(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20221227BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 643A
H01L21/306 R
(21)【出願番号】P 2019052732
(22)【出願日】2019-03-20
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】三浦 淳靖
(72)【発明者】
【氏名】江戸 徹
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-266951(JP,A)
【文献】特開2003-273063(JP,A)
【文献】特開2012-064894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理方法であって、
a)水平状態で保持された基板を、上下方向を向く中心軸を中心として回転させる工程と、
b)回転中の前記基板の上面および下面のうち一方の主面の中央部にガスを供給するとともに、前記基板の他方の主面の中央部に第1流量にてリンス液を供給して前記一方の主面の周縁領域に回り込ませることにより、前記一方の主面上において前記ガスと前記リンス液との気液界面を形成する工程と、
c)前記b)工程
に連続して回転中の前記基板の前記他方の主面の中央部に、前記第1流量よりも小流量の第2流量にて薬液を供給して前記一方の主面の前記周縁領域に回り込ませることにより、前記一方の主面上において前記気液界面まで前記薬液を供給して前記周縁領域の薬液処理を行う工程と、
を備え
、
前記薬液は、前記リンス液に溶質を溶解させたものであることを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
基板処理方法であって、
a)水平状態で保持された基板を、上下方向を向く中心軸を中心として回転させる工程と、
b)回転中の前記基板の上面および下面のうち一方の主面の中央部にガスを供給するとともに、前記基板の他方の主面の中央部に第1流量にてリンス液を供給して前記一方の主面の周縁領域に回り込ませることにより、前記一方の主面上において前記ガスと前記リンス液との気液界面を形成する工程と、
c)
前記基板の前記他方の主面に対する前記リンス液の供給が継続されて前記気液界面の径方向の位置が維持されている状態で、回転中の前記基板の前記他方の主面の中央部に、前記第1流量よりも小流量の第2流量にて薬液を供給して前記一方の主面の前記周縁領域に回り込ませることにより、前記一方の主面上において前記気液界面まで前記薬液を供給して
前記リンス液の液膜を前記薬液の液膜に置換して前記周縁領域の薬液処理を行う工程と、
を備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項3】
請求項
2に記載の基板処理方法であって、
前記薬液は、前記リンス液に溶質を溶解させたものであることを特徴とする基板処理方法。
【請求項4】
基板処理方法であって、
a)水平状態で保持された基板を、上下方向を向く中心軸を中心として回転させる工程と、
b)回転中の前記基板の上面および下面のうち一方の主面の中央部にガスを供給するとともに、前記基板の他方の主面の中央部に第1流量にてリンス液を供給して前記一方の主面の周縁領域に回り込ませることにより、前記一方の主面上において前記ガスと前記リンス液との気液界面を形成する工程と、
c)前記b)工程よりも後に、回転中の前記基板の前記他方の主面の中央部に、前記第1流量よりも小流量の第2流量にて薬液を供給して前記一方の主面の前記周縁領域に回り込ませることにより、前記一方の主面上において前記気液界面まで前記薬液を供給して前記周縁領域の薬液処理を行う工程と、
を備え、
d)前記b)工程と前記c)工程との間に、回転中の前記基板の前記他方の主面の中央部に、前記第1流量よりも小流量の第3流量にて前記リンス液を供給して前記一方の主面の前記周縁領域に回り込ませ、前記気液界面まで前記リンス液を供給する工程をさらに備えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項5】
請求項
4に記載の基板処理方法であって、
前記c)工程における前記第2流量の前記薬液は、前記第3流量の前記リンス液に溶質を溶解させることにより生成されることを特徴とする基板処理方法。
【請求項6】
請求項1ないし
5のいずれか1つに記載の基板処理方法であって、
前記b)工程と前記c)工程との間において、または、前記c)工程の開始と並行して、前記基板の回転速度が低減されることを特徴とする基板処理方法。
【請求項7】
基板処理装置であって、
水平状態で基板を保持する基板保持部と、
上下方向を向く中心軸を中心として前記基板保持部を回転する基板回転機構と、
回転中の前記基板の上面および下面のうち一方の主面の中央部にガスを供給するガス供給部と、
回転中の前記基板の他方の主面の中央部に第1流量にてリンス液を供給して前記一方の主面の周縁領域に回り込ませることにより、前記一方の主面上において前記ガスと前記リンス液との気液界面を形成するリンス液供給部と、
前記基板の前記他方の主面に対する前記リンス液の供給に連続して、回転中の前記基板の前記他方の主面の中央部に、前記第1流量よりも小流量の第2流量にて薬液を供給して前記一方の主面の前記周縁領域に回り込ませることにより、前記一方の主面上において前記気液界面まで前記薬液を供給して前記周縁領域の薬液処理を行う薬液供給部と、
を備え
、
前記薬液供給部は、前記第1流量よりも小流量の第3流量の前記リンス液に溶質を溶解させることにより前記第2流量の前記薬液を生成する薬液生成部を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
