(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】無線通信システム、無線通信方法、及び、無線端末装置
(51)【国際特許分類】
H04W 24/08 20090101AFI20221227BHJP
H04W 84/18 20090101ALI20221227BHJP
H04W 40/24 20090101ALI20221227BHJP
【FI】
H04W24/08
H04W84/18
H04W40/24
(21)【出願番号】P 2018194893
(22)【出願日】2018-10-16
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000221834
【氏名又は名称】東邦瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】309042071
【氏名又は名称】東光東芝メーターシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂野 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】福島 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】横山 睦人
(72)【発明者】
【氏名】土屋 創太
(72)【発明者】
【氏名】安元 啓人
(72)【発明者】
【氏名】田村 至
(72)【発明者】
【氏名】安井 昌広
(72)【発明者】
【氏名】坂田 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】猪子 照恵
(72)【発明者】
【氏名】山下 真純
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 尚利
(72)【発明者】
【氏名】小野 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】田井 貴久
(72)【発明者】
【氏名】畠内 孝明
(72)【発明者】
【氏名】星野 充紀
【審査官】三枝 保裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-029295(JP,A)
【文献】特開2011-061678(JP,A)
【文献】特表2015-530028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信ネットワーク内で、複数の無線端末装置が相互に直接又は中継を介して無線によるデータ通信を行う無線通信システムにおいて、
前記無線端末装置は、前記無線通信ネットワーク内の他の無線端末装置を相手にデータ交換を試行し、前記データ交換が成功した場合は、当該データ交換の相手方の無線端末装置が隣接すると判定し、前記データ交換が成功しなかった場合は、当該データ交換の相手方の無線端末装置が隣接しないと判定する隣接調査を行い、更に、通常のデータ通信時に直接通信を行う場合、隣接調査により隣接すると判定した無線端末装置と直接通信を行うこと、
前記無線端末装置は、閾値以上の受信強度でビーコンを受信した場合、前記ビーコンの送信元である無線端末装置とデータ交換を行うこと、
前記無線端末装置は、前記無線通信ネットワーク内の複数の無線端末装置に関し、自装置に隣接するか否かを示す隣接情報を含むシステム構成情報を保有しており、
前記無線端末装置は、前記システム構成情報に基づいて自装置に隣接すると判断される無線端末装置からビーコンを前記閾値未満の受信強度で受信した場合、データ交換を試行し、データ交換に成功すれば、当該データ交換の相手の隣接情報を維持して前記自装置のシステム構成情報を更新せず、前記データ交換に成功しなければ、当該データ交換の隣接情報を変更して前記自装置のシステム構成情報を更新すること、
を特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載する無線通信システムにおいて、
前記無線端末装置は、通常のデータ通信時に直接通信を行う場合に、隣接調査により隣接しないと判定した無線端末装置から、前記閾値より大きい受信強度でビーコンを受信した場合、更に、当該ビーコンの送信元である無線端末装置と直接通信を行うこと、
を特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
無線通信ネットワーク内で、複数の無線端末装置が相互に直接又は中継を介して無線によるデータ通信を行う無線通信方法において、
前記無線端末装置が、前記無線通信ネットワーク内の他の無線端末装置を相手にデータ交換を試行するデータ交換ステップと、
前記データ交換ステップにて前記データ交換を試行した無線端末装置は、前記データ交換に成功した場合、当該データ交換の相手方の無線端末装置が隣接すると判定し、前記データ交換に成功しなかった場合、当該データ交換の相手方の無線端末装置が隣接しないと判定する判定ステップと、
通常のデータ通信時に直接通信を行う場合、前記判定ステップにて隣接すると判定された無線端末装置と直接通信を行う通信制御ステップと、
を有すること、
前記データ交換ステップでは、前記無線端末装置が、閾値以上の受信強度でビーコンを受信した場合、前記ビーコンの送信元である無線端末装置とデータ交換を行うこと、
前記無線端末装置は、前記無線通信ネットワーク内の複数の無線端末装置に関し、自装置に隣接するか否かを示す情報を含むシステム構成情報を保有しており、
前記無線端末装置は、前記データ交換ステップにて、前記システム構成情報に基づいて隣接すると判断される無線端末装置からビーコンを前記閾値未満の受信強度で受信した場合、データ交換を試行し、
前記無線端末装置は、更に、
前記データ交換ステップにて、前記閾値未満の受信強度のビーコンを受信した無線端末装置を相手にデータ交換を試行した結果、データ交換に成功した場合には、当該データ交換の相手の隣接情報を維持して前記自装置のシステム構成情報を更新せず、データ交換に成功しなかった場合には、当該データ交換の相手の隣接情報を変更して前記自装置のシステム構成情報を更新する隣接関係変更ステップ、
を有すること、
を特徴とする無線通信方法。
【請求項4】
請求項3に記載する無線通信方法において、
前記無線端末装置は、更に、
前記通信制御ステップにて、隣接調査により隣接しないと判定した無線端末装置から、前記閾値より大きい受信強度でビーコンを受信した場合、当該ビーコンの送信元である無線端末装置と直接通信を行うこと、
を特徴とする無線通信方法。
【請求項5】
無線通信ネットワーク内の他の無線端末装置と相互に直接又は中継を介して無線によるデータ通信を行う無線端末装置において、
制御部と、
データを記憶する記憶部と、
通信部と、を有し、
前記制御部は、
前記無線通信ネットワーク内の他の無線端末装置を相手にデータ交換を試行するデータ交換処理と、
前記データ交換処理にて前記データ交換が成功した場合、当該データ交換の相手方の無線端末装置を、隣接する無線端末装置と判定し、前記データ交換処理にて前記データ交換が成功しなかった場合、当該データ交換の相手方の無線端末装置を、隣接しない無線端末装置と判定する判定処理と、
通常のデータ通信時に直接通信を行う場合、前記判定処理にて隣接すると判定された無線端末装置と直接通信を行う通信制御処理と、
を実行すること、
前記制御部は、
前記通信部を用いて、無線端末装置の識別情報を含むビーコンを待ち受ける待ち受け処理を実行し、
前記データ交換処理では、前記待ち受け処理にて閾値以上の受信強度でビーコンを受信した場合、当該ビーコンの送信元である無線端末装置とデータ交換を行うこと、
