(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】レドックスフロー電池、およびレドックスフロー電池のための方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/18 20060101AFI20221227BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20221227BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20221227BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20221227BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/02
H01M8/04 J
H01M8/04746
(21)【出願番号】P 2019140397
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2019-07-31
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-23
(32)【優先日】2018-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590005449
【氏名又は名称】レイセオン テクノロジーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】マイケル エル.ペリー
【合議体】
【審判長】山田 正文
【審判官】井上 信一
【審判官】山本 章裕
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レドックスフロー電池であって、
第1のセル及び第2のセルであって、前記セルのそれぞれが、第1の電極及び第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配列されるセパレータ層とを有する、第1のセル及び第2のセルと、
前記第1のセルの前記第1の電極と流体接続される第1の循環ループと、
前記第1の循環ループ内に収容される11.5以上のpHを有する硫化物電解質溶液と、
前記第2のセルの前記第2の電極と流体接続される第2の循環ループと、
前記第2の循環ループ内に収容される3以下のpHを有する鉄電解質溶液と、
前記第1のセルの前記第2の電極と、前記第2のセルの前記第1の電極とに流体接続される第3の循環ループと、
前記第3の循環ループ内に含有される仲介電解質溶液と、を含み、
前記第1のセル内の前記硫化物電解質溶液及び前記仲介電解質溶液、ならびに前記第2のセル内の前記鉄電解質溶液及び前記仲介電解質溶液は、充電するときに投入電気エネルギーを貯蔵し、かつ放電するときに貯蔵された前記電気エネルギーを放電するように可逆反応するように動作可能であり、
前記仲介電解質溶液は、キノキサリン、アントラキノン、またはベンゾキノンのうちの少なくとも1つを有しており、
前記仲介電解質溶液は12以上のpHを有し、
前記第1のセルは-0.3Vよりも大きい標準電極電位を有する、レドックスフロー電池。
【請求項2】
前記仲介電解質溶液は、1,2-ベンゾキノン-3,5-ジスルホン酸を含む、請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【請求項3】
前記仲介電解質溶液は、4,4’-((9,10-アントラキノン-2,6-ジイル)ジオキシ)ジブチラート(2,6-DBEAQ)、4,4’-((9,10-アントラキノン-1,2-ジイル)ジオキシ)ジブチラート(1,2-DBEAQ)、または4,4’-((9,10-アントラキノン-1,8-ジイル)ジオキシ)ジブチラート(1,8-DBEAQ)のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【請求項4】
前記第1の循環ループは、バイパスラインと、前記バイパスライン内の第3のセルとを含み、
前記第3のセルは、水素ガスを生成するために、前記硫化物電解質溶液を電解するように動作可能である、請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【請求項5】
前記第3のセルは、前記水素ガスを供給するための供給ラインによって前記第2の循環ループに接続される、請求項4に記載のレドックスフロー電池。
【請求項6】
前記第2の循環ループは、バイパスラインと、前記バイパスライン内の第3のセルとを含み、
前記第3のセルは、酸素ガスを生成するために、前記鉄電解質溶液を電解するように動作可能である、請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【請求項7】
前記第3のセルは、前記酸素ガスを供給するための供給ラインによって前記第1の循環ループに接続される、請求項6に記載のレドックスフロー電池。
【請求項8】
レドックスフロー電池のための方法であって、
充電するときに投入電気エネルギーを貯蔵し、放電するときに貯蔵された前記電気エネルギーを放電するために、レドックスフロー電池の第1のセル及び第2のセルを使用することであって、
前記セルのそれぞれは、第1の電極と第2の電極との間に配列されるイオン交換
層を有し、
前記使用することは、
前記第1のセルの前記第1の電極と流体接続する第1の循環ループを通して、11.5以上のpHの硫化物電解質溶液を循環させることと、
