(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】靴
(51)【国際特許分類】
A43B 21/42 20060101AFI20221227BHJP
A43B 13/42 20060101ALI20221227BHJP
A43B 21/24 20060101ALI20221227BHJP
A43B 13/14 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
A43B21/42
A43B13/42 101
A43B21/24
A43B13/14 D
(21)【出願番号】P 2022065929
(22)【出願日】2022-03-26
【審査請求日】2022-04-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513309432
【氏名又は名称】▲吉▼田 智美
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼田 智美
【審査官】程塚 悠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0201704(US,A1)
【文献】国際公開第2016/168767(WO,A1)
【文献】特開2015-109921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 21/24-21/54
A43B 13/42
A43B 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソールとヒールとを有し、高さの異なるヒールを取り替え可能な靴であって、
前記ソールはつま先から踵方向に順にソールトゥ部、ソール中央部、ソールヒール部からなり、
前記ソール中央部において靴の長手方向を軸として軸回動可能に固定され前記ソール中央部
と前記ソールヒール部
との相対位置関係を可変規制するシャンクを備え、
前記シャンクは、前記ソール中央部と前記ソールヒール部
との境界部で所定の角度を形成して延在するシャンクヒール延長部を有し、
前記ソール中央部と前記ソールヒール部
との境界部は屈曲可能であり、
前記ソールヒール部及び前記ヒールの少なくとも一方に前記シャンクヒール延長部を受け入れる受け入れ部を備
え、
前記ヒールを前記ソールに固定するヒール固定手段を有し、
前記ソールヒール部と前記ヒールを前記ヒール固定手段によって固定することに
より、シャンクの軸回動が固定されるように形成されている、
ことを特徴とする靴。
【請求項2】
ソールとヒールとを有し、高さの異なるヒールを取り替え可能な靴であって、
前記ソールはつま先から踵方向に順にソールトゥ部、ソール中央部、ソールヒール部からなり、
前記ソール中央部において靴の長手方向を軸として軸回動可能に固定され
前記ソールトゥ部と前記ソール中央部との相対位置関係、及び前記ソール中央部と前記ソールヒール部との相対位置関係を可変規制するシャンクを備え、
前記シャンクは、前記ソール中央部と前記ソールヒール部
との境界部で所定の角度を形成して延在するシャンクヒール延長部と、
前記ソール中央部と前記ソールトゥ部
との境界部で所定の角度を形成して延在するシャンクトゥ延長部を有し、
前記ソール中央部と前記ソールトゥ部
との境界部
、及び前記ソール中央部と前記ソールヒール部
との境界部は
それぞれ屈曲可能であり、
前記ソールトゥ部は前記シャンクトゥ延長部を受け入れて略ソール面に沿った平面移動を可能にするシャンクトゥ延長部受け入れ部を備え、
前記ソールヒール部及び前記ヒールの少なくとも一方に前記シャンクヒール延長部を受け入れる受け入れ部を備
え、
前記ヒールを前記ソールに固定するヒール固定手段を有し、
前記ソールヒール部と前記ヒールを前記ヒール固定手段によって固定することにより、シャンクの軸回動が固定されるように形成されている、
ことを特徴とする靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高さの異なるヒールを交換できる構造を有する靴において、高さの異なるヒール其々に適した形状にソールが変形することによって、美しい外観と快適性の両立を実現する靴の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒール靴はヒールが高いと外観が美しいが、長時間の着用で足に負担がかかり快適性が損なわれ易い。そこで、高さの異なるヒールに交換できれば、外出中に靴を履き替えることなく美しい外観と快適性を両立できる。高さの異なるヒールに交換できる靴はすでに市場で販売されているが、多くは一つのソール形状で高さの異なる複数のヒールを交換する靴である。
【0003】
通常、靴はヒールの高さに合わせたソールが使用されており、ソールはヒールの高さによって形状や各部分の強度が異なる。例えば、高いヒールのソール程、ソールトゥ部とソール中央部とがなす角度や、ソール中央部とソールヒール部とがなす角度が適正に保てるよう、中足骨頭付近の接地部分からソール中央部とソールヒール部にかけてはファイバーボード(パルプ繊維でできた硬い板)などの硬い材料でできており、内部にはシャンクと呼ばれる金属製の芯が入っている。
【0004】
このような構造的特徴を有するソールに対して、既存製品のように単純に高さの違うヒールに交換した場合、ソール形状がヒールの高さに合わず、足にソールが沿わなくなり足とソールの間に隙間が生じたり局部の圧迫が生じたりする。また、ソールの地面との接地部分が設計からずれ、歩行時の安定性や快適性が失われるなどの問題があった。
【0005】
これを
図9~
図11で解説する。
図9(a)(b)(c)はそれぞれ低いヒール、中程度のヒール、高いヒールの靴のソール形状と接地状態を示すもので、いずれも中足骨頭付近の部分96で接地している。
図9(c)のようなヒールの高い靴のソール形状を、
図9(b)のようなヒール高さが中程度のソール形状と比較すると、ソールトゥ部とソール中央部とがなす角度がより下向きに鋭角である。
図10のように、高さが中程度のヒールに適したソールに高いヒールを取り付けると、足の荷重がかかるべきソールの地面との接地部分が浮いてしまい、ソールの接地が本来の接地部分より靴の前方にずれてしまう。このため、ソールには足に好ましくない大きな負荷がかかる上、体重や歩行時の応力がソールの地面との接地部分を大きく変形させるように作用し、破損が生じる恐れもある。
