(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】光学部品、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 3/00 20060101AFI20221227BHJP
B29C 33/42 20060101ALI20221227BHJP
G02B 3/08 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
G02B3/00 Z
B29C33/42
G02B3/08
(21)【出願番号】P 2017144150
(22)【出願日】2017-07-26
【審査請求日】2020-05-28
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】藤川 武
(72)【発明者】
【氏名】福井 貞之
【合議体】
【審判長】松波 由美子
【審判官】関根 洋之
【審判官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-199107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 3/00
G02B 3/08
B29C 33/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの
フレネルレンズ部と、その周辺部(
フレネルレンズ部は含まない)からなる、
平面図形状が矩形の、継ぎ目が存在しない光学部品であって、
前記周辺部の
一角の表面側と裏面側の互いにほぼ面対称となる位置にそれぞれ、凹凸で表現された、
表面側の裏面側に対する偏芯を認識可能な認識マークを有し、
前記周辺部の表面側と裏面側に存する2つの認識マークは互いに相似形であり、且つ一方が他方の10~90%の大きさである、光学部品。
【請求項2】
認識マークの平面図における形状が多角形又は円形である、請求項1に記載の光学部品。
【請求項3】
光学部品が、撮像レンズ、光拡散レンズ、又はプリズムである、請求項1
又は2に記載の光学部品。
【請求項4】
エポキシ樹脂を含むカチオン硬化性組成物の硬化物から成る、請求項1~
3の何れか1項に記載の光学部品。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の光学部品の製造方法であって、硬化性組成物を、下記光学部品の凹凸反転形状を有するモールドを使用して一体成型する工程、及び前記工程を経て得られた光学部品から
、表面側の裏面側に対する偏芯が基準値内の光学部品を選別する工程を含む、光学部品の製造方法。
光学部品:1つのフレネルレンズ部と、その周辺部(フレネルレンズ部は含まない)からなる、平面図形状が矩形の、継ぎ目が存在しない光学部品であって、
前記周辺部の一角の表面側と裏面側の互いに面対称となる位置にそれぞれ、凹凸で表現された、表面側の裏面側に対する偏芯を認識可能な認識マークを有し、
前記周辺部の表面側と裏面側に存する2つの認識マークは互いに相似形であり、且つ一方が他方の10~90%の大きさである
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像レンズや光拡散レンズ等の光学部品、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像レンズや光拡散レンズ等のレンズは、熱可塑性樹脂や熱又は光硬化性樹脂を、モールドを用いて成型することによって大量に製造されるが、これらの樹脂は硬化する際に収縮若しくは膨張することが知られており、樹脂の硬化収縮若しくは膨張によって形に歪みが生じ、偏芯が生じたレンズが一定の割合で混入する。また、成型用のモールドとして上型と下型の2部構成になっているものを使用する場合、レンズの薄型化、小型化が進んだ結果、上型と下型とを正確に閉じるよう調整することは非常に緻密な作業となった。そして、上型と下型にわずかでもズレが生じると、得られるレンズには偏芯が生じる。
【0003】
偏芯が生じたレンズは所期の光学特性が得られないため、これを多くのレンズの中から探し出し、排除することが必要となる。ここで、レンズの偏芯を検出する方法としては、光をレンズに通して、その曲がり方から検出する方法や、物理的にレンズの両面を測定してその中心値を比較する方法等が知られている。例えば特許文献1には、レーザープローブ式非接触三次元測定装置を使用して偏芯量を測定することが記載されている。しかし、これらの方法は、高価な装置を使用する必要がありコストが嵩むこと、より薄型化、より小型化したレンズ(特に、微細な構造を有するフレネルレンズ)においては、レンズを1つ1つ検出処理に付すことは非常に困難であり、且つ時間がかかるため、作業性が著しく低下することが問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レンズの偏芯を目視で検出できれば、検出処理に要するコストや時間を削減することができるが、人によって判断にばらつきが生じること、特に微細な構造を有するレンズ(例えば、フレネルレンズ)の場合は前記構造によって目視での検出が妨害されることが問題である。
