(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】ガスシールド赤外線溶着およびステーキングシステム
(51)【国際特許分類】
B29C 65/14 20060101AFI20221227BHJP
【FI】
B29C65/14
(21)【出願番号】P 2020536923
(86)(22)【出願日】2018-09-17
(86)【国際出願番号】 US2018051320
(87)【国際公開番号】W WO2019055907
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-09-03
(32)【優先日】2017-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519092897
【氏名又は名称】デューケイン アイエーエス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キャスカート ポール エイチ
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01415789(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性材料で作製された2つの部品の一部を接合するための赤外線溶着方法であって、前記方法は、
前記2つの部品を互いに相手から離間させた状態で
、シールド組立体に収容された赤外線加熱装置と隣り合わせて配置することと、
前記赤外線加熱装置に電力供給して赤外放射を放射させ、前記放射された赤外放射を
、互いに直接接合される前記2つの部品の表面上へと誘導することによって、前記2つの部品の対向する表面の少なくとも一部を溶融させること
であって、前記赤外放射が溶着中の前記2つの部品に限定されるように、前記赤外線加熱装置がシールド組立体によってシールドされた状態で、前記表面の少なくとも一部を溶融させることと、
前記シールド組立体内に、ついで前記赤外線加熱装置の周りを通って前記シールド組立体の間隙から外に、そして前記2つの部品の一方のまたは両方の前記表面上へと非加熱の不活性ガスを誘導することであって、前記2つの部品が溶融する際にこれらが酸化するのを防止し、溶融中の前記熱可塑性材料のいかなる燃焼も防止するのに十分な流量で、前記赤外放射を受ける前記2つの部品の一方のまたは両方の前記表面上へと
前記非加熱の不活性ガスを誘導することと、
前記部品の少なくとも一方を前記2つの部品の他方に向けて移動させることによって前記2つの部品を締め合わせて、前記2つの部品の溶融した前記表面を互いに接触するように押し付けることと、
前記2つの部品をこれらが締め合わされて互いに直接接触したままである間に冷却して、溶融した前記熱可塑性材料を固化させ、これにより前記2つの部品を一体に溶着することと、
を含む、赤外線溶着方法。
【請求項2】
請求項1に記載の赤外線溶着方法であって、前記2つの部品は前記溶融および締め合わせ中に互いに位置合わせされることを特徴とする赤外線溶着方法。
【請求項3】
請求項1に記載の赤外線溶着方法であって、前記2つの部品の前記対向する表面は、2つの別個の赤外線加熱装置によって加熱されることを特徴とする赤外線溶着方法。
【請求項4】
請求項1に記載の赤外線溶着方法であって、前記赤外放射と前記
非加熱の不活性ガスは同じ位置から溶融される前記表面上へと誘導されることを特徴とする赤外線溶着方法。
【請求項5】
請求項1に記載の赤外線溶着方法であって、前記
非加熱の不活性ガスは溶融される各前記表面を当該表面の前記溶融中に覆うこと特徴とする赤外線溶着方法。
【請求項6】
請求項1に記載の赤外線溶着方法であって、前記赤外線加熱装置への前記電力供給を所定の時間間隔後に終了させることを特徴とする赤外線溶着方法。
【請求項7】
請求項1に記載の赤外線溶着方法であって、前記2つの部品の前記表面上への前記
非加熱の不活性ガスの前記誘導は、前記赤外線加熱装置への前記電力供給を終了させた後で終了されることを特徴とする赤外線溶着方法。
【請求項8】
請求項1に記載の赤外線溶着方法であって、前記
非加熱の不活性ガスは前記部品上へと誘導される前記赤外放射を取り囲むことを特徴とする赤外線溶着方法。
【請求項9】
熱可塑性材料で作製された2つの部品の一部を接合するための赤外線溶着システムであって、前記システムは、
一体に溶着される前記2つの部品の溶着される部分に適合する構成を有する赤外線加熱コイルを有し、前記赤外線加熱コイルからの赤外放射が互いに溶着される前記2つの部品の部分を加熱し溶融させるようになっている、1対の赤外線加熱装置と、
前記赤外線加熱コイルに電力供給する電源と、