基板処理装置であって、
水平状態で基板を保持する基板保持部と、
上下方向を向く中心軸を中心として前記基板保持部を回転する基板回転機構と、
回転中の前記基板の上面および下面のうち一方の主面の中央部にガスを供給するガス供給部と、
回転中の前記基板の他方の主面の中央部に第1流量にてリンス液を供給して前記一方の主面の周縁領域に回り込ませることにより、前記一方の主面上において前記ガスと前記リンス液との気液界面を形成するリンス液供給部と、
前記基板の前記他方の主面に対する前記リンス液の供給が継続されて前記気液界面の径方向の位置が維持されている状態で、回転中の前記基板の前記他方の主面の中央部に、前記第1流量よりも小流量の第2流量にて薬液を供給して前記一方の主面の前記周縁領域に回り込ませることにより、前記一方の主面上において前記気液界面まで前記薬液を供給して
前記リンス液の液膜を前記薬液の液膜に置換して前記周縁領域の薬液処理を行う薬液供給部と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
基板処理装置であって、
水平状態で基板を保持する基板保持部と、
上下方向を向く中心軸を中心として前記基板保持部を回転する基板回転機構と、
回転中の前記基板の上面および下面のうち一方の主面の中央部にガスを供給するガス供給部と、
回転中の前記基板の他方の主面の中央部に第1流量にてリンス液を供給して前記一方の主面の周縁領域に回り込ませることにより、前記一方の主面上において前記ガスと前記リンス液との気液界面を形成するリンス液供給部と、
回転中の前記基板の前記他方の主面の中央部に、前記第1流量よりも小流量の第2流量にて薬液を供給して前記一方の主面の前記周縁領域に回り込ませることにより、前記一方の主面上において前記気液界面まで前記薬液を供給して前記周縁領域の薬液処理を行う薬液供給部と、
を備え、
前記リンス液供給部による前記第1流量での前記リンス液の供給と、前記薬液供給部による前記薬液の供給との間において、前記リンス液供給部が、回転中の前記基板の前記他方の主面の中央部に、前記第1流量よりも小流量の第3流量にて前記リンス液を供給して前記一方の主面の前記周縁領域に回り込ませ、前記気液界面まで前記リンス液を供給することを特徴とする基板処理装置。
【請求項10】
請求項
9に記載の基板処理装置であって、
前記薬液供給部は、前記第3流量の前記リンス液に溶質を溶解させることにより前記第2流量の前記薬液を生成する薬液生成部を備えることを特徴とする基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板(以下、単に「基板」という。)の製造工程では、基板に対して様々な処理が施される。例えば、表面上に成膜が行われた基板の周縁領域(すなわち、ベベル部)に対してエッチング液を供給し、当該周縁領域の膜を除去するエッチング処理が行われる。特許文献1および特許文献2では、基板の成膜された主面を上側に向け、上面周縁領域に向けてノズルからエッチング液を吐出することにより、周縁領域の膜が基板から除去される。
【0003】
また、特許文献3では、基板の成膜された主面を下方に向け、基板上面にエッチング液を供給して下面周縁領域に回り込ませることにより、周縁領域の膜が基板から除去される。特許文献4および特許文献5では、周縁領域のエッチングが行われる基板の上下が、特許文献3と反対になっている。
【0004】
特許文献3では、基板の下面中央部にシールガスを供給し、当該下面に沿って径方向外方へと向かうシールガスの気流を形成することにより、基板の下面周縁領域におけるエッチング液の回り込み幅(すなわち、エッチング幅)を制御する技術が提案されている。特許文献4では、基板の下面にエッチング液を供給する前に、当該下面にDIW(De-ionized Water)を供給しておくことにより、エッチング液の非等方的な広がりを抑制する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-93082号公報
【文献】特開2017-59676号公報
【文献】特開2003-273063号公報
【文献】特開2009-266951号公報
【文献】特表2008-546184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、基板の上面および下面のうち一方の主面に薬液を供給し、他方の主面の周縁領域を薬液処理する場合、薬液の供給流量が大きいと、回転する基板から周囲に飛散する薬液がカップ部等にて跳ね返り、基板に付着するおそれがある。一方、薬液の供給流量が小さい場合、他方の主面への薬液の回り込み幅(すなわち、薬液処理幅)が不足するおそれがある。また、薬液の供給流量が小さい場合、他方の主面に供給されるガス(いわゆる、シールガス)と、他方の主面に回り込んだ薬液との境界が安定せず、薬液処理が不安定になるおそれもある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、基板の周縁領域の薬液処理を、薬液の液跳ねを抑制しつつ好適に行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、基板処理方法であって、a)水平状態で保持された基板を、上下方向を向く中心軸を中心として回転させる工程と、b)回転中の前記基板の上面および下面のうち一方の主面の中央部にガスを供給するとともに、前記基板の他方の主面の中央部に第1流量にてリンス液を供給して前記一方の主面の周縁領域に回り込ませることにより、前記一方の主面上において前記ガスと前記リンス液との気液界面を形成する工程と、c)前記b)工程に連続して回転中の前記基板の前記他方の主面の中央部に、前記第1流量よりも小流量の第2流量にて薬液を供給して前記一方の主面の前記周縁領域に回り込ませることにより、前記一方の主面上において前記気液界面まで前記薬液を供給して前記周縁領域の薬液処理を行う工程とを備え、前記薬液は、前記リンス液に溶質を溶解させたものである。
