(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】油性化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20221227BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20221227BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20221227BHJP
A61Q 1/04 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/36
A61K8/02
A61Q1/04
(21)【出願番号】P 2018093634
(22)【出願日】2018-05-15
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸本 秀幸
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-219486(JP,A)
【文献】特開2012-072104(JP,A)
【文献】特開2011-032252(JP,A)
【文献】特開2015-224220(JP,A)
【文献】国際公開第2017/090416(WO,A1)
【文献】特開2010-100612(JP,A)
【文献】特開平09-110901(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0177143(US,A1)
【文献】特開2002-265330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)主鎖に
セルロース、セルロース誘導体及びプルランから選ばれる多糖類骨格を有し、全水酸基の45~95mol%が基-O-M-R(MはCH
2又はカルボニル基C=Oを示し、Rは炭素数3~40の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示す)で置換されている多糖類誘導体 0.01~5質量%、
(B)金属石鹸 0.02~5質量%、
(C)25℃で液状の油成分 50~98質量%
を含有し、成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)が、0.5~10である油性化粧料。
【請求項2】
成分(A)において、Rが炭素数9~21の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基である請求項1記載の油性化粧料。
【請求項3】
成分(B)の金属石鹸が、一般式(1)
(R
1COO)
mX (1)
(式中、R
1は炭素数10~18の脂肪族炭化水素基を示し、Xはアルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、リチウム又はバリウムを示し、mは金属Xの価数を示す)
で表されるものである請求項
1又は2記載の油性化粧料。
【請求項4】
口唇化粧料である請求項1~
3のいずれか1項記載の油性化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
口紅等の油性化粧料では、美しい仕上がりや、滑らかな感触を得るため、種々の検討がなされている。例えば、特許文献1には、油溶性染料、高級脂肪酸金属塩及び油分を含有するメーキャップ化粧料が、鮮やかな蛍光発色が可能であり、透明感(クリア感)に優れることが記載されている。また、特許文献2には、デキストリン脂肪酸エステル、金属石鹸、常温で液状のエステル油及び液状の炭化水素油を含有する口唇化粧料が、べたつきを低減させながらも経時安定性がよく、使用性(軽さ、なめらかさ)、透明感が良好で、つや及び化粧持ちに優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/117637号
【文献】特開2006-219486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかして、金属石鹸を含有する油性化粧料は、化粧持ちや油ゲル化能に優れるものの、塗布中や塗布後において、色ムラが発生するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、金属石鹸及び液状油とともに、特定のアシル化多糖類を、特定の割合で組み合わせた油性化粧料が、塗布中や塗布後において、色ムラが抑制され、塗布中ののびが良く、本油性化粧料を唇に適用した場合には、塗布後の唇にふっくらとした立体感が得られることを見出した。
【0006】
本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)主鎖に多糖類骨格を有し、全水酸基の45~95mol%が基-O-M-R(MはCH2又はカルボニル基C=Oを示し、Rは炭素数3~40の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示す)で置換されている多糖類誘導体 0.01~30質量%、
(B)金属石鹸 0.02~10質量%、
(C)25℃で液状の油成分 10~98質量%