【0006】
一方、
図9(a)のようなヒールの低い靴のソールの形状を、
図9(b)のようなヒール高さが中程度のソール形状と比較すると、ソールトゥ部とソール中央部とがなす角度がより下向きに鈍角である。
図11のように、中程度のヒールに適したソールに低いヒールを取り付けると、ソールの接地が本来の接地部分より靴の後方にずれてしまい、靴の先端が本来の位置より上がってしまう。このため、体重や歩行時の応力により靴の先端が下方に変形させるように作用し、ソールに負荷がかかる。
【0007】
また、ソールトゥ部とソール中央部とがなす角度より角度が小さいが、ソール中央部とソールヒール部とがなす適切な角度も、高いヒールと中程度のヒールと低いヒールでは異なる。
図9(c)のようなヒールの高い靴のソール形状の場合、ソール中央部とソールヒール部とがなす角度が
図9(b)のような中程度のヒールのソール形状より上向きに鋭角である。
図10のように中程度のヒールに適したソールに高いヒールを取り付けると、ソール中央部とソールヒール部とがなす角度が高いヒールのソール形状より上向きに鈍角であり、踵が靴の前方にすべりやすくなる。
【0008】
図9(a)のようなヒールの低い靴のソール形状の場合、ソール中央部とソールヒール部とがなす角度が
図9(b)のような中程度のヒールのソール形状より上向きに鈍角である。
図11のように中程度のヒールに適したソールに低いヒールを取り付けると、ソール中央部とソールヒール部とがなす角度が低いヒールのソール形状より上向きに鋭角であり、ソール中央部とソールヒール部の境目に足が出っ張りを感じやすく違和感を持ちやすい。
【0009】
このように、選択したヒールの高さに対して適正なソール形状がそれぞれあり、ヒール高さの変化に応じてソール形状を変化させる試みも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2011-234953号公報
【文献】実用新案登録第3230390号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1には踵部の高さ及び靴底の形状を変化させる機能を備えた靴が開示されている。開示された靴は、踵部に備えられた高さ可変手段と靴底本体にスライド可能に備えられた連結板を有しており、踵高さの変化に連動して連結板がスライドすることによって靴底形状を変化させることができるというものである。この特許文献1による発明では、ソールトゥ部とソール中央部とがなす角度を屈曲させるために、ソールトゥ部を上方向に持ち上げる力が必要である。しかし、連結板はソールの内部に組み込まれておりソールにほぼ平行に配置されるため、引っ張る際にソールトゥ部を持ち上げる上方向のベクトルがほとんどない分、ソールトゥ部を持ち上げるには大きな力が必要という問題がある。
また特許文献1による発明では、高いヒールにする際、ソールトゥ部とソール中央部とがなす角度をより下向きに鋭角にする力を生じさせるには、ソールの屈曲部と連結板との間に高さ方向の距離(隙間)が必要であり、連結板がソールの内部に組み込まれていればソールに厚みが必要となる。また使用するに従い、該隙間の寸法が変化したり連結板が伸びたりすることで、連結板が踵側に引っ張られる長さとそれによるソールトゥ部の角度の変化が一定しない恐れもあり、実用性に欠けるという問題がある。
【0012】
特許文献2に開示されている靴によれば、シャンクの形状は、靴のアーチをたどる摺動動作に合わせてかたどられた線状の湾曲部材であり、単純に固体鋼屈曲板であってよいが、好ましくは、より薄く作製され、非直線状の軸方向断面を有し、シャンク全体がソール内の空洞でソールに対して長手方向に摺動する。シャンクは、レバーによってきつくねじ留めされることで固定される。もしくは、シャンクの後端部に付けられたブロックが位置する範囲がソールに対して長手方向に摺動する範囲であり、その範囲にヒールの上方に突出したくさびが入ることで、位置決めされる。
しかしながら、特許文献2による発明では、シャンクは長手方向に摺動し固定されることにより、ソールトゥ部とソール中央部とがなす角度およびソール中央部とソールヒール部とがなす角度を変化させ固定させることは記載がない。シャンクの前端部がソールトゥ部に固着され、それによりシャンク後端を後方のヒール側に摺動させれば、特許文献1のようにソールトゥ部とソール中央部とがなす角度が上向きに鋭角になると考えられるが、特許文献1と同様に、ソール内の空洞のソールの屈曲部に近い位置にあるシャンクの隙間はその僅かな寸法の変化やシャンクが伸びたりすることで、シャンクが踵側に引っ張られる長さとそれによるソールトゥ部の角度の変化が一定しない恐れもあり、実用性に欠けるという問題がある。
【0013】
本発明は、前記のような従来のヒール高さ調節可能な靴のソールの変形機構の問題点に鑑みなされたものであり、その基本的な目的は、高さの異なるヒールに交換する際、ソールをヒールの高さに適した形状に簡単に変形させられ、快適性と外観を両立できる靴を実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は前記目的を達成するためになされたものであり、以下の特徴を有する。
[1]ソールとヒールとを有し、高さの異なるヒールを取り替え可能な靴であって、前記ソールはつま先から踵方向に順にソールトゥ部、ソール中央部、ソールヒール部からなり、前記ソール中央部において靴の長手方向を軸として軸回動可能に固定され前記ソールトゥ部及び前記ソール中央部の相対位置関係を可変規制するシャンクを備え、前記シャンクは、前記ソール中央部と前記ソールヒール部の境界部で所定の角度を形成して延在するシャンクヒール延長部と、前記ソール中央部と前記ソールトゥ部の境界部で所定の角度を形成して延在するシャンクトゥ延長部を有し、前記ソール中央部と前記ソールトゥ部の境界部は屈曲可能であり、前記ソールトゥ部は前記シャンクトゥ延長部を受け入れて略ソール面に沿った平面移動を可能にするシャンクトゥ延長部受け入れ部を備え、前記ヒールに前記シャンクヒール延長部を受け入れる受け入れ部を備える、
ことを特徴とする靴。
【0015】