請求項2に記載の発明は、基板処理方法であって、a)水平状態で保持された基板を、上下方向を向く中心軸を中心として回転させる工程と、b)回転中の前記基板の上面および下面のうち一方の主面の中央部にガスを供給するとともに、前記基板の他方の主面の中央部に第1流量にてリンス液を供給して前記一方の主面の周縁領域に回り込ませることにより、前記一方の主面上において前記ガスと前記リンス液との気液界面を形成する工程と、c)前記基板の前記他方の主面に対する前記リンス液の供給が継続されて前記気液界面の径方向の位置が維持されている状態で、回転中の前記基板の前記他方の主面の中央部に、前記第1流量よりも小流量の第2流量にて薬液を供給して前記一方の主面の前記周縁領域に回り込ませることにより、前記一方の主面上において前記気液界面まで前記薬液を供給して前記リンス液の液膜を前記薬液の液膜に置換して前記周縁領域の薬液処理を行う工程と、備える。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の基板処理方法であって、前記薬液は、前記リンス液に溶質を溶解させたものである。
【0010】
請求項4に記載の発明は、基板処理方法であって、a)水平状態で保持された基板を、上下方向を向く中心軸を中心として回転させる工程と、b)回転中の前記基板の上面および下面のうち一方の主面の中央部にガスを供給するとともに、前記基板の他方の主面の中央部に第1流量にてリンス液を供給して前記一方の主面の周縁領域に回り込ませることにより、前記一方の主面上において前記ガスと前記リンス液との気液界面を形成する工程と、c)前記b)工程よりも後に、回転中の前記基板の前記他方の主面の中央部に、前記第1流量よりも小流量の第2流量にて薬液を供給して前記一方の主面の前記周縁領域に回り込ませることにより、前記一方の主面上において前記気液界面まで前記薬液を供給して前記周縁領域の薬液処理を行う工程と、を備え、d)前記b)工程と前記c)工程との間に、回転中の前記基板の前記他方の主面の中央部に、前記第1流量よりも小流量の第3流量にて前記リンス液を供給して前記一方の主面の前記周縁領域に回り込ませ、前記気液界面まで前記リンス液を供給する工程をさらに備える。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の基板処理方法であって、前記c)工程における前記第2流量の前記薬液は、前記第3流量の前記リンス液に溶質を溶解させることにより生成される。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の基板処理方法であって、前記b)工程と前記c)工程との間において、または、前記c)工程の開始と並行して、前記基板の回転速度が低減される。
【0013】
請求項7に記載の発明は、基板処理装置であって、水平状態で基板を保持する基板保持部と、上下方向を向く中心軸を中心として前記基板保持部を回転する基板回転機構と、回転中の前記基板の上面および下面のうち一方の主面の中央部にガスを供給するガス供給部と、回転中の前記基板の他方の主面の中央部に第1流量にてリンス液を供給して前記一方の主面の周縁領域に回り込ませることにより、前記一方の主面上において前記ガスと前記リンス液との気液界面を形成するリンス液供給部と、前記基板の前記他方の主面に対する前記リンス液の供給に連続して、回転中の前記基板の前記他方の主面の中央部に、前記第1流量よりも小流量の第2流量にて薬液を供給して前記一方の主面の前記周縁領域に回り込ませることにより、前記一方の主面上において前記気液界面まで前記薬液を供給して前記周縁領域の薬液処理を行う薬液供給部とを備え、前記薬液供給部は、前記第1流量よりも小流量の第3流量の前記リンス液に溶質を溶解させることにより前記第2流量の前記薬液を生成する薬液生成部を備える。
請求項8に記載の発明は、基板処理装置であって、水平状態で基板を保持する基板保持部と、上下方向を向く中心軸を中心として前記基板保持部を回転する基板回転機構と、回転中の前記基板の上面および下面のうち一方の主面の中央部にガスを供給するガス供給部と、回転中の前記基板の他方の主面の中央部に第1流量にてリンス液を供給して前記一方の主面の周縁領域に回り込ませることにより、前記一方の主面上において前記ガスと前記リンス液との気液界面を形成するリンス液供給部と、前記基板の前記他方の主面に対する前記リンス液の供給が継続されて前記気液界面の径方向の位置が維持されている状態で、回転中の前記基板の前記他方の主面の中央部に、前記第1流量よりも小流量の第2流量にて薬液を供給して前記一方の主面の前記周縁領域に回り込ませることにより、前記一方の主面上において前記気液界面まで前記薬液を供給して前記リンス液の液膜を前記薬液の液膜に置換して前記周縁領域の薬液処理を行う薬液供給部と、を備える。
【0014】
