(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】傾斜回転テーブル装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 1/54 20060101AFI20221227BHJP
【FI】
B23Q1/54
(21)【出願番号】P 2019114187
(22)【出願日】2019-06-20
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柴原 壮登
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第3700228(US,A)
【文献】特開2008-105152(JP,A)
【文献】特開2002-361530(JP,A)
【文献】特開2005-279803(JP,A)
【文献】特開2017-87310(JP,A)
【文献】特開2017-56509(JP,A)
【文献】特開2007-296613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/54
B23Q 1/01
B24B 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械上に設置される基台フレーム、該基台フレームに対し一対の回転軸を介して支持される傾斜フレームであって前記回転軸の軸線に対し離間した位置に傾斜テーブルを有する傾斜フレーム、該傾斜フレームを揺動駆動するための傾斜駆動モータであって前記基台フレームに内装された傾斜駆動モータ、前記傾斜テーブル上に設置された回転テーブル、及び該回転テーブルを回転駆動するための回転駆動モータであって前記基台フレームに内装された回転駆動モータを含み、一対の前記回転軸のうちの一方が前記傾斜駆動モータに連結された傾斜駆動軸であると共に他方が前記傾斜フレームの揺動駆動に伴って従動回転する従動軸であり、前記回転駆動モータが前記従動軸を介して前記基台フレームに対し回転可能に支持されると共にその出力軸が駆動伝達機構により前記回転テーブルに連結された回転駆動軸と連結された傾斜回転テーブル装置において、
前記従動軸に対する前記傾斜フレームの位置を少なくとも上下方向に調整するための位置調整機構であって前記従動軸と前記傾斜フレームとの間に設けられる位置調整機構を備え、
前記従動軸は、内部に前記回転駆動モータの少なくとも一部を配置可能であるような中空形状に形成され、且つ、前記傾斜フレームが取り付けられる取付部であって半径方向に延びると共に前記回転駆動モータの前記傾斜フレームに対する取り付けを許容するように形成された取付部を有し、
前記回転駆動モータは、前記傾斜フレームを介して前記従動軸に支持されている
ことを特徴とする傾斜回転テーブル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械上に設置される基台フレーム、該基台フレームに対し一対の回転軸を介して支持される傾斜フレームであって回転軸の軸線に対し離間した位置に傾斜テーブルを有する傾斜フレーム、該傾斜フレームを揺動駆動するための傾斜駆動モータであって基台フレームに内装された傾斜駆動モータ、傾斜テーブル上に設置された回転テーブル、及び該回転テーブルを回転駆動するための回転駆動モータであって基台フレームに内装された回転駆動モータを含み、一対の回転軸のうちの一方が傾斜駆動モータに連結された傾斜駆動軸であると共に他方が傾斜フレームの揺動駆動に伴って従動回転する従動軸であり、回転駆動モータが従動軸を介して基台フレームに対し回転可能に支持されると共にその出力軸が駆動伝達機構により回転テーブルに連結された回転駆動軸と連結された傾斜回転テーブル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前記したような傾斜回転テーブル装置としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。その傾斜回転テーブル装置においては、傾斜フレームが基台フレームに対し一対の回転軸を介して支持されている。したがって、基台フレームは、傾斜フレームの両側に位置し、一対の回転軸をそれぞれ回転可能に支持する部分を含んでいる。なお、傾斜フレームを揺動駆動するための傾斜駆動モータは、その基台フレームにおける両側の部分の一方(駆動側部)に内装されている。その上で、その駆動側部において支持された回転軸(傾斜駆動軸)が傾斜駆動モータにより回転駆動される。それにより、傾斜フレームが揺動駆動され、それに伴い、基台フレームにおける他方の部分(従動側部)に支持された回転軸(従動軸)が従動回転する。
