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特許7201403自動ドアシステム、自動ドアセンサ、自動ドア装置および自動ドアシステムの制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】自動ドアシステム、自動ドアセンサ、自動ドア装置および自動ドアシステムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/73 20150101AFI20221227BHJP
   E05F 15/40 20150101ALI20221227BHJP
   G01V 8/10 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
E05F15/73
E05F15/40
G01V8/10 S
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018213855
(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公開番号】P2020079537
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100120385
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 健之
(72)【発明者】
【氏名】清政 良有
【審査官】素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-291598(JP,A)
【文献】特開2011-032761(JP,A)
【文献】特開2011-179219(JP,A)
【文献】特開2006-225874(JP,A)
【文献】特開2009-007801(JP,A)
【文献】特開2003-270354(JP,A)
【文献】特開2017-048575(JP,A)
【文献】特開2005-036578(JP,A)
【文献】国際公開第2012/073821(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00 - 15/79
G01V 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知エリアの一部であって、ドアを開動作させるために用いられるエリア以外に予め設けられた予備エリアにおいて人又は物体を検知する検知部と、
前記ドアを開閉する駆動部と、
前記ドアの閉作動中に前記検知部が前記予備エリアにおいて人又は物体を検知したとき前記駆動部に前記ドアの閉速度を低下させる制御部と、を備え
前記制御部は、前記検知部が前記予備エリアにおいて検知した人又は物体が、前記ドアが設けられている開口部に向かうと判断した場合に、前記検知部が前記予備エリアにおいて検知した人又は物体の移動速度と、当該人又は物体の前記ドアからの距離とに応じた低下量で、前記駆動部に前記ドアの閉速度を低下させる自動ドアシステム。
【請求項2】
前記検知部は、前記ドアを開動作させるために用いられるエリアを有し、前記開動作させるために用いられるエリアにおいて人又は物体を検知するものであり、
前記制御部は、前記検知部が前記開動作させるために用いられるエリアにおいて人又は物体を検知したとき前記駆動部に前記ドアを開作動させる、請求項1に記載の自動ドアシステム。
【請求項3】
前記制御部は、前記検知部が前記予備エリアにおいて人又は物体を検知しなくなった場合に、前記駆動部に前記ドアの閉速度を増加させる、請求項1に記載の自動ドアシステム。
【請求項4】
前記制御部は、前記検知部が前記予備エリアにおいて検知した人又は物体が、前記ドアが設けられている開口部に向かわないと判断した場合に、前記駆動部に低下させていた前記ドアの閉速度を増加させる、請求項1に記載の自動ドアシステム。
【請求項5】
前記ドアの閉速度を低下させることには、前記駆動部に前記ドアの閉動作を停止させることが含まれる、請求項3または4に記載の自動ドアシステム。
【請求項6】
前記制御部は、前記検知部が前記予備エリアにおいて人又は物体を検知しなくなったと判断してから所定時間が経過した後に、前記ドアの閉速度を増加させる、請求項3に記載の自動ドアシステム。
【請求項7】
前記制御部は、前記検知部が前記開動作させるために用いられるエリアにおいて検知した人又は物体が、前記ドアが設けられている開口部に向かうと判断した場合に、前記駆動部に前記ドアを開動作させる、請求項2に記載の自動ドアシステム。
【請求項8】
前記制御部は、前記人又は物体の移動速度が速いほど、もしくは前記人又は物体の前記ドアからの距離が短いほど前記低下量を大きくする、請求項に記載の自動ドアシステム。
【請求項9】
前記制御部は、前記人又は物体の移動速度が遅いほど、もしくは前記人又は物体の前記ドアからの距離が長いほど前記低下量を小さくする、請求項に記載の自動ドアシステム。
【請求項10】
前記予備エリアの少なくとも一部は、前記開動作させるために用いられるエリアよりも前記ドアが設けられている開口部の通路に沿う方向に離れて設定されている、請求項1に記載の自動ドアシステム。
【請求項11】
前記予備エリアの少なくとも一部は、前記開動作させるために用いられるエリアに対して前記ドアの戸尻側に設定されている、請求項1に記載の自動ドアシステム。
【請求項12】
前記予備エリアは、前記開動作させるために用いられるエリアよりも前記ドアが設けられている開口部の通路に沿う方向に離れて設定された部分と、前記開動作させるために用いられるエリアに対して前記ドアの戸尻側に設定された部分とを有する、請求項1に記載の自動ドアシステム。
【請求項13】
前記開動作させるために用いられるエリアの前記通路に沿う方向の長さは、前記予備エリアの前記通路に沿う方向の長さ以下である、請求項10に記載の自動ドアシステム。
【請求項14】
検知エリアの一部であってドアを開動作させるために用いられるエリア以外に予め設けられた予備エリアにおいて人又は物体を検知する検知部と、
前記ドアの閉作動中に前記検知部が前記予備エリアにおいて人又は物体を検知したとき前記ドアを開閉する駆動部に前記ドアの閉速度を低下させる制御部と、を備え
前記制御部は、前記検知部が前記予備エリアにおいて検知した人又は物体が、前記ドアが設けられている開口部に向かうと判断した場合に、前記検知部が前記予備エリアにおいて検知した人又は物体の移動速度と、当該人又は物体の前記ドアからの距離とに応じた低下量で、前記駆動部に前記ドアの閉速度を低下させる自動ドアセンサ。
【請求項15】
ドアを開閉する駆動部と、
前記ドアの閉作動中に検知エリアの一部であってドアを開動作させるために用いられるエリア以外に予め設けられた予備エリアにおいて検知部が人又は物体を検知したとき前記駆動部に前記ドアの閉速度を低下させる制御部と、を備え
前記制御部は、前記検知部が前記予備エリアにおいて検知した人又は物体が、前記ドアが設けられている開口部に向かうと判断した場合に、前記検知部が前記予備エリアにおいて検知した人又は物体の移動速度と、当該人又は物体の前記ドアからの距離とに応じた低下量で、前記駆動部に前記ドアの閉速度を低下させる自動ドア装置。