請求項9に記載の発明は、基板処理装置であって、水平状態で基板を保持する基板保持部と、上下方向を向く中心軸を中心として前記基板保持部を回転する基板回転機構と、回転中の前記基板の上面および下面のうち一方の主面の中央部にガスを供給するガス供給部と、回転中の前記基板の他方の主面の中央部に第1流量にてリンス液を供給して前記一方の主面の周縁領域に回り込ませることにより、前記一方の主面上において前記ガスと前記リンス液との気液界面を形成するリンス液供給部と、回転中の前記基板の前記他方の主面の中央部に、前記第1流量よりも小流量の第2流量にて薬液を供給して前記一方の主面の前記周縁領域に回り込ませることにより、前記一方の主面上において前記気液界面まで前記薬液を供給して前記周縁領域の薬液処理を行う薬液供給部と、を備え、前記リンス液供給部による前記第1流量での前記リンス液の供給と、前記薬液供給部による前記薬液の供給との間において、前記リンス液供給部が、回転中の前記基板の前記他方の主面の中央部に、前記第1流量よりも小流量の第3流量にて前記リンス液を供給して前記一方の主面の前記周縁領域に回り込ませ、前記気液界面まで前記リンス液を供給する。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の基板処理装置であって、前記薬液供給部は、前記第3流量の前記リンス液に溶質を溶解させることにより前記第2流量の前記薬液を生成する薬液生成部を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、基板の周縁領域の薬液処理を、薬液の液跳ねを抑制しつつ好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一の実施の形態に係る基板処理装置の構成を示す側面図である。
【
図2】処理液供給部およびガス供給部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る基板処理装置1の構成を示す側面図である。基板処理装置1は、半導体基板9(以下、単に「基板9」という。)を1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、基板9に処理液を供給して処理を行う。
図1では、基板処理装置1の構成の一部を断面にて示す。
【0019】
基板処理装置1は、基板保持部31と、基板回転機構33と、カップ部4と、処理液供給部5と、ガス供給部6と、制御部7と、ハウジング11と、を備える。基板保持部31、基板回転機構33およびカップ部4等は、ハウジング11の内部空間に収容される。
図1では、ハウジング11を断面にて描いている。ハウジング11の天蓋部には、当該内部空間にガスを供給して下方に流れる気流(いわゆる、ダウンフロー)を形成する気流形成部12が設けられる。気流形成部12としては、例えば、FFU(ファン・フィルタ・ユニット)が利用される。
【0020】
制御部7は、ハウジング11の外部に配置され、基板保持部31、基板回転機構33、処理液供給部5およびガス供給部6等を制御する。制御部7は、例えば、プロセッサと、メモリと、入出力部と、バスとを備える通常のコンピュータを含む。バスは、プロセッサ、メモリおよび入出力部を接続する信号回路である。メモリは、プログラムおよび各種情報を記憶する。プロセッサは、メモリに記憶されるプログラム等に従って、メモリ等を利用しつつ様々な処理(例えば、数値計算)を実行する。入出力部は、操作者からの入力を受け付けるキーボードおよびマウス、プロセッサからの出力等を表示するディスプレイ、並びに、プロセッサからの出力等を送信する送信部を備える。
【0021】
制御部7は、記憶部71と、供給制御部72とを備える。記憶部71は、主にメモリにより実現され、基板9の処理レシピ等の各種情報を記憶する。供給制御部72は、主にプロセッサにより実現され、記憶部71に格納されている処理レシピ等に従って、処理液供給部5等を制御する。
【0022】
基板保持部31は、水平状態の基板9の下側の主面(すなわち、下面92)と対向し、基板9を下側から保持する。基板保持部31は、例えば、基板9を機械的に支持するメカニカルチャックである。基板保持部31は、上下方向を向く中心軸J1を中心として回転可能に設けられる。
【0023】
基板保持部31は、保持部本体と、複数(例えば、6つ)のチャックピンとを備える。保持部本体は、基板9の下面92と対向する略円板状の部材である。複数のチャックピンは、保持部本体の周縁部にて中心軸J1を中心とする周方向(以下、単に「周方向」とも呼ぶ。)に略等角度間隔にて配置される。各チャックピンは、保持部本体の上面から上方へと突出し、基板9の下面92の周縁近傍の部位および側面に接触して基板9を支持する。基板処理装置1では、例えば、後述する基板9の周縁領域に対する薬液処理の前半において、6つのチャックピンのうち3つのチャックピンにより基板9が保持され、当該薬液処理の後半において、残りの3つのチャックピンにより基板9が保持される。これにより、基板9の周縁領域に対する薬液処理の周方向における均一性を向上することができる。また、基板9の周縁領域に対するリンス液の付与の際等にも、複数のチャックピンが同様に駆動される。
【0024】
基板回転機構33は、基板保持部31の下方に配置される。基板回転機構33は、中心軸J1を中心として基板9を基板保持部31と共に回転する。基板回転機構33は、例えば、回転シャフトが基板保持部31の保持部本体に接続された電動回転式モータを備える。基板回転機構33は、中空モータ等の他の構造を有していてもよい。
【0025】
処理液供給部5は、基板9に複数種類の処理液を個別に供給する。当該複数種類の処理液には、例えば、後述する薬液およびリンス液が含まれる。処理液供給部5は、第1ノズル51と、第2ノズル52とを備える。第1ノズル51および第2ノズル52はそれぞれ、基板9の上方から基板9の上側の主面(以下、「上面91」という。)の中央部に向けて処理液を供給する。第1ノズル51および第2ノズル52は、例えば、テフロン(登録商標)等の高い耐薬品性を有する樹脂により形成される。なお、第1ノズル51および第2ノズル52はそれぞれ、1つの共通ノズルの一部であってもよい。
【0026】
