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特許7201625脂肪族不飽和アルコキシシラン及び水素末端オルガノシロキサンオリゴマーをヒドロシリル化して、コバルト触媒を使用してポリオルガノシロキサンを官能化するのに有用なアルコキシシリル末端ポリマーを調製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】脂肪族不飽和アルコキシシラン及び水素末端オルガノシロキサンオリゴマーをヒドロシリル化して、コバルト触媒を使用してポリオルガノシロキサンを官能化するのに有用なアルコキシシリル末端ポリマーを調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/08 20060101AFI20221227BHJP
   C08G 77/50 20060101ALI20221227BHJP
   C08L 83/14 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
C08G77/08
C08G77/50
C08L83/14
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019568139
(86)(22)【出願日】2018-06-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 US2018039380
(87)【国際公開番号】W WO2019005713
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-14
(31)【優先権主張番号】62/524,639
(32)【優先日】2017-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オルセン、マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ゴーンドローン、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、シアオユアン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン、ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】マルシャン、クリスティーヌ
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05233071(US,A)
【文献】特開2000-297064(JP,A)
【文献】特表2008-546860(JP,A)
【文献】国際公開第01/066624(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00 ~ 77/62
C08L 83/00 ~ 83/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーを調製する方法であって、前記方法が、
1)
(A)単位式:
(HR SiO1/2(R SiO1/2(HRSiO2/2(R SiO2/2(RSiO3/2(HSiO3/2(SiO4/2
[式中、下付き文字e、f、g、h、i、j、及びkは、5≧e≧0、5≧f≧0、10≧g≧0、5≧h≧0であり、下付き文字iが0又は1であり、5≧j≧0であり、下付き文字kが0又は1であるような値を有し、ただし、数値(e+g+j)≧2、及び数値(e+f+g+h+i+j+k)≦50であり、各Rは、独立して、1~18個の炭素原子を有する一価炭化水素基又は1~18個の炭素原子を有する一価ハロゲン化炭化水素基である]のポリオルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーと、
(B)式:
【化1】
[式中、各Rは、独立して、2~18個の炭素原子を有する脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、各R は、独立して、1~18個の炭素原子を有する一価炭化水素基又は1~18個の炭素原子を有する一価ハロゲン化炭化水素基であり、各Rは、独立して、1~18個の炭素原子を有する一価炭化水素基であり、下付き文字cは、0又は1である]の脂肪族不飽和アルコキシシランと、
(C)ジコバルトヘキサカルボニルジフェニルホスフィノアルカンを含むコバルト錯体と、を含む出発原料を反応させることによって、前記アルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーを含む反応生成物を調製する工程と、
所望により、2)工程1)で調製した前記アルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーを単離する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記コバルト錯体が、ジコバルトヘキサカルボニル1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)メタンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーが、単位式:
【化2】
[式中、
、R、並びに下付き文字c、f、h、i、及びkは、上述のとおりであり、下付き文字bは、0~2であり、m>0であり、数値(m+n+o+p)=(e+g+j)であり、各Dは、独立して、2~18個の炭素原子を有する二価炭化水素基であり、ただし、工程1)で生成された全てのD基の>90モル%は、直鎖状である]を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
(A)前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーが、式:
【化3】
[式中、下付き文字aは、0~10である]を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記アルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーが、式:
【化4】
[式中、Dは、2~18個の炭素原子を有する二価炭化水素基であり、ただし、Dの>90モル%は、直鎖状二価炭化水素基である]を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
(A)前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーが、単位式:
(HR SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2)[式中、下付き文字qは、0~3である]を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
(A)前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーが、式:
【化5】
を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーが、単位式:(R SiO2/2(RHSiO2/2[式中、下付き文字sは、≧3であり、下付き文字vは、≧0である]の環式オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記アルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーが、単位式:
【化6】
[式中、下付き文字tは、≧0であり、下付き文字uは、≧1であり、数値(t+u)=sである]を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ポリアルコキシ官能性ポリオルガノシロキサンを調製する方法であって、前記方法が、
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法工程により、アルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーを調製する工程を含み、
(1)
(a)前記アルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーと、
(b)1分子当たり、平均して少なくとも2個の脂肪族不飽和一価炭化水素基を有するポリオルガノシロキサンと、
(c)ヒドロシリル化反応触媒と、を含む出発原料を反応させる工程、を更に含む、方法。
【請求項11】
出発原料(b)が、式:
【化7】
[式中、各R は、独立して、2~18個の炭素原子を有する脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、各R は、独立して、1~18個の炭素原子を有する一価炭化水素基又は1~18個の炭素原子を有する一価ハロゲン化炭化水素基であり、下付き文字nは、1~2,000である]のポリジオルガノシロキサンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリアルコキシ官能性ポリオルガノシロキサンが、式:
【化8】
[式中、各Dは、独立して、二価炭化水素基である]を有する、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
縮合反応硬化性組成物の作製方法であって、
請求項10~12のいずれか一項に記載の方法工程により、ポリアルコキシ官能性ポリオルガノシロキサンを調製する工程を含み、
(i)前記ポリアルコキシ官能性ポリオルガノシロキサンと、
(ii)縮合反応触媒と、を含む出発原料を混合すること、を更に含む、方法。
【請求項14】
前記縮合反応触媒が、チタネート触媒を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、1つ以上の追加出発原料を更に含み、前記1つ以上の追加出発原料は、(iii)充填剤、(iv)充填剤処理剤(v)架橋剤、(vi)接着促進剤、(vii)乾燥剤、(viii)増量剤、可塑剤、又はこれらの組み合わせ、(ix)殺生物剤、(x)難燃剤、(xi)鎖延長剤、(xii)末端封鎖剤、(xiii)非反応性結合剤、(xiv)劣化防止添加剤、(xv)水放出剤、(xvi)顔料、(xvii)レオロジー添加剤、(xviii)賦形剤、(xix)粘着付与剤、(xx)腐食防止剤、並びに(iii)、(iv)、(v)、(vi)、(vii)、(viii)、(ix)、(x)、(xi)、(xii)、(xiii)、(xiv)、(xv)、(xvi)、(xvii)、(xviii)、(xix)、及び(xx)のうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2017年6月26日に出願された米国特許仮出願第62/524639号の優先権を主張するものである。米国特許仮出願第62/524639号は参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
以下に示す反応スキームでは、白金触媒を使用したビニルトリメトキシシランと1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンとのヒドロシリル化反応により、反応生成物としてα-付加分枝状異性体及びβ-付加直鎖状異性体を含む、混合物が得られる。
【化1】
【0003】