【0006】
従って、本発明の目的は、フレネルレンズ等の微細な構造を有する場合でも、目視によって、偏芯がないことを瞬時に確認することができる光学部品を提供することにある。
本発明の他の目的は、フレネルレンズ等の微細な構造を有する場合でも、偏芯の発生を抑制することができ、偏芯が発生した場合は目視によって瞬時に検出して排除することができ、光学特性に優れた光学部品を選択的に製造することができる、光学部品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、光学部と、その周辺部とを有する光学部品について、硬化性組成物をモールドによる成型に付して当該光学部品を製造する際に、前記周辺部の表面側と裏面側の互いに面対称となる位置にそれぞれ、凹凸で表現された認識マークが形成されるように設計された、上型と下型との2部構成になっているモールドを使用すると、認識マークを合わせるように上型と下型とを閉じることで、素早く、且つズレを生じることなく正確に閉じることができ、モールドのズレによる偏芯を防止することができること、硬化性組成物が硬化する際に収縮や膨張することによる歪みが生じなかった場合は、表面側と裏面側の認識マークが位置ズレを生じることがなく、ほぼ面対称となる位置に存する光学部品が得られるが、硬化性組成物が硬化する際に収縮若しくは膨張して歪みが生じた場合は、表面側と裏面側の認識マークに位置ズレが生じた光学部品が得られることから、目視でも容易且つ迅速に、歪みが発生することにより偏芯が生じたレンズを検出することができること、光学部が微細な構造を有するレンズであっても、周辺部に形成された認識マークの位置ズレの有無によって、光学部に偏芯が発生しているか否かを判断することができることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、光学部と、その周辺部とを有する光学部品であって、前記周辺部の表面側と裏面側の互いにほぼ面対称となる位置にそれぞれ、凹凸で表現された、偏芯を認識可能な認識マークを有する、光学部品を提供する。
【0009】
本発明は、また、周辺部の表面側と裏面側に存する2つの認識マークは互いに相似形であり、且つ一方が他方の10~90%の大きさである、前記の光学部品を提供する。
【0010】
本発明は、また、認識マークの平面図における形状が多角形又は円形である、前記の光学部品を提供する。
【0011】
本発明は、また、光学部がレンズ部である、前記の光学部品を提供する。
【0012】
本発明は、また、光学部品が、撮像レンズ、光拡散レンズ、又はプリズムである、前記の光学部品を提供する。
【0013】
本発明は、また、エポキシ樹脂を含むカチオン硬化性組成物の硬化物から成る、前記の光学部品を提供する。
【0014】
本発明は、また、硬化性組成物を、下記光学部品の凹凸反転形状を有するモールドを使用して一体成型する工程、及び前記工程を経て得られた光学部品から偏芯が基準値内の光学部品を選別する工程を含む、光学部品の製造方法を提供する。
光学部品:光学部と、その周辺部とを有し、前記周辺部の表面側と裏面側の互いに面対称となる位置にそれぞれ、凹凸で表現された認識マークを有する
【発明の効果】
【0015】
本発明の光学部品は、光学部とその周辺部とを有する。また、前記周辺部の表面側と裏面側には認識マークを有し、これらの2つの認識マークがほぼ面対称な位置に存在する。これは、モールドの上型と下型とを閉じる際にズレを生じることなく、正確に閉じることができていること、光学部品の形成材料である硬化性組成物が硬化する際に歪みが発生しなかったことを示し、偏芯を有さず(若しくは、偏芯が基準値内であり)、光学特性に優れることを示す。
また、本発明の光学部品が、硬化性組成物として、エポキシ樹脂を含むカチオン硬化性組成物の硬化物から成る光学部品である場合は、透明性及び耐熱性に優れ、リフロー半田(特に、鉛フリー半田)付けにより基板実装することができ、優れた作業効率で当該光学部品を搭載した光学装置を製造することができる。また、耐熱性が求められる車載用電子機器にも使用することができる。
本発明の光学部品は、例えば、携帯電話、スマートフォンをはじめとするモバイル電子機器のセンサー用レンズやカメラ用レンズとして好適に使用することができる。
また、本発明の製造方法によれば、モールドの上型と下型とをモールドの認識マークを目印にして閉じることによって容易に、且つ正確に閉じることができるため、型がずれて閉じられることによって引き起こされる偏芯を防止することができる。その上、得られた光学部品の周辺部の表面側と裏面側に形成された2つの認識マークに位置ズレが発生しているか否かを目視等で確認することにより、瞬時に光学部品の偏芯を検出することができ、従来、光学部品の偏芯の検出に費やしていたコストや時間を大幅に削減することができ、高品質の光学部品を選別して提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の光学部品の一例を示す模式平面図(表面側(a)と裏面側(b))、及び前記光学部品のA-A’の位置における模式断面図(c)である。
