(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】緩み止め具、緩み止め機構、固定装置、締結構造および産業機械
(51)【国際特許分類】
F16B 39/02 20060101AFI20221227BHJP
F16B 39/10 20060101ALI20221227BHJP
F16H 1/32 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
F16B39/02 Z
F16B39/10 A
F16H1/32 A
(21)【出願番号】P 2018149778
(22)【出願日】2018-08-08
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】王 宏猷
(72)【発明者】
【氏名】中村 江児
(72)【発明者】
【氏名】増田 智彦
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 正貴
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-200288(JP,A)
【文献】実開平02-105608(JP,U)
【文献】特開平08-275963(JP,A)
【文献】実開昭59-077612(JP,U)
【文献】特開2011-185367(JP,A)
【文献】特開2008-064299(JP,A)
【文献】米国特許第04628923(US,A)
【文献】登録実用新案第3122536(JP,U)
【文献】英国特許出願公開第02480643(GB,A)
【文献】特開2016-211642(JP,A)
【文献】実開昭50-036951(JP,U)
【文献】実開昭58-006004(JP,U)
【文献】特開昭56-097620(JP,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2010-0010592(KR,U)
【文献】中国実用新案第207554532(CN,U)
【文献】実開昭58-002413(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第1001175(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 23/00-43/02
F16H 1/28- 1/48
48/00-48/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトの頭部と前記頭部を収容する収納部の壁部とに接触するようにして配置される環状の接触部と、
前記接触部に接続した天部と、を備え、
前記天部は、前記頭部に設けられた角穴内に配置される凸部を有し、
前記凸部を貫通する螺子穴が設けられている、緩み止め具。
【請求項2】
前記接触部に接続し螺子穴を設けられた天部を備える、請求項1に記載の緩み止め具。
【請求項3】
前記ボルトの前記頭部と前記接触部との摩擦により、前記ボルトの回転を規制する、請求項1又は2に記載の緩み止め具。
【請求項4】
ボルトの頭部を収容する凹部に接続され前記ボルトが通過する貫通孔を有する第1部材と、
前記ボルトの前記頭部と前記凹部の壁部とに接触するようにして前記凹部内に配置される環状の接触部と、前記接触部に接続した天部と、を有する緩み止め具と、を備え、
前記天部は、前記頭部に設けられた角穴内に配置される凸部を有し、
前記凸部を貫通する螺子穴が設けられている、緩み止め機構。
【請求項5】
ボルトと、
前記ボルトの頭部を収容する凹部に接続され前記ボルトが通過する貫通孔を有する第1部材と、
前記貫通孔を通過した前記ボルトと噛み合う螺子穴を有する第2部材と、
前記ボルトの前記頭部と前記凹部の壁部とに接触するようにして前記凹部内に配置される環状の接触部と、前記接触部に接続した天部と、を有する緩み止め具と、を備え、
前記天部は、前記頭部に設けられた角穴内に配置される凸部を有し、
前記凸部を貫通する螺子穴が設けられている、締結構造。
【請求項6】
前記螺子穴と噛み合う螺子部材を備える、請求項5に記載の締結構造。
【請求項7】
前記緩み止め具が、前記凹部の内部に配置される、請求項5又は6に記載の締結構造。
【請求項8】
前記ボルトの前記頭部は、円柱状の外形状を有する、請求項5~7のいずれか一項に記載の締結構造。
【請求項9】
ボルトと、
前記ボルトの頭部を収容する凹部に接続され前記ボルトが通過する貫通孔を有する第1部材と、
前記貫通孔を通過した前記ボルトと噛み合う螺子穴を有する第2部材と、
前記凹部に設けられた第1螺子と噛み合う第2螺子を有した緩み止め具と、を備え、
前記緩み止め具は、前記ボルトの回転軸線に沿って前記緩み止め具を貫通し、角レンチを差し込み可能な角穴を有し、
前記角穴に差し込んだ前記角レンチを回転させることによって、前記緩み止め具を前記頭部と接触する位置に締め付けて固定させることができる、締結構造。
【請求項10】
前記緩み止め具は、前記ボルトと逆ねじの関係にある、請求項
9に記載の締結構造。
【請求項11】
前記緩み止め具の前記第2螺子の螺子ピッチは、前記ボルトの螺子ピッチよりも短い、
請求項9又は10に記載の締結構造。
【請求項12】
前記緩み止め具が、前記凹部の内部に配置される、請求項9~11のいずれか一項に記載の締結構造。
【請求項13】
第1ボルト及び第2ボルトと、
前記第1ボルト及び前記第2ボルトのそれぞれに相対回転が規制されるようにして取り付けられる緩み止め具と、を備え、
前記第1ボルトの頭部には、角穴と、前記角穴から離間した切欠部と、が設けられ、
前記第2ボルトの頭部には、角穴と、前記角穴から離間した切欠部と、が設けられ、
前記第1ボルトの前記切欠部は、前記第1ボルトの軸線方向に直交する方向に開口し、開口した位置から前記第1ボルトの前記軸線方向に直交する前記方向に沿って前記角穴に向けて延びる凹部を形成し、
前記第2ボルトの前記切欠部は、前記第2ボルトの軸線方向に直交する方向に開口し、開口した位置から前記第2ボルトの前記軸線方向に直交する前記方向に沿って前記角穴に向けて延びる凹部を形成し、
前記緩み止め具は、互いに向けて開口する前記第1ボルトの前記切欠部と前記第2ボルトの前記切欠部とに跨って配置され、前記第1ボルトの前記頭部及び前記第2ボルトの前記頭部に支持されている、固定装置。
【請求項14】
前記緩み止め具は、前記第1ボルトの前記頭部及び前記第2ボルトの前記頭部に支持された状態において、前記第1ボルトの軸線方向に前記第1ボルトの前記頭部から突出しておらず、前記第2ボルトの軸線方向に前記第2ボルトの前記頭部から突出していない、請求項13に記載の固定装置。
【請求項15】
第1ボルト及び第2ボルトと、
前記第1ボルト及び前記第2ボルトが通過する貫通孔を有した第1部材と、
前記第1ボルトが噛み合う第1螺子穴及び前記第2ボルトが噛み合う第2螺子穴を有した第2部材と、
前記第1ボルト及び前記第2ボルトのそれぞれに相対回転が規制されるようにして取り付けられる緩み止め具と、を備え、
前記第1ボルトの頭部には、角穴と、前記角穴から離間した切欠部と、が設けられ、
前記第2ボルトの頭部には、角穴と、前記角穴から離間した切欠部と、が設けられ、
前記第1ボルトの前記切欠部は、前記第1ボルトの軸線方向に直交する方向に開口し、開口した位置から前記第1ボルトの前記軸線方向に直交する前記方向に沿って前記角穴に向けて延びる凹部を形成し、
