(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】コーティング装置
(51)【国際特許分類】
B41F 27/12 20060101AFI20221227BHJP
B41F 7/02 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
B41F27/12 D
B41F7/02 414
(21)【出願番号】P 2019070309
(22)【出願日】2019-04-02
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】714000460
【氏名又は名称】リョービMHIグラフィックテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】藤本 泰之
(72)【発明者】
【氏名】甲賀 達也
(72)【発明者】
【氏名】細川 拓也
(72)【発明者】
【氏名】松岡 洋矢
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-181927(JP,A)
【文献】特開2005-41090(JP,A)
【文献】特開2008-201120(JP,A)
【文献】特開平06-328668(JP,A)
【文献】特開平11-254645(JP,A)
【文献】特開2001-277472(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0347106(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 27/12
B41F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被コーティング材にコーティングするニスが供給されるニス版が巻き付けられるニス胴と、被コーティング材に前記ニス版のニスを転写すべく前記ニス胴に対向配置されるニス圧胴と、を備え、
前記ニス胴は、前記ニス版を周面に巻き付けるために該ニス版の一端部を保持するニス版用保持部と、該ニス版の厚みに応じて該ニス版と該ニス胴との間に厚み調整用のシート部材を介在すべく該シート部材の一端部を保持するシート部材用保持部と、を備え、
前記ニス胴に接近して配置され、前記シート部材を前記シート部材用保持部へ案内するシート部材用案内部を備えていることを特徴とするコーティング装置。
【請求項2】
前記シート部材用案内部が、前記シート部材の前記シート部材用保持部へ向かう方向への移動に対して抵抗力を付与する抵抗力付与部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のコーティング装置。
【請求項3】
前記ニス胴へ送られる前記ニス版を前記ニス版用保持部へ案内するニス版用案内部を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコーティング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被コーティング材にニスをコーティングするためのコーティング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
かかるコーティング装置は、被コーティング材、例えば印刷物の印刷面にコーティングするニスが供給されるニス胴と、印刷物を搬送し該搬送する印刷物に前記ニス胴のニスを押し付けるためのニス圧胴と、を備えている。
【0003】
前記ニス胴には、ニスをコーティングするためのニス版が人手により装着されることになる。近年、印刷物の小ロット化や多様化により、ニス版交換の頻度も多くなるだけでなく、厚みの異なるニス版を選んで交換することがある。その交換時にニス版の厚みが変わると、ニス圧胴とニス胴のニス版との間の距離が変化してしまい、ニス胴の印刷物へのニス圧胴からの押し付け力が変化してしまう。そこで、ニス版とニス胴との間に厚み調整用のシート部材を人手により装着することで、ニス圧胴とニス胴のニス版との間の距離を予め決められている設定距離に合わせるようにしている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1では、シート部材及びニス版の交換作業を人手により行う構成であるが、作業性を高めるような対策が何ら取られていないため、作業性の早期改善が望まれている。