しかしながら、この方法には、選択性によりβ-付加体/α-付加体が65/35のモル比でもたらされるという欠点がある。加えて、Pt触媒の迅速な除去又は不活化なく、「過剰ヒドロシリル化」が発生し、水素末端オルガノシロキサンオリゴマー上の両方の水素原子がビニルトリメトキシシラン分子と反応した副生成物、すなわち、αα付加体、αβ付加体、βα付加体、及び/又はββ付加体をもたらす。これらの副生成物の生成を最小限に抑えるための1つの方法は、モル過剰の1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンを使用することである。しかしながら、この方法には、プロセスの不効率という欠点、及び比較的大量の未反応の1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンを回収する必要があるという欠点がある。
【0004】
以下の利点:1)高選択性及び/又は高収率でβ-付加体を生成すること、及び2)触媒の存在下で安定なβ-付加体を生成すること、のうちの1つ以上を提供することが、業界で必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
アルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーを含む生成物を選択的に調製する方法は、
1)
(A)単位式(I):
(HR SiO1/2(R SiO1/2(HRSiO2/2(R SiO2/2(RSiO3/2(HSiO3/2(SiO4/2[式中、下付き文字e、f、g、h、i、j、及びkは、5≧e≧0、5≧f≧0、10≧g≧0、5≧h≧0であり、下付き文字iが0又は1であり、5≧j≧0であり、下付き文字kが0又は1であるような値を有し、ただし、数値(e+g+j)≧2、及び数値(e+f+g+h+i+j+k)≦50であり、各Rは、独立して、1~18個の炭素原子を有する一価炭化水素基又は1~18個の炭素原子を有する一価ハロゲン化炭化水素基である]のポリオルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーと、
(B)式(II):
【化2】
[式中、Rは、上述のとおりであり、各Rは、独立して、2~18個の炭素原子を有する脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、各Rは、独立して、1~18個の炭素原子を有する一価炭化水素基であり、下付き文字cは、0又は1である]の脂肪族不飽和アルコキシシランと、
(C)コバルト錯体と、を含む出発原料を反応させることによって、アルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーを含む反応生成物を調製する工程と、
所望により、2)工程1)で調製したアルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーを単離する工程と、を含む。
【0006】
アルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーは、単位式:
【化9】
[式中、
、R、並びに下付き文字c、f、h、i、及びkは、上述のとおりであり、下付き文字bは、0~2であり、m>0であり、数値(m+n+o+p)=(e+g+j)であり、各Dは、独立して、2~18個の炭素原子を有する二価炭化水素基であり、ただし、工程1)で生成された全てのD基の>90モル%は、直鎖状である]を有する。
【0007】
アルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーは、ポリアルコキシ官能性ポリオルガノシロキサンを調製する方法において有用である。ポリアルコキシ官能性ポリオルガノシロキサンを調製する方法は、
(1)
(a)上述のアルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーと、
(b)1分子当たり、平均して少なくとも2個の脂肪族不飽和一価炭化水素基を有するポリオルガノシロキサンと、
(c)ヒドロシリル化反応触媒と、を含む出発原料を反応させる工程、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
アルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーを含む生成物を選択的に調製する方法は、
1)
(A)単位式(I):
(HR SiO1/2(R SiO1/2(HRSiO2/2(R SiO2/2(RSiO3/2(HSiO3/2(SiO4/2[式中、下付き文字e、f、g、h、i、j、及びkは、5≧e≧0、5≧f≧0、10≧g≧0、5≧h≧0であり、下付き文字iが0又は1であり、5≧j≧0であり、下付き文字kが0又は1であるような値を有し、ただし、数値(e+g+j)≧2、及び数値(e+f+g+h+i+j+k)≦50であり、各Rは、独立して、1~18個の炭素原子を有する一価炭化水素基又は1~18個の炭素原子を有する一価ハロゲン化炭化水素基である]のポリオルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーと、
(B)式(II):
【化4】
[式中、各Rは、独立して、2~18個の炭素原子を有する脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、各Rは、独立して、1~18個の炭素原子を有する一価炭化水素基であり、下付き文字cは、0又は1である]の脂肪族不飽和アルコキシシランと、
(C)コバルト錯体と、を含む出発原料を反応させることによって、アルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーを含む反応生成物を調製する工程と、
所望により、2)工程1)で調製したアルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーを単離する工程と、を含む。
【0009】
上述の方法において有用である成分(A)は、単位式(III):
(HR SiO1/2(R SiO1/2(HRSiO2/2(R SiO2/2(RSiO3/2(HSiO3/2(SiO4/2[式中、下付き文字e、f、g、h、i、j、及びkは、5≧e≧0、5≧f≧0、10≧g≧0、5≧h≧0であり、下付き文字iが0又は1であり、5≧j≧0であり、下付き文字kが0又は1であるような値を有し、ただし、数値(e+g+j)≧2、及び数値(e+f+g+h+i+j+k)≦50であり、各Rは、独立して、1~18個の炭素原子を有する一価炭化水素基又は1~18個の炭素原子を有する一価ハロゲン化炭化水素基である]のポリオルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーである。あるいは、Rの一価炭化水素基は、1~12個の炭素原子、あるいは1~10個の炭素原子を有する。
【0010】
に好適な一価炭化水素基としては、1~6個の炭素原子を有するアルキル基及び6~10個の炭素原子を有するアリール基が挙げられるが、これらに限定されない。Rに好適なアルキル基は、メチル、エチル、プロピル(例えば、イソプロピル及び/又はn-プロピル)、ブチル(例えば、イソブチル、n-ブチル、tert-ブチル及び/又はsec-ブチル)、ペンチル(例えば、イソペンチル、ネオペンチル及び/又はtert-ペンチル)、ヘキシル、並びに6個の炭素原子を有する分枝状飽和炭化水素基によって例示されるが、これらに限定されない。Rに好適なアリール基は、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、ベンジル、及びジメチルフェニルによって例示されるが、これらに限定されない。Rに好適な一価ハロゲン化炭化水素基としては、1~6個の炭素原子を有するハロゲン化アルキル基又は6~10個の炭素原子を有するハロゲン化アリール基が挙げられるが、これらに限定されない。Rに好適なハロゲン化アルキル基は、1つ以上の水素原子がF又はClなどのハロゲン原子で置換される上述のアルキル基によって例示されるが、これらに限定されない。例えば、フルオロメチル、2-フルオロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、4,4,4-トリフルオロブチル、4,4,4,3,3-ペンタフルオロブチル、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフルオロペンチル、6,6,6,5,5,4,4,3,3-ノナフルオロヘキシル、及び8,8,8,7,7-ペンタフルオロオクチル、2,2-ジフルオロシクロプロピル、2,3-ジフルオロシクロブチル、3,4-ジフルオロシクロヘキシル、及び3,4-ジフルオロ-5-メチルシクロヘプチル、クロロメチル、クロロプロピル、2-ジクロロシクロプロピル、及び2,3-ジクロロシクロペンチルは、好適なハロゲン化アルキル基の例である。Rに好適なハロゲン化アリール基は、1つ以上の水素原子がF又はClなどのハロゲン原子で置換される上述のアリール基によって例示されるが、これらに限定されない。例えば、クロロベンジル及びフルオロベンジルは、好適なハロゲン化アリール基である。あるいは、各Rは、独立して、メチル、エチル、又はプロピルである。Rの各例は、同じであっても又は異なっていてもよい。あるいは、各Rは、メチル基である。好適なヒドリドシランの例としては、トリメチルシラン及びトリメトキシシランが挙げられる。
【0011】
代替的実施形態では、成分(A)は、式(IV):
【化5】
[式中、各Rは、独立して、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、6~10個の炭素原子を有するアリール基、1~6個の炭素原子を有するハロゲン化アルキル基、又は6~10個の炭素原子を有するハロゲン化アリール基であり、下付き文字aは、最大20の整数である]のα,γ-水素末端オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーである。あるいは、下付き文字aは、0~20であり、あるいは下付き文字aは、0~10であり、あるいは、下付き文字aは、0~5であり、あるいは下付き文字aは、0又は1である。あるいは、下付き文字aは、2~10であってもよく、あるいは、下付き文字aは、2~5である。好適なオルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーの例としては、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,1,3,3,5,5-ヘキサエチルトリシロキサン、及び1,1,3,3-テトラエチルジシロキサンが挙げられる。あるいは、成分(A)は、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンであってもよい。
【0012】
式(IV)のオルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーが本方法で使用されるとき、生成物は、式(V):
【化6】
[式中、R並びに下付き文字a及びcは、上述のとおりであり、Dは、2~18個の炭素原子を有する二価炭化水素基であり、ただし、Dの>90モル%は、直鎖状二価炭化水素基である]の生成されたアルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーを含む。
【0013】
代替的実施形態では、成分(A)オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーは、単位式(VI):(HR SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2)[式中、下付き文字qは、0~3である]を有する。この単位式のポリオルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーは、式(VII):
