(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】アニオン性親水基含有(メタ)アクリルアミド化合物及び該化合物を含む塗料用組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 20/58 20060101AFI20221227BHJP
C08F 290/14 20060101ALI20221227BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20221227BHJP
C09D 5/16 20060101ALI20221227BHJP
C07C 309/15 20060101ALI20221227BHJP
C07C 303/22 20060101ALI20221227BHJP
C07C 303/32 20060101ALI20221227BHJP
C07C 309/51 20060101ALI20221227BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20221227BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
C08F20/58
C08F290/14
C09D4/02
C09D5/16
C07C309/15 CSP
C07C303/22
C07C303/32
C07C309/51
B32B27/30 A
B32B27/18 Z
B32B27/18 C
(21)【出願番号】P 2019511279
(86)(22)【出願日】2018-04-04
(86)【国際出願番号】 JP2018014398
(87)【国際公開番号】W WO2018186436
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2017074503
(32)【優先日】2017-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231497
【氏名又は名称】日本精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【氏名又は名称】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】大石 紘
(72)【発明者】
【氏名】宮本 芳昭
(72)【発明者】
【氏名】上野 敏哉
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-059929(JP,A)
【文献】特開昭56-103145(JP,A)
【文献】特開昭58-021607(JP,A)
【文献】国際公開第02/061012(WO,A1)
【文献】特開2003-089613(JP,A)
【文献】特表2005-514338(JP,A)
【文献】国際公開第2009/104470(WO,A1)
【文献】米国特許第03332904(US,A)
【文献】特開平02-308884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C08F283/01
C08F290/00-290/14
C08F299/00-299/08
C09D 1/00-201/10
C07C 1/00-409/44
B32B 1/00- 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(メタ)アクリルアミドメタンスルホン酸塩、(メタ)アクリルアミドエタンスルホン酸塩、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸塩、(メタ)アクリルアミドブタンスルホン酸塩、(メタ)アクリルアミドペンタンスルホン酸塩、(メタ)アクリルアミドヘキサンスルホン酸塩、(メタ)アクリルアミドヘプタンスルホン酸塩、(メタ)アクリルアミドオクタンスルホン酸塩、(メタ)アクリルアミドノナンスルホン酸塩、(メタ)アクリルアミドデカンスルホン酸塩、(メタ)アクリルアミドドデカンスルホン酸塩
、(メタ)アクリルアミドウンデカンスルホン酸塩
、および(メタ)アクリルアミドベンゼンスルホン酸塩からなる群から選ばれる
、化合物、および
(B)少なくとも2つ以上のエチレン性不飽和基を含有する1種以上の化合物、
を含む組成物であって、
化合物(B)が、ウレタン(メタ)アクリレートモノマー(オリゴマー)である、
該組成物。
【請求項2】
該化合物(B)に対して、該化合物(A)を重量比で0.01wt%~30wt%で含む、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
更に、フッ素含有(メタ)アクリレート化合物を含む、請求項
1に記載の組成物。
【請求項4】
該フッ素含有(メタ)アクリレート化合物が、(パー)フルオロアルキル(メタ)アクリレート、(パー)フルオロエーテル(メタ)アクリレート、またはフッ素含有のウレタン(メタ)アクリレートから選ばれる、請求項
3に記載の組成物。
【請求項5】
(A)請求項1に記載する
化合物を、(B)少なくとも2つ以上のエチレン性不飽和基を含有する1種以上の化合物と、重合開始触媒としてカチオン重合触媒の存在下で反応させることを特徴とする、請求項
1に記載の組成物の製造方法であって、
化合物(B)が、ウレタン(メタ)アクリレートモノマー(オリゴマー)である、製造方法。
【請求項6】
基材上で硬化された請求項
1に記載の組成物を含んでなる塗膜。
【請求項7】
請求項
6に記載の塗膜および基材層からなり、該塗膜が少なくとも基材層の片面に形成されることを特徴とする、積層体。
【請求項8】
水回り物品である、請求項
7記載の積層体。
【請求項9】
請求項
1に記載の組成物を含む、防汚剤。
【請求項10】
請求項
1に記載の組成物を含む、防曇剤。
【請求項11】
請求項
1に記載の組成物を基材に塗布する工程、および
該組成物に光を照射するかもしくは熱を与えるか、またはその両方を実施する工程、
を含むことを特徴とする、
積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアニオン性親水基含有(メタ)アクリルアミド化合物、及び該化合物を含む塗料用組成物に関する。具体的には、親水性および、防汚性および/または防曇性に優れたアニオン性親水基含有(メタ)アクリルアミド化合物、並びに該化合物の製造方法、該化合物を含む組成物、該組成物を含んで成る塗膜、該塗膜を含む積層体、および該積層体の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、いくつかの親水性塗料が知られている。例えば、(メタ)アクリレート基を有する化合物とアクリレート樹脂等とから形成される親水性塗料が報告されており、該親水性塗料が防汚性、防曇性などを示すことも報告されている(特許文献1および2)。
【0003】
しかしながら、一般的に(メタ)アクリレート基を有する化合物は、そのエステル結合の存在のために酸性またはアルカリ性に対して耐久性が劣るとの問題がある。よって、酸性またはアルカリ性に対して耐久性を有する塗膜に対する要求が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2007/064003号パンフレット
【文献】特開2014-198754号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者が鋭意研究した結果、アニオン性親水基含有(メタ)アクリルアミド化合物が酸性またはアルカリ性に対して耐久性を有することを見出した。また、該アニオン性親水基含有(メタ)アクリルアミド化合物が親水性および、防汚性および/または防曇性を有することも見出した。よって、本発明は、式(I)で示される新規なアニオン性親水基含有(メタ)アクリルアミド化合物、および該化合物の製造方法を提供する。また、本発明は、該化合物を含む組成物、該組成物を含んで成る塗膜、該塗膜が形成された積層体、および該積層体の製造法をも提供する。とりわけ、本発明の下記式(I)で示されるアニオン性親水基含有(メタ)アクリルアミド化合物(化合物(A))と、少なくとも2つ以上のエチレン性不飽和基を含有する1種以上の化合物(化合物(B))とを重合して組成物を調製する際に、重合開始剤としてラジカル重合触媒を用いる場合よりも、カチオン重合触媒を使用した場合に、得られる組成物の性質(例えば、親水性、防汚性、防曇性)が優れていることをも見出した。さらに、前記得られた組成物に、アクリレート基を含有するフッ素化合物を混合することにより、得られた組成物は、良好な撥油性を有することも見出した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を提供するが、これらに限定されるものではない。
【0007】
(化合物)
[1] 式(I):
【化1】
[式中、
R
1は、水素またはメチル基であり、
R
2は、アニオン性親水基であり、
Xは、水素、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、または第四級アンモニウム型イオンであり、
pは、1または2であり、
qは、0または1であり、
但し、pが1である場合には、qは1であって、そしてpが2である場合には、qは0であり、
Rは、式(II):
【化2】
