(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】アンテナ接続回路、レクテナ、受電アンテナ装置、上空移動体及び無線電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
H01P 5/08 20060101AFI20221227BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20221227BHJP
H01Q 1/27 20060101ALI20221227BHJP
H02J 50/20 20160101ALI20221227BHJP
H02J 50/70 20160101ALI20221227BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20221227BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20221227BHJP
【FI】
H01P5/08 Z
H01Q1/38
H01Q1/27
H02J50/20
H02J50/70
B64C39/02
B64C27/08
(21)【出願番号】P 2021030199
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2021-03-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年2月23日に、2021年電子情報通信学会総合大会講演論文集(DVD及びWEB公開),B-20-25(一般社団法人電子情報通信学会)にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】太田 喜元
(72)【発明者】
【氏名】中本 悠太
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/044377(WO,A1)
【文献】特開2019-054723(JP,A)
【文献】特開2019-213313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 5/08
H01Q 1/38
H01Q 1/27
H02J 50/20
H02J 50/70
B64C 39/02
B64C 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ素子に接続されるアンテナ接続回路であって、
前記アンテナ素子の第1出力端に接続される第1線路と前記アンテナ素子の第2出力端に接続される第2線路とが所定間隔で誘電体の基板の片面に形成さ
れ、前記アンテナ素子の第1出力端及び第2出力端から前記第1線路及び前記第2線路に入力される第1位相差Δψ1を有する2つの受信信号を出力端に向けて伝送し、前記出力端から前記第1線路及び前記第2線路に入力される前記第1位相差Δψ1とは異なる第2位相差Δψ2を有する2つの反射信号の伝送を阻止するCPS(コプレーナストリップ)伝送回路と、
前記CPS伝送回路の第1線路の出力端に接続された主線路と接地導体層とが所定の間隔で前記基板の前記片面に形成された第1の片側接地型のCPW(コプレーナウェーブガイド)伝送回路と、
前記CPS伝送回路の第2線路の出力端に接続された主線路と接地導体層とが所定の間隔で前記基板の前記片面に形成された、前記主線路の出力端に第2整流器が接続される第2の片側接地型のCPW伝送回路と、
前記第1の片側接地型のCPW伝送回路の主線路の出力端に一端部が接続され、第1整流器に他端部が接続されるように、前記基板の前記片面に形成された第1の両側接地型のCPW伝送回路と、
前記第2の片側接地型のCPW伝送回路の主線路の出力端に一端部が接続され、第2整流器に他端部が接続されるように、前記基板の前記片面に形成された第2の両側接地型のCPW伝送回路と、を備え、
前記第1の片側接地型のCPW伝送回路及び前記第1の両側接地型のCPW伝送回路
により構成された第1出力伝送回路の位相変化量Δθ1と
前記第2の片側接地型のCPW伝送回路及び前記第2の両側接地型のCPW伝送回路
により構成された第2出力伝送回路の位相変化量Δθ2とは位相差を有する、ことを特徴とするアンテナ接続回路。
【請求項2】
請求項1のアンテナ接続回路において、
前記位相差Δθ1-Δθ2は45°よりも大きく且つ135°よりも小さいことを特徴とするアンテナ接続回路。
【請求項3】
請求項2のアンテナ接続回路において、
前記位相差Δθ1-Δθ2は80°以上且つ100°以下であることを特徴とするアンテナ接続回路。
【請求項4】
請求項3のアンテナ接続回路において、
前記位相差Δθ1-Δθ2は90°であることを特徴とするアンテナ接続回路。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかのアンテナ接続回路において、
前記第1の片側接地型のCPW伝送回路及び前記第2の片側接地型のCPW伝送回路はそれぞれ、受信電波の波長λの1/4の線路長を有するλ/4マッチング回路である、ことを特徴とするアンテナ接続回路。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかのアンテナ接続回路と、前記アンテナ接続回路に接続される平衡型のアンテナ素子と、前記アンテナ接続回路に接続される第1整流器及び第2整流器と、を備えることを特徴とするレクテナ。
【請求項7】
請求項6のレクテナにおいて、
前記第1整流器及び前記第2整流器はそれぞれ、前記基板の前記片面に形成された両側接地型のCPW伝送回路と、前記CPW伝送回路の主線路と両側の接地導体層との間に受信電波の波長λの1/4の間隔で設けられたダイオード及び平滑キャパシタとを有する、ことを特徴とするレクテナ。
【請求項8】
請求項6又は7のレクテナにおいて、
前記アンテナ素子は、前記基板の前記片面に形成された薄膜アンテナ素子である、ことを特徴とするレクテナ。
【請求項9】