【0003】
また、傾斜フレーム(傾斜テーブル)上には、例えば支持フレームを介して回転軸(中心軸)が回転可能に支持されており、その回転軸に取り付けられるかたちで回転テーブルが回転可能に設置されている。なお、その回転テーブルを回転駆動するための回転駆動モータは、基台フレームにおける従動側部に内装されている。また、傾斜フレームには、回転テーブルを回転駆動するために前記回転軸等を介して回転テーブルに連結された回転駆動軸が設けられている。そして、回転駆動モータの出力軸と回転駆動軸とが、傾斜フレーム(主に、傾斜テーブルを支持するアーム)に設けられた駆動伝達機構を介して連結されている。それにより、傾斜テーブル上に設置された回転テーブルは、駆動伝達機構を介し、回転駆動モータにより回転駆動される。なお、その駆動伝達機構は、ギア列から成るものや、プーリ及び駆動ベルトを用いたものが採用される。
【0004】
その上で、回転駆動モータは、その傾斜フレームの揺動に伴って回転するように、基台フレーム(従動側部)に対して回転可能に支持される。
【0005】
詳しくは、駆動伝達機構は傾斜フレームに設けられているため、傾斜フレームの揺動に伴ってその駆動伝達機構の位置も変化する。そのため、回転駆動モータが固定的に設けられていると、傾斜テーブルが揺動駆動されるのに伴い、駆動伝達機構が回転軸(回転テーブル)を回転させるような動作を行おうとすることとなる。その結果として、回転テーブルが回転してしまうと、回転駆動モータの出力軸の位相(角度位置)と回転テーブルの割出し位置との関係が変化してしまうため、制御上において問題が生じる。また、回転テーブルがクランプ装置等で回転不能な状態とされている場合には、傾斜駆動モータや駆動伝達機構に無理な負荷が掛かり、それらの破損を招いてしまう。そこで、回転駆動モータは、傾斜フレームの揺動に伴って回転するように設けられる。
【0006】
そして、特許文献1に開示された傾斜回転テーブル装置では、回転駆動モータを従動側部に対し回転可能に支持された状態とすべく、回転駆動モータは、出力軸の軸線を従動軸の軸線に略一致させる配置で、従動側部において回転可能に支持された従動軸に対し取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、傾斜回転テーブル装置は、工作機械におけるテーブル面上に設置されるが、加工精度等との関係で、そのテーブル面に対する回転テーブルの上面(ワークが設置される面)の位置関係(例えば、平行度)が正確に(厳密に)予め定められた基準を満たすようになっている必要がある。しかし、傾斜回転テーブル装置の搬送や設置作業等の影響で、工作機械のテーブル面に対する設置が完了した時点で、回転テーブルの上面と工作機械のテーブル面との位置関係が前記基準を満たさない状態となっている場合がある。そこで、その場合には、傾斜回転テーブル装置において、回転テーブルの位置の調整が行われる。
【0009】
そのために、傾斜回転テーブル装置は、特許文献1には開示されていないが、前記のような位置調整を行うための位置調整機構を備えており、一般的な傾斜回転テーブル装置では、その位置調整機構は、基台フレームにおける従動側部に設けられている。そして、従来の位置調整機構は、基台フレーム(従動側部)に対し軸受を介して支持された従動軸とその従動軸に取り付けられる傾斜フレームとの間で、従動軸に対する傾斜フレームの位置を調整できるように構成されている。そして、例えば前記位置関係としての平行度が前記基準を満たしていない場合には、その位置調整機構により、従動軸に対する傾斜フレームの位置を上下方向に変位させる調整が行われる。
【0010】
しかしながら、そのような位置調整を行った結果として、回転駆動モータと駆動伝達機構との間で新たな調整作業(別調整作業)が発生してしまう。
【0011】
詳しくは、前記のように従来の傾斜回転テーブル装置では、回転駆動モータは、従動軸に対し取り付けられている。一方で、駆動伝達機構は、前記のような位置調整の対象である傾斜フレームに設けられている。そのため、前記のように位置調整を行って傾斜フレームの位置を上下方向に変位させると、回転駆動モータと駆動伝達機構との相対位置も上下方向において変化し、その結果として、回転駆動モータ(出力軸)と駆動伝達機構との連結状態が変化してしまう。なお、その連結状態の変化として、駆動伝達機構が前記したギア列から成るものである場合には、その回転駆動モータの出力軸に取り付けられるギアとそれに噛合する駆動伝達機構におけるギアとの間のバックラッシが変化してしまうこととなる。また、駆動伝達機構がプーリ及び駆動ベルトを用いたものである場合には、駆動ベルトの張り具合が変化してしまうこととなる。そして、前者の場合にはバックラッシの再調整が必要となり、また、後者の場合には駆動ベルトの張り具合の再調整が必要となり、そのような再調整のための別調整作業が発生してしまう。
