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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】弾性継手
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/38 20060101AFI20221227BHJP
   F16F 1/393 20060101ALI20221227BHJP
   F16F 15/06 20060101ALI20221227BHJP
   F16F 1/362 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
F16F1/38 S
F16F1/393
F16F15/06 A
F16F1/362
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020505535
(86)(22)【出願日】2018-04-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 ES2018070304
(87)【国際公開番号】W WO2018193141
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-04-13
(31)【優先権主張番号】P201730618
(32)【優先日】2017-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】519367795
【氏名又は名称】テハサ-テセ,エセ.エレ.エレ
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100163544
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 緑
(72)【発明者】
【氏名】マルティン エルナンデス,フアン ホセ
(72)【発明者】
【氏名】ペレス ヌニェス,アレハンドロ
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-229929(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第02074289(GB,A)
【文献】特開平10-076828(JP,A)
【文献】米国特許第02658710(US,A)
【文献】米国特許第00890106(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/00- 6/00
F16F 15/00- 15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性継手であって、該弾性継手は、
該継手をシャフト(E)に装着するための軸方向開口部(11)が設けられた内輪(1)と、
該継手を緩衝対象の支持体(S)に装着するための外面(21)が設けられた外輪(2)と、
前記内輪と前記外輪(2)との間に配置され、緩衝及び減摩手段を形成する金属ワイヤクッション(3)と、を備え、
前記内輪(1)は、対向する2つの中間セクション(13)と、2つの端部セクション(14)とを有し、前記2つの中間セクション(13)は、前記内輪(1)の前記2つの端部セクション(14)に向かって断面積が減少し、前記金属ワイヤクッション(3)の支持領域を形成し、前記内輪(1)の前記中間セクション(13)は、一連の凹部(16)を有し、該一連の凹部(16)は、前記金属ワイヤクッション(3)の受座及び安定化領域を形成し、前記外輪(2)は、2つの中間部分(22)を有し、前記2つの中間部分(22)は、前記外輪(2)の対向端部に向かって断面積が減少し、前記内輪(1)の前記中間セクション(13)に向いて、前記外輪(2)の前記金属ワイヤクッション(3)との接触面を形成することを特徴とする、弾性継手。
【請求項2】
前記内輪(1)の前記中間セクション(13)は、切頭円錐形状又は切頭角錐形状を有するとともに突出部(15)によって境界を定められており、前記突出部(15)は、前記弾性継手の使用位置において、前記金属ワイヤクッション(3)の保持停止部を形成することを特徴とする、請求項1に記載の弾性継手。
【請求項3】
前記外輪(2)の前記中間部分(22)は、突出部(23)によって境界を定められており、該突出部(23)は、前記金属ワイヤクッション(3)の保持停止部を形成することを特徴とする、請求項1に記載の弾性継手。
【請求項4】
前記外輪(2)は、2つの環状部品(2a、2b)によって形成され、該2つの環状部品(2a、2b)は、軸方向において対面し、ねじ込みによって該2つの環状部品を取り付けるための及び前記クッション(3)を調整可能に締め付けるための相補的なねじ部を対向端部に備えることを特徴とする、請求項1に記載の弾性継手。
【請求項5】
前記内輪(1)は、前記中間セクション(13)間に配置される中央セクション(12)を有することを特徴とする、請求項1に記載の弾性継手。
【請求項6】
前記内輪(1)の前記中央セクション(12)と、前記外輪(2)の中央領域との間に装着される、追加の金属ワイヤクッション(4)を備えることを特徴とする、請求項5に記載の弾性継手。
【請求項7】
