ピル、顆粒、粉末、溶液、懸濁液、シロップ又はカプセルを含む。タブレット、ピル、顆粒又は粉末のような固体投薬形態を製造する方法として、それは、賦形剤、結合剤又は崩壊剤などのような薬学的に許容可能な担体を使用する従来の技術によって形成され得る。経口投与用の固体投薬形態は、選択的に、浸入コーティングのようなコーティング及びシェル並びに放出の速度を変更するコーティングで分割又は調製され得る。さらに、固体投薬形態のいずれも、当技術分野で既知のいずれかの賦形剤を使用して、ソフト及びハードゼラチンカプセルにカプセル化され得る。
【0057】
式(I)の化合物(すなわち、GW5047のアンモニウム塩)又はc-Raf阻害剤は、経口投与用の液体投薬形態にも処方され得る。適切な処方は、乳濁液、溶液、懸濁液又はシロップを含み、水、グリセロールエステル、アルコール及び植物油などのような当技術分野で一般に使用される希釈剤を使用する従来の技術によって製造され得る。液体処方は、選択的に、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤のような補助剤、甘味料、香味料、着色剤並びに防腐剤を含み得る。液体処方は、また、ソフトゼラチンカプセルに充填されてもよい。例えば、液体は、GW5047のアンモニウム塩若しくはc-Raf阻害剤を担持する溶液、懸濁液、乳濁液、沈殿物又は他の任意の所望の液体媒体を含み得る。液体は、放出に際してGW5047のアンモニウム塩又はc-Raf阻害剤の溶解度を改善するように設計されてもよいし、放出に際して薬物含有乳濁液又は分散相を形成するように設計されてもよい。そのような技術の例は、関連技術において既知である。ソフトゼラチンカプセルは、必要に応じて、薬物の放出を遅らせるように機能的コーティングでコーティングされ得る。
【0058】
非経口投与の場合、GW5047のアンモニウム塩又はc-Raf阻害剤は、静脈内、皮下又は筋肉内投与用の注射可能な形態に処方され得る。注入は、GW5047のアンモニウム塩又はc-Raf阻害剤を、生理食塩水のような水溶性溶液又はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール若しくは植物油(例えば、ゴマ油)のような有機エステルからなる水不溶性溶液に溶解することによって調製され得る。
【0059】
経皮投与の場合、例えば、軟膏又はクリームとしての投薬形態が採用され得る。軟膏はGW5047のアンモニウム塩又はc-Raf阻害剤を脂肪又は油などと混合することによって生成されることができ、クリームはGW5047のアンモニウム塩又はc-Raf阻害剤を乳化剤と混合することによって生成されることができる。経皮処方は、液体又は粉末処方の形態であり得る。液体処方では、水、塩溶液、リン酸緩衝液及び酢酸緩衝液などが塩基として使用されてもよいし、それは界面活性剤、酸化防止剤、安定化剤、防腐剤又は粘着付与剤も含んでいてもよい。粉末処方では、それは水溶性ポリアクリレート、セルロース低アルキルエステル、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン及びアミラーゼなどのような吸水性材料並びにセルロース、デンプン、ガム、植物油又は架橋ポリマーのような非吸水性材料を含み得る。さらに、酸化防止剤、着色剤、防腐剤は、粉末処方に付加され得る。液体又は粉末処方は、スプレー装置の使用によって投与され得る。
【0060】
直腸投与の場合、それはソフトゼラチンカプセルを使用する坐剤の形態であり得る。
【0061】
鼻口又は口腔を介する吸入の場合、GW5047のアンモニウム塩(又はc-Raf阻害剤)及びこの目的のために一般に許容されている薬学的賦形剤を含む溶液又は懸濁液は、吸入エアゾールスプレーを介して吸入される。あるいは、粉末の形態でのGW5047のアンモニウム塩又はc-Raf阻害剤は、肺との粉末の直接接触を可能にする吸入器を介して投与され得る。これらの処方に、必要に応じて、等張剤、防腐剤、分散液又は安定化剤のような薬学的に許容可能な担体が添加され得る。さらに、必要に応じて、これらの処方は、濾過によって、又は熱若しくは放射線の処理によって滅菌され得る。
【0062】
一般に、GW5047のアンモニウム塩又はc-Raf阻害剤を含む処方は、各日単回又は2、3、4、5若しくは6回以上の分割用量で被検体に投与される。あるいは、用量は、2、3、4、5又は6日以上に1回送達されてもよい。好ましい一実施形態では、処方は、1日に1回投与される。他の実施形態では、処方は、1日に2回投与される。
【0063】
IV.処置の方法
癌を有する被検体を処置する方法も、本開示に包含される。方法は、
(a)被検体の癌細胞が細胞死関連プロテインキナーゼ(DAPK)のセリン308のリン酸化を有するか検出するステップ、並びに
(b)ステップ(a)の検出に基づいて、
