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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】局所用ハーブ組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/287 20060101AFI20221227BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20221227BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221227BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20221227BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20221227BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20221227BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20221227BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
A61K36/287
A61K8/9789
A61P17/00
A61Q1/00
A61Q19/02
A61K9/06
A61K9/107
A61K9/08
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020503931
(86)(22)【出願日】2017-07-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 IB2017000873
(87)【国際公開番号】W WO2019021030
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2020-06-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)平成29年7月4日 SCS 2017年次大会(ロイヤル・カレッジ・オブ・フィジシャンズ、英国;主催者:SCS(www.scs.org.uk))にて発表 (2)平成29年7月14日 EXPRESSION COSMETIQUE、第45号、126~127頁(EDITIONS BGM発行)にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】501383820
【氏名又は名称】ツェーエルエル ヒェーミシェス・ラボラトーリウム・ドクター・クルト・リヒター・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100188374
【弁理士】
【氏名又は名称】一宮 維幸
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,サブリナ
(72)【発明者】
【氏名】プラデ,ハイコ
(72)【発明者】
【氏名】バン デル フーベン,ハラルト
【審査官】植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-213699(JP,A)
【文献】特表2007-523830(JP,A)
【文献】特表2012-509257(JP,A)
【文献】特表2016-526901(JP,A)
【文献】特開2007-153822(JP,A)
【文献】特表2016-518425(JP,A)
【文献】特表2013-518911(JP,A)
【文献】特表2014-526537(JP,A)
【文献】Journal of Herbal Medicine,2017年06月,Vol. 8,p. 31-39
【文献】Food Chemistry,2003年,Vol. 80,p. 399-407
【文献】Seasonal Variation in the Haemolytic Activity of the Capitula of Bellis perennis L.,CESKA A SLOVENSKA FARMACIE,2003年,Vol. 52,p. 39-41
【文献】世界薬用植物百科事典,誠文堂新光社,2000年,p. 218
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
9/00- 9/72
47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Bellis perennisから得られる成分の混合物およびHieracium pilosellaから得られる成分の混合物を含む、目の下の隈および/または腫れた目/腫脹の処置または予防における使用のための医薬製剤であって、成分の混合物が、アルコール抽出物、グリコール酸抽出物または水性抽出物、あるいは搾汁である、医薬製剤
【請求項2】
目の下の隈およびまたは腫脹が、遺伝、アレルギー、睡眠不足/疲労、過眠、湿疹、接触性皮膚炎、花粉症/アレルギー性鼻炎、ストレス、年齢に伴う薄くなった皮膚ならびに/または脂肪およびコラーゲンの喪失、鉄欠乏症または他の鉄障害、軽度の外傷、泣くこと、生活習慣の選択、体液貯留、日光への過剰な曝露、目の擦りや引っ掻き、ならびに投薬のいずれか1つにより引き起こされる、請求項1に記載の使用のための医薬製剤。
【請求項3】
目の下の隈および/または腫れた目/腫脹の美容的な処置または予防のための化粧用製剤であって、Bellis perennisから得られる成分の混合物およびHieracium pilosellaから得られる成分の混合物を含み、成分の混合物が、アルコール抽出物、グリコール酸抽出物または水性抽出物、あるいは搾汁である、化粧用製剤。
【請求項4】
目の下の隈および/または腫脹が、年齢に伴う薄くなった皮膚ならびに/または脂肪およびコラーゲンの喪失、生活習慣の選択、体液貯留、ならびに、生活習慣や生活状況による概日リズムの影響のいずれか1つにより引き起こされる、請求項3に記載の化粧用製剤。
【請求項5】
目の下の隈および/または腫れた目/腫脹の処置または予防のための医薬製剤または化粧用製剤としての使用のための、Bellis perennisから得られる成分の混合物およびHieracium pilosellaから得られる成分の混合物を含む、ハーブ組成物であって、成分の混合物が、アルコール抽出物、グリコール酸抽出物または水性抽出物、あるいは搾汁である、ハーブ組成物
【請求項6】
Bellis perennisから得られる成分の混合物およびHieracium pilosellaから得られる成分の混合物が、1:1または3:1の比(Bellis:Hieracium)(w:w)で存在する、請求項5に記載のハーブ組成物。
【請求項7】
pH値が、pH4.0~6.5である、請求項5に記載のハーブ組成物。
【請求項8】
Bellis perennisから得られる成分の混合物およびHieracium pilosellaから得られる成分の混合物が、組み合わせて、または別々に調製される、請求項1からのいずれか一項に記載の製剤または組成物。
【請求項9】
Bellis perennisから得られる成分の混合物が、Bellis perennis(特にBellis perennisの乾燥した頭状花)を、60℃の温度で4~8時間、pH5.0のクエン酸緩衝液で抽出すること、それによる薬物(すなわち植物):抽出媒体の割合は7:100(7%)~10:100(10%)である、および植物材料を液相から分離すること、により得られ、
Hieracium pilosellaから得られる成分の混合物が、Hieracium pilosella(特に乾燥した植物の全地上部)を、25℃~60℃の温度で2~4時間、pH5.0のクエン酸緩衝液で抽出し、それによる薬物:抽出媒体の割合は5:100(5%)~7:100(7%)であり、次いで、粗抽出物を限外ろ過(MWカットオフ:100kDa)により分画して、Hieracium pilosellaの100kDa未満の画分を得ること、により得られ、
2つの別々に得られた抽出物が組み合わせられる、請求項1から8のいずれか一項に記載の製剤または組成物。
【請求項10】
Bellis perennisから得られる成分の混合物およびHieracium pilosellaから得られる成分の混合物が、クロロゲン酸、シアニジン3-マロニルグルコシド、アピゲニンヘキソシド、アピゲニングルクロニド、アピゲニンメチルグルクロニド、ケンフェロールヘキソシド、ケルセチンヘキソシド、イソラムネチンヘキソシド、アピゲニングルコシド、イソラムネチングルクロニド、イソラムネチングルコシド、イソラムネチン、ペレンニソシドIII, IV, V, VI、ペレンニソシドXII、ペレンニソシドXIII、ペレンニソシドXIV、ペレンニソシドXV、ペレンニソシドXVIII & XIX、デスアシルペレンニソシド I, II & III、デスアシルペレンニソシドVIII & IXおよびデスアシルペレンニソシド X & XIを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の製剤または組成物。
【請求項11】
