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<図1>
  • 特許-平面状複合材料 図1
  • 特許-平面状複合材料 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】平面状複合材料
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/04 20120101AFI20221227BHJP
   D04H 3/009 20120101ALI20221227BHJP
   D04H 3/002 20120101ALI20221227BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20221227BHJP
   B29C 70/46 20060101ALI20221227BHJP
   B29K 105/10 20060101ALN20221227BHJP
【FI】
D04H3/04
D04H3/009
D04H3/002
B32B5/26
B29C70/46
B29K105:10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019229250
(22)【出願日】2019-12-19
(62)【分割の表示】P 2018006402の分割
【原出願日】2013-03-11
(65)【公開番号】P2020056149
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2019-12-19
(31)【優先権主張番号】12158958.4
(32)【優先日】2012-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505412513
【氏名又は名称】ミツビシ ケミカル アドバンスド マテリアルズ コンポジッツ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Mitsubishi Chemical Advanced Materials Composites AG
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】バセル、ブラク
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/021134(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00-18/04
B32B 1/00-43/00
D21B 1/00-1/38
D21J 1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状複合材料であって、
(a)互いに連結されずに平行に延びる一方向性の強化繊維粗糸(6)からなり、300g/mより大きく、2,000g/mまでの面積重量を有する少なくとも1層のUD(一方向性の)繊維層Aと、
(b)70wt.%までの強化繊維を含み得る熱可塑性の繊維不織布(2)からなり、100~2,000g/mの面積重量を有する不規則な配向繊維層Bを含む少なくとも1つの繊維マットとを備え、前記強化繊維の融点又は軟化点は、前記熱可塑性の繊維のそれよりも少なくとも50℃高く、前記A層及び前記B層が互いにニードリングされており、
前記不規則な配向繊維層Bを含む前記繊維マットは熱可塑性繊維不織布で構成され、前記熱可塑性繊維不織布は、熱可塑性繊維で構成されて30~70wt.%の強化繊維を含む、ニードル不織布、もしくはニードリングされていないカーディング不織布又はエアレイ式不織布であり、
前記A層の前記UD繊維は炭素繊維であり、前記B層の前記繊維不織布は30~70wt.%の再利用炭素繊維及び70~30wt.%のポリアミドを含む、平面状複合材料。
【請求項2】
前記A層-前記B層の順序で層を備えることを特徴とする請求項1に記載の平面状複合材料。
【請求項3】
前記A層から離間する方向を向く前記B層の面に、50~500g/mの面積重量を有する不規則な配向強化繊維からなる繊維層Cを付加的に含むことを特徴とする請求項1に記載の平面状複合材料。
【請求項4】
はじめに前記A層の前記UD繊維が周回する無端バンド(4)上に互いに対向するように配置され、前記B層の前記繊維不織布が前記UD繊維及び前記バンドの上に載せられ、続いて前記A層及び前記B層が互いにニードリングされることを特徴とする請求項1に記載の複合材料を製造するための連続製造方法。
【請求項5】
構成部品を製造するための請求項1に記載の複合材料の使用方法であって、前記複合材料から製造されるプレカット部品を、前記不規則な配向繊維のB層における前記熱可塑性物質の軟化点を超える温度で型に入れてプレスする使用方法。