前記記憶部は、前記無線通信ネットワーク内の複数の無線端末装置に関し、自装置に隣
接するか否かを示す情報を含むシステム構成情報を記憶していること、
前記制御部は、前記データ交換処理にて、前記システム構成情報に基づいて隣接すると判断される無線端末装置からビーコンを前記閾値未満の受信強度で受信した場合、データ交換を試行し、
前記制御部は、更に、
前記データ交換処理にて、前記閾値未満の受信強度のビーコンを受信した無線端末装置を相手にデータ交換をした結果、データ交換に成功した場合には、当該データ交換の相手の隣接情報を維持して前記自装置のシステム構成情報を更新せず、データ交換に成功しなかった場合には、当該データ交換の相手の隣接情報を変更して前記自装置のシステム構成情報を更新する隣接関係変更処理、
を実行すること、
を特徴とする無線端末装置。
【請求項6】
請求項5に記載する無線端末装置において、
前記制御部は、更に、
前記通信制御処理にて、隣接調査により隣接しないと判定した無線端末装置から、前記閾値より大きい受信強度でビーコンを受信した場合、当該ビーコンの送信元である無線端末装置と直接通信を行うこと、
を特徴とする無線端末装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信ネットワーク内で、複数の無線端末装置が相互に直接又は中継を介して無線によるデータ通信を行う無線通信システム、無線通信方法、及び、無線端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特定の領域に分散した無線端末装置(以下「無線端末」とする)が相互に直接又は中継を介して無線によるデータ通信を行って情報交換を行うメッシュネットワーク型の無線通信システムが知られている。
【0003】
無線端末が直接通信可能な距離は一般に有限であり、無線通信ネットワーク内の全ての無線端末が直接通信することはできない。そのため、各無線端末は、無線通信ネットワーク内で、自装置の送出するデータが宛先装置に到達するまでに要する中継回数に関する情報を含むシステム構成情報を保有しており、該システム構成情報に基づいて相互に直接又は中継を介して無線による通信を行う。
【0004】
各無線端末は、直接通信可能な無線端末(以下「隣接無線端末」とする)を特定し、隣接無線端末装置間でシステム構成情報を順次交換することにより、システム構成情報を構築する。しかし、直接通信可能か否かは、ネットワーク環境によって刻々と変化する。そのため、各無線端末は、通信路の信頼性を確保するために、隣接無線端末の調査を定期的に行っている。
【0005】
隣接無線端末の調査方法は、例えば、特許文献1に開示されている。すなわち、例えば
図7に示すように、無線通信ネットワーク内の各無線端末100A~100Dは、所定の間隔で自装置の識別情報を含むビーコンフレームを他装置に向けて同報送信している。送信側の無線端末100Cは、送信要求の発生時に、受信側の無線端末100A,100B,100Dからビーコンフレームを連続的に待ち受ける受信状態になり、ビーコンフレームの受信度合いと受信強度を調査する。そして、受信状態の累計時間が所定時間に到達したときに、送信側の無線端末100Cは、調査結果に基づいて直接通信可能な(隣接する)無線端末を決定する。無線端末100A~100Dは、送信要求が発生しない場合、強制的に待ち受け受信状態になり、ビーコンフレームの受信度合いと受信強度を調査する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の技術には問題があった。すなわち、例えば、無線端末100A~100Dの受信感度は、製品によってばらつく。従来の無線通信システムにおいて、送信側の無線端末100Cは、特定受信強度以上のビーコンを受信すると、当該ビーコンを送信した受信側の無線端末100A,100B,100Dを直接通信可能な(隣接する)無線端末と判定していた。つまり、送信側の無線端末100Cは、相手方の通信性能に関係なく、一方的に隣接するか否かを判定していた。そのため、従来の無線通信システムは、データ通信時に無線端末装置間の直接通信に失敗が生じることがあった。よって、従来の無線通信システムは、無線通信ネットワーク内のデータ通信の通信成功率を更に向上させる余地があった。
【0008】
図8は、従来の無線通信システムの通信失敗例を説明するシーケンス図である。例えば、無線端末100Aの受信感度が無線端末100Cの受信感度より低い場合、無線端末100Cが、無線端末100Aから特定受信強度以上のビーコンフレームを受信し(図中Y1参照)、無線端末100Aを「隣接」と判定しても、無線端末100Aは、無線端末100Cから特定受信強度以上のビーコンフレームを受信できず(図中Y2参照)、無線端末100Cを「非隣接」と判定することがある。この場合、図中点線に示すように、無線端末100Cが隣接と判定した無線端末100Aにデータを送信しても、無線端末100Aは、受信感度が低いため、無線端末100Cから送出されたデータを受信できないことがあった(図中Y3参照)。このように、無線端末100A,100C間の通信が失敗すると、無線通信ネットワーク内の通信効率が低下する。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、データ通信の通信成功率を向上させることができる無線通信システム、無線通信方法、及び、無線端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記課題を解決するために、本発明の一態様は、無線通信ネットワーク内で、複数の無線端末装置が相互に直接又は中継を介して無線によるデータ通信を行う無線通信システムにおいて、前記無線端末装置は、前記無線通信ネットワーク内の他の無線端末装置を相手にデータ交換を試行し、前記データ交換が成功した場合は、当該データ交換の相手方の無線端末装置が隣接すると判定し、前記データ交換が成功しなかった場合は、当該データ交換の相手方の無線端末装置が隣接しないと判定する隣接調査を行い、更に、通常のデータ通信時に直接通信を行う場合、隣接調査により隣接すると判定した無線端末装置と直接通信を行うこと、を特徴とする。
【0011】
上記構成の無線通信システムによれば、通常のデータ通信を行う場合、データの送信元である無線端末装置が、データ交換に成功して隣接すると判定した無線端末装置にデータを直接送信するので、データ通信時に無線端末装置間の直接通信に失敗が生じにくく、無線通信ネットワーク内のデータ通信の通信成功率を向上させることができる。
【0012】
(2)(1)に記載の無線通信システムにおいて、前記無線端末装置は、閾値以上の受信強度でビーコンを受信した場合のみ、前記ビーコンの送信元である無線端末装置とデータ交換を行うこと、が好ましい。
【0013】
上記構成の無線通信システムによれば、隣接するか否かの判定を行う無線端末装置は、閾値以上の受信強度で受信できるビーコンを送信した無線端末装置とだけデータ交換を行うので、データ交換に失敗する確率が減り、隣接調査を行う無線端末装置の処理負荷を軽減できる。
【0014】
(3)(2)に記載する無線通信システムにおいて、前記無線端末装置は、前記無線通信ネットワーク内の複数の無線端末装置に関し、自装置に隣接するか否かを示す隣接情報を含むシステム構成情報を保有しており、前記無線端末装置は、前記システム構成情報に基づいて自装置に隣接すると判断される無線端末装置からビーコンを前記閾値未満の受信強度で受信した場合、データ交換を試行し、データ交換に成功すれば、当該データ交換の相手の隣接情報を維持して前記自装置のシステム構成情報を更新せず、前記データ交換に成功しなければ、当該データ交換の隣接情報を変更して前記自装置のシステム構成情報を更新すること、が好ましい。
