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特許7201682最適化されたアンテナを有する、デュアル通信インターフェースチップカード用電子モジュール
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】最適化されたアンテナを有する、デュアル通信インターフェースチップカード用電子モジュール
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20221227BHJP
   H01Q 7/00 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
G06K19/077 196
G06K19/077 244
G06K19/077 188
H01Q7/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020528418
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 FR2018000252
(87)【国際公開番号】W WO2019102079
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-01-22
(31)【優先権主張番号】1701231
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517307773
【氏名又は名称】スマート パッケージング ソリューションズ
【氏名又は名称原語表記】SMART PACKAGING SOLUTIONS
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】カルヴァ,ベルナール
(72)【発明者】
【氏名】ジュラン,ギョーム
(72)【発明者】
【氏名】ファブリツィオ,クヴァン
【審査官】小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0269476(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0278675(US,A1)
【文献】特開2015-007898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/077
H01Q 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップカード用電子モジュール(1)であって、基板(S)を有し、該基板が、第1の面に、チップカードリーダーの対応する接点との接触による動作を可能にするISO規格7816に準じて標準化された電気接点(C1、C2、C3、C5、C6、C7)の端子板を有し、第2の面に、接触式通信インターフェースおよび非接触式通信インターフェースを備え、かつ、封止領域(5)によって保護される超小型電子チップ(12)とアンテナ(2)とを有し、電気接点(C1~C7)が、接続穴(8、7、6)の中を通る導電線(13、17、19)によってチップ(12)に接続され、アンテナ(2)が、モジュールの周囲に位置する複数のコイルと、封止領域(5)の内側に配置されまたチップ(12)の前記非接触式通信インターフェースの対応する端子に接続されることを目的とした遠位接続の固定接点電極(3)および近位接続の固定接点電極とを有し、またアンテナ(2)のコイルが、遠位接続の固定接点電極(3)の周りを回り、またチップ(12)に向かって方向づけられる局部的な窪み(20)を有し、遠位接続の固定接点電極(3)が、封止領域(5)の縁(4)からわずかな距離dのところに位置するチップカード用電子モジュールであって、遠位接続の固定接点電極(3)から最も近い2つの接点の接続穴(8、10)の内側縁(8”、10”)が、アンテナのトラックの通過用の、遠位接続の固定接点電極(3)と前記接続穴(8、10)との間で利用可能なスペースを最大にするように、他の接点の接続穴の内側縁と比べてモジュールの外側の方へ間を離されることを特徴とするチップカード用電子モジュール。
【請求項2】
封止領域(5)の縁(4)と遠位接続の固定接点電極(3)の外側縁との間の距離dが、0マイクロメートルと500マイクロメートルとの間に含まれることを特徴とする、請求項1に記載の電子モジュール(1)。
【請求項3】
遠位接続の固定接点電極から最も近い2つの接点の接続穴(8、10)の内側縁(8”、10”)間の隔たり距離E1が、およそ6ミリメートルの値を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の電子モジュール(1)。
【請求項4】