癌細胞におけるDAPKのセリン308のリン酸化が検出された場合に、(i)有効量のソラフェニブ及び(ii)有効量の式(I)の化合物を被検体に投与することにより、被検体を処置するステップ
を含む。
【0064】
式(I)の化合物(すなわち、GW5047のアンモニウム塩)は、好ましくは、本開示の効果的な実施例で説明される方法に従って調製される。
【0065】
本開示の実施形態によれば、式(I)の化合物は、
【化4】

の構造を有し、
、R及びRは、独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール若しくはヘテロアリールであり、又は
、R、R及び窒素を統合して6員環ヘテロシクリルを形成し、
アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール若しくは6員環ヘテロシクリルは、選択的に、-OH、-NR及びその組合せからなる群から選択される少なくとも1つの置換基で置換され、R及びRは独立して水素、アルキル、アリール又はヘテロアリールである。
【0066】
本開示の好ましい一実施形態によれば、式(I)において、R及びRは独立して水素であり、Rは、選択的に少なくとも1つのアミノ又はヒドロキシルで置換されたエチルである。
【0067】
本開示の更なる好ましい実施形態によれば、第2の処方の式(I)の化合物において、R、R及びRは、独立してヒドロキシルで置換されたエチルである。
【0068】
本開示の更なる好ましい実施形態によれば、第2の処方の式(I)の化合物において、Rは水素であり、Rはメチルであり、Rは6個のヒドロキシ基で置換されたヘキシルである。
【0069】
本開示の更なる好ましい実施形態によれば、第2の処方の式(I)の化合物において、Rは水素であり、Rはベンジルであり、Rは-NH-ベンジルで置換されたエチルである。
【0070】
本開示の更なる好ましい実施形態によれば、第2の処方の式(I)の化合物において、R、R、R及び窒素が統合されて、ピペラジン、モルホリン又は4-(ジメチルアミノ)ピリジンを形成する。
【0071】
好ましい実施形態によれば、式(I)の化合物は、癌細胞がDAPKのSer308のリン酸化を有する場合に、被検体での癌細胞の成長を抑制するように、c-Raf阻害剤とともに投与される。任意の既知のc-Raf阻害剤が使用され得る。好ましくは、c-Raf阻害剤は、ソラフェニブ、ZM336372、TK-632、NVP-BHG712又はその組合せである。
【0072】
本方法によって処置可能な例示的な癌は、腎細胞癌、腎芽細胞腫、移行上皮癌、前立腺癌、乳癌、肺癌、子宮頸癌、口腔癌、神経膠腫、尿路上皮細胞癌及び黒色腫を含むが、これに限定されない。
【0073】
本開示の実施形態によれば、式(I)の化合物及びc-Raf阻害剤は、それぞれ、そのような処置を必要とする被検体に有効な投与量で投与され得る。ある実施形態では、投与される量は、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99及び100mg/Kgなどの0.01~100mg/Kgの範囲であり、好ましくは、式(I)の化合物及びc-Raf阻害剤は、それぞれ、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50mg/Kgなどの約0.5~50mg/Kgの量で投与され、より好ましくは、式(I)の化合物及びc-Raf阻害剤は、それぞれ、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19及び20mg/Kgなどの約1~20mg/Kgの量で投与される。本開示の実施形態によれば、式(I)の化合物及びc-Raf阻害剤は、経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、動脈内、頭蓋内及び皮下経路を含むがこれに限定されない任意の適切な経路を介して独立して投与され得る。好ましい実施形態では、有効量の式(I)の化合物又はc-Raf阻害剤は、それを必要とする被検体に経口的に投与される。
【0074】
ここで、本発明を以下の実施例を参照してさらに詳細に説明する。ただし、本発明は特定の実施例に限定されないことが理解されるべきである。
【実施例
【0075】
材料及び方法
細胞株及び細胞培養
胃癌細胞株SUN-1を、American Type Culture Collection(ATCC;バージニア州、マナサス、米国)から購入し、1.5g/Lの重炭酸ナトリウム、10%のウシ胎児血清(FBS)、1.0%の抗生物質-抗真菌剤、L-グルタミン(2.0×10-3M)及び1.0%の非必須アミノ酸を添加したRoswell Park Memorial Institute-1640(RPMI-1640)で維持した。
【0076】
溶解
