(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】輝度補正装置、検査装置、輝度補正方法、及び輝度補正プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20221227BHJP
【FI】
G01N21/956 A
(21)【出願番号】P 2020028021
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2022-09-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115902
【氏名又は名称】レーザーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100129953
【氏名又は名称】岩瀬 康弘
(72)【発明者】
【氏名】金原 大樹
(72)【発明者】
【氏名】真継 至
(72)【発明者】
【氏名】足立 徹
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-220497(JP,A)
【文献】特開2007-285889(JP,A)
【文献】特開2013-192200(JP,A)
【文献】特開平09-288060(JP,A)
【文献】特開2005-265467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
G06T 1/00 - G06T 1/40
G06T 3/00 - G06T 9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1画像内の補正画素について、当該補正画素を含む第1の画像領域の輝度の第1の平均値及び第1の標準偏差を取得する第1の取得部と、
前記第1画像と比較する第2画像において、前記第1の画像領域に対応する第2の画像領域の輝度の第2の平均値及び第2の標準偏差を取得する第2の取得部と、
前記補正画素の輝度を、前記第1の平均値、前記第1の標準偏差、前記第2の平均値、及び前記第2の標準偏差に基づいて補正する補正部と
、
前記第1の画像領域の輝度をライン毎に取得する輝度取得部と、
備え、
前記第1の標準偏差は、前記第1の画像領域の輝度の二乗の平均値に基づいて算出され、
前記第1の画像領域は、ライン毎の輝度の取得に応じて更新され、
前記第1の画像領域の輝度の二乗の平均値は、前記第1の画像領域に新たに入る1ライン分の輝度の二乗の平均値を加算し、前記第1の画像領域から外れる1ライン分の輝度の二乗の平均値を減算することで更新される
輝度補正装置。
【請求項2】
前記補正部は、前記第1の画像領域の補正後の輝度の標準偏差が、前記第2の標準偏差と一致するように補正する請求項1に記載の輝度補正装置。
【請求項3】
前記第1の取得部は、前記第1の平均値及び前記第1の標準偏差を算出する請求項1または2のいずれかに記載の輝度補正装置。
【請求項4】
前記ライン毎に取得した輝度を遅延して遅延ラインとして出力する遅延部、をさらに備え、
前記遅延部は、前記第1の画像領域から外れる1ライン分の輝度を出力する
請求項
1に記載の輝度補正装置。
【請求項5】
第1画像内の補正画素について、前記補正画素を含む第1の画像領域の輝度の第1の平均値及び第1の標準偏差を取得する第1の取得部と、
前記第1画像と比較する第2画像において、前記第1の画像領域に対応する第2の画像領域の輝度の第2の平均値及び第2の標準偏差を取得する第2の取得部と、
前記補正画素の輝度を、前記第1の平均値、前記第1の標準偏差、前記第2の平均値、及び前記第2の標準偏差に基づいて補正する補正部と、
前記補正部が補正した第1画像と、前記第2画像とを比較し、比較結果に応じて検査対象の欠陥を検出する検出部と、
前記第1の画像領域の輝度をライン毎に取得する輝度取得部と、
備え、
前記第1の標準偏差は、前記第1の画像領域の輝度の二乗の平均値に基づいて算出され、
前記第1の画像領域は、ライン毎の輝度の取得に応じて更新され、
前記第1の画像領域の輝度の二乗の平均値は、前記第1の画像領域に新たに入る1ライン分の輝度の二乗の平均値を加算し、前記第1の画像領域から外れる1ライン分の輝度の二乗の平均値を減算することで更新される
検査装置。
【請求項6】
前記補正部は、前記第1の画像領域の補正後の輝度の標準偏差が、前記第2の標準偏差と一致するように補正する請求項
5に記載の検査装置。
【請求項7】
前記第1の取得部は、前記第1の平均値及び前記第1の標準偏差を算出する請求項
5または
6のいずれかに記載の検査装置。
【請求項8】
第1画像内の補正画素について、前記補正画素を含む第1の画像領域の輝度の第1の平均値及び第1の標準偏差を取得するステップと、
前記第1画像と比較する第2画像において、前記第1の画像領域に対応する第2の画像領域の輝度の第2の平均値及び第2の標準偏差を取得するステップと、
前記補正画素の輝度を、前記第1の平均値、前記第1の標準偏差、前記第2の平均値、及び前記第2の標準偏差に基づいて補正するステップと、を備え、
前記第1の画像領域の輝度はライン毎に取得され、
前記第1の標準偏差は、前記第1の画像領域の輝度の二乗の平均値に基づいて算出され、
前記第1の画像領域は、ライン毎の輝度の取得に応じて更新され、
前記第1の画像領域の輝度の二乗の平均値は、前記第1の画像領域に新たに入る1ライン分の輝度の二乗の平均値を加算し、前記第1の画像領域から外れる1ライン分の輝度の二乗の平均値を減算することで更新される
輝度補正方法。
【請求項9】
コンピュータに、
第1画像内の補正画素について、前記補正画素を含む第1の画像領域の輝度の第1の平均値及び第1の標準偏差を取得するステップと、
