(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】ビールテイスト飲料の香味向上方法
(51)【国際特許分類】
C12G 3/08 20060101AFI20221227BHJP
C12G 3/021 20190101ALI20221227BHJP
【FI】
C12G3/08
C12G3/021
(21)【出願番号】P 2018077441
(22)【出願日】2018-04-13
【審査請求日】2021-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 友洋
(72)【発明者】
【氏名】新井 健司
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-528070(JP,A)
【文献】特表2007-514428(JP,A)
【文献】特開平10-084891(JP,A)
【文献】BrewNote, 2017.07.29 [検索日 2022.02.16], インターネット:<URL: https://brewnot.tokyo/2017/07/newenglandipa/>
【文献】Japan Beer Times, 2017.06.30 [検索日 2022.02.16], インターネット:<URL: https://japanbeertimes.com/2017/06/beer-styles-new-england-style-hazy-ipas/?mode=ja>
【文献】Eur. Food Res. Technol.,2017年,Vol.243, No.3,pp.447-454
【文献】J. Inst. Brew.,2014年,Vol.120,pp.390-398
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G 3/08
C12G 3/021
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビールテイスト飲料のマイルドさを向上させるとともに泡持ちを向上させる方法であって、
原料に未製麦オーツ麦と未
製麦ライ麦とを含有させるビールテイスト飲料の香味向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビールテイスト飲料の香味向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲用者の多様な嗜好に応えるべく、多くの種類のビールテイスト飲料やその製造方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、発酵原料の麦芽比率が50質量%未満であり、乳酸含有量が300~400ppmであり、リナロール含有量が30~50ppbであることを特徴とする、発酵麦芽飲料が記載されている。
そして、特許文献1には、この発酵麦芽飲料はビールらしい酸味と華やかな香りを有すると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のようなビールテイスト飲料は、特有の強い苦味を消費者に与える飲料であるため、一般的に、飲み口(飲んだときの感じ)は尖った香味を呈する。
このような飲み口の尖った香味は、ビールテイスト飲料を飲み慣れている消費者は抵抗をあまり感じないが、飲み慣れていない若い消費者にとっては、ビールテイスト飲料を敬遠する要因の一つとなっていると思われる。
【0006】
よって、本発明者らは、ビールテイスト飲料のマイルドさを向上させる(味を丸くし飲み口を良くする)ことによって、さらに消費者に喜ばれる商品を提供できるのではと考えた。
【0007】
そこで、本発明は、マイルドさを向上させるビールテイスト飲料の香味向上方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ビールテイスト飲料のマイルドさを向上させるために、様々な物質や特性に焦点をあてて数多くの実験を行った。その結果、原料に特定の物質を含有させることによって、前記した課題を解決できることを見出し、本発明を創出した。
【0009】
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1)ビールテイスト飲料のマイルドさを向上させるとともに泡持ちを向上させる方法であって、原料に未製麦オーツ麦と未製麦ライ麦とを含有させるビールテイスト飲料の香味向上方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るビールテイスト飲料の香味向上方法は、原料に未製麦オーツ麦を含有させることから、ビールテイスト飲料のマイルドさを向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るビールテイスト飲料、ビールテイスト飲料の製造方法、及び、ビールテイスト飲料の香味向上方法を実施するための形態(本実施形態)について説明する。
【0014】
[ビールテイスト飲料]
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料に未製麦オーツ麦を含有する飲料である。
ここで、ビールテイスト飲料とは、ビール様(風)飲料とも呼ばれ、ビールのような味わいを奏する、つまり、ビールを飲用したような感覚を飲用者に与える飲料である。
