(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】車両の電力システム、車両の電力制御装置、車両の電力制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B60L 50/90 20190101AFI20221227BHJP
B60K 6/22 20071001ALI20221227BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20221227BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20221227BHJP
B60L 58/20 20190101ALI20221227BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20221227BHJP
B60W 20/00 20160101ALI20221227BHJP
F01K 23/06 20060101ALI20221227BHJP
H02P 9/04 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
B60L50/90 ZHV
B60K6/22
B60L1/00 L
B60L9/18 J
B60L58/20
B60W10/08 900
B60W20/00
F01K23/06 P
H02P9/04 P
(21)【出願番号】P 2019051734
(22)【出願日】2019-03-19
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100100103
【氏名又は名称】太田 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100173163
【氏名又は名称】石塚 信洋
(74)【代理人】
【識別番号】100134522
【氏名又は名称】太田 朝子
(74)【代理人】
【識別番号】100135024
【氏名又は名称】本山 敢
(72)【発明者】
【氏名】布川 拓未
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/071814(WO,A1)
【文献】特開2006-207396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 50/90
B60K 6/22
B60L 1/00
B60L 9/18
B60L 58/20
B60W 10/08
B60W 20/00
F01K 23/06
H02P 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の電力システムであって、
発熱体の排熱を用いて発電を行う発電機を備えた排熱回収装置と、
低電圧二次電池を備えた低電圧系と、
高電圧二次電池を備えた高電圧系と、
前記発電機と前記低電圧系とを接続する第1配線と、
前記第1配線と前記高電圧系とを接続する第2配線と、
前記第2配線に設けられ、昇圧および降圧が可能なDCDCコンバータと、
電力制御装置と、を含
み、
前記電力制御装置は、前記低電圧系の消費電流と、前記高電圧系の側への前記DCDCコンバータの出力電流との和が、前記発電機の出力電流となるように、前記DCDCコンバータを制御する、
車両の電力システム。
【請求項2】
車両の電力制御装置であって、
前記車両は、
発熱体と、
前記発熱体の排熱を用いて発電を行う発電機を備えた排熱回収装置と、
低電圧二次電池を備えた低電圧系と、
高電圧二次電池を備えた高電圧系と、
前記発電機と前記低電圧系とを接続する第1配線と、
前記第1配線と前記高電圧系とを接続する第2配線と、
前記第2配線に設けられ、昇圧および降圧が可能なDCDCコンバータと、を含み、
前記電力制御装置は、
前記低電圧系の消費電流と、前記高電圧系の側への前記DCDCコンバータの出力電流との和が、前記発電機の出力電流となるように、前記DCDCコンバータを制御することにより、前記発電機の出力電流を制御するように設けられている、
車両の電力制御装置。
【請求項3】
前記電力制御装置は、
前記低電圧系の消費電流を取得し、
前記排熱回収装置の目標動作点に基づいて前記発電機の目標出力電流を算出し、
取得した前記低電圧系の消費電流と、前記高電圧系の側への前記DCDCコンバータの出力電流との和が、算出した前記発電機の前記目標出力電流となるように、前記DCDCコンバータを制御することにより、前記発電機の出力電流を制御するように設けられている、請求項
2に記載の車両の電力制御装置。
【請求項4】
前記電力制御装置は、前記低電圧系の消費電流を予測により取得するように設けられている、請求項
3に記載の車両の電力制御装置。
【請求項5】
前記電力制御装置は、前記DCDCコンバータを制御することにより、前記排熱回収装置における発電の効率が高くなるように、前記発電機の出力電流を制御するように設けられている、請求項
2~4のいずれか1項に記載の車両の電力制御装置。
【請求項6】
前記電力制御装置は、前記発熱体の発熱量に関する情報に基づいて前記排熱回収装置の目標動作点を算出し、前記排熱回収装置の前記目標動作点に基づいて前記発電機の出力電流を制御するように設けられている、請求項2~