前記第2ボルトの前記切欠部は、前記第2ボルトの軸線方向に直交する方向に開口し、開口した位置から前記第2ボルトの前記軸線方向に直交する前記方向に沿って前記角穴に向けて延びる凹部を形成し、
第1部材と第2部材とが前記第1ボルトおよび前記第2ボルトによって締結されたとき、前記第1ボルトの前記切欠部と、前記第2ボルトの前記切欠部とは、互いに向けて開口し、
前記緩み止め具は、前記第1ボルトの前記切欠部と前記第2ボルトの前記切欠部とに跨って配置され、前記第1ボルトの前記頭部及び前記第2ボルトの前記頭部に支持されている、締結構造。
【請求項16】
前記緩み止め具は、前記第1ボルトの前記頭部及び前記第2ボルトの前記頭部に支持された状態において、前記第1ボルトの軸線方向に前記第1ボルトの前記頭部から突出しておらず、前記第2ボルトの軸線方向に前記第2ボルトの前記頭部から突出していない、請求項
15に記載の締結構造。
【請求項17】
第1ボルト及び第2ボルトと、
前記第1ボルト及び前記第2ボルトが通過する貫通孔を有した第1部材と、
前記第1ボルトが噛み合う第1螺子穴及び前記第2ボルトが噛み合う第2螺子穴を有した第2部材と、
前記第1ボルト及び前記第2ボルトのそれぞれに相対回転が規制されるようにして取り付けられる緩み止め具と、を備え、
前記緩み止め具は、板状の基部と、前記基部から突出して前記第1ボルトの頭部に設けられた角穴内に配置される第1凸部と、前記基部から突出して前記第2ボルトの頭部に設けられた角穴内に配置される第2凸部と、を有し、
前記第1部材に、前記第1ボルトの頭部及び前記第2ボルトの頭部を収容する単一の凹部が設けられ、
前記基部が前記凹部に締まり嵌めされる、締結構造。
【請求項18】
前記緩み止め具は、前記凹部の内部に配置されている、請求項
17に記載の締結構造。
【請求項19】
前記第1部材及び前記第2部材の一方が、減速機である、請求項5~12及び
15~18のいずれか一項に記載の締結構造。
【請求項20】
前記第1部材は、減速機のキャリアの第1部分であり、
前記第2部材は、減速機のキャリアの第2部分である、請求項5~12及び
15~18のいずれか一項に記載の締結構造。
【請求項21】
請求項5~12及び
15~18のいずれか一項に記載の締結構造を備える、産業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトの緩み止めを行うための緩み止め具及び緩み止め機構、二つの部材を固定するための固定装置、締結構造および産業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ボルトを用いて二つの部材を締結することが、広く種々の分野で実施されている。一例として、偏心揺動型等の減速機(特許文献1)は、当該減速機から回転を出力される部材と、ボルトを用いて締結される。減速機の出力は、高速駆動の要求から増大を続け、これにともなって、各ボルトに加えられる力も増大してきた。ボルトに加えられる力が大きくなると、ボルトの緩みが生じやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、ボルトの緩み止めを行うための緩み止め具、並びに、この緩み止め具を含んだ緩み止め機構、固定装置、締結構造および産業機械の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による第1の緩み止め具は、ボルトの頭部と前記頭部を収容する収容部の壁部とに接触するようにして配置される環状の接触部を備える。
【0006】
本発明による第1の緩み止め具において、前記接触部の静止摩擦係数は、前記頭部の静止摩擦係数より大きく、前記壁部の静止摩擦係数よりも大きくなっていてもよい。
【0007】
本発明による第1の緩み止め具において、
前記接触部に接続した天部を備え、
前記天部は、前記頭部に設けられた角穴内に配置される凸部を有するようにしてもよい。
【0008】
本発明による第1の緩み止め具において、前記凸部を貫通する螺子穴が設けられていてもよい。
【0009】
本発明による第1の緩み止め具において、前記凸部は前記ボルトの前記角穴に圧入されるようにしてもよい。
【0010】
本発明による第1の緩み止め具が、前記接触部に接続し螺子穴を設けられた天部を備えるようにしてもよい。
【0011】
本発明による第1の緩み止め具において、前記接触部の前記頭部に接触する面は、円筒の内周面状となっていてもよい。
【0012】
本発明による第1の緩み止め具が、前記ボルトの前記頭部と前記接触部との摩擦により、前記ボルトの回転を規制するようにしてもよい。
【0013】
本発明による第1の緩み止め機構は、
ボルトの頭部を収容する凹部に接続され前記ボルトが通過する貫通孔を有する第1部材と、
前記ボルトの前記頭部と前記凹部の壁部とに接触するようにして前記凹部内に配置される環状の接触部を有する緩み止め具と、を備える。
【0014】
本発明による第1の締結構造は、
ボルトと、
前記ボルトの頭部を収容する凹部に接続され前記ボルトが通過する貫通孔を有する第1部材と、
前記貫通孔を通過した前記ボルトと噛み合う螺子穴を有する第2部材と、
前記ボルトの前記頭部と前記凹部の壁部とに接触するようにして前記凹部内に配置される環状の接触部を有する緩み止め具と、を備える。
【0015】
本発明による第1の締結構造において、前記緩み止め具は、前記接触部に接続し螺子穴を設けられた天部を有し、
本発明による第1の締結構造が、前記天部の螺子穴と噛み合う螺子部材を備えるようにしてもよい。
【0016】
本発明による第1の締結構造において、前記螺子部材は、前記天部の前記螺子穴と噛み合うことで、前記ボルトの前記頭部に接触可能となるようにしてもよい。
【0017】
本発明による第1の締結構造において、前記緩み止め具が、前記凹部の内部に配置されていてもよい。
【0018】
本発明による第1の締結構造において、前記ボルトの前記頭部は、円柱状の外形状を有するようにしてもよい。
【0019】
本発明による第2の緩み止め具は、ボルトの頭部を収容する凹部に設けられた第1螺子と噛み合う第2螺子を備える。
【0020】
本発明による第3の緩み止め具は、ボルトの頭部を収容する凹部に固定されて前記頭部に接触することで前記ボルトの回転を規制する。
【0021】
本発明による第2又は第3の緩み止め具において、前記緩み留め具は前記凹部に圧入されるようにしてもよい。
【0022】
本発明による第2又は第3の緩み止め具において、前記螺子を外周面に有し、前記外周面の中心となる位置に角穴を有していてもよい。
【0023】
本発明による第2の緩み止め機構は、
ボルトの頭部を収容する凹部に接続され前記ボルトが通過する貫通孔を有する第1部材と、
前記凹部に設けられた第1螺子と噛み合う第2螺子を有した緩み止め具と、を備える。
【0024】
本発明による第3の緩み止め機構は、
ボルトの頭部を収容する凹部に接続され前記ボルトが通過する貫通孔を有する第1部材と、
前記凹部に固定されて前記頭部に接触することで前記ボルトの回転を規制する緩み止め具と、を備える。
【0025】
本発明による第2の締結構造は、
ボルトと、
前記ボルトの頭部を収容する凹部に接続され前記ボルトが通過する貫通孔を有する第1部材と、
前記貫通孔を通過した前記ボルトと噛み合う螺子穴を有する第2部材と、
前記凹部に設けられた第1螺子と噛み合う第2螺子を有した緩み止め具と、を備える。
【0026】
本発明による第3の締結構造は、
ボルトと、
前記ボルトの頭部を収容する凹部に接続され前記ボルトが通過する貫通孔を有する第1部材と、