アンテナ素子に接続されるアンテナ接続回路であって、
前記アンテナ素子から入力される第1位相差Δψ1を有する2つの受信信号を出力端に向けて伝送し、前記出力端から入力される前記第1位相差Δψ1とは異なる第2位相差Δψ2を有する2つの反射信号の伝送を阻止する方向性フィルター伝送回路と、
前記方向性フィルター伝送回路の出力端に一端部が接続され、第1整流器に他端部が接続される第1出力伝送回路と、
前記方向性フィルター伝送回路の出力端に一端部が接続され、第2整流器に他端部が接続される第2出力伝送回路と、を備え、
前記第1出力伝送回路の位相変化量Δθ1と前記第2出力伝送回路の位相変化量Δθ2とは位相差を有する、ことを特徴とするアンテナ接続回路。
【請求項10】
請求項9のアンテナ接続回路において、
前記第1位相差Δψ1は135°よりも大きく且つ225°よりも小さく、
前記第2位相差Δψ2は-45°よりも大きく且つ45°よりも小さく、
前記第1出力伝送回路の位相変化量Δθ1と前記第2出力伝送回路の位相変化量Δθ1との位相差Δθ1-Δθ2は45°よりも大きく且つ135°よりも小さい、ことを特徴とするアンテナ接続回路。
【請求項11】
請求項10のアンテナ接続回路において、
前記第1位相差Δψ1は170°以上且つ190°よりも小さく、
前記第2位相差Δψ2は-10°以上且つ10°よりも小さく、
前記第1出力伝送回路の位相変化量Δθ1と前記第2出力伝送回路の位相変化量Δθ1との位相差Δθ1-Δθ2は45°よりも大きく且つ135°よりも小さい、ことを特徴とするアンテナ接続回路。
【請求項12】
請求項11のアンテナ接続回路において、
前記第1位相差Δψ1は180°であり、
前記第2位相差Δψ2は0°であり、
前記位相差Δθ1-Δθ2は90°である、ことを特徴とするアンテナ接続回路。
【請求項13】
請求項9乃至12のいずれかのアンテナ接続回路において、
前記方向性フィルター伝送回路、前記第1出力伝送回路及び前記第2出力伝送回路は、誘電体の基板の片面に形成されていることを特徴とするアンテナ接続回路。
【請求項14】
請求項9乃至13のいずれかのアンテナ接続回路と、前記アンテナ接続回路に接続される平衡型のアンテナ素子と、前記第1出力伝送回路の出力端に接続される第1整流器と、前記第2出力伝送回路の出力端に接続される第2整流器と、を備えることを特徴とするレクテナ。
【請求項15】
請求項14のレクテナにおいて、
前記第1整流器及び前記第2整流器はそれぞれ、誘電体の基板の片面に形成された両側接地型のCPW(コプレーナウェーブガイド)伝送回路と、前記CPW伝送回路の主線路と両側の接地導体層との間に受信電波の波長λの1/4の間隔で設けられたダイオード及び平滑キャパシタとを有する、ことを特徴とするレクテナ。
【請求項16】
請求項14又は15のレクテナにおいて、
前記アンテナ素子は薄膜アンテナ素子である、ことを特徴とするレクテナ。
【請求項17】
電波を受信して電力を出力する受電アンテナ装置であって、
請求項6、7、8、14、15又は16のレクテナを複数備えることを特徴とする受電アンテナ装置。
【請求項18】
上空を移動する上空移動体であって、
請求項17の受電アンテナ装置と、
前記受電アンテナ装置で受信した電波から得られた電力で駆動される電気機器と、を備えることを特徴とする上空移動体。
【請求項19】
請求項18の上空移動体において、
当該上空移動体は、回転駆動されるプロペラと、前記プロペラをガードする枠体とを備えたドローンであり、
前記枠体の表面に、前記受電アンテナ装置のアンテナ素子部を一又は複数配置したことを特徴とする上空移動体。
【請求項20】
上空を移動する上空移動体に設けられた請求項17の受電アンテナ装置と、
前記上空移動体の前記受電アンテナ装置に対して送電電波を送信する送電装置と、を備えることを特徴とする無線電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を受信するアンテナ素子に接続されるアンテナ接続回路、レクテナ、受電アンテナ装置、受電アンテナ装置を備えた上空移動体及び無線電力伝送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機、ドローン、気球、飛行船、ソーラープレーン、飛行型ラジコン玩具など、電力を消費する機器を搭載した種々の上空移動体が知られている。特許文献1には、地上に設置された送電装置から送信された送電電波を受信する受電アンテナを備え、受電アンテナが受信した電波から得られる電力を貯蔵及び利用するドローンが開示されている。また、特許文献2には、電波を受信するアンテナと、前記アンテナから出力される交流電圧を直流電圧に変換する整流器とを備えるレクテナが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-054723号公報
【文献】特開2019-213313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ドローンなどの上空移動体にレクテナを備える場合、上空移動体に搭載されるレクテナから干渉の原因となる電波が再放射されるのを防止したい、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1態様に係るアンテナ接続回路は、アンテナ素子に接続されるアンテナ接続回路である。このアンテナ接続回路は、前記アンテナ素子の第1出力端に接続される第1線路と前記アンテナ素子の第2出力端に接続される第2線路とが所定間隔で誘電体の基板の片面に形成されたCPS(コプレーナストリップ)伝送回路と、前記CPS伝送回路の第1線路の出力端に接続された主線路と接地導体層とが所定の間隔で前記基板の前記片面に形成された第1の片側接地型のCPW(コプレーナウェーブガイド)伝送回路と、前記CPS伝送回路の第2線路の出力端に接続された主線路と接地導体層とが所定の間隔で前記基板の前記片面に形成された、前記主線路の出力端に第2整流器が接続される第2の片側接地型のCPW伝送回路と、前記第1の片側接地型のCPW伝送回路の主線路の出力端に一端部が接続され、第1整流器に他端部が接続されるように、前記基板の前記片面に形成された第1の両側接地型のCPW伝送回路と、前記第2の片側接地型のCPW伝送回路の主線路の出力端に一端部が接続され、第2整流器に他端部が接続されるように、前記基板の前記片面に形成された第2の両側接地型のCPW伝送回路と、を備える。前記第1の両側接地型のCPW伝送回路の位相変化量Δθ1と前記第2の両側接地型のCPW伝送回路の位相変化量Δθ2とは位相差を有する。