5のいずれか1項に記載の車両の電力制御装置。
【請求項7】
前記発熱体は、内燃機関であり、前記発熱体の発熱量に関する情報は、前記内燃機関の冷却水温である、請求項
6に記載の車両の電力制御装置。
【請求項8】
前記排熱回収装置は、作動媒体の状態変化の過程を組み合わせたサイクルを含み、前記作動媒体の流れにより前記発電機の動力を生成するように設けられ、
前記電力制御装置は、前記作動媒体の状態間の変化量に関する情報に基づいて前記排熱回収装置の目標動作点を算出し、前記排熱回収装置の前記目標動作点に基づいて前記発電機の出力電流を制御するように設けられている、請求項2~
7のいずれか1項に記載の車両の電力制御装置。
【請求項9】
前記サイクルは凝縮器を含み、
前記作動媒体の状態間の変化量に関する情報は、外気温または前記凝縮器を通過する空気の風速のいずれかを含む、請求項
8に記載の車両の電力制御装置。
【請求項10】
車両の電力制御方法であって、
前記車両は、
発熱体と、
前記発熱体の排熱を用いて発電を行う発電機を備えた排熱回収装置と、
低電圧二次電池を備えた低電圧系と、
高電圧二次電池を備えた高電圧系と、
前記発電機と前記低電圧系とを接続する第1配線と、
前記第1配線と前記高電圧系とを接続する第2配線と、
前記第2配線に設けられ、昇圧および降圧が可能なDCDCコンバータと、を含み、
電力制御装置が、
前記低電圧系の消費電流と、前記高電圧系の側への前記DCDCコンバータの出力電流との和が、前記発電機の出力電流となるように、前記DCDCコンバータを制御することにより、前記発電機の出力電流を制御すること、を含む、
車両の電力制御方法。
【請求項11】
コンピュータを、
発熱体と、
前記発熱体の排熱を用いて発電を行う発電機を備えた排熱回収装置と、
低電圧二次電池を備えた低電圧系と、
高電圧二次電池を備えた高電圧系と、
前記発電機と前記低電圧系とを接続する第1配線と、
前記第1配線と前記高電圧系とを接続する第2配線と、
前記第2配線に設けられ、昇圧および降圧が可能なDCDCコンバータと、
を含む車両の前記DCDCコンバータを
、前記低電圧系の消費電流と、前記高電圧系の側への前記DCDCコンバータの出力電流との和が、前記発電機の出力電流となるように制御することにより、前記発電機の出力電流を制御する電力制御装置、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の電力システム、車両の電力制御装置、車両の電力制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排熱回収装置を備える車両の電力システムが知られている。排熱回収装置は、発熱体の排熱を用いて発電を行う発電機を備える。例えば特許文献1には、内燃機関であるエンジンの排気エネルギを回収するための排気エネルギ回収装置を備えたハイブリッド車両が開示されている。排気エネルギ回収装置は、インバータを介して低電圧バッテリに接続されている。インバータの電機負荷は、排気エネルギ回収装置の目標発電量が得られるように制御される。また、車両走行用の駆動源としてのモータジェネレータが、別のインバータを介して高電圧バッテリに接続されている。低電圧バッテリと高電圧バッテリとは、DC/DCコンバータを介して接続されている。DC/DCコンバータは、両バッテリ間における電力の授受を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された電力システムは、排気エネルギ回収装置の発電を制御するための電力変換装置であるインバータと、両バッテリ間における電力の授受を制御するための電力変換装置であるDC/DCコンバータと、を別々に備える。よって、電力変換装置の数が多くなるとともに、電力システムが大型化し、車両における限られたスペースを圧迫するおそれがある。このように、従来、排熱から電力を回収するための発電を制御可能であり、かつ小型化が可能な電力システムが希求されていた。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、排熱から電力を回収するための発電を制御可能であり、低電圧系と高電圧系との間で電力の授受が可能であり、かつ小型化が可能な、新規かつ改良された車両の電力システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、車両の電力システムであって、発熱体の排熱を用いて発電を行う発電機を備えた排熱回収装置と、低電圧二次電池を備えた低電圧系と、高電圧二次電池を備えた高電圧系と、発電機と低電圧系とを接続する第1配線と、第1配線と高電圧系とを接続する第2配線と、第2配線に設けられ、昇圧および降圧が可能なDCDCコンバータと、電力制御装置と、を含み、電力制御装置は、低電圧系の消費電流と、高電圧系の側へのDCDCコンバータの出力電流との和が、発電機の出力電流となるように、DCDCコンバータを制御する、車両の電力システムが提供される。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、車両の電力制御装置であって、車両は、発熱体と、発熱体の排熱を用いて発電を行う発電機を備えた排熱回収装置と、低電圧二次電池を備えた低電圧系と、高電圧二次電池を備えた高電圧系と、発電機と低電圧系とを接続する第1配線と、第1配線と高電圧系とを接続する第2配線と、第2配線に設けられ、昇圧および降圧が可能なDCDCコンバータと、を含み、電力制御装置は、前記低電圧系の消費電流と、高電圧系の側へのDCDCコンバータの出力電流との和が、発電機の出力電流となるように、DCDCコンバータを制御することにより、発電機の出力電流を制御するように設けられている、車両の電力制御装置が提供される。