[2]ソールとヒールとを有し、高さの異なるヒールを取り替え可能な靴であって、前記ソールはつま先から踵方向に順にソールトゥ部、ソール中央部、ソールヒール部からなり、前記ソール中央部において靴の長手方向を軸として軸回動可能に固定され前記ソール中央部及び前記ソールヒール部の相対位置関係を可変規制するシャンクを備え、前記シャンクは、前記ソール中央部と前記ソールヒール部の境界部で所定の角度を形成して延在するシャンクヒール延長部を有し、前記ソール中央部と前記ソールヒール部の境界部は屈曲可能であり、前記ソールヒール部及び前記ヒールの少なくとも一方に前記シャンクヒール延長部を受け入れる受け入れ部を備える、
ことを特徴とする靴。
【0016】
[3]ソールとヒールとを有し、高さの異なるヒールを取り替え可能な靴であって、前記ソールはつま先から踵方向に順にソールトゥ部、ソール中央部、ソールヒール部からなり、前記ソール中央部において靴の長手方向を軸として軸回動可能に固定され前記各ソール部の相対位置関係を可変規制するシャンクを備え、前記シャンクは、前記ソール中央部と前記ソールヒール部の境界部で所定の角度を形成して延在するシャンクヒール延長部と、前記ソール中央部と前記ソールトゥ部の境界部で所定の角度を形成して延在するシャンクトゥ延長部を有し、前記ソール中央部と前記ソールトゥ部の境界部と前記ソール中央部と前記ソールヒール部の境界部は屈曲可能であり、前記ソールトゥ部は前記シャンクトゥ延長部を受け入れて略ソール面に沿った平面移動を可能にするシャンクトゥ延長部受け入れ部を備え、前記ソールヒール部及び前記ヒールの少なくとも一方に前記シャンクヒール延長部を受け入れる受け入れ部を備える、
ことを特徴とする靴。
【0017】
[4]前記ヒールを前記ソールに固定するヒール固定手段を有し、前記ソール中央部と前記ソールヒール部の境界部から所定の角度を形成した前記シャンクヒール延長部を前記受け入れ部に収納した状態で、前記ヒール固定手段によって、シャンクの軸回動が固定されるように形成されている、
ことを特徴とする〔1〕~〔3〕に記載の靴。
【発明の効果】
【0018】
上記の構成を持つことにより、本願発明の靴は、高さの異なるヒールに取り替えてもソールをヒールの高さに適した形状に簡単に変形させられ維持することができるので、着用時の快適性と美しい外観を両立できる。またシャンクがソールヒール部まで延在するのでソール中央部とソールヒール部とがなす角度を適正に変えられるという点で優れている。またソールトゥ部にかかるまでシャンクを延在させたものはソールトゥ部とソール中央部とがなす角度を適正に変えられるという点で優れている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】 ヒール取付前のソール全体の側面図である。
【
図2】 ヒール取付前のソール全体の側面の断面図である。
【
図3】 開放されたソールトゥ部とソール中央部とシャンクの平面図である。
【
図4】 ソールトゥ部とソール中央部とシャンクの平面図である。
【
図6】 低いヒールを取り付けたソール全体の側面図である。
【
図7】 中程度のヒールを取り付けたソール全体の側面図である。
【
図8】 中程度のヒールを取り付けたソール全体の側面の断面図である。
【
図9】 ヒール高さに適したソール形状と接地状態を示す側面図である。(a)低いヒール、(b)中程度のヒール、(c)高いヒール
【
図10】 中程度のヒールに適したソール形状に高いヒールを取り付けた場合のソールの接地状態を示す側面図である。
【
図11】 中程度のヒールに適したソール形状に低いヒールを取り付けた場合のソールの接地状態を示す側面図である。
【
図12】 低いヒールに適したソールヒール部とジョイント部とシャンクの位置関係を示す底面図である。
【
図13】 低いヒールに適したソールヒール部とジョイント部とシャンクの位置関係を示す側面図である。
【
図14】 ソールヒール部をヒンジにより上方に曲げた状態を示す斜視図である。
【
図15】 ソールヒール部をヒンジにより上方に曲げた状態を示す側面の断面図である。
【
図16】 低いヒールに適したソールヒール部とジョイント部とシャンクの位置関係を示す斜視図である。
【
図17】 低いヒールに適したソールヒール部とジョイント部とシャンクと低いヒールの位置関係を示す斜視図である。
【
図18】 ジョイント部が低いヒールに嵌った状態の側面の断面図である。
【
図19】 高いヒールに適したソールヒール部とジョイント部とシャンクの位置関係を示す底面図である。
【
図20】 高いヒールに適したソールヒール部とシャンクと高いヒールの位置関係を示す側面図である。
【
図25】 ソールヒール部をヒンジにより上方に曲げた状態を示す側面図である。
【
図26】
図25のシャンクヒール延長部を低いヒールの受け入れ部に挿入した状態の側面図である。
【
図29】 別のヒール取付前のソール全体の側面図である。
【
図30】 低いヒールを取り付ける場合のソールヒール部とジョイント部とシャンクの位置関係を示す斜視図である。
【
図31】 高いヒールを取り付ける場合のソールヒール部とジョイント部とシャンクの位置関係を示す斜視図である。
【
図36】 更にまた別の低いヒールの斜視図である。
【
図37】 別の中程度のヒールを取り付けたソール全体の側面図である。
【
図38】 また別のヒール取付前のソール全体の側面図である。
【
図39】 また別のヒール取付前のソール全体の側面の断面図である。
【
図40】 また別の中程度のヒールを取り付けたソール全体の側面の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図を参照しながら実施の形態を説明する。ここでは実施形態についてソール中央部に対してソールトゥ部とソールヒール部の両者の角度を変える例を説明するが、ソールトゥ部のみの角度変更を行う場合と、ソールヒール部のみの角度変更を行いソールトゥ部は別の方法で行う場合も、これに準じて行うことができる。
図1に示す通り、ソール1は大きく区分してソールトゥ部11、ソール中央部12、ソールヒール部13からなり、それぞれの境界部で屈曲可能になっている。ソール1は、ソールトゥ部とソール中央部を構成する主部品112とソール中央部の上部部品122とソールヒール部13を合わせたものの総称であり、ヒールは別部品で取り付け取り外しできる。ソールトゥ部11とソール中央部12との境界部にはスリット91sを設け、ソール中央部12とソールヒール部13との境界部にはヒンジ92hを設けて、任意の角度に屈曲しやすくなっている。この説明では屈曲可能とする手段としてスリット91sとヒンジ92hを用いたが、これらの手段に限定されるものではない。
