(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20221227BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
H01L21/304 648Z
H01L21/304 648L
H01L21/306 R
(21)【出願番号】P 2019080210
(22)【出願日】2019-04-19
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水上 大乗
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雄也
(72)【発明者】
【氏名】郷原 隆行
(72)【発明者】
【氏名】日野出 大輝
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-220897(JP,A)
【文献】特開平10-172943(JP,A)
【文献】特開2010-232520(JP,A)
【文献】特開2005-69877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の流体を基板に供給することで該基板に対して所定の処理を行う基板処理装置であって、
気体の働きにより作動する気体作動機構と、
前記気体作動機構を作動させた後の気体を、冷却すべき対象である冷却対象部に作用させて該冷却対象部を冷却する冷却部と、
を備えることを特徴とする、基板処理装置。
【請求項2】
所定の流体を基板に供給することで該基板に対して所定の処理を行う基板処理装置であって、
圧縮された気体の働きにより作動する気体作動機構と、
前記気体作動機構を作動させるために、圧縮された気体を供給する圧縮気体供給部と、
前記圧縮気体供給部によって供給された前記圧縮された気体を、冷却すべき対象である冷却対象部に作用させて該冷却対象部を冷却する冷却部と、
を備えることを特徴とする、基板処理装置。
【請求項3】
前記気体作動機構は、圧縮された気体の働きにより作動することを特徴とする、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記冷却部は、前記気体が内部を通過し該気体を前記冷却対象部に向けて供給する冷却気配管を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記冷却部は、前記冷却対象部に近接して配置され前記気体が内部を通過することで前記冷却対象部の熱を奪う冷却気配管を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記気体作動機構と、前記冷却対象部とは同じ筐体で囲われた同一空間に配置されたことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記気体作動機構は、圧縮空気により作動する、ベローズポンプまたは空気式切換弁であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記冷却対象部は、前記基板処理装置内の電気基板、流量計、濃度計、液面センサ、ヒータのアンプ部のうちの少なくともいずれかを含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
複数の前記冷却対象部を有し、
前記冷却気配管は、途中で分岐して前記複数の冷却対象部に個別に前記気体を作用させることを特徴とする、請求項4または5に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記複数の冷却対象部の温度を各々測定する温度計測手段をさらに有し、
前記温度計測手段によって計測された各冷却対象部の温度に応じて、前記分岐した冷却気配管の各々の内部における前記気体の通過をON/OFFすることを特徴とする、請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記冷却気配管内における前記気体の圧力を測定する圧力計測手段をさらに有し、
前記圧力計測手段により測定された圧力に応じて、前記冷却部による前記冷却対象部の冷却の程度を変更することを特徴とする、請求項4または5に記載の基板処理装置。
【請求項12】
基板処理装置の異常を検知して非常停止処理を行う非常停止手段をさらに有し、
前記非常停止手段による非常停止処理によって前記気体作動機構が停止した場合に、
前記冷却部は、前記気体作動機構を作動させる前の気体を前記冷却対象部に作用させることを特徴とする、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項13】
所定の流体を基板に供給することで該基板に対して所定の処理を行う基板処理方法であって、
前記基板の処理のために用いられ気体の働きにより作動する気体作動機構を作動させた後の気体を、冷却すべき対象である冷却対象部に作用させて該冷却対象部を冷却することを特徴とする、基板処理方法。
【請求項14】
所定の流体を基板に供給することで該基板に対して所定の処理を行う基板処理方法であって、
前記基板の処理のために用いられる、圧縮された気体を、冷却すべき対象である冷却対象部に作用させて該冷却対象部を冷却することを特徴とする、基板処理方法。
【請求項15】
前記気体作動機構は、圧縮された気体の働きにより作動することを特徴とする、請求項13に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の基板に処理液を供給し、あるいは基板を処理液に浸漬させることで、エッチング処理や洗浄処理を行う基板処理装置及び基板処理方法に関し、特に、基板処理装置において熱を帯びる箇所を冷却する技術に関する。処理の対象となる基板は、半導体ウエハの他、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などを含む。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程では、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板を、処理液を用いて処理する基板処理装置が用いられる。このような基板処理装置では、基板に対して処理を施す処理部とは別に、処理部に薬液を供給するための薬液供給装置が備えられる。薬液供給装置は、所定の温度に調節された薬液を処理部に供給する(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