Bellis perennisから得られる成分の混合物およびHieracium pilosellaから得られる成分の混合物が、サポニン化合物であるベリシソシドC & E、ベリシソシドD、ペレンニソシドI & II、ペレンニソシドVII、ペレンニソシドVIII & IX、ペレンニソシドX & XI、ペレンニソシドXVI、ペレンニサポニンAおよびペレンニサポニンG; Hの1つまたは複数をさらに含んでもよい、請求項1から10のいずれか一項に記載の製剤または組成物。
【請求項12】
局所適用のための、請求項1から11のいずれか一項に記載の製剤または組成物。
【請求項13】
前記製剤または組成物が、クリーム、軟膏、エマルション、トニック、スティック、分散液、界面活性洗浄剤を含む製剤、溶液、ミセル水、ゲル、マスク、保湿ティッシュパッド、または保湿ティッシュマスクである、請求項12に記載の製剤または組成物。
【請求項14】
Bellis perennisから得られる成分の混合物およびHieracium pilosellaから得られる成分の混合物(ハーブ組成物)を1~10%(w/w)、1~5%(w/w)、3~5%(w/w)、5%(w/w)、または3%(w/w)含む、請求項5から13のいずれか一項に記載の製剤または組成物。
【請求項15】
Bellis perennisから得られる成分の混合物およびHieracium pilosellaから得られる成分の混合物(ハーブ組成物)を1~50%(w/w)、1~30%(w/w)、特に10~30%(w/w)含む、請求項5から13のいずれか一項に記載の製剤または組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの皮膚に対してオートファジー刺激性および/またはヘムオキシゲナーゼ活性化/誘発性の効果を有する、化粧および医薬用の局所用製剤に関する。本発明の局所用製剤はまた、VEGF-Cの産生を誘発し、メラニン合成を低減させ、エネルギーおよび細胞の機能を高める。
【0002】
さらに、本発明はまた、水性抽出によりBellis perennis L.および任意選択でHieracium pilosellaの成分の混合物を含むハーブ組成物を製造する新規の方法、および本発明のこの方法により製造される成分の混合物を含むハーブ組成物も提供する。
【0003】
本発明による医薬製剤は、目の下の隈および/または腫れた目を処置または予防するために使用され得る。
本発明によるハーブ組成物はまた、目の下の隈および/または腫れた目を美容的に処置または予防するための化粧用製剤において使用され得る。
【背景技術】
【0004】
目の下の隈は、一般的な現象である。隈は、人々が疲れたり、老けたりするように見せ、生活の質に著しい影響を及ぼし得る。男女ともに同様に影響を受けており、老化が原因となる役割を果たすにもかかわらず、隈は全ての年齢で見られる。
【0005】
隈の病態生理は、多因子であり、様々な生理学的および病態生理的な過程、ならびに環境刺激が関与し得る。したがって、隈の出現を抑える場合、隈を形成する様々な過程に対する一般的な原因を発見することが不可欠である。老化に関連する因子は重要であり、対処する必要があるが、隈の日内変動の背後にある過程が少なくとも重要である。
【0006】
以下に示す通り、様々な因子が、隈の視覚的な外観に寄与し得るが、それらは高い皮膚の透明性、皮膚のたるみや色素沈着の増大、リンパ排液の低下、およびうっ血(hemocongestion)などの因子を含み得る。
【0007】
目の下や目の周りの皮膚は、特に薄くなった。生物学的な老化過程および日光により促進される老化過程は、両方ともに皮膚をさらに薄くする重要な役割を果たすが、そこではコラーゲンや結合組織の他の成分が破壊され、皮下組織の減少や破壊がもたらされる。皮膚の厚みが減少することにより、皮膚はますます半透明になる。これは目の下の皮膚にとって特に問題であり、本明細書のように、皮膚の表面の直下に毛細血管、リンパ管、および筋肉の広大なネットワークが見出されている。この結果、皮膚が薄くなることは、隈の出現に大きな役割を果たす因子である、黒っぽい見た目をもたらす。
【0008】
老化により、皮膚はたるみ、重力により下瞼が下がることで陰影効果をもたらすので、隈の出現にさらに寄与する。加えて、皮膚のたるみが増すことにより、皮膚は引き延ばされるので、さらに薄くなり、より半透明になる。
【0009】
UV光に起因する損傷により、色素沈着過剰が起こり得る。とりわけ、スキンフォトタイプがより高い人々は、多くの場合、炎症後色素沈着過剰と呼ばれる現象を示す。これは、隈の出現に顕著な役割を果たす可能性がある。
【0010】
隈の出現における色素沈着過剰の因子は、表皮の現象だけではない。真皮のメラニンの沈着は、メラニンを含有するメラノソームをマクロファージが貪食する結果、いわゆるメラノファージを形成するが、隈の出現に重要な役割を果たすことが記載されている。
【0011】
リンパ管の最も重要な機能は、我々の体の間質領域(細胞外空間)において、体液、高分子および膠質浸透圧の均衡を保つことである。リンパ管は、余計な組織液を排出して血液循環に戻す。高分子および細胞は、直接リンパ管に入ることができる。
【0012】
老化過程の間、ならびに炎症過程の結果、リンパ管の数は少なくなり、血管透過性が高くなる。これにより、下瞼の浮腫、すなわち体液の貯留が生じる。この体液は、多くの場合、紫がかった色を呈し、目の下の皮膚の色に著しく影響を及ぼし得る。
【0013】
上述の通り、隈の原因、特に老化に関する別の重要な因子は、メラノファージでの真皮のメラニンの沈着である。皮膚のリンパ管は、皮膚からマクロファージを輸送する場合に極めて重要である。メラノファージは、メラニンを含有するマクロファージであり、隈の出現において皮膚のリンパ系の重要性の別の例示である。
【0014】
目の下の領域の血流は、ゆっくりで緩慢である。うっ血は、血流がゼロまで低下している状態であるが、目の下の皮膚でよく起こる現象である。酸素化ヘモグロビンは、赤みがかった色を有し、皮膚においてピンクがかった色味を生じる。対照的に、脱酸素化ヘモグロビンは、紫がかった色を有し、より青みがかった色味を生じる。うっ血は、脱酸素化ヘモグロビンの存在が大きいことに関連し、隈の出現に大きく寄与している。
【0015】
うっ血の結果だけでなく、炎症や老化の過程の結果、血管透過性は増す。真皮の間質領域において、漏出した赤血球が破裂し、ヘモグロビンを放出する。ヘモグロビンは、ヘム基を急速に放出する。ヘムの色は、非常に暗く、隈の出現に著しく寄与し得る。加えて、ヘムは、真皮において多くの有害な反応を誘起し得る分子であり、その多くは、隈の形成および維持に関連がある。
【0016】
ヘムは、とりわけ、皮膚の微小血管およびリンパ管の両方の上皮細胞に関連がある、細胞の損傷を生じる可能性がある。ヘムは、酸化ストレス、真皮での細胞外マトリクス(コラーゲン、エラスチンなど)の破壊を誘起し、炎症過程を開始し、隈の形成の病態生理を支持する。
【0017】
ヘムにより開始される炎症過程の結果、血管およびリンパ管の両方で透過性がさらに増すこととなる。したがって、ヘムは、老化関連型、および、日々、見た目を変える可能性がある急性型の両方で、隈の原因における主な寄与因子である。
【0018】
変色に関連する目の下の腫脹またはたるみはまた、皮膚の表面下で毛細血管からの漏出が異常に増加することを含む、多くの原因因子を有する。目の下の領域で皮下に貯留する体液により、多くは比較的暗い色である、たるんだ目として現れる浮腫が生じる。腫れた目またはたるんだ目は、美容的に許容できないと認識されるか、治療介入が必要な程度で存在することもある。これは、特にアレルギー、花粉症などに関連する場合がある。
【0019】
このような毛細血管の高い透過性の正確な理由は、必ずしも分かるとは限らないが、いくつかの要因、例えばストレス、アレルギー反応、腎臓機能不全、高血圧症、保水性、カフェインの過剰摂取、および睡眠不足が、問題に関連していると確認されている。内因性の老化および光損傷もまた、同様の変化をもたらす可能性がある。
【0020】
集中的に注目を集めるのはまさに目であるので、美容的に許容される見た目を保つために、変色および腫れた目またはたるんだ目は、回避または抑えることが望ましい。
人々は多くの場合、美容手術を行って、目の下の嚢を除去し、下瞼の滑らかさを修復する。美容手術の問題として、多額の費用、ならびに全ての手術手順で起こる麻酔および感染の危険性が挙げられる。
【0021】
目の下の皮膚に適用する化粧料は、下瞼を快適で滑らかに感じることだけを目的とする、植物抽出物などの成分を含有する。これは、表面の刺激を緩和するだけに等しく、目の下の腫れた皮膚に対して弾力や張りを修復するために皮膚の美容的な問題を対処していない。
【0022】
したがって、(a)目の下の嚢の形成を遅らせること、(b)目の下の腫れた皮膚を滑らかな皮膚輪郭に部分的または全体的に修復すること、および(c)目の下の隈を最小限にすることに効果的で、これにより目の周りの領域の若々しい見た目をもたらす製品に対する必要性が存在する。
【0023】
Bellis perennis L.は、通常イングリッシュデイジー(English daisy)またはローンデイジー(lawn daisy)としても知られており、キク科(Asteraceae)に属する。
【0024】
これは、関節症、食欲減退および睡眠障害などの異なる症候群を治療するためのホメオパシーで広く使用される。さらに、Bellis perennis L.はまた、ざ瘡、湿疹、低治癒性創傷、および組織のより深い外傷などの皮膚科の問題を治療するために伝統的に使用される(例えば、H.A.Hoppe、Drogenkunde、第1巻、Angiospermen、第8編、1975年、Dr.F.Losch、Krauterbuch、G.Leibold、Moderne Naturheilpraxis、Bassermann Verlag、1993年、M.Lange-Ernst、S.Ernst、Lexikon der Heilpflanzen、Honos Verlag、ならびに、W.D.Storl、Heilkrauter und Zauberpflanzen、AT Verlag、第2編、2000年を参照)。
