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  • 特許-食品移載システム及び食品把持装置 図1
  • 特許-食品移載システム及び食品把持装置 図2A
  • 特許-食品移載システム及び食品把持装置 図2B
  • 特許-食品移載システム及び食品把持装置 図3
  • 特許-食品移載システム及び食品把持装置 図4
  • 特許-食品移載システム及び食品把持装置 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】食品移載システム及び食品把持装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20221227BHJP
   B07C 5/00 20060101ALI20221227BHJP
   B07C 5/16 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
B07C5/00
B07C5/16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017184104
(22)【出願日】2017-09-25
(65)【公開番号】P2019058967
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】慶應義塾
(73)【特許権者】
【識別番号】508134337
【氏名又は名称】シブヤ精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127384
【弁理士】
【氏名又は名称】坊野 康博
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】野崎 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】大西 公平
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 佑貴
(72)【発明者】
【氏名】福島 聡
(72)【発明者】
【氏名】二宮 和則
(72)【発明者】
【氏名】栗田 充隆
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-335886(JP,A)
【文献】国際公開第2017/017751(WO,A1)
【文献】特開2013-086229(JP,A)
【文献】実開平06-063291(JP,U)
【文献】特開2010-005732(JP,A)
【文献】特開平08-323678(JP,A)
【文献】特開平10-217172(JP,A)
【文献】国際公開第2015/041046(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
B07C 5/00- 5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送される前記食品に関するデータを取得するデータ取得手段と、
前記データ取得手段の取得結果に基づいて、前記食品の位置または品質の少なくともいずれかを含む個体情報を取得する個体情報取得手段と、
前記個体情報に基づいて、把持対象の前記食品を把持する把持手段と、
前記把持手段における食品を把持する可動部材が開閉する範囲のいずれかの位置である、前記可動部材の開閉位置を検出する位置検出手段と、
前記把持手段を所定位置に移動させる移動機構と、
前記位置検出手段の検出結果に基づいて、前記把持手段における前記可動部材が開閉する範囲のいずれかの位置である前記可動部材の開閉位置と、当該開閉位置における前記食品に対する接触力とを対応付けて制御する制御手段と、
を備え
前記制御手段は、前記食品の把持動作に対応して設定された、制御エネルギーを速度または位置のエネルギーと力のエネルギーとに割り当てる変換を行うことにより、前記把持手段における動作を制御することを特徴とする食品移載システム。
【請求項2】
前記食品の品質について、複数段階の設定値を記憶する記憶手段を備え、
前記制御手段は、前記個体情報取得手段の取得結果に基づいて、前記記憶手段に記憶された前記設定値の中から、把持対象の前記食品の品質に対応する前記設定値を読み出し、当該設定値に基づいて、前記把持手段における動作を制御することを特徴とする請求項1に記載の食品移載システム。
【請求項3】
前記把持手段は、把持している前記食品の重量を計測する重量計測部をさらに備え、
前記重量計測部は、前記把持手段が前記食品を把持して持ち上げる動作を行うための制御におけるパラメータに基づいて、前記食品の重量を算出し、
前記制御手段は、前記重量計測部が算出した前記食品の重量に基づいて、前記食品の重量を判定することを特徴とする請求項1または2に記載の食品移載システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記個体情報取得手段の取得結果に基づいて、前記把持手段が前記食品を把持する際の接触位置を制御することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の食品移載システム。
【請求項5】
把持対象の食品に関して当該食品の品質を含む個体情報を取得する個体情報取得手段と、
前記個体情報に基づいて、把持対象の前記食品を把持する把持手段と、
前記把持手段における食品を把持する可動部材が開閉する範囲のいずれかの位置である、前記可動部材の開閉位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段の検出結果に基づいて、前記把持手段における前記可動部材が開閉する範囲のいずれかの位置である前記可動部材の開閉位置と、当該開閉位置における前記食品に対する接触力とを対応付けて制御する制御手段と、
を備え
