(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】3つのブリッジ分岐を有する少なくとも1つのコンバーターモジュールを備えるコンバーター、動作方法、及びそのようなコンバーターの使用
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20221227BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02M7/48 R
H02M3/155 H
H02M7/48 T
(21)【出願番号】P 2020534466
(86)(22)【出願日】2018-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2018084596
(87)【国際公開番号】W WO2019121251
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-10-11
(31)【優先権主張番号】102017131042.8
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515078095
【氏名又は名称】エスエムエイ ソーラー テクノロジー アクティエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SMA Solar Technology AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ファルク,アンドレアス
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-079506(JP,A)
【文献】特許第6142064(JP,B1)
【文献】特開2016-019367(JP,A)
【文献】特開2017-108559(JP,A)
【文献】特開2015-188307(JP,A)
【文献】特開2016-220482(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0328102(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0242867(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42- 7/98
H02M 3/00- 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンバーター(6)及びフィルタ(16)を有する装置であって、前記コンバーター(6)は、DC源(2)に接続することができる入力(61、62)と、第1、第2
、第3のブリッジアーム(11、12、13)
及び前記ブリッジアーム(11、12、13)の共通のDCリンク回路(14)を有する少なくとも1つのトランスデューサモジュール(1、1’~1’’’)とを備え
、前記ブリッジアーム(11、12、13)の各々はそれぞれ相出力(113、123、133)
を有し、
前記第1及び前記第2のブリッジアーム(11、12)は、前記相出力(113、123)において交流の形式で第1の電力(51)を供給するようになっており、
エネルギーストア(42)は前記第3のブリッジアーム(13)の前記相出力(133)に接続することができ、
前記フィルタ(16)は、前記エネルギーストア(42)と前記第3のブリッジアーム(133)の前記相出力(133)との間に接続され、前記フィルタ(16)の部品は、前記第3のブリッジアーム(13)の半導体スイッチ(311、312)と共に、昇圧及び/又は降圧機能を備えたDC/DCコンバータとして機能し、
前記第3のブリッジアーム(13)は、前記DC源(2)と前記エネルギーストア(42)との間及び前記エネルギーストア(42)と前記DCリンク回路(14)との間で第2の電力(52)を交換するようになっており、
前記コンバーター(6)は、前記第1の電力(51)と前記第2の電力(52)との合計が一定の設定値(53)に一致するような態様で前記ブリッジアーム(11、12、13)を制御するようになっている制御ユニット(17)を備えることを特徴とする、コンバーター(6)。
【請求項2】
請求項1に記載の
装置において、前記一定の設定値(53)は、前記DC源(2)の最大電力点(MPP)と一致することを特徴とする、
装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の
装置において、前記第1、前記第2、及び前記第3のブリッジアーム(11、12、13)は同じ設計のものであることを特徴とする、
装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の
装置において、前記第1、前記第2、及び前記第3のブリッジアーム(11、12、13)は双方向の動作方式用に設計されていることを特徴とする、
装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の