【化7】
[式中、Rは、上述のとおりである]を有してもよい。このようなオルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーの例としては、式(MeHSiO1/2(PrSiO3/2)[式中、Meはメチル基を表し、Prはプロピル基を表す]のシロキサンが挙げられる。
【0014】
上述の方法において成分A)に使用されるオルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーが、単位式(VI)又は(VII)を有するとき、生成物は、式(VIII)のアルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーを含んでもよく、式(VIII)は:
【化8】
[式中、R及び下付き文字cは、上述のとおりであり、各Dは、独立して、2~18個の炭素原子を有する二価炭化水素基であり、ただし、Dの>90モル%は、直鎖状二価炭化水素基である]である。
【0015】
本発明の代替的実施形態では、成分(A)オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーは、単位式(IX):(HR SiO1/2(R SiO2/2(HRSiO2/2[式中、Rは、上述のとおりであり、下付き文字qは、0~3であり、下付き文字rは、0~3である]を有してもよい。この実施形態では、オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーは、式(X):
【化9】
[式中、Rは、上述のとおりである]を有してもよい。このようなオルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーの例としては、1,1,3,5,5-ペンタメチルトリシロキサンが挙げられる。この実施形態では、生成物は、式(XI)、式(XII)のアルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマー、又はこれらの組み合わせを含み、式(XI)は、
【化10】
式(XII)は、
【化11】
[式中、R及び下付き文字cは、上述のとおりである]である。
【0016】
代替的実施形態では、成分(A)オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーは、環式である。環式オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーは、単位式(XIII):(R SiO2/2(RHSiO2/2[式中、Rは、上述のとおりであり、下付き文字sは、≧3であり、下付き文字vは、≧0である]を有してもよい。あるいは、下付き文字sは、3~14、あるいは3~9、あるいは3~6、あるいは3~5、あるいは4であってもよい。あるいは、下付き文字vは、0~14、あるいは0~9、あるいは0~6、あるいは0~5、あるいは0であってもよい。この環式オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーが成分(A)として使用されるとき、生成物は、単位式(XIV):
【化12】
[式中、R、R、D、並びに下付き文字c及びvは、上述のとおりであり、下付き文字tは、0以上であり、下付き文字uは、1以上であり、数値(t+u)=sである]のアルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーを含んでもよい。
【0017】
上述の方法において有用な成分(B)は、式(XV):R Si(OR(3-d)[式中、各Rは、独立して、一価炭化水素基又は一価ハロゲン化炭化水素基(上述のように)であり、各Rは、独立して、脂肪族不飽和炭化水素基であり、各Rは、独立して、一価炭化水素基であり、下付き文字dは、0~1の整数である]の脂肪族不飽和アルコキシシランである。Rの脂肪族不飽和炭化水素基は、アルケニル基又はアルキニル基であってもよい。好適なアルケニル基としては、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、及びヘキセニル、あるいはビニル、アリル、又はヘキセニル、並びにあるいはビニルが挙げられる。Rの一価炭化水素基は、Rについて上述した一価炭化水素基であってもよい。
【0018】
成分(B)は、脂肪族不飽和アルコキシシラン、例えば、ジアルケニルジアルコキシシランなどのジアルコキシシラン;アルケニルトリアルコキシシランなどのトリアルコキシシラン;によって例示されるもの、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。好適な脂肪族不飽和アルコキシシランの例としては、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ヘキセニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ヘキセニルメチルジメトキシシラン、ヘキセニルトリエトキシシラン、及びこれらの組み合わせが挙げられ、あるいはビニルトリメトキシシランが挙げられる。
【0019】
成分(A)及び成分(B)は、成分(A):成分(B)の相対モル量が1:1~>1:1、あるいは1以上、すなわち、(A):(B)比≧1:1で存在する。あるいは、(A):(B)比は、5:1~1:1、あるいは2:1~1:1、あるいは1.5:1~1:1の範囲であってもよい。理論に束縛されるものではないが、成分(A)の成分(B)に対するモル過剰は、生成物中の収率に好都合に影響を及ぼすことができると考えられる。
【0020】
本明細書に記載の方法及び組成物において有用な成分(C)は、コバルト錯体である。コバルト錯体は、式(XVI):[Co(R(R(R[式中、数値(w+x+y)=4であり、下付き文字zは、1~6である]を有する。各Rは、一酸化炭素(CO)、イソニトリル(CNR)、シアノアルキル(NCR)、NO(ニトロシル若しくはニトロソニウムと呼ばれる)、又はシアノ(CN)から選択される配位子であり、各Rは、独立して、1~18個の炭素原子を有するアルキル基である。Rの正に帯電したニトロシル配位子は、触媒を正に帯電させる。Rが正に帯電している場合、負に帯電した対アニオン、例えば、ハロゲン原子(例えば、Cl若しくはBr)、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、又はトリフレートが存在する。負に帯電したシアノ配位子は、触媒を負に帯電させる。Rが負に帯電している場合、正に帯電した対カチオン、例えば、ナトリウム、カリウム、テトラブチルアンモニウム、又はビス(トリフェニルホスファンイミニウムが存在する。各Rは、独立して、ジフェニルビスホスフィノエタン(dppe)又はジフェニルビスホスフィノメタン(dppm)などのジフェニル-ビスホスフィノアルカン配位子によって例示されるホスフィン配位子である。下付き文字yが>0である場合、下付き文字zは、少なくとも2であってもよい。
【0021】
各Rは、例えば、アニオン性配位子、例えば、ハライド(例えば、Br若しくはCl)、アルコキシド若しくは関連する含酸素化合物(oxygenate)(OR8-、若しくはアセチルアセトネート)、アミド(NR )、1~18個の炭素原子を有するアルキル基、又はヒドリド(H)である。場合によっては、この配位子を除去するために、錯体を活性化する必要がある。ハロゲン化物は、Li[HBEt][式中、Etはエチル基を表す]などのヒドリドでの処理、又は銀塩、若しくはナトリウム若しくはリチウムなどのアルカリ金属による還元によって活性化することができる。アルコキシド又はアミドは、ヒドロシラン(別々に又は触媒反応におけるヒドロシランのいずれか)と反応すると活性化することができる。アルキル配位子(アニオン性炭素配位子、例えば、[CHSiMe、式中、Meはメチル基、又はMe、又はブチルを表す)について、これらは、同様にヒドロシランで(例えば、錯体抜きで反応させて)活性化することができる。
【0022】
ヒドリド配位子は、典型的には、触媒の活性形態で存在する。Co(CO)が触媒として使用される場合、in situで活性化され、Co(H)(CO)を形成することが予想される。
【0023】
成分(C)に好適な触媒の例としては、ジコバルトオクタカルボニルが挙げられるが、これに限定されない。
【0024】
上述の方法の工程(1)で使用される成分(C)の量は、様々な因子に応じて異なり、この因子には、成分(A)に選択された特定のオルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマー、成分(B)に選択された特定のアルコキシシラン、及び成分(A)に選択されたオルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーを蒸散させることなく混合物を加熱することができる温度が挙げられる。しかしながら、成分(C)の量は、成分(A)及び(B)の総量に基づいて、1百万分率(ppm)~100ppm、あるいは5ppm~80ppm、あるいは5ppm~20ppmのモル量のコバルト金属を提供するのに十分であることができる。本方法は、所望により、触媒の不活化又は除去を更に含んでもよい。しかしながら、適切な触媒担持では、触媒の不活化又は除去の工程を省略してもよい。
【0025】
本明細書に記載の方法は、1気圧以上の圧力で行われてもよい。あるいは、本方法は、1気圧~1.5気圧で行われてもよい。工程1)は、0℃~150℃、あるいは20℃~150℃、あるいは30℃~150℃、あるいは50℃~100℃で行われてもよい。工程1)における加熱の温度は、選択される圧力を含む様々な因子に応じて異なるが、反応が実用的になるように十分に早く進行することを確実にするために、少なくとも20℃で加熱することができる。加熱中の温度の上限は重要ではなく、選択される成分に依存する。すなわち、上限は、成分が方法を行うために選択された反応器から蒸発しないようにする必要がある。あるいは、加熱は、250℃~150℃、あるいは30℃~100℃であってもよい。選択される正確な温度は、触媒上に存在する配位子の選択を含む様々な因子に応じて異なる。例えば、Co(CO)が使用される場合、反応温度は、0℃~50℃など、より低くてもよい。触媒がdppm又はdppe配位子を含む場合、これは、触媒に改善された保存安定性をもたらし、より高い反応温度を可能にすることができる。例えば、触媒がCo(CO)(dppm)である場合、これは、室温で保存することができるが、低温(典型的には<0℃)で保存されない限り、Co(CO)は分解する場合がある。
【0026】
上述の方法の工程(1)では、アルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーを含む生成物を生成する。アルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーは、単位式(XVII):
【化10】
[式中、
、R、並びに下付き文字c、f、h、i、及びkは、上述のとおりであり、下付き文字bは、0~2であり、下付き文字mは、>0であり、下付き文字m、n、o、及びpは、数値(m+n+o+p)=(e+g+j)であるような値を有し、各Dは、独立して、2~18個の炭素原子を有する二価炭化水素基であり、ただし、工程1)で生成された全てのD基の>90モル%は、直鎖状である]を有する。下付き文字e、g、及びjは、式(I)で上述したとおりである。本明細書に記載の方法は、このアルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーが、β-付加化合物に対して高い選択性を有して、すなわち、Dが直鎖状であり、対応するα-付加化合物なしに又は他の触媒を使用する既存の方法よりも少ない量のそれと共にのいずれかで生成されるという利益を提供する。