前記制御手段は、前記食品の把持動作に対応して設定された、制御エネルギーを速度または位置のエネルギーと力のエネルギーとに割り当てる変換を行うことにより、前記把持手段における動作を制御することを特徴とする食品把持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果物や野菜等の個々に形状が不均一な農産物や、唐揚げや魚の切り身、惣菜等の個々に形状が不均一な食品を移載する食品移載システム及び食品把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、果物や野菜等の果菜を自動的に移載する技術が知られている。
例えば、特許文献1には、青果物の大きさや硬さに合わせて青果物を吸着した時の吸引力を調節して、青果物を移送する吸着移送装置に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-024811公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術においては、青果物を吸着して保持することから、形状や大きさが不定形な果菜を確実に保持することが困難である。また、軟弱な果菜や腐敗部分を有する果菜を吸着した場合、吸引力によって果菜を傷付けたり、腐敗部分の切片によって吸引の詰まりを発生させたりする可能性がある。
また、果菜に限らず形状や大きさが不定形な総菜等の食品においても個々の形状が不均一であるため、その取り扱いが困難である。そのため、このような食品の取り扱いを自動化することは難しく、お弁当の詰め合わせ作業等は人手により行っているのが現状である。
このように、従来の技術においては、果菜や総菜等の形状や大きさが不定形の食品を適切に保持することが困難であった。
【0005】
本発明の課題は、形状や大きさが不定形の食品をより適切に保持する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る食品移載システムは、
食品を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送される前記食品に関するデータを取得するデータ取得手段と、
前記データ取得手段の取得結果に基づいて、前記食品の位置または品質の少なくともいずれかを含む個体情報を取得する個体情報取得手段と、
前記個体情報に基づいて、把持対象の前記食品を把持する把持手段と、
前記把持手段における食品を把持する可動部材が開閉する範囲のいずれかの位置である、前記可動部材の開閉位置を検出する位置検出手段と、
前記把持手段を所定位置に移動させる移動機構と、
前記位置検出手段の検出結果に基づいて、前記把持手段における前記可動部材が開閉する範囲のいずれかの位置である前記可動部材の開閉位置と、当該開閉位置における前記食品に対する接触力とを対応付けて制御する制御手段と、
を備え
前記制御手段は、前記食品の把持動作に対応して設定された、制御エネルギーを速度または位置のエネルギーと力のエネルギーとに割り当てる変換を行うことにより、前記把持手段における動作を制御する
また、第2の発明は、前記請求項1に記載した発明において、前記食品の品質について、複数段階の設定値を記憶する記憶手段を備え、前記制御手段は、前記個体情報取得手段の取得結果に基づいて、前記記憶手段に記憶された前記設定値の中から、把持対象の前記食品の品質に対応する前記設定値を読み出し、当該設定値に基づいて、前記把持手段における動作を制御することを特徴とするものである。
さらに、第3の発明は、前記請求項1または請求項2に記載した発明において、前記把持手段は、把持している前記食品の重量を計測する重量計測部をさらに備え、前記重量計測部は、前記把持手段が前記食品を把持して持ち上げる動作を行うための制御におけるパラメータに基づいて、前記食品の重量を算出し、前記制御手段は、前記重量計測部が算出した前記食品の重量に基づいて、前記食品の重量を判定することを特徴とするものである。
さらに、第4の発明は、前記請求項1ないし請求項3に記載した発明において、前記制御手段は、前記個体情報取得手段の取得結果に基づいて、前記把持手段が前記食品を把持する際の接触位置を制御することを特徴とするものである。
さらに、第5の発明は、食品把持装置であって、把持対象の食品に関して当該食品の品質を含む個体情報を取得する個体情報取得手段と、
前記個体情報に基づいて、把持対象の前記食品を把持する把持手段と、
前記把持手段における食品を把持する可動部材が開閉する範囲のいずれかの位置である、前記可動部材の開閉位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段の検出結果に基づいて、前記把持手段における前記可動部材が開閉する範囲のいずれかの位置である前記可動部材の開閉位置と、当該開閉位置における前記食品に対する接触力とを対応付けて制御する制御手段と、
を備え
前記制御手段は、前記食品の把持動作に対応して設定された、制御エネルギーを速度または位置のエネルギーと力のエネルギーとに割り当てる変換を行うことにより、前記把持手段における動作を制御することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、形状や大きさが不定形の食品をより適切に保持する技術を提供することができる。
また、把持動作に対応して設定された効率のよい把持動作が可能となる。
さらに、請求項の発明では、予め設定されている基準値のデータに基づきハンドの動作を制御することで、把持対象の食品個別の条件に適合した把持動作を行うことが可能となる。
さらに、請求項の発明では、ハンドの把持動作により食品の重量を判定し、判定した食品の選別先に食品を移送することができる。
さらに、請求項の発明では、食品の品質に応じて把持する箇所を変更することができ、食品をより適切に保持することができる。
さらに、請求項の発明では、食品をより適切に保持する技術を提供することができる。
また、把持動作に対応して設定された効率のよい把持動作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る果菜移載システム1の構成を示す模式図である。
図2A】ハンドユニット53の構成を示す模式図である。
図2B図2Aの状態からハンドユニット53が回転した状態を示す模式図である。
