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特許7201674標的二本鎖核酸のハイブリダイゼーションの間のエラー検出
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】標的二本鎖核酸のハイブリダイゼーションの間のエラー検出
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20221227BHJP
【FI】
C12N15/10 Z ZNA
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2020517439
(86)(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 GB2018052753
(87)【国際公開番号】W WO2019064006
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-05-13
(31)【優先権主張番号】1715852.8
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1721441.2
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519196966
【氏名又は名称】エボネティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘイズ、マシュー ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス - クイパー、ラケル マリア
(72)【発明者】
【氏名】バイグレイブ、ダニエル エイドリアン
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-523786(JP,A)
【文献】特表2008-526259(JP,A)
【文献】国際公開第2005/059096(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の核酸断片から標的二本鎖核酸の1つ又は複数の事例を提供する方法であって、
複数の最初のハイブリダイゼーション・ステップであって、それぞれの最初のハイブリダイゼーション・ステップは、部分的に重複する核酸断片のそれぞれの対をハイブリダイズして複数のハイブリダイズした断片を形成することを含む、複数の最初のハイブリダイゼーション・ステップと、
1つ又は複数の更なるハイブリダイゼーション・ステップであって、それぞれの更なるハイブリダイゼーション・ステップは、以前のハイブリダイゼーション・ステップの対応する対の直接の産物である部分的に重複するハイブリダイズした断片のそれぞれの対をハイブリダイズしてより長いハイブリダイズした断片を形成することを含み、前記以前のハイブリダイゼーション・ステップの対のそれぞれは、前記最初のハイブリダイゼーション・ステップの1つ又は前記更なるハイブリダイゼーション・ステップの1つを含む、1つ又は複数の更なるハイブリダイゼーション・ステップと
を含み、
前記1つ又は複数の更なるハイブリダイゼーション・ステップは、前記以前のハイブリダイゼーション・ステップの対応する対の両方がエラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップを含む、少なくとも1つの更なるハイブリダイゼーション・ステップを含み、
前記エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップは、
エラー検出動作を実行して、前記エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップで形成されたハイブリダイズした断片が、前記エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップでハイブリダイズした重複領域に少なくとも1つのミスマッチしている塩基対を含む少なくとも1つのエラーのあるハイブリダイズした断片を含むかどうかを検出すること、及び
前記少なくとも1つのエラーのある断片の少なくとも一部を廃棄して、後続の更なるハイブリダイゼーション・ステップから少なくとも1つのエラーのある断片を除外することを含み、
前記標的二本鎖核酸は、一本鎖核酸の第2の鎖にハイブリダイズした一本鎖核酸の第1の鎖を含み、
それぞれのハイブリダイゼーション・ステップにおいて、前記ハイブリダイゼーション・ステップで形成された、核酸のハイブリダイズした断片は、前記第1の鎖又は前記第2の鎖を介して反応部位の表面に結合している、方法。
【請求項2】
所与の反応部位で行われる前記少なくとも1つの更なるハイブリダイゼーション・ステップの1つは、
前記第1の鎖及び前記第2の鎖の一方を介して前記所与の反応部位の前記表面に結合した第1のハイブリダイズした断片、並びに
前記第1の鎖及び前記第2の鎖の他方を介して以前の反応部位の表面に結合した場合、以前のハイブリダイゼーション・ステップの以前の反応部位で形成された第2の二本鎖断片をハイブリダイズすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記最初のハイブリダイゼーション・ステップ及び前記少なくとも1つの更なるハイブリダイゼーション・ステップは、一連のハイブリダイゼーション・ステップを形成し、対の第2のハイブリダイゼーション・ステップが、対の第1のハイブリダイゼーション・ステップで形成されたハイブリダイズした断片を更なる断片とハイブリダイズする、ハイブリダイゼーション・ステップの任意の対について、ハイブリダイゼーション・ステップの前記対で形成されたハイブリダイズした断片は、それぞれ前記第1の鎖及び前記第2鎖の反対のものを介して対応する反応部位の表面に結合している、請求項1及び2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
所定の方向で整列された少なくとも1つの反応部位のレーンと、流動流体を前記所定の方向で各反応部位に向ける流体制御要素とを備える装置を使用して実行される、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記装置は、各反応部位で温度を独立して制御する温度制御回路を更に備える、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記反応部位は、隣接する反応部位の間に物理的障壁のない表面の部分、及び
隣接する反応部位の間に選択的に除去可能な物理的障壁を持つ表面の部分のうちの1つを有する、請求項4及び5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の最初のハイブリダイゼーション・ステップの少なくとも1つは、前記エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップである、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
それぞれの最初のハイブリダイゼーション・ステップは、前記エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップである、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記更なるハイブリダイゼーション・ステップの少なくとも1つは、前記エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップである、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
それぞれの更なるハイブリダイゼーション・ステップは、前記エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップである、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記エラー検出動作は、それぞれの検出されたエラーのあるハイブリダイズした断片を形成する部分的に重複する断片間の結合を弱めること、及び、流体を提供して、前記少なくとも1つのエラーのあるハイブリダイズした断片の前記少なくとも一部を洗い流すことを含む、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記エラー検出動作は、ハイブリダイズした断片が形成された反応部位の温度を、エラーのないハイブリダイズした断片のハイブリダイゼーション・ステップで形成された重複領域の予想される融解温度より低いマージンに対応する目標温度に調整することを含む、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記標的二本鎖核酸の核酸断片への分割は、それぞれの重複領域で、エラーのないハイブリダイズした断片の重複領域の前記予想される融解温度と、その重複領域内に少なくとも1つの塩基エラーがあるエラーのあるハイブリダイズした断片の重複領域の予想される融解温度との差が、所定の閾値より大きくなるように選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記所定の閾値は少なくとも0.1℃である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記エラー検出動作は、前記ハイブリダイズした断片を、ミスマッチしている塩基対を検出する酵素に曝露することを含む、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ハイブリダイズした断片は、それぞれのハイブリダイゼーション・ステップが行われる反応部位間の流動流体中で輸送される、請求項1から15までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップの少なくとも1つにおいて、前記エラー検出動作後の残りのハイブリダイズした断片は、反応部位の表面から選択的に脱離される、請求項1から16までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記残りのハイブリダイズした断片の選択的脱離は温度制御される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記残りのハイブリダイズした断片の選択的脱離は、前記反応部位を、前記残りのハイブリダイズした断片を前記反応部位に結合するリンカー物質の所定の脱離温度に加熱することを含み、前記リンカー物質は、前記所定の脱離温度で前記表面から脱離するように配置される、請求項17及び18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記残りのハイブリダイズした断片の選択的脱離は、前記残りのハイブリダイズした断片を温度活性化脱離酵素に曝露すること、及び前記反応部位の温度を前記脱離酵素の活性化温度に調整することを含む、請求項17及び18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
一本鎖断片の対に対して実行される任意のハイブリダイゼーション・ステップ以外のそれぞれのハイブリダイゼーション・ステップは、ハイブリダイズした断片に対して実行されるライゲーション動作を含み、
エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップでは、前記ライゲーション動作は、前記エラー検出動作で検出された前記少なくとも1つのエラーのあるハイブリダイズした断片を除いて、残りの二本鎖断片に対して実行される、請求項1から20までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記複数の核酸断片のそれぞれは、別の核酸断片の対応する重複領域と重複するための少なくとも1つの重複領域を含み、
前記標的二本鎖核酸の各塩基は、前記複数の核酸断片のうちの1つの重複領域の1つの範囲内にある、請求項1から21までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記複数の最初のハイブリダイゼーション・ステップを行う前に、前記複数の核酸断片を形成するステップを含む、請求項1から22までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
複数の核酸断片から標的二本鎖核酸の1つ又は複数の事例を提供する方法であって、
複数の最初のハイブリダイゼーション・ステップであって、それぞれの最初のハイブリダイゼーション・ステップは、部分的に重複する核酸断片のそれぞれの対をハイブリダイズして複数のハイブリダイズした断片を形成することを含む、複数の最初のハイブリダイゼーション・ステップと、
1つ又は複数の更なるハイブリダイゼーション・ステップであって、それぞれの更なるハイブリダイゼーション・ステップは、以前のハイブリダイゼーション・ステップの対の直接の産物である部分的に重複するハイブリダイズした断片のそれぞれの対をハイブリダイズしてより長いハイブリダイズした断片を形成することを含み、前記以前のハイブリダイゼーション・ステップの対のそれぞれは、前記最初のハイブリダイゼーション・ステップの1つ又は前記更なるハイブリダイゼーション・ステップの1つを含む、1つ又は複数の更なるハイブリダイゼーション・ステップと
を含み、
前記標的二本鎖核酸は、一本鎖核酸の第2の鎖にハイブリダイズした一本鎖核酸の第1の鎖を含み、
それぞれのハイブリダイゼーション・ステップにおいて、前記ハイブリダイゼーション・ステップで形成された、核酸のハイブリダイズした断片は、前記第1の鎖又は前記第2の鎖を介して反応部位の表面に結合し、
前記方法は、前記複数の最初のハイブリダイゼーション・ステップ及び1つ又は複数の更なるハイブリダイゼーション・ステップが実行されるシーケンスの順序及びタイミングを制御するステップを含み、
前記1つ又は複数の更なるハイブリダイゼーション・ステップの少なくとも1つは、エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップを含む、方法。
【請求項25】
請求項1から24までのいずれか一項に記載の方法を実行するための装置を制御するための命令又は制御データであって、前記装置のそれぞれの反応部位の温度を調整するタイミング及びレベルを特定する、前記命令又は制御データを含むコンピュータ可読プログラム又はデータ構造。
【請求項26】
請求項25に記載のプログラム又はデータ構造を格納する記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、例えば、DNA又は他の二本鎖核酸の人工的合成の分野における、標的二本鎖核酸を形成するための核酸断片のハイブリダイゼーションに関する。
【背景技術】
【0002】
DNA、RNA又はXNAのような二本鎖核酸の人工的又は合成的合成に対する需要はますます高まっている。例えば、既存の二本鎖核酸の一部を複製するためのクローニングベースの技術に頼るのではなく、工場又は実験室で二本鎖核酸の標的配列をデノボ合成できるようにすることによって、二本鎖核酸の標的配列を作製する費用を大幅に削減でき、配列を生成する速度を向上させることができる。一般的に、オリゴヌクレオチドのような一本鎖核酸断片は、例えば化学的(例えばホスホラミダイト・カップリング化学)及び/又は酵素的手段(例えば修飾された末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ)を使用して、所望のヌクレオチドを配列に組み込むことによって製造できる。一本鎖核酸断片の最初のバッチは、ヌクレオチド(塩基)の相補配列を含む重複領域を有し、それぞれの断片をまとめたときに正しい順序でハイブリダイズする可能性が高くなるように選択できる。
【0003】
しかし、ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドへの取り込みには、本質的に、一本鎖核酸断片全体にランダムな分布で生じるエラーが含まれる。例えば、オリゴヌクレオチドへの誤った塩基の取り込み、オリゴヌクレオチドへの追加の塩基の挿入、少なくとも1つの更なる塩基を追加する必要があるときに、特定のオリゴヌクレオチドが特定のポイントを超えて伸長を停止するトランケーション、又は断片の特定の塩基が削除され、次いでその間の少なくとも1つの塩基を飛ばしたまま次の塩基が前の塩基に結合して断片が伸長し続ける欠失、が原因でエラーが生じる場合がある。核酸断片内の特定の取り込みエラーを検出するために利用可能ないくつかの技術があるが、これらは費用がかかる場合があり、完全ではないため、一本鎖核酸断片のバッチには依然として妥当な割合のエラーが含まれる場合がある。
【0004】
したがって、二本鎖核酸の合成に対する代表的な方法では、異なる一本鎖核酸断片のバッチを共通のコンテナに入れ、一致する重複領域に基づいてハイブリダイズする。しかし、最初の一本鎖核酸断片において取り込みエラーが存在することは、エラーなく形成された最終的な標的二本鎖核酸の収率が比較的低くなり得ることを意味する。一般的に、ハイブリダイゼーション・プロセスが完了した後、核酸のエラーのある二本鎖部分を特定できる。例えば、これは、クローニングを使用して行うことができ、ここで、製造された標的二本鎖核酸のバッチからランダムに選択が行われ、この試料は宿主(たとえば、細菌宿主)に提供され、次いでランダムに選択された試料の複数のコピーを生成するために使用できる。次いで、シーケンシングを使用して、選択した試料にエラーがないかどうかを判断できる。多数の並列クローニング・ラインは、標的二本鎖核酸の製造された試料からランダムに選択された異なるバッチで動作する場合がある。収率に応じて、これらのクローニング・ラインの一定の割合で、エラーのない標的二本鎖核酸試料が、次いで大量に返される場合がある。しかし、この方法の問題は、クローニングが比較的高価で遅いことであり、従来の技術を使用して一般的に得られる収率は非常に低いため、実際には、クローニング・ラインの1つがエラーのない試料を生成する十分な機会を提供するために、多くのクローニング・ラインが必要である。