【0012】
そこで、本発明は、前記した位置調整を行ったとしても前記のような別調整作業が必要とはならない、傾斜回転テーブル装置の構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成すべく、本発明は、前述のような傾斜回転テーブル装置が、従動軸に対する傾斜フレームの位置を少なくとも上下方向に調整するための位置調整機構であって従動軸と傾斜フレームとの間に設けられる位置調整機構を備え、従動軸は、内部に前記回転駆動モータの少なくとも一部を配置可能であるような中空形状に形成され、且つ、前記傾斜フレームが取り付けられる取付部であって半径方向に延びると共に回転駆動モータの傾斜フレームに対する取り付けを許容するように形成された取付部を有し、回転駆動モータは、傾斜フレームを介して従動軸に支持されていることを特徴とする。
【0014】
なお、ここで言う「回転駆動モータの傾斜フレームに対する取り付けを許容するように形成され」とは、回転駆動モータを傾斜フレームに取り付けるための取り付け部分が取付部の内側で存在できるように取付部が形成されていることを言う。
【発明の効果】
【0015】
本発明による傾斜回転テーブル装置によれば、前記した位置調整に伴って回転駆動モータと駆動伝達機構との間で前記のような連結状態の変化が発生することが無いため、前記再調整が必要となること自体が無い。したがって、別調整作業を行う必要が無く、前記位置調整作業を全体として従来と比べて容易に行うことができる。
【0016】
詳しくは、前述のように回転駆動モータは、基台フレームに対し回転可能に支持されている必要がある。その上で、本発明による傾斜回転テーブル装置においては、回転駆動モータは、従来のように従動軸に対し直接的に支持されるのでは無く、従動軸を介して基台フレームに支持されるように従動軸に対し取り付けられた傾斜フレームを介して従動軸に対し支持されている。そして、従動軸は、そのような支持を可能とすべく、その取付部が、その内側に回転駆動モータを傾斜フレームに取り付けるための取り付け部分を配置可能であるように形成される。それにより、前記した位置調整は従来と同様に従動軸と傾斜フレームとの間で行われるが、回転駆動モータが傾斜フレームに取り付けられることから、回転駆動モータと駆動伝達機構との間で前記連結状態が変化することが無い。したがって、前記位置調整を行ったとしても、前記のような別調整作業を行う必要が無いため、前記位置調整作業を全体として従来と比べて容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る一実施形態における傾斜回転テーブル装置の全体図である。
【
図2】本発明に係る一実施形態における傾斜回転テーブル装置の要部拡大図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下では、
図1及び
図2に基づき、本発明が適用された傾斜回転テーブル装置の一実施形態(実施例)について説明する。
【0019】
図示のように、傾斜回転テーブル装置1は、基台フレーム10、傾斜フレーム20、及び回転テーブル30を含んでいる。
【0020】
詳しくは、基台フレーム10は、ベースとなる板状の架台16、及びその架台16の長手方向(
図1における左右方向)に離間して架台16上に立設された一対の支持台12、14とで構成されている。また、その基台フレーム10において、一対の支持台12、14のそれぞれには、回転軸40、50が軸受12a、14aを介して回転可能に支持されている。すなわち、傾斜回転テーブル装置1は、一対の回転軸40、50を備えており、各回転軸40、50が、基台フレーム10における一対の支持台12、14のそれぞれにおいて軸受12a、14aを介して回転可能に支持されている。なお、両回転軸40、50は、その軸線が架台16の長手方向と平行を成す向きで、且つ、架台16の長手方向に見て両者の軸線が略一致するように設けられている。
【0021】
また、傾斜フレーム20は、所謂クレードル式の傾斜フレーム20であり、板状であって板厚方向に見て矩形状を成す傾斜テーブル22と、その傾斜テーブル22を支持するための一対のアーム部24、26とで構成されている。具体的には、傾斜フレーム20は、傾斜テーブル22の長手方向(