図3】制御装置10の機能的構成を示すブロック図である。
図4】把持パラメータ決定部16bにおける制御則の概念を示す模式図である。
図5】果菜移載システム1において実行される果菜選別処理の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を果菜移載システムに応用した実施形態について、図面を参照して説明する。
本発明に係る果菜移載システム及び果菜把持装置は、選別される果菜を撮影装置によって撮影し、撮影された画像から、個別の果菜の大きさ、形状、特性(色や傷害の程度、腐敗部分及び生傷の有無等)、重量といった品質情報を取得する。そして、把持ロボットにより果菜を把持する際に、取得された果菜の品質情報に基づいて、予め設定されている把持動作の基準値を初期値として果菜把持装置の把持動作を開始し、果菜把持装置が果菜を把持する際は、果菜把持装置における所定の位置の情報(例えば、アクチュエータの移動子の位置情報等)または果菜把持装置が果菜から受ける力の情報に基づいて、リアルハプティクスを応用した位置(または速度)及び力の制御を行う。
これにより、把持対象の果菜の大きさ、形状あるいは表面状態等の個別の条件に適合した把持動作を行うことができ、果菜を適切に保持することが可能となる。
なお、本実施形態においては、把持ロボットによって、コンベアで搬送される果菜の中から、格外の個体は加工食品用として、及び腐敗を有する個体は廃棄用としてピックアップして除外すると共に、把持した際に重量を判定し、格外の個体であっても重量不足で加工食品用として使用できないものを廃棄用として除外する場合を例に挙げて説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る果菜移載システム1の構成を示す模式図である。
図1に示すように、果菜移載システム1は、制御装置10と、搬送装置20と、照明装置30と、撮影装置40と、把持ロボット(果菜把持装置)50と、を備えている。
制御装置10は、果菜移載システム1全体を制御する。例えば、制御装置10は、演算処理装置、メモリ、ストレージデバイス及び通信インターフェース等を備える情報処理装置によって構成され、演算処理装置によってプログラムを実行することにより、果菜移載システム1における各種機能を実現する。一例として、制御装置10は、PLC(Programmable Logic Controller)あるいはPC(Personal Computer)等の情報処理装置によって構成することができる。
具体的には、制御装置10は、搬送装置20の動作(駆動、停止、搬送速度等)、照明装置30のオン/オフ及び撮影装置40の撮影動作を制御する。
【0011】
また、制御装置10は、後述する果菜選別処理を実行することにより、把持ロボット50の把持動作を含む果菜の選別動作(移送)を制御する。このとき、制御装置10は、把持ロボット50における所定の位置(または速度)の情報に基づいて、リアルハプティクスを応用した位置(または速度)及び力の制御を行うことにより、果菜の把持動作を制御する。なお、果菜選別処理を実行することにより、制御装置10において実現される機能的な構成については後述する。
【0012】
搬送装置20は、果菜を多列で搬送するコンベアを構成し、搬送体21と、受動プーリー22と、駆動プーリー23と、搬送用モータ24と、ブレーキ板25とを備えている。
搬送体21は、選別される果菜の供給を受け、撮影装置40による撮影領域を経た後、把持ロボット50によるピックアップ領域に果菜を搬送する。
【0013】
本実施形態における搬送体21は、回転軸が平行となるように配列された複数の回転ローラ21aを備えており、これら複数の回転ローラ21aが全周にわたって設置された環状の構造を有している。搬送体21において、複数の回転ローラ21aは、両端を環状のチェーンあるいはベルトによってそれぞれ回転可能に保持されている。これら複数の回転ローラ21aは、選別される果菜が隙間から落下しない配列間隔で設置されており、本実施形態においては、複数の回転ローラ21aの間隔を数センチメートル程度としている。
【0014】
また、搬送体21は、受動プーリー22と駆動プーリー23とに巻き掛けられており、駆動プーリー23の回転軸は、ベルト部材によって搬送用モータ24の回転軸と連結されている。
したがって、搬送用モータ24が回転すると、その回転が駆動プーリー23に伝達され、駆動プーリー23に巻き掛けられている搬送体21は、受動プーリー22との間で周回することにより、連続的な搬送動作を行う。
【0015】
ブレーキ板25は、搬送体21の通過領域における特定の位置(搬送される果菜を回転させる位置)であって、複数の回転ローラ21aの下面側(果菜の載置面に対する裏面側)に設置され、各回転ローラ21aの表面(円筒面)との間に摩擦を生じさせる。即ち、搬送体21が搬送動作を行うと、ブレーキ板25に接触した回転ローラ21aは、ブレーキ板25との摩擦により従動して回転することとなり、この回転により、ブレーキ板25が設置された領域を通過する果菜を回転させる作用が発生する。以下、ブレーキ板25が設置された領域を適宜「回転領域」と称する。なお、ブレーキ板25が設置された領域以外において、回転ローラ21aは、ほぼ回転することなく果菜を載置した状態で移動する。以下、ブレーキ板25が設置された領域以外を適宜「非回転領域」と称する。
【0016】
照明装置30は、可視光を発する可視光ランプと、紫外光を発する紫外光ランプとを備え、制御装置10の制御に従って、搬送される果菜に可視光及び紫外光を照射する。本実施形態において、照明装置30は、果菜の搬送方向において、撮影装置40の上流及び下流にそれぞれ備えられている。
【0017】
撮影装置40は、可視光画像及び紫外光画像を撮影可能なデジタルカメラによって構成され、制御装置10の制御に従って、可視光画像及び紫外光画像をそれぞれ撮影する。可視光画像は、主に果菜の位置、大きさ及び形状を認識するために用いられ、紫外光画像は、主に果菜の特性を検出(表面または内部の腐敗部分や生傷の検出等)するために用いられる。
