(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】熱可塑性材料のための高いガラス転移温度及び高い融点を有する半結晶性ポリアミド組成物、その製造方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
C08L 77/06 20060101AFI20221227BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20221227BHJP
C08G 69/26 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
C08L77/06
C08K7/02
C08G69/26
(21)【出願番号】P 2019551349
(86)(22)【出願日】2018-03-23
(86)【国際出願番号】 FR2018050710
(87)【国際公開番号】W WO2018172717
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-01-08
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カペロ, マチュー
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-055796(JP,A)
【文献】特表2019-520464(JP,A)
【文献】特開2010-285553(JP,A)
【文献】特開昭62-209166(JP,A)
【文献】特開平07-165911(JP,A)
【文献】国際公開第1988/001283(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 0から70重量%の補強用短繊維、
- 30から100重量%の、少なくとも一つの半結晶性ポリアミドポリマーに基づく熱可塑性マトリックス、
- 0から50重量%の添加剤及び/又は他のポリマー
を含む熱可塑性材料のための組成物であって、
前記組成物が、
a)前記半結晶性ポリアミドポリマーの少なくとも一つの反応性ポリアミドプレポリマー前駆体を含むか又はそれからなる反応性組成物であるか、
又はa)の代わりとして、
b)上に規定された熱可塑性マトリックスの組成物である、少なくとも一つのポリアミドポリマーの非反応性組成物
であり、
組成物a)の前記反応性ポリアミドプレポリマー及び組成物b)の前記ポリアミドポリマーが、少なくとも一つのBACT/XTコポリアミドを含むか、又はそれからなり、
- BACTが、70から99.1%の範囲のモル含有量で存在するアミドモチーフを有する単位であり、BACが、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキシル(1,3-BAC)、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキシル(1,4-BAC)又はそれらの混合物から選択され、Tがテレフタル酸であり、
- XTが、0.9から30%の範囲のモル含有量で存在するアミドモチーフを有する単位であり、Xが、C9からC18直鎖状脂肪族ジアミンであり、Tがテレフタル酸であり、
- BACT及び/又はXT単位において、互いに独立して、ジカルボン酸の総量に対して最大30mol%のテレフタル酸を、6から36個の炭素原子を含む他の芳香族、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸に置き換えることができ、
- BACT及び/又はXT単位において、互いに独立して、ジアミンの総量に対して最大30mol%のBAC及び/又は該当する場合はXを、4から36個の炭素原子を含む他のジアミンに置き換えることができ、
- コポリアミドにおいて、モノマーの総量に対して30mol%以下を、ラクタム、又はアミノカルボン酸により形成することができ、
- ただし、テレフタル酸に代わるモノマー、BACに代わるモノマー、及びXに代わるモノマーの合計が、コポリアミドに使用されるモノマーの総量に対して30mol%の濃度を超えないことを条件とし、
- BACT及びXT単位が、前記ポリアミドポリマーになおも存在することを条件と
し、
テレフタル酸に代わるモノマー、BACに代わるモノマー、及びXに代わるモノマーの合計が0に等しい、
組成物。
【請求項2】
前記半結晶性ポリアミドポリマーが、ISO規格11357-3(2013)に従って決定された、290℃から340℃を含む溶融温度Tmを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記半結晶性ポリアミドポリマーが、ISO規格11357-2:2013に従って決定された、>150℃のガラス転移温度Tgを有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記半結晶性ポリアミドポリマーが、ISO規格11357-3:2013に従って決定された、溶融温度と結晶化温度との間の差Tm-Tc<40℃を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
ISO規格11357-3:2013に従って示差走査熱量測定(DSC)により測定された半結晶性ポリアミドポリマーの結晶化のエンタルピーが、40J/g超であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
BACが1,3-BACであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
BACが1,3-BACであり、XTが9T、10T、11T及び12Tから選択されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
XTが10Tであり、10が1,10-デカンジアミンに相当することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
b)による非反応性組成物である、請求項1から
8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
a)による反応性組成物である、請求項1から
8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも一つの添加剤をさらに含むことを特徴する、請求項1から
9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
添加剤が、酸化防止剤、熱安定剤、UV吸収剤、光安定剤、耐衝撃性改良剤、潤滑剤、無機充填剤、難燃剤、造核剤及び冷却剤から選択されることを特徴とする、請求項
11に記載の組成物。
【請求項13】
成形組成物に関連することを特徴とする、請求項1から
12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1から
12のいずれか一項に記載の組成物を有する、熱可塑性材料の製造方法であって、少なくとも一つの反応性組成物a)を重合する少なくとも一つの工程、又は押出成形、射出成形により、少なくとも一つの非反応性組成物b)を成形又は実装する工程を含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項15】
i)任意選択的に繊維補強なしで、請求項1から
12のいずれか一項に記載の組成物の開口若しくは密閉金型への射出又は鋳型を用いない射出工程、
ii)反応性ポリアミド組成物a)の場合、鎖延長剤を用いて工程i)からの前記組成物を加熱することにより、場合に応じて溶融状態でバルクでの重縮合反応又は重付加反応により、任意選択的に重縮合の場合、真空下で抽出システムを使用した、密閉鋳型を伴うときは真空下での縮合生成物の除去を伴う、重合反応工程、
iii)非反応性ポリアミド組成物b)の場合は、工程i)からの前記組成物を実装又は成形して、鋳型中に又は別の実装システムを用いて最終的な部品を形成する工程、及び、反応性組成物a)の場合は、成形により又は別の実装システムにより、重合工程ii)と同時に、実装する工程
を含むことを特徴とする、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から
12のいずれか一項に記載の
熱可塑性材料のための組成物中に含まれる、半結晶性ポリアミドポリマーであって、前記
半結晶性ポリアミドポリマーが、前記組成物b)による上記の非反応性ポリマー又は前記組成物a)による上記の反応性組成物から得ることができるポリマーであることを特徴とする、半結晶性ポリアミドポリマー。
【請求項17】
前記熱可塑性材料に基づく機械部品又は構造部品、単層若しくは多層管又はフィルムの製造のための、請求項1から
12のいずれか一項に記載の組成物又は前記組成物b)による非反応性ポリマー又は上記の組成物a)による反応性組成物から得ることができるポリマーの使用。
【請求項18】
前記複合材料の前記機械部品又は構造部品が、自動車、電気若しくは電子、鉄道、海洋、風力、光起電、太陽光発電(太陽光発電プラント用のソーラーパネル及び部品を含む)、スポーツ、航空宇宙、道路輸送(トラックに関連)、建設、土木、標識及びレジャーの領域における用途に関することを特徴とする、請求項
17に記載の使用。
【請求項19】
自動車分野の用途の前記機械部品が、流体の輸送のためのエンジンフード下にあることを特徴とする、請求項
17に記載の使用。
【請求項20】
電気又は電子分野における用途の前記機械部品又は構造部品が、カプセル化ソレノイド、ポンプ、電話機、コンピュータ、プリンタ、ファクス、モデム、モニタ、リモートコントロール、カメラ、回路遮断器、電気ケーブル管路、光ファイバー、スイッチ及びマルチメディアシステムなどの電気又は電子機器物品であることを特徴とする、請求項
17に記載の使用。
【請求項21】
請求項1から