遠位接続の固定接点電極から最も近い接続穴(8、10)の外側縁(8’、10’)間の隔たり距離E2が、およそ7ミリメートルの値を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一つに記載の電子モジュール(1)。
【請求項5】
アンテナ(2)の窪み(20)の近傍に位置する接点(C1、C5)の接続穴(8、10)が、チップ(12)と前記接点(C1またはC5)との間の接続線の通過を容易にするために細長い形であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一つに記載の電子モジュール(1)。
【請求項6】
アンテナ(2)の窪み(20)の近傍に位置する接続穴(8、10)の幅が、600マイクロメートル未満であることを特徴とする、請求項5に記載の電子モジュール(1)。
【請求項7】
アンテナ(2)の最も内側のコイル(2”)が、超小型電子チップ(12)の領域を取り囲み、また異なるアンテナの長さ、および異なるインダクタンスに対応する、内側コイル(2”)に沿って分散される複数の近位の固定接点電極(A、B、C、D、E、F)を有し、したがって、遠位の固定接点電極(3)と近位の固定接点電極(A、B、C、D、E、F)のうちの1つとの間に位置するアンテナ(2)が、超小型電子チップへのその接続の際にまたチップの容量Cに応じて、目標とする共振周波数を得るために選択されることができるインダクタンスLを有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一つに記載の電子モジュール(1)。
【請求項8】
モジュールのアンテナ(2)の内側コイル(2”)が、少なくとも6つの近位接続の固定接点電極を有することを特徴とする、請求項7に記載の電子モジュール(1)。
【請求項9】
インダクタンスLが、1.3マイクロヘンリーと1.45マイクロヘンリーとの間に含まれること、またチップの容量Cが、45ピコファラドと104ピコファラドとの間に含まれることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一つに記載の電子モジュール(1)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一つに記載の電子モジュール(1)を有することを特徴とする、接触・非接触式デュアル通信インターフェースチップカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触・非接触式デュアル通信インターフェース電子モジュール、およびそのようなモジュールを内蔵したチップカードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
接触・非接触動作式複合型チップカードが、現状技術において既に存在している。大部分は、一方ではチップカードリーダーの接点に対応するISO規格7816-2に準じて標準化された接点を備え、また他方では少なくとも1つのアンテナを備えて非接触式リーダーのアンテナと通信することができる無線周波数通信インターフェースを備えた、超小型電子モジュールを有している。
【0003】
チップカードが、カード本体の中に作製されるアンテナを有するとき、アンテナは、超小型電子モジュールの非接触型インターフェースに直接接続されるときがあり、するとアンテナとモジュールとの間のこの機械的接続はそのとき、信頼性または製造歩留まりの低下をもたらす。実際に、カードにその利用の際に強いられる機械的外力および熱的外力は、モジュールとアンテナとの間の接続の切断、またはこの接続の電気抵抗の大きな増大をもたらし得、カードのその利用の途中の性能の低下をもたらす。
【0004】
それゆえに、モジュール上に直接位置する小さいアンテナと、カード本体の中に位置するより大きいサイズの第二のアンテナ、該第二のアンテナは、「ブースター」アンテナとも呼ばれ、モジュールのアンテナとつながれるがそれに物理的には接続されない、とを有するデュアル通信インターフェースチップカード用モジュールがますます頻繁に利用された。
【0005】
この場合、チップカードを製造するために、チップカード本体の中にデュアル通信インターフェースモジュールを単に移すだけでよく、これは、接触式チップカードの製造用に利用される従来の挿入装置の大部分を用いて、低費用および高い信頼性をもって実現することが容易である。
【0006】
しかし、新たな問題が発生した。このように、デュアル通信インターフェースモジュールがそれらの上面に金属接点、ならびにそれらの下面に位置する、モジュールのアンテナのトラックおよび超小型電子チップを有するので、接点およびアンテナとの、チップの端子の電気的接続は、モジュールの面の間の電気的接続を実現する金属化されたビアの作製を必要としたのであり、結果として比較的高い製造費用をもたらした。