なお、搬送される果菜の形状、大きさ及び表面/内部の状態は、撮影装置40によって撮影した画像に基づいて認識されることから、制御装置10は、搬送される果菜を追跡可能な時間間隔で撮影するよう撮影装置40を制御する。一例として、撮影装置40によって、1/30秒間隔で、可視光画像と紫外光画像とを交互に撮影すること等が可能である。
【0018】
把持ロボット50は、3軸のパラレルリンクロボット(デルタ型の多関節ロボット)を備えている。本実施形態においては、2台の把持ロボット50が設置されており、これら2台の把持ロボット50が分担して果菜の選別作業を行う。なお、把持ロボット50は、果菜をピックアップ可能な形態であれば、6軸のパラレルリンクロボットや垂直多関節ロボット等、他の方式のロボットを採用することも可能である。
【0019】
具体的には、把持ロボット50は、筐体50aから延びる3つのアーム51a~51cと、各アーム51a~51cの伸縮を制御する伸縮用モータ52a~52cと、アーム51a~51cの先端に設置されたハンドユニット53と、ハンドユニット53を水平方向に回転させる回転用モータ54と、を備えている。
図2Aは、ハンドユニット53の構成を示す模式図である。
図2Aに示すように、ハンドユニット53は、果菜把持用のツールとして構成され、果菜に接触して保持作用を生じさせる可動部材53a~53cと、可動部材53a~53cの開閉を制御する開閉用モータ53dと、ハンドユニット53を垂直方向に移動させる垂直モータ53eと、を備えている。
【0020】
本実施形態において、把持ロボット50の伸縮用モータ52a~52c、ハンドユニット53の開閉用モータ53d、垂直モータ53e及び回転用モータ54は、制御装置10の制御に従って動作する。
例えば、伸縮用モータ52a~52cは、制御装置10の制御に従って、ハンドユニット53が把持対象の果菜の位置に移動するように、各アーム51a~51cの伸縮を制御する。
【0021】
また、開閉用モータ53dは、制御装置10の制御に従って、可動部材53a~53cが把持対象の果菜に応じてリアルハプティクスに基づく開閉位置及び接触力となるように、可動部材53a~53cの開閉動作を制御する。本実施形態において、開閉用モータ53dは、モータ回転軸の回転位置を検出する位置検出センサ53d-1を備えている。位置検出センサ53d-1の検出結果は、可動部材53a~53dの開閉位置を示す情報であり、後述する果菜選別処理における入力(後述する把持パラメータ決定部16bの入力)として用いられる。また、可動部材53a~53cの把持動作の初期値(位置及び力)は、可視光画像及び紫外光画像の解析結果に応じて、果菜の大きさ及び特性等の品質に応じた値(予め設定されている基準値のデータ)に設定される。そして、ハンドユニット53が把持対象の果菜を把持した後(把持動作の開始後)は、制御装置10が開閉用モータ53dにおけるモータ回転軸の回転位置及び回転トルクを逐次演算することにより、可動部材53a~53cの開閉位置及び接触力が制御される。
この結果、本実施形態におけるハンドユニット53は、把持対象の果菜の大きさ、形状あるいは柔らかさ等の個別の条件に適合した把持動作を行うことが可能となる。
【0022】
また、垂直モータ53eは、位置検出センサ53e-1を備えており、制御装置10の制御に従って、回転用モータ54と可動部材53a~53cの距離を一定に保つように制御される。さらに、垂直モータ53eは、把持対象の果菜の重量に応じてリアルハプティクスに基づく制御(ハンドユニット53を持ち上げる動作における位置(または速度)あるいは力の少なくともいずれかの制御)を行うことにより、重量を計測することができるようになっている。即ち、垂直モータ53eが果菜を把持した際に流れる駆動電流等に基づいて、把持している果菜の重さを検出することができる。また、垂直モータ53eの負荷または位置検出センサ53e-1の検出結果等から、ハンドユニット53が垂直方向において物体(果菜等)に接触したことを判定することができる。
【0023】
回転用モータ54は、ハンドユニット53を水平方向に回転させることにより、把持対象の果菜に対する可動部材53a~53cの位置を変化させる。
図2Bは、図2Aの状態からハンドユニット53が回転した状態を示す模式図である。
図2Bに示すように、図2Aの状態から、ハンドユニット53が果菜に対して回転することにより、果菜の腐敗部分に可動部材53a~53cが接触する可能性を低減でき、可動部材53a~53cに腐敗部分の断片が付着することを抑制できる。
また、密集して流れてくる果菜から把持対象の果菜を把持する際、可動部材53a~53cを果菜の隙間に位置させることで、周りの果実に可動部材53a~53cが接触することを防止することができる。
【0024】
[機能的構成]
次に、果菜移載システム1における制御装置10の機能的構成について説明する。
図3は、制御装置10の機能的構成を示すブロック図である。
図3に示すように、制御装置10が果菜選別処理を実行することにより、機能的構成として、画像取得部11と、画像解析部12と、項目判定部13と、果菜特定部14と、ロボット制御部15と、ハンドユニット制御部16と、重量判定部17と、搬送制御部18と、制御データ記憶部19と、が形成される。
【0025】
画像取得部11は、撮影装置40に対して、可視光画像と紫外光画像とを交互に撮影させる撮影指示を出力し、撮影された可視光画像及び紫外光画像を取得する。
画像解析部12は、可視光画像を解析(オブジェクト認識及び色彩検出等)することにより、搬送体21上で果菜が分布している位置、果菜の大きさ、色や傷害、及び形状を認識する。また、画像解析部12は、紫外光画像を解析(輝度検出等)することにより、果菜の水腐れ等の腐敗部分及び生傷の有無を認識する。本実施形態において、画像解析部12は、果菜の大きさ、色や傷害、及び形状を認識する場合、搬送装置20における回転領域の可視光画像を参照し、果菜の水腐れ等の腐敗部や生傷の検出等を認識する場合、搬送装置20における回転領域の紫外光画像を参照する。また、画像解析部12は、搬送装置20における回転領域の可視光画像に撮影されている各果菜と紫外光画像に撮影されている各果菜とを対応付けて、果菜を個別に追跡する。そして、画像解析部12は、搬送装置20における非回転領域の可視光画像(果菜の回転が停止した状態の画像)を参照して、ピックアップ領域に搬送される各果菜の位置を認識する。これにより、個別の果菜の大きさ、形状、特性(色や傷害の程度、腐敗部分及び生傷の有無等)が認識される。さらに、画像解析部12は、これらの認識結果(位置及び品質)を個体情報として記憶する。