【0006】
前記第1態様に係るアンテナ接続回路において、前記位相差Δθ1-Δθ2は45°よりも大きく且つ135°よりも小さくてもよい。
【0007】
前記第1態様に係るアンテナ接続回路において、前記位相差Δθ1-Δθ2は80°以上且つ100°以下であってもよい。
【0008】
前記第1態様に係るアンテナ接続回路において、前記位相差Δθ1-Δθ2は90°であってもよい。
【0009】
前記第1態様に係るアンテナ接続回路において、前記第1の片側接地型のCPW伝送回路及び前記第2の片側接地型のCPW伝送回路はそれぞれ、前記電波の波長λの1/4の線路長を有するλ/4マッチング回路であってもよい。
【0010】
本発明の第2態様に係るレクテナは、前記いずれかの第1態様に係るアンテナ接続回路と、前記アンテナ接続回路に接続される平衡型のアンテナ素子と、前記アンテナ接続回路に接続される第1整流器及び第2整流器と、を備える。
【0011】
前記第2態様に係るレクテナにおいて、前記第1整流器及び前記第2整流器はそれぞれ、前記基板の前記片面に形成された両側接地型のCPW伝送回路と、前記CPW伝送回路の主線路と両側の接地導体層との間に前記電波の波長λの1/4の間隔で設けられたダイオード及び平滑キャパシタとを有してもよい。
【0012】
前記第2態様に係るレクテナにおいて、前記アンテナ素子は、前記基板の前記片面に形成された薄膜アンテナ素子であってもよい。
【0013】
本発明の第3態様に係るアンテナ接続回路は、アンテナ素子に接続されるアンテナ接続回路である。このアンテナ接続回路は、前記アンテナ素子から入力される第1位相差Δψ1を有する2つの受信信号を出力端に向けて伝送し、前記出力端から入力される前記第1位相差Δψ1とは異なる第2位相差Δψ2を有する2つの反射信号の伝送を阻止する方向性フィルター伝送回路と、前記方向性フィルター伝送回路の出力端に一端部が接続され、第1整流器に他端部が接続される第1出力伝送回路と、前記方向性フィルター伝送回路の出力端に一端部が接続され、第2整流器に他端部が接続される第2出力伝送回路と、を備える。前記第1出力伝送回路の位相変化量Δθ1と前記第2出力伝送回路の位相変化量Δθ2とは位相差を有する。
【0014】
前記第3態様に係るアンテナ接続回路において、前記第1位相差Δψ1は135°よりも大きく且つ225°よりも小さく、前記第2位相差Δψ2は-45°よりも大きく且つ45°よりも小さく、前記第1出力伝送回路の位相変化量Δθ1と前記第2出力伝送回路の位相変化量Δθ1との位相差Δθ1-Δθ2は45°よりも大きく且つ135°よりも小さくてもよい。
【0015】
また、前記第3態様に係るアンテナ接続回路において、前記第1位相差Δψ1は170°以上且つ190°よりも小さく、前記第2位相差Δψ2は-10°以上且つ10°よりも小さく、前記第1出力伝送回路の位相変化量Δθ1と前記第2出力伝送回路の位相変化量Δθ1との位相差Δθ1-Δθ2は45°よりも大きく且つ135°よりも小さくてもよい。
【0016】
また、前記第3態様に係るアンテナ接続回路において、前記第1位相差Δψ1は180°であり、前記第2位相差Δψ2は0°であり、前記位相差Δθ1-Δθ2は90°であってもよい。
【0017】
前記第3態様に係るアンテナ接続回路において、前記方向性フィルター伝送回路、前記第1出力伝送回路及び前記第2出力伝送回路は、誘電体の基板の片面に形成してもよい。
【0018】
本発明の第4態様に係るレクテナは、前記いずれかの第3態様のアンテナ接続回路と、前記アンテナ接続回路に接続される平衡型のアンテナ素子と、前記第1出力伝送回路の出力端に接続される第1整流器と、前記第2出力伝送回路の出力端に接続される第2整流器と、を備える。
【0019】
前記第4態様のレクテナにおいて、前記第1整流器及び前記第2整流器はそれぞれ、誘電体の基板の片面に形成された両側接地型のCPW(コプレーナウェーブガイド)伝送回路と、前記CPW伝送回路の主線路と両側の接地導体層との間に前記電波の波長λの1/4の間隔で設けられたダイオード及び平滑キャパシタとを有してもよい。
【0020】
前記第4態様のレクテナにおいて、前記アンテナ素子は薄膜アンテナ素子であってもよい。
【0021】
本発明の第5態様に係る電波を受信して電力を出力する受電アンテナ装置は、前記いずれかのレクテナを複数備える。
【0022】
本発明の第6態様に係る上空を移動する上空移動体は、前記いずれかの受電アンテナ装置と、前記受電アンテナ装置で受信した電波から得られた電力で駆動される電気機器と、を備える。
【0023】
前記上空移動体は、回転駆動されるプロペラと、前記プロペラをガードする枠体とを備えたドローンであり、前記枠体の表面に、前記受電アンテナ装置のアンテナ素子部を一又は複数配置したものであってもよい。
【0024】
本発明の第7態様に係る無線電力伝送システムは、上空を移動する上空移動体に設けられた前記いずれかの受電アンテナ装置と、前記上空移動体の前記受電アンテナ装置に対して送電電波を送信する送電装置と、を備える。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、上空移動体に搭載されるレクテナから干渉の原因となる電波が再放射されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る無線電力伝送システムの全体構成の一例を示す概略構成図。
【
図2】実施形態に係るドローンの主要構成の一例を示す機能ブロック図。