【0007】
この問題を改善するために、例えば仏国特許出願公開第1201866号明細書におけるように、モジュールのアンテナの両端をチップの封止領域の内側に移動させることが準備されたのであり、これは上述の文献の図7を採用する、本出願の図1において示される通りである。そのようにして、チップの端子は、ビアは必要なく、チップの封止滴の内側で、ISO接点とモジュールのアンテナの端子とに同時に接続されることができていた。けれども、図1において見ることのできるように、線の交差またしたがってショートを回避するために、モジュールのアンテナのコイルの広がりを、該広がりを封止領域の中に部分的に連れてくるために、アンテナの遠位端(すなわちモジュールのアンテナの外側コイルの端)の周りを回るコイルの広がりの窪みの形で迂回させることが必要であった。
【0008】
この配置は、アンテナのコイルの窪み用の場所を十分に提供する、11.8×13mmのサイズをもつ、いわゆる「DUAL8」タイプの、大きいサイズのモジュール用に許容されていた。
【0009】
その間に市場の要求は、さらに変化し、とりわけ銀行用途用のチップカードの分野において、8.3×11mmに小さくしたサイズをもついわゆる「DUAL6」タイプの、より小さいサイズのデュアル通信インターフェースモジュールの使用を要求するものとなった。ところで、モジュールのサイズを小さくすることは、とりわけそれらのアンテナのコイルのサイズを小さくすることを意味し、またしたがって同数のコイルに対して、アンテナのインピーダンスLを下げることを意味し、このことは、LとCの積の減少(Cは超小型電子チップの容量を表す)、および1/(2Π√L.C)に等しい、モジュールの共振周波数fの増加をもたらす。このことは、そのようなモジュールを利用するチップカードを、既存の非接触式リーダーと、それらの公称動作周波数で通信するのに不向きにする。
【0010】
標準の共振周波数を保ちつつモジュールのサイズを小さくするには、チップの製造業者によって提供されるチップの容量Cに干渉することが考えられない以上、モジュールのアンテナのインピーダンスLの値を増すことがしたがって必要である。
【0011】
その主要な設計パラメータ(アンテナトラックの幅、トラック間の距離)を保ちつつ、モジュールのアンテナのインダクタンスLの値を顕著に増すために、コイルの数を増やすことによって、アンテナの有用な長さを伸ばすことが必要である。
【0012】
しかしながら、モジュールのサイズの減少のためにより制限されたスペースにおいて、モジュールのアンテナのコイル数を増加させることは、逆説的な課題であり、したがってビアがないことに結びついた既に得られた利点を放棄することなく、モジュールの設計におけるいくつかの変更を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】仏国特許出願公開第1201866号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の全体的な目的はしたがって、モジュールのサイズの減少に結びついた上述の不都合のない、接触・非接触式デュアル通信インターフェース電子モジュールを提案することである。
【0015】
本発明の特定目的は、モジュールのサイズの減少を補うために、現状技術におけるよりも高いインダクタンス値を有する、接触・非接触式デュアル通信インターフェースチップカード用電子モジュール、とりわけ銀行用途において利用される8.3×11mmの寸法の6接点モジュールを提案することである。
【0016】
本発明の別の特定目的は、アンテナの遠位端の周りを回るようにアンテナのコイルを導く窪みを備えたモジュールのアンテナに結びついた利点を保ちつつ、市場で利用可能な超小型電子チップのさまざまな容量に適合するために、モジュールのアンテナのインダクタンス値をいくつも有することを可能にする、接触・非接触式デュアル通信インターフェース電子モジュールを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、その原理において、モジュールの2つの標準化された接点C1、C5の2つの接続穴と、モジュールのアンテナの遠位端子との間に位置する3角形の中を通らなければならない、アンテナのコイルの窪み用に利用可能な場所を広げることを準備する。
【0018】
本発明はしたがって、一方ではアンテナの遠位端の接続端子をモジュールの封止領域の境界に移すことによって、また他方では、アンテナの遠位端から最も近いモジュールの接点、例えばアンテナの窪みの位置決めに応じて、C1およびC5、またはC3およびC7、またはC5およびC7の標準化された接点、の接続穴の内側縁の間をできる限り離すことによって、この3角形のサイズを増大させることを準備する。
【0019】
