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特許7201500車両用装飾部品、2色成形金型及び2色射出成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】車両用装飾部品、2色成形金型及び2色射出成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/37 20060101AFI20221227BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20221227BHJP
   B60R 19/52 20060101ALN20221227BHJP
   B60R 13/04 20060101ALN20221227BHJP
【FI】
B29C45/37
B29C45/16
B60R19/52 K
B60R13/04 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019054787
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2020152049
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高岡 哲也
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-046166(JP,A)
【文献】特開平06-134805(JP,A)
【文献】特開2003-205793(JP,A)
【文献】特開2006-150852(JP,A)
【文献】特開平10-116044(JP,A)
【文献】特開2000-117778(JP,A)
【文献】特開2019-001109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の基材(3)と、当該基材(3)の表側に一体に設けられた装飾部材(15)とを備えた車両用装飾部品であって、
上記基材(3)には、表裏方向に貫通する貫通部(11)が形成され、
上記基材(3)は、上記貫通部(11)を囲む枠部(9)を備え、
上記装飾部材(15)は、上記基材(3)を形成する第1樹脂材(R1)とは色及び材質の少なくとも一方が異なり、かつ扁平形状の粒子を含有する顔料で着色された第2樹脂材(R2)で上記貫通部(11)を表側から覆うように二色成形により上記基材(3)と一体に形成され、
上記枠部(9)の表面全体が、上記装飾部材(15)の裏面の外周端部に当接し、
上記装飾部材(15)の裏面における露出領域(RE1)には、先細形状の突出部(15g)が突設され、当該突出部(15g)の先端面には、ゲート跡(15b)が形成され
上記装飾部材(15)の突出部(15g)の外周面が、上記枠部(9)に接していることを特徴とする車両用装飾部品。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用装飾部品において、
上記基材(3)は、上記貫通部(11)を囲む枠部(9)を備え、
上記枠部(9)の表面全体が、上記装飾部材(15)の裏面の外周端部に当接し、
上記装飾部材(15)の表面の外周端部を除く領域は、略平坦に形成された平坦部(15e)を構成している一方、上記装飾部材(15)の表面の外周端部は、上記平坦部(15e)と段差なく連続して外側程裏側に位置するよう凸状に湾曲する曲面部(15f)を構成し、
上記突出部(15g)の少なくとも一部が、上記曲面部(15f)と表裏方向に重なっていることを特徴とする車両用装飾部品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用装飾部品において、
上記基材(3)は、上記貫通部(11)を囲む複数の枠部(9)と、当該複数の枠部(9)を互いに連結する連結部(13)とを備え、
上記装飾部材(15)は、各枠部(9)の表面に形成されていることを特徴とする車両用装飾部品。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用装飾部品において、
上記基材(3)の枠部(9)の内周面には、裏側に向かって徐々に細くなる外周側に凹む凹陥部(9b)が形成され、
上記装飾部材(15)の突出部(15g)は、上記基材(3)の凹陥部(9b)に嵌合していることを特徴とする車両用装飾部品。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の車両用装飾部品を成形する2色成形金型であって、