前記赤外線加熱コイルを収容するシールド組立体であって、前記赤外線加熱コイルからの赤外放射を溶接中の前記2つの部品の一部上へと誘導する
シールド組立体と、
加圧
された非加熱の不活性ガスの供給源と、
を含み、
前記システムは、
前記シールド組立体内に、ついで前記赤外線加熱コイルの周りを通って前記シールド組立体の間隙から外に、そして前記赤外放射を受ける前記2つの部品の一方のまたは両方の表面上へと
前記非加熱の不活性ガスを誘導し、
前記2つの部品の少なくとも一方を前記2つの部品の他方に向けて移動させることによって前記2つの部品を締め合わせて、前記部品の溶融した前記表面を互いに接触するように押し付け、
前記2つの部品をこれらが締め合わされて互いに直接接触したままである間に冷却して、溶融した熱可塑性材料を固化させ、これにより前記2つの部品を1つに溶着す
る、
ように構成されている、
赤外線溶着システム。
【請求項10】
請求項
9に記載の赤外線溶着システムであって、前記2つの部品は溶融および締め合わせ中に互いに位置合わせされることを特徴とする赤外線溶着システム。
【請求項11】
請求項
9に記載の赤外線溶着システムであって、前記2つの部品の対向する表面は、2つの別個の赤外線加熱装置によって加熱されることを特徴とする赤外線溶着システム。
【請求項12】
請求項
9に記載の赤外線溶着システムであって、前記赤外放射および前記
非加熱の不活性ガスは共通のポートを通して溶融される各前記表面上へと誘導されることを特徴とする赤外線溶着システム。
【請求項13】
請求項
9に記載の赤外線溶着システムであって、前記
非加熱の不活性ガスは溶融される各前記表面を当該表面の前記加熱および前記溶融中に覆うこと特徴とする赤外線溶着システム。
【請求項14】
請求項
9に記載の赤外線溶着システムであって、前記赤外線加熱装置への前記電力供給を所定の時間間隔後に終了させることを特徴とする赤外線溶着システム。
【請求項15】
請求項
9に記載の赤外線溶着システムであって、前記2つの部品の前記表面上への前記
非加熱の不活性ガスの誘導は、前記赤外線加熱装置への前記電力供給を終了させた後で終了されることを特徴とする赤外線溶着システム。
【請求項16】
請求項
9に記載の赤外線溶着システムであって、前記
非加熱の不活性ガスは前記2つの部品上へと誘導される前記赤外放射を取り囲むことを特徴とする赤外線溶着システム。
【請求項17】
請求項
9に記載の赤外線溶着システムであって、前記赤外線加熱装置は前記赤外放射を前記溶着中の前記部品に限定するように
前記シールド組立体によってシールドされ
ていることを特徴とする赤外線溶着システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、熱可塑性材料の溶着に関し、より詳細には、熱可塑性材料の溶着およびステーキングに使用されるガスシールド赤外線溶着に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本願は、2017年9月18日出願の米国特許出願第15/707,360号に対する優先権を主張するものであり、その全体を本願に引用して援用する。
【0003】
本発明は一般に、赤外線(IR)溶着に関する。より詳細には、本発明は、プラスチック溶着工業における、溶着またはステーキング中の熱可塑性構成要素の一部を溶融させるための、IR加熱装置の使用に関する。IR溶着の実際の応用の一例は、自動車の吸気マニホールドの2つの半部を1つに溶着することである。そのようなマニホールドを溶着する従来の方法では、高温ガス加熱または赤外線(IR)加熱が利用される。
【0004】
高温ガス法では、抵抗式加熱装置を利用して不活性ガスを加熱し、これを溶融させるべき表面に対して吹き付ける。ガス自体は、溶融部を生成するためのエネルギーを抵抗式加熱装置からプラスチック表面まで運ぶための輸送手段である。この方法では、不活性ガスの場が溶着区域を取り囲み、プラスチックの酸化または燃焼を防止するという副次的効果がある。この方法では、プラスチック部品の変化に対する許容性がほとんど無い。部品が歪んで加熱装置に近づくかまたは加熱装置から遠ざかると、溶融部正面の温度は大きく変化する。
【0005】