で示される直鎖または分岐の脂肪族炭化水素基であって、該脂肪族炭化水素基は、脂肪族炭素環基、芳香族炭素環基、エーテル基、またはエステル基から選ばれる少なくとも1種以上の基を含んでいてもよく、
nは、1~12の整数であり、
Aは、各々独立して、式(III):
【化3】
(式中、
mは、0~12の整数であり、そして
R
2およびXは前記で定義する通りである)
で示される基であり、2個以上のAが存在するとき、該Aは同一または異なる炭素原子上に存在していてもよく、そして、
oは、0~6の整数である]
で示される化合物。
[2] 該アニオン性親水基が、CO
2
-、SO
3
-、PO
4
2-、またはHPO
4
-から選ばれる少なくとも1種の基である、項[1]記載の化合物。
[3] 該アニオン性親水基が、SO
3
-である、項[1]記載の化合物。
[4] oが0であり、そして該Rが式:
【化4】
で示される基である、項[1]から[3]のいずれか1項に記載の化合物。
[5] nが2~8の整数である、項[1]から[4]のいずれか1項に記載の化合物。
[5-1] nが2~6の整数である、項[1]から[4]のいずれか1項に記載の化合物。
[6] pが1であり、qが1である、項[1]から[5]のいずれか1項に記載の化合物。
[7] (メタ)アクリルアミドメタンスルホン酸塩、(メタ)アクリルアミドエタンスルホン酸塩、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸塩、(メタ)アクリルアミドブタンスルホン酸塩、(メタ)アクリルアミドペンタンスルホン酸塩、(メタ)アクリルアミドヘキサンスルホン酸塩、(メタ)アクリルアミドヘプタンスルホン酸塩、(メタ)アクリルアミドオクタンスルホン酸塩、(メタ)アクリルアミドノナンスルホン酸塩、(メタ)アクリルアミドデカンスルホン酸塩、(メタ)アクリルアミドドデカンスルホン酸塩、(メタ)アクリルアミドウンデカンスルホン酸塩、および(メタ)アクリルアミドベンゼンスルホン酸塩からなる群から選ばれる、項[1]記載の化合物。
【0008】
(組成物)
[8] (A)項[1]から[7]のいずれか1項に記載の化合物、および
(B)少なくとも2つ以上のエチレン性不飽和基を含有する1種以上の化合物、
を含む組成物。
[9] 該化合物(B)に対して、該化合物(A)を重量比で0.01wt%~30wt%で含む、項[8]に記載の組成物。
[10] 該化合物(B)が、ウレタン(メタ)アクリレートモノマー(オリゴマー)である、項[8]または[9]のいずれか1項に記載の組成物。
[11] 更に、フッ素含有(メタ)アクリレート化合物を含む、[8]から[10]のいずれか1項に記載の組成物。
[12] 該フッ素含有(メタ)アクリレート化合物が、(パー)フルオロアルキル(メタ)アクリレート、(パー)フルオロエーテル(メタ)アクリレート、またはフッ素含有のウレタン(メタ)アクリレートから選ばれる、[11]記載の組成物。
[12-1] 該組成物に対して、該フッ素含有(メタ)アクリレート化合物を重量比で0.05wt%~5wt%で含む、[11]または[12]のいずれか1項に記載の組成物。
【0009】
(組成物の製造方法)
[13] (A)項[1]から[7]のいずれか1項に記載の化合物を、(B)少なくとも2つ以上のエチレン性不飽和基を含有する1種以上の化合物と、重合開始触媒としてカチオン重合触媒の存在下で反応させることを特徴とする、項[8]から[12]のいずれか1項に記載の組成物の製造方法。
[13-1]
該カチオン重合触媒が、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラートである、項[13]に記載の製造方法。
【0010】
(塗膜、積層体等)
[14] 基材上で硬化された項[8]から[12]のいずれか1項に記載の組成物を含んでなる塗膜。
[15] 項[14]に記載の塗膜および基材層からなり、該塗膜が少なくとも基材層の片面に形成されることを特徴とする、積層体。
[16] 水回り物品である、項[15]記載の積層体。
【0011】
(用途)
[17] 項[1]から[7]のいずれか1項に記載の化合物または項[8]から[12]のいずれか1項に記載の組成物を含む、防汚剤。
[18] 項[1]から[7]のいずれか1項に記載の化合物または項[8]から[12]のいずれか1項に記載の組成物を含む、防曇剤。
【0012】
(積層体の製造方法)
[19] (1)項[8]から[12]のいずれか1項に記載の組成物を基材に塗布する工程、および
(2)該組成物に光を照射するかもしくは熱を与えるか、またはその両方を実施する工程、
を含むことを特徴とする、
積層体の製造方法。
[19-2] 工程(2)において、光を照射するかもしくは熱を与えるか、またはその両方を実施することにより、塗膜を形成させることを特徴とする、項[19]記載の製造方法。
【0013】
(化合物の製造方法)
[20] 項[1]に記載の式(I):
【化5】
で示される化合物の製造方法であって、
式:
【化6】
で示される(メタ)アクリロイルハライド化合物、または
式:
【化7】
で示される(メタ)アクリロイル酸無水物化合物を、式:
【化8】
で示されるアミン化合物と、アンモニアまたは有機アミン類から選ばれるX供給源の化合物、およびアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩から選ばれるX供給源の化合物と一緒に、適宜、重合禁止剤の存在下で反応させて、Xが第四級アンモニウム型イオンである式(I)で示される化合物を得る;および、
Xがアルカリ金属またはアルカリ土類金属のイオンである式(I)で示される化合物を所望する場合には、当該得られたXが第四級アンモニウム型イオンである式(I)で示される化合物を、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩から選ばれるX供給源の化合物と反応させて、Xがアルカリ金属またはアルカリ土類金属のイオンである式(I)で示される化合物を得る、
ことを含む、該製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明のアニオン性親水基を含有する(メタ)アクリルアミド化合物は、親水性であり、酸性および/またはアルカリ性条件での耐久性(安定性)にも優れている。また、該化合物、該化合物を含む組成物、または該組成物を含んで成る塗膜は、防汚および/または防曇のために使用することができる。さらに、前記組成物に、アクリレート基を含有するフッ素化合物を混合することにより、汚れが浮きやすく、流しやすくなる効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
(定義)
以下に、本明細書および特許請求の範囲中で使用する用語の定義を示す。特に断らなければ、本明細書中の基または用語について示す最初の定義を、個別にまたは別の基の一部として本明細書中の基または用語に適用する。
【0016】
(本発明の化合物)
本発明の1態様として、本発明は、
式(I):
【化9】
[式中、
R
1は、水素またはメチル基であり、
R
2は、アニオン性親水基であり、
Xは、水素、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、または第四級アンモニウム型イオンであり、
pは、1または2であり、
qは、0または1であり、
但し、pが1である場合には、qは1であって、そしてpが2である場合には、qは0であり、
Rは、式(II):
【化10】
で示される直鎖または分岐の脂肪族炭化水素基であって、該脂肪族炭化水素基は、脂肪族炭素環基、芳香族炭素環基、エーテル基、またはエステル基から選ばれる少なくとも1種以上の基を含んでいてもよく、
nは、1~12の整数であり、
Aは、各々独立して、式(III):
【化11】
(式中、
mは、0~12の整数であり、そして
R
2およびXは前記で定義する通りである)
で示される基であり、2個以上のAが存在するとき、該Aは同一または異なる炭素原子上に存在していてもよく、そして、
oは、0~6の整数である]
で示される化合物、を提供する。
【0017】
式(I)における、R1基は、水素およびメチル基を挙げられる。R1基が水素であるときは、アクリロイル部分を含み、R1基がメチル基であるときは、メタアクリロイル部分を含むことを意味する。
【0018】
式(I)における、R2基としての用語「アニオン性親水基」とは、水に溶解したときに負電荷を帯びる、水分子と水素結合等による弱い結合を形成する原子団を意味する。該アニオン性親水基の存在により、水道水中のシリカやNa、Kなど水垢を構成する成分が親水性塗膜の表面に固着することを防止することができ、また付着した場合でも強固に固着しないので容易に取り除くことができ、塗膜の親水性を長期に保持することができる。アニオン性親水基の具体例としては、CO2
-、SO3
-、PO4
2-、またはHPO4
-から選ばれる少なくとも1種の基を挙げられるが、これらに限定されるものではない。1実施態様において、アニオン性親水基はSO3
-が好ましい。
【0019】