前記第1画像と比較する第2画像において、前記第1の画像領域に対応する第2の画像領域の輝度の第2の平均値及び第2の標準偏差を取得するステップと、
前記補正画素の輝度を、前記第1の平均値、前記第1の標準偏差、前記第2の平均値、及び前記第2の標準偏差に基づいて補正するステップと、を実行させる
輝度補正プログラムであって、
前記第1の画像領域の輝度はライン毎に取得され、
前記第1の標準偏差は、前記第1の画像領域の輝度の二乗の平均値に基づいて算出され、
前記第1の画像領域は、ライン毎の輝度の取得に応じて更新され、
前記第1の画像領域の輝度の二乗の平均値は、前記第1の画像領域に新たに入る1ライン分の輝度の二乗の平均値を加算し、前記第1の画像領域から外れる1ライン分の輝度の二乗の平均値を減算することで更新される
輝度補正プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輝度補正装置、検査装置、輝度補正方法、及び輝度補正プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体プロセスノードの微細化に伴い、マスク検査のさらなる高感度化が急務となっている。マスク検査方法として、Die-to-Die検査、Mask-to-Mask検査が知られている。
【0003】
Die-to-Die検査は、隣接するチップ(Die)の画像を比較し、輝度の差を検出する方法である。Mask-to-Mask検査は、露光処理前のマスクの画像と露光処理後のマスクの画像とを比較し、輝度の差を検出する方法である。Die-to-Die検査、Mask-to-Mask検査のいずれにおいても、比較する2つの画像の輝度には、照明条件の違いによる差が生じる場合がある。照明条件の違いは、例えば、マスク検査装置の光源の出力の時間的な揺らぎにより発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-53021号公報
【文献】特開2017-220497号公報
【文献】特開2003-287419号公報
【文献】特開2005-285898号公報
【文献】特開2019-163993号公報
【文献】特表2002-543463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の様に、マスク検査において、比較する2つの画像の輝度に差が生じる場合がある。このような場合、関連するマスク検査装置は、照明条件の違いに起因する輝度の差をマスクの欠陥として誤検出してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、比較する2つの画像の輝度の平均値と標準偏差とに基づいて、画像の輝度を補正することができる輝度補正装置、検査装置、輝度補正方法、及び輝度補正プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る輝度補正装置は、第1画像内の補正画素について、前記補正画素を含む第1の画像領域の輝度の第1の平均値及び第1の標準偏差を取得する第1の取得部と、前記第1画像と比較する第2画像において、前記第1の画像領域に対応する第2の画像領域の輝度の第2の平均値及び第2の標準偏差を取得する第2の取得部と、前記補正画素の輝度を、前記第1の平均値、前記第1の標準偏差、前記第2の平均値、及び前記第2の標準偏差に基づいて補正する補正部と、を備える。
【0008】
本発明に係る検査装置は、第1画像内の補正画素について、前記補正画素を含む第1の画像領域の輝度の第1の平均値及び第1の標準偏差を取得する第1の取得部と、前記第1画像と比較する第2画像において、前記第1の画像領域に対応する第2の画像領域の輝度の第2の平均値及び第2の標準偏差を取得する第2の取得部と、前記補正画素の輝度を、前記第1の平均値、前記第1の標準偏差、前記第2の平均値、及び前記第2の標準偏差に基づいて補正する補正部と、前記補正部が補正した第1画像と、前記第2画像とを比較し、比較結果に応じて検査対象の欠陥を検出する検出部と、を備える。
【0009】
本発明に係る輝度補正方法は、第1画像内の補正画素について、前記補正画素を含む第1の画像領域の輝度の第1の平均値及び第1の標準偏差を取得するステップと、前記第1画像と比較する第2画像において、前記第1の画像領域に対応する第2の画像領域の輝度の第2の平均値及び第2の標準偏差を取得するステップと、前記補正画素の輝度を、前記第1の平均値、前記第1の標準偏差、前記第2の平均値、及び前記第2の標準偏差に基づいて補正するステップと、を備える。
【0010】
本発明に係る輝度補正プログラムは、コンピュータに、第1画像内の補正画素について、前記補正画素を含む第1の画像領域の輝度の第1の平均値及び第1の標準偏差を取得するステップと、前記第1画像と比較する第2画像において、前記第1の画像領域に対応する第2の画像領域の輝度の第2の平均値及び第2の標準偏差を取得するステップと、前記補正画素の輝度を、前記第1の平均値、前記第1の標準偏差、前記第2の平均値、及び前記第2の標準偏差に基づいて補正するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、比較する2つの画像の輝度の平均値と標準偏差とに基づいて、画像の輝度を補正する輝度補正装置、検査装置、輝度補正方法、及び輝度補正プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1に係る検査装置の構成を例示する構成図である。
【
図2】
図1の処理装置の構成を例示する構成図である。
【
図3】実施形態1に係る輝度補正装置の構成を示す構成図である。
【
図4】比較する2つの画像領域を例示する図である。
【
図5】
図4に示す2つの画像領域の輝度の分布を示す図である。
【
図6】輝度分布の正規化の概要を示す概略図である。