ところで、一般的に、精密機器の使用条件には、環境温度に制約があるものがあり、特に計測機器等では常温環境でのみ使用可能とされていることも多い。また、上記のような精密機器の使用環境が常温であっても、機器の近傍にヒータ等の熱源がある場合には、特に機器の周囲温度を常温に維持するための方策を講じる必要がある。
【0004】
機器の周囲温度を常温に維持するための方策としては、例えば、(1)熱源との間に隔壁を設けて熱の伝導や輻射を遮断する。(2)送風機や排気装置によって、機器の周囲に高温の気体が滞留することを防止する。(3)冷却機器を設置する。(4)機器を熱源から充分に離れた位置に配置する。等が考えられる。しかしながら、これらの方策を実行するには、新たな部材や機器を追加する必要があり、装置のコストアップに繋がる。あるいは、スペース上の問題で、方策自体を導入すること自体が困難な場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような状況を鑑みて発明されたものであり、その目的は、基板処理装置または基板処理方法において、装置のコストアップやスペース上の問題を生じることなく、精密機器の温度が過度に上昇することを抑制できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、所定の流体を基板に供給することで該基板に対して所定の処理を行う基板処理装置であって、
気体の働きにより作動する気体作動機構と、
前記気体作動機構を作動させた後の気体を、冷却すべき対象である冷却対象部に作用させて該冷却対象部を冷却する冷却部と、
を備えることを特徴とする、基板処理装置である。
【0008】
これによれば、気体作動機構を作動させた後に、本来はそのまま装置外に排出されるべき気体を用いて、冷却対象部を冷却することができる。その結果、新たな部材や装置の追
加をすることなく、冷却対象部の冷却を行うことが可能である。
【0009】
また、本発明は、
所定の流体を基板に供給することで該基板に対して所定の処理を行う基板処理装置であって、
圧縮された気体の働きにより作動する気体作動機構と、
前記気体作動機構を作動させるために、圧縮された気体を供給する圧縮気体供給部と、
前記圧縮気体供給部によって供給された、前記圧縮された気体を、冷却すべき対象である冷却対象部に作用させて該冷却対象部を冷却する冷却部と、
を備えることを特徴とする、基板処理装置であってもよい。
【0010】
本発明においては、圧縮気体供給部によって供給された、圧縮された気体を冷却対象部に作用させて冷却する。ここで、圧縮された気体はその膨張過程において温度が低下する。よって、圧縮された気体によって冷却対象部を冷却することで、より効率的に冷却対象部を冷却することが可能となる。また、一般に圧縮気体供給部から供給される気体は、常温乾燥気体である。よって、供給された時点で常温である気体が膨張過程においてさらに低温になるので、これらの特性の相乗効果が期待できる。
【0011】
また、本発明においては、前記気体作動機構は、圧縮された気体の働きにより作動するようにしてもよい。すなわち、本発明においては、気体作動機構を作動させた後の圧縮空気を用いて冷却対象部を冷却する。これによれば、新たな部材や装置の追加をすることなく、より効率的に、冷却対象部の冷却を行うことが可能である。
【0012】
また、本発明においては、前記冷却部は、前記気体が内部を通過し該気体を前記冷却対象部に向けて供給する冷却気配管を有するようにしてもよい。これによれば、冷却部により、気体作動機構を作動させた後の気体や、圧縮された気体を冷却対象部に供給する(あるいは、吹き付ける)ことにより、直接、冷却対象部の熱を放散させ、効率的に冷却することが可能となる。
【0013】
また、本発明においては、前記冷却部は、前記冷却対象部に近接して配置され前記気体が内部を通過することで前記冷却対象部の熱を奪う冷却気配管を有するようにしてもよい。これによれば、低温の冷却気配管を冷却対象部に近接して配置し、冷却対象部の熱を奪うことで冷却することが可能である。これによれば、直接に冷却気を冷却対象部に吹き付けることにより、冷却気に含まれる水分で、冷却対象部を故障させてしまうことを抑制できる。
【0014】
また、本発明においては、前記気体作動機構と、前記冷却対象部とは同じ筐体で囲われた同一空間に配置されるようにしてもよい。これによれば、冷却対象部が存在する空間自体も冷却することができ、より効率的に冷却対象部を冷却することが可能となる。
【0015】
また、本発明においては、前記気体作動機構は、圧縮空気により作動する、ベローズポンプまたは空気式切換弁であってもよい。また、前記冷却対象部は、前記基板処理装置内の電気基板、流量計、濃度計、液面センサ、ヒータのアンプ部のうちの少なくともいずれかを含んでもよい。
【0016】
また、本発明においては、複数の前記冷却対象部を有し、前記冷却気配管は、途中で分岐して前記複数の冷却対象部に個別に前記気体を作用させるようにしてもよい。これによれば、複数の冷却対象部をより効率的に冷却することが可能となる。
【0017】
また、本発明においては、前記複数の冷却対象部の温度を各々測定する温度計測手段を
さらに有し、
前記温度計測手段によって計測された各冷却対象部の温度に応じて、前記分岐した冷却気配管の各々の内部における前記気体の通過をON/OFFするようにしてもよい。これによれば、高温になり冷却の優先順位がより高い冷却対象部について優先的に冷却することが可能となり、基板処理装置全体としての信頼性を高めることが可能となる。
【0018】
また、本発明においては、前記冷却気配管内における前記気体の圧力を測定する圧力計測手段をさらに有し、前記圧力計測手段により測定された圧力に応じて、前記冷却部による前記冷却対象部の冷却の程度を変更するようにしてもよい。
【0019】
ここで、冷却気配管内の気体の圧力の絶対値または、周期的に変化する場合には、その振幅が大きい方が、気体を冷却対象部に作用させた場合の冷却効果が高いと考えられる。しかしながら、これらの値は、圧縮気体供給部の故障や、途中の配管の外れや破れによって低下する場合がある。そして、このような場合には、冷却対象部が一定時間後に高温となり、場合によりアラームとともにシステムが非常停止してしまうことも予想される。本発明においては、冷却気配管内の圧力に異常があった場合には、冷却対象部の温度上昇を予測して、予め冷却効果の高い処理を行うようにした。これによれば、未来に予測される冷却対象部の温度上昇を防止することが可能である。また、本発明においては、前記圧力計測手段により測定された圧力に応じて、アラームを出してもよい。そうすれば、冷却対象部が高温となり実際に異常事態となる前に、異常を検知してシステム停止したり、確認作業を行うなどの対策を講じることが可能となる。
【0020】