を含有する油性化粧料に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の油性化粧料は、塗布中や塗布後において、色ムラが抑制され、塗布中ののびが良く、塗布後の唇にふっくらとした立体感が得られるものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で用いる成分(A)の多糖類誘導体は、主鎖に多糖類骨格を有するものであれば限定されないが、多糖類骨格となる原料多糖類としては、セルロース、セルロース誘導体、プルラン、キサンタンガム、スクレロチウムガム、アラビアガム、アルカリゲネス産生多糖体、カラギーナン、ヒアルロン酸、チューベロース多糖体、シロキクラゲ多糖体、ローカストビーンガム、グアーガム、タラガム、フェヌグリークガム等のガラクトマンナンなどが挙げられる。
これらの原料多糖類のうち、セルロース、セルロース誘導体、プルランが好ましく、セルロース、セルロース誘導体がより好ましい。
【0009】
セルロース誘導体としては、アセチルセルロース、アセチルブチルセルロース等の短鎖アシル化セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等の短鎖アルキルエーテル化セルロース、ヒドロキシアルキル基、グリセリルエーテル基、(モノ)アルキルグリセリルエーテル基で変性されたセルロースなどが挙げられ、より具体的には、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、グリセリルセルロース、メチルグリセリルセルロース等が好ましい。
更には、製造原料のセルロース誘導体としては、以下の構成単位を有するものが好ましい。
【0010】
【0011】
(式中、R'は炭素数2~8の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、nはグルコース単位当たりのR'Oの平均付加モル数が0.1~10となる数を示す)
【0012】
当該構成単位において、R'としては、直鎖又は分岐鎖の炭素数2~4のアルキレン基が好ましく、更には、エチレン基及びプロピレン基がより好ましい。またnとしては、グルコース単位当たりのR'Oの平均付加モル数が0.3~5となる数が好ましく、0.5~4.5となる数がより好ましく、1~4となる数が更に好ましい。
【0013】
原料セルロース誘導体の好ましいものとしては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられ、ヒドロキシプロピルセルロースがより好ましい。
また、原料セルロース誘導体の質量平均分子量(Mw)は、油剤への溶解性、及び感触の点から、好ましくは1万~400万、より好ましくは10万~300万、更に好ましくは30万~200万である。
【0014】
また、原料多糖類のうち、プルランとしては、重量平均分子量が5万~30万であるのが好ましい。
【0015】
成分(A)の多糖類誘導体は、原料多糖類の水酸基の一部が基-O-M-Rで置換されている。
置換基である基-O-M-R中、MはCH2又はカルボニル基C=Oを示し、Rは炭素数3~40の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基である。
(i)直鎖のアルキル基としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基、ヘントリアコンチル基、ドトリアコンチル基、トリトリアコンチル基、テトラトリアコンチル基、ペンタトリアコンチル基、ヘキサトリアコンチル基、ヘプタトリアコンチル基、オクタトリアコンチル基、ノナトリアコンチル基及びテトラコンチル基が挙げられる。
【0016】
(ii)分岐鎖のアルキル基としては、メチルペンチル基、メチルヘキシル基、メチルヘプチル基、メチルオクチル基、メチルノニル基、メチルウンデシル基、メチルヘプタデシル基、エチルヘキサデシル基、メチルオクタデシル基、プロピルペンタデシル基、2-ヘキシルデシル基、2-オクチルドデシル、2-ヘプチルウンデシル基、2-デシルテトラデシル基、2-ドデシルヘキサデシル基、2-テトラデシルオクタデシル基、2-ヘキサデシルイコシル基等が挙げられる。
【0017】
(iii)直鎖のアルケニル基としては、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基等が挙げられる。
(iv)分岐鎖のアルケニル基としては、イソトリデセニル基、イソオクタデセニル基、イソトリアコンテニル基、2-ブチルオクテニル基、2-ヘキシルデセニル基、2-オクチルドデセニル基、2-デシルテトラデセニル基、2-ドデシルヘキサデセニル基等が挙げられる。
【0018】
これらのうち、唇や皮膚などに滑らかな感触が持続する観点から、Rは、直鎖アルキル基が好ましい。また、塗布中ののばしやすさ、密着性の良さから、炭素数9~21が好ましく、炭素数11~17がより好ましく、炭素数15が更に好ましい。
【0019】
水酸基の基-O-M-R置換率は、油剤への溶解性を高め、塗布中や塗布後において、色ムラが抑制され、塗布中ののばしやすさの点から、45mol%以上であり、48mol%以上が好ましく、51mol%以上がより好ましく、55mol%以上がさらに好ましく、ヨレにくさや耐水性を高める点から、95mol%以下であり、94mol%以下が好ましく、92mol%以下がより好ましく、85mol%以下がさらに好ましい。また、水酸基の基-O-M-R置換率は、45~95mol%であり、48~94mol%好ましく、51~92mol%がより好ましく、55~85mol%がさらに好ましい。