上記基材(3)の裏面及び上記装飾部材(15)の裏面を成形する成形面(211)を有し、当該成形面(211)には、上記貫通部(11)を成形する凸部(212)が突設され、かつ当該成形面(211)における上記装飾部材(15)の突出部(15g)の先端面に対応する領域には、装飾部材成形用ゲート(215)が形成されたコア型(210)と、
上記基材(3)の表面及び端面を成形する成形面(222)を有する第1キャビティ型(220)と、
上記装飾部材(15)の表面及び端面を成形する成形面(233)を有する第2キャビティ型(230)とを備え、
上記第1キャビティ型(220)は、当該第1キャビティ型(220)の成形面に上記コア型(210)の凸部(212)の先端面を当接させた状態で、上記コア型(210)と共に上記基材(3)成形用の第1キャビティ(C1)を形成し、
上記第2キャビティ型(230)は、上記第1キャビティ(220)で成形されて上記コア型(210)に保持された基材(3)及び上記コア型(210)と共に上記装飾部材(15)成形用の第2キャビティ(C2)を形成するように構成されていることを特徴とする車両用装飾部品の2色成形金型。
【請求項6】
請求項5に記載の2色成形金型を用いて車両用装飾部品を成形する2色射出成形方法であって、
上記2色成形金型(200)を用意し、
上記コア型(210)と第1キャビティ型(220)とを型締めして両者間に上記第1キャビティ(C1)を形成し、当該第1キャビティ(C1)内に上記第1樹脂材(R1)を射出充填することにより、上記基材(3)を成形し、
その後、上記コア型(210)に上記基材(3)が保持された状態で、上記コア型(210)と上記第2キャビティ型(230)とを型締めして、上記基材(3)及び上記コア型(210)と上記第2キャビティ型(230)との間に第2キャビティ(C2)を形成し、当該第2キャビティ(C2)内に上記装飾部材成形用ゲート(215)から上記第2樹脂材(R2)を射出充填することにより、上記装飾部材(15)を成形することを特徴とする車両用装飾部品の2色射出成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製の基材と、当該基材の表側に一体に設けられた装飾部材とを備えた車両用装飾部品、その2色成形金型及び該金型を用いた2色射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、樹脂製の基材と、当該基材の表側に一体に設けられた装飾部材からなる車両用装飾部品として、基材にボス孔を設けるとともに、装飾部材にピンを設け、基材のボス孔に装飾部材のピンを係合させたものが開示されている。この車両用装飾部品は、基材のボス孔に装飾部材のピンを係合させるだけで基材に装飾を施すことができ、マスキング作業及びマスキング除去作業が不要なので、光輝処理や着色処理により基材に装飾を施す場合に比べ、製造が容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-163124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、装飾部材の製造後、装飾部材のピンを基材のボス孔に係合させる組付作業が必要なので、製造コストの高騰を招く。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両用装飾部品の製造コストを削減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、装飾部材を基材に二色成形により一体に形成したことを特徴とする。
【0007】
具体的には、第1の発明は、樹脂製の基材と、当該基材の表側に一体に設けられた装飾部材とを備えた車両用装飾部品を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明は、上記基材には、表裏方向に貫通する貫通部が形成され、上記基材は、上記貫通部を囲む枠部を備え、上記装飾部材は、上記基材を形成する第1樹脂材とは色及び材質の少なくとも一方が異なり、かつ扁平形状の粒子を含有する顔料で着色された第2樹脂材で上記貫通部を表側から覆うように二色成形により上記基材と一体に形成され、上記枠部の表面全体が、上記装飾部材の裏面の外周端部に当接し、上記装飾部材の裏面における露出領域には、先細形状の突出部が突設され、当該突出部の先端面には、ゲート跡が形成され、上記装飾部材の突出部の外周面が、上記枠部に接していることを特徴とする