前記第2のセルの前記第2の電極と流体接続する第2の循環ループを通して、3以下のpHの鉄電解質溶液を循環させることと、
前記第1のセルの前記第2の電極と、前記第2のセルの前記第1の電極とに流体接続する第3の循環ループを通して、仲介電解質溶液を循環させることと、を含み、
前記第1のセルの前記第1の電極内の前記硫化物電解質溶液から前記イオン交換
層を通って浸透した硫黄は、前記第1のセルの前記第2の電極内に固体硫化物生成物として沈殿し、前記第2のセルの前記第2の電極内の前記鉄電解質溶液から前記イオン交換
層を通って浸透した鉄は、前記第2のセルの前記第1の電極内に固体鉄生成物として沈殿する、
第1のセル及び第2のセルを使用することと、
前記第1のセルの前記第2の電極、または前記第2のセルの前記第1の電極のいずれかから、前記仲介電解質溶液を空にすることと、
前記固体硫化物生成物を前記硫化物電解質溶液に回収すること、または前記固体鉄生成物を前記鉄電解質溶液に回収すること、のいずれかを行うことであって、それぞれ、
前記第1の循環ループから前記第1のセルの前記第2の電極を通して、前記硫化物電解質溶液の少なくとも一部を循環させて、前記第2の電極から前記固体硫化物生成物を溶解させ、それにより除去し、次に、溶解した前記固体硫化物生成物とともに前記硫化物電解質溶液を、前記第1の循環ループに戻すように移送することによって回収すること、または、
前記第2の循環ループから前記第2のセルの前記第1の電極を通して、前記鉄電解質溶液の少なくとも一部を循環させて、前記第1の電極から前記固体鉄生成物を溶解させ、それにより除去し、次に、溶解した前記固体鉄生成物とともに前記鉄電解質溶液を、前記第2の循環ループに戻すように移送することによって回収すること、のいずれかを行うことと、
を備え、
前記第1のセル内の前記硫化物電解質溶液及び前記仲介電解質溶液、ならびに前記第2のセル内の前記鉄電解質溶液及び前記仲介電解質溶液は、充電するときに投入電気エネルギーを貯蔵し、かつ放電するときに貯蔵された前記電気エネルギーを放電するように可逆反応するように動作可能であり、
前記仲介電解質溶液は、キノキサリン、アントラキノン、またはベンゾキノンのうちの少なくとも1つを有しており、
前記仲介電解質溶液は12以上のpHを有し、
前記第1のセルは-0.3Vよりも大きい標準電極電位を有することを特徴とする、方法。
【請求項9】
前記仲介電解質溶液を12以上のpHに維持することを含み、それにより、前記鉄は、前記イオン交換層を通って、前記第2のセルの前記第2の電極から、前記第2のセルの前記第1の電極の中に浸透したときに沈殿する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記仲介電解質溶液を12以上のpHに維持することを含み、それにより、前記硫黄は、前記イオン交換層を通って、前記第1のセルの前記第1の電極から、前記第1のセルの前記第2の電極の中に浸透したときに沈殿する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
レドックスフロー電池のための方法であって、
充電するときに投入電気エネルギーを貯蔵し、放電するときに貯蔵された前記電気エネルギーを放電するために、レドックスフロー電池の第1のセル及び第2のセルを使用することであって、
前記セルのそれぞれは、第1の電極と第2の電極との間に配列されるセパレータ層を有し、
前記使用することは、
前記第1のセルの前記第1の電極と流体接続する第1の循環ループを通して、11.5以上のpHの硫化物電解質溶液を循環させることと、
前記第2のセルの前記第2の電極と流体接続する第2の循環ループを通して、3以下のpHの鉄電解質溶液を循環させることと、
前記第1のセルの前記第2の電極と、前記第2のセルの前記第1の電極と、に流体接続する第3の循環ループを通して、仲介電解質溶液を循環させることと、を含む、
第1のセル及び第2のセルを使用することと、
水素ガスを生成するように前記硫化物電解質溶液を電解する、または、酸素ガスを生成するように前記鉄電解質溶液を電解する、のいずれかを行うための第3のセルを使用することと、
前記硫化物電解質溶液のpHを11.5以上のpHに維持する、または、前記鉄電解質溶液のpHを3以下のpHに維持することであって、それぞれ、
前記硫化物電解質溶液のpHを調整するために前記酸素ガスを前記硫化物電解質溶液中に導入することによって維持する、または
前記鉄電解質溶液のpHを調整するために前記水素ガスを前記鉄電解質溶液中に導入することによって維持することと、
を備え、
前記第1のセル内の前記硫化物電解質溶液及び前記仲介電解質溶液、ならびに前記第2のセル内の前記鉄電解質溶液及び前記仲介電解質溶液は、充電するときに投入電気エネルギーを貯蔵し、かつ放電するときに貯蔵された前記電気エネルギーを放電するように可逆反応するように動作可能であり、
前記仲介電解質溶液は、キノキサリン、アントラキノン、またはベンゾキノンのうちの少なくとも1つを有しており、
前記仲介電解質溶液は12以上のpHを有し、
前記第1のセルは-0.3Vよりも大きい標準電極電位を有することを特徴とする、方法。
【請求項12】
前記酸素ガスの前記導入は、前記酸素ガスを、前記硫化物電解質溶液にスパージングすることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記水素ガスの前記導入は、前記水素ガスを、前記鉄電解質溶液にスパージングすることを含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質平衡化特徴及び相溶性実現特徴を有するレドックスフロー電池に関する。