【0021】
シャンク2は、基本的には棒状の硬い素材であって、
図2~
図4のようにソール内部に組み込まれたものである。
図5に示すように、シャンク2は、シャンクトゥ延長部21、シャンク中央部22、シャンクヒール延長部23とからなっており、各部が隣接する境界部で屈曲している。このため、シャンク2をシャンク中央部22を軸とした周方向に軸回動(以下、「回動」という)させることにより、水平方向からみたシャンクトゥ延長部21とシャンク中央部22とがなす角度とシャンク中央部22とシャンクヒール延長部23とがなす角度がそれぞれ変わる。
【0022】
図3と
図4は説明を容易にするため、ソールヒール部13が外された状態の図面である。ソールトゥ部11とソール中央部12とシャンク2の位置関係のみを該図で説明する。
シャンク中央部22はソール中央部12に靴の長手方向を軸として回動可能な状態で固定されており、シャンクトゥ延長部21はソールトゥ部11に設けられたシャンクトゥ延長部受け入れ部93gに収まっている。シャンクトゥ延長部21が収まるシャンクトゥ延長部受け入れ部93gはシャンクトゥ延長部21の一定範囲の動きを可能にする間隙(スペース)を持つもので、シャンク2が回動した際、水平方向にはシャンクトゥ延長部21が所定の範囲で水平方向に移動するだけの幅を持っているが、
図2に示す通り垂直方向にはシャンク径よりわずかに大きい高さしかない。このため、シャンク2の回動によるシャンクトゥ延長部21の移動のうち、水平方向は前記シャンクトゥ延長部受け入れ部93gが持つ水平方向の幅によって吸収される一方、垂直方向の移動はシャンクトゥ延長部21とシャンク中央部22とがなす水平方向から見た角度を変化させ、ソールトゥ部11とソール中央部12とがなす角度を適正に変化させる。
【0023】
以下、
図1、
図2を参照しシャンク2を回動させる方法について説明する。シャンクトゥ延長部21はソールトゥ部11に設けられたシャンクトゥ延長部受け入れ部93gに収納され、シャンク中央部22はソール中央部12に回動可能に固定されている。シャンクヒール延長部23は、ヒール取り付けの際にソールヒール部13及びヒール3の少なくとも一方に収納されるが、取付前は(少なくとも一部分は)露出している。シャンク2を回動させる方法としては、シャンクヒール延長部23を手などで動かし、もしくは、ソールトゥ部11とソール中央部12を手などで屈曲または伸展させることで、シャンク2も連動して回動し、水平方向から見たシャンクトゥ延長部21とシャンク中央部22とがなす角度が変わり、ソールトゥ部11とソール中央部12とがなす角度が変化する。
【0024】
また、露出しているシャンクヒール延長部23を手などで動かし、もしくは、ソールトゥ部11とソール中央部12を手などで屈曲または伸展させることで、シャンク2も連動して回動し、水平方向から見たシャンク中央部22とシャンクヒール延長部23とがなす角度が変わり、
図3に示すように上から見たシャンクヒール延長部23は、シャンク中央部22との境界部から角度が変わる。取り付けるヒールの高さによって異なるシャンクヒール延長部23の角度の違いに対応して、異なる位置でシャンクヒール延長部23を受け入れる受け入れ部81がソールヒール部13及びヒール3の少なくとも一方に設置されている。この受け入れ部81としては、
図14、
図15に例示する81gや
図32~
図36に例示する81cのようなヒール高さに応じて設けられた溝であってもよいし、
図23、
図24に例示する81hのような同様に設けられた穴であってもよい。もちろんこれらに限定するものではない。シャンクヒール延長部23が異なった位置でソールヒール部13及びヒール3の少なくとも一方に設けられた受け入れ部(81g、81h、81c)に収納されることによって、水平方向から見たソールトゥ部11とソール中央部12とがなす角度が次に取り付けるヒールの高さに合った角度に変化し位置決めされる。
【0025】
シャンク2の回動を固定する手段としては、シャンクヒール延長部23がソールヒール部13及びヒール3の少なくとも一方に設けられた受け入れ部(81g、81h、81c)に収納されることで位置決めされ、ヒールをソールに固定することで固定される。
ヒールをソールに固定するヒール固定手段として例えば、ソールヒール部13にヒールを固定するロックピンを使用したジョイント部4を設置し、ヒール3にはジョイント部と嵌合する凹部94hを設置する。シャンクヒール延長部23が異なった位置でソールヒール部13及びヒール3の少なくとも一方に設けられた受け入れ部(81g、81h、81c)に収納され、ジョイント部4がヒールと嵌合することによって、水平方向から見たソール中央部12とソールヒール部13とがなす角度が次に取り付けるヒールの高さに合った角度に変化し位置決めされる。
ソールヒール部13に設置されたジョイント部4がヒールと嵌合することによってヒール3とソールヒール部13が固定されると、ソールヒール部13及びヒール3の少なくとも一方に設けられた受け入れ部(81g、81h、81c)に嵌ったシャンクヒール延長部23が固定され、ソールトゥ部11とソール中央部12とがなす角度とソール中央部12とソールヒール部13とがなす角度も固定される。
図6は低いヒール、
図7は中程度のヒールを取り付けたソールの側面図であり、ヒールの高さに適したソールの形状を示したものである。
以下、シャンクヒール延長部23が位置決めされ固定される好適な様態を三つ示す。
【0026】
シャンクヒール延長部23が位置決めされ固定される好適な様態について、
図12~
図22を用いて説明する。
図12は、
図17に示す低いヒール3lに適したソールヒール部13とジョイント部4とシャンク2の位置関係を示す図であり、シャンクヒール延長部23がソールヒール部13の複数ある溝状の受け入れ部81gの一つに嵌ることで、
図13のように水平方向からみたシャンクトゥ延長部21とシャンク中央部22とがなす角度とソールヒール部13の位置がヒールの高さに適した状態となる。受け入れ部81gは、ソールトゥ部11とソール中央部12とがなす角度とソール中央部12とソールヒール部13とがなす角度が、複数のヒール高さに適した角度になるよう複数設置されている。前述のように、ヒールの高さによって水平方向から見たソールトゥ部11とソール中央部12とがなす角度とソール中央部12とソールヒール部13とがなす角度が違うため、それに伴う水平方向から見たシャンクトゥ延長部21とシャンク中央部22とがなす角度とシャンク中央部22とシャンクヒール延長部23とがなす角度も違う。ヒールの高さによってシャンク2の回動角も異なり、シャンクヒール延長部23の位置も異なる。このヒール高さによって位置が変わるシャンクヒール延長部23を固定するために、