装置において、3つのブリッジアーム(11、12、13)を備える正確に1つのトランスデューサモジュール(1)を有することを特徴とする、
装置。
【請求項6】
請求項1~4の何れか一項に記載の
装置において、
前記装置の前記コンバーター(6)が少なくとも3つのトランスデューサモジュール(1、1’~1’’’)を備え、三相AC電圧
が出力側に供給され、前記三相AC電圧の各相は、異なるトランスデューサモジュール(1、1’~1’’’)の2つのブリッジアーム(11、12)によって供給され、前記第3のブリッジアーム(13)がエネルギーストア(42)に結合されることを特徴とする、コンバーター(6)。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載の
装置において、前記DCリンク回路(14)がフィルムコンデンサを備えていることを特徴とする、
装置。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の
装置において、前記ブリッジアーム(11、12、13)は、中性点クランプ式(NPC)、バイポーラスイッチ中性点クランプ式(BSNPC)、アクティブ中性点クランプ式(ANPC)、又はフライングキャパシタ(FLC)アームからなることを特徴とする、
装置。
【請求項9】
コンバーター(6)及びフィルタ(16)を有する装置を動作させるための方法であって、
前記コンバーター(6)は、DC源(2)に接続可能な入力(3、4)と、第1、第2
、第3のブリッジアーム(11、12、13)
及び前記ブリッジアーム(11、12、13)の共通のDCリンク回路(14)を有する少なくとも1つのトランスデューサモジュール(1、1’~1’’’)とを備え
、前記ブリッジアーム(11、12、13)の各々はそれぞれ相出力(113、123、133)
を有し、エネルギーストア(42)が前記第3のブリッジアーム(13)の下流に接続され、前記コンバーター(6)は前記ブリッジアーム(11、12、13)を制御するための制御ユニット(17)も備え、
前記第1及び前記第2のブリッジアーム(11、12)は、第1の電力(51)が前記相出力(113、123)において交流の形式で供給されるような態様で制御され、
前記フィルタ(16)は、前記エネルギーストア(42)と前記第3のブリッジアーム(13)の前記相出力(133)との間に接続され、前記フィルタ(16)の部品は、前記第3のブリッジアーム(13)の半導体スイッチ(311、312)と共に、昇圧及び/又は降圧機能を備えたDC/DCコンバータとして機能し、
前記第3のブリッジアーム(13)は、第2の電力(52)が前記DC源(2)と前記エネルギーストア(42)との間及び前記エネルギーストア(42)と前記DCリンク回路(14)との間で交換されるような態様で制御される、方法において、
前記第1の電力(51)と前記第2の電力(52)との合計が、一定の設定値(53)と一致することを特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、前記一定の設定値(53)は、前記DC源(2)の最大電力点(MPP)と一致することを特徴とする、方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の方法において、前記エネルギーストア
(42)に流入する又は前記エネルギーストア
(42)から流出する前記第2の電力(52)とAC電圧電力として出力される前記第1の電力(51)とは、前記DC源(2)からの電力流出を基準にして逆相になっていることを特徴とする、方法。
【請求項12】
請求項9~11の何れか一項に記載の方法において、前記第1の電力(51)は、鉄道輸送用の単相エネルギー供給グリッドに供給されることを特徴とする、方法。
【請求項13】
鉄道輸送用の単相エネルギー供給グリッドにAC電力を供給するための請求項1~5の何れか一項に記載のコンバーター(6)
及びフィルタ(16)を有する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1、第2、及び第3のブリッジアームを有する少なくとも1つのトランスデューサモジュールを備えたコンバーターに関し、各ブリッジアームはそれぞれ相出力を有し、全てのブリッジアームに対して共通のDCリンク回路が設けられ、またこのコンバーターは、ブリッジアームを制御するための制御ユニットを備える。本発明は、コンバーターを動作させるための方法及びそのようなコンバーターの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
そのようなコンバーターは、例えば、光起電力(PV)設備からのDC電圧を三相ACグリッドに給電するためのグリッド対応交流に変換するために、インバーターとして使用されることが多い。エネルギー供給グリッドは、通常、全ての電圧レベルに対して三相設計を有し、その場合、グリッドプロバイダーからの送り込み指示により、給電中に三相に対して限られた電力差のみが許容される。この理由のために、-特別な用途を目的としたコンバーターとは別に-、コンバーターには、3つのブリッジアームが装備されることが多い、というのも、これは、殆どの用途目的で必要とされるからである。