【0026】
項目判定部13は、画像解析部12の解析結果に基づいて、規格に基づく果菜の評価項目を判定する。なお、項目判定部13によって判定される項目には、果菜の大きさ及び形状(規格におけるサイズ及び形状の分類)、果菜の特性(色や傷害の程度、腐敗部分及び生傷の有無)、果菜の重量等の品質に関する項目が含まれる。なお、本実施形態において、果菜の重量については、後述する重量判定部17によって判定される。
【0027】
果菜特定部14は、ピックアップの対象とする果菜を各把持ロボット50に割り当て、各把持ロボット50によってピックアップする果菜を特定する。具体的には、果菜特定部14は、搬送体21によってピックアップ領域に搬送される各果菜において、2台の把持ロボット50それぞれがピックアップして選別する対象の果菜の位置を逐次特定する。ピックアップ領域における果菜の位置は、画像解析部12によって認識された非回転領域における果菜の位置を基に、搬送装置20の搬送速度を加味することで特定することができる。本実施形態においては、搬送体21によってピックアップ領域に搬送される果菜の中から、格外の個体及び腐敗を有する個体のみを把持ロボットによりピックアップして除外し、下流側に設置された作業場(商品となる個体を選別する作業場等)へ果菜を搬送する。
【0028】
ロボット制御部15は、各アーム51a~51cの伸縮を制御する伸縮用モータ52a~52cの駆動信号を出力することにより、果菜特定部14によって特定された各果菜の位置に把持ロボット50のハンドユニット53を移動させる。また、ロボット制御部15は、リアルハプティクスに基づく垂直方向の位置(または速度)あるいは力の少なくともいずれかの制御に従って、垂直モータ53eの駆動信号を出力することにより、ハンドユニット53を垂直方向に移動させる。この場合、ロボット制御部15は、垂直モータ53eの回転軸の現在位置(あるいはハンドユニット53の垂直方向の現在位置等、回転軸と対応する現在位置)を入力として、位置(または速度)あるいは力の少なくとも一方の領域における演算(例えば、後述する式(1)及び(2)に従う演算)を行うことにより、垂直モータ53eの動作を表すパラメータを決定する。また、ロボット制御部15は、項目判定部13による果菜の評価項目の判定結果及び重量判定部17による果菜の重量の判定結果に基づいて、果菜の選別先(「腐敗果」、「格外」等)を決定し、決定した果菜の選別先に果菜を移送する。なお、本実施形態においては、搬送装置20におけるピックアップ領域の側方に果菜の選別先に対応する収容箱が設置されている。
【0029】
ハンドユニット制御部16は、把持対象の果菜の大きさ、形状あるいは柔らかさ等の個別の条件に適合した把持動作を行う。
具体的には、ハンドユニット制御部16は、回転用モータ駆動部16aと、把持パラメータ決定部16bと、開閉用モータ駆動部16cと、可動部材位置取得部16dと、把持成功/失敗判定部16eと、を備えている。
【0030】
回転用モータ駆動部16aは、果菜の把持動作における回転用モータ54の駆動を制御する。具体的には、回転用モータ駆動部16aは、画像解析部12による果菜の品質(水腐れ等の腐敗部分及び生傷の有無)の解析結果に基づいて、ハンドユニット53における可動部材53a~53cが把持対象の果菜の腐敗部分あるいは生傷の位置に接触しないように、ハンドユニット53を水平方向に回転させる。また、回転用モータ駆動部16aは、画像解析部12による果菜の位置からの可動部材53a~53cが周囲の果菜に接触しないようにハンドユニット53を水平方向に回転させる。
【0031】
把持パラメータ決定部16bは、開閉用モータ53dの回転軸の現在位置(あるいは可動部材53a~53cの現在位置等の回転軸と対応する現在位置)を入力として、位置(または速度)あるいは力の少なくとも一方の領域における演算を行うことにより、開閉用モータ53dの動作を表すパラメータを決定する。なお、把持パラメータ決定部16bは、把持動作の開始時には、画像解析部12によって認識された果菜の品質に基づいて、制御データ記憶部19に記憶されている把持動作の基準値を読み出し、読み出した基準値を初期値として、開閉用モータ53dの回転軸の位置及び力(回転トルク)を制御する。
【0032】
図4は、リアルハプティクス技術による把持パラメータ決定部16bにおける制御則の概念を示す模式図である。
図4に示すように、把持パラメータ決定部16bにおける制御則は、開閉用モータ53d(制御対象システム)と、力・速度割当変換ブロック110と、理想力源ブロック120あるいは理想速度(位置)源ブロック130の少なくとも一つと、逆変換ブロック140とを含む制御則として表される。
【0033】
力・速度割当変換ブロック110は、開閉用モータ53dの動作の基準となる値(基準値)と、開閉用モータ53dの回転軸の現在位置とを入力とする座標変換を定義している。この座標変換は、基準値及び現在速度(または位置)を要素とする入力ベクトルを速度(または位置)の制御目標値を算出するための速度(または位置)からなる出力ベクトルに変換すると共に、基準値及び現在の力を要素とする入力ベクトルを力の制御目標値を算出するための力からなる出力ベクトルに変換するものである。具体的には、力・速度割当変換ブロック110における座標変換は、次式(1)及び(2)のように表される。
【0034】
dX2=[H]・dX1 (1)
F2=[H]・F1 (2)
【0035】