IR法は単純に、プラスチックを放射加熱して溶融部を生成するためにIR熱源を利用する。IR源の主要な利点は、プラスチックを加熱するための他の手段よりも目立って大きい、赤外線エネルギーの伝達距離である。伝達距離の増大により、部品が加熱装置に向かってまたは加熱装置から離れるように歪んだ結果生じる加熱装置と部品の間の距離の変化に関わらず、部品表面のはるかに高い一貫性で加熱することが可能になる。IR加熱法の欠点は、生成中の溶融部の表面が酸化または燃焼し、溶着中の2つの部品を1つに接合する際に溶着部の強度の低下をもたらす可能性のあることである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によれば、熱可塑性材料で作製された2つの部品を接合するための赤外線溶着方法は、2つの熱可塑性部品のそれぞれを、互いに相手から離間させた状態で、赤外線加熱装置と隣り合わせて配置することと、赤外線加熱装置に電力供給して赤外線熱を放射させ、放射された赤外線熱を部品の対向する表面の選択された部分上へと誘導し、このとき同時に、溶融した熱可塑性材料の発火を防止するために、不活性ガスを前記選択された部分上へと誘導することによって、対向する表面の少なくとも一部を溶融させることと、2つの部品の少なくとも一方を他方の部品に向けて移動させることによって2つの部品を締め合わせて、部品の溶融した表面を互いと接触するように押し付けることと、2つの部品をこれらが締め合わされて互いと直接接触したままである間に冷却して、溶融した熱可塑性材料を固化させ、これにより2つの部品を1つに溶着することと、を含む。
【0007】
好ましい実施形態では、不活性ガスは、赤外放射が熱可塑性部品に衝突する際にその赤外放射を取り囲み、赤外放射はシールドされて、溶融される部品に赤外放射が限定される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】溶着される2つの熱可塑性部品の一部を溶融させるための2つの放射加熱ユニットによって形成された放射熱溶着システムの断面図である。
【
図2】溶着される2つの熱可塑性部品の一部の溶融を図示した、
図1に示したものと同じ断面図である。
【
図3】放射加熱ユニットを取り外した状態で、溶着される部品が互いに向けて移動するのを示す、
図1に示した熱可塑性部品と同じ断面図である。
【
図4】溶着される部品を互いに相手に対して押し付けて赤外線加熱によって溶融させた部品の一部を接合した後の、
図1に示したものと同じ断面図である。
【
図5】
図1および2に示した2つの放射加熱ユニットの一方の上面斜視図である。
【
図6】
図5に示したユニットの縮小した上面図である。
【
図8】「詳細A」として特定された
図7の一部の拡大図である
【
図9】
図5~8に示したシステムの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について特定の好ましい実施形態と関連付けて記載するが、本発明はこれらの特定の実施形態に限定されないことが理解されよう。反対に、本発明は、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の精神および範囲内に含まれ得る、全ての代替形態、変形形態、および等価な構成を包含することを意図している。
【0010】
これらの図面では、
図1~9は、互いに溶着される1対の熱可塑性部品P1とP2の選択された部分を加熱するための1対の同一の上側放射加熱ユニット10aと下側放射加熱ユニット10bを含むIR溶着システムを示す。
図1では、上側加熱ユニット10aは部品P1を加熱し、下側加熱ユニット10bは部品P2を加熱する。部品P1およびP2の加熱される部分は、それぞれの部品P1およびP2の表面からそれぞれの加熱ユニット10aおよび10bに向かって外向きに延びている環状のリブP1aおよびP2aである。部品P1およびP2の、リブP1aおよびP2aを含む表面は互いに対向しており、このためリブP1aとP2aは、これらを溶融させた後で、部品P1とP2を接合するために互いに係合させることが可能である。
【0011】
加熱ユニット10aおよび10bのそれぞれは、典型的には電流を流すことで電力供給される抵抗性要素を石英で包囲することによって作製される赤外線加熱コイル11を含む。各加熱ユニットにおいて、加熱コイル11は、正面シールドプレート21の中央開口31内に収容されている。平行な背面シールドプレート22が、正面プレート21から4つのシールドサイドバー23a~23dによって間隔を空けられて配置される。
図9に見ることができるように、複数のねじ24により、対向する2つのプレート21および22が、サイドバー23a~23dに押し付けられて緊密に固定される。
図1および2に見ることができるように、シールドサイドバー23a~23dは、2つのプレート21と22を互いに相手から離間させて保持する。
【0012】
シールドプレート21、22およびサイドバー23a~23dは、典型的には、アルミニウムまたは2つの別個の機能を果たす類似の材料で作製される。1つの機能は、熱可塑性部品P1およびP2ならびに周囲の要素の加熱してはいけない領域を保護することである。これらはまた、加熱コイル12の完全性を保護する役割も果たす。
【0013】
