(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】固体金属カソードを備える溶融塩電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/39 20060101AFI20221227BHJP
H01M 4/80 20060101ALI20221227BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20221227BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
H01M10/39 D
H01M4/80 C
H01M50/489
H01M4/38 Z
(21)【出願番号】P 2019554921
(86)(22)【出願日】2018-04-06
(86)【国際出願番号】 US2018026601
(87)【国際公開番号】W WO2018187777
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-03-31
(32)【優先日】2017-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515103582
【氏名又は名称】アンブリ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドウェル,デイビッド・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン,グレッグ・エー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイ,アレックス・ティー
(72)【発明者】
【氏名】オノラト,スティーブ
(72)【発明者】
【氏名】エリオット,アレクサンダー・ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】クイ,ジャンイー
(72)【発明者】
【氏名】コッキング,ジェニファー
(72)【発明者】
【氏名】ブランチャード,アラン
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ジェフ
(72)【発明者】
【氏名】マックリアリー,デイビッド・エー・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ティムソン,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】レッドファーン,イアン
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-526114(JP,A)
【文献】国際公開第2016/050329(WO,A1)
【文献】特開2013-055193(JP,A)
【文献】特開平07-335252(JP,A)
【文献】特開昭60-241653(JP,A)
【文献】特表2013-545246(JP,A)
【文献】特表2016-502251(JP,A)
【文献】特表2016-511521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/39
H01M 4/80
H01M 50/463
H01M 4/38
H01M 50/10
H01M 50/409
H01M 50/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学エネルギー貯蔵装置であって、
第1の物質を含む第1の電極であって、前記第1の電極が負電流コレクタと電気的に繋がっている第1の電極と;
第2の物質を含む複数の固体粒子を含む第2の電極であって、前記第2の電極が正電流コレクタと電気的に繋がっており、前記第2の物質が前記第1の物質と反応可能であり、前記電気化学エネルギー貯蔵装置の動作温度において、前記第2の物質が固体であって1×10
4ジーメンス毎メートル以上の電気伝導率を有する第2の電極と;
前記第1の電極と前記第2の電極との間において溶融塩を含む液体電解質であって、前記第2の電極の前記複数の固体粒子は、前記液体電解質の前記溶融塩に分散され、前記液体電解質が前記第1の物質のイオンを伝導することができる液体電解質と;
を具備する、電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項2】
前記第1の物質と前記第2の物質が、1種類以上の金属を含む、請求項1に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項3】
前記動作温度が、300℃から650℃である、請求項1に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項4】
前記第1の物質が、カルシウムまたはカルシウム合金を含む、請求項1に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項5】
前記第1の物質が、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、銅、亜鉛、またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1または4に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項6】
前記第1の電極が、前記動作温度において、
液体を含む、請求項1に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項7】
前記第2の物質が、アンチモンを含む、請求項1に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項8】
前記液体電解質が、カルシウム塩を含む、請求項1に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項9】
前記液体電解質が、塩添加物をさらに含む、請求項1または8に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項10】
前記カルシウム塩が、塩化カルシウムである、請求項8に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項11】
前記塩添加物が、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ストロンチウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カルシウム、臭化カリウム、臭化ストロンチウム、塩化バリウム、臭化バリウム、またはこれらの任意の組成を含む、請求項9に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項12】
前記電気化学エネルギー貯蔵装置の放電の際に前記第2の電極の前記複数の固体粒子と前記液体電解質との間の1つ以上の界面に位置する金属間物質をさらに含み、前記金属間物質が前記第1の物質と前記第2の物質とを含む、請求項1に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項13】
前記金属間物質が、前記1つ以上の界面のうちの所与の界面の層として構成される、請求項12に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項14】
前記金属間物質が、前記複数の固体粒子のうちの所与の固体粒子を少なくとも部分的に取り巻くシェル内に含まれる、請求項12に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項15】
前記負電流コレクタが、導電性電流リードおよび/または多孔性金属構造を具備する、請求項1に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項16】
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された隔離板をさらに具備し、前記隔離板は前記第2の物質が前記第1の電極に接触することを防止する、請求項1に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項17】
前記隔離板が、平均直径が0.8ミリメートル以下の穴を含む、請求項16に記載の電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項18】
電気化学エネルギー貯蔵装置を動作させる方法であって、
(a)電気負荷に結合された前記電気化学エネルギー貯蔵装置を作動させる段階であって、前記電気化学エネルギー貯蔵装置が、
a.第1の物質を含む第1の電極であって、前記第1の電極が負電流コレクタと電気的に繋がっており、前記電気化学エネルギー貯蔵装置の動作温度において、前記第1の物質が液体である第1の電極と、
b.第2の物質を含む複数の固体粒子を含む第2の電極であって、前記第2の電極が正電流コレクタと電気的に繋がっており、前記第2の物質が前記第1の物質と反応可能であり、前記電気化学エネルギー貯蔵装置の前記動作温度において、前記第2の物質が固体であって1×10
4ジーメンス毎メートル以上の電気伝導率を有する第2の電極と、
c.前記第1の電極と前記第2の電極との間において溶融塩を含む液体電解質であって、前記第2の電極の前記複数の固体粒子は、前記液体電解質の前記溶融塩に分散され、前記液体電解質が前記第1の物質のイオンを伝導することができる液体電解質と
を具備する段階と、
(b)前記電気負荷を介して前記電気化学エネルギー貯蔵装置を充電または放電する段階であって、(i)充電中に、前記液体電解質が前記第1の物質のイオンを前記第1の電極に伝導し、(ii)放電中に、前記液体電解質が前記第1の物質のイオンを前記第1の電極から伝導する段階と、
を含む方法。
【請求項19】
前記動作温度が、300℃から650℃の間である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記電気化学エネルギー貯蔵装置を、0.6ボルトから1.2ボルトの電圧で動作させる段階をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年4月7日出願の米国仮特許出願第62/483,208号の利益を主張し、当該米国仮特許出願は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
電池は、化学エネルギーを電気エネルギーに変換することができる装置である。電池は、家庭や工業において多数の用途で使用されている。いくつかの例では、電池は、電気エネルギー(例えば、機械エネルギー等の非電気タイプのエネルギーから変換されたもの)を化学エネルギーとして、すなわち電池を充電することにより電池に貯蔵することができるように、再充電が可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は、エネルギー貯蔵装置およびシステムを提供する。エネルギー貯蔵装置は、負極と、電解質と、正極とを含む可能性があり、これらのうちのいくつかは、エネルギー貯蔵装置の動作中に、液体状態であってもよい。いくつかの状況では、エネルギー貯蔵装置の放電中に、金属間化合物が正極において形成される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様では、本開示は、エネルギー貯蔵装置を提供し、エネルギー貯蔵装置は、第1の物質を含む第1の電極であって、第1の電極が負電流コレクタと電気的に繋がっており、第1の物質がカルシウムを含む第1の電極と;第2の物質を含む第2の電極であって、第2の電極が正電流コレクタと電気的に繋がっており、第2の物質がアンチモンを含み、正電流コレクタが腐食に耐える表面処理を含む第2の電極と;第1の電極と第2の電極との間にある液体電解質であって、電気化学エネルギー貯蔵装置の動作温度において、第2の物質が固体であり、液体電解質が第1の物質のイオンを伝導することができる液体電解質とを具備する。
【0005】
いくつかの実施形態では、第2の電極が、第2の物質を含む複数の固体粒子を含む。いくつかの実施形態では、複数の固体粒子が、小粒、薄片、針、またはこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、複数の固体粒子の個々の粒子が、少なくとも約0.0001ミリメートルの寸法を有する。いくつかの実施形態では、複数の固体粒子の個々の粒子が、約10ミリメートル以下の寸法を有する。いくつかの実施形態では、電気化学エネルギー貯蔵装置が、電気化学エネルギー貯蔵装置の放電の際、複数の固体粒子と液体電解質との間の1つ以上の界面に位置する金属間物質をさらに含む。いくつかの実施形態では、金属間物質が、第1の物質と第2の物質とを含む。いくつかの実施形態では、金属間物質が、1つ以上の界面のうちの所与の界面にある金属間層内に含まれる。いくつかの実施形態では、金属間物質が、複数の固体粒子のうちの所与の固体粒子を少なくとも部分的に取り巻くシェル内に含まれる。
【0006】
いくつかの実施形態では、動作温度が、少なくとも約500℃である。いくつかの実施形態では、動作温度が、約400℃から500℃である。いくつかの実施形態では、動作温度が、約500℃または400℃未満である。いくつかの実施形態では、動作温度が、約300℃から650℃である。いくつかの実施形態では、第1の物質と第2の物質が、1種類以上の金属を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、第1の物質が、カルシウム合金を含む。いくつかの実施形態では、第1の物質が、リチウム、マグネシウム、カリウム、バリウム、ストロンチウム、銅、亜鉛、またはこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、第1の物質が、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、銅、亜鉛、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、第1の電極が、動作温度において固体である。いくつかの実施形態では、第1の電極が、動作温度において半固体である。いくつかの実施形態では、第1の電極が、動作温度において液体である。いくつかの実施形態では、第1の電極が、動作温度において、半固体または液体を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、液体電解質が、カルシウム塩を含む。いくつかの実施形態では、液体電解質が、塩添加物をさらに含む。いくつかの実施形態では、カルシウム塩が、塩化カルシウムである。いくつかの実施形態では、塩添加物が、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ストロンチウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カルシウム、臭化カリウム、臭化ストロンチウム、塩化バリウム、臭化バリウム、またはこれらの任意の組成を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、負電流コレクタが、多孔性籠を具備する。いくつかの実施形態では、負電流コレクタが、多孔性金属構造を具備する。いくつかの実施形態では、負電流コレクタが、編まれた金属メッシュまたは網状ワイヤクロスを具備する。いくつかの実施形態では、電気化学エネルギー貯蔵装置が第1の電極と第2の電極との間に配置された隔離板をさらに具備し、隔離板は第2の物質が第1の電極に接触することを防止する。いくつかの実施形態では、隔離板が機械的層と金属メッシュとを具備し、金属メッシュが約0.8ミリメートル以下の平均直径の穴を含む。いくつかの実施形態では、隔離板が鋼またはステンレス鋼を含み、隔離板が金属メッシュまたは拡張されたメッシュを具備する。いくつかの実施形態では、隔離板が表面処理を含む。いくつかの実施形態では、表面処理が、ボロナイジング、窒化、軟窒化、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0011】
別の一態様では、本開示は、電気化学エネルギー貯蔵装置を提供し、電気化学エネルギー貯蔵装置は、第1の物質を含む第1の電極であって、第1の電極が負電流コレクタと電気的に繋がっている第1の電極と;第2の物質を含む複数の固体粒子を含む第2の電極であって、第2の電極が正電流コレクタと電気的に繋がっており、第2の物質が第1の物質と反応しやすく、複数の固体粒子の第2の物質が1×104ジーメンス毎メートル以上の電気伝導率を有し、電気化学エネルギー貯蔵装置の動作温度において、第2の物質が固体である第2の電極と;第1の電極と第2の電極との間にある液体電解質であって、液体電解質が第1の物質のイオンを伝導することができる液体電解質とを具備する。
【0012】
いくつかの実施形態では、第1の物質と第2の物質が、1種類以上の金属を含む。いくつかの実施形態では、動作温度が、少なくとも約500℃である。いくつかの実施形態では、動作温度が、約400℃から500℃である。いくつかの実施形態では、動作温度が、約500℃または400℃未満である。いくつかの実施形態では、動作温度が、約300℃から650℃である。
【0013】