図12、
図14、
図16、
図19、
図22の受け入れ部81gの位置はヒール高さによって位置が変わるシャンクヒール延長部23に合わせた複数の異なった位置に設置される。
【0027】
ここで、ヒールをソールに固定するヒール固定手段の例として、ロックピンを使用したジョイント部4の一例を説明する。
図14、
図15のようにソールヒール部13に設置されたジョイント部4にはロックピン5が、その前端が靴の前方へ突出するように配されている。
図18、
図21のようにヒール(3l、3h)にはジョイント部4を収納する凹部94hがあり、その内面にロックピン5の前端が嵌る穴部95hが開けられている。ロックピン5はばね部材6によって靴の前方に付勢され、その前端が穴部95hに嵌合することでヒール(3l、3h)のソールヒール部13への固定が維持される。ヒールをはずす際は、ロックピン5の前端をジョイント部4内に押し込むようにして穴部95hとの嵌合を解除する。この説明ではロックピン5を前方に付勢するタイプのジョイント部4を用いたが、これに限定するものではない。
【0028】
次に、
図14、
図15を参照しながら、シャンク2の回動角がどのように固定されるかの一例を説明する。まず、ソール中央部の上部部品122とソールヒール部13との境界部はヒンジ92hにて連結されている。ソールヒール部13に設けられた受け入れ部81gにシャンクヒール延長部23が嵌ることで、シャンク2の回動角が決まり、ヒール(3h、3l)とソールヒール部13に設けたジョイント部4とを嵌合させることでヒール3がソール1に固定され、受け入れ部81gに嵌ったシャンクヒール延長部23の露出している部分がヒール3で覆われ、シャンクヒール延長部23はシャンク中央部22との境界部から角度があるためシャンク2の回動角も固定される。これにより、シャンクヒール延長部23が嵌る受け入れ部81gの位置はヒール高さによって位置が変わるシャンクヒール延長部23に合わせた複数の異なった位置に設置され、ヒンジ92hの可動する方向と異なる角度であれば、シャンクヒール延長部23が受け入れ部81gから抜けて離れることはなく、ヒンジ92hの可動を制限し、シャンク2によって水平方向からみたソールトゥ部11とソール中央部12とがなす角度とソール中央部12とソールヒール部13とがなす角度が固定される。
【0029】
高いヒール3h(
図20、
図21)から低いヒール3l(
図17、
図18)へ、また低いヒール3lから高いヒール3hへ交換する際は、前述のようにヒール3をはずし、
図14、
図15のようにソールヒール部13をヒンジ92hの可動する範囲で上方に曲げると、シャンクヒール延長部23が受け入れ部81gから外れ可動になるので、シャンクヒール延長部23を手などで動かし、もしくは、ソールトゥ部11とソール中央部12を手などで屈曲または伸展させ次に取り付けるヒールの高さに適した角度にし、再度ソールヒール部13の別の受け入れ部81gにシャンクヒール延長部23を嵌め、適した高さのヒール3をジョイント部4に取り付ける。
図19と
図22では高いヒール3hを嵌める際の受け入れ部81gに嵌るシャンクヒール延長部23の位置を示しているが、低いヒール3lの際は
図12のように別の位置の受け入れ部81gにシャンクヒール延長部23が嵌る。
【0030】
シャンクヒール延長部23が位置決めされ固定される好適な別な様態について、
図23~
図28を用いて説明する。シャンクヒール延長部23がヒールの穴状の受け入れ部81hに嵌り、ソールヒール部13に突設したジョイント部4をヒールの凹部94hに嵌めることで、水平方向からみたシャンクトゥ延長部21とシャンク中央部22とがなす角度とソール中央部12とソールヒール部13とがなす角度がヒールの高さに適した状態となる。
前述のように、ヒールの高さによって水平方向から見たソールトゥ部11とソール中央部12とがなす角度とソール中央部12とソールヒール部13とがなす角度が違うため、それに伴う水平方向から見たシャンクトゥ延長部21とシャンク中央部22とがなす角度とシャンク中央部22とシャンクヒール延長部23とがなす角度も違う。
ヒールの高さによってシャンク2の回動角も異なり、シャンクヒール延長部23の位置も異なる。このヒール高さによって位置が変わるシャンクヒール延長部23を固定するために、
図23、
図24の低いヒール3lと高いヒール3hの受け入れ部81hの位置はシャンクヒール延長部23に合わせた位置に配されている。
【0031】
図25はこの様態においてヒール3をシャンクヒール延長部23に嵌める前の状態を示す。ソール中央部の上部部品122とソールヒール部13とはヒンジ92hにて連結されており、ソール中央部12の後端からはシャンクヒール延長部23が露出している。ヒール3の受け入れ部81hにシャンクヒール延長部23が嵌ることで、シャンク2の回動角が決まり、ヒール3とソールヒール部13に設けたジョイント部と嵌合させることでヒール3がソール1に固定され、シャンクヒール延長部23はシャンク中央部22との境界部から角度があるためシャンク2の回動角も固定され、水平方向からみたソールトゥ部11とソール中央部12とがなす角度とソール中央部12とソールヒール部13とがなす角度がそれぞれ変わり、ソール1がヒールの高さに適した形状に保持される。
図23、
図24に示すヒール3l、3hにはジョイント部4が収まる凹部94hを配置し、その位置に嵌るようソールヒール部13にジョイント部4が突設されている。
【0032】
ヒールを取り付ける際は、
図25のようにソールヒール部13をヒンジ92hの可動する範囲で上方に曲げ、シャンクヒール延長部23を手などで動かし、もしくは、ソールトゥ部11とソール中央部12を手などで屈曲または伸展させ次に取り付けるヒールの高さに適した角度にし、
図26、
図27、
図28のように次に取り付けるヒールの受け入れ部81hにシャンクヒール延長部23を嵌め、ソールヒール部13をヒンジ92hの可動に沿って下におろしソールヒール部13に突設したジョイント部4をヒールの凹部94hに嵌める。
