(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】二波長増強型ラマン内視鏡的非侵襲的病理の検出装置及び検出方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20221227BHJP
A61B 1/045 20060101ALI20221227BHJP
G01N 21/65 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
A61B1/00 510
A61B1/00 735
A61B1/00 732
A61B1/045 614
A61B1/00 731
A61B1/00 715
G01N21/65
(21)【出願番号】P 2021082160
(22)【出願日】2021-05-14
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】202110166056.4
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】502192546
【氏名又は名称】清華大学
【氏名又は名称原語表記】Tsinghua University
【住所又は居所原語表記】Tsinghua University,Haidian District,Beijing 100084,P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】張興
(72)【発明者】
【氏名】樊傲然
(72)【発明者】
【氏名】張暁宇
(72)【発明者】
【氏名】馬維剛
(72)【発明者】
【氏名】王海東
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109259718(CN,A)
【文献】特開2016-137217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
G01N 21/65
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二波長増強型ラマン内視鏡的非侵襲的病理の検出装置であって、
白色光を発光する白色光光源、第1の波長のレーザーを発光する第1のレーザー光源、及び第2の波長のレーザーを発光する第2のレーザー光源を含む光源モジュールと、
イメージングモジュールであって、内視鏡レンズ、光ファイバー束、画像センサー、グレーティング及び信号収集システムを含み、
前記内視鏡レンズは対物レンズ、信号増強装置及び複数の伸縮可能なサポートフィートを含み、前記対物レンズは前記光源モジュールから発光された光を測定対象サンプルの表面にフォーカスし、且つ反射光又は散乱光信号を収集するために使用され、前記信号増強装置は、前記測定対象サンプルのラマンスペクトル信号を増強するために使用され、伸縮可能なサポートフィートは前記内視鏡レンズのオートフォーカス及びズームを実現するために使用され、
前記光ファイバー束は光源光ファイバー束と収集光ファイバー束を含み、前記光源光ファイバー束の一端は、第1の切り替え可能なインターフェースを介してそれぞれ前記白色光光源、前記第1のレーザー光源及び前記第2のレーザー光源に接続され、前記第1の切り替え可能なインターフェースは、前記白色光光源、前記第1のレーザー光源及び前記第2のレーザー光源と、前記光源光ファイバー束との接続と切替をそれぞれ実現可能とし、他端は前記内視鏡レンズの対物レンズに接続され、前記収集光ファイバー束の一端は前記内視鏡レンズの対物レンズの部分に接続され、他端は第2の切り替え可能なインターフェースを介してそれぞれ前記画像センサー及び前記グレーティングに接続され、前記第2の切り替え可能なインターフェースは、前記画像センサー及び前記グレーティングと、前記収集光ファイバー束との接続と切替をそれぞれ実現可能とし、
前記第1の切り替え可能なインターフェースを切り替えて前記光源光ファイバー束を前記白色光光源に接続し、前記第2の切り替え可能なインターフェースを切り替えて前記収集光ファイバー束を前記画像センサーに接続すると、前記画像センサーは、反射光信号を受信して、前記測定対象サンプルの表面の光学顕微鏡画像を取得することができ、
前記グレーティングの前に複合フィルターが配置され、
前記第1の切り替え可能なインターフェースを切り替えて前記光源光ファイバーを前記第1のレーザー光源又は前記第2のレーザー光源に接続し、前記第2の切り替え可能なインターフェースを切り替えて前記収集光ファイバー束を前記グレーティングに接続すると