【
図7】正規化した輝度分布に対する処理の概要を示す概略図である。
【
図8】実施形態1に係る輝度補正方法の概要を示す概略図である。
【
図9】関連する輝度補正装置の動作の概要を示す概略図である。
【
図10】実施形態1に係る輝度補正装置の動作の概要を示す概略図である。
【
図11】検証に使用した2つの画像を示す図である。
【
図12】
図11に示す2つの画像の輝度の差の分布を示す図である。
【
図13】検証に使用した検査範囲を示す概略図である。
【
図14】補正を行わない場合の検査結果を示す図である。
【
図15】輝度補正装置を使用した場合の検査結果を示す図である。
【
図16】低感度な検査を行った結果を示す図である。
【
図17】実施形態1に係る輝度補正装置を使用し、高感度な検査を行った結果を示す図である。
【
図18】輝度補正装置が行う補正方法の概要を例示する概略図である。
【
図19】平均値及び標準偏差の算出に用いられるブロックの例を示す概略図である。
【
図20】実施形態2にかかる輝度補正装置が、平均値を算出する方法の概要を示す概略図である。
【
図21】実施形態2にかかる輝度補正装置の構成を示すブロック図である。
【
図22】輝度補正装置を用いた検査方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態の具体的構成について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0014】
(実施形態1)
【0015】
本実施の形態にかかる検査装置1の構成例について、
図1を用いて説明する。
図1は、検査装置1の全体構成を模式的に示す図である。検査装置1は、ステージ10と、撮像光学系20と、処理装置100と、を備えている。処理装置100は、プロセッサ、及びメモリなどを備えたコンピュータである。
【0016】
図1では、説明の明確化のため、XYZの3次元直交座標系を示している。なお、Z方向が鉛直方向であり、試料40の厚さ方向と平行な方向である。したがって、Z方向が高さ方向となる。試料40の上面には、遮光膜などのパターン41が形成されている。Z方向は、試料40のパターン形成面(主面)の法線方向である。X方向、及びY方向が水平方向であり、試料40のパターン方向と平行な方向である。Z方向は、試料40の厚さ方向である。試料40は、微細なパターンが形成されたフォトマスクや半導体ウェハ等である。試料40がフォトマスクである場合、試料40は、矩形状のガラス基板となる。そして、X方向、及びY方向は試料40の端辺と平行な方向となっている。
【0017】
ステージ10には、撮像対象の試料40が載置されている。上記のように、試料40はフォトマスクであり、ステージ10上に保持されている。ステージ10上において、試料40はXY平面に平行に保持されている。ステージ10は、駆動機構11を有する3次元駆動ステージである。処理装置100が駆動機構11を制御することで、ステージ10がXYZ方向に駆動される。
【0018】
撮像光学系20は、光源21と、ビームスプリッタ22と、対物レンズ23と、光検出器24と、を備えている。なお、
図1に示す撮像光学系20は、適宜、簡略されている。撮像光学系20は上記の構成以外の光学素子、レンズ、光スキャナ、ミラー、フィルタ、ビームスプリッタなどが設けられていてもよい。例えば、撮像光学系20はコンフォーカル光学系であってもよい。
【0019】
光源21は、照明光L11を発生する。光源21は、ランプ光源、LED(Light Emitting Diode)光源、レーザ光源などである。光源21からの照明光L11は、ビームスプリッタ22に入射する。ビームスプリッタ22は、例えば、ハーフミラーであり、照明光L11のほぼ半分を試料40の方向に反射する。ビームスプリッタ22で反射した照明光L11は、対物レンズ23に入射する。対物レンズ23は照明光L11を試料40に集光する。これにより、試料40の表面(パターン形成面)を照明することができる。対物レンズ23の光軸OXは、Z方向と平行となっている。また、照明光L11は、試料40において、X方向を長手方向とするライン状の照明領域を照明している。
【0020】
試料40の表面で反射した反射光L12は、対物レンズ23で集光されて、ビームスプリッタ22に入射する。ビームスプリッタ22は、反射光L12のほぼ半分を透過する。ビームスプリッタ22を透過した反射光L12は、光検出器24に入射する。これにより、光検出器24が試料40を撮像することができる。対物レンズ23により試料40の像が光検出器24に拡大投影される。また、反射光L12を光検出器24の受光面に結像するためのレンズなどを設けてもよい。
【0021】
図1では、検査装置1が明視野照明方式の顕微鏡となっているが、検査装置1の照明方式は特に限定されるものではない。例えば、透過照明方式を用いた場合、光検出器24は、試料40を透過した透過光を検出する。光検出器24が検出する検出光は、試料40で反射した反射光に限られるものではなく、試料40を透過した透過光であってもよい。
【0022】
光検出器24は、試料40を撮像するための撮像素子を有している。光検出器24は、CCD((Charge Coupled Device)カメラやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどである。光検出器24は、照明光L11で照明された検出領域からの反射光L12を検出する。
【0023】
光検出器24は、X方向に配列された複数の画素を有している。ここでは、光検出器24として、TDI(Time Delay Integration)センサを用いている。光検出器24の受光面では、X方向に沿って複数の画素が配列されている。もちろん、光検出器24はTDIセンサに限られるものではない。光検出器24は、複数の画素が1列に配列されたラインセンサであってもよい。