加熱ユニット10のそれぞれにおいて、赤外線加熱コイル11は、背面シールドプレート22に装着された3つのクランプ30によって支持されている。クランプ30により、コイル11が正面シールドプレート21の中央開口31内に位置付けられ、この中にはシールドシリンダ32も受け入れられる。シリンダ32は、開口31および加熱コイル11を通って、背面シールドプレート22の中央部の凹部33内へと延びている。シリンダ32は、シリンダ32の中央の穴を通過し背面シールドプレート22の適合するねじ穴にねじ込まれるねじ32aによって所定位置に保持される。
【0014】
シリンダ32の直径は開口31の直径よりも小さく、この結果、シリンダ32と正面プレート21の間に、環状の間隙34が形成される。赤外線加熱コイル11は間隙34内に位置決めされ、コイル11からの赤外放射は間隙34を通過し、溶着のため溶融される隣接する部分に至るようになっている。
【0015】
1対のシールドプレート21および22のそれぞれの底部には、シールド要素21、22および23a~23dから伝導により熱を取り去る冷却水を循環させるための通路41を含む水冷式ヒートシンク40が取り付けられる。このことにより、周囲の構成要素および溶着するべき熱可塑性部品が更に保護される。
【0016】
間隙34の外側端と隣接し、プレート21およびシリンダ32の対向する表面50および51は互いに向かってテーパしており、この結果、間隙の外側端の幅は、溶着される部品の突出した部分の幅と略同じになる。表面50および51は、熱コイル11からの赤外放射が間隙34を通って溶融される熱可塑性部品のその部分の表面に向かって導かれていくように、研磨されて反射表面を形成している。
【0017】
それぞれの部品P1およびP2の少なくともリブP1aおよびP2aは、好ましくは、これらのリブの表面部分が短時間で溶融され、冷却され固化すると強固な溶着接合部を形成するように、全体が熱可塑性材料で作製される。例えば、リブP1aおよびP2aを合計で20秒間加熱してもよく、これは対向させたリブの表面部分を溶融させるのに十分な時間である。
【0018】
熱可塑性材料が赤外放射によって溶融される際に燃焼するのを回避するために、加熱していない加圧不活性ガス、例えば窒素が、熱可塑性材料の溶融中の部分の周囲の空間内に分配される。
図1および2に見ることができるように、不活性ガスは、サイドバー23aおよび23cにあるポート60および61を通して、シールドプレート21とシールドプレート22の間の空間内へと供給される。
【0019】
不活性ガスは、加熱ユニット10から、赤外放射が加熱コイル11から溶融中の部品へと伝わる際に通るのと同じ間隙34を通して分配される。プレート21およびシリンダ32のテーパした表面により、加圧不活性ガスが、
図1および2の断面図の円形の点描領域によって描かれているように、赤外放射によって溶着中の部品の周囲の空間内へと誘導される。
【0020】
不活性ガスは、間隙34から出て熱可塑性材料の溶着区域上に至るガスの流れを一貫させるために、低圧で分配される。シールド不活性ガスの流量は、熱可塑性材料が溶融する際にこれらが酸化するのを防止し、このことにより溶融中の熱可塑性材料のいかなる燃焼も防止するのに、十分であるべきである。
【0021】
加圧不活性ガスは、2つのプレート21および22の間の空間内へと、この空間の対向する両側にある2つのポート60および61から供給される。その後不活性ガスは赤外線加熱コイル11の両側を流れ、赤外放射が外に出るのと同じ環状の間隙34を通って外に出る。環状の間隙34の両側の壁は、互いに向かってテーパし、間隙34の出口端部に隣接している。
【0022】
部品P1およびP2の互いに溶着されるべき部分が赤外放射によって少なくとも部分的に溶融された後で、加熱要素が部品P1と部品P2の間から取り去られ、2つの部品のリブP1aおよびP2aが互いに押し付けられて係合し、この結果、2つの部品P1およびP2の溶融した表面が、互いに相手と一体になる。部品P1およびP2の垂直移動は好ましくは、少なくとも1つのサーボ制御式アクチュエータによって制御される。
【0023】
部品P1およびP2の軟化した部分が押し付けられて互いに係合した後で、部品を冷却し固化させる。溶融した表面を有する部品は、これらがIR加熱の無い状態で冷却され固化する間、緊密に締め合わされたままである。このように、部品P1およびP2を加圧下で放冷し、このことにより溶融した熱可塑性材料を固化させることによって、溶着部が完成する。次いで最終的な溶着済み製品の締め合わせを解除し、溶着ステーションから取り出す。
【0024】
本発明の特定の実施形態および応用を例示し記載してきたが、本発明が本明細書に開示される厳密な構造および構成に限定されないことが理解されるべきであり、上記の説明から、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変形、変更、改変が明らかになり得る。