【請求項16】
検知エリアの一部であってドアを開動作させるために用いられるエリア以外に予め設けられた予備エリアにおいて人又は物体を検知する工程と、
前記ドアの閉作動中に前記予備エリアにおいて人又は物体が検知されたとき前記ドアの閉速度を低下させる工程と、を備え
前記ドアの閉速度を低下させる工程は、前記予備エリアにおいて検知された人又は物体が、前記ドアが設けられている開口部に向かうと判断された場合に、前記予備エリアにおいて検知された人又は物体の移動速度と、当該人又は物体の前記ドアからの距離とに応じた低下量で、前記ドアの閉速度を低下させることを含む自動ドアシステムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動ドアシステム、自動ドアセンサ、自動ドア装置および自動ドアシステムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動ドアに関する技術として、複数の赤外線検知スポットによって通行者のベクトルを検知し、通行者の横切りによる自動ドアの無駄な開閉を防止する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開WO2012/073821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ベクトル検知方式のセンサでは、急な動きをする通行者のベクトルを検知することが難しい場合があるため、自動ドアに急に接近する通行者の自動ドアへの衝突を回避することが困難な場合がある。例えば、全開位置にある自動ドアの戸先付近から開口部に向かって斜め方向に通行者が進入したり、通行者が急に方向を変えて戸先付近の開口部に向かって通行したりする場合には、通行者のベクトル検知が間に合わず、通行者が自動ドアに接触する恐れがある。
【0005】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、ドアへの通行者の衝突を未然に回避することができる自動ドアシステム、自動ドアセンサ、自動ドア装置および自動ドアシステムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、検知エリアの一部であってドアを開動作させるために用いられるエリア以外に予め設けられた予備エリアにおいて人又は物体を検知する検知部と、前記ドアを開閉する駆動部と、前記ドアの閉作動中に前記検知部が前記予備エリアにおいて人又は物体を検知したとき前記駆動部に前記ドアの閉速度を低下させる制御部と、を備える自動ドアシステムである。
【0007】
本発明による自動ドアシステムにおいて、前記検知部は、前記ドアを開動作させるために用いられるエリアを有し、前記開動作させるために用いられるエリアにおいて人又は物体を検知するものであり、前記制御部は、前記検知部が前記開動作させるために用いられるエリアにおいて人又は物体を検知したとき前記駆動部に前記ドアを開作動させてもよい。
【0008】
本発明による自動ドアシステムにおいて、前記制御部は、前記検知部が前記予備エリアにおいて人又は物体を検知しなくなった場合に、前記駆動部に前記ドアの閉速度を増加させてもよい。
【0009】
本発明による自動ドアシステムにおいて、前記制御部は、前記検知部が前記予備エリアにおいて検知した人又は物体が、前記ドアが設けられている開口部に向かわないと判断した場合に、前記駆動部に低下させていた前記ドアの閉速度を増加させてもよい。
【0010】
本発明による自動ドアシステムにおいて、前記ドアの閉速度を低下させることには、前記駆動部に前記ドアの閉動作を停止させることが含まれてもよい。
【0011】
本発明による自動ドアシステムにおいて、前記制御部は、前記検知部が前記予備エリアにおいて人又は物体を検知しなくなったと判断してから所定時間が経過した後に、前記ドアの閉速度を増加させてもよい。
【0012】
本発明による自動ドアシステムにおいて、前記制御部は、前記検知部が前記開動作させるために用いられるエリアにおいて検知した人又は物体が、前記ドアが設けられている開口部に向かうと判断した場合に、前記駆動部に前記ドアを開動作させてもよい。
【0013】
本発明による自動ドアシステムにおいて、前記制御部は、前記検知部が前記予備エリアにおいて検知した人又は物体が、前記ドアが設けられている開口部に向かうと判断した場合に、前記駆動部に前記ドアの閉速度を低下させてもよい。
【0014】
本発明による自動ドアシステムにおいて、前記制御部は、前記検知部が前記予備エリアにおいて検知した人又は物体の移動速度と、当該人又は物体の前記ドアからの距離とに応じた低下量で、前記ドアの閉速度を低下させてもよい。
【0015】
本発明による自動ドアシステムにおいて、前記制御部は、前記人又は物体の移動速度が速いほど、もしくは前記人又は物体の前記ドアからの距離が短いほど前記低下量を大きくしてもよい。
【0016】
本発明による自動ドアシステムにおいて、前記制御部は、前記人又は物体の移動速度が遅いほど、もしくは前記人又は物体の前記ドアからの距離が長いほど前記低下量を小さくしてもよい。
【0017】
本発明による自動ドアシステムにおいて、前記予備エリアの少なくとも一部は、前記開動作させるために用いられるエリアよりも前記ドアが設けられている開口部の通路に沿う方向に離れて設定されていてもよい。
【0018】
本発明による自動ドアシステムにおいて、前記予備エリアの少なくとも一部は、前記開動作させるために用いられるエリアに対して前記ドアの戸尻側に設定されていてもよい。
【0019】
本発明による自動ドアシステムにおいて、前記予備エリアは、前記開動作させるために用いられるエリアよりも前記ドアが設けられている開口部の通路に沿う方向に離れて設定された部分と、前記開動作させるために用いられるエリアに対して前記ドアの戸尻側に設定された部分とを有してもよい。
【0020】
本発明による自動ドアシステムにおいて、前記開動作させるために用いられるエリアの前記通路に沿う方向の長さは、前記予備エリアの前記通路に沿う方向の長さ以下であってもよい。
【0021】
本発明は、検知エリアの一部であってドアを開動作させるために用いられるエリア以外に予め設けられた予備エリアにおいて人又は物体を検知する検知部と、前記ドアの閉作動中に前記検知部が前記予備エリアにおいて人又は物体を検知したとき前記ドアを開閉する駆動部に前記ドアの閉速度を低下させる制御部と、を備える自動ドアセンサである。
【0022】
本発明は、ドアを開閉する駆動部と、前記ドアの閉作動中に検知エリアの一部であってドアを開動作させるために用いられるエリア以外に予め設けられた予備エリアにおいて検知部が人又は物体を検知したとき前記駆動部に前記ドアの閉速度を低下させる制御部と、を備える自動ドア装置である。
【0023】