前記継手を前記緩衝対象の支持体(S)に装着するための前記外面(21)は、円筒形であることを特徴とする、請求項1に記載の弾性継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本弾性継手は、径方向応力、軸方向応力、ねじり応力又は円錐方向応力に耐えなければならないあらゆるタイプの装置及び設備、例えば、爆発エンジン、商用車両、列車等に、あらゆるタイプの機械又はあらゆるタイプの輸送手段のシャフト又は支持アームにおいて適用可能である。本弾性継手は、車輪とエンジン懸架装置若しくは車両シャーシとを弾性継手によって接続する支持シャフト又は車両の緩衝装置の両端部に、及び継手を必要とする任意の他の機械又は設備に設置される。
【背景技術】
【0002】
現在、比較的剛性は高いが高周波振動を吸収しない玉軸受等の或る特定の機械式継手を置き換えるために、様々な弾性継手が使用されている。高周波振動は、比較的大きなエネルギーを有する振動であり、したがって、絶縁される部品に対しより甚大な損傷をもたらすおそれがある。
【0003】
これらの継手は、機械又は輸送手段に装着される方法に応じて、単一の方向における力、又は、軸方向、径方向、円錐方向及びねじれ方向等の様々な方向におけるベクトルの成分を有する力を受ける場合がある。
【0004】
現行の技術水準では、同心に配置される2つの金属製円筒形補強材と、2つの補強材の間で圧縮される弾性材料塊、通常はゴム塊とを備える弾性継手が既知である。
【0005】
弾性材料塊を備えるこれらの弾性継手に関する問題は、これらの弾性継手が、或る特定の機械若しくは輸送手段の動作時に発生する高温、又は、鋳造場若しくは炉内領域等の高温区域での動作時にこのような機械が曝され得る高温に耐えられないことである。例えば、ゴムが耐えるのは最高80℃である。もう1つの欠点は、ゴムが、酸又は化学物質に接触すると大抵は劣化して、高負荷に耐えるように使用することができなくなることである。
【0006】
上記の問題を解決するために、特許文献1に記載されている金属継手等の或る特定の金属継手が市場に出回っている。この金属継手では、中央穿孔部を有する円筒形緩衝装置が、シャフト又は支持部材上に配置される。
【0007】
これらの継手に関する問題は、これらの継手が、軸方向においてのみ、応力を吸収するのに適しており、径方向負荷、斜め方向負荷又はねじり負荷に対して適切な緩衝作用を提供しないことである。
【0008】
特許文献2(HUTCHINSON, S. A.)は、複数の区画を有する環状チャンバーで構成される、航空宇宙構造物用の緩衝器を記載している。上記複数の区画のそれぞれには、ワイヤメッシュの金属製クッションが詰め込まれ、この装置は、環状チャンバーとワイヤメッシュ間の隙間とを緩衝液で満たすことで完成する。
【0009】
この弾性継手は、緩衝液を組み込んでおり、また長期にわたって流体の漏洩を防ぐために、径方向シャフトシール又は液圧シール(hydraulic seals)を組み込む必要があるので、製造が複雑である。
【0010】
また、この継手は、軸方向の弾性のみを有するものであり、角度方向、ねじれ方向又は径方向の適切な弾性を提供しない。この現行の技術水準の文献では、上記クッションによって剛性が提供され、流体によって緩衝作用が提供される。
【0011】
特許文献3は、回転部材間に配置される変形可能なクッションを備える継手を開示している。回転部材は、外側スリーブと正方形内側スリーブとによって形成され、変形可能なクッションは、外側スリーブと正方形内側スリーブとの間に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許第2,658,710号
【文献】欧州特許第2077402号
【文献】米国特許第2729442号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、機械の早期の消耗を防ぐとともに停止又は故障を防ぐように使用される弾性継手である。本継手は、全体が金属材料で作製されることを特徴とし、動作時の騒音発生及び振動伝達を防止することを意図した特定の構造特徴を有する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の対象の弾性継手は、弾性継手の構造単純性を高めることを意図した特定の構造特徴を有し、全体が金属材料で作製されるので、化学物質との接触によって劣化することなく、高負荷及び高温に耐えるように使用することができる。
【0015】
本発明によれば、本弾性継手は、
継手を緩衝対象のシャフトに装着するための軸方向開口部と、外面とが設けられた内輪であって、外面は、該内輪の対向端部に向かって断面が減少する、対向する2つの中間セクションと、中間セクションの接続点よりも断面が小さい2つの端部セクションとを少なくとも有する、内輪と、
軸方向又は径方向において対面する少なくとも2つの部品によって形成される外輪であって、外輪は、継手を緩衝対象の支持体に装着するための外面と、内面とを有し、内面は、外輪の対向端部に向かって断面が減少し、内輪の対向する側部セクションに向く、2つの中間部分を有する、外輪と、
内輪の中間セクションと外輪の中間部分との間に配置される、緩衝及び減摩手段を形成する金属ワイヤクッションと、
を備える。
【0016】
これらの金属ワイヤクッションは、好ましくは四角形であり、内輪の中間セクションの周囲に分散配置され、上記内輪と外輪との間の複数の接触点を形成する。これらの金属ワイヤクッションは、高負荷に耐えることができ、また金属製であるので、温度に影響されることなく緩衝作用を提供する。
【0017】
内輪の中間セクションは、軸方向応力、径方向応力、斜め応力又はねじり応力といった耐えるべき応力の種類に常に応じて、様々な緩衝レベルをもたらすために、切頭円錐形状又は切頭多角錐形状等の様々な形状及び様々な傾きを有することができる。
【0018】
本発明の1つの実施形態において、内輪の中間セクションは、ねじり力に耐えるように金属ワイヤクッションの受座及び安定化領域を形成する平面又は凹部を有する。
