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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】半導体装置製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20221227BHJP
   H01L 25/065 20230101ALI20221227BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20221227BHJP
【FI】
H01L25/08 Z
H01L25/08 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018199013
(22)【出願日】2018-10-23
(65)【公開番号】P2020068254
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】辻 直子
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-191639(JP,A)
【文献】特開2015-119110(JP,A)
【文献】国際公開第2012/121344(WO,A1)
【文献】特開2016-004835(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0123284(US,A1)
【文献】特開2015-176958(JP,A)
【文献】国際公開第2017/061416(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/204115(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子形成面およびこれとは反対の裏面をそれぞれが有する複数のウエハを、隣り合う二つのウエハにおいて一方のウエハの素子形成面と他方のウエハの裏面とが向かい合う配向で含む、積層構造をそれぞれが有する、少なくとも二つのウエハ積層体を形成するウエハ積層体形成工程と、
前記ウエハ積層体における積層方向の一端に位置し且つ裏面側に隣接ウエハが位置する第1のウエハの素子形成面側から、他端に位置する第2のウエハの素子形成面を超える位置まで、当該ウエハ積層体内を貫通して延びる貫通電極を、各ウエハ積層体に形成する電極形成工程と、
前記電極形成工程を経た各ウエハ積層体における前記第2のウエハの裏面側に対する研削によって当該第2のウエハを薄化して当該裏面側にて前記貫通電極を露出させる、電極端部露出化工程と、
前記電極端部露出化工程を経た少なくとも二つのウエハ積層体を、当該ウエハ積層体間にて貫通電極を電気的に接続しつつ、積層して接合する多層化工程と、を含む半導体装置製造方法。
【請求項2】
前記電極形成工程は、前記ウエハ積層体において前記第1のウエハの素子形成面側から前記第2のウエハの素子形成面を超える位置まで延びる開口部を形成する工程と、当該開口部内に導電材料を充填する工程とを含む、請求項1に記載の半導体装置製造方法。
【請求項3】
前記多層化工程では、接合対象である一方のウエハ積層体における第1のウエハの素子形成面側と、他方のウエハ積層体における第1のウエハの素子形成面側との接合が、行われる、請求項1または2に記載の半導体装置製造方法。
【請求項4】
前記多層化工程では、接合対象である一方のウエハ積層体における第1のウエハの素子形成面側と、他方のウエハ積層体における第2のウエハの裏面側との接合が、行われる、請求項1または2に記載の半導体装置製造方法。
【請求項5】
前記多層化工程では、接合対象である一方のウエハ積層体における第2のウエハの裏面側と、他方のウエハ積層体における第2のウエハの裏面側との接合が、行われる、請求項1または2に記載の半導体装置製造方法。
【請求項6】
前記ウエハ積層体形成工程は、素子形成面およびこれとは反対の裏面を有するベースウエハの前記素子形成面側にウエハを接合する工程と、当該ウエハに対する研削によって前記ベースウエハ上に薄化ウエハを形成する工程と、当該薄化ウエハにおける被研削面側に半導体素子を形成する工程とを含む、請求項1から5のいずれか一つに記載の半導体装置製造方法。
【請求項7】
前記ウエハ積層体形成工程は、前記ベースウエハ上の前記薄化ウエハの素子形成面側にウエハを接合する工程と、当該ウエハに対する研削によって前記ベースウエハ上に薄化ウエハを形成する工程と、当該薄化ウエハにおける被研削面側に半導体素子を形成する工程とを更に含む、請求項6に記載の半導体装置製造方法。
【請求項8】
前記ウエハ積層体形成工程は、
素子形成面およびこれとは反対の裏面を有するウエハ、支持基板、並びに、前記ウエハの前記素子形成面側および前記支持基板の間の仮接着剤層、を含む積層構造を有する補強ウエハを用意する工程と、
前記補強ウエハにおける前記ウエハをその裏面側から研削して薄化ウエハを形成する工程と、
素子形成面およびこれとは反対の裏面を有するベースウエハの前記素子形成面側と、前記補強ウエハの前記薄化ウエハの裏面側とを、接着剤を介して接合する接合工程と、
前記補強ウエハにおける前記支持基板と前記薄化ウエハの間の前記仮接着剤層による仮接着状態を解除して前記支持基板の取り外しを行う取外し工程と、を含む、請求項1から5のいずれか一つに記載の半導体装置製造方法。
【請求項9】
前記ウエハ積層体形成工程は、
素子形成面およびこれとは反対の裏面を有するウエハ、支持基板、並びに、前記ウエハの前記素子形成面側および前記支持基板の間の仮接着剤層、を含む積層構造を有する少なくとも一つの追加の補強ウエハを用意する工程と、
各追加の補強ウエハにおける前記ウエハをその裏面側から研削して薄化ウエハを形成する工程と、
前記追加の補強ウエハにおける前記薄化ウエハの裏面側を、前記ベースウエハ上の薄化ウエハの素子形成面側に前記接着剤を介して接合する、少なくとも一つの追加の接合工程と、
前記追加の接合工程ごとに行われる少なくとも一つの、前記追加の補強ウエハにおける前記支持基板と前記薄化ウエハの間の前記仮接着剤層による仮接着状態を解除して前記支持基板の取り外しを行う取外し工程と、を更に含む、請求項8に記載の半導体装置製造方法。
【請求項10】
前記仮接着剤層を形成するための仮接着剤は、多価ビニルエーテル化合物と、そのビニルエーテル基と反応してアセタール結合を形成可能なヒドロキシ基またはカルボキシ基を二つ以上有して前記多価ビニルエーテル化合物と重合体を形成しうる化合物と、熱可塑性樹脂とを含有する、請求項8または9に記載の半導体装置製造方法。
【請求項11】
前記接着剤は、重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンを含有する、請求項8から10のいずれか一つに記載の半導体装置製造方法。
【請求項12】
前記接合工程は、前記仮接着剤層中の重合体の軟化点より低い温度で前記接着剤を硬化させる硬化処理を含み、
前記取外し工程は、前記仮接着剤層中の重合体の軟化点より高い温度で前記仮接着剤層を軟化させる軟化処理を含む、請求項8から11のいずれか一つに記載の半導体装置製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の半導体素子を含む積層構造を有する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの更なる高密度化を主な目的として、複数の半導体チップないし半導体素子がその厚さ方向に集積された立体的構造を有する半導体デバイスを製造するための技術の開発が進められている。そのような技術の一つとして、いわゆるWOW(Wafer on Wafer)プロセスが知られている。WOWプロセスでは、例えば、それぞれに複数の半導体素子が作り込まれた所定数の半導体ウエハが順次に積層されて、半導体素子がその厚さ方向に多段に配される構造が形成され、当該ウエハ積層体がダイシング工程を経て半導体デバイスへと個片化される。このようなWOWプロセスについては、例えば下記の特許文献1,2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2010/032729号
【文献】特開2016-178162号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
WOWプロセスにおいては、異なる半導体ウエハ間の半導体素子を電気的に接続するために、いわゆる貫通電極が形成される。例えば、ウエハ積層過程において下段ウエハ上に次段のウエハが積層されるごとに、当該積層ウエハをその厚さ方向に貫通する電極が形成されて、両ウエハ間の半導体素子の電気的接続が図られる。しかしながら、このような手法によると、貫通電極を形成するための一連のステップ、例えば、積層ウエハに対する貫通開口部の形成や、その開口部の内壁面への絶縁膜の形成、開口部内への導電材料の充填、これらに伴う各種態様の洗浄処理などを、積層ウエハごとに実施する必要があり、効率的でない。
【0005】
一方、製造されることとなる半導体装置の設計上の半導体素子積層数に相当する積層数のウエハ積層体を作製した後に、当該ウエハ積層体について、その厚さ方向に複数のウエハにわたって延びる開口部の形成を含む一連のステップを実施して、当該ウエハ間の半導体素子の電気的接続のための貫通電極を形成する手法も知られている。しかしながら、ウエハ積層体におけるウエハ積層数が増加するほど、当該複数のウエハにわたって延びる開口部を適切に形成するのが困難となる傾向にあり、従って、当該開口部内に貫通電極を適切に形成することが困難となる傾向にある。
【0006】
本発明は、以上のような事情のもとで考え出されたものであって、その目的は、半導体素子の作り込まれたウエハの積層を経て半導体素子が多層化される半導体装置製造方法において、大きなウエハ積層数を実現しつつ効率よく半導体装置を製造するのに適した手法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により提供される半導体装置製造方法は、以下のようなウエハ積層体形成工程、電極形成工程、電極端部露出化工程、および多層化工程を含む。
【0008】
ウエハ積層体形成工程では、少なくとも二つのウエハ積層体を形成する。各ウエハ積層体は、素子形成面およびこれとは反対の裏面をそれぞれが有する複数のウエハを、隣り合う二つのウエハにおいて一方のウエハの素子形成面と他方のウエハの裏面とが向かい合う配向で含む、積層構造を有する。ウエハ積層体の積層方向の一方の端に位置するウエハ(第1のウエハ)は、その裏面側に隣接ウエハが位置し、ウエハ積層体の積層方向の他方の端に位置するウエハ(第2のウエハ)は、その素子形成面側に隣接ウエハが位置する。ウエハの素子形成面とは、トランジスタ形成工程や配線形成工程などを経て複数の半導体素子が形成されている側の面である。ウエハ積層体間において、ウエハ積層数は同じであってもよいし異なってもよい。
【0009】
電極形成工程では、各ウエハ積層体に少なくとも一つの貫通電極を形成する。貫通電極は、ウエハ積層体における上述の第1のウエハの素子形成面側から、上述の第2のウエハの素子形成面を超える位置まで、当該ウエハ積層体内を貫通して延びる。本工程は、好ましくは、ウエハ積層体において第1のウエハの素子形成面側から第2のウエハの素子形成面を超える位置まで延びる開口部を形成する工程と、当該開口部内に導電材料を充填する工程とを含む。
【0010】
電極端部露出化工程では、電極形成工程を経た各ウエハ積層体における第2のウエハの裏面側に対する研削によって当該第2のウエハを薄化して当該裏面側にて貫通電極を露出させる。
【0011】
多層化工程では、電極端部露出化工程を経た少なくとも二つのウエハ積層体を、当該ウエハ積層体間にて貫通電極を電気的に接続しつつ、積層して接合する。本工程では、接合対象である一方のウエハ積層体における第1のウエハの素子形成面側と、他方のウエハ積層体における第1のウエハの素子形成面側との接合が、行われてもよい(ウエハ積層体間のface-to-face接合)。本工程では、接合対象である一方のウエハ積層体における第1のウエハの素子形成面側と、他方のウエハ積層体における第2のウエハの裏面側との接合が、行われてもよい(ウエハ積層体間のface-to-back接合)。本工程では、接合対象である一方のウエハ積層体における第2のウエハの裏面側と、他方のウエハ積層体における第2のウエハの裏面側との接合が、行われてもよい(ウエハ積層体間のback-to-back接合)。
【0012】
本半導体装置製造方法における上述の電極形成工程では、後の多層化工程で他のウエハ積層体と接合される各ウエハ積層体内に、それに含まれる複数のウエハにわたって延びる貫通電極が形成される。このような構成は、ウエハ積層体の形成過程でウエハごとに貫通電極を形成するための一連のステップ(即ち、一枚のウエハを貫通する開口部の形成や、その開口部の内壁面への絶縁膜の形成、開口部内への導電材料の充填、これらに伴う各種態様の洗浄処理など)の実施を回避または削減するのに適し、WOWプロセスにおいて半導体装置を効率よく製造するのに適する。
【0013】
本半導体装置製造方法における上述の多層化工程では、既に貫通電極が形成されている少なくとも二つのウエハ積層体の間で貫通電極が電気的に接続されつつ当該ウエハ積層体が接合されて、ウエハが更に多層化される。このような構成は、WOWプロセスにおいて大きなウエハ積層数を実現するのに適する。
【0014】
上述のように、ウエハ積層体のウエハ積層数が増加するほど、積層体厚さ方向において当該複数のウエハにわたって延びる開口部を適切に形成するのが困難となる傾向にあって当該開口部内に貫通電極を適切に形成することが困難となる傾向にある。しかしながら、本半導体装置製造方法では、製造目的の半導体装置の半導体素子積層数に相当する積層数のウエハ積層体を一括的に貫通する電極を形成する必要はない。このような本半導体装置製造方法は、一括貫通電極の形成に伴う上述の困難性を回避または抑制するのに適する。
【0015】
以上のように、本半導体装置製造方法は、ウエハ積層体の増大に伴う貫通電極の形成の困難性を回避または抑制して大きなウエハ積層数を実現しつつ、効率よく半導体装置を製造するのに適するのである。
【0016】
加えて、本半導体装置製造方法は、上記の電極形成工程における貫通電極形成手法として例えば特開2016-4835号公報に記載の手法を採用する場合に、各ウエハにおける半導体素子の高密度化を図るのに適する。同文献に記載の貫通電極形成手法によると、連なって貫通電極をなすこととなる、各ウエハ内に形成される部分導電部が、隣接ウエハ間では異なる断面積(ウエハ面内方向の断面積)で形成され、ウエハ積層数が増すほど部分導電部の断面積がウエハごとに不可避的に漸増する構造が生ずる。このような構造においては、ウエハ積層数が増すほど各ウエハにおける半導体素子の高密度化は図りにくくなる。しかしながら、本半導体装置製造方法では、製造目的の半導体装置の半導体素子積層数に相当する積層数のウエハ積層体を一括的に貫通する電極を形成する必要はない。このような本半導体装置製造方法は、ウエハ積層数の増大を図りつつ各ウエハにおける半導体素子の高密度化を図るのに、適するのである。