【0027】
上述の方法の工程1)における成分は、混合物を形成し、この混合物は、均質であっても又は不均質であってもよい。1つ以上の追加成分、すなわち、上述の成分(A)、(B)、及び(C)に加えての成分は、所望により、本明細書に記載の方法及び組成物において使用されてもよい。追加成分は、存在する場合、(D)溶媒若しくは(E)安定剤、又は(D)及び(E)の両方であってもよい。
【0028】
成分(D)は、本明細書に記載の方法の工程1)で使用される混合物に加えられてもよい溶媒である。成分(A)、(B)、及び/又は(C)のうちの1つ以上は、溶媒中に提供されてもよい。例えば、成分(C)は、工程1)で混合物に加えられる溶媒中に溶解されてもよい。溶媒は、反応物質及び触媒の接触、混合物の流れ、及び/又は触媒などの特定の成分の導入を促進することができる。本明細書で使用される溶媒は、混合物の成分の流動化を促進するがこれらの成分のいずれとも本質的に反応しないものである。溶媒は、混合物中の成分の溶解性及び揮発性に基づいて選択されてもよい。「溶解性」は、溶媒が混合物の成分を溶解させるのに十分であることを指す。「揮発性」は、溶媒の蒸気圧を指す。溶媒が揮発性すぎる(蒸気圧が高すぎる)場合、溶媒は加熱中に溶液中に残存することができない。しかしながら、溶媒が十分に揮発性でない(蒸気圧が低すぎる)場合、溶媒は、生成物から除去することが困難な場合があるか、又はアルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーから単離することが困難な場合がある。
【0029】
溶媒は、有機溶媒であってもよい。有機溶媒は、ベンゼン、トルエン、若しくはキシレン、又はこれらの組み合わせなどの芳香族系炭化水素であってもよい。成分(D)は、1種の溶媒であってもよい。あるいは、成分(D)は、2種以上の異なる溶媒を含んでもよい。
【0030】
溶媒の量は、選択される特定の溶媒並びに混合物のために選択される他の成分の量及び種類といった様々な因子に応じて異なってもよい。しかしながら、溶媒の量は、混合物の重量に基づいて、0重量%~99重量%、又は存在する場合、1~99重量%、あるいは2~50重量%の範囲であってもよい。
【0031】
本方法は、所望により、1つ以上の追加工程を更に含んでもよい。本方法は、生成物からアルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーを含有する画分を回収する工程、を更に含んでもよい。アルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーは、β-付加化合物(すなわち、Dが直鎖状である)を含むことができ、また対応するα-付加化合物(すなわち、Dが直鎖状でない)は、互いに分離するのが難しく及び/又は費用が掛かるので、β-付加化合物及びα-付加化合物の両方を含む画分は、上述の工程1)の後に生成物から回収されてもよい。この画分は、画分中のβ-付加化合物及びα-付加化合物の総量に基づいて、>90%のβ-付加化合物、あるいは>90%~100%のβ-付加化合物、あるいは92%~100%、あるいは>90%~<100%、あるいは92%~<100%、あるいは95%~<100%のβ-付加化合物を含有することが望ましい。この画分を回収することは、加熱又は真空下によるストリッピング若しくは蒸留又はこれらの組み合わせなどの任意の都合の良い手段によって行われてもよい。
【0032】
上述のβ-付加化合物アルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーを含む上述の画分は、脂肪族不飽和官能基を含有する、オリゴマー及びより長鎖のポリマーを含むポリオルガノシロキサンの官能化に有用である。例えば、式(XVII)のアルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマー中のSiH基と、ポリオルガノシロキサン中のケイ素に結合した脂肪族不飽和基(脂肪族不飽和末端基を有するポリジオルガノシロキサンなど)とのヒドロシリル化反応により、アルコキシ官能性ポリオルガノシロキサンを生成することができる。脂肪族不飽和末端基を有するポリオルガノシロキサンは、単位式(XVIII):(RSiO1/2(RSiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2[式中、各Rは、独立して、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル基、又はハロゲン化アリール基(Rについて上述したものなど)であり、各Rは、独立して、ビニル、アリル、ブテニル、及びヘキセニルなどのアルケニル基によって例示されるアルケニル基並びにエチニル及びプロピニルなどのアルキニル基などの脂肪族不飽和炭化水素基である]を有してもよい。下付き文字eは、0以上の整数であり、下付き文字fは、0以上の整数であり、下付き文字gは、0以上の整数であり、下付き文字hは、0以上の整数であり、ただし、数値(f+g)>1である。あるいは、ポリオルガノシロキサンは、ポリジオルガノシロキサンであってもよい。脂肪族不飽和末端基を有するポリジオルガノシロキサンは、式(XIX):R SiO(R SiO)SiR を有してもよい。
【0033】
式(XIX)において、R及びRは、上述のとおりである。下付き文字dは、0でも又は正の数であってもよい。あるいは、Rについて上述したとおり、各Rは、アルキル基又はアリール基であってもよい。あるいは、下付き文字dは、少なくとも2の平均値を有する。あるいは、下付き文字dは、2~2000の範囲の値を有してもよい。
【0034】
式(XIX)の化合物は、
i)ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
ii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン)、
iii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン)、
iv)フェニル、メチル、ビニル-シロキシ末端ポリジメチルシロキサン、又は
v)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、などのポリジオルガノシロキサンを含んでもよい。
【0035】
アルコキシ官能性ポリオルガノシロキサンは、β-付加化合物アルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーを含む生成物又は画分と上述の式(XIX)のポリジオルガノシロキサンとを組み合わせることによって生成されてもよい。
アルコキシ官能性ポリオルガノシロキサンを調製するためのヒドロシリル化反応は、
(a)上述のβ-付加化合物アルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーを含む生成物(又は画分)と、
(b)上述の、1分子当たり、少なくとも1個の脂肪族不飽和ケイ素結合基を有するポリオルガノシロキサンと、
(c)上述のコバルト錯体以外のヒドロシリル化触媒と、を含む出発原料を組み合わせること、を含む、方法によって行われてもよい。ヒドロシリル化反応を触媒する好適な触媒は、当技術分野で既知であり、市販されている。このようなヒドロシリル化触媒は、白金などの白金族金属であってもよい。あるいは、ヒドロシリル化触媒は、このような金属の化合物(例えば、塩化白金酸、塩化白金酸六水和物、二塩化白金)、及び上記化合物と低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体、又はマトリックス若しくはコア/シェル型構造にマイクロカプセル化された白金化合物であってもよい。白金と低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体としては、1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの白金錯体が挙げられる。これらの錯体は、樹脂マトリックス中にマイクロカプセル化されてもよい。例示的なヒドロシリル化触媒は、米国特許第3,159,601号、同第3,220,972号、同第3,296,291号、同第3,419,593号、同第3,516,946号、同第3,814,730号、同第3,989,668号、同第4,784,879号、同第5,036,117号及び同第5,175,325号、並びに欧州特許第0347895(B)号に記載されている。マイクロカプセル化されたヒドロシリル化触媒及びその調製方法は、米国特許第4,766,176号及び同第5,017,654号に例示されているとおり、当該技術分野において既知である。出発原料を組み合わせることは、高温、例えば50℃~250℃での加熱で行われてもよい。
【0036】
上述のヒドロシリル化により生成されるポリアルコキシ官能性ポリオルガノシロキサンは、式:
(XIII):R 11SiO(R SiO)SiR 11[式中、R及び下付き文字dは、上述のとおりであり、各R11は、ポリアルコキシ官能基であり、ただし、R11の>90モル%は、β-付加体である]を有してもよい。あるいは、式(XIII)において、R11の>90モル%~100モル%は、β-付加基である。あるいは、式(XIII)において、R11の92%~<100% %は、β-付加基である。
【0037】
例えば、(b)脂肪族不飽和末端基を有するポリオルガノシロキサンが、式(XX):
【化14】
のポリジオルガノシロキサン[式中、下付き文字nは、1~2,000である]である場合、ポリアルコキシ官能性ポリオルガノシロキサンは、式(XXI):
【化15】
[式中、各Dは、独立して、二価炭化水素基であり、式中、R、R、D、及び下付き文字cは、上述のとおりである]を有してもよい。
【0038】
あるいは、ポリアルコキシ官能性ポリオルガノシロキサンは、式(XXII):
【化16】
[式中、各Dは、独立して、二価炭化水素基であり、式中、R、R、D、及び下付き文字cは、上述のとおりである]を有してもよい。
【0039】
上述のように調製されたポリアルコキシ官能性ポリジメチルシロキサンなどのポリアルコキシ官能性ポリオルガノシロキサンは、アルコキシ基の反応性を利用する任意の用途で使用することができる。
【0040】
例えば、上述のように調製されたポリアルコキシ官能性ポリオルガノシロキサンは、シーラント組成物などの縮合反応硬化性組成物において有用である。好適な縮合反応硬化性組成物は、出発原料を混合することによって調製されてもよく、この出発原料は、
(i)上述のように調製されたアルコキシ官能性ポリオルガノシロキサンと、
(ii)縮合反応触媒と、を含む。理論に束縛されるものではないが、(i)ポリアルコキシ官能性ポリオルガノシロキサンを含む縮合反応硬化性組成物は、異なるポリアルコキシ官能性ポリオルガノシロキサンを含有する類似の縮合反応硬化性組成物(分枝状異性体含有量がより高い従来の末端封鎖剤を使用して調製される)よりも速く硬化すると考えられる。
【0041】