【
図2】本発明の光学部品を真上から見た場合における認識マークが面対称にある場合の模式図(a)と、認識マークに位置ズレが発生した場合の模式図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[光学部品]
本発明の光学部品は、光学部と、その周辺部によって構成され、前記周辺部の表面側と裏面側の互いにほぼ面対称となる位置にそれぞれ、凹凸で表現された、偏芯を認識可能な認識マークを有する。認識マークがほぼ面対称となる位置に存在するということは、モールドの上型と下型とを閉じる際にズレを生じることなく、正確に閉じることができていること、及び硬化の際に歪みが発生しなかったことを意味し、これにより、偏芯が無いか或いは極めて小さく抑制された状態であり、光軸にズレがないことがわかる。
【0018】
認識マークの平面図における形状としては、特に制限されることがないが、認識マークの形成が容易であり、且つ偏芯の有無を確認し易い形状であることが好ましく、例えば多角形(三角形、四角形(正方形、長方形)等)や円形が好ましい。また、認識マークには中心点を通る線(例えば、割線等)を設けてもよい。認識マークに前記線を設けることにより(特に、2つの認識マークを真上から見た際に、前記線が互いに直交するような向きに設けることにより)、認識マークの位置ズレの判断をより一層容易なものとすることができる。
【0019】
2つの認識マークは互いに相似形であることが、偏芯を目視で検出し易い点で好ましい。また、2つの認識マークは、一方が他方の10~90%の大きさ(10~90%の範囲に含まれる一点の大きさ)であることが、偏芯を目視で検出し易い点で好ましい。2つの認識マークが全く同じ形で同じ大きさである場合は、完全に重なって見える場合に偏芯の有無を瞬時に判断することが困難となる場合がある。
【0020】
認識マークの大きさとしては、特に制限されることがないが、周辺部に納まる大きさであり、且つ偏芯の有無を確認し易い大きさであることが好ましく、認識マークの平面図(真上から見た図)における直径(認識マークが多角形の場合は外接円の直径)は、例えば0.05~0.5mm、好ましくは0.05~0.4mmである。
【0021】
認識マークの凹凸は、例えば認識マークが凹で表現されている場合、その深さは、例えば0.01~0.5mmの範囲であることが偏芯を目視で検出し易い点で好ましい。一方、認識マークが凸で表現されている場合、その高さは、例えば0.01~0.3mmの範囲であることが偏芯を目視で検出し易い点で好ましい。
【0022】
本発明において、「表面側と裏面側に設けられた認識マークを、互いにほぼ面対称となる位置に有する」とは、平面上に、光学部品(透明な素材で形成されている場合)を、当該光学部品を設置し、これを真上から見た場合に、表面側と裏面側に設けられた2つの認識マークのズレ(認識マークの中心点間の距離)が、認識マーク(2つの認識マークの大きさが異なる場合は大きい方の認識マーク)の平面図における形状が円形の場合は直径の30%以内、平面図における形状が多角形の場合は外接円の直径の30%以内である場合を示す。また、前記認識マークに位置ズレが生じたとは、表面側と裏面側に設けられた2つの認識マークが互いに面対称となる位置に存在せず、認識マークのズレ(認識マークの中心点間の距離)が、上記範囲を外れる場合を示す。
【0023】
また、本発明の光学部品の認識マークは、モールド成型によって光学部品を製造する際に、モールドの形状が転写されることによって形成されたものであり、モールド成型後に付け足されたものではない。また、本発明の光学部品の構成要素である、光学部、周辺部、及び凹凸で表現された認識マークは一体成型されたものであり、これらの構成要素間に継ぎ目は存在しない。
【0024】
更に、前記周辺部は、例えば、光学部に直結する鍔部と、前記鍔部を囲むように形成された枠部とで構成されていても良く、認識マークは周辺部の中の枠部の表面側と裏面側の互いにほぼ面対称となる位置に存在していても良い。
【0025】
光学部品(光学部とその周辺部とを有する)の平面図(真上から見た図)における形状は矩形であることが好ましく、その長辺(正方形である場合は、その一辺)の長さは、例えば10~0.5mm、好ましくは7~0.5mmである。また、前記光学部の平面図(真上から見た図)における形状は光学特性に応じた形状を有し、円形でも矩形でも特に制限はないが、その長辺又は直径の長さ(=幅が一番広い箇所を測定したときの長さ)は、例えば5~0.1mm、好ましくは4~0.2mmである。更に、光学部品の最も厚い部分の厚みは例えば3~0.3mm、最も薄い部分の厚みは例えば1.5~0.05mmである。
【0026】
光学部はレンズ部であることが好ましい。また、レンズ部としては特に制限されないが、フレネルレンズ形状を有すること、すなわち、山形形状のプリズムを2個以上(好ましくは2~100個、特に好ましくは5~100個)有することが、より薄型化への要求に対応することができる点で好ましい。
【0027】