そのうえ、窪みの方向へこれらの接続穴の高さを減らし、またそれらに細長い形を与えることができるであろう。
【0020】
これらの措置のおかげで、トラックのサイズおよびトラック間の距離をほぼ保ちつつ、アンテナにコイルをいくつも付け加えること、またしたがってモジュールのアンテナのインダクタンスLの値を増すことが可能であろう。
【0021】
本発明はまた、モジュールのアンテナの内側トラックが、いくつもの近位接続の固定接点電極を備えて、超小型電子チップの非接触型インターフェース接続のできるだけ多くの選択肢を構成することを準備する。この措置のおかげで、モジュールのアンテナのインピーダンスLを、モジュールの製造用に利用されることになるチップの実際の容量Cに、より細かく適合させることが可能であろう。
【0022】
本発明はしたがって、チップカード用電子モジュールを対象とし、該チップカード用電子モジュールは、基板を有し、該基板は、第1の面に、チップカードリーダーの対応する接点との接触による動作を可能にするISO規格7816に準じて標準化された電気接点(C1、C2、C3、C5、C6、C7)の端子板を有し、第2の面に、接触式通信インターフェースおよび非接触式通信インターフェースを備え、かつ、封止領域によって保護される超小型電子チップとアンテナとを有し、電気接点(C1~C7)は、接続穴の中を通る導電線によってチップに接続され、アンテナは、モジュールの周囲に位置する複数のコイルと、封止領域の内側に配置され、またチップの前記非接触式通信インターフェースの対応する端子に接続されることを目的とした、遠位接続の固定接点電極および近位接続の固定接点電極とを有し、またアンテナのコイルは、遠位接続の固定接点電極の周りを回り、またチップに向かって方向づけられる局部的な窪みを有し、該チップカード用電子モジュールは、遠位接続の固定接点電極が、封止領域の縁からわずかな距離dのところに位置することを特徴とし、また、遠位接続の固定接点電極から最も近い2つの接点の接続穴の内側縁が、アンテナのトラックの通過用の、遠位接続の固定接点電極と前記接続穴との間で利用可能なスペースを最大にするように、他の接点の接続穴の内側縁と比べてモジュールの外側の方へ間を離されることを特徴とする。
【0023】
そのようにして、遠位接続の固定接点電極と、遠位接続の固定接点電極から最も近い接続穴とによって形成される3角形は、最大サイズであり、よってより多くの数のアンテナコイルの通過を可能にし、またしたがってアンテナのインダクタンスLの増加を導く。
【0024】
モジュールの有利な一実施変形例によると、封止領域の縁と遠位接続の固定接点電極の外側縁との間の距離dは、0マイクロメートルと500マイクロメートルとの間に含まれる。
【0025】
とりわけ小さいサイズ(8.3×11mm)のモジュールのための有利な一実施形態によると、遠位接続の固定接点電極から最も近い接続穴の内側縁間の隔たり距離E1は、およそ6ミリメートルの値を有する。
【0026】
とりわけ小さいサイズ(8.3×11mm)のモジュールのための有利な一実施形態によると、遠位接続の固定接点電極から最も近い接続穴の外側縁間の隔たり距離E2は、およそ7ミリメートルの値を有する。
【0027】
好ましい一実施形態によると、アンテナの窪みの近傍に位置する接点の接続穴は、チップと前記接点との間の接続線の通過を容易にするために細長い形である。これらの接続穴の幅はそのとき、600マイクロメートル未満である。
【0028】
有利な一実施形態によると、アンテナの最も内側のコイルは、超小型電子チップの領域を取り囲み、また異なるアンテナの長さ、および異なるインダクタンスに対応する、内側コイルに沿って分散される複数の近位の固定接点電極(A、B、C、D、E、F)を有し、したがって、遠位の固定接点電極と近位の固定接点電極(A、B、C、D、E、F)のうちの1つとの間に位置するアンテナは、超小型電子チップへのその接続の際にまたチップの容量Cに応じて、目標とする共振周波数を得るために選択されることができるインダクタンスLを有する。
【0029】
一実施形態によると、モジュールのアンテナの内側コイルは、少なくとも6つの近位接続の固定接点電極を有する。
【0030】
本発明のおかげで、アンテナのインダクタンスLは、接続される近位の固定接点電極に応じて、1.3マイクロヘンリーと1.45マイクロヘンリーとの間に含まれ、また求められる共振周波数を得つつ、容量Cが45ピコファラドと104ピコファラドとの間に含まれるチップを接続することを可能にする。
【0031】
本発明はまた、接触・非接触式デュアル通信インターフェースチップカードもまた対象とし、該カードは、カードが上記の特徴を有する電子モジュールを有することを特徴とする。
【0032】