【背景技術】
【0002】
フロー電池(また、レドックスフロー電池またはレドックスフローセルとしても既知である)は、電気エネルギーを、化学エネルギー(要求があるときに貯蔵し後で放出することができる)に変換するように設計されている。例として、フロー電池は、多くの需要があるときに、消費者需要を超えるエネルギーを貯蔵し、後で当該エネルギーを放出するために、風力発電システム等の再生可能エネルギーシステムとともに使用され得る。
【0003】
標準的なフロー電池は、イオン交換膜等のセパレータを含み得る電解質層によって分離される負極及び正極を有するレドックスフローセルを含む。負の流体電解質(時々、アノード液と称される)は負極に送達され、正の流体電解質(時々、カソード液と称される)は正極に送達され、レドックスのペアの間で可逆レドックス反応を活発にする。充電するとき、供給される電気エネルギーは、一方の電解質で化学的還元反応を生じ、他方の電解質で酸化反応を生じさせる。セパレータは、電解質が、自由に及び急速に混合することを防止するが、選択されたイオンが、レドックス反応を完了するために通過することを可能にする。放電するとき、液体電解質中に含有される化学エネルギーは、逆反応で放出され、電気エネルギーを電極から引き込むことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、不相溶性の電解質の使用を可能にするレドックスフロー電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の例に従ったレッドクスフロー電池は、第1のセル及び第2のセルを含む。各セルは、第1の電極及び第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配列されるセパレータ層とを有する。第1の循環ループは、第1のセルの第1の電極と流体接続される。ポリ硫化物(polysulfide)電解質溶液は、11.5以上のpHを有し、第1の再循環ループ内に含有される。第2の循環ループは、第2のセルの第2の電極と流体接続される。鉄電解質溶液は、3以下のpHを有し、第2の循環ループ内に含有される。第3の循環ループは、第1のセルの第2の電極と、第2のセルの第1の電極とに流体接続される。仲介電解質(intermediator electrolyte)溶液は、第3の循環ループ内に含有される。第1のセル内のポリ硫化物電解質溶液及び仲介電解質溶液、ならびに第2のセル内の鉄電解質溶液及び仲介電解質溶液は、充電するときに投入電気エネルギーを貯蔵するように及び放電するときに貯蔵された電気エネルギーを放電するように可逆反応するように動作可能である。
【0006】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、仲介電解質溶液は12以上のpHを有する。
【0007】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、第1のセルは-0.3V(標準水素電極)よりも大きい標準電極電位を有する。
【0008】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、仲介電解質溶液は、キノキサリン、アントラキノン、またはベンゾキノンのうちの少なくとも1つを含む。
【0009】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、仲介電解質溶液は、1,2-ベンゾキノン-3,5-ジスルホン酸を含む。
【0010】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、仲介電解質溶液は、2,6-DBEAQ、1,2-DBEAQ、または1,8-DBEAQのうちの少なくとも1つを含む。
【0011】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、第1の循環ループは、バイパスラインと、バイパスライン内に第3のセルとを含む。第3のセルは、水素ガスを生成するために、ポリ硫化物電解質溶液を電解するように動作可能である。
【0012】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、第3のセルは、第2の循環ループに水素ブリードラインによって接続される。
【0013】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、第2の循環ループは、バイパスラインと、バイパスライン内の第3のセルとを含む。第3のセルは、酸素ガスを生成するために、鉄電解質溶液を電解するように動作可能である。
【0014】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、第3のセルは、第1の循環ループに酸素ブリードラインによって接続される。
【0015】