また、本発明においては、基板処理装置の異常を検知して非常停止処理を行う非常停止手段をさらに有し、
前記非常停止手段による非常停止処理によって前記気体作動機構が停止した場合に、
前記冷却部は、前記気体作動機構を作動させる前の気体を前記冷却対象部に作用させるようにしてもよい。
【0021】
ここで、基板処理装置において非常停止処理が実行された場合には、上述のようにシステムへの電力供給が停止することで、気体作動機構が停止する場合がある。そうすると、本発明において、気体作動機構を作動させた後の気体を用いて冷却対象部を冷却することが不可能になる。これに対し、本発明においては、非常停止手段による非常停止処理によって気体作動機構が停止した場合に、冷却部は、気体作動機構を作動させる前の気体を冷却対象部に作用させるようにした。
【0022】
すなわち、非常停止した状態においては、基板処理装置内に供給されている気体をそのまま用いて、冷却対象部を冷却することとした。これによれば、冷却対象部等の異常昇温によってシステムが停止したような場合にも、冷却対象部に対する冷却気の作用が停止してしまうことを防止し、冷却を継続することができる。その結果、基板処理装置の信頼性を向上させることが可能となる。
【0023】
また、本発明は、
所定の流体を基板に供給することで該基板に対して所定の処理を行う基板処理方法であって、
前記基板の処理のために用いられ気体の働きにより作動する気体作動機構を作動させた後の気体を、冷却すべき対象である冷却対象部に作用させて該冷却対象部を冷却することを特徴とする、基板処理方法であってもよい。
【0024】
また、本発明は、
所定の流体を基板に供給することで該基板に対して所定の処理を行う基板処理方法であ
って、
前記基板の処理のために用いられる、圧縮された気体を、冷却すべき対象である冷却対象部に作用させて該冷却対象部を冷却することを特徴とする、基板処理方法であってもよい。この場合は、前記気体作動機構は、圧縮された気体の働きにより作動することとしてもよい。
【0025】
なお、上述した、課題を解決するための手段は適宜組み合わせて使用することが可能である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、基板処理装置または基板処理方法において、装置のコストアップやスペース上の問題を生じることなく、精密機器の温度が過度に上昇することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の前提となる基板処理装置の概略構成を示す平面図である。
【
図2】本発明の前提となる薬液キャビネットと処理ユニットの側面から見た概略構成を示す図である。
【
図3】実施例1に係るポンプの概略構成を示す一部断面図である。
【
図4】実施例1に係る薬液キャビネットの概略構成を示す図である。
【
図5】実施例1に係る薬液キャビネットの概略構成の変形例1である。
【
図6】実施例1に係る薬液キャビネットの概略構成の変形例2である。
【
図7】実施例1に係る薬液キャビネットの概略構成の変形例3である。
【
図8】実施例1に係る薬液キャビネットの概略構成の変形例4である。
【
図9】実施例1に係る排気拡張部の概略構成を示す図である。
【
図10】実施例2に係る排気管路及び消音器の概略構成を示す図である。
【
図11】実施例3に係る薬液キャビネットの概略構成を示す図である。
【
図12】実施例4に係る薬液キャビネットの概略構成を示す図である。
【
図13】実施例4に係る温度上昇予測対応ルーチンのフローチャートである。
【
図14】実施例5に係るポンプ近傍の概略構成を示す図である。
【
図15】実施例5に係る異常対応ルーチンのフローチャートである。
【
図16】実施例6に係る排気管路及び冷却対象部の概略構成を示す図である。
【
図17】実施例7に係る排気管路及び冷却対象部の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<実施例1>
以下、本発明の実施例について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に示す実施例は、あくまで本発明の一態様であり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0029】
図1は、本発明の前提となる基板処理装置1の平面視による概略図である。基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の処理装置である。基板処理装置1には、基板Wを処理液や処理ガスなどの処理流体によって処理する複数の処理ユニット2と、基板処理装置1を制御するコンピュータである制御装置3が備えられている。制御装置3には、プログラムや各種データ等の情報を記憶する記憶部(不図示)と記憶部に記憶された情報にしたがって基板処理装置1を制御する演算部(不図示)とが含まれている。
【0030】
基板処理装置1には、さらに、基板処理装置1の外壁面に設置され外部から供給された基板Wを収容するロードポート(不図示)と処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボット4が備えられている。搬送ロボット4は、各処理ユニット2に基板Wを供給す
る。また、基板処理装置1は、基板処理に用いられる薬液を各処理ユニット2に供給し、排出するための流体機器を収容する複数の流体機器収容部5を含む。この流体機器収容部5が収容している流体機器には、各種バルブ、エア弁、レギュレータ等の制御デバイスの他、流量計等の測定器及び、これらの制御や情報の授受を行うための電気回路基板が含まれている。
【0031】
処理ユニット2および流体機器収容部5は、基板処理装置1の筐体6の内部に配置されている。また、基板処理装置1は、流体機器収容部5に対して、基板Wの処理に必要な薬液を供給するための薬液キャビネットを備えている。この薬液キャビネットには、基板処理装置1の処理ユニット2の側方に並んで配置され、処理ユニット2において比較的頻繁に使用される薬液を貯留して処理ユニット2との間で授受を行うサイド薬液キャビネット7と、例えば、基板処理装置1が設置されるクリーンルームとは異なるフロアに配置されたエクスターナル薬液キャビネット8を有する。
図1においては、基板処理装置1が6つのサイド薬液キャビネット7と、1つのエクスターナル薬液キャビネット8を備える例について図示しているが、これらの数は上記に限られない。
【0032】
複数の処理ユニット2は、平面視において搬送ロボット4を取り囲むように配置された複数(たとえば4つ)のタワーを形成している。各タワーは、上下に積層された複数(たとえば3つ)の処理ユニット2を含む。4つの流体機器収容部5は、それぞれ、4つのタワーに対応している。サイド薬液キャビネット7及び、エクスターナル薬液キャビネット8の内部に貯留された薬液は、いずれかの各流体機器収容部5を介して各処理ユニット2に供給される。