、前記グレーティングは散乱光信号を受信することができ、前記グレーティングの後に、前記測定対象サンプルのラマンスペクトル信号を受信するための前記信号収集システムが接続されるイメージングモジュールと、
検出して得られたラマンスペクトル信号に対して分析処理を行い、ラマンスペクトル信号における蛍光の影響を排除するためのスペクトル分析モジュールと、
蛍光を排除した後のラマンスペクトル信号を様々な病理条件でのスペクトル特徴基準と比較し、比較結果に従って前記測定対象サンプルを判断するための人工知能病理学的分析モジュールと、を備える、ことを特徴とする二波長増強型ラマン内視鏡的非侵襲的病理の検出装置。
【請求項2】
前記複合フィルターは、前記第1のレーザー光源によって励起されたレイリー散乱を排除するための第1のフィルターと前記第2のレーザー光源によって励起されたレイリー散乱を排除するための第2のフィルターを含み、前記複合フィルターは、カットオフフィルターとノッチフィルターを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記スペクトル分析モジュールは具体的に、検出されたラマンスペクトルに対して標準化処理を行い、標準化処理された前記第1のレーザー光源と前記第2のレーザー光源によって励起されたスペクトル信号の差を計算し、蛍光の影響を排除するラマンスペクトル信号を取得するために使用される、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記光ファイバー束は挿入管で被覆されており、前記内視鏡レンズの前に内視鏡レンズの操舵及び移動操作を実現するための湾曲部が含まれる、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記複数の伸縮可能なサポートフィート及び前記信号増強装置はいずれも伸縮可能な部材であり、伸縮の程度が調整可能であり、伸縮原理は電磁石による電源オン/オフ、形状記憶合金の電気加熱温度変化を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記信号増強装置が表面増強方法を使用する場合、前記信号増強装置は水供給ノズルであり、前記信号増強装置を開き、水供給ノズルからナノ粒子をサンプルの表面に噴出し、これにより表面増強ラマン散乱測定を実現し、前記ナノ粒子の材料は、金ナノ粒子と銀ナノ粒子を含み、前記ナノ粒子のサイズは15nmよりも大きくし、
前記信号増強装置が先端増強方法を使用する場合、前記信号増強装置は増強型プローブ先端であり、増強型プローブ先端の表面に、粗さが100ナノメートル未満の金属がメッキされており、前記信号増強装置を開く場合、増強型プローブが伸長して前記測定対象サンプルの表面に近づき、先端増強ラマン散乱測定を実現し、先端の表面のコーティング金属は、金又は銀を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記標準化処理は、スペクトル内の最強の信号位置の選択の正規化、励起レーザーのパワー密度に応じた信号強度の修正、及び蛍光エンベロープの最強位置の選択の正規化を含む、ことを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項8】
前記スペクトル特徴基準は、増加又は減少したラマン特徴ピーク、ラマン特徴ピークのピーク強度、ハーフハイト幅、ピーク面積、複数組の特徴ピークのピーク強度比、ピーク面積比、ピーク位置情報の主成分分析を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラマン測定技術分野に関し、特に二波長増強型ラマン内視鏡的非侵襲的病理の検出装置及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、中国国民の生命と健康を深刻に脅かす主要な公衆衛生問題の一つであり、近年、私国では癌の発生率と死亡率が上昇し続けているが、癌の生存率は先進国に比べてはるかに低いことである。上記の状況の主な理由の1つは、早期癌の診断率が低いことである。現在、胃癌、食道癌、鼻咽頭癌などの癌について、最も重要な診断法は内視鏡診断と体内から取り出された病変組織の病理学的生検であるが、それ自体に多くの制限があり、早期癌診断上での制限はより明らかである。内視鏡検出システムは、主に従来の白色光反射ファイバー内視鏡であり、医師は、組織の形態を裸眼で観察して病気があるかどうかを判断し、このような判断は医師の個人的な経験に強く依存する。早期癌の場合、その病変部の形態は正常組織とあまり変わらず、肉眼での識別が難しく、診断ミスや誤診の原因となりやすい。病理学的生検は侵襲的な診断であり、必要に応じて、確認のために複数回サンプリングする必要があり、且つ生検の操作プロセスは複雑であり、時間がかかり、診断結果をリアルタイムで報告することができないため、患者の痛みが増し、一定のリスクが生じる。