本開示の例に従ったレッドクスフロー電池のための方法は、充電するときに投入電気エネルギーを貯蔵し、放電するときに貯蔵された電気エネルギーを放電するために、レッドクスフロー電池の第1のセル及び第2のセルを使用することを含む。各セルは、第1の電極と第2の電極との間に配列されるセパレータ層を有する。11.5以上のpHのポリ硫化物電解質溶液は第1のセルの第1の電極と流体接続する第1の循環ループを通って循環し、3以下のpHの鉄電解質溶液は第2のセルの第2の電極と流体接続する第2の循環ループを通って循環し、仲介電解質溶液は第1のセルの第2の電極と、第2のセルの第1の電極とに流体接続する第3の循環ループを通って循環する。第1のセルの第1の電極内のポリ硫化物電解質溶液からの硫黄は、第1のセルのイオン交換層を通って浸透し、第2の電極内に固体硫化物生成物として沈殿し、第2のセルの第2の電極内の鉄電解質溶液からの鉄は第2のセルのイオン交換層を通って浸透し、固体鉄生成物として沈殿する。仲介電解質溶液は、第1のセルの第2の電極または第2のセルの第1の電極のいずれかから空にされ、固体硫化物生成物がポリ硫化物電解質溶液に回収される、または固体鉄生成物が鉄電解質溶液に回収される、のいずれかが行われ、これは、各々、第1の循環ループから第2の電極を通して、ポリ硫化物電解質溶液の少なくとも一部を循環させて、第1のセルの第2の電極から固体硫化物生成物を溶解させ、それにより除去し、次に、溶解した固体硫化物生成物とともにポリ硫化物電解質溶液を、第1のループに戻すように移送することにより、または、第2の循環ループから第1の電極を通して、鉄電解質溶液の少なくとも一部を循環させて、第2のセルの第1の電極から固体鉄生成物を溶解させ、それにより除去し、次に、溶解された固体鉄生成物とともに鉄電解質溶液を、第2のループに戻すように移送することによって回収される。
【0016】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態は、仲介電解質溶液を12以上のpHに維持することを含み、それにより、鉄は、イオン交換層を通って、第2のセルの第2の電極から、第2のセルの第1の電極の中に浸透したときに沈殿する。
【0017】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態は、仲介電解質溶液を12以上のpHに維持することを含み、それにより、硫黄は、イオン交換層を通って、第1のセルの第1の電極から、第1のセルの第2の電極の中に浸透したときに沈殿する。
【0018】
本開示の例に従ったレッドクスフロー電池のための方法は、充電するときに投入電気エネルギーを貯蔵し、放電するときに貯蔵された電気エネルギーを放電するために、レッドクスフロー電池の第1のセル及び第2のセルを使用することを含む。各セルは、第1の電極と第2の電極との間に配列されるセパレータ層を有する。11.5以上のpHのポリ硫化物電解質溶液は第1のセルの第1の電極と流体接続する第1の循環ループを通って循環し、3以下のpHの鉄電解質溶液は第2のセルの第2の電極と流体接続する第2の循環ループを通って循環し、仲介電解質溶液は第1のセルの第2の電極と、第2のセルの第1の電極とに流体接続する第3の循環ループを通って循環する。第3のセルは、水素ガスを生成するようにポリ硫化物電解質溶液を電解する、または酸素ガスを生成するように鉄電解質溶液を電解する、のいずれかを行うために使用される。ポリ硫化物電解質溶液のpHは11.5以上のpHに維持され、または、鉄電解質溶液のpHは3以下のpHに維持され、各々、ポリ硫化物電解質溶液のpHを調整するために酸素ガスをポリ硫化物電解質溶液中に導入することによって、または、鉄電解質溶液のpHを調整するために水素ガスを鉄電解質溶液中に導入することによって維持される。
【0019】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、酸素ガスの導入は、酸素ガスを、ポリ硫化物電解質溶液中にスパージング(sparging)することを含む。
【0020】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態では、水素ガスの導入は、水素ガスを、鉄電解質溶液中にスパージングすることを含む。
【0021】
本開示の例に従ったレッドクスフロー電池のための方法は、充電するときに投入電気エネルギーを貯蔵し、放電するときに貯蔵された電気エネルギーを放電するために、レッドクスフロー電池のセルを使用することを含む。セルは、第1の電極と第2の電極との間に配列されるセパレータ層を有する。11.5以上のpHのポリ硫化物電解質溶液はセルの第1の電極と流体接続する第1の循環ループを通って循環し、マンガン酸塩電解質溶液はセルの第2の電極と流体接続する第2の循環ループを通って循環する。第1の電極内のポリ硫化物電解質溶液からの硫黄は、イオン交換層を通って浸透し、第2の電極内に固体硫化物生成物として沈殿し、マンガン酸塩電解質溶液からのマンガン酸塩は第2のセルのイオン交換層を通って浸透し、第1の電極内に固体鉄生成物として沈殿する。固体硫化物生成物がポリ硫化物電解質溶液に回収される、または固体マンガン生成物がマンガン酸塩電解質溶液に回収される、のいずれかが行われ、これは、各々、第1の循環ループから第2の電極を通して、ポリ硫化物電解質溶液の少なくとも一部を循環させて、第2の電極から固体硫化物生成物を溶解させ、それにより除去し、次に、溶解した固体硫化物生成物とともにポリ硫化物電解質溶液を、第1のループに戻すように移送することによって、または、第2の循環ループから第1の電極を通して、マンガン塩酸電解質溶液の少なくとも一部を循環させて、第1の電極から固体マンガン生成物を溶解させ、それにより除去し、次に、溶解した固体鉄生成物とともにマンガン塩酸電解質溶液を、第2のループに戻すように移送することによって回収される。
【0022】