サイズ0のゼラチンカプセルに、試験化合物(20mg)及びPROSOLV(登録商標)SMCC90(100mg)を充填して蓋をした。充填したカプセルを激しく振り、内容物を完全に混合した。そして、カプセルを3%のSLSバッファー(40mL)を含む50mLのコニカルバイアルに滴下した。そして、コニカルバイアルを、室温で50rpmに設定された回転速度で、水平から約60度の角度を付けたローターに固定した。各サンプリング時点で、回転を停止し、0.5mLの培地を取り除き、バイアルに再度蓋をして、回転を再開した。サンプリングした培地を3000rpmで2分間遠心分離し、50μLの母液を等分し、100μLの1NのNaOHで希釈した。希釈したサンプルの355nmでの吸光度をプレートリーダーで測定した。
【0077】
動物
約6~8週齢のB6マウス(国立実験動物センター、台湾、台北)は、本研究で使用された。すべての動物は、温度(20~24℃)、湿度(50~80%)及び12時間/12時間の明/暗サイクル(午前7:00に点灯)で制御され、餌と水が適宜提供された動物施設で飼育された。動物を取り扱う実験手順は、AAALAC認定の実験動物施設において「Guide for the Care and Use of Laboratory Animals:Eighth Edition」(National Academies Press、ワシントンD.C.、2011年)に記載される関連規制に準拠した。
【0078】
細胞生存率アッセイ
MTS細胞増殖アッセイキット(Abcam、英国、ケンブリッジ)を使用して細胞生存率を評価した。簡潔には、SNU-1細胞を96ウェルプレートの各ウェルに8000細胞/ウェルの密度で播種し、37℃で一晩インキュベートした。そして、細胞を試験薬物で48時間又は72時間37℃で処置した。そして、各ウェルに20μlのMTSを加え、37℃で3時間インキュベートした。細胞生存率を、マイクロプレートリーダーで490nmでの吸光度によって測定した。
【0079】
統計
結果を平均±平均の標準誤差(SEM)として表した。対応のないスチューデントのt検定又は一元配置分散分析(ANOVA)を、物質処置とビヒクル処置のグループ間の統計的比較のために用いた。差は、ビヒクルコントロールに対してP<0.05で有意であると見なされる。
比較例1
【0080】
比較例1 GW5074のカリウム又はナトリウム塩の調製
1.1 GW5074のカリウム塩
GW5074のカリウム塩は、KOHがGW5074懸濁液に添加されることを除き、実施例1.1で説明する一般的な手順に従って調製された。
1H NMR (400 MHz, D6-DMSO) (δ10.42(app,d,1H), 8.74(2H,s), 7.98-7.81(app,t,2H), 7.53-7.31(2H,m),
6.64(1H,2xd))
融点:293℃
溶解度:0.5mg/100mL
【0081】
1.2 GW5074のナトリウム塩(MG-A1)
GW5074のナトリウム塩は、NaOHがGW5074懸濁液に添加されることを除き、実施例1.1で説明する一般的な手順に従って調製された。
1H NMR (400 MHz, D6-DMSO) (δ10.34(app,d,1H), 8.742(1H,s), 8.05-7.76(app,t,2H), 7.48-7.27(2H,m),
6.63(1H,2xd))
融点:327℃
溶解度:0.5mg/100mL
【実施例1】
【0082】
実施例1 GW5074のアンモニウム塩の調製
1.1 GW5075の2-アミノ-2-メチルプロピルアミン塩(MG-A2)
室温のアセトン(20mL)中のGW5074(2.05g)の懸濁液に、2-アミノ-2-メチルプロパノール(0.41mL、1.1当量)を添加した。結果として得られる透明な赤色の溶液を室温で16時間撹拌し、そしてジイソプロピルエーテル(60mL)で処置した。得られたオレンジ色の懸濁液を30分間激しく撹拌し、そして真空で濾過した。濾過ケーキを大量のジイソプロピルエーテルでリンスし、室温で真空乾燥して、明るいオレンジ色の固体(2.03g)として所望の生成物を得た。
1H NMR (400 MHz, D6-DMSO) (δ10.33 (1H,s), 8.72(2H,s), 7.85 (1H,s), 7.64 (2H,s), 7.48(1H,s), 7.28(1H,d), 6.57 (1H,t), 5.48(1H,s), 2.08(2H,d), 1.11(6H,m))
融点:247℃。
溶解度:0.19mg/100mL
【0083】
1.2 GW5075のトリエタノールアミン塩(MG-A3)
GW5074のアンモニウム塩は、トリエタノールアミンがGW5074懸濁液に添加されることを除き、実施例1.1で説明する一般的な手順に従って調製された。