水酸基は、適度に残留していることが、塗布膜のヨレにくさの点から好ましく、5mol%以上が好ましく、6mol%以上がより好ましく、8mol%以上がさらに好ましく、15mol%以上がよりさらに好ましく、55mol%以下が好ましく、52mol%以下がより好ましく、49mol%以下がさらに好ましく、45mol%以下がよりさらに好ましい。また、水酸基の残留率は、5~55mol%が好ましく、6~52mol%がより好ましく、8~49mol%がさらに好ましく、15~45mol%がよりさらに好ましい。
【0020】
成分(A)の多糖類誘導体の質量平均分子量は、油成分への溶解性、唇や皮膚などへののばしやすさが持続する点から、10万以上が好ましく、20万以上がより好ましく、30万以上が更に好ましく、50万以上がより更に好ましく、500万以下が好ましく、400万以下がより好ましく、300万以下が更に好ましく、200万以下がより更に好ましい。
なお、質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(クロロホルム溶媒、直鎖ポリスチレンを標準として定められた較正曲線、屈折率検出器を用いる)測定によって求められるものである。
【0021】
成分(A)の多糖類誘導体は、原料多糖類と、炭素数3~40の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を有する酸ハライドとを反応させ、原料セルロース誘導体の全水酸基の一部、好ましくは45~95mol%を置換することにより製造される。
また、MがCH2であるものは、塩基存在下に、多糖類と対応するアルキルハライドあるいはアルキルメシラート等のスルホン酸エステルを反応させることによって製造することができる。主鎖がセルロース骨格からなるものは、アセチルセルロースのエステル交換反応(アシドーリシス)によっても得ることができる。この方法によれば、水酸基の残留量が極めて低いセルロースエステル誘導体が得られる。
【0022】
具体的には、ヒドロキシエチルセルロースラウリン酸エステル、ヒドロキシエチルセルロースミリスチン酸エステル、ヒドロキシエチルセルロースパルミチン酸エステル、ヒドロキシエチルセルロースステアリン酸エステル、ヒドロキシエチルセルロースベヘン酸エステル;ヒドロキシプロピルセルロースラウリン酸エステル、ヒドロキシプロピルセルロースミリスチン酸エステル、ヒドロキシプロピルセルロースパルミチン酸エステル、ヒドロキシプロピルセルロースステアリン酸エステル、ヒドロキシプロピルセルロースベヘン酸エステル;ヒドロキシエチルメチルセルロースラウリン酸エステル、ヒドロキシエチルメチルセルロースミリスチン酸エステル、ヒドロキシエチルメチルセルロースパルミチン酸エステル、ヒドロキシエチルメチルセルロースステアリン酸エステル、ヒドロキシエチルメチルセルロースベヘン酸エステル;ヒドロキシプロピルメチルセルロースラウリン酸エステル、ヒドロキシプロピルメチルセルロースミリスチン酸エステル、ヒドロキシプロピルメチルセルロースパルミチン酸エステル、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアリン酸エステル、ヒドロキシプロピルメチルセルロースベヘン酸エステル;プルランラウリン酸エステル、プルランミリスチン酸エステル、プルランパルミチン酸エステル、プルランステアリン酸エステル、プルランベヘン酸エステル等が挙げられる。中でも、塗布中や塗布後において、色ムラが抑制され、塗布中ののびが向上する点から、ヒドロキシプロピルセルロースラウリン酸エステル、ヒドロキシプロピルセルロースミリスチン酸エステル、ヒドロキシプロピルセルロースパルミチン酸エステル、ヒドロキシプロピルセルロースステアリン酸エステル、ヒドロキシプロピルセルロースベヘン酸エステル、プルランラウリン酸エステル、プルランミリスチン酸エステル、プルランパルミチン酸エステル、プルランステアリン酸エステル、プルランベヘン酸エステルが好ましく、少なくともヒドロキシプロピルセルロースパルミチン酸エステル、プルランミリスチン酸エステルがより好ましい。
【0023】
成分(A)の多糖類誘導体は、1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、塗布中や塗布後において、色ムラが抑制され、塗布後の唇にふっくらとした立体感が得られる点から、全組成中に0.01質量%以上であり、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、30質量%以下であり、20質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。また、成分(A)の含有量は、全組成中に0.01~30質量%であり、0.05~20質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましく、0.1~3質量%がさらに好ましい。
【0024】
成分(B)の金属石鹸は、通常の化粧料に用いられるものであればいずれでも良く、例えば、一般式(1):
(R1COO)mX (1)
(式中、R1は炭素数10~18の脂肪族炭化水素基を示し、Xはアルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、リチウム又はバリウムを示し、mは金属Xの価数を示す)
で表されるものが挙げられる。
【0025】