【0005】
実際に、取り込みエラーの割合は、宿主を使用して生成されたクローン断片のハイブリダイゼーションを使用するのではなく、人工的に合成できる二本鎖核酸の最大長(塩基対の数)が比較的低いことを意味し、二本鎖核酸の遺伝子長配列を人工的に合成することはまだ実用的ではない。これは、エラーの見込みがべき乗則に従って二本鎖核酸の長さに応じて変化するため、より長い標的配列では収率が大幅に低下するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO 2017/006119 A2
【非特許文献】
【0007】
【文献】Till,B.J.ら、(2004)Nucleic Acids Research 32:2632~2641頁
【文献】Fuhrmann,M.ら、(2005)Nucleic Acids Research 33:e58
【文献】Breslauer,K.J.ら、(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:3746~3750頁
【文献】Freier,S.M.ら、(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:9373~9377頁
【文献】Beaucageら、(1981)Tetrahedron Lett.22:1859頁
【文献】Beaucageら、(1992)Tetrahedron 48:2223~2311頁
【文献】Shumら、(1978)Nucleic Acids Res.5:2297~2311頁
【文献】Schottら、(1984)Eur.J.Biochem.143:613~620頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
少なくともいくつかの実例は、複数の核酸断片から標的二本鎖核酸の1つ又は複数の事例を提供する方法であって、
複数の最初のハイブリダイゼーション・ステップであって、それぞれの最初のハイブリダイゼーション・ステップは、部分的に重複する核酸断片のそれぞれの対をハイブリダイズして複数のハイブリダイズした断片を形成することを含む、複数の最初のハイブリダイゼーション・ステップと、
1つ又は複数の更なるハイブリダイゼーション・ステップであって、それぞれの更なるハイブリダイゼーション・ステップは、以前のハイブリダイゼーション・ステップの対応する対の直接の産物である部分的に重複するハイブリダイズした断片のそれぞれの対をハイブリダイズしてより長いハイブリダイズした断片を形成することを含み、以前のハイブリダイゼーション・ステップの対のそれぞれは、最初のハイブリダイゼーション・ステップの1つ又は更なるハイブリダイゼーション・ステップの1つを含む、1つ又は複数の更なるハイブリダイゼーション・ステップと
を含み、
前記1つ又は複数の更なるハイブリダイゼーション・ステップは、以前のハイブリダイゼーション・ステップの対応する対の両方がエラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップを含む、少なくとも1つの更なるハイブリダイゼーション・ステップを含み、
エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップは、
エラー検出動作を実行して、エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップで形成されたハイブリダイズした断片が、エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップでハイブリダイズした重複領域に少なくとも1つのミスマッチしている塩基対を含む少なくとも1つのエラーのあるハイブリダイズした断片を含むかどうかを検出すること、及び
前記少なくとも1つのエラーのある断片の少なくとも一部を廃棄して、後続の更なるハイブリダイゼーション・ステップから少なくとも1つのエラーのある断片を除外すること
を含み、
標的二本鎖核酸は、一本鎖核酸の第2の鎖にハイブリダイズした一本鎖核酸の第1の鎖を含み、
それぞれのハイブリダイゼーション・ステップにおいて、そのハイブリダイゼーション・ステップで形成された、核酸のハイブリダイズした断片は、第1の鎖又は第2の鎖を介して反応部位の表面に結合している、方法を提供する。
【0009】
少なくともいくつかの実例は、上記の方法を実行するための装置を制御するための命令又は制御データを含むコンピュータ可読プログラム又はデータ構造を提供する。コンピュータ・プログラム又はデータ構造は、記憶媒体に格納され得る。記憶媒体は、非一時的記憶媒体であり得る。
【0010】
核酸断片をハイブリダイズするための多数の最初のハイブリダイゼーション・ステップ及び1つ又は複数の更なるハイブリダイゼーション・ステップを含む、一連のハイブリダイゼーションが提供され、それぞれの更なるハイブリダイゼーション・ステップは、以前のハイブリダイゼーション・ステップ(これは、2つの以前の最初のハイブリダイゼーション・ステップ、2つの以前の更なるハイブリダイゼーション・ステップ、又は1つの以前の最初のハイブリダイゼーション・ステップ及び1つの以前の更なるハイブリダイゼーション・ステップである可能性がある)の対応する対の直接の産物である重複するハイブリダイズした断片の対をハイブリダイズする。例えば、以前のハイブリダイゼーション・ステップで産生された分子から細菌宿主によって複製されたクローン分子にではなく、以前のハイブリダイゼーション・ステップの対で産生された同じ分子に作用する、という意味で、それぞれの更なるハイブリダイゼーション・ステップは、以前のハイブリダイゼーション・ステップの対の直接の産物に作用する。したがって、一連のハイブリダイゼーションは比較的速く行うことができる。
【0011】
少なくとも1つの更なるハイブリダイゼーション・ステップでは、その更なるハイブリダイゼーション・ステップでハイブリダイズされる断片を提供する以前のハイブリダイゼーション・ステップの対の両方が、エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップである。エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップは、エラー検出ステップで形成されたハイブリダイズした断片が、そのハイブリダイゼーション・ステップでハイブリダイズした重複領域に少なくとも1つのミスマッチしている塩基対を有する少なくとも1つのエラーのある断片を含むかどうかを検出するエラー検出動作を含む。エラーのある断片が検出された場合、エラーのある断片の少なくとも一部が廃棄され、後続の更なるハイブリダイゼーション・ステップから除外される。
【0012】
したがって、所与の更なるハイブリダイゼーション・ステップに供給する以前のハイブリダイゼーション・ステップの両方にエラー検出が確実に含まれるようにすることによって、以前のハイブリダイゼーション・ステップの対の一方からのより多くの「良好」な断片は、以前のハイブリダイゼーション・ステップの対の他方からの「良好」な断片と対になる。これにより、既存の技術で長さが増加した場合に収率が極端に低下する主な原因である、エラーのある断片と対になることによる「良好」な断片の損失を低減する。エラー検出動作は、以前のハイブリダイゼーション・ステップの対の直接の産物に対して後続のハイブリダイゼーションを実行しながら行うことができるので、エラー検出を実行するために、時間と費用のかかる、以前のハイブリダイゼーション・ステップの結果を、例えば細菌宿主にエクスポートする必要がない。収率を改善することにより、既存の技術を使用して可能であるよりも、標的二本鎖核酸の所与の量を提供するために、DNA又は他の二本鎖核酸の人工的合成をより速く、より費用効率よく行うことができる。
【0013】
エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップで、後続のハイブリダイゼーション・ステップの前に、エラー検出動作を実行できるようにして、エラーのある断片を次のそのハイブリダイゼーション・ステップから除外できるようにするために、特定の断片のハイブリダイゼーションの順序及びタイミングに対するある程度の制御が必要になる場合がある。これを行うための1つの方法は、断片をまとめるシーケンスを制御するために、手動又は自動制御で試料をあるコンテナから別のコンテナにピペッティングし、以前のハイブリダイゼーションで作製された断片でエラー検出が実行されるまで、異なるコンテナの断片がハイブリダイズしないようにすることであり得る。
【0014】
しかし、より速く、より労働集約的でない方法は、所定の方向で整列された少なくとも1つの反応部位のレーンと、流動流体を所定の方向で各反応部位に向ける流体制御要素とを備える装置を使用して方法を実行することである場合がある。このような装置で、流動流体を使用して、断片をある反応部位から別の反応部位に輸送してもよい。装置はまた、各反応部位で独立して制御される「トラップ」(例えば、静的若しくは振動電場、又は鉄ビーズと組み合わせた磁場によって提供される)を含んでもよく、ある反応部位から別の反応部位への断片の輸送を促進し、それによってハイブリダイゼーション・ステップの間の収率の低下を防ぐ。反応部位は、隣接する反応部位の間に永久的な物理的障壁のない表面の部分を含む場合があるので(物理的障壁がまったくない可能性があるか、物理的障壁を選択的に除去可能である)、断片をある部位から別の部位に簡単に輸送できる。装置は、各反応部位で温度を独立して制御する温度制御回路を更に有する場合がある。温度制御は、例えば、エラー検出ステップの制御に有用であり得る。この方法では、標的核酸のそれぞれの部分がハイブリダイズする順序とタイミングを注意深く制御できるので、より費用効率の高い方法で、連続するハイブリダイゼーション・ステップ間でエラー検出を実行することが実用的になる。
【0015】
実際には、所与の長さの標的二本鎖核酸を形成するために、最初の一本鎖断片又は比較的小さい二本鎖断片から始めて、最初の断片の間又は以前のハイブリダイゼーションで形成されたハイブリダイズした断片の間に多数のハイブリダイゼーションを連続的に行うハイブリダイゼーションのツリーが必要になる場合がある。エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップは、ツリーのハイブリダイゼーション・ステップのいずれか、例えば最初のハイブリダイゼーション・ステップ、又は更なるハイブリダイゼーション・ステップで提供されてもよい。一定のエラー率で収率をいくらか改善するためには、単一の更なるハイブリダイゼーション・ステップがあり、その更なるハイブリダイゼーション・ステップに供給される以前のハイブリダイゼーション・ステップの対の両方がエラー検出タイプであるだけで十分である。しかし、エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップの対の直接の産物に作用する複数の更なるハイブリダイゼーション・ステップを提供することにより、プール又はサブプールの方法に比べて収率を大幅に改善することができる。それぞれのハイブリダイゼーション・ステップは、標的二本鎖核酸の異なる重複領域で断片をハイブリダイズする場合があるため、エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップが多いほど、エラーがテストされる標的核酸の割合が大きくなり、したがって、収率の改善が大きくなる。更なるハイブリダイゼーション・ステップごとに、両方がエラー検出タイプである以前のハイブリダイゼーション・ステップの対に作用する場合、例えば、それぞれの最初のハイブリダイゼーション・ステップとそれぞれの更なるハイブリダイゼーション・ステップとがエラー検出タイプに確実になるようにすることによって、最大の収率の改善を達成できる。それでも、場合によっては、組立工程をスピードアップするために低い収率を受け入れることにより、収率と性能との間でトレードオフがなされる可能性がある(エラー検出ステップを除外することで、複数のハイブリダイゼーション・ステップを単一の反応部位で一緒に実行できるようになる場合があり、ある部位から別の部位に断片を輸送するための別々の輸送事象の数を減らし、多くのエラー検出動作の制御を提供する際の遅延を減らす)。
【0016】
エラー検出動作は、それぞれのエラーのあるハイブリダイズした断片を形成する部分的に重複する断片間の結合を弱めること、及び、流体を提供して、少なくとも1つのエラーのあるハイブリダイズした断片の少なくとも一部を洗い流すことを含む場合がある。例えば、それぞれのハイブリダイズした対の断片の1つが表面に固定されている場合があるため、エラーのあるハイブリダイズした断片の断片間の結合を弱めたり、及び/又は切断したり、次いで断片の上に流体を通すことにより、ハイブリダイズしてエラーのあるハイブリダイズした断片を形成した断片の対の1つを効率的に洗い流し、他の断片を表面に固定したままにすることができる。エラーのない断片では、エラー検出ステップにより、結合が比較的程度を低く弱められるか、無傷のままの場合があるため、結合が、一緒に結合し表面に付着した断片の対を維持するほど十分に強いので、これらの断片は、洗い流されない。これにより、エラーを検出及び除去する迅速で低コストのメカニズムが提供される。
【0017】
一方で残りのエラーのない断片では弱めずに、又は比較的程度を低く弱めたりして、エラーのある断片の結合を弱めるには、さまざまな選択肢があってもよい。一実例では、エラー検出動作は、ハイブリダイズした断片が形成された反応部位の温度を、エラーのないハイブリダイした断片のハイブリダイゼーション・ステップで形成された重複領域の予想される融解温度より低いマージンに対応する目標温度に調整することを含む場合がある。このことは、ハイブリダイズした断片間の全体的な結合が弱いため、エラーのあるハイブリダイズした断片では一般的に、ハイブリダイズした断片にエラーがない場合よりも融解温度が低くなるという事実を利用している。重複領域の予想される融解温度は、コンピュータ・シミュレーションに基づいて予測できるため、独立して温度制御された反応部位を提供し、所与の部位の温度を、予想される正しいエラーのない断片の融解温度より低いマージンに調整することによって、残りのエラーのない断片ではなくエラーのある二本鎖断片でのみ、結合を十分に弱めることができ、エラーのあるハイブリダイズした断片の分離が可能になり、例えば、続いて断片上に流体を流すことにより、それぞれのエラーのある二本鎖断片の一部を洗い流す。このエラー検出メカニズムが100%正確ではなくても、連続したハイブリダイゼーション間のエラー検出の費用効率の高い手段を提供しながら、収率を大幅に改善できる。
【0018】
標的二本鎖核酸の一本鎖核酸断片への分割は、それぞれの重複領域で、エラーのないハイブリダイズした断片の重複領域の予想される融解温度と、その重複領域内に少なくとも1つの塩基エラーがあるエラーのあるハイブリダイズした断片の重複領域の予想される融解温度との差が、所定の閾値より大きくなるように選択される場合がある。例えば、標的核酸のコンピュータ・シミュレーションは、エラーのないハイブリダイズした断片とエラーのあるハイブリダイズした断片との間の予想される融解温度の差を最大化するために、エラー検出ステップがエラーのある断片を検出し、それらを後続のハイブリダイゼーションから除外する可能性を高めるために、標的を分断して核酸断片にするには、標的のどの部分が好ましい分割点であるか、核酸の異なる点での塩基の特定の組成に基づいて決定することができる。詳細には、異なるエラーが異なる重複配列につながる場合があるため、エラーのないハイブリダイズした断片と比較して予想される融解温度の平均の差を最大化するために分割を実行することができ、重複領域に異なるタイプのエラーがある多数の候補となるエラーのある断片全体で平均が評価される。例えば、使用する所定の閾値は少なくとも0.1℃であってもよい。
【0019】
エラー検出ステップの間に、反応部位の温度がエラーのない二本鎖断片の予想される融解温度より低く設定されるマージンは、例えば、分割を決定するために使用される閾値の差と同一ではない場合がある。場合によっては、エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップごとに、特注の温度マージンを算出することは有用である可能性がある。それぞれの重複領域は異なる塩基配列を含む場合があるため、重複領域に完全に一致する塩基を持つ「良好」な断片の融解温度と、重複領域に少なくとも1つの誤った塩基を持つエラーのある断片の融解温度との間の平均温度差(すべての潜在的なエラーのある断片全体の)は、重複領域の組成によって変動する。平均温度差がより大きなこれらの重複の場合、「不良」な断片と「良好」な断片との間の平均温度差が小さい重複よりも、エラー検出の温度マージンを大きく設定することが有用である可能性があり、温度マージンを増やすことにより(すなわち、エラーのない重複の予想される融解温度に対して反応部位の温度を低く設定することにより)、「良好」な断片が拒否される可能性が低くなり、エラー検出動作によって引き起こされる「良好」な断片の拒否に対する「不良」な断片の拒否の比率が上がり、したがって収率が改善する。
【0020】
或いは、エラーのあるハイブリダイズした断片を検出する別の方法は、1つ又は複数のミスマッチしている塩基対を検出する酵素を使用することであってもよい。不完全なハイブリダイゼーションの結果として生じるミスマッチしている塩基対を有する二本鎖核酸は、1つ又は複数のミスマッチしている塩基対を検出する酵素によって認識及び切断される場合があり、その酵素の例には、T7エンドヌクレアーゼI、T4エンドヌクレアーゼVII、Escherichia coliエンドヌクレアーゼV、CELI及びCJEヌクレアーゼが含まれる(Till,B.J.ら、(2004)Nucleic Acids Research 32:2632~2641頁;Fuhrmann,M.ら、(2005)Nucleic Acids Research 33:e58)。切断の産物は解離し、一本鎖オーバーハングが残る場合がある。続いて、これらの一本鎖オーバーハングは、一本鎖特異的エキソヌクレアーゼ(例えば、E.coliエキソヌクレアーゼI)又はプルーフリーディングDNAポリメラーゼを使用して分解される場合がある。