【0033】
図2は、本発明の前提となる薬液キャビネットの例としてエクスターナル薬液キャビネット8(以下、単に薬液キャビネット8ともいう)を特に取り出し、1つの処理ユニット2との関係を示したブロック図である。本実施例における処理ユニット2は、上述のように基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式のユニットとしているが、複数枚の基板Wを一括して処理するバッチ式のユニットであってもよい。
【0034】
処理ユニット2は、箱形のチャンバ2aと、チャンバ2a内で一枚の基板Wを水平に保持して、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸のまわりに基板Wを回転させるスピンチャック29と、スピンチャック29に保持されている基板Wに、薬液を供給するための薬液ノズル27と、スピンチャック29に保持されている基板Wにリンス液を供給するためのリンス液ノズル28とを有している。
【0035】
薬液ノズル27は、薬液供給バルブ9が介装された薬液供給配管10に接続されており、この薬液供給配管10によって薬液キャビネット8に接続されている。薬液供給配管10には、薬液キャビネット8から、たとえば40℃~70℃に制御された薬液が供給される。薬液ノズル27に供給される薬液は、このような温度に制御されることで処理能力が向上する。このような薬液としては、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、リン酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(たとえば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、SC1(アンモニア過酸化水素水混合液:ammonia-hydrogen peroxide mixture)、SC2(hydrochloric
acid/hydrogen peroxide mixture:塩酸過酸化水素水)、界面活性剤、および腐食防止
剤等が例示できる。これら以外の液体が薬液ノズル27に供給されてもよい。
【0036】
リンス液ノズル28は、リンス液バルブ11が介装されたリンス液配管12に接続されている。リンス液ノズル28には、リンス液の一例である純水(脱イオン水:Deionzied
Water)が供給される。リンス液ノズル28に供給されるリンス液は、純水に限らず、
炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(たとえば、10~100p
pm程度)の塩酸水等であってもよい。
【0037】
スピンチャック29は、円板状のスピンベース13と、このスピンベース13を鉛直軸線まわりに回転させる、モータ等の回転駆動装置14とを含む。薬液ノズル27およびリンス液ノズル28は、それぞれ、基板W上での薬液およびリンス液の着液位置が固定された固定ノズルであってもよいし、薬液およびリンス液の着液位置が基板Wの回転中心から基板Wの周縁に至る範囲で移動可能なスキャンノズルであってもよい。
【0038】
基板Wに処理が行われる際には、制御装置3は、スピンチャック29によって基板Wを水平に保持させながら、回転駆動装置14によって、基板Wを鉛直軸線まわりに回転させる。この状態で、制御装置3は、薬液供給バルブ9を開いて、薬液ノズル27から基板Wの上面に向けて薬液を吐出させる。基板Wに供給された薬液は、基板Wの回転による遠心力によって基板W上を外方に広がり、基板Wの上面周縁部から基板Wの周囲に排出される。制御装置3は、薬液ノズル27からの薬液の吐出を停止させた後、リンス液バルブ11を開くことにより、リンス液ノズル28から回転状態の基板Wの上面に向けて純水を吐出させる。これにより、基板W上の薬液が純水によって洗い流される。その後、制御装置3は、スピンチャック29によってさらに基板Wを高速回転させることにより、基板Wを乾燥させる。このようにして、基板Wに対する一連の処理が行われる。
【0039】
薬液キャビネット8は、薬液を貯留する薬液タンク(処理液タンク)15と、薬液タンク15内の薬液を処理ユニット2(薬液ノズル27)に案内するための薬液配管(処理液配管)16と、新たな薬液を薬液タンク15に補充する補充配管23とを含む。を含む。この薬液配管16には、薬液タンク15内の薬液を薬液配管16において流動させるポンプ17と、薬液配管16の内部を流れる薬液の濃度を測定する濃度計18と、薬液配管16を開閉する薬液バルブ19と、薬液配管16の内部を流通する薬液を加熱して温度調節するヒータ20が設置されている。また、補充配管23には外部の薬液タンク(不図示)から供給される薬液の流量を測定する流量計21、補充配管23を開閉する補充バルブ22が設置されている。
【0040】
薬液配管16は、その一端が薬液供給配管10に接続されており、その他端が薬液タンク15に接続されている。薬液キャビネット8は、薬液バルブ19よりも薬液流通方向の下流側で、薬液配管16と薬液タンク15とを接続するリターン配管24と、リターン配管24を開閉するリターンバルブ25とをさらに含む。薬液タンク15、薬液配管16、およびリターン配管24により、薬液タンク15内の薬液を循環させる循環経路(流通経路)26が形成されている。
【0041】
この状態において、リターンバルブ25が閉じられかつ薬液供給バルブ9が開かれると、循環経路26を循環している薬液が、薬液供給バルブ9を通って薬液ノズル27に供給され、薬液ノズル27から薬液が吐出される。これにより、基板Wに薬液が供給され、薬液を用いて基板Wが処理される。
【0042】
次に、
図3を用いて、ポンプ17について詳細に説明する。
図3は、本実施例におけるポンプ17の一部断面図である。本実施例においてポンプ17としては、ベローズの伸縮によって薬液を圧送するベローズポンプが採用されている。ポンプ17は、容器33aと、この容器33aの両端部を閉塞するエンドベース部材35aと、容器33aの内部空間を二分するセンターブロック37とを備えたポンプ本体39を有する。センターブロック37には、互いに連通していない吸引流路41及び吐出流路42が形成されている。吸引流路41には吸引口43が配設されており、吐出流路42には吐出口45が配設されている。吸引口43は循環経路26の上流側において薬液タンク15に接続され、吐出口45は循環経路26の下流側において濃度計18、薬液バルブ19等に接続されている。
【0043】