【0015】
上記構成の無線通信システムによれば、システム構成情報に基づいて隣接すると判断される無線端末装置から閾値未満のビーコンを受信した場合、テーブル交換を試行し、テーブル交換の成否に応じてシステム構成情報を更新するので、システム構成情報の更新頻度を抑制できる。
【0016】
(4)(2)又は(3)に記載する無線通信システムにおいて、前記無線端末装置は、通常のデータ通信時に直接通信を行う場合に、隣接調査により隣接しないと判定した無線端末装置から、前記閾値より大きい受信強度でビーコンを受信した場合、更に、当該ビーコンの送信元である無線端末装置と直接通信を行うこと、が好ましい。
【0017】
上記構成の無線通信システムでは、隣接判定により隣接しないと判定された無線端末であっても、隣接判定で用いる閾値より大きい受信強度のビーコンを受信できる場合には、通信に成功する可能性が高い。そこで、無線端末装置は、通常のデータ通信を行う場合に、隣接判定で用いる閾値より大きい受信強度のビーコンを送信した無線端末装置とも通信を行う。よって、無線通信システムは、直接通信の成功率が高い範囲で各無線端末装置の通信経路を広げて、通信時間を短縮することができる。
【0018】
(5)本発明の別の態様は、無線通信ネットワーク内で、複数の無線端末装置が相互に直接又は中継を介して無線によるデータ通信を行う無線通信方法において、前記無線端末装置が、前記無線通信ネットワーク内の他の無線端末装置を相手にデータ交換を試行するデータ交換ステップと、前記データ交換ステップにて前記データ交換を試行した無線端末装置は、前記データ交換に成功した場合、当該データ交換の相手方の無線端末装置が隣接すると判定し、前記データ交換に成功しなかった場合、当該データ交換の相手方の無線端末装置が隣接しないと判定する判定ステップと、通常のデータ通信時に直接通信を行う場合、前記判定ステップにて隣接すると判定された無線端末装置と直接通信を行う通信制御ステップと、を有すること、を特徴とする。
【0019】
(6)(5)に記載する無線通信方法において、前記データ交換ステップでは、前記無線端末装置が、閾値以上の受信強度でビーコンを受信した場合のみ、前記ビーコンの送信元である無線端末装置とデータ交換を行うこと、が好ましい。
【0020】
(7)(6)に記載する無線通信方法において、前記無線端末装置は、前記無線通信ネットワーク内の複数の無線端末装置に関し、自装置に隣接するか否かを示す情報を含むシステム構成情報を保有しており、前記無線端末装置は、前記データ交換ステップにて、前記システム構成情報に基づいて隣接すると判断される無線端末装置からビーコンを前記閾値未満の受信強度で受信した場合、データ交換を試行し、前記無線端末装置は、更に、前記データ交換ステップにて、前記閾値未満の受信強度のビーコンを受信した無線端末装置を相手にデータ交換を試行した結果、データ交換に成功した場合には、当該データ交換の相手の隣接情報を維持して前記自装置のシステム構成情報を更新せず、データ交換に成功しなかった場合には、当該データ交換の相手の隣接情報を変更して前記自装置のシステム構成情報を更新する隣接関係変更ステップ、を有すること、が好ましい。
【0021】
(8)(6)又は(7)に記載する無線通信方法において、前記無線端末装置は、更に、前記通信制御ステップにて、隣接調査により隣接しないと判定した無線端末装置から、前記閾値より大きい受信強度でビーコンを受信した場合、当該ビーコンの送信元である無線端末装置と直接通信を行うこと、が好ましい。
【0022】
(9)本発明の更に別の態様は、無線通信ネットワーク内の他の無線端末装置と相互に直接又は中継を介して無線によるデータ通信を行う無線端末装置において、制御部と、データを記憶する記憶部と、通信部と、を有し、前記制御部は、前記無線通信ネットワーク内の他の無線端末装置を相手にデータ交換を試行するデータ交換処理と、前記データ交換処理にて前記データ交換が成功した場合、当該データ交換の相手方の無線端末装置を、隣接する無線端末装置と判定し、前記データ交換処理にて前記データ交換が成功しなかった場合、当該データ交換の相手方の無線端末装置を、隣接しない無線端末装置と判定する判定処理と、通常のデータ通信時に直接通信を行う場合、前記判定処理にて隣接すると判定された無線端末装置と直接通信を行う通信制御処理と、を実行すること、を特徴とする。
【0023】
(10)(9)に記載する無線端末装置において、前記制御部は、前記通信部を用いて、無線端末装置の識別情報を含むビーコンを待ち受ける待ち受け処理を実行し、前記データ交換処理では、前記待ち受け処理にて閾値以上の受信強度でビーコンを受信した場合のみ、当該ビーコンの送信元である無線端末装置とデータ交換を行うこと、が好ましい。
【0024】
(11)(10)に記載する無線端末装置において、前記記憶部は、前記無線通信ネットワーク内の複数の無線端末装置に関し、自装置に隣接するか否かを示す情報を含むシステム構成情報を記憶していること、前記制御部は、前記データ交換処理にて、前記システム構成情報に基づいて隣接すると判断される無線端末装置からビーコンを前記閾値未満の受信強度で受信した場合、データ交換を試行し、前記制御部は、更に、前記データ交換処理にて、前記閾値未満の受信強度のビーコンを受信した無線端末装置を相手にデータ交換をした結果、データ交換に成功した場合には、当該データ交換の相手の隣接情報を維持して前記自装置のシステム構成情報を更新せず、データ交換に成功しなかった場合には、当該データ交換の相手の隣接情報を変更して前記自装置のシステム構成情報を更新する隣接関係変更処理、を実行すること、が好ましい。
【0025】
(12)(10)又は(11)に記載する無線端末装置において、前記制御部は、更に、前記通信制御処理にて、隣接調査により隣接しないと判定した無線端末装置から、前記閾値より大きい受信強度でビーコンを受信した場合、当該ビーコンの送信元である無線端末装置と直接通信を行うこと、が好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、データ通信の通信成功率を向上させることができる無線通信システム、無線通信方法、及び、無線端末装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態に係る無線通信システムの構成図である。
【
図6】隣接調査処理を説明するフローチャートである。
【
図7】従来の隣接調査のタイミングチャートである。
【
図8】従来の無線通信システムの通信失敗例を説明するシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明に係る無線通信システム、無線通信方法、及び、無線端末装置の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0029】
(無線通信システムの構成について)
図1は、本発明の実施形態に係る無線通信システム10の構成図である。A~Jは、特定の領域に分散して配置される無線通信ネットワークのノードである。ノードA~Jは、それぞれ、同じ処理を実行する無線端末装置1A~1J(以下「無線端末1A~1J」とする)によって構成されている。尚、以下の説明において、無線端末1とその構成要素をノードA~Jに応じて区別する必要がない場合、添え字A~Jを適宜省略する。以下では、無線端末1A~1Jは同様の構成を備えるので、無線端末1Aについて説明し、無線端末1B~1Jの説明は省略する。無線通信システム10は、例えば、ガスの自動検針システムに使用され、ガスメータに無線端末1が組み込まれる。
【0030】