ヒールを取り外す際は、ロックピン5の前端をジョイント部4内に押し込むようにして穴部95hとの嵌合を解除し、ソールヒール部13をヒンジ92hの可動する範囲で上方に曲げ、シャンクヒール延長部23が嵌っている受け入れ部81hの軸方向に沿ってヒールを抜き取る。
【0033】
ヒールの受け入れ部81hの位置はヒール高さによって位置が変わるシャンクヒール延長部23に合わせた位置に各ヒール異なり配されており、ヒンジ92hの可動する方向と異なる角度であれば、シャンクヒール延長部23がヒールの受け入れ部81hから抜けて離れることはなく、ヒンジ92hの可動を制限し、シャンク2によってソールトゥ部11とソール中央部12とがなす角度とソール中央部12とソールヒール部13とがなす角度が固定される。
【0034】
シャンクヒール延長部23が位置決めされ固定されるまた別な好適な様態について、
図1、
図2に示すソールと
図32~
図34に示すヒールと
図8に示すヒールを取り付けたソールを用いて説明する。
図32、
図33、
図34に示すように、ヒール上部に溝状の受け入れ部81cが設置されている。好適な様態、好適な別な様態で前述したように、ヒールの高さによってシャンク2の回動角も異なり、シャンクヒール延長部23の位置も異なる。このヒール高さによって位置が変わるシャンクヒール延長部23を固定するために、低いヒール3lと高いヒール3hの受け入れ部81cの位置はシャンクヒール延長部23に合わせた位置に配されている。
【0035】
図1、
図2はこの様態においてヒール取付前のソールで、
図8はヒールを取り付けたソールを示す。シャンクヒール延長部23がヒール上部の受け入れ部81cに嵌ることでシャンク2の回動角が決まり、ヒール(3h、3l)とソールヒール部13に設けたジョイント部4を嵌合させることでヒール3がソール1に固定され、受け入れ部81cに嵌ったシャンクヒール延長部23の露出している部分がソールヒール部13で覆われ、シャンクヒール延長部23はシャンク中央部22との境界部から角度があるためシャンク2の回動角も固定される。シャンクヒール延長部23が嵌る受け入れ部81cの位置はヒール高さによって位置が変わるシャンクヒール延長部23に合わせた位置に各ヒール異なり配されており、ヒンジ92hの可動する方向と異なる角度であれば、シャンクヒール延長部23が受け入れ部81cから抜けて離れることはなく、ヒンジ92hの可動を制限し、シャンク2によって水平方向からみたソールトゥ部11とソール中央部12とがなす角度とソール中央部12とソールヒール部13とがなす角度が固定される。
ヒールを取り付ける際は、好適な様態、好適な別な様態で前述したようにソールを次に取り付けるヒールの高さに適した角度にし、ソールヒール部13をヒンジ92hの可動する範囲で上方に曲げ、次に取り付けるヒールの受け入れ部81cにシャンクヒール延長部23を嵌め、ソールヒール部13をヒンジ92hの可動に沿って下におろしソールヒール部13に突設したジョイント部4をヒールの凹部94hに嵌める。取り外す際は、好適な様態、好適な別な様態で前述したようにロックピン5と穴部95hとの嵌合を解除する。
【0036】
次に
図29に示すソール1と、
図30、
図31に示すソールヒール部13とジョイント部4aとシャンク2の位置関係、
図35、
図36に示すヒール3lについて説明する。前述した
図1、
図2に示すソールと
図32~
図34に示すヒールと
図8に示すヒールを取り付けたソールとの違いは、シャンクヒール延長部23がジョイント部4aを貫通し配されており、シャンクヒール延長部23はソールヒール部13と相対移動する。
図29、
図30、
図31に示すシャンクヒール延長部23が収まる間隙42は、水平方向にはシャンクヒール延長部23が所定の範囲で水平方向に移動するだけの幅を持っており、垂直方向にはシャンク径よりわずかに大きい高さしかない。ここで、シャンク2が回動すると、水平方向から見たシャンクトゥ延長部21とシャンク中央部22とがなす角度とシャンク中央部22とシャンクヒール延長部23とがなす角度が変わり、それに伴ってソールトゥ部11とソール中央部12とがなす角度とソール中央部12とソールヒール部13とがなす角度が変化する。
【0037】
図36のようにシャンクヒール延長部23が嵌るヒール3lの上部の受け入れ部81cは、ヒールの凹部94hをまたがり前方と後方の両方に位置する。また、間隙42の内部にシャンクヒール延長部23の後端が収まり後端が露出しない状態のジョイント部4aの場合は、
図35のようにシャンクヒール延長部23が嵌るヒール3lの上部の受け入れ部81cはヒールの前方に位置する。
ヒールを取り付ける際は前述と同様であるが、ソールを次に取り付けるヒールの高さに適した角度にすれば、シャンクヒール延長部23とソールヒール部13は相対移動し次のヒールの取り付けに適正な位置となり、取り付けるヒールの凹部94hにジョイント部4aを、受け入れ部81cにシャンクヒール延長部23を同時に嵌める。
【0038】
シャンクヒール延長部23が位置決めされ固定される好適な様態、好適な別な様態、また別な好適な様態について、シャンクヒール延長部23が収納される受け入れ部(81g、81h、81c)を示したが、シャンクヒール延長部23が収納される受け入れ部は、各様態を限定するものではなく、また其々を組み合わせる手段でもよい。また、ヒールを固定するジョイント部(4,4a)についてロックピン5を前方に付勢するタイプを用いたが、これに限定するものではない。
【0039】
ここでは他の実施形態についてソールトゥ部のみの角度変更を行う例を
図38、
図39に示すソールと
図32~
図34に示すヒールと
図37に示すヒールを取り付けたソールを用いて説明する。
図37~
図39に示す通り、ソール1は大きく区分してソールトゥ部11、ソール中央部12、ソールヒール部13からなり、ソールトゥ部11とソール中央部12の境界部で屈曲可能になっている。ソール1は、ソールトゥ部とソール中央部を構成する主部品112とソール中央部とソールヒール部の一体化した部品122aを合わせたものの総称であり、ソールヒール部13はソール中央部とソールヒール部の一体化した部品122aと一体となっており、ヒールは別部品で取り外しできる。ソールトゥ部11とソール中央部12との境界部にはスリット91sを設けて、任意の角度に屈曲しやすくなっている。この説明では屈曲可能とする手段としてスリット91sを用いたが、この手段に限定されるものではない。前述したソール中央部に対してソールトゥ部とソールヒール部の両者の角度を変える例では、ソール中央部12とソールヒール部13との境界部にはヒンジ92hを設けたが、このソールトゥ部のみの角度変更を行う例では、