本発明の光学部品は透明性に優れることが好ましく、光学部品の形成材料である硬化物(例えば、後述の硬化性組成物の硬化物)の光線透過率(波長450nm、硬化物の厚み100μmの場合)は、70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上である。
【0028】
本発明の光学部品は、耐熱性に優れることが好ましく、光学部品の形成材料である硬化物(例えば、後述の硬化性組成物の硬化物)のガラス転移温度(Tg)は100℃以上が好ましい。
【0029】
更に、本発明の光学部品は、脆さの発現を抑制して、欠けたり割れたりすることを防止することができる点において、光学部品の形成材料である硬化物(例えば、後述の硬化性組成物の硬化物)の破断ひずみが、例えば0.1%以上(好ましくは0.3%以上、特に好ましくは0.5%以上)であるものが好ましい。また、破断ひずみの上限は、例えば30%、好ましくは20%、特に好ましくは10%、最も好ましくは5%、とりわけ好ましくは3%である。尚、破断ひずみは、JIS-K7162:1994に準拠して、試験片5B型を用いて測定できる。
【0030】
[光学部品の製造方法]
本発明の光学部品の製造方法は、硬化性組成物を、下記光学部品の凹凸反転形状を有するモールドを使用して一体成型する工程、及び前記工程を経て得られた光学部品から偏芯が基準値内の光学部品を選別する工程を含む。
光学部品:光学部と、その周辺部とを有し、前記周辺部の表面側と裏面側の互いに面対称となる位置にそれぞれ、凹凸で表現された認識マークを有する
【0031】
モールドとして、光学部品の反転形状の凹部を複数個有するものを使用した場合は、一体成型する工程を経て、複数個の光学部品が接合部を介して連結したアレイ状光学部品(例えば、複数個の光学部品が接合部を介して連結したアレイ状光学部品であって、その全形がウェハー状(=薄くスライスした円盤状)である光学部品)が得られる。この場合は、一体成型する工程後に、アレイ状光学部品をダイシング等によって個片化する個片化工程を設けることが好ましい。
【0032】
前記モールドを使用すれば、モールドの上型と下型とを閉じる際に認識マークを目印にすることにより、ズレを生じることなく、正確に閉じることができ、型がずれて閉じられることによって引き起こされる偏芯を防止することができる。そして、硬化性組成物が硬化する際に収縮や膨張することによる歪みが生じなかった場合は、表面側と裏面側の認識マークをほぼ面対称となる位置に有する光学部品が得られる。一方、硬化性組成物が硬化する際に収縮若しくは膨張して歪みが生じた場合は、表面側と裏面側の認識マークに位置ズレが生じた光学部品が得られる。
【0033】
一体成型する工程の後(アレイ状光学部品が得られた場合は、更に、個片化工程の後)は、得られた光学部品を選別する工程(選別工程)において、偏芯が基準値内の光学部品を選別する。光学部品の偏芯が基準値内か否かは、光学部品の表面側と裏面側の認識マークの位置ズレの程度によって判断することができ、表面側と裏面側の認識マークがほぼ面対称となる位置に存する光学部品は偏芯が基準値内である。また、前記認識マークの位置ズレは、カメラや顕微鏡等の検出装置を利用してもよいが、目視によって容易に確認することができる。
【0034】
本発明の製造方法によれば、表面側と裏面側の認識マークをほぼ面対称となる位置に有する、偏芯を有さず(若しくは、偏芯が基準値内に抑制され)、光学特性に優れた光学部品のみを選抜して提供することができ、製品の信頼性を高めることができる。光学部がフレネルレンズのように微細な構造を有する場合でも、目視によって、偏芯の発生を容易且つ迅速に検出し、選別することができる。また、2つの認識マークの位置ズレを確認することによって偏芯の発生を容易に判断することができるため、人によって判断にばらつきが生じるのを抑制することもできる。更に、簡易な検出装置を使用してのオートメーション化も可能である。
【0035】
(硬化性組成物)
前記硬化性組成物は、少なくとも硬化性化合物を含有する。また、硬化性化合物以外にも、例えば、重合開始剤や必要に応じて他の成分を1種又は2種以上含有することができる。前記硬化性組成物は、硬化性化合物に、重合開始剤や必要に応じて他の成分を混合することによって調製することができる。
【0036】
前記硬化性組成物は、加熱処理及び/又は紫外線照射を行う前は低粘度であることが、モールドの充填性に優れ、気泡の発生を低減することができ、光学特性に優れた光学部品を製造することができる点で好ましく、25℃、せん断速度20(1/s)における粘度は、例えば0.01~10.0Pa・s、好ましくは0.1~5.0Pa・s、特に好ましくは0.1~1.0Pa・sである。尚、粘度はレオメーター(商品名「PHYSICA UDS200」、Anton Paar社製)を用いて測定できる。
【0037】
更に、前記硬化性組成物は、その硬化物の破断ひずみが、例えば0.1%以上(好ましくは0.3%以上、特に好ましくは0.5%以上)であるものが好ましい。また、破断ひずみの上限は、例えば30%、好ましくは20%、特に好ましくは10%、最も好ましくは5%、とりわけ好ましくは3%である。硬化物の破断ひずみが上記範囲であると、光学部品に脆さが発現することを抑制することができ、モールドから離型する際等に、欠けたり割れたりすることを防止することができる。すなわち、離型性に優れる。