式(I)における、X基は、水素、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、および第四級アンモニウム型イオンを挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記R2基としてのアニオン性親水基の親水性の保持の容易さの観点から、対カチオンであることが好ましく、例えばアルカリ金属イオン(例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン)、アルカリ土類金属イオン(例えば、カルシウムイオン)、および第四級アンモニウム型イオン(例えば、アンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン)を挙げられる。アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンが好ましく、アルカリ金属イオンがより好ましい。
X基におけるカチオンは、一般的によく知られるカチオン交換法(例えば、カチオン交換樹脂の使用)により、所望するカチオンに変換することができる。
【0020】
上記式(I)において、pは、1または2であり、qは、0または1である。但し、pが1である場合には、qは1であって(下記式I-1)、そしてpが2である場合には、qは0である(下記式I-2)。
【化12】
pが1であり、qが1である、(式I-1)で示される化合物がより好ましい。
【0021】
式(I)における、R基は、式(II):
【化13】
で示される直鎖または分岐の脂肪族炭化水素基である。直鎖の脂肪族炭化水素基が好ましい。用語「直鎖または分岐の脂肪族炭化水素基」としては、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を挙げられ、アルキル基が好ましい。
【0022】
本明細書で使用する用語「アルキル基」とは、直鎖または分岐の飽和の脂肪族炭化水素基を意味する。例えば、炭素数が1から12個(すなわち、nは1~12の整数である)のアルキル基が挙げられ、また炭素数が1~8個のアルキル基、炭素数が1~6個のアルキル基、炭素数が2~8個のアルキル基、または炭素数が2~6個のアルキル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。炭素数が1~8個のアルキル基が好ましく、炭素数が2~6個(すなわち、nは2~6の整数である)のアルキル基がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、およびウンデシル基などを挙げられる。
【0023】
本明細書で使用する用語「アルケニル基」とは、1または2個以上の二重結合を有する直鎖または分岐の不飽和脂肪族炭化水素基を意味する。例えば、炭素数が2から12個のアルケニル基が挙げられ、また炭素数が2~8個のアルケニル基、または炭素数が2~6個のアルケニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。炭素数が2~6個のアルケニル基がより好ましい。具体的には、ビニル基、1-プロペニル基、2-ブテニル基、2-ペンテニル基、2-ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、およびウンデセニル基などが挙げられる。
本明細書で使用する用語「アルキニル基」とは、1または2個以上の三重結合を有する直鎖または分岐の不飽和脂肪族炭化水素基を意味する。例えば、炭素数が2から12個のアルキニル基が挙げられ、また炭素数が2~8個のアルキニル基、または炭素数が2~6個のアルキニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。炭素数が2~6個のアルキニル基がより好ましい。具体的には、エチニル基、1-プロピニル基、2-ブチニル基、2-ペンチニル基、2-へキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ドデシニル基、およびウンデシニル基などが挙げられる。
【0024】
該脂肪族炭化水素基は、脂肪族炭素環基、脂肪族ヘテロ環基、芳香族炭素環基、芳香族ヘテロ環基、エーテル基、またはエステル基から選ばれる少なくとも1種以上の基を含んでいてもよいが、これらに限定されるものではない。例えば脂肪族炭素環基、芳香族炭素環基、エーテル基(-O-)、またはエステル基(-CO2-)から選ばれる少なくとも1種以上の基を含んでいてもよく、あるいは脂肪族炭素環基、または芳香族炭素環基を含んでいてもよい。
【0025】
脂肪族炭素環基とは、飽和または不飽和の非芳香族の炭素環を意味する。例えば4~9員の単環式または多環式(例えば、二環式)のシクロアルカン基が挙げられ、具体例としてはシクロプロピル、シクロヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
脂肪族ヘテロ環基とは、環内に酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子からなる群より独立して選ばれる同一もしくは異なる1~3個の異項原子を含む、飽和または不飽和の脂肪族ヘテロ環を意味する。例えば4~9員の単環式または多環式(例えば、二環式)の飽和または不飽和の脂肪族ヘテロ環が挙げられ、具体例としてはアゼチジニル、オキセタニル、ピロリジニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロフラニル、チアゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ホモモルホリニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロピラニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
芳香族炭素環基の例としては、6から14員の単環式、二環式または三環式の芳香族炭素環基を意味する。具体例としては、フェニル、ナフチル、フェナンスリル、アントラニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、フェニルがより好ましい。
【0028】
芳香族ヘテロ環基とは、環内に酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子からなる群より独立して選ばれる同一もしくは異なる1~3個の異項原子を含む、芳香族ヘテロ環を意味する。例えば5~8員の芳香族ヘテロ環が挙げられ、5もしくは6員環が好ましく、6員環がより好ましい。具体例としては、ピロリル基、フラニル基、チエニル基、ピリジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基などが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、ピリジニル基がより好ましい。
【0029】
該脂肪族炭素環基または該芳香族炭素環基は、1個以上(例えば、1~3個、1~2個、または1個)の置換基で置換されていてもよく、該置換基は、前記の脂肪族炭素環基、脂肪族ヘテロ環基、芳香族炭素環基、芳香族ヘテロ環基、エーテル基、エステル基、アニオン性親水基から選ばれる少なくとも1種以上の基であり、好ましくは前記アニオン性親水基である。
【0030】
1実施態様において、R基としての、式(II)で示される脂肪族炭化水素基が芳香族炭素環基を含む場合、該R基は、例えば式(II-2):
【化14】
で示され得るが、これに限定されない。
【0031】
式(II)における、A基は、式(III):
【化15】
(式中、R
2およびXは前記で定義する通りである)
で示され、前記R
2Xとして記載するアニオン性親水基塩の置換基を含む。
脂肪族炭化水素基の主鎖部分(-(CH
2)
n-)と、当該アニオン性親水基塩R
2Xとを連結するリンカー部分としてのアルキレン鎖部分の炭素数mは通常0~10個であり、炭素数0~6個が好ましく、炭素数1~6個がより好ましい。
【0032】
式(II)中、A基は、脂肪族炭化水素基の主鎖部分の構成炭素原子上に置換しており、2個以上のAが存在するとき、該Aは独立して同一または異なる炭素原子上に存在していてもよい。
式(II)中、oは、通常0~6の整数であり、例えば0~3の整数、0~2の整数であり、または0もしくは1である。式(I)で示される本発明の化合物は、A基を含まない場合(すなわち、oが0である)であっても、化合物全体で親水性を確保することができるが、1個以上のA基を含むことにより、より大きな親水性を付与することができる。
【0033】
本発明の化合物の代表的な化合物の例は、(メタ)アクリルアミドメタン、(メタ)アクリルアミドエタン、(メタ)アクリルアミドプロパン、(メタ)アクリルアミドブタン、(メタ)アクリルアミドペンタン、(メタ)アクリルアミドヘキサン、および(メタ)アクリルアミドベンゼンのアニオン性親水基の塩を挙げられるが、これらに限定されない。具体例としては、(メタ)アクリルアミドメタンスルホン酸塩、(メタ)アクリルアミドエタンスルホン酸塩、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸塩、(メタ)アクリルアミドブタンスルホン酸塩、(メタ)アクリルアミドペンタンスルホン酸塩、(メタ)アクリルアミドヘキサンスルホン酸塩、および(メタ)アクリルアミドベンゼンスルホン酸塩を挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
(本発明の化合物の製造方法)
本発明の(メタ)アクリルアミド化合物は、各種原料化合物を出発として、有機合成反応に従って製造する。製造スキームの例を以下に示す。
【化16】
まず、式:
【化17】