電力制御装置は、低電圧系の消費電流を取得し、排熱回収装置の目標動作点に基づいて発電機の目標出力電流を算出し、取得した低電圧系の消費電流と、高電圧系の側へのDCDCコンバータの出力電流との和が、算出した発電機の目標出力電流となるように、DCDCコンバータを制御するように設けられていてよい。
電力制御装置は、低電圧系の消費電流を予測により取得するように設けられていてよい。
電力制御装置は、発熱体の発熱量に関する情報に基づいて排熱回収装置の目標動作点を算出し、排熱回収装置の目標動作点に基づいて発電機の出力電流を制御するように設けられていてよい。
発熱体は、内燃機関であり、発熱体の発熱量に関する情報は、内燃機関の冷却水温であってよい。
排熱回収装置は、作動媒体の状態変化の過程を組み合わせたサイクルを含み、作動媒体の流れにより発電機の動力を生成するように設けられ、電力制御装置は、作動媒体の状態間の変化量に関する情報に基づいて排熱回収装置の目標動作点を算出し、排熱回収装置の目標動作点に基づいて発電機の出力電流を制御するように設けられていてよい。
作動媒体の状態間の変化量に関する情報は、外気温であってよい。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、車両の電力制御方法であって、車両は、発熱体と、発熱体の排熱を用いて発電を行う発電機を備えた排熱回収装置と、低電圧二次電池を備えた低電圧系と、高電圧二次電池を備えた高電圧系と、発電機と低電圧系とを接続する第1配線と、第1配線と高電圧系とを接続する第2配線と、第2配線に設けられ、昇圧および降圧が可能なDCDCコンバータと、を含み、電力制御装置が、低電圧系の消費電流と、高電圧系の側へのDCDCコンバータの出力電流との和が、発電機の出力電流となるように、DCDCコンバータを制御することにより、発電機の出力電流を制御すること、を含む、車両の電力制御方法が提供される。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明のさらに別の観点によれば、コンピュータを、発熱体と、発熱体の排熱を用いて発電を行う発電機を備えた排熱回収装置と、低電圧二次電池を備えた低電圧系と、高電圧二次電池を備えた高電圧系と、発電機と低電圧系とを接続する第1配線と、第1配線と高電圧系とを接続する第2配線と、第2配線に設けられ、昇圧および降圧が可能なDCDCコンバータと、を含む車両のDCDCコンバータを、低電圧系の消費電流と、高電圧系の側へのDCDCコンバータの出力電流との和が、発電機の出力電流となるように制御することにより、発電機の出力電流を制御する電力制御装置、として機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本発明によれば、排熱から電力を回収するための発電を制御可能であり、低電圧系と高電圧系との間で電力の授受が可能であり、かつ小型化が可能な車両の電力システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両の各システムの概略構成を示すシステム図である。
【
図2】同実施形態に係る車両の電力制御装置の概略構成を示すブロック線図である。
【
図3】同実施形態に係る車両の電力制御の流れを示すフローチャートである。
【
図4】同実施形態に係る車両の電力システムの動作を示す説明図である(DCDCコンバータ降圧動作時)。
【
図5】同実施形態に係る車両の電力システムの動作を示す説明図である(DCDCコンバータ昇圧動作時)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
[電力システムの構成]
まず、
図1~3を参照して、本発明の実施形態に係る車両の電力システム、車両の電力制御装置、およびプログラムの概略構成について説明する。
図1に示すように、車両は、例えばハイブリッド電気自動車(HEV)であり、駆動システム、電力システム1、および制御システムを備える。制御システムは、各種のセンサ9および電子制御ユニット(Electronic Control Unit。以下、ECUと記載。)10を有する。ECU10は、センサ9、駆動システムおよび電力システム1から信号が入力されるとともに、駆動システムおよび電力システム1へ制御信号を出力することで、車両の駆動力および電力を制御する。なお、車両は、電気自動車(EV)等であってもよい。
【0014】
車両の駆動システムは、エンジン20、動力伝達系21、駆動輪22、およびモータ・ジェネレータ63を備える。エンジン20は、ガソリンエンジン等の内燃機関であり、車両の走行状態に応じて、例えば要求トルクに応じて、運転または停止する。エンジン20の運転により生成された動力は、動力伝達系21を介して駆動輪22へ伝達される。動力伝達系21は、例えば遊星歯車機構により構成される動力分割装置、減速ギア、またはディファレンシャルギア等を含んでよい。モータ・ジェネレータ63は、車両の駆動力を生成する駆動用モータとしての機能を有する。また、モータ・ジェネレータ63は、車両の制動時に車両の運動エネルギを用いて発電する発電機としての機能を有する。モータ・ジェネレータ63は、例えば三相交流式であり、インバータ62を介して高電圧バッテリ60と電気的に接続されている。