【0025】
ごく最近、Bellis perennis L.は、薬理学的な調査の対象となっており、トリテルペン配糖体などの特定の成分は、広範な薬理学的な活性プロファイル、例えば抗真菌効果および抗微生物効果、抗発癌効果、ならびに虚血後の神経保護効果を呈することが確認されている(例えば、DE4206233、US6,444,233、G.Baderら、Pharmazie、1990年7月、45(8)、P.Avatoら、Planta Med、1997年12月、63(6)、およびC.Desevedavyら、Journal Nat Prod 1989年1~2月、52(1)を参照)。
【0026】
Hieracium Pilosella(同義語、Pilosella officinarum)は、ハイコウリンタンポポとしても知られているが、ヨーロッパや北アジアが起源のヒナギクの科であるキク科の花卉のうち黄色の花の種である。これは、1つの淡黄色の花を咲かす。これはアレロパシー植物である。多くのヤナギタンポポの種と同様に、非常に変化しやすく、数十の亜種ならびに数百の変種および形態の種複合体のメンバーである。
【0027】
Hieracium pilosellaは、クマリン類似の化合物で、ブルセラ症に対する公知の抗生物質であり、日焼け止めローションによくある活性化合物であるウンベリフェロンを含有する。この植物はまた強力な利尿剤であり、セルライトの治療のための、とりわけ、Ruscus aculeatus、カフェイン、ニコチン酸トコフェノール、Aesculus hippocastanum、またはカプサイシンを含有する製剤中に、さらなる(補助)成分として、示唆/使用されている(WO2004/110396、FR2729856、WO2012/052685)。
【0028】
EP790054は、異常色素沈着に関連する皮膚の問題を局所的に治療するための組成物を開示する。より具体的には、この文献は、目の下の顔面の皮膚の変色およびたるみを治療するために、好適なビヒクルと組み合わせた生きた酵母細胞誘導体を使用することに注目する。
【0029】
US5,204,105は、目の下の皮膚の腫脹を低減させ、目の下の皮膚の刺激および炎症の感覚を低減する薬剤であって、植物抽出物および酵母抽出物ならびにそれらの組合せからなる群から選択される薬剤に関連する。植物抽出物は、Ruscus aculeatus(ナギイカダ)、チドメグサ属(hydrocotyle)、Aesculus hippocastanum(セイヨウトチノキ)、Calendula officinalis(キンセンカ)、Hamamelis virginiana L.(マンサク、アメリカマンサク)、Equisetum arvense L.(トクサ、ホーステイル)、コゴメグサ属(Euphrasia)(コゴメバナ)、Prunus persica(モモ)、Alchemilla vulgaris(レディスマントル)、Hedera helix(ツタ)、Matricaria chamomilla(ジャーマンカミツレ)、およびヒレハリソウ属(Symphytum)(ヒレハリソウ)を含み得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
ゆえに、ヘムなどの隈および腫脹の形成を誘起する生物学的過程の岐路にある生理学的な事象に注目する、隈および腫脹を効果的に低減させる組成物に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は、この必要性を満たすことを特に対象とした医薬製剤および化粧用製剤を提供する。本発明による製剤は、目の下の腫れた皮膚を低減させ、皮膚の輪郭を滑らかにし、目の下の隈を低減させる。
【0032】
Bellis perennisおよびHieracium pilosella由来の成分を含む本発明によるハーブ組成物および局所用製剤は、隈の形成および維持における最も重要な側面を対処する。
【0033】
本発明によるハーブ組成物は、ヘムオキシゲナーゼおよびVEGF-Cの産生を誘起し、オートファジーを活性化し、細胞の機能性およびエネルギーを増大させる。これはまた、メラニン合成を低減させる。ゆえに、隈の出現、その色および表面積を減らし、目の周りの領域の若々しい見た目をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】ハーブ組成物によって、ケラチノサイトによるHO-1の発現が促進されることを示すグラフである。
図2】ハーブ組成物によって、ヘムに長期間曝露するにもかかわらず、HO-1の発現が促進されることを示すグラフである。
図3】ハーブ組成物によって、ケラチノサイトにおいて、代謝活性およびエネルギー産生の両方が増すことを示すグラフである。
図4】ハーブ組成物によって、オートファジーが促進されることを示すグラフである。
図5】ハーブ組成物によって、ヘムおよびUV照射によりストレスを受けたメラノサイトを含有する表皮モデルにおけるメラニン産生が減ることを示すグラフである。
図6】ハーブ組成物によって、リンパ管内皮細胞によりVEGF-C産生が増すことを示すグラフである。
図7】TGF-βの影響下で、ハーブ組成物によって、リンパ管内皮細胞によりVEGF-C産生が増すことを示すグラフである。
図8A】ハーブ組成物が、隈の表面積をプラセボより良好に縮小することを示す図である(in vivo)。
図8B】ハーブ組成物が、隈の表面積をプラセボより良好に縮小することを示す図である(in vivo)。
図8C】ハーブ組成物が、隈の表面積をプラセボより良好に縮小することを示す図である(in vivo)。
図9】ハーブ組成物が、プラセボより隈の表面積をより大きく縮小させることを示す図である。1日2回の適用(in vivo)で56日後に12名のボランティアから得られた結果である。
図10】ハーブ組成物が、プラセボより隈の色をより大きく低減させることを示す図である。1日2回の適用(in vivo)で56日後に12名のボランティアから得られた結果である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
既に上で述べた通り、本発明は、Bellis perennisおよびHieracium pilosella由来の成分が、ヘムオキシゲナーゼおよびVEGF-Cの産生を相乗的に誘起し、オートファジーを活性化し、細胞の機能性およびエネルギーを増大させ、また、メラニン合成を低減させ、そのようなものとして、目の下の隈ならびに腫脹の処置または予防に理想的に適しているという予想外の知見に基づいている。
【0036】
ゆえに、本発明は、以下を特に提供する。
1.Bellis perennisおよび任意選択でHieracium pilosellaから得られる成分の混合物を含む、目の下の隈(眼窩周囲の隈、眼窩内静脈うっ血)および/または腫れた目/腫脹(眼窩周囲の腫脹および/または眼窩周囲の浮腫)の処置または予防における使用のための医薬製剤(ハーブ組成物)。
【0037】
2.目の下の隈および/または腫脹が、遺伝、アレルギー、睡眠不足/疲労、過眠、湿疹(アトピー性皮膚炎)、接触性皮膚炎、花粉症/アレルギー性鼻炎、ストレス、年齢に伴う薄くなった皮膚ならびに/または脂肪およびコラーゲンの喪失(老化)、(貧血を伴うか、もしくは伴わない)鉄欠乏症または(若年性)ヘモクロマトーシス、炎症性応答の貧血などの他の鉄疾患、軽度の外傷、泣くこと、生活習慣の選択、体液貯留、日光への過剰な曝露、目の擦りや引っ掻き、ならびに投薬のいずれか1つにより引き起こされる、項目1に記載の使用するための医薬製剤。
【0038】
3.目の下の隈(眼窩周囲の隈、眼窩内静脈うっ血)および/または腫れた目/腫脹(眼窩周囲の腫脹および/または眼窩周囲の浮腫)の美容的な処置または予防のための化粧用製剤における使用のための、Bellis perennisおよび任意選択でHieracium pilosellaから得られる成分の混合物を含む組成物(ハーブ組成物)の使用。
【0039】
4.目の下の隈およびまたは腫脹が、薄くなった皮膚ならびに/または脂肪およびコラーゲンの喪失(老化)、生活習慣の選択、体液貯留、ならびに、生活習慣や生活状況による概日リズムの影響のいずれか1つにより引き起こされる、項目3に記載の使用。
【0040】
5.Bellis perennisおよびHieracium pilosellaから得られる成分の混合物を含む、ハーブ組成物。
6.Bellis perennisおよびHieracium pilosellaから得られる成分の混合物が、1:1~9:1、1:1~3:1、1:1~5:2、1:1~2:1、または1:1~3:1、好ましくは1:1または3:1の比(w:w)で存在する、項目5に記載のハーブ組成物。
【0041】
7.pH値が、約pH3~7.5、好ましくは約pH4.0~6.5である、項目5に記載のハーブ組成物。
この文脈では、項目1から4のいずれか一項に記載のハーブ組成物のpH値もまた、約pH3~7.5、好ましくは約pH4.0~6.5であることは留意されたい。
【0042】
8.成分の混合物が、アルコール抽出物、グリコール酸抽出物または水性抽出物である、項目1から7のいずれか一項に記載の製剤、組成物、または使用。