【請求項6】
熱可塑性の平面状の成形性半製品を製造するための請求項1に記載の複合材料の使用方法であって、前記不規則な配向繊維のB層における前記熱可塑性物質の軟化点を超える温度でダブルバンドプレスに入れてプレスする使用方法。
【請求項7】
構成部品を製造するための請求項1に記載の複合材料の使用方法であって、GMT(ガラスマットで強化された熱可塑性物質)半製品又はNMT(天然繊維マットで強化された熱可塑性物質)半製品とともに前記複合材料から製造されるプレカット部品を、前記不規則な配向繊維のB層における前記熱可塑性物質の軟化点を超える温度で型に入れてプレスする使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方向性の強化繊維粗糸からなる少なくとも1層のA層と、強化繊維を選択的に含み得る、熱可塑性の繊維不織布又は熱可塑性の配向繊維層からなる少なくとも1層のB層とを有する平面状複合材料に関する。また、本発明は、A層及びB層が互いにニードリングされる平面状複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性物質は、軽量であることを理由に、構成部品、特に自動車用の構成部品の製造にますます利用されている。十分な剛性及び強度を有する構成部品を製造するために、通常、それらの構成部品は、強化繊維と複合される。たとえば、平面状の半製品は、無端ガラス繊維マットと熱可塑性の溶融シートとを融合させ、ダブルバンドプレス上で一体化されることにより、ガラスマットで強化された熱可塑性物質(GMT(glasmattenverstaerkten Thermoplasten)半製品)から製造される。しかし、この製法は、比較的粘性が高い溶融物が1barを大きく上回る圧力でマットに対してプレスされることに起因して、高いエネルギー費用を必要とする。さらに、自動車の分野において、一つ又はいくつかの望ましい方向への強化が特に望まれているものの、前記繊維の強化は無配向性である。
【0003】
これは、特許文献1に開示される複合材料の場合である。この特許文献1には、熱可塑性繊維及び任意の強化繊維からなる繊維不織布層と、強化繊維からなる織布層又は配向層とを備える熱可塑性の成形性複合材料が開示されている。また、特許文献1には、繊維不織布層と織布層又は配向層とが互いにニードリングされることが望ましいことが開示されている。配向繊維層は、一方向性の繊維粗糸のいくつかの層が縫い糸によりきつく且つしっかりと互いに結合される繊維構造に組み立てられる。こうした繊維構造の製造はかなり複雑であり、さらには縫い糸による粗糸の強い結合に起因して、粗糸が複数層のニードリング時に十分に開かれない。そのため、それらの粗糸には熱可塑性物質が不十分且つ不規則に含浸するに過ぎず、このことが、このように製造された成形品の機械的性質に悪影響を及ぼす。
【0004】
特許文献2は、ニードリングにより定着される平面状繊維構造を含む、繊維強化された熱可塑性の成形性半製品に関する。また、特許文献2は、最大で300g/mの面積重量を有する無端の配向繊維からなる少なくとも2層のA層と、無配向繊維からなる少なくとも1層のB層とで構成される半製品に関する。
【0005】
特許文献2の織物の平面部分は、ガラス繊維を含むことが望ましいが、炭素繊維、並びに芳香性ポリアミド又は他の熱可塑性物質からなる繊維のような他の繊維についても記載されている。ただし、これらの熱可塑性繊維がA層、B層、又は両層に存在してもよいかどうかは特定されていない。半製品を製造するにあたって、続く第3工程において半製品が熱可塑性の構成部品に加工され得るように、織物の平面部分には、溶融した熱可塑性物質を含浸させ、硬い半製品に対してプレスするための第2の別個の工程が施される。良好な含浸を確実にするために、特許文献2では、A層の面積重量を300g/mよりも大きく設定しないことが必ず要求される。
【0006】
特許文献3には、プリプレグの製造方法が開示されている。この方法では、熱可塑性物質結合繊維は、一方向性の強化繊維に連続的に散在し、該強化繊維と一体化されることにより、熱可塑性物質結合繊維が形状部品又は平面状の半製品にプレスされる。ニードリングに関しては記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際特許公開第2006/111037号公報
【文献】欧州特許公開第0323571号公報