【0003】
独国特許第DE102014104216B3号明細書では、エネルギー供給グリッドが故障した場合に、単相緊急動作で動作することができる三相インバーターを開示している。この緊急動作の間、3つのブリッジアームのうちの2つは、例えば、居住用建物の緊急供給用の単相交流を、これらの2つのブリッジアーム間の少なくとも1つのグリッド相でもたらすことができるような態様で、動作する。第3のブリッジアームは未使用のままである。
【0004】
欧州特許出願公開第EP2950439A1号明細書では、DCバスを使用してDC側に接続された双方向電力コンバーターサブユニットからなる電力ルーターについて開示しており、電力コンバーターサブユニットは異なる負荷を供給するか、又はバッテリー若しくはグリッドに電力を供給する。この場合、各サブユニットは、それぞれに接続されたソース又は負荷に対応した電力用に設計されていなければならない。
【0005】
直流を三相交流に変換する場合、DC源からエネルギーが非常に均一な態様で引き出され、結果として、DCリンク回路-これは、例えば、フィルムコンデンサの形態で設けられることがある-は、ごく軽く負荷をかけられる。「リップル」としばしば呼ばれる、半導体スイッチの切り替え動作から生じる、絶え間なく引き出されるDC電力の変動のみが、ここで和らげられる必要がある。これは、単相交流への変換中には当てはまらない。この場合には、sin2形式で電力が引き出され、また、DC源から安定した電力を引き出すことが望まれる場合には、これに応じて、逆/位相のずれた電力を補償する必要がある。従って、三相交流用に寸法決めされたインバーターのDCリンク回路は、通常、単相用途に対しては寸法が小さすぎる。
【0006】
効率面での理由から、エネルギーが、接続されたPV設備から、生成される交流の周期全体に渡って、出来る限り均一に引き出されるような態様で、コンバーターを構成し動作させることが望ましい。しかしながら、同時に、出来る限り同一の構造を有するべきである費用対効果の高いコンバーターを使用することも望ましい。具体的には、従来の三相交流給電量を超えて統合グリッドに入る用途のために好ましくは製造することができる「標準的な三相インバーター」をアップグレードすることが望ましいことがある。こういった意味合いで、貯蔵システムの接続について特に言及するべきである、というのも、再生エネルギー源のエネルギー生産が大きく変動するのに起因して、再生エネルギー源と組み合わせた電気エネルギーの貯蔵が、一層重要になってきているからである。
【0007】
従って、本発明の目的は、DC源に均一に負荷をかけ且つ貯蔵システムにAC電圧及びDC電圧を供給する、3つのブリッジアームを有するトランスデューサモジュールを備えるコンバーターを提供することである。更なる目的は、そのようなコンバーターの動作方法を規定することである。
【0008】
この目的は、それぞれの独立請求項の特徴を有するコンバーター及びコンバーターを動作させるための方法によって達成される。従属請求項は、有利な構成及び発展形態に関係している。
【0009】
本発明によるコンバーターでは、第1と第2のブリッジアームの相出力間にAC電圧電力が供給され、エネルギーストアが、このエネルギーストアを充電及び/又は放電するために、第3のブリッジアームに接続されることがある。DC源、例えばPV発電機は、コンバーターの入力に接続されることがある。コンバーターは、第1、第2、及び第3のブリッジアームを有する少なくとも1つのトランスデューサモジュールを備え、各ブリッジアームはそれぞれに相出力を有する。トランスデューサモジュールは、それらのブリッジアームに共通のDCリンク回路も備えている。第1及び第2のブリッジアームは、DC源から第1の電力を引き出し、それを相出力において交流として供給するようになっている。エネルギーストアは第3のブリッジアームの相出力に接続されることがあり、第3のブリッジアームは、DC源とエネルギーストアとの間及びエネルギーストアと共通DCリンク回路との間で第2の電力を交換するようになっている。エネルギーストアは、DCリンク回路を介してDC源から電力を引き出すことができ、前述の電力を貯蔵することができ、電力は、エネルギーストアからDCリンク回路に戻るように逆に流れることができ、第1及び第2のブリッジアームを介して、例えば、そこに接続されているグリッドに向かって流れることができる。
【0010】
コンバーターは制御ユニットも備え、この制御ユニットは、第1の電力と第2の電力の合計が一定の設定値と一致するような態様でブリッジアーム又はそれらの半導体スイッチを制御するようになっており、その結果、共通DCリンク回路に流れ込む又は共通DCリンク回路から流れ出る電力の流れは最小限に抑えられる。第1の電力と第2の電力の合計のバランス取りは、エネルギーの流れの瞬間的な振幅と方向に関係し、この結果として実質的に負荷がないままであるように意図された共通DCリンク回路で行われる。本発明によれば、制御ユニットは、第3のブリッジアームを流れる第2の電力と、第1及び第2のブリッジアームを流れる第1の電力との幾何学的な合計が、いつでも、共通DCリンク回路において一定の設定値電力を生じるような態様で、ブリッジアームを制御するようになっており、この一定の設定値電力は、DC源から引き出され、相出力において交流として出力される。総じて、瞬時値の合計の軽微な変動は、少なくともグリッド周期の持続時間に渡って補償されることが意図されている。