12のいずれか一項に記載の熱可塑性材料のための少なくとも一つの組成物の使用により生じることを特徴とする、熱可塑性材料。
【請求項22】
請求項1から
12のいずれか一項に記載の少なくとも一つの組成物の使用
により生じること、請求項
16に記載の
ポリアミドポリマーの使用により生じること、請求項
21に記載の
熱可塑性材料
の使用により生じること、又は請求項
14若しくは
15に記載の方法により得られる
熱可塑性材料の使用により生じることを特徴とする、熱可塑性材料の機械部品又は構造部品。
【請求項23】
流体の輸送のためのエンジンフード下にある部品などの、自動車分野の用途の機械部品に関連することを特徴とする、請求項
22に記載の部品。
【請求項24】
カプセル化ソレノイド、ポンプ、電話機、コンピュータ、プリンタ、ファクス、モデム、モニタ、リモートコントロール、カメラ、回路遮断器、電気ケーブル管路、光ファイバー、スイッチ及びマルチメディアシステムなどの電気又は電子機器物品などの、電気又は電子分野における用途の機械部品又は構造部品に関連することを特徴とする、請求項
22に記載の部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性材料のための、ビス(アミノエチル)シクロヘキサン(BAC)に基づく高いガラス転移温度を有する新規の半結晶性(sc)ポリアミド組成物に関する。
【0002】
本発明はまた、前記熱可塑性材料を製造する方法と、材料部品及び結果として生じる部品のため並びに自動車、鉄道、海洋、高速道路輸送、風、スポーツ、宇宙及び航空、建設、標識及びレジャー並びに電気及び電子の分野における用途のための前記材料に基づく機械部品又は構造用部品の製造のための前記組成物の使用とにも関する。
【背景技術】
【0003】
材料の主な課題は、次の仕様を満たすポリアミド樹脂を見つけることである:
- 広範な使用温度にわたる高いTg;
- 良好な温度耐性のための高いTmであるが、特に射出による加工が可能なほど十分に低いTm、
- 迅速に型から外すことができ、したがって例えば自動車産業で使用されるような集中的な生産サイクルに対応できるようにするための、結晶化に対する非常に良好な適合性;
- 最終材料から可能な限り最高の弾性率を生成するために、高温時を含む高い剛性。
【0004】
特許文献CN104211953は、60から95mol%の10T、5から40mol%の5’T(5’は2-メチル-1,5-ペンタメチレンジアミンに相当する)を含む30から99.9重量%のポリアミド樹脂、0から70重量%の強化充填材、及び0.1から50重量%の添加剤を含むポリアミド組成物を記載している。
【0005】
ポリアミド樹脂は、260℃超の溶融温度及び10Tの高モル比を有する。
【0006】
EP550314は、その実施例において、250℃を超える融点及び限定されたTgを目標とするが、所与の実施例の大部分は低すぎる(<80℃)Tgを有する(非反応性)コポリアミド組成物を記載する。
【0007】
EP1988113は、
- 40から95mol%の10T
- 5から40%の6T
を有する10T/6Tコポリアミドに基づく成形組成物を記載する。
【0008】
特に、高い10Tモル割合及び270℃を超える高い融点を有するポリアミドが求められている。
【0009】
国際公開第2011/003973号は、9から12個の炭素原子及びテレフタル酸を含む50から95mol%の直鎖状脂肪族ジアミンベースのモチーフと、テレフタル酸と2,2,4-及び2,4,4-トリメチルヘキサンジアミンの混合物とを組み合わせた5から50%のモチーフを含む組成物を記載している。
【0010】
国際公開第2014/064375は、特に、上記の様々な特性の間の優れた妥協点を有するMXDT/10T PAを記載している。残念なことに、使用されるメタ-キシレンジアミン(MXD)モノマーは、二次反応を起こしやすく、特に枝の形成を生じさせる。
【0011】
短い生産サイクル時間を有する、機械的性能と実装の適性(変形の容易さ)との間の良好な妥協点を欠いた技術の現状の欠点は、特に高温且つ特に射出による容易な実装の場合に高い機械的性能(機械的強度)間で優れた妥協点を有する半結晶性PA組成物を目的とする本発明の解決策によって克服される。それは実際に高剛性であり、>150℃のガラス転移温度、290℃から340℃のTm、及び優れた結晶化能力(Tm-Tc<40℃)を有し、このことにより、特に風、自動車又は航空又は電気及び電子機器用のための、特に射出又は成形による実装のための選択マトリックスとなる。
【0012】
本発明の熱可塑性材料のためのマトリックスとしての半結晶性ポリアミドポリマーの選択は、非晶質ポリアミドと比較して、特にクリープ又は耐疲労性などの高温時の著しく改善された機械的性能のために魅力的である。さらに、200℃を超える融点は、非晶質PAタイプの構造では不可能な電気泳動処理との互換性のために、自動車分野で有利である。特に射出成形の使用温度範囲全体にわたって熱可塑性材料に良好な機械的特性を提供するために、150℃を超えるTgが求められる。機械的性能と可能な限り高い結晶化速度及び/又は結晶化温度を最適化して、前記半結晶性ポリアミドの組成を選択して成形部品を射出するまでの成形時間を短縮するために、前記ポリマーの結晶化度は可能な限り高くなければならない。
【発明の概要】
【0013】
本発明の主題は、特に高温で容易な実装の場合に、高い機械的性能(機械的強度)の間で良好な妥協を有する半結晶性ポリアミドに特に基づく熱可塑性材料の特定の新規特定組成物の実装である。より具体的には、例えば、より低い射出圧力を使用するか、又はより高いレベルのフィネスを有する部品を成形するための、組成物の低い初期粘度による改善された加工性と、達成可能な高分子量による改善された機械的特性の両方は、反応性組成物の場合、半結晶性反応性ポリアミドプレポリマーに基づく組成物を使用することにより、本発明の解決策で可能である。より具体的には、規定された高いTg及びTmを有しながら、前記熱可塑性材料の容易な実装により、ポリアミドポリマーマトリックスは、最初に溶融温度と結晶化温度との、40℃を超えない、好ましくは30℃を超えない差Tm-Tcによって特徴付けられる高い結晶化速度も有する必要がある。したがって、本発明の主題は、既に上に規定された必要性:
- 広範な使用温度にわたる高いTg;
- 特に射出による、加工処理を容易にするための290℃から340℃のTm;
- 迅速に型から外すことができ、したがって例えば自動車産業で使用されるような集中的な生産サイクルに対応できるようにするための、結晶化に対する非常に良好な適合性;
- 最終材料から可能な限り最高の弾性率を生成するために、高温時を含む高い剛性
を満たすポリアミド組成物を開発することである。
【0014】
本発明は、
- 0から70重量%、好ましくは20から60重量%の補強用短繊維、
- 30から100重量%、好ましくは40から80重量%の、少なくとも一つの半結晶性ポリアミドポリマーに基づく熱可塑性マトリックス、
- 0から50重量%の添加剤及び/又は他のポリマー
を含む熱可塑性材料のための組成物であって、
前記半結晶性ポリアミドポリマーが、
a)前記半結晶性ポリアミドポリマーの少なくとも一つの反応性ポリアミドプレポリマー前駆体を含むか又はそれからなる反応性組成物であるか、
又はa)の代わりとして、
b)上に規定された熱可塑性マトリックスの組成物である、少なくとも一つのポリアミドポリマーの非反応性組成物であり、
組成物a)の前記反応性ポリアミドプレポリマー及び組成物b)の前記ポリアミドポリマーが、少なくとも一つのBACT/XTコポリアミドを含むか、又はそれからなり、
- BACTが、70から99.1%、好ましくは80から99%、より好ましくは90から99%の範囲のモル含有量で存在するアミドモチーフを有する単位であり、BACが、1,3-ビス(アミノメチル) シクロヘキシル(1,3-BAC)、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキシル(1,4-BAC)及びそれらの混合物から選択され、Tがテレフタル酸であり、
- XTが、0.9から30%未満、好ましくは1から20%、より好ましくは1から10%の範囲のモル含有量で存在するアミドモチーフ単位であり、Xが、C4からC18直鎖状脂肪族ジアミン、特にC9からC18、好ましくはC9、C10、C11又はC12であり、Tがテレフタル酸、好ましくはC10、C11又はC12であり、
- BACT及び/又はXT単位において、互いに独立して、ジカルボン酸の総量に対して最大30mol%、好ましくは20mol%、特に最大10mol%のテレフタル酸を、6から36個の炭素原子、特に6から14個の炭素原子を含む他の芳香族、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸に置き換えることができ、
- BACT及び/又はXT単位において、互いに独立して、ジアミンの総量に対して最大30mol%、好ましくは20mol%、特に最大10mol%のBAC及び/又は該当する場合はXを、4から36個の炭素原子、特に6から12個の炭素原子を含む他のジアミンに置き換えることができ、
- コポリアミドにおいて、モノマーの総量に対して30mol%以下、好ましくは20mol%以下、好ましくは10mol%以下を、ラクタム、又はアミノカルボン酸により形成することができ、
- ただし、テレフタル酸に代わるモノマー、BACに代わるモノマー、及びXに代わるモノマーの合計が、コポリアミドに使用されるモノマーの総量に対して30mol%、好ましくは20mol%、好ましくは10mol%の濃度を超えないことを条件とし、
- BACT及びXT単位が、前記ポリアミドポリマーになおも存在することを条件とする、
組成物に関する。
【0015】