9.成分の混合物が、搾汁(生の(fresh)植物の汁)である、項目1から7のいずれか一項に記載の製剤、組成物、または使用。
【0043】
10.Bellis perennisおよびHieracium pilosellaから得られる成分の混合物が、組み合わせて、または別々に調製される、項目1から9のいずれか一項に記載の製剤、組成物、または使用。
【0044】
この文脈では、好ましい実施形態では、Bellis perennisおよびHieracium pilosellaから得られる成分の混合物が、好ましくは上記の項目6に記載の比で、別々に調製した後に組み合わせて調製されることは留意されたい。
【0045】
11.Bellis perennisおよびHieracium pilosellaから得られる成分の混合物または前記活性剤の少なくとも1つが発酵に供されている、項目1から10のいずれか一項に記載の製剤、組成物、または使用。
【0046】
12.前記発酵が、乳酸桿菌(Lactobacillus)発酵、ビフィズス菌(Bifidobacter)発酵または乳酸球菌(Lactococcus)発酵である、項目11に記載の製剤、組成物、または使用。
【0047】
13.医薬製剤または化粧用製剤における使用のための、項目5から12のいずれか一項に記載の組成物。
14.局所適用のための、項目1から4または13のいずれか一項に記載の医薬製剤、化粧用製剤または使用。
【0048】
15.前記製剤が、クリーム、軟膏、エマルション(ミルク)、トニック(ローション)、スティック、分散液、界面活性洗浄剤を含む製剤、溶液、ミセル水、ゲル、マスク、保湿ティッシュパッド、または保湿ティッシュマスクである、項目14に記載の実施形態。
【0049】
16.1~10%(w/w)、1~5%(w/w)、3~5%(w/w)、5%(w/w)、または3%(w/w)のBellis perennisおよびHieracium pilosellaから得られる成分の混合物(ハーブ組成物)を含む、項目5から15のいずれか一項に記載の実施形態。
【0050】
17.1~50%(w/w)、1~30%(w/w)、特に10~30%(w/w)のBellis perennisおよびHieracium pilosellaから得られる成分の混合物(ハーブ組成物)を含む、項目5から15のいずれか一項に記載の実施形態。
【0051】
本発明によるハーブ組成物およびその調製
本発明による植物から得られる成分の混合物を含む、ハーブ組成物。
成分は、Bellis perennisおよび任意選択でHieracium pilosellaの生のまたは乾燥した植物材料から得られる。
【0052】
好ましい実施形態では、ハーブ組成物は、Bellis perennisおよびHieracium pilosellaから得られる成分の混合物を含む。
Bellis perennis
Bellis perennisから得られる成分の混合物は、頭状花、全植物、または植物の地上部などの生のまたは乾燥した植物材料から調製することができる。植物材料は、摩砕するか、微粉化するか、または粉砕/破壊せずに使用することが可能である。
【0053】
植物の乾燥した地上部またはBellis perennisの乾燥した頭状花を使用することが好ましい。最も好ましくは、乾燥し、摩砕したBellis perennisの頭状花を使用することである。
【0054】
Hieracium pilosella
Hieracium pilosellaから得られる成分の混合物は、頭状花、全植物、または植物の地上部などの生のまたは乾燥した植物材料から調製することができる。植物材料は、摩砕するか、微粉化するか、または粉砕/破壊せずに使用することが可能である。
【0055】
植物の乾燥した地上部またはHieracium pilosellaの乾燥した全植物を使用することが好ましい。最も好ましくは、乾燥し、摩砕したHieracium pilosellaの植物の地上部を使用することである。
【0056】
Bellis perennisおよびHieracium pilosellaから得られる成分の混合物は、それぞれ、当業者に知られている任意の適切な方法により調製することができる。
【0057】
ゆえに、方法は溶媒抽出物を含むが、溶媒抽出物以外、例えば、液圧プレス(例として垂直な圧力層を備えた標準的な冷間液圧プレス技術)、ロールミルまたはダブルスクリュジューサを使用して、当業者に公知の方法により生の植物材料から得られる(冷たい)搾汁(生の汁)も意味する。
【0058】
本発明の好ましい実施形態にしたがって、Bellis perennisおよびHieracium pilosellaから得られる成分は、同種の方法により、好ましくはどちらも溶媒抽出により得られる。
【0059】
溶媒抽出物
本発明にしたがって、煎じ出し(decoction)、消化、浸出、ソクスレステーション(soxlethtation)、細断、または当業者に知られている任意の他の適切な抽出方法により得られるBellis perennis L.およびHieracium pilosellaの任意の抽出物を使用することができる。
【0060】
抽出媒体
好適な抽出媒体および溶媒は、水、水性緩衝液(例えばPBSもしくはクエン酸緩衝液)、グリコールまたはグリコールと水の混合物、アルコールまたはアルコールと水の混合物(例えば90:10もしくは50:50)、グリセリンまたはグリセリンと水の混合物である。
【0061】
好ましい抽出媒体/溶媒は、水または水性緩衝液、エタノール、エタノールと水の混合物、およびメタノールまたはメタノールと水の混合物である。加えて、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどのグリコール、または好ましくは5~60%の含水量を有するそれらの水混合物での抽出により得られる抽出物もまた、本発明にしたがって使用することができる。pH5.0のクエン酸緩衝液を使用することが好ましい。
【0062】
より好ましい実施形態では、Sorensenによるクエン酸ナトリウム緩衝液(0.1Mクエン酸二ナトリウムおよび0.1N HClを含有する緩衝液、pHは1.2~5.0であり、好ましくは2.0~5.0であり、最も好ましくはpH3.0である)を使用する。さらに好ましい実施形態では、Sorensenによるリン酸緩衝液(0.06Mリン酸カリウムおよび0.06Mリン酸二ナトリウム、pHは5~8の範囲であり、好ましくはpH5である)を使用する。
【0063】
なおより好ましい実施形態では、Sorensenによるクエン酸ナトリウム緩衝液を、pH5.0である0.1Mクエン酸一水和物(CxHO)および0.1Mクエン酸三ナトリウム二水和物の溶液と共に使用する。
【0064】
薬物と抽出媒体との比
薬物と抽出媒体(溶媒)との割合は、1:100(1%w/w)~20:100(20%w/w)、1:100(1%w/w)~50:100(50%w/w)の範囲であり、好ましくは3:100~10:100または3:100~30:100の範囲であり、より好ましくは5:100~10:100または5:100~7:100の範囲である。
【0065】
薬物と抽出媒体との割合は、5:100~10:100であり、好ましくは5:100~7:100が特に好ましい。
ハーブ組成物中の成分の比
本発明にしたがって、Bellis perennisおよびHieracium pilosellaから得られる成分の混合物は、比(Bellis:Hieracium)が1:1~1:9、好ましくは1:1~3:1または1:1~5:2、より好ましくは1:1~2:1または1:1~3:1の範囲で、ハーブ組成物中に存在しており、活性および/または安定性に対して最も好ましいのは、1:1および3:1である。
【0066】
最終ハーブ組成物のpH値
本発明のハーブ組成物のpH値は、約pH3~pH7の範囲であり、好ましくは約pH4.0~pH6.5の範囲である
上述した通り、それぞれの植物から別々の調製により(すなわち、各植物から別々に成分を得て、その後で得られた成分の混合物を組み合わせること)、または、出発植物の混合物から一緒に成分の混合物を得ることにより調製され得る、Bellis perennisおよびHieracium pilosellaから得られる成分の混合物を含む、本発明によるハーブ組成物。
【0067】
本発明のさらなる目的は、Bellis perennis L.の水性抽出物を製造するための方法、およびこの方法により得られる抽出物を提供することである。
Bellis perennisから得られる成分の混合物は、すなわち、EP1737538に開示されたプロセスおよび方法によって得ることができる。
【0068】
本発明にしたがって、抽出の時間および温度は、抽出媒体によって異なることができ、特に抽出時間は1時間~10日間である。より詳細には、時間は、1時間~24時間、2時間~8時間、1時間~4時間、または2時間~4時間が好ましい。
【0069】
温度は、20℃~100℃、好ましくは25℃~85℃または25℃~60℃の範囲であり得る。
本発明の特に好ましい実施形態では、Bellis perennisおよびHieracium pilosellaを、上述したようなSorensenクエン酸緩衝液などのpH5.0のクエン酸緩衝液で、別々に抽出した。
【0070】
例示的な方法
Bellis perennis(特にBellis perennisの乾燥した頭状花)を、60℃の温度で4~8時間、pH5.0のクエン酸緩衝液で抽出し、それによる薬物(すなわち植物):抽出媒体の割合は7:100(7%)~10:100(10%)であることが特に好ましい。抽出した後、植物材料を液相から、例えばデカンタCA22(Westfalia Seperator AG)により分離する。