【0009】
第2の発明は、第1の発明の車両用装飾部品において、上記基材は、上記貫通部を囲む枠部を備え、上記枠部の表面全体が、上記装飾部材の裏面の外周端部に当接し、上記装飾部材の表面の外周端部を除く領域は、略平坦に形成された平坦部を構成している一方、上記装飾部材の表面の外周端部は、上記平坦部と段差なく連続して外側程裏側に位置するよう凸状に湾曲する曲面部を構成し、上記突出部の少なくとも一部が、上記曲面部と表裏方向に重なっていることを特徴とする。
【0010】
の発明は、第1又はの発明の車両用装飾部品において、上記基材は、上記貫通部を囲む複数の枠部と、当該複数の枠部を互いに連結する連結部とを備え、上記装飾部材は、各枠部の表面に形成されていることを特徴とする。
【0011】
第4の発明は、第1~第3の発明のいずれか1つの車両用装飾部品において、上記基材の枠部の内周面には、裏側に向かって徐々に細くなる外周側に凹む凹陥部が形成され、上記装飾部材の突出部は、上記基材の凹陥部に嵌合していることを特徴とする。
【0012】
第5の発明は、第1~第4の発明のいずれか1つの車両用装飾部品を成形する2色成形金型であって、上記基材の裏面及び上記装飾部材の裏面を成形する成形面を有し、当該成形面には、上記貫通部を成形する凸部が突設され、かつ当該成形面における上記装飾部材の突出部の先端面に対応する領域には、装飾部材成形用ゲートが形成されたコア型と、上記基材の表面及び端面を成形する成形面を有する第1キャビティ型と、上記装飾部材の表面及び端面を成形する成形面を有する第2キャビティ型とを備え、上記第1キャビティ型は、当該第1キャビティ型の成形面に上記コア型の凸部の先端面を当接させた状態で、上記コア型と共に上記基材成形用の第1キャビティを形成し、上記第2キャビティ型は、上記第1キャビティで成形されて上記コア型に保持された基材及び上記コア型と共に上記装飾部材成形用の第2キャビティを形成するように構成されていることを特徴とする。
【0013】
第6の発明は、第5の発明の2色成形金型を用いて車両用装飾部品を成形する2色射出成形方法であって、上記2色成形金型を用意し、上記コア型と第1キャビティ型とを型締めして両者間に上記第1キャビティを形成し、当該第1キャビティ内に第1樹脂材を射出充填することにより、上記基材を成形し、その後、上記コア型に上記基材が保持された状態で、上記コア型と上記第2キャビティ型とを型締めして、上記基材及び上記コア型と上記第2キャビティ型との間に第2キャビティを形成し、当該第2キャビティ内に上記装飾部材成形用ゲートから第2樹脂材を射出充填することにより、上記装飾部材を成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1~6の発明によれば、装飾部材が二色成形により基材と一体に形成され、装飾部材を基材に組み付ける工程が不要となり、製造工数が少なくなるので、製造コストを削減できる。
【0015】
また、装飾部材のゲート跡が装飾部材の裏側に形成され、表側から見えないので、車両用装飾部品の外観見栄えを向上できる。
【0016】
また、装飾部材成形用ゲートから射出された樹脂が、キャビティ内における装飾部材の表面に対応する箇所に達するまでに突出部対応箇所を通過してその速度を落とすので、装飾部材の表面にジェッティングが発生しにくい。また、キャビティ内におけるゲート対向箇所の樹脂圧や樹脂温度が高まることによって装飾部材の表面に色むらが生じるのを抑制できる。したがって、ジェッティング及び色むらの発生による車両用装飾部品の見栄えの悪化を防止できる。
【0017】
また、突出部が装飾部材の外周端部近傍に形成されているので、装飾部材成形用のゲートから射出された樹脂が、装飾部材成形用のキャビティにその外周端部近傍から流入する。したがって、装飾部材成形用のキャビティにおける装飾部材表面の中央に対応する箇所から樹脂を流入させる場合に比べ、装飾部材表面における粒子の配向をより均一にでき、装飾部材の表面の外観見栄えを向上できる。
【0018】
の発明によれば、装飾部材の突出部の突出高さを高くすることに起因して主壁部の表面に生じるヒケが、曲面部の表面又は近傍に位置して目立ちにくいので、ヒケによる車両用装飾部品の見栄えの悪化を抑制できる。
【0019】
の発明によれば、複数の枠部と連結部とが一体に形成され、複数の枠部と連結部とを組み付ける手間が必要ないので、製造コストを削減できる。
【0020】