【
図3】実施形態に係るドローンの一例を示す底面図。
【
図4】実施形態に係るレクテナの構成の一例を示すブロック図。
【
図5】実施形態に係るレクテナのコプレーナ構成の一例を示すブロック図。
【
図6】(a)及び(b)はそれぞれ、実施形態に係るレクテナにおけるCPS(コプレーナストリップ)伝送回路の一例を示す平面図及び側面図。
【
図7】(a)は逆位相の2信号が入力されるCPS伝送回路の説明図。(b)は同CPS伝送回路の反射率及び透過率の特性の一例を示すグラフ。
【
図8】(a)は同位相の2信号が入力されるCPS伝送回路の説明図。(b)は同CPS伝送回路の反射率及び透過率の特性の一例を示すグラフ。
【
図9】(a)及び(b)はそれぞれ、実施形態に係るレクテナにおける両側接地型のCPW(コプレーナウェーブガイド)伝送回路の一例を示す平面図及び側面図。
【
図10】(a)及び(b)はそれぞれ、実施形態に係るレクテナにおける片側接地型のCPW(コプレーナウェーブガイド)伝送回路の一例を示す平面図及び側面図。
【
図11】実施形態に係るレクテナにおけるコプレーナ型の整流器の実装の一例を示す平面図。
【
図12】(a)及び(b)はそれぞれ、比較参考例に係るマイクロストリップ伝送回路の一例を示す平面図及び側面図。
【
図13】実施形態に係るレクテナの実装の一例を示す平面図。
【
図14】(a)及び(b)はそれぞれ、実施形態に係るレクテナからの水平偏波の電波の再放射特性を示すコンピュータシミュレーションの結果の一例を示す特性図。
【
図15】(a)及び(b)はそれぞれ、実施形態に係るレクテナからの垂直偏波の電波の再放射特性を示すコンピュータシミュレーションの結果の一例を示す特性図。
【
図16】
図14及び
図15のコンピュータシミュレーションにおける座標、方位角φ、天頂角θ及び偏波面の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本書に記載された実施形態に係るレクテナは、ドローンに要求される要求電力を満たしつつレクテナの整流器に要求される耐圧特性を低く抑えるとともに、レクテナから干渉の原因となる電波が再放射されるのを抑制又は防止することができるアンテナ接続回路を有する。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係る無線電力伝送システムの全体構成の一例を示す概略構成図である。
図1において、無線電力伝送システムは、上空を移動する上空移動体としてのドローン10に設けられた受電アンテナ装置100と、ドローン10の受電アンテナ装置100に対して送電電波30を送信する送電アンテナ200を有する送電装置20とを備える。本実施形態の無線電力伝送システムでは、地上の送電アンテナ200からのマクロ波無線電力伝送によりドローン10を給電することができる。
【0029】
ドローン10の受電アンテナ装置100は複数のレクテナを備える。各レクテナは、送電電波30を受信するアンテナ素子と、アンテナ素子から出力される交流(AC)の電圧(電流)を直流(DC)の電圧(電流)に変換する整流器とを有する。
【0030】
なお、本実施形態における送電電波30はマイクロ波であるが、マイクロ波以外の電磁波であってもよい。送電装置20は、図示のように地上に設置されていてもよいし、又は、海上などの水上に設置されていてもよい。また、送電装置20は、自動車、バス、トラックなどの車両、電車、船舶等の移動体に設け、移動中又は移動停止中の移動体からドローン10に向けて電力伝送するようにしてもよい。
【0031】
ドローン10は、操縦者が搭乗しないで外部からの遠隔制御又は自律制御により上空(大気圏外の宇宙空間を含む)における飛行が制御される航空機等の上空移動体である。ドローン10は、例えば、トライコプター(ローター3個)、クアッドコプター(ローター4個)、ヘキサコプター(ローター6個)、オクトコプター(ローター8個)等のマルチコプター(マルチローター)型ドローンのほか、一般的なヘリコプター、固定翼型ドローンでもよい。ドローン10は一般的には無人であるが、有人であってもよい。
【0032】
また、送電装置20から送電する送電対象は、上空(大気圏外の宇宙空間を含む)を移動する移動体であれば、ドローン以外の上空移動体であってもよい。例えば、送電対象は、上空を移動可能な空中浮揚型の通信中継装置(無線中継装置)としての高高度プラットフォーム局(HAPS)(「高高度疑似衛星」、「成層圏プラットフォーム」ともいう。)であってもよい。HAPSは、無人飛行船タイプのHAPSでもよいし、ソーラープレーンタイプのHAPSでもよい。また、送電対象は、航空機、気球、飛行型ラジコン玩具など、電力を消費する機器を搭載した種々の上空移動体であってもよい。
【0033】
図2は、実施形態に係るドローン10の主要構成の一例を示す機能ブロック図である。ドローン10は、本体11と、複数のローター12と、各ローター12を駆動するローター駆動部13と、受電アンテナ装置100とを備える。本体11は、制御用アンテナ14aを介して、ドローン10を操縦するための操縦装置(以下「プロポ」ともいう。)と通信する飛行制御部(FC)14と、各部を制御する制御部15と、バッテリー16aを有する電源部16とを備える。制御部15は、例えば、飛行制御部(FC)14がプロポから受信した制御信号に基づいてローター駆動部13を制御することにより、ドローン10の飛行開始及び停止、上昇、下降、飛行方向、飛行速度、飛行姿勢などを制御することができる。また、電源部16は、受電アンテナ装置100で受電して直流に変換された電力によりバッテリー16aを充電するともに、飛行制御部(FC)14、制御部15、ローター駆動部13などの各部に電力を供給する。なお、飛行制御部(FC)14は、通信網を介してサーバから操縦指示を受信し、その操縦指示に基づいてローター駆動部13を制御してもよい。
【0034】
図3は、実施形態に係るドローン10の一例を示す底面図である。