いくつかの実施形態では、第1の物質が、カルシウムを含む。いくつかの実施形態では、第1の物質が、カルシウム合金を含む。いくつかの実施形態では、第1の物質が、カルシウムまたはカルシウム合金を含む。いくつかの実施形態では、第1の物質が、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、バリウム、ストロンチウム、銅、亜鉛、またはこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、第1の物質が、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、銅、亜鉛、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、第1の電極が、動作温度において固体である。いくつかの実施形態では、第1の電極が、動作温度において半固体である。いくつかの実施形態では、第1の電極が、動作温度において液体である。いくつかの実施形態では、第1の電極が、動作温度において、半固体または液体を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、第2の物質が、アンチモンを含む。いくつかの実施形態では、複数の固体粒子が、小粒、薄片、針、またはこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、複数の固体粒子の個々の粒子が、少なくとも約0.0001ミリメートルの寸法を有する。いくつかの実施形態では、複数の固体粒子の個々の粒子が、約10ミリメートル以下の寸法を有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、液体電解質が、カルシウム塩を含む。いくつかの実施形態では、液体電解質が、塩添加物をさらに含む。いくつかの実施形態では、カルシウム塩が、塩化カルシウムである。いくつかの実施形態では、塩添加物が、塩化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ストロンチウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カルシウム、臭化カリウム、臭化ストロンチウム、塩化バリウム、臭化バリウム、またはこれらの任意の組成を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、電気化学エネルギー貯蔵装置が、電気化学エネルギー貯蔵装置の放電の際、第2の電極の複数の固体粒子と液体電解質との間の1つ以上の界面に位置する金属間物質をさらに含み、金属間物質が第1の物質と第2の物質とを含む。いくつかの実施形態では、金属間物質が、1つ以上の界面のうちの所与の界面にある金属間層内に含まれる。いくつかの実施形態では、金属間物質が、複数の固体粒子のうちの所与の固体粒子を少なくとも部分的に取り巻くシェル内に含まれる。
【0018】
いくつかの実施形態では、負電流コレクタが、多孔性籠を具備する。いくつかの実施形態では、負電流コレクタが、導電性電流リードおよび/または多孔性金属構造を具備する。いくつかの実施形態では、負電流コレクタが、編まれた金属メッシュまたは網状ワイヤクロスを具備する。いくつかの実施形態では、電気化学エネルギー貯蔵装置が第1の電極と第2の電極との間に配置された隔離板をさらに具備し、隔離板は第2の物質が第1の電極に接触することを防止する。いくつかの実施形態では、隔離板が、約0.8ミリメートル以下の平均直径の穴を含む。いくつかの実施形態では、隔離板が機械的層と金属メッシュとを具備し、金属メッシュが約0.8ミリメートル以下の平均直径の穴を含む。
【0019】
別の一態様では、本開示は、電気化学エネルギー貯蔵装置を提供し、電気化学エネルギー貯蔵装置は、側壁と、導体用の開口を含む蓋アッセンブリとを具備する空洞を含む容器であって、電気化学エネルギー貯蔵装置の動作温度において、蓋アッセンブリが容器を封止する容器と;導体用の開口を通って容器の空洞内へと延びる電気導体であって、電気導体が電気絶縁シールにより蓋アッセンブリから電気的に絶縁される電気導体と;電気導体により空洞内に吊り下げられる負電流コレクタと;空洞内に配列される電気化学エネルギー貯蔵セルであって、電気化学エネルギー貯蔵セルが、第1の物質を含む第1の電極と、第2の物質を含む第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間にある液体電解質とを具備し、液体電解質が第1の物質のイオンを伝導することができ、第1の電極が負電流コレクタと電気的に繋がっており、第1の物質のイオンが重力加速度のベクトルの方向に平行でない一般方向に沿って液体電解質内を伝導されるように、第2の電極が空洞の側壁に沿って配置される電気化学エネルギー貯蔵セルとを具備する。
【0020】
いくつかの実施形態では、一般方向が、重力加速度のベクトルに実質的に直交する。いくつかの実施形態では、第1の物質と第2の物質が、1種類以上の金属を含む。いくつかの実施形態では、電気化学エネルギー貯蔵装置が、空洞の側壁と実質的に直角をなすように取り付けられたトラフをさらに具備し、第2の電極がトラフ内に配置される。いくつかの実施形態では、トラフが、少なくとも2層のトラフを具備する。いくつかの実施形態では、電気化学エネルギー貯蔵装置が、トラフの内縁に取り付けられた多孔性保持壁をさらに具備し、第1の物質からのイオンが多孔性保持壁を自由に通り抜ける。いくつかの実施形態では、電気化学エネルギー貯蔵装置が、トラフの内縁に取り付けられた隔離板をさらに具備し、第1の物質からのイオンが隔離板を通り抜ける。いくつかの実施形態では、隔離板が、約0.8ミリメートル以下の平均直径の穴を含む。いくつかの実施形態では、隔離板が機械的層と金属メッシュとを具備し、金属メッシュが約0.8ミリメートル以下の平均直径の穴を含む。いくつかの実施形態では、隔離板が腐食耐性のある表面処理を含む。いくつかの実施形態では、正電流コレクタ、容器、容器の内側部、および/または蓋アッセンブリが、腐食耐性のある表面処理またはコーティングを含む。いくつかの実施形態では、容器、容器の内側部、および/または蓋アッセンブリが、鋼またはステンレス鋼を含む。いくつかの実施形態では、表面処理が、ボロナイジング、窒化、軟窒化、またはこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、コーティングが、ケイ素、ニッケル、クロム、またはこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、表面処理がボロナイジングであり、隔離板、正電流コレクタ、容器、容器の内側部、および/または蓋アッセンブリが、Fe2Bの表面層を具備する。
【0021】
いくつかの実施形態では、第2の電極が、複数の固体粒子を含む。いくつかの実施形態では、複数の固体粒子が、小粒、薄片、針、またはこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、複数の固体粒子の個々の粒子が、少なくとも約0.0001ミリメートルの寸法を有する。いくつかの実施形態では、複数の粒子の個々の粒子が、約10ミリメートル以下の寸法を有する。
【0022】
いくつかの実施形態では、電気化学エネルギー貯蔵装置が、電気化学エネルギー貯蔵装置の放電の際、第2の電極の複数の固体粒子と液体電解質との間の1つ以上の界面に位置する金属間物質をさらに含む。いくつかの実施形態では、金属間物質が、第1の物質と第2の物質とを含む。いくつかの実施形態では、金属間物質が、1つ以上の界面のうちの所与の界面にある金属間層内に含まれる。いくつかの実施形態では、金属間物質が、複数の固体粒子のうちの所与の固体粒子を少なくとも部分的に取り巻くシェル内に含まれる。
【0023】
いくつかの実施形態では、動作温度において、第1の物質のイオンが、蓋アッセンブリの面に平行な平均流路に沿って、液体電解質内を伝導される。
【0024】
いくつかの実施形態では、動作温度が、少なくとも約500℃である。いくつかの実施形態では、動作温度が、約400℃から500℃である。いくつかの実施形態では、動作温度が、約500℃または400℃未満である。いくつかの実施形態では、動作温度が、約300℃から650℃である。
【0025】
いくつかの実施形態では、第1の物質が、カルシウムを含む。いくつかの実施形態では、第1の物質が、カルシウム合金を含む。いくつかの実施形態では、第1の物質が、カルシウムまたはカルシウム合金を含む。いくつかの実施形態では、第1の物質が、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、バリウム、ストロンチウム、銅、亜鉛、またはこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、第1の物質が、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、銅、亜鉛、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、第1の電極が、動作温度において固体である。いくつかの実施形態では、第1の電極が、動作温度において半固体である。いくつかの実施形態では、第1の電極が、動作温度において液体である。いくつかの実施形態では、第2の電極が、動作温度において固体である。いくつかの実施形態では、第1の電極が、動作温度において、半固体または液体を含む。いくつかの実施形態では、第2の電極が、アンチモンを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、液体電解質が、カルシウム塩を含む。いくつかの実施形態では、液体電解質が、塩添加物をさらに含む。いくつかの実施形態では、カルシウム塩が、塩化カルシウムである。いくつかの実施形態では、塩添加物が、塩化リチウム、塩化カリウム、臭化リチウム、臭化カルシウム、塩化バリウム、臭化バリウム、またはこれらの任意の組成を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、負電流コレクタが、多孔性である。いくつかの実施形態では、負電流コレクタが、多孔性籠を具備する。いくつかの実施形態では、負電流コレクタが、編まれた金属メッシュまたは網状ワイヤクロスを具備する。いくつかの実施形態では、電気絶縁シールが、セラミックを含む。いくつかの実施形態では、容器の空洞が、ガス用上部空間をさらに含む。いくつかの実施形態では、ガス用上部空間が、不活性ガスを含む。
【0029】
別の一態様では、本開示は、電気化学エネルギー貯蔵装置を動作させる方法を提供し、この方法は、(a)電気負荷に結合された電気化学エネルギー貯蔵装置を作動させることであって、a.第1の物質を含む第1の電極であって、第1の電極が負電流コレクタと電気的に繋がっており、電気化学エネルギー貯蔵装置の動作温度において、第1の物質が液体である第1の電極と、b.第2の物質を含む複数の固体粒子を含む第2の電極であって、第2の電極が正電流コレクタと電気的に繋がっており、第2の物質が第1の物質と反応しやすく、複数の固体粒子の第2の物質が1×104ジーメンス毎メートル以上の電気伝導率を有し、電気化学エネルギー貯蔵装置の動作温度において、第2の物質が固体である第2の電極と、c.第1の電極と第2の電極との間にある液体電解質であって、液体電解質が第1の物質のイオンを伝導することができる液体電解質とを含む、作動させることと、(b)電気負荷を介して電気化学エネルギー貯蔵装置を充電または放電することであって、(i)充電中に、液体電解質が第1の物質のイオンを第1の電極に伝導し、(ii)放電中に、液体電解質が第1の物質のイオンを第1の電極から伝導する、充電または放電することとを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、動作温度が、約300℃から650℃の間である。いくつかの実施形態では、方法が、電気化学セルを、約0.6ボルトから1.2ボルトの電圧で動作させることをさらに含む。
【0031】
別の一態様では、本開示は、電気化学エネルギー貯蔵装置を動作させる方法を提供し、この方法は、(a)電気負荷に結合された電気化学エネルギー貯蔵装置を作動させることであって、a.側壁と、導体用の開口を含む蓋アッセンブリとを具備する空洞を含む容器であって、電気化学エネルギー貯蔵装置の動作温度において、蓋アッセンブリが容器を封止する容器と、b.導体用の開口を通って容器の空洞内へと延びる電気導体であって、電気導体が電気絶縁シールにより蓋アッセンブリから電気的に絶縁される電気導体と、c.電気導体により空洞内に吊り下げられる負電流コレクタと、d.空洞内に配列される電気化学エネルギー貯蔵セルであって、電気化学エネルギー貯蔵セルが、第1の物質を含む第1の電極と、第2の物質を含む第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間にある液体電解質とを具備し、液体電解質が第1の物質のイオンを伝導することができ、第1の電極が負電流コレクタと電気的に繋がっており、第1の物質のイオンが重力加速度のベクトルの方向に平行でない一般方向に沿って液体電解質内を伝導されるように、第2の電極が空洞の側壁に沿って配置される電気化学エネルギー貯蔵セルとを具備する、作動させることと、(b)電気負荷を介して電気化学エネルギー貯蔵装置を充電または放電することであって、(i)充電中に、液体電解質が第1の物質のイオンを第1の電極に伝導し、(ii)放電中に、液体電解質が第1の物質のイオンを第1の電極から伝導する、充電または放電することとを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、動作温度が、約300℃から650℃の間である。いくつかの実施形態では、方法が、電気化学セルを、約0.6ボルトから1.2ボルトの電圧で動作させることをさらに含む。
【0033】
別の一態様では、本開示は、電気化学エネルギー貯蔵装置を動作させる方法を提供し、この方法は、(a)電気負荷に結合された電気化学エネルギー貯蔵装置を作動させることであって、a.第1の物質を含む第1の電極であって、第1の電極が負電流コレクタと電気的に繋がっており、第1の物質がカルシウムを含む第1の電極と、b.第2の物質を含む第2の電極であって、第2の電極が正電流コレクタと電気的に繋がっており、第2の物質がアンチモンを含み、正電流コレクタが腐食に耐える表面処理を含む第2の電極と、c.第1の電極と第2の電極との間にある液体電解質であって、電気化学エネルギー貯蔵装置の動作温度において、第2の物質が固体であり、液体電解質が第1の物質のイオンを伝導することができる液体電解質とを具備する、作動させることと、(b)電気負荷を介して電気化学エネルギー貯蔵装置を充電または放電することであって、(i)充電中に、液体電解質が第1の物質のイオンを第1の電極に伝導し、(ii)放電中に、液体電解質が第1の物質のイオンを第1の電極から伝導する、充電または放電することとを含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、動作温度が、約300℃から650℃の間である。いくつかの実施形態では、方法が、電気化学セルを、約0.6ボルトから1.2ボルトの電圧で動作させることをさらに含む。
【0035】
本開示の追加の態様および利点は、当業者であれば、下記の詳細な説明からすぐに明らかになるであろう。下記の詳細な説明では、本開示の例示的な実施形態のみを図示および記載する。理解されるであろうが、本開示は、他の異なる実施形態を可能とし、それらの実施形態のいくつかの細部は、どれも本開示を逸脱することなく、様々な明白な点で変更することが可能である。よって、図面および記載は、本質的に例示的であると見なされるべきであり、限定として見なされるべきではない。
【0036】
参照による組み込み
本明細書で言及される全ての出版物、特許公報、および特許出願公報は、個々の出版物、特許公報、または特許出願公報が参照により組み込まれるように具体的かつ個別的に示された範囲において、参照により本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれた出版物および特許公報または特許出願公報が、本明細書中の開示と矛盾する範囲においては、本明細書が、そのようないかなる矛盾する文献にも取って代わる、および/または優先することが意図される。
【0037】
本発明の新規の特徴は、添付の特許請求の範囲において詳しく述べられている。下記の詳細な説明、および添付の図面(本明細書では「図」と表記される)を参照することにより、本発明の特徴および利点をよりよく理解することができるであろう。下記の詳細な説明では、本発明の原理が用いられた例示的な実施形態が記載される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】例示的な電気化学セル、および例示的な電気化学セルの集合体(すなわち、電池)の図である。
【
図2】筐体の開口を通る電流コレクタと電気的に繋がっている導体を有する例示的な筐体の概略断面図である。
【
図3】例示的な電気化学セルまたは電池の側面断面図である。
【
図4A】セルの側壁に沿って配置された電極を備える例示的な電気化学セルまたは電池の図であり、1つ以上のトラフを備える例示的な電気化学セルまたは電池の側面断面図である。
【
図4B】セルの側壁に沿って配置された電極を備える例示的な電気化学セルまたは電池の図であり、トラフを備えない例示的な電気化学セルまたは電池の側面断面図である。
【
図5】電極物質と様々な筐体物質との間の例示的な反応を示す図である。
【
図6A】例示的な負電流コレクタの籠の図であり、穴のあいた籠を備える例示的な負電流コレクタの図である。
【
図6B】例示的な負電流コレクタの籠の図であり、穴のあいた籠と網状ライナとを備える例示的な負電流コレクタの図である。
【
図7】セルの側壁と底部に沿って配置された電極を備える例示的な電気化学セルまたは電池の側面断面図である。
【
図8】電極間に配置された隔離板を備える例示的な電気化学セルまたは電池の側面断面図である。
【
図9A】例示的な隔離板物質の図であり、例示的な隔離板の上面図である。
【
図9B】例示的な隔離板物質の図であり、例示的な隔離板の側面図である。
【
図10】本開示のエネルギー貯蔵システムの1つ以上のプロセスパラメータを制御または調節するようにプログラムまたは構成されたシステムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の様々な実施形態が本明細書で図示および記載されるが、当業者にとって、そのような実施形態が例示のみを目的として提示されていることは明らかであろう。当業者であれば、本発明から逸脱することなく、多数の変形、変更、および代用を思いつくであろう。本明細書に記載の本発明の実施形態に対する様々な代替が、採用されるであろうことを理解されたい。本発明の異なる態様は、個別的に、集合的に、または相互に組み合わせて評価されうることを理解されたい。
【0040】
本明細書で使用される「セル」という用語は、概して、電気化学セルのことを指す。セルは、物質「A」を含む負極と、物質「B」を含む正極とを含む可能性があり、A||Bと表記される。正極と負極は、電解質により分離される可能性がある。セルは、筐体と、1つ以上の電流コレクタと、高温電気絶縁シールとをさらに含む可能性がある。
【0041】