本発明は、検知エリアの一部であってドアを開動作させるために用いられるエリア以外に予め設けられた予備エリアにおいて人又は物体を検知する工程と、前記ドアの閉作動中に前記予備エリアにおいて人又は物体が検知されたとき前記ドアの閉速度を低下させる工程と、を備える自動ドアシステムの制御方法である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ドアへの通行者の衝突を未然に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態による自動ドアシステムを示すブロック図である。
図2】本実施形態による自動ドアシステムを示す鳥瞰図である。
図3】本実施形態による自動ドアシステムの動作例を示すフローチャートである。
図4】本実施形態による自動ドアシステムの動作例において、予備エリア、起動エリアおよび保護エリアの配置例を示す平面図である。
図5】本実施形態による自動ドアシステムの動作例において、ドアの状態に応じた予備エリア、起動エリアおよび保護エリアの機能を示す図である。
図6】本実施形態の第1の変形例による自動ドアシステムの動作例を示すフローチャートである。
図7】本実施形態の第2の変形例による自動ドアシステムの動作例を示すフローチャートである。
図8】本実施形態の第2の変形例による自動ドアシステムの動作例において、予備エリア、起動エリアおよび保護エリアの配置例を示す平面図である。
図9】本実施形態の第2の変形例による自動ドアシステムの動作例において、ドアの状態に応じた予備エリア、起動エリアおよび保護エリアの機能を示す図である。
図10】本実施形態の第3の変形例による自動ドアシステムの動作例を示すフローチャートである。
図11】本実施形態の第4の変形例による自動ドアシステムの動作例を示すフローチャートである。
図12】本実施形態の第5の変形例による自動ドアシステムの動作例を示すフローチャートである。
図13】本実施形態の第5の変形例による自動ドアシステムの動作例において、予備エリア、起動判断エリアおよび保護エリアの配置例を示す平面図である。
図14】本実施形態の第5の変形例による自動ドアシステムの動作例において、ドアの状態に応じた予備エリア、起動判断エリアおよび保護エリアの機能を示す図である。
図15】本実施形態の第6の変形例による自動ドアシステムの動作例を示すフローチャートである。
図16】本実施形態の第7の変形例による自動ドアシステムの動作例を示すフローチャートである。
図17】本実施形態の第7の変形例による自動ドアシステムの動作例において、人又は物体の移動速度およびドアからの距離と、ドアの閉速度の低下量との対応関係を示すテーブルである。
図18】本実施形態の第8の変形例による自動ドアシステムの動作例を示すフローチャートである。
図19】本実施形態の第8の変形例による自動ドアシステムの動作例において、予備エリアおよび保護エリアの配置例を示す平面図である。
図20】本実施形態の第8の変形例による自動ドアシステムの動作例において、ドアの状態に応じた予備エリアおよび保護エリアの機能を示す図である。
図21】本実施形態の第9の変形例による自動ドアシステムを示すブロック図である。
図22】本実施形態の第9の変形例による自動ドアシステムの動作例において、予備エリア、起動エリアおよび保護エリアの配置例を示す平面図である。
図23】本実施形態の第10の変形例による自動ドアシステムを示すブロック図である。
図24】本実施形態の第10の変形例による自動ドアシステムの動作例において、予備エリア、起動判断エリアおよび保護エリアの配置例を示す平面図である。
図25】本実施形態の第11の変形例による自動ドアシステムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係る自動ドアシステムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上、実際の比率とは異なる場合があり、また、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0027】
図1は、本実施形態による自動ドアシステム1を示すブロック図である。図2は、本実施形態による自動ドアシステム1を示す鳥瞰図である。図1に示すように、自動ドアシステム1は、自動ドア装置2と自動ドアセンサ3とを備える。自動ドアシステム1は、図2に示すドア21が設けられている開口部Aを通行しようとする通行者を自動ドアセンサ3で検知し、自動ドアセンサ3の検知に応じて、通行者を通行させるためにドア21を開動作させるシステムである。以下、自動ドアシステム1の構成部について詳しく述べる。
【0028】
図1に示すように、自動ドア装置2は、ドア21と、ドア21を開閉する駆動部の一例であるモータ22と、制御部の一例であるドア制御部23とを備える。モータ22は、図示しない電源から供給された電力によって、ドア21を自動で開閉するための回転力を発生させる。モータ22の回転力は、図示しないプーリやタイミングベルトなどの動力伝達部材を介して図2に示す開閉方向d1への駆動力としてドア21に伝達される。図2の例において、2つのドア21は、引き分けタイプの引戸である。ドア21の態様は図2の例に限定されず、例えば、片引きタイプの引戸、開き戸、折り戸、回転扉、グライドドアなどの様々な態様のドアを採用してもよい。
【0029】
ドア制御部23は、モータ22および自動ドアセンサ3に接続されている。ドア制御部23は、自動ドアセンサ3およびモータ22から取得された信号または情報に基づいて、モータ22への駆動信号の出力によるモータ22の駆動制御を行う。モータ22の駆動制御は、モータ22の駆動の有無、駆動速度、駆動トルクおよび回転方向の少なくとも1つまたはこれらの2つ以上の組み合わせの制御である。
【0030】
ドア制御部23は、自動ドアセンサ3との通信が可能であれば具体的な態様は特に限定されない。例えば、ドア制御部23は、自動ドアセンサ3からの信号に応じてPWM(Pulse Width Modulation)信号を出力し、PWM信号のデューティ比によってモータ22の駆動速度を制御するCPUと、PWM信号によってオンオフ制御される半導体スイッチ(例えば、FET)をアームとして有するとともにモータ22に接続されたHブリッジ回路と、Hブリッジ回路に接続され、半導体スイッチのオン状態に応じて、モータ22に正回転または逆回転用の電流信号(すなわち、駆動信号)を印加する直流電源と、を備えていてもよい。
【0031】
図2に示すように、自動ドアセンサ3は、ドア21の通行者を検知するために、無目部24の中央、より具体的には、全閉状態の2枚のドア21の境界部の上方に設けられている。自動ドアセンサ3は、天井などの無目部24以外の場所に設けられていてもよい。
【0032】
図1に示すように、自動ドアセンサ3は、センサ部31と、検知部および制御部の一例であるセンサ制御部32とを備える。センサ部31は、投光部311と受光部312とを有する。センサ制御部32は、センサ部31およびドア制御部23に接続されている。センサ制御部32は、例えば、CPU(すなわち、プロセッサ)などのハードウェアで構成される。センサ制御部32の少なくとも一部をソフトウェアで構成してもよい。
【0033】