【0011】
これは、エネルギーストアに流入する又はエネルギーストアから流出する電力の瞬時値は、グリッド周波数に関係した時間スケールでAC電圧電力を補償することを意味する。
【0012】
本発明による方法は、DC源を入力部に接続することができるコンバーターの制御に関する。コンバーターは、第1、第2、及び第3のブリッジアームを有する少なくとも1つのトランスデューサモジュールを備え、各ブリッジアームはそれぞれ相出力と、ブリッジアームに共通のDCリンク回路とを有し、またこのコンバーターは、ブリッジアーム又はそれらの半導体スイッチを制御するための制御ユニットも備える。エネルギーストアは、第3のブリッジアームに接続することができる。本発明によれば、第1及び第2のブリッジアームは、第1の電力が、DC源から引き出され、相出力において交流として供給されるような態様で制御される。言い換えると、AC電力をグリッドに供給することができ、又は、AC負荷に電力を供給することができる。第3のブリッジアームは、第2の電力をDC源とエネルギーストアとの間及びエネルギーストアと共通DCリンク回路との間で交換することができるような態様で、制御される。
【0013】
ブリッジアームの制御は、第1の電力と第2の電力の合計が一定の設定値と一致し、その結果、共通DCリンク回路に流れ込む又は共通DCリンク回路から流れ出る電力の流れが最小限に抑えられることを特徴とする。言い換えると、第3のブリッジアームは、エネルギーストアに流入する又はエネルギーストアから流出する電力の瞬時値が、グリッド周波数に関係した時間スケールで、生成されたAC電圧電力を補償するような態様で、制御される。この目的のために、エネルギーストアに流入する又はエネルギーストアから流出する電力とAC電圧電力は、好ましくは逆相になる。
【0014】
このようにして、AC電圧電力は、DC源が一定の負荷を有するような態様でエネルギーストアに流入又はエネルギーストアから流出する変動電力によって、各グリッド周波数周期に渡って、補償される。このようにして、エネルギーストアは、従来技術によるデバイスでは通常DCリンク回路内に配置されるコンデンサの機能を少なくとも部分的に引き受けることができる。本発明による方法の結果として、これらのコンデンサは、グリッド周波数の2倍で発生するAC電力中の電力変動を遮断する必要はないが、非常に高い周波数で発生し、半導体スイッチの切り替えによって引き起こされる、電流リップルのみを遮断する必要がある。従って、DCリンク回路中の静電容量は、小さく保たれることがあり、特に、例えば、電解コンデンサよりも耐用年数が長く損失が低いフィルムコンデンサによって必要とされるスペースがより小さいことに関して、且つ経済的にもたらすことができる程度に小さく保たれることがある。
【0015】
1つの有利な構成では、一定の設定値は、DC源、例えばPV発電機の最大電力点(MPP)と一致する。これは、DC源の最大エネルギー収量にとって重要であり、DC源及びコンバーターを備える全体システムの効率の最適化をもたらす。
【0016】
コンバーターの更なる有利な構成では、第1、第2、及び第3のブリッジアームは同じ設計のものである。これは「標準的な三相インバーター」を使用するという利点を提供し、標準的な三相インバーターは、例えばバッテリーなどのエネルギーストアと組み合わせた用途向けに、好都合に且つ大量に製造することができ、これは、今までは可能ではなかったことである。更に、ブリッジアームは、必要に応じて、電流がエネルギーストアからDCリンク回路に戻るように流れるようにするために、双方向の動作方式向けに設計されていることが好ましく、これにより、エネルギーストアを任意の所望のブリッジアームに接続できるという更なる利点がもたらされる。従って、例えば、グリッドサポート用の無効電流を他のブリッジアーム上で供給することも可能である。
【0017】
更なる有利な構成では、本発明によるコンバーターは、3つのブリッジアームを有する正確に1つのトランスデューサモジュールを備え、従って、例えば局所的負荷に直接的に給電するために、又はアイランドグリッド若しくは上位の統合グリッドに給電するために、3つのブリッジアームのうちの2つの相出力において単相交流を可能にする。しかしながら、この機能は、「標準的な三相インバーター」を使用して提供することができ、標準的な三相インバーターのDCリンク回路は、例えば、好ましい省スペースのフィルムコンデンサを用いて構成される。本発明によれば、単相用途用の従来のインバーターと比較したときに無くなっているリンク回路静電容量が、第3のブリッジアームの制御を介した貯蔵ユニットからリンク回路への電力出力及び電力消費により、得られる。