本明細書で使用される「パック」または「トレイ」という用語は、概して、異なる電気的接続により(例えば、垂直に、および直列または並列に)取り付けられたセルを指す。パックまたはトレイは、任意の数のセル(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、50、60、80、100、120、140、160、200、250、300以上)を具備する可能性がある。場合によっては、パックまたはトレイは、160個のセルを具備する。場合によっては、パックは、少なくとも約64キロワット時のエネルギーを貯蔵すること、および/または少なくとも約12キロワットの電力を供給することができる。
【0042】
本明細書で使用される「コア」という用語は、概して、異なる電気的接続により(例えば、垂直に、および直列または並列に)取り付けられた複数のパックおよび/またはトレイを指す。コアは、任意の数のパックまたはトレイ(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上)を具備する可能性がある。場合によっては、コアは、制御下で電気エネルギーを効率的に貯蔵および戻すことを可能にする、機械的、電気的、および熱的システムをさらに具備する。場合によっては、コアは、少なくとも約4つのパックまたは少なくとも約6つのトレイを具備する。場合によっては、コアは、少なくとも約250キロワット時のエネルギーを貯蔵すること、および/または少なくとも約50キロワットの電力を供給することができる。
【0043】
本明細書で使用される「システム」という用語は、概して、異なる電気的接続により(例えば、直列および/または並列に)取り付けられた複数のコアを指す。システムは、任意の数のコア(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上)を具備する能性がある。場合によっては、システムは、4つのコアを具備する。場合によっては、システムは、約4メガワット時のエネルギーを貯蔵すること、および/または少なくとも約500キロワットの電力を供給することができる。
【0044】
本明細書で使用される「電池」という用語は、概して、直列および/または並列に接続された1つ以上の電気化学セルを指す。電池は、任意の数の電気化学セル、パック、トレイ、コア、またはシステムを具備する可能性がある。
【0045】
本明細書で使用される「垂直」という用語は、概して、重力加速度のベクトル(g)に平行な方向を指す。
【0046】
本明細書で使用される「サイクル」という用語は、概して、充電/放電または放電/充電サイクルを指す。
【0047】
本明細書で使用される「電圧」または「セル電圧」という用語は、概して、(例えば、任意の充電状態、または充電/放電条件における)セルの電圧を指す。場合によっては、電圧またはセル電圧は、開回路電圧であってもよい。場合によっては、電圧またはセル電圧は、充電中または放電中の電圧である可能性がある。
【0048】
本明細書で使用される「酸化状態」という用語は、概して、例えば、溶融ハロゲン化物塩等のように、化学種がイオン溶液または電解質に溶け出したときに想定される荷電イオン状態を指す(例えば、亜鉛2+(Zn2+)は2+の酸化状態である)。
【0049】
本明細書で使用される「コーティング」という用語は、概して、表面に施される有機物層または無機物層を指す。例えば、コーティングは、電気化学セルの筐体、容器の蓋、または他の構成要素の表面に施されてもよい。コーティングは、電気化学セルの構成要素(例えば、電極物質または電解質物質)からの腐食に対する表面の耐性を向上させてもよい。コーティングは、1つ以上の層を含んでもよい。
【0050】
本明細書で使用される「表面処理」という用語は、概して、冶金により変質させた上層(例えば、最外層)を含む表面を指す。例えば、表面処理は、電気化学セルの筐体、容器の蓋、または他の金属要素の表面に施されてもよい。表面処理は、腐食に対する表面の耐性を向上させてもよく、および/または熱膨張を低減させてもよい。
【0051】
本開示は、電気化学エネルギー貯蔵装置(または電池)、および電気化学電池の筐体を提供する。電気化学電池は、概して、電気化学電池の筐体内に封止(例えば、密封)された電気化学電池セルを含む。
【0052】
電気化学エネルギー貯蔵物質
本開示は、電気化学エネルギー貯蔵装置(例えば、電池)およびシステムを提供する。電気化学エネルギー貯蔵装置は、概して、筐体内に封止(例えば、密封)された、少なくとも1つの電気化学セル(本明細書では「セル」および「電池セル」とも表記される)を含む。セルは、電気エネルギー(例えば、電位下の電子)を、例えば、電子装置、別のエネルギー貯蔵装置、または電力網等の負荷に供給するように構成される可能性がある。
【0053】
一態様では、本開示は、負電流コレクタと電気的に繋がっている第1の電極と、正電流コレクタと電気的に繋がっている第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間にある液体電極とを具備する電気化学エネルギー貯蔵装置を提供する。いくつかの実施形態では、第1の電極が負極である。放電中、負極はアノードであってもよい。いくつかの実施形態では、第2の電極が正極である。放電中、正極はカソードであってもよい。
【0054】
いくつかの実施例では、電気化学エネルギー貯蔵装置が、液体金属負極と、固体金属正極と、液体金属負極と固体金属正極を分離する液体塩電解質とを含む。いくつかの実施例では、電気化学エネルギー貯蔵装置が、固体金属負極と、固体金属正極と、固体金属負極と固体金属正極を分離する液体塩電解質とを含む。いくつかの実施例では、電気化学エネルギー貯蔵装置が、半固体金属負極と、固体金属正極と、半固体金属負極と固体金属正極を分離する液体電解質とを含む。
【0055】
本明細書において、金属または溶融金属の負極、または負極についてのいかなる記載も、金属、半金属、および非金属のうちの1種類以上を含む電極を指しうる。負極は、カルシウム(Ca)を含んでもよい。いくつかの実施例では、負極が、カルシウム合金を含んでもよい。カルシウム合金は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、マグネシウム(Mg)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、またはこれらの組み合わせ等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含んでもよい。カルシウム合金は、銅(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、コバルト(Co)、または金(Au)等の一種類以上の遷移金属を含んでもよい。いくつかの実施例では、負極が、共融混合物(例えば、場合によっては、セルの動作温度を下げることができる)を形成してもよい。カルシウム合金は、カルシウム-リチウム(Ca-Li)、カルシウム-マグネシウム(Ca-Mg)、カルシウム-リチウム-マグネシウム(Ca-Li-Mg)合金、カルシウム-銅(Ca-Cu)、カルシウム-亜鉛(Ca-Zn)合金、カルシウム-リチウム-マグネシウム-銅合金(Ca-Li-Mg-Cu)、カルシウム-リチウム-マグネシウム-亜鉛合金(Ca-Li-Mg-Zn)、カルシウム-マグネシウム-銅合金(Ca-Mg-Cu)、カルシウム-マグネシウム-亜鉛合金(Ca-Mg-Zn)、カルシウム-マグネシウム-銅-亜鉛合金(Ca-Mg-Cu-Zn)、またはカルシウム-リチウム-マグネシウム-銅-亜鉛合金(Ca-Li-Mg-Cu-Zn)を含んでもよい。カルシウム合金は、電気化学セルの動作温度において、負極(例えば、第1の電極)を液体として維持してもよい。カルシウムを含むアノードは、液体電解質の1種類以上の成分と合金を形成してもよい。カルシウムの第1の電極と液体電解質から形成された合金は、セルの加熱の際に、または充電状態と放電状態を繰り返すセルのサイクル中に、自然に形成されてもよい。例えば、液体電解質は、リチウム、ナトリウム、またはカリウムを含んでもよく、カルシウムの第1の電極が、リチウム、ナトリウム、またはカリウムと合金を形成してもよい。(1または複数の)合金成分(例えば、マグネシウム、亜鉛、銅等)は、セルの組立時に、セル(例えば、負電流コレクタ内)に加えられてもよい。
【0056】
動作温度において液体状態の物質(例えば、カルシウムまたはカルシウム合金)を含む第1の電極は、デンドライトの形成を低減すること、および/またはセルの短絡を低減することにより、より効率的に充電および放電してもよい。デンドライトの形成は、液体の第1の電極(例えば、アノードまたは負極)を具備するセル内では起こらない可能性がある。さらに、液体の第1の電極は、負電流コレクタを濡らす可能性があり、セルの性能を向上させる形状および位置に保持されてもよい。様々な電極添加物が、セルの動作温度において、第1の電極が液体状態であるように、第1の物質に加えられ、第1の物質の融点を下げてもよい。電極添加物は、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、銅、および亜鉛を含んでもよい。第1の電極は、約5モルパーセント(mol%)、10mol%、20mol%、30mol%、40mol%、50mol%、60mol%、70mol%、80mol%、90mol%以上のカルシウムを含んでもよい。代替として、第1の電極は、約5mol%、10mol%、20mol%、30mol%、40mol%、50mol%、60mol%、70mol%、80mol%、90mol%以上のリチウムを含んでもよい。別の代替として、第1の電極は、約5mol%、10mol%、20mol%、30mol%、40mol%、50mol%、60mol%、70mol%、80mol%、90mol%以上のナトリウムを含んでもよい。別の代替として、第1の電極は、約5mol%、10mol%、20mol%、30mol%、40mol%、50mol%、60mol%、70mol%、80mol%、90mol%以上のマグネシウムを含んでもよい。別の代替として、第1の電極は、約5mol%、10mol%、20mol%、30mol%、40mol%、50mol%、60mol%、70mol%、80mol%、90mol%以上の銅を含んでもよい。別の代替として、第1の電極は、約5mol%、10mol%、20mol%、30mol%、40mol%、50mol%、60mol%、70mol%、80mol%、90mol%以上の亜鉛を含んでもよい。別の代替として、第1の電極は、様々な化学量で、カルシウム、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、亜鉛、および銅のうちの少なくとも2、3、4、5種類、または全てを含む合金を含んでもよい。第1の電極は、表1に示される組成のうちの任意のものを含んでもよい。表1に示される組成は、おおよそのものであり、変わりうる。
【表1】
【0057】
負極にCa-Li合金を含むセルは、少なくとも1種類のリチウムハロゲン化物塩(例えば、塩化リチウム)をいくらか(例えば、少なくとも約2モルパーセント)含む電解質を具備してもよい。一実施例では、負極がカルシウムを含み、電解質がリチウム塩(例えば、塩化リチウム)を含み、電極のカルシウムが塩のリチウムと反応してCa-Li合金を形成する。電解質は、少なくとも約0.5モルパーセント(mol%)、少なくとも約1mol%、少なくとも約2mol%、少なくとも約3mol%、少なくとも約4mol%、少なくとも約5mol%、少なくとも約6mol%、少なくとも約8mol%、少なくとも約10mol%、少なくとも約15mol%、少なくとも約20mol%、少なくとも約30mol%、少なくとも約40mol%、少なくとも約50mol%、少なくとも約60mol%、少なくとも約70mol%、少なくとも約80mol%以上のリチウムハロゲン化物塩を含んでもよい。負極のカルシウム対リチウム金属の比は、少なくとも約1対1、1.5対1、2対1、2.5対1、3対1、3.5対1、4対1、5対1、6対1、7対1、8対1、9対1、または10対1であってもよい。Ca-Li合金の負極を含むセルの充電中に、Ca-Li合金が負極上に形成されてもよく、および/またはCa-Li合金の量がカルシウムとリチウム金属の負極上への共同堆積により増加してもよい。Ca-Li合金の負極を含むセルの放電中に、カルシウムとリチウムの両方が、負極から電解質中にイオン(例えば、Ca2+、Li+)として溶け出してもよい。
【0058】
Ca-Mg合金の負極を備えるセルは、マグネシウム塩(例えば、塩化マグネシウム)の電解質を具備してもよい。電解質は、約10mol%未満、約8mol%未満、約6mol%未満、約5mol%未満、約4mol%未満、約3mol%未満、約2mol%未満、約1mol%未満、約0.5mol%未満のマグネシウムハロゲン化物塩を含んでもよい。いくつかの実施例では、電解質が、約5mol%未満のマグネシウムハロゲン化物塩を含んでもよい。負極のカルシウム対マグネシウム金属の比は、少なくとも約1対10、1対9、1対8、1対7、1対6、1対5、1対4、1対3、1対2、1対1、1.5対1、2対1、2.5対1、3対1、3.5対1、4対1、5対1、6対1、7対1、8対1、9対1、または10対1であってもよい。負極にCa-Mg合金を含むセルでは、充電中に、電解質からのカルシウムがマグネシウム金属またはマグネシウム合金上に堆積することにより、Ca-Mg合金が負極上に形成されてもよい。放電中には、Ca-Mg合金からカルシウム金属イオン(例えば、Ca2+)が優先的に電解質中に溶け出すことにより、Ca-Mg合金がマグネシウムまたはマグネシウム合金に変わり、それによりマグネシウム金属またはマグネシウム合金が(例えば、充電状態のセルと比べて)少量のカルシウム金属と共に後に残される。
【0059】
いくつかの実施例では、負極が、バリウム(Ba)金属と、少なくとも1種類のバリウムハロゲン化物塩とを含んでもよい。負極のバリウム対他の金属の比は、少なくとも約1対10、1対9、1対8、1対7、1対6、1対5、1対4、1対3、1対2、1対1、1.5対1、2対1、2.5対1、3対1、3.5対1、4対1、5対1、6対1、7対1、8対1、9対1、または10対1であってもよい。一実施例では、負極が、少なくとも約1対1の比のバリウムと他の金属を含む。電解質は、約0.5mol%、1mol%、2mol%、3mol%、4mol%、5mol%、6mol%、8mol%、10mol 15mol%、20mol%、30mol%、40mol%、50mol%以上のバリウムハロゲン化物塩を含んでもよい。
【0060】
いくつかの実施例では、正極(例えば、第2の電極)が、アンチモン(Sb)を含んでもよい。一実施例では、正極が、アンチモン、錫、鉛、ビスマス、テルル、セレン、またはこれらの任意の組み合わせのうちの一種類以上を含んでもよい。別の実施例では、正極が、正極(例えば、第2の電極)と合金化された、または反応したアルカリ金属、またはアルカリ土類金属を含んでもよい。正極は、セルの動作温度において、固体、半固体、または液体であってもよい。一実施例では、セルが充電状態のとき、正極が固体アンチモンの粒子を含む。粒子は、固体でも半固体でもよい。放電状態では、セルは、CaxSby金属間化合物(例えば、CaSb2、Ca11Sb10、Ca5Sb3、Ca2Sb)、LixSby金属間化合物(例えば、Li3Sb、Li2Sb、Li3Sb2、LiSb2)、LixCaySbz(例えば、Li1Ca1Sb1)金属間化合物、またはこれらの任意の組み合わせ等の固体アンチモン含有金属間化合物(例えば、反応生成物)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、バリウム、ナトリウム、カリウム、またはストロンチウムが、固体正極物質(例えば、Sb)内に堆積し、Ba-Sb、Sr-Sb、Na-Sb、K-Sb、またはこれらの任意の組み合わせの金属間化合物を形成してもよい。放電中に、金属正極(例えば、アンチモン金属または様々な金属間化合物)を含む電解質からのカルシウム、リチウム、バリウム、および/またはストロンチウムが電気化学的に堆積することにより、金属間化合物が形成されてもよい。
【0061】
セルのサイクル中に、電解質が、第2の電極との一種類以上の反応に関与してもよく、放電中に、一種類以上の追加の金属アンチモン化物が生成されてもよい。例えば、第2の電極が、電解質の成分と反応し、ナトリウムアンチモン化物またはリチウムアンチモン化物(例えば、それぞれNaSb3とLiSb3)を形成してもよい。さらに、リチウムがドープされたアンチモンまたはナトリウムがドープされたアンチモン等の非化学量的な物質が形成されてもよい。放電中に、第2の電極、第1の電極の一種類以上の成分、および/または電解質の間の一種類以上の反応により、ヘテロ金属アンチモン化物が形成されてもよい。ヘテロ金属アンチモン化物は、限定はされないが、LiCaSb、Li1.38Ca10.62Sb9、およびSr2.37Ca8.63Sb10を含んでもよい。
【0062】
第2の電極(例えば、カソードまたは負極)は、1種類以上の非電気化学的活性添加物、または1種類以上の電気化学的活性添加物を含んでもよい。非電気化学的活性添加物は、鋼、グラファイト、炭化タングステン、窒化アルミニウム、またはこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。窒化アルミニウムは、粒子として第2の電極に添加されてもよい。粒子は、様々なサイズおよび/または形態を含んでもよい。窒化アルミニウム粒子は、ショット、繊維、粉末、薄片、針、粒子、またはこれらの任意の組み合わせとして添加されてもよい。非電気化学的活性添加物は、第2の電極の電気伝導率または活性粒子密度を変更してもよい。
【0063】
第1の電極と第2の電極は、所与のモル比で電気化学セルに添加されてもよい。第1の電極物質(例えば、カルシウム)対第2の電極物質(例えば、アンチモン)のモル比は、電気化学セルの効率(例えば、充電および/または放電)を向上させるように選択されてもよい。第1の電極物質対第2の電極物質のモル比は、約1対1、1対2、1対3、1対4、1対5、1対6、1対7、1対8、1対9、1対10、2対1、2対3、2対5、2対7、2対9、3対1、3対2、3対4、3対5、3対6、3対7、3対8、3対9、3対10、4対1、4対3、4対5、4対7、4対9、5対1、5対2、5対3、5対4、5対6、5対7、5対8、5対9、5対10、6対1、6対5、6対7、7対1、7対2、7対3、7対4、7対5、7対6、7対8、7対9、7対10、8対1、8対3、8対5、8対7、8対9、9対1、9対2、9対4、9対5、9対7、9対8、または9対10以上であってもよい。一実施例では、第1の電極物質対第2の電極物質のモル比が、3対2である。一実施例では、第1の電極物質がカルシウムであり、第2の電極物質がアンチモンであり、カルシウム対アンチモンのモル比が3対2である。