センサ制御部32は、検知エリアを記憶している。すなわち、センサ制御部32は、検知エリアを有している。検知エリアとは、図2に示すように、自動ドアセンサ3が検知可能な床面6上の領域5である。
【0034】
検知エリア5は、ドア21を開動作させるために用いられるエリア(以下、開作動エリアとも呼ぶ)と、予備エリアとを有する。予備エリアとは、検知エリア5の一部であって、開作動エリア以外のエリアとして予め設けられたエリアである。
【0035】
後述するように、予備エリアは、ドア21の閉作動中におけるドア21の閉速度の低下に用いられるエリアである。また、後述するように、開作動エリアは、起動エリアと保護エリアまたは起動判断エリアと保護エリアに分類される。
【0036】
投光部311は、図示しない複数の投光素子を有する。投光部311は、複数の投光素子のそれぞれから検知エリア5にパルス状の近赤外光を投光すなわち照射する。受光部312は、投光部311の複数の投光素子のそれぞれに光学的に対応する図示しない複数の受光素子を有する。受光部312は、投光部311の複数の投光素子のそれぞれから検知エリア5に投光された近赤外光を複数の受光素子のそれぞれによって受光し、受光素子毎に近赤外光の受光量を検知する。受光部312は、検知された受光量を、受光量に応じた信号値を有する検知信号としてセンサ制御部32に出力する。なお、投光部311及び受光部312は、近赤外光以外の光を投光および受光してもよい。
【0037】
図2の例において、検知エリア5は、2枚のドア21の正面においてドア21の開閉方向d1およびこれに直交する前後方向d2に間隔を空けて配置された複数の小検知エリア51で構成されている。具体的には、図2において、小検知エリア51は、6列×12個の計72個存在する。
【0038】
個々の小検知エリア51は、投光部311の複数の投光素子のそれぞれから投光され、受光部312の複数の受光素子によってそれぞれ受光される近赤外光の照射スポットに対応している。図2の例において、各小検知エリア51は、円形状を有する。この場合の小検知エリア51の床面6における直径は、例えば、10cmから30cmの間の任意の値に設定することができる。小検知エリア51は、楕円形状、矩形状および多角形状などの円形状以外の形状を有していてもよい。
【0039】
センサ制御部32は、投光部311の全ての投光素子に、それぞれに対応する小検知エリア51に向けて近赤外光を投光させる。そして、センサ制御部32は、受光部312の全ての受光素子に、各小検知エリア51からの近赤外光の反射光をそれぞれ受光させる。そして、センサ制御部32は、受光部312から入力された小検知エリア51毎の検知信号のうち、予め設定された有効検知エリアの検知信号を抽出する。有効検知エリアとは、検知エリア5のうち、人又は物体の検知のために設定された少なくとも一部の範囲の領域である。そして、センサ制御部32は、抽出された有効検知エリアの検知信号に基づいて、人又は物体を検知する。物体は、ドア21を除く人以外の物体(例えば、荷物や動物など)である。
【0040】
より詳しくは、センサ制御部32は、予備エリアからの検知信号に基づいて、予備エリアにおいて人又は物体を検知する。また、センサ制御部32は、開作動エリアからの検知信号に基づいて、開作動エリアにおいて人又は物体を検知する。
【0041】
人又は物体を検知するため、センサ制御部32は、有効検知エリアの検知信号の信号値(すなわち、受光量)の基準値と、検知の有無を判断するための基準値に対する信号値の変化量の閾値とを記憶しておく。ここで、閾値は、自動ドアセンサ3の感度であり、閾値が低いほど自動ドアセンサ3の感度が高い。センサ制御部32は、信号値が閾値以上である場合に、人又は物体が検知されたと判断する。
【0042】
また、センサ制御部32は、有効検知エリアに応じて、検知信号の信号値の閾値を異ならせてもよい。例えば、センサ制御部32は、ドア21の起動に用いる起動エリアの閾値よりも、ドア21による押圧から人を保護するために用いる保護エリアの閾値を低くする。言い換えれば、センサ制御部32は、起動エリアよりも保護エリアのセンサの感度を高くする。
【0043】
センサ制御部32およびドア制御部23は、ドア21の閉作動中にセンサ制御部32が予備エリアにおいて人又は物体を検知したとき、モータ22にドア21の閉速度を低下させる。図1の例において、センサ制御部32は、ドア21の閉速度の低下を指示する閉速度低下指示信号をドア制御部23に出力することで、モータ22にドア21の閉速度を低下させるようにドア制御部23にモータ22を制御させる。
【0044】
ここで、ドア21の閉作動中とは、ドア21の閉作動の開始時も含む。ドア21の閉速度を低下させるにあたって、ドア制御部23は、閉速度を急激に低下させてもよく、徐々に低下させてもよく、初速の1/3や2/3等の所定の速度まで低下させてもよく、または、ドア21の運動エネルギーが1.69J以下となるような速度まで低下させてもよい。
【0045】
センサ制御部32は、ドア21が閉作動中であることを、ドア21の位置情報を示す位置信号に基づいて検出する。位置信号は、ドア21の位置情報を示す信号であれば具体的な態様は特に限定されない。例えば、モータ22は、ブラシレスモータであり、位置信号は、ブラシレスモータのホール素子の位相をもとに生成された信号であってもよい。または、位置信号は、モータ22の回転を検知する回転エンコーダに基づく信号や、ドア21の開閉位置を検知するために設けられるリニアエンコーダに基づく信号であってもよい。あるいは、位置信号は、ドア21のレールに設けられたリミットスイッチからの位置信号であってもよい。これらの構成により、既存の構成を活用してドア停止位置を取得することができるので、コストの増加を抑制することができる。位置信号は、例えば、CAN通信によって自動ドア装置2から自動ドアセンサ3に送信されてもよい。
【0046】
また、センサ制御部32およびドア制御部23は、開作動エリアにおいて人又は物体が検知された場合に、モータ22にドア21を開作動させる。例えば、センサ制御部32は、ドア21の開作動を指示する開信号をドア制御部23に出力することで、モータ22にドア21を開作動させるようにドア制御部23にモータ22を制御させる。
【0047】
(動作例)
次に、自動ドアシステム1の動作例について説明する。図3は、本実施形態による自動ドアシステム1の動作例を示すフローチャートである。図3のフローチャートは、必要に応じて繰り返される。
【0048】
図3に示すように、先ず、モータ22は、ドア制御部23による制御によってドア21の閉作動を開始する(ステップS1)。ドア制御部23は、例えば、ドア21が全開位置まで開扉してから一定の開保持時間(オープンタイマ)が経過したことを契機として、モータ22にドア21の閉作動を開始させてもよい。
【0049】