前述の実施形態のいずれかのさらなる実施形態は、溶解された固体硫化物生成物とともにポリ硫化物電解質溶液を、第1の方向に双方向フィルタを通るように通過させ、溶解された固体マンガン生成物とともにマンガン酸塩電解質溶液を、第2の、反対方向に双方向フィルタを通るように通過させることを含む。
【0023】
本開示の例に従ったレッドクスフロー電池は、第1の電極及び第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配列されるイオン交換層とを有するセルを含む。第1の循環ループは第1の電極と流体接続する。ポリ硫化物電解質溶液は、11.5以上のpHを有し、第1の再循環ループ内に含有される。第2の循環ループは第2の電極と流体接続する。鉄電解質溶液またはマンガン酸塩電解質溶液は、第2の循環ループ内に含有される。第1の補助ループは双方向フィルタを通るように第1の循環ループを第2の電極と接続し、第2の補助ループは双方向フィルタを通るように第2の循環ループを第1の電極と接続する。
【0024】
本開示の様々な特徴及び利点は、以下の詳細な説明から、当業者に明白になるだろう。以下のように、詳細な説明に付随する図面を簡潔に説明することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】フラッシュラインを有するレッドクスフロー電池を示す図である。
【
図3】レッドクスフロー電池の硫黄、鉄、またはマンガンを回収するための方法を示す図である。
【
図4】レッドクスフロー電池の第1のループ内のバイパスライン及び第3のセルを示す図である。
【
図5】レッドクスフロー電池の第2のループ内のバイパスライン及び第3のセルを示す図である。
【
図6】フロー電池のポリ硫化物電解質溶液または鉄電解質溶液のpHを維持する例示的方法を示す図である。
【
図7】硫黄及びマンガンが活性種として使用され、それぞれの沈殿が回収方策方法を使用して回収される、レッドクスフロー電池及び方法の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
レドックスフロー電池(「RFB」)は、選択された液体ソリューション中に複数の可逆的酸化状態を有する元素のイオンを含む電気化学的活性種を利用する。種の例は、バナジウム、鉄、マンガン、クロム、亜鉛、もしくはモリブデン等の遷移金属、または硫黄、セリウム、鉛、スズ、チタン、ゲルマニウム、臭素、もしくは塩素等の他の元素を含み得る。これらの種が使用されているが、それらの全てが、一緒に使用することで相溶性があるわけではない。例えば、経時的に、セパレータを通る種のクロスオーバーに起因する種の混合がある。相溶性がない場合、クロスオーバー種は、不溶性固体として沈殿するように、または周囲に漏れるガスを発生させるように反応し得る。不溶性固体は、流れをブロックし、性能を低下し得る。ガス損失は、健康問題を引き起こし得、適切な機能性に対する種の可用性を低下し得る。
【0027】
低コストに起因するRFBの使用において魅力的な2つの種は鉄及び硫黄である。しかしながら、塩酸中の鉄及び水酸化ナトリウム中の硫黄等の鉄電解質及び硫黄電解質は、かなり相溶性がない。塩基性pH硫黄電解質にクロスオーバーする鉄は反応して不溶性の酸化鉄(Fe2O3)を形成し、酸性pH鉄電解質にクロスオーバーする硫黄は反応してガス状硫化水素(H2S)を形成する。経時的に、鉄の損失、不溶性酸化鉄からの詰まり、及び硫化水素への硫黄の損失は、RFBを動作不可能の状態にするであろう、または、少なくとも、RFBとして使用されるのに往復効率を実現不可能なレベルに低下させるであろう。下記に説明されるように、開示されるRFBは、不相溶性を軽減し、RFB内の硫化物電解質及び鉄電解質の使用を可能にする、仲介電解質(intermediator electrolyte)を利用する。
【0028】
図1は、RFB20を概略的に示す。RFB20は、第1のセル22及び第2のセル24を含む。セル22及び24は、名目上、同一の構成である。セル22及び24は、各々、第1の電極22a及び24aと、第2の電極22b及び24bと、当該電極の間のセパレータ層22c及び24c(電極22aと電極22bとの間の層22c、電極24aと電極24bとの間の層24c)とを含む。例えば、電極22a、22b、24a、及び24bは、カーボン紙またはフェルト等の多孔質のカーボン構造である。セパレータ層はイオン交換膜22c及び24cであり、イオン交換膜22c及び24cは、選択されたイオンが、電極を電気的に絶縁しながら、レドックス反応を完了するために通過することを可能にする。
【0029】
第1の循環ループ26は第1のセル22の第1の電極22aと流体接続され、第2の循環ループ28は第2のセル24の第2の電極24bと流体接続される。本明細書に使用されるような「ループ」は、連続的な閉回路の流体通路を指す。第1の循環ループ26及び第2の循環ループ28は、各々の電解質貯蔵タンク30及び32を含み得る。ポリ硫化物電解質溶液34は第1の再循環ループ26内(例えば、タンク30内)に含有され、鉄電解質溶液36は第2の循環ループ28内(すなわち、タンク32内)に含有される。ポリ硫化物電解質溶液34は11.5以上のpHを有し、鉄電解質溶液は3以下のpHを有する。
【0030】
ポリ硫化物電解質溶液34の中のポリ硫化物は、概して、塩基性pH溶液中の硫黄の塩を指す。例えば、塩は、水酸化ナトリウム中のナトリウム塩であり、化学式Na2Sx(式中x=2~5)で表される。一例では、ポリ硫化物電解質溶液34は、1Mの水酸化ナトリウム中の2MのNa2Sxであり得る。鉄電解質溶液36の中の鉄は、概して、酸性溶液中の鉄塩を指す。一例では、鉄電解質溶液36は、1MのNaCl及び0.3MのHCl中の1MのFeClxであり得る。