【0003】
ラマンスペクトルは、物質の「指紋スペクトル」と呼ばれ、分子レベルで様々な物質を識別可能であり、ラマンスペクトルから物質の分子構造、含有量、官能基などに関する情報を取得することができる。ラマンスペクトルを使用して細胞及び分子レベルで疾患を診断することは、生物医学分野のホットトピックであり、ラマンスペクトルは、複雑なサンプリング及びサンプル準備プロセスを必要せず、生物組織に含まれた大量の水は、スペクトルへの干渉がほとんどなく、生物高分子の変化に非常に敏感であり、その後のスペクトル分析法によりリアルタイムで診断結果を得ることができる。既存の研究では、生物学的サンプルのラマン特徴ピークのピーク位置とピーク強度などの情報を分析することにより、正常細胞と癌細胞を比較して区別することができることが示され、さらに、対応するラマンピークのピーク対ピーク強度比の変化を観察することにより癌を段階的に診断することができる。ラマンスペクトルと内視鏡技術を組み合わせることで、癌変があるかどうか、癌変位置を同時に決定することができ、ラマンスキャン技術によって癌変領域をさらに決定することができ、さらにスペクトル生検技術は、将来、病理学的生検に取って代わり、内視鏡のサイズを縮小することができる。内視鏡と組み合わせたラマン病理学的分析法は、非破壊的、その場、リアルタイム、高感度の新しい癌診断法であり、高い臨床応用価値がある。
【0004】
従来の研究では、ラマンスペクトルと内視鏡の組み合わせに関する既存の関連研究は光ファイバーラマンと内視鏡の組み合わせによるその場リアルタイムラマンスペクトル測定を実現することであり、ラマンスペクトル信号に対する体内環境の複雑な影響が考慮されておらず、信頼性が高く高精度のラマン散乱信号測定方法が欠如し、且つラマンスペクトル信号に基づく実行可能な病理学的分析方法が欠如し、非侵襲的な病理学的検出を確実に実現することができない。ラマン内視鏡をさらに改善した研究があるが、生物組織の実際の測定では、非常に顕著な蛍光信号があり、これは、ラマンスペクトルの測定信号対雑音比及びピーク位置、ピーク強度フィッティング精度に深刻な影響を与える。それと同時に、サンプル自体のラマン信号強度が弱く、積分時間を長くすると測定信号の強度をある程度上げることができるが、ラマン積分時間をやみくもに増やして検出時間が長くなると、間違いなく患者の苦痛が増す。ラマン測定分野では、表面増強ラマン方法と先端増強ラマン方法の両方で測定対象サンプルのラマン信号強度を効果的に高めることができるが、この技術はラマン内視鏡測定の分野には適用されない。
【0005】
他方で、既存の研究では、生体組織でのフォーカスの問題は考慮されておらず、フォーカス効果はラマン測定の精度に直接影響する。従来の内視鏡は、補助フォーカスリングを用いてフォーカスを助ける場合が多いが、フォーカスリングを適用すると、内視鏡レンズの直径が大きくなり、患者の使用中の不快感が増やす一方で、動作中にフォーカスリングが落下する可能性があり、使用のリスクが高まるため、一体化されたオートフォーカス装置を設計する必要がある。同時に、一部の方法で設計された内視鏡構造は、従来の臨床内視鏡とカップリングすることができず、ひいては内視鏡のサイズを大きくする懸念があり、実際の使用では患者の痛みを増大させる可能性があり、且つ効果的に使用可能なラマンスペクトルを取得することは困難であり、病理学的診断を達成しにくい。なお、三次元スキャンの病理学的分析を実現するラマン方法はまだ提案されておらず、病変の範囲と影響の深さを決定することは困難である。
【0006】