上で規定されたモノマーの部分的置換は、上で規定されたBACT及びXTの範囲を意味する、つまり、BACTが例えば70超から99.1%の割合で存在する場合、BAC及び/又はTの可能な部分的置換が、すべての場合において、BACTの少なくとも70%超の最終的な比率をもたらし、XTについても同様であることと理解されることは明らかである。
【0016】
したがって、前記半結晶性ポリアミドポリマーは、熱可塑性マトリックスの基礎であり、
前記半結晶性ポリアミドポリマーをもたらすために、別のジ-CO2H又はジ-NH2末端化ポリアミドプレポリマーとそれぞれ反応することができるジ-NH2又はジ-CO2H末端化ポリアミドプレポリマーのいずれか、又は
前記半結晶性ポリアミドポリマーをもたらすための、それ自体と反応し得るNH2又はCO2H末端化プレポリマー、又は
鎖延長剤と反応して前記半結晶性ポリアミドポリマーをもたらし得るプレポリマー、又は
非反応性組成物b)に既に存在する半結晶性ポリアミドポリマー
に対応する反応性組成物a)から得ることができる半結晶性ポリアミドポリマーである。
【0017】
言い換えれば、本発明は、
- 0から70重量%、好ましくは20から60重量%の補強用短繊維、
- 30から100重量%、好ましくは40から80重量%の、少なくとも一つの半結晶性ポリアミドポリマーに基づく熱可塑性マトリックス、
- 0から50重量%の添加剤及び/又は他のポリマー
を含む熱可塑性材料のための組成物であって、
前記組成物が、
a)前記半結晶性ポリアミドポリマーの少なくとも一つの反応性ポリアミドプレポリマー前駆体を含むか又はそれからなる反応性組成物であるか、
又はa)の代わりとして、
b)上に規定された熱可塑性マトリックスの組成物である、少なくとも一つのポリアミドポリマーの非反応性組成物
であり、
組成物a)の前記反応性ポリアミドプレポリマー及び組成物b)の前記ポリアミドポリマーが、少なくとも一つのBACT/XTコポリアミドを含むか、又はそれからなり、
- BACTが、70から99.1%、好ましくは80から99%、より好ましくは90から99%の範囲のモル含有量で存在するアミドモチーフを有する単位であり、BACが、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキシル(1,3-BAC)、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキシル(1,4-BAC)又はそれらの混合物から選択され、Tがテレフタル酸であり、
- XTが、0.9から30%未満、好ましくは1から20%、より好ましくは1から10%の範囲のモル含有量で存在するアミドモチーフを有する単位であり、Xが、C9からC18直鎖状脂肪族ジアミン、好ましくはC9、C10、C11又はC12であり、Tがテレフタル酸、好ましくはC10、C11又はC12であり、
- BACT及び/又はXT単位において、互いに独立して、ジカルボン酸の総量に対して最大30mol%、好ましくは20mol%、特に最大10mol%のテレフタル酸を、6から36個の炭素原子、特に6から14個の炭素原子を含む他の芳香族、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸に置き換えることができ、
- BACT及び/又はXT単位において、互いに独立して、ジアミンの総量に対して最大30mol%、好ましくは20mol%、特に最大10mol%のBAC及び/又は該当する場合はXを、4から36個の炭素原子、特に6から12個の炭素原子を含む他のジアミンに置き換えることができ、
- コポリアミドにおいて、モノマーの総量に対して30mol%以下、好ましくは20%以下、好ましくは10mol%以下を、ラクタム、又はアミノカルボン酸により形成することができ、
- ただし、テレフタル酸に代わるモノマー、BACに代わるモノマー、及びXに代わるモノマーの合計が、コポリアミドに使用されるモノマーの総量に対して30mol%、好ましくは20mol%、好ましくは10mol%の濃度を超えないことを条件とし、
- BACT及びXT単位が、前記ポリアミドポリマーになおも存在することを条件とする、
組成物に関する。
【0018】
少なくとも一つのBACT/XTコポリアミドを含むか又はそれからなる、組成物a)の前記反応性ポリアミドプレポリマー及び組成物b)の前記ポリアミドポリマーという表現は、組成物a)の反応性ポリアミドプレポリマー又は組成物b)の前記ポリアミドポリマーが、上に規定するそれぞれの割合でBACT及びXTアミドモチーフを有する単位から排他的になること、又は、組成物a)の反応性ポリアミドプレポリマー又は組成物b)の前記ポリアミドポリマーは、上に規定するそれぞれの割合でBACT及びXTアミドモチーフを含み、アミドモチーフを有する他の単位も含むことを意味する。
【0019】
有利には、組成物a)の反応性ポリアミドプレポリマー又は組成物b)の前記ポリアミドポリマー中のBACT及びXTアミドモチーフを有する単位の割合は、50%超、特に60%超、具体的には70%超、好ましくは80%超、特に90%超である。
【0020】
したがって、本発明は、
- 0から70重量%、好ましくは20から60重量%の補強用短繊維、
- 30から100重量%、好ましくは40から80重量%の、少なくとも一つの半結晶性ポリアミドポリマーに基づく熱可塑性マトリックス、
- 0から50重量%の添加剤及び/又は他のポリマー
を含む熱可塑性材料のための組成物であって、
前記半結晶性ポリアミドが、少なくとも一つのBACT/XTコポリアミドを含むか又はそれからなり、
- BACTが、70から99.1%、好ましくは80から99%、より好ましくは90から99%の範囲のモル含有量で存在するアミドモチーフを有する単位であり、BACが、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキシル(1,3-BAC)、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキシル(1,4-BAC)又はそれらの混合物から選択され、Tがテレフタル酸であり、
- XTが、0.9から30%未満、好ましくは1から20%、より好ましくは1から10%の範囲のモル含有量で存在するアミドモチーフを有する単位であり、Xが、C9からC18直鎖状脂肪族ジアミン、好ましくはC9、C10、C11又はC12であり、Tがテレフタル酸、好ましくはC10、C11又はC12であり、
- BACT及び/又はXT単位において、互いに独立して、ジカルボン酸の総量に対して最大30mol%、好ましくは20mol%、特に最大10mol%のテレフタル酸を、6から36個の炭素原子、特に6から14個の炭素原子を含む他の芳香族、脂肪族又は脂環式ジカルボン酸に置き換えることができ、
- BACT及び/又はXT単位において、互いに独立して、ジアミンの総量に対して最大30mol%、好ましくは20mol%、特に最大10mol%のBAC及び/又は該当する場合はXを、4から36個の炭素原子、特に6から12個の炭素原子を含む他のジアミンに置き換えることができ、
- コポリアミドにおいて、モノマーの総量に対して30mol%以下、好ましくは20mol%以下、好ましくは10mol%以下を、ラクタム、又はアミノカルボン酸により形成することができ、
- ただし、テレフタル酸に代わるモノマー、BACに代わるモノマー、及びXに代わるモノマーの合計が、コポリアミドに使用されるモノマーの総量に対して30mol%、好ましくは20mol%、好ましくは10mol%の濃度を超えないことを条件とし、
- BACT及びXT単位が、前記ポリアミドポリマーになおも存在することを条件とする、
組成物に関する。
【0021】
本発明による組成物は、補強用短繊維又は短繊維補強材を含み得る。
【0022】
好ましくは、短繊維として記載される繊維は、200から400μmの間に含まれる長さを有する。
【0023】
これらの補強用短繊維は、
- 天然繊維
- 本発明の前記半結晶性ポリアミドの溶融温度Tmよりも高く、重合及び/又は実装温度よりも高い溶融温度Tm’を有する鉱物繊維
- 前記熱可塑性材料の前記マトリックスを構成する前記半結晶性ポリアミドの重合温度よりも高いか又は溶融温度Tmよりも高く、且つ実装温度よりも高い、溶融温度Tm’、又は溶融温度Tm’が存在しない場合はガラス転移温度Tg’を有するポリマー繊維
- 上記の繊維の混合物
から選択され得る。
【0024】
本発明に適した鉱物繊維の例としては以下が列挙され得る:無機繊維、特にナノチューブ若しくはカーボンナノチューブ(CNT)の繊維、カーボンナノファイバー又はグラフェンを含む炭素繊維;例えば特にE、R若しくはS2型のガラス繊維等のシリカ繊維;ホウ素繊維;セラミック繊維、特に炭化ケイ素繊維、炭化ホウ素繊維、炭窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維、窒化ホウ素繊維、バサルト繊維;金属及び/若しくはそれらの合金を含有する繊維又はフィラメント;金属酸化物繊維、特にアルミナ(Al2O3)のもの;金属化繊維、例えば金属化ガラス繊維及び金属化炭素繊維、又はこれらの繊維の混合物。
【0025】
より具体的には、これらの繊維は以下のように選択され得る:
-鉱物繊維は、炭素繊維、カーボンナノチューブ繊維、ガラス繊維、特にE、R若しくはS2型、ホウ素繊維;セラミック繊維、特に炭化ケイ素繊維、炭化ホウ素繊維、炭窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維、窒化ホウ素繊維、バサルト繊維;金属及び/若しくはそれらの合金を含有する繊維又はフィラメント;金属酸化物繊維、例えばAl2O3;金属化ガラス繊維及び金属化炭素繊維等の金属化繊維、又はこれらの繊維の混合物から選択することができ、
- 上に示される条件に従ってポリマー繊維は、以下から選択される:
- 熱硬化性ポリマー繊維、より具体的には不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ビニルエステル、フェノール樹脂、ポリウレタン、シアノアクリレート及びポリイミド、例えばビス-マレイミド樹脂、メラミンなどのアミンとグリオキサール若しくはホルムアルデヒドなどのアルデヒドとの反応により得られるアミノプラストから特に選択されるもの、