【0017】
好ましい第1の態様において、ウエハ積層体形成工程は、素子形成面およびこれとは反対の裏面を有するベースウエハの素子形成面側にウエハを接合する工程と、当該ウエハに対する研削によってベースウエハ上に薄化ウエハを形成する工程と、当該薄化ウエハにおける被研削面側に半導体素子を形成する工程とを含む。このようなウエハ積層体形成工程は、ベースウエハ上の薄化ウエハの素子形成面側にウエハを接合する工程と、当該ウエハに対する研削によってベースウエハ上に薄化ウエハを形成する工程と、当該薄化ウエハにおける被研削面側に半導体素子を形成する工程とを更に含んでもよい。これら構成は、半導体素子の作り込まれた薄いウエハの積層体を形成するのに適する。
【0018】
好ましい第2の態様において、ウエハ積層体形成工程は、以下のような用意工程、薄化工程、接合工程、および取外し工程を含む。
【0019】
用意工程では、補強ウエハを用意する。補強ウエハは、素子形成面およびこれとは反対の裏面を有するウエハと、支持基板と、ウエハの素子形成面側および支持基板の間の仮接着剤層とを含む積層構造を有する。仮接着剤層は、支持基板とウエハの間の仮接着状態を実現するためのものである。
【0020】
薄化工程では、このような補強ウエハにおけるウエハをその裏面側から研削して薄化する。これにより、支持基板に支持された状態において薄化ウエハが形成される。
【0021】
接合工程では、素子形成面およびこれとは反対の裏面を有するベースウエハの素子形成面側と、補強ウエハの上述の薄化ウエハの裏面側とを、接着剤を介して接合する。本接合工程は、好ましくは、仮接着剤層中の重合体の軟化点より低い温度で接着剤を硬化させる硬化処理を含む。このような接合工程では、例えば、接合対象面(ベースウエハの素子形成面,薄化ウエハの裏面)の一方または両方に接着剤が塗布され、当該接着剤を介して接合対象面が貼り合わされ、その貼合わせ後に当該接着剤が硬化される。また、接合工程では、接着剤の塗布の前に、前記の接合対象面の一方または両方にシランカップリング剤処理が施されてもよい。
【0022】
取外し工程では、上述の接合工程を経た補強ウエハにおける支持基板と薄化ウエハの間の仮接着剤層による仮接着状態を解除して、支持基板の取り外しを行う。本取外し工程は、好ましくは、仮接着剤層中の重合体の軟化点より高い温度で仮接着剤層を軟化させる軟化処理を含む。
【0023】
以上のような用意工程、薄化工程、接合工程、および取外し工程を含むウエハ積層体形成工程は、半導体素子の作り込まれた薄いウエハの積層体を形成するのに適する。
【0024】
好ましい第2の態様において、ウエハ積層体形成工程は、少なくとも一つの追加の補強ウエハを用意する工程と、追加の補強ウエハごとの薄化工程と、追加の補強ウエハごとの追加の接合工程と、追加の接合工程後の取外し工程とを更に含んでもよい。追加の補強ウエハは、素子形成面およびこれとは反対の裏面を有するウエハと、支持基板と、ウエハの素子形成面側および支持基板の間の仮接着剤層とを含む積層構造を有する。追加の補強ウエハごとの薄化工程では、このような追加の補強ウエハにおけるウエハをその裏面側から研削して薄化ウエハを形成する。追加の補強ウエハごとの追加の接合工程では、追加の補強ウエハにおける薄化ウエハの裏面側を、ベースウエハ上の薄化ウエハの素子形成面側に、接着剤を介して接合する。ベースウエハ上の薄化ウエハとは、上述の接合工程においてベースウエハと接合された薄化ウエハ、または、先行する追加の接合工程において薄化ウエハ上に追加的に積層された薄化ウエハである。本工程は、好ましくは、仮接着剤層中の重合体の軟化点より低い温度で接着剤を硬化させる硬化処理を含む。このような追加の接合工程では、例えば、接合対象面(一方の薄化ウエハの素子形成面,他方の薄化ウエハの裏面)の一方または両方に接着剤が塗布され、当該接着剤を介して接合対象面が貼り合わされ、その貼合わせ後に当該接着剤が硬化される。また、追加の接合工程では、接着剤の塗布の前に、前記の接合対象面の一方または両方にシランカップリング剤処理が施されてもよい。そして、追加の接合工程後の取外し工程では、追加の補強ウエハにおける支持基板と薄化ウエハの間の仮接着剤層による仮接着状態を解除して、支持基板の取り外しを行う。本工程は、好ましくは、仮接着剤層中の重合体の軟化点より高い温度で仮接着剤層を軟化させる軟化処理を含む。半導体素子の作り込まれた薄いウエハを更に多層化するのに適する。
【0025】
補強ウエハ内の上記の仮接着剤層を形成するための仮接着剤は、好ましくは、多価ビニルエーテル化合物と、そのビニルエーテル基と反応してアセタール結合を形成可能なヒドロキシ基またはカルボキシ基を二つ以上有して多価ビニルエーテル化合物と重合体を形成しうる化合物と、熱可塑性樹脂とを含有する。このような構成の仮接着剤は、支持基板とウエハの間に固化形成される仮接着剤層の形態において、当該ウエハに対する薄化工程での研削等に耐えうる高い接着力を確保しつつ、120℃程度以上、例えば130~250℃の比較的に高い軟化温度を実現するのに適する。
【0026】
接合工程で使用される上記の接着剤は、好ましくは、重合性官能基を有するポリオルガノシルセスキオキサン(即ち、重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサン)を含有する。重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンは、例えば30~200℃程度の比較的に低い重合温度ないし硬化温度を実現するのに適するとともに、硬化後において高い耐熱性を実現するのに適する。したがって、重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサン含有接着剤によるウエハ間接着剤接合は、ウエハ間に形成される接着剤層において高い耐熱性を実現するとともに、接着剤層形成のための硬化温度の低下を図って被着体たるウエハ内の素子へのダメージを抑制するのに適する。
【0027】
本半導体装置製造方法におけるウエハ積層体形成工程の第2の好ましい態様においては、仮接着剤層形成用の仮接着剤とウエハ間接合用の接着剤とにつき共に上述の好ましい構成が採用される場合、次のような複合的で機能的な構成を実現することができる。接合工程に供される補強ウエハ内の仮接着剤層が上述のように比較的高い軟化温度を実現するのに適し、且つ、同工程で使用される接着剤(重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサン含有接着剤)が上述のように比較的低い硬化温度と硬化後の高耐熱性とを実現するのに適するという、構成である。このような複合的な機能的構成は、接合工程の実施とその後の取外し工程の実施とを両立させるのに適する。すなわち、当該構成は、接合工程を比較的低温の条件で実施して、補強ウエハにおける支持基板と薄化ウエハの仮接着状態を維持しつつベースウエハに対する当該薄化ウエハの良好な接着剤接合を実現するのに適するとともに、その後の取外し工程を比較的高温の条件で実施して、ベースウエハと薄化ウエハの間の接着剤接合を維持しつつ仮接着剤層を軟化させて薄化ウエハからの支持基板の取り外しを実施するのに適する。薄化ウエハからの支持基板の取り外しにあたって仮接着剤層の軟化を経て当該仮接着剤層による仮接着状態を解除するという構成は、薄化ウエハに対して局所的に強い応力が作用するのを回避または抑制して当該ウエハの破損を回避するのに適する。ウエハ積層体形成工程の第2の好ましい態様における上記複合的構成は、ウエハ積層体の形成にあたり、ウエハ破損を回避しつつ接着剤接合を介して薄いウエハを多層化するのに適するのである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
図2】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
図3】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
図4】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
図5】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
図6】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
図7】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
図8】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
図9】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
図10】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
図11】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
図12】本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法における一部の工程を表す。
図13】貫通電極形成工程の一例を表す。
図14】ウエハ積層体形成工程の一例を表す。
図15図14の後に続く工程を表す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1から図12は、本発明の一の実施形態に係る半導体装置製造方法を表す。この製造方法は、半導体素子がその厚さ方向に集積された立体的構造を有する半導体装置を製造するための方法であり、図1から図12は製造過程を部分断面図で表すものである。
【0030】
本半導体装置製造方法においては、まず、図1(a)に示すような補強ウエハ1Rが用意される(用意工程)。補強ウエハ1Rは、ウエハ1と、支持基板Sと、これらの間の仮接着剤層2とを含む積層構造を有する。
【0031】
ウエハ1は、半導体素子が作り込まれ得る半導体ウエハ本体を有するウエハであり、素子形成面1aおよびこれとは反対の裏面1bを有する。本実施形態において、ウエハの素子形成面とは、ウエハにおいてトランジスタ形成工程や配線形成工程などを経て複数の半導体素子(図示略)が形成されている側の面である。ウエハ1の各半導体素子は、露出する電極パッドを含む例えば多層配線構造部を表面に有する。或いは、ウエハ1は、素子形成面1aの側に各種の半導体素子が既に作り込まれたものであって、当該半導体素子に必要な配線構造が素子形成面1a上に後に形成されるものであってもよい。ウエハ1の半導体ウエハ本体をなすための構成材料としては、例えば、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、炭化ケイ素(SiC)、ガリウムヒ素(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、およびインジウムリン(InP)が挙げられる。このようなウエハ1の厚さは、後述の研削工程における研削時間の短縮化の観点からは、好ましくは1000μm以下、より好ましくは900μm以下、より好ましくは800μm以下である。また、ウエハ1の厚さは例えば500μm以上である。
【0032】
補強ウエハ1Rにおける支持基板Sは、後記の薄化工程を経て薄くなるウエハ1を補強するためのものである。支持基板Sとしては、例えば、シリコンウエハやガラスウエハが挙げられる。支持基板Sの厚さは、補強要素としての機能を確保するという観点からは、好ましくは300μm以上、より好ましくは500μm以上、より好ましくは700μm以上である。また、支持基板Sの厚さは例えば800μm以下である。このような支持基板Sは、ウエハ1の素子形成面1aの側に仮接着剤層2を介して接合されている。
【0033】
仮接着剤層2は、ウエハ1と支持基板Sとの間の、事後的に解除可能な仮接着状態を実現するためのものである。このような仮接着剤層2を形成するための仮接着剤は、本実施形態では、多価ビニルエーテル化合物(A)と、そのビニルエーテル基と反応してアセタール結合を形成可能なヒドロキシ基またはカルボキシ基を二つ以上有して多価ビニルエーテル化合物と重合体を形成しうる化合物(B)と、熱可塑性樹脂(C)とを少なくとも含有する。仮接着剤中のこれら成分については、具体的には後述するとおりである。仮接着剤層2形成用の仮接着剤としては、このような仮接着剤に代えて、シリコーン系粘着剤、アクリル系粘着剤、または、ワックスタイプの接着剤を採用してもよい。
【0034】
このような構成の補強ウエハ1Rは、例えば次のような工程を経て、作製することができる。まず、図2(a)に示すように、支持基板S上に仮接着剤層2を形成する。具体的には、仮接着剤層2形成用の仮接着剤を支持基板S上に例えばスピンコーティングによって塗布して仮接着剤塗膜を形成し、加熱によって当該塗膜を乾燥させて、仮接着剤層2を形成することができる。当該加熱の温度は、例えば100~300℃であり、一定であってもよいし、段階的に変化させてもよい。当該加熱の時間は例えば30秒~30分間である。次に、図2(b)および図2(c)に示すように、支持基板Sとウエハ1とを仮接着剤層2を介して接合する。ウエハ1は、上述のように、素子形成面1aおよびこれとは反対の裏面1bを有する。本工程では、例えば、支持基板Sとウエハ1とを仮接着剤層2を介して加圧しつつ貼り合わせた後、加熱を経て、高温域に軟化点を有する重合体を形成して仮接着剤層2を固化させ、これら支持基板Sとウエハ1とを仮接着剤層2によって接着させる。貼り合わせにおいて、加圧力は例えば300~5000g/cm2であり、温度は例えば30~200℃である。また、仮接着剤層2による接着において、加熱温度は、例えば100~300℃であって好ましくは100~250℃であり、加熱時間は、例えば30秒~30分間であって好ましくは3~12分間である。加熱温度は、一定であってもよいし、段階的に変化させてもよい。以上のようにして、ウエハ1と、支持基板Sと、これらの間の仮接着剤層2とを含む積層構造の補強ウエハ1Rを作製することができる。
【0035】
仮接着剤中の上述の多価ビニルエーテル化合物(A)は、分子内に二つ以上のビニルエーテル基を有する化合物であり、例えば下記の式(a)で表される。
【化1】
【0036】
式(a)中、Z1は、飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素、飽和もしくは不飽和脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、複素環式化合物、またはこれらが単結合もしくは連結基を介して結合した結合体、の構造式からn1個の水素原子を除去した基を表す。また、式(a)中、n1は、2以上の整数を表し、例えば2~5の整数、好ましくは2~3の整数である。
【0037】