【0024】
パターン41の有無に応じて、照明光に対する反射率が異なる。例えば、フォトマスクの場合、パターン41がある箇所では反射率が高くなり、パターン41がない箇所では反射率が低くなる。よって、パターン41の有無に応じて、光検出器24の受光量が変化する。光検出器24は、画素毎に、受光量に応じた検出信号(検出データ)を処理装置100に出力する。
【0025】
ステージ10は駆動ステージであり、試料40をXY方向に移動させることができる。処理装置100の駆動制御部150が、駆動機構11を制御している。駆動機構11が、試料40における検出領域を相対的に移動させる。駆動制御部150が、ステージ10をXY方向に移動させることで、試料40において、照明光L11による照明位置を変化させることができる。
【0026】
このため、試料40の任意の位置を撮像することができ、試料40のほぼ全面を検査することができる。もちろん、駆動制御部150が、ステージ10ではなく、撮像光学系20を駆動してもよい。すなわち、ステージ10に対する撮像光学系20の相対位置が移動可能になっていればよい。あるいは、光スキャナなどを用いて、照明光L11を走査してもよい。
【0027】
具体的には、ステージ10は試料40をY方向に移動させることができる。照明光L11は、試料40においてX方向に沿ったライン状の領域を照明している。また、光検出器24における画素の配列方向がX方向になっている。
【0028】
図2は、処理装置100の機能を示す構成図である。処理装置100は、撮影画像取得部110、参照画像取得部120、輝度補正部130、検出部140、及び駆動制御部150を備える。輝度補正部130は、輝度補正装置130ともいう。撮影画像取得部110は、試料40の検査画像を、光検出器24から取得する。以下では、試料40が露光処理後のフォトマスクであるとして説明する。撮影画像取得部110は、検査画像を、輝度補正部130に出力する。
【0029】
参照画像取得部120は、露光処理前のフォトマスクを撮影した参照画像を取得する。参照画像取得部120は、参照画像を、処理装置100が備える図示しない記憶装置から取得してもよく、図示しないサーバから取得してもよい。参照画像取得部120は、取得した参照画像を、輝度補正部130に出力する。
【0030】
輝度補正部130は、検査画像または参照画像の輝度を補正する。補正する画像を第1画像、補正しない画像を第2画像という。輝度補正部130は、補正後の第1画像と、第2画像とを検出部140に出力する。なお、輝度補正部130の機能については、後述する。輝度補正部130の機能は、FPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて実現されてもよく、ソフトウェアによって実現されてもよい。
【0031】
検出部140は、輝度補正部130が補正した第1画像と、第2画像とを比較し、比較結果に応じて検査対象である試料40の欠陥を検出する。例えば、検出部140は、補正後の第1画像の輝度と、第2画像の輝度との差分をとり、差分が所定の閾値を超えた箇所を欠陥として検出してもよい。駆動制御部150は、
図1のステージ10を駆動する。
【0032】
次に、輝度補正装置130の機能について説明する。上述したように、輝度補正装置130は、検査画像と参照画像のうちのいずれか一方の輝度を補正する。輝度を補正する画像を第1画像という。例えば、第1画像が参照画像の場合、第2画像は検査画像となる。輝度補正装置130は、第1画像内の補正画素の輝度を補正する。補正画素は、第1画像に含まれる全ての画素であってもよい。補正画素は、第1画像に含まれる画素の一部であってもよい。例えば、輝度補正装置130は、第1画像の端部の輝度を補正しなくてもよい。
【0033】
図3は、輝度補正装置130の機能構成を示す構成図である。輝度補正装置130は、第1取得部131と、第2取得部132と、補正部133とを備える。第1取得部131は、第1画像内の補正画素について、当該補正画素を含む第1の画像領域の輝度の第1の平均値及び第1の標準偏差を取得する。第1取得部は、第1の平均値及び第1の標準偏差を算出し、算出結果を取得してもよい。第1取得部131は、予め算出された第1の平均値及び第1の標準偏差を、図示しない記憶装置から取得してもよい。
【0034】
第1の画像領域は、補正画素ごとに異なる画像領域が設定されてもよい。第1の画像領域は、複数の補正画素に対して同一の画像領域が設定されてもよい。第1の画像領域は、第1画像全体であってもよく、第1画像の一部であってもよい。第1の画像領域は、例えば、補正画素を中心とする128×128pixelの画像領域である。
【0035】
第2取得部132は、第1画像と比較する第2画像において、第1の画像領域に対応する第2の画像領域の輝度の第2の平均値及び第2の標準偏差を取得する。第2の画像領域は、第1の画像領域に対応する画像領域である。例えば、第1の画像領域が補正画素を中心とする128×128pixelの画像領域である場合、第2の画像領域は、対応する128×128pixelの画像領域となる。第2取得部132は、第2の平均値及び第2の標準偏差を算出し、算出結果を取得してもよい。第2取得部132は、第2の平均値及び第2の標準偏差を、図示しない記憶装置から取得してもよい。補正部133は、補正画素の輝度を、第1の平均値、第1の標準偏差、第2の平均値、及び第2の標準偏差に基づいて補正する。
【0036】
尚、輝度補正装置130は、図示しない構成としてプロセッサ、メモリ及び記憶装置を備えてもよい。当該記憶装置には、本実施形態にかかる輝度補正方法の処理が実装されたコンピュータプログラムが記憶されている。そして、当該プロセッサは、記憶装置からコンピュータプログラムを前記メモリへ読み込ませ、当該コンピュータプログラムを実行する。これにより、前記プロセッサは、第1取得部131、第2取得部132、補正部133の機能を実現する。