センターブロック37には、一対のベローズ49、50が取り付けられている。ベローズ49は、一対のチェッキ弁(吸引側チェッキ弁51及び吐出側チェッキ弁52)を介して吸引流路41及び吐出流路42に連通接続されている。吸引側チェッキ弁51は、吸引流路41からベローズ49への液体の流通を許容する一方、ベローズ49から吸引流路41への液体の流通を規制する。吐出側チェッキ弁52は、ベローズ49から吐出流路42への液体の流通を許容する一方、吐出流路42からベローズ49への液体の流通を規制する。
【0044】
また、ベローズ50は、一対のチェッキ弁(吸引側チェッキ弁53及び吐出側チェッキ弁54)を介して吸引流路41及び吐出流路42に連通接続されている。吸引側チェッキ弁53は、吸引流路41からベローズ50への液体の流通を許容する一方、その逆方向への液体の流通を規制する。吐出側チェッキ弁54は、ベローズ50から吐出流路42への液体の流通を許容する一方、その逆方向への液体の流通を規制する。一対のベローズ49、50は、センターブロック37とは反対側の端部が、センターブロック37に形成されている貫通孔55に挿通された一つの連結棒57で連結されている。
【0045】
エンドベース部材35aには、それぞれ吸排口59が形成されている。各吸排口59には、吸排管61の一端側が連通接続されており、吸排管61の他端側は電磁弁63のポートに連通接続されている。電磁弁63の供給口には、圧縮空気が供給されており、与えられた切り換え信号に応じて、図中左右のいずれか一方の吸排管61だけに圧縮空気を供給する。各吸排管61の途中には、大気開放弁65が配設されている。この大気開放弁65は、与えられた開放信号に応じて図中左右の他方の吸排管61の内部を排気管路30を介して大気(外部)に開放することで排気動作を行う。各エンドベース部材35aには、近接センサ67が埋設されている。これらの近接センサ67は、一対のベローズ49,50の各々が伸長した場合における端部の位置を非接触で検出する
【0046】
上述した電磁弁63と、二つの大気開放弁65と、二つの近接センサ67は、制御装置3によって制御されている。制御装置3は、電磁弁63に対して所定のタイミングで切り換え信号を与え、左右の吸排管61に対して交互に圧縮空気を送り込む。また、交互の圧縮空気の送り込みとは逆のタイミングで、大気開放弁65に対して開放信号を与え、両吸排管61を交互に大気開放にする。これにより、センターブロック37で仕切られた容器33aの両空間の圧力を調整して、ベローズ49とベローズ50とを交互に伸縮させる。このような動作により、ポンプ17の吐出口45からは、間欠的に所定圧力の薬液が圧送される。なお、本発明においてポンプ17は、気体作動機構の一例である。また、ここでポンプ17に供給される圧縮空気は本発明における圧縮された気体の一例であり、圧縮気体供給部の一例として設置された供給施設から供給されている。
【0047】
ここで、薬液キャビネット8の内部において、濃度計18及び流量計21の近傍の領域は、ヒータ20を始めとする熱源からの熱輻射と熱伝導を受け、高温になる場合がある。この濃度計18及び流量計21の近傍の領域が高温になると、例えば補充配管23や、薬液配管16を通過中の薬液中に気泡が発生することで、濃度計18及び流量計21の測定精度が低下する場合がある。その結果、薬液ノズル27に最適な状態の薬液を供給することが困難となり、基板Wの処理の品質が低下する場合がある。
【0048】
これに対し、本実施例では、ポンプ17から排出される排気を、濃度計18及び流量計21の近傍の空間に供給することで、冷却することとした。より具体的には、
図4に示すように、ポンプ17から排出される排気は、従来は直接または間接的に薬液キャビネット8からただ排気されていたところ、排気管路30の先端開口を濃度計18及び流量計21に向けて固定することとした。なお、濃度計18及び流量計21の近傍のように、基板処
理装置1において冷却すべき対象となる構成要素は、本発明における冷却対象部に相当する。また、ポンプ17から排出される排気のように、冷却対象部に供給される気体を冷却気ともいう。
【0049】
ここで、ポンプ17は上述のように圧縮空気を用いて作動し、排気管路30から排出される排気は、ベローズ49、50の駆動に使用された圧縮空気が膨張した空気である。そうすると、そもそも、ポンプ17に供給される圧縮空気はクリーンルーム用の常温乾燥空気であることに加え、圧縮空気が膨張することで断熱膨張により、排気の温度はさらに低下した状態となる。この低温の排気を濃度計18及び流量計21の近傍に供給する、すなわち吹き付けることで、濃度計18と流量計21の近傍における薬液配管16、補充配管23の温度の上昇を抑制することができる。ここで、排気管路30は本発明における冷却部及び、冷却気配管の一例である。
【0050】
その結果、薬液配管16、補充配管23の内部を流通する薬液に気泡が生じることを防止でき、濃度計18と流量計21の測定精度の低下を抑制することができる。また、従来よりポンプ17から排出された排気は、一旦薬液キャビネット8内に放散された後、あるいは直接的に、薬液キャビネット8の外部に排出されていたものであることから、新たな設備や部材を導入する必要がなく、冷却に関わるコストやスペースの増大を抑制することが可能である。なお、本実施例における圧縮空気とは、上記のとおり膨張することで温度が低下する効果を奏する程度に圧縮された空気を想定している。具体的には、10KPa以上の圧力を有する空気を想定している。また、ポンプ17等の気体作動機構を円滑に作動させるために100KPa以上、場合より400KPa以上の圧縮空気を用いても構わない。
【0051】
(変形例1)
上記の実施例1においては、ポンプ17の排気を、冷却対象部としての濃度計18と流量計21近傍の空間に供給する点について説明した。これについては、薬液キャビネット8の内部における、他の構成要素を冷却対象部としても構わない。例えば、
図5には、各種センサやアクチュエータの駆動に用いられる電気基板32の冷却に、ポンプ17の排気を用いる例を示す。この例の場合、電気基板32の発熱による基板自体の損傷を防止することが可能であるとともに、電気基板32の発熱部が熱源となって、薬液キャビネット8の他の構成要素の加熱原因になることを抑制することができる。
【0052】
(変形例2)
図6には、変形例2として、ポンプ17の排気を、冷却対象部としての薬液タンク15の液面センサ33の冷却に用いる例について示す。薬液タンク15には、薬液の液面を所定の高さに制御するために液面センサ33が設けられている。より詳細には、薬液タンク15には、タンクにおける液面の目標高さより高い位置と、水面の目標高さより低い位置とを連通する連通路15aが設けられ、当該連通路15aにおける目標となる液面高さ付近に静電容量型の液面センサ33が設けられている。そして、液面センサ33は、連通路15aにおいてその測定領域の何れの高さまで薬液が存在するかによって静電容量が変化することを利用して液面の高さを測定する。