【0006】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、シート部材及びニス版の交換の作業性の向上を図ることができるコーティング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るコーティング装置は、被コーティング材にコーティングするニスが供給されるニス版が巻き付けられるニス胴と、被コーティング材に前記ニス版のニスを転写すべく前記ニス胴に対向配置されるニス圧胴と、を備え、前記ニス胴は、前記ニス版を周面に巻き付けるために該ニス版の一端部を保持するニス版用保持部と、該ニス版の厚みに応じて該ニス版と該ニス胴との間に厚み調整用のシート部材を介在すべく該シート部材の一端部を保持するシート部材用保持部と、を備え、前記ニス胴に接近して配置され、前記シート部材を前記シート部材用保持部へ案内するシート部材用案内部を備えていることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、シート部材用案内部によりシート部材を所定の案内経路を通して案内しつつニス胴のシート部材用保持部へ送ることができる。これにより、シート部材の一端部をニス胴のシート部材用保持部に迅速に保持させることができる。したがって、シート部材及びニス版の交換の作業性の向上を図ることができる。
【0009】
また、本発明に係るコーティング装置は、前記シート部材用案内部が、前記シート部材の前記シート部材用保持部へ向かう方向への移動に対して抵抗力を付与する抵抗力付与部を備えていてもよい。
【0010】
上記構成によれば、抵抗力付与部の抵抗力によりシート部材を張りながらニス胴へ案内することができる。
【0011】
また、本発明に係るコーティング装置は、前記ニス胴へ送られる前記ニス版を前記ニス版用保持部へ案内するニス版用案内部を備えていてもよい。
【0012】
上記構成によれば、ニス版用案内部によりニス版を案内しつつニス胴のニス版用保持部へ送ることができる。これにより、ニス版の一端部をニス胴のニス版用保持部に迅速に保持させることができる。したがって、シート部材及びニス版の交換の作業性の向上をより一層図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シート部材用案内部を設けることによって、シート部材及びニス版の交換の作業性の向上を図ることができるコーティング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】本発明のコーティング装置の内部構造を示す側面図である。
【
図3】同コーティング装置の正面図で、下側カバーを閉じた図である。
【
図4】同コーティング装置の内部構造の上側部分を示す側面図で、下側カバーを開放状態にするとともに挟持ローラを解除姿勢にした図である。
【
図5】同コーティング装置の正面図で、下側カバーを開放した図である。
【
図6】同コーティング装置の内部構造の上側部分を示す側面図で、下側カバーを開放状態にするとともに挟持ローラを付与姿勢にした図である。
【
図7】同コーティング装置の内部構造の上側部分を示す側面図で、下側カバーを開放状態にするとともに挟持ローラを付与姿勢にし、シート部材の一端部をシート部材用保持部に保持させた図である。
【
図8】同コーティング装置の内部構造の上側部分を示す側面図であり、下側カバーを開放状態にするとともに挟持ローラを付与姿勢にし、
図7の状態からニス版の一端部を第1ニス版用保持部に保持させた図である。
【
図9】同コーティング装置の内部構造の上側部分を示す側面図であり、
図8の状態から下側カバーを閉じた図である。
【
図10】同コーティング装置の内部構造の上側部分を示す側面図であり、ニス版用案内部を上方へ跳ね上げた図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の印刷機を、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1に、印刷された印刷用紙(印刷物)の印刷面に光沢を出すためのニス(樹脂ワニスとも言う)をコーティング(塗布)して表面処理を行うためのコーティング装置1が組み込まれた印刷機の一例を示している。
【0017】
この印刷機は、紙積み台2と、紙積み台2からフィーダ装置3により一枚ずつ印刷用紙Pを送り出すための給紙部4と、この給紙部4から送り出された印刷用紙Pに5色の印刷を行うための印刷部5と、該印刷部5により印刷された印刷用紙にニス(紫外線硬化型樹脂ワニス)をコーティングするコーティング装置1と、該コーティング装置1によりニスがコーティングされた印刷用紙を搬送して排紙するための排紙部6と、排紙部6内に設けられ、排紙部6により搬送されてくる印刷用紙のニスを硬化させるための紫外線乾燥装置7とを備えている。