【0037】
または、第1取得部131、第2取得部132、補正部133は、それぞれが専用のハードウェアで実現されていてもよい。また、各装置の各構成要素の一部又は全部は、汎用または専用の回路(circuitry)、プロセッサ等やこれらの組合せによって実現されもよい。これらは、単一のチップによって構成されてもよいし、バスを介して接続される複数のチップによって構成されてもよい。各装置の各構成要素の一部又は全部は、上述した回路等とプログラムとの組合せによって実現されてもよい。また、プロセッサとして、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(field-programmable gate array)等を用いることができる。
【0038】
本実施形態1にかかる輝度補正装置130は、第1画像と第2画像の撮影時の照明条件が異なる場合でも、輝度の分布が一致するように第1画像の輝度を補正することができる。以下、輝度の分布について説明する。
【0039】
図4に示す2つの画像は、第1の画像領域、及び第2の画像領域の例である。
図4の上図は、
図4の下図よりも明るい画像である。
図5は、
図4に示す2つの画像の輝度の分布を示す。
図5の上図と下図とは、分布のピークとなる位置、及びピークの広がりが異なる。つまり、2つの分布は、輝度の平均値、及び標準偏差が異なる。輝度の分布は、輝度ヒストグラムともいう。
【0040】
次に、上述した第1の平均値、第1の標準偏差、第2の平均値、及び第2の標準偏差の算出方法の例について、数式を用いて説明する。なお、2つの画像領域は、128×128pixelであるものとする。また、以下では、検査画像と参照画像のうち、参照画像の輝度を補正するものとする。つまり、参照画像を第1画像とし、検査画像を第2画像として説明する。
【0041】
第1の平均値Iref
avgは、式(1)により算出される。Iref(x、y)は、第1の画像領域の位置(x、y)における輝度である。第1の標準偏差σrefは、式(2)により算出される。
【0042】
【0043】
【0044】
なお、第2の平均値Idef
avgは、第2の画像領域の位置(x、y)における輝度Idef(x、y)を用いて、式(1)と同様に算出される。第2の標準偏差σdefは、輝度Idef(x、y)、及び第2の平均値Idef
avgを用いて、式(2)と同様に算出される。
【0045】
次に、補正部133の処理について数式を用いて説明する。補正部133は、第1の平均値Iref
avg、及び第1の標準偏差σrefを用いて、式(3)に従ってIref
norm(x、y)を算出する。つまり、補正部133は、輝度Iref(x、y)について、輝度の平均値が0、標準偏差が1.0になるように正規化を行う。
【0046】
【0047】
図6は、上述した正規化の概要を示す概略図である。
図6の上図は、第1の画像領域の輝度分布を例示する図である。上述した様に、輝度から第1の平均値を減算し、減算結果を第1の標準偏差で除算することにより、下図に示す標準化した輝度分布が得られる。標準化を行う前の輝度の分布が正規分布である場合、補正後の輝度分布は、ピークの位置が0、ピークの広がりが1となる。
【0048】
式(3)によりIref
normを算出した後、補正部133は、式(4)により補正後の輝度I’refを算出する。まず、補正部133は、補正後の標準偏差が第2の標準偏差σdefとなるように、Iref
norm(x、y)に第2の標準偏差σdefを乗算する。次に、補正部133は、補正後の輝度の平均値が第2の平均値Idef
avgとなるように、乗算結果に第2の平均値Idef
avgを加算する。補正部133は、第1の画像領域内の全ての画素を補正してもよい。補正部133は、第1の画像領域の中央の画素の輝度のみを補正してもよい。
【0049】
【0050】
図7は、式(4)の処理の概要を示す概略図である。
図7上図は、標準化した輝度分布I
ref
norm(x、y)を示す。
図7の下図は、補正後の輝度分布I’
ref(x、y)を示す。式(4)の処理は、標準化した輝度分布に第2の標準偏差を乗算し、乗算結果に第2の平均値を加算する処理である。上述した処理により、補正後の輝度分布において、ピークの位置は、第2の平均値となる。補正後の輝度分布において、ピークの広がりは、第2の標準偏差となる。
【0051】
補正部133は、式(5)に従って補正画素の輝度の補正を行ってもよい。式(5)は、式(3)と式(4)とを組み合わせたものである。
【0052】
【0053】
図8は、上述した式(3)および式(4)を用いた処理の概要を示す概略図である。左上図は、第1の画像領域の輝度分布を表す。第1の画像領域の輝度の分布に対して、式(3)の処理を行うことにより、右上図に示す正規化した輝度の分布が得られる。正規化した輝度分布に対して式(4)で示す処理を行うことにより、右下図に示す補正後の輝度分布が得られる。補正後の輝度分布は、第2の画像領域の輝度分布と類似する分布となる。
【0054】
次に、本実施形態にかかる輝度補正方法と、関連技術とを比較する。なお、以下の説明では、参照画像の輝度を補正するケースを説明する。つまり、参照画像を第1画像とし、検査画像を第2画像とする。
【0055】