【0015】
(未製麦オーツ麦:原料)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料に未製麦オーツ麦を含有する。
この「未製麦オーツ麦」とは、発芽させて麦芽をつくるという製麦処理を施していないオーツ麦である。なお、このオーツ麦は粉砕されていてもよい。そして、オーツ麦(Avena sativa)とは、イネ科カラスムギ属の穀物であり、燕麦とも呼ばれる。
そして、ビールテイスト飲料の原料に未製麦オーツ麦を含有させることによって、ビールテイスト飲料のマイルドさを向上させるだけでなく、渋味と雑味とを抑制させることもできる。
【0016】
なお、本実施形態に係るビールテイスト飲料は、栄養価の高い食材であるオーツ麦を原料に含有することによって、単にビールテイスト飲料の栄養価を高めることができるだけでなく、あまり健康的な飲料というイメージのないビールテイスト飲料について健康系の飲料という印象を付加することが可能となり、消費者に対する訴求力を大幅に高めることができる。
【0017】
(未製麦オーツ麦:原料中の比率)
本実施形態に係るビールテイスト飲料の未製麦オーツ麦比率は、1%(重量%)以上が好ましく、5%以上、7%以上、8%以上がより好ましい。未製麦オーツ麦比率が所定値以上であることによって、より確実に、ビールテイスト飲料のマイルドさを向上させ、渋味と雑味とを抑制させることができる。
本実施形態に係るビールテイスト飲料の未製麦オーツ麦比率は、50%以下が好ましく、30%以下、20%以下、13%以下、12%以下がより好ましい。未製麦オーツ麦比率が所定値以下であることによって、ビールテイスト飲料のマイルドさの向上という効果と、渋味と雑味との抑制という効果とをしっかりと発揮させることができる。
なお、この「未製麦オーツ麦比率」とは、後述の麦芽比率と同様の方法で算出できる比率であって、詳細には、ビールテイスト飲料の製造に用いられる原料のうち水及びホップ以外のものの全重量に占める未製麦オーツ麦の重量の比率である。
【0018】
(未製麦ライ麦:原料)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料に未製麦ライ麦をさらに含有してもよい。
この「未製麦ライ麦」とは、発芽させて麦芽をつくるという製麦処理を施していないライ麦である。なお、このライ麦は粉砕されていてもよい。そして、ライ麦(Secale cereale)とは、イネ科ライムギ属の穀物であり、黒麦とも呼ばれる。
そして、ビールテイスト飲料の原料に未製麦ライ麦を含有させることによって、ビールテイスト飲料のマイルドさをさらに向上させるだけでなく、渋味と雑味とをさらに抑制させることもできる。
【0019】
なお、本実施形態に係るビールテイスト飲料は、オーツ麦と同様、栄養価の高い食材であるライ麦を原料に含有することによって、ビールテイスト飲料の栄養価の向上だけでなく、健康系の飲料という印象を付加することができ、消費者に対する訴求力を大幅に高めることができる。
【0020】
(未製麦ライ麦:原料中の比率)
本実施形態に係るビールテイスト飲料の未製麦ライ麦比率は、1%(重量%)以上が好ましく、5%以上、7%以上、8%以上がより好ましい。未製麦ライ麦比率が所定値以上であることによって、より確実に、ビールテイスト飲料のマイルドさをさらに向上させ、渋味と雑味とをさらに抑制させることができる。
本実施形態に係るビールテイスト飲料の未製麦ライ麦比率は、50%以下が好ましく、30%以下、20%以下、13%以下、12%以下がより好ましい。未製麦ライ麦比率が所定値以下であることによって、ビールテイスト飲料のマイルドさの向上という効果と、渋味と雑味との抑制という効果とをしっかりと発揮させることができる。
なお、この「未製麦ライ麦比率」とは、後述の麦芽比率と同様の方法で算出できる比率であって、詳細には、ビールテイスト飲料の製造に用いられる原料のうち水及びホップ以外のものの全重量に占める未製麦ライ麦の重量の比率である。
【0021】
(麦芽:原料)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料に麦芽を含有してもよい。
この「麦芽」とは、麦を発芽させ焙燥した後に根を除いたものである。そして、ここでの麦とは、大麦、小麦等であるが、大麦が好ましい。
【0022】
(麦芽:原料中の比率)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、麦芽比率は特に限定されないが、例えば、1%(重量%)以上、25%以上、50%以上、67%以上、80%以上、90%以上であり、また、99%以下、90%以下、80%以下、67%以下、66%以下、50%未満、25%未満である。
なお、「麦芽比率」とは、詳細には、ビールテイスト飲料の製造に用いられる原料のうち水及びホップ以外のものの全重量に占める麦芽の重量の比率である。
【0023】
(その他の原料)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料に未製麦大麦をさらに含有してもよい。
なお、本実施形態に係るビールテイスト飲料の未製麦大麦比率は、特に限定されないものの、例えば、50%以下、30%以下、25%以下、10%以下であり、1%以上、5%以上、10%以上、25%以上である。
【0024】