【0018】
本発明によるコンバーターは、3つのブリッジアームをそれぞれ有する少なくとも3つのトランスデューサモジュールを有利にも備えることもあり、三相AC電圧が出力側に供給され、三相AC電圧の各相は、異なるトランスデューサモジュールの2つのブリッジアームによって供給され、第3のブリッジアームがエネルギーストアに結合されることがある。これらはそれぞれ、3つのトランスデューサモジュールの第3のブリッジアームのうちの1つにあるエネルギーストアであることがあり、即ち、全部で3つのエネルギーストアがある。或いは、3つのトランスデューサモジュールの全ての第3のブリッジアームが、共通のエネルギーストアに接続されていることがある。
【0019】
3つのブリッジアームをそれぞれ有する少なくとも3つの(構造的に同一の)トランスデューサモジュールを有するコンバーターは、市場では一般的であり、それらのトランスデューサモジュールは通常、より大きな電力を供給できるようにするために、並列に動作する。
【0020】
コンバーターの1つの有利な構成では、エネルギーストアは蓄電池とも呼ばれる(充電式)バッテリーを備える。第3のブリッジアームの相出力又は複数の第3のブリッジアームの複数の相出力は、エネルギーストアの一部を形成することができる。
【0021】
説明した方法は、鉄道輸送用の単相エネルギー供給グリッドにAC電力を給電するのに使用されるコンバーターにおいて、特に有利に使用されることがある。これは、鉄道輸送においては、他のエネルギー供給グリッドでの50又は60Hzの代わりに、例えば約16Hz(ヘルツ)などのより低いグリッド周波数が用いられることが多いので、特に当てはまる。グリッド周波数が低くなるほど、PV発電機がグリッド周期に渡って出来る限り均一に負荷をかけられるように意図されている場合に、DCリンク回路において従来技術によるコンバーターに対して使用される必要がある静電容量が高くなる。本発明による方法により、DCリンク回路用の部品に対して妥当な支出をすることにより、単相エネルギー供給グリッドのみにより大きな電力を給電することも可能になる、というのも、フィルムコンデンサを有する「標準的な三相インバーター」で無くなっているリンク回路静電容量は、例えばバッテリーによって「模倣」されるからである。
【0022】
本発明については、図の助けをかりて例示的な実施形態に基づいて以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、第1の例示的な実施形態におけるコンバーターを有する構成の概略図を示す。
【
図2】
図2は、第1の例示的な実施形態の構成におけるAC周期の半分の間の電力分布の概略グラフを示す。
【
図3】
図3は、第2の例示的な実施形態におけるコンバーターを有する構成の概略図を示す。
【
図4】
図4は、第2の例示的な実施形態の構成におけるAC周期の半分の間の電力分布の概略グラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、第1の例示的な実施形態におけるコンバーター6を有する構成を、概略回路図で表す。
【0025】
コンバーター6は、3つのブリッジアーム、即ち第1のブリッジアーム11、第2のブリッジアーム12、及び第3のブリッジアーム13を有するトランスデューサモジュール1を有する。これらのブリッジアーム11~13の各々は、直列に接続された2つの半導体スイッチ111、112、及び121、122、及び131、132を備える。コンバーター6の入力61、62において、ブリッジアーム11~13にDC入力電圧が供給され、この電圧は、ここでは、例として、光起電力(PV)発電機2によって供給される。各ブリッジアーム11~13のそれぞれの2つの半導体スイッチ111、112、及び121、122、及び131、132の間のセンタータップは、図示するトポロジーにおいてブリッジアーム11~13の相出力113、123、133を構成する。
【0026】
PV発電機2は、
図1では、単一のPVセルの回路記号によって記号的に表わされている。言うまでもないが、PV発電機2は、複数のPVモジュールで構成された多数のPVセルを備えることがあり、さらにPVモジュールは、PV発電機2を形成するために、直列及び/又は並列回路状に接続されることがある。
【0027】
図1のコンデンサの回路記号によって表わされるDCリンク回路14は、トランスデューサモジュール1の一部として、PV発電機2と並列に形成される。
【0028】
個々の半導体スイッチ111、112、121、122、131、132は、供給された直流を変換するために、好ましくはパルス幅変調方式(PWM方式)で、制御ユニット17によって制御される。図示した例では、半導体スイッチ111、112、121、122、131、132は、並列に逆接続された還流ダイオードを備えたIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)である。半導体スイッチ111、112、121、122、131、132の制御は、