【0064】
電解質は、アルカリ金属ハロゲン化物塩、アルカリ土類金属塩、および/またはカルシウム塩等の塩(例えば、溶融塩)を含んでもよい。電解質は、セルの動作温度において、液体状態または溶融状態であってもよい。電解質は、1種類の物質(例えば、1種類の塩)を含んでもよく、または複数の物質の混合物であってもよい。電解質は、1、2、3、4、5、6、8、10、12種類以上の物質を含んでもよい。電解質は、金属イオンのイオン伝導を補助してもよい。例えば、電解質は、陽イオン、陰イオン、または陽イオンと陰イオンの両方が第1の電極および第2の電極から伝導されることを可能にしてもよい。電解質中の金属成分(例えば、第1の電極物質および/または第2の電極物質ならびに金属間化合物)の溶解度は、低くてもよい。電解質は、低電気伝導率を有していてもよく、高い反応速度を可能にしてもよい。
【0065】
電解質は、溶融カルシウム塩を含んでもよい。カルシウム塩は、電解質内でのカルシウムイオンの素早い伝導を可能にしてもよい。カルシウム塩の例は、限定はされないが、塩化カルシウム(CaCl
2)、フッ化カルシウム(CaF
2)、臭化カルシウム(CaBr
2)、ヨウ化カルシウム(CaI
2)、またはこれらの組み合わせを含む。一実施例では、カルシウム塩が、塩化カルシウムまたは臭化カルシウムである。電解質は、約1mol%、5mol%、10mol%、15mol%、20mol%、25mol%、30mol%、40mol%、50mol%、60mol%、70mol%、80mol%、90mol%以上のカルシウム塩を含んでもよい。電解質は、塩添加物を含んでもよい。塩添加物の例は、限定はされないが、フッ化物(F)、塩化物(Cl)、臭化物(Br)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、またはバリウム(Ba)を含む塩成分、例えば、フッ化リチウム(LiF)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、ヨウ化リチウム(LiI)、塩化カリウム(KCl)、フッ化バリウム(BaF
2)、塩化バリウム(BaCl
2)、臭化バリウム(BaBr
2)、ヨウ化バリウム(BaI
2)、フッ化ストロンチウム(SrF
2)、塩化ストロンチウム(SrCl
2)、臭化ストロンチウム(SrBr
2)、フッ化ナトリウム(NaF)、塩化ナトリウム(NaCl)、臭化ナトリウム(NaBr)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、またはこれらの組み合わせを含む。電解質は、約0.5mol%、1mol%、2mol%、3mol%、4mol%、5mol%、6mol%、8mol%、10mol%、15mol%、20mol%、30mol%、40mol%、50mol%以上の塩添加物を含んでもよい。一実施例では、電解質が、約30mol%の塩化カルシウムと、約15mol%の塩化カリウムと、約55mol%の塩化リチウムとを含む。一実施例では、電解質が、約35mol%の塩化カルシウムと、約65mol%の塩化リチウムとを含む。一実施例では、電解質が、約24mol%の塩化リチウムと、約38mol%の塩化カルシウムと、約38mol%の塩化ストロンチウムとを含む。一実施例では、電解質が、少なくとも約20重量パーセント(wt%)の塩化カルシウムと、少なくとも約20wt%の塩化ストロンチウムと、少なくとも約10wt%の塩化カリウムとを含む。一実施例では、電解質が、少なくとも約10wt%の塩化リチウムと、少なくとも約30wt%の塩化カルシウムと、少なくとも約30wt%の塩化ストロンチウムと、少なくとも約10wt%の塩化カリウムとを含む。表2に、他の例示的な塩組成が示されている。表2に示されている値は、おおよそのものであり、変わりうる。
【表2】
【0066】
あるいは、または加えて、アルカリ金属の塩は、例えば、非塩化物ハロゲン化物、ビストリフルイミド、フルオロスルファノ-アミン、過塩素酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、炭酸塩、水酸化物、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0067】
一実施例では、電気化学エネルギー貯蔵装置の負極と正極が、エネルギー貯蔵装置の動作温度において、液体状態である。別の一実施例では、電気化学エネルギー貯蔵装置の負極と正極が、エネルギー貯蔵装置の動作温度において、固体状態である。別の一実施例では、電気化学エネルギー貯蔵装置の負極と正極が、エネルギー貯蔵装置の動作温度において、半固体状態である。別の一実施例では、エネルギー貯蔵装置の動作温度において、負極は液体状態であり、正極は固体状態である。別の一実施例では、エネルギー貯蔵装置の動作温度において、負極は半固体状態であり、正極は固体状態である。別の一実施例では、エネルギー貯蔵装置の動作温度において、負極は液体状態であり、正極は半固体状態である。別の一実施例では、エネルギー貯蔵装置の動作温度において、負極は固体状態であり、正極は半固体状態である。別の一実施例では、エネルギー貯蔵装置の動作温度において、負極は固体状態であり、正極は液体状態である。
【0068】
電解質および/または電極のうちの少なくとも1つを液体状態または半固体状態に維持するために、電池セルは任意の適切な温度まで加熱されてもよい。いくつかの実施例では、電池セルが、約100℃、150℃、200℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃、500℃、550℃、600℃、650℃、または700℃の温度で加熱および/または維持される。電池セルは、約100℃、150℃、200℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃、500℃、550℃、600℃、650℃、700℃以上の温度で加熱および/または維持されてもよい。いくつかの状況では、電池セルが、約150℃から約600℃まで、約400℃から約500℃まで、または約450℃から約575℃まで加熱される。一実施例では、電気化学セルを、約300℃から650℃の間の温度で動作させる。
【0069】
電気化学セルまたはエネルギー貯蔵装置は、少なくとも部分的にまたは全面的に自動加熱式であってもよい。例えば、電池は、十分に絶縁されて、充電、放電されてもよく、および/または十分なレートで調整されてもよく、および/または時間当たり十分な割合でサイクルを行い、システムが非効率なサイクル動作中にも十分な熱を発生させることを可能にし、動作温度を維持するためにシステムに追加のエネルギーを供給する必要なく、セルが所与の動作温度(例えば、電解質および/または電極のうちの少なくとも1つの凝固点を超えるセルの動作温度)において維持されるようにしてもよい。
【0070】
本開示の電気化学セルは、充電(またはエネルギー貯蔵)モードと放電(またはエネルギー放出)モードを繰り返すサイクルに適用されてもよい。いくつかの実施例では、電気化学セルが、満充電もしくは部分充電、または部分放電もしくは完全放電される可能性がある。
【0071】
電気化学エネルギー貯蔵装置の充電モード中に、外部電源(例えば、発電機または電力網)から受け取った電流により、金属正極中の金属原子が1つ以上の電子を放出し、正に帯電したイオン(例えば、陽イオン)として電解質中に溶け出してもよい。同時に、同じ種類の陽イオン、異なる種類の陽イオンが、電解質中を移動する可能性があり、負極において電子を受け入れることで、これらの陽イオンが中性金属種となり、それにより負極の質量が増加してもよい。正極から1つ以上の金属種を取り除き、負極に金属を加えることにより、電気化学エネルギーを貯蔵することができる。エネルギー放電モード中に、電気負荷が電極に結合され、事前に加えられた負極の金属種が、金属負極から放出され、イオンとして電解質内を通過する可能性があり、加えられた金属種または他の金属種が中性種として正極(場合によっては、正極物質との合金)に堆積し、外部の回路/負荷を通る電子の外部的および整合的流れに伴って、イオンが流れる。この電気化学的に促進される金属合金反応により、事前に貯蔵された電気化学エネルギーが電気負荷へと放電される。充電中に、正極の合金は解離して金属陽イオンを生み出し、金属陽イオンは電解質を通って負極へと移動し、そこで還元されて中性金属になってもよく、負極に加えられてもよい。
【0072】
いくつかの実施例では、イオンが、電解質を通って、アノードからカソードへ、またはカソードからアノードへ移動する可能性がある。場合によっては、イオンは、電解質に1種類のイオンが入ると同じ種類のイオンが電解質から出るというように、電解質を通って押し出し式に移動する可能性がある。例えば、放電中に、アノードで形成されたカルシウム陽イオンが、電解質と相互に作用し、電解質からカソード内にカルシウム陽イオンを放出する過程により、カルシウムのアノードと塩化カルシウムの電解質は、カルシウム陽イオンをカソードに与える可能性がある。そのような場合にアノードで形成されたカルシウム陽イオンは、必ずしも電解質を通ってカソードに移動しなくてもよい。陽イオンは、アノードと電解質との間の界面において形成され、カソードと電解質との間の界面において受け入れられる可能性がある。
【0073】
例示的なセルにおいて、放電の際、負極で形成された陽イオンが、電解質中に移動する可能性がある。動作中、異なる電解質と電極の組成を有するセルは、サイクル中に同じように挙動しなくてもよい。いくつかのセルの化学作用として、1種類の化学種(例えば、Ca)の負極から正極または正極から負極への移動が含まれてもよい。他のセルの化学作用として、複数種類の化学種のどちらかの電極への堆積、またはどちらかの電極からの抽出が含まれてもよい。複数種類の化学種は、両方の電極上において同じであってもよく(例えば、充電中に負極上に堆積するCaとLi、および放電中に正極上に堆積するCaとLi)、複数種類の化学種は、両方の電極上において同じでなくてもよい(例えば、充電中に負極上に堆積するCa、および放電中に正極に堆積するCaとLi)。同時に、電解質は、同じ種類の陽イオンまたは異なる種類の陽イオン(例えば、負極物質の陽イオンまたは電解質からの陽イオン)を正極に提供し、陽イオンを中性の化学種に還元してもよく、正極と金属間化合物を合金にし、または形成してもよい。放電状態では、負極が、(充電状態と比べて)比較的少量の電極物質を含んでもよく、および/または負極物質(例えば、Ca、Li、Na、Mg)を激減させてもよい。充電中に、正極のカソード合金または金属間化合物は、解離して陽イオン(例えば、Ca2+、Li+、Na+、Mg2+、Ba2+)を生み出し、陽イオンが電解質内へと移動してもよく、金属間化合物は、正極の金属(例えば、Sb)、またはごく少量の(1または複数の)負極の金属もしくは電解質中の陽イオンに関係する金属種を含む正極の金属合金に変わる。その後、電解質は、陽イオン(例えば、負極物質の陽イオン)を負極に提供し、負極を再び満たしてセルを充電状態にしてもよい。セルは、電解質に陽イオンが入ると、同じ種類の陽イオンが電解質から出るというように、押し出し式に動作してもよい。
【0074】
本開示の電気化学セルは、様々な用途および動作に適合させうる筐体を含む可能性がある。筐体は、1つのセルまたは複数のセルを含む可能性がある。筐体は、電極をスイッチに電気的に結合させるように構成される可能性があり、スイッチは、外部電源および電気負荷に接続される可能性がある。セルの筐体は、例えば、スイッチおよび/または別のセルの第1の極に電気的に結合された導電性容器と、導電性容器から電気的に絶縁されており、スイッチおよび/または別のセルの第2の極に電気的に結合された導電性端子(例えば、シール上の端子)とを含んでもよい。セルは、容器の空洞内に配列される可能性がある。セルの電極のうちの第1の電極は、容器の端壁に接触し、電気的に結合される可能性がある。電気絶縁シール(例えば、接着されたセラミックリング)は、セルの負電位部分をセルの正電位部分から電気的に絶縁(例えば、負電流リードを正電流リードから電気的に絶縁)してもよい。一実施例では、負電流リードと容器の蓋(例えば、セルキャップ)が、相互に電気的に絶縁される可能性があり、絶縁封止材料が、負電流リードとセルキャップとの間に置かれる可能性がある。代替として、筐体は、電気絶縁シース(例えば、アルミナシース)、または耐腐食性および導電性シースもしくはるつぼ(例えば、グラファイトシースまたはるつぼ)を含む。場合によっては、筐体および/または容器は、電池の筐体および/または容器であってもよい。
【0075】
電気化学セル
本明細書で使用される電池は、複数の電気化学セルを具備する可能性がある。複数のセルの個々のセルは、直列および/または並列に電気的に相互に結合される可能性がある。直列接続では、第1のセルの正端子が、第2のセルの負端子に接続される。並列接続では、第1のセルの正端子が、第2のセルおよび/または(1または複数の)追加のセルの正端子に接続される可能性がある。
【0076】
以下、図面を参照する。図面中の同様の符号は、全体を通して同様の部品を指す。本明細書の図面および特徴は、必ずしも縮尺通りに描かれていないことが理解されるであろう。
【0077】
図1を参照すると、電気化学セル101は、アノードとカソードとを具備するユニットである。本明細書に記載のように、セルは、電解質を具備し、筐体内に封止されてもよい。場合によっては、電気化学セルは、電池を形成するスタック102(例えば、電気化学セルの集合体)である可能性がある。セルは、並列、直列、または並列および直列103の両方で配列される可能性がある。
【0078】
本開示の電気化学セルは、かなり大量のエネルギーの入力を貯蔵する、および/または受け取る(「取り入れる」)ことができてもよい。いくつかの例では、セルが、約1ワット時(Wh)、5Wh、25Wh、50Wh、100Wh、500Wh、1キロワット時(kWh)、1.5kWh、または2kWhを貯蔵する、および/または取り入れることができる。いくつかの例では、電池が、約1Wh、5Wh、25Wh、50Wh、100Wh、500Wh、1kWh、1.5kWh、2kWh、3kWh、5kWh、10kWh、15kWh、20kWh、a30kWh、40kWh、50kWh以上を貯蔵する、および/または取り入れることができる。セルは、約10mA/cm2、20mA/cm2、30mA/cm2、40mA/cm2、50mA/cm2、60mA/cm2、70mA/cm2、80mA/cm2、90mA/cm2、100mA/cm2、200mA/cm2、300mA/cm2、400mA/cm2、500mA/cm2、600mA/cm2、700mA/cm2、800mA/cm2、900mA/cm2、1A/cm2、2A/cm2、3A/cm2、4A/cm2、5A/cm2、または10A/cm2以上の電流密度の電流を提供することができる可能性がある。一実施例では、セルが、約300mA/cm2以下の電流密度を提供する。電流密度は、電解質の有効断面積、すなわち充電または放電過程中に、電解質中のイオンの正味の流れ方向に直交する断面の面積に基づいて求められてもよい。いくつかの例では、セルが、約10%、20%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、90%、95%等以上の直流(DC)電流効率で動作できる可能性がある。いくつかの例では、セルが、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%等以上の充電効率で動作できる可能性がある。
【0079】
電気化学セルは、電圧制限モード、容量制限モード、定電流モード、定電力モード、定電圧モード、またはこれらの任意の組み合わせで動作してもよい。電気化学セルは、約0.1V、0.2V、0.3V、0.4V、0.5V、0.6V、0.8V、1V、1.2V、1.4V、1.6V以上の電圧で動作させる可能性がある。一実施例では、電気化学セルを、約0.2Vから1.5V、または約0.6Vから1.2Vで動作させてもよい。
【0080】
本開示の電気化学セルは、任意の適切な値の反応時間(例えば、電力網における外乱に反応するのに適したもの)を有する可能性がある。いくつかの例では、反応時間が、約100ミリ秒(ms)、50ms、10ms、1ms等である。場合によっては、反応時間は、約100ms、50ms、10ms、1ms以下である。
【0081】
セルの集合体またはアレイ(すなわち、電池)は、約2、5、10、50、100、500、1000、5000、10000以上等の任意の適切な数のセルを具備する可能性がある。いくつかの実施例では、電池が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、5000、10,000、20,000、50,000、100,000、500,000、または1,000,000個のセルを具備する。
【0082】
本開示の電池は、電力網で使用するかなり大量のエネルギーを貯蔵する、および/または取り入れることができてもよい(すなわち、電力網規模用電池)、または他の負荷もしくは用途で使用するかなり大量のエネルギーを貯蔵する、および/または取り入れることができてもよい。いくつかの例では、電池が、約5キロワット時(kWh)、25kWh、50kWh、100kWh、500kWh、1メガワット時(MWh)、1.5MWh、2MWh、3MWh、5MWh、10MWh、25MWh、50MWh、または100MWhを貯蔵する、および/または取り入れることができる。いくつかの例では、電池が、約1kWh、5kWh、25kWh、50kWh、100kWh、500kWh、1MWh、1.5MWh、2MWh、3MWh、5MWh、10MWh、25MWh、50MWh、100MWh以上を貯蔵する、および/または取り入れることができる。
【0083】
いくつかの例では、セルとセルの筐体は、積み重ねることができる。任意の適切な数のセルが、積み重ねられる可能性がある。セルは、横に並べて積み重ねられたり、縦に積み重ねられたり、またはその両方の形式で積み重ねられたりする可能性がある。いくつかの例では、約10、50、100、または500個以上のセルが積み重ねられる。場合によっては、100個のセルを積み重ねたものが、少なくとも50kWhのエネルギーを貯蔵する、および/または取り入れることができる。複数のセル(例えば、10個のセル)の第1のスタックが、複数のセル(例えば、別の10個のセル)の第2のスタックに電気的に接続され、電気的に繋がっているセルの数を増やす(この例の場合は、20個にする)可能性がある。いくつかの例では、エネルギー貯蔵装置が、1から10、11から50、51から100、またはそれより多い数の電気化学セルを具備する。