前記貫通孔を通過した前記ボルトと噛み合う螺子穴を有する第2部材と、
前記凹部に固定されて前記頭部に接触することで前記ボルトの回転を規制する緩み止め具と、を備える。
【0027】
本発明による第2又は第3の締結構造において、前記緩み止め具は、前記ボルトと逆ねじの関係にあるようにしてもよい。
【0028】
本発明による第2又は第3の締結構造において、前記緩み止め具の前記第2螺子の螺子ピッチは、前記ボルトの螺子ピッチよりも短くなっていてもよい。
【0029】
本発明による第2又は第3の締結構造において、前記緩み止め具が、前記凹部の内部に配置されるようにしてもよい。
【0030】
本発明による第4の緩み止め具は、第1ボルト及び第2ボルトのそれぞれに相対回転が規制されるようにして取り付けられる。
【0031】
本発明による第1の固定装置は、
第1ボルト及び第2ボルトと、
前記第1ボルト及び前記第2ボルトのそれぞれに相対回転が規制されるようにして取り付けられる緩み止め具と、を備える。
【0032】
本発明による第4の締結構造は、
第1ボルト及び第2ボルトと、
前記第1ボルト及び前記第2ボルトが通過する貫通孔を有した第1部材と、
前記第1ボルトが噛み合う第1螺子穴及び前記第2ボルトが噛み合う第2螺子穴を有した第2部材と、
前記第1ボルト及び前記第2ボルトのそれぞれに相対回転が規制されるようにして取り付けられる緩み止め具と、を備える。
【0033】
本発明による第4の締結構造において、前記第1ボルトの頭部及び前記第2ボルトの頭部に切欠部が設けられ、前記緩み留め具は前記切欠部に配置されるようにしてもよい。
【0034】
本発明による第4の締結構造において、前記緩み留め具は前記切欠部に圧入されるようにしてもよい。
【0035】
本発明による第4の締結構造において、前記緩み止め具は、基部と、前記基部から突出して前記第1ボルトの頭部に設けられた角穴内に配置される第1凸部と、前記基部から突出して前記第2ボルトの頭部に設けられた角穴内に配置される第2凸部と、を有するようにしてもよい。
【0036】
本発明による第4の締結構造において、前記第1凸部は前記第1ボルトの前記角穴に圧入され、前記第2凸部は前記第2ボルトの前記角穴に圧入されるようにしてもよい。
【0037】
本発明による第4の締結構造において、
前記第1部材に、前記第1ボルトの頭部及び前記第2ボルトの頭部を収容する単一の凹部が設けられ、
前記緩み止め具は、前記凹部の内部に配置されていてもよい。
【0038】
本発明による第1~第4の締結構造において、前記第1部材及び前記第2部材の一方が、減速機であるようにしてもよい。
【0039】
本発明による第1~第4の締結構造において、
前記第1部材は、減速機のキャリアの第1部分であり、
前記第2部材は、減速機のキャリアの第2部分であるようにしてもよい。
【0040】
本発明による産業機械は、上述した本発明による第1~第4の締結構造のいずれかを備える。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、ボルトの緩みを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】
図1は、一実施の形態を説明するための図であって、締結構造の適用対象例としての減速機を示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、締結構造を含む産業機械を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、締結構造の第1の態様を示す断面図である。
【
図5】
図5は、締結構造の第2の態様を示す断面図である。
【
図6】
図6は、締結構造の第3の態様の一例を示す平面図である。
【
図7】
図7は、
図6のVII-VII線に沿った断面図である。
【
図8】
図8は、締結構造の第3の態様の他の態様を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施の形態について説明する。
図1~
図9は、本発明の一実施の形態を説明するための図である。以下においては、一例として、本実施の形態を減速機、とりわけ偏心揺動型の減速機に適用した例について説明する。ただし、以下に説明する例に限られず、本発明を、ボルトを用いて締結された種々の締結製品等に適用することが可能である。
【0044】
まず、
図1及び
図2を参照して、偏心揺動型減速機10の全体的な構成について説明する。減速機10は、ケース20とキャリア30とクランクシャフト40と二個の外歯歯車50a,50bとを有している。ケース20は、内歯25を有している。クランクシャフト40は、キャリア30に支持されて、二個の外歯歯車50a,50bを駆動する。この減速機10では、外歯歯車50a,50bの外歯55が内歯25と噛み合うことにより、キャリア30は、回転軸線RAを中心としてケース20に対して相対回転する。以下において、回転軸線RAと平行な方向を軸方向DAとし、回転軸線RAと直交する方向を径方向DRとする。軸方向DA及び径方向DRは、回転軸線RAを中心とする円周方向DCと直交している。
【0045】
ケース20は、略円筒状のケース本体21と、ケース本体21の内面に保持された内歯ピン24と、を有している。ケース本体21には、円周方向DCに沿って配列されたピン溝が形成されている、ピン溝は、軸方向DAに延び、円柱状の内歯ピン24を収容保持している。内歯ピン24は、軸方向DAに延び、内歯25を形成している。
【0046】
キャリア30は、一対の軸受12を介して回転軸線RAを中心として回転可能となるようケース20によって保持されている。キャリア30は、ボルト36によって互いに固定されたキャリアベース部(「第1部分」とも呼ぶ)31及びプレート部(「第2部分」とも呼ぶ)32を有している。ボルト36の中心軸線は、軸方向DAと平行となっている。キャリアベース部31は、円板上のベースプレート部31aと、ベースプレート部31aから突出した複数の柱部31bと、を有している。図示された例において、ベースプレート部31a及び複数の柱部31bは、一体的に形成されている。
図2に示すように、複数の柱部31bは、回転軸線RAを中心とした円周方向DCに等間隔を開けて設けられている。図示された例において、三つの柱部31bが設けられている。柱部31bには、ボルト36と噛み合う螺子穴37が形成されている。螺子穴37は、柱部31bの先端面に開口している。また、プレート部32には、ボルト36が噛み合うことなく貫通した貫通孔38が形成されている。ボルト36と貫通孔38との間には隙間があいている。
【0047】
キャリア30のキャリアベース部31及びプレート部32には、それぞれ、回転軸線RA上に位置する中央孔34が形成されている。また、キャリア30には、キャリアベース部31及びプレート部32を貫通する貫通孔35が形成されている。複数の貫通孔35が、回転軸線RAを中心とした円周方向DCに等間隔をあけて、キャリアベース部31及びプレート部32にそれぞれ設けられている。図示された例において、キャリアベース部31及びプレート部32に三つの貫通孔35が設けられている。
【0048】
キャリアベース部31及びプレート部32に形成された貫通孔35内に、軸受13a,13bが設けられている。軸方向に設けられた一対の軸受13a,13bによって、クランクシャフト40がキャリア30に対して回転可能に保持されている。なお、クランクシャフト40の回転軸線RACは、軸方向DAと平行になっている。クランクシャフト40は、軸方向DAに配列された二個の偏心体41a,41bと、入力歯車42と、を有している。各偏心体41a,41bは、円板状または円柱状の外形状を有している。二個の偏心体41a,41bの中心軸線CAa,CAbは、クランクシャフト40の回転軸線RACを中心として対称的に偏心されている。