また、各装飾部材の裏面を成形する成形面にゲートが形成されるので、複数の装飾部材をランナーで互いに連結しなくてよく、当該ランナーを切り離す工程が不要となる。したがって、製造工数及び製造コストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態1に係る車両用装飾部品としてのバンパーグリルの車両右側端部の正面図である。
図2図1のII部拡大図である。
図3図2のIII-III線における断面図である。
図4図2のIV-IV線における断面図である。
図5】本発明の実施形態1に係る成形方法において、第1キャビティ内に第1樹脂材を射出充填した第1樹脂材充填工程を示す成形工程図である。
図6】第1樹脂材充填工程における図3対応図である。
図7】第1樹脂材充填工程における図4対応図である。
図8】コア型と第1キャビティ型とを型開きした型開き工程における図6相当図である。
図9】型開き工程における図7相当図である。
図10】基材をコア型に保持した状態で、第2キャビティ型をコア型に対向させたキャビティ型交換工程における図5相当図である。
図11】キャビティ型交換工程における図6相当図である。
図12】キャビティ型交換工程における図7相当図である。
図13】第2キャビティ内に第2樹脂材を射出充填した第2樹脂材充填工程における図5相当図である。
図14】第2樹脂材充填工程における図6相当図である。
図15】第2樹脂材充填工程における図7相当図である。
図16】スプルーに残留して固化した残留部を装飾部材から切り離す工程における図5相当図である。
図17】コア型と第2キャビティ型とを型開きした工程における図5相当図である。
図18】実施形態2の図3相当図である。
図19図18のXIX-XIX線における断面図である。
図20図18のXX-XX線における断面図である。
図21】実施形態2の図6相当図である。
図22】第1樹脂材充填工程における図20対応図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0023】
(実施形態1)
図1~4は、本発明の実施形態1に係る車両用装飾部品としてのバンパーグリル1を示す。このバンパーグリル1は、自動車のフロントバンパー(図示せず)のバンパーフェース(図示せず)に形成された外気導入用開口部(図示せず)にその表面を前方に向けた状態で配設される。
【0024】
このバンパーグリル1は、樹脂製の略板状の基材3を備えている。当該基材3は、黒色の第1樹脂材R1からなり、第1樹脂材R1としては、AAS(アクリロニトリル-アクリル-スチレン共重合体)樹脂が用いられる。当該基材3は、車体下側に向かって徐々に幅狭となる略台形状に形成された板状のメッシュ部5と、該メッシュ部5を囲むように該メッシュ部5と一体に形成された平面視略台形状の環状の外枠部7とを有している。上記メッシュ部5は、その内側空間を表裏方向に開放させ、メッシュ部5の面に沿う方向に互いに間隔を空けて形成された複数の枠部としての筒状部9を備えている。筒状部9の断面は、上下方向に長い矩形状をなしている。該筒状部9の内側空間は、筒状部9に囲まれ、かつ表裏方向に貫通する貫通部11を構成している。各筒状部9の表面の外周端部には、断面矩形状で表側に突出する凸条部9aが全周に亘って突設されている。凸条部9aの断面は、突出方向に長い長方形状をなしている。凸条部9a先端の幅THは、0.3~1.0mmに設定されている。これら筒状部9は、メッシュ部5の面に沿う方向に延びる長尺状の連結部13により互いに一体に連結されている。当該連結部13の端部は、筒状部9の左右両側の外周面の上端部近傍及び下端部近傍に、筒状部9の裏側端部から表裏方向中途部に亘って連結されている。
【0025】
上記基材3の各筒状部9の表面には、板面を表裏方向に向けた矩形長板状の主壁部15aを有する装飾部材15が上記主壁部15aで上記貫通部11全体を表側から覆うように二色成形により一体に形成されている。当該装飾部材15は、第2樹脂材R2からなり、第2樹脂材R2としては、AAS樹脂が用いられる。第2樹脂材R1は、マイカ(雲母)、アルミニウムフィラー等、扁平形状の粒子を含有する顔料で着色されている。上記主壁部15aの裏面の外周端部には、上記基材3の筒状部9の表面(表側端面)全体が当接している。主壁部15aの表面の外周端部を除く領域は、略平坦に形成された平坦部15eを構成している一方、上記主壁部15aの表面の外周端部は、上記平坦部15eと段差なく連続して外側程裏側に位置するよう凸状に湾曲する曲面部15fを構成している。