1H NMR (400 MHz, D6-DMSO) (δ10.42 (1H,s), 8.73(2H,s), 7.87 (1H,s), 7.53 (1H,s), 7.32 (1H,q), 6.32 (1H,d), 5.01 (3H,s), 3.32(6H, s), 3.08(6H, s))
融点:103℃
溶解度:2.36mg/100mL
【0084】
1.3 GW5075のジエチルアミン塩
GW5074のアンモニウム塩は、ジエチルアミンがGW5074懸濁液に添加されることを除き、実施例1.1で説明する一般的な手順に従って調製された。
1H NMR (400 MHz, D6-DMSO) (δ10.35 (1H,s), 8.73(2H,s), 8.25(2H,s), 7.85 (1H,d), 7.49(1H,s), 7.29(1H,q), 6.58(1H,d), 2.92(4H,m), 1.15(6H, t))
融点:250℃
溶解度:0.12mg/100mL
【0085】
1.4 GW5075のN-メチルグルカミン塩
GW5074のアンモニウム塩は、N-メチルグルカミンがGW5074懸濁液に添加されることを除き、実施例1.1で説明する一般的な手順に従って調製された。
1H NMR (400 MHz, D6-DMSO) (δ10.38 (1H,s), 8.73 (1H,s), 8.05-7.85 (1H, 2xs), 7.76(1H,s), 7.49-7.41(1H,m), 7.33(1H, t), 6.68(1H,q), 3.80(2H,m), 2.87(5H,m))
融点:175℃
溶解度:275mg/100mL
【0086】
1.5 GW5075のN、N’-ジベンジルエチレンジアミン塩
GW5074のアンモニウム塩は、N、N’-ジベンジルエチレンジアミンがGW5074懸濁液に添加されることを除き、実施例1.1で説明する一般的な手順に従って調製された。
1H NMR (400 MHz, D6-DMSO) (δ10.53 (1H,s), 8.76 (2H,s), 7.59 (app, d,1H), 7.62(1H,s), 7.38(11H,m), 6.62(1H,d), 3.99(4H,s), 2.96(4H,s))
融点:215℃
溶解度:<0.02mg/100mL
【0087】
1.6 GW5075のピペラジン塩
GW5074のアンモニウム塩は、ピペラジンがGW5074懸濁液に添加されることを除き、実施例1.1で説明する一般的な手順に従って調製された。
1H NMR (400 MHz, D6-DMSO) (δ10.41 (1H,s), 8.05 (2H,s), 7.815 (2H, 2xs), 7.40(2H,4xs), 6.66(1H,2xd), 2.88(8H,s))
融点:244℃
溶解度:0.74mg/100mL
【0088】
1.7 GW5075の4-(ジメチルアミノ)ピリジン塩
GW5074のアンモニウム塩は、4-(ジメチルアミノ)ピリジンがGW5074懸濁液に添加されることを除き、実施例1.1で説明する一般的な手順に従って調製された。
1H NMR (400 MHz, D6-DMSO) (δ10.40 (1H,s), 8.74 (2H,s), 8.19(2H,d), 7.87 (app,t,2H), 7.53 (1H, s), 7.31(1H,d), 6.90(2H,d), 6.59(1H,d), 3.13(6H,s)
融点:242℃
溶解度:1.5mg/100mL
【0089】
1.8 GW5075のモルホリン塩
GW5074のアンモニウム塩は、モルホリンがGW5074懸濁液に添加されることを除き、実施例1.1で説明する一般的な手順に従って調製された。
1H NMR (400 MHz, D6-DMSO) (δ10.40(app,d,1H), 8.02 (1H,s), 7.82 (app,d,1H), 7.75-7.35(2H,m), 6.63(1H,2xd), 3.74(4H,q), 2.49(4H,m))
融点:266℃
溶解度:0.57mg/100mL
【0090】
1.9 GW5075のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩
GW5074のアンモニウム塩は、トリス塩基(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)がGW5074懸濁液に添加されることを除き、実施例1.1で説明される一般的な手順に従って調製された。
1H NMR (400 MHz, D6-DMSO) (δ10.35(1H,s), 8.72(1H,s), 8.05-7.76 (app,t,2H), 7.29(2H,m), 6.62(1H,q), 5.71(2H,s), 4.87(3H,s), 3.35(6H,d))
融点:142℃
溶解度:<0.02mg/100mL
【0091】
1.10 GW5075のエチレンジアミン塩