【0015】
モータ・ジェネレータ63が駆動用モータとして機能する場合、高電圧バッテリ60から供給される直流電力がインバータ62によって交流電力に変換され、モータ・ジェネレータ63へ供給される。モータ・ジェネレータ63により生成された動力は、動力伝達系21を介して駆動輪22へ伝達される。ECU10は、インバータ62を制御することによって、モータ・ジェネレータ63により生成される動力を制御する。モータ・ジェネレータ63が発電機として機能する場合、ECU10がインバータ62を制御することによって、駆動輪22の回転エネルギを用いてモータ・ジェネレータ63により発電が行われる。発電された交流電力はインバータ62により直流電力に変換され、高電圧バッテリ60へ蓄電される。これにより、駆動輪22の回転に抵抗が与えられ、制動力が発生する。ECU10は、インバータ62を制御することによって、モータ・ジェネレータ63の発電電力を制御する。
【0016】
車両の電力システム1は、ランキンサイクル3、発電機4、低電圧系5、高電圧系6、DCDCコンバータ7、第1配線81、および第2配線82を備える。エンジン20は、ランキンサイクル3に排熱を供給する発熱体として機能する。エンジン20のシリンダブロックまたはシリンダヘッドには、冷却水が循環する冷却水流路200が設けられている。エンジン20の排熱は、冷却水流路200を循環する冷却水によって回収される。冷却水流路200は、エンジン20の外部においてランキンサイクル3の熱交換器33と接続されている。冷却水流路200は、熱交換器33において、ランキンサイクル3の作動媒体との間で熱交換を行う。
【0017】
ランキンサイクル3および発電機4は、エンジン20の排熱を用いて発電を行う排熱回収装置として機能する。ランキンサイクル3は、作動媒体の状態変化の過程を組み合わせたサイクルであって、作動媒体の流れにより発電機4の動力を生成する。ランキンサイクル3は、タンク30、作動媒体流路31、ポンプ32、熱交換器33、膨張器34、および凝縮器35を備える。作動媒体流路31は、作動媒体が循環する流路である。作動媒体として、例えば、水、フロン、またはアルコール等を用いることができる。ポンプ32は、タンク30に貯留された作動媒体を吸い上げ、圧縮する。ポンプ32は、例えば電動モータにより駆動される。この電動モータは、ECU10により制御される。ECU10からの指令に基づいて、ポンプ32の回転数が制御されうる。
【0018】
熱交換器33は、作動媒体流路31および冷却水流路200に接続されている。熱交換器33において、ポンプ32からの作動媒体と冷却水流路200の冷却水との間で熱交換が行われる。これにより、作動媒体は、エンジン20の排熱を有する冷却水によって加熱され、気化する。熱交換器33は、蒸発器として機能する。なお、作動媒体は、エンジン20の排熱を有する排気ガスによって加熱されてもよい。膨張器34は、作動媒体流路31に設けられている。膨張器34は、熱交換器33で気化した作動媒体を膨張させて回転エネルギを生成する。具体的には、膨張器34は、膨張室およびタービンを有する。作動媒体は膨張室へ吸入され、そこで膨張する。作動媒体の流れを受けることでタービンが回転し、動力および回転エネルギが生成される。凝縮器35は、作動媒体流路31に設けられており、例えばエンジンルーム内におけるラジエータの前方に配置される。凝縮器35は、膨張器34を通過した気相の作動媒体を、ファンを用いた外気の送風等により、冷却して凝縮する。凝縮された作動媒体は、タンク30へ貯留される。
【0019】
発電機4は、ランキンサイクル3により生成される動力を用いて発電を行う。発電機4は、膨張器34のタービンと連結可能な回転軸を有し、膨張器34から回転軸を介して伝達される回転エネルギを用いて発電する。発電機4は、例えばロータ、ステータ、整流器および電圧レギュレータを備えた一般的なオルタネータであってよい。ロータは、例えば磁極およびロータコイルを有し、回転軸と一体に回転する。ステータは、ロータの外周側に配置され、三相のステータコイルを有する。整流器は、ステータに発生した三相交流電圧を整流して直流電圧に変換する。電圧レギュレータは、例えばIC型であり、ロータコイルの電流を制御することで、発電機4からの直流電圧を所定の一定値に保つ。
【0020】
低電圧系5は、低電圧バッテリ50および低電圧補機51を備える。低電圧バッテリ50は、低電圧の二次電池であり、その電圧は、例えば12Vであるが、これに限らない。低電圧補機51は、比較的低電圧で作動する補機であり、ラジエータファン、カーナビゲーション、各種のECU、イグニッションコイル、その他の電装品等を含む。
【0021】
高電圧系6は、高電圧バッテリ60、高電圧補機61、インバータ62、およびモータ・ジェネレータ63を備える。高電圧系6は、例えば車両の駆動に関する電圧システムである。高電圧バッテリ60は、高電圧の二次電池であり、その電圧は、例えば200Vであるが、低電圧バッテリ50よりも高電圧であればよく、200Vに限らない。高電圧補機61は、比較的高電圧で作動する補機であり、電動パワーステアリング装置のモータ等を含む。