【0071】
さらに、Hieracium pilosella(特に乾燥した植物の全地上部)を、25℃~60℃の温度で2~4時間、pH5.0のクエン酸緩衝液で抽出し、それによる薬物:抽出媒体の割合は5:100(5%)~7:100(7%)であることが特に好ましい。次いで、粗抽出物を限外ろ過(MWカットオフ:100kDa)により分画して、100kDa未満の画分を得る。
【0072】
100kDa未満の画分を、本発明による比で、Bellis perennisから得られる成分の混合物と組み合わせることによりハーブ組成物を調製するために使用する。
【0073】
ハーブ組成物の調製
本発明によるハーブ組成物を、当該技術分野において通常使用される防腐剤、例えばデヒドロ酢酸ナトリウム、2-ヒドロキシ安息香酸、1-フェニル-1-プロパノール、Dermosoft(登録商標)700B(レブリン酸、レブリン酸ナトリウム、グリセリンおよび水の混合物)、フェネチルアルコールまたは安息香酸ナトリウムを、当該技術分野において通常知られている濃度、例えば0.02%(w/w)、0.2%、0.3%(w/w)、0.5%(w/w)、0.85%(w/w)および0.5%(w/w)で、それぞれ添加することで便宜上保存することができる。
【0074】
デヒドロ酢酸ナトリウムおよび/または安息香酸ナトリウムを使用することは特に好ましく、これにより濃度の範囲は、0.2%~0.5%(w/w)が好ましい。
発酵によるハーブ組成物の安定化
本発明のさらなる実施形態では、Bellis perennisおよびHieracium pilosellaから得られる成分の混合物またはハーブ組成物の少なくとも1つは、任意選択で、発酵させ得る。
【0075】
このように得られたハーブ組成物は、向上した安定性および活性、例えば向上したエンドセリン-1活性を呈することができる。
前記発酵は、乳酸桿菌発酵、ビフィズス菌発酵または乳酸球菌発酵であることが好ましい。
【0076】
この効果のために、以下の亜種が好ましい:
ビフィズス菌longum種、乳酸球菌Lactis種、および乳酸桿菌Helveticus種。
【0077】
本発明による発酵のために、選択される細菌は、接種物を得るために最初に栄養培地で培養し、次いで、Bellis perennisおよび/もしくはHieracium pilosellaから得られる成分の液体混合物またはハーブ組成物に添加する。
【0078】
発酵は、約32~37℃の温度で約24~48時間、嫌気条件下で実施する。
加熱殺菌による細菌の不活性化、例えば85℃で約45分間での細菌の熱不活性化により、発酵を止める。
【0079】
以下の方法は、例示的な目的のみに役立ち、限定的なものと解釈するべきではない。
例示的な発酵方法
Lactococcus sp.を、以下の組成を有する栄養培地で培養した。
【0080】
【表1】
【0081】
微量元素溶液:
【0082】
【表2】
【0083】
Bellis perennisおよびHieracium pilosellaの抽出物を、(例えば)95℃で1時間、水中の10%の乾燥薬物により調製するか、または、組み合わせた抽出物もしくは別々の抽出物による、好ましくは組み合わせた抽出物による上記の方法によって調製した。
【0084】
バイオマスを分離し、液相を細菌に対する栄養培地として役立てた。さらなる実施形態では、バイオマスおよび液相を、抽出した後に分離せず、得られた懸濁液を細菌に対する栄養培地として役立てた。
【0085】
36℃で48時間、Lactobacillus inoculumを使用する嫌気条件下で発酵を実施した。この後、細菌の熱不活性化(85℃で45分間)により発酵を終了した。
【0086】
ハーブ組成物の特徴づけ
LC-HRMSによるハーブ組成物の特徴づけ
その成分による本発明のハーブ組成物の定性的な特徴づけを、液体クロマトグラフィ-高分解能質量分析(LC-HRMS)で実施した。
【0087】
すなわち、本発明のハーブ組成物を水で希釈し、Orbitrap Fusion質量分析計(Thermo Scientific)に接続された逆相キャピラリー液体クロマトグラフィシステム(Dionex Ultimate3,000NCS-3500RS Nano、Thermo Scientific)により分析した。
【0088】
好ましい実施形態では、本発明によるハーブ組成物(例えばF111)は、下記の表1に示された以下の成分を含む。
【0089】
【表3-1】
【0090】
【表3-2】
【0091】
以下の表2に示されるサポニン化合物は、本発明によるハーブ組成物の任意選択の成分である。
【0092】
【表4】
【0093】
本発明のハーブ組成物の乾燥含有量
本発明のハーブ組成物は、乾燥含有量(緩衝剤および防腐剤を含む)が約3.5%~5.5%、好ましくは約4%であることを特徴とする。LMBG(ドイツ食品日用品法)第35条L02.06-2(EC)の公式集にしたがって、含水量を決定するための改変された公式な方法により乾燥含水量を決定した。
【0094】
Bellis perennisから得られる成分の単独の混合物(すなわち、Hieracium pilosellaの成分と組み合わせる前)は、乾燥含有量(緩衝剤および防腐剤を含む)が約4.3%~5.3%、好ましくは約4.7%であることを特徴とする。
【0095】
Hieracium pilosellaから得られる成分の単独の混合物(すなわち、Bellis perennisの成分と組み合わせる前)は、乾燥含有量(緩衝剤および防腐剤を含む)が約3.3%~4.3%、好ましくは約3.7%であることを特徴とする。
【0096】
特に好ましい実施形態
本発明によるハーブ組成物の好ましい実施形態を、本出願において、「F111」(INCI名:Hieracium Pilosella(ヤナギタンポポ)抽出物、Bellis Perennis(ヒナギク)花抽出物)と称する。
【0097】
この好ましい実施形態は、上述の抽出方法を使用して、pH5.0であるSorensenによるクエン酸緩衝液(0.1Mクエン酸一水和物および0.1Mクエン酸三ナトリウム二水和物)で別々に抽出することにより調製する。
【0098】
このハーブ組成物は、pHの範囲が4.0~6.5を呈し、好ましくは、当該技術分野において通常使用される濃度で、デヒドロ酢酸ナトリウムおよび/または安息香酸ナトリウムなどの保存剤で保存させることができる。これは、好ましくは全製剤の総重量の3~5%(w/w)の濃度で、医薬/化粧用組成物/製剤に組み込むことが可能である。
【0099】
適応
治療的適用
本発明による医薬製剤は、目の下の隈(眼窩周囲の隈、眼窩周囲の色素沈着過剰、眼窩内静脈うっ血)および/または腫れた目/腫脹(眼窩周囲の腫脹および/または眼窩周囲の浮腫)を処置または予防するための治療法で使用することができる。
【0100】
目の下の隈およびまたは腫脹は、遺伝、アレルギー、睡眠不足/疲労、過眠、湿疹(アトピー性皮膚炎)、接触性皮膚炎、花粉症/アレルギー性鼻炎、ストレス、年齢に伴う薄くなった皮膚ならびに/または脂肪およびコラーゲンの喪失(老化)、鉄欠乏症、軽度の外傷、泣くこと、生活習慣の選択、体液貯留、皮膚の色素沈着異常(とりわけ黒人およびアジア人)、日光への過剰な曝露、目の擦りや引っ掻き、ならびに投薬のいずれか1つにより引き起こされる可能性がある。
【0101】
美容的適用
本発明による化粧用製剤は、目の下の隈および/または腫れた目を処置または予防するための化粧法で使用することができる。
【0102】
目の下の隈およびまたは腫脹は、遺伝、アレルギー、睡眠不足/疲労、過眠、湿疹(アトピー性皮膚炎)、接触性皮膚炎、花粉症/アレルギー性鼻炎、ストレス、年齢に伴う薄くなった皮膚ならびに/または脂肪およびコラーゲンの喪失(老化)、鉄欠乏症、軽度の外傷、泣くこと、生活習慣の選択、体液貯留、皮膚の色素沈着異常(とりわけ黒人およびアジア人)、日光への過剰な曝露、目の擦りや引っ掻き、ならびに投薬のいずれか1つにより引き起こされる可能性がある。
【0103】
化粧用製剤に対する好ましい適応は、年齢に伴う薄くなった皮膚ならびに/または脂肪およびコラーゲンの喪失(老化)、生活習慣の選択、体液貯留、皮膚の色素沈着異常(とりわけ黒人およびアジア人)、生活習慣や生活状況による概日リズムの影響による、目の下の隈および腫脹である。
【0104】
他の好ましい美容的な適応障害は、睡眠不足/疲労、過眠、日光への過剰な曝露による、目の下の隈および腫脹である。
本発明による植物の成分の混合物を含む組成物(本発明によるハーブ組成物)の試験
有効性研究-in vitroアッセイ
本発明によるハーブ組成物(以下、「F111」という)を用いて、防腐剤を含まないで、以下の研究を実施した。
【0105】
「F111」は、以下を特徴とし得る。
【0106】
【表5】
【0107】
【表6】
【実施例
【0108】
別の記載がない場合、アッセイに基づく細胞のデータは、DAPI染色により得られた細胞数で正規化している。
1.ヘムオキシゲナーゼ(HO-1)
ヘムは、ヘムオキシゲナーゼ(HO-1)により破壊される。HO-1は、酸化ストレスに対する皮膚の防衛機構に強く関与する酵素である。ヘムは、HO-1により破壊されて、ビリベルジンを得るが、ビリベルジンは、さらにビリベルジンリダクターゼにより破壊されて、ビリルビンとなる。ヘムは、暗色であり、ビリベルジンはむしろ緑色がかっており、ビリルビンは黄味がかっている。
【0109】