前記飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素の構造式からn1個の水素原子を除去した基のうち、飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素の構造式から2個の水素原子を除去した基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、およびドデカメチレン基など直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基、並びに、ビニレン基、1-プロペニレン基、および3-メチル-2-ブテニレン基など直鎖状または分岐鎖状のアルケニレン基を挙げることができる。前記のアルキレン基の炭素数は、例えば1~20であり、好ましくは1~10である。前記のアルケニレン基の炭素数は、例えば2~20であり、好ましくは2~10である。飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素の構造式から3個以上の水素原子を除去した基としては、例えば、これら例示の基の構造式から更に1個以上の水素原子を除去した基を挙げることができる。
【0038】
前記飽和もしくは不飽和脂環式炭化水素の構造式からn1個の水素原子を除去した基のうち、飽和もしくは不飽和脂環式炭化水素の構造式から2個の水素原子を除去した基としては、例えば、1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、1,2-シクロへキシレン基、1,3-シクロへキシレン基、および1,4-シクロへキシレン基など3~15員環のシクロアルキレン基、シクロペンテニレン基およびシクロヘキセニレン基など3~15員環のシクロアルケニレン基、シクロペンチリデン基およびシクロヘキシリデン基など3~15員環のシクロアルキリデン基、並びに、アダマンタンジイル基、ノルボルナンジイル基、ノルボルネンジイル基、イソボルナンジイル基、トリシクロデカンジイル基、トリシクロウンデカンジイル基、およびテトラシクロドデカンジイル基など4~15員環の2価の橋かけ環式炭化水素基を挙げることができる。飽和もしくは不飽和脂環式炭化水素の構造式から3個以上の水素原子を除去した基としては、例えば、これら例示の基の構造式から更に1個以上の水素原子を除去した基を挙げることができる。
【0039】
前記芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、およびアントラセンを挙げることができる。
【0040】
前記複素環式化合物には、芳香族性複素環式化合物および非芳香族性複素環式化合物が含まれる。このような複素環式化合物としては、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環式化合物(例えば、フラン、テトラヒドロフラン、オキサゾール、イソオキサゾール、およびγ-ブチロラクトンなど5員環、4-オキソ-4H-ピラン、テトラヒドロピラン、およびモルホリンなど6員環、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、4-オキソ-4H-クロメン、クロマン、およびイソクロマンなど縮合環、並びに、3-オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン-2-オンおよび3-オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン-2-オンなど橋かけ環)、ヘテロ原子としてイオウ原子を含む複素環式化合物(例えば、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、およびチアジアゾールなど5員環、4-オキソ-4H-チオピランなど6員環、並びに、ベンゾチオフェンなど縮合環)、並びに、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環式化合物(例えば、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、およびトリアゾールなど5員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、およびピペラジン環など6員環、並びに、インドール、インドリン、キノリン、アクリジン、ナフチリジン、キナゾリン、およびプリンなど縮合環)を挙げることができる。
【0041】
前記連結基としては、例えば、2~4価の炭化水素基、カルボニル基(-CO-)、エーテル結合(-O-)、スルフィド結合(-S-)、エステル結合(-COO-)、アミド結合(-CONH-)、カーボネート結合(-OCOO-)、ウレタン結合(-NHCOO-)、-NR-結合(Rは水素原子、アルキル基、またはアシル基を表す)、および、これらが複数個連結した基を挙げることができる。前記2~4価の炭化水素基のうち、2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、およびトリメチレン基など直鎖状または分岐鎖状の炭素数1~10のアルキレン基、並びに、1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2-シクロへキシレン基、1,3-シクロへキシレン基、1,4-シクロへキシレン基、およびシクロヘキシリデン基など炭素数4~15の脂環式炭化水素基(特にシクロアルキレン基)を挙げることができる。3価の炭化水素基としては、例えば、前記2価の炭化水素基の構造式から更に1個の水素原子を除去した基を挙げることができる。4価の炭化水素基としては、例えば、前記2価の炭化水素基の構造式から更に2個の水素原子を除去した基を挙げることができる。
【0042】
1は、置換基を一種類または二種類以上有していてもよい。当該置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ニトロ基、アミノ基、メルカプト基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたC2-10炭化水素基、ヘテロ原子(酸素や硫黄等)を含む官能基を含む炭化水素基、および、これらが2以上結合した基を、挙げることができる。アルキル基としては、例えば、メチル基やエチル基などC1-4アルキル基が挙げられる。シクロアルキル基としては、例えばC3-10シクロアルキル基が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基などC2-10アルケニル基が挙げられる。シクロアルケニル基としては、例えばC3-10シクロアルケニル基が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基やナフチル基などC6-15アリール基が挙げられる。ヘテロ原子含有官能基を含む炭化水素基としては、例えば、C1-4アルコキシ基およびC2-6アシルオキシ基が挙げられる。
【0043】
多価ビニルエーテル化合物(A)の具体例としては、例えば、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、およびトリエチレングリコールジビニルエーテル、並びに、下記の式(a-1)~(a-21)で表される化合物を、挙げることができる。
【化2】
【化3】
【0044】
多価ビニルエーテル化合物(A)における上記Z1は、上述の仮接着剤において高軟化点を有する重合体を形成するという観点から、好ましくは、飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素、または複数の当該炭化水素が連結基を介して結合した結合体、の構造式からn1個の水素原子を除去した基であり、より好ましくは、飽和脂肪族炭化水素、または複数の当該炭化水素が連結基を介して結合した結合体、の構造式からn1個の水素原子を除去した基であり、より好ましくは、炭素数1~20の直鎖状アルキレン基、炭素数2~20の分岐鎖状アルキレン基、または、複数の当該アルキレン基が連結基を介して結合した結合体の構造式からn1個の水素原子を除去した基である。
【0045】
多価ビニルエーテル化合物(A)としては、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、およびトリエチレングリコールジビニルエーテルからなる群より選択される少なくとも一種の化合物が最も好ましい。
【0046】
仮接着剤中の化合物(B)は、上述のように、多価ビニルエーテル化合物(A)のビニルエーテル基と反応してアセタール結合を形成可能なヒドロキシ基またはカルボキシ基を二つ以上有して多価ビニルエーテル化合物と重合体を形成しうるものであって、例えば、下記の式(b)で表される構成単位(繰り返し単位)を2以上有する化合物である。
【化4】
【0047】
式(b)中、Xはヒドロキシ基またはカルボキシ基を表す。n2個のXは、互いに同一であってもよいし、互いに異なってもよい。
【0048】
式(b)中、n2は1以上の整数を表す。上述の仮接着剤の調製にあたっての入手の容易さや溶剤への溶解のしやすさの観点、および、仮接着剤において高軟化点を有する重合体を形成するという観点から、n2は、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは1~2の整数である。
【0049】
化合物(B)における上記式(b)で表される構成単位(繰り返し単位)の数は、2以上であり、上述の仮接着剤において高軟化点の重合体を形成するという観点から、好ましくは2~40の整数、より好ましくは10~30の整数である。
【0050】
式(b)中、Z2は、飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素、飽和もしくは不飽和脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、複素環式化合物、またはこれらが単結合もしくは連結基を介して結合した結合体、の構造式から(n2+2)個の水素原子を除去した基を表し、前記飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素、飽和もしくは不飽和脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、複素環式化合物、またはこれらが単結合もしくは連結基を介して結合した結合体の構造式としては、上記Z1における例と同様の例を挙げることができる。
【0051】
化合物(B)は、好ましくは、スチレン系ポリマー、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、およびレゾール樹脂であり、より好ましくは、下記式(b-1)~(b-6)からなる群より選択される少なくとも一種の構成単位(繰り返し単位)を2以上有する化合物である。
【化5】
【0052】
化合物(B)として式(b)中のXがヒドロキシ基である化合物を採用する場合、化合物(B)全量における式(b)で表される構成単位の割合は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。また、化合物(B)全量における式(b)で表される構成単位の割合は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上である。
【0053】
化合物(B)として式(b)中のXがカルボキシ基である化合物を採用する場合、化合物(B)全量における式(b)で表される構成単位の割合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。
【0054】
式(b)で表される構成単位の割合が上記範囲内にあることは、化合物(B)において充分な架橋点間距離や充分な数の架橋点を確保するうえで好適であり、従って、上述の仮接着剤において当該化合物(B)と上述の多価ビニルエーテル化合物(A)との重合によって得られる重合体について重量平均分子量および高軟化点を確保するうえで好適であり、ひいては、当該仮接着剤から形成される仮接着剤層2において高温環境下での高い接着保持性を確保するうえで好適である。
【0055】
化合物(B)は、式(b)で表される構成単位のみを有する単独重合体であってもよいし、式(b)で表される構成単位と他の構成単位とを有する共重合体であってもよい。化合物(B)が共重合体である場合、ブロック共重合体、グラフト共重合体、およびランダム共重合体のいずれであってもよい。
【0056】
化合物(B)における上記他の構成単位は、ヒドロキシ基もカルボキシ基も有さない重合性単量体由来の構成単位であり、当該重合性単量体としては、例えば、オレフィン、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸エステル、カルボン酸ビニルエステル、および不飽和ジカルボン酸ジエステルが挙げられる。オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、および1-ブテンなど鎖状オレフィン(特にC2-12アルケン)、並びに、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、およびテトラシクロドデセンなど環状オレフィン(特にC3-10シクロアルケン)が挙げられる。芳香族ビニル化合物としえては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、1-プロペニルベンゼン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、3-ビニルピリジン、3-ビニルフラン、3-ビニルチオフェン、3-ビニルキノリン、インデン、メチルインデン、エチルインデン、およびジメチルインデンなどC6-14芳香族ビニル化合物が挙げられる。不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルへキシル、およびジシクロペンタニル(メタ)アクリレートなど不飽和カルボン酸(例えば(メタ)アクリル酸)とアルコール(R”-OH)とを反応させて得られるエステルが挙げられる(前記R”は、飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素、飽和もしくは不飽和脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、複素環式化合物、またはこれらが単結合もしくは連結基を介して結合した結合体、の構造式から1個の水素原子を除去した基を表す。R”としては、例えば、上記式(a)中のZ1について挙げた2価の基に対応する1価の基を挙げることができる)。カルボン酸ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプリル酸ビニル、およびカプロン酸ビニルなどC1-16脂肪酸ビニルエステルが挙げられる。不飽和ジカルボン酸ジエステルとしては、例えば、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、およびマレイン酸2-エチルへキシルなどマレイン酸ジC1-10アルキルエステル、並びに、これらに対応するフマル酸ジエステルを挙げることができる。これらは一種類を単独で、または二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0057】