【0049】
二個の外歯歯車50a,50bは、キャリア30のキャリアベース部31のベースプレート部31aとプレート部32との間に形成されたスペース内に配置されている。二個の外歯歯車50a,50bは、軸方向DAに配列されている。
図2に示すように、各外歯歯車50a,50bには、中央に位置する中央孔51が形成されている。外歯歯車50a,50bは、中央孔51を中心とした外周縁に沿って配列された外歯55を有している。外歯55の歯数は、ケース20の内歯25の歯数よりも少ない(一例として、一つだけ少ない)。また、外歯歯車50a,50bの外径は、ケース20の内径よりも若干小さくなっている。
【0050】
また、各外歯歯車50a,50bには、中央孔51を中心とした円周方向にそって等間隔あけて設けられた偏心体挿通孔52a,52bが形成されている。偏心体挿通孔52a,52bには、軸受13c,13dがそれぞれ配置されている。この軸受13c,13dによって、クランクシャフト40の偏心体41a,41bが保持されている。
【0051】
さらに、各外歯歯車50a,50bには、中央孔51を中心とした円周方向DCに沿って等間隔あけて設けられた柱部挿通孔53a,53bが形成されている。各外歯歯車50a,50bにおいて、柱部挿通孔53a,53b及び偏心体挿通孔52a,52bは、中央孔51を中心とした円周方向に沿って交互に配置されている。キャリアベース部31の各柱部31bが、外歯歯車50a,50bの対応する柱部挿通孔53a,53bを貫通している。
【0052】
以上の構成を有した減速機10では、モータ等の駆動装置60からのトルクが入力歯車42に伝達される。図示された例において、駆動装置60の入力軸61がキャリア30の中央孔34及び外歯歯車50a,50bの中央孔51を通過して、入力歯車42に噛み合っている。入力軸61は、回転軸線RAを中心として回転する。駆動装置60から入力歯車42に回転が伝達されると、クランクシャフト40が、回転軸線RACを中心として回転する。このとき第1及び第2偏心体41a,41bは、偏心回転する。また、各外歯歯車50a,50bは、第1及び第2偏心体41a,41bの偏心回転にともなって揺動する。より厳密には、各外歯歯車50a,50bは、キャリア30に対して、回転軸線RAを中心とした円周経路を並進動作する。さらに、外歯歯車50a,50bの揺動時、外歯歯車50a,50bの外歯55がケース20の内歯25と噛み合う。そして、外歯55の歯数が内歯25の歯数よりも少ないので、外歯歯車50a,50bは、ケース20に対して揺動回転する。つまり、外歯歯車50a,50bは、回転軸線RAを中心として公転しながら、さらに自身の中心軸線を中心として自転する。この結果、クランクシャフト40を介して外歯歯車50a,50bを支持するキャリア30も、回転軸線RAを中心として、ケース20に対して回転する。このようにして、駆動装置60の入力軸61から入力された回転が、減速されて、20とキャリア30との相対回転として出力される。
【0053】
以上に説明した減速機10は、例えば産業機械IMに組み込まれて使用される。より具体的には、ロボット6の旋回胴や腕関節等の旋回部、各種工作機械の旋回部等に、駆動装置とともに減速機10が使用され得る。
図3に示された具体例として、ロボット6のベース6Xにケース20を固定し、ロボット6の旋回胴6Yにキャリア30を接続することにより、ベース6Xに対して旋回胴6Yを高トルクで回転させ且つ当該旋回胴6Yの回転を高精度に制御することができる。
【0054】
一例として、ロボット6のベース6Xは、ケース本体21のフランジ部22に設けられた貫通孔26を通過したボルトと噛み合う螺子穴を有している。すなわち、ボルトを用いて、ロボット6のベース6Xと、減速機10のケース20と、を締結することができる。フランジ部22は、ケース本体21から径方向DRに突出し、
図2に示すように環状に形成されている。フランジ部22には、複数の貫通孔26が、周方向DCに沿って等間隔に設けられている。ボルトは、軸線方向DAと平行な軸線を中心として回転させられ、ベース6Xに形成された螺子穴にねじ込まれる。
【0055】
また、ロボット6の旋回胴6Yには、例えば、ボルトが通過する貫通孔が設けられている。キャリア30のキャリアベース31は、旋回胴6Yの貫通孔を通過したボルトと噛み合う螺子穴39を有している。すなわち、ボルトを用いて、ロボット6の旋回胴6Yと、減速機10のキャリア30と、を締結することができる。キャリアベース31のベースプレート部31aには、図示しない多数の螺子穴39が設けられており、多数のボルトを用いて、減速機10と旋回胴6Yが固定される。各ボルトは、軸線方向DAと平行な軸線を中心として回転させられ、キャリアベース31に形成された螺子穴39にねじ込まれる。
【0056】
ところで、従来技術の欄でも言及したように、例えば高速駆動の要求から、減速機10の高出力化が進んでいる。減速機10からの出力が大きい場合、減速機10とロボット6とを固定するためのボルトや、減速機10の組み立てに用いたボルトに、緩みが生じやすくなる。ボルトに緩みが生じると、減速機10による動力伝達に不具合が生じるだけでなく、減速機10やロボット6の損傷を引き起こす。
【0057】
一方、本実施の形態では、ボルトBの緩みを防止するための緩み止め具70が、締結構造FSに組み込まれている。ここで、締結構造FSは、ボルトBと、ボルトBが通過する貫通孔THを有した第1部材M1と、貫通孔THを通過したボルトBと噛み合う螺子穴SHを有した第2部材M2と、ボルトBの緩みを防止するための緩み止め具70と、を含んでいる。すなわち、この締結構造FSにおいて、第1部材M1および第2部材M2がボルトBによって締結され、且つ、緩み止め具70によってボルトBの緩みが効果的に防止される。
【0058】
具体的な第1の適用例として、締結構造FSが、減速機10、とりわけケース20(フランジ部22)を第1部材M1として、ロボット6のベース6Xを第2部材M2として、構成され得る。また、第2の適用例として、締結構造FSが、キャリア30のプレート部(第2部分)32を第1部材M1として、キャリア30のキャリアベース部(第1部分)31、とりわけキャリアベース部31の柱部31bを第2部材M2として、構成され得る。さらに、第3の適用例として、締結構造FSが、ロボット6の旋回胴6Yを第1部材M1として、減速機10、とりわけ減速機10のキャリア30(より詳しくは、キャリアベース部31のベースプレート部31a)を第2部材M2として、構成され得る。
【0059】
以下、緩み止め具のいくつかの具体例について、
図4~
図9を参照して説明していく。
図4~
図9は、締結構造FSのボルトの周囲を拡大して示している。以下の説明において、対応する構成要素、部材、部位等については同一の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0060】
<第1の態様>
最初に
図4を主に参照して本実施の形態における第1の態様について説明する。
図4に示された第1の態様において、締結構造FSは、第1部材M1、第2部材M2、ボルトB及び緩み止め具70を有している。
【0061】