ドア21の閉作動を開始した後、センサ制御部32は、センサ部31から検知エリア5の検知信号を取得する(ステップS2)。ここで、図4は、本実施形態による自動ドアシステム1の動作例において、予備エリア5a、起動エリア5bおよび保護エリア5cの配置例を示す平面図である。図5は、本実施形態による自動ドアシステム1の動作例において、ドア21の状態に応じた予備エリア5a、起動エリア5bおよび保護エリア5cの機能を示す図である。既述したように、予備エリア5aは、検知エリア5の一部であって、開作動エリア以外のエリアとして予め設けられたエリアである。起動エリア5bは、開作動エリアの一部であって、ドア21の起動に用いるエリアである。保護エリア5cは、開作動エリアの一部であって、ドア21による押圧から人を保護するために用いるエリアである。
【0050】
図5に示すように、ドア21の全閉状態において、予備エリア5aは、ドア21の駆動に用いられない無効状態となり、起動エリア5bおよび保護エリア5cはドア21の開作動に用いられる。また、ドア21の全開状態において、予備エリア5aは無効状態となり、起動エリア5bおよび保護エリア5cはドア21の開保持に用いられる。また、ドア21の閉作動中に、予備エリア5aはドア21の閉速度の低下に用いられ、起動エリア5bおよび保護エリア5cは、ドア21の反転開作動に用いられる。反転開作動とは、閉作動しているドア21の移動方向を反転させて開作動させることである。
【0051】
予備エリア5aの一部は、開作動エリア5b、5cよりもドア21が設けられている開口部Aの通路に沿う方向d2に離れて設定されている。このように一部の予備エリア5aが設定されていることで、開口部Aに正面から進入しようとする通行者に対応してドア21の閉速度を低下させることができる。
【0052】
また、予備エリア5aの他の一部は、開作動エリア5b、5cに対してドア21の戸尻21a側に設定されている。このように他の一部の予備エリア5aが設定されていることで、開口部Aに側方から進入しようとする通行者に対応してドア21の閉速度を低下させることができる。
【0053】
なお、開作動エリア5b、5cは、予備エリア5aと重なっていてもよいし、少なくとも一部がずれていてもよい。一例として、図4に示すように、開作動エリア5b、5cは、予備エリア5aよりもドア21に近い側に設けられる。
【0054】
センサ制御部32は、予備エリア5a、起動エリア5bおよび保護エリア5cのそれぞれから検知信号を継続的に取得する。
【0055】
次いで、図3に示すように、センサ制御部32は、予備エリア5aから取得された検知信号に基づいて、予備エリア5aが人又は物を検知した検知状態であるか否かを判定する(ステップS3)。
【0056】
予備エリア5aが検知状態である場合(ステップS3:Yes)、センサ制御部32およびドア制御部23は、モータ22にドア21の閉速度を低下させる(ステップS4)。すなわち、センサ制御部32は、ドア制御部23に閉速度低下指示信号を出力し、ドア制御部23は、閉速度低下指示信号の入力に応じて、モータ22にドア21の閉速度を低下させる。
【0057】
一方、予備エリア5aが検知状態でない場合(ステップS3:No)、センサ制御部32は、ドア制御部23に閉速度低下指示信号を出力せずに処理を終了する。この場合は、ドア21が全閉位置に到達するまでドア21の閉作動が継続される。
【0058】
ドア21の閉速度を低下させた後、センサ制御部32は、起動エリア5bからの検知信号に基づいて、起動エリア5bが検知状態であるか否かを判定する(ステップS5)。
【0059】
起動エリア5bが検知状態である場合(ステップS5:Yes)、センサ制御部32およびドア制御部23は、モータ22にドア21を開作動させる(ステップS6)。すなわち、センサ制御部32は、ドア制御部23に開信号を出力し、ドア制御部23は、開信号の入力に応じて、モータ22にドア21を開作動させる。なお、図示はしないが、ステップS6以降に人又は物体が保護エリア5cに進入して保護エリア5cにおいて検知状態となった場合においても、センサ制御部32およびドア制御部23は、モータ22にドア21の開作動を継続させる。
【0060】
一方、起動エリア5bが検知状態でない場合(ステップS5:No)、センサ制御部32は、ドア制御部23に開信号を出力せずに処理を終了する。この場合は、ドア21が全閉位置に到達するまでドア21の閉作動が継続される。
【0061】
以上述べたように、本実施形態によれば、ドア21の閉作動中に予備エリア5aが検知状態になった場合に、ドア21の閉速度を低下させることで、閉作動に続くドア21の反転開作動に迅速に切り替えることができる。これにより、ドア21への通行者の衝突を未然に回避することができる。また、反転開作動が間に合わずに通行者がドア21に衝突した場合や反転開作動を行わない場合においても、ドア21との衝突による衝撃を十分に緩和することができる。
【0062】
(第1の変形例)
次に、ドア21の閉速度を低下させた後にドア21の閉速度を増加させる第1の変形例について、図3との相違点を中心に説明する。図6は、本実施形態の第1の変形例による自動ドアシステム1の動作例を示すフローチャートである。図6のフローチャートは、必要に応じて繰り返される。
【0063】
図6に示すように、センサ制御部32は、起動エリア5bが検知状態でない場合(ステップS5:No)、予備エリア5aからの検知信号に基づいて、予備エリア5aが検知状態であるか否かを判定する(ステップS7)。
【0064】
予備エリア5aが検知状態でない場合(ステップS7:No)、センサ制御部32およびドア制御部23は、モータ22にドア21の閉速度を増加させる(ステップS8)。すなわち、センサ制御部32は、ドア制御部23にドア21の閉速度の増加を指示する閉速度増加指示信号を出力し、ドア制御部23は、閉速度増加指示信号の入力に応じてモータ22にドア21の閉速度を増加させる。閉速度の増加は、低下直前の速度への増加、低下直前の速度よりも遅い速度への増加、低下直前の速度よりも速い速度への増加、のいずれであってもよい。また、閉速度の増加は、段階的増加および連続的増加のいずれであってもよい。
【0065】
一方、予備エリア5aが検知状態である場合(ステップS7:Yes)、センサ制御部32は、起動エリア5bが検知状態であるか否かの判定を繰り返す(ステップS5)。
【0066】
第1の変形例によれば、センサ制御部32およびドア制御部23は、センサ制御部32が予備エリア5aにおいて人又は物体を検知しなくなった場合に、モータ22にドア21の閉速度を増加させる。これにより、予備エリア5aが検知状態でなくなった場合には、閉速度を復帰させてドア21内の環境(例えば、温度など)の変化を抑制することができる。
【0067】
(第2の変形例)
次に、人又は物体のベクトルを考慮して閉速度の低下を制御する第2の変形例について、図3図5との相違点を中心に説明する。図7は、本実施形態の第2の変形例による自動ドアシステム1の動作例を示すフローチャートである。図7のフローチャートは、必要に応じて繰り返される。図8は、本実施形態の第2の変形例による自動ドアシステム1の動作例において、予備エリア5a、起動エリア5bおよび保護エリア5cの配置例を示す平面図である。図9は、本実施形態の第2の変形例による自動ドアシステム1の動作例において、ドア21の状態に応じた予備エリア5a、起動エリア5bおよび保護エリア5cの機能を示す図である。
【0068】