図1における左右方向)における傾斜テーブル22の両端のそれぞれにアーム部24、26が連続するようなかたちで、傾斜テーブル22の端面と平行な方向に見て略U字状を成すように構成されている。
【0022】
その上で、傾斜フレーム20は、基台フレーム10における一対の支持台12、14間(一対の回転軸40、50間)において、その傾斜テーブル22の長手方向と架台16の長手方向とが平行を成す状態で、各アーム部24、26が対応する回転軸40、50に対し固定されることで、基台フレーム10に対し一対の回転軸40、50を介して支持されている。なお、各アーム部24、26の回転軸40、50に対する固定位置は、傾斜テーブル22に対するアーム部24、26の延在方向において傾斜テーブル22から離間した位置となっている。それにより、傾斜テーブル22は、回転軸40、50の軸線に対し離間した位置に配置された状態となっている。
【0023】
また、回転テーブル30は、円盤状の部材であり、傾斜フレーム20(傾斜テーブル22)上で回転可能に支持されている。具体的には、傾斜フレーム20には、軸線の方向を傾斜テーブル22の板厚方向に一致させる向きで、支持軸32が軸受22cを介して回転可能に支持されている。なお、傾斜テーブル22には、その中央部に支持軸32を収容するための収容孔22aが形成されており、支持軸32は、その収容孔22aに収容されると共に一端が傾斜テーブル22の上面から突出するように設けられている。その上で、回転テーブル30は、その支持軸32の一端に対し、その中心を支持軸32の軸線に一致させた状態で取り付けられている。それにより、回転テーブル30は、傾斜テーブル22に対し回転可能に支持されている。
【0024】
そして、傾斜回転テーブル装置1は、傾斜フレーム20を揺動駆動するための傾斜駆動部60と、回転テーブル30を回転駆動するための回転駆動部70とを含んでいる。
【0025】
傾斜駆動部60は、基台フレーム10における一対の支持台12、14のうちの一方の支持台(以下、「駆動支持台」とも言う。)12内において、その駆動支持台12内で回転可能に支持された一対の回転軸40、50のうちの一方の回転軸(以下、「傾斜駆動軸」とも言う。)40を回転駆動するように設けられている。その傾斜駆動部60は、傾斜駆動軸40に連結されたウォーム機構62と、ウォーム機構62を介して傾斜駆動軸40を回転駆動する傾斜駆動モータ(図示略)とを含んでいる。そして、傾斜回転テーブル装置1においては、傾斜駆動軸40が傾斜駆動モータによって回転駆動されることにより、傾斜フレーム20が揺動駆動される。また、そのように傾斜フレーム20が揺動駆動されるのに伴い、他方の回転軸(以下、「従動軸」とも言う。)50は、それに応じて従動回転する。
【0026】
回転駆動部70は、回転駆動モータ74を駆動源としている。そして、その回転駆動モータ74は、基台フレーム10における一対の支持台12、14のうちの他方の支持台14であって前記した従動軸50が回転可能に支持される支持台(以下、「従動支持台」とも言う。)14内に設けられている。その上で、回転駆動部70は、その回転駆動モータ74に加え、回転テーブル30を支持する支持軸32に連結されたウォーム機構72と、回転駆動モータ74の出力軸74aの回転をウォーム機構72へ伝達するための伝達ギア86を含む駆動伝達機構80とを有している。
【0027】
詳しくは、ウォーム機構72は、支持軸32に取り付けられたウォームホイール72aと、そのウォームホイール72aに連結されるウォームが取り付けられたウォーム軸(回転駆動軸)72bとで構成されている。なお、その回転駆動軸72bは、ウォームホイール72aの位置から従動軸50に固定される側のアーム部(従動側アーム部)26内まで延在するように設けられている。そのため、傾斜テーブル22内部には、そのように設けられる回転駆動軸72bが収容される空間22bであって前記した収容孔22aに連通する空間22bが形成されている。
【0028】
その上で、その回転駆動軸72bは、駆動伝達機構80を介して回転駆動モータ74の出力軸(以下、単に「出力軸」とも言う。)74aに連結される。なお、前記のように回転駆動軸72bが傾斜テーブル22内に設けられていることから、傾斜フレーム20が揺動駆動されるのに伴い、回転駆動軸72bと駆動伝達機構80との連結位置も揺動する。そして、そのような構成の場合、駆動伝達機構80による出力軸74aと回転駆動軸72bとの連結状態を一定に保つためには、出力軸74aの軸線の位置が傾斜フレーム20の揺動中心の位置(従動軸50の軸線の位置)に略一致するように、回転駆動モータ74が設けられている必要がある。そこで、回転駆動モータ74は、従動支持台14内において、その出力軸74aの軸線の位置が従動軸50の軸線の位置と略一致するように設けられている。