上記主壁部15aの裏面における筒状部9よりも内側の領域には、先細形状の突出部15gが突設されている。つまり、突出部15gは、装飾部材15の裏面における露出領域RE1に突設されている。突出部15gは、主壁部15aの裏面における車体上下方向中央よりも若干上側でかつ車幅方向中央に位置している。突出部15gの先端面には、後述する装飾部材成形用ゲート215に対応するゲート跡15bが形成されている。突出部15gの先端は、基材3の筒状部9の裏側端部よりも表側に位置している。上記主壁部15aの外周部には、環状の周壁部15cが全周に亘って裏側に向かって突設されている。当該周壁部15cの先端面(裏面)の外周端部には、表側に凹む凹条部15dが全周に亘って形成されている。当該凹条部15dには、上記基材3の凸条部9aが接合し、当該凸条部9aの外周面と、凹条部15dよりも表側の装飾部材15の外周面とが、全周に亘って面一をなしている。
【0026】
図5~17は、本発明の実施形態1に係る車両用装飾部品の2色射出成形方法として、上述のように構成されたバンパーグリル1の2色射出成形方法を示す。
【0027】
製造に際し、図5図10図13図16、及び図17に示すような射出成形装置100を用意する。射出成形装置100は2色成形金型200を備えている。この射出成形装置100は、基材3と装飾部材15とを共通の2色成形金型200によって成形できるように構成された、いわゆるダイスライドタイプの装置である。
【0028】
2色成形金型200は、コア型210、第1キャビティ型220、及び第2キャビティ型230を備えている。上記コア型210には、引っ張りリンク240を介してストリッパープレート250が後側から上記コア型210に対して前後方向に接離可能に取り付けられている。コア型210は、固定側取付板260に取り付けられ、第1キャビティ型220、及び第2キャビティ型230は、可動側取付板270に取り付けられている。
【0029】
コア型210は、基材3の裏面及び装飾部材15の裏面を成形する成形面211を有する。当該成形面211には、図6図7図8図9図11図12図14、及び図15にも示すように、上記基材3の貫通部11を成形するための略四角柱状の複数の凸部212がその長手方向を共通の方向に向けて互いに間隔を空けて突設されている。また、成形面211の基材3の外枠部7に対応する領域には、基材3成形用の複数の基材成形用ゲート213が形成されている。当該基材成形用ゲート213は、基材成形用ランナー214の一端に形成され、基材成形用ランナー214の他端は、基材成形用スプルー(図示せず)を介して当該基材成形用射出機(図示せず)のノズル(図示せず)に連通している。当該基材成形用射出機(図示せず)のノズル(図示せず)は、コア型210の外周側に配設されている。また、各凸部212の先端面には、上記突出部15gを成形するための突出部成形用凹部218が形成されている。当該突出部成形用凹部218の底面、すなわち装飾部材15の突出部15gの先端面に対応する領域には、装飾部材15成形用の装飾部材成形用ゲート215が形成されている。該装飾部材成形用ゲート215は、装飾部材成形用ランナー216の一端に形成され、該装飾部材成形用ランナー216の他端は装飾部材成形用スプルー217の一端に連通し、該装飾部材成形用スプルー217の他端は装飾部材成形用射出機(図示せず)のノズル(図示せず)に連通している。当該装飾部材成形用射出機(図示せず)のノズル(図示せず)は、固定側取付板260の後側に配設されている。
【0030】
第1キャビティ型220には、第1凹所221が形成され、該第1凹所221の内面が、上記基材3の表面及び端面を成形する成形面222を構成している。第1凹所221は、上記基材3の筒状部9を成形するための複数の第1凹部223を有し、第1凹部223の底面の外周端部には、図6~9にも示すように、上記基材3の凸条部9aを成形するための凹溝部224が全周に亘って形成されている。各第1凹部223は、上記基材3の連結部13を成形するための複数の第1溝部225と連続している。
【0031】
第2キャビティ型230は、成形された基材3とコア型210の凸部212とを収容可能な第2凹所231を有している。第2凹所231は、成形された基材3の筒状部9とコア型210の凸部212とを収容可能な複数の第2凹部232を有し、当該第2凹部232の底面と内周面の反開放側端部とが、上記装飾部材15の表面及び外周面(端面)を成形する成形面233を構成している。また、各第2凹部232は、上記基材3の連結部13を収容可能な第2溝部234と連続している。