本発明の他の特徴および利点は、詳細な説明および以下のような添付の図面を読むことによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】現状技術によるデュアル通信インターフェース電子モジュールの平面図である。
図2】本発明による電子モジュールを作製するためのアンテナの平面図である。
図3A図2のアンテナを利用する、本発明による電子モジュールの裏面(アンテナ側)の平面図である。
図3B図2のアンテナを利用する、本発明による電子モジュールのD-D切断面に沿った部分断面図である。
図3C図2のアンテナを利用する、本発明による電子モジュールのE-E切断面に沿った部分断面図である。
図3D図2のアンテナを利用する、本発明による電子モジュールのF-F切断面に沿った部分断面図である。
図4図3と類似したアンテナの平面図であり、実現の詳細を示している。
図5】本発明によるモジュールの前面(接点面)の平面図である。
図6A】近位部分Aによる配線形状における、本発明による電子モジュールの裏面の平面図である。
図6B】近位部分Bによる配線形状における、本発明による電子モジュールの裏面の平面図である。
図6C】近位部分Cによる配線形状における、本発明による電子モジュールの裏面の平面図である。
図6D】近位部分Dによる配線形状における、本発明による電子モジュールの裏面の平面図である。
図6E】近位部分Eによる配線形状における、本発明による電子モジュールの裏面の平面図である。
図6F】近位部分Fによる配線形状における、本発明による電子モジュールの裏面の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、現状技術にかなったチップカード用電子モジュールを記述している仏国特許出願公開第1201866号明細書の図7に相当する。モジュールM2は、ACT1と示される、外側コイルの端である、遠位端と、ACT2と示される、内側コイルの端である、近位端との間に広がる、8つのコイルの全体MA2を有する。コイルは、C1およびC4と示される金属接点の接続穴と遠位端ACT1とによって形成される3角形の中を通る、MCと示される超小型電子チップに向かった窪みを有する。アンテナの遠位端ACT1および近位端ACT2は明らかに、チップおよびその接続の固定接点電極を保護する樹脂の滴に相当する、RLと示される封止領域の内側にある。接点へのアクセス用の穴BHは、チップの両側で縦の2列に並べられ、したがってACT1と、ACT1の最も近くにある上方の2つの穴BHとによって形成される3角形は、小さいサイズであり、このことは、コイルの広がり用に利用可能な幅を減少させ、また大きいサイズのモジュールによりよく適している。その結果、アンテナの長さへの限度またしたがってそのインダクタンスへの限度が生じる。また、図1のアンテナのインダクタンスは、いつも固定しており、よって異なるチップ容量に適合することを可能にしない。
【0035】
図2は、本発明にかなったチップカード用モジュール1の裏面(アンテナ側)を示している。明瞭にするために、ここでは、チップも端子板の金属接点も表示せず、アンテナ2に対応する電気的結合だけを表示した。本発明は小さいサイズのモジュール(DUAL6)に限定されるものではないが、ここでは小さいサイズ、すなわち1つの使用規格に相当する8.3×11mmのサイズのモジュールを示した。その小さいサイズにもかかわらず、アンテナ2は、図1における8つのコイルの代わりに、13のコイルを有する。このことは、モジュールのサイズの減少に因る、アンテナのインダクタンスLの減少を少なくとも部分的に補うことを可能にする。
【0036】
この結果を得るために、アンテナの遠位端3は、封止領域5の境界に移された(図3A)。
【0037】
より具体的には、アンテナ2の遠位端3の外側境界は、0マイクロメートルと500マイクロメートルとの間に含まれる、封止滴5の境界4からの距離dに含まれる。
【0038】
そのうえ、示された例において、チップと接点C1、C2、C3との接続穴6、7、8と、チップと点C5、C7との接続穴9、10は、もはや縦の2軸に沿って並べられておらず、しかし接点C1とC5とに対応する接続穴8、10は間を離されて、標準化された接点C2、C3、C7の接続穴6、7、9との関係において、モジュールの外側縁に向かって脇に逸らされた状態である。
【0039】
より具体的には、図4で示されているように、アンテナの遠位端3から最も近い接続穴8、10の内側縁8” および10”が、外側の方へ少しずらされたのであり、その結果、図5で示されているように、内側縁8” 、10”の間の距離E1の値は、既知のモジュールにおける4mmから、本発明によるモジュールにおけるおよそ6mmに変化している。したがって、アンテナ2のコイルの広がりを大きくすることが可能になっている。
【0040】