図3において、ドローン10は、本体11と、下向きの気流である風を発生させて浮力を発生させるための複数のローター(「プロペラ」ともいう。)12と、受電アンテナ装置100とを備える。受電アンテナ装置100は、本体11に支持アームで連結された中央部が中空の板状部材からなる枠体101に設けられ、ローター(プロペラ)12を保護するガード部材として兼用されている。受電アンテナ装置100を構成する枠体101は、軽量化を図るとともに空気抵抗を軽減できるようにメッシュ状の部材で形成してもよい。
【0035】
受電アンテナ装置100は、枠体101の下面(
図3の手前側の面)に分散配置された複数のアンテナ素子部110を有する。
【0036】
各アンテナ素子部110は、第1偏波面の電波を主に受信して第1交流電圧を出力し、第1偏波面に直交する第2偏波面の電波を主に受信して第2交流電圧を出力する。図示の例では、各アンテナ素子部110は、第1偏波面の電波を主に受信するアンテナ素子としての第1ダイポールアンテナ120(1)と、第1偏波面と直交する第2偏波面の電波を主に受信するアンテナ素子としての第2ダイポールアンテナ120(2)とを有する。第1ダイポールアンテナ120(1)及び第2ダイポールアンテナ120(2)のそれぞれの背面側には、金属などの導電性材料で構成した反射器を設けてもよい。反射器はメッシュ状の部材であってもよい。
【0037】
なお、本実施形態において、電波の「偏波面」は、電波の電界が振動する方向と伝搬方向とを含む面である。この偏波面が時間によらず一定の電波を直線偏波の電波といい、偏波面が時間によって回転する電波を円偏波の電波という。
【0038】
上記構成のドローン10に電波を送信して電力を伝送する無線電力伝送システムにおいて、複数のアンテナ素子部110のアンテナ素子(ダイポールアンテナ)のそれぞれに整流器が接続されて複数のレクテナを構成している。ドローン10の要求電力Pdを数10[W]と想定すると、複数のレクテナそれぞれの整流器に要求される耐圧は数[W]であり、一般的なダイオードの耐圧をオーバーする。そこで、本実施形態では、複数のレクテナのそれぞれにおいて、複数の整流器の並列接続した複数並列化(例えば、2並列化)の構成にすることにより、各整流器に要求される耐圧特性を低く抑えている。
【0039】
また、上記構成のドローン10に電波を送信して電力を伝送する無線電力伝送システムにおいて、受電アンテナ装置100の複数のレクテナのそれぞれにおいて、地上の送電アンテナ200からの送信電波を受信したとき、その一部がレクテナから再放射されるという課題がある。例えば、受電アンテナ装置100の全体で受信した電力が40[W]である場合、その受信した電力の1%が受電アンテナ装置100から再放射されると、400[mW]程度の再放射となり、他の電子機器への大きな干渉になり得る。
【0040】
そこで、本実施形態では、以下に説明するように、受電アンテナ装置100の複数のレクテナのそれぞれにおいて、アンテナ素子と2並列化の整流器とを接続するアンテナ接続回路に再放射防止機能を持たせるように構成している。
【0041】
図4は、本実施形態に係るレクテナ150の構成の一例を示すブロック図である。
図4中の実線は、アンテナ素子120で受信された高周波の受信信号RFの流れを示し、破線は整流器140(1)、140(2)で反射された高周波の反射信号RFの流れを示している。また、
図4中のRF(-90)、RF(+90)等における括弧内の数値は、各高周波の信号の相対的な位相[°]を示している。
【0042】
図4において、レクテナ150は、平衡型のアンテナ素子120と、アンテナ接続回路130と、整流用のダイオードの耐圧を考慮して2並列化された複数の整流器140(1)、140(1)とを備える。アンテナ素子120は、互いに逆位相の高周波の受信信号を出力する。アンテナ素子120が不平衡型のアンテナ素子である場合は、バラン等が追加されて平衡型のアンテナ素子として構成される。アンテナ素子は、ダイポールアンテナ(例えば、折り返し型のバイポールアンテナ)でもよいし、パッチアンテナでもよい。
【0043】
アンテナ接続回路130は、方向性フィルター伝送回路131と出力伝送回路132とを備える。方向性フィルター伝送回路131は、アンテナ素子120から入力される第1位相差Δψ1を有する2つの受信信号を出力端に向けて伝送し、前記出力端から入力される第1位相差Δψ1とは異なる第2位相差Δψ2を有する2つの反射信号の伝送を阻止する機能を有する。この反射波の伝送阻止により、反射信号がアンテナ素子120から再放射されるのを抑制又は防止することができる。
【0044】
アンテナ素子120から入力される2つの受信信号の位相差(第1位相差)Δψ1は例えば135°よりも大きく且つ225°よりも小さく、方向性フィルター伝送回路131の出力端側から入力される2つの反射信号の位相差(第2位相差)Δψ2は例えば-45°よりも大きく且つ45°よりも小さい。好ましくは、第1位相差Δψ1は170°以上且つ190°よりも小さい範囲にあり、第2位相差Δψ2は-10°以上且つ10°よりも小さい範囲にある。より好ましくは、前記2つの受信信号は、第1位相差Δψ1が180°又はほぼ180°である逆位相の受信信号であり、前記2つの反射信号は、第2位相差Δψ2が0°又はほぼ0°である同位相の反射信号である。
【0045】
なお、以下の実施形態の例では、2つの受信信号の第1位相差Δψ1が180°又はほぼ180°(逆位相)であり、2つの反射信号第2位相差Δψ2が0°又はほぼ0°(同位相)の場合について説明する。また、以下の実施形態の例では、一例として、アンテナ素子120から入力される逆位相の2つの受信信号の組み合わせがRF(-90)及びRF(+90)の場合について説明するが、他の組み合わせであってもよい。例えば、アンテナ素子120から入力される逆位相の2つの受信信号の組み合わせは、RF(+90)及びRF(-90)、RF(0)及びRF(+180)、又は、RF(+180)及びRF(0)であってもよい。すなわち、本発明において、アンテナ素子120からの反射信号の再放射を抑制又は防止し得るのであれば、2つの受信信号の組み合わせは特に限定されない。つまり、再放射を抑制又は防止し得る位相差であれば、2つの受信信号のそれぞれの位相は特に限定されない。