【0021】
上記のように、ハイブリダイズした断片は、流動流体中の輸送により、それぞれのハイブリダイゼーション・ステップが行われる反応部位間で輸送される場合がある。これは、手動又は自動のコンテナからコンテナへのピペッティングよりも効率的である可能性があり、また、ハイブリダイズした断片の輸送を、エラー検出中にエラーのある断片を廃棄するために使用されるのと同一の流体流メカニズムを使用して実行できる。断片が1つの部位から放出され、流動流体中で次の反応部位に輸送される場合、これらの放出された断片が次の反応部位を越えて流出することを防ぐために障壁が提供される場合がある。例えば、障壁は、電場若しくは磁場又は電場勾配若しくは磁場勾配(電気トラップ又は磁気トラップ)によって、或いは仕切り障壁を選択的に導入するなどの物理的手段によって提供することができる。
【0022】
標的二本鎖核酸は、一本鎖核酸の第2の鎖にハイブリダイズした一本鎖核酸の第1の鎖を含む場合がある。第1及び第2の鎖のそれぞれは、標的二本鎖核酸を形成するために使用される最初の(一本鎖又は二本鎖)断片に分割される場合がある。上記のように流体の使用をサポートして、輸送とエラー検出を制御するには、それぞれのハイブリダイゼーション・ステップにおいて、そのハイブリダイゼーション・ステップで形成された、核酸の二本鎖断片は、第1の鎖又は第2の鎖を介して反応部位の表面に結合する場合がある。結合は、第1の鎖又は第2の鎖の5’末端又は3’末端で生じる場合がある。結合は、結合が選択的に脱離されない限り(以下でより詳細に説明されているように)、流動流体によって提供される力に耐えられるほど十分に強い場合がある。これは、ハイブリダイズした断片が表面に結合し、エラー検出動作によって重複領域の結合が弱くなると、断片上の洗浄液により、結合が十分に弱まっているエラーのある断片の一部が洗い流されるが、残りの「良好」な断片は無傷で表面に結合したまま残ることを意味する。
【0023】
しかし、それぞれのハイブリダイゼーション・ステップで形成された核酸の断片が、常に標的の第1の鎖の同一のものと第2の鎖を介して反応部位に結合している場合、これは、1つのハイブリダイゼーション・ステップでエラーのある断片が検出された場合でも、次のハイブリダイゼーション・ステップで「良好」な断片と依然としてハイブリダイズするため、エラーが検出された場合でも「良好」な断片を無駄にして収率を低下させる場合があることを意味する。これは、エラーが検出され、結合が弱められ表面に結合した断片の一部を廃棄することにより除去された場合、弱められたハイブリダイズした断片の「ゆるい」部分(表面に直接結合していない部分)のみ廃棄することができ、「結合した」部分(表面に直接結合した部分)は、反応部位の表面に依然として固定されたままになり、そして、残りの断片が放出されて次のハイブリダイゼーション・ステップのために反応部位に輸送される場合、エラーのある断片の「結合した」部分がまだ存在し、一致する重複領域が存在し露出されている場合、他の断片と結合する可能性がある、という事実の結果である。それぞれのハイブリダイゼーション・ステップで同一の鎖が反応部位に固定されている場合、次のハイブリダイゼーションで露出した重複領域は、前のハイブリダイゼーションの「結合した」部分に対応するので、以前に検出されたエラーのある断片の結合側の「孤立した」断片が次のハイブリダイゼーションで「良好」な断片とハイブリダイズし、それによって収率が低下する可能性がある。「結合した」部分及び「ゆるい」部分は、エラー検出が実行されるハイブリダイゼーション・ステップでどの断片がハイブリダイズされるかに応じて、核酸の一本鎖断片又は核酸の二本鎖断片であり得る。
【0024】
この問題点は、所与の反応部位で行われ、両方ともエラー検出タイプである以前のハイブリダイゼーション・ステップの対の産物に作用する所与のハイブリダイゼーション・ステップは、第1の鎖及び第2の鎖の一方を介して所与の反応部位の表面に結合している第1のハイブリダイズした断片、並びに、第1の鎖及び第2の鎖の他方を介して以前の反応部位の表面に結合した場合、以前のハイブリダイゼーション・ステップの以前の反応部位で形成された第2のハイブリダイズした断片をハイブリダイズすることを含むことを確実にすることによって代わりに対処することができる。これは、連続したハイブリダイゼーション・ステップの間で、標的の第1の鎖と第2の鎖のどちらが反応部位に結合するかを効果的に交互に行う。これは、次のハイブリダイゼーションでハイブリダイズした重複領域は、前のハイブリダイゼーション・ステップで形成されたハイブリダイズした断片の「ゆるい」部分に対応するので、エラーが検出され、エラーのある断片のゆるい方が廃棄された場合、エラーのある断片の残りの「結合した」部分には、次のハイブリダイゼーションで露出した重複領域と一致する重複領域がないため、後続のハイブリダイゼーションは実行できないことを意味する。
【0025】
すべてのハイブリダイゼーション・ステップがエラー検出タイプであるとは限らない場合、ハイブリダイゼーション・ステップの間の反応部位に結合する鎖を交互にすることは、連続するハイブリダイゼーション・ステップのすべての対にとって必須ではない。しかし、より多くのエラー検出ステップを支持するために、あるハイブリダイゼーション・ステップから別のハイブリダイゼーション・ステップへのすべての移行で、第1の鎖と第2の鎖のどちらを反応部位に結合するかを交互にすることは有用であり得る。したがって、最初のハイブリダイゼーション・ステップ及び少なくとも1つの更なるハイブリダイゼーション・ステップは、一連のハイブリダイゼーション・ステップを形成する場合があり、ハイブリダイゼーション・ステップの任意の対であって、対の第2のハイブリダイゼーション・ステップは、対の第1のハイブリダイゼーション・ステップで形成されたハイブリダイズした断片を更なる断片とハイブリダイズする、ハイブリダイゼーション・ステップの任意の対について、ハイブリダイゼーション・ステップの対で形成されたハイブリダイズした断片は、それぞれ第1の鎖及び第2鎖の反対のものを介して対応する反応部位の表面に結合している。この方法により、エラーのある断片を廃棄し、「良好」な断片とのハイブリダイズを回避する機会が増えるため、収率が改善する。それぞれのハイブリダイゼーション・ステップでどの鎖が表面に結合するかについての制御は、それぞれの反応部位での最初の断片の最初の配置、及びハイブリダイズした断片の組合せをまとめるシーケンスを制御することによって行われる場合がある。
【0026】
前記エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップの少なくとも1つにおいて、エラー検出動作後の残りのハイブリダイズした断片は、反応部位の表面から選択的に脱離される場合がある。他の反応部位の少なくともいくつかの断片は、他の反応部位に付着したままである場合がある。エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップごとに選択的脱離を行う必要はなく、その理由としては、いくつかのハイブリダイゼーション・ステップでは、次のハイブリダイゼーション・ステップが前のハイブリダイゼーション・ステップと同一部位で実行される場合がある(他のハイブリダイゼーション・ステップの産物が同一部位に輸送される)からであり、そのため、時々残りのハイブリダイズした断片は固定されたままで、次のハイブリダイゼーション・ステップのために断片の次のバッチの到着を待つ場合がある。
【0027】
また、選択的脱離の精度が100%完全である必要はない。断片を標的反応部位から脱離するための脱離メカニズムを使用してもよく、関連する重複領域にエラーを含まないいくつかの残りの断片を、標的反応部位に付着したままにすることができ、又は標的反応部位以外の反応部位でいくつかの断片を脱離することができる。そのような誤った脱離によって発生する損失は、エラー検出によって提供されるプール又はサブプールの方法と比較して収率の改善よりも重要ではない場合があるので、全体として、収率は、誤った脱離によって引き起こされるいくつかの損失があっても依然として改善される場合がある。したがって、すべての断片が標的反応部位から脱離するとは限らない場合、又はいくつかの断片が非標的反応部位から脱離する場合でも、標的反応部位からの脱離の確率が他の非標的反応部位からの脱離の確率よりも高い脱離メカニズムを提供することで十分である場合がある。どのような場合でも、誤った脱離によって引き起こされるこれらの損失を防ぐ方法は、脱離ステップ中にそれぞれの反応部位で電気又は磁気トラップを使用することであり得る。
【0028】
脱離メカニズムを異なる方法で実施することができる。一部の実例では、切断可能なリンカー物質を使用して、断片を対応する反応部位に付着することができ、このことは、特定の化学試薬に曝されたときに断片を反応部位から脱離するように配置することができる。切断可能なリンカー物質の例には、例えば切断により3’ヒドロキシヌクレオチドが生成されるような、ヌクレオチド部分に結合したコハク酸部分を有する化学組成物が含まれる。詳細には、切断可能なリンカーは、5’-ジメトキシトリチル-チミジン-3’-スクシナート、4-N-ベンゾイル-5’-ジメトキシトリチル-デオキシシチジン-3’-スクシナート、1-N-ベンゾイル-5’-ジメトキシトリチル-デオキシアデノシン-3’-スクシナート、2-N-イソブチリル-5’-ジメトキシトリチル-デオキシグアノシン-3’-スクシナート、又はそれらの組合せの1つである場合がある。
【0029】
断片はまた、例えば、制限エンドヌクレアーゼのような酵素によって認識可能な、脱離される核酸にフランキングする特定の認識配列の使用を介して、酵素的に脱離される場合がある。制限エンドヌクレアーゼ切断可能部位及び酵素自体の選択は、切断産物の所望の特性に依存し得る。例えば、特定の制限エンドヌクレアーゼは「平滑」末端を生成し、他の制限エンドヌクレアーゼは核酸の「オーバーハング」を生成する。一実施例では、制限エンドヌクレアーゼはクラスII制限エンドヌクレアーゼである。それらの認識配列内の核酸(例えば、DNA)を切断し、平滑末端の産物を生成するタイプII制限エンドヌクレアーゼの例には、AluI、EcoRV、HaeIII、PvuII及びSmaIが含まれる。HaeIIIはまた、一本鎖核酸を切断する場合がある。それらの認識配列内の核酸(例えば、DNA)を切断し、オーバーハング末端の産物を生成するタイプII制限エンドヌクレアーゼの例には、BamHI、EcoRI、NotI及びXbaIが含まれる。別の実施例では、制限エンドヌクレアーゼはクラスIIS酵素である。そのようなクラスIIS酵素は、それらの認識配列の外側で核酸を切断する。クラスIIS制限エンドヌクレアーゼの例には、MlyI、BspMI、BmrI、BtsI及びFokIが含まれる。別の好ましい実施例では、ウラシル-DNAグリコシラーゼ(UDG)及び脱プリン/脱ピリミジン(AP)部位エンドヌクレアーゼが断片の脱離に使用される。認識配列は、少なくとも1つのウリジンを含む場合がある。UDGによる処理は脱塩基部位を生成する。次いで、脱プリン/脱ピリミジン(AP)部位エンドヌクレアーゼで適切な基質を処理すると、核酸鎖が切断される。
【0030】
一部の実例では、脱離メカニズムは、特定の部位が脱離メカニズムの影響を受けるのを防ぐ物理的手段を提供することにより、特定の部位を標的にする場合がある。例えば、それぞれの反応部位が物理的に分離されたコンテナ、容器又はウエルに相当する実施例では、リンカー物質又は酵素を切断するための試薬は、標的反応部位にのみ適用され、他の部位には適用されない場合がある。或いは、制御弁付きの供給チャネルを使用して、試薬又は酵素を特定の部位に誘導できる。別の方法は、温度活性化放出メカニズムを使用することである場合がある。例えば、一部の実例では、選択的脱離は、反応部位を、残りのハイブリダイズした断片を反応部位に結合するリンカー物質の所定の脱離温度に加熱することを含む場合があり、リンカー物質は、所定の脱離温度で表面から脱離するように配置される。或いは、選択的脱離は、残りのハイブリダイズした断片を脱離酵素、例えば温度活性化脱離酵素に曝露すること、及び反応部位の温度を脱離酵素の活性化温度に調整することを含む場合がある。電気又は磁気トラップの使用は、収率を改善するために脱離プロセス中に使用することもできる。必要とされる脱離温度によって融解する場合に備えて、これらのトラップにより、相補的な核酸断片の対を、互いに接近させたままにすることができる。トラップを使用して反応部位で対を保持することにより、一部の対が脱離プロセス中に分離した場合でも、トラップが解放される前に温度が低下したときに対が再び再アニーリングする機会が与えられ、断片を後続の反応部位に輸送できるようになる。脱離メカニズムが実装されている特定の方法にかかわらず、いつ断片が、ある部位から放出されて、その結果、それを別の部位へ輸送できるかを選抜するメカニズムを提供することによって、断片の連続したハイブリダイゼーションが実行される順序とタイミングが制御され、他の断片が別の反応部位に付着したまま、断片をある反応部位で脱離できるようになるので、連続するハイブリダイゼーション間でエラー検出が実行されるまで、更なるハイブリダイゼーション・ステップを延期することができる。
【0031】
一本鎖断片の対に対して実行されるハイブリダイゼーション・ステップ以外に、それぞれのハイブリダイゼーション・ステップは、そのハイブリダイゼーション・ステップで形成されたハイブリダイズした断片に対して実行されるライゲーション動作を含む場合がある。エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップでは、ライゲーション動作は、エラー検出動作で検出された少なくとも1つのエラーのある断片を除いて、残りのハイブリダイズした断片に対して実行される。したがって、エラー検出後に所与の部位に残る残りの二本鎖断片は、核酸骨格のギャップを連結するライゲーション酵素に供され、断片を効果的に結合することができる。これは、断片が次のハイブリダイゼーション・ステップに転送される前に、それぞれの鎖間の結合の強度を高める効果がある場合があるので、後続のハイブリダイゼーション又はエラー検出ステップで、反応部位の温度が以前にハイブリダイズした重複領域の融解温度に調整される場合でも、以前に実行されたライゲーション・ステップは、前のハイブリダイゼーション・ステップでハイブリダイズした鎖が分離するのを防ぐ。ライゲーション動作により、断片長が増加するにつれて、エラー検出動作で単一塩基エラーを検出するために必要な温度制御の精度をこれまで以上に高める必要がなくなる。これは、少し前にハイブリダイズした重複領域の境界で骨格のライゲーションを実行すると、核酸骨格がギャップなしで連続している断片の部分の長さが増加するためであり、したがって、2本の鎖が連続した骨格を有する部分に沿って分離するには、より高い融解温度が必要である。したがって、これは、後続のハイブリダイゼーション・ステップにおいて他の重複領域での結合の強度をテストするために必要な融解温度は、既にハイブリダイズした核酸のセクションが解離するために必要な融解温度よりも大幅に低くなる可能性があるため、その後続のエラー検出ステップは、既にテスト済みの重複領域に対応する断片の部分には影響しない、ということを意味する。一本鎖断片の対に作用するハイブリダイゼーション・ステップにはライゲーション・ステップは必要なく、それは、この場合、核酸骨格は既に断片の全長に沿って完全に連結されている(粘着末端のある二本鎖断片を、骨格にギャップがあるため、ライゲーションに供される可能性のある、更なる一本鎖又は二本鎖断片と連結する唯一のステップである)ためである。
【0032】
ライゲーション動作は、T4 DNAリガーゼ又はトポイソメラーゼのような適切なリガーゼを使用して実行される場合がある。連結する核酸は、5’末端がリン酸化されていることが好ましい。そのようなリン酸化は、T4ポリヌクレオチドキナーゼのような適切なキナーゼを使用して実行される場合がある。リガーゼの前にキナーゼを使用してもよく、又はキナーゼとリガーゼとの組合せを使用してもよい。
【0033】
一部の実例では、核酸断片の最初のバッチは、一本鎖核酸断片を含む場合がある。したがって、最初のハイブリダイゼーション・ステップは、二本鎖断片を形成するための一本鎖ハイブリダイゼーションを含む場合がある。この場合、核酸断片の最初のバッチのそれぞれは、別の核酸断片の対応する重複領域と重複するための少なくとも1つの重複領域を含む場合があり、(第1の鎖及び第2の鎖の両方における)標的二本鎖核酸のそれぞれの塩基は、核酸断片の1つの重複領域の1つの中にある場合がある。したがって、これは、それぞれの塩基は少なくとも1つのハイブリダイゼーション・ステップの重複領域内にあるため、それぞれのハイブリダイゼーションでエラー検出が実行されると、それぞれの塩基のエラーがテストされるため、これにより、検出できるエラーの割合が増加することを意味する。
【0034】
或いは、最初のハイブリダイゼーション・ステップは、核酸の部分的に重複する二本鎖断片(粘着性末端又はオーバーハングを有する、すなわち重複領域が別の断片の重複領域とハイブリダイズする、断片の二本鎖部分の末端を越えて突出する一本鎖核酸の領域)で実行され得るので、最初のバッチには既にそれぞれの断片のいくつかの部分があり、断片の中間部分の塩基は、既に他の鎖に相補的な塩基を有する。この場合、標的二本鎖核酸のすべての塩基が、断片の最初のバッチの重複領域の1つの中にあるわけではないため、これにより、エラーを検出できる範囲が減少する場合がある。
【0035】
核酸断片の最初のバッチは、最初のハイブリダイゼーション・ステップを実行する前に、ハイブリダイゼーション・ステップを実行するために使用する装置と同一の装置上で形成されてもよい。例えば、多数の一本鎖核酸断片(例えば、オリゴヌクレオチド)を反応部位で伸長させ、次いで、これらの反応部位のいくつかは、後続のハイブリダイゼーション・ステップを実行するために使用される場合がある。流体輸送メカニズム及び温度制御放出メカニズムを使用して、一連のハイブリダイゼーション・ステップにおいて、どの核酸断片が一緒にハイブリダイズするかを制御する場合がある。或いは、他の方法では、いくつかの予め組み立てられた最初の断片は、別々に形成され、次いで、一連のハイブリダイゼーション・ステップを実行する前にハイブリダイゼーション部位の表面に付着する場合がある。