無線端末1Aは、制御部2Aと、記憶部3Aと、通信部4Aと、タイマ5Aとを備え、電池6Aの電力で駆動する。記憶部3Aは、データやプログラムを記憶している。制御部2Aは、記憶部3Aにデータを読み書きしながら、記憶部3Aに記憶されているプログラムを実行し、無線端末1Aの動作を制御する。通信部4Aは、無線通信ネットワークに接続され、外部機器との通信を制御するハードウェアである。タイマ5Aは、時間を計測するハードウェアである。
【0031】
記憶部3Aには、例えば、ホップ数テーブル31Aと隣接調査プログラム32Aと、通信制御プログラム33Aが記憶されている。ホップ数テーブル31Aは、「データ」、「システム構成情報」の一例である。
【0032】
図2は、ホップ数テーブル31の一例を示す図である。
図2は、特に、無線端末1Aが保有するホップ数テーブル31Aを示す。ホップ数テーブル31Aは、
図1に示すような無線通信ネットワーク回線が設定された場合において、宛先装置となる無線端末1A~1Jと、自装置から送出したデータが宛先装置に到達するまでの最小通信回数との関係を、記憶するものである。
【0033】
例えば、
図1に示すように、無線端末1Aは、無線端末1B,1C,1Gに対して1回の通信でデータを転送できる。そこで、
図2に示すように、ホップ数テーブル31Aは、無線端末1B,1C,1Gのレコードの通信回数を示すフィールド312A,313A,317Aに「1」を記憶している。
【0034】
図1に示すように、無線端末1Aは、無線端末1D,1F,1Iに対して最低2回の通信でデータを転送できる。そこで、
図2に示すように、ホップ数テーブル31Aは、無線端末1D,1F,1Iのレコードの通信回数を示すフィールド314A,316A,319Aに「2」を記憶している。また、
図1に示すように、無線端末1Aは、無線端末1E,1H,1Jに対して最低3回の通信でデータを転送できる。そこで、
図2に示すように、ホップ数テーブル31Aは、無線端末1E,1H,1Jのレコードの通信回数を示すフィールド315A,318A,320Aに「3」を記憶している。このように、ホップ数テーブル31Aは、自装置(無線端末1A)から送出したデータを宛先装置まで到達させるのに複数回の通信(中継)を要する無線端末1D~1F,1H~1Jについて、各フィールド314A~316A,318A~320Aに「2」以上の値を記憶している。
【0035】
尚、自装置(無線端末1A)については、通信を行わないので、通信回数のフィールド311Aに「0」が記憶されている。
【0036】
よって、無線端末1Aは、ホップ数テーブル31Aに記憶される通信回数に基づいて、隣接する無線端末と、隣接しない(中継を介して無線通信可能な、或いは、直接通信できない)無線端末とを、区別できる。
【0037】
ここで、無線端末1の通信状態は、ネットワーク環境によって刻々と変化する。そこで、無線通信システム10は、各無線端末1A~1Jにホップ数テーブル31A~31Jを定期的に(例えば72時間毎に)同報送信させ、ホップ数テーブル31A~31Jを更新する。各無線端末1A~1Jがホップ数テーブル31A~31Jを同報送信するタイミングは、データの衝突を防ぐため、ずらしている。
【0038】
例えば、無線端末1Aがホップ数テーブル31Aを同報送信する送信元である場合、無線端末1Aは、識別情報を受け付けるビーコン待ち受け状態になる。無線端末1Aは、例えば、無線端末1Bが送信したビーコンを受信すると、ビーコンに含まれる識別情報から無線端末1Bを特定し、ホップ数テーブル31Aの無線端末1Bの通信回数を示すフィールド312Aに「1」を記憶する。これと同様にして、無線端末1Aは、ホップ数テーブル31Aの無線端末1C,1Gの通信回数を示すフィールド313A,317Gに「1」を記憶する。尚、自装置は、通信を行わないので、無線端末1Aの通信回数のフィールド311Aには「0」を記憶する。
【0039】
また、無線端末1Aは、他の無線端末1B~1Jから同報送信されたホップ数テーブル31B~31Jを転送する際に、転送するホップ数テーブル31B~31Jをそれぞれ記憶する。無線端末1Aは、他の無線端末1B~1Jのホップ数テーブル31B~31Jを全て取得すると、自装置(無線端末1A)と通信回数に「1」を設定した無線端末1B,1C,1Gとを除く無線端末1D~1F,1H~1Jについて、最小通信回数を求め、それを各フィールド314A~316A,318A~320Aにそれぞれ記憶する。
【0040】
これにより、新たなホップ数テーブル31Aが作成される。無線端末1Aは、新たなホップ数テーブル31Aを、記憶部3Aに記憶されている既存のホップ数テーブルに上書きして更新する。
【0041】
図1に戻り、隣接調査プログラム32Aは、無線通信ネットワーク内の複数の無線端末1A~1Jについて、自装置から直接通信可能か(隣接するか)、自装置から中継を介して無線通信可能か(直接通信不能か、或いは、隣接しないか)を、無線端末1に調査させるものである。
【0042】
無線端末1A~1Jの通信性能は、機種や通信環境によってばらつく。そのため、制御部2Aは、隣接調査プログラム32Aを実行し、
図3及び
図4に記載する基準に従って隣接関係を調査し、ホップ数テーブル31Aを更新する。つまり、無線端末1Aは、隣接する無線端末の調査とホップ数テーブル31Aの更新とをセットで行う。
【0043】
図3は、テーブル交換の実施基準を示す表である。
図4は、隣接判定基準を示す表である。
図3及び
図4に記載する「隣接」とは、隣接関係を調査する相手が自装置のホップ数テーブル31A上で隣接していると判断される無線端末1であることを示す。より具体的には、ホップ数テーブル31Aにおいて通信回数に「1」を設定された無線端末1をいう。一方、「非隣接」とは、隣接関係を調査する相手が自装置のホップ数テーブル31A上で隣接していない無線端末1であることを示す。より具体的には、ホップ数テーブル31Aにおいて通信回数に「2」以上の値を設定された無線端末1をいう。
【0044】
また、
図3に記載する「ビーコン受信強度」とは、他の無線端末1から送信されたビーコンを自装置が受信したときの電界強度をいう。「閾値」は、ビーコン受信強度の強弱を判断する基準値である。「閾値」は、テーブル交換に成功する電界強度より高い値に設定されている。テーブル交換の成功率を高めるためである。更に、「実施」は、ビーコンの送信元を相手にテーブル交換を試行することを意味し、「非実施」は、ビーコンの送信元を相手にテーブル交換を試行しないことを意味する。
【0045】
図3に示すように、制御部2Aは、通信部4Aを介してビーコンを受信できない無線端末1については、当該無線端末1がホップ数テーブル31A上で「隣接」と「非隣接」のいずれの関係にあっても、テーブル交換を「実施しない」(M5,M6参照)。テーブル交換できないからである。制御部2Aは、通信部4Aを介して閾値以上の受信強度でビーコンを受信できる無線端末1については、当該無線端末1がホップ数テーブル31A上で「隣接」と「非隣接」のいずれの関係にあっても、テーブル交換を「実施する」(M1,M2参照)。相手方の通信状態を確認し、信頼性の高い通信路を構築するためである。
【0046】
更に、制御部2Aは、通信部4Aを介して閾値未満の受信強度でビーコンを受信できる無線端末1については、当該無線端末1がホップ数テーブル31A上で「非隣接」の関係にあれば、テーブル交換を「実施しない」(M3参照)。制御部2Aが通信回数を書き換えてホップ数テーブル31Aを更新する頻度を減らし、電池6Aの消耗を抑制するためである。一方、制御部2Aは、通信部4Aを介して閾値未満の受信強度でビーコンを受信できる無線端末1が、ホップ数テーブル31A上で「隣接」の関係にあれば、テーブル交換を「実施する」(M4参照)。閾値が、テーブル交換が成功する電界強度より高く設定されているので、テーブル交換が成功する可能性があるからである。