カップ部4は、中心軸J1を中心とする環状の部材である。カップ部4は、基板9および基板保持部31の周囲において全周に亘って配置され、基板9および基板保持部31の側方を覆う。カップ部4は、回転中の基板9から周囲に向かって飛散する処理液等の液体を受ける受液容器である。カップ部4の内側面は、例えば撥水性材料により形成される。カップ部4は、基板9の回転および静止に関わらず、周方向において静止している。カップ部4の底部には、カップ部4にて受けられた処理液等をハウジング11の外部へと排出する排液ポート(図示省略)が設けられる。カップ部4は、
図1に示す基板9の周囲の位置である処理位置と、当該処理位置よりも下側の退避位置との間を、図示省略の昇降機構により上下方向に移動可能である。
【0027】
カップ部4は、
図1に示す単層構造とは異なり、中心軸J1を中心とする径方向(以下、単に「径方向」と呼ぶ。)に複数のカップが積層される積層構造であってもよい。カップ部4が積層構造を有する場合、複数のカップはそれぞれ独立して上下方向に移動可能であり、基板9から飛散する処理液の種類に合わせて、複数のカップが切り替えられて処理液の受液に使用される。
【0028】
ガス供給部6は、基板9にガスを供給する。ガス供給部6は、第3ノズル63を備える。第3ノズル63は、基板9の下方から基板9の下面92に向けてガスを供給する。第3ノズル63は、基板回転機構33の回転シャフトの内部に配置され、基板保持部31の保持部本体を貫通して上方へと延びる。第3ノズル63の上端の吐出口は、基板9の下面92の中央部と上下方向に対向する。
【0029】
図2は、基板処理装置1の処理液供給部5およびガス供給部6を示すブロック図である。
図2では、処理液供給部5およびガス供給部6以外の構成も併せて示す。処理液供給部5は、薬液供給部54と、リンス液供給部55とを備える。
【0030】
リンス液供給部55は、第1ノズル51と、第2ノズル52と、混合部545とを備える。第1ノズル51は、配管552を介してリンス液供給源551に接続される。第2ノズル52は、配管542、混合部545および配管544を介してリンス液供給源551に接続される。第1ノズル51および第2ノズル52はそれぞれ、リンス液供給源551から送出されたリンス液を、基板9の上面91に向けて吐出するリンス液吐出部である。リンス液としては、例えば、DIW(De-ionized Water)、炭酸水、オゾン水または水素水等の水性処理液が利用される。なお、リンス液供給源551は、リンス液供給部55に含まれてもよい。
【0031】
薬液供給部54は、第2ノズル52と、混合部545とを備える。第2ノズル52は、薬液供給部54とリンス液供給部55とにより共有される。第2ノズル52は、上述の配管542を介して混合部545に接続される。混合部545は、配管543を介して原液供給源546に接続されるとともに、上述の配管544を介してリンス液供給源551に接続される。
【0032】
混合部545では、リンス液供給源551から送出されたリンス液(すなわち、溶媒)に、原液供給源546から送出された薬液原液(すなわち、溶質)を溶解させて薬液が生成される。すなわち、混合部545は、薬液原液をリンス液に溶解させて薬液を生成する薬液生成部である。混合部545は、例えば、リンス液と薬液原液とを混合するスタティックミキサを備える。混合部545は、他の様々な液体混合装置を備えていてもよい。混合部545により生成された薬液は、配管542を介して第2ノズル52に供給され、第2ノズル52から基板9の上面91に向けて吐出される。なお、薬液原液を溶解させる溶媒は、必ずしもリンス液である必要はなく、リンス液と異なる種類の液体であってもよい。また、
図2に示す例では、1つの原液供給源546が混合部545に接続されているが、複数の原液供給源546が混合部545に接続され、複数種類の薬液原液が混合部545に供給されてもよい。
【0033】
処理液供給部5では、原液供給源546からの薬液原液の供給が停止されている状態で、リンス液供給源551から混合部545にリンス液を送出することにより、第2ノズル52から基板9の上面91に向けてリンス液が吐出される。第2ノズル52は、基板9の上面91に向けてリンス液を吐出するリンス液吐出部であり、基板9の上面91に向けて薬液を吐出する薬液吐出部でもある。なお、原液供給源546は、薬液供給部54に含まれてもよい。
【0034】
第2ノズル52から基板9の上面91に供給される薬液およびリンス液は、基板9の周縁を経由して下面92に回り込み、下面92の周縁領域93(後述する
図3参照)に供給される。当該薬液は、例えば、基板9の下面92の略全面に亘って形成されている薄膜のうち、周縁領域93上の部位をエッチングして除去するエッチング液である。
【0035】
図3は、基板9を示す底面図である。
図3では、図の理解を容易にするために、基板9の下面92において周縁領域93の径方向内側の領域である内側領域94上に平行斜線を付し、周縁領域93と内側領域94との境界を二点鎖線にて示す。周縁領域93(すなわち、ベベル部)は、中心軸J1を中心とする略円環状の領域である。内側領域94は、中心軸J1を中心とする略円形の領域である。基板9の下面92では、多数の微細な構造体要素の集合である構造体(例えば、製品にて使用される回路パターン)が、内側領域94に予め形成されている。周縁領域93には、当該構造体は形成されていない。本実施の形態では、基板9の直径および厚さはそれぞれ、300mmおよび775μmである。基板9の周縁の縦断面は略円弧状であり、当該周縁の半径は300μmである。周縁領域93の径方向の幅は、周方向において略一定であり、例えば2mm~3mmである。
【0036】