GW5074のアンモニウム塩は、エチレンジアミンがGW5074懸濁液に添加されることを除き、実施例1.1で説明する一般的な手順に従って調製された。
1H NMR (400 MHz, D6-DMSO) (δ10.37(1H,s), 8.73(2H,s), 7.85(1H,s), 7.50(1H,s), 7.29(1H,q), 6.59(1H,2xd), 3.36(4H,s))
融点:185℃
溶解度:1mg/100mL
【実施例2】
【0092】
実施例2 実施例1のGW5074のアンモニウム塩の特性評価
実施例1のGW5074のアンモニウム塩の生物活性を検証するために、他の細胞増殖阻害剤-ソラフェニブの添加あり又は添加なしでの細胞増殖に対するそれらの効果を、製造業者のプロトコルに従ってMTS細胞増殖アッセイキットを用いて調査した。結果を図1A及び1Bに示す。
【0093】
図1Aに示すように、胃癌細胞(SETN-1細胞)をソラフェニブ(5mM)、GW5074(10mM)、MG-A1(GW5074のナトリウム塩)(10mM)、MG-A2(10mM)又はMG-A3(10mM)で48時間処置することによって、SUN-1細胞の成長のわずかな抑制(コントロールと比較して約10~20%の阻害)を結果としてもたらしたが、SUN-1細胞が薬物との組合せ(GW5074、MG-A1、MG-A2又はMG-A3と組み合わせたソラフェニブ)で処置された場合には、抑制の程度は、コントロールの程度と比較して約55~60%の阻害まで上昇し得る。
【0094】
細胞が試験物質で72時間処置された場合には、成長阻害がより大きかった。図1Bに示すように、約40~60%の成長阻害が単独のソラフェニブ、GW5074、MG-A1、MG-A2又はMG-A3によって達成され、約70%の成長阻害は、細胞が薬剤との組合せ(すなわち、ソラフェニブと、GW5074、MG-A1、MG-A2又はMG-A3との組合せ)で処置された場合に達成された。
【実施例3】
【0095】
実施例3 実施例1のGW5074のアンモニウム塩のパイロット薬物動態(PK)研究
パイロットPK研究をマウスで実施した。各マウスは、陽性コントロール処方(GW5074)又は実施例1.1及び1.2のそれぞれのアンモニウム塩のいずれかの単回用量の投薬治療を受け、そして各試験被検体でのGW5074のPK特性が分析及び記録された。
【0096】
マウスは、投薬前に8時間絶食した。それらをGW5074グループ、MG-A2(すなわち、実施例1.1のGW5074のアンモニウム塩)グループ及びMG-A3(すなわち、実施例1.2のGW5074のアンモニウム塩)グループである3つのグループにランダムに割当てた。各用量(40mg/Kg)を、活性化合物(GW5074又はGW5074の塩)を4:1:5の体積比のSOLUTOL(商標)(Sigma-Aldrich、米国、ミズーリ州、セントルイス)、水及びエタノールからなる溶液に溶解することによって調製した。血液サンプルを、事前に指定された時点で尾静脈から採取した。各サンプルを80%のエタノールで30分間抽出し、0.22μmのPVDFフィルターを介して個別に濾過し、そしてHPLC-MS/MSに供した。
【0097】
最大血漿中濃度(Cmax)、ピーク濃度に到達するまでの時間(Tmax)、血漿薬剤濃度が半減するのに必要な時間(T1/2)及びゼロから最後に測定された時点までの時間に対する血漿中濃度曲線下面積(AUC0-t)を含むPK特性を、薬剤投与の直前(0時間)並びに投与後0.5、1、2、4、8及び24時間に評価した。それにより得られた各グループのGW5074のPK特性を表1にまとめる。
【0098】
表1 マウスにおけるGW5074、MG-A2及びMG-A3のPK特性
【表1】
【0099】
表1の結果は、GW5074のアンモニウム塩(MG-A2又はMG-A3のいずれか)がピーク濃度に到達するのに必要とされる時間はコントロールのGW5074のものと同一であるが、最大濃度(Cmax)はMG-A2又はMG-A3の塩の形態についてはより高くなり、したがって、血漿薬剤濃度が半減するには非常に長く時間がかかることが明らかとなり、GW5074のアンモニウム塩(MG-A2又はMG-A3のいずれか)が、コントロールのGW5074と比較して、生体内において比較的安定し又は分解されにくいことを示した。
【0100】
実施形態の上記説明は例示のみのために与えられ、種々の変形が当業者によってなされ得ることが理解されるはずである。上記仕様、実施例及びデータは、発明の例示的実施形態の構造及び使用の完全な説明を与える。発明の種々の実施形態がある程度の特殊性で又は1以上の個別の実施形態を参照して上述されたが、当業者であれば、本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく開示の実施形態に対して多数の変更を行うことができるはずである。
図1(A)】
図1(B)】