【0047】
図4に示すように、制御部2Aは、ホップ数テーブル31Aにおいて「非隣接」の関係にある無線端末1を相手に「テーブル交換に成功した」場合、相手方の隣接関係を「非隣接」から「隣接」に変更する(N2参照)。つまり、制御部2Aは、ホップ数テーブル31Aにおいて相手方の通信回数の値を「2」以上の値から「1」に変更する。一方、制御部2Aは、ホップ数テーブル31Aにおいて「隣接」の関係にある無線端末1を相手に「テーブル交換に成功した場合」、相手方の隣接関係を「隣接」に維持する(N1参照)。つまり、制御部2Aは、ホップ数テーブル31Aにおいて相手方の通信回数の値を「1」から変更しない。
【0048】
制御部2Aは、ホップ数テーブル31Aにおいて「非隣接」の関係にある無線端末1を相手に「テーブル交換に失敗した」場合、相手方の隣接関係を「非隣接」に維持する(N3参照)。つまり、制御部2Aは、ホップ数テーブル31Aにおいて相手方の通信回数の値を「2」以上の値から「1」に変更しない。一方、制御部2Aは、ホップ数テーブル31Aにおいて「隣接」の関係にある無線端末1を相手に「テーブル交換に失敗した」場合、相手方の隣接関係を「隣接」から「非隣接」に変更する(N4参照)。つまり、制御部2Aは、ホップ数テーブル31Aにおいて相手方の通信回数の値を「1」から「2」以上の値に変更する。
【0049】
制御部2Aは、ホップ数テーブル31Aにおいて「非隣接」の関係にある無線端末1とテーブル交換を「実施しない」場合、当該無線端末1の隣接関係を「非隣接」に維持する(N3参照)。つまり、制御部2Aは、ホップ数テーブル31Aにおいて当該無線端末1の通信回数の値を「2」以上の値から「1」に変更しない。一方、制御部2Aは、ホップ数テーブル31Aにおいて「隣接」の関係にある無線端末1とテーブル交換を「実施しない」場合、当該無線端末1の隣接関係を「隣接」から「非隣接」に変更する(N4参照)。つまり、制御部2Aは、ホップ数テーブル31Aにおいて当該無線端末1の通信回数の値を「1」から「2」以上の値に変更する。
【0050】
このように、制御部2Aは、隣接調査の結果とホップ数テーブル31Aの内容(隣接関係)が一致する場合には、ホップ数テーブル31Aを更新し、一致しない場合には、ホップ数テーブル31Aを更新しない。ホップ数テーブル31Aが、自装置と他の無線端末1との実際の往復通信状態を反映したものになるので、無線端末1Aは、ホップ数テーブル31Aに基づいて他の無線端末1と直接又は中継を介して通信する場合の通信成功率が高くなり、無線通信システム10の信頼性を向上させることができる。
【0051】
図1に戻り、通信制御プログラム33Aは、通常のデータ通信時において、ホップ数テーブル31Aに基づいて、無線通信ネットワーク内で、自装置(無線端末1A)と無線端末1B~1Jが相互に直接又は中継を介して無線によるデータ通信を行うように、無線端末1Aを制御するものである。ホップ数テーブル31Aは、上述のように、隣接調査の判定結果を反映している。よって、通信制御プログラム33Aは、通常のデータ通信時に直接通信を行う場合、隣接調査にて隣接すると判定した無線端末1と直接通信を行う。また、通信制御プログラム33Aは、隣接調査にて隣接しないと判定した無線端末1から、隣接調査に用いる閾値より大きい受信強度でビーコンを受信した場合、当該ビーコンの送信元である無線端末1と直接通信を行う機能を有する。尚、通信制御プログラム33Aが行う処理は、「通信制御処理」の一例である。
【0052】
(隣接調査の動作概要)
無線端末1が行う隣接調査の動作概要を、
図5を用いて説明する。
図5は、隣接調査のタイミングチャートである。
図5では、無線端末1Aが隣接調査を行うものとする。尚、
図5は、図面を見やすくするために、無線通信システム10を構成する無線端末1A~1Jのうちの一部を記載している。
【0053】
図5に示すように、無線端末1Aは、ビーコン待ち受け動作中に、例えば無線端末1Bから送出されたビーコンを受信すると(図中Z11参照)、無線端末1Bを相手にテーブル交換を試行する(図中Z12,Z13参照)。すなわち、無線端末1Aは、自装置のホップ数テーブル31Aを無線端末1Bに送信し(図中Z12参照)、無線端末1Bは、自装置のホップ数テーブル31Bを無線端末1Aに送信する(図中Z13参照)。
【0054】
無線端末1Aは、無線端末1Bのホップ数テーブル31Bを受信し、且つ、無線端末1Bを宛先装置とする自装置のホップ数テーブル31Aの送信に成功すると(無線端末1Bからホップ数テーブル31Aを受信した旨の受信完了通知を受信すると)、テーブル交換に成功したと判断する。この場合、無線端末1Aは、無線端末1Bが隣接する(直接通信可能な無線端末である)と判定する。
【0055】
図2に示すように、無線端末1Aは、自装置のホップ数テーブル31Aにおいて、無線端末1Bの通信回数を示すフィールド312Aに「1」を記憶している。この場合、隣接調査の判定結果(隣接)がホップ数テーブル31Aの隣接関係を示す情報[通信回数「1」(隣接)]と一致する。このような場合、無線端末1Aは、ホップ数テーブル31Aのフィールド312Aの値を「1」から変更しない。
【0056】
これに対して、
図5に示すように、例えば、無線端末1Aは、待ち受け動作中に無線端末1Gからビーコンを受信すると(図中Z31参照)、無線端末1Gを相手にテーブル交換を試行する(Z32,Z33参照)。例えば、無線端末1Gが無線端末1Aより受信感度が低い機種である場合、無線端末1Gが無線端末1Aのビーコンを受信できず、無線端末1Aを「非隣接」と判断することがある。このような場合、無線端末1Aは、無線端末1Gのホップ数テーブル31Gを受信できても(図中Z33参照)、無線端末1Gは、受信感度が悪く、無線端末1Aのホップ数テーブル31Gを受信できない(図中Z32参照)。つまり、無線端末1Aは、無線端末1Gにホップ数テーブル31Aを送信できず、テーブル交換に失敗する。そこで、無線端末1Aは、無線端末1Gが隣接しない(非隣接である、或いは、中継を介して無線通信可能な非隣接無線端末である)と判定する。
【0057】
図2に示すように、無線端末1Aは、自装置のホップ数テーブル31Aにおいて、無線端末1Gの通信回数を示すフィールド317Aに「1」を記憶している。この場合、隣接調査の判定結果(非隣接)がホップ数テーブル31Aの隣接関係を示す情報[通信回数「1」(隣接)]と異なる。そこで、無線端末1Aは、実際の往復通信状態を反映した隣接調査の判定結果を優先し、無線端末1Gとの隣接関係を「隣接」から「非隣接」に変更する。つまり、無線端末1Aは、ホップ数テーブル31Aにフィールド317Aの値「1」を、ホップ数テーブル31A~31Jに基づいて算出される複数回の通信回数の中で最小となる値に、変更する。これにより、無線端末1Aは、ホップ数テーブル31Aに基づいてデータ通信を行う場合に、無線端末1Gとの間で直接通信しなくなり、無線端末1Aと無線端末1Gとの間で直接通信が失敗することが防止され、データ通信の成功率が向上する。
【0058】
また、
図5に示すように、無線端末1Aは、待ち受け動作中に、無線端末1Cからビーコンを受信しても、ビーコン受信強度が閾値未満であることがある(図中Z21参照)。例えば、無線端末1Cに何らかの異常が生じ、無線端末1Aが無線端末1Cから送信されるビーコンの受信強度が閾値未満になる。この場合、無線端末1Aは、ホップ数テーブル31Aにおいて無線端末1Cが「隣接」する関係にあるので、無線端末1Cを相手にテーブル交換を行う(図中Z22,Z23参照)。「閾値」がテーブル交換の電界強度より高い値に設定されているので、無線端末1A,1Cはテーブル交換に成功する可能性がある。テーブル交換に成功した場合、無線端末1Aは、無線端末1Cが「隣接する」と判定する。一方、テーブル交換に失敗した場合、無線端末1Aは、無線端末1Cが「隣接しない」と判定する。