基板9の下面92上の薄膜がポリシリコン膜である場合、薬液として、例えば、フッ酸(HF)と硝酸(HNO3)との混合液、濃フッ酸、希フッ酸、水酸化アンモニウム(NH4OH)、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)、または、SC1(すなわち、アンモニア(NH3)と過酸化水素(H2O2)との混合水溶液)が利用される。基板9の下面92上の薄膜が窒化チタン(TiN)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)またはタングステン(W)の膜である場合、薬液として、例えば、SC2(すなわち、塩化水素(HCl)と過酸化水素との混合水溶液)、または、FPM(すなわち、フッ化水素と過酸化水素との混合水溶液)が利用される。基板9の下面92上の薄膜が酸化シリコン(SiO2)膜である場合、薬液として、例えば、希フッ酸またはFPMが利用される。
【0037】
図2に示すように、ガス供給部6は、第3ノズル63を備える。第3ノズル63は、配管64を介してガス供給源65に接続される。第3ノズル63は、ガス供給源65から送出されたガスを、基板9の下面92の中央部に向けて吐出するガス吐出部である。当該ガスとしては、窒素(N2)ガス等の不活性ガス、または、ドライエア等が利用される。なお、ガス供給源65は、ガス供給部6に含まれてもよい。
【0038】
次に、
図4を参照しつつ、基板処理装置1における基板9の処理について説明する。基板処理装置1では、まず、下面92の略全面に亘って膜が形成された基板9が、基板保持部31により水平状態で保持される。続いて、基板回転機構33により、基板9の回転が開始される(ステップS11)。そして、供給制御部72によりガス供給部6が制御されることにより、回転中の基板9に対して、第3ノズル63からガス(例えば、窒素ガス)が吐出される。第3ノズル63からのガスは、基板9の下面92の中央部に供給され、基板9の下面92に沿って径方向外方へと広がる(ステップS12)。これにより、基板9の下面92において、中央部から径方向外方へと向かう上記ガスの気流が、周方向の全体に亘って形成される。
【0039】
次に、供給制御部72によりリンス液供給部55が制御されることにより、回転中の基板9に対して、第1ノズル51から所定流量(例えば、1000ml/min~2000ml/minであり、以下の説明では「第1流量」とも呼ぶ。)にてリンス液が吐出される。本実施の形態では、リンス液としてDIWが用いられる。また、基板9の回転速度は、例えば800rpmである。
図5に示すように、第1ノズル51からのリンス液81は、基板9の上面91の中央部に供給され、遠心力により基板9の上面91上を径方向外方へと広がる。基板9の周縁に到達したリンス液81は、当該周縁を経由して下面92へと回り込み、周縁領域93に供給される。基板9上では、上面91の中央部から下面92の周縁領域93まで連続するリンス液81の液膜が形成される。なお、
図5では、基板9等の厚さを、径方向の大きさに比べて大きく描いている。また、周縁領域93の径方向の幅を実際よりも大きく描いている。後述する
図6および
図7においても同様である。
【0040】
基板9の下面92に回り込んだリンス液81の径方向内方への移動は、上述の径方向外方へと向かう気流82により停止される。基板9の下面92では、周縁領域93と内側領域94との境界(すなわち、周縁領域93の内周縁)上において、リンス液81と気流82(すなわち、上記ガス)との界面(以下、「気液界面83」と呼ぶ。)が形成される(ステップS13)。気液界面83の平面視における形状は、中心軸J1を中心とする略円形である。基板9に対する第1流量のリンス液81の供給が所定時間(例えば、5秒)継続されることにより、基板9の下面92において、気液界面83の径方向における位置を安定させることができる。
【0041】
ステップS13における気液界面83の形成が終了すると、供給制御部72によりリンス液供給部55が制御されることにより、第1ノズル51からのリンス液81の吐出が停止されると略同時に、第2ノズル52から回転中の基板9に対して、ステップS13におけるリンス液81の流量よりも小流量の所定流量(例えば、300ml/min~800ml/minであり、以下の説明では「第3流量」とも呼ぶ。)にてリンス液81が吐出される。換言すれば、第1ノズル51からのリンス液81の吐出が、第2ノズル52からの小流量のリンス液81の吐出に切り替えられる。当該リンス液81は、上述のように、リンス液供給源551から混合部545を介して第2ノズル52に供給される。本実施の形態では、上述のように、リンス液81としてDIWが用いられる。また、基板9の回転速度は、ステップS13よりも少し遅く(例えば、700rpm)なるように低減される。
【0042】
図6に示すように、第2ノズル52からのリンス液81は、基板9の上面91の中央部に供給され、ステップS13において基板9上に形成されているリンス液81の液膜(
図5参照)に合流し、遠心力により基板9の上面91上を径方向外方へと広がる。基板9の周縁に到達したリンス液81は、当該周縁を経由して下面92へと回り込み、周縁領域93に供給される。基板9の下面92に回り込んだリンス液81は、上述の気液界面83まで到達し、気液界面83にて気流82と接触する(ステップS14)。換言すれば、ステップS14では、気液界面83の径方向の位置を維持しつつ、基板9の上面91に供給されるリンス液81の流量が減少される。
【0043】
当該基板処理方法では、ステップS13において比較的大流量のリンス液81により気液界面83が安定的に形成されているため、ステップS14においてリンス液81の流量を減少させても、気液界面83の径方向の位置が維持される。そして、第2ノズル52から基板9に対するリンス液の供給が所定時間(例えば、3秒)継続されることにより、比較的小流量のリンス液81が基板9の上面91に供給される状態においても、気液界面83の径方向における位置を安定させることができる。
【0044】