【0032】
上記第1キャビティ型220と第2キャビティ型230は、図示しない型駆動装置によって両キャビティ型220の隣接方向に駆動される。
【0033】
そして、図5~7に示すように、コア型210と第1キャビティ型220とを型締めして両者間に第1キャビティC1を形成する。この状態で、第1キャビティ型220の第1凹部223の底面にコア型210の凸部212の先端面が当接する。そして、この状態で、第1樹脂材R1を基材成形用射出機(図示せず)のノズル(図示せず)から射出することにより、第1樹脂材R1を基材成形用スプルー(図示せず)及び基材成形用ランナー214を経て基材成形用ゲート213から第1キャビティC1内に射出充填する。これにより、コア型210の凸部212に対応する貫通部11が各筒状部9の内側に形成された基材3が成形される。
【0034】
次に、図8及び図9に示すように、第1キャビティ型220を後退させてコア型210と第1キャビティ型220とを型開きする。このとき、成形された基材3は、コア型210に保持されており、コア型210の凸部212が筒状部9の貫通部11に嵌合することで、基材3のコア型210からの落下が防止されている。
【0035】
次に、第1キャビティ型220と第2キャビティ型230とを図示しない型駆動装置の駆動により両キャビティ型220,230の隣接方向に移動させることにより、図10~12に示すように、第2キャビティ型230をコア型210に対向させ、第2キャビティ型230を進出させてコア型210に接近させる。図10中、両キャビティ型220,230の移動方向を矢印Xで示す。
【0036】
その後、図13~15に示すように、コア型210に基材3が保持された状態で、さらに第2キャビティ型230を進出させてコア型210と第2キャビティ型230とを型締めして基材3及びコア型210と第2キャビティ型230との間に第2キャビティC2を形成する。また、第2キャビティC2形成状態で、第2キャビティ型230の第2凹部232に基材3の筒状部9とコア型210の凸部212とが収容されるとともに、第2キャビティ型230の第2凹部232の底面とコア型210の凸部212の先端面とが離間している。また、第2キャビティ型230の第2凹部232の内周面に、基材3の凸条部9aの先端の外周側の角部が全周に亘って当接する。また、基材3の収縮により、第2キャビティ型230の第2凹部232の内周面と基材3の筒状部9の外周面との間に全周に亘って微小な隙間(図示せず)が形成される。また、基材3の筒状部9の表面における凸条部9a非形成領域は、コア型210の凸部212の先端面よりも凸部212の基端側に位置している。そして、この第2キャビティC2形成状態で、第2樹脂材R2を装飾部材成形用スプルー217及び装飾部材成形用ランナー216を経て装飾部材成形用ゲート215から第2キャビティC2内に射出充填することにより、先端面にゲート跡15bが形成された突出部15gを有する装飾部材15を成形する。このとき、装飾部材成形用ゲート215から射出された第2樹脂材R2が、第2キャビティC2内における装飾部材15の表面に対応する箇所に達するまでに突出部成形用凹部218を通過してその速度を落とすので、装飾部材15の表面にジェッティングが発生しにくい。また、第2キャビティC2内における装飾部材成形用ゲート215に対向する箇所の樹脂圧や樹脂温度が高まることによって装飾部材15の表面に色むらが生じるのを抑制できる。したがって、ジェッティング及び色むらの発生によるバンパーグリル1の見栄えの悪化を防止できる。また、このとき、第2キャビティC2を形成した状態で、基材3の凸条部9aの先端が第2キャビティ型230の第2凹部232の内周面に当接して、第2樹脂材R2が第2キャビティ型230の第2凹部232の内周面と基材3の筒状部9の外周面との隙間(図示せず)に流れ込むのを規制するので、基材3の筒状部9の外周面上に装飾部材15のバリが発生するのが抑制され、基材3と装飾部材15との境界周りの見栄えが向上する。また、装飾部材15の成形時(第2樹脂材R2の射出充填時)の第2樹脂材R2の樹脂温度は、第1樹脂材R1の溶融温度以下に設定される。これにより、基材3の凸条部9aが溶融して第2樹脂材R2と混ざるのが抑制されるので、基材3と装飾部材15との境界周りの見栄えが向上する。また、このとき、成形された装飾部材15には、装飾部材成形用スプルー217に残留して固化した残留部17が付着している。
【0037】