出発原料(ii)は、縮合反応触媒である。好適な縮合反応触媒としては、スズ触媒及びチタン触媒が挙げられる。好適なスズ触媒としては、スズの価数が+4又は+2のいずれかである有機化合物、すなわち、スズ(IV)化合物又はスズ(II)化合物が挙げられる。スズ(IV)化合物の例としては、カルボン酸の第二スズ塩(二ラウリン酸ジブチルスズ、二ラウリン酸ジメチルスズ、ジ-(n-ブチル)スズビス-ケトネート、二酢酸ジブチルスズ、マレイン酸ジブチルスズ、ジブチルスズジアセチルアセトネート、ジブチルスズジメトキシド、カルボメトキシフェニルスズトリス-ウベレート、二オクタン酸ジブチルスズ、二ギ酸ジブチルスズ、イソブチルスズトリセロエート、二酪酸ジメチルスズ、ジメチルスズジ-ネオデコノエート、ジブチルスズジ-ネオデコノエート、酒石酸トリエチルスズ、二安息香酸ジブチルスズ、三-2-エチルヘキサン酸ブチルスズ、二酢酸ジオクチルスズ、オクチル酸スズ、オレイン酸スズ、酪酸スズ、ナフテン酸スズ、二塩化ジメチルスズなど)、これらの組み合わせ、及び/又はこれらの部分加水分解生成物が挙げられる。スズ(IV)化合物は、当該技術分野において既知であり、例えば、The Dow Chemical Companyの事業部門であるAcima Specialty Chemicals(Switzerland,Europe)から、Metatin(登録商標)740及びFascat(登録商標)4202などとして市販されている。スズ(II)化合物の例としては、有機カルボン酸のスズ(II)塩(二酢酸スズ(II)、二オクタン酸スズ(II)、二エチルヘキサン酸スズ(II)、二ラウリン酸スズ(II)など)、カルボン酸の第一スズ塩(オクタン酸第一スズ、オレイン酸第一スズ、酢酸第一スズ、ラウリン酸第一スズ、ステアリン酸第一スズ、ナフテン酸第一スズ、ヘキサン酸第一スズ、コハク酸第一スズ、カプリル酸第一スズなど)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。例示的なチタン触媒としては、テトラ-n-ブチルチタネート テトライソプロピルチタネート、テトラ-2-エチルヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、トリエタノールアミンチタネート、オルガノシロキシチタン化合物などのチタンエステル、並びにチタンエチルアセトアセテート及びビス(アセトアセトニル)-ジイソプロポキシチタン(IV)などのジカルボニルチタン化合物が挙げられる。組成物を室温加硫シーラント組成物として配合するとき、チタン触媒を使用してもよい。縮合反応触媒の量は、出発原料(i)の量、並びに組成物に加えられる任意の追加出発原料の種類及び量を含む様々な因子に応じて異なるが、縮合反応触媒の量は、出発原料(i)の重量に基づいて、0.2~6重量部、あるいは0.5~3重量部であってもよい。
【0042】
縮合反応硬化性組成物は、成分(i)及び(ii)とは区別される1つ以上の追加成分を更に含んでもよい。好適な追加成分は、(iii)充填剤、(iv)充填剤処理剤、(v)架橋剤、(vi)表面改質剤、(vii)乾燥剤、(viii)増量剤、可塑剤、又はこれらの組み合わせ、(ix)殺生物剤、(x)難燃剤、(xi)鎖延長剤、(xii)末端封鎖剤、(xiii)非反応性結合剤、(xiv)劣化防止添加剤、(xv)水放出剤、(xvi)顔料、(xvii)レオロジー添加剤、(xviii)賦形剤(例えば、溶媒及び/又は希釈剤)、(xix)粘着付与剤、(xx)腐食防止剤、及びこれらの2つ以上の組み合わせによって例示される。縮合反応硬化性組成物に使用するこれらの追加成分及びこれらの量は、例えば、米国特許第9,156,948号に開示されているものによって例示される。
【0043】
組成物に加えられてもよい出発原料(iii)は、充填剤である。充填剤は、補強充填剤、増量充填剤、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。例えば、組成物は、所望により、成分(iii-1)補強充填剤を更に含んでもよく、これは、存在する場合には、組成物の重量に基づいて、0.1~95重量%、あるいは1~60重量%の範囲の量で加えられてもよい。出発原料(iii-1)の正確な量は、組成物の反応生成物の形態、及び、他の充填剤が加えられるかどうか、といった様々な因子に応じて異なる。好適な補強充填剤の例としては、沈降性炭酸カルシウム及び補強シリカ充填剤(例えば、ヒュームドシリカ、シリカエアロゲル、シリカキセロゲル及び沈殿シリカ)が挙げられる。好適な沈降性炭酸カルシウムとしては、SolvayからのWinnofil(登録商標)SPM、並びにSpecialty Minerals,Inc.からのUltrapflex(登録商標)及びUltrapflex(登録商標)100が挙げられる。ヒュームドシリカは、当該技術分野において既知であり、例えば、Cabot Corporation(Massachusetts,U.S.A.)によってCAB-O-SILという名称で販売されているヒュームドシリカとして市販されている。
【0044】
組成物は、所望により、組成物の重量に基づいて、0.1%~95%、あるいは1%~60%、あるいは1%~20%の範囲の量の増量充填剤である出発原料(iii-2)を更に含んでもよい。増量充填剤の例としては、破砕石英、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、粉砕炭酸カルシウムなどの炭酸カルシウム、酸化亜鉛、タルク、珪藻土、酸化鉄、粘土、雲母、白亜、二酸化チタン、ジルコニア、砂、カーボンブラック、グラファイト又はこれらの組み合わせが挙げられる。増量充填剤は、当該技術分野において既知であり、例えば、U.S.Silica(Berkeley Springs,WV)によってMIN-U-SILの名称で販売されている粉砕石英として市販されている。増量炭酸カルシウムの例としては、ImerysからのCS-11、HuberからのG3T、及びOmyaからのOmyacarb 2Tが挙げられる。
【0045】
組成物は、所望により、処理剤である出発原料(iv)を更に含んでもよい。出発原料(iv)の量は、選択される処理剤の種類、処理される粒子の種類及び量、粒子が組成物への添加前に処理されるかどうか、又は粒子がin situで処理されるかどうか、といった因子に応じて変動する可能性がある。しかしながら、出発原料(iv)は、組成物の重量に基づいて、0.01~20重量%、あるいは0.1~15重量%、あるいは0.5~5重量%の範囲の量で使用されてもよい。粒子、例えば、充填剤、物理的乾燥剤、特定の難燃剤、特定の顔料、及び/又は、特定の水放出剤は、存在する場合には、所望により、出発原料(iv)で表面処理されてもよい。粒子は、組成物に加えられる前に又はin situで、出発原料(iv)で処理されてもよい。出発原料(iv)は、アルコキシシラン、アルコキシ官能性オリゴシロキサン、環式ポリオルガノシロキサン、ジメチルシロキサン若しくはメチルフェニルシロキサンなどのヒドロキシル官能性オリゴシロキサン、又は脂肪酸を含んでもよい。脂肪酸の例としては、ステアリン酸カルシウムなどのステアリン酸塩が挙げられる。
【0046】
出発原料(iv)として使用できるいくつかの代表的なオルガノケイ素充填剤処理剤としては、シリカ充填剤、例えば、オルガノクロロシラン、オルガノシロキサン、ヘキサアルキルジシラザンなどのオルガノジシラザン、並びにC13Si(OCH、C17Si(OC、C1021Si(OCH、C1225Si(OCH、C1429Si(OC、及びCCHCHSi(OCHなどのオルガノアルコキシシランを処理するために通常使用される組成物が挙げられる。使用できるその他の処理剤としては、アルキルチオール、脂肪酸、チタネート、チタネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0047】
あるいは、出発原料(iv)は、式(XXIII):R13 Si(OR14(4-p)[式中、下付き文字pは、1~3の範囲の値を有してもよく、あるいは下付き文字pは、3である]を有するアルコキシシランを含んでもよい。各R13は、独立して、1~50個の炭素原子、あるいは8~30個の炭素原子、あるいは8~18個の炭素原子を有する一価炭化水素基などの一価有機基である。R13は、ヘキシル、オクチル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル及びオクタデシルなどのアルキル基;並びにベンジル及びフェニルエチルなどの芳香族基よって例示される。R13は、飽和でも不飽和でもよく、分枝状でも非分枝状でもよい。あるいは、R13は、飽和及び非分枝状であってもよい。
【0048】
各R14は、独立して、1~4個の炭素原子、あるいは1~2個の炭素原子を有する飽和炭化水素基である。出発原料(iv)は、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、フェニルエチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、及びこれらの組み合わせによって例示される。
【0049】
また、アルコキシ官能性オリゴシロキサンはまた、処理剤として使用されてもよい。例えば、好適なアルコキシ官能性オリゴシロキサンとしては、式(XXIV):(R15O)Si(OSiR16 17(4-q)のものが挙げられる。この式中、下付き文字qは、1、2、又は3であり、あるいは下付き文字qは、3である。各R15は、アルキル基であってもよい。各R16は、1~10個の炭素原子を有する不飽和一価炭化水素基であってもよい。各R17は、少なくとも10個の炭素原子を有する不飽和一価炭化水素基であってもよい。
【0050】
あるいは、水素結合可能なポリオルガノシロキサンが、処理剤として有用である。充填剤の表面を処理するためのこの戦略は、相溶化部分を充填剤表面に結び付けるための手段として、密集したか若しくは分散したかのいずれかである、又は両方である複数の水素結合を利用する。水素結合可能なポリオルガノシロキサンは、1分子当たり、平均して少なくとも1個の水素結合可能なケイ素結合基を有する。上記基は、複数のヒドロキシル官能性を有する有機基又は少なくとも1個のアミノ官能基を有する有機基から選択されてもよい。水素結合可能なポリオルガノシロキサンは、主に水素結合によってポリオルガノシロキサンが充填剤へ付着することを意味する。ポリオルガノシロキサンは、充填剤と共有結合を形成不可能であってもよい。ポリオルガノシロキサンは、縮合可能なシリル基(例えば、ケイ素が結合したアルコキシ基、シラザン、及びシラノール)を含まなくてもよい。水素結合可能なポリオルガノシロキサンは、糖-シロキサンポリマー、アミノ官能性ポリオルガノシロキサン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。あるいは、水素結合可能なポリオルガノシロキサンは、糖-シロキサンポリマーであってもよい。
【0051】
出発原料(v)は、架橋剤である。出発原料(v)は、加水分解性基を有するシラン架橋剤、又はその部分若しくは完全加水分解生成物を含んでもよい。出発原料(v)は、出発原料(i)のアルコキシ基と反応性である置換基を、1分子当たり、平均して2個より多く有する。出発原料(v)に好適なシラン架橋剤の例は、一般式(XXV):R10 Si(R(4-k)[式中、各R10は、独立して、アルキル基などの一価炭化水素基であり;各Rは、加水分解性置換基、例えば、ハロゲン原子、アセトアミド基、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ)、アルコキシ基、アミド基、アミノ基、アミノキシ基、ヒドロキシル基、オキシモ基、ケトキシモ基、又はメチルアセトアミド基であり、下付き文字kの各例は、0、1、2、又は3であってもよい]を有してもよい。出発原料(v)について、下付き文字kは、2より大きい平均値を有する。あるいは、下付き文字kは、3~4の範囲の値を有してもよい。あるいは、各Rは、独立して、ヒドロキシル、アルコキシ、アセトキシ、アミド、又はオキシムから選択されてもよい。あるいは、出発原料(v)は、アシロキシシラン、アルコキシシラン、ケトキシモシラン、及びオキシモシランから選択されてもよい。
【0052】