図1では非常に概略的に示されている。
【0029】
PWM方式の切り替え時間を正確に決定するために、ブリッジアーム11~13及び/又はコンバーター6の出力における適切な電流及び/又は電圧測定値が必要である。例として、各ブリッジアーム11~13の出力電流を測定するための電流測定手段114、124、及び134が
図1に示されている。これらは、例えば、測定された磁場に基づいて電流を決定するホールセンサなどのセンサ又は分流器であり得る。測定された電流値は、制御ユニット17において評価される。明確にするために、相出力113、123、及び133において出力電圧を測定するための、呼応する電圧測定手段は、
図1には図示されていない。
【0030】
例として示されたコンバーター6では、センタータップが、コンバーター6の相出力113、123、133を構成する。原則として、それぞれが2つの半導体スイッチとセンタータップとを備えた3つのブリッジアームを有する、図示したいわゆるB6トポロジー以外のトポロジーを、コンバーター6において実装することもできる。たとえば、「中性点クランプ式」(NPC)、「バイポーラスイッチ中性点クランプ式」(BSNPC)、「アクティブ中性点クランプ式」(ANPC)、又は「フライングキャパシタ」(FLC)などの3レベル又は多レベルのトポロジーを有するコンバーターを使用することも可能である。これらのトポロジーは、B6トポロジーよりも、1つのブリッジアーム当たりにより多くの半導体スイッチを必要とするであろうが、多くの場合、効率の点で利点をもたらす。
【0031】
3つのブリッジアーム11~13を備えたコンバーター6は、入力に供給された直流を三相交流に変換するのに、基本的に適している。これは、しばしばおこるコンバーターの意図される目的であるので、3つのブリッジアームを有するコンバーターは、市場では一般的である。3つのブリッジアームは、一般的に同一の構造を有し、そのそれぞれが同一の電流及び電圧負荷容量を有する。
【0032】
図1に示した用途では、ブリッジアームのうちの2つのみ、ここでは第1のブリッジアーム11及び第2のブリッジアーム12を、Hブリッジの形態で使用して、供給された入力直流を単相交流に変換する。この目的のために、2つのブリッジアーム11、12の相出力113、123は、フィルタ15を介してエネルギー供給グリッド3の相に結合される。従って、2つのブリッジアーム11、12は、コンバーター6のACアームの一部であるとみなすことができる。
【0033】
この場合には、エネルギー供給グリッド3と結合するために、変圧器31が設けられている。例として、スイッチング素子32も、グリッド断路器として存在する。更に、ここでは図示されていない安全装置又は測定装置を、コンバーター6とエネルギー供給グリッド3との間に配置することができる。
【0034】
フィルタ15は、相出力113、123とエネルギー供給グリッド3との間のライン中に直列に配置された2つのインダクタ(コイル)151と、変圧器31の一次巻線と並列に配置されたコンデンサ152とを備える。フィルタ15は、いわゆる正弦波フィルタとして機能し、生成される単相交流を平滑化するために使用される。言うまでもないが、インダクタとコンデンサの他の組み合わせをフィルタ15として使用してすることもできる。
【0035】
この場合には、第3のブリッジアーム13は、反転のために設けられるのではなく、DCユニット4と接続される。この結合はフィルタ16を介して行われており、フィルタ16は、同様に、直列に接続されたインダクタ(コイル)161と、DCユニット4と並列に接続されたコンデンサ162とを備える。従って、ブリッジアーム13は、コンバーター6のDCアームの一部であるとみなすことができる。
【0036】
この場合には、フィルタ16の部品、並びに第3のブリッジアーム13の半導体スイッチ311、312は、昇圧及び/又は降圧機能を有するDC/DCコンバーターとして機能する。
【0037】
この場合には、「DCユニット」及び「DC/DCコンバーター」という用語は、電流及び電力が一方向のみに流れることを意味するものとして理解されるべきではない。逆に、本出願によるコンバーター及び本出願による方法は、DCユニット4に流れ込む又はDCユニット4から流れ出る電流の電流強度又は極性が、エネルギー供給グリッド3における交流周波数の周期の大きさのオーダーの時間スケールで変化することがある、という事実によって、明確に区別される。
【0038】
この場合には、DCユニット4は、バッテリー42を結合又は結合解除するためのスイッチング素子41を備える。バッテリー42は、ここでは例として、直列に接続された複数のバッテリーセルによって表わされる、充電式バッテリーである。半導体スイッチ311、312の適切な制御により、PV発電機2から若しくはDCリンク回路14からバッテリー42への電流の流れ、又は逆にバッテリー42からDCリンク回路14への電流の流れが実現される。
【0039】
本出願によれば、バッテリー42は、DCリンク回路14の負荷に加勢する又は負荷を軽減するためのエネルギーストアを構成する。なお、フィルタ16の部品もエネルギーストア機能を有し、従って、バッテリー42と一緒にエネルギーストアの一部を形成する。