【0036】
上記の方法を実行するための装置を制御するための命令又は制御データを含むコンピュータ・プログラム又はコンピュータ可読データ構造が提供される場合がある。例えば、プログラム又はデータ構造は、エラー検出及び流れを制御するために、それぞれの反応部位の温度を調整するタイミング及びレベルを特定する場合がある。したがって、特定の標的核酸試料に対応する異なるコンピュータ・プログラム又はデータ構造を提供して、その特定の標的を組み立てるための特定の制御データを提供する場合がある。
【0037】
核酸
本発明の方法により、情報のみから始まる遺伝子、ゲノム、及び染色体のような核酸の作製が可能になり、すなわち、本発明は、遺伝子又はゲノムのような既存の核酸分子を必要としない核酸を提供する場合がある。
【0038】
本発明の方法は、提供される核酸のタイプに特に限定されない。例えば、核酸はデオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)又はゼノ核酸(XNA)であってもよい。
【0039】
一実施例では、核酸はDNAである。一実施例では、核酸はRNAである。一実施例では、核酸はXNAである。ゼノ核酸(XNA)は、DNA及びRNAの人工的代替である合成核酸である。DNA及びRNAと同様に、XNAは情報を保存するポリマーであるが、XNAは糖リン酸骨格の構造がDNA及びRNAと異なる。2011年までに、遺伝情報を保存及び取り出すことができるXNA骨格を作製するために、少なくとも6つの合成糖が使用されてきた。骨格糖の置換は、XNAを機能的及び構造的にDNA及びRNAに類似させる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチド」という用語は、短い核酸ポリマー、例えば、DNA、RNA又はXNAヌクレオチドのポリマーを表す場合がある。オリゴヌクレオチドの正確な長さは特に限定されないが、オリゴヌクレオチドは、例えば、約4~200ヌクレオチドの長さであってもよい。
【0041】
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、より長い核酸ポリマー、例えば、DNA、RNA又はXNAヌクレオチドのポリマーを表す場合がある。
【0042】
本明細書で使用される場合、「ヌクレオチド」という用語は、DNA及びRNAヌクレオチドのようなヌクレオチド並びにヌクレオチドアナログを表す場合がある。
【0043】
本明細書で使用される場合、「ハイブリダイゼーション」という用語は、対向する核酸鎖の水素結合、好ましくは相補的ヌクレオシド又はヌクレオチド塩基間のWatson-Crick水素結合を表す。
【0044】
ヌクレオチドはそれぞれ核酸塩基を含む。本明細書で使用される場合、「核酸塩基」又は「塩基」という用語は、DNA核酸塩基A、T、G及びC、RNA核酸塩基A、U、C及びGのようなプリン及びピリミジン、並びに5-メチルシトシン(MeC)、イソシトシン、プソイドイソシトシン、5-ブロモウラシル、5-プロピニルウラシル、5-プロピニル-6-フルオロウラシル、5-メチルチアゾールウラシル、6-アミノプリン、2-アミノプリン、イノシン、2,6-ジアミノプリン、7-プロピン-7-デアザアデニン、7-プロピン-7-デアザグアニン及び2-クロロ-6-アミノプリンのような非DNA/RNA核酸塩基を含む窒素性塩基を表す。
【0045】
核酸は、例えば、一本鎖又は二本鎖であってもよい。
【0046】
「センス」鎖(「プラス」又は「コード」鎖)は、二本鎖ポリヌクレオチドが転写されるメッセンジャーRNAと同一配列を持つ(例えば、DNAとRNAとの間の代表的な核酸塩基の違いを除いて、TはUで置き換えられる)。反対の「アンチセンス」鎖(「マイナス」又は「非コード」鎖)は、転写中にメッセンジャーRNAのテンプレートとして使用される。したがって、アンチセンス鎖は、例えば、タンパク質に翻訳される場合があるRNAに関与し、一方センス鎖は、メッセンジャーRNAのものとほぼ同一の構成を有する。
【0047】
相補性は、2つの一本鎖核酸が結合して二本鎖核酸を形成することに影響を及ぼす原理である。これは、2つの核酸配列間で共有される特性であり、2つの核酸配列が互いに逆平行に整列している場合、2つの配列で互いに向き合うヌクレオチドはすべて、最適な結合のために相補的である。分子レベルでは、相補性は特定の塩基対間の最適な水素結合によって決定される。例えばDNAでは、アデニンはチミンに対して相補的であり、グアニンはシトシンに対して相補的であり、RNAでは、アデニンはウラシルに対して相補的であり、グアニンはシトシンに対して相補的である。塩基の相補的対合により、ある分子から別の分子へ、及び自然には、ある世代の細胞から別の世代の細胞へ情報をコピーすることができる。二本鎖核酸の塩基対における相補性の欠如は、「ミスマッチ」と呼ばれる場合がある。
【0048】
二本鎖核酸は、同じ長さの2本の鎖を含んでもよく、その場合、二本鎖核酸の両端は平滑末端であってもよい。
【0049】
或いは、例えば、一方の鎖がもう一方の鎖よりも長い場合、又は2本の鎖が互いに食い違っている場合(そのようなオーバーハングは、「粘着末端」と呼ばれることがある)、二本鎖核酸の一端又は両端は、一本鎖核酸のオーバーハングを示す場合がある。そのようなオーバーハングは、一本鎖核酸又は二本鎖核酸が2つ以上の相補的核酸に結合することを可能にする場合があるので、したがって、同様の理由で、二本鎖核酸は、オーバーハングとの塩基対合により、1つ又は複数の更なる一本鎖又は二本鎖核酸に結合することができ、したがって、対向する一本鎖核酸の間に重複領域を創出する。
【0050】
これらの概念は、例としてのみ、図1に示されており、10個のオリゴヌクレオチドを有する二本鎖DNAの例を示す。それぞれの鎖は、図に異なるテキスト形式(プレーンテキスト、下線、太字、及び/又は斜体)で示されている多数の個別のオリゴヌクレオチドを有する。上部(センス)鎖は5個のオリゴヌクレオチド(A1~A5)を有し、下部(アンチセンス)鎖は5個のオリゴヌクレオチド(B1~B5)を有する。センス鎖及びアンチセンス鎖が同数のオリゴヌクレオチドを有することは必須ではない。この例では、上部及び下部の鎖は相補的であり、例えば、オリゴヌクレオチドA2はオリゴヌクレオチドB3及びB4と重複し、B3及びB4のそれぞれと相補的な領域を有する。
【0051】
融解温度(T
核酸配列の融解温度(T)は、核酸とその相補体の50%が二本鎖型になる温度である。
【0052】
核酸配列の融解温度は、経験的に決定される場合がある。例えば、一本鎖核酸及びその相補体は、温度制御されたUV分光光度計で細胞に導入される場合がある。次いで、適切な波長(例えば260nm)でのUV吸光度の変動を温度の関数として測定してもよく、これは、一般的に、2つのプラトーを持つS字状曲線を生じる。次いで、融解温度は、2つのプラトーの間の中間である融解曲線上の点での温度として決定される場合がある。
【0053】
経験的手段は融解温度を決定する正確な方法である場合があるが、これらの実験は、一般的に時間がかかる。或いは、融解温度は、この目的のために開発された多数の式のいずれかを使用して算出される場合があり、当業者は適切な方法を容易に選択できる。
【0054】
核酸配列のヌクレオチド含量のみに基づいて融解温度を計算できる多数の式が開発されている。例えば、次の式を使用して、核酸の融解温度を計算でき、
=4×(G+C)+2×(A+T)
式中、G、C、A、及びTは、それぞれのヌクレオチドの発生数である。
核酸の融解温度を計算するための代替例の式は、
【数1】

であり、式中、G、C、A、及びTは、それぞれのヌクレオチドの発生数である。
核酸鎖濃度、塩濃度、及びホルムアミド又はDMSOのような任意の変性剤の濃度など、ヌクレオチド含量以外の因子が、溶液中の核酸の融解温度に影響を及ぼす場合がある。このような因子を考慮した式が更に開発された。例えば、塩濃度補正を含む次の式を使用して、核酸の融解温度を計算でき、
=4×(G+C)+2×(A+T)-16.6×log100.050+16.6×log10[Na
式中、G、C、A、及びTは、それぞれのヌクレオチドの発生数である。
核酸の融解温度を計算するための、塩濃度補正を含む代替例の式は、
【数2】

であり、式中、G、C、A、及びTは、それぞれのヌクレオチドの発生数である。
【0055】
これらの例の式はDNA塩基を表すが、同様の式は、RNAのような他の核酸にも同様に適用可能な場合がある。
【0056】
他の方法は、融解温度を決定するための熱力学的計算の使用に基づく場合がある。融解温度の観察から、核酸配列に関連する熱力学的パラメータ(ΔG、ΔΗ、及びΔS)を実験的に決定することが可能であり、逆もまた同様で、所与の核酸配列の熱力学的パラメータが既知である場合、配列の融解温度を予測することが可能である。
【0057】
最近傍モデルは、所与の核酸配列の熱力学的パラメータを決定するための正確な手段を提供するため、融解温度を予測するために使用できる。このモデルは、異なる鎖上の塩基間の相互作用も近傍にある塩基に依存する場合があるという理解に基づいている。例えば、核酸二本鎖を塩基対間の多数の相互作用として扱う代わりに、最近傍モデルは二本鎖を「近傍にある」塩基対間の多数の相互作用として扱う。したがって、すべての可能な最近傍相互作用の経験的に決定された熱力学的原理(例えば、DNAについては、Breslauer,K.J.ら、(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:3746~3750頁を参照されたい;RNAについては、Freier,S.M.ら、(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:9373~9377頁を参照されたい)を使用して、特定の配列の熱力学的パラメータを計算し、したがって、その配列の融解温度を予測できる。
【0058】
オリゴヌクレオチドの調製
例えば、液相又は固相の方法を使用してオリゴヌクレオチドを調製してもよい。
【0059】
オリゴヌクレオチドは、例えば、化学的(例えばホスホラミダイト・カップリング化学を使用して(Beaucageら、(1981)Tetrahedron Lett.22:1859頁;Beaucageら、(1992)Tetrahedron 48:2223~2311頁)又は酵素的のいずれかによって合成することができる。
【0060】
ハイスループットのオリゴヌクレオチド合成は、自動合成装置を使用して実現できる。
【0061】
オリゴヌクレオチドのホスホラミダイトベースの合成は、活性化剤との反応によってヌクレオシドホスホラミダイト単量体前駆体を活性化して活性化中間体を形成し、続いて伸長中のオリゴヌクレオチド鎖に活性化中間体を逐次的に添加してオリゴヌクレオチド産物を形成することを含む。オリゴヌクレオチド鎖は、一般的に、一端が適切な固体支持体に固定されている。
【0062】
末端保護基(例えば5’-DMT)は、後続の精製方法に応じて保持又は除去される場合がある。次いでオリゴヌクレオチドは、一般的に水酸化アンモニウムでの処理により、精製前に固体支持体から切断されてもよく、これはまた、塩基及びリン酸トリエステル保護基を除去するのに役立つ。
【0063】
酵素的方法の例には、本明細書に記載の「制御されていない」カップリング及び「制御された」カップリング方法が含まれる。
【0064】
「制御されていない」方法は、鋳型非依存性ポリメラーゼ又はヌクレオチジルトランスフェラーゼのようなポリメラーゼを使用して、既存のオリゴヌクレオチドを延長するために所望のヌクレオチドを付加する場合がある。それぞれの延長ステップの産物は、異なる数のヌクレオチドが付加されたオリゴヌクレオチドの混合物である(すなわち、[開始オリゴヌクレオチド]+(n)ヌクレオチド、n=0、1、2、3など)。次いで、所望の延長産物は、試薬及び副産物から精製される場合がある。ヌクレオチジルトランスフェラーゼのインキュベーション及びオリゴヌクレオチドの精製ステップは、最終的なオリゴヌクレオチドに到達するまで反復される場合がある。ヌクレオチジルトランスフェラーゼの例には、ポリヌクレオチドホスホリラーゼ(Shumら、(1978)Nucleic Acids Res.5:2297~2311頁)及び末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(Schottら、(1984)Eur.J.Biochem.143:613~620頁)が含まれる。
【0065】
「制御された」方法は、これを適応させたものであり、酵素の延長ステップ中に複数のヌクレオチドが付加されるのを防ぐために、延長ステップで使用されるヌクレオチド試薬がブロックされる。この「制御された」方法では、これらのブロックされたヌクレオチドを取り込むことができるように、修飾された鋳型非依存性ポリメラーゼを操作する必要がある場合がある。延長ステップ後、ブロッキング基を除去して、後続のブロックされたヌクレオチドを付加できるようにする。
【0066】
本技術の更なる態様、特徴及び長所は、添付の図面に関連して読まれる実例についての以下の説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】一本鎖断片に分割された標的DNA配列(A=配列番号1)の例を示す図である。
図2】プール及びサブプールを示す図である。
図3】プールされた又はサブプールされた組立工程を使用して作製された、さまざまな長さのDNA配列に対して予想されたエラーのないDNAの収率を示すグラフである。
図4】異なる長さのDNA分子に対する1分子あたりのエラーの累積確率を示すグラフである。
図5】一定の最大エラー率を許容できる場合に、プールされた又はサブプールされた組立工程を使用して作製されたDNAの収率が、DNA長に応じて変化する様子を示すグラフである。
図6】プール組立工程、逐次組立工程及びバイナリ組立工程を比較し、所与のハイブリダイゼーション・ステップに供給される以前のハイブリダイゼーション・ステップの対の両方がエラー検出を伴うバイナリ組立工程で、収率をどのように改善できるかを示す図である。
図7】プール組立工程、逐次組立工程及びバイナリ組立工程を比較し、所与のハイブリダイゼーション・ステップに供給される以前のハイブリダイゼーション・ステップの対の両方がエラー検出を伴うバイナリ組立工程で、収率をどのように改善できるかを示す図である。
図8】プール組立工程、逐次組立工程及びバイナリ組立工程を比較し、所与のハイブリダイゼーション・ステップに供給される以前のハイブリダイゼーション・ステップの対の両方がエラー検出を伴うバイナリ組立工程で、収率をどのように改善できるかを示す図である。
図9】少なくとも1つの更なるハイブリダイゼーション・ステップを、エラー検出ハイブリダイゼーション・ステップの対の産物と組み合わせるバイナリ組立工程を使用したハイブリダイゼーション・ステップのツリーの例を示す図である。
図10】バイナリ組立工程を実行できる装置の例を示す図である。
図11】バイナリ組立工程を実行できる装置の例を示す図である。
図12】エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップを実行する方法を示す図である。
図13A】エラー検出付きのバイナリ組立工程を使用してハイブリダイゼーションのツリーを実行する作業例を図式的に示す図である。
図13B】エラー検出付きのバイナリ組立工程を使用してハイブリダイゼーションのツリーを実行する作業例を図式的に示す図である。
図13C】エラー検出付きのバイナリ組立工程を使用してハイブリダイゼーションのツリーを実行する作業例を図式的に示す図である。
図13D】エラー検出付きのバイナリ組立工程を使用してハイブリダイゼーションのツリーを実行する作業例を図式的に示す図である。
図13E】エラー検出付きのバイナリ組立工程を使用してハイブリダイゼーションのツリーを実行する作業例を図式的に示す図である。
図13F】エラー検出付きのバイナリ組立工程を使用してハイブリダイゼーションのツリーを実行する作業例を図式的に示す図である。
図14A】連続するハイブリダイゼーション・ステップの間で、標的二本鎖核酸分子のどの鎖が反応部位の表面に結合するかを切り替えることで、前のハイブリダイゼーション・ステップで検出されたエラーのある断片が、次のハイブリダイゼーション・ステップでエラーのない断片とハイブリダイズすることを防ぐ方法を示す図である。
図14B】連続するハイブリダイゼーション・ステップの間で、標的二本鎖核酸分子のどの鎖が反応部位の表面に結合するかを切り替えることで、前のハイブリダイゼーション・ステップで検出されたエラーのある断片が、次のハイブリダイゼーション・ステップでエラーのない断片とハイブリダイズすることを防ぐ方法を示す図である。
図15】エラー検出動作の多数の異なるエラー検出率について、バイナリ組立工程で生成されたエラーのないDNAの収率が、長さに応じて変化する様子を示すグラフである。
図16】プール又はサブプールの方法で達成された収率と比較した、バイナリ組立工程で達成された収率の相対的な改善を示すグラフである。
図17】バイナリ組立工程を実施するための代替技術を示す図である。
図18】3つの重複領域で、4つの断片のハイブリダイゼーションの例を示す図である(完全配列、配列番号2;s1、配列番号3;a1、配列番号4;s2、配列番号5;a2、配列番号6)。
図19図18の3つの重複領域について、らせん性の割合(所与の温度まで加熱したときにDNA分子の結合が無傷のまま残っている割合)が温度に応じて変化する様子を示すグラフである。
図20】3つの重複領域のそれぞれについて、その重複領域内に単一の塩基エラーを含むすべての考えられるエラーのある二本鎖断片を考慮し、エラーのない二本鎖断片と比較して予想される溶融温度差が所与の温度差よりも小さいエラーのある二本鎖断片の割合を示すグラフである。
図21】3つの重複領域について、「良好」な断片の重複領域の予想される溶融温度よりも低い0.5℃の温度マージンでエラーが検出された場合、重複領域に少なくとも1つの塩基エラーがあるすべての考えられるエラーのある断片の中で、「不良」対「良好」の断片拒否比率の累積分布を示すグラフである。
図22】3つの重複領域について、温度分解能によって、考えられるすべてのエラーのある断片全体の平均拒否比率がどのように変化するかを示すグラフである。