【0084】
電気化学エネルギー貯蔵装置は、1つ以上の個々の電気化学セルを含む可能性がある。電気化学セルは容器内に収容される可能性があり、容器は容器の蓋(例えば、セルキャップ)と封止要素とを含む可能性がある。装置は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100、200、300、400、500、1000、10,000、100,000、または1,000,000個以上のセルを含む可能性がある。容器の蓋は、例えば、シール(例えば、環状絶縁ガスケット)を用いて、セルの正の極性を与えられた部分(例えば、セルの蓋)をセルの負の極性を与えられた部分(例えば、シール上の負電流リード端子)から電気的に絶縁してもよい。そのような構成要素は、例えば、ガラス、酸化物セラミックス、窒化物セラミックス、カルコゲニド、またはこれらの組み合わせ(例えば、セラミック、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ジルコニウム、窒化チタン等の窒化物、炭化ケイ素、炭化チタン等の炭化物、または酸化リチウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化イットリウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の他の酸化物、または窒化リチウム、またはこれらの任意の組み合わせ)等の電気絶縁物質から構成されてもよい。シールは、ろう付け用物質を用いて電気絶縁セラミック物質(例えば、窒化アルミニウム)の構成要素を、1つ以上の薄い金属要素(例えば、約0.1mm未満の厚みを有するステンレス鋼、鋼、鉄、またはニッケル合金金属スリーブ)に接着しうる高温「ろう付け」工程により作製されてもよく、薄い金属要素は、接合工程(例えば、ろう付けまたは溶接)を経て他の金属要素に接合されてもよい。適切なろう付け用物質は、銀、アルミニウム、チタン、またはこれらの合金を含んでもよい。ろう付け用合金は、銀-アルミニウムのろう付け用合金(例えば、約95%の銀と約5%のアルミニウムとを含みうる合金)、またはチタンベースのろう付け用合金(例えば、約40%のチタンと、約20%のジルコニウムと、約20%の銅と、約20%のニッケルとを含むチタン合金ろう)を含んでもよい。シールは、1つ以上の方法により気密に作られてもよい。例えば、シールは、電気絶縁性に加えて気密性を提供するために、容器の蓋と容器との間で比較的高い圧縮力(例えば、10,000psi超)を受けてもよい。あるいは、シールは、溶接により、または関係するセルの構成要素を絶縁封止物質に接合させる他の化学接着物質により、接着されてもよい。
【0085】
図2は、導電性筐体201と、電流コレクタ203と電気的に繋がっている導体202とを具備する電池を概略的に示している。
図2の電池は、エネルギー貯蔵装置のセルである可能性がある。導体は、筐体から電気的に絶縁される可能性があり、第1のセルと第2のセルが積み重ねられたときに、第1のセルの導体が第2のセルの筐体と電気的に繋がるように、筐体の開口を通って筐体から突き出ている可能性がある。
【0086】
場合によっては、セルは、負電流コレクタと、負極と、電解質と、正極と、正電流コレクタとを具備する。負極は、負電流コレクタの一部である可能性がある。代替として、負極は、負電流コレクタから分離されているか、そうでなければ負電流コレクタと電気的な繋がりを保っている。正極は、正電流コレクタの一部である可能性がある。代替として、正極は、正電流コレクタから分離されているか、そうでなければ正電流コレクタと電気的な繋がりを保っている。
【0087】
セルの筐体は、導電性容器と、電流コレクタと電気的に繋がっている導体とを具備する可能性がある。導体は、容器の開口を通って筐体から突き出ていてもよく、容器から電気的に絶縁されてもよい。第1の筐体と第2の筐体が積み重ねられたとき、第1の筐体の導体は、第2の筐体の容器と接触してもよい。
【0088】
いくつかの例では、導体が筐体および/または容器から突き出る開口の面積は、筐体および/または容器の面積に対して小さい。場合によっては、筐体の面積に対する開口の面積の割合は、約0.001、0.005、0.01、0.05、0.1、0.15、0.2、または0.3である。場合によっては、筐体の面積に対する開口の面積の割合は、約0.001、0.005、0.01、0.05、0.1、0.15、0.2、または0.3以下である。
【0089】
セルは、導電性筐体と、電流コレクタと電気的に繋がっている導体とを具備する可能性がある。導体は、筐体の開口を通って筐体から突き出ており、筐体から電気的に絶縁されてもよい。筐体の面積に対する開口の面積の割合は、約0.3、0.2、0.15、0.1、0.05、0.01、0.005、または0.001以下であってもよい。
【0090】
セルの筐体は、導電性容器と、電流コレクタと電気的に繋がっている導体とを具備する可能性がある。導体は、容器の開口を通って容器から突き出ており、容器から電気的に絶縁される。容器の面積に対する開口の面積の割合は、約0.3、0.2、0.15、0.1、0.05、0.01、0.005、または0.001以下であってもよい。筐体は、約100Wh未満のエネルギー、約100Whのエネルギー、または約100Wh超のエネルギーを貯蔵する、および/または取り入れることができるセルを収容することができる可能性がある。セルは、約1Wh、5Wh、25Wh、50Wh、100Wh、500Wh、1kWh、1.5kWh、2kWh、3kWh、5kWh、10kWh、15kWh、20kWh、30kWh、40kWh、または50kWh以上のエネルギーを貯蔵する、および/または取り入れることができる可能性がある。
【0091】
図3は、筐体310と、筐体の開口を通って金属負極305と電気的に繋がっている導電性フィードスルー315(すなわち、負電流リード等の導体)と、金属正極345と、金属電極間にある液体塩電解質335とを具備する電気化学セルまたは電池の側面断面図である。負電流リード315は、(例えば、電気絶縁シールを用いて)筐体から電気的に絶縁されてもよい。負電流コレクタは、多孔性ステンレス鋼を含んでもよく、および/または多孔性ステンレス鋼から作製されてもよい。多孔性ステンレス鋼は、限定はされないが、ステンレス鋼の発泡体、織られたメッシュ、拡張されたメッシュ、フェルト、穴のあいたシート、またはこれらの任意の組み合わせ等である。負電流コレクタは、負極を含んでもよい。負極は、液体状態、半固体状態、または固体状態であってもよい。負極は、溶融塩電解質と接触していてもよい。塩電解質は、正の金属電極と接触していてもよい。正の金属電極は、筐体の側壁および/または底部端壁に沿って、筐体と電気的に繋がっていてもよい。
【0092】
筐体は、例えば、鋼、鉄、ステンレス鋼、グラファイト、ニッケル、ニッケルベースの合金、チタン、アルミニウム、モリブデン、タングステン、窒化物(例えば、炭化ケイ素や炭化チタン)等の導電性化合物、またはこれらの組み合わせ(例えば、合金)等の導電性物質から構成される可能性がある。
【0093】
筐体は、容器と、容器の蓋(例えば、セルキャップ)とを含んでもよい。容器と容器の蓋は、機械的に接続されてもよい。筐体の断面形状(例えば、容器の蓋に平行な形状)は、円形、楕円形、正方形、長方形、多角形、曲線形、対称形、非対称形、または電池の設計要件に基づく任意の他の複合形状である可能性がある。負電流リードは、例えば、電気絶縁気密シールを用いて、容器および/または容器の蓋(例えば、セルキャップ)から電気的に絶縁されてもよい。いくつかの実施例では、電気絶縁バリア(例えば、シール)が、負電流リードと容器の蓋との間に設けられてもよい。代替として、シールは、例えば、ガスケットの形であり、容器の蓋と容器との間に置かれる可能性がある。いくつかの実施例では、電気化学セルまたは電池が、1つ以上の開口を通り金属負極と電気的に繋がっている2つ以上の導体を具備してもよい。いくつかの例では、隔離板構造(図示せず)が、負極と正極との間にある電解質内に配列されてもよい。
【0094】
筐体は、筐体の内側部を具備してもよい。筐体の内側部は、限定はされないが、シース(例えば、グラファイトシース)、コーティング、るつぼ(例えば、グラファイトるつぼ)、表面処理、ライニング、またはこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。一実施例では、筐体の内側部がシースである。別の実施例では、筐体の内側部がるつぼである。さらなる実施例では、筐体の内側部が、コーティングまたは表面処理である。筐体の内側部は、熱伝導性、熱絶縁性、導電性、電気絶縁性、またはこれらの任意の組み合わせであってもよい。場合によっては、筐体の内側部は、筐体を保護する(例えば、筐体のステンレス鋼物質を腐食から保護する)ために設けられてもよい。いくつかの実施例では、筐体の内側部が耐腐食性である。場合によっては、筐体の内側部は、液体電極に対して耐水性であってもよい。他の場合では、筐体の内側部は、液体電解質に対して耐水性であってもよい。
【0095】
筐体は、個別の金属または化合物のより薄いライニング要素、またはコーティング(例えば、電気絶縁性コーティング)を具備してもよく、例えば、グラファイトライニングを備える鋼筐体、または窒化物コーティングもしくはライニング(例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム)、チタンコーティングもしくはライニング、または炭化物コーティングもしくはライニング(例えば、炭化ケイ素、炭化チタン)を備える鋼筐体等である。コーティングは、耐水性表面を含む、有利な特徴および機能を呈する可能性がある。場合によっては、ライニング(例えば、グラファイトライニング)は、セルの筐体内に置く前または後に、空気中で室温を超える温度で加熱することより乾燥させてもよく、または真空オーブン中で乾燥させてもよい。電解質、正極、または負極をセルの筐体に加える前に、ライニングを乾燥または加熱することにより、ライニングから水分を除去してもよい。
【0096】
筐体は、熱絶縁性および/または電気絶縁性のシースまたはるつぼを含んでもよい。この構成では、負極が、正極に電気的に接続される(すなわち、短絡される)ことなく、シースにより画定される筐体の側壁の間に横方向に延びていてもよい。あるいは、負極は、第1の負極端と第2の負極端との間に横方向に延びていてもよい。シースが設けられない場合、負極は、筐体により画定される空洞の直径(または、立体容器の幅等の他の特徴的な寸法)より小さい直径(または他の特徴的な寸法)を有してもよい。
【0097】
筐体の内側部(例えば、シース、るつぼ、および/またはコーティング)は、熱絶縁性、熱伝導性、および/または電気絶縁性、または導電性物質から構成される可能性がある。これらの物質は、例えば、グラファイト、炭化物(例えば、炭化ケイ素、炭化チタン、ダイヤモンド様炭化物、炭化バナジウム)、窒化物(例えば、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化アルミニウムチタン)、アルミナ、チタニア、シリカ、マグネシア、鋼、ステンレス鋼、モリブデン、タングステン、または、例えば、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、元素ケイ素、酸化リチウム、酸化マグネシウム等の混合酸化物、またはこれらの任意の組み合わせ等である。筐体の内側部は、物理蒸着や化学蒸着等の蒸着、または他のコーティングもしくは表面処理工程を用いてコーティングされてもよい。筐体の内側部は、塗料であってもよく、浸漬、吹付け、またははけ塗りにより塗布されてもよい。例えば、コーティングは、リン酸亜鉛プライマ、高温セラミック塗料、グラファイト塗料、またはケイ素コーティングであってもよい。筐体の内側部は、ニッケルまたはクロムめっき等により、めっきされてもよい。コーティングは、表面のパッシベーションまたは酸洗いを含んでもよい。例えば、筐体の内側部は、第1の筐体の内側部の端と第2の筐体の内側部の端との間を横方向に広がる可能性のある環状の断面形状を有してもよい。筐体の内側部は、筐体の空洞により画定される空洞の側壁に、筐体の内側部が接触し圧力を加えるように寸法を決められてもよい。代替として、筐体の内側部は、容器の腐食を防止する、および/または側壁の物質が濡れることを防止するために使用される可能性があり、鋼、ステンレス鋼、タングステン、モリブデン、ニッケル、ニッケルベースの合金、グラファイト、チタン、または窒化チタン等の導電性物質から構成されてもよい。例えば、筐体の内側部は、薄い金属(例えば、鋼またはステンレス鋼)であってもよく、コーティングであってもよい。例えば、筐体の内側部は、ボロナイゼーション表面処理を施された、またはケイ素コーティングを受けた薄い軟鋼またはステンレス鋼の金属ライナであってもよい。コーティングは、壁の内側のみを被覆する可能性がある、および/または容器の内側の底部も被覆する可能性がある。場合によっては、筐体の内側部は、セルの筐体内に置く前または後に、空気中で室温を超える温度で加熱することにより乾燥させてもよく、または真空オーブン中で乾燥させてもよい。電解質、正極、または負極をセルの筐体に加える前に、ライニングを乾燥または加熱することにより、ライニングから水分を除去してもよい。
【0098】
いくつかの実施例では、筐体の内側部が、約3ミリメートル(mm)から約30mmの厚みを有する可能性がある。いくつかの実施例では、筐体の内側部(例えば、グラファイトるつぼ)が、少なくとも約3mm、6mm、9mm、12mm、15mm、20mm、30mm等の厚みを有する可能性がある。いくつかの実施例では、筐体の内側部(例えば、グラファイトるつぼ)が、約3mm、6mm、9mm、12mm、15mm、20mm、30mm等未満の厚みを有する可能性がある。いくつかの実施例では、筐体の内側部が、約1mm未満の厚みである可能性がある。いくつかの実施例では、筐体の内側部が、少なくとも約1マイクロメートルの厚みである可能性がある。例えば、筐体の内側部は、約1マイクロメートルから約1mmの厚みである可能性がある。
【0099】
筐体は、表面処理を含んでもよい。表面処理は、筐体物質(例えば、ステンレス鋼)を強化してもよく、筐体物質(例えば、ステンレス鋼)の腐食耐性を向上させてもよい。第2の電極物質(例えば、アンチモン粒子)は、筐体内でイオンと反応し、筐体の腐食を促進しうる。コーティングとは異なり、表面処理は、物質の表面を化学的に変質させ、それにより腐食耐性を向上させうる。例示的な表面処理は、限定はされないが、ボロナイジング、窒化、軟窒化、炭化、またはこれらの任意の組み合わせを含む。鋼またはステンレス鋼をボロナイジングした構成要素(例えば、セルの筐体、筐体の内側部、多孔性電極の個々の層)の表面は、Fe
xB
y(例えば、Fe
2BまたはFeB)の化合物を含んでもよい。ここで「x」および「y」は0より大きい数字である。
図5は、電極物質(例えば、第2の電極)と様々な筐体物質との間の例示的な反応を示している。反応成分505は、様々な筐体物質と第2の電極物質との間の界面において観察されうる。第2の電極物質は、未処理の軟鋼510および未処理のSUS304のステンレス鋼520と反応しやすくてもよい。第2の電極物質は、ボロナイジングされた軟鋼515およびボロナイジングされたSUS304のステンレス鋼525とは反応しなくてもよく、または限定的にしか反応しなくてもよい。
【0100】
セルは、第1の(例えば、負の)電流コレクタと、第2の(例えば、正の)電流コレクタとをさらに含む可能性がある。負電流コレクタは、例えば、金属(例えば、ステンレス鋼または鋼)発泡体、穴のあいたステンレス鋼または鋼シート、波形ステンレス鋼または鋼シート、織られたメッシュまたは拡張された金属のシート、またはこれらの任意の組み合わせ等の導電性物質から構成されてもよい。負電流コレクタは、筐体により画定される空洞のほぼ直径以下のコレクタ直径を有してもよい。場合によっては、負電流コレクタは、負極の直径(または、他の特徴的な寸法)未満または以上のコレクタ直径(または、他の特徴的な寸法)を有してもよい。負電流コレクタは、第1の電極からのイオンを電流コレクタ内に、または電流コレクタから外に移動させることを可能にしてもよい。負電流コレクタは、剛性の機械要素を具備してもよく、第1の電極に形状的安定性をもたらす。機械要素、導電性金属板、穴のあいた金属板、拡張された金属シートまたは板、および/または1枚以上の板を具備する籠であってもよい。機械要素は、金属籠または金属板を具備してもよい。板は、板の2つの長手方向寸法のうちの1つ(例えば、高さ)が重力加速度のベクトル(例えば、蓋アッセンブリに平行でない長手方向の寸法)と実質的に平行になるように、電気化学セル内に配置されてもよい。金属は、SUS304のステンレス鋼、SUS304Lのステンレス鋼、SUS316のステンレス鋼、または軟鋼であってもよい。板は、約5mm、4mm、3mm、2mm、1.5mm、1.2mm、1mm、0.8mm、0.5mm以下の厚みを有してもよい。板は、0.5mm、0.8mm、1mm、1.2mm、1.5mm、2mm、3mm、4mm、5mm以上の厚みを有してもよい。一実施例では、板が、約1.2mmの厚みである。板は、固体であってもよく、または抜き穴もしくは拡張された金属シートを作ることにより形成された穴等の穴(例えば、板を貫通する穴)を含んでもよい。板の穴(例えば、抜き穴)は、板全体にわたって配置されてもよく、または板の部分が穴を含んでもよい。穴は、約10mm、8mm、6mm、4mm、2mm、1mm、0.5mm以下の直径であってもよい。穴は、約0.5mm、1mm、2mm、4mm、6mm、8mm、10mm以上の直径であってもよい。穴の直径は、板にわたって一定であってもよく、または板にわたって変化してもよい。板は、板の周りに配置された、または板の1つ以上の表面に沿って配置された金属物質を有してもよい。金属物質は、金属メッシュ、金属クロス、金属ニット、または流体金属電極を濡らすことができる任意の他の金属物質であってもよい。金属物質(例えば、金属クロス)は、板の周りに巻きつけられてもよい。金属物質は、点溶接、タングステン不活性ガス(TIG)溶接、レーザ溶接、またはろう付けにより、板に溶接されてもよい。あるいは、または加えて、金属物質は、ボルトやリベット等の1つ以上の留め具により、板に取り付けられてもよい。一実施例では、負電流コレクタが、1枚以上の金属板から形成された籠を具備してもよい。籠は、ワイヤクロス、メッシュ、金属ニット、金属発泡体、またはこれらの任意の組み合わせによりライニングされてもよい。