次に、供給制御部72により薬液供給部54が制御されることにより、原液供給源546から混合部545に薬液原液が送出される。混合部545では、当該薬液原液が、リンス液供給源551から混合部545に供給されるリンス液に溶解することにより、上述の薬液が生成される。当該薬液は、第2ノズル52から回転中の基板9に対して吐出される。リンス液供給源551から混合部545に供給されるリンス液の流量は、例えば、ステップS14における当該流量と同じである。この場合、基板9に供給される薬液の流量(以下の説明では「第2流量」とも呼ぶ。)は、ステップS14におけるリンス液の流量と、原液供給源546からの薬液原液の流量との合計である。なお、混合部545においてリンス液に添加される薬液原液の流量が、リンス液の上記流量に比べて非常に小さい場合、基板9に供給される薬液の流量は、ステップS14におけるリンス液の流量と実質的に同じである。薬液供給時の基板9の回転速度は、例えば、ステップS14と同じである。
【0045】
図7に示すように、第2ノズル52からの薬液84は、基板9の上面91の中央部に供給され、ステップS14において基板9上に形成されているリンス液81の液膜(
図6参照)に合流し、遠心力により基板9の上面91上を径方向外方へと広がる。基板9の周縁に到達した薬液84は、当該周縁を経由して下面92へと回り込み、周縁領域93に供給される。基板9の下面92に回り込んだ薬液84は、上述の気液界面83まで到達し、気液界面83にて気流82と接触する(ステップS15)。換言すれば、ステップS15では、気液界面83の径方向の位置を維持しつつ、基板9の上面91および下面92のリンス液81の液膜が、薬液84に置換される。そして、基板9に対する薬液84の供給が所定時間継続されることにより、周縁領域93に対する薬液処理(例えば、エッチング液によるエッチング処理)が行われる。
【0046】
当該薬液処理が終了すると、供給制御部72により薬液供給部54およびリンス液供給部55が制御されることにより、第2ノズル52からの薬液の吐出が停止されると略同時に、第1ノズル51から回転中の基板9に対してリンス液が吐出される。換言すれば、第2ノズル52からの薬液の吐出が、第1ノズル51からのリンス液の吐出に切り替えられる。これにより、基板9の上面91および下面92のリンス処理が行われる(ステップS16)。リンス処理が終了すると、リンス液の供給が停止され、基板9の乾燥処理が行われる(ステップS17)。乾燥処理では、基板9の回転速度が増大され、基板9上に残っている処理液が、遠心力により基板9のエッジから径方向外方へとへと飛散し、基板9上から除去される。上述のステップS13~S17中に基板9上から径方向外方へと飛散した薬液およびリンス液等の処理液は、カップ部4により受けられ、ハウジング11の外部へと排出される。乾燥処理が終了した基板9は、基板処理装置1から搬出される。基板処理装置1では、上述のステップS11~S17の処理が、複数の基板9に対して順次行われる。
【0047】
図1に例示する基板処理装置1では、上述のように、基板9の上面91に処理液(すなわち、リンス液および薬液)が供給され、基板9の下面92にガスが供給されることにより、下面92の周縁領域93の薬液処理が行われるが、基板9に対する処理は上下逆であってもよい。具体的には、基板処理装置1において、第1ノズル51および第2ノズル52が基板9の下面92に対向して配置され、第3ノズル63が基板9の上面91に対向して配置される。また、ステップS12において、基板9の下面92の中央部にガスが供給され、ステップS13~S16において、基板9の上面91の中央部にリンス液または薬液が供給される。そして、基板9の上面91の周縁領域93と内側領域94との境界に気液界面83が形成され、上面91の周縁領域93に対して薬液処理が行われる。
【0048】
以上に説明したように、上述の基板処理方法は、水平状態で保持された基板9を、上下方向を向く中心軸J1を中心として回転させる工程(ステップS11)と、回転中の基板9の上面91および下面92のうち一方の主面(例えば、下面92)の中央部にガスを供給するとともに、基板9の他方の主面(例えば、上面91)の中央部に第1流量にてリンス液を供給して上記一方の主面の周縁領域93に回り込ませることにより、当該一方の主面上においてガスとリンス液との気液界面83を形成する工程(ステップS13)と、ステップS13よりも後に、回転中の基板9の上記他方の主面の中央部に、第1流量よりも小流量の第2流量にて薬液を供給して上記一方の主面の周縁領域93に回り込ませることにより、当該一方の主面上において気液界面83まで薬液を供給して周縁領域93の薬液処理を行う工程(ステップS15)と、を備える。
【0049】
このように、周縁領域93の薬液処理の際に、基板9に供給される薬液の流量を比較的小流量(すなわち、第2流量)とすることにより、基板9から周囲へと飛散した薬液がカップ部4等にて跳ね返って基板9等に付着すること(いわゆる、液跳ね)を抑制することができる。また、周縁領域93に対する薬液処理が行われるよりも前に、比較的大流量(すなわち、第1流量)のリンス液を基板9に供給して周縁領域93の内周縁上に気液界面83を予め形成しておくことにより、薬液の流量が比較的小流量であっても、当該薬液を周縁領域93の内周縁まで全周に亘って到達させ、周縁領域93全体に付与することができる。したがって、基板9の周縁領域93の薬液処理を、薬液の液跳ねを抑制しつつ好適に行うことができる。なお、仮に、ステップS13における気液界面83の形成を行うことなく、第2流量の薬液を基板9の上面91の中央部に供給したとすると、薬液は周縁領域93の内周縁に全周に亘って到達することは難しく、当該内周縁上において気液界面83を安定的に形成することも難しい。
【0050】