図1において、紙積み台2側を前側とし、排紙部6側を後側とし、紙面を貫通する方向を左右方向(又は幅方向)として、以下説明する。
【0018】
前記印刷ユニット5A~5Eは、印刷用圧胴5a~5eを備え、これら印刷用圧胴5a~5eの搬送方向上流側のそれぞれには、各印刷用圧胴へ印刷用紙Pを渡すための渡し胴9a~9eを備えている。尚、前記渡し胴9a~9eのうちの搬送方向始端側(前側)に位置する径の小さな渡し胴9aを給紙胴とも言い、この渡し胴9aと前記フィーダ装置3とから前記給紙部4を構成している。そして、図示していないが、前記胴5a~5e及び渡し胴9a~9eのそれぞれには、送り出されてきた印刷用紙Pを爪台と爪とで把持するグリッパを円周方向の複数箇所(1箇所でもよい)に備えている。尚、前記径の小さな渡し胴9aにも、図示していないが、印刷用紙を爪台と爪とで把持するグリッパを円周方向の1箇所に備えている。
【0019】
前記コーティング装置1は、
図2に示すように、ニスが供給されるニス版11を備えるニス胴1Aと、ニス胴1Aのニス版11にニスを供給するためのニス供給ローラ10と、前記ニス胴1Aの下方に対向配置され、印刷された印刷用紙を搬送し該搬送する印刷用紙にニス版11のニスを転写するためのニス圧胴1Bと、を備えている。また、前記コーティング装置1は、ニス胴1Aを、ニス圧胴1B及びニス供給ローラ10に接近させてニスを転写する接近位置とニス圧胴1B及びニス供給ローラ10から離間させた退避位置とに切り替えることができる移動手段(図示せず)を備えている。前記退避位置において、後述するニス版11及びシート部材12の交換作業を行う他、機器のメンテナンスを行うことになる。尚、前記ニス圧胴1Bの搬送方向上流側(前側)に、印刷用紙をニス圧胴1Bに渡すための渡し胴1Gを備えている。この渡し胴1Gは、送り出されてきた印刷用紙を爪台と爪とで把持するグリッパを円周方向の複数箇所(1箇所でもよい)に備えている。
【0020】
また、ニス胴1Aの印刷部5側(前側)の前面に上端の左右方向の軸芯X2回りで回動可能な下側カバー18を備えている。この下側カバー18は、後述するニス胴1Aへのニス版11及びシート部材12の装着時の他、メンテナンス時において、軸芯X2回りで回動させて上方に持ち上げた開放位置(
図4及び
図5参照)とニス胴1Aの前方を覆う閉じ位置(
図2及び
図3参照)とに位置変更可能に構成されている。尚、下側カバー18の下端から渡し胴1Gの上側にかけて設置されるカバー等の図示は省略している。
【0021】
近年、印刷物の小ロット化や多様化により、ニス版交換の頻度も多くなるだけでなく、厚みの異なるニス版を選んで交換することがある。その交換時にニス版の厚みが変わると、ニス圧胴1Bとニス胴1Aのニス版との間の距離が変化してしまい、ニス胴1Aの印刷物へのニス圧胴1Bからの押し付け力が変化してしまう。そこで、ニス版11とニス胴1Aとの間に厚み調整用のシート部材を人手により装着することで、ニス圧胴1Bとニス胴1Aのニス版11との間の距離を予め決められている設定距離に合わせるようにしている。
図2に、ニス胴1Aにニス版11及び厚み調整用のシート部材12が巻き付けられた状態を示している。なお、
図4、
図6~
図10では、ニス胴1Aが前記退避位置に位置している状態を示している。
【0022】
前記ニス胴1Aについて詳述すれば、
図2に示すように、ニス胴1Aは、ニス版11を周面に巻き付けるために該ニス版11の一端部を保持する第1ニス版用保持部13と、巻き付けられたニス版11の他端部を保持する第2ニス版用保持部14と、該ニス版11の厚みに応じて該ニス版11と該ニス胴1Aとの間に厚み調整用のシート部材12を介在すべく該シート部材12の一端部を保持するシート部材用保持部15と、を備えている。また、ニス胴1Aは、ニス版11をニス胴1Aの周面に確実に巻き付けるためにニス版11をニス胴1Aの周面に押し付ける押えローラ27と、この押えローラ27の押し付け力によりニス版11がニス胴1Aに巻き付けられた後にニス版11の尻側端部を後述する万力台14Aに押し付けるためのブレード(図示せず)と、を備えている。
【0023】
第1ニス版用保持部13、第2ニス版用保持部14、シート部材用保持部15は、ニス胴1Aに形成されている凹部1K内に備えている。
【0024】