【0040】
コンバーター6とエネルギー供給グリッド3との結合は、以下ではACアームとも呼ばれ、コンバーター6とDCユニット4、及びとりわけエネルギーストアとの結合は、DCアームと呼ばれる。
【0041】
図1に示した構成により、PV発電機2によって供給された交流を、単相エネルギー供給グリッド3に供給することが可能になる。
【0042】
図1による構成の応用分野は、PV発電機2によって生成された電流を、単相の上位のエネルギー供給グリッド3に供給することである。そのような単相の上位のエネルギー供給グリッド3は、例えば、鉄道輸送において鉄道電線に給電する際に存在し、その結果、
図1によって示した構成を、例えば、鉄道電線に沿ったフリーフィールドのPV設備と共に使用することができる。
【0043】
3つのブリッジアームを有するコンバーター、例えば
図1に示すコンバーター6の、本出願による動作方法では、DCアームを介してコンバーターによって伝達される電力は、伝達されるAC電力に基づいて設定される。従って、交流のAC周期に渡って瞬間的に変動する電力は、DCアーム内の伝達された電力にも反映される。AC電力は、交流の1周期内で最小値と最大値との間で2回変動する。これに応じてDCアームに伝達される電力も、交流の周波数の2倍で変動するが、これに応じて逆相になる。
【0044】
これは、
図2のグラフに概略的に示されており、この図では、コンバーターのAC又はDCアーム内に伝達された電力Pのプロファイルが、出力交流の位相角φに基づいて示されている。グラフの縦軸には電力Pが示されており、グラフの横軸には位相角φが示されている。例として、
図2については、
図1によるコンバーター6の構造を参照して、以下で説明する。
【0045】
グラフには3つの曲線プロファイルが示されており、3つの曲線プロファイルとは即ち、ACアームにおける交流の図示された半周期に渡って伝達される瞬時第1電力51、以下ではAC電力51とも呼ばれる(三相グリッドの1つの相の電力に対応する)と、現時点でDCアームにおいてバッテリー42に送信されている(正の値の場合)又はバッテリー42から送出されている(負の値の場合)第2の電力52と、である。DCアームにおいて伝達されるこの電力52は、以下では貯蔵電力52とも呼ばれる。更に、第3の電力53が示されており、これは、PV発電機2から引き出される平均電力53に相当する。図示した曲線プロファイルは、伝達された電力を表す。コンバーター6における損失を無視した場合、これらの曲線プロファイルは、同様に、それぞれのAC又はDCアームによって受け取られる電力、及びDCリンク回路14から引き出される電力も表す。
【0046】
AC電力51は、典型的なサインの2乗の様なプロファイルを示している。本出願によれば、DC/DCコンバーターの一部である第3のブリッジアーム13のスイッチング素子131、132は、伝達される貯蔵電力52が、伝達されるAC電力51に対して逆相になるような態様で制御され、その結果、全体的に伝達される電力と、従ってPV発電機2によって供給される電力53も、一定になる。
【0047】
従って、DCリンク回路14は、出力AC電圧の周期に渡って均一に負荷をかけられ、その結果として、電圧の一時的低下が回避され、PV発電機は常にMPP(最大電力点)で動作する。これは、AC電力51と貯蔵電力52の合計が一定になるような態様で、生成された交流の図示した半周期の期間中に、バッテリー42に供給される又はバッテリー42から引き出される電力を変化させることによって、達成される。
【0048】
この場合には、電力は、図示した例では位相角φが105°~195°の間の範囲内で、バッテリー42から時折引き出すこともでき、その後この電力は、ACアームに流れ込む。従って、エネルギーはバッテリー42からDCリンク回路14に戻るように伝達される。この場合には、コンバーター6のDCアームは、DCリンク回路14を支持する。
【0049】
この手順は、特に、
図1によるコンバーター5が鉄道エネルギー供給グリッド3に供給するために使用される場合に、有用である、というのも、これは、しばしば例えば16.6Hzなどの低周波数で動作し、また、コンバーターのDCリンク回路14は、実際にはより高周波数の50又は60Hzでの三相変換用に寸法決めされており、従って、しばしば十分な静電容量を持っていないからである。DCリンク回路14中の適切に寸法決めされた静電容量は、非常に大きな体積を有し、コストがかかるであろう。本出願による方法の結果として、DCリンク回路14中の静電容量は、例えば、電解コンデンサよりも耐用年数が長く損失が低いフィルムコンデンサによって必要とされるスペースに関して且つ経済的にもたらすことができる程度に小さく保たれることがある。
【0050】
図2は、伝達されたAC電力が純粋な有効電力である状況を示す。しかしながら、このコンバーターを使用して、有効電力に加えて無効電力をエネルギー供給グリッドと交換することも可能である。DC/DCコンバーターによって伝達される直流の位相角は、この場合には、ACアーム内を伝達される電流全体の位相角に適応される。