で示される、(メタ)アクリロイルハライド化合物(式中、R
1が水素原子である場合はアクリロイル化合物であり、R
1がメチル基である場合はメタアクリロイル化合物である)(ここで、ハロゲン原子は、例えば塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子が挙げられる)を商業的に入手するか、あるいは例えば(メタ)アクリル酸を出発原料として用いてハロゲン化剤と反応させることにより製造することができる。該ハロゲン化剤としては有機合成的にカルボン酸からカルボン酸ハロゲン化合物を製造するのに通常使用される剤が挙げられ、例えば塩化チオニル、塩化オキサリル、塩化ホスホリル、塩化スルホリル、三塩化リン、及び五塩化リン等が挙げられるが、これらに限定されない。
または、式:
【化18】
で示される(メタ)アクリロイル酸無水物化合物(式中、R
1が水素原子である場合はアクリロイル化合物であり、R
1がメチル基である場合はメタアクリロイル化合物である)を商業的に入手するか、あるいは、酸無水物の製造法として一般的に知られる方法によって、例えば(メタ)アクリル酸の塩(例えば、ナトリウム塩またはカリウム塩等の無機塩)と前記(メタ)アクリロイルハライド化合物との反応によるか、または(メタ)アクリル酸同士における脱水反応によって、製造することができる。
【0035】
次に、別途、式:
【化19】
で示される、アニオン性親水基R
2(例えば、スルホン酸基)を含有するアミン化合物を商業的に入手するか、あるいはアニオン性親水基R
2含有の脂肪族炭化水素化合物を出発原料として用いてハロゲン化して、ハロゲン化脂肪族炭化水素化合物を得て、続いてアンモニア等と反応させて目的のアミン化合物を製造することができる。ここで、当該アミン化合物は、HR
2-R基が1個置換した第1級アミンであってもよく、またはHR
2-R基が2個置換した第2級アミンであってもよい。
【0036】
上記で調製した(メタ)アクリロイルハライド化合物と、アニオン性親水基R2を含有するアミン化合物とを、X供給源としてのX1供給源(アンモニアまたは有機アミン類)およびX2供給源(アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物等)と一緒に、適宜重合禁止剤の存在下で反応させることにより、Xが第四級アンモニウム型イオンである場合の式(I)で示される化合物を製造することができる。ここで、pは1または2であり、qは0または1であり、但し、pが1である場合には、qは1であって、そしてpが2である場合には、qは0である。
【0037】
次に、Xがアルカリ金属またはアルカリ土類金属のイオンである式(I)の化合物を所望する場合には、前記Xが第四級アンモニウム型イオンである場合の式(I)で示される化合物と、X供給源としてX3供給源(アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物)と反応させることにより、カチオン交換反応によって、Xがアルカリ金属またはアルカリ土類金属のイオンである式(I)の化合物を得ることができる。
【0038】
X供給源としては、例えば無機塩基(例えば、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウム)の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩))、アンモニア、または有機アミン類(例えば、ジメチルアミン、トリエチルアミン、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、2-フェニルエチルアミン、ベンジルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピリジン、コリジン)を含むが、これらに限定されない。典型的な例として、水酸化ナトリウム、トリエチルアミン、およびそれらの水溶液を挙げられる。
【0039】
上記反応は、(メタ)アクリロイルハライド化合物同士の重合反応を防止するため、適宜、重合禁止剤を加えてもよい。該重合禁止剤としては、重合性モノマーの重合反応を抑制するのに一般的に使用される化合物が挙げられ、例えばハイドロキノン化合物(例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、4-メトキシフェノール)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
該反応における反応基質の量比は、(メタ)アクリロイルハライド化合物に対してアニオン性親水基含有のアミン化合物をモル比で例えば、約0.5~約2.0当量、好ましくは約1.0当量で使用する。X供給源の化合物の量比は、前記X1供給源(アンモニアまたは有機アミン類)およびX2供給源(アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物等)のそれぞれが、(メタ)アクリロイルハライド化合物中に含まれるR2基の個数当たりモル比で例えば、約0.5~約2.0当量、好ましくは約1.0当量で使用する。また、前記X3供給源(アンモニアまたは有機アミン類)の量比が、先に得られたXが第四級アンモニウム型イオンである場合の式(I)の化合物に対して、当該式(I)の化合物中に含まれるR2基の個数当たりモル比で例えば、約0.5~約2.0当量、好ましくは約1.0当量で使用する。
更に、重合禁止剤としての化合物は、(メタ)アクリロイルハライド化合物に対してモル比で、例えば触媒量~化学量論量、典型的には約0.1~約10%で使用してもよい。
【0041】
上記反応における溶媒としては反応に影響を与えないものであればよく、適当な溶媒(例えば、THF等のエーテル類、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類、水またはそれらの混合溶媒等)中、実施することができる。
反応温度は、反応が好適に進行する温度であれば特に制限されないが、例えば約-25℃~約100℃が挙げられ、典型的には-10℃~室温が挙げられる。(メタ)アクリロイルハライド化合物同士の重合反応を避けるため、例えば氷冷下、(メタ)アクリロイルハライド化合物を滴下により加えることが好ましい。反応時間は、他の反応条件(例えば、反応基質、反応溶媒、反応温度)により変わり得て、例えば数分間から数日間が挙げられ、典型的には数時間から終夜が挙げられる。
【0042】
(本発明の組成物)
本発明の組成物は、
(A)前記式(I)で示される化合物(以下、適宜化合物(A)と称する)、および
(B)少なくとも2つ以上のエチレン性不飽和基を含有する1種以上の化合物(以下、適宜化合物(B)と称する)
を含む。
また、前記式(I)で示される化合物(A)中のアクリロイル基またはメタアクリロイル基と重合反応して塗膜成分を形成するための造膜成分として化合物(B)が含まれる。
【0043】
本発明の組成物においては、親水性成分として化合物(A)が含まれ、該式(I)で示される化合物は単一化合物であってもよいし、または2種類以上の化合物の組み合わせであってもよい。
【0044】
本願明細書中、化合物(B)は、化合物(A)中のアクリロイル基またはメタアクリロイル基と重合して塗膜成分を形成するために、少なくとも2つ以上のエチレン性不飽和基を含有する1種以上の化合物であることを要する化合物であればよく、下記に具体例を記載するが、これらに限定されるものではない。該エチレン性不飽和基とは、アクリロイル基、メタアクリロイル基、またはビニル基から選ばれる基であり、アクリロイル基、またはメタアクリロイル基が好ましく、アクリロイル基がより好ましい。
【0045】
化合物(B)の例としては例えば、分子内にエチレン性不飽和基を含む(メタ)アクリレートモノマー(またはそのオリゴマー)、そのウレタン変性物であるウレタン(メタ)アクリレートモノマー(オリゴマー)、およびそのエポキシ変性物であるエポキシ(メタ)アクリレートモノマー(オリゴマー)から選ばれる1種以上の化合物(例えば、2種、3種、4種)を挙げられるが、これらに限定されない。ウレタン(メタ)アクリレートモノマー(オリゴマー)が好ましい。化合物(B)は、商業的に入手することができるか、あるいは一般的に公知の製造方法を用いて製造することができる。
【0046】
化合物(B)の典型的な例としては、多官能脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、多官能芳香族ウレタン(メタ)アクリレート、および多官能脂肪族アクリレートが挙げられ、多官能脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
ここで、「多官能」とは、例えばエトキシ化o-フェニルフェノール、メトキシポリエチレングリコール、フェノキシポリエチレングリコール、イソステアリル、フルオレンビスフェニル、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、トリシクロデカンジメタノール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、エトキシル化グリセリン、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールA、エトキシ化ビスフェノールA、プロポキシ化ビスフェノールA、エトキシ化イソシアヌル酸、ε-カプロラクトン変性イソシアヌレートから選ばれる1つ以上の官能基を含有することを意味する。