【0038】
更にまた、前記硬化性組成物は、加熱処理及び/又は紫外線照射を行うことにより速やかに硬化して、光学特性に優れた硬化物を形成することができるものが好ましい。本発明においては、なかでも、酸素存在下でも優れた硬化性を有する点でカチオン硬化性組成物が好ましく、特に、カチオン硬化性化合物としてエポキシ樹脂を含む組成物が、光学特性(特に、透明性)に優れ、高硬度と耐熱性とを兼ね備えた硬化物が得られる点で好ましい。
【0039】
(硬化性化合物)
カチオン硬化性化合物としてのエポキシ樹脂としては、分子内に1以上のエポキシ基(オキシラン環)を有する公知乃至慣用の化合物を使用することができ、例えば、脂環式エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等が挙げられる。本発明においては、なかでも、耐熱性、及び透明性に優れた硬化物を形成することができる点で、1分子内に脂環構造と、官能基としてのエポキシ基を2個以上有する、多官能脂環式エポキシ化合物が好ましい。
【0040】
前記多官能脂環式エポキシ化合物としては、具体的には、
(i)脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(すなわち、脂環エポキシ基)を有する化合物
(ii)脂環に直接単結合で結合したエポキシ基を有する化合物
(iii)脂環とグリシジル基とを有する化合物
等が挙げられる。
【0041】
上述の(i)脂環エポキシ基を有する化合物としては、例えば、下記式(i)で表される化合物が挙げられる。
【化1】
【0042】
上記式(i)中、Xは単結合又は連結基(1以上の原子を有する二価の基)を示す。上記連結基としては、例えば、二価の炭化水素基、炭素-炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド基、これらが複数個連結した基等が挙げられる。尚、式(i)中のシクロヘキセンオキシド基には、置換基(例えば、アルキル基等)が結合していてもよい。
【0043】
上記二価の炭化水素基としては、炭素数が1~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、二価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。炭素数が1~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等が挙げられる。上記二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)等が挙げられる。
【0044】
上記炭素-炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基(「エポキシ化アルケニレン基」と称する場合がある)におけるアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、プロペニレン基、1-ブテニレン基、2-ブテニレン基、ブタジエニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基等の炭素数2~8の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニレン基等が挙げられる。特に、上記エポキシ化アルケニレン基としては、炭素-炭素二重結合の全部がエポキシ化されたアルケニレン基が好ましく、より好ましくは炭素-炭素二重結合の全部がエポキシ化された炭素数2~4のアルケニレン基である。
【0045】
上記式(i)で表される化合物の代表的な例としては、(3,4,3’,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、1,2-エポキシ-1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)エタン、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)プロパン、1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)エタンや、下記式(i-1)~(i-10)で表される化合物等が挙げられる。下記式(i-5)中のLは炭素数1~8のアルキレン基であり、中でも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基等の炭素数1~3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。下記式(i-5)、(i-7)、(i-9)、(i-10)中のn1~n8は、それぞれ1~30の整数を示す。
【0046】
【0047】
上述の(i)脂環エポキシ基を有する化合物には、エポキシ変性シロキサンも含まれる。エポキシ変性シロキサンとしては、例えば、下記式(i’)で表される構成単位を有する、鎖状又は環状のポリオルガノシロキサンが挙げられる。