図6Aは、負電流コレクタとして使用されてもよく、例示的な穴のあいた金属籠を示している。籠は5つの側面を具備してもよく、各側面は穴のあいた金属板を具備している。
図6Bに示されているように、籠の壁605は、金属メッシュまたはクロス610でライニングされてもよい。籠の壁は、点溶接またはタングステン不活性ガス(TIG)溶接等の溶接により結合されてもよい。
【0101】
負電流コレクタは、第1の電極物質(例えば、液体金属)が結合する多孔性金属領域を含んでもよい。第1の電極物質は、多孔性金属領域の内部であってもよく、または多孔性金属領域を取り囲んでいてもよい。多孔性金属領域は、金属発泡体、メッシュ、ニット、網状ワイヤクロス、拡張された金属、または他の導電性物質を含んでもよい。金属発泡体、メッシュ、ニット、網状ワイヤクロス、および拡張された金属は、SUS304のステンレス鋼、SUS304Lのステンレス鋼、SUS316のステンレス鋼、軟鋼、または他の鉄合金を含んでもよい。導電性物質は、金属籠の内部に配置されてもよい。一実施例では、多孔性金属領域がワイヤクロスであり、クロスの複数の層が金属の電流コレクタ板の各表面に加えられる。多孔性金属層/要素内の穴の特徴的な直径または幅は、約10mm、5mm、2mm、1mm、0.5mm、0.25mm、0.1mm、0.05mm、0.01mm未満であってもよい。例えば、穴のあいた金属板は、板の各表面に隣接して配置された網状ワイヤクロスの複数の層を有してもよい。板は、1、2、3、4、5、6、8、10、12層以上の網状ワイヤクロスを具備してもよい。一実施例では、板が、5層以上の網状ワイヤクロスを具備する。クロスは、積層され、クロスの交差するワイヤの間およびクロスの層の間に穴を含む構造を作ってもよい。あるいは、または加えて、編まれたメッシュ部が、板に隣接して配置されてもよい。編まれて形成されたメッシュ部は、板に隣接して、または負電流コレクタに取り付けられた負電流リードの周りに配置されてもよい。板は、立方形、角柱形、円柱形、または任意の他の形等の任意の形状に形成されてもよい。
【0102】
負極は、負電流コレクタ(例えば、金属メッシュの発泡体または層)内に含まれてもよい。この構成では、電解質層が、負電流コレクタの底部、側面、および/または上部と接触するようになる。負電流コレクタに含まれる金属(すなわち、負極物質)は、例えば、液体金属負極が負電流コレクタ内に吸収され保持されることにより、筐体の側壁から離れて保持され、それによりセルが絶縁シースなしで機能することを可能にする可能性がある。いくつかの実施形態では、負極が、固体状態または半固体状態であってもよい。固体または半固体金属の負極は、負電流コレクタ全体に組み込まれてもよい。あるいは、または加えて、固体または半固体金属の負極は、負電流コレクタを包み込んでもよく、および/または取り囲んでもよい。いくつかの実施形態では、負極がカルシウムを含んでもよい。いくつかの実施形態では、負極がカルシウム合金を含んでもよい。
【0103】
正電流コレクタは筐体の一部として構成されてもよく、例えば、筐体の底部端壁および/または側壁が正電流コレクタとして構成されてもよい。正電流コレクタは、本明細書のどこかに記載されているコーティングまたは表面処理を含んでもよい。あるいは、電流コレクタは、セルの筐体から分離していてもよく、セルの筐体に電気的に接続されてもよい。場合によっては、正電流コレクタは、セルの筐体に電気的に接続されなくてもよい。
【0104】
第2の電極(例えば、正極)は、正電流コレクタと電気的に繋がっていてもよい。正極は、筐体と電気的に繋がっていてもよい。正極は、アンチモンまたはアンチモン合金を含んでもよい。一実施例では、正極が、固体金属電極であってもよい。固体金属正極は、スラブの構成であってもよい。あるいは、または加えて、固体金属正極は、粒子を含んでもよい。粒子は、固体物質の小粒子、薄片、針、またはこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。一実施例では、正極が、固体アンチモンであってもよい。固体アンチモンは、スラブの構成であってもよい。あるいは、または加えて、固体アンチモンは、固体物質の小粒子、薄片、針、またはこれらの任意の組み合わせを含む粒子であってもよい。固体金属正極の粒子は、約0.00001mm、0.0001mm、0.001mm、0.01mm、0.1mm、0.25mm、0.5mm、1mm、2mm、3mm、5mm以上の寸法を有してもよい。固体粒子は、約0.00001mmから0.0001mm、0.00001mmから0.001mm、0.00001mmから0.01mm、0.00001mmから0.1mm、0.00001mmから1mm、0.00001mmから10mmのサイズの範囲であってもよい。第2の電極の粒子のサイズは、セルのサイクル中に一定に維持されてもよく、またはセルのサイクル中に変化してもよい。第2の電極の形態は、セルのサイクル中に、一定に維持されてもよく、または変化してもよい。一実施例では、より大きい出発物質から少量の物質が剥がれ落ち、粒子を形成する。より大きい出発物質は、粒子または他の形状であってもよい。一実施例では、第2の電極の物質が、約5mmから8mmのサイズの範囲の粒子として、容器に加えられてもよい。剥がれ落ちた物質は、約0.1マイクロメートル(μm)から100μmの間の範囲の粒子を生成してもよい。第2の電極物質は、第2の物質の粒子、板、またはスラブとして、電気化学セルに加えられてもよい。物質の板またはスラブは、約1インチ(in)、2in、3in、4in、5in、6in、7in、8in以上の少なくも1つの寸法を有してもよい。一実施例では、物質の板またはスラブが、約4inから8インチの間の少なくとも1つの寸法を有してもよい。
【0105】
第2の電極の固体粒子(例えば、固体金属正極)は、レート能力、電極利用性、およびセル容量を高める小ささであってもよい。より小さい粒子は、より短い拡散距離を有してもよく、第2の物質(例えば、正極物質)のアクセス性および利用性を高めてもよい。固体の第2の電極の粒子は、約10mm、8mm、6mm、5mm、4mm、3mm、2mm、1mm、0.5mm、0.25mm、0.1mm、0.01mm、0.001mm、0.0001mm、0.00001mm以下の寸法を有してもよい。一実施例では、第2の電極の固体電極粒子が、約10mm以下であってもよい。一実施例では、第2の電極の固体電極粒子が、約1mm以下であってもよい。
【0106】
動作中に、剥がれ落ちた粒子は、固体、半固体、または液体であってもよい。第2の電極は、動作中に、同じ状態を維持してもよく、または状態を変化させてもよい。例えば、第2の電極は、充放電サイクル中に、固体から半固体に移り変わってもよい。第2の電極は粒子を含んでもよく、充放電サイクル中に、粒子はより大きい構造へとかたまり、より小さい構造へと剥がれ落ちてもよい。第2の電極の粒子または構造は、動作中に、互いに電気的に接触していてもよい。第2の電極の粒子または構造は、動作中に、正電流コレクタと電気的に接触していてもよい。正電流コレクタは、電気化学セルの筐体または容器であってもよい。第2の電極の粒子または構造は、電解質とイオン的に接触していてもよい。電解質は、正極の上に配置されてもよい。あるいは、または加えて、第2の電極は、電解質中に沈められてもよく、または電解質に取り囲まれてもよい。第2の電極と電解質は、ニュートン流体、非ニュートン流体、ゲル、または半固体物質として挙動してもよい。第2の電極と電解質の挙動は、電解質中の第2の電極の粒子サイズの分布および粒子密度に依存してもよい。
【0107】
第2の電極は、高い電気伝導率を有する固体粒子を含んでもよい。高い電気伝導率により、他の高導電物質または添加物を用いることなく、第2の電極が電子を伝導することを可能にしてもよい。例えば、第2の電極は、単一金属または金属合金の粒子からなっていてもよく、電気導体として働く追加の粒子または物質(例えば、グラファイト粒子)を含まなくてもよい。第2の電極の固体粒子の物質は、約2.5×103ジーメンス毎メートル(S/m)、5×103S/m、7.5×103S/m、1×104S/m、2.5×104S/m、5×104S/m、7.5×104S/m、1×105S/m、2.5×105S/m、5×105S/m、7.5×105S/m、1×106S/m、2.5×106S/m、5×106S/m、7.5×106S/m、1×107S/m、2.5×107S/m、5×107S/m、7.5×107S/m、1×108S/m以上の電気伝導率を有してもよい。一実施例では、第2の電極の固体粒子の物質が、1×104S/m以上の電気伝導率を有する。第2の電極の固体粒子の物質は、約2.5×103S/mから5×103S/m、2.5×103S/mから7.5×103S/m、2.5×103S/mから1×104S/m、2.5×103S/mから2.5×104S/m、2.5×103S/mから5×104S/m、2.5×103S/mから7.5×104S/m、2.5×103S/mから1×105S/m、2.5×103S/mから2.5×105S/m、2.5×103S/mから5×105S/m、2.5×103S/mから7.5×105S/m、2.5×103S/mから1×106S/m、2.5×103S/mから2.5×106S/m、2.5×103S/mから5×106S/m、2.5×103S/mから7.5×106S/m、2.5×103S/mから1×107S/m、2.5×103S/mから2.5×107S/m、2.5×103S/mから5×107S/m、2.5×103S/mから7.5×107S/m、または2.5×103S/mから1×108S/mの電気伝導率を有してもよい。
【0108】
第2の電極は、液体(例えば、溶融)塩内で分散される固体粒子を含んでもよい。固体粒子は、第2の物質(例えば、充電状態)、または第1の物質と第2の物質とを含む金属間物質(例えば、放電状態)を含んでもよい。粒子は、より大きい粒子(例えば、約5から8ミリメートル)、またはより小さい粒子(例えば、約1から100マイクロメートル)であってもよい。第2の電極は、電極室(例えば、カソードまたは正極の室)内に配置されてもよい。第2の電極の室は、容器の筐体(例えば、正電流コレクタ)と隔離板との間に配置されてもよい。室は、第2の電極の固体粒子と、液体電解質とを含んでもよい。固体粒子は、第2の電極の室の体積パーセントのうち、約5体積パーセント(vol%)、10vol%、15vol%、20vol%、25vol%、30vol%、35vol%、40vol%、45vol%、50vol%、55vol%、60vol%以上を占めてもよい。固体粒子は、電極室の約5vol%から10vol%、5vol%から15vol%、5vol%から20vol%、5vol%から25vol%、5vol%から30vol%、5vol%から35vol%、5vol%から40vol%、5vol%から45vol%、5vol%から50vol%、5vol%から55vol%、または5vol%から60vol%以上を占めてもよい。一実施例では、固体粒子が、電極室の約10vol%から25vol%を占める。第2の電極の室の残りの体積は、電解質を含んでもよい。
【0109】
電流は、電解質と表面において接触している正および/または負の金属電極にわたって実質的に均一に分配されてもよい(すなわち、表面にわたって流れる電流は、表面の任意の部分を流れる電流が平均電流密度から実質的に逸脱しないように均一であってもよい)。いくつかの実施例では、表面領域にわたって流れる電流の最大密度が、表面にわたって流れる電流の平均密度の約105%、115%、125%、150%、175%、200%、250%、300%以下である。いくつかの実施例では、表面領域にわたって流れる電流の最小密度が、表面にわたって流れる電流の平均密度の約50%、60%、70%、80%、90%、95%以上である。
【0110】
電気化学セルは、イオンの平均流路が容器の蓋の面と実質的に直角をなすように(例えば、蓋が上方向を向いているときに、イオンが負極と正極との間を垂直に流れるように)筐体中に配列されてもよい。
図3に示されているこの構成は、負電流リード315により筐体310の空洞内に吊り下げられた負電流コレクタ305内に含まれる負極を具備してもよい。負電流リード315は、セルの筐体310の容器の蓋320の開口を通って延びていてもよい。シール325は、負電流リード315を容器の蓋320に結合させてもよい。シール325は、絶縁セラミック330を用いて、負電流リード315を容器の蓋320から電気的に絶縁してもよい。この構成では、負電流コレクタ305の幅が、負電流コレクタ305の高さよりも大きくてもよい。負極は、部分的に、または完全に、溶融塩電解質335中に沈められてもよい。ガス用上部空間340が、負極の上部(すなわち、負極と容器の蓋315との間)に存在してもよい。溶融塩電解質335は、負極と正極345との間にあってもよく、負極と正極345を分離してもよい。正極335は、空洞の底部(すなわち、容器の蓋325の逆側)に、またはその近くに配置されてもよい。正極345は、固体スラブの形状を含んでもよく、または固体物質の粒子を含んでもよい。正極は、電解質335の下部に配置されてもよく、または電解質335中に沈められてもよく、もしくは電解質335に取り囲まれてもよい。放電中に、イオンは、容器の蓋315と直角をなし容器の蓋315から離れる方向を平均流路とし、負極から正極345に流れてもよい。放電状態302では、負電流コレクタ305が、少量の負極物質を含んでもよく、または実質的に含まなくてもよく、正極345は、1種類以上の金属間化合物(例えば、層、シェル、または粒子として)を含んでもよい。充電中に、イオンは、容器の蓋320と直角をなし容器の蓋320に向かう方向を平均流路とし、正極から負極に流れてもよい。充電状態301では、負電流コレクタ305が、固体状態、半固体状態、または液体状態の負極物質(例えば、カルシウムまたはカルシウム合金)を含んでもよく、正極345が、正極物質を主に含んでもよい(例えば、正極物質は、金属間要素を実質的に含まなくてもよい)。
【0111】
電気化学セルは、イオンの平均流路が容器の蓋の面に実質的に平行になるように(例えば、蓋が上方向を向いているときに、イオンが負極と正極との間を水平に流れるように)筐体中に配列されてもよい。
図4Aと
図4Bは、充電状態401および放電状態402の例示的な電気化学セルを示している。電気化学セルの構成は、負電流リード415により筐体410の空洞内に吊り下げられた負電流コレクタ405内に含まれる負極を具備してもよい。セルは、高さ、幅、および深さ寸法を有してもよい。高さは、重力加速度のベクトルに平行な(例えば、蓋アッセンブリの面と実質的に直角をなす、または垂直な)寸法であってもよい。深さおよび幅寸法は、重力加速度のベクトルに実質的に平行でなくてもよい(例えば、蓋アッセンブリの面に平行である、または水平である)。一実施例では、深さおよび幅寸法が、同じ寸法であってもよい。一実施例では、幅がより小さい水平方向の寸法(例えば、重力加速度のベクトルと直角をなす)であってもよく、深さがより大きい水平方向の寸法(例えば、重力加速度のベクトルと直角をなす)であってもよい。この構成では、負電流コレクタ405の高さが、幅より大きくてもよい。負電流コレクタ405は、金属メッシュ、金属クロス、または拡張された金属465に取り囲まれた、または包み込まれた金属板460(例えば、鋼またはステンレス鋼)を具備してもよい。金属メッシュは、編まれた、または織られたメッシュであってもよい。一実施例では、負電流コレクタ405が、1枚以上の金属板を具備してもよい。負極は、部分的に、または完全に、溶融塩電解質445中に沈められてもよい。ガス用上部空間440が、負極と容器の蓋420との間に存在してもよい。いくつかの実施形態では、負極が、溶融電解質435中に沈められ、溶融電解質435に覆われてもよく、ガス用上部空間440が、電解質435と容器の蓋420との間にあってもよい。正極445は、筐体410の側壁に沿って空洞の底部と容器の蓋420との間に配置されてもよい。正極445は、内側部の側壁の一部に沿って配置されてもよく、または空洞の内側部の側壁全体を覆ってもよい。正極445は、側壁の約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上の領域を覆ってもよい。筐体410の側壁は、1つ以上のトラフまたはトレイ450に結合されてもよい。
図4Aは、複数のトラフ450を備える電気化学セルを示している。トラフ450は、溶接、ろう付け、または他の接着または粘着法により、筐体410の側壁に電気的に結合されてもよい。トラフ450は、正極445を保持または支持してもよい。トラフ450の内縁(例えば、負電流コレクタ405に最も近い縁)は、隔離板455(例えば、保持壁等)に結合されてもよい。あるいは、
図4Bに示されているように、電気化学セルは、1つ以上のトラフを有してもよく、正極は、セルの側壁と1枚以上の隔離板455との間にあるカソード室内に配置されてもよい。隔離板455は、金属メッシュ、金属クロス、または金属メッシュもしくはクロスの焼結層を具備してもよい。隔離板455は、正極物質が、電解質435中に拡散し、負電流コレクタ405に接触することを低減、制限、または防止してもよい。トラフ、正電流コレクタ(例えば、筐体の内側表面)、および隔離板は、腐食を低減または防止するように表面処理されてもよい。表面処理は、本明細書のどこかに記載のものであってもよい。
【0112】
正極は、側壁に隣接するシェルを具備してもよい。正極は、正極物質(例えば、固体アンチモン金属粒子)が容器の側壁に近い、または隣接する領域に沿って分散することを可能にするように構成されてもよい。セルが充電状態のとき、正極を含むセルの領域の大部分(例えば、50体積パーセント超)が、電解質で満たされてもよい。電池の放電中、電解質および/または負極からの陽イオンが正極粒子上に堆積するに従い、正極物質が膨張してもよい。放電中に、第1の電極(例えば、正極)は、約5体積パーセント(vol%)、10vol%、20vol%、30vol%、40vol%、50vol%、60vol%、70vol%、80vol%、90vol%、100vol%、125vol%、150vol%、175vol%、200vol%以上だけ膨張してもよい。第2の電極の容量濃度(表面領域を通るイオンの平均流れに直交するカソードの表面面積に基づく)は、約0.1アンペア時毎平方センチメートル(Ah/cm2)、0.2Ah/cm2、0.3Ah/cm2、0.4Ah/cm2、0.5Ah/cm2、0.6Ah/cm2、0.7Ah/cm2、0.8Ah/cm2以上であってもよい。第2の電極の容量濃度は、約0.1Ah/cm2から0.2Ah/cm2、0.1Ah/cm2から0.3Ah/cm2、0.1Ah/cm2から0.4Ah/cm2、0.1Ah/cm2から0.5Ah/cm2、0.1Ah/cm2から0.6Ah/cm2、0.1Ah/cm2から0.7Ah/cm2、または0.1Ah/cm2から0.8Ah/cm2の間であってもよい。一実施例では、第2の電極の容量濃度が、約0.16Ah/cm2から0.78Ah/cm2の間である。第2の電極の容量体積濃度は、約0.1アンペア時毎ミリリットル(Ah/mL)、0.2Ah/mL、0.3Ah/mL、0.4Ah/mL、0.5Ah/mL、0.6Ah/mL、0.7Ah/mL、0.8Ah/mL、0.9Ah/mL、1Ah/mL、1.25Ah/mL、または1.5Ah/mL以上であってもよい。