【0053】
よって、連通路15aにおける液面位置近傍の領域が高温になり、薬液に気泡が発生するような場合には、検出される静電容量が変化して液面位置の測定精度が低下してしまう不都合が生じる。これに対し変形例2では、ポンプ17の排気を薬液タンク15が備える液面センサ33の近傍に供給するで、連通路15a及び連通路15a内の薬液を冷却することとした。これによれば、新たな設備や部材を追加することなく、効率的に液面センサ33の近傍を冷却することができ、薬液の温度上昇に起因して液面センサ33の測定精度が低下することを抑制できる。
【0054】
(変形例3)
図7には、変形例3として、薬液配管16を通過する薬液を加熱するヒータ20のアンプ部35を冷却対象部とする例について示す。薬液配管16を通過する薬液を加熱する際にはヒータ20内の電熱線に大容量の電流を流す必要がある。従って、ヒータ20のアンプ部35も同様に発熱することが考えられる。このため、本変形例においては、アンプ部35に、ポンプ17の排気を供給することとした。これによれば、発熱によるアンプ部35自体の損傷を防止することが可能であるとともに、ヒータ20のアンプ部35が熱源となって、薬液キャビネット8の他の構成要素の加熱原因になることも抑制することができる。
【0055】
(変形例4)
図8には、変形例4として、濃度計18及び流量計21の近傍、薬液タンク15の液面センサ33の近傍、ヒータ20のアンプ部35を冷却対象部とし、ポンプ17の駆動後の圧縮空気の排気管路30を分岐管路30a~30cに分岐して、各々の分岐管路30a~30cの開口端を、濃度計18及び流量計21の近傍、薬液タンク15の液面センサ33の近傍、ヒータ20のアンプ部35に向けて開口するように固定した。これによれば、薬液キャビネット8内の複数の冷却対象部に対し、同時にポンプ17の駆動後の圧縮空気の排気を供給することができ、個々の冷却対象部が過剰に高温になることを抑制することができる。
【0056】
(変形例5)
図9には、変形例5として、排気管路30の先端に排気拡張部60を配置した例について説明する。上記の実施例においては、排気管路30の開口端の形状については特に触れていない。従って、排気管路30の開口端、すなわち冷却対象部の方向に向いて冷却気を排出する開口については、排気管路30の切断面そのものであることを想定していた。しかしながら、本実施例における冷却対象部は、複数のセンサやアクチュエータを含む領域であったり、大型の電気基板であったりすることが考えられる。そのような場合に対応して、本変形例では、排気管路30の開口端に、スリット60aが形成された排気拡張部60を接続することとした。このスリット60aの長手方向を、冷却対象部における、より範囲が広い方向に合わせることで、より広い冷却対象部に冷却気を供給することが可能となる。
【0057】
なお、
図9には、排気拡張部60が先端面にスリット60aを有する例について示したが、排気拡張部60の先端面に形成される排出口のパターンは、スリット60aに限られない。例えば、排気拡張部60が先端面に小さな開口部を複数形成し、その小さな開口部を適切な形状または範囲に分布させることで、冷却対象部の様々な形状に対応することが可能である。
【0058】
<実施例2>
次に、本発明における実施例2について説明する。本実施例においては、ポンプ17の排気管路30を冷却対象部の方向に延設することで、冷却対象部に冷却気を供給する例であって、排気管路30に消音器を設けた例について説明する。
【0059】
ポンプ17を作動させる圧縮空気は、数100KPa程度の高い圧力で供給施設から供給されるので、ポンプ17を作動させた後の排気が排出される際には、大きな排気音が生じる場合がある。例え間欠的であっても、この排気音が継続的に生じる場合には、ユーザの作業環境を悪化させてしまう場合がある。これに対し、本実施例では、排気管路30の先端付近に消音器70を設置することとした。
図10には消音器70が設けられた排気管路30の図を示す。
【0060】
図に示すように、排気管路30の先端付近に設置された消音器70は、排気管路30の軸方向に内部で3つの部屋70a~70cに分かれている。そして、排気管路30の開口端は、部屋70aに開口している。部屋70aと部屋70bは部屋連通管70dで連通されている。また、部屋70bと部屋70cは部屋連通管70eによって連通されている。そして、部屋70cと、消音器70の外部とは、先端管路30dで連通されている。
【0061】
従って、排気管路30を通過するポンプ17の排気は、部屋70aに流入し、部屋70aを、排気管路30の軸方向とは垂直方向に部屋連通管70dに向けて移行する。そして、部屋連通管70dを通過して部屋70bに流入し、部屋70bにおいては、部屋連通管70eに向けて、排気管路30の軸方向とは垂直方向に移動する。そして、部屋連通管70eを通過して部屋70cに流入する。そして、部屋70cにおいては、先端管路30dに向けて、排気管路30の軸方向とは垂直方向に移動する。さらに、先端管路30dを通過して、その開口端から冷却対象部に供給される。
【0062】
このことで、排気管路30を通過する排気の流通方向を複雑に変更することで、消音器70の内部で排気を段階的に膨張させ、繰り返して圧力波を干渉させ、騒音を抑制している。これによれば、ポンプ17の排気を冷却対象部の冷却に用いることによる騒音を低減することが可能となる。なお、本実施例で示した消音器70の構造は一例に過ぎず、同様の消音効果が生じる消音器であれば、異なる構造の消音器を採用してもよいことは当然である。
【0063】
<実施例3>
次に、本発明の実施例3について説明する。上記の実施例1では、薬液配管16の薬液を循環させるポンプ17の排気を、冷却気をして用いることとした。それに対して実施例3では、ポンプ17の排気ではなく、薬液キャビネット8の内部で用いられている薬液バルブ19、リターンバルブ25、補充バルブ22等のバルブの排気を冷却気として用いることとした。なお、薬液バルブ19、リターンバルブ25、補充バルブ22も圧縮空気で作動する空気式切換弁であり、作動後の排気はポンプ17の排気と同様に、膨張することで低温となる。
【0064】
図11においては、薬液バルブ19の排気管路19aをヒータ20のアンプ部35の方向に延設して開口端がヒータ20のアンプ部35に向けて開口するように配置した。また、リターンバルブ25の排気管路25aを薬液タンク15の液面センサ33の方向に延設し、開口端が液面センサ33の近傍に向けて開口するように配置した。
【0065】