以上のように、従来のラマン内視鏡測定方法では、まだ測定によって蛍光の影響を排除する、より良い信号強度を有するラマンスペクトルを取得することができない。同時に、従来のラマン内視鏡装置は、レンズの一体化されたオートフォーカスとズームの三次元スキャンラマン測定をまだ実現することができない。なお、高品質のラマンスペクトルを取得した後、組織の病理学的検出を真に実現するための信頼できる病理学的分析基準抽出法およびスペクトル情報比較法はまだ不足している。従って、増強型ラマンスペクトル信号を取得し、蛍光の影響を排除し、オートフォーカス及びズーム機能を有することができるラマン内視鏡的非侵襲的病理の検出方法及び対応する装置を開発することが緊急に必要とされる。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、関連技術における技術的問題の1つを少なくともある程度解決することを目的としている。
【0008】
このため、本発明は、増強型ラマンスペクトル信号を取得し、蛍光の影響を排除し、オートフォーカス及びズーム機能を有するラマン内視鏡測定を実現することができ、医学及び生物学などの分野でのその場測定のニーズを満たす二波長増強型ラマン内視鏡的非侵襲的病理の検出装置を提案することを一つの目的とする。
【0009】
本発明は、二波長増強型ラマン内視鏡的非侵襲的病理の検出方法を提案することを他の目的とする。
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様の実施例は、
白色光を発光する白色光光源、第1の波長のレーザーを発光する第1のレーザー光源、及び第2の波長のレーザーを発光する第2のレーザー光源含む光源モジュールと、
イメージングモジュールであって、内視鏡レンズ、光ファイバー束、画像センサー、グレーティング及び信号収集システムを含み、
前記内視鏡レンズは対物レンズ、信号増強装置及び複数の伸縮可能なサポートフィートを含み、前記対物レンズは前記光源モジュールから発光された光を測定対象サンプルの表面にフォーカスし、且つ反射光又は散乱光信号を収集するために使用され、前記信号増強装置は、前記測定対象サンプルのラマンスペクトル信号を増強するために使用され、伸縮可能なサポートフィートは前記内視鏡レンズのオートフォーカス及びズームを実現するために使用され、
前記光ファイバー束は光源光ファイバー束と収集光ファイバー束を含み、前記光源光ファイバー束の一端は切り替え可能なインターフェースであり、それぞれ前記白色光光源、前記第1のレーザー光源及び前記第2のレーザー光源に接続され、他端は前記内視鏡レンズの対物レンズに接続され、前記収集光ファイバー束の一端は前記内視鏡レンズの対物レンズの部分に接続され、他端は切り替え可能なインターフェースであり、それぞれ前記画像センサー及び前記グレーティングに接続され、
前記画像センサーは、反射光信号を受信して、前記測定対象サンプルの表面の光学顕微鏡画像を取得するために使用され、
前記グレーティングの前に複合フィルターが配置され、前記グレーティングは散乱光信号を受信するために使用され、前記グレーティングの後に、前記測定対象サンプルのラマンスペクトル信号を受信するための前記信号収集システムが接続されるイメージングモジュールと、
検出されたラマンスペクトル信号に対して分析処理を行い、ラマンスペクトル信号の蛍光の影響を排除するためのスペクトル分析モジュールと、
蛍光を排除した後のラマンスペクトル信号を様々な病理条件でのスペクトル特徴基準と比較し、比較結果に従って前記測定対象サンプルを判断するための人工知能病理学的分析モジュールと、を備える二波長増強型ラマン内視鏡的非侵襲的病理の検出装置を提案する。
【0011】
また、本発明の上記実施例による二波長増強型ラマン内視鏡的非侵襲的病理の検出装置は、
さらに、発明の一実施例において、前記複合フィルターは、前記第1のレーザー光源によって励起されたレイリー散乱を排除するための第1のフィルターと前記第2のレーザー光源によって励起されたレイリー散乱を排除するための第2のフィルターを含み、前記複合フィルターは、カットオフフィルターとノッチフィルターを含むが、これらに制限されないという追加の技術的特徴をさらに有することができる。
【0012】
さらに、発明の一実施例において、前記スペクトル分析モジュールは具体的に、検出されたラマンスペクトルに対して標準化処理を行い、標準化処理された前記第1のレーザー光源と前記第2のレーザー光源によって励起されたスペクトル信号の差を計算し、蛍光の影響を排除するラマンスペクトル信号を取得するために使用される。
【0013】
さらに、発明の一実施例において、前記光ファイバー束は挿入管で被覆されており、前記内視鏡レンズの前に内視鏡レンズの操舵及び移動操作を実現するための湾曲部が含まれる。
【0014】