【0022】
DCDCコンバータ7は、直流-直流の電圧変換装置であって、双方向に作動可能、すなわち直流電圧の昇圧および降圧が可能に設けられている。第1配線81および第2配線82は、電気を伝える導線である。第1配線81は、発電機4と低電圧系5とを電気的に接続する。第1配線81には、低電圧バッテリ50および低電圧補機51が並列に接続されている。第2配線82は、第1配線81と高電圧系6とを電気的に接続する。言い換えると、第2配線82は、第1配線81から分岐して高電圧系6に接続する配線の部分である。第2配線82には、高電圧バッテリ60、高電圧補機61およびインバータ62が並列に接続されている。DCDCコンバータ7は、第2配線82に設けられている。言い換えると、DCDCコンバータ7は、発電機4と高電圧系6とを接続する配線のうち、当該配線と第1配線81との接続部位と、高電圧系6との間に設けられている。さらに言い換えると、発電機4に対して低電圧系5および高電圧系6が並列に接続されており、低電圧系5と高電圧系6との間に介在するDCDCコンバータ7が、発電機4と高電圧系6とを接続する配線上に設けられている。
【0023】
車両の制御システムのうち、センサ9は、エンジン20の冷却水温を検出するセンサ、および車両外部の外気温を検出するセンサ等を含む。ECU10の一部または全部は、例えばマイクロコンピュータまたはマイクロプロセッサユニットで構成されていてよい。マイクロコンピュータ等は、各種演算処理を実行する中央処理ユニット(CPU)、各種制御プログラムを格納するリードオンリメモリ(ROM)、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるランダムアクセスメモリ(RAM)、および入出力インターフェース(I/O)を有し、これらが双方向性のコモンバスにより互いに接続された一般的な構成であってよい。ECU10は、CAN(Controller Area Network)等の通信線を介して他のECUと接続され、制御情報、または制御対象に関連する各種の情報(車速、エンジン20のトルクおよび回転数等)を相互に通信してもよい。ECU10は、ランキンサイクル3(ポンプ32等)および高電圧系6(モータ・ジェネレータ63等)からセンサ信号の入力を受け、ランキンサイクル3(ポンプ32等)および高電圧系6(インバータ62等)へ制御信号を出力する。また、ECU10は、低電圧系5から、低電圧系5の消費電流に関する信号(低電圧系5の電流センサが検出した値等)の入力を受ける。さらに、ECU10は、DCDCコンバータ7へ制御信号を出力する。なお、ECU10は、発電機4の電圧レギュレータを含んでもよいし、車両の駆動システムを制御するECUとは別に設けられていてもよい。
【0024】
[ECUの概略構成]
以下、
図2,3を参照して、本実施形態に係るECU10の構成について説明する。
図2に示すように、ECU10は、機能的な各部として、電流取得部11、データ取得部12、目標動作点設定部13、目標出力電流算出部14、DCDCコンバータ制御部15、およびランキンサイクル制御部16を備える。電流取得部11、データ取得部12、目標動作点設定部13、目標出力電流算出部14、およびDCDCコンバータ制御部15は、車両の電力制御装置として機能する。
【0025】
電流取得部11は、低電圧系5から入力される信号に基づき、低電圧系5の消費電流を取得(具体的には検出もしくは予測。以下同じ。)する。例えば、低電圧系5の電流センサから入力される検出値の変化速度により、将来の所定時点における低電圧系5の消費電流を予測可能である。
【0026】
データ取得部12は、センサ9およびランキンサイクル3等から入力される信号に基づき、ランキンサイクル3に関するデータを取得する。ランキンサイクル3に関するデータは、エンジン20の発熱量(言い換えると排熱量)に関する情報、または、ランキンサイクル3における作動媒体の状態間の変化量に関する情報のうち、少なくとも一方であってよい。エンジン20の発熱量に関する情報は、エンジン20の運転状態を示すパラメータであってよく、このようなパラメータとして、エンジン20の冷却水温、またはエンジン20の負荷(トルクおよび回転数)のうち少なくとも一方を用いることができる。作動媒体の状態間の変化量に関する情報は、例えば凝縮器35における作動媒体の凝縮可能量を規定する冷却能力のパラメータであってよく、このようなパラメータとして、作動媒体の温度、外気温、または凝縮器35を通過する空気の風速のうち、少なくとも1つを用いることができる。凝縮器35における作動媒体の凝縮量は、作動媒体の冷却に用いられる空気の体積に比例し、この空気の体積は、凝縮器35を通過する空気の風速と凝縮器35の面積との積で与えられるからである。凝縮器35を通過する空気の風速として、例えば車速またはラジエータ風速を用いることができる。また、例えば上記パラメータの変化速度により、将来の所定時点におけるランキンサイクル3に関するデータを予測可能である。
【0027】