図8に示すように、第2の変形例においては、図4の場合よりも予備エリア5aが拡大され、一方、図4の場合よりも起動エリア5bが縮小されている。
【0069】
すなわち、第2の変形例において、開作動エリア5b、5cの開口部Aの通路に沿う方向d2の長さは、予備エリア5aの通路に沿う方向d2の長さ以下である。
【0070】
また、図9に示すように、予備エリア5aは、ドア21の閉作動中に、予備エリア5aにおいて検知された人又は物体のベクトルV1を考慮したドア21の閉速度の低下に用いられる。ベクトルV1とは、検知エリア5内の人又は物体の進行方向と進行速度を表す指標である。
【0071】
具体的には、図7に示すように、センサ制御部32は、起動エリア5bが検知状態でない場合(ステップS5:No)、予備エリア5a内の人又は物体のベクトルV1を取得する(ステップS9)。ベクトルV1は、予備エリア5a内の人又は物体の動きを追跡するカメラで撮影した画像に基づいて取得してもよい。
【0072】
ベクトルV1を取得した後、センサ制御部32は、取得されたベクトルV1が開口部Aを向いているか否かを判定する(ステップS10)。
【0073】
ベクトルV1が開口部Aを向いている場合(ステップS10:Yes)、センサ制御部32は、ドア21の閉速度を低下させたまま起動エリア5bが検知状態であるか否かの判定を繰り返す(ステップS5)。
【0074】
一方、ベクトルV1が開口部Aを向いていない場合(ステップS10:No)、センサ制御部32およびドア制御部23は、モータ22にドア21の閉速度を元の閉速度まで増加させる(ステップS8a)。すなわち、センサ制御部32は、ドア21の閉速度の増加を指示する閉速度増加指示信号をドア制御部23に出力し、ドア制御部23は、閉速度増加指示信号の入力に応じてモータ22にドア21の閉速度を元の閉速度まで増加させる。
【0075】
第2の変形例によれば、センサ制御部32およびドア制御部23は、センサ制御部32が予備エリア5aにおいて検知した人又は物体が、ドア21が設けられている開口部Aに向かわないと判断した場合に、モータ22に低下させていたドア21の閉速度を元に戻させる。これにより、ドア内の環境(温度など)の変化を抑制することができる。
【0076】
(第3の変形例)
次に、予備エリア5aが検知状態の場合にドア21を停止させる第3の変形例について、図3との相違点を中心に説明する。図10は、本実施形態の第3の変形例による自動ドアシステム1の動作例を示すフローチャートである。図10のフローチャートは、必要に応じて繰り返される。
【0077】
図10に示すように、第3の変形例において、センサ制御部32およびドア制御部23は、予備エリア5aが検知状態である場合(ステップS3:Yes)、モータ22にドア21を停止させる(ステップS4a)。すなわち、センサ制御部32は、ドア制御部23にドア21の停止を指示する停止指示信号を出力し、ドア制御部23は、停止指示信号の入力に応じてモータ22にドア21を停止させる。
【0078】
第3の変形例によれば、ドア21の閉作動を停止させてドア21への通行者の衝突をより有効に回避させることができる。
【0079】
(第4の変形例)
次に、ドア21の閉速度を低下させた後にドア21の閉速度を増加させる第4の変形例について、図6との相違点を中心に説明する。図11は、本実施形態の第4の変形例による自動ドアシステム1の動作例を示すフローチャートである。図11のフローチャートは、必要に応じて繰り返される。
【0080】
図6では、ドア21の閉速度を低下させた後に予備エリア5aが検知状態でなくなった場合に直ちにドア21の閉速度を増加させる例について説明した。
【0081】
これに対して、第4の変形例においてセンサ制御部32は、図11に示すように、予備エリア5aが検知状態でなくなった場合(ステップS7:No)に、予備エリア5aにおいて人又は物体を検知しなくなったと判断してから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS11)。
【0082】
所定時間が経過した場合(ステップS11:Yes)、センサ制御部32およびドア制御部23は、モータ22にドア21の閉速度を増加させる(ステップS8)。
【0083】
一方、所定時間が経過しなかった場合(ステップS11:No)、センサ制御部32は、所定時間が経過したか否かの判定を繰り返す(ステップS11)。
【0084】
第4の変形例によれば、センサ制御部32およびドア制御部23は、センサ制御部32が予備エリア5aにおいて人又は物体を検知しなくなったと判断してから所定時間が経過した後に、ドア21の閉速度を増加させる。これにより、予備エリア5aにおける検知および非検知の繰り返しによるチャタリング(すなわち、ドア21の閉速度の増加および低下の繰り返し)を防止することができる。
【0085】
(第5の変形例)
次に、人又は物体のベクトルを考慮したドア21の開作動を行う第5の変形例について、図3図5との相違点を中心に説明する。図12は、本実施形態の第5の変形例による自動ドアシステム1の動作例を示すフローチャートである。図12のフローチャートは、必要に応じて繰り返される。図13は、本実施形態の第5の変形例による自動ドアシステム1の動作例において、予備エリア5a、起動判断エリア5dおよび保護エリア5cの配置例を示す平面図である。図14は、本実施形態の第5の変形例による自動ドアシステム1の動作例において、ドア21の状態に応じた予備エリア5a、起動判断エリア5dおよび保護エリア5cの機能を示す図である。
【0086】
図4では、開作動エリアとして、起動エリア5bおよび保護エリア5cを有する例について説明した。これに対して、第5の変形例における開作動エリアは、図13に示すように、起動エリア5bの代わりに起動判断エリア5dを有する。起動判断エリア5dは、ドア21の制御に人又は物体の検知状態だけでなく人又は物体のベクトルも考慮される点が、ドア21の制御に人又は物体の検知状態のみが考慮される起動エリア5bとは異なる。図13の例において、起動判断エリア5dの位置および面積は、図4に示した起動エリア5bの位置および面積と同一であるが、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0087】
図14に示すように、起動判断エリア5dは、ドア21の全閉状態において、起動判断エリア5dまたは起動判断エリア5dおよび予備エリア5aの双方で検知された人又は物体のベクトルV2を考慮したドア21の開作動に用いられ、ドア21の全開状態において、ベクトルV2を考慮したドア21の開保持に用いられ、ドア21の閉作動中に、ベクトルV2を考慮したドア21の反転開作動に用いられる。
【0088】
具体的には、図12に示すように、センサ制御部32は、ドア21の閉速度を低下させた後(ステップS4)、起動判断エリア5dが検知状態であるか否かを判定する(ステップS5a)。
【0089】
起動判断エリア5dが検知状態である場合(ステップS5a:Yes)、センサ制御部32は、予備エリア5a内および起動判断エリア5d内の人又は物体のベクトルV2を取得する(ステップS12)。ベクトルV2は、予備エリア5a内および起動判断エリア5d内の人又は物体の動きを追跡するカメラの撮像画像に基づいて取得してもよい。