また、本実施形態に係るビールテイスト飲料の原料としては、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で通常配合される糖類(糖質原料)、未製麦小麦、麦以外の食物原料(穀類、イモ類、豆類)等を含有させることもできる。
【0025】
(無ろ過飲料)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、無ろ過飲料であるのが好ましい。
この「無ろ過飲料」とは、後記する発酵工程の後にろ過を施さずに製造された飲料である。
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、前記のとおり、原料として未製麦オーツ麦(さらには未製麦ライ麦)を含有するが、発酵工程において繊維質等の成分が分解されずに残る。その結果、本実施形態に係るビールテイスト飲料を無ろ過飲料とすることによって、より栄養価の高く、消費者に対する訴求力の高い飲料とすることができる。
【0026】
(アルコール)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、アルコールを含有している。
そして、本実施形態に係るビールテイスト飲料のアルコール度数は、特に限定されないが、1%(v/v%)以上が好ましく、3%以上、4%以上、5%以上がより好ましい。
また、本実施形態に係るビールテイスト飲料のアルコール度数は、20%以下が好ましく、15%以下、10%以下、8%以下、7%以下、6%以下がより好ましい。
なお、本明細書においてアルコールとは、特に明記しない限り、エタノールのことをいう。そして、ビールテイスト飲料のアルコール度数は、例えば、国税庁所定分析法(訓令)3清酒3-4アルコール分(振動式密度計法)に基づいて測定することができる。
【0027】
本実施形態に係るビールテイスト飲料のアルコールは、前記した未製麦オーツ麦等を原料の一部に使用して発酵させて得られたアルコール(つまり、発酵由来のアルコール)のみから構成されているのが好ましいが、蒸留アルコールを添加して構成されていてもよい。
【0028】
蒸留アルコールとしては、焼酎、ブランデー、ウォッカ、ウイスキー、麦スピリッツ(例えば、大麦スピリッツ、小麦スピリッツ)等の各種スピリッツ、原料用アルコール等が挙げられる。蒸留アルコールは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本明細書において「スピリッツ」とは、蒸留酒であるスピリッツを指し、酒税法上のスピリッツとは異なる場合もある。
【0029】
(色度)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、色度が所定範囲内となっていてもよい。
そして、本実施形態に係るビールテイスト飲料の色度は、特に限定されないものの、例えば、1以上、10以上、15以上、20以上、25以上であり、50以下、40以下、35以下である。
なお、ビールテイスト飲料の色度は、例えば、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集2013年増補改訂)の「8.8色度 8.8.2吸光度法」に記載されている方法によって測定することができる。
【0030】
(苦味価)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、苦味価(Bitterness Unit:BU)が所定範囲内となっていてもよい。
そして、本実施形態に係るビールテイスト飲料の苦味価は、特に限定されないものの、例えば、1以上、10以上、15以上、20以上、25以上であり、50以下、40以下、35以下である。
なお、ビールテイスト飲料の苦味価は、例えば、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.15 苦味価」に記載されている方法によって測定することができる。
【0031】
(発泡性)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、発泡性であるのが好ましい。
そして、本実施形態に係るビールテイスト飲料の20℃におけるガス圧は、特に限定されないものの、例えば、2.0kg/cm2以上、2.2kg/cm2以上、2.3kg/cm2以上、2.4kg/cm2以上であり、5.0kg/cm2以下、4.0kg/cm2以下、3.0kg/cm2以下である。
【0032】
(泡持ち)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、泡持ちの指標であるNIBEM値が所定範囲内となっていてもよい。
そして、本実施形態に係るビールテイスト飲料のNIBEM値は、特に限定されないものの、例えば、295以上、300以上、320以上、330以上であり、500以下、400以下、360以下である。
なお、ビールテイスト飲料のNIBEM値は、例えば、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.29. 泡 NIBEM-Tを用いた泡持ち測定方法」に記載されている方法によって測定することができる。
【0033】