図9は、関連技術による輝度補正方法の概要を示す概略図である。関連する輝度補正装置は、参照用のRef Dieの参照画像において、注目している注目pixelの周辺の128×128pixelの平均輝度Ave_refをリアルタイムに求める。なお、注目pixelは、本実施形態の補正画素に対応する。また、関連する輝度補正装置は、検査を行うTest Dieの検査画像において、対応する128×128pixelの平均輝度Ave_testを求める。そして、関連する輝度補正装置は、Gain=(Ave_test)/(Ave_ref)を算出する。最後に、関連する輝度補正装置は、算出したGainを注目Pixelの輝度に乗算することにより補正する。つまり、関連する輝度補正装置は、(注目pixelの補正輝度)=(注目pixelの補正前の輝度)*Gainにしたがって輝度を補正する。
【0056】
関連する輝度補正装置は、2つの画像領域の輝度の平均値が一致するように、輝度を補正することができる。しかし、標準偏差を用いていないため、関連する輝度補正装置は、2つの画像領域の輝度分布が一致するように輝度の補正を行うことはできない。したがって、関連する輝度補正装置は、照明条件の違いによる誤検出の発生を防ぐことはできなかった。
【0057】
図10は、本実施形態1にかかる輝度補正装置130が行う輝度補正方法を例示する図である。輝度補正装置130は、Ref Dieの参照画像において注目している注目pixelの周辺の128×128pixelの平均輝度Ave_ref(第1の平均値)、及び標準偏差Std_ref(第1の標準偏差)をリアルタイムに求める。また、輝度補正装置130は、検査画像の128×128pixelの平均輝度Ave_test(第2の平均値)、及び標準偏差Std_test(第2の標準偏差)を求める。輝度補正装置130は、参照画像の128×128pixelの画像領域と、検査画像の128×128pixelの画像領域との輝度分布が等しくなるよう補正する。つまり、輝度補正装置130は、式(5)と同様に、(注目pixelの補正後の輝度)=(注目pixelの輝度―Ave_ref)*(Std_test/Std_ref)+Ave_testとして補正を行う。
【0058】
輝度補正装置130は、2つの画像の輝度分布が一致するように輝度を補正することができる。例えば、輝度補正装置130は、明度やコントラストの異なる2つの画像の輝度が一致するように補正することが可能である。
【0059】
次に、本実施形態の効果を検証した結果を示す。まず、発明者は、TDIセンサカメラを用いて、マスクの同一箇所を100回スナップ撮影した。
図11の上図は、100枚のスナップ画像から明るい画像を10枚抽出し平均した画像である。
図11の下図は、100枚のスナップ画像から暗い画像を10枚抽出し平均した画像である。なお、暗い画像は、明るい画像よりも30%ほど輝度が低い。なお、10枚の画像の平均を用いているのは、輝度補正装置130の補正能力を確認するために、ノイズの影響を抑制する必要があったためである。
【0060】
図12は、上述した明るい画像と暗い画像とを比較した結果を示す。「補正なし」は、補正を行わなかった場合の2つの画像の輝度の差分値の分布を表す。「関連技術」及び「本実施形態」は、いずれか一方の画像を補正した場合の2つの画像の輝度の差分値の分布を表す。「関連技術」は、2つの画像の輝度の平均値のみを用いて補正を行った結果を示す。「本実施形態」は、2つの画像の輝度の平均値及び標準偏差を用いて補正を行った結果を示す。
【0061】
「本実施形態」において、輝度の差分値の最大値は4であり、補正しなかった場合の16、関連技術を用いた場合の8よりも小さい。よって、本実施形態1にかかる輝度補正方法は、関連技術に対して優位性があるといえる。本発明者は、輝度補正装置130の導入により、マスク検査装置の光源の光量変動による疑似欠陥の検出数を、数千、数百から数十に減らすことができた。
【0062】
また、発明者は、Golden Shareというマスク検査方法において疑似欠陥の検出数を減らすことができた。Golden Shareでは、まず、ある装置が、Reference用の参照画像を取得し、サーバに保存する。その後、別の検査装置が、当該参照画像を使用して、同一マスクに対してMask-to-Mask検査を行う。このような場合、装置が違うことから撮影に使用する光源の光量も異なるため、疑似欠陥が大量に検出されるという問題がある。本発明者は、輝度補正装置130の導入により、疑似欠陥が多く全面検査を行えないマスクに対して全面検査を行うことができた。なお、このときの疑似欠陥の個数は、約400個であった。
【0063】
次に、輝度補正装置130をDie-to-Die検査に使用する場合の効果について説明する。近年、Die-to-Die検査は、検査感度を上げて行われる場合がある。検査感度を上げた場合、画像の僅かなボケにより、疑似欠陥が検出されることとなる。以下、輝度補正装置130の導入が、Die-to-Die検査におけるボケの対策として有効であることを示す。
【0064】
本発明者は、2つの同一のDieを有するマスクにおいて、一方のDieをキャプチャした画像を使用し、他方のDieに対してMask-to-Mask検査を行った。検査装置は、MATRICS X8ULTRAを使用した。マスクは、SC611 OMOG(optics)を使用した。ボケに対する補正力を確認するため、発明者は、焦点をずらした状態で検査を行った。なお、
図13に示すようにDieの左側のみの検査を行った。
【0065】
図14は、補正を行わない場合の検査結果を示す。2つのDie画像の輝度の差分値が15以上の場合に、欠陥を検出するように設定している。なお、画像の輝度値は、8bitとする。A1は、検出された疑似欠陥の数を表す。なお、B1は上側のDieの画像を表示する領域であり、C1は下側のDieの画像を表示する領域である。また、D1は、2つの画像の輝度の差分をとった結果を表示する領域である。焦点のずれにより、正常パターン上に231個の疑似欠陥が検出されている。また、Die間の輝度の差分値は、最大で22であった。
【0066】