【0046】
方向性フィルター伝送回路131は、アンテナ素子120から入力される逆位相の2つの受信信号RF(-90)、RF(+90)を出力端に向けて伝送し、前記出力端から入力される同位相の2つの反射信号RF(-90)、RF(-90)の伝送を抑制又は阻止する機能を有する。この反射波の伝送阻止により、反射信号がアンテナ素子120から再放射されるのを抑制又は防止することができる。
【0047】
出力伝送回路132は、第1出力伝送回路133と第2出力伝送回路134とを備える。第1出力伝送回路133の入力側の一端部は方向性フィルター伝送回路131の出力端に接続され、他端部は第1整流器140(1)に接続される。第2出力伝送回路134の入力側の一端部は方向性フィルター伝送回路の出力端に一端部が接続され、他端部は第2整流器140(2)に接続される。
【0048】
第1出力伝送回路133の位相変化量(Δθ1)と第2出力伝送回路134の位相変化量(Δθ2)との位相差Δθ1-Δθ2は、例えば45°よりも大きく且つ135°よりも小さく、好ましくは80°以上且つ100°以下であり、より好ましくは90°又はほぼ90°である。なお、以下の実施形態の例では、位相差Δθ1-Δθ2が90°又はほぼ90°の場合について説明する。
【0049】
例えば、
図4の例では、第1出力伝送回路133の位相変化量(Δθ1)は180°であり、第2出力伝送回路134の位相変化量(Δθ2)は90°であり、それらの位相差は90°である。第1出力伝送回路133に入力された高周波の受信信号RF(-90)は、位相が180°変化して高周波の受信信号RF(+90)として第1整流器140(1)側に出力され、第1整流器140(1)で反射して第1出力伝送回路133に入力された高周波の反射信号RF(-90)は、位相が180°変化して高周波の反射信号RF(-90)として方向性フィルター伝送回路131に出力される。また、第2出力伝送回路134に入力された高周波の受信信号RF(+90)は、位相が90°変化して高周波の受信信号RF(+180)として第2整流器140(2)側に出力され、第2整流器140(2)で反射して第2出力伝送回路134に入力された高周波の反射信号RF(+180)は、位相が90°変化して高周波の反射信号RF(+270)、つまりは-90°の位相を持つ信号、として方向性フィルター伝送回路131に出力される。結果的に、第1出力伝送回路133及び第2出力伝送回路134から方向性フィルター伝送回路131に出力される2つの反射信号RF(-90)、RF(-90)の位相は同位相になる。なお、整流器140での反射時に位相シフトが生じた場合であっても方向性フィルター伝送回路131は反射波を遮断することができる。
【0050】
整流器140での反射時に位相シフトがないと仮定すると、第1整流器140(1)に高周波の受信信号RF(+90)が入力されると、その一部が反射信号RF(+90)として第1出力伝送回路133側に戻される。また、第2整流器140(2)に高周波の受信信号RF(+180)が入力されると、その一部が反射信号RF(+180)として第2出力伝送回路134側に戻される。なお、第1整流器140(1)の出力端と、第2整流器140(2)の出力端とは、直列に接続されてよい。または、第1整流器140(1)の出力端と、第2整流器140(2)の出力端とは、並列に接続されてよい。
【0051】
図4のレクテナ150によれば、アンテナ素子120から入力される逆位相の2つの受信信号RF(-90)、RF(+90)を、方向性フィルター伝送回路131及び出力伝送回路132を介して、第1整流器140(1)及び第2整流器140(2)に伝送することができる。また、第1整流器140(1)及び第2整流器140(2)で反射した2つの反射信号RF(+90)、RF(+180)を、出力伝送回路132で同位相の反射信号RF(-90)、RF(-90)に変換して方向性フィルター伝送回路131に入力することにより、反射信号がアンテナ素子120側に伝送されるのを抑制又は阻止できるので、反射信号がアンテナ素子120から再放射されるのを抑制又は防止することができる。
【0052】
図5は、本実施形態に係るレクテナ150のコプレーナ構成の一例を示すブロック図である。
図5の構成例は、線路長非対称な2分配アンテナの例である。
図5の構成例では、前述の
図4の方向性フィルター伝送回路131及び出力伝送回路132を、誘電体の基板の片面に形成されたCPS(コプレーナストリップ)伝送回路及びCPW(コプレーナウェーブガイド)伝送回路を用いたコプレーナ構成にすることよりインピーダンス整合を行うとともに、回路基板厚を薄膜化できるためレクテナ150の軽量化を図ることができる。
【0053】
図5において、前述の方向性フィルター伝送回路131はCPS(コプレーナストリップ)伝送回路(以下「CPS」ともいう。)1310により構成されている。CPS1310は、例えば
図6(a)及び
図6(b)に示すように、アンテナ素子120の第1出力端に接続される第1線路1311とアンテナ素子120の第2出力端に接続される第2線路1312とが所定間隔で誘電体の基板1313の片面に形成された構成を有する。CPS1310の特性インピーダンスは、アンテナ素子120の出力側からみた出力インピーダンスと同じ100[Ω]である。
【0054】
また、CPS1310は、
図7及び
図8に示すように方向性フィルター伝送回路としての機能を有する。例えば
図7(a)に示すように逆位相の2つの信号が入力された場合、CPS1310は、
図7(b)に示すように周波数によらず反射率S11が低く、且つ、高い透過率S21を示す。一方、
図8(a)に示すように同位相の2つの信号が入力された場合、CPS1310は、
図8(b)に示すように反射率S11が大幅に増加し、且つ、透過率S21が低下する傾向を示す。このようにCPSは同じ形状の線路であっても位相条件によりフィルターの機能をする。