一般式(1)において、R1としては、炭素数11~17のアルキル基が好ましく、例えば、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等が挙げられる。また、Mとしては、アルミニウム、亜鉛、マグネシウムが好ましい。
成分(B)の金属石鹸として、具体的には、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等が挙げられる。
これらのうち、油成分の増粘効果に優れ、塗布中ののびが向上する点から、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウムが好ましく、ステアリン酸アルミニウムがより好ましい。
【0026】
成分(B)の金属石鹸は、1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、油成分の増粘効果に優れ、塗布中ののびが向上する点から、全組成中に0.02質量%以上であり、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、10質量%以下であり、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。また、成分(B)の含有量は、全組成中に0.02~10質量%であり、0.1~5質量%が好ましく、0.2~2質量%がより好ましい。
【0027】
本発明において、成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)は、塗布中や塗布後において、色ムラが抑制され、塗布後の唇にふっくらとした立体感が得られる点から、0.2以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、1以上がさらに好ましく、20以下が好ましく、10以下がより好ましく、6以下がより好ましい。また、成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)は、0.2~20が好ましく、0.5~10がより好ましく、1~6がさらに好ましい。
【0028】
本発明で用いる成分(C)の25℃で液状の油成分は、25℃で流動性を有する油性成分であり、流動性を有する限りペースト状の油性成分も含まれる。
かかる(C)25℃で液状の油成分としては、通常の化粧料に用いられるものであれば良く、例えば、流動パラフィン、軽質イソパラフィン、流動イソパラフィン、ミネラルオイル、ポリブテン、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン、スクワラン、スクワレン等の直鎖又は分岐の炭化水素油;アボガド油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、小麦胚芽油、アマニ油、綿実油、大豆油、パーム油、ヤシ油、ヒマシ油、ホホバ油、ヒマワリ油、ツバキ油、トウモロコシ油等の植物油;液状ラノリン等の動物油;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸オレイル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソステアリル、リシノレイン酸オクチルドデシル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、モノイソステアリン酸ジグリセリル、パルミチン酸エチルヘキシル、エチルヘキサン酸セチル、メトキシケイ皮酸オクチル、酢酸トコフェロール、炭酸プロピレン、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ジイソステアリン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸プロパンジオール、モノイソステアリン酸モノミリスチン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、ジ(カプリン酸/カプリル酸)プロパンジオール、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリエチルヘキサノイン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリット、テトライソステアリン酸ペンタエリスリトール、イソステアリン酸ポリグリセリル-2、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2、オクタカプリル酸ポリグリセリル-6、(イソステアリン酸/セバシン酸)ジトリメチロールプロパンオリゴエステル、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、イソステアリン酸トレハロースエステルズ、テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチル、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル、ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル、フィトステロール脂肪酸エステル、コレステロール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、dl-α-トコフェロール、ニコチン酸dl-α-トコフェロール等の脂肪酸エステル;オクチルドデカノール等の高級アルコール;ジフェニルジメチコン、ジメチルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン、トリス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン等のシリコーン油;フルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルエーテルシリコーン等のフッ素油;クリーム状やペースト状として、トリラノリン脂肪酸グリセリル、軟質ラノリン脂肪酸、ワセリン、分岐又はヒドロキシル化した脂肪酸コレステリル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル(ヘキサオキシステアリン酸ジペンタエリトリット等)、イソステアリン酸硬化ヒマシ油、モノヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油、トリ(カプリル・カプリン・ミリスチン・ステアリン酸)グリセリド、乳酸ミリスチル、ダイマージリノール酸水添ヒマシ油、ダイマージリノール酸(フィトルテリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、オレイン酸フィトステリル、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル・フィトステリル・ベヘニル)等が挙げられる。
【0029】
成分(C)としては、成分(A)と成分(B)を均一に分散させ、塗布中ののびの重さを軽減させる点から、少なくともイソノナン酸イソトリデシル、オクチルドデカノール、水添ポリイソブテン、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル・フィトステリル・ベヘニル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルから選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましい。
【0030】
成分(C)の油成分は、1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、塗布中や塗布後において、のびの重たさを軽減し、色ムラを抑制する点から、全組成中に10質量%以上であり、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、98質量%以下であり、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましい。また、成分(C)の含有量は、全組成中に10~98質量%であり、30~90質量%が好ましく、50~85質量%がより好ましい。
【0031】
本発明において、成分(A)に対する成分(B)及び(C)の合計量の質量割合((B)+(C))/(A))は、塗布中や塗布後において、色ムラが抑制され、塗布後の唇にふっくらとした立体感が得られる点から、5以上が好ましく、15以上がより好ましく、25以上がさらに好ましく、600以下が好ましく、300以下がより好ましく、180以下がさらに好ましい。また、成分(A)に対する成分(B)及び(C)の合計量の質量割合((B)+(C))/(A))は、5~600が好ましく、15~300がより好ましく、25~180がさらに好ましい。
【0032】
さらに、本発明の油性化粧料は、(D)25℃で固形のワックスを含有することができる。25℃で固形とは、25℃において固体の性状を示し、融点が61℃以上のものを指す。
25℃で固形のワックスとしては、通常の化粧料に用いられるものであれば制限されず、例えば、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス;カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ライスワックス、木ロウ、サンフラワーワックス、水添ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ、鯨ロウ等の動物性ワックス;シリコーンワックス、フッ素系ワックス、合成ミツロウ等の合成ワックスなどが挙げられる。
【0033】
25℃で固形のワックスは、油性化粧料に適度な硬さを付与し、油の染み出し抑制、潤いを付与する点から、融点60℃以上、140℃以下が好ましく、60℃以上、115℃以下がより好ましい。
【0034】
また、25℃で固形のワックスは、油性化粧料に適度な硬さを付与し、油の染み出し抑制、潤いを付与する点から、25℃での針入度が150以下であるのが好ましく、110以下がより好ましく、少なくとも、塗布初期のざらつきを抑制する点から、針入度が15以上、110以下の25℃で固形のワックスを含むことが好ましい。
ここで、針入度は、25±0.1℃に保ったワックスの試料に、規定の針(針の質量2.5±0.02g、針保持具の質量47.5±0.02g、おもりの質量50±0.05g)が、5秒間に針入する長さを測定し、その針入距離(mm)を10倍した値を針入度とするものであり、JIS K-2235-5.4(1991年)に準じて測定した値である。
【0035】