第1部材M1は、ボルトBが通過する貫通孔THを有している。また、第1部材M1は、ボルトBの頭部HPが収容される凹部RP(収納部)を有している。凹部RPは座ぐり穴として形成される。凹部RPは、壁部WPと底部BPとによって区画されている。
図4に示された壁部WPは、例えば、ボルトBの頭部HPに対応した形状、ボルトBの頭部HPと相補的な形状を有することができる。壁部WPは、例えば、円柱の外周面をなす形状を有することができる。貫通孔THは、凹部RPに接続している。より具体的には、貫通孔THの一端が、凹部RPの底部BPに開口している。ボルトBと貫通孔THの壁面と当該貫通孔を通過するボルトBとの間に隙間が形成される。
【0062】
第2部材M2は、ボルトBと噛み合う螺子穴SHを有している。螺子穴SHは、図示された例において有底穴として形成されているが、貫通孔として形成されていてもよい。
【0063】
ボルトBは、頭部HPが角柱状となっている角ボルト、例えば頭部HPが六角柱状となっている六角ボルトであってもよい。ただし、図示された例において、ボルトBは、頭部HPに角穴BHが設けられている角穴付ボルトとなっている。角穴付ボルトは、角穴BHに嵌まり込むレンチを用いて回転させられ、第2部材M2の螺子穴SHと噛み合うようになる。典型例として、ボルトBは、頭部HPに六角柱状の角穴BHが設けられている六角穴付ボルトとすることができる。
【0064】
次に、第1の態様での緩み止め具70について説明する。第1の態様において、緩み止め具70は、第1部材M1の凹部RP内に配置される。緩み止め具70は、凹部RP内に配置される接触部71を有している。
図4に示すように、緩み止め具70の接触部71は、凹部RP内に配置された状態で、凹部RPの壁部WPとボルトBの頭部HPとに接触している。緩み止め具70の接触部71と凹部RPの壁部WPとの摩擦により、第1部材M1に対する緩み止め具70の相対回転が規制される。また、緩み止め具70の接触部71とボルトBの頭部HPとの摩擦により、緩み止め具70とボルトBとの相対回転が規制される。結果として、緩み止め具70を用いることで、第1部材M1に対するボルトBの相対回転が規制され、ボルトBが緩んでしまうことを効果的に防止することができる。
【0065】
とりわけ図示された例において、接触部71は、ボルトBの頭部HPを取り囲むように環状に形成されている。したがって、緩み止め具70の接触部71とボルトBの頭部HPとの摩擦力を大きくすることができる。また、緩み止め具70の接触部71が、その全周に亘って、凹部RPの壁部WPとも接触することができる。したがって、緩み止め具70の接触部71と凹部RPの壁部WPとの摩擦力を大きくすることができる。これにより、環状の接触部71を有する緩み止め具70によれば、ボルトBの緩み止め機能を優れたものとすることができる。
【0066】
図示された例のように、ボルトBの頭部HPが円柱状の外径を有する場合でも、緩み止め具70の接触部71のボルトBに接触する面が円筒の内周面状となっていることで、十分な接触面積を確保することができる。そして、十分な接触面積に起因した十分な摩擦力により、ボルトBの緩み止めを効果的に実現することができる。同様に、凹部RPの壁部WPが円筒の内周面状の形状を有する場合でも、緩み止め具70の接触部71の壁部WPに接触する面が円柱の外周面状となっていることで、十分な接触面積を確保することができる。そして、十分な接触面積に起因して十分な摩擦力を発揮することができる。すなわち、これまで回り止めを実現し難いと考えられていた角部を含まないボルト頭部HPを用いた場合においても、ボルトBの緩み止めを有効に実現することができる。
【0067】
緩み止め具70による緩み止め防止機能をより有効とするには、緩み止め具70の接触部71での静止摩擦係数を、ボルトBの頭部HPでの静止摩擦係数より大きく、さらに凹部RPの壁部WPでの静止摩擦係数よりも大きくすることが好ましい。ここで、静止摩擦係数は、JIS K 7125に準拠して測定される値である。
【0068】
緩み止め具70による緩み止め防止機能をより有効とするには、接触部71がボルトBの頭部HPと凹部RPの壁部WPとの間に圧入されていることが好ましい。すなわち、ボルトBの頭部HPと凹部RPの壁部WPとの間に接触部71を押し込むことにより、緩み止め具70が凹部RPに締まり嵌めにより取り付けられていることが好ましい。圧入による緩み止め具70の設置は、容易である点においても好ましい。圧入された接触部71は、ボルトBの頭部HPと凹部RPの壁部WPとの間で圧縮されている。したがって、接触部71は、ボルトBの頭部HPと凹部RPの壁部WPとの間に大きな摩擦力を生じさせることができる。これにより、緩み止め具70によるボルトBの緩み止めをより優れたものとすることができる。
【0069】
図4に示された例において、緩み止め具70は、接触部71に接続した天部72を更に有している。天部72は、凹部RP内に位置するボルトBを覆う位置に配置される。そして、図示された例において、天部72は、ボルトBの角穴BH内に位置するようになる凸部73を有している。この凸部73は、天部72からボルトBに向けて突出している。緩み止め具70が凸部73を有することで、緩み止め具70を第1部材M1及びボルトBに対して高精度に位置決めすることができ、これにより、ボルトBの緩み止めをより効果的に防止することができる。また、緩み止め具70の凸部73と角穴BH内の壁部との接触により、ボルトBの頭部BHと緩み止め具70の接触部71との摩擦力を高めることができ、これによっても、ボルトBの緩み止めをより効果的とすることができる。
【0070】
さらに、緩み止め具70による緩み止め防止機能をより有効とするには、緩み止め具70の凸部73がボルトBの角穴BHに圧入されることが好ましい。すなわち、緩み止め具70の凸部73をボルトBの角穴BH内に押し込むことにより、緩み止め具70が角穴BHに締まり嵌めにより取り付けられていることが好ましい。一つの簡易な動作によって、緩み止め具70を第1部材M1の凹部RP内に容易かつ安定して取り付けることができ、しかも、緩み止め具70とボルトBとの間の摩擦力をより大きくして緩み止め機能を向上させることができる。
【0071】
また、図示された例において、緩み止め具70の天部72に螺子穴74が設けられている。
図4に二点鎖線で示すように、緩み止め具70の螺子穴74を利用することで、緩み止め具70に対して螺子部材100を取り付けることができる。この螺子部材100を緩み止め具70に対して回転させることで、螺子部材100を緩み止め具70に対して相対移動させることができる。そして、
図4に二点鎖線で示すように螺子部材100をボルトBや第1部材M1に接触させた状態から更に螺子部材100を回転させることで、緩み止め具70をボルトBや第1部材M1に対して相対移動させ、緩み止め具70を第1部材M1から容易に取り外すことができる。このような螺子部材100の利用は、第1部材M1の凹部RP内に圧入により得取り付けられた緩み止め具70を、凹部RPから取り外す際に便利である。
【0072】
なお、図示された例において、螺子部材100の回転軸線、ボルトBの回転軸線AX、及び、螺子部材100の緩み止め具70に対する相対移動方向は、互いに平行となっている。また、図示された例において、螺子部材100は、緩み止め具70の螺子穴74と噛み合うことで、ボルトBの頭部HPに設けられた角穴BHの底部に接触可能となっている。螺子部材100が、ボルトBと安定してボルトBの軸線方向に接触することができる。これにより、緩み止め具70の第1部材M1からの取り外しをより安定して容易に行うことができる。