【0031】
RFB20は、さらに、第1のセル22の第2の電極22bと、第2のセル24の第1の電極24aとに流体接続される第3の循環ループ38を含む。第3の循環ループ38は、電解質貯蔵タンク40を含み得る。第3の循環ループ38は、セル22及び24の両方の反応に関与する仲介電解質溶液42(すなわち、タンク42内にある)を含有する。仲介電解質溶液42は12以上のpHを有する。例えば、仲介電解質溶液42は、キノキサリン、アントラキノン、またはベンゾキノンのうちの少なくとも1つを含む。一例では、仲介電解質溶液42は、1,2-ベンゾキノン-3,5-ジスルホン酸、4,4’-((9,10-アントラキノン-2,6-ジイル)ジオキシ)ジブチラート(2,6-DBEAQ)、1,2-DBEAQ,または1,8-DBEAQのうちの少なくとも1つを含む。他の官能性ヒドロキシル化アントラキノン(例えば、2,6-ジヒドロキシアントラキノン(2,6-DHAQ))も使用され得る。他の有機塩基レドックス対は、ビオロゲン、キノキサリン、またはアロキサジンに基づく分子を含む。また、フェロセン等の有機金属反応剤が使用され得る。一例では、仲介電解質溶液は、1MのNaOH及び1MのNaClの中の0.4MのNaFe(CN)6である。別の例では、仲介電解質溶液は、0.5MのNaOH及び0.5MのNaClの中の0.5Mの2,6-DBEAQである。
【0032】
ポリ硫化物電解質溶液34は第1のセル22の第1の電極22aを通って循環し、鉄電解質溶液は第2のセル24の第2の電極24bを通って循環する。仲介電解質溶液42は、第1のセル22の第2の電極22b及び第2のセル24の第1の電極24aを通って循環する。第1のセル22内のポリ硫化物電解質溶液34及び仲介電解質溶液42、ならびに第2のセル24内の鉄電解質溶液36及び仲介電解質溶液42は、充電するときに投入電気エネルギーを貯蔵するように及び放電するときに貯蔵された電気エネルギーを放電するように可逆反応するように動作可能である。電気エネルギーは、電極22a、22b、24a、及び24bと電気的に結合される電気回路を通って、セル22及び24に、及びセル22及び24から伝達され得る。
【0033】
以下の方程式は、第1のセル22の反応の例、及び結果として生じる標準水素電極(SHE)に対する標準電極電位(Eo)を実証し、開放セル電圧(OCV)は、本明細書では、2つの電極反応の標準電極電位の差として定義される。
【0034】
2Na2S2⇔Na2S4+2Na++2e’;Eo=-0.45 vs SHE
[Fe(CN)6]3-+e’⇔[Fe(CN)6]4-;Eo=+0.36 vs SHE
OCV=0.81V
以下の方程式は、第2のセル24の反応の例、及び結果として生じる標準的水素電極(SHE)に対する標準電極電位(Eo)、及び開放セル電圧(OCV)を実証する。
【0035】
[Fe(CN)6]4-⇔[Fe(CN)6]3-+e’;Eo=+0.36 vs SHE
2FeCl3+2Na++2e’⇔2FeCl2+2NaCl;Eo=+0.771 vs SHE
OCV=0.41V
正味の反応は下式のとおりである。
【0036】
2Na2S2+2FeCl3→Na2S4+2FeCl2+2NaCl
OCV=1.218V
上記に説明したように、ポリ硫化物及び鉄電解質溶液は、概して、RFB内で相溶性がない。しかしながら、RFB20内の仲介電解質溶液42は、不相溶性を軽減し、硫化物電解質及び鉄電解質を一緒に使用することを可能にする。例えば、硫黄は鉄溶液にクロスオーバーするのではなく、RFB20内の硫黄は、仲介電解質溶液42にクロスオーバーする。また、鉄は硫黄溶液にクロスーバーするのではなく、RFB20内の鉄は、仲介電解質溶液42にクロスオーバーする。仲介電解質溶液42は、硫黄及び鉄とのより望ましい反応を生じさせるために選択され、それにより、硫黄及び鉄は、容易に、それらの各々の溶液34及び36に回収され及び戻されることができる。
【0037】
例えば、硫黄が第1の電極22aからイオン交換層22cを通って第2の電極22bにおける仲介電解質溶液42にクロスオーバーするとき、硫黄は固体硫黄生成物として沈殿する。鉄が第2の電極24bからイオン交換層24cを通って第1の電極24aにおける仲介電解質溶液42にクロスオーバーするとき、鉄は固体鉄生成物として沈殿する。硫黄及び鉄が沈殿する条件として、仲介電解質溶液42のpHが12以上であることと、標準電極電位が-0.3Vを上回ることとが要求される。約12未満のpHまたは約-0.3V未満の標準電極電位において、硫黄は反応して硫化水素ガスを形成し得、鉄は反応して不溶性酸化鉄を形成し得る。後で下記に説明されるように、固体硫黄生成物及び固体酸化鉄生成物は、容易に、各々、RFBの性能を維持するために、ポリ硫化物電解質溶液34及び鉄電解質溶液36の中に戻るように回収及び混和されることができる。
【0038】
12以上のpH及び-0.3V以上の標準電極電位に加えて、選択された仲介電解質溶液42は、その還元反応と酸化反応との間で、かなり速い可逆反応速度があり、イオン官能基(例えば、OH-)を有し、仲介剤(intermediator)のクロスオーバーを減らす巨大分子である。仲介電解質溶液42の溶解度は重要ではない。その理由として、仲介電解質溶液42は、常に、約50%の充電状態を維持し、仲介電解質の限定量だけが要求されるためである。(すなわち、当該量は、電池の合計エネルギー容量を判定するものではない)。
【0039】