- 熱可塑性ポリマー繊維、より具体的には以下から選択される:
- ポリアミド繊維、特にポリフタルアミド繊維、
- アラミド繊維(例えばKevlar(登録商標))及び芳香族ポリアミド、例えば以下の式の一つを有するもの:PPD.T、MPD.I、PAA及びPPA(PPD及びMPDはそれぞれ、p-及びm-フェニレンジアミンであり、PAAはポリアリールアミドであり、PPAはポリフタルアミドである)、
- ポリアミドブロックコポリマー、例えばポリアミド/ポリエーテルの繊維、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)の繊維。
【0026】
好ましい補強用短繊維は、炭素繊維(金属化されたものを含む)、ガラス繊維(E、R、S2のような金属化されたものを含む)、アラミド繊維(Kevlar(登録商標)のようなもの)又は芳香族ポリアミド繊維、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)繊維、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)繊維、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)繊維又はそれらの混合物から選択される短繊維である。
【0027】
天然繊維は、アマ、リシン、木材、サイザル、ケナフ、ココナッツ、麻及びジュート繊維から選択される。
【0028】
好ましくは、本発明による組成物中の補強用繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、アマ繊維及びそれらの混合物から、より好ましくはガラス繊維及び炭素繊維から、さらにより好ましくはガラス繊維から選択される。
【0029】
添加剤について、これらに限定されることなく、本発明の好ましい変形例による組成物は、より具体的には、熱安定剤のような特定の添加剤を含み、特に、これらの安定剤は、熱可塑性マトリックスのポリマーの熱酸化及び/又は光酸化に対する酸化防止剤であり、有機又は無機安定剤である。
【0030】
「有機安定剤」又はより一般的には「有機安定剤の組み合わせ」という用語は、フェノール型の一次酸化防止剤、ホスファイト型の二次酸化防止剤、及び任意選択的にはHALSのような他の安定剤(ヒンダードアミン光安定剤(例えばCibaのTinuvin 770)、抗UV(例えばCibaのTinuvin 312)、フェノール安定剤又はリンを含有する安定剤を含む)を表す。CromptonのNaugard 445等のアミン酸化防止剤又はClariantのNylostabS-EED等のポリ官能性安定剤も使用され得る。
【0031】
存在する有機安定剤は、制限的ではない以下のリストから選択され得る:
- フェノール酸化防止剤、例えばCibaのIrganox 245、Irganox 1010、Irganox 1098、CibaのIrganox MD1024、Great LakesのLowinox 44B25、Adeka PalmaroleのADK Stab AO-80、
- ホスファイト等のリンを含有する安定剤、例えばCibaのIrgafos 168、
- UV吸収剤、例えばCibaのTinuvin 312、
- 上記のようなHALS、
- アミン型安定剤、例えばCromptonのNaugard 445、或いはヒンダードアミン型、例えばCibaのTinuvin 770、
- ポリ官能性安定剤、例えばClariantのNylostab S-EED。
【0032】
これらの有機安定剤の二つ以上の混合物が明らかに想定され得る。
【0033】
「鉱物安定剤」という表現は、米国特許公開第2008/0146717号に記載のような銅ベース又は金属酸化物ベースの安定剤を意味する。鉱物安定剤として以下が列挙され得る:ハロゲン化銅及び酢酸銅又は鉄酸化物、例えばFeO、Fe2O3、Fe3O4、又はそれらの混合物。任意選択的に、銀などの他の金属も考慮され得るが、それらは効果が小さいことが知られている。これらの銅をベースとした化合物は、典型的には、ハロゲン化アルカリ金属、特にハロゲン化カリウムに関連する。
【0034】
これらの鉱物安定剤は、ポリマー鎖の破損を防ぐ傾向があるため、特に100~120℃以上の温度で、構造体が熱風での長期的な耐熱性を改善する必要がある場合に特に使用される。
【0035】
より具体的には、銅ベースの安定剤は、特にイオン化可能なイオン形態、例えば錯体の形態の少なくとも一つの銅原子を含む化合物を意味すると理解される。
【0036】
銅ベースの安定剤は、塩化銅(I)、塩化銅(II)、臭化銅(I)、臭化銅(II)、ヨウ化銅(I)、ヨウ化銅(II)、酢酸銅(I)及び酢酸銅(II)から選択され得る。銅ベースの安定剤と組み合わせた銀などの他の金属の酢酸塩及びハロゲン化物が挙げられる。これらの銅をベースとした化合物は、典型的には、ハロゲン化アルカリ金属に関連する。よく知られた例は、CuIとKIの混合物であり、比CuI:KIは典型的には、1:5から1:15の間に包含される。そのような安定剤の例は、CibaのPolyadd P201である。
【0037】
銅ベースの安定剤のさらなる詳細は、米国特許第2,705,227号に見られる。より最近では、BruggemannのBruggolen H3336、H3337、H3373などの銅錯体のような銅ベースの安定剤が登場してきた。
【0038】
有利には、銅ベースの安定剤は、ハロゲン化銅、酢酸銅、少なくとも一つのアルカリ金属ハロゲン化物との混合物中のハロゲン化銅若しくは酢酸銅、及びそれらの混合物から、好ましくはヨウ化銅及びヨウ化カリウムの混合物(CuI/KI)から選択される。
【0039】
添加剤は、有利には、ISO規格178に従って測定される100MPa未満の曲げ弾性率及び0℃未満のTg(規格11357-2:2013に従って、DSCサーモグラムの変曲点近くで測定)を有するポリマーから、特に<200MPaの曲げ弾性率を有するPEBA(ポリエーテルブロックアミド)と結合しているか又は結合していないポリオレフィンからなる衝撃改質剤であり得る。
【0040】
耐衝撃性改良剤のポリオレフィンは、官能化されていてもいなくてもよく、あるいは少なくとも一つの官能化ポリオレフィン及び/又は少なくとも一つの非官能化ポリオレフィンの混合物であってもよい。
【0041】
添加剤は、特に熱可塑性材料の分野の当業者に知られる任意の充填剤であり得る充填剤であってもよい。これは、金属粉末、粉末カーボンブラック、カーボンフィブリル、カーボンナノチューブ(CNT)、炭化ケイ素、炭窒化ホウ素、窒化ホウ素又はケイ素などの熱伝導性及び/又は電気伝導性充填剤をさらに含み得る。この主題に関して、出願人による出願である国際公開第2010/130930号を参照することができる。
【0042】
長短又は連続にかかわらず、補強用繊維は、添加剤から除外され、特に、用語「無機充填剤」は、補強用長繊維、短繊維又は連続繊維を除外する。
【0043】
添加剤は、ハロゲン非含有難燃剤、例えば米国特許公開第2008/0274355号に記載されるようなもの、特に、ホスフィン酸金属塩、ジホスフィン酸金属塩、少なくとも一つのホスフィン酸金属塩を含有するポリマー、少なくとも一つのジホスフィン酸又は赤リン金属塩を含有するポリマー、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム又は金属ホウ酸塩、例えばホウ酸亜鉛、又はメラミンピロホスフェート及びメラミンシアヌレートでもあり得る。それらは、臭素化又はポリ臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート又は臭素化フェノール等のハロゲン化難燃剤でもあり得る。
【0044】
有利には、添加剤は、酸化防止剤、熱安定剤、UV吸収剤、光安定剤、衝撃改質剤、潤滑剤、無機充填剤、難燃剤、核化剤、特にタルクのような鉱物充填剤、及び冷却剤から選択される。
【0045】
「他のポリマー」という表現は、任意の熱可塑性ポリマー、特にポリアミドポリマー、特に脂肪族、脂環式又は芳香族ポリアミドを表し、それは微結晶質又は非晶質であり得る。
【0046】
「非反応性組成物」という表現は、その組成物が、分子量がもはや大幅に変化する可能性が低いポリアミドポリマーに基づくこと、すなわち、その実装中に数平均分子量(Mn)が50%未満変化することを意味し、したがって、熱可塑性マトリックスの最終的なポリアミドポリマーに相当することを意味する。
【0047】
特に<120meq/kgのレベルを有する存在する低レベルの(残留)反応性官能基により、又は鎖末端官能基の同型の端部の存在のために互いに非反応性であることにより、又は単官能性反応性組成物、例えば、一酸若しくはモノイソシアネートとの修飾反応によるアミン官能基、及びモノアミンとの反応によるカルボキシル官能基のための前記反応性官能基の改質及びブロックのいずれかにより、組成物b)によるこれらのポリアミドは非反応性である。
【0048】
有利には、前記材料の熱可塑性マトリックスの前記最終的なポリアミドポリマーの数平均分子量(Mn)は、溶液中の電位差滴定により決定された末端官能基のレベル及び前記プレポリマーの官能性からの計算により又はNMRにより決定される、好ましくは6000から40,000g/モル、好ましくは10,000から30,000g/モルの範囲である。これらのMn値は、溶媒を変更することにより(硫酸の代わりにm-クレゾールを使用し、温度は20℃)決定される、ISO規格307:2007に従って決定される0.7以上の固有粘度に相当し得る。
【0049】
反対に、「反応性組成物」という表現は、反応性プレポリマーの、縮合による互いとの反応により、又は重付加による、揮発性副生成物を除去することのない、鎖延長剤との反応により、前記反応性組成物の分子量が実装中に変化し、熱可塑性マトリックスの最終的なポリアミドポリマーをもたらすことを意味する。