図37、
図38で示すようにソールヒール部13とソール中央部12との境界部は屈曲せず一体となっているので、その場合の実施様態を以下に説明する。
【0040】
シャンク2は、基本的には棒状の硬い素材であって、ソール内部に組み込まれたものである。
図5に示すように、シャンク2は、シャンクトゥ延長部21、シャンク中央部22、シャンクヒール延長部23とからなっており、各部が隣接する境界部で屈曲している。このため、シャンク2をシャンク中央部22を軸とした周方向に軸回動(以下、「回動」という)させることにより、水平方向からみたシャンクトゥ延長部21とシャンク中央部22とがなす角度とシャンク中央部22とシャンクヒール延長部23とがなす角度がそれぞれ変わる。
【0041】
図3と
図4は説明を容易にするため、ソールヒール部13が外された状態の図面である。ここでの説明ではソール中央部12とソールヒール部13との境界部は屈曲せず一体となっているものであるため、ソールトゥ部11とソール中央部12とシャンク2の位置関係のみを該図で説明する。
シャンク中央部22はソール中央部12に靴の長手方向を軸として回動可能な状態で固定されており、シャンクトゥ延長部21はソールトゥ部11に設けられたシャンクトゥ延長部受け入れ部93gに収まっている。シャンクトゥ延長部21が収まるシャンクトゥ延長部受け入れ部93gはシャンクトゥ延長部21の一定範囲の動きを可能にする間隙(スペース)を持つもので、シャンク2が回動した際、水平方向にはシャンクトゥ延長部21が所定の範囲で水平方向に移動するだけの幅を持っているが、
図39に示す通り垂直方向にはシャンク径よりわずかに大きい高さしかない。このため、シャンク2の回動によるシャンクトゥ延長部21の移動のうち、水平方向は前記シャンクトゥ延長部受け入れ部93gが持つ水平方向の幅によって吸収される一方、垂直方向の移動はシャンクトゥ延長部21とシャンク中央部22とがなす水平方向から見た角度を変化させ、ソールトゥ部11とソール中央部12とがなす角度を適正に変化させる。
【0042】
以下、
図39を参照しシャンク2を回動させる方法について説明する。シャンクトゥ延長部21はソールトゥ部11に設けられたシャンクトゥ延長部受け入れ部93gに収納され、シャンク中央部22はソール中央部12に回動可能に固定されている。シャンクヒール延長部23は、ヒール取り付けの際にヒールに収納されるが、取付前は(少なくとも一部分は)露出している。シャンク2を回動させる方法としては、シャンクヒール延長部23を手などで動かし、もしくは、ソールトゥ部11とソール中央部12を手などで屈曲または伸展させることで、シャンク2も連動して回動し、水平方向から見たシャンクトゥ延長部21とシャンク中央部22とがなす角度が変わり、ソールトゥ部11とソール中央部12とがなす角度が変化する。
【0043】
また、露出しているシャンクヒール延長部23を手などで動かし、もしくは、ソールトゥ部11とソール中央部12を手などで屈曲または伸展させることで、シャンク2も連動して回動し、水平方向から見たシャンク中央部22とシャンクヒール延長部23とがなす角度が変わり、
図3に示すように上から見たシャンクヒール延長部23は、シャンク中央部22との境界部から角度が変わる。取り付けるヒールの高さによって異なるシャンクヒール延長部23の角度の違いに対応して、異なる位置でシャンクヒール延長部23を受け入れる
図32~
図34に示す溝状の受け入れ部81cは、取り付けるヒールの高さによって異なる位置に設置されている。シャンクヒール延長部23が異なった位置で
図32~
図34に示すようなヒール(3l、3h)に設けられた受け入れ部81cに収納されることによって、水平方向から見たソールトゥ部11とソール中央部12とがなす角度が次に取り付けるヒールの高さに合った角度に変化し位置決めされる。
【0044】
シャンク2の回動を固定する手段としては、シャンクヒール延長部23が
図32~
図34に示すヒール上部の受け入れ部81cに収納されることで位置決めされ、ヒールをソールに固定することで固定される。
ヒールをソールに固定するヒール固定手段として例えば、
図38、
図39に示すようにソールヒール部13にヒールを固定するロックピン5を使用したジョイント部4を設置し、ヒール(3l、3h)にはジョイント部と嵌合する凹部94hを設置する。ソールヒール部13に設置されたジョイント部4がヒールと嵌合することによって、ヒール(3l、3h)とソールヒール部13が固定されると、受け入れ部81cに嵌ったシャンクヒール延長部23が固定され、ソールトゥ部11とソール中央部12とがなす角度も固定される。
シャンクヒール延長部23が位置決めされ固定される様態は、前述したソール中央部に対してソールトゥ部とソールヒール部の両者の角度を変える例の、シャンクヒール延長部23が位置決めされ固定されるまた別な好適な様態についてと同様であるが、このソールトゥ部のみの角度変更を行う例では、ソールヒール部13とソール中央部12との境界部は屈曲せず一体となっているので、ソールヒール部13を上方に曲げることはない。ヒールを取り付ける際は、ソールを次に取り付けるヒールの高さに適した角度にし、次に取り付けるヒールの凹部94hにジョイント部4を、受け入れ部81cにシャンクヒール延長部23を嵌めるように取り付ける。取り外す際は、前述したようにロックピン5と穴部95hとの嵌合を解除する。
【0045】
ヒールを固定するジョイント部4についてロックピン5を前方に付勢するタイプを用いたが、これに限定するものではない。
【0046】
ここでは更に他の実施例についてソールヒール部のみの角度変更を行いソールトゥ部は別の方法で行う例を説明する。
図40に示す通り、ソール1は大きく区分してソールトゥ部11、ソール中央部12、ソールヒール部13からなり、それぞれの境界部で屈曲可能になっている。ソール1は、ソールトゥ部とソール中央部を構成する主部品112bとソール中央部の上部部品122bとソールヒール部13を合わせたものの総称であり、ヒールは別部品で取り外しできる。ソールトゥ部11とソール中央部12との境界部にはスリット91sを設け、ソール中央部12とソールヒール部13との境界部にはヒンジ92hを設けて、任意の角度に屈曲しやすくなっている。この説明では屈曲可能とする手段としてスリット91sとヒンジ92hを用いたが、これらの手段に限定されるものではない。