図23】例となるDNA配列のすべての可能な分割にわたる3つの重複全体の平均した単一塩基ミスマッチ集中度の累積分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0068】
次の実例では、簡潔にするために、DNAを二本鎖核酸の例として使用している。この技術は、RNA又はXNA(ゼノ核酸、天然の核酸であるDNA及びRNAの合成代替物)のような他のタイプの二本鎖核酸を組み立てるためにも使用できることが理解されよう。
【0069】
以下に記載する技術は、多くの短いオリゴヌクレオチドからDNAの配列を組み立てる方法を提供し、これにより、他の組立技術と比較した場合、エラーのないDNA又は遺伝子の配列の収率を高めることができる。プール又はサブプールに基づく方法では、合成されたオリゴヌクレオチドの偶発的なエラーが組立工程全体でランダムに蓄積され、配列の長さが増加するにつれてエラーのない二本鎖DNAの収率が劇的に低下する。その結果、最終的な組立の前にエラーのない配列を取得するには、クローニング及びエラー修正のような費用と時間のかかる技術が必要になる。ここに記載された方法は、この問題を回避し、段階的で制御されたハイブリダイゼーション・プロセスの少なくとも1つの中間点でエラーのある断片を検出及び除去することにより、有限のエラー率を許容する。配列エラーのあるオリゴヌクレオチドが、後続のハイブリダイゼーション・ステップでエラーのない二本鎖DNAのプールを希釈するのを防ぐ。特定の断片がまとめられるタイミングの制御が提供され、オリゴヌクレオチド及びDNA断片を特定の順序で組み合わせること、並びにハイブリダイゼーション中にエラーのある配列を検出及び除去する方法が可能になる。利点は配列の長さに比例して増加し、外部の精製技術を必要とせず、合理化された統合プロセスで長いDNA断片のデノボ合成を可能にする。
【0070】
図1は、DNA配列の例を図式的に示し、その配列は、一方の鎖の各塩基A、T、G、Cがもう一方の鎖の相補的な塩基T、A、C、Gを持つように、塩基A、G、C、Tの2つの相補鎖A、Bで形成される。一方の鎖Aはセンス(5’から3’の方向)鎖に対応し、もう一方の鎖Bはアンチセンス(3’から5’の方向)鎖に対応する。それぞれの鎖は、多数の部分的に重複する一本鎖断片A1~A5及びB1~B5に分割される。各鎖のいずれかの末端にある断片A1、A5、B1、B5を除外して、中間の断片A2~A4及びB2~B4はそれぞれ、もう一方の鎖の2つの異なる断片にまたがっている(例えば、鎖Bの断片B3は、鎖Aの断片A2及びA3の一部にまたがっている)。それぞれの鎖から1つずつ、部分的に重複する断片の所与の対が重複する領域は、重複領域と呼ばれる。例えば、この例の断片A3とB2との間の重複領域は、断片A3の塩基5’-GCTC-3’と断片B2の相補的塩基3’-CGAG-5’に対応する。
【0071】
合成DNAは一般に、プールと呼ばれるプロセスで多くの短いオリゴヌクレオチドから組み立てられ、これは、正しいハイブリダイゼーションを確実にするために重複領域に固有の配列を必要とする戦略である。図2の上図は、プールされた組立方法を示し、この方法では、一本鎖断片A1~A5及びB1~B5がすべて一度形成されると、共通のコンテナ内に配置される。それぞれの重複領域が他の重複領域と比較して固有の配列を持つように、鎖A、Bが断片に分割されるそれぞれの鎖の位置を選択することによって、次いで、断片がすべてコンテナに配置されると、それぞれの断片は、相補的な重複領域を持つ正しい他の断片とハイブリダイズする。例えば、断片A3は、一方の末端でB3と、他方の末端でB2とハイブリダイズする。それぞれの重複領域がハイブリダイズする相対的な順序はランダムであり、制御されていない。例えばいくつかのA3の事例はB2の前にB3とハイブリダイズするが、A3の他の事例はB3の前にB2とハイブリダイズする。
【0072】
可能な固有配列の数nは、重複する長さ(l)とともに指数関数的に増加する(n=4)ため、重複が一定の値を超える(20~30塩基対が一般的であり、簡潔にするために、図1では3~5塩基の短い重複を示す)と、配列は実質的に固有になり得る。しかし、この状況は、可能性のある組合せの数を大幅に減らす高反復配列の存在、又はGC若しくはATリッチの領域(GC結合はATよりも強いので、ミスマッチしたGCリッチ配列は、正しく一致したものと同じように結合する場合がある)によって複雑になる。このため、誤ったハイブリダイゼーションの可能性を減らすために、サブプールで組立を行うのが一般的である。図2の下図は、最初に全体の標的DNA分子の断片の異なるサブセットを異なるコンテナに配置して、一方のサブセットの断片が他方のサブセットの断片とハイブリダイズしないようにする方法を示し、これにより、たとえDNA分子の一部の重複領域配列が別のDNA分子の重複領域配列と比較した場合にもはや固有でなくても、より長いDNA分子を形成することができる。一度それぞれのサブプールがハイブリダイズすると、次いで得られた部分的なDNA断片をまとめて更にハイブリダイズし、全体的なDNA分子を形成することができる。
【0073】
プール又はサブプールに基づく方法には、プール又はサブプール全体がハイブリダイズした後でのみエラーを検出又は修正できるという欠点がある。ハイブリダイゼーションのいずれかが行われる前に、最初に形成された一本鎖断片A1~A5、B1~B5にいくつかのエラー検出技術(例えば酵素を使用する)を適用することは可能であるが、これは遅い上に費用がかかる可能性があり、更に検出されないエラーの割合がかなりある場合がある。したがって、合成されたオリゴヌクレオチドの偶発的なエラー(トランケーション、欠失、挿入又は誤った取り込み)は、ハイブリダイゼーション・プロセス全体でランダムに蓄積し、組み立てられたDNA断片の長さが増加するにつれて、エラーのないDNAの収率を劇的に低下させる。エラー率、又は任意の塩基の位置におけるエラーの独立した確率がPの場合、エラーのないDNAの収率Yは、n回の試行でエラーが発生しない確率を超えることはできない、Y≦(1-P。いくつかの異なるエラー率について、図3にグラフで示す。
【0074】
この制限は、生成されるDNAの長さにのみ依存し、そのDNAを組み立てるために使用されるオリゴヌクレオチドの長さ、又はサブプールのステップ数には依存しない(サブプールは、第1の断片がハイブリダイズされないはずの誤った断片の重複領域と一致する1つの断片の重複領域による、ミスハイブリダイゼーションの確率を下げるだけであるが、一本鎖断片の最初のバッチにおける取り込みエラーの収率への影響を低減しない)。このため、ホスホラミダイト化学を使用して数千塩基を超える断片を直接合成することは現在実用的ではなく、エラー率は約200分の1である。また、オリゴヌクレオチド合成における取り込みエラー率が非常に大幅に低下することが、DNA長のわずかな増加を達成するために必要であることも、図3から明らかであるはずである。代わりに、その後に組み立てられてより大きな断片を形成する前に、クローニング及びシーケンシングを行うことによって、エラーのない断片がサブプールから選択される。費用及び時間の両方がかかるプロセスである。
【0075】
しかし、特定の用途がいくらかの所与のエラー率を許容できる場合、完全にエラーのないDNAが常に必要であるとは限らない。長さnの組み立てられたDNAの集団におけるエラー数mの確率密度は二項式であり、次の式で与えられ、
【数3】

これは、E(n)=n(1-P)のDNA分子1つあたりのエラーの期待値を有する。累積分布
【数4】

は、エラー数が任意の数mを下回る確率を計算するために使用できる。DNA分子の大きな集団の場合、これはエラーがm若しくはそれより少ない分子の割合、又は与えられた最大数のエラーの収率である。図4は、取り込みエラーが200分の1のエラー率で発生すると仮定した場合の、DNA長が異なる場合の1分子あたりのエラーの累積確率を示す。図4からわかるように、エラー率に比べてDNA長が長くなると、大部分のDNA分子に予想されるエラー数が発生し、予想よりもエラーが少ないのはごくわずかである(累積確率線の勾配は、DNA長100と比較して、DNA長3000の方が急であるので、これは、分子ごとに予想されるエラーの数の変動が少ないことを示し、長さが3000の大部分の分子は、約0.05%のヌクレオチドにエラーがあり、つまり、200分の1である)。したがって、図3に示すエラーのない収率制限と同様のグラフを、任意の所望の目標エラー率(1分子あたりのエラーのあるヌクレオチドの割合)に対して作成できるが、望ましい精度が基本エラー率(1-P)によって示唆される精度を超える場合、これらは常にDNA長とともに指数関数的に収率の減少を示す。例を図5のグラフに示す。断片の最初のバッチで取り込みエラーが発生する割合が200分の1であると仮定すると、図5は、標的DNAの割合が1000分の1及び500分の1である2例について、標的DNAエラー率(1分子内にエラーのあるヌクレオチドの割合)未満のプールされた又はサブプールされた技術を使用して作製されたDNA分子の割合がDNA長に応じて変化する様子を示す。DNA分子1つあたり500分の1もの割合のヌクレオチドにエラーが許容される場合でも、長さが増加しても、標的DNAエラー率を満たすDNAの収率は依然として低く、長さとともに急速に低下することがわかる。
【0076】
図6~8は、達成されたエラーのない収率の違いを示すための、いくつかの代替組立方法を示す。図6は、上記の単純なプール又はサブプールの方法を示す。図7は逐次組立方法を示す。図8はバイナリ組立方法を示す。これらの図は、理解を容易にするために、A1、B1、A2、B2とラベル付けされたDNAの4つの断片のみのハイブリダイゼーションを示し、重複領域は、断片がハイブリダイズして、重複がそれぞれA1/B1、B1/A2及びA2/B2の間にある配列A1-B1-A2-B2を形成するように存在する。エラーのない収率の比較をより明確にするために、最初の一本鎖断片A1~B2の取り込み(合成)エラー率は、意図的に高い50%、すなわち断片A1、B1、A2及びB2のそれぞれのバッチの50%は、誤った塩基が少なくとも1つ含まれているため、エラーがある(誤った取り込み、トランケーション、欠失又は挿入によるものかどうかに関係なく)と仮定する。明らかに、取り込みエラー率は実際には低くなる可能性があるが、実際の取り込みエラー率が低くても、図8のバイナリ組立方法では、代替方法に比べて依然として収率が高くなる。図6~8に示すそれぞれのボックスで、斜線部分は、ハイブリダイゼーションのその段階で残っている「良好」な断片の収率を示し、これは、それぞれの最初の断片A1、B1、A2、B2の事例数に対する「良好」なエラーのない断片の割合を表す。すなわち、それぞれの最初の断片のN事例が提供され、ハイブリダイゼーションの後の段階での「良好」なハイブリダイズした断片の事例数がGである場合、収率はG/Nに相当する。
【0077】
図6は、プールされた方法を適用する例を示し、すべての断片は、共通のコンテナに単純に配置され、一致する重複領域でハイブリダイズできる。断片の4つの最初のバッチのそれぞれに50%のエラーのある断片があり、一連のハイブリダイゼーションは制御されていないため、ハイブリダイゼーションの完了後に残っている、組み立てられた配列A1-B1-A2-B2のエラーのない事例の収率は0.5×0.5×0.5×0.5=0.0625であり、すなわち最も近い整数に丸めると、エラーなし6%の収率である。サブプールが使用されている場合でも、これにより、2つの別々のサブプールA1/B1及びA2/B2が25%の収率(0.5×0.5)を依然として生成し、次いで2つのサブプール間のハイブリダイゼーションにより、1つのサブプールの「良好」な断片の4分の1は、他のサブプールの「良好」な断片と対になり、すなわち、エラーのない収率は、依然として0.25×0.25=0.0625、すなわち再び6%である。
【0078】
図7は、比較のために、逐次組立工程の例を示し、最初に一本鎖断片の対A1、B1がハイブリダイズされ、エラーのあるハイブリダイズした断片がそのハイブリダーゼーション後に検出及び廃棄され、この後、次いで、残りのエラーのない断片A1-B1を次の一本鎖断片A2とハイブリダイズする。再び、エラーのある断片が検出及び廃棄された後、残りのエラーのない断片A1-B1-A2を最後の一本鎖断片B2とハイブリダイズする。ハイブリダイゼーションのたびにエラーのある断片を除去すると、収率の改善に役立つと考える人もいるかもしれない。しかし、それぞれの連続的な逐次ハイブリダイゼーションで追加された一本鎖断片には、依然として50%のエラーのある断片が含まれているため、前のハイブリダイゼーション・ステップで得られたエラーのない断片の半分は、次のハイブリダイゼーション・ステップでエラーのある断片と対になり、その結果、最初の材料の量に対するエラーのない断片の収率は、依然として図6と同じである。それぞれのハイブリダイゼーション・ステップにおいてエラーのある断片を除去することで、最後のハイブリダイゼーション・ステップでまだ存在しているエラーのある断片の量を減らすことのみが達成される(図7では、最初の材料の量に対する6%の収率は、ここでは、図6のように残りの断片の6%ではなく、残りの断片の50%を表す)。それにもかかわらず、所与の量の投入材料に対して作成される有用な材料の量は、図6の場合よりも多くない。
【0079】
図8は、エラー検出を伴うバイナリ組立工程を示し、ここでは、更なるハイブリダイゼーション・ステップHが、以前のハイブリダイゼーション・ステップHの対の直接の産物をハイブリダイズする。両方のHとも、エラー検出ハイブリダイゼーション・ステップであり、ハイブリダイゼーション・ステップで形成されたエラーのある断片を検出するステップ、及び検出されたそれぞれのエラーのある断片の一部を廃棄するため、後続の更なるハイブリダイゼーション・ステップHからそれを除外するステップを含む。したがって、以前のハイブリダイゼーション・ステップHのそれぞれでは、提供された最初の材料の量に対して25%(0.5×0.5)の有効な収率を依然として生成するが、75%のエラーのある断片が検出及び廃棄され、「良好」な断片の精製された集団が残り、次いで、これらが更なるハイブリダイゼーション・ステップHで一緒にハイブリダイズされる。エラーのある断片が残っていないので、すべての「良好」な断片が他の「良好」な断片と対になるため、更なるハイブリダイゼーション・ステップHで収率がこれ以上低下することない。したがって、更なるハイブリダイゼーション・ステップHの最後に得られた収率は依然として25%であり、図6又は図7の6%に対して大幅に改善されていた。もちろん、実際には、合成エラー率は50%に達する可能性は低く、以前のハイブリダイゼーション・ステップHの後に実行されたエラー検出動作は、エラーのある断片の検出において100%正確ではない場合があり、「良好」な断片の損失につながる他の損失メカニズムがある場合があるが、以下で説明するように、エラー検出率が低く、追加の損失があったとしても、合成されるDNAの全長が長くなるにつれて、図8に示す方法の相対的な改善は、図6又は図7と比べてますます大きくなる。
【0080】
図6~8は、ハイブリダイズして標的DNA分子を形成する4つの断片の例を示しているが、図9に示すように、ハイブリダイゼーションのツリーを形成するために、更なるハイブリダイゼーションを順番に実行してもよい。一連のハイブリダイゼーションの供給材料として提供される最初の断片は、一本鎖断片から既に部分的にハイブリダイズした二本鎖断片である可能性があり、又はより一般的には一本鎖断片である場合があり、そのため、最初のハイブリダイゼーション・ステップは、部分的に重複するDNAの二本鎖断片が生成されるのは初めてである。この例では、最初の断片は、一本鎖断片A1、B4、A2などである(図1に示すように)。ハイブリダイゼーションのツリーは、ハイブリダイゼーション・プロセスの供給材料として提供された最初の断片のそれぞれの対をハイブリダイズする多数の最初のハイブリダイゼーション・ステップH~H、及び以前のハイブリダイゼーション・ステップ(以前のハイブリダイゼーション・ステップは、最初のハイブリダイゼーション・ステップ又は後のハイブリダイゼーション・ステップのいずれかである可能性がある)で生成された断片の対をハイブリダイズする多数の更なるハイブリダイゼーション・ステップH、H、Hを含む。最初の断片の数が正確に2の累乗である場合(例えば、断片A1~A4及びB1~B4のみが提供された場合)、ハイブリダイゼーションのツリーは、図9のステップH~Hに示すように、完全なバイナリツリーを形成する。最初の断片の数が2の累乗ではない場合(例えば、図9の点線で示すように、追加の断片A5がある場合)、以前のハイブリダイゼーション・ステップの結果を、まだハイブリダイゼーションを受けていない最初の断片とハイブリダイズする、いくつかの追加のハイブリダイゼーション・ステップが必要になる場合もある。同様に、B5とA1のハイブリダイゼーションには、簡潔にするために図9に示されていない追加のハイブリダイゼーション・ステップが必要になる場合がある。
【0081】
それぞれのハイブリダイゼーション・ステップHは、標的DNA配列の特定の重複領域に対応し、その特定の重複領域で断片の1つ又は複数のそれぞれの対をハイブリダイズさせる。例えば、この例の最初のハイブリダイゼーション・ステップHは、一本鎖断片A2とB3との間の重複に対応し、この例の更なるハイブリダイゼーション・ステップHは、一本鎖断片B3-A3の間の重複に対応し、以前のハイブリダイゼーションHから得られた断片A1-B4-A2-B3と以前のハイブリダイゼーションHから得られた断片A3-B2-A4-B1の1つ又は複数のそれぞれの対をハイブリダイズする。それぞれのハイブリダイゼーション・ステップは、それぞれの対応する断片の対の、それぞれのバッチで複数回繰り返されて、ハイブリダイズした断片の対応するバッチが形成される場合がある。
【0082】