【0059】
図2に示すように、無線端末1Aは、自装置のホップ数テーブル31Aにおいて、無線端末1Cの通信回数を示すフィールド313Aに「1」を記憶している。無線端末1Aは、無線端末1Cとのテーブル交換に成功しなかった場合、隣接調査の判定結果(非隣接)がホップ数テーブル31Aの隣接関係を示す情報[通信回数「1」(隣接)]と異なる。この場合、無線端末1Aは、実際の往復通信状態を反映した隣接調査の判定結果を優先し、ホップ数テーブル31Aの無線端末1Cの通信回数を示すフィールド313Aの値を「1」から「2」以上の値に変更する。これにより、無線端末1Aは、ホップ数テーブル31Aに基づいてデータ通信を行う場合に、無線端末1Cとの間で直接通信しなくなり、無線端末1Aと無線端末1Cとの間で直接通信が失敗することが防止され、データ通信の成功率が向上する。
【0060】
これに対して、無線端末1Aは、無線端末1Cとのテーブル交換に成功した場合、隣接調査の判定結果(隣接)がホップ数テーブル31Aの隣接関係を示す情報[通信回数「1」(隣接)]と一致する。この場合、無線端末1Aは、ホップ数テーブル31Aの無線端末1Cの通信回数を示すフィールド313Aの値を「1」から変更しない。このように、無線端末1Aは、隣接する無線端末1Cから受信したビーコンの受信強度が閾値未満である場合、直ちに無線端末1Cを「非隣接」と判定せず、テーブル交換の成否に応じて「隣接」又は「非隣接」と判定するので、ホップ数テーブル31Aの更新回数を抑制できる。
【0061】
更に、例えば
図5に示すように、無線端末1Aは、待ち受け動作中に、無線端末1Dからビーコンを閾値以上の受信強度で受信する(図中Z41参照)。
図2に示すホップ数テーブル31Aにおいて無線端末1Dは「非隣接」の関係(通信回数の値が「2」以上)であるが、当該ビーコンの受信強度が閾値以上であるので、無線端末1Aは、無線端末1Dを相手にテーブル交換を試行する。無線端末1Aは、無線端末1Dを相手にテーブル交換が成功すると(図中Z42,Z43参照)、無線端末1Dが隣接する(直接通信可能な無線端末である)と判定する。
【0062】
この場合、隣接調査の判定結果(隣接)がホップ数テーブル31Aの隣接関係を示す情報[通信回数「2」(非隣接)]と異なる。無線端末1Aは、ホップ数テーブル31Aのフィールド314Aの値を「2」から「1」に変更する。これにより、無線端末1Aは、無線端末1Dとの間で直接通信するようになり、新たに信頼性の高い通信路が構築される。
【0063】
図5に示すように、無線端末1Aは、待ち受け動作中に、無線端末1Iからビーコンを閾値未満の受信強度で受信する(図中Z51参照)。
図2に示すホップ数テーブル31Aにおいて無線端末1Iは「非隣接」の関係(通信回数の値が「2」以上)であるので、無線端末1Aは、テーブル交換を試行せずに、無線端末1Iを「非隣接」と判定する。隣接調査の判定結果(非隣接)とホップ数テーブル31A上の隣接関係(非隣接)が一致するので、無線端末1Aは無線端末1Iの通信回数を変更せず、ホップ数テーブル31Aを更新しない。
【0064】
図5に示すように、無線端末1Aは、待ち受け動作中に、無線端末1Fからビーコンを受信しないので、無線端末1Fを「非隣接」と判定する。
図2に示すホップ数テーブル31Aにおいて無線端末1Fは「非隣接」の関係(通信回数の値が「2」以上)であるので、隣接調査の判定結果(非隣接)とホップ数テーブル31A上の隣接関係が一致している。そのため、無線端末1Aは、ホップ数テーブル31Aの無線端末1Fの通信回数を変更せず、ホップ数テーブル31Aを更新しない。
【0065】
尚、
図5の記載と異なるが、例えば、無線端末1Cが故障したり、停止されたりした場合、無線端末1Aが、待ち受け動作中に、無線端末1Cからビーコンを受信しないことがある。この場合、無線端末1Aは無線端末1Cを「非隣接」と判定する。
図2に示すホップ数テーブル31Aにおいて無線端末1Cは「隣接」の関係(通信回数の値が「1」)にある。そこで、無線端末1Aは、実際の往復通信状態を反映した隣接調査の判定結果を優先し、ホップ数テーブル31Aの無線端末1Cの通信回数を「1」から「2」以上の値に変更する。
【0066】
(通常の通信動作について)
無線通信システム10が、ガスの自動検針システムに適用され、ガスメータに無線端末1が組み込まれる事例を例に挙げて、通常の通信動作を説明する。
【0067】
無線端末1A~1Jは、それぞれ要求に応じて、自装置が計測したガス使用量を示すデータを、要求元の装置を宛先として、隣接する無線端末に直接送信する。また、無線端末1A~1Jは、他の無線端末装置のガス使用量を示すデータを受信すると、隣接する無線端末に転送する。
【0068】
このような場合、無線端末1A~1Jは、隣接調査の判定結果を反映したホップ数テーブル31A~31Jに基づいて隣接する(直接通信可能な)無線端末にデータを送信する。そのため、例えば、無線端末1Aは、無線端末1Aより受信感度が低く、隣接調査により隣接しないと判定された無線端末1Gに対しては、データを直接送信しない。つまり、無線端末1Aは、隣接調査により隣接すると判定された無線端末1Bにデータを転送する。よって、無線通信システム10は、例えば、無線端末1Aと無線端末1G間で直接通信に失敗することが抑制され、無線通信ネットワーク内のデータ通信の通信成功率を向上させることができる。
【0069】
(隣接調査動作の処理について)
続いて、上述した隣接調査動作の処理について説明する。
図6は、隣接調査処理を説明するフローチャートである。ここでは、無線端末1Aが隣接調査する場合を例に上げて説明する。
【0070】
無線端末1Aは、予め定められた隣接調査を行う時期になったことを契機に[本形態では、ホップ数テーブル31Aを更新する周期(例えば72時間)ごとに]、制御部2Aが隣接調査プログラム32Aを記憶部3Aから読み出して実行する。このとき、制御部2Aは、タイマ5Aを起動し、時間を計測し始める。
【0071】
制御部2Aは、まず、ビーコンを待ち受ける待ち受け状態に移行する(S1)。それから、制御部2Aは、通信部4Aを用いて、ビーコンを受信したか否かを判断する(S2)。制御部2Aは、ビーコンを受信しない場合(S2:NO)、タイムアウトしたか否かを判断する(S9)。つまり、制御部2Aは、タイムアウトするまでビーコンを待ち受ける。S9の処理は後述する。尚、S2の処理は、「待ち受け処理」の一例である。
【0072】
制御部2Aは、ビーコンを受信したと判断した場合(S2:YES)、受信したビーコンの受信強度が閾値以上であるか否かを判断する。ここで、閾値は、データ受信が成功する確率が高い値に設定されている。受信したビーコンの受信強度が閾値以上であると判断した場合(S3:YES)、制御部2Aは、ビーコンに含まれる識別情報からビーコンを送信した無線端末1を特定し、テーブル交換を試行する(S4)。S3,S4の処理は、「データ交換処理」の一例である。
【0073】
その後、制御部2Aは、テーブル交換が成功したか否かを判断する(S5)。制御部2Aは、テーブル交換に成功したと判断する場合(S5:YES)、テーブル交換の相手方の無線端末1を「隣接する」(直接通信可能な無線端末である)と判定する(S6)。
【0074】