そのうえ、接続穴8、10の中の線13、19の接続点(図3A)もまた、これらの線をアンテナ2の金属とショートさせることなくこれらの線の接続を容易にするために、それぞれの側に400~500マイクロメートルの値だけ間を離されている。このことは、接続穴8、10の外側縁8’および10’が、それらもまた、既知のモジュール用の5mmの代わりに、およそ7mmの距離E2(図5)に達するように間を離されることを強いる。接点C1、C5の接続穴の外側の方への移動は、チップ12から来て前記穴の方へ行く接続線13、19の着地をより困難にする。この困難を補うために、本発明は、接続線がアンテナの内側コイル2’の電気的結合に触ることなく接続できるように、接点C1、C5の接続穴8、10に、アンテナ2の窪み20の軸に沿って平たくなる細長い形を与えることを準備する。接続穴8、10の幅はそのとき好ましくは、600マイクロメートル未満である。
【0041】
示された例において、アンテナ2の遠位端3が標準化された接点C1、C5のすぐ近くにあることに注目すべきであるが、しかし本発明の原理は、例えば接点C5とC7との間、または接点C3とC7との間に位置決めされる遠位端を用いれば、他のモデルケースに容易に移し換えられることができるであろう。
【0042】
目標とする共振周波数を得るため、チップの容量CにモジュールのアンテナのインピーダンスLの値を最もよく適合させるために、本発明の好ましい一実施形態は、図2で示されるように、アンテナの内側コイル2”が複数の近位接続部分を有することを準備する。この図において、アンテナのインピーダンスの増加する値に対応する、内側コイル2”に沿って分散された6つの接続部分A、B、C、D、EおよびFが準備された。このように、与えられたモジュールにおいて実際に利用されることになるチップの容量に応じた、最適な接続部分を選択することができるであろう。
【0043】
図3Aは、下側から、すなわちアンテナ2、チップ12、およびチップとアンテナとの間、またはチップと接続穴(またはアングロサクソン語の専門用語で「ボンディング(bonding)」穴)を通した接点との間の接続用線11、13、15、17、19を見えるようにしている側から見た、本発明による電子モジュールを示している。ISO規格7816-2および7816-3によって規定されている接点C1~C7に相当する金属領域部分は、破線で示されている。チップの封止滴5は、斜線模様で示されている。見られるように、アンテナ2の遠位端3は、封止領域5内の、その境界4に位置決めされている。
【0044】
図3Bは、D-D切断面に沿ったモジュール1の部分断面図に相当し、チップ12と、封止滴5の周囲4に位置決めされた、アンテナの遠位端3との間の接続線11を示している。
【0045】
図3Cは、E-E切断面に沿ったモジュール1の部分断面図に相当し、チップ12とモジュールの接点C1との間の接続線13を示している。
【0046】
図3Dは、F-F切断面に沿ったモジュール1の部分断面図に相当し、チップ12とアンテナの近位接続部分のうちの1つBとの間の接続線15を示している。アンテナ2のさまざまな接続選択肢が、図6に図式化された。すべての場合において、チップ12の非接触式通信インターフェース端子の1つは、アンテナの遠位端3に接続されており、またその別の端子は、アンテナ2のインダクタンスLの増加する値に対応する、アンテナ上で利用可能な近位部分A(図6A)、近位部分B(図6B)、近位部分C(図6C)、近位部分D(図6D)、近位部分E(図6E)または近位部分F(図6F)のうちの1つに接続される。
【0047】
この配置が、一般に利用可能なチップカード用チップの大部分に相当する、およそ45pFとおよそ104pFとの間に含まれる値の間で変動する容量Cをもつチップをもってしても、1つの同じアンテナを利用することを可能にすることを実際に確認することができた。
【0048】
[本発明の利点]
本発明は結局、定められた目的を達成する。本発明は、小さくしたサイズのモジュール上に、より大きなサイズのアンテナを組み込むことを可能にする、デュアル通信インターフェースチップカード用電子モジュールの設計を提案する。
【0049】
本発明はそのうえ、アンテナのさまざまな接続選択肢のおかげで、典型的には45pFと104pFとの間で変動する、市場の超小型電子チップのさまざまな容量値に応じて、モジュールの共振周波数を最適化することを可能にする。
【0050】
これらの利点は、チップの封止領域の内側へのモジュールのアンテナの両端の組み込みのような、先行の進歩を再び問題にすることなく得られる。
【符号の説明】
【0051】
1 モジュール
2 アンテナ
3 遠位端
4 境界
5 封止領域
6 接続穴
7 接続穴
8 接続穴
10 接続穴
12 チップ
19 接続用線
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F