共重合体である場合の化合物(B)としては、上記式(b)で表される構成単位と、鎖状オレフィン、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸エステル、カルボン酸ビニルエステル、および不飽和ジカルボン酸ジエステルからなる群より選択される少なくとも一種の重合性単量体由来の構成単位と、を含む化合物が好ましい。
【0058】
化合物(B)の軟化点(T1)は、例えば50℃以上であり、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上である。このような構成は、当該化合物(B)と上述の多価ビニルエーテル化合物(A)との重合によって得られる重合体について高い軟化点を実現するうえで好適である。また、上述の仮接着剤において適度な流動性を確保して良好な塗布性を実現するという観点からは、T1は、例えば250℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下である。
【0059】
1は、例えば、化合物(B)の重量平均分子量(GPC法によるポリスチレン換算値)をコントロールすることによって調整することができる。化合物(B)の重量平均分子量は、例えば1500以上、好ましくは1800~10000、より好ましくは2000~5000である。
【0060】
仮接着剤中の上述の熱可塑性樹脂(C)としては、熱可塑性を有して、接着剤組成物に配合される場合に接着剤組成物に柔軟性を付与することができる化合物であればよい。そのような熱可塑性樹脂(C)としては、例えば、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ(チオ)エーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、およびポリイミド系樹脂など重縮合系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、およびビニル系樹脂などビニル重合系樹脂、並びに、セルロース誘導体など天然物由来樹脂を挙げることができる。これらは一種類を単独で、または二種類以上を組み合わせて使用することができる。このような熱可塑性樹脂(C)を上述の仮接着剤が含有するという構成は、形成される仮接着剤層2において、柔軟性や可撓性を付与するうえで好適であり、急激に温度が変化する環境下でも自然剥離やクラックの発生を防止するうえで好適であり、優れた接着性を確保するうえで好適である。
【0061】
仮接着剤中の熱可塑性樹脂(C)は、好ましくは、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、およびポリアミド系樹脂からなる群より選択される少なくとも一種である。仮接着剤ないし仮接着剤層2において、柔軟性を付与しやすいという観点や、ウエハなど被着体に対する化学的相互作用が減弱して、剥離後の被着体に糊残りが生じる場合であってもその糊残渣を除去しやすいという観点からは、仮接着剤は熱可塑性樹脂(C)としてポリエステル系樹脂を含有するのが好ましい。また、仮接着剤ないし仮接着剤層2において、柔軟性を付与しやすいという観点や、被着体上の糊残渣を除去しやすいという前記観点に加えて、被着体に対する高い密着性を確保するという観点からは、仮接着剤は熱可塑性樹脂(C)としてポリエステル系樹脂とポリビニルアセタール系樹脂とを共に含有するのが好ましい。
【0062】
前記ポリビニルアセタール系樹脂としては、ポリビニルアルコールにアルデヒド(RCHO)を反応させて得られる、下記式で表される構成単位を少なくとも有する樹脂を挙げることができる。アルデヒド(RCHO)としては、例えば、その構造式中のR(下記式中のRも同じ)が水素原子、直鎖状C1-5アルキル基、分岐鎖状C2-5アルキル基、またはC6-10アリール基である化合物が挙げられ、具体的には、例えばホルムアルデヒド、ブチルアルデヒド、およびベンズアルデヒドが挙げられる。このようなポリビニルアセタール系樹脂は、下記式で表される構成単位以外にも他の構成単位を有していてもよい。すなわち、当該ポリビニルアセタール系樹脂にはホモポリマーおよびコポリマーが含まれる。このようなポリビニルアセタール系樹脂としては、具体的には、ポリビニルホルマールおよびポリビニルブチラールを挙げることができ、例えば、商品名「エスレック KS-1」「エスレック KS-10」(いずれも積水化学工業株式会社製)の市販品を使用することができる。
【化6】
【0063】
前記ポリエステル系樹脂としては、例えば、ジオール成分とジカルボン酸成分との重縮合により得られるポリエステルが挙げられる。ジオール成分としては、例えば、エチレングリコールなど脂肪族C2-12ジオール、ジエチレングリコールなどポリオキシC2-4アルキレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなど脂環式C5-15ジオール、および、ビスフェノールAなど芳香族C6-20ジオールが挙げられる。ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸など芳香族C8-20ジカルボン酸、アジピン酸など脂肪族C2-40ジカルボン酸、および、シクロヘキサンジカルボン酸など脂環式C8-15ジカルボン酸が挙げられる。前記ポリエステル系樹脂としては、オキシカルボン酸の重縮合により得られるポリエステルも挙げられる。そのオキシカルボン酸としては、例えば、乳酸など脂肪族C2-6オキシカルボン酸、および、ヒドロキシ安息香酸など芳香族C7-19オキシカルボン酸が挙げられる。前記ポリエステル系樹脂としては、ラクトンの開環重合により得られるポリエステルも挙げられる。そのラクトンとしては、例えば、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、およびγ-ブチロラクトンなどC4-12ラクトンが挙げられる。前記ポリエステル系樹脂としては、ポリエステルジオールとジイソシアネートとの反応により得られるウレタン結合を含むポリエステルも挙げられる。ポリエステル系樹脂にはホモポリエステルおよびコポリエステルが含まれるものとする。また、ポリエステル系樹脂としては、例えば、商品名「プラクセル H1P」(株式会社ダイセル製)の市販品を使用することができる。
【0064】
前記ポリウレタン系樹脂としては、例えば、ジイソシアネート類とポリオール類と必要に応じて用いられる鎖伸長剤との反応により得られる樹脂を挙げることができる。ジイソシアネート類としては、ヘキサメチレンジイソシアネートなど脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネートなど脂環式ジイソシアネート類、および、トリレンジイソシアネートなど芳香族ジイソシアネート類が挙げられる。ポリオール類としては、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、およびポリカーボネートジオールが挙げられる。鎖伸長剤としては、エチレングリコールなどC2-10アルキレンジオール、エチレンジアミンなど脂肪族ジアミン類、イソホロンジアミンなど脂環式ジアミン類、および、フェニレンジアミンなど芳香族ジアミン類が挙げられる。
【0065】
前記ポリアミド系樹脂としては、例えば、ジアミン成分とジカルボン酸成分との重縮合により得られるポリアミド、アミノカルボン酸の重縮合により得られるポリアミド、ラクタムの開環重合により得られるポリアミド、および、ジアミン成分とジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合により得られるポリエステルアミドを挙げることができる。前記ジアミン成分としては、例えば、ヘキサメチレンジアミンなどC4-10アルキレンジアミンが挙げられる。前記ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸などC4-20アルキレンジカルボン酸が挙げられる。アミノカルボン酸としては、例えば、ω-アミノウンデカン酸などC4-20アミノカルボン酸が挙げられる。前記ラクタムとしては、例えば、ω-ラウロラクタムなどC4-20ラクタムが挙げられる。前記ジオール成分としては、例えば、エチレングリコールなどC2-12アルキレンジオールが挙げられる。また、ポリアミド系樹脂にはホモポリアミドおよびコポリアミドが含まれるものとする。
【0066】
熱可塑性樹脂(C)の軟化点(T2)は、本発明に係る半導体装置製造方法において熱可塑性樹脂(C)含有の仮接着剤と組み合わせて使用される後述の永久接着剤の熱硬化温度より10℃以上高いことが好ましい。当該永久接着剤の熱硬化温度とT2との差は、例えば10~40℃であり、好ましくは20~30℃である。
【0067】
2は、例えば、熱可塑性樹脂(C)の重量平均分子量(Mw:GPC法によるポリスチレン換算値)をコントロールすることによって調整することができる。熱可塑性樹脂(C)の重量平均分子量は、例えば1500~100000であり、好ましくは2000~80000、より好ましくは3000~50000、より好ましくは10000~45000、より好ましくは15000~35000である。
【0068】
以上のような多価ビニルエーテル化合物(A)、化合物(B)、および熱可塑性樹脂(C)を少なくとも含有する仮接着剤において、多価ビニルエーテル化合物(A)と化合物(B)の重合体の軟化点(T3)は、本発明に係る半導体装置製造方法において当該仮接着剤と組み合わせて使用される後述の永久接着剤の熱硬化温度より10℃以上高いことが好ましい。当該永久接着剤の熱硬化温度とT3との差は、例えば10~40℃であり、好ましくは20~30℃である。
【0069】
後述の永久接着剤の熱硬化温度が例えば120℃である場合、仮接着剤における多価ビニルエーテル化合物(A)の含有量は、仮接着剤中の化合物(B)におけるヒドロキシ基およびカルボキシ基の総量1モルに対して、多価ビニルエーテル化合物(A)におけるビニルエーテル基が例えば0.01~10モルとなる量であり、好ましくは0.05~5モル、より好ましくは0.07~1モル、より好ましくは0.08~0.5となる量である。
【0070】
仮接着剤における熱可塑性樹脂(C)の含有量は、仮接着剤中の化合物(B)1質量部に対して例えば0.1~3質量部であり、好ましくは0.2~2質量部、より好ましくは0.3~1質量部である。
【0071】
仮接着剤における多価ビニルエーテル化合物(A)と化合物(B)と熱可塑性樹脂(C)の合計含有量は、当該仮接着剤の不揮発分全量の例えば70~99.9質量%であり、好ましくは80~99質量%、より好ましくは85~95質量%、より好ましくは85~90質量%である。
【0072】
仮接着剤は、重合促進剤を更に含有していてもよい。その重合促進剤としては、例えば、下記式(d)で表される1価のカルボン酸、および、下記式(e)で表される1価のアルコールを挙げることができる。これらは一種類を単独で、または二種類以上を組み合わせて使用することができる。仮接着剤が重合促進剤を含有するという構成は、多価ビニルエーテル化合物(A)および化合物(B)の重合反応を促進するうえで好適であり、重合促進剤を含有しない接着剤を使用する場合と比べて、重合時の加熱温度を低下させても、同等の軟化点またはより高い軟化点を有する重合体を形成するうえで好適であり、従って仮接着剤層2において高温環境下(例えば160~180℃程度)での接着性を確保するうえで好適である。
3-COOH (d)
(式中、Z3はカルボキシ基以外の置換基を有していてもよい、飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素、飽和もしくは不飽和脂環式炭化水素、および芳香族炭化水素からなる群より選択される一種、の構造式から1個の水素原子を除去した基を表す)
4-OH (e)
(式中、Z4はヒドロキシ基以外の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素の構造式から1個の水素原子を除去した基を表す)
【0073】
上記式(d)中のZ3における飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素、飽和もしくは不飽和脂環式炭化水素、および芳香族炭化水素としては、上記式(a)中のZ1について挙げた飽和もしくは不飽和脂肪族炭化水素、飽和もしくは不飽和脂環式炭化水素、および芳香族炭化水素を挙げることができる。Z3が有していてもよい置換基としては、Z1が有していてもよい置換基の例からカルボキシ基を除いた例を挙げることができる。また、上記式(e)中のZ4における芳香族炭化水素としては、上記式(a)中のZ1について挙げた芳香族炭化水素を挙げることができる。Z4が有していてもよい置換基としては、Z1が有していてもよい置換基の例からヒドロキシ基を除いた例を挙げることができる。
【0074】
仮接着剤中に重合促進剤が含まれる場合のその重合促進剤のpKa(酸解離定数)は、好ましくは3~8、より好ましくは4~6である。このような構成は、仮接着剤において意図せず重合が進行して粘度が増加すること等を抑制して保存安定性を確保するとともに、当該仮接着剤からの仮接着剤層2の形成にあたって重合促進剤による重合促進効果を確保するうえで、好適である。
【0075】
式(d)で表される1価のカルボン酸としては、以下に示される化合物(幾何異性体を含む)が好ましい。
【化7】
【化8】
【0076】
式(e)で表される1価のアルコールとしては、以下に示される化合物が好ましい。
【化9】
【0077】
仮接着剤中に重合促進剤が含まれる場合のその含有量は、仮接着剤に含まれる多価ビニルエーテル化合物(A)1質量部に対して、例えば0.01~5質量部程度、好ましくは0.1~3質量部、より好ましくは0.3~1質量部である。
【0078】
仮接着剤は、酸化防止剤を更に含有していてもよい。仮接着剤が酸化防止剤を含有するという構成は、仮接着剤においてその加熱処理時に上述の化合物(B)および熱可塑性樹脂(C)の酸化を防止するうえで好適である。仮接着剤中の化合物(B)および熱可塑性樹脂(C)の酸化防止は、当該仮接着剤から形成される仮接着剤層2について加熱処理を施して得られる軟化組成物の溶剤に対する溶解性を確保するうえで好適であり、従って、ウエハなど被着体から仮接着剤層2が加熱処理を経て剥離された後に当該被着体に糊残りが生じる場合であってもその糊残渣を除去するうえで好適である。
【0079】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエステル系酸化防止剤、およびアミン系酸化防止剤を挙げることができる。これらは一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。フェノール系酸化防止剤は、加熱処理時における酸化防止効果が特に優れるので、仮接着剤中の酸化防止剤として好ましい。