ただし、式(1)において、dは一階微分を表す演算子、dX2は速度の状態値を導出するための速度ベクトル、dX1は、基準値及び開閉用モータ53dの作用に基づく速度(開閉用モータ53dの回転軸の速度、または、可動部材53a~53c等、開閉用モータ53dの回転軸と対応する部分の速度)を要素とするベクトル、Hは把持機能を表す変換行列である。また、式(2)において、dF2(ただし、dは二階微分を表す演算子)は力の状態値を導出するための力ベクトル、dF1は基準値及び開閉用モータ53dの作用に基づく力(開閉用モータ53dの回転軸の回転トルク、または、可動部材53a~53c等、開閉用モータ53dの回転軸と対応する部分の力)を要素とするベクトルである。
【0036】
理想力源ブロック120は、力・速度割当変換ブロック110によって定義された座標変換に従って、力の領域における演算を行うブロックである。理想力源ブロック120においては、機能別力・速度割当変換ブロック110によって定義された座標変換に基づく演算を行う際の力に関する目標値が設定されている。この目標値は、把持対象の果菜の個別の条件に適合させて把持する把持機能に対応して、固定値または可変値として設定される。
【0037】
理想速度(位置)源ブロック130は、力・速度割当変換ブロック110によって定義された座標変換に従って、速度(位置)の領域における演算を行うブロックである。理想速度(位置)源ブロック130においては、力・速度割当変換ブロック110によって定義された座標変換に基づく演算を行う際の速度(位置)に関する目標値が設定されている。この目標値は、把持対象の果菜の個別の条件に適合させて把持する把持機能に対応して、固定値または可変値として設定される。
【0038】
逆変換ブロック140は、速度(位置)及び力の領域の値を開閉用モータ53dへの入力の領域の値(例えば電圧値または電流値等)に変換するブロックである。
これにより、開閉用モータ53dにおける位置の情報が力・速度割当変換ブロック110に入力されると、位置の情報に基づいて得られる速度(位置)及び力の情報を用いて、力・速度割当変換ブロック110において、把持対象の果菜の個別の条件に適合させて把持する把持機能に応じた位置及び力の領域それぞれの制御則が適用される。そして、理想力源ブロック120において、機能に応じた力の演算が行われ、理想速度(位置)源ブロック130において、機能に応じた速度(位置)の演算が行われ、力及び速度(位置)それぞれに制御エネルギーが分配される。
【0039】
理想力源ブロック120及び理想速度(位置)源ブロック130における演算結果は、開閉用モータ53dの制御目標を示す情報となり、これらの演算結果が逆変換ブロック140において開閉用モータ53dの入力値とされる。
その結果、開閉用モータ53dは、力・速度割当変換ブロック110によって定義された機能(把持対象の果菜の個別の条件に適合させて把持する把持機能)に従う動作を実行し、目的とするハンドユニット53の把持動作が実現される。即ち、把持ロボット50は、式(1)及び(2)に従って、リアルハプティクスに基づく把持動作を行い、把持対象の果菜の大きさ、形状あるいは表面/内部の状態等の個別の条件に適合した把持動作が実現される。
【0040】
図3に戻り、開閉用モータ駆動部16cは、果菜の把持動作における開閉用モータ53dの駆動を制御する。例えば、開閉用モータ駆動部16cは、把持動作における制御の初期値として、予め設定されている把持動作を表すパラメータを用いて制御を行い、把持動作の開始後は、把持パラメータ決定部16bによって決定されたパラメータ(上記制御則に基づいて逐次算出されるパラメータ)を用いて制御を行う。
【0041】
可動部材位置取得部16dは、位置検出センサ53d-1から開閉用モータ53dの回転軸の現在位置(あるいは可動部材53a~53cの現在位置等の回転軸と対応する現在位置)を取得する。なお、開閉用モータ53dの回転軸の現在位置は、例えば、ロータリーエンコーダ等によって取得することができる。また、可動部材53a~53cの現在位置を取得する場合、可動部材53a~53cの端部の位置を検出するエンコーダ等によって取得することができる。モータの電気的特性からエンコーダ等のセンサを用いずに位置を推定することも可能である。
【0042】
把持成功/失敗判定部16eは、ハンドユニット53が把持対象とした果菜の実際の把持に成功したか否かの判定を行う。この判定結果は、果菜移載システム1における選別作業の結果のデータの一部として記憶したり、把持パラメータ決定部16bが開閉用モータ53dの動作を表すパラメータを決定するアルゴリズムの補正(例えば、式(1)及び(2)における変換行列Hの要素の補正等)に用いたりすることができる。なお、把持が成功した場合、把持ロボット50によって、果菜が所定の収容箱へ移載される。
【0043】
重量判定部17は、ハンドユニット53が把持した果菜の重量を判定する。本実施形態において、重量判定部17は、図4に示した制御則の概念を示す模式図と同様に、垂直モータ53eに関して力・速度割当変換ブロック110と、理想力源ブロック120あるいは理想速度(位置)源ブロック130の少なくとも一つと、逆変換ブロック140とを有しており、上記のリアルハプティクス技術により垂直モータ53e(位置検出センサ53e-1)から取得される位置と力のパラメータから、把持している果菜の重量を判定する。重量判定部17によって果菜の重量が判定される結果、果菜のサイズ、形状、特性及び重量等、規格の判定項目の判定が全て完了し、把持された果菜の選別先が確定する。なお、重量判定部17は、判定した重量を個体情報に含めて記憶する。
【0044】
搬送制御部18は、搬送用モータ24の回転速度及び回転トルクを制御することにより、搬送装置20における果菜の搬送を制御する。また、搬送制御部18は、把持ロボット50のピックアップ領域に搬送される果菜の個数と、把持ロボット50によって選別された果菜の個数とに基づいて、把持ロボット50による果菜の選別のペースが搬送装置20による果菜の搬送のペースを下回っているか否かを判定する。そして、搬送制御部18は、把持ロボット50による果菜の選別のペースが搬送装置20による果菜の搬送のペースを下回っていると判定した場合、搬送装置20を一時的に停止(または速度を低下)させる。
【0045】