化合物(B)は、市販品を使用してもよく、あるいは一般的に知られる有機化学合成手法により製造することもできる。例えば、前記ウレタンアクリレートの製造は、イソシアネートに、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートまたはペンタエリスリトールトリアクリレートを付加反応させることにより、製造することができる。具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のヌレート体(つまり、イソシアヌレート体)に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートを付加反応させることにより、アクリル官能基数15のウレタンアクリレートを得ることができる(CAS番号:167972-43-2)。また、同じHDIのヌレート体に、ペンタエリスリトールトリアクリレートを付加反応させることにより、アクリル官能基数9のウレタンアクリレートを得ることができる。
化合物(B)の具体例としては、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、オリゴウレタンアクリレート、フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、エポキシ化グリセリントリアクリレート、クレゾールノボラック型エポキシアクリレートなどを挙げられるが、これらに限定されない。これらの化合物を2種以上(例えば、2種、3種、4種)組み合わせて使用してもよい。
これらは、例えば、NSC-7350(日本精化社製)、NSC-7355(日本精化社製)、EBECRYL220(ダイセル・オルネクス社製)、GX-8801A(第一工業製薬社製)、A-GLY-9E(新中村化学工業社製)、A9300-1CL(新中村工業社製)、U-15HA、U-9HAおよびU-6HA(新中村化学工業社製)、ビームセット575およびビームセット577(荒川化学化学工業株式会社製)、UV-1700B(日本合成化学工業製)等として入手し、使用することができる。
【0047】
本発明の組成物は、化合物(B)に対して、化合物(A)を重量比で、通常0.01wt%~30wt%の範囲内で含み、好ましくは0.05wt%~10wt%の範囲内、より好ましくは0.5wt%~5wt%の範囲内で含む。
【0048】
本発明の組成物は、前記化合物(A)および化合物(B)に加えて、化合物(B)以外の分子内に1つのエチレン性不飽和基を含む重合性化合物(以下、適宜化合物(C)と称する)を更に含んでいてもよい。該化合物(C)の選択およびその添加量は、得られる重合体に要求される特性に応じて適宜決定することができる。該化合物(C)としては例えば、揮発性を有する化合物が挙げられる。該揮発性を有する化合物とは、WHOによる揮発性有機化合物の分類にある沸点範囲が260℃以下、又は25℃における飽和蒸気圧が10-2kPa以上であるような化合物を指す。
【0049】
本発明の組成物は、更にフッ素含有(メタ)アクリレート化合物(以下、適宜化合物(D)と称する)を含んでもよい。該フッ素含有(メタ)アクリレート化合物を添加することにより、油接触角を挙げて汚れを浮かし易く、また汚れを流し易くする効果が得られる。
該フッ素含有(メタ)アクリレート化合物としては例えば、(パー)フルオロアルキル(メタ)アクリレート、(パー)フルオロエーテル(メタ)アクリレート、またはフッ素含有のウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。
該フッ素含有(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ペンタデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、トリデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルアクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチルアクリレート、1,6-ビス(アクリロイルオキシ)-2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサン;アクリル酸2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチル、メタクリル酸2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチル、アクリル酸1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル、アクリル酸1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル、アクリル酸1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル、アクリル酸1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル、アクリル酸1H,1H-ペンタデカフルオロ-n-オクチル、メタクリル酸2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、アクリル酸2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、メタクリル酸2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、アクリル酸1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチル、メタクリル酸1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチル、アクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル、メタクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル等を挙げられる。好ましい例としては、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルアクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチルアクリレート、ペンタデカフルオロオクチルアクリレート、およびトリデカフルオロオクチルアクリレートを挙げられる。
例えば、市販のビスコート4F(大阪有機化学工業製)、ビスコート8F(大阪有機化学工業製)、エベクリル8110(ダイセル・オルネクス株式会社製)、フルオロリンクAD1700(SOLVAY社製)、フルオロリンクMD700(SOLVAY社製)等を挙げられる。
【0050】
これらフッ素含有(メタ)アクリレート化合物は、組成物の親水性および防汚性を損なわない程度で添加することができ、例えば組成物に対して重量比で0.05wt%~5wt%で含んでもよく、好ましくは重量比で0.1wt%~2wt%で含んでもよい。
【0051】
本発明の組成物は、更に必要に応じて、本発明の組成物の親水性、防汚性、または防曇性を損なわない範囲で、任意に酸化防止剤、レベリング剤、色素、結合剤などの、一般的によく知られる樹脂組成物用の添加剤を含んでいてもよい。
【0052】
(塗膜および積層体)
本発明の組成物は、光を照射するかもしくは熱(例えば、熱風)を与えるか、またはその両方を実施することによって、該組成物中に含まれている、化合物(A)成分と化合物(B)成分とを重合反応させることにより、基材の表面に塗膜成分を形成することができる。
【0053】
本発明の組成物を重合させるのに、本発明の組成物は、本発明の組成物の親水性、防汚性、または防曇性を損なわない範囲で、任意に重合開始剤、ラジカル発生剤、触媒、重合促進剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、重合禁止剤、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS))などの一般的によく知られる重合反応用の添加剤を含んでいてもよい。
【0054】
重合開始剤としては、例えばイオン重合開始剤(例えば、カチオン重合開始剤、アニオン重合開始剤)、およびラジカル重合剤等から選ばれる少なくとも1種以上が挙げられ、2種以上を併用してもよい。得られる組成物の性質(例えば、親水性、防汚性、防曇性)の観点から、イオン重合開始剤が好ましく、カチオン重合開始剤がより好ましい。
【0055】