【0050】
1,3-BAC(又は1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキシル、CAS番号2579-20-6)は、特にメタ-キシレンジアミン(MXDA)を水素化することにより得られる脂環式ジアミンモノマーである。1,3-BACは、二つの異性体、シス及びトランスの形態で存在し、CAS番号2579-20-6は異性体の混合物に相当する。
【0051】
1,4-BAC(又は1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキシル、CAS番号2549-07-9)は、特にパラ-キシレンジアミン(PXDA)を水素化することにより得られる脂環式ジアミンモノマーである。1,4-BACは、二つの異性体、シス及びトランスの形態で存在し、CAS番号2549-07-9は異性体の混合物に相当する。
【0052】
有利には、BACT単位に使用される1,3-BAC又は1,4-BACは、シス及びトランス異性体の混合物であり、それぞれの割合は、0/100から100/0、特に75/25から25/75である。
【0053】
有利には、1,3-BAC中のシス異性体の割合は、60%超、好ましくは70%超、具体的には80%超、特に90%超である。
【0054】
有利には、1,4-BAC中のトランス異性体の割合は、60%超、好ましくは70%超、具体的には80%超、特に90%超である。
【0055】
BAC及び/又はXは、互いに独立して、上記の他のジアミンで、特に、直鎖状又は分岐状脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン又はアリール芳香族ジアミン、例えば、メタ-キシレンジアミン(MXDA)で最大30mol%置き換えられ得る。
【0056】
例として、直鎖状又は分岐状脂肪族ジアミンは、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン(MPMD)、1,6-ヘキサンジアミン、1,8-オクタンジアミン(OMDA)、1,9-ノナンジアミン(NMDA)、2-メチル-1,8-オクタン-ジアミン(MODA)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン(TMHMD)、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン(TMHMD)、5-メチル-1,9-ノナンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,13-トリデカンジアミン、1,14-テトラデカンジアミン、1,16-ヘキサデカンジアミン及び1,18-オクタデカンジアミンから選択される。
【0057】
脂環式ジアミンは、イソホロンジアミン、ノルボルナンジメチルアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン(PACM)、2,2-(4,4’-ジアミノ-ジシクロヘキシル)プロパン(PACP)及び3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルエタン(MACM)から選択され得る。
【0058】
Tは、上で規定された他のカルボン二酸、特に他の芳香族、脂肪族又は脂環式カルボン二酸で最大30mol%置き換えられ得る。
【0059】
芳香族ジカルボン酸は、ナフタレンジカルボン酸(NDA)及びイソフタル酸(IPA)から選択され得る。
【0060】
脂肪族カルボン二酸は、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸及び二量化脂肪酸から選択され得る。
【0061】
脂環式ジカルボン酸は、シス-及び/若しくはトランス-シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸並びに/又はシス-及び/若しくはトランス-シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸(CHDA)から選択され得る。
【0062】
BAC及び/又はX及び/又はTは、互いに独立して、ラクタム又はアミノカルボン酸で最大30mol%置き換えられ得る。
【0063】
ラクタム及びアミノカルボン酸は、カプロラクタム(CL)、α,ω-アミノカプロン酸、α,ω-アミノノナン酸、α,ω-アミノウンデカン酸(AUA)、ラウリルラクタム(LL)及びα,ω-アミノドデカン酸(ADA)から選択され得る。
【0064】
BAC、X及びTモノマーの合計に対して、別のジアミン、別の二酸、ラクタム又はアミノカルボン酸又はそれらの任意の混合物による置換が、最大30mol%可能である。
【0065】
有利には、BAC、X及びTモノマーの合計に対して、別のジアミン、別の二酸、ラクタム又はアミノカルボン酸又はそれらの任意の混合物による置換が、最大20mol%可能である。
【0066】
有利には、BAC、X及びTモノマーの合計に対して、別のジアミン、別の二酸、ラクタム又はアミノカルボン酸又はそれらの任意の混合物による置換が、最大10mol%可能である。
【0067】
有利な実施態様では、本発明は、以下で規定される熱可塑性材料1から12のための組成物の一つに関し、前記組成物は、半結晶性ポリアミドポリマー、任意選択的に補強用短繊維を含み、前記半結晶性ポリアミドポリマーは、以下の表Iに規定される割合でBACT/XTコポリアミドを含む。
表I
【0068】
有利には、組成物1から12は、0から50重量%の添加剤及び/又は他のポリマーを含む。
【0069】
有利には、前記組成物は、半結晶性ポリアミドポリマー、任意選択的に補強用短繊維、並びに0から50重量%の添加剤及び/又は他のポリマーを含み、前記半結晶性ポリアミドポリマーは、表1に規定される割合でBACT/XTコポリアミドを含む。
【0070】
有利には、前記組成物は、半結晶性ポリアミドポリマー、任意選択的に補強用短繊維、並びに0から50重量%の添加剤及び/又は他のポリマーを含み、前記半結晶性ポリアミドポリマーは、表1に規定される割合でBACT/XTコポリアミドからなる。
【0071】
有利には、上記の組成物中の添加剤及び/又は他のポリマーの割合は、0重量%超から50重量%である。
【0072】
有利には、上記の組成物中、Xは、C9、C10、C11又はC12ジアミン、特にC10、C11又はC12である。
【0073】
したがって、本発明者らは、本発明の組成物が従来技術の組成物よりも結晶化に対する優れた適合性を有し、高いTg及びTmを有し、特に高いエンタルピーを有する(したがって高温時の弾性率が高い)ことを予想外に見出した。
【0074】
有利な実施態様では、本発明は、前記半結晶性ポリアミドポリマーが、ISO規格11357-3(2013)に従って決定された、290℃から340℃、好ましくは300から330℃、より好ましくは310から330℃に含まれる溶融温度Tmを有する、上記の組成物に関する。
【0075】
有利な実施態様では、本発明は、前記半結晶性ポリアミドポリマーが、ISO規格11357-2:2013に従って決定された、>150℃、好ましくは>160℃、より好ましくは>170℃のガラス転移温度Tgを有する、上記の組成物に関する。
【0076】
有利には、Tgは155から190℃に含まれる。
【0077】
有利な実施態様では、本発明は、前記半結晶性ポリアミドポリマーが、ISO規格11357-3:2013に従って決定された、溶融温度と結晶化温度との間の差Tm-Tc<40℃、好ましくは<30℃を有する、上記の組成物に関する。
【0078】
有利な実施態様では、本発明は、ISO規格11357-3:2013に従って示差走査熱量測定(DSC)により測定された半結晶性ポリアミドポリマーの結晶化のエンタルピーが、40J/g超、好ましくは45J/g、さらにより好ましくは50J/gであることを特徴とする、上記の組成物に関する。
【0079】
有利な実施態様では、本発明は、前記半結晶性ポリアミドポリマーが、290℃から340℃に含まれる溶融温度:Tm及び>150℃のTgを有することを特徴とする、上記の組成物に関する。
【0080】
有利な実施態様では、本発明は、前記半結晶性ポリアミドポリマーが、290℃から340℃に含まれる溶融温度:Tm及び>160℃のTgを有することを特徴とする、上記の組成物に関する。
【0081】
有利な実施態様では、本発明は、前記半結晶性ポリアミドポリマーが、290℃から340℃に含まれる溶融温度:Tm及び>170℃のTgを有することを特徴とする、上記の組成物に関する。
【0082】
有利な実施態様では、本発明は、前記半結晶性ポリアミドポリマーが、300℃から330℃に含まれる溶融温度:Tm及び>150℃のTgを有することを特徴とする、上記の組成物に関する。
【0083】
有利な実施態様では、本発明は、前記半結晶性ポリアミドポリマーが、300℃から330℃に含まれる溶融温度:Tm及び>160℃のTgを有することを特徴とする、上記の組成物に関する。
【0084】
有利な実施態様では、本発明は、前記半結晶性ポリアミドポリマーが、300℃から330℃に含まれる溶融温度:Tm及び>170℃のTgを有することを特徴とする、上記の組成物に関する。
【0085】
有利な実施態様では、本発明は、前記半結晶性ポリアミドポリマーが、310℃から330℃に含まれる溶融温度:Tm及び>150℃のTgを有することを特徴とする、上記の組成物に関する。
【0086】
有利な実施態様では、本発明は、前記半結晶性ポリアミドポリマーが、310℃から330℃に含まれる溶融温度:Tm及び>160℃のTgを有することを特徴とする、上記の組成物に関する。
【0087】
有利な実施態様では、本発明は、前記半結晶性ポリアミドポリマーが、310℃から330℃に含まれる溶融温度:Tm及び>170℃のTgを有することを特徴とする、上記の組成物に関する。