【0073】
また、緩み止め具70の天部72において、螺子穴74は、凸部73に設けられている。言い換えると、凸部73は、筒状に形成されて、その内周面に螺子が形成されている。このような構成によれば、螺子部材100と緩み止め具70の螺子穴74との噛み合い長さを十分に確保することができ、螺子部材100の操作を安定して行うことができ、また螺子部材100の緩み止め具70に対する相対移動を安定させることができる。
【0074】
加えて、図示された例において、緩み止め具70の全体が、第1部材M1の凹部RPの内部に配置されるようになる。この例によれば、ボルトBに加えて、緩み止め具70が外部に露出して外部と接触等することを効果的に防止することができる。これにより、緩み止め具70を用いて、ボルトBの緩みをより効果的に防止することができる。
【0075】
以上に説明した第1の態様において、緩み止め具70は、ボルトBの頭部HPを収容する凹部RP内にボルトBの頭部HPと凹部RPの壁部WPとに接触するようにして配置される環状の接触部71を有している。凹部RPの壁部WPと緩み止め具70の接触部71との摩擦により、第1部材M1に対する緩み止め具70の回転を効果的に規制することができる。また、ボルトBの頭部HPと緩み止め具70の接触部71との摩擦により、緩み止め具70に対するボルトBの回転を効果的に規制することができる。とりわけ、緩み止め具70の接触部71は、環状となっており、ボルト頭部HPに環状の領域で接触することができるため、緩み止め具70に対するボルトBの回転をより効果的に規制することができる。このような緩み止め具70を用いることで、ボルトBの緩みを効果的に防止することができる。
【0076】
また、第1の態様による緩み止め具70は、ボルトBの頭部HPを収容する凹部RP及び凹部RPに接続しボルトBが通過する貫通孔THを有する第1部材M1とともに、緩み止め機構LMを構成し、貫通孔THを通過して第2部材M2の螺子穴SHと噛み合ったボルトBの緩みを効果的に防止することができる。
【0077】
さらに、第1の態様による緩み止め具70は、ボルトBと、ボルトBの頭部HPを収容する凹部RP及び凹部RPに接続しボルトBが通過する貫通孔THを有する第1部材M1と、貫通孔THを通過したボルトBと噛み合う螺子穴SHを有する第2部材M2と、とともに締結構造FSを構成する。この締結構造FSでは、ボルトBの緩みが効果的に抑制されるので、第1部材M1と第2部材M2とを安定して締結した状態に維持することができる。
【0078】
<第2の態様>
次に、主として
図5を参照し、第2の態様について説明する。
図5に示された第2の態様による締結構造FSは、第1の態様と同様に、第1部材M1、第2部材M2、ボルトB及び緩み止め具70を有している。第2の態様における締結構造FSにおいて、第1部材M1、第2部材M2及びボルトBは、多くの構成を上述した第1の態様と同様に構成することができるので、重複する詳細な説明を省いて相違する構成についてより詳しく記載する。
【0079】
第2の態様において、緩み止め具70は、ボルトBの頭部HPを収容する凹部RPに設けられた螺子(内螺子、第1螺子)ISと噛み合う螺子(外螺子、第2螺子)OSを有している。第2の態様において、緩み止め具70は、ボルトBの頭部HPを収容する凹部RPに固定され、且つ、頭部HPに接触することでボルトBの回転を規制する。この結果、緩み止め具70を用いることで、第1部材M1に対するボルトBの相対回転が規制され、ボルトBが緩んでしまうことを効果的に防止することができる。
【0080】
図示された例において、第1部材M1の凹部RP内には、螺子(内螺子)ISが設けられている。一方、緩み止め具70は、凹部RPの螺子ISと噛み合う螺子(外螺子)OSを有している。緩み止め具70は、凹部RPの螺子ISと噛み合うことで、第1部材M1の凹部RPに固定されるようになっている。
図5に示すように、緩み止め具70の螺子OSを凹部RPの螺子ISに締めていくことで、緩み止め具70は、ボルトBに接触する。緩み止め具70を更に回転させることで、ボルトBの軸線方向、言い換えるとボルトBの回転軸線AXに沿ってボルトBを押すようになる。すなわち、緩み止め具70は、止め螺子部材として機能し、ボルトBの緩み止めを行う。緩み止め具70の回転軸線は、ボルトBの回転軸線AX上に位置している。
【0081】
図4に示すように、緩み止め具70は、高さの低い円柱状の形状を有している。緩み止め具70は、その外周面上に螺子OSを形成されている。一方、緩み止め具70は、その外周面の中心となる位置に、すなわち中心軸線AX上に、角穴77を有している。角穴77は、角柱状の空間、例えば六角柱状の空間を形成する。角穴77に差し込んだ角レンチ(例えば六角レンチ)を回転させることで、止め螺子部材として機能する緩み止め具70を凹部RP内で移動させ、ボルトBの頭部HPと接触する位置に締め付けて固定させることができる。
【0082】
ボルトBの頭部HPが凹部RP内の螺子ISに接触しないよう、ボルトBの頭部HPと凹部RPの壁部WPとの間に隙間が形成されている。したがって、ボルトBの頭部HPの直径DHは、緩み止め具70の呼び径DLよりも、小さくなっている。
【0083】
また、第1部材M1の凹部RPの深さが大きくなり過ぎないよう、ボルトBの頭部HPの高さHHは、強度が許容する範囲内で、小さく設計されていることが好ましい。一方、緩み止め具70の高さHLは、緩み止め具70の螺子OSと凹部RPの螺子ISとの噛み合い長さを或る程度確保するよう、設計される。例えば、三山分の緩み止め具70の螺子OSが凹部RPの螺子ISと噛み合うことができるよう、緩み止め具70の高さHLを決定することができる。図示された例において、緩み止め具70の高さHLは、ボルトBの頭部HPの高さHHよりも高くなっている。
【0084】
また、緩み止め具70の噛み合い長さを或る程度確保しながら、緩み止め具70の高さHLを低くして小型軽量化を図る観点から、緩み止め具70の螺子OSは細目螺子であることが好ましい。例えば、緩み止め具70の螺子ピッチがボルトBの螺子ピッチよりも短くなるようにしてもよい。この例によれば、緩み止め具70の螺子OSと凹部RPの螺子ISとの十分な噛み合いを確保しながら、緩み止め具70及び凹部RPを小型化することができる。
【0085】
さらに、緩み止め具70は、ボルトBと逆ねじの関係にあることが好ましい。言い換えると、緩み止め具70及びボルトBの一方が逆螺子(左螺子)を用い、緩み止め具70及びボルトBの他方が正螺子(右螺子)を用いていることが好ましい。この例によれば、ボルトBを緩めるためのボルトBの回転方向と、緩み止め具70を緩めるための緩み止め具70の回転方向が、逆向きとなる。したがって、何らかの理由でボルトBが回転して緩む際に、ボルトBと接触した緩み止め具70には、ボルトBが回転しようとすることで、締める力が加えられる。これにより、緩み止め具70を用いて、ボルトBの緩みをより効果的に防止することができる。
【0086】
加えて、図示された例において、緩み止め具70の全体が、第1部材M1の凹部RPの内部に配置されるようになる。この例によれば、ボルトBに加えて、緩み止め具70が外部に露出して外部と接触等することを効果的に防止することができる。これにより、緩み止め具70を用いて、ボルトBの緩みをより効果的に防止することができる。
【0087】