出発原料(v)は、アルコキシシランを含んでもよく、例えば、ジアルキルジアルコキシシランなどのジアルコキシシラン;アルキルトリアルコキシシランなどのトリアルコキシシラン;テトラアルコキシシラン;又はその部分若しくは完全加水分解生成物によって例示されるもの、又はこれらの別の組み合わせを含んでもよい。好適なトリアルコキシシランの例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、及びこれらの組み合わせが挙げられ、あるいはメチルトリメトキシシランが挙げられる。好適なテトラアルコキシシランの例としては、テトラエトキシシランが挙げられる。組成物中で使用されるアルコキシシランの量は、出発原料(i)100重量部当たり0.5~15重量部の範囲であってもよい。
【0053】
出発原料(v)は、アセトキシシランなどのアシルオキシシランを含んでもよい。アセトキシシランとしては、テトラアセトキシシラン、オルガノトリアセトキシシラン、ジオルガノジアセトキシシラン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。アセトキシシランは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、及び三級ブチルなどのアルキル基;ビニル、アリル、又はヘキセニルなどのアルケニル基;フェニル、トリル、又はキシリルなどのアリール基;ベンジル又は2-フェニルエチルなどのアラルキル基;並びに3,3,3-トリフルオロプロピルなどのフッ素化アルキル基を含有してもよい。例示的なアセトキシシランとしては、テトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、プロピルトリアセトキシシラン、ブチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、オクチルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、フェニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、出発原料(v)は、オルガノトリアセトキシシラン、例えば、メチルトリアセトキシシランとエチルトリアセトキシシランとを含む混合物を含んでもよい。硬化性シリコーン組成物中で使用されるアセトキシシランの量は、出発原料(i)100重量部当たり0.5~15重量部、あるいは、出発原料(i)100重量部当たり3~10重量部の範囲のアセトキシシランであってもよい。
【0054】
組成物中で使用されてもよいアルコキシ基とアセトキシ基との両方を含有する出発原料(v)に好適なシランの例としては、メチルジアセトキシメトキシシラン、メチルアセトキシジメトキシシラン、ビニルジアセトキシメトキシシラン、ビニルアセトキシジメトキシシラン、メチルジアセトキシエトキシシラン、メチルアセトキシジエトキシシラン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0055】
出発原料(v)に好適なアミノ官能性アルコキシシランは、HN(CHSi(OCH、HN(CHSi(OCHCH、HN(CHSi(OCH、HN(CHSi(OCHCH、CHNH(CHSi(OCH、CHNH(CHSi(OCHCH、CHNH(CHSi(OCH、CHNH(CHSi(OCHCH、HN(CHNH(CHSi(OCH、HN(CHNH(CHSi(OCHCH、CHNH(CHNH(CHSi(OCH、CHNH(CHNH(CHSi(OCHCH、CNH(CHNH(CHSi(OCH、CNH(CHNH(CHSi(OCHCH、HN(CHSiCH(OCH、HN(CHSiCH(OCHCH、HN(CHSiCH(OCH、HN(CHSiCH(OCHCH、CHNH(CHSiCH(OCH、CHNH(CHSiCH(OCHCH、CHNH(CHSiCH(OCH、CHNH(CHSiCH(OCHCH、HN(CHNH(CHSiCH(OCH、HN(CHNH(CHSiCH(OCHCH、CHNH(CHNH(CHSiCH(OCH、CHNH(CHNH(CHSiCH(OCHCH、CNH(CHNH(CHSiCH(OCH、CNH(CHNH(CHSiCH(OCHCH、及びこれらの組み合わせによって例示される。
【0056】
出発原料(v)に好適なオキシモシランとしては、メチルトリオキシモシラン、エチルトリオキシモシラン、プロピルトリオキシモシラン、及びブチルトリオキシモシランなどのアルキルトリオキシモシラン;メトキシトリオキシモシラン、エトキシトリオキシモシラン、及びプロポキシトリオキシモシランなどのアルコキシトリオキシモシラン;又はプロペニルトリオキシモシラン若しくはブテニルトリオキシモシランなどのアルケニルトリオキシモシラン;ビニルオキシモシランなどのアルケニルオキシモシラン;ビニルメチルジオキシモシラン、ビニルエチルジオキシモシラン、ビニルメチルジオキシモシラン、若しくはビニルエチルジオキシモシランなどのアルケニルアルキルジオキシモシラン;又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0057】
出発原料(v)に好適なケトキシモシランとしては、メチルトリス(ジメチルケトキシモ)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシモ)シラン、メチルトリス(メチルプロピルケトキシモ)シラン(methyltris(methylpropylketoximo)silane)、メチルトリス(メチルイソブチルケトキシモ)シラン、エチルトリス(ジメチルケトキシモ)シラン(ethyltris(dimethylketoximo)silane)、エチルトリス(メチルエチルケトキシモ)シラン(ethyltris(methylethylketoximo)silane)、エチルトリス(メチルプロピルケトキシモ)シラン(ethyltris(methylpropylketoximo)silane)、エチルトリス(メチルイソブチルケトキシモ)シラン(ethyltris(methylisobutylketoximo)silane)、ビニルトリス(ジメチルケトキシモ)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシモ)シラン、ビニルトリス(メチルプロピルケトキシモ)シラン(vinyltris(methylpropylketoximo)silane)、ビニルトリス(メチルイソブチルケトキシモ)シラン、テトラキス(ジメチルケトキシモ)シラン(tetrakis(dimethylketoximo)silane)、テトラキス(メチルエチルケトキシモ)シラン、テトラキス(メチルプロピルケトキシモ)シラン(tetrakis(methylpropylketoximo)silane)、テトラキス(メチルイソブチルケトキシモ)シラン(tetrakis(methylisobutylketoximo)silane)、メチルビス(ジメチルケトキシモ)シラン(methylbis(dimethylketoximo)silane)、メチルビス(シクロヘキシルケトキシモ)シラン(methylbis(cyclohexylketoximo)silane)、トリエトキシ(エチルメチルケトキシム)シラン(triethoxy(ethylmethylketoxime)silane)、ジエトキシジ(エチルメチルケトキシム)シラン(diethoxydi(ethylmethylketoxime)silane)、エトキシトリ(エチルメチルケトキシム)シラン、メチルビニルビス(メチルイソブチルケトキシモ)シラン(methylvinylbis(methylisobutylketoximo)silane)、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0058】
あるいは、出発原料(v)は、ポリマーであってもよい。例えば、出発原料(v)は、ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン)、1,4-ビス[トリメトキシシリル(エチル)]ベンゼン、及びビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィドといった、ジシランを含んでもよい。
【0059】
出発原料(v)は、1つの単一の架橋剤、又は、以下の特性のうちの少なくとも1つにおいて異なる2つ以上の架橋剤を含む組み合わせであってもよい:加水分解性置換基、及びケイ素に結合した他の有機基、並びに、ポリマー架橋剤が使用される場合には、シロキサン単位、構造、分子量及び配列。
出発原料(vi)は、接着促進剤である。出発原料(vi)に好適な接着促進剤は、アルコキシシランなどの炭化水素オキシシラン、アルコキシシランとヒドロキシ官能性ポリオルガノシロキサンとの組み合わせ、アミノ官能性シラン、メルカプト官能性シラン、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。接着促進剤は、当該技術分野において既知であり、式(XXV):R24 25 Si(OR264-(t+u)[式中、各R24は、独立して、少なくとも3個の炭素原子を有する一価有機基であり;R25は、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基又はアクリレート基などの接着促進基を有するSiC結合置換基を少なくとも1個含有し;下付き文字tは、0~2の範囲の値を有し;下付き文字uは、1又は2のいずれかであり、(t+u)の合計は3以下である]を有するシランを含んでもよい。あるいは、接着促進剤は、上記シランの部分縮合体を含んでもよい。あるいは、接着促進剤は、アルコキシシランとヒドロキシ官能性ポリオルガノシロキサンとの組み合わせを含んでもよい。
【0060】
あるいは、接着促進剤は、不飽和又はエポキシ官能性化合物を含んでもよい。接着促進剤は、不飽和又はエポキシ官能性アルコキシシランを含んでもよい。例えば、官能性アルコキシシランは、式(XXVI):R27 Si(OR28(4-v)[式中、下付き文字vは、1、2、又は3であり、あるいは下付き文字vは、1である]を有してもよい。各R27は、独立して、一価の有機基であり、ただし、少なくとも1つのR27は、不飽和有機基又はエポキシ官能性有機基である。R27のエポキシ官能性有機基は、3-グリシドキシプロピル及び(エポキシシクロヘキシル)エチルによって例示される。R27の不飽和有機基は、3-メタクリロイルオキシプロピル、3-アクリロイルオキシプロピル、及びビニル、アリル、ヘキセニル、ウンデシレニルなどの不飽和一価炭化水素基によって例示される。各R28は、独立して、1~4個の炭素原子、あるいは1~2個の炭素原子を有する飽和炭化水素基である。R28は、メチル、エチル、プロピル、及びブチルによって例示される。
【0061】
好適なエポキシ官能性アルコキシシランの例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシシラン、(エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシシラン及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適な不飽和アルコキシシランの例としては、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ヘキセニルトリメトキシシラン、ウンデシレニルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0062】