(その他)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類、食物繊維など(以下、適宜「添加剤」という)を添加することもできる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲンやデンプンなどを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどを用いることができる。酸味料としては、例えば、アジピン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、リン酸などを用いることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウム、クエン酸三ナトリウムなどを用いることができる。食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、ポリデキストロース、グアーガム分解物などを用いることができる。
【0034】
(容器詰めビールテイスト飲料)
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、各種容器に入れて提供することができる。各種容器にビールテイスト飲料を詰めることにより、長期間の保管による品質の劣化を好適に防止することができる。
なお、容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器などを適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分および光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
【0035】
以上説明したように、本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料に未製麦オーツ麦を含有することから、マイルドさが向上している。
また、本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料に未製麦ライ麦をさらに含有することから、マイルドさがさらに向上している。
【0036】
[ビールテイスト飲料の製造方法]
次に、本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法について説明する。
本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法は、原料に未製麦オーツ麦を含有させる工程を含み、詳細には、発酵前工程と、発酵工程と、発酵後工程と、を含む。
【0037】
(発酵前工程)
発酵前工程では、前記した未製麦オーツ麦、必要に応じて、未製麦ライ麦、麦芽、糖類、酵素、各種添加剤を混合して原料を糖化し、糖化液を得る。そして、糖化液を適宜ろ過して得られた麦汁に、必要に応じて、ホップの添加、煮沸、冷却等を行って発酵前液を調製する。
【0038】
発酵前工程において調製される発酵前液は、酵母が資化可能な窒素源及び炭素源となる麦由来原料(麦芽や麦)を含む溶液であれば特に限られない。窒素源及び炭素源は、酵母が資化可能なものであれば特に限られない。酵母が資化可能な窒素源とは、例えば、麦由来原料に含まれるアミノ酸及びペプチドのうちの少なくとも一つである。酵母が資化可能な炭素源とは、例えば、前記した糖類や麦由来原料に含まれる糖類である。
【0039】
発酵前工程で使用するホップは、特に限定されず、例えば、例えば、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスが挙げられるとともに、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品であってもよい。
【0040】
(発酵工程)
発酵工程は、発酵前液に酵母を添加してアルコール発酵を行う工程である。本実施形態においては、例えば、まず、予め温度が所定の範囲内(例えば、0~40℃の範囲)に調製された発酵前液に酵母を添加して発酵液を調製する。
【0041】
発酵工程においては、さらに熟成を行うこととしてもよい。熟成は、上述のような発酵後の発酵液をさらに所定の温度で所定の時間だけ維持することにより行う。この熟成により、発酵液中の不溶物を沈殿させて濁りを取り除き、また、香味を向上させることができる。
【0042】
こうして発酵工程においては、酵母により生成されたエタノール及び各種成分を含有する発酵後液を得ることができる。発酵後液に含まれるエタノールの濃度(アルコール度数)は、例えば、1~20%とすることができる。
【0043】
(発酵後工程)
発酵後工程は、発酵後液に所定の処理を施して最終的にビールテイスト飲料を得る工程である。発酵後工程としては、例えば、発酵工程により得られた発酵後液のろ過(いわゆる一次ろ過)、前記した容器への充填が挙げられる。この一次ろ過により、発酵後液から不溶性の固形分や酵母を除去することができる。また、発酵後工程においては、さらに発酵後液の精密ろ過(いわゆる二次ろ過)を行ってもよい。二次ろ過により、発酵後液から雑菌や、残存する酵母を除去することができる。
ただし、前記したとおり、発酵後工程ではろ過(一次ろ過、二次ろ過)は実施しないのが好ましい。なお、ろ過を実施しない場合は、熱殺菌を実施するのが好ましい。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係るビールテイスト飲料の製造方法は、原料に未製麦オーツ麦を含有させる工程を含むことから、マイルドさが向上しているビールテイスト飲料を製造することができる。