その後、図16に示すように、ストリッパープレート250を後退させて残留部17を装飾部材15から切り離し、図17に示すように、第2キャビティ型230を後退させてコア型210と第2キャビティ型230とを型開きして、基材3の表面に複数の装飾部材15が一体に形成されたバンパーグリル1を取り出す。
【0038】
したがって、本実施形態1によると、装飾部材15が二色成形により基材3と一体に形成され、装飾部材15を基材3に組み付ける工程が不要となり、製造工数が少なくなるので、製造コストを削減できる。
【0039】
また、装飾部材15のゲート跡15bが装飾部材15の裏側に形成され、表側から見えないので、バンパーグリル1の外観見栄えを向上できる。
【0040】
また、複数の筒状部9と連結部13とが一体に形成され、複数の筒状部9と連結部13とを組み付ける手間が必要ないので、製造コストを削減できる。
【0041】
また、各装飾部材15の裏面を成形する成形面211に装飾部材成形用ゲート215が形成されるので、複数の装飾部材15をランナーで互いに連結しなくてよく、当該ランナーを切り離す工程が不要となる。したがって、製造工数及び製造コストを削減でき、切り離したランナー痕によって見栄えを損ねることがない。
【0042】
また、装飾部材15の突出部15gが、その突出高さ全体に亘って基材3の筒状部9に囲まれて筒状部9の外周側に露出しないので、バンパーグリル1の外周側からの見栄えを向上できる。
【0043】
(実施形態2)
図18~20は、本発明の実施形態2に係る車両用装飾部品としてのバンパーグリル1を示す。本実施形態2では、基材3の筒状部9の下端部の内周面における車幅方向中央に、外周側に凹む凹陥部9bが形成されている。凹陥部9bは、装飾部材15の突出部15gと対応する形状をなし、裏側に向かって徐々に細くなっている。また、装飾部材15の突出部15gが、主壁部15aの裏面における下端縁(主壁部15aの長手方向一端縁)近傍の車幅方向中央部に位置し、基材3の凹陥部9bに嵌合している。したがって、突出部15gの外周面が、基材3の筒状部9の凹陥部9bの内面(筒状部9の内周面)に接している。突出部15gの先端面におけるゲート跡15bを除く領域は、基材3の筒状部9の裏側端面と面一をなしている。また、突出部15gの下側部分は、装飾部材15の曲面部15fと表裏方向に重なっている。
【0044】
図21は、実施形態2の図6相当図である。本実施形態2では、装飾部材成形用ゲート215が、コア型210の各凸部212に外周側から近接する箇所に形成されている。また、図22にも示すように、第1キャビティ型220の第1凹部223の底面に、上記凹陥部9bを成形するための凸状部226が突設されている。そして、第1キャビティC1を形成した状態で、第1キャビティ型220の凸状部226が、コア型210の装飾部材成形用ゲート215を塞ぐとともにコア型210の凸部212の外周面に当接する。また、第2キャビティC2を形成した状態で、コア型210の凸部212の外周面とコア型210に保持された基材3との間に、上記凸状部226に対応する空間部(図示せず)が形成されて第2キャビティC2における突出部15g対応箇所を構成する。
【0045】
その他のバンパーグリル1及び射出成形装置100の構成、及びバンパーグリル1の2色射出成形方法は、実施形態1と同じであるので、同一の構成箇所には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0046】
したがって、本実施形態2によると、突出部15gが装飾部材15の外周端部近傍に形成されているので、装飾部材成形用ゲート215から射出された第2樹脂材R2が、第2キャビティC2の主壁部15a対応箇所にその外周端部近傍から流入する。したがって、第2キャビティC2における主壁部15a対応箇所の中央から第2樹脂材R2を流入させる場合に比べ、装飾部材15表面における粒子の配向をより均一にでき、装飾部材15の表面の外観見栄えを向上できる。
【0047】
また、装飾部材15の主壁部15aの長手方向一方の端部近傍に突出部15gを配置したので、主壁部15aの幅方向一方の端部近傍に突出部15gを配置した場合に比べ、第2キャビティC2内の主壁部15a対応箇所における第2樹脂材R2の流れの乱れをより効果的に抑制し、主壁部15a表面における粒子の配向をより均一にできる。したがって、装飾部材15の表面の外観見栄えを向上できる。
【0048】
また、装飾部材15の突出部15gの突出高さを高くすることに起因して主壁部15aの表面に生じるヒケが、曲面部15fの表面又は近傍に位置して目立ちにくいので、ヒケによるバンパーグリル1の見栄えの悪化を抑制できる。