【0080】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル、N,N'-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジイソプロピルフェニル)プロピオン酸オクチル、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、2,4-ビス(ドデシルチオメチル)-6-メチルフェノール、および、カルシウムビス[3,5-ジ(t-ブチル)-4-ヒドロキシベンジル(エトキシ)ホスフィナート]を挙げることができる。フェノール系酸化防止剤としては、例えば、商品名「Irganox 1010」「Irganox 1035」「Irganox 1076」「Irganox 1098」「Irganox 1135」「Irganox 1330」「Irganox 1726」「Irganox 1425WL」(いずれもBASF社製)の市販品を使用することができる。
【0081】
仮接着剤中に酸化防止剤が含まれる場合のその含有量は、仮接着剤に含まれる化合物(B)と熱可塑性樹脂(C)との100質量部に対して、例えば0.01~15質量部であり、好ましくは0.1~12質量部、より好ましくは0.5~10質量部である。
【0082】
仮接着剤は、必要に応じて他の成分を更に含有していてもよい。他の成分としては、例えば、酸発生剤、界面活性剤、溶剤、レベリング剤、シランカップリング剤、および発泡剤を挙げることができる。これらは一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0083】
仮接着剤中に界面活性剤が含まれる場合、当該仮接着剤における界面活性剤の含有量は、好ましくは0.01~1質量%程度である。このような構成は、仮接着剤塗布時のハジキを抑制するうえで好適であり、塗膜の均一性を確保するうえで好適である。そのような界面活性剤としては、例えば、商品名「F-444」「F-447」「F-554」「F-556」「F-557」(いずれもDIC社製のフッ素系オリゴマー)、商品名「BYK-350」(ビックケミー社製のアクリル系ポリマー)、および、商品名「A-1420」「A-1620」「A-1630」(いずれもダイキン工業株式会社製のフッ素含有アルコール)が挙げられる。これらは一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0084】
仮接着剤は、その粘度調整の観点から溶剤を含有するのが好ましい。溶剤としては、例えば、トルエン、ヘキサン、イソプロパノール、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、およびγ-ブチロラクトンが挙げられる。これらは一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。仮接着剤が溶剤を含有する場合、仮接着剤の溶剤含有量は例えば55~80質量%である。
【0085】
仮接着剤は、その構成成分を、必要に応じて真空下で気泡を除去しながら、撹拌・混合することによって調製することができる。撹拌・混合時の当該混合物の温度は10~80℃程度が好ましい。撹拌・混合には、例えば、自転公転型ミキサー、1軸または多軸エクストルーダー、プラネタリーミキサー、ニーダー、またはディゾルバーを使用することができる。
【0086】
仮接着剤の粘度(25℃およびせん断速度50/sの条件で測定される粘度)は、例えば30~2000mPa・s程度であり、好ましくは300~1500mPa・s、より好ましくは500~1500mPa・sである。このような構成は、仮接着剤について、その塗布性を確保してウエハなど被着体の表面に均一に塗布するうえで好適である。
【0087】
以上のような仮接着剤を、ウエハなど被着体の表面に塗布した後、加熱処理を施すことにより、当該仮接着剤中の多価ビニルエーテル化合物(A)のビニルエーテル基と化合物(B)のヒドロキシ基および/またはカルボキシ基とをアセタール結合させて、多価ビニルエーテル化合物(A)および化合物(B)から重合体を生じさせることができる。例えば、多価ビニルエーテル化合物(A)として下記式(a')で表される化合物を含有し、且つ下記式(b')で表される構成単位を有する化合物を化合物(B)として含有する仮接着剤に加熱処理を施して、これら両化合物を重合させると、下記式(P)で表される重合体が得られる。
【化10】
【0088】
仮接着剤を加熱処理に付すことにより得られる重合体の軟化点(T3)は、多価ビニルエーテル化合物(A)と化合物(B)との相対的な量を調整することによってコントロールすることができ、当該仮接着剤と組み合わせて使用される後述の永久接着剤の熱硬化温度が120℃である場合、重合体の軟化点(T3)は、例えば130℃以上であり、好ましくは130~170℃、より好ましくは140~160℃である。
【0089】
多価ビニルエーテル化合物(A)と化合物(B)との上記重合体、多価ビニルエーテル化合物(A)、化合物(B)、および熱可塑性樹脂(C)の各軟化点は、下記フロー条件下で高化式フローテスターを使用して測定することができる。
<フロー条件>
圧力:100kg/cm2
スピード:6℃/分
ノズル:1mmφ×10mm
【0090】
また、仮接着剤から形成される仮接着剤層の軟化点については、次のようにして求められる温度とする。まず、仮接着剤0.1gを第1のガラス板に10μmの厚さで塗布して仮接着剤の塗膜を形成する。次に、その塗膜上に第2のガラス板を重ね合わせる。次に、加熱処理を経ることにより、第1および第2のガラス板の間の仮接着剤内で多価ビニルエーテル化合物(A)および化合物(B)を重合させて当該仮接着剤を硬化させ、当該仮接着剤を介して両ガラス板を接合する。加熱処理は、例えば、140℃での2分間の加熱、それに続く200℃での2分間の加熱、それに続く230℃での4分間の加熱を含む。このような接着剤接合により、第1のガラス板と、第2のガラス板と、その間の仮接着剤層との積層構造を有する積層体が得られる。この積層体について、第2のガラス板を固定した状態で、加熱しつつ第1のガラス板を水平方向(ガラス板の面内方向)に2kgの応力を掛けて引っ張り、第1のガラス板が動き始める時の温度を測定する。以上のようにして求められる温度を軟化点とする。
【0091】
本半導体装置製造方法においては、次に、図1(b)に示すように、補強ウエハ1Rにおいてそのウエハ1を薄化する(薄化工程)。具体的には、支持基板Sに支持された状態にあるウエハ1に対してその裏面1b側からグラインド装置を使用して研削加工を行うことによって、ウエハ1を所定の厚さに至るまで薄化して薄化ウエハ1Tを形成する。薄化後のウエハ1(薄化ウエハ1T)の厚さは、例えば1~20μmである。
【0092】
次に、例えば図3に示すように、補強ウエハ1Rの薄化ウエハ1T側を、ベースウエハであるウエハ3に対して接着剤4を介して接合する(接合工程)。
【0093】
ウエハ3は、半導体素子が作り込まれ得る半導体ウエハ本体を有するベースウエハであり、素子形成面3aおよびこれとは反対の裏面3bを有する。ウエハ3の半導体ウエハ本体をなすための構成材料としては、例えば、ウエハ1の半導体ウエハ本体をなすための構成材料として上掲したものを採用することができる。ベースウエハであるウエハ3の厚さは、製造プロセス中の当該ウエハ3を含むウエハ積層体の強度を確保するという観点からは、好ましくは300μm以上、より好ましくは500μm以上、より好ましくは700μm以上である。ウエハ3に対する後述の研削工程における研削時間の短縮化の観点からは、ウエハ3の厚さは、好ましくは1000μm以下、より好ましくは900μm以下、より好ましくは800μm以下である。
【0094】
接着剤4は、ウエハ間の接合状態を実現するための熱硬化型接着剤であり、好ましくは、熱硬化性樹脂としての重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサン(即ち、重合性官能基を有するポリオルガノシルセスキオキサン)を含有する。重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンの有する重合性官能基は、好ましくは、エポキシ基または(メタ)アクリロイルオキシ基である。重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンは、形成される接着剤層において高い耐熱性を実現するとともに、接着剤層形成のための硬化温度の低下を図って被着体たるウエハ内の素子へのダメージを抑制するのに適する。接着剤4における重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンの含有割合は、例えば70質量%以上であり、好ましくは80~99.8質量%、より好ましくは90~99.5質量%である。接着剤4中の熱硬化性樹脂としては、重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンに代えてベンゾシクロブテン(BCB)樹脂またはノボラック系エポキシ樹脂を採用してもよい。
【0095】
接着剤4に含有される重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンは、本実施形態では、シロキサン構成単位として、下記の式(1)で表される構成単位を少なくとも含む第1構成単位[RSiO3/2]、および、下記の式(2)で表される構成単位を少なくとも含む第2構成単位[RSiO2/2(OR')]を含む(第2構成単位におけるRとR'は同じであってもよいし異なってもよい)。これら構成単位はシロキサン構成単位におけるいわゆるT単位に属し、本実施形態では、構成単位[RSiO3/2]をT3体とし、構成単位[RSiO2/2(OR')]をT2体とする。T3体において、そのケイ素原子は、それぞれが他のシロキサン構成単位中のケイ素原子とも結合する三つの酸素原子と結合している。T2体において、そのケイ素原子は、それぞれが他のシロキサン構成単位中のケイ素原子とも結合する二つの酸素原子と結合し、且つアルコキシ基の酸素と結合している。このようなT3体およびT2体は、いずれも、上述のようにシロキサン構成単位としてのT単位に属し、加水分解性の三つの官能基を有するシラン化合物の加水分解とその後の縮合反応によって形成されうる、重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンの部分構造である。
【0096】
【化11】
【0097】
式(1)におけるR1および式(2)におけるR1は、それぞれ、エポキシ基または(メタ)アクリロイルオキシ基を含有する基を表す。式(2)におけるR2は、水素原子、または、炭素数1~4のアルキル基を表す。
【0098】
式(1)および式(2)における各R1がエポキシ基含有基である場合のそのR1としては、例えば、下記の式(3)~(6)で表される基が挙げられる。式(3)~(6)におけるR3,R4,R5,R6のそれぞれは、炭素数が例えば1~10の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基を表す。そのようなアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、およびデカメチレン基が挙げられる。接着剤4から形成される接着剤層における高い耐熱性の実現や硬化時収縮の抑制の観点からは、式(1)および式(2)におけるエポキシ基含有基としてのR1は、それぞれ、好ましくは、式(3)で表されるエポキシ基含有基または式(4)で表されるエポキシ基含有基であり、より好ましくは、式(3)で表される基であってR3がエチレン基である2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基である。
【0099】
【化12】
【0100】
上記式(2)におけるR2は、上述のように、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、従って、式(2)におけるOR2は、ヒドロキシ基、または、炭素数1~4のアルコキシ基を表す。炭素数1~4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、およびイソブチルオキシ基が挙げられる。
【0101】
接着剤4に含まれる重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンは、上記式(1)で表される構成単位として、一種類を含むものでもよいし、二種類以上を含むものでもよい。当該重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンは、上記式(2)で表される構成単位として、一種類を含むものでもよいし、二種類以上を含むものでもよい。
【0102】
接着剤4に含まれる上述の重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンは、上記のT3体として、式(1)で表される構成単位に加えて、下記の式(7)で表される構成単位を含んでもよい。式(7)におけるR7は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または、置換もしくは無置換のアラルキル基を表す。式(7)におけるR7は、好ましくは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、または置換もしくは無置換のアリール基であり、より好ましくはフェニル基である。
【0103】
【化13】
【0104】
7に関して上記したアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、およびイソペンチル基が挙げられる。R7に関して上記したアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、およびイソプロペニル基が挙げられる。R7に関して上記したシクロアルキル基としては、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、およびシクロヘキシル基が挙げられる。R7に関して上記したアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、およびナフチル基が挙げられる。R7に関して上記したアラルキル基としては、例えば、ベンジル基およびフェネチル基が挙げられる。
【0105】
7に関して上記したアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、およびアラルキル基の置換基としては、例えば、エーテル基、エステル基、カルボニル基、シロキサン基、フッ素原子などハロゲン原子、アクリル基、メタクリル基、メルカプト基、アミノ基、および水酸基が挙げられる。
【0106】