【0055】
図5において、第1出力伝送回路133は、位相変化量θ1が90°の第1の片側接地型のCPW(コプレーナウェーブガイド)伝送回路(以下、「片側CPW」ともいう。)1331と、位相変化量θがそれぞれ0°及び90°の第1の両側接地型のCPW伝送回路(以下、単に「CPW」ともいう。)1332及び1333とから構成されている。また、第2出力伝送回路134は、位相変化量θ2が90°の第2の片側CPW1341と、位相変化量θが0°の第2のCPW1342とから構成されている。
【0056】
CPW1332,1333,1342は、例えば
図9に示すように、主線路1335と2つの接地導体層1336,1337とが所定の間隔で基板1330の片面に形成された構成を有している。また、片側CPW1331,1341は、例えば
図10に示すように、主線路1335と1つの接地導体層1336とが所定の間隔で基板1330の片面に形成された構成を有している。
【0057】
第1の片側CPW1331の主線路1335の一端部は前述のCPS1310の第1線路1311の出力端に接続され、主線路1335の他端部はCPW1333の入力端に接続されている。また、第2の片側CPW1332の主線路1335の一端部はCPS1310の第2線路1312の出力端に接続され、主線路1335の他端部はCPW1342の入力端に接続されている。第1の片側CPW1331及び第2の片側CPW1332はそれぞれ、CPS1310と同じ特性インピーダンス100[Ω]を有し、CPS1310と、後段の特性インピーダンスが50[Ω]CPW1333、1342のとの間のインピーダンスを整合させるλ/4マッチング回路の機能を有する。
【0058】
CPW1333は、位相変化量θは90°であり、特性インピーダンスが50[Ω]である。CPW1333の一端部は、第1の片側CPW1331の主線路1335に接続され、他端部はCPW1332の主線路1335に接続されている。CPW1332は、位相変化量θは0°であり、特性インピーダンスが50[Ω]である。CPW1332の一端部はCPW1333に接続され、他端部は、入力インピーダンスが50[Ω]の第1整流器140(1)に接続されている。
【0059】
CPW1342は、位相変化量θは0°であり、特性インピーダンスが50[Ω]である。CPW1342の一端部は、第2の片側CPW1341の主線路1335に接続され、他端部は、入力インピーダンスが50[Ω]の第2整流器140(2)に接続されている。
【0060】
CPW1333、1332の位相変化量とCPW1342の位相変化量との間の位相差は90°である。
【0061】
図5のレクテナ150において、第1整流器140(1)及び第2整流器140(2)で反射された2つの反射信号R1,R2は、第1出力伝送回路133(片側CPW1331、CPW1332、1333)及び第2出力伝送回路134(片側CPW1341、CPW1342)を介して、同位相の高周波の反射信号として1310に到達する。
【0062】
図11は、本実施形態に係るレクテナ150におけるコプレーナ型の整流器140の実装の一例を示す平面図である。
図11において、整流器140(第1整流器140(1)及び第2整流器140(2))は、前述のアンテナ接続回路130と同様に誘電体の基板の片面に形成されている。整流器140は、両側接地型のCPW伝送回路1400と、CPW伝送回路1400の主線路1401と両側の接地導体層1402、1403との間に電波の波長λの1/4の間隔で設けられたダイオード及び平滑キャパシタとが接続された構成を有している。
【0063】
図5~
図11に示したレクテナ150によれば、アンテナ接続回路130及び整流器140(1),140(2)を基板の片面に形成したコプレーナ構成を有し、基板の片面の1レイヤのみで回路を構成することができ、レクテナ150の軽量化を図ることができる。また、基板の厚さに依存せずにアンテナ接続回路130及び整流器140(1),140(2)を構成することができ、回路基板として、可撓性を有する薄膜基板(フレキブル基板)を用いることができるので、レクテナ150の軽量化を図ることができるとともに、レクテナ150の配置構成の自由度が高くなる。
【0064】
図12(a)及び(b)はそれぞれ、比較参考例に係るマイクロストリップ伝送回路900の一例を示す平面図及び側面図である。このマイクロストリップ伝送回路900では、基板901のおもて面に主線路902が形成され、裏面に接地導体層903が形成されている。マイクロストリップ伝送回路900は、受信対象の電波の周波数がマイクロ波帯になると、基板901の厚さが数10[μm]になり、加工が難しく、高コストになる。また、主線路902の線路幅も数10[μm]になり、主線路902への電子素子のチップの実装が難しい。
【0065】
図13は、本実施形態に係るレクテナ150の実装の一例を示す平面図である。
図13は、前述の
図12のコプレーナ構成のレクテナ150の実装例である。
図13において。誘電体の共通の薄膜基板1500の片面(上面)の図中上側領域は、表面が露出した露出面1501になっている。薄膜基板1500の片面(上面)の図中下側のグレー領域には、接地導体層1502が形成されている。
【0066】
図13において、薄膜基板1500の片面(上面)の露出面1501には、アンテナ素子120としての折り返しダイポールアンテナ(特性インピーダンス:100[Ω])と、方向性フィルター伝送回路としてのCPS1310(特性インピーダンス:100[Ω])が形成されている。CPS1310の第1線路1311及び第2線路1312にはそれぞれ、特性インピーダンスが100[Ω]のλ/4マッチング回路として機能する第1の片側CPW1331の主線路の入力端及び第2の片側CPW1341の主線路の入力端が接続されている。第1の片側CPW1331及び第2の片側CPW1341はそれぞれ、接地導体層1502の上端縁に沿って、接地導体層1502の上端縁との間に所定の間隙を有するように形成されている。
【0067】