25℃での針入度が150以下の固形のワックスとしては、鉱物系ワックス、石油系ワックス及び合成炭化水素ワックスが挙げられる。なかでも、外観色のくすみを抑制し、塗布膜の持続性、潤いの性能が高い点から、針入度が110以下のセレシン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、合成炭化水素ワックスが好ましく、塗布初期のざらつきを抑制する点から、少なくとも、針入度が15以上、110以下のマイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスを含むことが好ましい。
これらのワックスは、市販品を使用することができ、例えば、セレシンとして、セレシン #810(日興リカ)等が;マイクロクリスタリンワックスとして、Multiwax W-445、W-835(以上、SONNEBORN社製)、Paracera M(Paramelt社製)、Hi-Mic-1045、1070、2045、HNP-0190(以上、日本精鑞社製)等が;パラフィンワックスとして、パラフィンワックス140、145、150、155、HNP-3、5、9(以上、日本精鑞社製)等が;合成炭化水素ワックスとして、リップワックス A-4(日本ナチュラルプロダクツ社製)、PERFORMALENE 400、655、PL(NEW PHASE TECHNOLOGIES社製)等が挙げられる。
【0036】
成分(D)の25℃で固形のワックスは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、含有量は、油性化粧料の保形性を維持しつつ、塗布後の口角の色ムラができにくい点から、全組成中に1質量%以上が好ましく、6質量%以上がより好ましく、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。また、25℃で固形のワックスの含有量は、全組成中に、1~20質量%が好ましく、6~15質量%がより好ましい。
【0037】
さらに、本発明の油性化粧料は、粉体を含有することができる。かかる粉体としては、通常の化粧料に用いられるものであれば制限されず、体質顔料、着色顔料、光輝性顔料等を用いることができる。
体質顔料としては、例えば、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、ベントナイト、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の無機顔料及びこれらの複合粉体が挙げられる。
【0038】
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、黄酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄、紺青、群青、酸化クロム、水酸化クロム等の金属酸化物;マンガンバイオレット、チタン酸コバルト等の金属錯体;カーボンブラック等の無機顔料;タール系色素、レーキ顔料等の有機顔料;カルミン等の天然色素などが挙げられる。
【0039】
光輝性顔料としては、雲母、合成金雲母、ガラス、シリカ、タルク、アルミナ等の板状粉体等の表面を酸化チタン、酸化鉄、酸化ケイ素、紺青、酸化クロム、水酸化クロム、金、銀、カルミン、有機顔料等の着色剤で1種又は2種以上被覆したものなど、及びポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層末、ポリエチレンテレフタレート・アルミ蒸着末、ポリエチレンテレフタレート・金蒸着積層末などの、フィルム原反を任意形状に断裁したものなどを用いることができる。
これらの粉体は、そのまま用いることができるほか、通常の方法により、撥水処理、撥水・撥油化処理等の各種表面処理を施したものを用いることもできる。
【0040】
粉体は、1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、使用感、油性化粧料の外観や塗布したときの着色力・光輝性を付与する点から、全組成中に、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。また、粉体の含有量は、全組成中に、0.01~20質量%が好ましく、0.1~10質量%がより好ましい。
【0041】
さらに、本発明の油性化粧料は、前記成分以外に、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、成分(C)以外の油成分、界面活性剤、低級アルコール、多価アルコール、成分(A)以外の高分子化合物、紫外線吸収剤、酸化防止剤、染料、香料、防腐剤、pH調整剤、血行促進剤、消炎剤、冷感剤、殺菌剤、皮膚賦活剤、保湿剤、水等を含有することができる。
【0042】
本発明の油性化粧料は、通常の方法により製造することができ、その剤型としては、固形、半固形、ゲル、液状等のいずれでも良い。
【0043】
本発明の油性化粧料は、油剤を連続相とする化粧料であり、皮膚、口唇、睫毛、爪、毛髪に使用され、好ましくは、口唇に使用される。口紅、リップクリーム、リップグロス、リップライナー等の口唇化粧料;マスカラ、アイライナー、アイシャドウ、チークカラー、ファンデーション、コンシーラー等のメイクアップ化粧料;クリーム、乳液、美容液、マッサージ剤、デオドラント、サンスクリーン、育毛剤、ヘアカラー、ヘアワックス、ヘアフォームなどとすることができる。中でも、口紅、リップクリーム、リップグロス、リップライナーから選ばれる口唇化粧料として好適である。
【0044】
本発明の油性化粧料は、直接塗布するだけでなく、化粧料塗布用具を用いて、皮膚、口唇、睫毛、爪、毛髪等の適用部位に、塗布することもできる。
【0045】