【0088】
有利な実施態様では、本発明は、前記半結晶性ポリアミドが、以下の特徴を有することを特徴とする、上記の組成物に関する(表II)。
表II
【0089】
有利な実施態様では、本発明は、BACが1,3-BACであることを特徴とする、上記の組成物に関する。
【0090】
有利には、1,3-BACは、シス及びトランス異性体は、それぞれの割合が0/100から100/0、特に75/25から25/75の混合物である。
【0091】
有利には、1,3-BAC中のシス異性体の割合は、60%超、好ましくは70%超、具体的には80%超、特に90%超である。
【0092】
有利な実施態様では、本発明は、BACが1,3-BACであり、XTが9T、10T、11T及び12T、より好ましくは10T、11T及び12Tから選択される、上記の組成物に関する。
【0093】
有利には、XTは11T又は12Tである。
【0094】
有利には、XTは10Tであり、10は1,10-デカンジアミンに相当する。
【0095】
有利な実施態様では、本発明は、テレフタル酸、BAC及びXに置き換えるモノマーの合計が0に等しい、上記の組成物に関する。したがって、この後者の実施態様では、上記の組成物1から93におけるモノマーの可能な置換はこれ以上存在しない。
【0096】
有利な実施態様では、本発明は、前記半結晶性ポリアミドが、b)による非反応性組成物であることを特徴とする、上記の組成物に関する。
【0097】
これは、前記組成物が、この組成物中に反応は存在しないため、前記熱可塑性材料のマトリックスポリマー(ポリアミド)と同一であることを意味し、この組成物は、本発明の熱可塑性材料の実装のための加熱中に、分子量に関して安定で変化しないままである。既に上に記載のTm、Tg、Tm-Tc及びDelta Hcについて、この組成物中のポリアミドポリマーの特徴は、最終的なポリマーのものと同一である。
【0098】
b)によるポリアミドは、ジアミン、二酸、及び任意選択的にアミノ酸又はラクタムである、特にモノマーの置換に関連するモノマー成分からの従来の重縮合反応により得られる。
【0099】
有利な実施態様では、本発明は、前記ポリアミド組成物がa)による反応性プレポリマー組成物及び前記熱可塑性材料マトリックスの前記ポリアミドポリマーの前駆体であることを特徴とする、上記のような組成物に関する。
【0100】
反応性組成物a)に応じて、以下に詳細に示す三つの可能性を区別することができる。
【0101】
有利には、前記組成物a)は、同じ鎖上に、それぞれ縮合により互いに共反応性である二つの末端官能基X’及びY’を保持する少なくとも一つの反応性プレポリマーを含むか、又はそれからなり、X’及びY’は、それぞれ、アミンとカルボキシル、又はカルボキシルとアミンである。
【0102】
プレポリマーは、同じ鎖上(つまり、同じプレポリマー上)に、縮合により互いに反応性である二つの末端官能基X’及びY’を保持する反応性ポリアミドである。
【0103】
この縮合(又は重縮合)反応は、副生成物の除去を引き起こし得る。これらは、好ましくは開放鋳型技術を使用した方法で作業することにより排出され得る。密閉鋳型法の場合では、反応により除去された副生成物を好ましくは減圧下で脱気する工程が存在し、これは、マイクロバブルがこの方法で除去されない場合、前記材料の機械的性能に影響を及ぼし得るため、最終的な熱可塑性材料中の副生成物のマイクロバブルの形成を防ぐために行われる。
【0104】
用語「反応性」とは、プレポリマーのMnが、それ自体との、又は別のプレポリマーとの反応後に、又は鎖延長により、50%超変化することを意味する。
【0105】
縮合後、この組成物中の得られる最終的なポリアミドポリマーの特徴は同じであり、Tm、Tg、Tm-Tc及びDelta Hcは既に上に規定した通りである。
【0106】
有利には、前記反応性組成物a)は、それぞれが二つの同一の末端官能基X’又はY’を保持し、互いに共反応性である少なくとも二つのポリアミドプレポリマーを含み、プレポリマーの前記官能基X’は、特に縮合により、他のプレポリマー前記能基Y’とのみ反応することができ、より具体的にはX’及びY’はそれぞれ、アミンとカルボキシル、又はカルボキシルとアミンである。
【0107】
この方法では、この縮合(又は重縮合)反応は、上記のように除去され得る副生成物の除去を引き起こし得る。
【0108】
縮合後、この組成物中の得られる最終的なポリアミドポリマーの特徴は同じであり、Tm、Tg、Tm-Tc及びDelta Hcは既に上に規定した通りである。
【0109】
有利には、前記組成物a)又は前駆体組成物は、
a1)以下:より選択される、n個の反応性末端官能基X’を有する、前記ポリマーの少なくとも一つの熱可塑性ポリアミドプレポリマー:-nが1から3、好ましくは1から2、より好ましくは1又は2、より具体的には2である、NH2、-CO2H及び-OH、好ましくはNH2及び-CO2H
a2)少なくとも一つの鎖延長剤Y-A’-Yであって、A’が二炭化水素置換基であり、非ポリマー構造を有し、2つの同一の末端反応性官能基Yを有し、前記プレポリマーa1)の少なくとも一つの官能基X’との重付加により反応性であり、好ましくは500未満、より好ましくは400未満の分子量を有するもの
を含むか又はそれらからなる。
【0110】
前記半結晶性ポリアミドプロポリマーa1)により保持される官能基X’に応じた、延長剤a2)の適切な例としては、以下が列挙され得る:
- XがNH2又はOH、好ましくはNH2であるとき:
〇鎖延長剤Y-A’-Yは以下のいずれかに対応するか、
・マレイミド、ブロックされ得るイソシアネート、オキサジノン、オキサゾリノン及びエポキシの群から選択されるY、
及び
■A’は、任意選択的に一又は複数のヘテロ原子を含む炭化水素スペーサーであり、Y官能基に互いに結合し、特にA’は、
*Yがオキサジノン及びオキサゾリノンである場合、二つのY官能基(基)間の共有結合、又は
*脂肪族炭化水素鎖、又は芳香族及び/若しくは脂環式炭化水素鎖(後者二つは、少なくとも一つの置換されていてもよい5又は6員炭素環を含み、任意選択的に、前記脂肪族炭化水素鎖は14から400g.mol-1の分子量を有する。)
から選択される、反応性官能基又はY基を保持炭化水素スペーサー又は炭素置換基であり、
○又は、鎖延長剤Y-A’-Yは、カプロラクタム基であるYに相当し、A’は、カルボニルビスカプロラクタムなどのカルボニル置換基であり得、又はA’は、テレフタロイル若しくはイソフタロイルであり得、
〇又は、鎖延長剤Y-A’-Yは、環状無水物基Yを保持し、好ましくは、この延長剤は、脂環式及び/又は芳香族カルボン酸二無水物から選択され、より好ましくはエチレンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリト酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ペリレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ヘキサフルオロイソプロピリデンビスフタル酸二無水物、9,9-ビス(トリフルオロメチル)キサンテンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物又はそれらの混合物から選択され、
且つ
- X’がCOOHであるとき:
〇前記鎖延長剤Y-A’-Yは、
■ 1,1’-イソ-又はテレ-フタロイル-ビス(2-メチル アジリジン)のような、エポキシ、オキサゾリン、オキサジン、イミダゾリン又はアジリジンの群から選択されるY
■ 上記のような炭素スペーサー(置換基)であるA’
に相当する。
【0111】
より具体的には、前記延長剤Y-A’-Yにおいて前記官能基Yがオキサジノン、オキサゾリン、オキサジン、オキサゾリン又はイミダゾリンから選択される場合、Y-A’-Yで表される鎖延長剤において、A’はアルキレン、例えば-(CH2)m-(mは1から14、好ましくは2から10の範囲)を表すことができ、又はA’は置換(アルキル)若しくは非置換シクロアルキレン及び/又はアリーレン、例えばベンゼンアリーレン、例えばo-、m-若しくはp-フェニレン、又はナフタレンアリーレンを表すこともでき、好ましくは、A’はアリーレン及び/又はシクロアルキレンである。
【0112】
Y-A’-Y鎖延長剤としてのカルボニル-又はテレフタロイル-又はイソフタロイル-ビスカプロラクタムの場合、好ましい条件は、前記重合が溶融状態で実装されるときに、副産物、例えばカプロラクタムの除去を回避する。
【0113】
Yがブロックイソシアネート官能基を表す上記の可能な場合、このブロック化は、イソシアネート官能基をブロックするブロック化剤、例えばエプシロン-カプロラクタム、メチルエチルケトキシム、ジメチルピラゾール又はマロン酸ジエチルによって得ることができる。
【0114】
同様に、延長剤がP(X’)nプレポリマー(X’=NH2)と反応する二無水物である場合、好ましい条件は、溶融状態の重合中及び実装中のイミド環形成を回避する。
【0115】