以上に説明した第2の態様において緩み止め具70は、ボルトBの頭部HPを収容する凹部RPに設けられた螺子ISと噛み合う螺子OSを有している。緩み止め具70は、ボルトBの頭部HPを収容する凹部RPに固定されて頭部HPに接触することでボルトBの回転を規制する。このような緩み止め具70を用いることで、ボルトBの緩みを効果的に防止することができる。
【0088】
また、第2の態様による緩み止め具70は、ボルトBの頭部HPを収容する凹部RP及び凹部RPに接続しボルトBが通過する貫通孔THを有する第1部材M1とともに、緩み止め機構LMを構成し、貫通孔THを通過して第2部材M2の螺子穴SHと噛み合ったボルトBの緩みを効果的に防止することができる。
【0089】
さらに、第2の態様による緩み止め具70は、ボルトBと、ボルトBの頭部HPを収容する凹部RP及び凹部RPに接続しボルトBが通過する貫通孔THを有する第1部材M1と、貫通孔THを通過したボルトBと噛み合う螺子穴SHを有する第2部材M2と、とともに締結構造FSを構成する。この締結構造FSでは、ボルトBの緩みが効果的に抑制されるので、第1部材M1と第2部材M2とを安定して締結した状態に維持することができる。
【0090】
なお、以上の説明において、緩み止め具70の螺子OSと凹部RPの螺子ISとの噛み合いによって、緩み止め具70が凹部RPに固定される例を示した。しかしながら、第2の態様はこの例に限定されず、その他の方法で緩み止め具70が凹部RPに固定され且つ頭部HPに接触することでボルトBの回転を規制するようにしてもよい。例えば緩み止め具70が、凹部RP内に圧入されることで、締まり嵌めによって凹部RPに固定されるようにしてもよい。この例によれば、一つの簡易な動作によって、緩み止め具70を第1部材M1の凹部RPに固定することができる。
【0091】
<第3の態様>
次に、主として
図6~
図9を参照し、第3の態様について説明する。
図6~
図9に示された第3の態様による締結構造FSは、第1の態様及び第2の態様と同様に、第1部材M1、第2部材M2、ボルトB及び緩み止め具70を有している。第3の態様における締結構造FSにおいて、第1部材M1、第2部材M2及びボルトBは、多くの構成を上述した第1の態様と同様に構成することができるので、重複する詳細な説明を省いて相違する構成についてより詳しく記載する。
【0092】
第3の態様において、緩み止め具70は、第1ボルトB1に相対回転が規制されるようにして取り付けられ、且つ、第2ボルトB2に相対回転が規制されるようにして取り付けられる。第1ボルトB1の回転軸線(第1ボルトB1の中心軸線)AX1と第2ボルトB2の回転軸線(第2ボルトB1の中心軸線)AX2は、ずれて位置しており、一直線上に位置していない。したがって、第3の態様において、第1ボルトB1と緩み止め具70の相対回転を規制し且つ第2ボルトB2と緩み止め具70の相対回転を規制することで、第1ボルトB1の緩み及び第2ボルトB2の緩みの両方を効果的に防止することができる。
【0093】
第3の例において、第1ボルトB1及び第2ボルトB2と、第1ボルトB1及び第2ボルトB2のそれぞれに相対回転が規制されるようにして取り付けられる緩み止め具70と、によって固定装置FDが構成される。固定装置FDは、第1部材M1及び第2部材M2を締結により固定するために用いられる。
【0094】
なお、
図6及び
図7と、
図8及び
図9は、互いに異なる緩み止め具70の具体例を示している。いずれの例においても、第2部材M2には、第1ボルトB1と噛み合う第1螺子穴SH1と第2ボルトB2と噛み合う第2螺子穴SH2が別個に設けられている。また、第1部材M1には、第1ボルトB1が通過する貫通孔THと第2ボルトB2が通過する貫通孔THが別個に設けられている。ただし、この例に限られず、第1部材M1に、第1ボルトB1及び第2ボルトB2の両方が通過する単一の貫通孔THが設けられていてもよい。
【0095】
また、図示された二つの例のいずれにおいても、第1部材M1には、座ぐり穴としての凹部RPが一つだけ形成されている。そして、単一の凹部RP内に、第1ボルトB1の頭部HP及び第2ボルトB2の頭部HPの両方が配置されている。しかながら、この例に限られず、第1ボルトB1の頭部HP及び第2ボルトB2の頭部HPが別個に設けられた凹部RPにそれぞれ収容されるようにしてもよい。他の例として、凹部RPが設けられておらず、第1ボルトB1の頭部HP及び第2ボルトB2の頭部HPの少なくともいずれか一つが露出又は突出していてもよい。
【0096】
なお、図示された二つの例のいずれにおいても、緩み止め具70の全体が、第1部材M1に設けられた凹部RPの内部に配置されている。この例によれば、第1ボルトB1及び第2ボルトB2に加えて、緩み止め具70が外部に露出して外部と接触等することを効果的に防止することができる。これにより、緩み止め具70を用いて、第1ボルトB1の緩み及び第2ボルトB2の緩みの両方をより効果的に防止することができる。
【0097】
まず、
図6及び
図7に示された緩み止め具70について説明する。
図6及び
図7に示された具体例において、第1ボルトB1の頭部HP及び第2ボルトB2の頭部HPに切欠部CPが設けられている。緩み止め具70は、第1ボルトB1の切欠部CP内に配置されている。また、緩み止め具70は、第2ボルトB2の切欠部CP内にも配置されている。この例において、第2ボルトB2に接続した緩み止め具70が、第1ボルトB1に対してキーとして機能し、第1ボルトB1の回り止めを行う。第1ボルトB1に接続した緩み止め具70が、第2ボルトB2に対してキーとして機能し、第2ボルトB2の回り止めを行う。結果として、第1ボルトB1及び第2ボルトB2の双方の回転が規制されるようになる。
【0098】
図6及び
図7に示された例によれば、緩み止め具70及び固定装置FDの構成を簡易小型化することができる。また、緩み止め具70の第1ボルトB1及び第2ボルトB2への取り付けを容易に行うことができる。とりわけ、一つの簡易な動作によって、第1ボルトB1及び第2ボルトB2の両方へ緩み止め具70を取り付けることができる。
【0099】
図6及び
図7に示された例において、緩み止め具70は、切欠部CPに圧入されるようにしてもよい。一つの簡易な動作によって、第1ボルトB1及び第2ボルトB2の両方へ安定して緩み止め具70を取り付けることができる。緩み止め具70は、締まり嵌めによって切欠部CPに安定して固定される。
【0100】
図6及び
図7の例において、キーとして機能する緩み止め具70は、第1ボルトB1の回転軸線(第1ボルトB1の中心軸線)AX1に対して傾斜、とりわけ垂直な方向に延びている。したがって、緩み止め具70は、第1ボルトB1の回転を効果的に規制することができる。同様に、キーとして機能する緩み止め具70は、第2ボルトB2の回転軸線(第2ボルトB2の中心軸線)AX2に対して傾斜、とりわけ垂直な方向に延びている。したがって、緩み止め具70は、第2ボルトB2の回転を効果的に規制することができる。
【0101】
切欠部CPは、予め、ボルトB1,B2に形成されていてもよい。ただし、ボルトB1,B2を締めて第1部材M1及び第2部材M2を締結した後に、座ぐり加工によって、切欠部CPをボルトB1,B2に形成するようにしてもよい。この例によれば、ボルトB1,B2をしっかり締め込んだ後に、適切な位置に配置された切欠部CPに、緩み止め具70を取り付けることができる。これにより、第1部材M1及び第2部材M2を安定して締結することができる。
【0102】
また、
図6及び