更なるハイブリダイゼーション・ステップH~Hのいずれも、図8に示す更なるハイブリダイゼーション・ステップHに対応する場合があり、そのため、そのハイブリダイゼーション・ステップに供給する以前のハイブリダイゼーション・ステップHの両方がエラー検出動作を含む。図9の例では、ハイブリダイゼーション・ステップH及びHはエラー検出動作であるため、図8を参照して説明した理由により、次のハイブリダイゼーション・ステップHで生成される二本鎖断片B4-A2の収率を改善できる。同様に、H及びHがエラー検出タイプのハイブリダイゼーションである場合、後続のステップHで生成される収率を改善することができ(後続のステップにおける収率にノックオン効果がある)、H及びHがエラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップである場合、Hで生成される収率を改善することができる。
【0083】
すべてのハイブリダイゼーション・ステップがエラー検出タイプである場合、収率は最も高くなる。これは、以下に記載されたエラー検出メカニズムが、対応するハイブリダイゼーション・ステップでハイブリダイズされる重複領域のエラーのみを検出できる場合があるからであり、そのため、エラーを検出できる領域を、組み立てられる標的DNA分子の配列全体に拡張するために、ハイブリダイゼーションごとにエラー検出動作が必要である。それでも、すべてのハイブリダイゼーションがエラー検出タイプであることは必須ではなく、この場合、ハイブリダイゼーションツリーの複数のレベルを1つの部位で組み合わせることができるため、時間を節約して処理速度を向上させるために、一部のエラー検出動作を除外する場合がある。
【0084】
図9は、ハイブリダイゼーションの相対的な順番のみを示し、絶対的なタイミングを示さないことが理解されよう。すなわち、更なるハイブリダイゼーションH又はHの両方がハイブリダイゼーションH及びHの結果によって決まるため、H又はHを実行することができる前に、H及びHを完了する必要があるという順番である。しかし、H、H及びHはHから独立しているため、H、H及びHがHの前又は後に実行されるかどうかは関係がない。ツリーの所与のレベルでハイブリダイゼーションのすべてのステップを並行して実行すると、プロセスが最も速くなるが、これは必須ではなく、独立したハイブリダイゼーション間の相対的なタイミングを変更するという柔軟性がある。
【0085】
ハイブリダイゼーション・ステップのそれぞれのエラー検出タイプに対して実行されるエラー検出動作は、ハイブリダイゼーション・ステップの結果をクローニング及びシーケンシングのために宿主にエクスポートすることなく実行することができる。代わりに、エラー検出動作は、エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップで形成されたハイブリダイズした断片に対して実行され、エラー検出動作で廃棄されなかった残りの断片は、次のハイブリダイゼーション・ステップに直接転送されるので、次のハイブリダイゼーション・ステップは、前のハイブリダイゼーション・ステップで生成された分子のクローンコピーではなく、前のハイブリダイゼーション・ステップで生成された直接の産物(同一分子)に作用する。したがって、このプロセスは、クローニングに関するプロセスよりもはるかに高速である可能性がある。動作(ライゲーションなど)は、次のハイブリダイゼーション・ステップを実行する前に、前のハイブリダイゼーション・ステップで生成された分子に対して実行される場合があり、そのような動作では、完全に新しい分子を生成するのではなく、既存の分子を変更するだけであることに注意されたい。前のハイブリダイゼーション・ステップで生成された物理的に同一の分子で更なるハイブリダイゼーションが実行されるため、このような介入動作の結果は、依然として、前のハイブリダイゼーション・ステップの直接の産物と見なされる。
【0086】
図10及び図11は、上記のバイナリ組立工程が実行され得るデバイス2を示す。簡潔にするために、電気又は磁気トラップを作製するためのメカニズムは示していないが、それでも提供できる。図10に示すように、流体流要素(例えば、ポンプ)は、デバイス2の上部を横切る流体流経路4を通る流体の流れを制御するために提供される。温度制御デバイス2の平面を横切るさまざまな位置に多数の反応部位(能動式温度部位)6が提供されている。それぞれの反応部位6の上部は、一本鎖核酸断片の伸長又はハイブリダイゼーション・ステップが起こり得る反応表面(例えば、金キャップ)を含む場合がある。それぞれの反応部位6は水平面の一部に対応しているため、隣接する反応部位6の間に物理的障壁はない。それぞれの反応部位6は、反応部位表面の下に提供された加熱要素7を有し、その部位の上を流れる流体の対応する部分に熱を加え、エラー検出を実行するために流体の温度を制御する。図11に示すように、反応部位6は、二次元マトリックス(グリッド)に配置され、2つ以上の行(レーン)9に配置され、レーン/行方向は、流体が流体流経路4を通って流れる方向に平行である。能動式温度部位6の間にある領域は、加熱要素を含まないが、デバイス2の基板10に向かって流体から熱を伝導することにより受動式冷却を提供する1つ又は複数の受動式温度領域8を形成する。行方向のそれぞれの能動式温度部位6の長さxは、同じ行の一対の隣接する能動式温度部位6の間にあるそれぞれの受動式温度領域8の長さyよりも長い。基板に垂直な方向のそれぞれの能動式温度部位6の下に提供された材料の熱抵抗は、それぞれの受動式温度領域8の下に提供された材料の基板に垂直な方向の熱抵抗よりも大きくてもよい。図10に示すように、放熱板として機能するための基板10を冷却するために、冷却メカニズム12が提供される場合がある。
【0087】
或いは、能動式領域6及び受動式領域8を使用して、能動式部位での能動式加熱及び冷却部位での放熱板10への受動式冷却により温度を制御するよりもむしろ、連続した反応部位は、ペルチェ効果を使用して熱電冷却素子に供給される制御電流に応じて反応部位との間で熱を伝達する、単一の熱電冷却素子を使用して温度を制御してもよい(例えば、WO 2017/006119 A2の制御システムを使用できる)。
【0088】
使用中、一緒にハイブリダイズされるオリゴヌクレオチド又は他の最初の断片は、デバイス2の所与のレーンのそれぞれの反応部位6で伸長するか、又は他の場所で形成された後、反応部位6に固定される場合がある。それぞれの反応部位6は、同一配列の多くのオリゴヌクレオチドを固定し、異なる部位6では異なる配列を固定する。オリゴヌクレオチドのグループは、反応部位から独立して放出され、輸送されて、それらの近傍にあるものと対でハイブリダイズし得る。オリゴヌクレオチドのエラーは、これらのハイブリダイズした重複領域の結合強度をテストすることによって検出することができ、続いてエラーのあるオリゴヌクレオチドを除去する。次いで、このプロセスを繰り返して、得られた断片の対を結合し、それぞれのペアワイズ・ハイブリダイゼーション・ステップで断片の長さを延長する。相補的な重複配列の方向は、ハイブリダイゼーションごとに反転するため、すべてのヌクレオチドは、基板から放出された一本鎖又は二本鎖断片の一部としてテストされ、エラーのある断片は、後続のステップで「良好」な断片にハイブリダイズせずに除去できる。温度制御は、ハイブリダイズした結合の強度をテストするメカニズムとして使用でき、エラーのある断片は流れによって除去される。
【0089】
それぞれのペアワイズ・ハイブリダイゼーション後にエラーのある断片を除去した結果、これらのエラーによってエラーのない断片のプールを希釈されることが防がれ、長さが増加するにつれてエラーのないDNAの収率が大幅に改善される。このプロセスにより、エラーのないDNAの収率は、もはや長さとともにそれほど急激に低下はしないが、その代わり、エラー検出の有効性並びに輸送損失及びハイブリダイゼーション効率のような詳細に依存する、より緩やかな減少に従う。したがって、長い配列についてもエラーのないDNAの収率が非常に大幅に改善され、DNA長とともに増加する既存の技術よりも改善が見られる。
【0090】
図12は、エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップ(例えば、図9に示すハイブリダイゼーション・ステップのいずれかであり得る)を実行する方法を示すフロー図を示す。ステップ20で、その特定のハイブリダイゼーション・ステップに対応する関連する重複領域で重複する断片の対応する対に対して多数のハイブリダイゼーションが実行され、その重複領域で結合された複数のハイブリダイズした断片が形成される。ハイブリダイズした断片のいくつかは、そのハイブリダイゼーション・ステップでハイブリダイズした重複領域に対応する位置にある最初の断片の1つに取り込みエラーが存在するため、エラーがある場合がある。
【0091】
ステップ22及び24は、所与の反応部位で実行されるエラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップで実行されるエラー検出動作を表す。ステップ22で、所与の反応部位の温度は、その重複領域内に塩基エラーを含まない、エラーのないハイブリダイズした断片の対応するハイブリダイゼーション・ステップで形成された重複領域の予想される融解温度よりも低いマージンの温度に設定されるように制御される(エラーのないハイブリダイズした断片は、重複領域外の配列の他の部分にまだ塩基エラーがある可能性があり、これらは、この特定のエラー検出ステップではテストされないことに注意されたい)。所与の反応部位に使用される特定の温度は、重複領域の異なる塩基配列の予想される融解温度のコンピュータ・シミュレーション、及び温度を特定のレベルに設定することで拒否される「不良」な断片と「良好」な断片との比率を使用してそれぞれのハイブリダイゼーション・ステップについて決定することができ、以下により詳しく説明する。予想される融解温度より低いマージンに温度を設定することにより、重複領域に少なくとも1つの塩基エラーがあるエラーのある断片は、重複領域に完全に一致する塩基の配列がある「良好」な断片よりも解離する可能性が高くなる。ステップ24で、反応部位でハイブリダイズした断片上に流体が流され、断片の「非結合の」又は「ゆるい」鎖(反応部位の表面に直接固定されなかった鎖)上の断片の一部が洗い流される。エラーのある断片は、「良好」な断片よりも温度調整ステップによって結合が弱められる可能性が高いため、残りの断片が表面に固定されたまま、より多くのエラーのある断片が流動流体中に廃棄される。それぞれのエラーのある断片の結合した半分は表面に固定されたままであるが、連続するハイブリダイゼーション・ステップの間でどの鎖が表面に結合するかを交互にすることで、ステップ28で結合した断片が続いて放出される場合、後続のステップでこれらの孤立した断片がハイブリダイズすることを防ぐ。
【0092】
ステップ26でライゲーション・ステップが実行され、エラーのある断片の非結合部分が洗い流された後の残りの断片が、同じ鎖の隣接する一本鎖断片間の糖リン酸骨格を結合するライゲーション酵素に曝露される。ハイブリダイゼーション・ステップが2つの一本鎖断片に対して実行される最初のハイブリダイゼーション・ステップである場合、ライゲーション・ステップは除外される場合がある。例えば、図9に示すハイブリダイゼーション・ステップHでは、ステップ20での重複領域B4-A2のハイブリダイゼーションを行い、ステップ22、24でエラーのある断片を検出/廃棄した後、ライゲーション・ステップ26は、鎖Aの断片A1とA2との間及び鎖Bの断片B3とB4との間の糖リン酸骨格を連結し、その後、B4とA2との間の重複領域の融解温度超又は融解温度まで加熱されてもハイブリダイズし断片が解離することを防止する場合がある。
【0093】
ステップ28では、残りの断片が所与の反応部位から放出される。放出メカニズムは、切断可能なリンカー物質を介して断片を反応部位に付着させることにより提供でき、リンカー物質を別の切断物質に曝露することにより、又は所与の温度に加熱することにより切断できる。或いは、放出は酵素によって活性化され得る。例えば、上記の例。切断可能なリンカー物質の例には、切断により3’ヒドロキシヌクレオチドが生成されるような、ヌクレオチド部分に結合したコハク酸部分を有する化学組成物が含まれる。詳細には、切断可能なリンカーは、5’-ジメトキシトリチル-チミジン-3’-スクシナート、4-N-ベンゾイル-5’-ジメトキシトリチル-デオキシシチジン-3’-スクシナート、1-N-ベンゾイル-5’-ジメトキシトリチル-デオキシアデノシン-3’-スクシナート、2-N-イソブチリル-5’-ジメトキシトリチル-デオキシグアノシン-3’-スクシナート、又はそれらの組合せの1つである場合がある。一部の実施例では、主な輸送流体自体に提供される流路に加えて、供給チャネルのネットワークには、特定の反応部位への試薬又は酵素の選択的供給を可能にする、特定の部位から断片を標的放出できるようにする、制御弁を提供することができる。或いは、所与の反応部位からの断片の放出が、対応する部位の温度を放出温度に調整することにより誘発されるように、温度不活性化リンカーが使用される場合がある。例えば、所与の温度で活性になる酵素を使用してもよく、断片が放出される必要な部位のみを酵素の活性化温度まで加熱してもよい。使用される特定の放出メカニズムにかかわらず、標的核酸を形成する最終ハイブリダイゼーション・ステップ以外のすべてについて、所与の反応部位から放出された断片は、次いで、流体流経路4によって提供される流動流体中を、後続のハイブリダイゼーションが行われる次の反応部位へ輸送される。電気トラップ又は磁気トラップを使用して、相補的な断片を互いに近くに維持し(温度が上昇して切断メカニズムが活性化するため、脱離放出中に融解した場合でも)、ある反応部位から別の部位への輸送を助けることができる。すなわち、所与の反応部位のトラップを活性化してから、所与の反応部位から断片を脱離するのに必要な温度まで温度を上げ、次いで、トラップがまだ活性な状態で断片が放出されたら、温度を再び下げ、温度が下がったら、トラップを不活性にすることができる。これは、付着メカニズムの放出温度がいくつかの断片の融解温度よりも高い場合でも、断片は、温度が再び下がるまでトラップによって維持され、次いで、トラップが放出されて断片を次の部位に輸送する前に再アニーリングできることを意味する。磁場又は電場を使用して核酸断片を操作又は捕捉するための任意の既知の方法を使用してもよい(例えば、静電トラップ、電気泳動トラップ、又は誘電泳動トラップを使用する)。
【0094】
図13A~13Fは、図1に示す様式で一緒にハイブリダイズすることを目的とした、8つの一本鎖断片A1~A4及びB1~B4を一緒にハイブリダイズする簡単な例のバイナリ組立工程の動作を示す(簡潔にするために、A5及びB5とのハイブリダイゼーション・ステップ、並びにトラップの使用は示していない)。図13A~13Fに示すステップは、ハイブリダイゼーションのより大きなツリーの一部を形成して、より長いDNA分子を形成する場合があることが理解されよう。理解を容易にするために、最初の一本鎖断片A1~A4及びB1~B4のそれぞれは、図13A~13Fに同じ長さで示されるが(矢印は5’から3’の方向を示す)、実際には図1に示すように異なる断片は、異なる数の塩基を持つ場合がある。この例では、所与のタイプの最初の断片のそれぞれの最初のバッチは、断片の3つの事例を含み、明らかに実際には、それぞれの部位でそれぞれの断片の事例が更に多く提供される。エラーのあるヌクレオチドの位置は、図13Aに×でマークされている。もちろん、挿入、欠失、又はトランケーションエラーは、実際には同一断片内に複数のエラーのあるヌクレオチドをもたらす可能性があるが、簡潔にするために、この例のそれぞれのエラーは、単一のヌクレオチドのみが誤って代替ヌクレオチドに置換された誤った取り込みエラーであると仮定されている。
【0095】
図13Aに示すように、最初の断片は、対応する反応部位でin situで合成されるか、又は他の場所で合成後に反応部位に適用され、切断可能なリンカー・メカニズムを介してそれぞれの部位に結合している。異なる反応部位上でセンス(A)断片とアンチセンス(B)断片とが交互になってプロセスが開始されるように、断片の最初の配置が選択される。様式は、第1の部位ではセンス(A)、第2の部位ではアンチセンス(B)で開始する。部位の数が倍加するたびに、右側に追加された新しい部位は、左側の既存の部位の相補体(すなわち、A→B、B→A)である。したがって、最初のいくつかの様式は次のとおりである:AB、ABBA、ABBABAAB、ABBABAABBAABABBA、ABBABAABBAABABBABAABABBAABBABAABなど。この様式では、センスとアンチセンスとを交換できることに注意されたい。この様式は、Thue-Morse列の少なくとも一部に従う。Thue-Morse列では、nの二進表現の1の数が奇数の場合、配列のn番目の要素tは1であり、nの二進表現の1の数が偶数の場合は0である。したがって、n=0~15の最初の16要素は0110100110010110になる。Thue-Morse列の1と0はそれぞれAとB(センスとアンチセンス)に、又は逆もまた同様にマッピングでき、したがって、0はAとBのいずれかに、1はAとBの反対の方にマッピングできる。最初の断片の数が2の正確な累乗ではない場合、2の次に高い累乗のThue-Morse列を適切な長さに切り捨てることができる(配列の最初の部分を除去するか、又は配列の最後の部分を除去するかいずれかによって)。図13Aの特定の例では、8つの部位があり、したがって、様式ABBABAABが使用され、そのため、部位0~7はそれぞれ断片A2、B3、B4、A1、B2、A3、A4、B1を有する(もちろんBAABABBAもまた使用可能である。例えば順序A2...B1を逆にして、B1...A2にすることができる)。要約すると、一続きの反応部位は、センス断片(センス鎖を介して反応部位に結合)とアンチセンス断片(アンチセンス鎖を介して反応部位に結合)を割り当てることができ、所与の反応部位にセンス断片又はアンチセンス断片が割り当てられているかどうかを示す指示の列は、Thue-Morse列の一部に対応する。
【0096】
対応する反応部位でin situで断片が伸長する実施態様では、所与の部位で提供される断片がセンス(A)断片又はアンチセンス(B)断片に対応するかどうかにかかわらず、断片はすべて同一方向に伸長する。図13Aの例では、断片は5’から3’方向に伸長し(上向きの矢印で示される)、5’末端が表面に最も近い。他の例では、断片は3’から5’方向に伸長することができ、3’末端が表面に最も近い。どちらの方向を使用するかは、断片の伸長にホスホラミダイト化学又は酵素的手段のどちらを使用するかによって決まる。断片が伸長する方向に関係なく、それぞれの断片の塩基の順序は、最終的な標的核酸分子に組み立てられたときに対応する断片が現れる方向と一致するように選択される。