【0029】
具体的には、従動軸50は、回転駆動モータ74における外径が最も大きい部分よりも大径の軸であり、中空円筒状に形成された軸となっている。また、その従動軸50の内側の空間の内径は、回転駆動モータ74を収容し得る大きさとなっている。その上で、回転駆動モータ74は、その一部が従動軸50の内側の空間内に位置すると共に、出力軸74aの軸線の位置が従動軸50の軸線の位置と略一致するような配置で設けられている。但し、回転駆動モータ74は、そのように配置された状態で、その出力軸74aが従動支持台14から傾斜フレーム20側へ向けて突出した状態となっている。
【0030】
また、回転駆動モータ74がそのように設けられると共に回転駆動軸72bが傾斜テーブル22に設けられるという両者の位置関係から、出力軸74aと回転駆動軸72bとは、上下方向において離間した配置となっている。そして、そのように配置された出力軸74aと回転駆動軸72bとが、前記のように駆動伝達機構80により連結されている。
【0031】
具体的には、回転駆動モータ74における出力軸74aは、前記のように従動支持台14から傾斜フレーム20側へ向けて突出しており、また、回転駆動軸72bも、前記のように傾斜テーブル22から従動側アーム部26内まで延在している。そのため、従動側アーム部26は、それらの軸72b、74aの配置を許容すべく、その内部に形成された空間部26aを有している。そして、出力軸74a及び回転駆動軸72bの先端は、その空間部26a内に位置している。その上で、出力軸74aには駆動ギア82が固定されると共に回転駆動軸72bには従動ギア84が固定され、その駆動ギア82と従動ギア84とが空間部26a内に設けられた1以上の伝達ギア86を介して連結されている。そして、その駆動ギア82、従動ギア84、及び伝達ギア86から成るギア列が駆動伝達機構80に相当する。
【0032】
なお、傾斜駆動部60及び回転駆動部70は、ウォームホイール62a、72aが取り付けられた軸62b、72bの回転を停止させるためのクランプ機構90、100をそれぞれ備えており、各々の駆動時以外では傾斜フレーム20の揺動や回転テーブル30の回転が阻止される構成となっている。因みに、図示の例では、そのクランプ機構90、100は、所謂ディスク式のクランプ機構であるが、他の形式のもの(例えば、スリーブ式のクランプ機構)であっても良い。
【0033】
また、出力軸74aと回転駆動軸72bとは前記のようなギア列から成る駆動伝達機構80で連結されているが、クランプ機構100により回転テーブル30の回転が阻止された状態で傾斜フレーム20が揺動駆動されると、従動側アーム部26に内装された駆動伝達機構80が揺動するのに伴い、回転駆動モータ74において出力軸74aが回転し、回転駆動モータ74における出力軸74aの回転位相と回転テーブル30の割出し位置との関係が変化してしまう。そこで、傾斜フレーム20の揺動に伴って回転駆動モータ74自体が回転することで回転駆動モータ74内で出力軸74aの回転位相が変化しないようにするために、回転駆動モータ74は、従動支持台14に対し回転可能に支持されている。
【0034】
前記した従動軸(回転軸)50に対する傾斜フレーム20(従動側アーム部26)の支持(固定)について、図示の例において従動側アーム部26には、側面(従動支持台14と対向する端面)に開口する円形の溝部26bが形成されている。なお、その溝部26bは、従動軸50の外径よりも若干大きい内径を有している。その上で、傾斜フレーム20は、従動軸50の端面が溝部26bの底面に当接して従動軸50の一端部が溝部26b内に位置する(受け入れられた)状態で、従動軸50に対し固定されている。
【0035】
また、その固定について、従動軸50は、前記した内側の空間において半径方向に延びるように形成された取付部50aを前記一端部に有している。なお、その取付部50aにおける傾斜フレーム20側の端面も、前記した従動軸50の端面となっており、従動側アーム部20における溝部26bの底面に当接した状態とされる。また、取付部50aには、従動軸50の軸線方向と平行に穿設された挿通孔50a1が、円周方向に所定の間隔をおいて複数形成されている。そして、前記のように従動軸50の前記一端部が従動側アーム部26の溝部26aに受け入れられた状態で、取付部50の各挿通孔50a1に挿入された取付ボルト52が従動側アーム部26に螺挿されることで、従動側アーム部26(傾斜フレーム20)が従動軸50に対し固定される。