さらに、補充バルブ22の排気管路22aを濃度計18及び流量計21の方向に延設し、開口端が濃度計18及び流量計21に向けて開口するように配置した。そして、薬液バルブ19、リターンバルブ25、補充バルブ22等のバルブの排気を、冷却対象部に冷却気として供給する。このように、薬液キャビネット8の中で、複数個所に設けられているバルブの排気を冷却気として用いるため、薬液キャビネット8の中に冷却対象部が互いに離間して複数存在する場合であっても、各々の冷却対象部の最も近くに配置されたバルブの排気を供給することで、冷却気を冷却対象部の近傍まで届けるための配管を短くすることができ、より効率的に冷却対象部を冷却することが可能である。
【0066】
なお、本実施例においては、薬液バルブ19、リターンバルブ25、補充バルブ22等の各バルブが配置された場所には、各バルブを作動させる圧縮空気を供給するための配管が設けられているので、必ずしも各バルブの排気を冷却対象部に供給する必要はない。各バルブを作動させていない期間、あるいは各バルブを作動させている時間中にも、各バルブの作動に使用されるべき圧縮空気の一部をそのまま、冷却対象部に供給するようにして
もよい。この場合であっても、各々の冷却対象部の最も近く配置されたバルブの排気を冷却気として使用することで、冷却気を冷却対象部の近傍まで届けるための配管を短くすることができ、より効率的に冷却対象部を冷却することが可能である。
【0067】
<実施例4>
次に、本発明の実施例4について説明する。本実施例では、冷却対象部に対して冷却気を供給する排気管路に圧力センサを設け、圧力センサにより測定される圧力に応じ、冷却対象部の温度上昇を事前に検知する例について説明する。
【0068】
上記の実施例1~3においては、例えばポンプ17等の排気を冷却気として冷却対象部に供給したが、ポンプ17等の作動に用いられる圧縮空気の供給施設の故障や、途中の配管の外れや破れによって、ポンプ17等の排気の圧力が低下した場合に、冷却対象部の冷却効率が低下して温度上昇が生じてしまう場合がある。
【0069】
それに対し、本実施例においては、
図12に示すように、排気管路30に圧力センサ71を設置し、ポンプ17の排気の圧力が正常か否かをモニターする。そして、圧力センサ71の検出値に異常があった場合には、冷却対象部の温度が上昇することを予測し、予め冷却能力を高めておくことで、冷却対象部の温度上昇を抑制することとした。
【0070】
図13には、本実施例における温度上昇予測対応ルーチンのフローチャートを示す。本ルーチンは制御装置3の記憶部に記憶されたプログラムであり、制御装置3の演算部によって所定時間毎に実行される。
【0071】
本ルーチンが実行されるとまず、ステップS101において、圧力センサ71によってポンプ17の排気の圧力が取得される。ステップS101の処理が終了するとステップS102に進む。ステップS102においては、取得した圧力の振幅が所定の閾値より大きいか否かが判定される。なお、ポンプ17の作動において排気は間欠的に排出されるため圧力センサ71によって取得される圧力は概略矩形波として観測されるが、圧縮空気の供給施設に故障があったり、配管に外れや破れがある場合には、上記の矩形波の振幅が減少するため、本実施例においては、圧力波形の振幅を閾値とを比較することによって異常を判定することとした。
【0072】
ステップS102において圧力波形の振幅が閾値より大きいと判定された場合には、ポンプ17の排気の圧力に問題はないと判定されるので、そのまま本ルーチンを一旦終了する。一方、ステップS102において圧力波形の振幅が閾値以下であると判定された場合には、ポンプ17の排気の圧力に異常が生じており、冷却対象部の温度が今後上昇すると判断されるのでステップS103に進む。
【0073】
ステップS103においては、冷却対象部の冷却の強化処理を行う。この処理としては、例えば、冷却対象部の温度が所定温度以上の時にのみ、冷却対象部にポンプ17の排気を供給するような場合には、冷却対象部の温度が所定温度未満の場合であっても即座に冷却を開始するという処理が挙げられる。なお、この場合は、排気管路30の途中に切換え弁を有し、ポンプ17の排気を冷却対象部に供給するモードと、ポンプ17の排気を冷却対象部に供給せず、薬液キャビネット8内あるいは外部に放散するモードを切換え可能であることが前提となる。
【0074】
また、仮に、ポンプ17の排気の他、薬液バルブ19、リターンバルブ25、補充バルブ22等のバルブの排気を冷却気として用いることができる場合には、ポンプ17の排気による冷却対象部の冷却に加えて、上記バルブの排気による冷却を開始するという処理であってもよい。ステップS103の処理が終了すると本ルーチンを一旦終了する。
【0075】
この制御によれば、圧縮空気の供給施設の故障の他、配管の外れや破れ等により、ポンプ17からの排気の圧力(振幅)が低下した場合には、冷却対象部の冷却を強化するので、不測の不具合により、ポンプ17の排気の圧力低下、温度上昇、流量低下等が発生した場合でも、冷却対象部の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0076】
<実施例5>
次に、本発明の実施例5について説明する。本実施例では、冷却対象部の温度が上昇する等して、温度上昇アラームが発生しシステム停止等した場合にも、冷却対象部の冷却を継続する例について説明する。本実施例では、
図14に示すように、圧縮空気の配管31に、ポンプ17をバイパスするバイパス管31aが設けられ、圧縮空気をバイパス管31aを通過させるか、ポンプ17を作動させるかを選択可能な三方弁72を備えていることを前提とする。
【0077】
そして、
図15には、本実施例における異常対応ルーチンのフローチャートを示す。本ルーチンは制御装置3の記憶部に記憶されたプログラムであり、制御装置3の演算部によって所定時間毎に実行される。
【0078】
本ルーチンが実行されるとまず、ステップS201において、システムが非常停止状態か否かが判定される。この非常停止状態とは、冷却対象部またはその他の部分の異常な温度上昇が検出されることでアラームが出されるとともに、システムの電源が停止する状態をいう。より詳細には、別途設けられた非常停止システムが非常停止時にONするフラグを検知することによって判定してもよいし、システム電源の電源電圧を検知することで判定してもよい。ステップS201において、非常停止状態ではないと判定された場合には、ステップS202に進む。一方、非常停止状態であると判定された場合には、ステップS203に進む。
【0079】