目標動作点設定部13は、データ取得部12からの情報に基づき、ランキンサイクル3の目標動作点を設定する。目標動作点設定部13は、例えば、エンジン20の排熱からより多くの動力が得られ、より多くの電力を発電できるような高効率点に、ランキンサイクル3の目標動作点を設定する。具体的には、目標動作点設定部13は、ランキンサイクル3の動作点がより高効率となり最高効率点に近づくような、ポンプ32および膨張器34その他の部品の目標動作点を、取得されたエンジン20の発熱量に関する情報および作動媒体の状態間の変化量に関する情報に基づいて、算出する。
【0028】
目標出力電流算出部14は、目標動作点設定部13からの情報に基づき、発電機4の目標出力電流を算出する。目標出力電流算出部14は、例えば、ランキンサイクル3を構成する膨張器34の目標動作点(言い換えると発電機4の目標負荷)に基づき、発電機4の目標トルクを算出し、この目標トルクに基づき、発電機4の目標出力電流を算出する。例えば、ランキンサイクル3の動作点が、その時点における最高効率点または近い将来に予測される最高効率点に近づき、可及的に高効率となるような、発電機4の目標出力電流を算出する。なお、目標出力電流算出部14は、ランキンサイクル3の目標動作点から、発電機4の目標トルクを算出することなく、テーブル等を用いて直接的に、発電機4の目標出力電流を算出してもよい。
【0029】
DCDCコンバータ制御部15は、電流取得部11および目標出力電流算出部14からの情報に基づき、DCDCコンバータ7へ制御信号を出力し、DCDCコンバータ7の動作を制御する。具体的には、取得された低電圧系5の消費電流と、高電圧系6の側へのDCDCコンバータ7の出力電流との和が、算出された発電機4の目標出力電流となるように、DCDCコンバータ7を制御する。ここで、「高電圧系6の側へのDCDCコンバータ7の出力電流」とは、DCDCコンバータ7から高電圧系6の側へ出力される電流の値を意味するが、DCDCコンバータ7から低電圧系5の側へ電流が出力される場合には、「高電圧系6の側へのDCDCコンバータ7の出力電流」は負値となる。この場合、DCDCコンバータ制御部15は、取得された低電圧系5の消費電流から、低電圧系5の側へのDCDCコンバータ7の出力電流を差し引いた値が、算出された発電機4の目標出力電流となるように、DCDCコンバータ7を制御する。
【0030】
ランキンサイクル制御部16は、目標動作点設定部13からの情報に基づき、ランキンサイクル3へ制御信号を出力し、ランキンサイクル3の動作が目標動作点となるように制御する。具体的には、ポンプ32その他のランキンサイクル3を構成する部品の動作を制御する。なお、ランキンサイクル制御部16が、他の各部11~15とは別のECUに実装されていてもよい。
【0031】
図3は、ECU10が実行する電力制御の流れを示す。この制御は、所定の周期で繰り返し実行されるものであってよく、コンピュータとしてのECU10を、発電機4の出力電流を制御する電力制御装置として機能させるためのプログラムを含む。ステップS1で、電流取得部11が、低電圧系5の消費電流を取得する。ステップS2で、データ取得部12が、ランキンサイクル3に関するデータを取得する。ステップS3で、目標動作点設定部13が、ランキンサイクル3の目標動作点を設定する。ステップS4で、目標出力電流算出部14が、発電機4の目標出力電流を算出する。ステップS5で、DCDCコンバータ制御部15が、DCDCコンバータ7の動作を制御する。ステップS6で、ランキンサイクル制御部16が、ランキンサイクル3の動作を制御する。なお、ステップS1は、ステップS5より前であればよく、ステップS2~S4のいずれかより後または同時に行われてよい。ステップS6は、ステップS3より後であればよく、ステップS4,S5のいずれかより前または同時に行われてよい。
【0032】
[電力システムの動作]
以下、
図4,5を参照して、本実施形態に係る電力システム1の動作について説明する。
図4,5は、DCDCコンバータ制御部15によるDCDCコンバータ7の制御時の、第1配線81および第2配線82における電流の方向を、一点鎖線の矢印で示す。説明のため、電流取得部11により取得された低電圧系5の消費電流が、低電圧系5の実際の消費電流と等しく、また、目標出力電流算出部14により算出された発電機4の目標出力電流が、発電機4の実際の出力電流と等しいものとする。
【0033】
発電機4の目標出力電流が、低電圧系5の消費電流(低電圧バッテリ50への充電電流も含む。)より小さいとき、
図4に示すように、DCDCコンバータ7は降圧動作を行うように制御され、高電圧系6の側へのDCDCコンバータ7の出力電流は負となる。言い換えると、低電圧系5の側へのDCDCコンバータ7の出力電流が正となる。低電圧系5の消費電流から、低電圧系5の側へのDCDCコンバータ7の出力電流を差し引いた値が、発電機4の出力電流となるように、DCDCコンバータ7が制御される。これにより、高電圧系6の電力が、低電圧系5へ供給され、発電機4の発電電力とともに、低電圧系5で使用(すなわち消費または蓄電)される。
【0034】
発電機4の目標出力電流が、低電圧系5の消費電流(低電圧バッテリ50への充電電流も含む。)より大きいとき、
図5に示すように、DCDCコンバータ7は昇圧動作を行うように制御され、低電圧系5の側へのDCDCコンバータ7の出力電流は負となる。言い換えると、高電圧系6の側へのDCDCコンバータ7の出力電流が正となる。低電圧系5の消費電流と、高電圧系6の側へのDCDCコンバータ7の出力電流との和が、発電機4の出力電流となるように、DCDCコンバータ7が制御される。これにより、発電機4の発電電力が、低電圧系5へ供給されるとともに、高電圧系6へ供給され、低電圧系5および高電圧系6で使用(すなわち消費または蓄電)される。