接着剤4に含まれる上述の重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンは、上記のT2体として、式(2)で表される構成単位に加えて、下記の式(8)で表される構成単位を含んでもよい。式(8)におけるR7は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または、置換もしくは無置換のアラルキル基を表し、具体的には上記式(7)におけるR7と同様である。式(8)におけるR2は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表し、具体的には上記式(2)におけるR2と同様である。
【0107】
【化14】
【0108】
接着剤4に含まれる上述の重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンは、そのシロキサン構成単位中に、T単位である上述の第1および第2構成単位に加えて、いわゆるM単位である構成単位[RSiO1/2]、いわゆるD単位である構成単位[R2SiO2/2]、およびいわゆるQ単位である構成単位[SiO4/2]からなる群より選択される少なくとも一種を含んでもよい。
【0109】
重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンは、カゴ型、不完全カゴ型、ラダー型、ランダム型のいずれのシルセスキオキサン構造を有していてもよく、これらシルセスキオキサン構造の2以上が組み合わせられた構造を有していてもよい。
【0110】
接着剤4中の重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンの全シロキサン構成単位において、T2体に対するT3体のモル比の値(即ち、T3体/T2体)は、例えば5~500であり、下限値は、好ましくは10である。上限値は、好ましくは100、より好ましくは50である。重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンについては、[T3体/T2体]の値の当該範囲への調整により、接着剤4に含まれる重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサン以外の成分との相溶性が向上し、取扱い性が向上する。重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンにおける[T3体/T2体]の値が5~500であることは、T3体に対してT2体の存在量が相対的に少なく、シラノールの加水分解・縮合反応がより進行していることを意味する。
【0111】
重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンにおける上記モル比の値(T3体/T2体)は、例えば、29Si-NMRスペクトル測定により求めることができる。29Si-NMRスペクトルにおいて、上述の第1構成単位(T3体)におけるケイ素原子と、上述の第2構成単位(T2体)におけるケイ素原子とは、異なるケミカルシフトのピークないしシグナルを示す。これらピークの面積比から、上記モル比の値を求めることができる。重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンの29Si-NMRスペクトルは、例えば、下記の装置および条件により測定することができる。
【0112】
測定装置:商品名「JNM-ECA500NMR」(日本電子株式会社製)
溶媒:重クロロホルム
積算回数:1800回
測定温度:25℃
【0113】
接着剤4に含まれる重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンの数平均分子量(Mn)は、好ましくは1000~50000であり、より好ましくは1500~10000、より好ましくは2000~8000、より好ましくは2000~7000である。数平均分子量を1000以上とすることにより、形成される硬化物ないし接着剤層の絶縁性や、耐熱性、耐クラック性、接着性が向上する。一方、数平均分子量を50000以下とすることにより、接着剤4中の重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンと他成分との相溶性が向上し、形成される硬化物ないし接着剤層の絶縁性や、耐熱性、耐クラック性が向上する。
【0114】
接着剤4に含まれる重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンについての分子量分散度(Mw/Mn)は、好ましくは1.0~4.0であり、より好ましくは1.1~3.0、より好ましくは1.2~2.7である。分子量分散度を4.0以下とすることにより、形成される硬化物ないし接着剤層の耐熱性や、耐クラック性、接着性がより高くなる。一方、分子量分散度を1.0以上とすることにより、当該接着剤組成物が液状となりやすく、その取り扱い性が向上する傾向がある。
【0115】
重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンの数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定してポリスチレン換算により算出される値とする。重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンの数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、例えば、HPLC装置(商品名「LC-20AD」,株式会社島津製作所製)を使用して下記の条件により測定することができる。
【0116】
カラム:2本のShodex KF-801(上流側,昭和電工株式会社製)と、Shodex KF-802(昭和電工株式会社製)と、Shodex KF-803(下流側,昭和電工株式会社製)とを直列に接続
測定温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
試料濃度:0.1~0.2質量%
流量:1mL/分
標準試料:ポリスチレン
検出器:UV-VIS検出器(商品名「SPD-20A」,株式会社島津製作所製)
【0117】
以上のような重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンは、加水分解性の三つの官能基を有するシラン化合物の加水分解とこれに続く縮合反応によって製造することができる。その製造に用いられる原料は、下記の式(9)で表される化合物を少なくとも含み、下記の式(10)で表される化合物を必要に応じて含む。式(9)で表される化合物は、上記式(1)で表される構成単位と上記式(2)で表される構成単位を形成するためのものである。式(10)で表される化合物は、上記式(7)で表される構成単位と上記式(8)で表される構成単位を形成するためのものである。
【0118】
【化15】
【0119】
式(9)におけるR1は、重合性基を含有する基を表し、具体的には上記式(1)(2)におけるR1と同様である。式(9)におけるX1は、アルコキシ基またはハロゲン原子を表す。そのアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基など炭素数1~4のアルコキシ基が挙げられる。X1としてのハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子が挙げられる。X1は、好ましくはアルコキシ基であり、より好ましくはメトキシ基またはエトキシ基である。式(9)において、三つのX1は互いに同じであってもよいし異なってもよい。
【0120】
式(10)におけるR7は、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルキル基、または、置換もしくは無置換のアルケニル基を表し、具体的には上記式(7)(8)におけるR7と同様である。式(10)におけるX2は、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、具体的には上記式(9)におけるX1と同様である。
【0121】
上述の重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンの製造に用いられる原料は、更に他の加水分解性シラン化合物を含んでもよい。そのような化合物としては、例えば、上記式(9)(10)で表される両化合物以外の加水分解性三官能シラン化合物、M単位を形成することとなる加水分解性単官能シラン化合物、D単位を形成することとなる加水分解性二官能シラン化合物、および、Q単位を形成する加水分解性四官能シラン化合物が挙げられる。
【0122】
上記原料としての加水分解性シラン化合物の使用量や組成は、製造目的物である重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンの構造に応じて適宜に調整される。例えば、上記式(9)で表される化合物の使用量は、使用する加水分解性シラン化合物全量に対して、例えば55~100モル%、好ましくは65~100モル%である。上記式(10)で表される化合物の使用量は、使用する加水分解性シラン化合物全量に対して、例えば0~70モル%である。使用する加水分解性シラン化合物全量に対する、式(9)で表される化合物と式(10)で表される化合物との総使用量は、例えば60~100モル%、好ましくは70~100モル%、より好ましくは80~100モル%である。
【0123】
上述の重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンの製造において二種類以上の加水分解性シラン化合物を用いる場合、加水分解性シラン化合物の種類ごとの加水分解および縮合反応は、同時に行うこともできるし、順次に行うこともできる。
【0124】
上述の加水分解および縮合反応は、好ましくは、一種類のまたは二種類以上の溶媒の存在下で行われる。好ましい溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル、および、アセトンや、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトンが挙げられる。溶媒の使用量は、加水分解性シラン化合物100質量部あたり、例えば2000質量部以下の範囲内で反応時間等に応じて適宜に調整される。
【0125】
上述の加水分解および縮合反応は、好ましくは、一種類のまたは二種類以上の触媒および水の存在下で進行される。触媒は、酸触媒であってもよいし、アルカリ触媒であってもよい。触媒の使用量は、加水分解性シラン化合物1モルあたり例えば0.002~0.2モルの範囲内で適宜に調整される。水の使用量は、加水分解性シラン化合物1モルあたり例えば0.5~20モルの範囲内で適宜に調整される。
【0126】
上記加水分解性シラン化合物の加水分解および縮合反応は、1段階で行ってもよいし、2段階以上に分けて行ってもよい。上記モル比の値(T3体/T2体)が5以上である重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンを製造する場合には例えば、第1段目の加水分解および縮合反応の反応温度は、例えば40~100℃、好ましくは45~80℃である。第1段目の加水分解および縮合反応の反応時間は、例えば0.1~10時間、好ましくは1.5~8時間である。第2段目の加水分解および縮合反応の反応温度は、好ましくは5~200℃、より好ましくは30~100℃である。反応温度を上記範囲に制御することにより、上記モル比の値(T3体/T2体)および上記数平均分子量をより効率的に所望の範囲に制御できる傾向がある。また、第2段目の加水分解および縮合反応の反応時間は、特に限定されないが、0.5~1000時間が好ましく、より好ましくは1~500時間である。また、上述の加水分解および縮合反応は、常圧下、加圧下、または減圧下で行うことができる。上述の加水分解および縮合反応は、好ましくは、窒素やアルゴンなど不活性ガスの雰囲気下で行われる。
【0127】
以上のような加水分解性シラン化合物の加水分解および縮合反応により、上述の重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンが得られる。反応終了後には、好ましくは、重合性基の開環を抑制するための触媒の中和を行う。こうして得られた重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンは、必要に応じて精製される。
【0128】
接着剤4は、例えば以上のようにして製造される重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンに加えて、好ましくは少なくとも一種類の硬化触媒を含む。
【0129】
接着剤4がエポキシ基含有ポリオルガノシルセスキオキサンを含む場合の硬化触媒としては、例えば熱カチオン重合開始剤が挙げられる。接着剤4が(メタ)アクリロイルオキシ基含有ポリオルガノシルセスキオキサンを含む場合の硬化触媒としては、例えば熱ラジカル重合開始剤が挙げられる。接着剤4における硬化触媒の含有量は、重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサン100質量部あたり、好ましくは0.1~3.0質量部である。
【0130】
上述の熱カチオン重合開始剤としては、例えば、アリールスルホニウム塩、アルミニウムキレート、三フッ化ホウ素アミン錯体などのタイプの熱カチオン重合開始剤が挙げられる。アリールスルホニウム塩としては、例えばヘキサフルオロアンチモネート塩が挙げられる。アルミニウムキレートとしては、例えば、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、およびアルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)が挙げられる。三フッ化ホウ素アミン錯体としては、例えば、三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素イミダゾール錯体、および三フッ化ホウ素ピペリジン錯体が挙げられる。
【0131】
上述の熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物や過酸化物などのタイプの熱ラジカル重合開始剤が挙げられる。アゾ化合物としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2'-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、ジエチル-2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、およびジブチル-2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)が挙げられる。過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイル)パーオキシヘキサン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジブチルパーオキシヘキサン、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、1,4-ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、メチルエチルケトンパーオキサイド、および1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートが挙げられる。