【化4】
【0048】
上記式(i’)中、R
1は下記式(1a)又は(1b)で表されるエポキシ基を含む置換基を示し、R
2はアルキル基又はアルコキシ基を示す。
【化5】
【0049】
前記式(1a)(1b)中のR1a、R1bは、同一又は異なって、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基を示し、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、デカメチレン基等の炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。
【0050】
エポキシ変性シロキサンのエポキシ当量(JIS K7236に準拠)は、例えば100~400、好ましくは150~300である。
【0051】
エポキシ変性シロキサンとしては、例えば、下記式(i’-1)で表されるエポキシ変性環状ポリオルガノシロキサン(商品名「X-40-2670」、信越化学工業(株)製)等の市販品を用いることができる。
【化6】
【0052】
上述の(ii)脂環に直接単結合で結合したエポキシ基を有する化合物としては、例えば、下記式(ii)で表される化合物等が挙げられる。
【化7】
【0053】
式(ii)中、R'は、p価のアルコールの構造式からp個の水酸基(-OH)を除いた基(p価の有機基)であり、p、n9はそれぞれ自然数を表す。p価のアルコール[R'-(OH)p]としては、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノール等の多価アルコール(炭素数1~15のアルコール等)等が挙げられる。pは1~6が好ましく、n9は1~30が好ましい。pが2以上の場合、それぞれの角括弧(外側の括弧)内の基におけるn9は同一でもよく異なっていてもよい。上記式(ii)で表される化合物としては、具体的には、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物[例えば、商品名「EHPE3150」((株)ダイセル製)等]等が挙げられる。
【0054】
上述の(iii)脂環とグリシジル基とを有する化合物としては、例えば、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールF型エポキシ化合物、水添ビフェノール型エポキシ化合物、水添フェノールノボラック型エポキシ化合物、水添クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAの水添クレゾールノボラック型エポキシ化合物、水添ナフタレン型エポキシ化合物、トリスフェノールメタン型エポキシ化合物の水添物等の水素化芳香族グリシジルエーテル系エポキシ化合物等が挙げられる。
【0055】
多官能脂環式エポキシ化合物としては、表面硬度が高く、耐熱性及び透明性に優れた硬化物が得られる点で、(i)脂環エポキシ基を有する化合物が好ましく、上記式(i)で表される化合物(特に、(3,4,3',4'-ジエポキシ)ビシクロヘキシル)が、硬化収縮性が低く、偏芯を生じ難い点において特に好ましい。
【0056】
前記硬化性組成物は、カチオン硬化性化合物としてエポキシ樹脂以外にも他のカチオン硬化性化合物を含有していても良く、例えば、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物等を含有することができる。また、硬化性化合物としてカチオン硬化性化合物以外にも、ラジカル硬化性化合物を含有していてもよい。
【0057】
前記硬化性組成物に含まれる硬化性化合物全量(100重量%)に占めるエポキシ樹脂の割合は、例えば50重量%以上であることが、表面硬度が高く、透明性に優れた硬化物が得られる点で好ましく、より好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、最も好ましくは80重量%以上である。尚、上限は、例えば100重量%、好ましくは90重量%である。
【0058】
また、前記硬化性組成物に含まれる硬化性化合物全量(100重量%)に占める(i)脂環エポキシ基を有する化合物の割合は、例えば20重量%以上であることが、表面硬度が高く、透明性に優れた硬化物が得られる点で好ましく、より好ましくは30重量%以上、特に好ましくは40重量%以上である。尚、上限は、例えば70重量%、好ましくは60重量%である。
【0059】
また、前記硬化性組成物に含まれる硬化性化合物全量(100重量%)に占める式(i)で表される化合物の割合は、例えば10重量%以上であることが、表面硬度が高く、透明性に優れた硬化物が得られる点で好ましく、より好ましくは15重量%以上、特に好ましくは20重量%以上である。尚、上限は、例えば50重量%、好ましくは40重量%である。
【0060】
(重合開始剤)
前記重合開始剤には、光重合開始剤や熱重合開始剤が含まれる。本発明においては、なかでも、光重合開始剤を含有することが、より速やかに硬化物を形成することができる点で好ましい。従って、前記硬化性組成物がカチオン硬化性化合物を含有する場合、重合開始剤としては、光カチオン重合開始剤を含有することが好ましい。