第1ニス版用保持部13は、ニス版11の一端部を咥える咥え側万力から構成されている。この咥え側万力は、凹部1K内のうちのニス胴1Aの回転方向上流側に固定される万力台13Aと、万力台13Aに対向して配置され万力台13Aとでニス版11の一端部を挟み込んだ状態で保持する閉じ位置と該ニス版11の一端部を挟み込んだ状態を解除する開放位置とに位置変更可能な先端側の咥え板13Bと、を備えている。第1ニス版用保持部13でニス版11の一端部を咥えた状態でニス胴1Aを所定角度回転させることにより、ニス版11がニス胴1Aに巻き付けられる。
【0025】
第2ニス版用保持部14は、前述したように、ニス胴1Aに巻き付けられたニス版11の他端部を咥える咥え尻側万力から構成されている。この咥え尻側万力は、凹部1K内のうちのニス胴1Aの回転方向下流側に固定される万力台14Aと、万力台14Aに対向して配置され万力台14Aとでニス版11の他端部を挟み込んだ状態で保持する閉じ位置と該ニス版11の他端部を挟み込んだ状態を解除する開放位置とに位置変更可能な尻側の咥え板14Bと、を備えている。また、第2ニス版用保持部14は、図示していない移動機構により移動可能に構成されている。この移動により一端部が第1ニス版用保持部13に、他端部が第2ニス版用保持部14にそれぞれ挟み込まれてニス胴1Aに巻き付けられたニス版11に張力を与えることができる。
【0026】
シート部材用保持部15は、凹部1K内のうちの前記第1ニス版用保持部13よりもニス胴1Aの回転方向下流側に配置され、凹部1Kを構成する側壁部1Sに設けられた一対の板部材15A,15Aから構成されている。これら板部材15A,15Aにシート部材12の一端部が挟み込まれて保持される。なお、シート部材12のニス胴1Aに巻き付けられる方向の長さは、ニス版11のニス胴1Aに巻き付けられる方向の長さよりも短く構成されており、ニス版11をニス胴1Aに巻き付けてニス版11の他端部を第2ニス版用保持部14で保持することによりシート部材12の他端部がニス胴1Aに押し付けられた状態で保持される。したがって、この実施形態では、シート部材12の他端部を保持する保持部は設けられていないが、シート部材12の他端部を保持する保持部を設けて実施してもよい。
【0027】
コーティング装置1は、前記ニス胴1Aに近接する上方に、シート部材12をニス胴1Aに装着すべくニス胴1Aへ送られるシート部材12をシート部材用保持部15へ案内するシート部材用案内部16並びにニス版11をニス胴1Aに装着すべくニス胴1Aへ送られるニス版11を第1ニス版用保持部13へ案内するニス版用案内部17を備えている。より詳細には、コーティング装置1は、
図4等に示すように、下側カバー18を開放位置に位置させた状態において、退避位置にあるニス胴1Aの回転中心を通る垂直に対して前側となるニス胴1Aの上方に近接した位置に垂直に延びるシート部材用案内部16並びにニス版用案内部17を備えている。
【0028】
シート部材用案内部16は、ニス版用案内部17に対して排紙部6側(後側)に配置されている。
【0029】
シート部材用案内部16は、シート部材12の後面を案内する案内面16aを有する上下方向に延びる板状部材16Aと、板状部材16Aの上端及び下端に板状部材16Aの案内面16aよりも印刷部5側(前側)に位置(突出)するように設けられシート部材12の後面を案内する左右(幅)方向の軸芯回りで回転可能な上下の第1案内ローラ16B,16Cと、シート部材12の前面を案内すべく第1案内ローラ16B,16Cよりも印刷部5側(前側)に配置され左右(幅)方向の軸芯回りで回転可能な複数(図では3個)の第2案内ローラ16D,16E,16Fと、を備えている。そして、シート部材12をシート部材用案内部16で案内することで、シート部材12の一端部をニス胴1Aのシート部材用保持部15に迅速に保持させることができる。上記のように、上下の第1案内ローラ16B,16Cを板状部材16Aの案内面16aよりも印刷部5側(前側)に位置(突出)するように設けることによって、シート部材12をシート部材用案内部16で案内している際に、シート部材12の接触により上下の第1案内ローラ16B,16Cが回転するので、安定してシート部材12を案内することができる。尚、板状部材16Aは、カバーとしても機能している。
【0030】
板状部材16Aの上端部には、
図4に示すように、上端に向かうほど後側に位置するように斜め上方へ折り曲げられた折り曲げ部16A1を備えている。また、板状部材16Aの下端部には、
図4に示すように、下端に向かうほど後側に位置するように斜め下方へ折り曲げられた折り曲げ部16A2及び折り曲げ部16A2の下端から真っ直ぐ下方に向かうように折り曲げられた垂直板部16A3を備えている。また、第2案内ローラ16D,16E,16Fは、上下の第1案内ローラ16B,16Cの間に位置し、かつ、上下方向に所定間隔を置いて配置されている。第2案内ローラ16D,16E,16Fは、左右(幅)方向両側に備える左右一対の縦部材19,19に回転自在に軸支されている。