さらに、発明の一実施例において、前記複数の伸縮可能なサポートフィート及び前記信号増強装置はいずれも伸縮可能な部材であり、伸縮の程度が調整可能であり、伸縮原理は電磁石による電源オン/オフ、形状記憶合金の電気加熱温度変化を含むが、これらに制限されない。
【0015】
さらに、発明の一実施例において、前記信号増強装置が表面増強方法を使用する場合、前記信号増強装置は水供給ノズルであり、前記信号増強装置を開くとき、水供給ノズルからナノ粒子をサンプルの表面に噴出し、これにより表面増強ラマン散乱測定を実現し、前記ナノ粒子の材料は、金ナノ粒子と銀ナノ粒子を含むが、これらに限定されず、前記ナノ粒子のサイズは15nmよりも大きくする。
【0016】
前記信号増強装置が先端増強方法を使用する場合、前記信号増強装置は増強型プローブ先端であり、増強型プローブ先端の表面に、粗さが100ナノメートル未満の金属がメッキされており、前記信号増強装置を開く場合、増強型プローブが伸長して前記測定対象サンプルの表面に近づき、先端増強ラマン散乱測定を実現し、先端の表面のコーティング金属は、金又は銀を含むが、これらに限定されない。
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明の他の態様は、
光ファイバー束に接続された内視鏡レンズを測定対象位置に挿入し、前記内視鏡レンズ上のサポートフィートが完全に伸長して前記測定対象サンプルの表面に当接して、オートフォーカスを実現するS1と、
光源光ファイバー束を介して白色光を内視鏡レンズに伝導して、測定対象サンプルの表面にフォーカスし、収集光ファイバー束を介して反射光を画像センサーに導入して、サンプルの表面光学顕微鏡画像を取得するS2と、
信号増強装置を開き、それぞれ第1の波長のレーザーと第2の波長のレーザーを光源光ファイバー束を介して内視鏡レンズに伝導し、測定対象サンプルの表面にフォーカスし、収集光ファイバー束を介して散乱光をグレーティングに導入して分光し、さらに信号収集システムに接続し、前記第1の波長のレーザーによって励起された測定対象サンプルの第1の増強ラマンスペクトル信号と第1の蛍光スペクトル信号、及び第2の波長のレーザーによって励起されたサンプルの第2の増強ラマンスペクトル信号と第2の蛍光スペクトル信号を取得し、2組の表面増強スペクトル信号に対して標準化を行った後に差を計算し、蛍光の影響がないラマンスペクトル信号を取得するS3と、
蛍光の影響がないラマンスペクトル信号を様々な病理条件のスペクトル特徴基準と比較し、比較結果に従って前記測定対象サンプルは病変があるかどうか、病変種類及び病変の程度を判断するS4と、を含む二波長増強型ラマン内視鏡的非侵襲的病理の検出方法を提案する。
【0018】
また、本発明の上記実施例による二波長増強型ラマン内視鏡的非侵襲的病理の検出方法は、以下の追加の技術的特徴をさらに有してもよい。
【0019】
さらに、発明の一実施例において、
サポートフィートの伸長長さを短くし、内視鏡レンズをオートフォーカス位置よりもサンプルの表面に近づき、内視鏡レンズを通過する第1の波長のレーザーと第2の波長のレーザーを測定対象サンプルの内部にフォーカスし、ステップS3及びステップS4を繰り返して、サンプルの深さ方向に沿うスキャン検出を行い、前記サンプル深さ方向はサンプルの表面に垂直であるS5と、
湾曲部を制御することによって内視鏡レンズを移動させ、サンプル平面上の光点の位置を変え、ステップS3及びステップS4を繰り返して、サンプル平面内のスキャン検出を行い、前記サンプル平面がサンプルの表面に平行であるS6と、をさらに含む。
【0020】
さらに、発明の一実施例において、蛍光強度の標準化処理は、スペクトル内の最強の信号位置の選択の正規化、励起レーザーのパワー密度に応じた信号強度の修正及び蛍光エンベロープの最強位置の選択の正規化を含むが、これらに限定されない。
【0021】
さらに、発明の一実施例において、蛍光を排除した後のラマンスペクトル信号を様々な病理条件のスペクトル特徴基準と比較し、前記スペクトル特徴基準は、増加又は減少したラマン特徴ピークに基づく病理学的分析、ラマン特徴ピークのピーク強度、ハーフハイト幅、ピーク面積に基づく病理学的分析、複数組の特徴ピークの対ピーク強度比、ピーク面積比に基づく病理学的分析、複数組の特徴ピークの対ピーク強度比及びピーク位置情報の主成分分析に基づく病理学的分析を含むが、これらに限定されない。
【0022】
本発明の実施例による二波長増強型ラマン内視鏡的非侵襲的病理の検出装置及び検出方法は、具体的に、以下の有益な効果を有する。