第1の片側CPW1331の主線路の出力端には、第1のCPW1332,1333(特性インピーダンス:50[Ω])の主線路が接続され、第2の片側CPW1341の主線路の出力端には、第2のCPW1342(特性インピーダンス:50[Ω])の主線路が接続されている。CPW1332,1333の主線路及びCPW1342の主線路はそれぞれ、薄膜基板1500の露出面上に、接地導体層1502との間に所定の間隙を有するように形成されている。CPW1332,1333とCPW1342の回路は、受信対象の電波に対して位相変化量の差が90°になるように線路長が非対称の2分配回路になっている。
【0068】
第1のCPW1332,1333の出力端に第1整流器141(1)が接続され、第2のCPW1342の出力端に第2整流器141(2)が接続されている。
【0069】
図13のレクテナ150の構成例によれば、アンテナ接続回路130及び整流器140(1),140(2)だけでなくアンテナ素子120も薄膜基板1500の片面に形成したコプレーナ構成を有し、薄膜基板1500の片面の1レイヤのみで回路を構成することができるので、レクテナ150の軽量化を更に図ることができる。また、薄膜基板1500の厚さに依存せずに、アンテナ素子120、アンテナ接続回路130及び整流器140(1),140(2)を構成することができ、可撓性を有する薄膜基板(フレキブル基板)を用いているので、レクテナ150の軽量化を図ることができるとともに、レクテナ150の配置構成の自由度が高くなる。
【0070】
図14(a)及び(b)はそれぞれ、本実施形態に係るレクテナ150からの水平偏波の電波の再放射特性を示すコンピュータシミュレーションの結果の一例を示す特性図である。
図15(a)及び(b)はそれぞれ、本実施形態に係るレクテナ150からの垂直偏波の電波の再放射特性を示すコンピュータシミュレーションの結果の一例を示す特性図である。
図16は
図14及び
図15のコンピュータシミュレーションにおける座標x,y,z、方位角φ、天頂角θ及び偏波面H,Vの説明図である。
【0071】
図14及び
図15において、実施例の曲線は、前述の
図13のレクテナ150から再放射される電波の利得を示す再放射特性である。一方、比較例の曲線は、前述の
図13のレクテナ150における第1のCPW1332,1333の部分を第2のCPW1342と同様に形成した構成のレクテナから再放射される電波の利得を示す再放射特性である。コンピュータシミュレーションで用いた解析周波数は5.8GHzである。
【0072】
図14及び
図15に示すように、実施例のレクテナ150の場合、水平偏波及び垂直偏波のいずれの電波についてもレクテナ150からの再放射を、-10dB以上の利得差で比較例よりも抑制できることがわかる。
【0073】
以上、本実施形態によれば、レクテナ150から干渉の原因となる電波が再放射されるのを抑制又は防止することができる。
【0074】
また、本実施形態によれば、レクテナ150の軽量化を図ることができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、ドローン10に要求される要求電力を満たしつつレクテナ150の整流器140(1),140(2)に要求される耐圧特性を低く抑えることができる。
【0076】
なお、上述した実施形態で示した受電アンテナ装置100を用いる無線電力伝送システムは、ドローン10に設置されるものに限られず、HAPS、気球、飛行船、飛行型ラジコン玩具など、電力を消費する機器を搭載した他の上空移動体(飛行体)にも適用することができる。
【0077】
なお、本明細書で説明された処理工程並びにドローンの本体、送電装置、HAPS等の通信中継装置の中継通信局、フィーダ局、ゲートウェイ局、管理装置、監視装置、遠隔制御装置、サーバ、端末装置(ユーザ装置、移動局、通信端末)、基地局及び基地局装置の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0078】
ハードウェア実装については、実体(例えば、ドローンの本体、送電装置、無線中継局、フィーダ局、ゲートウェイ局、基地局、基地局装置、無線中継局装置、端末装置(ユーザ装置、移動局、通信端末)、管理装置、監視装置、遠隔制御装置、サーバ、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0079】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、前記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0080】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0081】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0082】
10 :ドローン
11 :本体
12 :ローター
13 :ローター駆動部
14a :制御用アンテナ
15 :制御部
16 :電源部
16a :バッテリー
20 :送電装置
30 :送電電波
100 :受電アンテナ装置
101 :枠体
110 :アンテナ素子部
120 :アンテナ素子
130 :アンテナ接続回路
131 :方向性フィルター伝送回路
132 :出力伝送回路
133 :第1出力伝送回路
134 :第2出力伝送回路
140 :整流器
140(1) :第1整流器
140(2) :第2整流器
150 :レクテナ
200 :送電アンテナ
1311 :第1線路
1312 :第2線路
1313 :基板
1330 :基板
1331 :第1の片側CPW
1332 :CPW
1333 :CPW
1335 :主線路
1336 :接地導体層
1337 :接地導体層
1341 :第2の片側CPW
1400 :CPW伝送回路
1401 :主線路
1402 :接地導体層
1403 :接地導体層
1500 :薄膜基板
1501 :露出面
1502 :接地導体層