【0036】
その上で、回転駆動モータ74は、モータブラケット110を介して傾斜フレーム20に対し取り付けられる。具体的には、傾斜回転テーブル装置1は、回転駆動モータ74を傾斜フレーム20に対して取り付けるためのモータブラケット110を有している。そのモータブラケット110は、円盤状の部材であって板厚方向に貫通する貫通孔110aを有する部材である。また、回転駆動モータ74は、自身をモータブラケット110に取り付けるためのフランジ部74bを有している。さらに、そのフランジ部74bにも、回転駆動モータ74をモータブラケット110に取り付けるための取付ボルト114が挿通される貫通孔が、円周方向に所定の間隔をおいて複数形成されている。なお、モータブラケット110と回転駆動モータ74のフランジ部74bとは、その外径が略一致するように形成されている。
【0037】
また、従動軸50における取付部50aとモータブラケット110との関係について、取付部50aは、その内径がモータブラケット110の外径よりも若干大きくなるように形成されている。すなわち、取付部50aは、その内側にモータブラケット110を配置することを許容する大きさ、言い換えれば、前記のように従動側アーム部26が従動軸50に対し固定された状態でモータブラケット110の従動側アーム部26に対する取付を許容する大きさとなっている。因みに、図示の例では、従動軸50の軸線方向における取付部50aの寸法とモータブラケット110の板厚寸法とが略一致するように両者が形成されている。
【0038】
そして、回転駆動モータ74を傾斜フレーム20(従動側アーム部26)に取り付けるにあたっては、先ずは、従動軸50に固定された状態の従動側アーム部26に対しモータブラケット110が取り付けられる。なお、その取り付けは、モータブラケット110における回転駆動モータ74のフランジ部74bに対応する部分よりも半径方向における内側で、モータブラケット110に形成された貫通孔に挿通された複数の取付ボルト112が従動側アーム部26に螺挿されるかたちで行われる。それにより、モータブラケット110は、従動軸50の取付部50aの内側に位置すると共に、取付部50aの内周面との間に隙間が形成された状態とされる。
【0039】
その上で、回転駆動モータ74が、モータブラケット110に対し取り付けられる。なお、その取り付けは、フランジ部74bに形成された各貫通孔に挿通された取付ボルト114がモータブラケット110に螺挿されるかたちで行われる。そして、そのように取り付けられた状態では、回転駆動モータ74は、その出力軸74aがモータブラケット110の貫通孔110aを通過し、その先端部分が従動側アーム部26内の空間部26bに位置する状態となる。
【0040】
このように、回転駆動モータ74は、モータブラケット110を介して傾斜フレーム20に対し取り付けられており、従動支持台14において回転可能に支持された従動軸50に対し傾斜フレーム20を介して支持された状態となっている。したがって、回転駆動モータ74は、前記のように出力軸74aの軸線の位置が従動軸50の軸線の位置と略一致するように設けられていることから、傾斜フレーム20の揺動に伴って従動軸50の軸線を中心として回転する。
【0041】
また、本発明の傾斜回転テーブル装置1は、一対の回転軸(傾斜駆動軸、従動軸)40、50間で支持されている傾斜フレーム20における従動側アーム部26の従動軸50に対する位置を少なくとも上下方向に位置調整可能であるように構成される。そして、本実施例の傾斜回転テーブル装置1は、従動軸50に対する傾斜フレーム20の位置を上下方向に位置調整するための位置調整機構120を備えている。すなわち、本実施例の傾斜回転テーブル装置1は、その設置される工作機械におけるテーブル面に対する回転テーブル30の上面の平行度(以下、単に「平行度」とも言う。)を調整することができる位置調整機構120を備えている。
【0042】
その位置調整機構120は、従動側アーム部26に形成された雌ネジ孔120bと、その雌ネジ孔120bに螺挿される調整ネジ(イモネジ、ボルト等)120aとで構成されている。具体的には、従動側アーム部26には、従動側アーム部26の延在方向が上下方向と一致する状態で上端となる位置に開口する雌ネジ孔120bが形成されている。なお、その雌ネジ孔120bは、従動側アーム部26の板厚方向に関しては溝部26bの存在範囲内に形成されており、溝部26bへ向けて前記延在方向と平行に貫通するように形成されている。その上で、その雌ネジ孔120bには、調整ネジ120aが螺挿されている。なお、調整ネジ120aは、その先端部が溝部26b内に突出し、その先端面において従動軸50の外周面に対し当接した状態とされている。