1、二波長によってスペクトル信号を測定してその差を計算することにより、ラマン内視鏡測定によって得られたスペクトル信号における蛍光干渉を効果的に排除することができ、生物材料体内のその場検出に極めて大きな応用価値がある。
2、信号増強装置を使用し、表面増強又は先端増強方法によって、ラマンスペクトル信号強度を大幅に向上させ、特徴ピークの分解能を高めることができ、ラマン情報をより速く、より効果的に取得して、組織を病理学的検出に使用するようにする。
3、本発明によるオートフォーカスレンズ設計を使用することによって、内視鏡レンズのサイズを増加しない前提で、安定した内視鏡オートフォーカス及びズーム測定を実現し、信号の安定性を向上させ、三次元スキャン病理学的検出を実現することができる。
4、人工知能病理学的分析方法を使用して、様々な病理条件のスペクトル特徴基準を取得することができ、さらに正確で信頼性の高い非侵襲的組織病理学的診断を実現することができる。
【0023】
本発明の追加の態様及び利点は、以下の説明で部分的に与えられ、他の部分は以下の説明から明らかになるか、又は本発明の実施を通じて理解される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の上記及び/又は追加の態様及び利点は、添付の図面と併せた実施形態の以下の説明から明らかになり、理解しやすくなる。
【
図1】本発明の一実施例による二波長増強型ラマン内視鏡的非侵襲的病理の検出装置の構造模式図である。
【
図2】本発明の一実施例による内視鏡レンズの断面設計模式図であり、(a)は信号増強装置と伸縮可能なサポートフィートの両方が収縮した模式図であり、(b)は伸縮可能なサポートフィートが伸長した模式図であり、(c)は信号増強装置が伸長した模式図である。
【
図3】本発明の一実施例による対物レンズズーム方法の模式図である。
【
図4】本発明の一実施例による複合フィルターの切り替え方式の模式図であり、(a)は対応する波長λ
1を使用するフィルターであり、(b)は対応する波長λ
2を使用するフィルターである。
【
図5】本発明の一実施例による内視鏡レンズの構造設計模式図であり、(a)従来の商業用内視鏡と組み合わせて使用可能な構造設計であり、(b)小さいサイズの内視鏡の構造設計である。
【
図6】本発明の一実施例による二波長増強型ラマン内視鏡的非侵襲的病理の検出方法のフローチャートである。
【
図7】本発明の一実施例による信号増強装置を使用し、信号増強装置を使用せずに測定して得られたアヒルの食道の表面のラマンスペクトル信号の比較模式図である。
【
図8(a)-(b)】本発明の一実施例による二波長で蛍光の影響を排除する方法模式図であり、(a)は2種の波長のレーザーによって直接励起して得られたスペクトル模式図であり、(b)は標準化及び並進処理後の信号模式図であり、(c)は蛍光の影響を排除した後のラマンスペクトル模式図である。
【
図8(c)】本発明の一実施例による二波長で蛍光の影響を排除する方法模式図であり、(a)は2種の波長のレーザーによって直接励起して得られたスペクトル模式図であり、(b)は標準化及び並進処理後の信号模式図であり、(c)は蛍光の影響を排除した後のラマンスペクトル模式図である。
【
図9】本発明の一実施例による人工知能病理学的分析方法の原理模式図であり、(a)は早期癌組織と正常組織のラマンスペクトル信号の比較であり、(b)早期癌組織と正常組織のスペクトル特徴基準比較である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施例を詳細に説明し、前記実施例の例を添付の図面に示し、初めから最後まで同じまたは類似の符号は同じまたは類似の素子又は同じまたは類似の機能を有する素子を示す。以下、添付の図面を参照して説明する実施例は例示的なものであり、本発明を解釈するためのことを意図し、本発明を限定するものとして理解されるべきではない。
【0026】
研究の結果、生物組織の実際の測定には、非常に顕著な蛍光信号が存在し、ラマンスペクトルの測定信号対雑音比とピーク位置、及びピーク強度フィッティング精度に深刻な影響を及ぼし、且つその信号が弱いため、高品質のスペクトル情報を取得して、さらに体内のその場で非破壊的病理学的検出を実現するように、効果的な信号増強方法を必要とすると発見する。しかしながら、従来のラマン内視鏡測定方法は、効果的な病理診断を実現するように、測定によって蛍光の影響を排除する、より良い信号強度を有するラマンスペクトルを取得することができない。同時に、従来のラマン内視鏡装置は、レンズの一体化されたオートフォーカスをまだ実現することができない。なお、従来の研究には信頼できるラマンスペクトル病理診断基準とデータ処理方法が不足している。従って、増強型ラマンスペクトル信号を取得でき、蛍光の影響を排除し、オートフォーカス機能を備えるラマン内視鏡病理の検出方法及び対応する装置を緊急に開発する必要とする。