【0132】
接着剤4は、上述の重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンに加えて、一種類のまたは二種類以上の他の硬化性化合物を含んでもよい。当該硬化性化合物としては、例えば、上述の重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサン以外のエポキシ化合物、(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物、ビニル基含有化合物、オキセタン化合物、およびビニルエーテル化合物が挙げられる。
【0133】
上述の重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサン以外のエポキシ化合物としては、例えば、脂環式エポキシ化合物(脂環式エポキシ樹脂)、芳香族エポキシ化合物(芳香族エポキシ樹脂)、および脂肪族エポキシ化合物(脂肪族エポキシ樹脂)が挙げられる。脂環式エポキシ化合物としては、例えば、3,4,3',4'-ジエポキシビシクロヘキサン、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロパン、1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)エタン、2,3-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)オキシラン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、および、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(例えば、株式会社ダイセル製の「EHPE3150」)が挙げられる。
【0134】
上記芳香族エポキシ化合物としては、例えば、エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂やノボラック・アルキルタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0135】
上記脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、環状構造を有しないq価のアルコール(qは自然数である)のグリシジルエーテル、一価カルボン酸または多価カルボン酸のグリシジルエステル、および、二重結合を有する油脂のエポキシ化物が挙げられる。二重結合を有する油脂のエポキシ化物としては、例えば、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化大豆油、およびエポキシ化ひまし油が挙げられる。
【0136】
上述の(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ビニルアクリレート、シリコーンアクリレート、およびポリスチリルエチルメタクリレートが挙げられる。また、上述の(メタ)アクリロイルオキシ基含有化合物としては、ナガセケムテックス株式会社製の「DA-141」、東亞合成株式会社製の「アロニックスM-211B」および「アロニックスM-208」、並びに、新中村化学株式会社製の「NKエステル」「ABE-300」「A-BPE-4」「A-BPE-10」「A-BP E-20」「A-BPE-30」「BPE-100」「BPE-200」「BPE-500」「BPE-900」「BPE-1300N」も挙げられる。
【0137】
上述のビニル基含有化合物としては、例えば、スチレンおよびジビニルベンゼンが挙げられる。
【0138】
上述のオキセタン化合物としては、例えば、3,3-ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(ヒドロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(ヒドロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3-エチル-3-(ヘキシルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(クロロメチル)オキセタン、および3,3-ビス(クロロメチル)オキセタンが挙げられる。
【0139】
上述のビニルエーテル化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシイソプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、3-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシブチルビニルエーテル、3-ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、1-メチル-3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1-メチル-2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1-ヒドロキシメチルプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールモノビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,8-オクタンジオールジビニルエーテル、p-キシレングリコールモノビニルエーテル、p-キシレングリコールジビニルエーテル、m-キシレングリコールモノビニルエーテル、m-キシレングリコールジビニルエーテル、o-キシレングリコールモノビニルエーテル、o-キシレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、およびトリエチレングリコールジビニルエーテルが挙げられる。
【0140】
接着剤4は、その塗工性等を調整するうえでは溶剤を含むのが好ましい。溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシブチルアセテート、メトキシプロピルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、3-メトキシブタノール、エトキシエタノール、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、およびテトラヒドロフランが挙げられる。
【0141】
接着剤4は、更に、シランカップリング剤、消泡剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、レベリング剤、界面活性剤、増量剤、防錆剤、帯電防止剤、可塑剤など、各種の添加剤を含んでもよい。
【0142】
接着剤4の耐熱性に関し、接着剤4の熱分解温度は、好ましくは200℃以上、より好ましくは260℃以上、より好ましくは300℃以上である。熱分解温度は、示差熱熱重量同時測定装置を使用して行う熱重量分析によって得られる曲線、即ち、分析対象である試料についての所定昇温範囲での熱重量の温度依存性を表す曲線における、昇温過程初期の重量減少のない或いは一定割合でわずかに漸減している部分の接線と、昇温過程初期に続く昇温過程中期の有意な重量減少が生じている部分内にある変曲点での接線との交点が示す温度とする。示差熱熱重量同時測定装置としては、例えば、セイコーインスツル株式会社製の商品名「TG-DTA6300」を使用することができる。
【0143】
本半導体装置製造方法における接合工程では、以上のような接着剤4を介して、ウエハ3の素子形成面3a側と、補強ウエハ1Rにおける薄化ウエハ1Tの裏面1b側とを、接合する。
【0144】
具体的には、まず、接合対象面(ウエハ3の素子形成面3a,薄化ウエハ1Tの裏面1b)の一方または両方に接着剤4をスピンコーティングによって塗布して接着剤層を形成する。図3(a)は、ウエハ3の素子形成面3aに接着剤4が塗布される場合を例示的に示すものである。また、接着剤4の塗布の前に、接合対象面の一方または両方にシランカップリング剤処理を施してもよい。次に、加熱によって接着剤4(接着剤層)を乾燥させて固化させる。このときの加熱温度は例えば50~150℃であり、加熱時間は例えば5~120分間である。加熱温度は、一定であってもよいし、段階的に変化させてもよい。次に、接着剤4(接着剤層)を介して接合対象面を貼り合わせる。この貼り合わせにおいて、加圧力は例えば300~5000g/cm2であり、温度は、例えば30~200℃であり、好ましくは室温以上かつ80℃以下の範囲である。その後、接合対象面間において加熱によって接着剤4を硬化させる。硬化のための加熱温度は、例えば30~200℃であり、好ましくは50~190℃である。硬化のための加熱時間は例えば5~120分間である。加熱温度は、一定であってもよいし、段階的に変化させてもよい。接着剤4の硬化後における接着剤層の厚さは、例えば0.5~20μmである。本工程において比較的低温で接着剤4を硬化させて接着剤接合を実現するという以上の構成は、貼合わせ時にウエハ間に介在する接着剤4の寸法変化を抑制するのに適するとともに、被着体たるウエハ内の素子へのダメージを抑制するのにも適する。
【0145】
本半導体装置製造方法では、次に、図4(a)および図4(b)に示すように、補強ウエハ1Rにおける支持基板Sと薄化ウエハ1Tの間の仮接着剤層2による仮接着状態を解除して、支持基板Sの取り外しを行う(取外し工程)。取外し工程は、好ましくは、仮接着剤層2中の上述の重合体、即ち、多価ビニルエーテル化合物(A)と化合物(B)との重合体、の軟化点(T3)より高い温度で仮接着剤層2を軟化させる軟化処理を含む。この軟化処理における仮接着剤層加熱温度は、好ましくは170℃以上であり、且つ、例えば250℃以下であり、好ましくは240℃以下、より好ましくは230℃以下である。本工程では、例えばこのような軟化処理の後、ウエハ1に対して支持基板Sをスライドさせて、支持基板Sの分離ないし取外しを行う。補強ウエハ1Rの取外しの後、ウエハ1上に仮接着剤が残っている場合には、当該仮接着剤を除去する。この除去作業には、仮接着剤が易溶解性を示す一種類または二種類以上の溶剤を使用することができる。そのような溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、およびメチルイソブチルケトンが挙げられる。上述の補強ウエハ1Rにおけるウエハ1がその素子形成面1a側に絶縁膜や配線パターンを含む配線構造を伴わないものである場合、本工程の後、薄化ウエハ1Tの素子形成面1a上に配線構造が形成される。後記の取外し工程の後においても同様である。
【0146】
本実施形態の半導体装置製造方法では、上述の補強ウエハ1Rとは別に、所定数の補強ウエハ1R(図1(a)に示される)が追加的に用意される。補強ウエハ1Rは、上述のように、素子形成面1aおよび裏面1bを有するウエハ1と、支持基板Sと、これらの間の仮接着剤層2とを含む積層構造を有する。仮接着剤層2は、上述の仮接着剤から形成されるものである。そして、各補強ウエハ1Rにおいて、図1(b)に示すようにウエハ1を薄化する。具体的には、各補強ウエハ1Rにおいて、支持基板Sに支持された状態にあるウエハ1に対してその裏面1b側からグラインド装置を使用して研削加工を行うことによって、ウエハ1を所定の厚さに至るまで薄化して薄化ウエハ1Tを形成する。薄化後のウエハ1(薄化ウエハ1T)の厚さは、例えば1~20μmである。
【0147】
次に、図5(a)および図5(b)に示すように、ベースウエハであるウエハ3上に積層された薄化ウエハ1Tの素子形成面1a側と、追加の補強ウエハ1Rにおける薄化ウエハ1Tの裏面1b側とを、上述の接着剤4を介して接合する(追加の接合工程)。
【0148】
具体的には、まず、接合対象面(一方の薄化ウエハ1Tの素子形成面1a,他方の薄化ウエハ1Tの裏面1b)の一方または両方に接着剤4をスピンコーティングによって塗布して接着剤層を形成する。図5(a)は、一方の薄化ウエハ1Tの素子形成面1aに接着剤4が塗布される場合を例示的に示すものである。また、接着剤4の塗布の前に、接合対象面の一方または両方にシランカップリング剤処理を施してもよい。次に、加熱によって接着剤4(接着剤層)を乾燥させて固化させる。このときの加熱温度は例えば50~150℃であり、加熱時間は例えば5~120分間である。加熱温度は、一定であってもよいし、段階的に変化させてもよい。次に、接着剤4(接着剤層)を介して接合対象面を貼り合わせる。この貼り合わせにおいて、加圧力は例えば300~5000g/cm2であり、温度は、例えば30~200℃であり、好ましくは室温以上かつ80℃以下の範囲である。その後、接合対象面間において加熱によって接着剤4を硬化させる。硬化のための加熱温度は、例えば30~200℃であって好ましくは50~190℃であり、硬化のための加熱時間は例えば5~120分間である。加熱温度は、一定であってもよいし、段階的に変化させてもよい。接着剤4の硬化後における接着剤層の厚さは、例えば0.5~20μmである。本工程において比較的低温で接着剤4を硬化させて接着剤接合を実現するという以上の構成は、貼合わせ時にウエハ間に介在する接着剤4の寸法変化を抑制するのに適するとともに、被着体たるウエハ内の素子へのダメージを抑制するのにも適する。
【0149】
本半導体装置製造方法では、次に、図6(a)および図6(b)に示すように、更に積層された補強ウエハ1Rにおける支持基板Sと薄化ウエハ1Tの間の仮接着剤層2による仮接着状態を解除して、支持基板Sの取り外しを行う(追加の接合工程後の取外し工程)。本工程は、好ましくは、仮接着剤層2中の上述の重合体、即ち、多価ビニルエーテル化合物(A)と化合物(B)との重合体、の軟化点(T3)より高い温度で仮接着剤層2を軟化させる軟化処理を含む。この軟化処理における仮接着剤層加熱温度は、好ましくは170℃以上であり、且つ、例えば250℃以下であり、好ましくは240℃以下、より好ましくは230℃以下である。本工程では、例えばこのような軟化処理の後、ウエハ1に対して支持基板Sをスライドさせて、支持基板Sの分離ないし取外しを行う。補強ウエハ1Rの取外しの後、ウエハ1上に仮接着剤が残っている場合には、当該仮接着剤を除去する。
【0150】
本半導体装置製造方法では、用意される追加の補強ウエハ1Rごとに、補強ウエハ1Rのウエハ1を薄化する薄化工程(図1)、上述の追加の接合工程(図5)、およびその後の取外し工程(図6)を含む一連の過程を繰り返すことにより、複数の薄化ウエハ1Tを順次に積層してウエハ積層体Yを形成ることができる(ウエハ積層体形成工程)。ウエハ積層体形成工程では、少なくとも二つのウエハ積層体Yを形成する。ウエハ積層体Y間において、ウエハ積層数は同じであってもよいし異なってもよい。図7には、ウエハ3上に3枚の薄化ウエハ1Tが多段に配された構成を有するウエハ積層体Yを一例として表す。