【0035】
すなわち、発電機4の発電電力は、常時、第1配線81を介して低電圧系5へ供給される。これにより、排熱から回収される電力を有効活用して低電圧補機51を作動させることができる。なお、発電機4の出力電圧が一定値に保たれることで、低電圧補機51を円滑に作動させることができる。発電機4としてオルタネータを用いる場合、内蔵の電圧レギュレータによって簡便に、発電機4の出力電圧を一定値に保つことができる。また、発電機4の発電電力が、低電圧系5の消費電力を下回るときは、高電圧系6の電力がDCDCコンバータ7を介して低電圧系5へ供給されることで、低電圧補機51をより確実に作動させることができる。一方、発電機4の発電電力が、低電圧系5の消費電力を上回るときは、低電圧系5の側における余剰の電力がDCDCコンバータ7を介して高電圧系6へ供給され、例えば高電圧バッテリ60に蓄えられることで、排熱から回収された電力を、電力システム1の全体において効率よく利用することができる。なお、発電機4は、オルタネータに限らない。この場合、ECU10は、発電機4の出力電圧を制御するように設けられてもよい。例えば、ECU10は、発電機4の目標出力電圧を得るための発電機4のロータコイルの電流値を算出し、この値が実現されるように上記ロータコイルの電流を制御してもよい。
【0036】
[効果]
以下、本実施形態の上記構成から得られる各効果を説明する。
【0037】
車両は、エンジン20を含むとともに、電力システム1として、ランキンサイクル3と、発電機4と、低電圧バッテリ50を備えた低電圧系5と、高電圧バッテリ60を備えた高電圧系6と、DCDCコンバータ7と、第1配線81と、第2配線82と、を含む。エンジン20は、発熱体として機能する。ランキンサイクル3および発電機4は、エンジン20の排熱を用いて発電を行う排熱回収装置として機能する。第1配線81は、発電機4と低電圧系5とを接続する。第2配線82は、第1配線81と高電圧系6とを接続する。DCDCコンバータ7は、第2配線82に設けられ、昇圧および降圧が可能である。よって、電力制御装置としてのECU10が、電力システム1のDCDCコンバータ7を制御する場合、低電圧系5の側と高電圧系6との間で電力の授受が行われると同時に、この電力の授受により、発電機4の出力電流を制御することができる。これにより、排熱回収装置における発電の制御(具体的には、出力電流の制御による発電機4の回転軸のトルク制御)と、低電圧系5の側と高電圧系6との間での電力授受の制御とを、1つのDCDCコンバータ7の制御により実現できる。言い換えると、排熱回収装置における発電を制御するための電力変換装置と、低電圧系5の側と高電圧系6との間で電力を融通するための電力変換装置とが、1つの電力システム1において、共通化されている。よって、排熱回収装置における発電を制御することで排熱から効率よく電力を回収可能であり、低電圧系5と高電圧系6との間での電力の授受により電力の有効利用が可能でありつつ、部品点数が抑制され、小型化が可能であり、車両の省スペース化を図ることができる電力システム1が実現される。
【0038】
ここで、排熱回収装置における発電の制御は、高電圧系6への電流の出し入れによって行われるので、排熱回収装置によって発電されたエネルギを無駄にすることなく有効活用できる。また、車両がHEVを含む電動車両である場合、低電圧系と高電圧系との間に、少なくとも降圧可能なDCDCコンバータが設けられることが多い。よって、本実施形態のようなDCDCコンバータ7を設けても、新たに部品点数を増大することにはならない。車両において、低電圧系と高電圧系との間に双方向に作動可能なDCDCコンバータが元々設けられている場合、このDCDCコンバータと低電圧系とを接続する配線に、排熱回収装置の発電機を接続すれば、本実施形態の電力システム1を実現することが可能である。このように車両に元から備わっている部品を利用する場合、電力システム1を簡素化しつつ、排熱から電力を回収するための発電制御を行う構成を簡便に得ることができる。また、DCDCコンバータ7を制御するためのECU10として、排熱回収装置を制御するために元々設けられていたECUを用いてもよいし、低電圧系5と高電圧系6との間における電力時の授受を制御するために元々設けられていたECUを用いてもよいし、その他のECUを用いてもよい。
【0039】
電力制御装置としてのECU10は、DCDCコンバータ7を制御することにより、排熱回収装置としてのランキンサイクル3および発電機4における発電の効率が高くなるように、発電機4の出力電流を制御するように設けられてよい。この場合、DCDCコンバータ7を制御することにより、低電圧系5の側と高電圧系6との間で電力を融通しつつ、発電機4のトルクを制御することで、排熱回収装置の動作点を高効率化し、排熱からより多くの電力を回収することができる。このため、電力システム1を全体として高効率化することができる。
【0040】