本発明の実装に適した反応性官能基Y=エポキシを有する鎖延長剤の例には、置換されていてもよい、脂肪族、脂環式又は芳香族ジエポキシドが含まれる。脂肪族ジエポキシドの例としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)などのビスフェノールAジグリシジルエーテルの芳香族ジエポキシドのような脂肪族ジオールのジグリシジルエーテルが挙げられ、脂環式ジエポキシドの例としては、脂環式ジオール又は水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルが挙げられる。より一般的には、本発明によるジエポキシドの適切な例としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)及びその水素化(脂環式)誘導体、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル又はヒドロキノンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、Mn<500のポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、Mn<500のポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、Mn<500のポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、Mn<500のビスフェノールAポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、Mn<500のビスフェノールAポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、カルボン酸ジグリシジルエステル例えばテレフタル酸グリシジルエステル又は二つのエチレン性不飽和を有するエポキシ化ジオレフィン(ジエン)若しくはエポキシ化脂肪酸ルエステル、ジグリシジル1,2シクロヘキサンジカルボキシレート及び列挙されたジエポキシドの混合物が挙げられる。
【0116】
本発明の実装に適したオキサゾリン又はオキサジンY反応性官能基を保持する鎖延長剤の例としては、EP0581642の第7ページの「A」、「B」、「C」及び「D」と参照されるもの、及びそれらの調製方法、及びそこに記載される反応の様式が挙げられる。この文献では、「A」はビスオキサゾリン、「B」はビスオキサジン、「C」は1,3-フェニレンビスオキサゾリン、及び「D」は1,4-フェニレンビスオキサゾリンである。
【0117】
本発明の実装に適したイミダゾリンY反応性官能基鎖延長剤の例としては、EP0,739,924の第7から第8ページ及び第10ページの表1に記載されるもの(「Aから「F」)と、それらの調製方法及びそこに記載される反応の様式とが挙げられる。
【0118】
本発明の実装に適したY=オキサジノン又はオキサゾリノン反応性官能基鎖延長剤の例としては、EP0581641の第7から第8ページの「A」から「D」と参照されるものと、それらの調製方法及びそこに記載される反応の様式とが挙げられる。
【0119】
スペーサーA’が、ビス-(ベンゾキサジノン)、ビスオキサジノン及びビスオキサゾリノンであるそれぞれの対応する延長剤との単一共有結合であり得る、オキサジノン又はオキサゾリノンベンゾキサジノンから誘導されるY基は、適切なオキサジノン(6員環)及びオキサゾリノン(5員環)Y基の例として挙げられる。A’はまた、C1からC14、好ましくはC2からC10のアルキレンであり得るが、A’は好ましくはアリーレン、より具体的には(1,2若しくは1,3若しくは1,4位でYで置換された)フェニレン又は(Yで二置換された)ナフタレン置換基又はフタロイル(イソ-若しくはテレフタロイル)であり得るか、又はA’はシクロアルキレンであり得る。
【0120】
オキサジン(6員環)、オキサゾリン(5員環)及びイミダゾリン(5員環)のようなY官能基に関して、置換基A’は、上記の通りであり得、ここでA’は単一共有結合であり得、それぞれ対応する延長剤は、ビスオキジン、ビスオキサゾリン及びビスイミダゾリンである。Aはまた、C1からC14、好ましくはC2からC10のアルキレンであり得る。置換基A’は、好ましくは、アリーレンであり、より具体的には、(1,2若しくは1,3若しくは1,4位でYで置換された)フェニレン又は(Yで二置換された)ナフタレン置換基又はフタロイル(イソ-又はテレフタロイル)であり得るか、又はA’はシクロアルキレンであり得る。
【0121】
Yがアジリジン(-NH-でエーテル-O-が置き換えられている酸化エチレンと同等の3員窒素複素環)である場合、置換基A’は、この種の鎖延長剤の例として、1,1’-イソフタロイルビス(2-メチルアジリジン)を有するフタロイル(1,1’-イソ-又はテレフタロイル)でありうる。
【0122】
(重)付加反応が促進され得ることにより、所与の両方の共反応物の総重量に対する、0.001から2%、好ましくは0.01から0.5%の範囲のレベルでの、前記プレポリマーP(X’)nと前記Y-A’-Y延長剤との間の反応のための触媒の存在によって、生産サイクルが短縮され得る。
【0123】
前記延長剤の選択の具体的な場合によれば、A’は、-(CH2)m-(mは1から14、好ましくは2から10の範囲)のようなアルキレンを表し、又はベンゼンアリーレン(o-、m-、-p フェニレン等)又はナフタレン(アリーレンを有して:ナフタレニレン)のようなアルキル置換又は非置換アリーレンを表す。好ましくは、A’は、置換又は非置換ベンゼン又はナフタレンであり得るアリーレンを表す。
【0124】
既に述べたように、前記鎖延長剤(a2)は、非ポリマー構造を有し、好ましくは500以下、より好ましくは400以下の分子量を有する。
【0125】
上記の三つのオプションによれば、前記反応性組成物a)の前記反応性プレポリマーは、好ましくは500から20,000、特に500から10,000、具体的には1000から6000の範囲の数平均分子量Mnを有する。すべての重量Mnは電位差測定又はNMRによって決定される(Postma et al.(Polymer, 47, 1899-1911(2006))。
【0126】
定義a)による本発明の反応性組成物の場合、前記反応性プレポリマーは、対応するジアミンと二酸成分との間の、及び場合によっては(置換による)アミノ酸又はラクタムの従来の重縮合反応により調製される。同じ鎖上にX’及びY’アミン及びカルボキシル反応基を保持するプレポリマーは、例えば、合計で同量のアミン及びカルボキシルモチーフを有するが、完全な変換のための反応は行わないモノマーの組み合わせ(アミノ酸、ジアミン、二酸)を添加することにより、得ることができる。X’官能基及びY’官能基を保持するこれらのプレポリマーを製造する別の方法は、例えば、出発アミン官能基X’のものに等しい酸官能基の全体的なモルレベルで、2つの同一のX’=アミン官能基を保持するプレポリマーと、Y’:カルボキシルを保持する二酸プレポリマーとを組み合わせることである。
【0127】
同じ鎖上で同一の官能基(アミン又はカルボキシル)で官能化されたプレポリマーを得るために、過剰のジアミン(又は全体的なアミン官能基)を有するには、アミン末端官能基を有すること、又はカルボキシル末端官能基を有するためには過剰の二酸(又は全体的なカルボキシル官能基)を有することが十分である。
【0128】
n個の同一のX’官能基を有するプレポリマーP(X’)nの場合、官能基1は、ブロック化単官能基成分(X’=アミン又はカルボキシルの性質に応じて一酸又はモノアミン)の存在下で得ることができる。
【0129】
n=2の官能基は、二官能性成分:ジアミン及び二酸により得ることができ、過剰の一方がその過剰分に応じてX’に結合する。
【0130】
例えばn=3に関して、プレポリマーP(X’)nには、三官能性成分の存在、例えば、二酸との反応におけるジアミンと共に、トリアミン(プレポリマーの鎖当たり1モル)の存在が必要である。P(X’)nの好ましい官能基は、n=2である。
【0131】
有利な実施態様では、本発明は、上記の組成物に関し、前記組成物a)又は前駆体組成物は、
a1)n個の反応性末端官能基X’を有する、前記ポリマーの少なくとも一つの熱可塑性ポリアミドプレポリマー、及び
a2)少なくとも一つの鎖延長剤Y-A’-Y
を含むか又はそれからなり、
X’がNH2又はOHであり、特に、NH2であり、Yが無水物、特にテトラカルボン酸二無水物3,3’,4,4’-ベンゾフェノン、オキサジノン、オキサゾリノン及びエポキシから選択される。
【0132】
有利な実施態様では、本発明は、上記の組成物に関し、前記組成物a)又は前駆体組成物は、
a1)n個の反応性末端官能基X’を有する、前記ポリマーの少なくとも一つの熱可塑性ポリアミドプレポリマー、及び
a2)少なくとも一つの鎖延長剤Y-A’-Y、
以下を含むか又はそれからなり、
X’がCO2Hであり、Yがエポキシ及びオキサゾリンから選択される。
【0133】
有利には、X’はCO2Hであり、Y-A’-Yは、フェニレン ビスオキサゾリン、好ましくは1,3-フェニレン-ビス(2-オキサゾリン)又は1,4-フェニレン-ビス(2-オキサゾリン)(PBO)から選択される。
【0134】
有利な実施態様では、本発明は、上記の組成物であって、該組成物が、
a1)マトリックスの前記熱可塑性ポリマーの少なくとも一つのアミンプレポリマー(-NH2を保持)であって、特に少なくとも50%、より具体的には100%の前記プレポリマーa1)の末端基が第一級アミン官能基-NH2である、少なくとも一つのアミンプレポリマー及び
a2)環状カルボキシル酸無水物を保持し、好ましくは芳香族環により保持され、置換基として、エチレン又はアセチレン不飽和基、好ましくはアセチレンを含む基を有する少なくとも一つの非ポリマー鎖延長剤であって、前記カルボキシル無水物基が、酸、エステル、アミド又はイミドの形態であり得、前記延長剤a2)が、0.36未満、好ましくは0.1から0.35の範囲、より好ましくは0.15から0.35の範囲、さらにより好ましくは0.15から0.31の範囲のa2)/(-NH2)モル比に相当するレベルで存在する、少なくとも一つの非ポリマー鎖延長剤を含むことと、マトリックスの前記熱可塑性ポリマーが、前記延長剤a2)により前記プレポリマーa1)を延長することによる重合反応の生成物であることとを特徴とする、組成物に関する。
【0135】
成分a1)及びa2)の選択とそれらの特定のモル比により、前記反応は、架橋されていない最終的な熱可塑性ポリマーをもたらす。
【0136】