図15は、輝度補正装置130により補正を行った場合の検査結果を示す。補正を行わない場合と同様に、Die間の輝度の差分値が15以上の場合に、欠陥を検出するように設定している。A2は、検出された疑似欠陥の数を表す。補正により、疑似欠陥の数は24に低減されている。また、Die間の輝度の差分値は、最大で14であった。したがって、輝度補正装置130による補正は、Die-to-Die検査における画像のボケに対しても有効であるといえる。
【0067】
次に、本実施形態を用いて高感度なDie-to-Die検査を行った結果を示す。発明者は、欠陥としてソフトディフェクトを有するマスクを使用して検査を行った。
図16は、輝度補正装置130を使用せずに低感度な測定を行った結果である。正方形のマークは、検出された欠陥を表す。なお、上向きの三角形は、疑似欠陥を表す。検査装置は、1時間3分33秒で欠陥を132個検出した。
【0068】
図17は、輝度補正装置130を導入し、高感度な測定を行った結果を示す。検査装置1は、1時間3分45秒で、欠陥を166個検出した。輝度補正装置130の導入により、同程度の時間でより多くの欠陥を検出することが可能となった。また、発明者は、疑似欠陥を大量に検出する高い検出感度で本検証を行ったが、輝度補正装置130の導入により疑似欠陥の検出数を30個程度に抑えることができた。
【0069】
(実施形態2)
実施形態2は、実施形態1の輝度補正装置130の各機能をFPGAによって実現する。本実施形態2にかかる輝度補正装置130は、第1画像及び第2画像の輝度を1ラインずつ取得し、リアルタイムに輝度の補正を行う。なお、輝度補正装置130を含む検査装置の構成は、
図1と同様であるため説明を省略する。
【0070】
実施形態2にかかる輝度補正装置130は、実施形態1と同様に、検査画像または参照画像の輝度を補正する。以下、輝度補正装置130は、参照画像の輝度を補正するものとする。つまり、参照画像は第1画像であり、検査画像は第2画像である。
【0071】
輝度補正装置130は、参照画像において、所定サイズのブロック毎に第1の平均値と第1の標準偏差とを算出する。ここで、各ブロックは、第1の画像領域に対応する。また、輝度補正装置130は、検査画像において、所定サイズのブロック毎に第2の平均値と第2の標準偏差とを算出する。ここで、各ブロックは、第2の画像領域に対応する。ブロックは、例えば、16×16pixel、32×32pixel、64×64pixel、128×128pixelの画像領域である。輝度補正装置130は、ブロックの大きさを選択可能であってもよい。
【0072】
図18の左図は、検査するDieの形状を例示する。輝度補正装置130は、制御信号Sync_scan(lns_ena)がHighの場合に検査Dieの画像を取得する。輝度補正装置130は、
図18右図に示すように、検査の始まりと終わりにおいては輝度の補正を行わず輝度をそのまま出力してよい。検査開始から1/2ブロックの領域は、補正画素を中心とする1ブロック分の輝度を取得できないためである。検査終了前の1/2ブロックについても同様である。輝度補正装置130は、参照画像において、上述した範囲以外の画素を補正画素とする。輝度補正装置130は、補正画素の計算輝度を出力する。
【0073】
なお、ステージの揺らぎ等により位置ずれが発生する場合、検査装置は、レジストレーションによる画像の位置合わせを行う。このような場合、検査画像の端部の数ピクセル分は、検査に使用できない無意味な輝度となる可能性がある。輝度補正装置130は、所定のレジスタの値を変更することにより、輝度の補正を行う画像範囲を変更してもよい。例えば、入力画像の1ラインが128ピクセルの場合、輝度補正装置130は、128ピクセルより数ピクセル分狭い範囲で輝度の補正を行ってもよい。
【0074】
図19は、上述したブロックを例示する概略図である。1ch分のFPGAに入力される画像の横幅を、128ピクセルとする。ブロック12Aのサイズは、16×16pixelである。ブロック12Bは、32×32pixelである。ブロック12Cは、64×64pixelである。ブロック12Dは、128×128pixelである。輝度補正装置130は、検査画像の輝度を1ラインずつ取得する。つまり、ブロック12A、12B、12C、12Dは、
図19のx方向には動かず、y方向に検査画像をスキャンする。輝度補正装置130は、ブロック内の輝度の平均値、標準偏差に基づいて、当該ブロックの中央の1ラインの輝度を補正する。輝度補正装置130は、検査画像の1ライン分の輝度を取得したとき、ブロックの輝度の平均値及び標準偏差を更新する。なお、輝度補正装置130が行う処理の詳細については、後述する。
【0075】
図20は、輝度補正装置130が、ブロック内の輝度を計算する方法を例示する。輝度補正装置130は、ブロック12Dの輝度の平均値を計算しているものとする。輝度補正装置130は、新たに輝度を取得したライン13を含む128×128pixelの領域を新たなブロックとして、ブロックの輝度の平均値を計算する。ここで、ブロックの輝度の総和は、新たなブロックに入るライン13の輝度の和を加算し、新たなブロックから外れるライン14の輝度の和を減算することにより更新できる。したがって、本実施形態2にかかる輝度補正装置130は、効率よくブロック内の輝度の総和を算出できるため、効率よく第1の平均値および第2の平均値を算出できる。
【0076】
図21は、本実施形態2にかかる輝度補正装置130のブロック図である。輝度補正装置130は、第1取得部131、第2取得部132、及び補正部133を備える。第1取得部131は、第1画像の輝度を1ラインずつ取得する。第1取得部131は、第1の平均値Avg_refと、第1の標準偏差σ_refと、第1画像1ライン分の輝度Refとを補正部133に出力する。第2取得部132は、第2画像の輝度を1ラインずつ取得する。第2取得部132は、第2の平均値Avg_defと、第2の標準偏差σ_defと、第2画像1ライン分の輝度Defと、を補正部133に出力する。