カチオン重合開始剤としては、求電子剤(例えば、プロトン酸、ルイス酸、ハロゲン分子、カルボカチオン等)が挙げられ、具体的な例としては、トリフェニルスルホニムテトラフルオロボラート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ビス(4-フルオロフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、シクロプロピルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート、テトラフルオロほう酸ジメチルフェナシルスルホニウム、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセナート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホン酸、2-(3,4-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(フラン-2-イル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)ビニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、(2-メチルフェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、(3-メチルフェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、(4-メチルフェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、4-ニトロベンゼンジアゾニウムテトラフルオロボラート、(4-ニトロフェニル)(フェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、フェニル[4-(トリメチルシリル)チオフェン-3-イル]ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、フェニル[4-(トリメチルシリル)チオフェン-3-イル]ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムブロミド、トリ-p-トリルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、トリ-p-トリルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、[3-(トリフルオロメチル)フェニル](2,4,6-トリメチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、[4-(トリフルオロメチル)フェニル](2,4,6-トリメチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナートなどが挙げられるが、これらに限定されない。該カチオン重合開始剤は、市販のものであってもよく、あるいは公知の製造方法により製造しうるものであってもよい。
【0056】
アニオン重合開始剤としては、求核剤(例えば、n-ブチルリチウム)を挙げられるが、これらに限定されない。該アニオン重合開始剤は、市販のものであってもよく、あるいは公知の製造方法により製造しうるものであってもよい。
【0057】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物および過酸化物を挙げられるが、これらに限定されない。該ラジカル重合開始剤は、市販のものであってもよく、あるいは公知の製造方法により製造しうるものであってもよい。
【0058】
本発明の組成物を、放射線、例えば紫外線で共重合させる場合、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、または光アニオン重合開始剤等の公知の光重合開始剤を用いることもできる。光重合開始剤は、市販のものであってもよく、あるいは公知の製造方法により製造しうるものであってもよい。
光ラジカル重合剤の具体例としては、イルガキュアー651(BASF社製)、イルガキュアー184(同社製)、イルガキュアー500(同社製)、イルガキュアー2959(同社製)、イルガキュアー127(同社製)、イルガキュアー907(同社製)、イルガキュアー369(同社製)、イルガキュアー1300(同社製)、イルガキュアー819(同社製)、イルガキュアー1800(同社製)、イルガキュアーOXE01(同社製)、イルガキュアーOXE02(同社製)、ダロキュア1173(同社製)、ダロキュアTPO(同社製)、ダロキュア4265(同社製)などを挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
組成物の製造のときに使用される該重合開始剤の使用量は、化合物(A)、化合物(B)、化合物(C)との合計量に対して、触媒量(例えば、反応基質の約10-3~約10-1モル%)から数モル当量%で使用することができるが、触媒量が好ましい。例えば、該カチオン重合剤の使用量は、化合物(A)、化合物(B)、化合物(C)との合計100重量部に対して、通常0.01~20重量部の範囲内であり、好ましくは0.05~10重量部の範囲内に、より好ましくは0.1~5重量部の範囲内である。
該光ラジカル重合剤の使用量は、化合物(A)、化合物(B)、化合物(C)との合計100重量部に対して、通常0.1~20重量部の範囲内であり、好ましくは0.5~10重量部の範囲内に、より好ましくは1~5重量部の範囲内である。
【0060】
本発明の組成物は、基材への塗れ性向上および塗料の粘度を調整するために、必要に応じて溶媒を加えてもよい。具体的には、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、メトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、グリセリン)、ケトン(例えば、アセトン)、極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド(DMF))、および水等を挙げられ、これらの溶媒の2種以上の混合溶媒を使用してもよい。
【0061】
本発明の重合反応は、大気雰囲気で行ってもよいが、反応時間および反応効率の観点等から不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン)雰囲気下で行ってよい。
【0062】
熱により重合反応を行う場合には、反応基質、重合手段等の反応条件に応じて、反応温度は通常、室温~300℃以下の温度で、好ましくは30~80℃である。また、反応時間は通常、1~180分(分または時間)、好ましくは2~120(分または時間)である。
また、ラジカル重合開始剤を使用する場合には、反応系中に、ラジカル発生剤(例えば、有機過酸化物)を加えてもよい。
【0063】
光照射により重合反応を行う場合には、反応基質、重合手段等の反応条件に応じて、反応温度は通常、10~150℃、好ましくは30~80℃である。また、反応時間は通常、1秒~30分(分または時間)、好ましくは1秒~5分(分または時間)である。
【0064】
重合反応のために、光照射および加熱の両方の操作を行う場合、一方の操作を行った後に、他方の操作を行うことができ、いずれの操作を先に行ってもよい。
【0065】
放射線としては、400~800nmの可視光、400nm以下の紫外線及び電子線を挙げられるが、簡便、短時間に行うことができる紫外線が好ましい。紫外線発生源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ガリウムランプ、紫外線レーザー、太陽光等の紫外線が挙げられるが、これらに限定されない。照射は、大気雰囲気で行ってもよく、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行ってよい。
照射積算光量は、例えば通常100~5000mJであり、例えば100mJであり、更に500mJを照射してもよい。
【0066】
本発明の組成物を基材に塗布する方法としては、一般的に知られる塗布の方法が挙げられ、具体的にはハケ塗り、各種コーティング法(例えば、スプレーコート、ディップコート、スピンコート)などの公知の方法が挙げられる。
【0067】
塗膜の厚さは、通常0.1~300μmの範囲内、好ましくは1~100μmの範囲内となるように、基剤の表面に塗布する。
【0068】
本明細書における用語「基剤」とは、例えば無機材料(例えば、ガラス、シリカ、金属、金属酸化物等)、有機材料(例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エポキシ樹脂、またはこれらのフィルム、あるいは紙、パルプ)、およびこれらの無機材料および有機材料の組み合わせが挙げられる。
【0069】
本発明の積層体は、
(1)本発明の組成物を基材に塗布する工程、
(2)該組成物に光を照射するかもしくは熱を与えるかまたはその両方を行って塗膜を形成する工程、
を含む方法によって、塗膜および基材層からなり、該塗膜が少なくとも基材層の片面に形成された、積層体を製造することができる。
【0070】
本明細書における用語「積層体」とは、ガラス、表示材料表面(例えば、ディスプレイ、テレビのフィルム)、または水回り物品(例えば、浴室壁材、浴室床材、洗面鏡、洗面台、キッチンカウンター、便器、便座)等を挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
(用途)
本発明の化合物、または該化合物を含む組成物は、防汚剤として使用することができる。また、本発明の化合物、または該化合物を含む組成物は、防曇剤として使用することができる。
【0072】
本発明の化合物は、(メタ)アクリルアミド骨格を有することから、(メタ)アクリロイル骨格を有する従来の化合物と比較して、酸性および/またはアルカリ性の条件においても加水分解反応を受けにくく、よって安定性に優れている。従って、例えば浴室等の洗浄において用いられるカビ取り剤(例えば、カビキラー)等のアルカリ性薬品等と併用して使用することもできる。