【0047】
シャンク2bは、基本的には棒状の硬い素材であって、
図40のようにソール内部に組み込まれたものである。
図41に示すように、シャンク2bは、シャンク中央部22b、シャンクヒール延長部23bとからなっており、隣接する境界部で屈曲している。このため、シャンク2bをシャンク中央部22bを軸とした周方向に軸回動(以下、「回動」という)させることにより、水平方向からみたシャンク中央部22bとシャンクヒール延長部23bとがなす角度が変わる。
【0048】
以下、
図40を参照しシャンク2bを回動させる方法について説明する。シャンク中央部22bはソール中央部12に靴の長手方向を軸として回動可能な状態で固定されている。また、露出しているシャンクヒール延長部23bを手などで動かすことで、水平方向から見たシャンク中央部22bとシャンクヒール延長部23bとがなす角度が変わり、上から見たシャンクヒール延長部23bは、シャンク中央部22bとの境界部から角度が変わる。取り付けるヒールの高さによって異なるシャンクヒール延長部23bの角度の違いに対応して、異なる位置でシャンクヒール延長部23bを受け入れる受け入れ部81がソールヒール部13及びヒール3の少なくとも一方に設置されている。この受け入れ部81としては、
図14、
図15に例示する81gや
図32~
図36に例示する81cのようなヒール高さに応じて設けられた溝であってもよいし、
図23、
図24に例示する81hのような同様に設けられた穴であってもよい。もちろんこれらに限定するものではない。シャンクヒール延長部23bが異なった位置でソールヒール部13及びヒール3の少なくとも一方に設けられた受け入れ部(81g、81h、81c)に収納されることによって、水平方向から見たシャンク中央部22bとシャンクヒール延長部23bとがなす角度が変化し位置決めされる。
【0049】
シャンク2bの回動を固定する手段としては、シャンクヒール延長部23bがソールヒール部13及びヒール3の少なくとも一方に設けられた受け入れ部(81g、81h、81c)に収納されることで位置決めされ、ヒールをソールに固定することで固定される。
ヒールをソールに固定するヒール固定手段として例えば、ソールヒール部13にヒールを固定するロックピンを使用したジョイント部4を設置し、ヒール3にはジョイント部と嵌合する凹部94hを設置する。シャンクヒール延長部23bが異なった位置でソールヒール部13及びヒール3の少なくとも一方に設けられた受け入れ部(81g、81h、81c)に収納され、ジョイント部4がヒールと嵌合することによって、水平方向から見たソール中央部12とソールヒール部13とがなす角度が次に取り付けるヒールの高さに合った角度に変化し位置決めされる。
ソールヒール部13に設置されたジョイント部4がヒールと嵌合することによってヒール3とソールヒール部13が固定されると、ソールヒール部13及びヒール3の少なくとも一方に位置する受け入れ部(81g、81h、81c)に嵌ったシャンクヒール延長部23bが固定され、ソール中央部12とソールヒール部13とがなす角度も固定される。
シャンクヒール延長部23bが位置決めされ固定される様態は、前述した実施形態のソール中央部に対してソールトゥ部とソールヒール部の両者の角度を変える例の、シャンクヒール延長部23が位置決めされ固定される好適な様態、好適な別な様態、また別な好適な様態と同様であるが、シャンクトゥ延長部21とシャンクトゥ延長部受け入れ部93gがなく、ソールトゥ部11とソール中央部12との角度の変化はない。
【0050】
シャンクヒール延長部23bが位置決めされ固定される好適な様態、好適な別な様態、また別な好適な様態について、シャンクヒール延長部23bが収納される受け入れ部(81g、81h、81c)は、各様態を限定するものではなく、また其々を組み合わせる手段でもよい。また、ヒールを固定するジョイント部(4、4a)についてロックピン5を前方に付勢するタイプを用いたが、これに限定するものではない。
【0051】
実施形態、他の実施形態、更に他の実施形態についてシャンク2及びシャンク2bは、基本的な要素のみ説明したが、ソールからの抜け防止やヒールとの固定の強化などのために追加で曲げや加工をすることもできるため、この形状に限らない。
【符号の説明】
【0052】
1 ソール
11 ソールトゥ部
12 ソール中央部
13 ソールヒール部
112 ソールトゥ部とソール中央部を構成する主部品
112b 別のソールトゥ部とソール中央部を構成する主部品
122 ソール中央部の上部部品
122a ソール中央部とソールヒール部の一体化した部品
122b 別のソール中央部の上部部品
2 シャンク
21 シャンクトゥ延長部
22 シャンク中央部
23 シャンクヒール延長部
2b 別のシャンク
22b 別のシャンク中央部
23b 別のシャンクヒール延長部
3 ヒール
3l 低いヒール
3m 中程度のヒール
3h 高いヒール
4 ジョイント部
4a 別のジョイント部
41 ジョイント部4の蓋
41a ジョイント部4aの蓋
42 ジョイント部4aの間隙
5 ロックピン
6 ばね部材
7 シャンクトゥ延長部の押さえ
81g ソールヒール部に設けられた受け入れ部
81h ヒールに設けられた受け入れ部
81c ヒールの上部に設けられた受け入れ部
91s スリット
92h ヒンジ
93g ソールトゥ部に設けられたシャンクトゥ延長部受け入れ部
94h ジョイント部が収納される凹部
95h ロックピン5が収納される穴部
96 ソールの接地部分
【要約】
【課題】高さの異なるヒールに交換する際、ソールをヒールの高さに適した形状に簡単に変形させられ、快適性と外観を両立できる靴を実現するものである。
【解決手段】ソール中央部(12)において靴の長手方向を軸として軸回動可能に固定されたシャンク(2)を備え、前記シャンクの軸回動によって、水平方向からみたソールトゥ部(11)とソール中央部(12)とがなす角度とソール中央部(12)とソールヒール部(13)とがなす角度がそれぞれ変わり、シャンクヒール延長部(23)がソールヒール部(13)及びヒール(3)の少なくとも一方に設けられたシャンクヒール延長部を受け入れる受け入れ部(81g、81h、81c)に収納され、ヒール固定手段によってソール(1)とヒール(3)が固定され、同時にシャンクヒール延長部(23)が固定され、ソールの各角度も固定される。
【選択図】
図8