HO-1は、例えばケラチノサイトにより誘起可能で産生される。したがって、ケラチノサイト中にHO-1を誘起することは、ヘムの破壊を加速する興味深い手法である。皮膚色での上述の効果に加えて、ヘムの破壊は、上述の通り、ヘムにより誘起された有害過程の進行を停止する場合に非常に重要なものである。
【0110】
方法
ヒトケラチノサイト(HaCaT)を、48時間、試験化合物(それぞれPBSおよびF111)で処置した。HO-1の決定は、ELISA(R&D Systems,Inc.、KCB3776)で行った。相対蛍光単位は、540nm(ex.)/600nm(em.)で決定した。未処置の細胞は100%に設定する。
【0111】
結果
異なる濃度で、F111は、不死化ケラチノサイト(HaCaT)によりHO-1の産生を強力に促進する(図1)。これは、F111がヘム分解を促進し、隈の形成に対して作用する最も重要な過程の1つを支持することを示す。
【0112】
2.ヘムおよびHO-1の発現
ヘムは、酸化促進性で炎症促進性である。したがって、ヘムの存在は、皮膚細胞の機能性に悪影響を及ぼす可能性がある。ケラチノサイトはHO-1を産生する能力があり、ヘムに曝露される可能性があるので、ケラチノサイトによるHO-1産生でのヘムの効果が悪影響を及ぼさないことを確認することは重要である。
【0113】
方法
ヒトケラチノサイト(HaCaT)を、24時間、F111で前処置した。ヘム(5μM)を異なる時期に添加した。HO-1の決定は、ELISA(R&D Systems,Inc.、KCB3776)で行った。相対蛍光単位は、540nm(ex.)/600nm(em.)で決定した。未処置の細胞は100%に設定する。
【0114】
結果
不死化ケラチノサイト(HaCaT)細胞のヘム処置により、最初に、HO-1の産生を増大させるが、ヘムへの長期的な曝露(48時間)により、HO-1の産生は明らかに減少する(図2)。ヘムが炎症促進性であって酸化促進性であるので、これはおそらく、細胞が曝露される長期的なストレスの結果である。F111により、細胞がヘムの存在に対処することが可能となり、ヘムに長期的に曝露した後、HO-1の産生が増大する。これは、未処置の対照細胞とは相反する。この実験は、長期的なヘム曝露が皮膚細胞に悪影響を及ぼし得る隈でのin vivo状況を模倣し、F111は、ここで、この悪影響に対して効果的に補償することができることを示す。
【0115】
相乗効果の実証のためのヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)アッセイ
本発明者らは、Bellis perennisおよびHieracium pilosellaから得られる組み合わせた成分(例えばF111)で得られる相乗効果を、Bellis perennisおよびHieracium pilosellaの別々の抽出物で得られる効果と比較して実証するために、ヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)アッセイを行った。
【0116】
Bellis perennisおよびHieracium pilosellaの別々の抽出物を、得られる液相を組み合わせずに、本発明による組成物に対する上述の方法により、Sorensenクエン酸緩衝液pH5.0で調製した。
【0117】
方法
ヒトケラチノサイト(HaCaT)を、24時間、Hieracium pilosella抽出物もしくはBellis perennis抽出物またはF111で前処置した。ヘム(5μM)を異なる時期に添加した。HO-1の決定は、DuoSet(登録商標)IC total Heme Oxygenase1 ELISA(R&D Systems,Inc.、DYC3776-2)で行った。吸収率は、450nm(ex.)/570nm(em.)で決定した。
【0118】
未処置の細胞は100%に設定した。
結果
相乗効果により、ヘムに曝露した後、ヒトケラチノサイトでのHO-1の発現は促進される(以下の表3を参照)。
【0119】
ケラチノサイトのHO-1の基本的な発現は、より低い濃度におけるHieracium pilosellaでの処置により誘起できない。
HO-1の明白な発現は、全ての濃度で、Bellis perennisの抽出物を適用した後で観察することができる。
【0120】
F111での処置は、HO-1のさらにより高い発現を誘起し、相乗効果を示した。
この効果は、特に48時間で、損傷したヘムの存在下でさらにより明白である。
【0121】
【表7】
【0122】
3.細胞エネルギーおよび代謝回転
表皮由来の皮膚細胞であるケラチノサイトの機能性は、特に、老化や炎症の状況下を経験する。ケラチノサイトは、細胞シグナル伝達で不可欠な役割を果たす。そうして、これらは、真皮コンパートメント、細胞外マトリクス(コラーゲンなど)で見られる皮膚内の領域、ならびに血管およびリンパ管に対する細胞シグナル伝達に基づいている。ケラチノサイトの機能性が喪失すると、真皮コンパートメントの構造に悪影響を及ぼす可能性があるので、対処しなければならない。
【0123】
方法
ヒトケラチノサイト(HaCaT)を、24時間、F111で前処置した。ATPの決定は、発光アデノシン三リン酸検出アッセイ(Packard Instrument Company,Inc.、6016541)で行った。発光は、発光読取装置(Spectramax Paradigm、Molecular Devices,LLC.)で決定した。代謝活性は、テトラゾリウム塩(MTT)アッセイで測定した。吸収率は、570nmで、マイクロプレート読取装置(Spectramax Paradigm、Molecular Devices,LLC.)で決定した。未処置の細胞は、対照として役立て、100%に設定した。
【0124】
結果
0.5%および1.0%の両方でのF111により、不死化ケラチノサイト(HaCaT)による代謝活性およびATP(エネルギー)産生は高められる(図3)。したがって、F111は、これらの細胞に良い影響を及ぼし、その機能性および健康を高めることを示す。ここで得られる結果の少なくとも一部は、下記のオートファジーでのF111の影響に起因する可能性がある。隈の重要な特徴の1つに細胞ストレスがあり、これは細胞の機能性に著しい影響を及ぼし得る。この実験の結果は、F111がこのストレスに対する補償において皮膚細胞を支持することを示す。
【0125】
4.オートファジー
オートファジーは、細胞が、古い機能不全の細胞小器官およびタンパク質凝集体をリサイクルすることができる過程である。このような「細胞廃棄物」の蓄積は、細胞老化において重要な特徴である。したがって、オートファジーの誘因は、賢明なアンチエイジングの手法であり、細胞の寿命および機能性を高める。
【0126】
オートファジーは、隈の文脈において、別の重要な役割を果たす。これは、ケラチノサイトがメラニン含有メラノソームを分解する過程である。この役割において、オートファジーは、皮膚色を調節する重要な決定要素であることが記載されているので、オートファジーの誘因は、美白に対する賢明な手法である。
【0127】
方法
ヒトケラチノサイト(HaCaT)を、24時間、F111で前処置した。細胞を2μMクロロキンで処置した(オートファジーフラックスの阻害)。細胞をさらに48時間、F111と共に/F111を伴わずにインキュベートした。LC3Bの決定は、LC3B(D11)XP(登録商標)Rabbit mA(New England Biolabs,Inc.)を使用するELISAにより行った。検出抗体は、抗ウサギIgG(H+L)、F(ab’)2フラグメント(Alexa(登録商標)488)(New England Biolabs,Inc.)だった。蛍光読取装置(Spectramax Paradigm、Molecular Devices,LLC.)で、蛍光を485nm(励起)および535nm(発光)で測定した。
【0128】
結果
0.5%および1.0%の両方でのF111は、不死化ケラチノサイト(HaCaT)においてオートファジーを強力に誘起する(図4)。これは、(上で証明された通り)細胞のアンチエイジング過程を強力に支持し、細胞の機能性を高めることができることを示す。この活性に伴い、F111は、メラノソームを破壊する細胞の過程を支持し、美白の活性をもたらす。
【0129】
5.ヘムおよびUV照射の影響下でのメラニン産生
老化に関する色素沈着または炎症過程の結果の色素沈着の両方は、隈の出現に重要な役割を果たす。したがって、この現象での有効成分の効果をより詳細に試験することは適切である。ヘムは、炎症促進性で酸化促進性であり、隈の形成に関与する過程の陰で「モータ」として重要な役割を果たすが、具体的には隈に関するメラニン産生の誘起因子とみなされ得る。明らかに、UV照射も、メラニン産生の重要な誘起因子である。ヘムと同様に、UV光は、皮膚の炎症過程および酸化過程の誘起因子である。したがって、ヘムでの処置およびUV照射を伴うヘムでの処置が、メラニン合成に影響を及ぼすかどうか、有効成分がこれを低減できるかどうかを試験することを目的とする。
【0130】
方法
第1週:メラノサイトを伴うヒト表皮の等価物(epiCS-M、CellSystems GmbH)を、基底側で1週間、10μMヘムで処置した。皮膚モデルのいくつかを、1日1回、0.3J/cmのUVA+0.03J/cmのUVBで照射した。第2週:ヘムの処置および照射を停止し、モデルを7日間、水(対照)または3%のF111(水中)のいずれかで処置した(先端側)。皮膚モデルのメラニン成分を抽出し、光計測方法により定量化した。
【0131】
結果