【0073】
また、本発明の組成物を含んで成る塗膜は、防汚性および/または防曇性を示すことから、該塗膜が形成された積層フィルムを防汚フィルム、防曇フィルム等として各種積層体などの物品に適用することができる。
【0074】
本発明の生成物(例えば、組成物)の性能
(親水性)
本発明の組成物を含んで成る塗膜は、水接触角が70°以下を有し、好ましくは40°以下、より好ましくは10°以下を有する。よって、該塗膜は良好な親水性を示す。
【0075】
(撥油性)
本発明の組成物を含んで成る塗膜は、油接触角が15°~40°であり、好ましくは20°~35°であり、より好ましくは20°~30°を有する。よって、該塗膜は良好な親水性を有しながら、且つ撥油性を示す。
【0076】
(防汚性および防曇性)
本発明の組成物を含んで成る塗膜は、良好な防汚性、および良好な防曇性を示す。
【0077】
(耐久性)
本発明の組成物を含んで成る塗膜は、酸性および/またはアルカリ性条件での耐久性に優れる。
【実施例】
【0078】
下記に、化合物、組成物等の製造例、および試験例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。化合物の同定は、各種分光学的分析の解析により行なった。具体的には、NMRにおいて水素核磁気共鳴(1H-NMR)では共鳴周波数が300MHzのものを用いた。NMRに用いられる記号としては、sは一重線、dは二重線、ddは二重の二重線、tは三重線、tdは三重の二重線、qは四重線、quinは五重線、septは七重線、mは多重線、brは幅広い、brsは幅広い一重線、brdは幅広い二重線、brtは幅広い三重線及びJは結合定数を意味する。
【0079】
本発明の化合物の製造例を示す。
(実施例1)
アクリルアミドメタンスルホン酸ナトリウム塩(本発明化合物1)の製造
アミノメタンスルホン酸10.0g(90mmol)に水25gを加え、トリエチルアミン9.11g(90mmol)、10%水酸化ナトリウム水溶液36.0g(90mmol)を加え溶解させた。重合禁止剤として4-メトキシフェノール0.0181g(90mmol)を加え氷冷下で撹拌した。その後、アクリロイルクロリド8.15g(90mmol)をゆっくり滴下し、1時間撹拌した。その後室温で4時間反応を行った。
反応終了後減圧下で水を除去した後、メタノール50gを加え1時間撹拌し、ろ過した。ろ液をエバポレーターで乾燥させた後、水50gと10%水酸化ナトリウム水溶液36.0gを加えて0.5時間撹拌後した。減圧下で溶剤を除去した後、真空ポンプで乾燥させ親水性材料であるアクリルアミドメタンスルホン酸ナトリウム塩16.9gを得た。
【0080】
(実施例2)
アクリルアミドエタンスルホン酸ナトリウム塩(本発明化合物2)の製造
実施例1に記載の方法に従って、アミノメタンスルホン酸を2-アミノエタンスルホン酸10gに代えて、アクリルアミドエタンスルホン酸ナトリウム塩16.1gを得た。
【0081】
(実施例3)
アクリルアミドプロパンスルホン酸ナトリウム塩(本発明化合物3)の製造
実施例1に記載の方法に従って、アミノメタンスルホン酸を3-アミノ-1-プロパンスルホン酸10gに代えて、アクリルアミドプロパンスルホン酸ナトリウム塩15.5gを得た。
1H NMR(300MHz、D2O)6.16-5.82(m, 2H)、5.48-5.62(dd, 1H)、3.26-3.21(t, 2H)、2.81-2.75(t, 2H)、1.87-1.76(m, 2H)
【0082】
(実施例4)
アクリルアミドブタンスルホン酸ナトリウム塩(本発明化合物4)の製造
実施例1に記載の方法に従って、アミノメタンスルホン酸を4-アミノ-1-ブタンスルホン酸3gに代えて、アクリルアミドブタンスルホン酸ナトリウム塩4.5gを得た。
1H NMR(300MHz、D2O)6.05-5.89(m, 2H)、5.53-5.49(dd, 1H)、3.17-3.13(t, 2H)、2.81-2.76(t, 2H)、1.62-1.53(m, 4H)
【0083】
(実施例5)
アクリルアミドペンタンスルホン酸ナトリウム塩(本発明化合物5)の製造
実施例1に記載の方法に従って、アミノメタンスルホン酸を4-アミノ-1-ペンタンスルホン酸に代えて、アクリルアミドペンタンスルホン酸ナトリウム塩を得た。1H NMRにより、構造を同定した。
【0084】
(実施例6)
アクリルアミドヘキサンスルホン酸ナトリウム塩(本発明化合物6)の製造
実施例1に記載の方法に従って、アミノメタンスルホン酸を4-アミノ-1-ヘキサンスルホン酸に代えて、アクリルアミドヘキサンスルホン酸ナトリウム塩を得た。1H NMRにより、構造を同定した。
【0085】
(実施例7)
アクリルアミドヘプタンスルホン酸ナトリウム塩(本発明化合物7)の製造
実施例1に記載の方法に従って、アミノメタンスルホン酸を4-アミノ-1-ヘプタンスルホン酸に代えて、アクリルアミドヘプタンスルホン酸ナトリウム塩を得た。1H NMRにより、構造を同定した。
【0086】
(実施例8)
アクリルアミドオクタンスルホン酸ナトリウム塩(本発明化合物8)の製造
実施例1に記載の方法に従って、アミノメタンスルホン酸を4-アミノ-1-オクタンスルホン酸に代えて、アクリルアミドオクタンスルホン酸ナトリウム塩を得た。1H NMRにより、構造を同定した。
【0087】
(実施例9)
アクリルアミドノナンスルホン酸ナトリウム塩(本発明化合物9)の製造
実施例1に記載の方法に従って、アミノメタンスルホン酸を4-アミノ-1-ノナンスルホン酸に代えて、アクリルアミドノナンスルホン酸ナトリウム塩を得た。1H NMRにより、構造を同定した。
【0088】
(実施例10)
アクリルアミドデカンスルホン酸ナトリウム塩(本発明化合物10)の製造
実施例1に記載の方法に従って、アミノメタンスルホン酸を4-アミノ-1-デカンスルホン酸に代えて、アクリルアミドデカンスルホン酸ナトリウム塩を得た。1H NMRにより、構造を同定した。
【0089】
(実施例11)
アクリルアミドドデカンスルホン酸ナトリウム塩(本発明化合物11)の製造
実施例1に記載の方法に従って、アミノメタンスルホン酸を4-アミノ-1-ドデカンスルホン酸に代えて、アクリルアミドドデカンスルホン酸ナトリウム塩を得た。1H NMRにより、構造を同定した。
【0090】
(実施例12)
アクリルアミドウンデカンスルホン酸ナトリウム塩(本発明化合物12)の製造
実施例1に記載の方法に従って、アミノメタンスルホン酸を4-アミノ-1-ウンデカンスルホン酸に代えて、アクリルアミドウンデカンスルホン酸ナトリウム塩を得た。1H NMRにより、構造を同定した。
【0091】
(実施例13)
アクリルアミドプロパンスルホン酸トリエチルアミン塩(本発明化合物13)の製造
3-アミノ-1-プロパンスルホン酸5g(36mmol)に水12.5gを加え、トリエチルアミン3.64g(36mmol)、10%水酸化ナトリウム水溶液13.05g(36mmol)を加え溶解させた。重合禁止剤として4-メトキシフェノール0.008gを加え氷冷下で撹拌した。その後、アクリロイルクロリド2.95g(36mmol)をゆっくり滴下し、1時間撹拌した。その後室温で4時間反応を行った。
反応終了後減圧下で水を除去した後、メタノールを加え1時間撹拌し、ろ過した。ろ液を乾燥させることでアクリルアミドプロパンスルホン酸トリエチルアミン塩10.6gを得た。
【0092】
(実施例14)
アクリルアミドベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(本発明化合物14)の製造
実施例1に記載の方法に従って、アミノメタンスルホン酸を4-アミノベンゼンスルホン酸10gに代えて、アクリルアミドベンゼンスルホン酸ナトリウム塩13.2gを得た。
【0093】
(実施例15)
メタアクリルアミドエタンスルホン酸ナトリウム塩(本発明化合物15)の製造
アミノエタンスルホン酸15.0g(120mmol)に水70gを加え、水酸化ナトリウム4.8g(120mmol)、トリエチルアミン21.9g(216mmol)を加え溶解させた。重合禁止剤として4-メトキシフェノール0.056gを加え氷冷下で撹拌した。その後、無水メタクリル酸27.8g(180mmol)をゆっくり滴下し、1時間撹拌した。その後室温で16時間反応を行った。
反応終了後減圧下で溶剤を除去した後、アセトン150gを加え1時間撹拌し、ろ過した。真空ポンプで乾燥させ親水性材料であるメタアクリルアミドエタンスルホン酸ナトリウム塩25.8gを得た。
【0094】
次に、本発明の組成物の製造例を示す。
(カチオン重合による組成物の製造)
(実施例16)
(メタ)アクリルアミドエタンスルホン酸ナトリウム塩を含む組成物(本発明組成物1)の製造
親水成分(A)としてアクリルアミドエタンスルホン酸ナトリウム塩(本発明化合物2)0.4g、アクリロイル基を有する化合物としてNSC-7350(日本精化社製)33.0g、トリデカフルオロオクチルアクリレート0.35g、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート0.01gとを、溶媒としての1-メトキシ-2-プロパノール62.7gに混合溶解して、本発明の組成物1を調製した。同様にして、アクリルアミドエタンスルホン酸ナトリウム塩の代わりに、メタアクリルアミドエタンスルホン酸ナトリウム塩(本発明化合物15)を用いて、本発明の組成物1’を製造した。
【0095】