図2は、RFB20のさらなる例を示す。この例では、RFB20は、加えて、1つ以上のフラッシュライン(flush lines)44を含む。フラッシュライン44は、
図3に示される電解質獲得方法(ETM)50に従って、固体硫黄生成物及び固体鉄生成物を除去及び回収するために使用され得る。本方法50は、概して、ステップ52及び54を含む。ステップ52において、仲介電解質溶液42は、第1のセルの第2の電極22bから及び第2のセル24の第1の電極24aから空にされる。ステップ54において、ポリ硫化物電解質溶液34は第1のセルの第2の電極22bを通ってフラッシュライン44を介して循環し、及び/または鉄電解質溶液36は第2のセル24の第1の電極24aを通ってフラッシュライン44を介して循環する。固体硫化物生成物は、ポリ硫化物電解質溶液34の中で易溶性のものである。したがって、ポリ硫化物電解質溶液34は、第2の電極22bから固体硫化物生成物を溶解及び除去する。同様に、固体鉄生成物は、鉄電解質溶液36の中で易溶性のものである。したがって、鉄電解質溶液36は、第1の電極24aから固体鉄生成物を溶解及び除去する。
【0040】
いったん固体硫黄生成物及び/または固体鉄生成物が所望のレベルまで除去されると、ポリ硫化物電解質溶液34は第1のループ26に戻るように移送され、鉄電解質溶液36は第2のループ28に戻るように移送される。次に、仲介電解質溶液42は、セル22及び24を通る循環を再開し、RFB20を充電または放電することができる。
【0041】
図4及び
図5は、RFB20のさらなる例を示す。これらの例では、RFB20は、加えて、バイパスライン56と、バイパスライン56内の第3のセル58とを含む。
図4では、バイパスライン56及び第3のセル58は第1のループ26内にあり、
図5では、バイパスライン56及び第3のセル58は第2のループ28内にある。バイパスライン56及び第3のセル58は、ポリ硫化物電解質溶液34のpHを11.5以上のpHに、または鉄電解質溶液36のpHを3以下のpHに維持するために、
図6の方法60に従って使用され得る。
【0042】
ステップ62において、第3のセル58は、ポリ硫化物電解質溶液34(
図4)または鉄電解質溶液36(
図5)を電解するため使用される。第3のセル58は、入力電力を使用して、水素ガスを発生するためにポリ硫化物電解質溶液34の電気分解反応、または酸素ガスを発生するために鉄電解質溶液36の電気分解反応を活発にする、電解槽セルである。各々の正味の反応は、以下のとおりである。
【0043】
(ポリ硫化物電解質溶液)
2H
2O+2Na
2S
2→Na
2S
4+2NaOH+H
2(g)
(鉄電解質溶液)
2H
2O+4FeCl
3→4FeCl
2+4HCl+O
2(g)
ステップ64において、水素は、鉄電解質溶液36のpHを調整するために鉄電解質溶液36の中に導入されることができる、及び/または酸素ガスは、ポリ硫化物電解質溶液34のpHを調整するためにポリ硫化物電解質溶液34の中に導入されることができる。例えば、水素ガスの導入は、66(
図4)に示されるようなタンク32内等で、鉄電解質溶液36中に水素ガスをスパージングすること(泡立てること)を含む。水素は、鉄電解質溶液36に反応し、pHを低下させる。例えば、酸素ガスの導入は、68(
図5)に示されるようなタンク30内等で、ポリ硫化物電解質溶液34中に酸素ガスをスパージングすること(泡立てること)を含む。酸素は、ポリ硫化物34に反応し、pHを増加させる。これらの点では、第3のセル58は、第2のループ28(
図4)または第1のループ(
図5)のいずれかに、ブリードライン70によって接続され得る。
【0044】
低コストに起因するRFBでの使用において魅力的な追加種は過マンガン酸塩及び硫黄である。しかしながら、低電位の硫黄電解質にクロスオーバーするマンガン酸塩種は還元して不溶性の水酸化マンガンMn(OH)2を形成し、マンガン酸塩電解質にクロスオーバーする硫黄は酸化して固体硫黄金属を形成する。経時的に、硫黄及びマンガン酸塩種の損失、ならびに不溶性硫黄及びマンガン酸塩種からの詰まりは、RFBを動作不可能の状態にするであろう、または、少なくとも、RFBとして使用されるのに往復効率を実現不可能なレベルに低下させるであろう。下記に説明されるように、マンガン酸塩及び硫黄を利用する開示されるRFBは、必ずしも、仲介電解質を要求しない。しかしながら、当該RFBは、上記に説明した同様の回収方策を採用し、RFB内のクロスオーバーに起因する問題を軽減し得る。
【0045】
RFBのポリ硫化物及びマンガン酸塩の所望の反応は、下式のとおりである。
【0046】
負極:2Na2S2⇔Na2S4+2Na++2e-
Eo=-0.447 vs SHE
正極:2NaMnO4+2Na++2e-⇔2Na2MnO4
Eo=+0.558 vs SHE
正味セル:2Na2S2+2NaMnO4⇔Na2S4+2Na2MnO4
OCV=1.01V
クロスオーバーが固体析出物をもたらす事実は、S(硫黄)及びMn(マンガン)が分離され、それらの元の電解質に戻されることを可能にする。固体が電極内に堆積される場合、(Fe及びS系に関して)上記に説明したETM方法50は、固体種を溶解し、その元の電解質に戻すことができる。さらに、これらの固体が膜内にある場合、両方の電極を同じ電解質に曝すことは、溶解及び回収することを可能にするはずである。この回収機構は、速い(すなわち、1時間未満)ことが予想され、必要に応じて、昇温で行われ、プロセスを速めることができる。最終結果として、電解質平衡を維持することになる。