【0031】
図示していないが、縦部材19,19に対して各第2案内ローラ16D又は16E又は16Fの前後位置を調整可能となるように、縦部材19,19に各第2案内ローラ16D又は16E又は16Fの各軸が貫通する孔を前後方向に長い長孔に形成している。また、
図10に示すように、左右一対の縦部材19,19の上端部が、左右(幅)方向の軸芯X1回りで揺動自在に構成された左右一対の揺動アーム20,20(
図10では一方のみ図示)に連結されている。また、縦部材19,19の下端部のそれぞれに左右一対のブラケット21,21を介して前記下側カバー18が連結されている。左右一対のブラケット21,21は、縦部材19,19に左右(幅)方向の軸芯X2回りで回転可能に取り付けられている。
【0032】
前記下側カバー18は、上側に持ち上げた開放位置で磁石により位置保持できるように構成され、開放位置において前記第2案内ローラ16D,16E,16Fに間隔を置いて対向するように構成されている。したがって、第2案内ローラ16D,16E,16Fと開放位置にある下側カバー18の間にニス版11を通してニス版11を第1ニス版用保持部13へ案内しつつニス胴1Aの第1ニス版用保持部13へ送ることができる案内経路が形成される。この案内経路がニス版用案内部17となる。このニス版用案内部17の案内により、ニス版11の一端部をニス胴1Aの第1ニス版用保持部13に迅速に保持させることができる。尚、この実施形態では、シート部材用案内部16を構成する第2案内ローラ16D,16E,16Fと下側カバー18とでニス版用案内部17が構成されている。つまり、シート部材用案内部16を構成する第2案内ローラ16D,16E,16Fを、ニス版用案内部17を構成する部品に兼用構成しているが、別々に構成してもよい。
【0033】
また、前記ニス版用案内部17を揺動アーム20,20の軸芯X1回りで上方へ跳ね上げ、その跳ね上げた状態で位置保持できるように構成されている(
図10参照)。このように跳ね上げることによって、シート部材12は交換しないでニス版11のみを交換する際に、ニス版用案内部17が前方に無いため、ニス胴1Aから外したシート部材12を後述する挟持ローラ22Aと第1案内ローラ16Bとで迅速に挟持させることができる(
図10参照)。
【0034】
また、シート部材用案内部16が、シート部材12のシート部材用保持部15へ向かう方向への移動及びシート部材12のニス胴1Aに巻き付けられる際の移動に対して抵抗力を付与する抵抗力付与部22を備えている。この抵抗力付与部22は、シート部材用保持部15へ向かう方向への移動に抗するような抵抗力を付与し、具体的には、前記上側の第1案内ローラ16Bとでシート部材12を挟持する挟持ローラ22Aを備えている。この挟持ローラ22Aは、シート部材12を挟持して抵抗力を付与する付与姿勢(
図9参照)と第1案内ローラ16Bから離れることで前記挟持を解除してシート部材12に抵抗力を付与しない解除姿勢(
図4参照)とに姿勢変更可能に設けられている。挟持ローラ22Aは、シート部材12の幅と略同一長さを有する。挟持ローラ22Aは、左右両側に備える左右一対のカバー23,23の内側に固定されたブラケット24,24に左右の軸芯X3回りに回動自在に取り付けられた一対の回動アーム25,25の一端に回転自在に取り付けられている。一対の回動アーム25,25の他端のそれぞれに、圧縮コイルスプリング26が設けられ、圧縮コイルスプリング26の圧縮力で前記付与姿勢と解除姿勢とを保持できる。
【0035】
上記のように構成されたシート部材用案内部16及びニス版用案内部17を用いて、ニス胴1Aに装着されているニス版11及びシート部材12の両方を交換する手順について説明する。
【0036】
オペレータがニス版交換開始ボタン(図示せず)を押すと、図示していない制御部からの信号により、閉じている尻側の咥え板14Bを開放するとともに、ニス版を押えローラ27で押える。尻側の咥え板14Bが開放すると、オペレータが下側カバー18を持ち上げて開放位置に位置させてから、ニス版及びシート部材の他端部を手で保持する。オペレータがニス版排出ボタン(図示せず)を押すと、ニス胴1Aが回転しニス版及びシート部材が排出されてから、押えローラ27がニス胴1Aから離れる側に移動する。続いて、オペレータが先端側の咥え板13B開放ボタン(図示せず)を押すと、制御部からの信号により、閉じている先端側の咥え板13Bが開放状態になる。オペレータは、ニス版をコーティング装置1外へ取り出すとともに、シート部材用保持部15からシート部材12の一端部を引き抜き、シート部材をコーティング装置1外へ取り出す。引き続き、オペレータは、次の作業に使用するシート部材12を板状部材16Aと第2案内ローラ16D,16E,16Fとの間を通して下方のニス胴1A側へ移動させ(