ヘムに曝露した、メラノサイトを伴うヒト表皮の等価物は、メラニンの産生が高まることを明示する。この設定において、F111での処置は、メラニン産生が明らかに減ることを示す(図5)。これらの表皮皮膚の等価物をヘムおよびUV照射の両方に曝露することは、メラニン産生がさらに高まることを示す。ここで、F111での処置は、ヘムのみに曝露するよりもさらに大きくメラニン産生が減ることを示す。これらの結果により、隈の形成および維持に極めて関連する状況下で、F111がメラニン産生を減らすことが明白に実証される。
【0132】
6.VEGF-C、リンパ管内皮細胞およびケラチノサイト
VEGF-Cは、機能性リンパ管の産生を促進する成長因子である。これは、上述の通り、隈の原因において非常に重要である。したがって、VEGF-Cの産生を誘致することは、隈に対抗することにおいて極めて重要である。目領域において、体液の貯留が比較的急速に起こる。この体液は、細胞、鉄、および高分子、特にタンパク質を含有する。この鉄が浸透圧をもたらすのに対して、タンパク質は膠質浸透圧と呼ばれる現象をもたらす。膠質浸透圧は、タンパク質により誘起される浸透圧の種類として説明することができる。したがって、VEGF-C発現の有効成分の効果を決定する実験において、浸透圧は考慮されるべきである。ケラチノサイトが、リンパ管内皮細胞に対することを含む細胞連絡で不可欠な役割を果たすので、VEGF-Cに関連するリンパ管内皮細胞へのケラチノサイト連絡の効果を決定する実験設計において、有効成分の効果を分析することを特に目的とする。
【0133】
方法
in vitro状況において、ケラチノサイトは、それらの媒介物質を細胞培養培地に放出する。この培地は、リンパ管内皮細胞に移すことができ、VEGF-Cを発現するその能力を決定することができる。ヒトケラチノサイト(HaCaT)を、24時間、F111で前処置した。培地の容積モル浸透圧濃度をNaCl溶液で調節し、細胞をさらに24時間インキュベートした。
【0134】
培地をヒト真皮リンパ管内皮細胞(HDLEC)に移し、さらに24時間インキュベートした。VEGF-Cの決定は、ELISA(R&D Systems,Inc.、#DVEC00)で行った。吸収率は、450nm/540nmで測定した。未処置、未損傷の細胞は、対照として役立て、100%に設定した。
【0135】
結果
浸透圧は、ケラチノサイトにストレスを与える。高浸透圧的にストレスを受けたケラチノサイトに由来する培地中のリンパ管内皮細胞を培養することで、VEGF-Cはわずかに増大させる(図6)。同一の設定において、ここではF111によるケラチノサイトの処置を含むが、リンパ管内皮細胞によりVEGF-C産生がさらにより明白に増すことが観察され得る。
【0136】
正常な容積モル浸透圧濃度でF111の存在下でのケラチノサイトの処置に由来する培地でのリンパ管内皮の培養でも、わずかではあるがVEGF-Cの産生が増す。この結果は、F111が新しい機能性リンパ管の形成を支持することを示す。この作用に伴い、F111は、隈に対抗する場合に不可欠な活動である、過剰な体液、炎症細胞および真皮の間質領域由来のヘムの排出を促進することに重要な役割を果たす。
【0137】
7.VEGF-C、TGF-βおよびリンパ管内皮細胞
TGF-βは、真皮構造を管理する重要な成長因子である。これは、例えばコラーゲン、エラスチンおよびヒアルロン酸の産生を誘起し、皮膚の張り、弾力および厚みを維持するのに中心的な役割を果たす。しかし、その産生は老化した皮膚では低減する。真皮構造の喪失が皮膚のたるみおよび透明性を増大させるので、TGF-βは考慮すべき重要な因子である。しかし、血清、タンパク質および細胞の間質領域への漏出による高浸透圧環境である、目の下の領域において、TGF-βは重大な悪影響を及ぼし、リンパ管内皮細胞によるVEGF-Cの発現を低減させる。TGF-βは、真皮の質に対して不可欠な成長因子であるが、高浸透圧下のVEGF-C発現の悪影響は補償されるべきである。
【0138】
方法
ヒト真皮リンパ管内皮細胞(HDLEC)を24時間、F111で前処置した。培地の容積モル浸透圧濃度をNaCl溶液で調節した。TGF-βと共に/TGF-βを伴わずに、さらに24時間インキュベートを開始した。VEGF-Cの決定は、ELISA(R&D Systems,Inc.、#DVEC00)で行った。吸収率は、450nm/540nmで決定した。未処置、未損傷の細胞は、対照として役立て、100%に設定した。
【0139】
結果
容積モル浸透圧濃度が増すことで、リンパ管内皮細胞によるVEGF-Cの発現が増すことになる。TGF-βの処置により、高浸透圧ストレスにさらされていない細胞と同様に、VEGF-Cの発現が低減される。したがって、TGF-βは、重要な悪影響を発揮し、リンパ管新生を防ぐ。高浸透圧下でのF111の処置により、VEGF-Cの発現は高められ、F111は、興味深いことにTGF-βの悪影響を強力に保証する(図7)。F111による新しいリンパ管産生に対する良好で関連する影響は、その後、さらに強調される。
【0140】
DAPI細胞染色
DAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)での細胞染色は、細胞数を測定し、細胞数の補正に役立つ。
【0141】
DAPIは、蛍光顕微鏡を使用してDNAを標識する蛍光染料である。化合物は、DNAの副溝でのATリッチ領域に優先的に蓄積する。紫外線光で励起される場合、DAPIは青色からシアン色に蛍光する。二重鎖DNAに接触すると、吸収最大値は波長が358nmであり、発光最大値は461nmである。
【0142】
細胞を成長させ、上述の方法で説明した通りに処置した。0.0005%のDAPIを伴うメタノール溶液を、37℃で15分間、細胞層に適用した。その後、細胞を二重蒸留水で洗浄し、マイクロタイタープレートを37℃で30分間、乾燥させた。
【0143】
蛍光読取装置(Fluoroscan Ascent FL、Labsystems)で、蛍光を355nm(励起)および600nm(発光)で測定した。
有効性研究-in vivoアッセイ(図8図10
本発明によるハーブ組成物(以下、「F111」という)を用いて、防腐剤を伴って、以下の研究を実施した
「F111」は、以下を特徴とし得る。
【0144】
【表8】
【0145】
【表9】
【0146】
隈の低減
F111が隈を低減させるかどうかを評価するために、12名のボランティアが、1日2回、56日間、それぞれの目領域に、3%のF111および対応するプラセボを含有するものである、化粧用製剤を適用する研究を行った。研究の開始時、および化粧用製剤を適用した56日後、VISIA(登録商標)デバイス(Canfield Scientific,Inc.)を使用して、規格写真を撮影した。このデバイスは、標準的な環境で詳細な撮像が可能であるが、外光の影響は許容しない。これは、異なる時点での同一人物の異なる画像を比較することができる。
【0147】
次いで、規格写真を、Newtone Technologies(Lyon、France)によりデジタルで分析した。CanfieldおよびNewtoneにより提供される技術を組み合わせて使用することにより、隈への化粧料の効果に対する結論が導かれる。
【0148】
写真のデジタル分析を通して、隈に関する重要なパラメータ、例えば、いわゆるITA°(個々の類型的角度(Individual Typological Angle))が生成される。ITA°は、皮膚の暗さに関連するパラメータである。隈の低減は、全体的に、ITA°の値が増加した場合に得られる。
【0149】
隈の低減に不可欠な特徴にその表面積がある。隈の表面積を縮小することは、隈の視認性に対して非常に重要な役割を果たす。
結果
個別の結果は、56日間の3%のF111の適用が、隈の表面積を明らかに縮小させることを示す(図8)。
【0150】
3%のF111およびプラセボの製剤で得られる効果の分析は、ここでは全ての個体の隈の実際の表面積に注目しているが(図9)、3%のF111がプラセボより効果的に隈の表面積を縮小させることを明示する。
【0151】
隈へのF111の効果をさらに強調するために、追加の分析を、それらの色および視認性に関するパラメータに対して行った。3%のF111を含有する製剤の適用により、プラセボで得られるものより明らかに大きなパラメータITA°の値の増加が生じる(図10)。
【0152】
本発明の化粧用製剤または医薬製剤
本発明による前記植物の成分の混合物を含む組成物(ハーブ組成物)は、前記混合物と哺乳動物の体の作用部位、好ましくは人類のものとの間に接触させる任意の手段、およびそれらを含有する化粧用製剤または医薬製剤の形態で投与することができる。
【0153】
本発明にしたがって、局所適用のための化粧用製剤または医薬製剤、および本発明による製剤の局所適用が特に好ましい。
ゆえに、本発明は、本発明による(ハーブ)組成物を含む、(人の目の領域周りに)局所/皮膚適用に好適な医薬製剤および化粧用製剤をさらに提供する。
【0154】
本発明による(ハーブ)組成物は、当業者に知られている一般的な化粧用製剤または医薬製剤を含み得(例えば、Bauerら、Pharmazeutische Technologie、第5編、Govi-Verlag Frankfurt、1997年、Rudolf Voigt、Pharmazeutische Technologie、第9編、Deutscher Apotheker Verlag Stuttgart、2000年を参照)、例えば、O/WおよびW/Oクリーム、O/WおよびW/Oエマルション(ミルク)、軟膏、トニック(ローション)、ゲル、多重エマルション(W/O/WおよびO/W/O)、化粧用分散液(水性分散液および油性分散液)、スティック、界面活性剤、特に界面活性洗浄剤を含む製剤、単純溶液(油性もしくは水性)、ミセル水、またはマスクである。