上述のように、当該薬液は、リンス液に溶質(例えば、薬液原液)を溶解させたものであることが好ましい。このように、基板9の処理の際に利用されるリンス液を用いてい薬液生成を行うことにより、薬液を容易に生成することができる。また、上述の基板処理装置1における処理液供給部5の構造を簡素化することができる。さらに、薬液の溶媒が、ステップS14において基板9上に形成されているリンス液の液膜と同じ種類の液体であるため、ステップS15において、基板9上におけるリンス液から薬液への置換を容易に行うこともできる。
【0051】
上述の基板処理方法は、好ましくは、ステップS13とステップS15との間に、回転中の基板9の上記他方の主面(例えば、上面91)の中央部に、第1流量よりも小流量の第3流量にてリンス液を供給して上記一方の主面(例えば、下面92)の周縁領域93に回り込ませ、気液界面83までリンス液を供給する工程(ステップS14)をさらに備える。これにより、基板9上のリンス液の液膜を薄くすることができる。その結果、ステップS15においてリンス液が薬液により置換される際に、薬液とリンス液との混合液がカップ部4等にて跳ね返って基板9等に付着することを抑制することができる。
【0052】
上述のように、ステップS15における第2流量の薬液は、上記第3流量のリンス液に溶質を溶解させることにより生成されることが好ましい。これにより、ステップS14からステップS15に移行する際に、リンス液の流量を変更する必要がないため、基板9の処理を簡素化することができる。また、基板処理装置1において、供給制御部72による薬液供給部54の制御を簡素化することができる。
【0053】
上述の基板処理方法では、ステップS13とステップS15との間において、基板9の回転速度が低減されることが好ましい。これにより、ステップS15において、基板9上におけるリンス液から薬液への置換を容易に行うことができる。また、基板9の薬液処理の際に、薬液の液跳ねをさらに抑制することができる。上述のように、基板9の回転速度の低減が、ステップS13とステップS14との間において行われる場合、ステップS14における比較的小流量のリンス液の供給の際に、気液界面83の径方向の位置を、周縁領域93の内周縁上に容易に維持することができる。なお、基板9の回転速度の低減は、ステップS15の開始と並行して行われてもよい。この場合であっても、上記と同様に、ステップS15において、基板9上におけるリンス液から薬液への置換を容易に行うことができる。また、基板9の薬液処理の際に、薬液の液跳ねをさらに抑制することができる。
【0054】
上述の基板処理装置1は、基板保持部31と、基板回転機構33と、ガス供給部6と、リンス液供給部55と、薬液供給部54とを備える。基板保持部31は、水平状態で基板9を保持する。基板回転機構33は、上下方向を向く中心軸J1を中心として基板保持部31を回転する。ガス供給部6は、回転中の基板9の上面91および下面92のうち一方の主面(例えば、下面92)の中央部にガスを供給する。リンス液供給部55は、回転中の基板9の他方の主面(例えば、上面91)の中央部に第1流量にてリンス液を供給して上記一方の主面の周縁領域93に回り込ませることにより、当該一方の主面上においてガスとリンス液との気液界面83を形成する。薬液供給部54は、回転中の基板9の上記他方の主面の中央部に、第1流量よりも小流量の第2流量にて薬液を供給して上記一方の主面の周縁領域93に回り込ませることにより、当該一方の主面上において気液界面83まで薬液を供給して周縁領域93の薬液処理を行う。これにより、上記と同様に、基板9の周縁領域93の薬液処理を、薬液の液跳ねを抑制しつつ好適に行うことができる。
【0055】
上述の基盤処理方法および基板処理装置1では、様々な変更が可能である。
【0056】
例えば、ステップS15において、リンス液供給源551から混合部545に供給されるリンス液の流量は、必ずしもステップS14におけるリンス液の流量と同じである必要はなく、適宜変更されてよい。
【0057】
ステップS13とステップS15との間における基板9の回転速度の低減は、必ずしも行われる必要はない。例えば、ステップS13~S15における基板9の回転速度は同じであってもよい。
【0058】
ステップS14におけるリンス液の流量の低減は、必ずしも行われる必要はなく、ステップS13の終了後、ステップS14が省略されてステップS15が行われてもよい。
【0059】
基板処理装置1では、必ずしも混合部545において薬液が生成される必要はなく、予め生成された薬液を貯溜する薬液供給源から、第2ノズル52に薬液が送出されてもよい。この場合、混合部545は省略されてよい。
【0060】
基板処理装置1では、ステップS14のリンス液吐出は、第1ノズル51により行われてもよい。また、ステップS13~S14のリンス液吐出、および、ステップS15の薬液吐出は、同一のノズルにより行われてもよい。
【0061】
上述の基板処理装置1は、半導体基板以外に、液晶表示装置または有機EL(Electro Luminescence)表示装置等の平面表示装置(Flat Panel Display)に使用されるガラス基板、あるいは、他の表示装置に使用されるガラス基板の処理に利用されてもよい。また、上述の基板処理装置1は、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板および太陽電池用基板等の処理に利用されてもよい。
【0062】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0063】
1 基板処理装置
6 ガス供給部
9 基板
31 基板保持部
33 基板回転機構
54 薬液供給部
55 リンス液供給部
81 リンス液
82 気流
83 気液界面
84 薬液
91 上面
92 下面
93 周縁領域
545 混合部
J1 中心軸
S11~S17 ステップ