【0113】
正極物質が膨張する空間を提供してもよいセルの構成は、限定はされないが、正極物質がトラフの各々の底部上に支持され、正極物質の上部に溶融塩の層のための空間を含みうるように、セルの壁をライニングするトラフの層を用いるもの(例えば、
図4A)等、複数ある。トラフを使用するセルの構成では、トラフが、相互に接続されたトラフの側壁またはスタックに接続された個々のトラフであってもよい。正極は、トラフの上または中に配置された固体物質のスラブを具備してもよい。あるいは、または加えて、正極は、トラフの上または中に配置された固体粒子を含んでもよい。正極は、溶融電解質を取り囲むシェルとして配置されてもよい。あるいは、電解質が空洞を満たしてもよく、正極が電解質に取り囲まれてもよく、または電解質中に沈められてもよい。正極は、側壁と電気的に繋がっていてもよい。トラフを使用する筐体の構成では、正極がトラフと電気的に繋がっていてもよく、トラフが側壁と電気的に繋がっていてもよい。放電中に、イオンは、容器の蓋と平行で筐体の側壁に向かう平均流路を有し、負極から正極に流れてもよい。充電中に、イオンは、容器の蓋と平行で筐体の側壁から離れる平均流路を有し、正極から負極に流れてもよい。
【0114】
トラフは、筐体の側壁と実質的に直角をなすように取り付けられてもよい。筐体は、筐体の内側部に積層された、約1、2、5、10、15、20、50、100以上のトラフを具備してもよい。正極は、全てのトラフの上もしくは中に配置されてもよく、または選択されたトラフの上もしくは中に配置されてもよい。筐体の内側部は、正極をトラフの上または中に維持するように配置された保持壁をさらに具備してもよい。保持壁は、負極、電解質、または正極からのイオンが、壁を通って自由に流れることを可能にする多孔性物質であってもよい。いくつかの実施形態では、多孔性物質は、溶融電解質が壁を通って自由に流れることを可能にしてもよい。保持壁は、空洞の底部から蓋まで配置された物質からなる一枚の多孔性シートであってもよい。保持壁の穴は、約5ミリメートル(mm)、3mm、2mm、1mm、0.5mm、0.25、0.1mm、0.01mm、0.001mm以下の平均直径を有してもよい。保持壁は、筐体内の自立式(例えば、シースのような)構造であってもよい。あるいは、保持壁は、1つ以上のトラフの内縁に接続されてもよい。保持壁は、多孔性物質からなる1枚のシートを具備してもよい。あるいは、または加えて、保持壁は、多孔性物質の複数の区分を具備してもよい。各区分は、1つ以上のトラフに接続されてもよい。保持壁は、はんだ付け、ろう付け、溶接、または任意の他の接着法によりトラフに接続されてもよい。保持壁は、筐体と電気的に繋がっていてもよい。あるいは、保持壁は、筐体と電気的に繋がっていなくてもよい。
【0115】
セルまたは電池の断面形状は、円形、楕円形、正方形、長方形、多角形、曲線形、対称形、非対称形、または電池の設計要件に基づく任意の他の要素形状である可能性がある。一実施例では、セルまたは電池が、円形または正方形の断面を有する軸対称形である。セルまたは電池の構成要素(例えば、負電流コレクタ)は、セルまたは電池内に、軸対称に配列されてもよい。場合によっては、1つ以上の構成要素が、例えば、軸の中心から外れるように、非対称に配列されてもよい。
【0116】
正極物質と負極物質を合わせた体積は、電池の体積(例えば、輸送用容器等、電池の最も外側の筐体により画定されるような)の少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%であってもよい。場合によっては、アノード物質とカソード物質を合わせた体積が、セルの体積の約5%、10%、20%、40%、60%、または75%以上である。場合によっては、アノードと、カソードと、電解質とを除くセルの体積が、ガス用上部空間を含んでもよい。ガス用上部空間は、不活性で非反応なガスを含んでもよい。不活性ガスは、アルゴン、希ガス、またはこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。正極物質と負極物質を合わせた体積は、動作中に、正極または負極の体積(サイズ)の増大または縮小により、増大または縮小(例えば、高さにおいて)してもよい。一実施例では、放電中に、負極(放電中のアノード)の体積が、負極物質の正極(放電中のカソード)への移動により減少してもよく、このとき正極の体積は増加する(例えば、合金反応の結果として)。負極の体積の減少は、正極の体積の増加と等しくてもよく、または等しくなくてもよい。正極物質と負極物質は、互いに反応し、固体または半固体の金属間化合物を形成してもよく、それにより正極物質および/または負極物質の濃度と等しい、この濃度より低い、またはこの濃度より高い濃度を有してもよい。電気化学セルまたは電池中の物質の質量が一定であったとしても、1つ、または2つ以上の相(例えば、液体または固体)が存在してもよく、そのような各相はある物質組成を含んでもよい(例えば、アルカリ金属がセル物質および相の中に異なる濃度で存在してもよく、つまり液体金属負極が高濃度のアルカリ金属を含んでもよく、液体金属正極がアルカリ金属の合金を含んでもよく、アルカリ金属の濃度が動作中に変化してもよく、正および負の液体金属電極の金属間化合物生成物が固定または可変の化学量のアルカリ金属を含んでもよい)。相および/または物質は、異なる濃度を有してもよい。物質が、相の間、および/または電極物質の間を移動し、電極の合計体積が変化してもよい。
【0117】
場合によっては、セルは、液体、半液体(または半固体)、または固体の1種類以上の合金生成物を含む可能性がある。合金生成物は、負極、正極、および/または電解質と不混和性である可能性がある。合金生成物は、セルの充電中または放電中に、電気化学的過程から形成される可能性がある。
【0118】
合金生成物は、負極、正極、および/または電解質の要素成分を含む可能性がある。合金生成物は、負極、正極、または電解質と異なる濃度、または同じような濃度もしくは実質的に同じ濃度を有する可能性がある。合金生成物の位置は、負極、電解質、および正極の濃度に対する、合金生成物の濃度の関数となる可能性がある。合金生成物は、負極、正極、または電解質の中、または負極と電解質との間もしくは正極と電解質との間(例えば、界面)に位置する可能性がある。一実施例では、合金生成物が、正極と電解質との間の金属間層である(
図3、
図4A、および
図4Bを参照)。他の実施例では、合金生成物が、セルの化学的性質、温度、および/または充電状態に応じて、セル内の他の位置にある可能性があり、異なる化学量/組成の物質から形成される可能性がある。
【0119】
金属間層は、負極物質および正極物質に由来する物質の金属間化合物を含む可能性がある。金属間化合物は、放電中に、正の液体金属電極(この構成では、液体金属カソード)と液体金属電解質との間の界面において形成されてもよい。金属間化合物(または生成物)は、固体または半固体の可能性がある。一実施例では、金属間層が、液体金属カソードと液体金属電解質との間の界面において形成される可能性がある。金属間層の1つの表面は正極と接触していてもよく、金属間層の別の1つ表面は電解質と接触していてもよい。場合によっては、金属間層は、液体特性を呈してもよい(例えば、金属間は、半固体であってもよく、または1つ以上の隣接する相/物質よりも高い粘度または濃度であってもよい)。
【0120】
いくつかの実施形態では、正極が固体粒子の層を含んでもよく、金属間層が固体粒子の層の上部に形成されてもよい。あるいは、または加えて、金属間層は、個々の粒子の周りに形成されてもよく、および/または個々の粒子を取り巻いてもよい。代替的実施形態では、金属間層が、粒子群の周りに形成されてもよく、および/または粒子群を取り巻いてもよい。一実施例では、負極がカルシウム(Ca)またはカルシウム合金を含み、正極がアンチモン(Sb)を含み、金属間層が例えばCaSb2等のCaとSb(CaxSb、「x」は0より大きい数字)を含む。Ca||Sbの化学的性質を有するセルは、電解質中にカルシウムイオンに加えて、他の塩(例えば、CaCl2、LiCl、KCl、NaCl、SrCl2、またはこれらの組み合わせ)を含んでもよい。放電状態では、セルは負極中のCaが不足し、正極がCa-Sb合金を含み、充電中には、Caが正極から供給され、陽イオンとして電解質を通って、Caとして負電流コレクタ上に堆積する。場合によっては、放電反応の生成物は、金属間化合物(すなわち、Ca||Sbセルの化学的性質のためのCa5Sb3)であってもよく、金属間層は、正極と電解質との間の界面において成長および拡張することにより別個の固体相として発達してもよい。例えば、金属間層は、正極の上部で層として成長および拡張してもよく、または金属間層は、シェルとして正極粒子の周りおよび正極粒子内に成長してもよい。成長は、セルまたは電池の中心に位置する対称軸に対して、軸対称であっても非対称であってもよい。あるいは、固体金属間層は、1つ以上の位置(本明細書では、「核形成位置」ともいう)から始まり、金属カソードと液体電解質との間の界面に沿って発達および拡張してもよい。核形成位置は表面に沿って既定のパターンで位置してもよく、あるいは核形成位置は確率的(不規則)であってもよく、または金属カソードと液体電解質との間の界面や、セルもしくは電池内のどこかにおいて自然にもしくは誘導的に形成された欠陥により決定されてもよい。いくつかの実施例では、固体または半固体の金属間層が、水平に成長および拡大しなくてもよい。例えば、固体または半固体の金属間層は、界面にわたって均一に形成されてもよい。いくつかの実施例では、金属間化合物が、アンチモン粒子の表面上に、またはアンチモン粒子に隣接して形成され、続いてアンチモン粒子の表面から分離し、電解質と交わる一方で、場合によっては、正電流コレクタと電気的な繋がりを維持してもよい。
【0121】
固体金属間層は、放電の開始時、金属カソード粒子の外側表面の位置に対応する位置(すなわち、放電開始時の、金属カソードと電解質との間の界面)において、またはその位置の近くで発達を始めてもよく、その後、金属カソード粒子の半径方向に成長してもよい。よって、固体金属間層は、外側界面または表面と、内側界面または表面とを有してもよい。放電中に、外側界面は粒子または小粒子の半径に沿ってほぼ固定位置に留まる一方、内側界面は半径方向に移動する。場合によっては、固体金属間層は、半径方向に成長および/または変形してもよい(すなわち、金属間物質が半径方向から層に加えられる)。
【0122】
サイクル中に、金属間化合物の形成およびこれらの金属間化合物がアンチモンに逆戻りすることにより、アンチモンを含む正極粒子(例えば、アンチモンまたはアンチモン合金)の分裂が引き起こされ、最初にセルに組み込まれたものよりも小さい正極粒子(例えば、少なくとも約0.0001mm)が形成されてもよい。正極粒子は、溶融塩電解質と交わっても(例えば、取り囲まれても)よい。あるいは、または加えて、セルのサイクルが複数回繰り返された後でも、正極は実質的に全く分裂せず、小さなアンチモンまたは金属間化合物の粒子が、最初に組み込まれた粒子と実質的に同じようなサイズに維持されてもよい。よって、正極は、溶融塩電解質と交じったアンチモン、アンチモン合金、および/または金属間化合物(例えば、Ca、Li、Ba、および/またはSr、Sbを含む)の小さな粒子(例えば、少なくとも約0.0001mm)を含んでもよい。
【0123】
動作中に、正極粒子(例えば、第2の物質)が負極へとドリフトし、セル容量の損失、セル内部での短絡、漏れ電流の増加、またはこれらの任意の組み合わせが引き起こされ、電池効率の低下を引き起こしうる。正極粒子のドリフトは、第2の電極(例えば、正極)に電気的に接続された金属(例えば、ステンレス鋼または鋼)スクリーン、織られたもしくは拡張された金属メッシュ、穴のあいたシート、フェルト、またはこれらの任意の組み合わせ等の隔離板を組み込むことにより防止してもよい。
図7は、正極710の室を形成し、正極物質が電解質を通って負極715へと拡散または移動することを低減または防止する隔離板705を備える例示的な電気化学セルを示している。隔離板は、正極710がシェルとしてセルの容器720の内側表面の周りに配置されるように、筐体の内側に配置されてもよい。隔離板は、正極710の厚み725が約0.05インチ(in)、0.1in、0.15in、0.2in、0.3in、0.4in、0.5in、0.6in、0.8in、1.0in以上になるように、容器720の内側壁から離れて配置されてもよい。正極の厚み510は、1.0in、0.8in、0.6in、0.5in、0.4in、0.3in、0.2in、0.15in、0.1in、0.05in以下であってもよい。
【0124】
隔離板は、第2の電極(例えば、正極)が電気化学セルの体積に限定されるように配置されてもよい。第2の電極が限定される体積は、非拡張または非分散の第2の電極物質の体積(例えば、加熱またはセルサイクル前の第2の電極物質の最初の体積)の約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20倍以上であってもよい。一実施例では、第2の電極が限定される体積が、非拡張の第2の電極物質の体積の約8倍である。
【0125】
隔離板は、第1の電極と第2の電極との間に配置されてもよい。
図8は、シール805と、負電流コレクタ810内にある第1の電極と、第2の電極820と、負電流コレクタ810と第2の電極820との間に配置された隔離板815とを備える、例示的な電気化学セルの構成を示している。隔離板は、
図8のように、隔離板の長手方向寸法が重力加速度のベクトルと実質的に直交するように配置されてもよく、または
図4Aと
図4Bのように、隔離板の長手方向寸法が重力加速度のベクトルと実質的に平行になるように配置されてもよい。一実施例では、隔離板が、
図7に示されているように、重力加速度のベクトルと実質的に平行であり、また重力加速度のベクトルに実質的に直交する。
【0126】
隔離板は、第2の物質(例えば、正極物質)および/または金属間物質の、第1の電極および負電流コレクタへの移動または拡散を低減または防止してもよい。隔離板がない場合、金属間物質は、第1の電極に移動し、第1の電極に接触することにより、電気化学セルの短絡が起こりうる。隔離板は、第2の電極物質および/または金属間物質をセルの既定領域に含む物理的バリアとして機能してもよい。隔離板は、電解質からのイオン種(例えば、Ca2+、Li+、Na+、K+、Sr2+)と溶融塩が通り抜けることを可能にしてもよい。
【0127】
隔離板は、複数の層を具備してもよい。一実施例では、隔離板が、構造層とフィルタ層の2層を具備する。構造層は、穴のあいた板または他の多孔性剛性物質を含んでもよい。構造層は、隔離板の層の物理的歪み(例えば、たわみや曲がり)を低減または防止してもよい。板は、約5mm、4mm、3mm、2mm、1.5mm、1.2mm、1mm、0.8mm、0.5mm、0.1mm以下の厚みを有してもよい。板は、0.1mm、0.5mm、0.8mm、1mm、1.2mm、1.5mm、2mm、3mm、4mm、5mm以上の厚みを有してもよい。一実施例では、板が、約1.2mmの厚みである。板は、穴があいていてもよい(例えば、板を通る穴を含んでもよい)、または拡張された金属であってもよい。拡張された金属の抜き穴または穴は、約10mm、8mm、6mm、4mm、2mm、1mm、0.5mm以下の直径であってもよい。拡張された金属の抜き穴または穴は、約0.5mm、1mm、2mm、4mm、6mm、8mm、10mm以上の直径であってもよい。一実施例では、拡張された金属の抜き穴の直径または穴の幅が、約2mmである。抜き穴の直径は、板にわたって一定であってもよく、または板にわたって変化してもよい。板は、第2の電極物質を負電流コレクタから分離するのに適した任意のサイズであってもよい。板は、拡張された金属、畝のついたワイヤクロス、または穴を有し、機械的に適度に強い任意の他の物質に置き換えられてもよい。
【0128】
フィルタ層は、ワイヤクロス、メッシュ、フェルト、拡張された金属、内部に穴が形成された金属、または多孔性焼結物質を具備してもよい。フィルタ層は、1枚の層であってもよく、または複数の層であってもよい。一実施例では、フィルタ層が、織りパターンを有するワイヤクロスである。織りパターンは、ワイヤクロス用の平織、綾織、平畳織、および綾畳織を含んでもよい。一実施例では、フィルタ層が平畳織を含む。フィルタ層は、点溶接により板に接合されてもよい。フィルタ層は、約1、2、3、4、5、6、8、10、12層以上のワイヤクロスを具備してもよい。フィルタ層は、第2の電極(例えば、正極)に隣接する側の板の面上に配置されてもよい。フィルタ層は、約1mm、0.8mm、0.6mm、0.5mm、0.4mm、0.3mm、0.2mm、0.1mm、500μm、400μm、300μm、200μm、100μm、50μm、25μm以下の公称穴サイズを有してもよい。一実施例では、フィルタ層が、約0.8mm未満の公称穴サイズを有する。一実施例では、フィルタ層が、約25μmの公称穴サイズを有する。
図10Aは穴のあいた板とメッシュクロスを具備する2層の隔離板の上面図であり、
図10Bは2層の隔離板の側面図である。隔離板の上面は、穴のあいた板を具備し、底面はワイヤクロスを具備する。フィルタ層は、SUS304のステンレス鋼、SUS304Lのステンレス鋼、SUS316のステンレス鋼、グラファイトフェルト、または軟鋼を含んでもよい。一実施例では、フィルタ層が、グラファイトフェルトを具備する。構造層および/またはフィルタ層は、表面処理またはコーティングされた表面であってもよい。表面処理またはコーティングは、本明細書のどこかに記載の任意の表面処理またはコーティングであってもよい。一実施例では、構造層とフィルタ層が、ボロナイジングされる。