【0155】
本発明による化粧用製剤または医薬製剤は、好ましくは、乳化基剤、特にO/WクリームおよびO/Wエマルション、またはゲル、特にハイドロゲルであり、目の下の皮膚の処置に特に好適である。
【0156】
本発明のハーブ組成物はまた、化粧品もしくは薬剤送達システムおよび/または持続放出システムに組み込むことができる。
送達システムまたは持続放出システムの例として、限定されないが、リポソーム、混合リポソーム、オレオソーム、ニコソースム(nicososme)、エトソーム、ミリ粒子、マイクロ粒子、ナノ粒子および固体脂質ナノ粒子、ナノ構造脂質キャリア、スポンジ、シクロデキストリン、小胞、ミセル、界面活性剤の混合ミセル、界面活性剤-リン脂質混合ミセル、ミリスフェア、マイクロスフェア、ナノスフェア、リポスフェア、ミリカプセル、マイクロカプセル、ナノカプセル、ならびにマイクロエマルションおよびナノエマルションが挙げられる。
【0157】
本発明による組成物/ハーブ組成物はまた、織物、不織の織物またはティッシュまたは脱脂綿またはパッドに組み込む/吸収させることができるので、例えば、保湿ティッシュパッドまたは保湿ティッシュマスクの形態で適用し得る。
【0158】
本発明による製剤はまた、単回使用の単位剤形用の軟ゼラチンカプセルまたはサシェに包装することができる。
投与されるべき美容または/および治療有効量の本発明のハーブ組成物、ならびにその投与量は、年齢、患者の状態、治療または看護すべき症状、傷害または疾患の性質または重症度、経路、投与の頻度、および使用されるハーブ組成物の特定の性質を含む、数多くの因子に依存する。
【0159】
美容または/および治療有効量とは、非毒性であるが、望ましい効果をもたらすハーブ組成物の十分な量を意味すると理解される。
本発明のハーブ組成物は、望ましい効果を達成する美容または/および治療有効濃度で、本発明の化粧用製剤または医薬製剤において使用する。
【0160】
一般に、本発明による局所用製剤は、本発明による(ハーブ)組成物の製剤の総重量に対して、1~50%(w/w)を含み得る。
パッチテストにおいて、最大50%(w/w)の濃度でも、いかなる皮膚の刺激も誘発しないことが示されている。
【0161】
化粧用製剤のために、約1~10%(w/w)、1~5%(w/w)、3~5%(w/w)、5%(w/w)、または3%(w/w)の濃度のBellis perennis(およびHieracium pilosella)の成分の混合物(ハーブ組成物)が好ましい。3~5%(w/w)の濃度が特に好ましい。
【0162】
特に、医薬製剤は、1~30%、10~30%のより高い濃度を含み得るが、好ましくは、約1~10%(w/w)、1~5%(w/w)、3~5%(w/w)、5%(w/w)、または3%(w/w)の濃度のBellis perennis(およびHieracium pilosella)の成分の混合物(ハーブ組成物)も含む。
【0163】
本発明による化粧用製剤および医薬製剤は、当業者に周知される通常の賦形剤に加えて、以下のような追加成分を含むことができる。
張りおよび弾力を向上するための成分
皮膚の張りおよび弾力を向上し、目の下の隈を最小限にするための薬剤は、コラーゲン誘起剤およびシリコン誘導体からなる群から選択され得る。約0.2~約2.0%の範囲の濃度で、好ましくは約0.5~1.9%での濃度で、乳ペプチド複合体(MPC)などのコラーゲン誘起剤であることが好ましい。メチルシラノールエラスチネートおよびメチルシラノールアスパルテートヒドロキシプロリネートの複合体を含む、シリコン誘導体であることがさらに好ましい。乳化した化粧用組成物でのこの複合体の濃度は、3.4%~4.6%の範囲であり得る。4パーセントが好ましい濃度である。複合体でのメチルシラノールエラスチネートおよびメチルシラノールアスパルテートヒドロキシプロリネートの好ましい重量比はそれぞれ、25%および75%である。メチルシラノールエラスチネートおよびメチルシラノールアスパルテートヒドロキシプロリネートの市販の供給源は、Exsymol S.A.M.(Monte Carol、Monaco)である。メチルシラノールエラスチネートは、「Proteosilane-C」の商標名で販売され、メチルシラノールアスパルテートヒドロキシプロリネートは、「Hydroxyprolisilane-C」の商標名で販売されている。
【0164】
フリーラジカルの効果を低減させるための成分
乳化した化粧用組成物の抗フリーラジカル成分は、ビタミンCもしくはビタミンEの誘導体、セレン金属化合物、またはベーターカロチン誘導体からなる群から選択され得る。
【0165】
防腐剤
微生物の増殖を防ぐために、防腐剤を使用する。ゆえに、十分な量の1つまたは複数の防腐剤を添加することができる。そのため、本発明による局所用製剤は、該技術分野において一般的に知られている1つまたは複数の防腐剤、例えばデヒドロ酢酸ナトリウム、2-ヒドロキシ安息香酸、1-フェニル-1-プロパノール、Dermosoft(登録商標)700B(レブリン酸、レブリン酸ナトリウム、グリセリンおよび水の混合物)、フェネチルアルコールまたは安息香酸ナトリウムを、当該技術分野において通常知られている濃度で含有し得る。
【0166】
抗酸化剤
組成物の色を維持し、悪臭の発生を防ぐために、抗酸化剤を化粧用組成物および医薬組成物に含むことがある。抗酸化剤は、パルミチン酸アスコルビル、ミリスチン酸アスコルビルおよびステアリン酸アスコルビルからなる群から選択されるアスコルビルエステルであり得る。好ましい抗酸化剤は、パルミチン酸アスコルビルである。
【0167】
乳化剤
乳化剤は2つの機能を果たす。これらは、水溶性の相および非水溶性の相を組み合わせる可溶化剤として作用する、すなわち、成分の水および油の間で安定のブリッジを形成する。乳化剤はまた、乳化した組成物を皮膚に塗布する場合、快適で審美的に適切な触感をもたらす、皮膚軟化剤としても役立つ。これらは、プロピレングリコールイソセテス-3アセテート(actetate)、およびラウレス-2ベンゾエートであり得る。乳化剤の1つは、オレイン酸イソデシル、オレイン酸イソノニル、オレイン酸イソウンデシル、イソノニルエライデート、イソデシルエライデート、イソウンデシルエライデート、バクセン酸イソノニル、バクセン酸イソデシル、およびバクセン酸イソウンデシルからなる群から選択される不飽和脂肪酸のエステルであり得る。不飽和脂肪酸の好ましいエステルは、オレイン酸イソデシルである。
【0168】
別の乳化剤は、オクタン酸ミリスチル、ヘプタン酸ミリスチル、ノナン酸ミリスチル、ヘプタン酸ラウリル、オクタン酸ラウリル、ノナン酸ラウリル、ヘプタン酸パルミチル、オクタン酸パルミチル、およびノナン酸パルミチルからなる群から選択される短鎖飽和脂肪酸のエステルであり得る。乳化した化粧用組成物における皮膚軟化剤の用途の短鎖飽和脂肪酸の典型的なエステルは、オクタン酸ミリスチルであり得る。
【0169】
好ましい乳化剤は、ステアリン酸グリセリル、パルミチン酸グリセリル、およびアラキジン酸グリセリルからなる群から選択されるグリセリルエステルであり得る。乳化した化粧用組成物における使用のための典型的なグリセリルエステルは、ステアリン酸グリセリルである。他の好ましい乳化剤として、トリエタノールアミン、および3-シクロヘキセン-1-メタノール、アルファ、4-ジメチル-アルファ-(4-メチル-3-ペンテニル)(「ビサボロール」)が挙げられる。
【0170】
色素
化粧用組成物または医薬組成物は、着色に対する少なくとも1つの色素、好ましくは赤色酸化鉄を含み得る。
【0171】
以下の製剤例は、例示的な目的のみのために含めており、本発明の範囲を限定するものではない。
製剤例
例1
美白およびうっ血除去のアイマスク(洗い流す)
Aを混合し、完全に分散し浸漬するまで撹拌する。撹拌しながらBを添加し、CでpH値を5.5に調節する。
【0172】
【表10】
【0173】
例2
抗隈アイローション
Aを所与の順番で混合し、均一になるまでゆっくり撹拌する。BをAに撹拌しながら添加する。Cを添加し、均質になるまで撹拌する。
【0174】
【表11】
【0175】
例3
美白フェイシャルクリーム(O/W)
Aを添加し、完全に分散するまで撹拌する。Bを混合し、AおよびBを別々に75℃~80℃に加熱する。BをAに撹拌しながら添加する。Ultra Turraxで2分間、均質化する。撹拌しながら冷却し、室温でCを添加する。所望によりDでpH値を5.0に調節する。
【0176】
【表12】
【0177】
例4
ナイトリフティングアイケア(洗い流さない)
Aを混合し、完全に浸漬するまで撹拌する。Bを添加し、短く撹拌する。Cを添加し、均一になるまで撹拌する。DでpH値を6~6.5に調節する。
【0178】
【表13】
【0179】
本明細書において参照した、公開された特許出願を含む全ての特許、刊行物の開示は、あたかもこのような個々の特許、刊行物、または公開された特許出願それぞれが、参照として組み込まれると具体的かつ個々に示されたのと同じ程度に、その全体が参照として特に組み込まれる。
【0180】
本発明について説明したが、多くの方法において同様に変更され得ることは明らかである。このような変形例は、本発明の趣旨および範囲を逸脱するとみなされるべきではなく、当業者にとって明らかなこのような改変はいずれも、本発明/以下の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10