ステップS202においては、三方弁72が制御され、通常どおり圧縮空気をポンプ17に供給して、ポンプ17を作動させる。この場合には、ポンプ17の排気が排気管路30を通じて冷却対象部に供給される。ステップS203においては、三方弁72が制御され、圧縮空気はポンプ17をバイパスしてそのまま、排気管路30に流入し、冷却対象部に供給される。ステップS202またはステップS203の処理が終了すると、本ルーチンを一旦終了する。
【0080】
本実施例においては、冷却対象部等の異常な温度上昇等により、アラームが発せられシステム停止してポンプ17が停止した場合に、三方弁72を切り替えて圧縮空気にポンプ17をバイパスさせ、ポンプ17の作動と関係なく、冷却対象部に冷却気を供給することができる。これによれば、システムの非常停止時にも、ポンプ17の駆動が停止して冷却対象部への冷却気の提供が停止することが防止される。さらに、通常状態ではポンプ17の排気が間欠的に冷却対象部に供給されるのに対し、非常停止状態では圧縮空気を直接連続的に冷却対象部に供給することができる。これにより、非常停止状態において、冷却対象部のさらなる温度上昇を防止することができる。
【0081】
なお、本実施例においては、非常停止状態でのみ、供給施設から供給された圧縮空気をそのまま冷却対象部に供給する点について説明したが、本発明においては、非常停止状態以外の状態においても、供給施設から供給された圧縮空気をそのまま冷却対象部に供給してもかまわない。これによれば、常温乾燥状態に管理された空気であって、膨張することでさらに低温となる空気を冷却気として利用できるので、より効率的に冷却対象部を冷却することが可能となる。
【0082】
<実施例6>
次に、本発明の実施例6について説明する。本実施例においては、複数の冷却対象部の温度を継続的に測定し、測定結果に応じてバルブを切換え、適切な冷却対象部に冷却気を供給する例について説明する。
【0083】
図16には、本実施例におけるポンプ17からの排気が通過する排気管路30の近傍の概略図を示す。本実施例においては、電気基板32、濃度計18及び流量計21、液面センサ33、ヒータ20のアンプ部35等の冷却対象部には温度センサ75h~75kが配置されている。また、排気管路30は分岐管路30h~30kに分岐され、各々の冷却対象部に対して、開口端を向けて配置され、排気を供給可能とされている。さらに、分岐管路30h~30kには、バルブ73h~73kが設けられており、冷却対象部への排気の供給のON/OFFが可能になっている。
【0084】
本実施例においては、このような構成において、各冷却対象部の温度を温度センサ75h~75kで測定し、いずれかの温度センサによって測定された温度が閾値を超えた場合には、バルブ74h~74kのうちの対応するバルブを開き、温度が閾値を超えた冷却対象部に対する排気の供給をONする。
【0085】
これによれば、必要な箇所にのみ、ポンプ17の排気を供給することができ、実際に冷却が必要な冷却対象部に対して充分な排気の流量を確保することが可能となる。なお、本実施例において温度センサ75h~75kのいずれの温度センサによって測定された温度の、閾値を超えていない場合には、バルブ74h~74kのうち特定のバルブを開くようにしてもよい。また、この特定のバルブは、最も温度上昇し易い冷却対象部に対応するバルブとしてもよい。これにより、ポンプ17の作動を安定化することができ、最も温度上昇し易い冷却対象部を常に冷却することが可能である。
【0086】
<実施例7>
次に、本発明の実施例7について説明する。本実施例においては、冷却対象部が電気基板など、水分の付着に弱い対象である場合に、冷却気を直接に冷却対象部に供給するのではなく、冷却気が通過する配管を近傍に配置することにより冷却する例について説明する。
【0087】
上記の実施例1~6においては、冷却気を供給することによって冷却対象部を冷却する例について説明した。本来、冷却気の基となる圧縮空気は、供給施設から常温乾燥空気として供給されるので、基本的には水分を含まない。しかしながら、
図3に示したポンプ17のベローズ49、50の破れや、配管の破れや結露により、冷却気に水分が含まれる場合がある。そうすると、例えばポンプ17の排気を冷却気として直接、冷却対象部としての電気基板等供給した場合には、電気基板に水分が付着することによる事故が発生する危険性がある。
【0088】
これに対し本実施例では、
図17に示したように、排気管路30mを電気基板32に近接させて配置し、電気基板32から排気管路30mへの熱伝導及び熱輻射により、電気基板32を冷却することとした。これによれば、冷却気に含まれる水分により冷却対象部としての電気基板32が故障することを抑制することができる。
【0089】
なお、上記の実施例においては、基板処理装置が半導体ウエハなどの円板状の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の処理装置である場合について説明したが、本発明は、複数枚の基板Wを一括して処理するバッチ式の基板処理装置にも適用可能である。また、上記の実施例においては、本発明を主に薬液供給装置であるエクスターナル薬液キャビネット8内の冷却対象部に適用した例について説明したが、本発明は、サイド薬液キャビネット7や
、基板処理装置の処理ユニット2や、他の装置内における冷却対象部に適用しても構わない。
【0090】
また、上記の実施例においては、基板の処理に液体(処理液)を用いる装置を例に挙げて説明したが、本発明は、基板の処理に窒素等の気体を用いる装置にも適用可能である。さらに、上記の実施例においては、圧縮された気体として、供給施設から供給される圧縮空気を用いる例について説明したが、圧縮された気体は圧縮空気に限られない。基板処理やパージ処理に用いられる窒素など、空気以外の気体を冷却気として用いても構わない。
【0091】
また、上記の実施例においては、気体作動機構としては、ポンプ17の他、薬液バルブ19、リターンバルブ25、補充バルブ22等、圧縮空気を使用して作動させる機構を例に挙げて説明した。しかしながら、本発明における気体作動機構は、圧縮された気体を使用して作動させる機構に限定されない。大気圧に近い圧力の気体を用いる機構も、本発明における気体作動機構に含まれる。このような場合であっても、新たな部材や設備を追加せずに冷却対象部を冷却することができるという効果を奏するからである。このような機構としてはパージ処理用に大気圧に近い気体を供給するノズル等を例示することができる。
【符号の説明】
【0092】
1・・・基板処理装置
2・・・処理ユニット
3・・・制御装置
5・・・流体機器収容部
7・・・サイド薬液キャビネット
8・・・エクスターナル薬液キャビネット
15・・・薬液タンク
17・・・ポンプ
18・・・濃度計
19・・・薬液バルブ
20・・・ヒータ
21・・・流量計
22・・・補充バルブ
25・・・リターンバルブ
30・・・排気管路