あるいは、接着促進剤は、上述のようなヒドロキシ末端ポリオルガノシロキサンとエポキシ官能性アルコキシシランとの反応生成物、又はヒドロキシ末端ポリオルガノシロキサンとエポキシ官能性アルコキシシランとの物理的ブレンドなどのエポキシ官能性シロキサンを含んでもよい。接着促進剤は、エポキシ官能性アルコキシシランとエポキシ官能性シロキサンとの組み合わせを含んでもよい。例えば、接着促進剤は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランと、ヒドロキシ末端メチルビニルシロキサンと3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとの反応生成物との混合物、又は3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとヒドロキシ末端メチルビニルシロキサンとの混合物、又は3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとヒドロキシ末端メチルビニル/ジメチルシロキサンコポリマーとの混合物によって例示される。
【0063】
あるいは、接着促進剤は、HN(CHSi(OCH、HN(CHSi(OCHCH、HN(CHSi(OCH、HN(CHSi(OCHCH、CHNH(CHSi(OCH、CHNH(CHSi(OCHCH、CHNH(CHSi(OCH、CHNH(CHSi(OCHCH、HN(CHNH(CHSi(OCH、HN(CHNH(CHSi(OCHCH、CHNH(CHNH(CHSi(OCH、CHNH(CHNH(CHSi(OCHCH、CNH(CHNH(CHSi(OCH、CNH(CHNH(CHSi(OCHCH、HN(CHSiCH(OCH、HN(CHSiCH(OCHCH、HN(CHSiCH(OCH、HN(CHSiCH(OCHCH、CHNH(CHSiCH(OCH、CHNH(CHSiCH(OCHCH、CHNH(CHSiCH(OCH、CHNH(CHSiCH(OCHCH、HN(CHNH(CHSiCH(OCH、HN(CHNH(CHSiCH(OCHCH、CHNH(CHNH(CHSiCH(OCH、CHNH(CHNH(CHSiCH(OCHCH、CNH(CHNH(CHSiCH(OCH、CNH(CHNH(CHSiCH(OCHCH、N-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン、及びこれらの組み合わせによって例示されるアミノ官能性アルコキシシランなどのアミノ官能性シランを含んでもよい。
【0064】
あるいは、接着促進剤は、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン又は3-メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト官能性アルコキシシランを含んでもよい。
【0065】
出発原料(vi)の正確な量は、選択される接着促進剤の種類、並びに、組成物及びその反応生成物の最終用途を含む様々な因子に応じて異なる。しかしながら、出発原料(vi)は、存在する場合、組成物の重量に基づいて、0.01~50重量部、あるいは0.01~10重量部、あるいは0.01~5重量部の範囲の量で組成物に加えられてもよい。出発原料(vi)は、1種の接着促進剤であってもよい。あるいは、出発原料(vi)は、以下の特性のうちの少なくとも1つが異なる2つ以上の異なる接着促進剤を含んでもよい:構造、粘度、平均分子量、ポリマー単位、及び配列。
【0066】
上述の縮合反応硬化性組成物の成分を選択する際には、本明細書に記載の特定の出発原料が2つ以上の機能を有する場合があるため、出発原料の種類は重複することがある。例えば、特定のアルコキシシランは、充填剤処理剤として、接着促進剤として、及び架橋剤として有用である場合がある。
【0067】
あるいは、架橋剤、充填剤、及び接着促進剤は各々、組成物中に存在してもよい。この実施形態では、架橋剤は、メチルトリメトキシシランなどのアルキルトリアルコキシシランを含んでもよく、充填剤は、炭酸カルシウムなどの増量充填剤を含んでもよく、接着促進剤は、N-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、又はその両方などの架橋剤以外のアルコキシシランを含んでもよい。
【0068】
上記の組成物は、例えば、混合などの任意の好都合な手段によって全成分を組み合わせることにより、1部型組成物として調製されてもよい。例えば、所望により、(i)アルコキシ官能性ポリオルガノシロキサンと、存在する場合、(iii)充填剤の全て又は一部とを組み合わせて(例えば、予混合して)、触媒(ii)、及び存在する場合、(v)架橋剤を含むプレミックスと、これを、混合することにより、1部型組成物を作製することができる。劣化防止添加剤及び顔料といった他の添加剤は、任意の所望される段階にて混合物に加えられてもよい。最終混合工程は実質的に無水条件下で行うことができ、得られた組成物は一般に使用準備が整うまで実質的に無水条件下で、例えば、密封容器で保管される。
【0069】
あるいは、組成物は、架橋剤が存在する場合、複数部型(例えば、2部型)組成物として調製されてもよい。この例では、触媒及び架橋剤は別個の部として保管され、これらの部は、組成物の使用直前に組み合わされる。例えば、2部型硬化性組成物は、混合などの任意の便利な手段によりアルコキシ官能性ポリオルガノシロキサン及び架橋剤を含む成分を組み合わせて第1の(硬化剤)部を形成することによって、調製されてもよい。第2の(ベース)部は、混合などの任意の便利な手段により触媒及びアルコキシ官能性ポリオルガノシロキサンを含む出発原料を組み合わせることによって、調製されてもよい。これらの出発原料は、1部型又は複数部型組成物のどちらが選択されるかといった様々な因子に応じて、周囲条件又は無水条件下で周囲温度又は高温にて組み合わせることができる。ベース部と硬化剤部とは、使用直前に、混合などの任意の便利な手段により、組み合わせることができる。ベース部と硬化剤部とは、1:1~10:1の範囲のベース:硬化剤の相対量で組み合わせることができる。
【0070】
出発原料の混合に使用される装置は、特に限定されない。適切な混合装置の例は、選択される各成分の種類及び量に応じて選択されてもよい。例えば、反応によりガム又はゲルを形成する組成物などの比較的低粘度の組成物には、撹拌バッチケトルが使用されてもよい。あるいは、例えば、より粘稠な組成物及び、粒子を比較的多量に含有する組成物には、二軸押出成形機などの押出成形機といった連続調合装置が使用されてもよい。本明細書に記載の組成物の調製に使用されてもよい例示的な方法としては、例えば、米国特許出願公開第2009/0291238号及び同第2008/0300358号に開示されているものが挙げられる。
【0071】
上述のように作製されるこれらの組成物は、水分への曝露から組成物を保護する容器内での保管時に安定であることができるが、これらの組成物は、大気の水分に曝露されると縮合反応を介して反応する場合がある。
【実施例
【0072】
これらの実施例は、本発明のいくつかの実施形態を説明することを意図しており、本特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定するかのように解釈してはならない。以下の実施例では、実施例を不活性条件下(すなわち、出発原料を加える前にフラスコを窒素でパージした)で行った。米国特許第5,026,890号(実施例15参照)に記載のものなど、ジシロキサン、トリシロキサン、及びシロキサンオリゴマー出発原料を、塩基性Alと接触させて、酸濃度を減少させることによって精製した。以下の出発原料及び略語は、以下のように定義される。
【表1】
【0073】
「収率」は、限定試薬(脂肪族不飽和アルコキシシラン)の量に基づいて、生成されるアルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーのモル量/最大限のアルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーのモル量を意味する。「選択性」は、アルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンの直鎖状異性体/分枝状異性体(異性体は同じ分子量を有する)の比を意味する。
【0074】
実施例1
トルエン中0.005MのCo(CO)の原液を作り、-30℃で保存した。使用前に、溶液を冷凍庫から短い間取り出した。空気を含まないグローブボックス内で、1.1gのVTMS、1gのTMDS、及び0.25gのドデカン(内部標準)の混合物を、撹拌子を収容する20mLのシンチレーションバイアル瓶に加えた。トルエン中Co(CO)の0.005M溶液30μLを加えた。室温で30分間撹拌した後、反応混合物を50℃まで16時間加熱した。この段階で、反応混合物のアリコート(約150μL)を抜き取り、GCバイアル瓶に注入し、約1mLのキシレンで希釈した。反応をGC-FID及びGC-MSにより分析した。分析により、直鎖状モノヒドロシリル化生成物の収率が約50%、二重ヒドロシリル化生成物が15%であり、及びほんの微量の分枝状異性体生成物が検出されたことを示した。多量の未反応出発原料が観察された。
【0075】
実施例2
Co(CO)(dppm)の試料を使用前に数ヶ月間室温で保存した後、トルエン中0.005MのCo(CO)(dppm)の原液を作った。空気を含まないグローブボックス内で、1.1gのVTMS、1gのTMDS、及び0.25gのドデカン(内部標準)の混合物を、撹拌子を収容する20mLのシンチレーションバイアル瓶に加えた。トルエン中Co(CO)(dppm)の0.005M溶液30μLを加えた。室温で30分間撹拌した後、反応混合物を50℃まで16時間加熱した。この段階で、反応混合物のアリコート(約150μL)を抜き取り、GCバイアル瓶に注入し、約1mLのキシレンで希釈した。反応をGC-FID及びGC-MSにより分析した。分析により、直鎖状モノヒドロシリル化生成物の収率が約38%、二重ヒドロシリル化生成物が約24%であり、及びほんの微量の分枝状異性体生成物が検出されたことを示した。多量の未反応出発原料が観察された。この実施例は、Co(CO)と比較して、コバルトカルボニルホスフィン錯体がまたより熱安定性のコバルトカルボニル錯体であってもよいことを示す。この実施例は、Co(CO)と比較して、より熱安定性のコバルトカルボニル錯体を示す。
【0076】
実施例3(比較例)
空気を含まないグローブボックス内で、1.1gのVTMS、1gのTMDS、及び0.25gのドデカン(内部標準)の混合物を、撹拌子を収容する20mLのシンチレーションバイアル瓶に加えた。次いで、THF中のRh(PPhClの0.01M溶液30μLを加えた(この試薬溶液を撹拌しながら約60℃まで加熱して、難溶性触媒を溶解させた)。室温で30分間撹拌した後、反応混合物を50℃まで16時間加熱した。この段階で、反応混合物のアリコート(約150μL)を抜き取り、GCバイアル瓶に注入し、約1mLのキシレンで希釈した。反応をGC-FID及びGC-MSにより分析した。分析により、直鎖状生成物の収率が約54%、分枝状異性体が8%であると検出されたことを示した。少量の未反応出発原料が観察された。生成物中の所望のβ-付加体について、この実施例3は、実施例1よりも低い選択性を示す。
【0077】
実施例4(比較例)-エチルトリメトキシシリル末端テトラメチルジシロキサンの調製
空気を含まないグローブボックス内で、1.1gのVTMS、1gのTMDS、及び0.25gのドデカン(内部標準)の混合物を、撹拌子を収容する20mLのシンチレーションバイアル瓶に加えた。次いで、カルシュテット触媒の形態のTHF中のPt(キシレン中2%として供給、Sigma Aldrich)の0.01M溶液30μLを加えた(この試薬溶液を撹拌しながら約60℃まで加熱して、難溶性触媒を溶解させた)。室温で30分間撹拌した後、反応混合物を50℃まで16時間加熱した。この段階で、反応混合物のアリコート(約150μL)を抜き取り、GCバイアル瓶に注入し、約1mLのキシレンで希釈した。反応をGC-FID及びGC-MSにより分析した。分析により、直鎖状生成物の収率が約46%、分枝状異性体が26%であると検出されたことを示した。少量の未反応テトラメチルジシロキサンが観察されたが、全てのビニルトリメトキシシランが観察された。