図4参照)、解除姿勢の挟持ローラ22Aを付与姿勢に手動で切り替える(
図6参照)。この挟持ローラ22Aが付与姿勢に切り替えられることで、シート部材12が自重で下方に移動(落下)することを防止でき、オペレータは、シート部材12から手を放すことができる。続いて、オペレータは、シート部材12の先端部(下端部)を下方へ引っ張ってニス胴1Aのシート部材用保持部15に保持させ(
図7参照)、その後、交換するニス版11を、第2案内ローラ16D,16E,16Fと下側カバー18との間に上方から通して下方のニス胴1A側へ移動させ、ニス版11の先端部を万力台13Aと先端側の咥え板13Bとの間に挿入する(
図8参照)。挿入後、オペレータは、先端側の咥え板閉じボタン(図示せず)を押してから、下側カバー18を手で閉じ(
図9参照)、その後、ニス版巻き付けボタン(図示せず)を押すと、制御部からの信号により、ニス版11及びシート部材12を押えローラ27で押えるとともに、ニス版11及びシート部材12がニス胴1Aに巻き付けられる。この後、制御部からの信号により、ブレードがニス版11の先端部とは反対側の尻側端部を押えてから、尻側の咥え板14Bを閉じる。引き続き、制御部からの信号により、ブレード及び押えローラ27がニス胴1Aから離間する側へ移動した後、第2ニス版用保持部14によりニス版11に所定の張力を加えて、ニス版11及びシート部材12の交換を終了する。
【0037】
次に、ニス胴1Aに装着されているシート部材12は、再使用し、ニス版11のみを、ニス版用案内部17を用いて交換する手順について説明する。
【0038】
オペレータがニス版交換開始ボタン(図示せず)を押すと、図示していない制御部からの信号により、閉じている尻側の咥え板14Bを開放するとともに、ニス版を押えローラ27で押える。尻側の咥え板14Bが開放すると、オペレータが、下側カバー18を持ち上げて開放位置に位置させてから、さらに、下側カバー18と第2案内ローラ16D,16E,16Fを上方へ跳ね上げる(
図10参照)。次に、ニス版及びシート部材の他端部を手で保持する。オペレータがニス版排出ボタン(図示せず)を押すと、ニス胴1Aが回転しニス版及びシート部材が排出されてから、押えローラ27がニス胴1Aから離れる側に移動する。その後、先端側の咥え板開放ボタン(図示せず)を押すと、制御部からの信号により、閉じている先端側の咥え板13Bが開放状態になる。オペレータは、持っていたニス版のみをコーティング装置1外へ取り出す。続いて、オペレータが解除姿勢の挟持ローラ22Aを付与姿勢に手動で切り替えてシート部材12を保持させる(
図10参照)。引き続き、オペレータは、跳ね上げられている下側カバー18と第2案内ローラ16D,16E,16Fを手動で降ろす。新しいニス版を下側カバー18と第2案内ローラ16D,16E,16Fの間に上方から通して下方のニス胴1A側へ移動させ、ニス版の先端部を万力台13Aと先端側の咥え板13Bとの間に挿入する。挿入後、オペレータは、先端側の咥え板13B閉じボタン(図示せず)を押してから、下側カバー18を手で閉じた後、ニス版巻き付けボタン(図示せず)を押すと、制御部からの信号により、ニス版及びシート部材を押えローラ27で押えるとともに、ニス版及びシート部材がニス胴1Aに巻き付けられる。こののち、制御部からの信号により、ブレードがニス版の先端部とは反対側の尻側端部を押えてから、尻側の咥え板14Bを閉じる。引き続き、制御部からの信号により、ブレード及び押えローラ27がニス胴1Aから離間する側へ移動した後、第2ニス版用保持部14によりニス版に所定の張力を加えて、ニス版11の交換を終了する。
【0039】
次にシート部材用案内部16を用いて、ニス版のみが装着されているニス胴1Aから当該ニス版を取り外し、新たなニス版のみを装着する交換手順について説明する。なお、この実施形態では、シート部材用案内部16を用いてニス版交換を行う場合も説明するが、ニス版用案内部17を用いてニス版交換してもよい。
【0040】