【0045】
[ビールテイスト飲料の香味向上方法]
次に、本実施形態に係るビールテイスト飲料の香味向上方法を説明する。
本実施形態に係るビールテイスト飲料の香味向上方法は、マイルドさを向上させる香味向上方法であって、原料に未製麦オーツ麦を含有させる方法である。
なお、各原料の比率等については、前記した「ビールテイスト飲料」において説明した値と同じである。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係るビールテイスト飲料の香味向上方法は、原料に未製麦オーツ麦を含有させることから、ビールテイスト飲料のマイルドさを向上させることができる。
【実施例】
【0047】
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明について説明する。
【0048】
[サンプル1、2の準備]
原料として、大麦麦芽、小麦麦芽、未製麦オーツ麦(表1参照)、未製麦ライ麦(表1参照)、未製麦大麦(サンプル2のみ)、水を仕込槽に投入し、常法にしたがって糖化液を製造した。得られた糖化液をろ過して麦汁を得た。得られた麦汁にホップを添加して煮沸し、沈殿物を分離、除去した後、冷却した。得られた発酵前液(冷麦汁)にビール酵母を添加し、表に示すアルコール度数となるように所定期間発酵させ、その後、ろ過を実施することなく、ビールテイスト飲料を製造した。
なお、サンプル1、2の原料を比較すると、サンプル1の大麦麦芽の一部の代わりに、サンプル2は原料として未製麦ライ麦を含有させた点と、さらに未製麦大麦を含有(表には記載せず)させた点で異なる。そして、サンプル1、2の製造条件は全て同じにして製造した。
また、サンプル1、2は、いずれも、苦味価が30、色度が30、20℃におけるガス圧が2.2kg/cm2であった。
【0049】
[サンプル3の準備]
原料として、大麦麦芽、水を仕込槽に投入し、常法にしたがって糖化液を製造した。得られた糖化液をろ過して麦汁を得た。得られた麦汁にホップを添加して煮沸し、沈殿物を分離、除去した後、冷却した。得られた発酵前液(冷麦汁)にビール酵母を添加し、表に示すアルコール度数となるように所定期間発酵させ、その後、ろ過を実施して、ビールテイスト飲料を製造した。
なお、サンプル3は、苦味価が27、色度が33、20℃におけるガス圧が2.2kg/cm2であった。
【0050】
[試験内容]
前記の方法により製造した各サンプルについて、選抜された識別能力のあるパネル3名が下記評価基準に則って「マイルドさ」、「渋味と雑味」について、1~5点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
なお、全ての評価は、サンプルを飲んで評価した。
【0051】
(マイルドさ:評価基準)
マイルドさについては、「非常にマイルドである(丸みがあって飲み口が非常に良い)」場合を5点、「全くマイルドでない」場合を1点として5段階で評価した。そして、マイルドさの評価については、点数が高いほどマイルドになっており、好ましいと判断できる。
なお、マイルドさについては、サンプル3(2点)を基準として評価した。
【0052】
(渋味と雑味:評価基準)
渋味と雑味の評価については、「渋味や雑味を非常に強く感じる」場合を5点、「渋味や雑味を感じない」場合を1点として5段階で評価した。そして、渋味や雑味の評価については、点数が低いほど低減(抑制)されており、好ましいと判断できる。
なお、渋味と雑味については、サンプル3(4点)を基準として評価した。
【0053】
表1に、各サンプルの各評価結果等を示す。そして、表における「原料:未製麦オーツ麦」とは、原料における未製麦オーツ麦比率であり、「原料:未製麦ライ麦」とは、原料における未製麦ライ麦比率であり、「アルコール度数」とは、最終製品のアルコール度数である。
【0054】
(泡持ち)
前記の方法により製造した各サンプルについて、前記した改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.29. 泡 NIBEM-Tを用いた泡持ち測定方法」に記載されている方法に基づいてNIBEM値を測定した。
なお、各サンプルについて測定して得られたNIBEM値は、以下のとおりである。
サンプル1:307
サンプル2:340
サンプル3:289
【0055】
【0056】
(結果の検討)
サンプル1、2とサンプル3との結果を比較すると明らかなように、原料に未製麦オーツ麦を含有させることにより、ビールテイスト飲料のマイルドさが大幅に向上することが確認できた。さらに、原料に未製麦オーツ麦を含有させることにより、渋味と雑味も大幅に低減(抑制)できることが確認できた。
また、サンプル1とサンプル2との結果を比較すると明らかなように、原料に未製麦ライ麦をさらに含有させることにより、ビールテイスト飲料のマイルドさがさらに向上するだけでなく、渋味と雑味もさらに低減(抑制)できることが確認できた。
【0057】
加えて、サンプル1~3の泡持ち(NIBEM値)の結果を比較すると明らかなように、原料に未製麦オーツ麦を含有させることにより泡持ちが良くなり、原料に未製麦ライ麦をさらに含有させることにより、泡持ちが非常に良くなることが確認できた。