図7に示された例において、ボルトB1,B2は、頭部HPに角穴BH(六角穴)が形成された各穴付きボルト(六角穴付ボルト)となっている。したがって、この角穴BHに角レンチ(例えば六角穴に対応して六角レンチ)を差し込んで回転させることで、ボルトB1,B2を回転させることができる。そして、ボルトB1,B2の頭部HPにおいて、切欠部CPは、角穴BHに接続していない。つまり、切欠部CPは、角穴BHから離間している。このような構成は、強度の面において優れる。
【0103】
次に、
図8及び
図9に示された緩み止め具70について説明する。
図8及び
図9に示された具体例において、第1ボルトB1の頭部HP及び第2ボルトB2の頭部HPには、それぞれ、角穴BHが形成されている。この角穴BHに角レンチを差し込んで回転させることで、ボルトB1,B2を回転させることができる。そして、
図8及び
図9に示された緩み止め具70は、第1ボルトB1の頭部HPに設けられた角穴BH内に配置される第1凸部81と、第2ボルトB2の頭部HPに設けられた角穴BH内に配置される第2凸部82と、第1凸部81及び第2凸部82を保持した基部80と、を有している。第1凸部81及び第2凸部82は、基部80に固定されて基部80から突出している。第1凸部81及び第2凸部82は、基部80と一体的に形成されて基部80から突出していてもよい。
【0104】
第1凸部81は、第1ボルトB1の角穴BH(例えば六角穴)に対応した角柱状(六角柱)の部分を含んでいる。このため、第1凸部81は、第1ボルトB1の角穴BH内に配置されると、第1ボルトB1の回転軸線(中心軸線)AX1を中心とした第1ボルトB1に対する回転を規制されるようになる。同様に、第2凸部82は、第2ボルトB2の角穴BH(例えば六角穴)に対応した角柱状(六角柱)の部分を含んでいる。そして、第2凸部82は、第2ボルトB2の角穴BH内に配置されると、第2ボルトB1の回転軸線(中心軸線)AX2を中心とした第2ボルトB2に対する回転を規制されるようになる。
【0105】
図8及び
図9に示された例によれば、緩み止め具70及び固定装置FDの構成を簡易小型化することができる。また、緩み止め具70の第1ボルトB1及び第2ボルトB2への取り付けを容易に行うことができる。とりわけ、一つの簡易な動作によって、第1ボルトB1及び第2ボルトB2の両方へ緩み止め具70を取り付けることができる。
【0106】
図8及び
図9に示された例において、緩み止め具70の第1凸部81及び第2凸部82は、それぞれ、第1ボルトB1及び第2ボルトB2の角穴BHbに圧入されるようにしてもよい。一つの簡易な動作によって、第1ボルトB1及び第2ボルトB2の両方へ安定して緩み止め具70を取り付けることができる。加えて、緩み止め具70は、締まり嵌めによって角穴BHに安定して固定される。
【0107】
図8及び
図9の例において、緩み止め具70の基部80は、第1ボルトB1の回転軸線(第1ボルトB1の中心軸線)AX1に対して傾斜、とりわけ垂直な方向に延びている。したがって、緩み止め具70は、第1ボルトB1の回転を効果的に規制することができる。同様に、緩み止め具70の基部80は、第2ボルトB2の回転軸線(第2ボルトB2の中心軸線)AX2に対して傾斜、とりわけ垂直な方向に延びている。したがって、緩み止め具70は、第2ボルトB2の回転を効果的に規制することができる。
【0108】
なお、
図8に示された例において、凹部RPの壁部WPと基部80の外縁との間に隙間が形成されているが、基部80が凹部RPに圧入され、基部80が凹部RPに締まり嵌めされることで、凹部RPの壁部WPと基部80の外縁との隙間が埋められるようにしてもよい。
【0109】
以上に説明した第3の態様において、緩み止め具70は、第1ボルトB1及び第2ボルトB2のそれぞれに相対回転が規制されるようにして取り付けられる。すなわち、第1ボルトB1と緩み止め具70の相対回転を規制し且つ第2ボルトB2と緩み止め具70の相対回転を規制することで、第1ボルトB1の緩み及び第2ボルトB2の緩みの両方を効果的に防止することができる。
【0110】
また、第3の態様による緩み止め具70は、第1ボルトB1及び第2ボルトB2とともに、固定装置FDを構成する。この固定装置FDによれば、第1ボルトB1の緩み及び第2ボルトB2の緩みの両方が効果的に防止されるので、第1部材M1及び第2部材M2を安定して締結した状態に維持することができる。
【0111】
さらに、第3の態様による緩み止め具70は、第1ボルトB1及び第2ボルトB2と、第1ボルトB1及び第2ボルトB2が通過する貫通孔THを有した第1部材M1と、第1ボルトB1が噛み合うSH1及び第2ボルトが噛み合う第2螺子穴SH2を有した第2部材M2と、とともに締結構造FSを構成する。この締結構造FSでは、第1ボルトB1の緩み及び第2ボルトB2の緩みの両方が効果的に防止されるので、第1部材M1及び第2部材M2を安定して締結した状態に維持することができる。
【0112】
以上に説明してきたように、本実施の形態によれば、緩み止め具70を用いることで、第1部材M1及び第2部材M2を締結するボルトBの緩みを効果的に防止することができる。これにより、第1部材M1及び第2部材M2を安定して締結した状態に維持することができる。
【0113】
上述した一実施の形態において、第1部材M1及び第2部材M2の一方を、減速機10、とりわけ減速機10のケース20又はキャリア30としている。したがって、ボルトBを用いて減速機10と第1部材M1又は第2部材M2とを安定して締結した状態に維持することができる。これにより、減速機10の出力を上昇させることができる。
【0114】
上述した一実施の形態の具体例として、第1部材M1及び第2部材M2の一方を減速機10のキャリア30の第1部分(キャリアベース部)31とし、第1部材M1及び第2部材M2の他方を減速機10のキャリア30の第2部分(プレート部)32としている。ボルトを用いてキャリア30の第1部分31と第2部分32とを安定して締結した状態に維持することができる。したがって、小型の減速機10の出力を上昇させて、高トルクを出力することが可能となる。
【0115】
複数の具体例を参酌して一実施の形態を説明してきたが、具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加を行うことができる。
【0116】
例えば上述した具体例において、螺子穴を有した第2部材M2が、減速機10またはロボット6の構成要素である例を示したが、この例に限られず、第2部材M2をナットとしてもよい。また、ボルトが噛み合う螺子穴は、図示された例のように有底穴であってもよいし、貫通孔であってもよい。
【0117】
また、締結構造FSの適用対象が偏心揺動型の減速機である例を示したが、これに限られない。締結構造FSの適用対象が、サイクロン型減速機であってもよいし、遊星歯車型減速機であってもよい。さらに、締結構造FSの適用対象は、減速機に限られず、種々の歯車伝動装置等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0118】
10 減速機
70 緩み止め具
71 接触部
72 天部
73 凸部
74 螺子穴
77 角穴
80 基部
81 第1凸部
82 第2凸部
100 螺子部材
FS締結構造
FD 固定装置
LM 緩み止め機構
IM 産業機械
M1 第1部材
M2 第2部材
B,B1,B2 ボルト
BH 角穴
HP 頭部HP
CP 切欠部
RP 凹部
WP 壁部
IS 螺子、第1螺子
OS 螺子、第2螺子
TH 貫通孔
SH,SH1,SH2 螺子穴