【0078】
実施例5(比較例)-ジ(トリメトキシシリルエチル)ペンタメチルトリシロキサン(M’D’M’ EHM)の調製
トルエン中1%のPt触媒の溶液を調製した。18.05gの量のVTMを、275μL/分の速度で、11.97gのM’D’M’を含有するフラスコに、40℃の温度で、N下で、急速に撹拌しながら、フラスコを冷却しながら、シリンジポンプを用いて加えた。総VTMの5%を最初に加え、続いて、10pmのPt触媒(39μLの、トルエン中1%の溶液Pt)を加えて、発熱を開始し、次いで、残りのVTMの添加を開始した。温度を熱電対によって監視し、添加速度を制御することによって80℃未満に維持した。VTMを完全に加えた後、反応溶液を75℃で0.5時間撹拌し、冷却し、GCによって特定して、生成物混合物が10%の単官能性オリゴマー、68%の二官能性オリゴマー、及び20%の三官能性オリゴマーを含有したことを示した。試料を1トール(0.1333kPa)下で蒸留により精製し、1トール(0.1333kPa)で沸点135~137℃を有する16.9gのM’D’M’EHM(収率:56%)を得た。試料を、GC、H、及び29Si NMRによって特定した。最終生成物は、66%のM’D’H’ EHMのβ異性体及び34%のM’D’H’ EHMのα異性体;60%のD-H異性体(以下に示す反応スキームにおける第1の生成物構造)及び40%のM-H異性体(以下に示す反応スキームにおける第2の生成物構造)で構成された。H NMR(CDCl):δ4.69(M-H)、4.62(D-H)、3.55(-OCH)、1.06(α異性体からの-CH)、0.56(β異性体からの-CHCH)、0.25~0(-CH及び-CH(Me)-)。29Si NMR(CDCl):δ11~9(M-D’)、9~7(M-D)、-6~-8(M’)、-19~-23(D)、-35~-38(D’)、-40~-43(T)。
【化17】
【0079】
実施例6(仮想例)-ジ(トリメトキシシリルエチル)ペンタメチルトリシロキサン(M’D’M’ EHM)の調製
コバルト触媒(ジコバルトオクタカルボニル)をTHFに溶解して、1ミリモル(mM)触媒溶液を調製する。熱電対及び冷水冷却管を取り付けた三口丸底フラスコに、9.96g及び15.04gのVTMを入れる。フラスコをNでパージし、フラスコ内の混合物を80℃まで加熱し、続いて、触媒溶液(1mL)を添加する。80℃で、N下で17時間撹拌した後、反応混合物を25℃の室温まで放冷し、GCによって分析する。
【0080】
実施例7(比較例)-ジ(トリメトキシシリルエチル)シロキサンオリゴマー(Pr-T EHM)の調製
M’TPr(15.0g)、VTM(15.0g)、及びトルエン中の白金触媒溶液39μL)を出発原料として使用したことを除いて、実施例5の手順を繰り返した。粗生成物は、GC(FID)により、14%の単官能性オリゴマー、54%の二官能性オリゴマー、及び31%の三官能性オリゴマーを含有した。試料を1トール(0.1333kPa)下で蒸留により精製し、13.5gの純粋なPr-T EHM(収率:45%)を得た。これは、GC(保持時間:30.8~31.1分)、H、及び29Si NMRによって特定された。この試料は、70%のPr-T EHMのβ異性体及び30%のPr-T EHMのα異性体で構成された。H NMR(CDCl):δ4.69(Si-H)、3.55(-OCH)、1.36(CHCHCH-)、1.09(α異性体からの-CH)、0.92(CHCHCH-)、0.56(β異性体からの-CHCH-)、0.45(CHCHCH-)、0.2~0(-SiCH)。29Si NMR(CDCl):δ10~7(M)、-6~-8(M’)、-40~-43(T-OMe)、-63~-65(T-Pr)。
【化18】
【0081】
実施例8-ジ(トリメトキシシリルエチル-ペンタメチルトリシロキサン(Pr-T EHM)の調製
M’TPr(29.7g)、VTM(29.7g)、及びジコバルトオクタカルボニル(THF中に4mM、0.5mL、2μモル)を出発原料として使用することを除いて、実施例6の手順を繰り返す。反応を80℃で7時間実施する。
【表2】
【0082】
実施例9(比較例)
Co(CO)(PMeの試料を使用前に数ヶ月間室温で保存した後、トルエン中0.005MのCo(CO)(PMeの原液を作った。空気を含まないグローブボックス内で、1.1gのVTMS、1gのTMDS、及び0.25gのドデカン(内部標準)の混合物を、撹拌子を収容する20mLのシンチレーションバイアル瓶に加えた。トルエン中Co(CO)(PMe3)の0.005M溶液30μLを加えた。室温で30分間撹拌した後、反応混合物を50℃まで16時間加熱した。この段階で、反応混合物のアリコート(約150μL)を抜き取り、GCバイアル瓶に注入し、約1mLのキシレンで希釈した。反応をGC-FID(水素炎イオン化検出器を備えるガスクロマトグラフィー)及びGC-MS(質量分析計を有するガスクロマトグラフィー)によって分析した。分析により、反応が生じなかったことを示した。この実施例は、ホスフィン配位子がコバルト触媒中に含まれるときに、ジホスフィンのキレート化によってより良好な触媒活性をもたらすことができることを示す。
【0083】
実施例10(参照)-シーラント組成物試料の調合手順
スピードミキサーカップに、エチルトリメトキシシリル末端テトラメチルジシロキサン(上述の実施例で調製された)とα,ω-ビニル末端ポリジメチルシロキサンとのヒドロシリル化反応によって調製された、210.88gのトリメトキシ官能性ポリジメチルシロキサンを加えた。メチルトリメトキシシラン、テトラ-n-ブトキシチタネート、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、80%のチタンエチルアセトアセテートと20%のメチルトリメトキシシランとのスラリー、及びN-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミンのスラリーを、以下の表に示す比と同等の比で調製した。このスラリーから、13.16gをスピードミキサーカップに加えた。カップをDAC 600.2 VAC-P Speedmixer内で、毎分800回転(rpm)で30秒間、次いで1500rpmで30秒間混合した。次に、149.2gの沈降性炭酸カルシウムをカップに加え、800rpmで30秒間、及び1500rpmで30秒間混合した。次いで、カップの側部及び底部を、スパチュラを用いて手で掻き取った。次に、26.76gの粉砕炭酸カルシウムをカップに加え、800rpmで30秒間、及び1500rpmで30秒間混合した。再び、カップの側部及び底部を、スパチュラを用いて手で掻き取った。最後に、カップの内容物を真空環境に露出できるように、カップに、穴を備えるキャップを取り付けた。800rpm及び1平方インチ当たり5ポンド(psi)(34.5kPa)で30秒間、1500rpm及び5psi(34.5kPa)で30秒間、並びに800rpm及び14.7psi(101.35kPa)で30秒間混合することによって、カップを脱気した。得られたシーラント組成物を、手で操作されたカッププレスによりSemco(登録商標)チューブに移した。
【0084】
これらの比較例11及び12では、以下の表に従って2つの比較試料を調製した。(シーラント組成物1及びシーラント組成物2)
【表3】
【0085】
これらの仮想例13~16では、以下の表に従って試料を調製した。(シーラント組成物3、4、5、及び6)
【表4】
【0086】
上述のように調製された組成物試料を、不粘着時間(TFT)(Tack Free Time)及びスキンオーバー時間(SOT)(Skin Over Time)について以下の試験方法を使用して評価する。
【0087】
TFTを以下のように試験した。シーラントの100milスラブをポリエチレンテレフタレート(PET)片上に引き伸ばした。次いで、PETの小ストリップをシーラントの表面上に軽く押圧して、硬化を確認する。シーラントがPETのストリップに移らない場合、シーラントは不粘着であるとみなす。
【0088】
SOTを以下のように試験した。シーラントの100milスラブをPET片上に引き伸ばした。軽く触れたときにシーラントが手袋又は地指に移らない場合、シーラントはスキンオーバーされているとみなす。
【0089】
以下の表は、上述のように調製された比較シーラント組成物試料で行われた試験を示す。8ミリメートル(mm)の平行平板定応力レオメーター上で、少量の未硬化のシーラントを1.829mmに押圧し、カミソリ刃でトリミングした。シーラントを、指定された時間の間、定位置で硬化させた。次に、指定された時間の間、0.5psi(3.45kPa)の定応力をかけた。次いで、応力を解放し、シーラントを5分間回復させた。より速く硬化するシーラントは、応力期間中にクリープがより少なく、回復期間中にゼロにより近くまで回復する。
【表5】
【0090】
実施例17~46(仮想例)-シーラントの調合手順
Speedmixerカップに、以下の表のうちの1つにあるポリマーを加えた。メチルトリメトキシシラン、80%のチタンエチルアセトアセテートと20%のメチルトリメトキシシランとのスラリー、テトラ-n-ブトキシチタネート、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、及びN-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミンのスラリーを、以下の表中の配合物に見られる比と同等の比で調製した。いくつかの組成物試料は上記に列挙した全ての出発原料を含有しなかったことに留意されたい。カップに、このスラリーをその出発原料の合計と同等で加えた。次いで、カップをDAC 600.2 VAC-PSpeedmixer内で、1500rpmで1分間混合した。次に、使用する場合、沈降性炭酸カルシウム及び粉砕炭酸カルシウムの充当分を、カップに加え、2000rpmで30秒間混合した。最後に、カップの内容物を真空環境に露出できるように、カップに、穴を備えるキャップを取り付けた。800rpm及び5psi(34.5kPa)で30秒間、1500rpm及び5psi(34.5kPa)で30秒間、並びに800rpm及び14.7psi(101.35kPa)で30秒間混合することによって、カップを脱気した。得られたシーラントを、手で操作されたカッププレスによりSemco(登録商標)チューブに移した。成分を加える際に、極端でない変動は許容された。
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【表28】
【表29】
【表30】
【表31】
【表32】
【表33】
【表34】
【表35】
【産業上の利用可能性】
【0091】
上記の実施例は、高価である貴金属ヒドロシリル化触媒(白金族金属触媒など)の使用を必要とせずに、コバルト触媒により所望の生成物を生成できることを示す。
【0092】
上記の実施例及び比較例は、ポリオルガノシロキサンが本明細書に記載の方法により調製されたアルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーで末端封鎖され、>90モル%の直鎖状二価炭化水素連結基を有し、得られた末端封鎖ポリオルガノシロキサンが縮合反応硬化性組成物に配合される場合、組成物は、より少量の直鎖状二価ヒドロカルビル連結基及びより多量の分枝状二価炭化水素連結基を有するアルコキシ官能性オルガノハイドロジェンシロキサンオリゴマーで末端封鎖されたポリオルガノシロキサンを含有する比較組成物よりも、速く硬化することを示す。