【0097】
図13A~13Fに示す例は、基本的に図9の例に対応するが、断片A5が提供されていないため、点線を無視することに注意されたい。したがって、図13B、13D及び13Fに示すH~Hのラベルは、図9の対応するハイブリダイゼーション・ステップを表す。この例では、ハイブリダイゼーション・ステップのそれぞれがエラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップであると仮定されている。
【0098】
図13Bに示すように、例えば、リンカー・メカニズムの放出温度まで加熱することにより、又は切断酵素若しくは化学物質を必要な部位に回すことにより(例えば、上記で論じた供給チャネルを使用して)、最初のハイブリダイゼーション・ステップH~Hを実行するために、断片A2、B4、B2、A4は、それぞれ部位0、2、4及び6から放出される。部位1、3、5及び7の断片は、反応部位に結合したままである。流動流体は放出された断片を偶数番号の部位から次の奇数番号の部位に輸送し、重複領域の塩基の相補的配列は、対応する重複領域でのハイブリダイゼーションをもたらす。必要に応じて、電場若しくは磁場によって制御された障壁メカニズム、又は選択的に導入された物理的障壁を使用して、標的反応部位を越えて放出された断片が進行することをブロックし、放出された断片がハイブリダイズする前に次の反応部位を越えて通過するのを停止できる。ハイブリダイゼーション・ステップH、H、H及びHは、それぞれ部位1、3、5及び7で実行され、断片の一方の鎖の重複領域がもう一方の鎖の末端を越えて延長している、粘着末端を依然として有する対応する二本鎖断片を形成する。
【0099】
図13Cは、最初のハイブリダイゼーション・ステップH~Hに対して実行されるエラー検出ステップを示す。部位1、3、5、7の温度は、その部位でハイブリダイズした重複領域の予想される融解温度Tより低いマージン(Δ)に設定される。例えば、部位1の場合、関連する重複領域は断片B3とA2との間にあるため、温度はT(B3A2)-Δに設定される。一部の実施例では、融解温度だけでなく、マージンΔもそれぞれの部位に合わせて選択してもよく、「良好」な断片に対するエラー検出によって拒否される「不良」な断片の割合を最大化する。「良好」な断片の重複領域の予想される融解温度のすぐ下まで加熱することにより、重複領域にエラーのある塩基があるエラーのある断片は、重複領域内で塩基が完全に一致する「良好」な断片よりも分離される可能性が高くなる。流動流体は、エラーのある断片の分離されたゆるい部分を洗い流す。例えば、部位1では、ゆるいA2断片の1つにエラーがあったため、その反応部位で結合した断片B3から分離し、洗い流される。パートナーを持たないが依然として反応部位に結合された、孤立した断片としてB3を残す。他の場合には、エラーは結合した断片にある可能性があるため、エラーが含まれていなくても「良好」なゆるい断片が廃棄される場合がある(それにもかかわらず、後続のハイブリダイゼーション・ステップでエラーのある断片が他の断片とハイブリダイズするのを防ぐために、「良好」なゆるい断片を廃棄することが望ましい)。現在のハイブリダイゼーション・ステップでハイブリダイズした重複領域にエラーがなかった残りのハイブリダイズした断片の中で、重複領域外の断片の他の部分にまだエラーがある可能性があることに注意されたい(例えば、部位3の断片の1つ及び部位7の断片の1つを参照されたい。これらのエラーは後のハイブリダイゼーション・ステップで検出できる)。ハイブリダイゼーションは一本鎖断片の対で実行されたため、上記のライゲーション・ステップは、図13B及び13Cに示す最初のハイブリダイゼーション・ステップには必要ない。
【0100】
図13Dに示すように、部位1及び5の断片が放出され、次の反応部位(この例では3及び7)に流動流体中で輸送される。部位3及び7で実行されるハイブリダイゼーションは、それぞれ図9のハイブリダイゼーション・ステップH及びHに対応する。部位1及び5から放出された「良好」な断片は、一致する重複領域があるため、部位3及び7で提供された断片とハイブリダイズすることができる(例えば、ハイブリダイゼーション・ステップHに対応する部位3の場合、重複はB4とA2の間である)。しかし、前のエラー検出ステップでエラーがあると検出された、孤立した断片は、「良好」な断片とともに輸送されるが、次の部位で露出した重複領域とハイブリダイズできる重複領域がないため、次の部位でパートナーは見つからない。例えば、部位1で孤立した断片B3は、部位3でA1-B4断片とハイブリダイズできない。洗い流された断片A2がB3とB4との間の架橋に必要だったからである(図1を参照)。したがって、孤立した断片は、ハイブリダイズすることができない。部位3及び7に示すように、これらの部位のいくつかの「良好」な断片は、それ自体がエラーを含んでいるのではなく、ハイブリダイズできる十分な「良い」パートナーがないため、孤立する場合がある。
【0101】
図13Eに示すように、ハイブリダイゼーション・ステップH及びHの一部として、別のエラー検出ステップが実行され、ここで、部位3及び7が、「良好」な断片の対応する重複領域の予想される融解温度より低いマージンまで加熱される。この特定の例では、エラーのある塩基のランダムな位置は、これらのハイブリダイゼーション・ステップで結合された重複領域にエラーが含まれないようになっているため、断片は廃棄されないが、他の場合には、この段階でいくつかのエラーが検出される可能性がある。ライゲーションは、エラー検出後に、対応するハイブリダイゼーション・ステップで結合された断片の骨格を接続するために、図13Eの円で示された位置で実行される。事実上、連結された骨格は、図13Eの結果として得られた断片が、図13Dのステップでハイブリダイズした短い断片よりも長い二本鎖断片であることを意味する。
【0102】
図13Fに示すように、次いで、部位3から断片が放出され、ハイブリダイゼーション・ステップHで部位7の断片とハイブリダイズする。このハイブリダイゼーション・ステップに続いて、部位7の温度をT(B3A3)-Δに加熱して、前のものと同様の別のエラー検出動作を実行し、ハイブリダイゼーション・ステップHでハイブリダイズした重複領域A3-B3のエラーを検出する。図13Fの円でマークされた位置の核酸の骨格は以前に連結されたので、エラーのある断片のA3とB3との間の重複領域での結合を弱めるための温度T(B3A3)-Δと比較して、連続的に連結された骨格を持つ核酸の部分に沿ったそれぞれの鎖を解離させるには、はるかに高い温度が必要であり(すなわち、A3-B2-A4-B1からA1-B4-A2-B3を分離する場合と比較して、A1-A2をB4-B3から分離することは比較的難しく、B1-B2をA3-A4から分離することは比較的難しい)、そのため、以前にハイブリダイズした重複領域は、他の重複領域で実行される更なるハイブリダイゼーション・ステップでは解離しないことに注意されたい。
【0103】
図13A~13Fに示すハイブリダイゼーションがハイブリダイゼーションのより大きなツリーの一部を形成する場合、図13B/13Cに示すステップを必要に応じてできるだけ多く繰り返すことにより、次いでハイブリダイゼーション・ステップHの結果を使用して後続のハイブリダイゼーション・ステップを実行できる。図13Fに示す断片の1つに残っているA1及びB1のエラーは、そのような更なるハイブリダイゼーション・ステップで検出されることに注意されたい(A1内のエラーは、ハイブリダイゼーション・ステップからハイブリダイゼーション・ステップへの方向の反転により、次のハイブリダイゼーション・ステップで結合した断片に付着するようになるにもかかわらず、A1のエラーにより、A1とA1に一致する重複を持つ次の断片との間の重複領域でミスマッチが引き起こされ、したがって、次のハイブリダイゼーション・ステップの後に実行されるエラー検出により、他の断片が洗い流され、エラーのあるバージョンのA1を含む断片が孤立し、そのため、次のハイブリダイゼーション・ステップの後の後続のハイブリダイゼーションに加わらなくなる)。
【0104】
一方、ハイブリダイゼーション・ステップHが実際にツリーの最後のハイブリダイゼーション・ステップである場合、そのハイブリダイゼーション・ステップHから得られた断片には粘着末端がなく(代わりに、断片B4、A4は、それぞれ断片A1、B1の末端まで延長するためにより長くなる)、したがって、これらのステップでテストされた重複領域は断片の末端まで延長するため、この場合、図13Fの部位7に示す断片の粘着末端のエラーは、実際には、ハイブリダイゼーション・ステップH及びHの間に実行された以前のエラー検出動作で検出されていた。
【0105】
図13Bの例では、4つのハイブリダイゼーション・ステップH~Hはすべて並行して実行されるが、それらを逐次実行することもできる。また、例えば、H又はHの前にハイブリダイゼーション・ステップHを行うことができる。したがって、ステップの相対的なタイミングは重要ではない。それでも、ハイブリダイゼーションツリーのそれぞれのレベルを並行して実行することにより、プロセスを高速化できる。
【0106】
図13A~13Fの例では、ハイブリダイゼーション・ステップHの後、部位7で、組み立てられた配列の1つの断片のみがエラーのないままであるが、実際には、最初の断片のより大きな集団がそれぞれの部位に存在し、そのため、他の「良好」な断片と対になるために「良好」な断片を選択できる断片の大きな集団があるので、集団サイズが大きいほど、収率が上がる可能性が高くなる。エラー検出ステップにより、エラーのある断片が「良好」な断片と対になる可能性が減り、収率が改善される。
【0107】
図14A及び14Bは、図13Aに示す交互配置ABBABAABにより、エラー検出動作で、エラーのある断片を後続のハイブリダイゼーションから除外することを可能にする理由を示す。両方の図は、4つの断片A1、B1、A2、B2の一続きのハイブリダイゼーションを示し、部位S2での更なるハイブリダイゼーション・ステップHは、部位S1、S2でそれぞれ2つの以前のハイブリダイゼーション・ステップHE1、HE2の産物に作用する。図14Aの比較例において、ハイブリダイゼーション・ステップHE1、HE2、Hのそれぞれは、標的DNA分子の同一鎖(鎖A)によって結合された、得られたハイブリダイズした断片とのハイブリダイゼーションを行う。これは、ハイブリダイゼーション・ステップHE1で断片A1にエラーが検出された場合でも、エラー検出動作でB1を放出してもエラーは除外されず、ハイブリダイゼーション・ステップHにおいて部位S2で露出した重複領域はB2であるため、ハイブリダイゼーション・ステップHE2の後に残っている「良好」なA2-B2断片の集団を汚染するように、B2は更なるハイブリダイゼーション・ステップHでエラーのある断片A1に依然としてハイブリダイズする可能性があることを意味する。これは、図14Aに示す配置では、後続のハイブリダイゼーション・ステップHでハイブリダイゼーションが起こる重複領域が、ステップHE1でハイブリダイズしたA1-B1断片の結合末端に対応し、A1-B1重複領域でエラーが検出されたかどうかに関係なく、その結合末端でのA1の粘着末端はそのまま残るためである。
【0108】
一方、図14Bに示すように、断片の最初の配置を交互にすることにより、連続する部位の間の反対側の鎖で断片が反応表面に結合するようにすると、更なるハイブリダイゼーション・ステップHは、鎖Aを介して反応部位に結合されたときに以前にエラーテストされた1つの断片を、鎖Bを介して反応部位に結合されたときにエラーテストされた別の断片と結合する。センス/アンチセンスの反転により、以前は表面に最も近く、ハイブリダイズしていなかったヌクレオチドが今度は断片の上部に存在し、次のハイブリダイゼーション・ステップに備える。このことは、ハイブリダイゼーション・ステップHE1のエラーがゆるい鎖Bではなく結合した鎖Aにある場合でも、残りの断片A1は、次のハイブリダイゼーション・ステップHで露出された重複領域(A2-B1)と一致せず、その重複領域に結合する断片(B1)が廃棄されたため欠けているので、部位S2での孤立したA1鎖とA2-B2断片とのハイブリダイゼーションが妨げられることを意味する。同様に、ハイブリダイゼーション・ステップHE2でB2の重複領域にエラーが検出された場合、B1の重複領域と結合するために必要なA2断片が欠けているため、ハイブリダイゼーション・ステップHE1から得られた「良好」なA1-B1断片との結合が妨げられることになるであろう。したがって、上記のABBABAABなどの様式において最初の断片の配置様式を交互にすると、エラー検出で、以前に検出されたエラーのある断片と「良好」な断片との次の部位でのハイブリダイゼーションを抑制できる。
【0109】
上記のバイナリ組立手順が収率に及ぼす影響を予測することは、解析的にモデル化することは困難であるが、数値的にシミュレーションすることは簡単である。それぞれの「バイナリ」ハイブリダイゼーション(すなわち、上記の図13B及び13Cに示すステップ)では、除去されたエラーのある断片によって収率が低下するが、残りの断片のエラー率は低下する。エラーの検出及び拒否の有限確率を説明するために、Monte-Carloシミュレーションを使用できる。それぞれのハイブリダイゼーション・ステップがエラー検出タイプであると仮定して、長さ100のオリゴヌクレオチド(一本鎖核酸断片)からDNAを200分の1のエラー率で組み立てた場合の結果を図15に示す。図15からわかるように、高い割合のエラーが検出された場合、最初のバイナリステップの後、収率はほとんど低下しない。エラーが検出されない場合、収率は、既存のプール又はサブプール組立方法によって得られるものと同一である。プールによって得られた収率に対して同一データをプロットした図16からわかるように(すなわち、プールされた例は1に等しい平坦な線であり、他の線は、所与のエラー率でバイナリ組立によって得られた収率と、プールによって得られた収率との間の比率を示す)、エラー検出精度が中程度(例えば、低くて35%)であっても、DNA長に比例して増加する大幅な収率の改善を依然としてもたらす。したがって、エラー検出動作でエラーのある断片を見落すことがあったり、「良好」な断片を拒否することがあったりしても、エラー検出精度が比較的低い場合でも、全体的な効果は収率を大幅に改善し、それは数桁に達する場合があり、この改善は、標的DNA分子の長さが長くなるほど顕著になる。図15及び16を生成するために使用されたシミュレーションは、輸送による収率の損失、エラー検出はエラーのない一部のオリゴヌクレオチドも拒否するという事実、及び収率を低下させるその他の実質的問題を無視しているが、利用可能な収率の増加はDNAの長さが増加するにつれて非常に大きくなるので、その劇的な利点を失うことなく、これらの実用性のために、バイナリ方法は著しい損失を許容できる。
【0110】
上記のように、バイナリ組立手順は、連続フロー内で動作する温度指定可能なアレイを使用して実施できる。オリゴヌクレオチドは、反応部位でその場で合成されるか、又は予め合成されてから、個々の反応部位に付着させることができる。基板からの放出は、温度感受性の高い反応速度を有する化学反応又は酵素反応のいずれかによって達成することができる。次いで、流れ、及び任意選択的に電場若しくは磁場、又は電気若しくは磁気トラップを駆動メカニズムとして使用して、反応部位間の輸送を実施し、組立の多くの平行なレーンが得られる。それぞれのレーンの反応部位の間に永久的な物理的境界がないため、バイナリ組立のペアワイズ輸送及びハイブリダイゼーションは、合理化された統合プロセスのフローセル内で完全に進行できる。
【0111】
しかし、輸送メカニズムとして流体流を使用することは必須ではなく、図17は、それぞれの反応部位がウエル又は隣接するコンテナ間に物理的な障壁があるコンテナに対応する場合がある代替案を示し、必要に応じて、手動又は自動制御のピペッティングを使用して、断片を1つのコンテナから次のコンテナに移してもよい。断片を、ウエル内で伸長させるか(例えば、上記のオリゴヌクレオチド調製技術によって)、又は別々に伸長させてから、それぞれのウエルに後で固定してもよい。断片を、必要に応じて脱離することができる切断可能な連結メカニズムによって(例えば、化学試薬又は酵素を適用することによって)、コンテナの表面に結合してもよい。エラーの検出は、上記と同じメカニズムを使用して、関連する重複領域の予想される融解温度のすぐ下まで加熱することにより実行できる。結合が弱められたエラーのある断片は、残りの断片を脱離して次の反応コンテナに移す前に、コンテナを流体で洗浄することによって洗い流すことができる。反応部位の間で断片を輸送するための別の方法は、それぞれの反応部位に磁気ビーズを提供し、磁場を使用して物理的に反応部位を移動し、異なる組合せの断片をまとめることであり得る。
【0112】
上記のエラー検出方法は、部分的にハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドと二本鎖DNAとの間の結合の強度をテストする。これは、結合が融解又は分離する温度が予測可能であり、配列依存的であるために可能である。例えば、図18の上部は、所望のDNA配列の例を示す(簡潔にするために、センス鎖のみを示す)。図18の中央部に示すように、このDNA配列は34番目と67番目の位置で切断され、オリゴヌクレオチドs1、a1、s2、a2(sはセンス、aはアンチセンスを表す)を形成することができる。次いで、図18の下部に示すように、3つのハイブリダイゼーションで所望の配列を組み立てることができ、それぞれのハイブリダイゼーションでの固有の重複配列により、異なる融解温度が生じる。3つの重複領域は、図18の例に示す順序とは異なる順序でハイブリダイズできることに注意されたい。
【0113】
融解温度は、結合の50%が切断された温度であり、残りの結合の割合(%らせん性)は温度に伴って徐々に低下する。図19は、3つの重複領域のらせん性が温度に伴って変化する様子を示し、このグラフは、一般に融解曲線と呼ばれる。
【0114】
検出が必要とされる、複数のエラーメカニズムがある。
1.ヌクレオチドの誤った取り込み(例えば、s1についてATGGTGA...の代わりにAGGTGA...)