【0051】
コンバーターの1つの開発結果では、コンバーターは、それぞれが3つのブリッジアームを有する複数のトランスデューサモジュールを備えることがある。このとき、各トランスデューサモジュールの2つのブリッジアームを、ACアームにおいてそれぞれ使用することができ、1つのブリッジアームをDCアームにおいて使用することができる。ACアームは、合計で1つ以上、例えば3つのAC電圧相に交流を提供することができ、1つの相に割り当てられた2つのブリッジアームは、必ずしも1つのトランスデューサモジュールに対応する必要はない。
【0052】
図3は、3つの三相トランスデューサモジュール1’、1’’、及び1’’’を備えるそのようなコンバーター6を示しており、これらのモジュールは、入力側が、共通のPV発電機2に接続されている。3つの(構造的に同一の)三相トランスデューサモジュールの構成は、より大電力を供給できるようにするために、且つ既に開発済みのデバイスを用いることができるようにするために、コンバーターの市場では一般的である。
図3の例では、同一の参照符号は、
図1と同一の又は同様に機能する素子を示す。明確にするために、
図3中の全ての素子が参照符号を付けられているわけではない。幾つかの素子、例えば制御ユニット(
図1では参照符号17を参照)は、図示されていない。制御ユニットは、1つのトランスデューサモジュールを有するコンバーターの場合の
図1に示したものと非常に類似した、互いに通信する3つの制御ユニットから構成することができ、或いは、全てのトランスデューサモジュールに対して共通の制御ユニットが、全ての含まれる半導体スイッチに制御信号を提供することができる。
【0053】
図1のトランスデューサモジュール1と類似の態様で、個々のトランスデューサモジュール1’、1’’、1’’’はそれぞれ3つのブリッジアームを用いて構成される。3つのブリッジアーム-各場合において、トランスデューサモジュール1’、1’’、1’’’のそれぞれのうちの1つ-が、インダクタ161を介して共通のコンデンサ162に接続されており、バッテリー42に結合されている。トランスデューサモジュール1’、1’’、1’’’のそれぞれの他の2つのブリッジアームは、インダクタ151及びコンデンサ152を介して三相出力L1、L2、及びL3に接続されており、これらの三相出力では、三相エネルギー供給グリッドに給電するための三相交流が提供される。しかしながら、
図1の例示的な実施形態とは違って、ブリッジアームと相L1、L2、及びL3との異なる接続がここでは選択されており、「交差している」と説明することができる。異なるトランスデューサモジュールの2つのブリッジアームがそれぞれ1つの相に供給する。
図3では、従って、トランスデューサモジュール1’の1つのブリッジアームと、トランスデューサモジュール1’’の1つのブリッジアームが、相L1のための交流を生成する。これにより、出力AC電力とDCアームによって供給されることになる電力との間の補償の必要性が低減される。
【0054】
図4は、
図2と同様のグラフでの、
図3の構成の本発明による動作を示す。図示した曲線のうちの1つは、やはりエネルギー供給グリッドに給電されるAC電力51を示し、1つの曲線はバッテリー42に流れ込む貯蔵電力52を示し、1つの曲線はPV発電機から引き出されるPV電力53を示す。純粋な三相動作の間、AC電力52は、DC電力の振幅の半分の上にグリッド周波数の2倍が重ね合わせられた正弦波電力成分を有する、DC電力である。
【0055】
本発明によれば、ここで、バッテリー42に接続されたブリッジアームは、貯蔵電力52がAC電力に対して逆相になるような態様で制御され、その結果、PV発電機2から引き出されるPV電力53は一定になる。第1の例示的な実施形態と類似の態様で、電力は有利にも、各グリッド周期において、即ちグリッド周期の時間スケールで、出来る限り均一にPV発電機によって出力される。
【0056】
バッテリー42に流れ込む電流は直流である、というのも、3つのブリッジアームの個々の電流は、(グリッド基本周波数に基づいて)それらの正弦波成分に対して、各場合において60°オフセットされた態様で制御されるからである。
【符号の説明】
【0057】
1、1’-1’’’ トランスデューサモジュール
11 第1のブリッジアーム
111、112 半導体スイッチ
113 相出力
114 電流測定手段
12 第2のブリッジアーム
121、122 半導体スイッチ
123 相出力
124 電流測定手段
13 第3のブリッジアーム
131、132 半導体スイッチ
133 相出力
134 電流測定手段
14 DCリンク回路
15 フィルタ
151、161 インダクタ
152、162 コンデンサ
16 フィルタ
17 制御ユニット
2 PV発電機
3 エネルギー供給グリッド
31 変圧器
32 スイッチング素子
4 DCユニット
41 スイッチング素子
42 バッテリー
51 第1の電力
52 第2の電力
53 設定値
6 コンバーター
61、62 入力