隣接判定(S6)を行った制御部2Aは、S6の判定結果がホップ数テーブル31Aの内容と一致するか判断する(S7)。すなわち、制御部2Aは、テーブル交換を試行した相手方の通信回数を、自装置のホップ数テーブル31Aから読み出し、S6の判定結果が読み出した通信回数の内容に対応しているか判断する。制御部2Aは、S6の判定結果がホップ数テーブル31Aの内容と一致すると判断した場合(S7:YES)、後述するS9に進む。
【0075】
例えば、
図5に示すように、制御部2Aは、閾値以上の受信強度でビーコンを無線端末1Bから受信し、テーブル交換に成功すると、無線端末1Bを「隣接する」と判定する(
図6のS2:YES、S3:YES、S4、S5)。制御部2Aは、
図2に示すホップ数テーブル31Aの無線端末1Bの通信回数を示すフィールド312Aにアクセスし、無線端末1Bまでの通信回数「1」を取得する。制御部2Aは、取得した通信回数「1」より、無線端末1Bのホップ数テーブル31A上の隣接関係が「隣接」であることがわかる(
図6のS6)。そこで、制御部2Aは、S6の判定結果がホップ数テーブル31Aの内容と一致すると判断する(
図6のS7:YES)。この場合、制御部2Aは、ホップ数テーブル31Aの無線端末1Bの通信回数312Aを「1」に維持したまま(隣接関係を変更せずに)、後述するS9に進む。
【0076】
一方、
図6に示すように、制御部2Aは、S6の判定結果がホップ数テーブル31Aの内容と一致しないと判断した場合(S7:NO)、隣接関係変更処理を行ってから(S8)、後述するS9に進む。
【0077】
例えば、
図5に示すように、制御部2Aは、無線端末1Dから閾値以上の受信強度でビーコンを受信すると、無線端末1Dとテーブル交換を行う(
図6のS2:YES、S3:YES、S4)。制御部2Aは、無線端末1Dを相手にテーブル交換に成功すると、無線端末1Dを「隣接」すると判定する(
図6のS5:YES、S6)。しかし、
図2に示すホップ数テーブル31Aは、無線端末1Dの通信回数を示すフィールド314Aに「2」が記憶されているので、制御部2Aは、無線端末1Dのホップ数テーブル31A上の隣接関係が「非隣接」になっていることがわかる。この場合、制御部2Aは、S7の判定結果(隣接)がホップ数テーブル31Aの内容(非隣接)と一致しないので、フィールド314Aの値を「2」から「1」に変更し、ホップ数テーブル31A上の隣接関係を「非隣接」から「隣接」に変更する(
図6のS7:NO、S8)。その後、制御部2Aは、S9に進む。
【0078】
図6に示すように、制御部2Aは、S9に進むと、タイムアウトしたか否かを判断する。すなわち、制御部2Aは、タイマ5Aによって計測される計測時間が、待ち受け動作を行う設定時間(例えば10秒)を超えない場合には、タイムアウトしていないと判断し、超える場合には、タイムアウトしたと判断する。制御部2Aは、タイムアウトしないと判断した場合(S9:NO)、S2に戻り、ビーコンを待ち受ける。一方、制御部2Aは、タイムアウトしたと判断した場合には(S9:YES)、S10の処理を行った後、休止状態に移行し(S11)、処理を終了する。S10については後述する。
【0079】
上記に対し、制御部2Aは、テーブル交換に成功しなかった場合には(S5:NO)、テーブル交換の相手方の無線端末1が「隣接しない」(直接通信できない無線端末、あるいは、中継を介して通信可能な無線端末)であると判定する(S13)。
【0080】
例えば、
図5に示すように、制御部2Aは、無線端末1Gの受信感度が無線端末1Aの受信感度より低い場合、無線端末1Gから閾値以上のビーコンとホップ数テーブル31Gを受信できても、無線端末1Gにホップ数テーブル31Aを送信できないことがある。この場合、制御部2Aは、無線端末1Gを相手にテーブル交換できないので、テーブル交換に失敗したと判断し、無線端末1Gを「隣接しない(非隣接である)」と判定する(
図6のS2:YES、S3:YES、S4、S5:NO、S13)。
【0081】
図6に示すように、非隣接判定(S13)を行った制御部2Aは、S13の判定結果がホップ数テーブル31Aの内容と一致するか判断する(S7)。例えば、制御部2Aは、
図2に示すホップ数テーブル31Aの無線端末1Gの通信回数を示すフィールド317Aにアクセスし、無線端末1Gまでの通信回数「1」を取得する。制御部2Aは、取得した通信回数「1」より、無線端末1Gのホップ数テーブル31A上の隣接関係が「隣接」であることがわかる。そこで、制御部2Aは、S13の判定結果がホップ数テーブル31Aの内容と一致しないと判断する(S7:NO)。この場合、制御部2Aは、ホップ数テーブル31Aの無線端末1Bの通信回数312Aを「1」から「2」以上の値とすることにより、ホップ数テーブル31A上の隣接関係を「隣接」から「非隣接」に変更してホップ数テーブル31Aを更新する。
【0082】
図6に示すように、隣接関係変更処理(S8)を行った制御部2Aは、S9に進む。S9の処理は上述したので説明を省略する。尚、S5、S6,S13の処理は、「判定処理」の一例である。
【0083】
図6に示すように、制御部2Aは、ビーコンを受信しても(S2:YES)、当該ビーコンの受信強度が閾値以上でない場合には(S3:NO)、ビーコンの送信元が隣接しているか否かを判断する(S12)。すなわち、制御部2Aは、受信したビーコンに含まれる識別情報から、ビーコンを送信した無線端末1を特定し、ホップ数テーブル31Aにおいて、特定した無線端末1の通信回数が「1」か否かを判断する。
【0084】
制御部2Aは、通信回数が「1」である場合、ビーコンの送信元が隣接していると判断し(S12:YES)、ビーコンの送信元を相手にテーブル交換を試行する(S4)。S4以降の処理は上述したので説明を省略する。尚、S3,S12、S4の処理は、「データ交換処理」の一例である。
【0085】
例えば、
図5に示すように、制御部2Aは、通信回数に「1」を設定された無線端末1Cから閾値未満の受信強度でビーコンを受信した場合、無線端末1Cとテーブル交換を試行する(
図6のS2:YES、S3:NO、S12:YES、S4)。無線端末1Cとのテーブル交換に成功した場合、制御部2Aは、無線端末1Cを隣接と判定し、ホップ数テーブル31Aにおいて無線端末1Cの通信回数を変更せずに、S9に進む(
図6のS5:YES、S6、S7:YES)。しかし、制御部2Aは、無線端末1Cとのテーブル交換に成功しなかった場合、制御部2Aは、無線端末1Cを非隣接と判定し、ホップ数テーブル31Aにおいて無線端末1Cの通信回数を「2」以上の値にすることによって隣接関係を「隣接」から「非隣接」に変更した後、S9に進む(
図6のS2:YES、S3:NO、S12:YES、S4、S5:NO、S13、S7:NO、S8)。
【0086】
上記に対して、
図6に示すように、制御部2Aは、ホップ数テーブル31Aにおいてビーコンの送信元の通信回数が「1」でない場合、ビーコンの送信元が隣接していないと判断する(S12:NO)。この場合、制御部2Aは、テーブル交換を実施することなく、ビーコンの送信元を「非隣接」と判定する(S13)。その後、制御部2Aは、S12の判定結果がホップ数テーブル31Aの内容と一致するか否かを判断する(S7)。一致しない場合には(S7:NO)、制御部2Aは、隣接関係変更処理を行って(S8)、S9に進む。
【0087】
例えば、
図5に示すように、制御部2Aは、ホップ数テーブル31A(
図2参照)の通信回数に「1」が記憶されていない「非隣接」の無線端末1Iが送信したビーコンを閾値未満の受信強度で受信した場合、無線端末1Iを「非隣接」と判定する(
図6のS12:NO、S13)。このような場合、制御部2Aは、S13の判定結果がホップ数テーブル31Aの内容と一致すると判断し、無線端末1Iの通信回数を示すフィールド319Aの値を変更せず、無線端末1Aと無線端末1Iとの隣接関係を「非隣接」に維持する(S7:YES)。つまり、制御部2Aはホップ数テーブル31Aを更新しない。