【0077】
補正部133は、第1画像1ライン分の輝度Refを、第1の平均値Avg_ref、第1の標準偏差σ_ref、第2の平均値Avg_def、及び第2の標準偏差σ_defに基づいて補正する。補正部133は、式(5)と同様に、補正後の輝度Ref‘を、Ref’=(Ref-Avg_ref)*(σ_def/σ_ref)+Avg_defとする。
【0078】
第1取得部131は、第1遅延部1311と、二乗平均算出部1312と、平均値算出部1313と、標準偏差算出部1314と、第2遅延部1315とを備える。第2取得部132は、第1取得部131と同様に、第1遅延部1321と、二乗平均算出部1322と、平均値算出部1323と、標準偏差算出部1324と、第2遅延部1325とを備える。第2取得部132の構成は第1取得部131の構成と同様であるため、以下では、第1取得部131の構成について説明し、第2取得部132についての説明は省略する。
【0079】
図21のRefは、入力画像である。入力画像は、ブロックのスキャン方向前方の1ライン分の画像である。Refは、二乗平均算出部1312及び平均値算出部1313に入力される。なお、第1遅延部1311が出力する1ブロック分遅延させた画像も、二乗平均算出部1312及び平均値算出部1313に入力される。1ブロック分遅延させた画像とは、ブロックのスキャン方向後方の1ライン分の画像である。二乗平均算出部1312は、(1/n)ΣRef^2モジュールともいう。平均値算出部1313は、(1/n)ΣRefモジュールともいう。
【0080】
第1遅延部1311は、第1画像1ライン分の輝度を1ブロック分遅延させ、二乗平均算出部1312と、平均値算出部1313と、補正部133とに出力する。遅延させた1ラインを、遅延ラインという。二乗平均算出部1312は、1ブロック分の輝度の二乗の平均値を算出し、標準偏差算出部1314に出力する。ここで、二乗平均算出部1312は、新たに取得した1ライン分の輝度の二乗の平均を加算し、1ブロック分遅延させた1ライン分(遅延ライン)の輝度の二乗の平均を減算することにより輝度の二乗の平均を更新する。
【0081】
平均値算出部1313は、1ブロック分の輝度の平均値を算出し、標準偏差算出部1314と、第2遅延部1315とに出力する。ここで、平均値算出部1313は、新たに取得した1ライン分の輝度の和を加算し、1ブロック分遅延させた1ライン分(遅延ライン)の輝度の二乗の平均値を減算することにより輝度の第1の平均値を更新する。
【0082】
標準偏差算出部1314は、1ブロック分の輝度の第1の標準偏差を算出し、第2遅延部1315に出力する。標準偏差算出部1314は、二乗平均算出部1312および平均値算出部1313からの出力結果を用いて第1の標準偏差を算出する。ここで、標準偏差算出部1314は、分散公式を用いて第1の標準偏差を更新する。分散公式を式(6)に示す。ここで、μは、第1の平均値を表す。σは、第1の標準偏差を表す。nは、ブロック内の画素の数である。
【0083】
【0084】
第2遅延部1315は、平均値算出部1313から取得した第1の平均値と、標準偏差算出部1314から取得した第1の標準偏差とを、1/2ブロック分遅延させて補正部133に出力する。なお、1/2ブロック遅延させる理由は、第1遅延部1311が遅延して画像を出力するタイミングと、当該画像を中心とするブロックの平均値及び標準偏差を出力するタイミングとを合わせるためである。
【0085】
図22は、本実施形態2にかかる輝度補正装置130を使用した検査方法の流れを例示するフローチャートである。まず、検査装置1は、第1画像と第2画像とを取得する(ステップS11)。次に、輝度補正装置130は、上述した輝度補正を行う(ステップS12)。最後に、検査装置1は、第2画像と補正した第1画像とを比較し、輝度の差分から検査対象の欠陥を検出する(ステップS13)。
【0086】
本実施形態にかかる輝度補正装置130は、リアルタイムに画像の輝度の補正を行うことができる。したがって、検査時間を増やさずに輝度の補正を行うことが可能となる。
【0087】
尚、上述の実施形態では、ハードウェアの構成として説明したが、これに限定されるものではない。本開示は、任意の処理を、CPUにコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0088】
上述の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、DVD(Digital Versatile Disc)、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0089】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態による限定は受けない。また、実施形態1~2の各構成を組み合わせた実施形態も、発明の詳細な説明に記載の技術的思想に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
1 検査装置
10 ステージ
11 駆動機構
20 撮像光学系
21 光源
23 対物レンズ
24 光検出器
40 試料
100 処理装置
110 撮影画像取得部
120 参照画像取得部
130 輝度補正部
131 第1取得部
132 第2取得部
133 補正部
140 検出部
12、12A、12B、12C、12D ブロック
1311、1321 第1遅延部
1312、1322 二乗平均算出部
1313、1323 平均値算出部
1314、1324 標準偏差算出部
1315、1325 第2遅延部