【0043】
なお、位置調整機構120による調整は、例えば工作機械のテーブル面に対する傾斜回転テーブル装置1の設置が完了した時点で、前記平行度が予め定められた基準を満たしていない場合に行われる。そして、その前記平行度の調整は、前記のように雌ネジ孔120bから突出する調整ネジ120aの先端部の突出量を変化させることで行われる。
【0044】
より詳しくは、その調整にあたっては、先ずは、取付ボルト52を操作し、取付ボルト52による従動軸50と従動側アーム部26とが締め付け固定された状態(締結状態)を緩める。なお、取付部50aの各挿通孔50a1は、取付ボルト52の軸部分の径よりも大きい内径を有している。そして、従動軸50に対して従動側アーム部26が固定された状態では、初期状態では、その挿通孔50a1と取付ボルト52の軸部分との間に空間が形成された状態となっている。したがって、前記のように締結状態を緩めると、従動側アーム部26(傾斜フレーム20)を前記空間の分だけ従動軸50に対し変位させることが可能な状態となる。
【0045】
そして、前記のように締結状態を緩めると、従動側アーム部26は、その自重により下方に変位しようとする状態となるが、自身に形成された雌ネジ孔120bに螺挿された調整ネジ120aがその先端面において従動軸50の外周面に当接していることにより、従動軸50に対しその調整ネジ120aにおいて支えられた状態となる。したがって、前記のように締結状態を緩めても、従動側アーム部26(傾斜フレーム20)が直ちに変位することは無い。
【0046】
その上で、工作機械におけるテーブル面に対する回転テーブル30の上面の傾きの方向及び度合いに応じて、従動軸50に対する従動側アーム部26の位置が上下方向において調整され、それにより、前記平行度が前記基準を満たした状態とする位置調整が行われる。
【0047】
具体的には、従動軸50に対する従動側アーム部26の位置を上下方向のより上方の位置に調整する場合には、前記突出量を増やす方向に調整ネジ120aを回転させる。それにより、従動側アーム部26は、前記したように調整ネジ120aの先端部が従動軸50の外周面に当接した状態であるため、前記突出量が増大するのに伴って上方へ変位する。一方、従動軸50に対する従動側アーム部26の位置を上下方向のより下方の位置に調整する場合には、前記突出量を減らす方向に調整ネジ120aを回転させる。それにより、従動側アーム部26は、前記突出量が減少するのに伴って下方へ変位する。
【0048】
そして、前記平行度が前記基準を満たすように従動側アーム部26の位置を上下方向に調整した後、従動軸50と従動側アーム部26とを取付ボルト52で再び締め付け固定することで、その調整作業が完了する。
【0049】
以上のような本実施例の傾斜回転テーブル装置1によれば、回転駆動モータ74がモータブラケット110を介して傾斜フレーム20(従動側アーム部26)に支持されているため、前記のように従動側アーム部26の位置が上下方向に調整されると、それに伴い、回転駆動モータ74も従動側アーム部26と共に上下方向に変位する。それにより、前記のような位置調整に伴う回転駆動モータ74と従動側アーム部26との相対位置の変化が発生しない。延いては、空間部26b内に設けられると共に回転駆動モータ74の出力軸74aに固定された駆動ギア82を含む駆動伝達機構80におけるギア列の連結状態も変化することが無いため、従来のようなギア列の連結状態の変化に伴う別調整作業を行う必要が無く、前記調整作業を全体として容易に行うことができる。
【0050】
以上では、本発明が適用された傾斜回転テーブル装置の一実施形態(以下、「前記実施例」と言う。)について説明した。しかし、本発明は、前記実施例において説明したものに限定されるものではなく、以下のような別の実施形態(変形例)での実施も可能である。
【0051】
(1)本発明が適用される傾斜回転テーブル装置について、前記実施例の傾斜回転テーブル装置1は、駆動伝達機構80が駆動ギア82、従動ギア84及び伝達ギア86から成るギア列で構成されたものとなっている。しかし、本発明は、その駆動伝達機構が回転駆動モータの出力軸に固定された駆動プーリと回転駆動軸に固定された従動プーリとを駆動ベルトで連結するように構成された傾斜回転テーブル装置に対しても適用可能である。