【文献】英国特許公報第2237583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、これらの不利な点を有さない一方向性の繊維粗糸に基づく複合材料を提供することにある。また、本発明の目的は、特許文献2において要求されたように、織物構造の製造後に別個の第2工程を必要とすることなく、成型部品に直接加工され得る一方向性の繊維粗糸に基づく複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
配向繊維層の代わりに、互いに連結されていない不連続な強化繊維粗糸を直接用い、不規則な配向繊維を含む繊維マットとともにこれらの粗糸をニードリングすることによって、本発明の目的が達成されることが明らかになった。上記粗糸は、「一方向性の繊維」と称されており、本明細書においては、以下「UD(unidirektionale)繊維」と称する。
【0010】
本発明の主題は、(A)互いに連結されずに平行に延びる一方向性の強化繊維粗糸からなり、300g/mより大きく、2,000g/mまでの面積重量を有する少なくとも1層のUD繊維層と、(B)70wt.%までの強化繊維を含み得る、熱可塑性の繊維不織布又は熱可塑性の配向繊維層からなり、100~2,000g/mの面積重量を有する不規則な配向繊維Bを含む少なくとも1つの繊維マットとを備え、A層及びB層が互いにニードリングされる平面状複合材料である。
【0011】
本発明の複合材料は、A層-B層の順序で層を備えることが望ましいが、原理的には、たとえばA層-B層-A層又はA層-B層-A層-B層といった他の順序でも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に従う複合材料の製造方法の実施を示す斜視図。
図2】第2実施形態に従う複合材料の製造方法のさらなる実施を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明における第1の好適な実施形態では、不規則な配向繊維Bを含む繊維マットは、たとえば100~2,000g/mの面積重量を有する、ニードル不織布、もしくはニードリングされていないカーディング不織布又はエアレイ式不織布といった熱可塑性繊維不織布で構成される。この熱可塑性繊維不織布は、200~1,200g/mの面積重量、特に300~1,000g/mの面積重量を有することが望ましい。熱可塑性繊維不織布は、その100%が熱可塑性繊維で構成されることが望ましいが、熱可塑性繊維不織布は、70wt.%まで、望ましくは30~70wt.%の強化繊維を含み得る。熱可塑性繊維及び強化繊維のいずれも、20~100mmの長さを有することが望ましい。
【0014】
不規則な配向繊維層Bの熱可塑性繊維として、任意の紡糸可能な熱可塑性物質が利用され得るが、230℃,約979.6g(2.16kp)で25~150g/10minのMFI(melt flow index:メルトフローインデックス)を有するポリプロピレンが利用されることが望ましい。特に、未処理のポリプロピレン、すなわちカルボキシル基を有さないポリプロピレン、並びにポリアミド6及びポリアミド66のようなポリアミド、さらには直鎖状のポリエステル、ポリスルホン、ポリケトン、及びポリエーテルイミドが利用されることが望ましい。熱可塑性繊維は、「結合繊維」を意図しており、すなわちそれらの熱可塑性繊維は、本発明の複合材料の後続の加工過程において鋳型内で熱可塑的に成形される。
【0015】
好適な強化繊維は、ガラス繊維及び炭素繊維であるが、天然繊維及び玄武岩繊維、並びにアラミドのような高融点の熱可塑性物質の繊維も適している。本明細書において、「高融点」という用語は、結合繊維として、すなわちポリマーマトリクスの形成のために供給される熱可塑性繊維に関連することが理解され得る。特に、不規則な配向繊維層Bにおける強化繊維の融点又は軟化点は、熱可塑性繊維の融点又は軟化点よりも相当高く、たとえば少なくとも50℃は高い。
【0016】
さらに、複合材料は、A層から離間する方向を向くB層の面に、50~500g/mの面積重量、望ましくは100~300g/mの面積重量を有する無配向強化繊維からなる比較的薄い繊維層Cを含み得る。その結果、複合材料は、A層-B層-C層の順序で積層される。このC層は、比較的低い面積重量を有する繊維不織布が利用されるときに重要となる複合材料の付加的な強化を供給する。ガラス繊維又は炭素繊維は、無配向繊維として特に有用である。
【0017】
第2実施形態では、不規則な配向繊維Bを含む繊維マットは、無端の熱可塑性繊維を含む熱可塑性配向繊維層で構成され、無端の強化繊維を選択的に含み得る。好適な熱可塑性繊維は、600~2,400dtexの力価を有し、一般的に知られている安定化剤及び接着促進剤とともに仕上げられ得るポリプロピレン繊維である。
【0018】
A層及びB層、並びに付加的にC層を排他的に備え、他の種類のさらなる層を備えないことが複合材料にとっては望ましい。