【0019】
内輪の中間セクション及び外輪の中間部分はどちらも、対向端部において突出部によって境界を定められており、突出部は、継手の使用位置において、金属ワイヤクッションの保持停止部を形成する。
【0020】
本発明の1つの実施形態において、外輪は、2つのリング部品で構成され、2つのリング部品は、内輪の対向端部に装着されて、継手の装着位置へとねじ込むことによって取り付けられるように意図される。このようにねじ込みによって装着することで、内輪と外輪との間に配置されるワイヤクッションが受ける圧縮力を変化させることができ、それにより、上述の弾性ワイヤクッションのより大きな又はより小さな圧縮を達成し、ひいては、径方向力、軸方向力、円錐方向力及びねじり力といった様々な力に直面する弾性継手の変形強度の変化を達成することができる。
【0021】
一変形実施形態において、継手を緩衝対象の支持体に装着するための外面は、円筒形である。
【0022】
本発明の一変形実施形態において、内輪は、円筒形中央セクションの中間セクション間に配置され、継手は、上記中央セクションに装着される追加の金属ワイヤクッションを備え、この追加の金属ワイヤクッションは、径方向負荷に対する継手の強度を顕著に増大させるようになっている。
【0023】
述べられる説明を補足するために、本発明の特徴の理解を容易にする目的で、本明細書には1組の図面が添付されている。図面には、非限定的な例として以下のものが示されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る弾性継手の一実施形態例の正面立面図である。
図2】上記図の弾性継手の側面図である。
図3】継手の内輪及び外輪、並びに、内輪の中間セクションと外輪の中間部分との間に装着される2つの金属ワイヤクッションの分解立面図である。外輪は、ねじ込みによって取り付けることができる2つの環状部品によって形成されるが、これらの2つの環状部品は、結合していない状態で示されている。
図4】装着状態で鉛直面に沿って切断された、使用位置における上記図の弾性継手の立面図である。
図5】中間セクションにおいて金属ワイヤクッションを取り付けるための受座部を有する、内輪の一変形実施形態の斜視図である。
図6】内輪及び外輪の中央セクション間に配置される追加の金属ワイヤクッションを組み込んでいる、鉛直面で切断された使用位置における本発明による弾性継手の一変形実施形態の立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付図面に示す実施形態例において、本発明の弾性継手は、内輪1と、外輪2と、内輪1と外輪2との間に配置され、緩衝及び減摩手段を形成する金属ワイヤクッション3とを備える。
【0026】
内輪1には、図4に示すように、継手をシャフト「E」に装着するための軸方向開口部11と、外面とが設けられる。外面は、中央セクション12と、上記内輪1の対向端部に向かって断面が減少する、対向する2つの中間セクション13と、中央セクションよりも断面が小さい2つの端部セクション14とを有する。
【0027】
内輪の2つの中間セクション13は、金属ワイヤクッション3を支持する領域を形成し、金属ワイヤクッション3は、図4に示す継手の使用位置において、上記内輪1と外輪2との間に配置される。
【0028】
図3及び図4に示す実施形態例において、内輪1の中間セクション13は、切頭円錐形状を有するとともに突出部15によって境界を定められており、突出部15は、弾性継手の使用位置において、金属ワイヤクッション3の保持停止部を形成する。
【0029】
図5に示す変形実施形態において、中間セクション13は、一連の凹部16を備え、一連の凹部16は、金属ワイヤクッション3の受座及び安定化領域を形成する。
【0030】
図1図4に示す実施形態例において、外輪2は、図4に示すように、継手を緩衝対象の支持体Sに装着するための円筒形外面21と、内面とを有し、内面は、外輪2の対向端部に向かって断面が減少し、内輪1の中間セクション13に向く、2つの中間部分22を有する。
【0031】
切頭円錐形状を有する上記中間部分22は、外輪2の金属ワイヤクッション3との接触面を形成する。上記中間部分22は、突出部23によって境界を定められており、突出部23は、金属ワイヤクッション3の保持停止部を形成する。
【0032】
図3及び図4に示す実施形態において、外輪2は、2つの環状部品2a、2bによって形成される。2つの環状部品2a、2bは、図4に示すような使用位置では、軸方向において対面し、ねじ込みによって互いに取り付けるための相補的なねじ部を対向端部に備える。
【0033】
図6に示す変形実施形態において、継手は、内輪1の中間セクション13に配置された金属ワイヤクッション3に加えて、内輪1の円筒形中央セクション12に装着された追加の金属ワイヤクッション4を備える。この追加のクッション4によって、径方向負荷に対する継手の強度を顕著に増加させることが可能である。
【0034】
本発明の本質及び好ましい実施形態の例を十分に記載したが、全ての適切な目的のために、続いて特許請求される本発明の本質的な特徴の改変を伴わないのであれば、記載された要素の材料、形状、サイズ及び構成は変更可能であることが言明される。
【符号の説明】
【0035】
1:内輪
2:外輪
2a,2b:環状部品
3:金属ワイヤクッション
4:金属ワイヤクッション
11:軸方向開口部
12:中央セクション
13:中間セクション
14:端部セクション
15:突出部
16:凹部
21:円筒形外面
22:中間部分
23:突出部
E:シャフト
S:支持体
図1
図2
図3
図4
図5
図6