オペレータがニス版交換開始ボタン(図示せず)を押すと、図示していない制御部からの信号により、閉じている尻側の咥え板14Bを開放するとともに、ニス版を押えローラ27で押える。尻側の咥え板14Bが開放すると、オペレータが下側カバー18を持ち上げて開放位置に位置させてから、ニス版11を手で保持する。オペレータがニス版排出ボタン(図示せず)を押すと、ニス胴1Aが回転しニス版が排出されてから、押えローラ27がニス胴1Aから離れる側に移動する。続いて、オペレータが先端側の咥え板13B開放ボタン(図示せず)を押すと、制御部からの信号により、閉じている先端側の咥え板13Bが開放状態になる。オペレータは、持っていたニス版をコーティング装置1外へ取り出す。引き続き、オペレータは、次の作業に使用するニス版を板状部材16Aと第2案内ローラ16D,16E,16Fとの間を通して下方のニス胴1A側へ移動させ、ニス版の先端部を万力台13Aと先端側の咥え板13Bとの間に挿入する。このニス版の挿入時には、挟持ローラ22Aは、
図4に示す解除姿勢である。挿入後、オペレータは、先端側の咥え板13B閉じボタン(図示せず)を押してから、下側カバー18を手で閉じた後、ニス版巻き付けボタン(図示せず)を押すと、制御部からの信号により、ニス版を押えローラ27で押えるとともに、ニス版がニス胴1Aに巻き付けられる。こののち、制御部からの信号により、ブレードがニス版の先端部とは反対側の尻側端部を押えてから、尻側の咥え板14Bを閉じる。引き続き、制御部からの信号により、ブレード及び押えローラ27がニス胴1Aから離間する側へ移動した後、第2ニス版用保持部14によりニス版に所定の張力を加えて、ニス版の交換を終了する。
【0041】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0042】
例えば、前記実施形態では、シート部材用案内部16及びニス版用案内部17を備えたが、シート部材用案内部16のみを設けて実施してもよい。
【0043】
また、前記実施形態では、シート部材用案内部16及びニス版用案内部17をニス胴1Aの上方において垂直方向に延びて配置して、上方から下方のニス胴1Aへ向けてシート部材12及びニス版11を移動させるようにしたが、ニス胴1Aの上方において垂直方向に対して斜めに延びて配置して、ニス胴1Aへ向けて斜めにシート部材12及びニス版11を移動させるようにしてもよい。
【0044】
また、前記実施形態では、ニス版11やシート部材12の交換作業は、ニス胴1Aが退避位置に位置しているときに行う構成としたが、例えばニス胴1Aが接近位置に位置しているときに行う構成としてもよい。
【0045】
また、前記実施形態では、5台の印刷ユニット5A~5Eを備えた印刷部5を示しているが、印刷ユニットの数は5台に限定されない。又、印刷ユニットが無くてもよい。又、前記排紙部6は、グリッパを備えるチェーン搬送装置にて構成しているが、この排紙部6のない印刷機であってもよいし、又、印刷機を構成する各部の具体的な構成は図に示されるものに限定されるものではない。又、印刷用紙として枚葉紙を用いているが、連続する長尺な用紙であってもよい。更にまた、前記コーティング装置1が、紫外線硬化型樹脂ワニス(以下においてニスという)をコーティングする他、水性ワニス(水性ニス)をコーティングする場合であってもよい。この水性ニスの場合には、前記紫外線乾燥装置7の印刷用紙搬送方向前後に備えている赤外線乾燥装置8A,8Bによりコーティングされた水性ニスを乾燥させることになる。また、被コーティング材としては、印刷用紙(印刷物)の他、シートやウェブ等であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…コーティング装置、1A…ニス胴、1B…ニス圧胴、1G…渡し胴、1K…凹部、1S…側壁部、2…紙積み台、3…フィーダ装置、4…給紙部、5…印刷部、5A~5E…印刷ユニット、5a~5e…印刷用圧胴、6…排紙部、7…紫外線乾燥装置、8A,8B…赤外線乾燥装置、9a~9e…渡し胴、10…ニス供給ローラ、11…ニス版、12…シート部材、13…第1ニス版用保持部(咥え側万力)、13A…万力台、13B…咥え板、14…第2ニス版用保持部(咥え尻側万力)、14A…万力台、14B…咥え板、15…シート部材用保持部、15A…板部材、16…シート部材用案内部、16A…板状部材、16a…案内面、16B,16C…第1案内ローラ、16D,16E,16F…第2案内ローラ、16A1,16A2…折り曲げ部、16A3…垂直板部、17…ニス版用案内部、18…下側カバー、19…縦部材、20…揺動アーム、21…ブラケット、22…抵抗力付与部、22A…挟持ローラ、23…カバー、24…ブラケット、25…回動アーム、26…圧縮コイルスプリング、27…押えローラ、P…印刷用紙、X1,X2,X3…軸芯