2.トランケーション(例えば、s1についてATGGTGAGCAAGG(配列番号7)、13番目の塩基の後が切断された)
3.欠失(例えば、s1についてATGGGA...の代わりにATGGGA...)
4.挿入(例えば、s1についてATGGTGA...の代わりにATGGTGA...)
これらの中で、誤った取り込みは、それらが単一のミスマッチしたヌクレオチドをもたらすため、検出するのが最も困難である。他のエラータイプは通常、複数のミスマッチしたヌクレオチドをもたらすため、検出が容易である。ハイブリダイズした領域での単一のミスマッチの影響のみを考慮すると、それぞれの位置に3つのエラーのあるヌクレオチドが存在する可能性があり、すべての考えられる誤った重複配列について融解温度の分布が生じる。反応部位の温度が正しい重複の融解温度のすぐ下、たとえば0.5℃未満に上昇した場合、融解温度が0.5℃以上低下している誤った重複を分離して流れによって除去しなければならない。正しい配列の融解温度に対する誤った重複の融解温度の低下の累積分布を図20に示し、これを使用して、エラーのない断片の予想される融解温度と比較して、0.5℃の温度降下(又はその他の望ましい温度マージン)によって検出される起こり得るエラーの割合、したがって、エラーの位置がランダムに分布している場合に検出されるエラーの割合を推定できる。
【0115】
図20より、3つの観察を行うことができる。
1)これらの3つの重複では、起こり得るエラーのほとんどで0.5℃を超える融解温度差が発生するため、ランダムエラーを検出する確率が高い。
2)その確率は、重複の配列によって決まり、例えば、融解温度差が0.5℃の場合にエラーのある断片を検出する確率を示す、図20の凡例を参照されたい。
3)起こり得るエラーのわずかな割合が融解温度を上昇させ(図20に示す領域40を参照)、したがって、この手法では検出できない。これは、AT結合よりもGC結合の結合強度が比較的高いためである。
【0116】
もちろん、図19の融解曲線に示すように、温度に伴って結合強度が徐々に低下するため、融解温度が低下した結合では、絶対的な意味での検出と拒否は単に生じない。代わりに、反応部位の「テスト」温度は、重複領域にエラーのない「良好」な断片で、望ましくないらせん性低下に対する融解温度があるマージン(この例では0.5℃)低下したときの、らせん性低下の比率を最大化するように選択できる。これは基本的に、「良好」な(正しい重複)検出に対する「不良」な(エラーのある重複)検出の平均割合の比率、又は正しい重複の集中度である。重複ごとに異なる最適温度を選択し、すべての起こり得るエラーに対する得られた集中度の累積分布を図21に示す。平均比率は約1.3倍である(つまり、「良好」な断片の1.3倍多いエラーのある断片がエラー検出テストによって拒否され得る)。温度制御の精度が上がると、エラーを検出する能力が向上する。図22は、進行中の分析がより小さな温度差で繰り返されるときに、平均集中度がどのように増加するかを示す(すなわち、0.5℃の仮定が変化している)。図20~22に示す分析は、検出が最も困難なエラータイプ(誤った取り込み)を示す。他のタイプのエラーの場合、平均の「不良」対「良好」の拒否比率は高くなる。これは、重複領域に複数のミスマッチしている塩基が生じ、したがって、エラーのある断片の結合が、単一の誤った取り込みのあるエラーのある断片よりも弱く、エラー検出動作によってより簡単に検出及び拒否できるからである。
【0117】
エラーのない重複の全体的な集中度は、さまざまなエラーメカニズムの相対的な確率、及びそれらが生成する塩基対のミスマッチの数によって決まる。ここで分析された最も困難な誤った取り込みの場合で集中度が1より大きい場合、エラーのない重複又はエラーのある重複の拒否が常に集中する。したがって、この分析から完全なエラー検出効率を定量化することは現実的ではないが、単一塩基ミスマッチ集中度を、異なる重複配列の間、したがって標的DNA配列の異なる分割(すなわち、配列がオリゴヌクレオチドに切断されるヌクレオチドの位置)の間の相対的な尺度として使用することができる。
【0118】
エラー検出効率に及ぼす配列分割の影響を比較するために、図23はオリゴヌクレオチド長20~80及び重複領域長20~40の制約がある場合、前のDNA配列のすべての可能な分割にわたる3つの重複全体の平均した単一塩基ミスマッチ集中度の累積分布を示す。図23からわかるように、配列の分割を適切に選択することにより、得られるエラー検出能力に大きな利益があり、領域60の分割ではなく、領域50の分割を使用することで、エラー検出能力を向上(且つ偽陽性検出率を低下)できる。小さい数値の最適な分割では、これを考慮しなかった従来の分割方法で得られるよりも高い集中度が得られる。この例は短いDNA配列についてである。配列の長さが増すにつれて、このように分割を最適化することの重要性が高まる。もちろん、DNA分割は、二次構造の最小化やGC含量の局所的な集中の回避など、他の制限の原因となる場合もある。したがって、このようにエラー検出能力を最大化することは、多変数最適化の1つのパラメータにすぎない場合がある。しかし一般的に、(a)「良好」な断片と「不良」な断片との間の平均融解温度差が少なくとも所定の閾値である、及び(b)分割は、「不良」対「良好」の拒否比率を可能な限り高くする分割である(前述のように他の制限を考慮した場合)ように、標的DNA配列を分けて最初の断片にするための分割点を選択すると、エラー検出性能を上げることができる。
【0119】
また、「不良」対「良好」の拒否比率のシミュレーションは、所与の重複領域のエラーのある断片と「良好」な断片との間の平均融解温度差に応じて、それぞれの反応部位の特注の温度マージンを可能にすることもでき、融解温度差が大きい重複領域の場合、少数の「良好」な断片を拒否することにより、「不良」対「良好」の拒否比率を改善するため、温度マージン(予想される融解温度と反応部位が加熱される温度と予想される融解温度との差)は、溶融温度差が小さい重複領域の場合よりも大きくなる可能性がある。
【0120】
いくつかの実例は、一本鎖核酸断片の複数のセットから標的二本鎖核酸分子の複数の事例を形成する方法であって、それぞれのセットは、標的二本鎖核酸分子のそれぞれの部分の複数の事例を含み、方法は、
反応部位のレーンを備える装置のそれぞれの反応部位に一本鎖核酸断片のそれぞれのセットを提供するステップ、並びに
複数のハイブリダイゼーション・ステップを実行するステップであって、それぞれのハイブリダイゼーション・ステップはレーンの所与の反応部位で実行され、以下:
前の反応部位で提供された一本鎖核酸断片、又は前の反応部位で行われた前のハイブリダイゼーション・ステップでハイブリダイズした二本鎖核酸断片を、前の反応部位の表面から選択的に脱離すること、
脱離した一本鎖又は二本鎖核酸断片を前記前の反応部位から前記所与の反応部位に輸送すること、及び
輸送された断片を、所与の反応部位で提供される更なる一本鎖断片、又は所与の反応部位で行われる前のハイブリダイゼーション・ステップでハイブリダイズした二本鎖断片とハイブリダイズして二本鎖断片を形成することを含む、ステップ
を含む、方法を提供する場合がある。
【0121】
そのような実例では、装置はまた、流動流体を反応部位のレーン上に向けるように構成された流体流要素を備えてもよく、脱離した一本鎖又は二本鎖核酸断片の前の反応部位から所与の反応部位への輸送は、流体流動要素によって提供される流動流体中の輸送によって実行される場合がある。一本鎖核酸断片のそれぞれのセット(標的二本鎖核酸分子の異なる部分に対応する)は、ハイブリダイゼーション・ステップを実行する前に、対応する反応部位の1つで伸長させてもよい。
【0122】
更なる実例の構成は以下の節に示されている。
(1)複数の核酸断片から標的二本鎖核酸の複数の事例を提供する方法であって、
複数の最初のハイブリダイゼーション・ステップであって、それぞれの最初のハイブリダイゼーション・ステップは、部分的に重複する核酸断片のそれぞれの対をハイブリダイズして複数のハイブリダイズした断片を形成することを含む、複数の最初のハイブリダイゼーション・ステップと、
1つ又は複数の更なるハイブリダイゼーション・ステップであって、それぞれの更なるハイブリダイゼーション・ステップは、以前のハイブリダイゼーション・ステップの対に対応し、以前のハイブリダイゼーション・ステップの対の直接の産物である部分的に重複するハイブリダイズした断片のそれぞれの対をハイブリダイズしてより長いハイブリダイズした断片を形成することを含み、以前のハイブリダイゼーション・ステップの対のそれぞれは、最初のハイブリダイゼーション・ステップの1つ又は更なるハイブリダイゼーション・ステップの1つを含む、1つ又は複数の更なるハイブリダイゼーション・ステップと
を含み、
前記1つ又は複数の更なるハイブリダイゼーション・ステップは、以前のハイブリダイゼーション・ステップの対応する対の両方がエラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップを含む、少なくとも1つの更なるハイブリダイゼーション・ステップを含み、
エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップは、
エラー検出動作を実行して、エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップで形成されたハイブリダイズした断片が、エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップでハイブリダイズした重複領域に少なくとも1つのミスマッチしている塩基対を含む少なくとも1つのエラーのあるハイブリダイズした断片を含むかどうかを検出すること、及び
前記少なくとも1つのエラーのある断片の少なくとも一部を廃棄して、後続の更なるハイブリダイゼーション・ステップから少なくとも1つのエラーのある断片を除外すること
を含む、方法。
(2)所定の方向で整列された少なくとも1つの反応部位のレーンと、流動流体を所定の方向で各反応部位に向ける流体制御要素とを備える装置を使用して実行される、節(1)に記載の方法。
(3)装置は、各反応部位で温度を独立して制御する温度制御回路を更に備える、節(2)に記載の方法。
(4)反応部位は、隣接する反応部位の間に物理的障壁のない表面の部分、及び
隣接する反応部位の間に選択的に除去可能な物理的障壁を持つ表面の部分
の1つを有する、節(2)及び(3)のいずれか一節に記載の方法。
(5)複数の最初のハイブリダイゼーション・ステップの少なくとも1つは、前記エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップである、節(1)から(4)までのいずれか一節に記載の方法。
(6)それぞれの最初のハイブリダイゼーション・ステップは、前記エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップである、節(1)から(5)までのいずれか一節に記載の方法。
(7)前記更なるハイブリダイゼーション・ステップの少なくとも1つは、前記エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップである、節(1)から(6)までのいずれか一節に記載の方法。
(8)それぞれの更なるハイブリダイゼーション・ステップは、前記エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップである、節(1)から(7)までのいずれか一節に記載の方法。
(9)前記エラー検出動作は、それぞれの検出されたエラーのあるハイブリダイズした断片を形成する部分的に重複する断片間の結合を弱めること、及び、流体を提供して、前記少なくとも1つのエラーのあるハイブリダイズした断片の前記少なくとも一部を洗い流すことを含む、節(1)から(8)までのいずれか一節に記載の方法。
(10)前記エラー検出動作は、ハイブリダイズした断片が形成された反応部位の温度を、エラーのないハイブリダイした断片のハイブリダイゼーション・ステップで形成された重複領域の予想される融解温度より低いマージンに対応する目標温度に調整することを含む、節(1)から(9)までのいずれか一節に記載の方法。
(11)標的二本鎖核酸の核酸断片への分割は、それぞれの重複領域で、エラーのないハイブリダイズした断片の重複領域の予想される融解温度と、その重複領域内に少なくとも1つの塩基エラーがあるエラーのあるハイブリダイズした断片の重複領域の予想される融解温度との差が、所定の閾値より大きくなるように選択される、節(10)に記載の方法。
(12)前記所定の閾値は少なくとも0.1℃である、節(11)に記載の方法。
(13)前記エラー検出動作は、前記ハイブリダイズした断片をミスマッチしている塩基対を検出する酵素に曝露することを含む、節(1)から(9)までのいずれか一節に記載の方法。
(14)ハイブリダイズした断片は、それぞれのハイブリダイゼーション・ステップが行われる反応部位間の流動流体中で輸送される、節(1)から(13)までのいずれか一節に記載の方法。
(15)標的二本鎖核酸は、一本鎖核酸の第2の鎖にハイブリダイズした一本鎖核酸の第1の鎖を含み、
それぞれのハイブリダイゼーション・ステップにおいて、そのハイブリダイゼーション・ステップで形成された、核酸のハイブリダイズした断片は、第1の鎖又は第2の鎖を介して反応部位の表面に結合している、節(1)から(14)までのいずれか一節に記載の方法。
(16)所与の反応部位で行われる前記少なくとも1つの更なるハイブリダイゼーション・ステップの1つは、
第1の鎖及び第2の鎖の一方を介して所与の反応部位の表面に結合した第1のハイブリダイズした断片、並びに
第1の鎖及び第2の鎖の他方を介して以前の反応部位の表面に結合した場合、以前のハイブリダイゼーション・ステップの以前の反応部位で形成された第2の二本鎖断片
をハイブリダイズすることを含む、節(15)に記載の方法。
(17)最初のハイブリダイゼーション・ステップ及び少なくとも1つの更なるハイブリダイゼーション・ステップは、一連のハイブリダイゼーション・ステップを形成し、対の第2のハイブリダイゼーション・ステップが、対の第1のハイブリダイゼーション・ステップで形成されたハイブリダイズした断片を更なる断片とハイブリダイズする、ハイブリダイゼーション・ステップの任意の対について、ハイブリダイゼーション・ステップの対で形成されたハイブリダイズした断片は、それぞれ第1の鎖及び第2鎖の反対のものを介して対応する反応部位の表面に結合している、節(15)及び(16)のいずれか一節に記載の方法。
(18)前記エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップの少なくとも1つにおいて、エラー検出動作後の残りのハイブリダイズした断片は、反応部位の表面から選択的に脱離される、節(1)から(17)までのいずれか一節に記載の方法。
(19)残りのハイブリダイズした断片の選択的脱離は温度制御される、節(18)に記載の方法。
(20)残りのハイブリダイズした断片の選択的脱離は、反応部位を、残りのハイブリダイズした断片を反応部位に結合するリンカー物質の所定の脱離温度に加熱することを含み、リンカー物質は、所定の脱離温度で表面から脱離するように配置される、節(18)及び(19)のいずれか一節に記載の方法。
(21)残りのハイブリダイズした断片の選択的脱離は、残りのハイブリダイズした断片を温度活性化脱離酵素に曝露すること、及び反応部位の温度を脱離酵素の活性化温度に調整することを含む、節(18)及び(19)のいずれか一節に記載の方法。
(22)一本鎖断片の対に対して実行される任意のハイブリダイゼーション・ステップ以外のそれぞれのハイブリダイゼーション・ステップは、ハイブリダイズした断片に対して実行されるライゲーション動作を含み、
エラー検出タイプのハイブリダイゼーション・ステップの場合、ライゲーション動作は、エラー検出動作で検出された少なくとも1つのエラーのあるハイブリダイズした断片を除いて、残りの二本鎖断片に対して実行される、節(1)から(21)までのいずれか一節に記載の方法。
(23)複数の核酸断片のそれぞれは、別の核酸断片の対応する重複領域と重複するための少なくとも1つの重複領域を含み、
標的二本鎖核酸の各塩基は、複数の核酸断片のうちの1つの重複領域の1つの範囲内にある、節(1)から(22)までのいずれか一節に記載の方法。
(24)前記複数の最初のハイブリダイゼーション・ステップを行う前に、複数の核酸断片を形成するステップを含む、節(1)から(23)までのいずれか一節に記載の方法。
(25)節(1)から(24)までのいずれか一節に記載の方法を実行するための装置を制御するための命令又は制御データを含むコンピュータ可読プログラム又はデータ構造。
(26)節(25)に記載のプログラム又はデータ構造を格納する記憶媒体。
【0123】
添付図面を参照して本明細書において本発明の例示的実施例について詳細に説明してきたが、本発明はこれらの厳格な実施例に限定されず、さまざまな変更及び修飾が、添付の請求項によって規定される本発明の範囲及び本質から逸脱することなく当業者によって達成され得ることが理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図13F
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
【配列表】
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