【0090】
ベクトルV2を取得した後、センサ制御部32は、取得されたベクトルV2が開口部Aを向いているか否かを判定する(ステップS13)。
【0091】
ベクトルV2が開口部Aを向いている場合(ステップS13:Yes)、センサ制御部32およびドア制御部23は、モータ22にドア21を開作動させる(ステップS6)。
【0092】
一方、ベクトルV2が開口部Aを向いていない場合(ステップS13:No)、処理を終了する。
【0093】
第5の変形例によれば、センサ制御部32およびドア制御部23は、センサ制御部32がドア21を開動作させるために用いられる起動判断エリア5dにおいて検知した人又は物体が、ドア21が設けられている開口部Aに向かうと判断した場合に、モータ22にドア21を開動作させる。これにより、起動判断エリア5dを横切って通行する場合における無用な開作動を防止することができる。
【0094】
(第6の変形例)
次に、人又は物体のベクトルを考慮してドア21の閉速度を低下させる第6の変形例について、図3との相違点を中心に説明する。
【0095】
図15は、本実施形態の第6の変形例による自動ドアシステム1の動作例を示すフローチャートである。図15のフローチャートは、必要に応じて繰り返される。
【0096】
図15に示すように、第6の変形例において、センサ制御部32は、予備エリア5aが検知状態である場合(ステップS3)、予備エリア5a内の人又は物体のベクトルを取得する(ステップS14)。なお、第6の変形例における予備エリア5aは、図8と同様に、起動エリア5bよりも広くてもよい。
【0097】
ベクトルを取得した後、センサ制御部32は、ベクトルが開口部Aを向いているか否かを判定する(ステップS15)。
【0098】
ベクトルが開口部Aを向いている場合(ステップS15:Yes)、センサ制御部32およびドア制御部23は、モータ22にドア21の閉速度を低下させる(ステップS4)。
【0099】
一方、ベクトルが開口部Aを向いていない場合(ステップS15:No)、処理を終了する。
【0100】
第6の変形例によれば、センサ制御部32およびドア制御部23は、センサ制御部32が予備エリア5aにおいて検知した人又は物体が、ドア21が設けられている開口部Aに向かうと判断した場合に、モータ22にドア21の閉速度を低下させる。これにより、予備エリア5aを横切って通行する場合における無用な開作動を防止することができる。
【0101】
(第7の変形例)
次に、人又は物体の移動速度およびドア21からの距離を考慮してドア21の閉速度を低下させる第7の変形例について、図3との相違点を中心に説明する。
【0102】
図16は、本実施形態の第7の変形例による自動ドアシステム1の動作例を示すフローチャートである。図16のフローチャートは、必要に応じて繰り返される。
【0103】
図16に示すように、第7の変形例において、センサ制御部32は、予備エリア5aが検知状態である場合(ステップS3:Yes)、予備エリア5a内の人又は物体の移動速度および予備エリア5a内の人又は物体のドア21からの距離を取得する(ステップS16)。予備エリア5a内の人又は物体の移動速度は、例えば、既述したベクトルV2と同様に、予備エリア5a内の人又は物体の動きを追跡するカメラの撮像画像に基づいて取得してもよい。予備エリア5a内の人又は物体のドア21からの距離は、ドア21に設けられた測距センサで取得してもよい。
【0104】
予備エリア5a内の人又は物体の移動速度およびドア21からの距離を取得した後、センサ制御部32は、取得された移動速度および距離に応じたドア21の閉速度の低下量を取得する(ステップS17)。
【0105】
図17は、本実施形態の第7の変形例による自動ドアシステム1の動作例において、人又は物体の移動速度およびドア21からの距離と、ドア21の閉速度の低下量との対応関係を示すテーブルである。
【0106】
例えば、センサ制御部32は、図17に示すように予備エリア5a内の人又は物体の移動速度とドア21からの距離とに対応するドア21の閉速度の低下量が記述されたテーブルを参照して、ステップS16で取得された移動速度およびドア21からの距離に対応するドア21の閉速度の低下量を取得する。
【0107】
図17のテーブルに記述されている低下量は、移動速度が速く、また、距離が短いほど大きい。すなわち、図17のテーブルに記述されている低下量は、移動速度が遅く、または距離が長いほど小さい。例えば、図17における低下量cは、低下量bよりも大きい。なお、センサ制御部32は、テーブルを用いた低下量の取得にあたって、テーブルに記述されていない移動速度および距離に対応する低下量については、線形補間などの補間演算によって取得してもよい。また、センサ制御部32は、テーブルを用いる代わりに移動速度およびドア21からの距離と低下量との対応関係を表す関数を用いて低下量を算出してもよい。
【0108】
ドア21の閉速度の低下量を取得した後、図16に示すように、センサ制御部32およびドア制御部23は、取得された低下量でモータ22にドア21の閉速度を低下させる(ステップS4b)。すなわち、センサ制御部32は、ドア制御部23に取得された低下量でのドア21の閉速度の低下を指示する閉速度低下指示信号を出力し、ドア制御部23は、閉速度低下指示信号の入力に応じて、モータ22にドア21の閉速度を取得された低下量で低下させる。
【0109】
このようにして、センサ制御部32およびドア制御部23は、センサ制御部32が予備エリア5aにおいて検知した人又は物体の移動速度と、当該人又は物体のドア21からの距離とに応じた低下量で、ドア21の閉速度を低下させる。
【0110】
より詳しくは、センサ制御部32およびドア制御部23は、予備エリア5a内の人又は物体の移動速度が速く、また、人又は物体のドア21からの距離が短いほど、低下量を大きくする。すなわち、ドア制御部23は、予備エリア5a内の人又は物体の移動速度が遅く、または、人又は物体のドア21からの距離が長いほど、低下量を小さくする。
【0111】
第7の変形例によれば、予備エリア5a内の人又は物体の移動速度およびドア21からの距離に応じてドア21の閉速度の低下量を調整することができるので、ドア21の閉作動の後のドア21の反転開作動のタイミングを、ドア21への通行者の衝突を回避するために好適なタイミングに調整することができる。これにより、ドア21への通行者の衝突をより有効に回避することができる。また、移動速度が速いほど、もしくはドア21からの距離が短いほど低下量を大きくすることで、通行者がドア21に衝突しやすい状況においても閉速度を可及的にすみやかに低下させて迅速な反転開作動に備えることで、衝突を有効に回避することができる。また、移動速度が遅いほど、もしくはドア21からの距離が長いほど低下量を小さくすることで、必要以上に急激に閉速度を低下させることによるモータ22への負担を軽減することができる。
【0112】
(第8の変形例)