本発明の油性化粧料は、液状とする場合、化粧料塗布用具で、取り出す容器に収納された形態にすることもでき、取り出す容器は、ボトル容器、ジャー容器、チューブ容器が好ましく、中でも使用時の液だれを抑制する点から、ボトル容器、チューブ容器がより好ましい。
【0046】
容器に収納された油性化粧料を取り出す化粧料塗布用具は、化粧料を塗布するための塗布面を有し、先端に該塗布部を連結した支持軸を有している。具体的には、チップ、スポンジ、パフ、筆等が挙げられる。なかでも、化粧料を塗布する為の塗布面を有し、かつ錐状、扁平体からなる塗布部と、先端に該塗布部を連結した支持軸とを有している化粧料塗布用具が、初期の使用時から塗布用具への取れ性、唇や皮膚等への塗りやすさの点から好ましい。
【実施例】
【0047】
製造例1(パルミトイルヒドロキシプロピルセルロースの製造)
窒素下トルエン、メチルエチルケトン混合溶媒中50℃で、57.8g(0.165mol)のヒドロキシプロピルセルロース(セルニーM;日本曹達社製)に、94g(1.01mol)の3-メチルピリジンを加えて溶解させる。85.1g(0.31mol)の塩化パルミトイルを0.5時間かけて滴下する。その後50℃で5時間反応させ、エタノール中で沈殿させて精製し、乾燥させると、パルミトイルヒドロキシプロピルセルロースが得られた(質量平均分子量150万、平均アシル置換度は全水酸基の60mol%)。なお、得られたパルミトイルヒドロキシプロピルセルロースは、配合時に溶解しやすいように細かく裁断した。
【0048】
(質量平均分子量の測定)
重合体の平均分子量(Mw)は、日立L-6000型高速液体クロマトグラフィーを使用し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。溶離液流路ポンプは日立L-6000、検出器はショーデックスRI SE-61示差屈折率検出器、カラムはGMHHR-Hをダブルに接続したものを用いた。サンプルは、溶離液で0.5g/100mLの濃度に調整し、20μLを用いた。溶離液には、1mmol/LのN,N‐ジメチルドデシルアミン(ファーミンDM20、花王社製)のクロロホルム溶液を使用した。カラム温度は40℃で、流速は1.0mL/分で行った。
【0049】
(平均アシル(エステル)置換度の測定)
H-NMRにおいて、エステル化されたセルロースのカルボニル基の隣のメチン基のプロトンは、5ppm付近に現れ、セルロースの6員環酸素の隣のプロトンとセルロースの水酸基の隣のメチレン基の合計が3.5ppm付近に現れる。その積分値から算出した。
【0050】
実施例1~8、比較例1
表1に示す組成の油性化粧料(スティック口紅)を製造し、塗布中ののびの良さ、塗布中の色ムラのできにくさ、塗布後の口角の色ムラのできにくさ、塗布後の唇のふっくらとした立体感を評価した。結果を表1に併せて示す。
【0051】
(製造方法)
基材原料(着色剤以外)を120℃で30分間加熱溶解し、ディスパーにて均一混合した。次に、着色剤原料を加えて更に15分間均一混合した。脱泡した後、室温まで冷却・固化させた。この口紅バルクから、必要量を切り出し、電子レンジを用いて100℃に加熱溶解し、型に流し込み、冷却固化させ、スティック口紅を得た。
【0052】
(評価方法)
(1)塗布中ののびの良さ:
10名の専門パネラーが、各スティック口紅を唇に直接塗布し、以下の基準で評価した。結果を10名の積算値で示した。
5;のび広がりが非常に良い。
4;のび広がりが良い。
3;のび広がりがやや良い。
2:のび広がりがあまり良くない。
1;のび広がりが良くない。
【0053】
(2)塗布中の色ムラのできにくさ:
10名の専門パネラーが、各スティック口紅を唇に直接塗布し、以下の基準で評価した。結果を10名の積算値で示した。
5;塗布中の色ムラがみられない。
4;塗布中の色ムラがあまりみられない。
3;塗布中の色ムラがややみられる。
2:塗布中の色ムラがみられる。
1;塗布中の色ムラがかなりみられる。
【0054】
(3)塗布後の口角の色ムラのできにくさ:
10名の専門パネラーが、各スティック口紅を唇に直接塗布し、以下の基準で評価した。結果を10名の積算値で示した。
5;塗布後の口角の色ムラがみられない。
4;塗布後の口角の色ムラがあまりみられない。
3;塗布後の口角の色ムラがややみられる。
2:塗布後の口角の色ムラがみられる。
1;塗布後の口角の色ムラがかなりみられる。
【0055】
(4)塗布後の唇のふっくらとした立体感:
10名の専門パネラーが、各スティック口紅を唇に直接塗布し、以下の基準で評価した。結果を10名の積算値で示した。
5;塗布後の唇にふっくらとした立体感がみられる。
4;塗布後の唇にふっくらとした立体感がややみられる。
3;塗布後の唇にふっくらとした立体感があまりみられない。
2:塗布後の唇にふっくらとした立体感がほとんどみられない。
1;塗布後の唇にふっくらとした立体感がみられない。
【0056】
【0057】
実施例9
表2に示す組成のスティック口紅を製造した。
得られた口紅は、塗布中ののびが良く、色ムラができにくく、塗布後の口角に色ムラができにくく、塗布後の仕上がった唇にふっくらとした立体感が得られるものである。
【0058】
(製造方法)
基材原料(着色剤以外)を120℃で30分間加熱溶解し、ディスパーにて均一混合した。次に、着色剤原料を加えて更に15分間均一混合した。脱泡した後、室温まで冷却・固化させた。この口紅バルクから、必要量を切り出し、電子レンジを用いて100℃に加熱溶解し、型に流し込み、冷却固化させ、スティック口紅を得た。
【0059】