本発明の複合材料は、30~80wt.%のUD繊維、特に50~70wt.%のUD繊維を含むことが望ましい。そのUD繊維の面積重量は、400~4,000g/m、特に1,000~2,000g/mであることが望ましい。一体化されていない状態において、厚さが5~15mmであることが望ましい。
【0019】
強化繊維粗糸は、たとえばガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、又は玄武岩繊維であり、100~4,800texの力価、特に200~3,000texの力価を有することが望ましい。特に、強化繊維粗糸は炭素繊維であることが望ましい。これに基づいて、複合材料は、長手方向において高い剛性を有し、大変優れた柔軟性を有する。A層の面積重量は、300g/mより大きく、2,000g/mまで、特に350~2,000g/mであることが望ましい。比較的重いUD繊維を含む複合材料から製造される構成部品は、たとえば特許文献2に開示されるような軽いUD繊維を含んで製造される構成部品よりも優れた強度を示す。さらに、特にA層-B層の2層のみを有する場合に、こうした重い複合材料は軽い複合材料よりも扱いやすい。
【0020】
特に、好適な複合材料はUD繊維として炭素繊維を含み、繊維不織布層は、熱可塑性物質としてポリアミド、望ましくはポリアミド6を含み、並びに30~70wt.%の炭素繊維を含む。このことから、たとえば炭素繊維で強化され、破砕された完成部品から周知の再利用方法により得られる再利用炭素繊維を利用する点で有利である。こうした複合材料は、優れた温度耐性を有する。
【0021】
第1実施形態に従う複合材料の製造方法の実施を斜視図として図1に示す。はじめに、繊維不織布層は、カーディング法又はエアレイ法に従って製造され、ニードル不織布2を形成するためにニードリングされる。UD繊維6は、まず周回する無端バンド4上に、望ましくは可能な限り互いに接近するように、互いに隣接して配置され、これによりA層が形成される。そのうえで、組み立てられたニードル不織布2はB層を形成するために連続的に配置され、その後にA層及びB層の2層はニードリング装置8内で互いにニードリングされる。
【0022】
エアレイ法又はカーディング法に従って製造される不織布をニードリングすることなく、UD繊維上に直接配置すること、並びにその後にのみニードリングすることも可能である。
【0023】
複合材料がA層又はB層をさらに含む場合には、それぞれ対応するウェブが追加的に供給され、ニードリングされ得る。
複合材料が薄いC層を付加的に含む場合には、C層の不規則な配向繊維10は、無端マットとして上層のB層の繊維不織布上に配置されるか、もしくはチョップドファイバーとしてそれらの繊維不織布上に散在する。次に、3層のすべてが互いにニードリングされる。この点について、図1に模式的に示している。
【0024】
図2は、第2実施形態に従う複合材料の製造方法のさらなる実施を斜視図で示している。はじめに、A層のUD繊維6は、周回する無端バンド4上に配置され、その後に B層に対応する配向繊維層16の形成によって、熱可塑性繊維12、及び選択的に横断供給装置14から供給される強化繊維がUD繊維6の上に配置される。続いてA層及びB層は、ニードリング装置8内で互いにニードリングされる。この点について、図2に模式的に示している。
【0025】
本発明の複合材料は、薄板状に切断され得る。その後に、これらのプレカット部品は、不規則な配向繊維層Bにおける熱可塑性物質の軟化点を超える温度で型に入れられてプレスされることによって、立体部品に直接加工され得る。しかし、たとえば0.5~5barの圧力、且つ不規則な配向繊維層Bにおける熱可塑性物質の軟化点を超える温度でダブルバンドプレス上において、平面状複合材料のウェブが連続的に一体化されることによって、半製品も製造され得る。積層装置上でプレスされることによっても可能である。一体化された半製品は、0.3~5.0mmの厚さ、特に1.0~3.0mmの厚さを有することが望ましい。たとえばGMT半製品又はNMT(naturfasermatten-verstaerkten Thermoplasten)半製品、すなわちガラスマットで強化された熱可塑性物質又は天然繊維マットで強化された熱可塑性物質に基づく半製品とともに、複合材料を型に入れ、ニードリングする。このことによって、繊維複合成型部品の特定の強化のための複合材料からなるプレカット部品を利用することも可能である。
【0026】
本発明の複合材料から製造される完成部品は、大変軽量であり、高い剛性を有する。それらの完成部品は、自動車部品用、スポーツ用品用、鉄道貨車製造用、及び航空機製造用に利用され得る。
図1
図2