【0052】
(2)従動軸に対する傾斜フレームの位置の調整(位置調整)を行うための位置調整機構について、前記実施例では、位置調整機構120は、上下方向にのみその位置調整が行えるように構成されている。しかし、本発明において、位置調整機構は、そのように位置調整を上下方向にのみ行えるように構成されたものに限らず、上下方向に加え、傾斜回転テーブル装置1の前後方向(
図1における紙面と垂直な方向)にも位置調整が行えるように構成されたものであっても良い。なお、前記前後方向への位置調整は、前記前後方向に関し、両回転軸40、50の軸線に対する回転テーブル30の中心の位置のズレが予め定められた基準を満たすように行われる。
【0053】
そのような前記前後方向への位置調整を行うための構成は、例えば、前記実施例における上下方向への位置調整のための構成と同様に、雌ネジ孔と調整ネジとを組み合わせたものとされる。具体的には、その雌ネジ孔は、従動側アーム部の延在方向と上下方向とが一致する状態で、その従動側アーム部における前側の面及び後側の面のそれぞれに開口すると共に水平方向に穿設されるかたちで形成される。但し、その各雌ネジ孔は、前記初期状態において、その穿設方向に見て従動軸50の軸線の位置と一致する位置で、溝部へ向けて貫通するように形成される。その上で、調整ネジが各雌ネジ孔に螺挿され、各調整ネジの先端面が従動軸50の外周面に当接した状態とされる。
【0054】
そして、そのような構成を備えた位置調整機構において、前記前後方向への位置調整を行うにあたっては、先ず、前記平行度の調整と同様に取付ボルト52による締結状態を緩める。その上で、前記前後方向に関し、回転テーブル30の中心を変位させたい側に位置する調整ネジを前記突出量を減らす方向に回転させ、その調整ネジとは反対側に位置する調整ネジを前記突出量が増える方向に回転させることで、回転テーブル30の中心の位置を調整する。そして、前記位置のズレが前記基準を満たすように回転テーブル30の中心の位置を調整した後、従動軸50と従動側アーム部とを再び締め付け固定することでその位置調整の作業が完了する。
【0055】
(3)傾斜フレームに対する回転駆動モータの取り付け構成について、前記実施例では、回転駆動モータ74は、従動軸50における取付部50aの内側に位置すると共に、傾斜フレーム20に取り付けられたモータブラケット110を介し、傾斜フレーム20(従動側アーム部26)に取り付けられている。しかし、本発明は、そのように回転駆動モータがモータブラケットを介して傾斜フレームに対し間接的に取り付けられるように構成されたものに限らず、傾斜フレームに対し回転駆動モータが直接的に取り付けられるように構成されたものであっても良い。
【0056】
なお、その場合、回転駆動モータは、そのフランジ部の出力軸側の端面において傾斜フレーム20(従動側アーム部26)の従動軸側の端面に当接し得るように構成され、フランジ部の貫通孔に挿通される複数の取付ボルトにより従動側アーム部26に対し取り付けられる。そして、その場合には、従動軸の軸線方向において回転駆動モータのフランジ部と従動軸の取付部との位置が重複するかたちとなるため、従動軸における取付部は、その内径が回転駆動モータのフランジ部の外径よりも若干大きくなるように形成される。すなわち、取付部は、その内側に回転駆動モータ(フランジ部)を配置することを許容する大きさ、言い換えれば、傾斜フレーム20が従動軸に対し固定された状態で回転駆動モータの傾斜フレーム20に対する取り付けを許容する大きさに形成される。
【0057】
また、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 傾斜回転テーブル装置
10 基台フレーム
12 駆動支持台
14 従動支持台
16 架台
20 傾斜フレーム
22 傾斜テーブル
22a 収容孔
22b 空間
24 アーム部
26 アーム部(従動側アーム部)
26a 空間部
30 回転テーブル
32 支持軸
40 回転軸(傾斜駆動軸)
50 回転軸(従動軸)
50a 取付部
50a1 挿通孔
52 取付ボルト
60 傾斜駆動部
62 ウォーム機構
70 回転駆動部
72 ウォーム機構
72a ウォームホイール
72b ウォーム軸(回転駆動軸)
74 回転駆動モータ
74a 出力軸
74b フランジ部
80 駆動伝達機構
82 駆動ギア
84 従動ギア
86 伝達ギア
110 モータブラケット
110a 貫通孔
112 取付ボルト
114 取付ボルト
120 位置調整機構
120a 調整ネジ120a
120b 雌ネジ孔