【0061】
光カチオン重合開始剤は、光の照射によって酸を発生して、硬化性組成物に含まれる硬化性化合物(特に、カチオン硬化性化合物)の硬化反応を開始させる化合物であり、光を吸収するカチオン部と酸の発生源となるアニオン部からなる。
【0062】
光カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩系化合物、ヨードニウム塩系化合物、スルホニウム塩系化合物、ホスホニウム塩系化合物、セレニウム塩系化合物、オキソニウム塩系化合物、アンモニウム塩系化合物、臭素塩系化合物等が挙げられる。
【0063】
本発明においては、なかでも、スルホニウム塩系化合物を使用することが、硬化性に優れた硬化物を形成することができる点で好ましい。スルホニウム塩系化合物のカチオン部としては、例えば、(4-ヒドロキシフェニル)メチルベンジルスルホニウムイオン、トリフェニルスルホニウムイオン、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムイオン、4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル-4-ビフェニリルフェニルスルホニウムイオン、トリ-p-トリルスルホニウムイオン等のアリールスルホニウムイオン(特に、トリアリールスルホニウムイオン)が挙げられる。
【0064】
光カチオン重合開始剤のアニオン部としては、例えば、[(Y)sB(Phf)4-s]-(式中、Yはフェニル基又はビフェニリル基を示す。Phfは水素原子の少なくとも1つが、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種で置換されたフェニル基を示す。sは0~3の整数である)、BF4
-、[(Rf)tPF6-t]-(式中、Rfは水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基を示す。tは0~5の整数を示す)、AsF6
-、SbF6
-、SbF5OH-等が挙げられる。
【0065】
本発明における光カチオン重合開始剤としては、例えば、(4-ヒドロキシフェニル)メチルベンジルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル-4-ビフェニリルフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、[4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル]-4-ビフェニリルフェニルスルホニウム フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル-4-ビフェニリルフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、[4-(2-チオキサントニルチオ)フェニル]フェニル-2-チオキサントニルスルホニウム フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、商品名「サイラキュアUVI-6970」、「サイラキュアUVI-6974」、「サイラキュアUVI-6990」、「サイラキュアUVI-950」(以上、米国ユニオンカーバイド社製)、「Irgacure250」、「Irgacure261」、「Irgacure264」(以上、BASF社製)、「CG-24-61」(チバガイギー社製)、「オプトマーSP-150」、「オプトマーSP-151」、「オプトマーSP-170」、「オプトマーSP-171」(以上、(株)ADEKA製)、「DAICAT II」((株)ダイセル製)、「UVAC1590」、「UVAC1591」(以上、ダイセル・サイテック(株)製)、「CI-2064」、「CI-2639」、「CI-2624」、「CI-2481」、「CI-2734」、「CI-2855」、「CI-2823」、「CI-2758」、「CIT-1682」(以上、日本曹達(株)製)、「PI-2074」(ローディア社製、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート トリルクミルヨードニウム塩)、「FFC509」(3M社製)、「BBI-102」、「BBI-101」、「BBI-103」、「MPI-103」、「TPS-103」、「MDS-103」、「DTS-103」、「NAT-103」、「NDS-103」(以上、ミドリ化学(株)製)、「CD-1010」、「CD-1011」、「CD-1012」(以上、米国、Sartomer社製)、「CPI-100P」、「CPI-101A」(以上、サンアプロ(株)製)等の市販品を使用できる。
【0066】
重合開始剤の含有量は、硬化性組成物に含まれる硬化性化合物(特に、カチオン硬化性化合物)100重量部に対して、例えば0.1~5.0重量部となる範囲である。重合開始剤の含有量が0.1重量部以上であると、優れた硬化性を発揮することができ、硬化不良となることを抑制することができる。また、重合開始剤の含有量が5.0重量部以下であると、硬化物の着色を抑制して、透明性に優れた硬化物を形成することができる。