制御データ記憶部19は、果菜選別処理を実行するために予め設定されたデータ(予め設定されている把持動作の基準値を表すパラメータ)や、果菜選別処理の実行によって生成された各種データ(把持パラメータ決定部16bによって決定されたパラメータ等)を記憶する。本実施形態において、把持動作の基準値を表すパラメータは、果菜の大きさ及び果菜の特性について、それぞれ複数段階に分類した値が用意されている。例えば、果菜の大きさについて、Sサイズ、Mサイズ、Lサイズそれぞれに対応する位置の基準値が予め設定されている。同様に、果菜の特性について、良品(腐敗部分がないもの)、不良品(腐敗部分があるもの)それぞれに対応する力の基準値が予め設定されている。把持パラメータ決定部16bは、項目判定部13によって判定された果菜の大きさ及び特性に応じて、制御データ記憶部19に記憶されている基準値のパラメータを初期値として読み出し、把持動作を開始する。
【0046】
[動作]
次に、果菜移載システム1の動作を説明する。
図5は、果菜移載システム1において実行される果菜選別処理の流れを説明するフローチャートである。
果菜選別処理は、制御装置10において、果菜選別処理の実行を指示する操作が行われることに対応して開始される。
【0047】
ステップS1において、画像取得部11は、撮影装置40に対して、可視光画像と紫外光画像とを交互に撮影させる撮影指示を出力し、撮影された可視光画像及び紫外光画像を取得する。
ステップS2において、画像解析部12は、可視光画像を解析(オブジェクト認識及び色彩検出等)することにより、搬送体21上で果菜が分布している位置、果菜の大きさ、色や傷害、及び形状を認識する。
【0048】
ステップS3において、画像解析部12は、紫外光画像を解析(輝度検出等)することにより、果菜の水腐れ等の腐敗部分及び生傷の有無を認識する。
ステップS4において、項目判定部13は、画像解析部12の解析結果に基づいて、規格に基づく果菜の評価項目を判定する。このとき判定される項目には、果菜の大きさ及び形状(規格におけるサイズ及び形状の分類)、果菜の特性(色や傷害の程度、腐敗部分及び生傷の有無)が含まれる。
【0049】
ステップS5において、果菜特定部14は、ピックアップの対象とする果菜を各把持ロボット50に割り当て、各把持ロボット50によってピックアップする果菜を特定する。このとき、果菜特定部14は、搬送体21によってピックアップ領域に搬送される各果菜において、2台の把持ロボット50それぞれがピックアップして選別する対象の果菜の位置を特定する。
【0050】
ステップS6において、ロボット制御部15は、各アーム51a~51cの伸縮を制御する伸縮用モータ52a~52cの駆動信号を出力することにより、果菜特定部14によって特定された各果菜の位置に把持ロボット50のハンドユニット53を移動させる。また、ロボット制御部15は、リアルハプティクスに基づく垂直方向の位置(または速度)あるいは力の少なくともいずれかの制御に従って、垂直モータ53eの駆動信号を出力することにより、ハンドユニット53を垂直方向に移動させる。
ステップS7において、ハンドユニット制御部16は、把持対象の果菜の大きさ、形状あるいは柔らかさ等の個別の条件に適合した把持動作を行う。このとき、ハンドユニット制御部16は、図4に示す制御則に従い、把持対象の果菜の個別の条件に適合させて把持する把持機能を実現する。
【0051】
ステップS8において、ハンドユニット制御部16(把持成功/失敗判定部16e)は、ハンドユニット53が把持対象とした果菜の実際の把持に成功したか否かの判定を行う。
ハンドユニット53が把持対象とした果菜の実際の把持に成功した場合、ステップS8においてYESと判定されて、処理はステップS9に移行する。
一方、ハンドユニット53が把持対象とした果菜の実際の把持に成功していない場合、ステップS8においてNOと判定されて、処理はステップS11に移行する。
【0052】
ステップS9において、重量判定部17は、ハンドユニット53が把持した果菜の重量を判定する。
ステップS10において、ロボット制御部15は、項目判定部13による果菜の評価項目の判定結果及び重量判定部17による果菜の重量の判定結果に基づいて、果菜の選別先(「腐敗果」、「格外」等)を決定し、決定した果菜の選別先に果菜を移送する。
【0053】
ステップS11において、搬送制御部18は、把持ロボット50のピックアップ領域に搬送される果菜の個数と、把持ロボット50によって選別された果菜の個数とに基づいて、把持ロボット50による果菜の選別のペースが搬送装置20による果菜の搬送のペースを下回っているか否かを判定する。
把持ロボット50による果菜の選別のペースが搬送装置20による果菜の搬送のペースを下回っている場合、ステップS11においてYESと判定されて、処理はステップS12に移行する。
一方、把持ロボット50による果菜の選別のペースが搬送装置20による果菜の搬送のペースを下回っていない場合、ステップS11においてNOと判定されて、処理はステップS1に移行する。
【0054】
ステップS12において、搬送制御部18は、搬送装置20を一時的に停止(または速度を低下)させる。
ステップS12の後、制御装置10において、果菜選別処理の終了を指示する操作が行われるまで、果菜選別処理が繰り返される。
【0055】
以上のように、本実施形態に係る果菜移載システム1は、搬送装置20によって搬送される果菜の大きさ、形状あるいは特性等の品質に関する情報(品質情報)を、撮影装置40によって撮影された画像等を基に解析する。そして、把持ロボット50は、リアルハプティクスに基づく制御により、把持対象の果菜の大きさ、形状あるいは表面状態等の個別の条件に適合した把持動作を行う。
そのため、果菜移載システム1においては、形状や大きさが不定形な果菜をより確実に保持することができる。また、軟弱な果菜であっても、表面を傷付けることなく、果菜の柔らかさに応じた把持力で保持することができる。
したがって、果菜移載システム1によれば、果菜を適切に保持することが可能となる。
【0056】
また、把持ロボット50は、力センサを用いることなく、個別の果菜に応じた把持力を出力するため、果菜を把持した際の振動の収束等に影響されることなく、速やかに把持力を決定して、果菜を移送することが可能となる。なお、本実施形態におけるリアルハプティクスに基づく制御を補助するために、力センサを備えることとしてもよい。