【0151】
次に、図8に示すように、各ウエハ積層体Yにおいて貫通電極5を形成する(電極形成工程)。貫通電極5は、ウエハ積層体Yにおいて異なるウエハに形成されている半導体素子間を電気的に接続するためのものであり、ウエハ積層体Yにおける積層方向の一端に位置する薄化ウエハ1T(第1のウエハ)の素子形成面1aから他端に位置するウエハ3(第2のウエハ)の素子形成面3aを超える位置まで当該ウエハ積層体Y内を貫通して延びる。本工程では、例えば、全ての薄化ウエハ1Tと接着剤4(接着剤層)とを貫通し且つ上は3内に入り込む開口部の形成、当該開口部の内壁面への絶縁膜(図示略)の形成、絶縁膜表面へのバリア層(図示略)の形成、バリア層表面への電気めっき用シード層(図示略)の形成、および、電気めっき法による開口部内への銅など導電材料の充填を経るなどして、貫通電極5を形成することができる。開口部の形成手法としては例えば反応性イオンエッチングが挙げられる。また、貫通電極5の形成には、例えば特開2016-4835号公報に記載の手法を採用してもよい。形成される貫通電極5により、具体的には、各薄化ウエハ1Tの素子形成面1aの側に形成されている配線構造(図示略)およびウエハ3の素子形成面3aの側に形成されている配線構造(図示略)が、相互に電気的に接続される。このような貫通電極5によると、製造される半導体装置において、半導体素子間を短距離で適切に電気的接続できる。したがって、このような貫通電極5を形成するという構成は、製造される半導体装置において、効率の良いデジタル信号処理を実現するうえで好適であり、高周波信号の減衰を抑制するうえで好適であり、また、消費電力を抑制するうえでも好適である。
【0152】
本半導体装置製造方法においては、次に、図9に示すように、各ウエハ積層体Yにおけるウエハ3の裏面3b側に対する研削によって当該ウエハ3を薄化して、その裏面3b側にて貫通電極5を露出させる(電極端部露出化工程)。薄化後のウエハ3の厚さは、例えば5~200μmである。本工程を経たウエハ積層体Yでは、貫通電極5は、ウエハ積層方向の一端に位置する薄化ウエハ1T(第1のウエハ)の素子形成面1aにて露出するとともに、ウエハ積層方向の他端に位置するウエハ3(第2のウエハ)の裏面3bにて露出することとなる。
【0153】
本半導体装置製造方法においては、次に、電極端部露出化工程を経た二つのウエハ積層体Yを、それらウエハ積層体Y間にて貫通電極5を電気的に接続しつつ、積層して接合する(多層化工程)。
【0154】
多層化工程では、図10に示すように、接合対象である一方のウエハ積層体Yにおける薄化ウエハ1T(第1のウエハ)の素子形成面1a側と、他方のウエハ積層体Yにおける薄化ウエハ1T(第1のウエハ)の素子形成面1a側との接合が、行われてもよい(ウエハ積層体間のface-to-face接合)。接合手法としては、一方のウエハ積層体Yの貫通電極5と他方のウエハ積層体Yの貫通電極5との間にバンプを介在させるバンプ接合や、いわゆる直接接合が挙げられ、直接接合としては、例えば、Cu電極間のCu-Cu接合など電極間ダイレクト接合が挙げられる(後記のウエハ積層体間接合における接合手法についても同様である)。図10は、直接接合によってウエハ積層体Yどうしがface-to-face接合される場合を一例として表すものである。
【0155】
多層化工程では、図11に示すように、接合対象である一方のウエハ積層体Yにおける薄化ウエハ1T(第1のウエハ)の素子形成面1a側と、他方のウエハ積層体Yにおけるウエハ3(第2のウエハ)の裏面3b側との接合が、行われてもよい(ウエハ積層体間のface-to-back接合)。接合手法としては、上述のバンプ接合や直接接合が挙げられる。図11は、直接接合によってウエハ積層体Yどうしがface-to-back接合される場合を一例として表すものである。
【0156】
多層化工程では、図12に示すように、接合対象である一方のウエハ積層体Yにおけるウエハ3(第2のウエハ)の裏面3b側と、他方のウエハ積層体Yにおけるウエハ3(第2のウエハ)の裏面3b側との接合が、行われてもよい(ウエハ積層体間のback-to-back接合)。接合手法としては、上述のバンプ接合や直接接合が挙げられる。図12は、直接接合によってウエハ積層体Yどうしがback-to-back接合される場合を一例として表すものである。
【0157】
この後、得られるウエハ積層体の積層方向の両端に位置するウエハの表面に絶縁膜(図示略)を形成し、当該ウエハ積層体内の配線構造(図示略)と電気的に接続する外部接続用バンプ(図示略)を一方の絶縁膜上に形成してもよい。
【0158】
以上のようにして、半導体素子がその厚さ方向に集積された立体的構造を有する半導体装置を製造することができる。この半導体装置は、ダイシングによって個片化されてもよい。
【0159】
本実施形態の半導体装置製造方法における上述の電極形成工程では、各ウエハ積層体Y内に、それに含まれる複数のウエハにわたって延びる貫通電極5が形成される。このような構成は、ウエハ積層体Yの形成過程でウエハごとに貫通電極を形成するための一連のステップ(即ち、一枚のウエハを貫通する開口部の形成や、その開口部の内壁面への絶縁膜の形成、開口部内への導電材料の充填、これらに伴う各種態様の洗浄処理など)の実施を回避または削減するのに適し、WOWプロセスにおいて半導体装置を効率よく製造するのに適する。
【0160】
本実施形態の半導体装置製造方法における上述の多層化工程では、既に貫通電極5が形成されている二つのウエハ積層体Y,Yの間で貫通電極5が電気的に接続されつつウエハ積層体Y,Yが接合されて、ウエハが更に多層化される。このような構成は、WOWプロセスにおいて大きなウエハ積層数を実現するのに適する。
【0161】
WOWプロセスにおいては、ウエハ積層体のウエハ積層数が増加するほど、積層体厚さ方向において当該複数のウエハにわたって延びる開口部を適切に形成するのが困難となる傾向にあって当該開口部内に貫通電極を適切に形成することが困難となる傾向にある。しかしながら、本半導体装置製造方法では、製造目的の半導体装置の半導体素子積層数に相当する積層数のウエハ積層体Yを一括的に貫通する電極を形成する必要はない。このような本半導体装置製造方法は、一括貫通電極の形成に伴う上述の困難性を回避または抑制するのに適する。
【0162】
以上のように、本実施形態の半導体装置製造方法は、ウエハ積層体の増大に伴う貫通電極の形成の困難性を回避または抑制して大きなウエハ積層数を実現しつつ、効率よく半導体装置を製造するのに適するのである。
【0163】
また、本半導体装置製造方法は、上記の電極形成工程における貫通電極形成手法として例えば特開2016-4835号公報に記載の手法を採用する場合に、各ウエハにおける半導体素子の高密度化を図るのに適する。同文献に記載の貫通電極形成手法によると、例えば図13に示すように、連なって貫通電極Eをなすこととなる、各ウエハW内に形成される部分導電部Eaが、隣接ウエハW間では異なる断面積(ウエハ面内方向の断面積)で形成され、ウエハ積層数が増すほど部分導電部Eaの断面積がウエハWごとに不可避的に漸増する構造が生ずる。このような構造においては、ウエハ積層数が増すほど、ウエハWにおける半導体素子形成可能面積は小さくなって素子の高密度化を図りにくくなる。しかしながら、上述の本半導体装置製造方法では、製造目的の半導体装置の半導体素子積層数に相当する積層数のウエハ積層体を一括的に貫通する電極を形成する必要はない。このような本半導体装置製造方法は、ウエハ積層数の増大を図りつつ各ウエハにおける半導体素子の高密度化を図るのに、適するのである。
【0164】
本半導体装置製造方法において、補強ウエハ1R内の仮接着剤層2を形成するための仮接着剤は、上述のように、好ましくは、多価ビニルエーテル化合物(A)と、そのビニルエーテル基と反応してアセタール結合を形成可能なヒドロキシ基またはカルボキシ基を二つ以上有して多価ビニルエーテル化合物と重合体を形成しうる化合物(B)と、熱可塑性樹脂(C)とを含有する。このような構成の仮接着剤は、支持基板Sとウエハ1の間に硬化形成される仮接着剤層の形態において、図1(b)を参照して上述した薄化工程でのウエハ1に対する研削等に耐えうる高い接着力を確保しつつ、例えば130~250℃程度の比較的に高い軟化温度を実現するのに適する。
【0165】
本半導体装置製造方法において、図3を参照して上述した接合工程で使用される接着剤4は、上述のように、好ましくは重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンを含有する。上述のように、重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサンは、例えば30~200℃程度の比較的に低い重合温度ないし硬化温度を実現するのに適するとともに、硬化後において高い耐熱性を実現するのに適し、従って、重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサン含有接着剤によるウエハ間接着剤接合は、ウエハ間に形成される接着剤層において高い耐熱性を実現するとともに、接着剤層形成のための硬化温度の低下を図って被着体たるウエハ内の素子へのダメージを抑制するのに適する。
【0166】
仮接着剤層2形成用の仮接着剤とウエハ間接合用の接着剤4とにつき共に上述の好ましい構成が採用される場合、次のような複合的で機能的な構成を実現することができる。図3を参照して上述した接合工程に供される補強ウエハ1R内の仮接着剤層2が上述のように比較的高い軟化温度を実現するのに適し、且つ、同工程で使用される接着剤4(重合性基含有ポリオルガノシルセスキオキサン含有接着剤)が上述のように比較的低い硬化温度と硬化後の高耐熱性とを実現するのに適するという、構成である。このような複合的な機能的構成は、接合工程の実施と図4を参照して上述したその後の取外し工程の実施とを両立させるのに適する。すなわち、当該構成は、接合工程を比較的低温の条件で実施して、補強ウエハ1Rにおける支持基板Sと薄化ウエハ1Tの仮接着状態を維持しつつベースウエハたるウエハ3に対する当該薄化ウエハ1Tの良好な接着剤接合を実現するのに適するとともに、その後の取外し工程を比較的高温の条件で実施して、ウエハ3と薄化ウエハ1Tの間の接着剤接合を維持しつつ仮接着剤層2を軟化させて薄化ウエハ1Tからの支持基板Sの取り外しを実施するのに適する。薄化ウエハ1Tからの支持基板Sの取り外しにあたって仮接着剤層2の軟化を経て仮接着剤層2による仮接着状態を解除するという構成は、薄化ウエハ1Tに対して局所的に強い応力が作用するのを回避または抑制して当該ウエハの破損を回避するのに適する。上記の複合的構成は、ウエハ積層体Yの形成にあたり、ウエハ破損を回避しつつ接着剤接合を介して薄いウエハを多層化するのに適するのである。
【0167】
本半導体装置製造方法においては、図1から図6を参照して上述したウエハ積層体形成工程に代えて図14および図15に示すウエハ積層体形成工程を経て、ウエハ積層体Yを形成してもよい。
【0168】
このウエハ積層体形成工程では、まず、図14(a)および図14(b)に示すように、後に半導体素子が作り込まれることとなる半導体ウエハであるウエハ1'と、既に半導体素子が作り込まれている素子形成面3aを片面に有するウエハ3とが、上述した接着剤4を介して接合される。具体的には、まず、接合対象面(ウエハ3の素子形成面3a,ウエハ1'の一方の面)の一方または両方に接着剤4をスピンコーティングによって塗布して接着剤層を形成する。接着剤4の塗布の前に、接合対象面の一方または両方にシランカップリング剤処理を施してもよい。次に、加熱によって接着剤4(接着剤層)を乾燥させて固化させる。次に、接着剤4(接着剤層)を介して接合対象面を貼り合わせる。その後、接合対象面間において加熱によって接着剤4を硬化させる。接着剤4の硬化後における接着剤層の厚さは、例えば0.5~20μmである。接着剤4による接合をなすための諸条件については、図3を参照して上述した接合工程における諸条件と同様である。
【0169】
次に、図14(c)に示すように、ウエハ1'が薄化される。本工程では、例えば、ウエハ1'に対する研削加工によってウエハ1'を所定の厚さにまで薄化して薄化ウエハ1T'を形成する。薄化後のウエハ1'(薄化ウエハ1T')の厚さは、例えば1~20μmである。
【0170】
次に、図14(d)に示すように、薄化ウエハ1T'の被研削面側に素子形成面1aを形成する。具体的には、薄化ウエハ1T'の被研削面側に対し、トランジスタ形成工程や配線形成工程などを経て複数の半導体素子(図示略)を作り込む。これにより、被研削面側に素子形成面1aを有する薄化ウエハ1Tが形成される。
【0171】
次に、図15(a)および図15(b)に示すように、後に半導体素子が作り込まれることとなる半導体ウエハである新たなウエハ1'と薄化ウエハ1Tとが、上述した接着剤4を介して接合される。具体的には、まず、接合対象面(薄化ウエハ1Tの素子形成面1a,新たなウエハ1'の一方の面)の一方または両方に接着剤4をスピンコーティングによって塗布して接着剤層を形成する。接着剤4の塗布の前に、接合対象面の一方または両方にシランカップリング剤処理を施してもよい。次に、加熱によって接着剤4(接着剤層)を乾燥させて固化させる。次に、接着剤4(接着剤層)を介して接合対象面を貼り合わせる。その後、接合対象面間において加熱によって接着剤4を硬化させる。接着剤4の硬化後における接着剤層の厚さは、例えば0.5~20μmである。接着剤4による接合をなすための諸条件については、図3を参照して上述した接合工程における諸条件と同様である。
【0172】
次に、図15(c)に示すように、ウエハ1'が薄化される。本工程では、例えば、ウエハ1'に対する研削加工によってウエハ1'を所定の厚さにまで薄化して薄化ウエハ1T'を形成する。薄化後のウエハ1'(薄化ウエハ1T')の厚さは、例えば1~20μmである。
【0173】
次に、図15(d)に示すように、薄化ウエハ1T'の被研削面側に素子形成面1aを形成する。具体的には、薄化ウエハ1T'の被研削面側に対し、トランジスタ形成工程や配線形成工程などを経て複数の半導体素子(図示略)を作り込む。これにより、被研削面側に素子形成面1aを有する薄化ウエハ1Tが形成される。
【0174】
上述の半導体装置製造方法では、下段ウエハに対するウエハ1'の接合と、そのウエハ1'の薄化と、薄化後のウエハ1'に対する半導体素子の形成とを含む一連の過程を以上のように所定の回数繰り返すウエハ積層体形成工程を、採用してもよい。
【符号の説明】
【0175】
S 支持基板
1,1’ ウエハ
1T,1T’ 薄化ウエハ
1a,3a 素子形成面
1b,3b 裏面
1R 補強ウエハ
3 ウエハ(ベースウエハ)
2 仮接着剤層
4 接着剤
5 貫通電極
Y ウエハ積層体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15