【0129】
多孔性金属隔離板は、正極粒子の正極から負極への移動を減速または停止させるのに十分な小ささの穴を含んでもよい。金属隔離板の十分に小さい穴のサイズは、ほとんどの正極粒子よりも小さく、それにより正極粒子が金属隔離板を通り抜けることを物理的に阻止してもよい。あるいは、または加えて、金属隔離板の穴は、隔離板にわたる溶融塩の対流を減速させるために十分な小ささであってもよく、それにより電解質の対流による正極粒子の負極への流れを低減または防止してもよい。あるいは、または加えて、金属隔離板の穴は、隔離板の極性やカソード粒子の表面電荷に基づく静電反発力等の間接的な物理的手段により、正極粒子が隔離板を通る流れを減速または低減させるために十分な小ささであってもよい。一実施形態では、セルの筐体の底部上の固体正極粒子の層に並んで配列されたセル(例えば、
図3)が、正極粒子の上部に配置されたステンレス鋼メッシュの層をさらに具備してもよく、それにより正極粒子が負極にまでドリフトすることを防止してもよい。同様の方法を、イオンの流路がセルの蓋の方向と平行であり(例えば、
図4)、多孔性金属隔離板が正極と負極との間に配置されるセル構成において使用してもよく、それにより金属隔離板が正極と電気的に接続され、負極と電気的に絶縁されることにより、正極粒子が負極に流れることを防止してもよい。
【0130】
一実施例では、セルが、約500℃で動作してもよく、ステンレス鋼(例えば、SUS304のステンレス鋼)のセル本体と、窒化アルミニウムセラミックと銀ベースまたはチタンベースのろう付け用合金とを含むセラミックと金属のろう付け用シールと、多孔性ステンレス鋼のシート(例えば、穴のあいた、または拡張された金属シート)から作製された構成要素を具備する負電流コレクタを備えるカルシウム-リチウム合金の負極と、固体アンチモン粒子を含む正極と、約35mol%の塩化リチウムと約65mol%の塩化カルシウムとを含む電解質とを具備してもよく、セル本体と接合され、正極と電気的に接続された多孔性金属(例えば、ステンレス鋼)の隔離板を具備してもよい。一実施例では、セルが、約500℃で動作してもよく、ステンレス鋼(例えば、SUS304のステンレス鋼)のセル本体と、窒化アルミニウムセラミックと銀ベースまたはチタンベースのろう付け用合金とを含むセラミックと金属のろう付け用シールと、多孔性ステンレス鋼のシート(例えば、穴のあいた、または拡張された金属シート)から作製された構成要素を具備する負電流コレクタを備えるカルシウム金属またはカルシウム-マグネシウム金属合金の負極と、固体アンチモン粒子を含む正極と、少なくとも約30mol%の塩化カルシウムと少なくとも約30mol%の塩化ストロンチウムとを含む電解質とを具備してもよく、約10mol%の塩化カリウムを含んでもよく、セル本体と接合され、正極と電気的に接続された多孔性金属(例えば、ステンレス鋼)の隔離板を具備してもよい。
【0131】
カソードに関して記載された開示の任意の態様は、少なくともいくつかの構成において、アノードにも同じように適用されてもよい。同様に、1つ以上の電池の電極および/または電解質は、代替的構成において液体でなくてもよい。一実施例では、電解質が、ポリマー、ゲル、またはペーストである可能性がある。電解質は、イオンを含む液体電解質、または有機物ベースの電解質であってもよい。さらなる実施例では、少なくとも1つの電池の電極が、固体またはゲルである可能性がある。さらに、いくつかの実施例では、電極および/または電解質が、金属を含まなくてもよい。本開示の態様は、液体金属電池に制限されることなく、様々なエネルギー貯蔵/変換装置に応用可能である。
【0132】
電気化学セルは、直列および/または並列に配列され、電気化学エネルギー貯蔵システム(すなわち、電池)を形成する可能性がある。エネルギー貯蔵システムは、枠に取り囲まれた電気化学セルのパックおよび/またはコアを具備する可能性がある。
【0133】
エネルギー貯蔵システムおよびコンピュータシステム
電気化学セルは、様々な構成において、直列および並列に取り付けられ、パック、トレイ、コア、または電気化学システムを作る可能性がある。電気化学セルの様々な群の数および配列は、所望のシステム電圧およびエネルギー貯蔵容量を作るために選択される可能性がある。その後、パック、トレイ、コア、またはシステムは、高温断熱された状態で収容され、充放電するセルから発生するエネルギーを用いて自己加熱をすることができるシステムを作る可能性がある。
【0134】
パックまたはトレイそのものが、母線を介して互いに垂直および/または水平に接続される可能性がある(例えば、通常、ろう付け等によりほぼ直接接続される、パックまたはトレイ内におけるセルとセルの接続とは異なる)。場合によっては、母線は、可撓性である、または可撓性の部分を含む(例えば、加熱および動作中にシステムが非等温拡張することに起因する)。
【0135】
さらに、本明細書において、本開示のエネルギー貯蔵システムを制御するようにプログラムされたコンピュータを含む制御システムが提供される。エネルギー貯蔵システムは、1つ以上の電気化学エネルギー貯蔵セルを備える電気化学エネルギー貯蔵装置を含む可能性がある。装置は、装置の充放電を調節するコンピュータシステムに結合される可能性がある。コンピュータシステムは、1つ以上のコンピュータプロセッサと、コンピュータプロセッサに結合された記憶域とを含む可能性がある。記憶域は、機械により実行可能なコードを含む。機械により実行可能なコードは、コンピュータプロセッサにより実行されることにより、上記または本明細書のどこかに記載の任意の方法を実行する。
【0136】
エネルギー貯蔵システムは、1つ以上の電気化学エネルギー貯蔵セルを備える電気化学エネルギー貯蔵装置を含む可能性がある。装置は、装置の充放電を調節するコンピュータシステムに結合される可能性がある。コンピュータシステムは、1つ以上のコンピュータプロセッサと、コンピュータプロセッサに結合された記憶域とを含む可能性がある。記憶域は、機械により実行可能なコードを含む。機械により実行可能なコードは、コンピュータプロセッサにより実行されることにより、上記または本明細書のどこかに記載の任意の方法を実行する。
【0137】
図10は、本開示のエネルギー貯蔵システムの1つ以上のプロセスパラメータを制御または調節するようにプログラムされ、またはその他の方法で構成されたシステム1000を示している。システム1000は、本明細書に開示の方法を実行するようにプログラムされたコンピュータサーバ(「サーバ」)1001を含む。サーバ1001は、中央処理装置(CPU、また本明細書では「プロセッサ」および「コンピュータプロセッサ」ともいう)1005を含み、中央処理装置1005は、シングルコアもしくはマルチコアプロセッサ、または並列処理のための複数のプロセッサである可能性がある。サーバ1001は、メモリ1010(例えば、ランダム・アクセス・メモリ、リード・オンリー・メモリ、フラッシュメモリ)と、電子記憶装置1015(例えば、ハードディスク)と、1つ以上の他のシステムと通信するための通信インターフェイス1020(例えば、ネットワークアダプタ)と、キャッシュ、他のメモリ、データ記憶装置および/または電子ディスプレイアダプタ等の周辺装置1025とをさらに含む。メモリ1010、記憶装置1015、インターフェイス1020、および周辺装置1025は、マザーボード等の通信バス(実線)を介してCPU1005と繋がっている。記憶装置1015は、データを記憶するためのデータ記憶装置(または、データリポジトリ)である可能性がある。サーバ1001は、通信インターフェイス1020の支援により、コンピュータネットワーク(「ネットワーク」)1030に動作可能に結合される可能性がある。ネットワーク1030は、インターネット、インターネットおよび/またはエクストラネット、またはインターネットと繋がったイントラネットおよび/またはエクストラネットである可能性がある。場合によっては、ネットワーク1030は、遠距離電気通信および/またはデータネットワークである。ネットワーク1030は1つ以上のコンピュータサーバを含む可能性があり、1つ以上のコンピュータサーバはクラウドコンピューティング等の分散型計算方式を可能にする可能性がある。サーバ1001の支援がある場合、ネットワーク1030は、ピア・トゥ・ピア・ネットワークを実行する可能性があり、ピア・トゥ・ピア・ネットワークは、サーバ1001に結合された装置がクライアントまたはサーバとして挙動することを可能にしてもよい。サーバ1001は、直接的に、またはネットワーク1030を介して、エネルギー貯蔵システム1035に結合される可能性がある。
【0138】
記憶装置1015は、エネルギー貯蔵システム1035のプロセスパラメータを記憶する可能性がある。プロセスパラメータは、充放電パラメータを含む可能性がある。場合によっては、サーバ1001は、イントラネットまたはインターネットを介してサーバ1001と繋がっている遠隔サーバ上に位置する等、サーバ1001の外にある1つ以上の追加のデータ記憶装置を含む可能性がある。
【0139】
サーバ1001は、ネットワーク1030を介して、1つ以上の遠隔コンピュータシステムと通信する可能性がある。図示された実施例では、サーバ1001が、遠隔コンピュータシステム1040と繋がっている。遠隔コンピュータシステム1040は、例えば、パーソナルコンピュータ(例えば、ポータブルPC)、スレートもしくはタブレットPC(例えば、アップル社のiPad(登録商標)、サムスン社のGalaxy Tab(登録商標))、電話、スマートフォン(例えば、アップル社のiPhone(登録商標)、アンドロイド搭載デバイス、ブラックベリー(登録商標))、または個人用携帯情報端末である可能性がある。
【0140】
いくつかの状況では、システム1000が、1つのサーバ1001を含む。別の状況では、システム1000が、イントラネットおよび/またはインターネットを介して互いに繋がった複数のサーバを含む。
【0141】
本明細書に記載の方法は、例えば、メモリ1010または電子記憶装置1015等のサーバ1001の電子記憶位置に記憶された、機械(またはコンピュータプロセッサ)により実行可能なコード(またはソフトウェア)により実行される可能性がある。使用中に、コードは、プロセッサ1005により実行される可能性がある。場合によっては、コードは、記憶装置1015から検索され、プロセッサ1005がすぐにアクセスできるようにメモリ1010に記憶される可能性がある。いくつかの状況では、電子記憶装置1015が排除される可能性があり、機械により実行可能な命令がメモリ1010に記憶される。あるいは、コードは、第2のコンピュータシステム1040において実行される可能性がある。
【0142】
コードは、事前コンパイルされ、コードを実行するように適合されたプロセッサを有する機械と共に使用されるように構成される可能性がある、または実行時間中にコンパイルされる可能性がある。コードは、事前コンパイル方式または同時コンパイル方式でコードを実行可能にするように選択される可能性があるプログラミング言語で提供される可能性がある。
【0143】
サーバ1001等の本明細書に提示のシステムおよび方法の態様は、プログラミングにより具体化される可能性がある。技術の様々な態様は、典型的には、機械可読媒体の一種として実行または具体化される機械(またはプロセッサ)により実行可能なコードおよび/または関連するデータの形式の「製品」または「製造物品」として考えられてもよい。機械により実行可能なコードは、そのようなメモリ(例えば、リード・オンリー・メモリ、ランダム・アクセス・メモリ、フラッシュメモリ)またはハードディスクの電子記憶装置に記憶される可能性がある。「記憶」用の媒体は、コンピュータやプロセッサ等の任意または全ての有形メモリ、または様々な半導体メモリ、テープドライブ、ディスクドライブ等のそれらに関連するモジュールであって、ソフトウェアプログラミング用にいつでも非一時的な記憶装置を提供してもよく、モジュールを含む可能性がある。ソフトウェアの全てまたは部分は、インターネットまたは様々な他の電気通信網を介して、時々、通信させてもよい。そのような通信により、例えば、1つのコンピュータまたはプロセッサから別のコンピュータまたはプロセッサに、例えば、管理サーバまたはホストコンピュータからアプリケーションサーバのコンピュータプラットフォームにソフトウェアをロードすることが可能になってもよい。よって、ソフトウェア要素を持ってもよい別のタイプの媒体は、例えば、有線および光通信網および様々なエアリンクを介し、ローカル装置間の物理的インターフェイスを介して使用される光波、電気波、および電磁波を含む。有線または無線リンク、光リンク等のそのような波を持つ物理要素は、ソフトウェアを持つ媒体として考えられてもよい。本明細書で使用されるように、非一時的な有形「記憶」媒体に限定されない限り、コンピュータまたは機械「可読媒体」等の用語は、プロセッサに実行のための命令を提供することに関与する任意の媒体を指す。
【0144】
よって、コンピュータにより実行可能なコード等の機械可読媒体は、限定はされないが、有形記憶媒体、搬送波媒体、または物理的伝達媒体を含む多くの形態を取ってもよい。不揮発性記憶媒体は、例えば、図示されているように、データベース等を実装するために使用されてもよく、任意の(1または複数の)コンピュータ等の中の任意の記憶装置等の光または磁気ディスクを含む。揮発性記憶媒体は、そのようなコンピュータプラットフォームのメインメモリ等のダイナミックメモリを含む。有形伝達媒体は、コンピュータシステム内にバスを具備するワイヤを含む、銅ワイヤと光ファイバの共軸ケーブルを含む。搬送波伝達媒体は、電気もしくは電磁信号、または無線周波数(RF)および赤外線(IR)データ通信中に生成される波等の音波もしくは光波の形態を取ってもよい。よって、コンピュータ可読媒体の一般的な形態は、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、任意の他の磁気媒体、CD-ROM、DVDもしくはDVD-ROM、任意の他の光媒体、パンチカード紙テープ、穴のパターンを有する任意の他の物理的記憶媒体、RAM、ROM、PROMおよびEPROM、FLASH-EPROM、任意の他のメモリチップもしくはカートリッジ、搬送波伝達データもしくは命令、そのような搬送波を伝達するケーブルもしくはリンク、またはコンピュータがプログラミングコードおよび/またはデータを読み出しうる任意の他の媒体を含む。コンピュータ可読媒体のこれらの形態の多くは、プロセッサに実行させるための1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスを保持することに関与していてもよい。
【0145】
エネルギー貯蔵システムの様々なパラメータが、ユーザの電子装置のユーザインターフェイス(UI)上でユーザに提示される可能性がある。UIの例は、限定はされないが、グラフィカルユーザインターフェイス(GUI)、およびウェブベースのユーザインターフェイスを含む。UI(例えば、GUI)は、ユーザの電子装置のディスプレイ上に提示される可能性がある。ディスプレイは、静電容量式または抵抗式のタッチディスプレイである可能性がある。そのようなディスプレイは、本開示の他のシステムおよび方法と共に使用される可能性がある。
【0146】
本開示のシステム、装置、および/または方法は、他のシステム、装置、および/または方法と組み合わせてもよく、または他のシステム、装置、および/または方法により変更されてもよい。他のシステム、装置、および/または方法は、例えば、米国特許第3,663,295号明細書(“STORAGE BATTERY ELECTROLYTE”)、米国特許第3,775,181号明細書(“LITHIUM STORAGE CELLS WITH A FUSED ELECTROLYTE”)、米国特許第8,268,471号明細書(“HIGH-AMPERAGE ENERGY STORAGE DEVICE WITH LIQUID METAL NEGATIVE ELECTRODE AND METHODS”)、米国特許出願公開第2011/0014503号明細書(“ALKALINE EARTH METAL ION BATTERY”)、米国特許出願公開第2011/0014505号明細書(“LIQUID ELECTRODE BATTERY”)、および米国特許出願公開第2012/0104990号明細書(“ALKALI METAL ION BATTERY WITH BIMETALLIC ELECTRODE”)に記載のものであり、これらの各文献は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0147】
本開示のエネルギー貯蔵装置は、電力網規模の環境、または独立型の環境において使用されてもよい。本開示のエネルギー貯蔵装置は、場合によっては、スクーター、オートバイ、車、トラック、電車、ヘリコプター、飛行機等の動力乗り物、およびロボット等の他の機械装置に電力を供給するために使用される可能性がある。
【0148】
本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態の記載を目的として使用され、本発明の範囲の限定を意図しないことを理解されたい。本明細書で使用される、「一つの(「a」または「an」)」および「その(「the」)」という単数形は、文脈から単数であると明確に分かる場合以外は、複数の意味も含むことに留意されたい。さらに、明確にそうでないと記載されていない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
【0149】
特定の実施態様について図示および記載してきたが、これらについて、様々な変更がなされる可能性があり、また様々な変更が考えられることを上記より理解されたい。さらに、本発明は、本明細書に提示の特定の実施例により限定されることを意図していない。本発明は上記の明細書を参照しながら記載してきたが、本明細書の好ましい実施形態の記載および図示は、限定的な意味で解釈されることを意味していない。さらに、本発明の全ての態様は、本明細書中の特定の描写、構成、または様々な条件および変数に依存する相対的比率に限定されないことを理解されたい。本発明の実施形態の形式および詳細についての様々な変更は、当業者にとって明らかであろう。よって、本発明は、任意のそのような変更例、変形例、および等価例をさらに含むことが考えられる。添付の特許請求の範囲は、本発明の範囲を画定し、特許請求の範囲内の方法および構造ならびにそれらの等価物は、本発明の範囲に含まれることが意図される。