また、把持パラメータ決定部16bは、把持動作の開始時には、画像解析部12によって認識された果菜の大きさ及び果菜の特性に基づいて、制御データ記憶部19に記憶されている把持動作の基準値を読み出し、読み出した基準値を初期値として、開閉用モータ53dの回転軸の位置及び力(回転トルク)を制御する。
したがって、把持対象の果菜によらず、より適切な把持力で果菜を移送することができる。例えば、腐敗や過熟等によって極端に柔らかい果菜であっても、果菜を潰したり崩壊させたりすることなく、適切な把持動作を実現することができる。
さらに、果菜を移送中に、果菜の姿勢が変化しても、把持力を保持するようにハンドユニット53が動作して果菜を落とすことなく把持し続けることができる。
【0057】
なお、本発明は、本発明の効果を奏する範囲で変形、改良等を適宜行うことができ、上述の実施形態に限定されない。
例えば、上述の実施形態において、果菜移載システム1が、コンベアで搬送される果菜の中から、格外の個体及び腐敗を有する個体を把持ロボットによりピックアップして除外すると共に、果菜の規格毎に箱詰めする下流側に設置された作業場(商品となる個体を選別する作業場等)へ果菜を搬送する場合を例に挙げて説明したが、これに限られない。
即ち、果菜移載システム1が、コンベアで搬送される果菜の中から、格外の個体及び腐敗を有する個体を把持ロボット50によりピックアップして除外すると共に、商品となる個体を把持して重量を計測し、各等階級毎に直接箱詰めすることとしてもよい。この場合、果菜移載システム1における処理ラインを簡素化できる。
また、上述の実施形態においては搬送装置上に直接果菜を乗せ搬送しているが、コンテナ内に収容された果菜を搬送し、対象となる個体を直接把持して、規格毎に選別して箱詰めすることとしてもよい。
また、把持ロボット50によって、選果機で事前に規格毎に選別された果菜を把持して箱詰めする作業を行うこととしてもよい。
【0058】
上述の実施形態において、把持ロボット50を2台設置することとして説明したが、これに限られない。即ち、選別する果菜の数や必要とされる選別のペース等を加味して、より多くの把持ロボット50を設置したり、1台の把持ロボット50で果菜を選別したりすることができる。
【0059】
また、上述の実施形態において、ハンドユニット53の具体的な形態は、図2に示す構成に限られるものではなく、種々の構成とすることができる。例えば、ハンドユニット53における可動部材53a~53cを各種形状とすることが可能である。一例として、可動部材53a~53cの先端を内側に屈曲させた形状とし、果菜の保持をより容易なものとすることができる。
【0060】
また、上述の実施形態において、式(1)及び(2)における変換行列は目的に応じて変化させることができ、この変換行列を変化させることにより、把持パラメータ決定部16bが決定する開閉用モータ53dの動作を表すパラメータを簡単に変化させることができる。即ち、変換行列を変化させることで、可動部材53a~53cが弾性力によって把持力を生成している状態や一定の把持力を維持する状態等、目的に応じた動作を表すパラメータを出力することが可能である。
【0061】
また、上述の実施形態において、撮影装置40が可視光画像及び紫外光画像を撮影する場合を例に挙げて説明したが、これに限られない。即ち、果菜の外観や特性等の品質を認識できる方法であれば、例えば、レーザー光を照射することにより、果菜の形状を表す画像(形状データ)や果菜同士の重なりを表す3次元データを取得したり、赤外線によって果菜の糖度を取得したりする等、果菜に関する種々のデータを取得する方法を用いることが可能である。
さらに、上述の実施形態においては品質情報の複数を用いて開閉用モータ53dの動作や移送先を決定しているが、目的に応じて品質情報の少なくとも一つを用いることとしてもよい。
【0062】
また、上述の実施形態に記載された例を適宜組み合わせて、本発明を実施することが可能である。
上述の実施形態における制御のための処理は、ハードウェア及びソフトウェアのいずれにより実行させることも可能である。
即ち、上述の処理を実行できる機能が果菜移載システム1に備えられていればよく、この機能を実現するためにどのような機能構成及びハードウェア構成とするかは上述の例に限定されない。
【0063】
さらに、本実施形態は果菜把持装置において説明したが、不定形の食品を扱う食品把持装置にも応用できる。
【0064】
なお、上記実施形態は、本発明を適用した一例を示しており、本発明の技術的範囲を限定するものではない。即ち、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができ、上記実施形態以外の各種実施形態を取ることが可能である。本発明が取ることができる各種実施形態及びその変形は、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1 果菜移載システム、10 制御装置、11 画像取得部、12 画像解析部、13 項目判定部、14 果菜特定部、15 ロボット制御部、16 ハンドユニット制御部、16a 回転用モータ駆動部、16b 把持パラメータ決定部、16c 開閉用モータ駆動部、16d 可動部材位置取得部、16e 把持成功/失敗判定部、17 重量判定部、18 搬送制御部、19 制御データ記憶部、20 搬送装置、21 搬送体、21a 回転ローラ、22 受動プーリー、23 駆動プーリー、24 搬送用モータ、25 ブレーキ板、30 照明装置、40 撮影装置、50 把持ロボット(移動機構)、50a 筐体、51a~51c アーム、52a~52c 伸縮用モータ、53 ハンドユニット、53a~53c 可動部材、53a~53c 可動部材、53d 開閉用モータ、53d-1,53e-1 位置検出センサ、53e 垂直モータ、54 回転用モータ、110 力・速度割当変換ブロック、120 理想力源ブロック、130 理想速度(位置)源ブロック、140 逆変換ブロック
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5