次に、起動エリア5bを省略した第8の変形例について、図3図5との相違点を中心に説明する。図18は、本実施形態の第8の変形例による自動ドアシステム1の動作例を示すフローチャートである。図18のフローチャートは、必要に応じて繰り返される。図19は、本実施形態の第8の変形例による自動ドアシステム1の動作例において、予備エリア5aおよび保護エリア5cの配置例を示す平面図である。図20は、本実施形態の第8の変形例による自動ドアシステム1の動作例において、ドア21の状態に応じた予備エリア5aおよび保護エリア5cの機能を示す図である。
【0113】
図19に示すように、第8の変形例においては、図4の検知エリア5に対して起動エリア5bが省略され、起動エリア5bが省略された分だけ予備エリア5aが拡大されている。このような第8の変形例における検知エリア5は、例えば、ドア21の所定位置に近接した人の手を検知することに応じてドア21を開作動させるタッチセンサに好適に適用することができる。
【0114】
図20に示すように、予備エリア5aおよび保護エリア5cの機能は、図5の場合と同様であるが、起動エリア5bが省略されているため、反転開作動は専ら保護エリア5cにおける人又は物体の検知に応じて行われる。
【0115】
具体的には、図18に示すように、ドア21の閉速度が低下された後(ステップS4)、センサ制御部32は、保護エリア5cが検知状態であるか否かを判定する(ステップS18)。
【0116】
保護エリア5cが検知状態である場合(ステップS18:Yes)、センサ制御部32およびドア制御部23は、モータ22にドア21を開作動させる(ステップS6)。
【0117】
一方、保護エリア5cが検知状態でない場合(ステップS18:No)、処理を終了する。
【0118】
起動エリア5bが省略されている場合、人又は物体の検知が遅れることで閉作動中のドア21に通行者が衝突する可能性がある。第8の変形例によれば、起動エリア5bが省略されている場合においても、ドア21への通行者の衝突を未然に回避することができる。
【0119】
(第9の変形例)
次に、撮像画像に基づいて人又は物体を検知する第9の変形例について説明する。図21は、本実施形態の第9の変形例による自動ドアシステム1を示すブロック図である。図22は、本実施形態の第9の変形例による自動ドアシステム1の動作例において、予備エリア5a、起動エリア5bおよび保護エリア5cの配置例を示す平面図である。
【0120】
これまでは、センサ部31が投光部311および受光部312を有する例について説明した。これに対して、第9の変形例におけるセンサ部31は、図21に示すように撮像部313を有する。撮像部313は、例えば、可視光域に感度を有するCCDもしくはCMOSカメラである。撮像部313は、赤外線領域に感度を有する赤外線カメラであってもよい。
【0121】
撮像部313は、図22に示される検知エリア5を撮像し、検知信号として、検知エリア5の画像信号をセンサ制御部32に出力する。なお、図22に示される検知エリア5は、近赤外光の照射スポットに対応した小検知エリア51毎に区分けされているものではなく、グリッドGによって複数の矩形領域毎に区分けされている。センサ制御部32は、画像信号に基づいて検知エリア5内の人又は物体を検知する。センサ制御部32は、予備エリア5a、起動エリア5bおよび保護エリア5cのそれぞれにおける検知状態に応じた信号(閉速度低下指示信号や開信号など)をドア制御部23に出力して、ドア制御部23にドア21の動作を制御させる。
【0122】
第9の変形例によれば、撮像部313で人又は物体を高精度に検知できるので、ドア21への通行者の衝突を有効に回避することができる。
【0123】
(第10の変形例)
次に、電波と近赤外光の照射スポットとの組み合わせで人又は物体を検知する第10の変形例について説明する。図23は、本実施形態の第10の変形例による自動ドアシステム1を示すブロック図である。図24は、本実施形態の第10の変形例による自動ドアシステム1の動作例において、予備エリア5a、起動判断エリア5dおよび保護エリア5cの配置例を示す平面図である。
【0124】
図23に示すように、第10の変形例におけるセンサ部31は、投光部311および受光部312に加えて電波送受信部314を有する。投光部311および受光部312は、予備エリア5aおよび保護エリア5cにおける人又は物体の検知に用いられる。電波送受信部314は、起動判断エリア5dにおける人又は物体の検知に用いられる。
【0125】
電波送受信部314は、ドア21に近接または離反する人又は物体に対して電波を発信し、発信した電波と人又は物体からの反射波との干渉波を検出する。そして、電波送受信部314は、検知信号として、干渉波の検出信号をセンサ制御部32に出力する。なお、反射波の周波数は、ドップラー効果によって発信波の周波数から変化している。
【0126】
センサ制御部32は、干渉波の検出信号が人又は物体の検知の閾値に達している場合に、人又は物体を検知する。センサ制御部32は、干渉波の検出信号に基づいて、起動判断エリア5dにおける人又は物体のベクトルV2を取得してもよい。
【0127】
第10の変形例における自動ドアシステム1の動作例は、図12のフローチャートと同様であってもよい。
【0128】
第10の変形例によれば、動体検出に優れた電波を用いて起動判断エリア5dにおいて人又は物体を適切に検知してドア21の開作動の有無を適切に判断することができる。
【0129】
(第11の変形例)
次に、自動ドア装置2側で人又は物体を検知する第11の変形例について説明する。図25は、本実施形態の第11の変形例による自動ドアシステム1を示すブロック図である。
【0130】
これまでは、検知部の一例であるセンサ制御部32が、センサ部31からの検知信号に基づいて人又は物体を検知する例について説明した。これに対して、第11の変形例においては、検知部の一例であるドア制御部23が、センサ制御部32からの検知信号に基づいて人又は物体を検知する。また、ドア制御部23は、モータ22からの位置信号に基づいて、ドア21が閉作動中であることを検知する。そして、ドア制御部23は、ドア21の閉作動中に予備エリア5aにおいて人又は物体が検知された場合に、ドア21の閉速度が低下するようにモータ22への駆動信号の出力を制御する。
【0131】
第11の変形例においても、ドア21の閉作動中に予備エリア5aが検知状態になった場合に、ドア21の閉速度を低下させることで、閉作動に続くドア21の反転開作動に迅速に切り替えることができる。
【0132】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【0133】
また、上述した変形例を含む実施の形態で説明した構成の一部を組み合わせたり、置き換えたりすることも可能である。更に、上述した変形例を含む実施の形態で説明した構成の一部のみを適用することも可能である。これらの場合、本明細書に明示されたものの他、それぞれの構成から導かれる特有の構成を有する。
【符号の説明】
【0134】
1 自動ドアシステム、22 モータ、3 自動ドアセンサ、32 センサ制御部
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