【0049】
また、装飾部材15の突出部15gの先端面におけるゲート跡15bを除く領域が、基材3の筒状部9の裏側端面と面一をなして筒状部9よりも裏側に突出していないので、バンパーグリル1の外周側からの見栄えを向上できる。
【0050】
なお、上記実施形態1,2では、第1樹脂材R1及び第2樹脂材R2の材質を、AAS樹脂としたが、第1樹脂材R1として、バイオポリカーボネート等、AAS樹脂以外の樹脂材を用いてもよい。また、第2樹脂材R2として、バイオポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリカーボネート等、AAS樹脂以外の樹脂材を用いてもよい。
【0051】
また、上記実施形態1,2では、第2樹脂材R2として、基材3を構成する第1樹脂材R1と色が異なり、かつ材質が共通する樹脂材を用いたが、第1樹脂材R1と色及び材質の両方が異なる樹脂材を用いてもよいし、色が共通し、材質だけが異なる樹脂材を用いてもよい。
【0052】
また、上記実施形態1,2では、装飾部材15の表面にメッキを施さなかったが、施すようにしてもよい。装飾部材15の表面にメッキを施す場合には、第1樹脂材R1としてPP(ポリプロピレン)、第2樹脂材R2としてABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂を用いることにより、装飾部材15にメッキを付着しやすくするとともに、基材3にメッキが付着するのを抑制できる。
【0053】
また、上記実施形態1,2では、略矩形筒状の筒状部9を枠部としたが、枠部を、貫通部11としての開口部を有する環状の平板等、他の形状としてもよい。
【0054】
また、上記実施形態1,2では、貫通部11が基材3で周方向全体から囲まれていたが、貫通部11の周方向一部が基材3の面方向に開放するようにしてもよい。
【0055】
また、上記実施形態1,2では、基材成形用射出機(図示せず)のノズル(図示せず)をコア型210の外周側に配設し、装飾部材成形用射出機(図示せず)のノズル(図示せず)を固定側取付板260の後側に配設したが、その逆で、基材成形用射出機(図示せず)のノズル(図示せず)を固定側取付板260の後側に配設し、装飾部材成形用射出機(図示せず)のノズル(図示せず)をコア型210の外周側に配設するようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態1,2では、本発明をバンパーグリル1に適用したが、本発明は、車両用の加飾パネル等、バンパーグリル以外の車両用装飾部品にも適用できる。
【0057】
また、上記実施形態1では、装飾部材15の突出部15gの先端を、基材3の筒状部9の裏側端部よりも表側に配置したが、筒状部9の裏側端部よりも裏側に配置してもよい。
【0058】
また、上記実施形態2では、突出部15gの先端面におけるゲート跡15bを除く領域を、基材3の筒状部9の裏側端面と面一をなすように配置したが、筒状部9の裏側端面よりも裏側に配置してもよい。
【0059】
また、上記実施形態2では、装飾部材15の主壁部15aの長手方向一方の端部近傍に突出部15gを配置したが、主壁部15aの幅方向一方(車幅方向一方)の端部近傍に突出部15gを配置してもよい。
【0060】
また、上記実施形態2では、突出部15gの下側部分だけを、装飾部材15の曲面部15fと表裏方向に重ねたが、突出部15g全体を、装飾部材15の曲面部15fと表裏方向に重ねてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、樹脂製の基材と、当該基材の表側に一体に設けられた装飾部材とを備えた車両用装飾部品、その2色成形金型及び該金型を用いた2色射出成形方法として有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 バンパーグリル(車両用装飾部品)
3 基材
9 筒状部(枠部)
11 貫通部
13 連結部
15 装飾部材
15b ゲート跡
15g 突出部
200 2色成形金型
210 コア型
211 成形面
212 凸部
215 装飾部材成形用ゲート
220 第1キャビティ型
222 成形面
230 第2キャビティ型
233 成形面
RE1 露出領域
C1 第1キャビティ
R1 第1樹脂材
C2 第2キャビティ
R2 第2樹脂材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22