前記プレポリマーa1)は、-NH2で表される第一級アミン基を保持している。より具体的には、第一級アミン基の平均官能基とも呼ばれるプレポリマーa1)の分子当たりの第一級アミン基の平均数は、1から3、好ましくは1から2まで変化し得ることに留意されたい。特に、前記プレポリマーa1)の少なくとも50%の末端基の前記プレポリマーa1)の官能基は、第一級アミン官能基-NH2であり、これは、一部が反応基を有しないカルボキシル基又はブロック鎖末端のいずれかである可能性があり、この場合、-NH2の平均官能基はそれにより1から3、好ましくは1から2まで変化し得る。
【0137】
本発明の場合の用語「熱可塑性」とは、プレポリマーa1)と延長剤a2)の反応から得られるポリマーが、本質的に熱可塑性であることを意味し、これは、該ポリマーが、その重量の15%未満、好ましくはその重量の10%未満、より好ましくはその重量の5%未満、さらにより好ましくはその重量の0%(0.5%以内又は1%以内)の、不溶融性又は不溶性である架橋ポリマーを含有することを意味する。
【0138】
前記延長剤a2)は以下から選択され得る:
- エチニル o-フタル酸、メチルエチニル o-フタル酸、フェニルエチニル o-フタル酸、ナフチルエチニル o-フタル酸、4-(o-フタロイルエチニル) o-フタル酸又は4-(フェニルエチニルケトン) o-フタル酸(後者は4-(フェニルエチニル) トリメリットとも呼ばれる)の酸、エステル、アミド又はイミドの形態の無水物及び無水物誘導体、
- 酸又は以下の酸のエステル若しくはアミド:エチニルイソフタル酸、メチルエチニルイソフタル酸、フェニルエチニルイソフタル酸、ナフチルエチニルイソフタル酸、4-(o-フタロイルエチニル)イソフタル酸、4-(フェニルエチニルケトン)イソフタル酸、エチニルテレフタル酸、メチルエチニルテレフタル酸、フェニルエチニルテレフタル酸、ナフチルエチニルテレフタル酸、4-(o-フタロイルエチニル)テレフタル酸、エチニル安息香酸、メチルエチニル安息香酸、フェニルエチニル安息香酸、ナフチルエチニル安息香酸、4-(o-フタロイルエチニル)安息香酸。
【0139】
有利には、前記延長剤a2)は、芳香族無水物化合物、好ましくは、芳香族環の4位でR-C≡C-(R’)x基で定義されている置換基により置換されているo-フタル酸(Rは、C1-C2アルキル又はH又はアリール、特にフェニルであるか、又はRは、芳香族カルボキシル酸無水物の残留物、好ましくは、芳香族環の4位で炭素によりアセチレン三重結合に結合したo-フタル酸であり、xが0又は1に等しく、xが1に等しい場合R’がカルボニル基である)から選択される。
【0140】
有利には、前記延長剤a2)は、メチルエチニル、フェニルエチニル、4-(o-フタロイル)エチニル、フェニルエチニルケトン(フェニルエチニルトリメリット無水物とも呼ばれる)から選択される置換基を4位で保持する、好ましくは、メチルエチニル及びフェニルエチニルケトンから選択される置換基を4位で保持する芳香族o-フタル酸無水物化合物から選択される。
【0141】
有利には、上記のような及びその構造にかかわらず、前記延長剤a2)は、500以下、好ましくは400以下の分子量を有する。
【0142】
有利には、前記延長剤a2)のレベルは、上記のような及びその構造にかかわらず、前記ポリアミドポリマー中で1から20%、好ましくは5から20%変化する。
【0143】
有利な実施態様では、本発明は、成形組成物に関連することを特徴とする、上記の組成物に関する。
【0144】
別の態様によれば、本発明は、上記の組成物を有する、熱可塑性材料、特に前記材料に基づく機械部品又は構造部品、の製造方法であって、本発明により上記で定義されるような少なくとも一つの反応性組成物a)を重合する少なくとも一つの工程、又は押出、射出又は成形により、上記で定義されるような少なくとも一つの非反応性組成物b)を成形又は実装する工程を含むことを特徴とする、製造方法に関する。
【0145】
有利な実施態様では、本発明は、上記の熱可塑性材料のための製造方法であって、
i)任意選択的に繊維補強なしで、上記の組成物の開口若しくは密閉金型への射出又は鋳型を用いない射出、
ii)上記の反応性ポリアミド組成物a)の場合、鎖延長剤を用いて工程i)からの前記組成物を加熱することにより、場合に応じて溶融状態でバルクでの重縮合反応又は重付加反応により、任意選択的に重縮合の場合、真空下で抽出システムを使用した、密閉鋳型を伴うときは真空下での縮合生成物の除去を伴い、そうでない場合、好ましくは重縮合を開放鋳型中又は鋳型なしで実施する、重合反応、
iii)非反応性ポリアミド組成物b)の場合は、工程i)からの前記組成物を実装又は成形して、鋳型中に又は別の実装システムを用いて最終的な部品を形成する工程、及び、反応性組成物a)の場合は、成形により又は別の実装システムにより、重合工程ii)と同時に、実装する工程
を含むことを特徴とする、製造方法に関する。
【0146】
別の態様によれば、本発明は、上記の前記熱可塑性材料の熱可塑性マトリックスのポリマーに相当する(又はポリマーである)、半結晶性ポリアミドポリマーであって、前記ポリマーが、前記組成物b)による上記の非反応性ポリマー又は前記組成物a)による上記の反応性組成物から得ることができるポリマーであることを特徴とする、半結晶性ポリアミドポリマーに関する。
【0147】
この熱可塑性ポリマーは、定義により、本発明の熱可塑性材料の組成物の必須成分の一つであり、したがって、解決されるべき同じ技術的問題に直面する同じ発明概念を有する本発明に関連した製品として本発明の一部である。したがって、本発明は、上記の繊維補強に基づく熱可塑性材料のための熱可塑性マトリックスとして、本発明による前記熱可塑性ポリマーの使用も対象とする。
【0148】
別の態様によれば、本発明は、前記熱可塑性材料に基づく機械部品又は構造部品、単層若しくは多層管又はフィルムの製造のための、上記の組成物又は前記組成物b)による非反応性ポリマー又は上記の組成物a)による反応性組成物から得ることができるポリマーの使用に関する。
【0149】
有利な実施態様では、本発明は、前記熱可塑性材料の前記機械部品又は構造部品が、自動車、鉄道、海洋(海上)、風力、光起電、太陽光発電(太陽光発電プラント用のソーラーパネル及び部品を含む)、スポーツ、航空宇宙、道路輸送(トラックに関連)、建設、土木、標識及びレジャーの領域における用途に関することを特徴とする、上記の使用に関する。
【0150】
別の有利な実施態様では、本発明は、自動車分野の用途の前記機械部品が、特に、吸気、冷却(例えば空気又は冷却液体等による)、燃料又は流体、特に油、水等の輸送又は移送のための装置における流体の輸送のためのエンジンフード下にあることを特徴とする、上記の使用に関する。
【0151】
また別の有利な実施態様では、本発明は、電気又は電子分野における用途の前記機械部品又は構造部品が、カプセル化ソレノイド、ポンプ、電話機、コンピュータ、プリンタ、ファクス、モデム、モニタ、リモートコントロール、カメラ、回路遮断器、電気ケーブル管路、光ファイバー、スイッチ及びマルチメディアシステムなどの電気又は電子機器物品であることを特徴とする、上記の使用に関する。
【0152】
記載される特徴を決定するための方法
- 固有の粘度はm-クレゾール中で測定される。本方法は、当業者によく知られている。ISO規格307:2007に従うが、溶媒を変更する(硫酸の代わりにm-クレゾールを使用し、温度は20℃である)。
【0153】
- ガラス転移温度Tgは、ISO規格11357-2:2013に従って、第2の加熱パスの後で、示差走査熱量測定器(DSC)を使用して測定される。加熱及び冷却速度は、20℃/分である。
【0154】
- 溶融温度Tm及び結晶化温度Tcは、ISO規格11357-3:2013に従って、DSCにより測定される。加熱及び冷却速度は、20℃/分である。
【0155】
- 前記ポリマーマトリックスの結晶化エンタルピーは、ISO規格11357-3:2013に従って、示差走査熱量測定(DSC)を使用して測定される。
【実施例】
【0156】
A-直接的な経路による(鎖延長を使用しない)ポリアミドポリマーの調製
以下の手順は調製方法の一例であり、限定的なものではない。本発明による全組成物の代表例である。
【0157】
14リットルのオートクレーブ反応器に、5kgの以下の原料を添加する:
- 500gの水、
- ジアミン、
- アミノ酸(任意)、
- テレフタル酸、任意選択的に一又は他の二酸、
- 単官能鎖調節剤:目標のMnに適した量且つ50から100gで変化する安息香酸、
- 溶液中35gの次亜リン酸ナトリウム、
- 0.1gのWACKER AK1000消泡剤(Wacker Siliconesより)。
【0158】
ポリアミドの分子モチーフと構造の性質及びモル比(試験ごとに参照)を以下の表IIIに示す。
【0159】
密閉された反応器の残留酸素をパージし、その後、添加された材料に対して230℃の温度に加熱する。これらの条件で30分間撹拌した後、反応器中圧力下で形成された蒸気を60分にわたって次第に緩和させる一方、材料の温度を次第に上昇させて、大気圧下でTm+10℃となるようにした。
【0160】
その後、粘性ポリマーが得られるまで、20L/時の窒素ブランケット下で重合を続けた。
【0161】
その後、ポリマーを底弁を通じて空にし、その後水浴中で冷却し、その後顆粒に成形する。
【0162】
結果を以下の表III及びIVに示す。これらは、75/25mol%のシス/トランス比を有する1,3-BACから出発して得られた。
Cは比較例を示す。
Iは本発明を示す。
*特許公開第2015-017177号による。
表III
【0163】
表IIIの結果は、BACTのモル分率が70から99.1mol%の場合、溶融温度が290℃から340℃に含まれることを示している。
【0164】
同時に、Tgは非常に高く、155℃(表には示されていない)から約190℃に調節することができる。
(*):冷却時に結晶化なし。
表IV
【0165】
表IVの結果は、BAC又は10Tモチーフ又は30%以上の10Tの一部の全置換が、Tm、Tg、Tm-Tc及びデルタHcの必要な値の少なくとも一つを有しない組成物をもたらすことを示している。