(実施例17)
実施例16に記載の方法に従って、アクリルアミドエタンスルホン酸ナトリウム塩を実施例1および実施例3~12で製造したいずれかの化合物(A)にそれぞれ代えて、カチオン重合反応によるそれぞれの本発明の組成物2~12を調製した。同様にして、実施例1および実施例3~12で製造した各種アクリルアミドアルカンスルホン酸ナトリウム塩の代わりに、対応するメタアクリルアミドアルカンスルホン酸ナトリウム塩を用いて、本発明の組成物2’~12’をも製造した。
【0096】
(ラジカル重合による組成物の製造)
(実施例18)
(メタ)アクリルアミドブタンスルホン酸ナトリウム塩を含む組成物(本発明組成物13)の製造
親水成分(A)としてアクリルアミドブタンスルホン酸ナトリウム塩(本発明化合物4)0.038gを0.342gの水に溶解させ、そこにアクリロイル基を有する化合物としてNSC-7350(日本精化社製)1.5g、溶媒として1-メトキシ-2-プロパノール1.95g、光重合開始剤としてイルガキュアー2959(BASF社製)0.045gを加え、混合溶解して、本発明の組成物13を調製した。同様にして、アクリルアミドブタンスルホン酸ナトリウム塩の代わりに、メタアクリルアミドブタンスルホン酸ナトリウム塩を用いて、本発明の組成物13’を製造した。
【0097】
(実施例19)
実施例18に記載の方法に従って、アクリルアミドブタンスルホン酸ナトリウム塩を実施例1~3および実施例5~12で製造したいずれかの化合物(A)にそれぞれ代えて、ラジカル重合反応によるそれぞれの本発明の組成物14~24を調製した。同様にして、実施例1~3および実施例5~12で製造した各種アクリルアミドアルカンスルホン酸ナトリウム塩の代わりに、対応するメタアクリルアミドアルカンスルホン酸ナトリウム塩を用いて、本発明の組成物14’~24’をも製造した。
【0098】
(比較例1)
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩を含む組成物(比較組成物1)の製造
実施例19に記載の方法に従って、アクリルアミドブタンスルホン酸ナトリウム塩を2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩に代えて、比較例1の組成物を調製した。
【0099】
次に、膜形成の方法を示す。
(実施例20)
上記実施例16から17、および実施例18から19、並びに比較例1で得られた塗料用組成物は、厚さ188μmの易接着処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム表面にバーコーター#8で塗布した。塗布したPETフィルムを温風オーブンで温度60℃、乾燥時間2分間静置後、積算光量100mJの紫外線を照射し、さらに硬化を進めるため追加で積算光量500mJを照射して親水性塗膜を形成させた。
【0100】
(実施例21)
本発明の塗膜の製造の1例を示す。
メタアクリルアミドエタンスルホン酸ナトリウム 0.3g、ビームセット577(荒川化学株式会社製)10g、ペンタデカフルオロオクチルアクリレート 0.86g、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート 0.1g、1-メトキシ-2-プロパノール 11.2gを混合し、コーティング剤としての本発明の組成物25’を得た。同様にして、メタアクリルアミドエタンスルホン酸ナトリウム塩の代わりに、アクリルアミドエタンスルホン酸ナトリウム塩を用いて、本発明の組成物25を製造した。
得られた本発明の組成物を東洋紡株式会社製PETフィルム A4300 へバーコーターを用いて塗布し、塗膜を得た。得られた塗膜の性能を測定した。
【0101】
(実施例22)
実施例21に記載の方法に従って、アクリルアミドエタンスルホン酸ナトリウム塩をメタアクリルアミドエタンスルホン酸ナトリウム塩に代えて、本発明の塗膜を得た。
【0102】
更に、試験例を示す。
(試験例1)
防汚性試験
まず、防汚性試験の結果を示す。
実施例20および21で製造した塗膜の防汚性試験を行った。具体的には、油性マーカー「マッキー極細」(ZEBRA社製)を用いて印をつけた後、蒸留水を表面に垂らして拭き取ることができるものを○、できないものを×とした。
本発明の塗膜の場合には、いずれの組成物1~25および1’~25’の場合にも○の結果が観察された。一方で、比較組成物1の場合には、×の結果を示した。よって、本発明の組成物1~25および1’~25’由来のいずれの塗膜も、比較組成物1の塗膜と比較して優れた防汚性を示した。
【0103】
次に、親水性試験および耐久性試験の結果を示す。
まず、本発明の組成物として、以下本発明組成物26を調製した。
(本発明組成物26)
親水成分としてアクリルアミドプロパンスルホン酸ナトリウム塩(本発明化合物3)0.01gを0.19gの水に溶解させ、そこにアクリロイル基を有する化合物としてNSC-7355(日本精化社製)1.5g、溶媒として1-メトキシ-2-プロパノール0.82gと95%エタノール1.13g、光重合開始剤としてイルガキュアー2959(BASF社製)0.045gを加え、混合溶解して、本発明の組成物26を調製した。
【0104】
次に、下記の通り比較例の組成物を製造した。
(比較組成物2)
親水成分としてスルホプロピルアクリレートカリウム塩、0.35gとライトエステルP-2M(共栄社化学社製)0.09g、アクリロイル基を有する化合物としてA-GLY-9E(新中村化学工業社製)5.86gとA9300-1Cl(新中村化学工業社製)0.98g、U-15HA(新中村化学工業社製)12.7g、溶媒として1-メトキシ-2-プロパノール12.03gと水3.01g、光重合開始剤としてダロキュア1173(BASF社製)0.6gを混合溶解して、比較組成物2を調製した。
【0105】
接触角の測定試験
コーティングしたPETフィルムをガラス板に貼り付け、協和界面科学株式会社製の接触角計DMs-401を用いて接触角を測定した。測定には、水とオレイン酸を用いた。
【0106】
(試験例2)
親水性試験
親水性試験として、水接触角の測定を行った。
具体的には、一般的な測定法に準じて、協和界面科学株式会社製の水接触角装置DMs-401を使用し、室温1μLの水滴を滴下後1秒後の静的接触角をθ/2法で測定した。測定は、親水性塗膜を形成した後に、蒸留水で親水性塗膜を水洗し、乾燥させた。乾燥後、および後述する耐酸性および耐アルカリ性薬品試験の後のそれぞれについて、3箇所の測定を行い、その平均を接触角の値とした。
実施例16~17で製造した本発明の組成物1~12および1’~12’、および実施例21で製造した本発明の組成物25および25’を用いて調製される本発明の塗膜は、いずれの場合でも10°以下の水接触角を示した。また、実施例18~19で製造した本発明の組成物13~24および13’~24’を用いて調製される本発明の塗膜も、いずれの場合でも40°以下の水接触角を示した。
【0107】
(試験例3)
撥油性試験
撥油性試験として、一般的な測定法に準じて、油としてオレイン酸を用いて、協和界面科学株式会社製の油接触角装置DMs-401により、油接触角の測定を行った。油接触角が適度な大きさの場合には、防汚性試験の場合の油性マジックで書いた汚れの浮き上がるスピードが速く、水をかけることで汚れが浮き上がり、きれいにし易くなる。
【0108】
下記表1中に示す化合物(A)を用いて実施例16~17で製造した本発明の組成物を用いて調製された本発明の塗膜を用いた場合の水接触角およびオレイン酸接触角の測定の結果を、下記表1に示す。また、本発明の組成物25を用いて調製された本発明の塗膜を用いた場合の水接触角およびオレイン酸接触角の測定の結果を、下記表2に示す。
本発明の塗膜は、いずれの場合でも20°~28°以下の油接触角を示した。
表1.接触角の測定結果
【表1】
表2.接触角の測定結果
【表2】
【0109】
(試験例4)
薬品耐久性試験
親水性塗膜を形成した塗膜について、酸性およびアルカリ性の各条件下での薬品耐久性試験を実施した。
具体的には、24時間浸漬し、5%塩酸水に24時間浸漬させた後、流水で十分にすすぎを行い、乾燥させた。乾燥後に水接触角と防汚性試験を行ない、耐酸性の性能を評価した。
また、同様にカビキラーに24時間浸漬させた後、流水で十分すすぎを行い、乾燥させた。乾燥後に水接触角と防汚性試験を行ない、耐アルカリ性の性能を評価した。
本発明の組成物26を用いて得られた本発明の塗膜と、比較例の塗膜とを比較した測定結果を、下記表3に示す。
表3.耐久性試験結果
【表3】
本発明組成物26の塗膜は、酸性およびアルカリ性条件下で比較組成物2の塗膜と比較して優れた親水性および防汚性を示した。
【0110】
(試験例5)
防曇性試験
防曇性試験は50℃の蒸気に、親水性塗膜を形成した表面を垂直にあて、曇るか曇らないかを目視にて観察した。5秒以上曇らなかった場合を○、曇りを生じた場合を×とした。本発明の組成物を用いて得られた本発明の塗膜は、防曇性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明により、酸性および/またはアルカリ性条件での耐久性に優れており、且つ防汚性および/または防曇性に優れた、(メタ)アクリルアミド化合物を得ることができる。また、これら機能を有する該(メタ)アクリルアミド化合物から製造される塗膜は、ガラス、ディスプレイなどの表示材料表面、または水回り物品についての積層フィルム等として有用であり、工業的に利用価値が高い。