【0088】
図6に示すように、制御部2Aは、タイムアウトするまで(S9:NO)、上記一連の動作を行う。
【0089】
制御部2Aは、タイムアウトしたと判断すると(S9:YES)、待ち受け動作中にビーコンを受信しなかった無線端末1のうち、ホップ数テーブル31A上の隣接関係が「隣接」である無線端末1について、隣接関係を「隣接」から「非隣接」に変更する(S10)。
【0090】
例えば、
図5に示すように、制御部2Aは、待ち受け動作中に、無線端末1Fからビーコンを受信しない。
図2のホップ数テーブル31Aにおいて、無線端末1Fの通信回数を示すフィールド316Aには、「2」が記憶され、「非隣接」とされている。そのため、制御部2Aは、フィールド316Aの値を変更せず、「非隣接」を維持する。これに対して、
図5の記載と異なるが、例えば、制御部2Aは、待ち受け動作中に、
図2のホップ数テーブル31Aの通信回数を示すフィールド313Aに「1」が記憶されている無線端末1Cからビーコンを受信しなかった場合、フィールド313Aの値を「1」から「2」以上の値に変更する。これにより、ホップ数テーブル31Aは、無線端末1Cの隣接関係が「隣接」から「非隣接」に変更され、更新される(S13)。
【0091】
その後、制御部2Aは、S10の処理を行った後、休止状態に移行し(S11)、処理を終了する。
【0092】
(通常のデータ通信処理について)
制御部2Aは、通常時に、データの送信要求が発生した場合、又は、他の無線端末1B~1Jから転送するデータを受信した場合を契機に、通信制御プログラム33Aを記憶部3Aから読み出して実行する。制御部2Aは、自装置(無線端末1A)が送信要求を発生する場合、ホップ数テーブル31Aの通信回数が「1」に記憶する無線端末1の中から、宛先までの通信回数が最小となる無線端末1を選び、データを送信する。また、制御部2Aは、データを転送する場合、ホップ数テーブル31Aの通信回数が「1」に記憶する無線端末1の中から、自装置から転送するデータに含まれる宛先装置までの通信回数が最小となる無線端末1を選び、データを転送する。
【0093】
ホップ数テーブル31Aは、隣接調査の判定結果を反映している。そのため、ホップ数テーブル31Aは、無線端末1Aがビーコンを受信できてもテーブル交換できない(往復通信できない)無線端末1の通信回数に「2」以上の値が設定され、自装置(無線端末1A)との隣接関係が「非隣接」にされている。よって、制御部2Aは、上記のようにデータの送信元になった場合又はデータの転送を行う場合のデータ通信を行うに当たり、直接通信する無線端末1との間で通信の失敗が生じにくい。その結果、無線通信システム10では、データを発信元から宛先まで短時間で確実に到達させることが可能になる。
【0094】
ここで、制御部2Aは、通信環境などによっては、通常のデータ通信時に、例えば、隣接判定にて隣接しないと判定した無線端末1Cから、隣接判定に用いる閾値より大きい受信強度でビーコンを受信することがある。この場合、無線端末1Aと無線端末1Cとの直接通信が成功する可能性が高い。そこで、制御部2Aは、隣接判定にて隣接しないと判定した無線端末1Cであっても、隣接判定に用いる閾値より大きい受信強度でビーコンを受信した場合には、通信部4Aを用いて、非隣接の無線端末1Cとも直接通信を行う。これにより、無線端末1Aは、通常のデータ通信時に、隣接判定により隣接すると判定された無線端末1B,1Dの他、非隣接と判定された無線端末1Cとも通信環境等に応じて臨機応変に直接通信を行うことができるようになる。よって、無線通信システム10は、直接通信の成功率が高い範囲で各無線端末1の通信経路を柔軟に広げて、通信時間を短縮することができる。
【0095】
以上説明したように、本形態の無線通信システム10は、無線通信ネットワーク内で、複数の無線端末1A~1Jが相互に直接又は中継を介して無線によるデータ通信を行う無線通信システム10において、例えば
図5に示すように、無線端末1Aは、無線通信ネットワーク内の他の無線端末1B~1Jを相手にテーブル交換を試行し、テーブル交換が成功した場合は、当該テーブル交換の相手方の無線端末1B,1Dが隣接すると判定し、テーブル交換が成功しなかった場合は、当該テーブル交換の相手方の無線端末1C,1Gが隣接しないと判定し、更に、通常のデータ通信時に直接通信を行う場合、隣接すると判定した無線端末1B,1Dと直接通信を行うこと、を特徴とする。
【0096】
上記構成の無線通信システム10によれば、通常のデータ通信を行う場合、データの送信元である無線端末1が、テーブル交換に成功して隣接すると判定した無線端末1にデータを直接送信するので、データ通信時に無線端末1,1間の直接通信に失敗が生じにくく、無線通信ネットワーク内のデータ通信の通信成功率を向上させることができる。
【0097】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
【0098】
(1)例えば、上記実施形態では、ホップ数テーブル31をテーブル交換の対象としたが、ホップ数テーブル31と異なるデータを交換対象にしても良い。ただし、データ交換の対象を通常のデータ通信時に使用するホップ数テーブル31とすることで、記憶部3に記憶するデータの種類を減らし、記憶部3の負荷を軽減できる。
【0099】
(2)例えば、上記実施形態では、閾値以上のビーコンを受信した場合に、当該ビーコンを送信した無線端末1とテーブル交換を行ったが、閾値に関係なく、ビーコンを受信した場合に、当該ビーコンを送信した無線端末とテーブル交換するようにしても良い。但し、閾値以上のビーコンを受信した場合に、当該ビーコンを送信した無線端末1とテーブル交換を行うことにより、データ交換に失敗する確率が減り、隣接調査を行う無線端末1の処理負荷を軽減できる。また、無駄な通信を減らし、無線端末1の電池6が減ることを抑制することもできる。
【0100】
(3)例えば、ホップ数テーブル31の各レコードに、隣接と非隣接とを区別する情報を記憶させても良い。これによれば、通信回数から隣接関係を調査する場合より、隣接関係を簡単に判断でき、隣接調査を行う無線端末1の処理負荷を軽減できる。
【0101】
(4)例えば、上記形態では、ホップ数テーブル31上で隣接すると判断される無線端末1から閾値未満のビーコンを受信した場合、テーブル交換を実施したが、ホップ数テーブル31上で隣接すると判断される無線端末1から閾値未満のビーコンを受信した場合、テーブル交換を実施しないようにしても良い。但し、ホップ数テーブル31上で隣接すると判断される無線端末1から閾値未満のビーコンを受信した場合、テーブル交換を試行し、テーブル交換の成否に応じてホップ数テーブル31を更新することにより、システム構成情報の更新頻度を抑制でき、電池6の消耗を低減できる。
【0102】
(5)例えば、通常のデータ通信時に、無線端末1は、隣接判定により隣接すると判定した無線端末1とだけ直接通信を行うようにしても良い。但し、例えば、通常のデータ通信時に、無線端末1Aが、隣接判定により隣接すると判定した無線端末1B,1Dに加え、隣接判定に用いる閾値より大きい受信強度でビーコンを通常のデータ通信時に無線端末1Cから受信した場合に、更に、当該ビーコンの送信元である無線端末1Cと直接通信を行うようにすれば、無線通信システム10は、直接通信の成功率が高い範囲で各無線端末1の通信経路を広げて、通信時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0103】
1(1A~1J) 無線端末
2(2A~2J) 制御部
3(3A~3J) 記憶部
4(4A~4J) 通信部
10 無線通信システム