【0067】
(その他の成分)
他の成分としては、例えば、溶剤、酸化防止剤、表面調整剤、光増感剤、消泡剤、レベリング剤、カップリング剤、界面活性剤、難燃剤、紫外線吸収剤、着色剤等が挙げられる。他の成分の含有量は、硬化性組成物全量の、例えば20重量%以下、好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。
【0068】
前記硬化性組成物としては、例えば、商品名「CELVENUS OUH106」((株)ダイセル製)等の市販品を使用することもできる。
【0069】
(モールド)
前記モールドとしては、シリコーンモールドを使用することが、離型性に優れる点で好ましい。シリコーンモールドは、シリコーン樹脂組成物の硬化物から成る。また、前記モールドは、上型と下型の2部構成になっていることが好ましい。
【0070】
前記モールドは、その表面に離型剤が塗布されたものであってもよい。前記離型剤としては、例えば、フッ素系離型剤、シリコーン系離型剤、ワックス系離型剤等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0071】
上型と下型の2部構成になっているモールドを用いて硬化性組成物を成型する方法としては、例えば、モールドの上型と下型の少なくとも一方に硬化性組成物を塗布し、上型と下型とを閉じた上で硬化性組成物を硬化させ、その後、上型と下型を剥離する方法が挙げられる。
【0072】
硬化性組成物の塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法、スクリーン印刷法等を利用することができる。
【0073】
硬化性組成物の硬化は、例えば光硬化性組成物の場合は、紫外線を照射することによって行われる。紫外線照射を行う際の光源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯等が用いられる。露光量は、光源の種類、光源と塗布面との距離、その他の条件により異なるが、例えば500~3000mJ/cm2程度である。紫外線照射後は、必要に応じて加熱(ポストキュア)を行って硬化の促進を図ってもよい。
【0074】
硬化性組成物の硬化後は、得られた硬化物をモールドから離型することにより、光学部品が得られる。モールドとしてシリコーンモールドを使用すると、光学部品の剥離が容易であり、剥離時に光学部品が破損することを防止できる点で好ましい。
【実施例】
【0075】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0076】
調製例1
SYLGARD184(ビニル基含有ポリオルガノシロキサン、東レ・ダウコーニング(株)製)にSYLGARD184 Curing agent(ヒドロシリル基含有ポリオルガノシロキサンとヒドリシリル化触媒とを含む、東レ・ダウコーニング(株)製)を加えて撹拌後、金属製の型に流し込み、100℃で2時間硬化した。その後、金属型から離型し、レンズ(レンズ部と、その周辺部からなり、前記周辺部の表面側と裏面側の互いに面対称となる位置に認識マークを有する)の反転形状の凹部を縦10列×横10列有するシリコーンモールド(上型と下型)を得た。
【0077】
実施例1
調製例1で得られたシリコーンモールドの下型及び上型に硬化性組成物(商品名「CELVENUS OUH106」、カチオン硬化性化合物と光カチオン重合開始剤とを含有し、カチオン硬化性化合物全量の80重量%がエポキシ樹脂(多官能脂環式エポキシ化合物を含む)である、25℃、せん断速度20(1/s)における粘度:0.2Pa・s、硬化物の破断ひずみ(JIS-K7162:1994に準拠した方法で、試験片5B型を用いて測定):0.8%、硬化物の光線透過率(450nm):90%以上、硬化物のTg:100℃以上、(株)ダイセル製)を塗布し、上型と下型とを認識マークを目印にして閉じた後に、UV照射(露光量:3000mJ/cm2)を行い、離型してレンズが縦10列×横10列に配列し、これらのレンズが互いに接合部を介して連結した構成を有するアレイ状レンズを得た。
【0078】
得られたアレイ状レンズを支持テープに貼着し、ブレードを使用して接合部を切断して、一辺の長さが4mmの個片化物(レンズ部(直径3.5mm)と、その周辺部からなり、前記周辺部の表面側と裏面側に認識マークを有する)を100個を得た。得られた個片化物100個について、認識マークの位置ズレを目視で観察し、位置ズレが生じた個片化物を排除した。排除した個片化物を、偏芯測定機(商品名「NEXIV」、(株)ニコンインステック製)を用いて測定したところ、偏芯が認められた。また、認識マークに位置ズレが生じなかった個片化物を前記偏芯測定機を用いて測定したところ、偏芯を有さず、光学特性に優れていることが分かった。以上より、認識マークのズレを観察することによって偏芯の有無を容易に判別できることが確認できた。
【符号の説明】
【0079】
1 表面側認識マーク
2 裏面側認識マーク
3 光学部(特に、レンズ部)
4 鍔部
5 枠部
6 周辺部