電力制御装置としてのECU10は、低電圧系5の消費電流と、高電圧系6の側へのDCDCコンバータ7の出力電流(正値または負値)との和が、発電機4の出力電流となるように、DCDCコンバータ7を制御するように設けられてよい。例えば、ECU10は、低電圧系5の消費電流から、低電圧系5の側へのDCDCコンバータ7の出力電流(正値)を差し引いた値が、発電機4の出力電流となるように、DCDCコンバータ7を制御するように設けられてよい。この場合、DCDCコンバータ7を制御することにより、発電機4の出力電流を無駄にすることなく、低電圧系5と高電圧系6との間で電力を融通ないし出し入れすることができる。すなわち、発電電力を無駄なく有効利用することが可能となる。
【0041】
電力制御装置としてのECU10は、低電圧系5の消費電流を取得し、排熱回収装置としてのランキンサイクル3の目標動作点に基づいて発電機4の目標出力電流を算出し、取得した低電圧系5の消費電流と、高電圧系6の側へのDCDCコンバータ7の出力電流との和が、算出した発電機4の目標出力電流となるように、DCDCコンバータ7を制御するように設けられてよい。この場合、実際に取得した低電圧系5の消費電流を用いて発電機4の出力電流を制御することで、より確実に、発電機4の出力電流を無駄にすることなく、有効活用するように、低電圧系5と高電圧系6との間で電力を融通することができる。
【0042】
電力制御装置としてのECU10は、低電圧系の消費電流を予測により取得するように設けられてもよい。この場合、予測により取得した低電圧系5の消費電流を用いることで、電力の余剰または不足を生じることなく、発電機4の出力電流を制御することが可能となる。
【0043】
電力制御装置としてのECU10は、発熱体としてのエンジン20の発熱量に関する情報に基づいて、排熱回収装置としてのランキンサイクル3の目標動作点を算出し、ランキンサイクル3の目標動作点に基づいて発電機4の出力電流を制御するように設けられてよい。この場合、発熱量に関する情報を用いることで、より確実に、排熱回収装置の動作点を高効率とし、効率の良い発電出力を得ることができる。
【0044】
上記発熱体は、内燃機関としてのエンジン20であり、エンジン20の発熱量に関する情報は、エンジン20の冷却水温であってよい。この場合、エンジン20の冷却水温を用いて、簡便に、エンジン20の発熱量に関する情報を得ることができ、この情報に基づき効率の良い発電出力を得ることができる。なお、エンジン20の発熱量に関する情報は、エンジン20の負荷(例えば回転数およびトルク)であってよい。また、上記発熱体は、燃料電池自動車における燃料電池、または、EVにおける電池であってもよい。発熱体が燃料電池である場合、燃料電池の発熱量に関する情報は、燃料電池の電流または検出温度等であってよい。発熱体がEVにおける電池である場合、電池の発熱量に関する情報は、電池の電流値または検出温度等であってよい。
【0045】
上記排熱回収装置は、作動媒体の状態変化の過程を組み合わせたサイクルとしてのランキンサイクル3を含み、作動媒体の流れにより発電機4の動力を生成するように設けられてよい。電力制御装置としてのECU10は、作動媒体の状態間の変化量に関する情報に基づいてランキンサイクル3の目標動作点を算出し、ランキンサイクル3の目標動作点に基づいて発電機4の出力電流を制御するように設けられてよい。この場合、排熱回収装置として、作動媒体の状態変化の過程を組み合わせたサイクルを用いることで、発熱体の排熱を効率的に動力へ変化させることができる。この動力を用いて発電することで、排熱エネルギを電力として効率的に回収することができる。また、作動媒体の状態間の変化量に関する情報を用いて制御することで、より確実に、上記サイクルを含む排熱回収装置の動作点を高効率とし、効率の良い発電出力を得ることができる。なお、ランキンサイクル3の具体的な構成は、本実施形態のものに限らず、適宜変更可能である。例えば、膨張器34のタービンと発電機4の回転軸とは、ECU10からの動作指示に基づいて締結・開放が制御される電磁クラッチ等を介して、互いに接続されていてもよい。また、上記のようなサイクルは、ランキンサイクル3に限らず、スターリングサイクル等であってもよい。また、上記排熱回収装置は、排熱を電力に変換することができればよく、排熱から動力を生成する上記のようなサイクルに限らず、例えば半導体または合金等の熱電素子(または熱電変換素子)を用いた排熱回収装置であってもよい。
【0046】
ランキンサイクル3は凝縮器35を含み、上記作動媒体の状態間の変化量に関する情報は、外気温または凝縮器35を通過する空気の風速(例えば車速)のいずれかを含んでよい。この場合、作動媒体を冷却する凝縮器35における上記変化量を、外気温または上記風速を用いて、簡便に検出または推定することができ、この情報に基づき効率の良い発電出力を得ることができる。なお、上記変化量に関する情報は、外気温等に限らず、例えば、作動媒体を圧縮するポンプ32の作動状態に関するパラメータ(例えば回転数または吐出流量)であってもよい。排熱回収装置として上記のような熱電素子を用いる場合、ECU10のランキンサイクル制御部16は不要となる。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0048】
1 電力システム
20 エンジン(発熱体)
3 ランキンサイクル(排熱回収装置)
4 発電機(排熱回収装置)
5 低電圧系
50 低電圧バッテリ(低電圧二次電池)
6 高電圧系
60 高電圧バッテリ(高電圧二次電池)
7 DCDCコンバータ
81 第1配線
82 第2配線