【0047】
例証するために、
図7は別の例RFB120を示す。この例のRFB120は、第3の循環ループを含まず、単一の一般的なセル122または一般的なセルのスタックだけを含む。セル122は、第1の電極122aと、第2の電極122bと、第1の電極122aと第2の電極122bとの間にセパレータ層122cとを含む。本開示では、同様の参照数字は同様の要素を指定し、100またはその倍数を付けた適切な数字及び参照数字は、対応する要素の同じ特徴及び利点を組み込むことが理解される修正された要素を指定する。
【0048】
第1の循環ループ26はセル122の第1の電極122aと流体接続され、第2の循環ループ28はセル122の第2の電極122bと流体接続される。ポリ硫化物電解質溶液34は第1の再循環ループ26内(例えば、タンク30内)に含有され、マンガン酸塩電解質溶液136は第2の循環ループ28内(すなわち、タンク32内)に含有される。
【0049】
ETP方法50では、ポリ硫化物電解質溶液34は、(ドレン後に)第2の電極122bを通って送り込まれ、任意の固体S0を還元、溶解、及び再捕捉する。ポリ硫化物電解質溶液34は、沈殿した残りのMnのいずれかを捕捉するために、第1の方向80aにおいて、第1の補助ループ82a内にある双方向フィルタ80を通るように通過する。同様に、ただし異なる時間において、マンガン酸塩電解質溶液136は、(ドレン後に)第1の電極122aを通って送り込まれ、沈殿したMn(OH)2のいずれかを酸化及び溶解する。マンガン酸塩電解質溶液136は、沈殿した残りのSのいずれかを捕捉するために、第2の方向80bに、(ただし、第2の補助ループ82bの一部として)同じ双方向フィルタ80を通るように通過する。双方向フィルタ80は、ポリ硫化物電解質溶液34及びマンガン酸塩電解質溶液136の中で再捕捉される取り除かれた沈殿種の再捕捉を可能にする。
【0050】
クロスオーバーから生じる固体がタンク30またはタンク32内に集まる場合、これらの固体は、定期的に、タンク30またはタンク32の底部リザーバから除去され得る(固体は、液体ひいてはシンクよりも高い密度を有する)。仮にある場合、このプロセスが多くの場合に行われる必要ではないであろう、完全に自動化される必要はないことが予想される(すなわち、これは、年1回の保守手順の一部であり得る)。
【0051】
Mnがたくさんの酸化状態をもたらすため、不均化反応の可能性がある。マンガン酸塩がMn(V)O4
3-に不均化を起こす場合、化合物は急速に分解し、MnO2に沈殿するが、強アルカリ性条件下で、この反応は懸念がない(すなわち、pH≧14)。しかしながら、高濃度のNaOHにおいて、以下の反応がゆっくり発生し得る。
【0052】
4NaMnO4+4NaOH→4Na2MnO4+2H2O+O2
マンガン酸塩(VI)のさらなる還元は発生しない。反応は遅くなる。7.5MのOH-の中の4MのMnO4
-溶液の測定値は、完全に帯電した溶液の保管の1カ月後の80%の容量保持を示す。それにもかかわらず、下記に説明されるもの等の緩和方策が採用されない限り、この反応は永久的な容量損失をもたらすであろう。マンガン対の可逆電位がpH=14におけるO2発生に関するEo(SHEに対して0.401V)よりも157mV高いため、また酸素発生は懸念がある。したがって、O2発生の触媒作用を最小限にするために、正電極材料を選ばなければならない。ポリ硫化物に関する可逆電位が上記のH2発生に関するEoを上回るため、H2発生は懸念がない。
【0053】
不均化反応から発生する、または正電極の酸素発生反応によって生成される少量のO2は、電解質不均衡をもたらし、RFB内でエネルギー容量がなくなることをもたらす。この場合、正の電解質リザーバ及び負の電解質リザーバの上の気層を接続することにより、O2が負の電解質と反応することを可能にすることによって、O2を消費することができる(この気層は、アノード液の放電を防止するために、N2ブランケットとして維持されるものとする)。
【0054】
O2+2H2O+4Na2S2⇔2Na2S4+4NaOH
この反応及び上記の正味は、両方の電解質の放電であるが、それは、電解質が一定組成に維持されることをもたらす。これらの反応の別の結果は、ポリ硫化物電解質溶液34のpHの増加及びマンガン酸塩電解質溶液136の減少であるであろう、ただし、水濃度及び[OH-]の変化は、膜を通る拡散によって弱まるはずである。これは事実と異なる場合、随意に、第2のステップ64を使用して、マンガン電解質の分解を調整すること(すなわち、O2ガスをポリ硫化物中に導入する(O2ガスは既にポリ硫化物中に含まれている))だけを除いて、pH調整セル及び方法60のFe及びSに関する上記に説明したプロセスを利用することができる。
【0055】
特徴の組み合わせが示された例に示されているが、それらの全てが、本開示の様々な実施形態の利点を実現するために組み合わせられる必要があるわけではない。言い換えれば、本開示の実施形態に従って設計されたシステムは、必ずしも、図の任意の1つに示される特徴の全て、または図に概略的に示される部分の全てを含むわけではないであろう。さらに、一つの例示的実施形態の選択された特徴は、他の例示的実施形態の選択された特徴と組み合わせられ得る。
【0056】
前述の説明は、本質的に、限定的よりはむしろ例示的である。開示された例に対する変形例及び修正は、必ずしも本開示から逸脱することなく、当業者に明白になり得る。本開示に与えられた法的保護の範囲は、以下の「特許請求の範囲」だけを検討することによって判定されることができる。