【0027】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施例による二波長増強型ラマン内視鏡的非侵襲的病理の検出装置及び検出方法を説明する。
【0028】
まず、添付の図面を参照して本発明の実施例による二波長増強型ラマン内視鏡的非侵襲的病理の検出装置を説明する。
【0029】
図1は本発明の一実施例による二波長増強型ラマン内視鏡的非侵襲的病理の検出装置の構造模式図である。
【0030】
図1に示すように、該二波長増強型ラマン内視鏡的非侵襲的病理の検出装置は、光源モジュール、イメージングモジュール、スペクトル分析モジュール及び人工知能病理学的分析モジュールを備える。
【0031】
光源モジュールは、白色光を発光する白色光光源、第1の波長のレーザーλ1を発光する第1のレーザー光源1、第2の波長のレーザーλ2を発光する第2のレーザー光源2を含み、波長λ1が波長λ2と等しくない。
【0032】
イメージングモジュールは、内視鏡レンズ300、光ファイバー束(光源光ファイバー束201及び収集光ファイバー束202)、湾曲部203、画像センサー400、グレーティング600及び信号収集システム601を含む。
【0033】
図2に示すように、内視鏡レンズの構造を示し、内視鏡レンズは、対物レンズ301、信号増強装置302及び複数の伸縮可能なサポートフィート303を含み、対物レンズ301は光源モジュールから発光された光を測定対象サンプルの表面にフォーカスし、且つ反射光又は散乱光信号を収集するために使用される。
【0034】
信号増強装置302は、測定対象サンプルのラマンスペクトル信号を増強するために使用される。伸縮可能なサポートフィート303は、内視鏡レンズのオートフォーカス及びズームを実現するために使用され、具体的に、3つの伸縮可能なサポートフィートが同時に完全に伸長する場合に構成される平面は、内視鏡の対物レンズの焦点面であり、このため、3つの伸縮可能なサポートフィートが完全に伸長して測定対象サンプルに当接された後に、サンプル平面が対物レンズの焦点面と重なり、内視鏡レンズはオートフォーカスを実現することができ、オートフォーカス測定を完了した後、伸縮可能なサポートフィートの伸長長さを短くすと、この場合、内視鏡レンズはオートフォーカス位置よりもサンプルの表面に近づき、対物レンズ焦点がサンプルの内部に入り、伸縮可能なサポートフィートの伸長長さを変えると、ズームを実現することができ、さらに、サンプルの深さ方向に沿うスキャン検出を実現することができ、ズームプロセスを
図3に示す。
【0035】
具体的に、内視鏡レンズにおける信号増強装置302は、表面増強方法を実現する装置及び先端増強方法を実現する装置を含むが、これらに限定されず、表面増強方法を使用する場合、信号増強装置は水供給ノズルであり、信号増強装置を開くと、水供給ノズルからナノ粒子をサンプルの表面に噴出し、これにより表面増強ラマン散乱測定を実現し、ナノ粒子材料は、金ナノ粒子と銀ナノ粒子を含むが、これらに限定されず、ナノ粒子のサイズが15nmよりも大きくし、先端増強方法を使用する場合、信号増強装置は増強型プローブ先端であり、増強型プローブ先端の表面に粗さが100ナノメートル未満の金属がメッキされており、プローブをサンプルの表面に近づくことによって、先端増強ラマン散乱測定を実現することができ、先端表面のコーティング金属は金又は銀を含むが、これらに限定されない。
【0036】
内視鏡レンズにおける信号増強装置302と3つの伸縮可能なサポートフィート303の両方は伸縮可能な部材であり、伸縮原理は、電磁石による電源オン/オフ、形状記憶合金の電気加熱温度変化などを含むが、これらに限定されず、具体的に、電磁石による電源オン/オフ方法を選択する場合、電磁石はバネ、及び伸縮可能な部材に一体的に接続され、伸縮可能な部材の電磁石に近い側は磁化可能な金属であり、予め設定された最大電流Imaxを電磁石に印加すると、電磁石が磁化可能な金属を吸引し、バネが最短の長さに圧縮されると、伸縮可能な部材が最短の長さに圧縮され、内視鏡レンズの内部に完全に入り、オートフォーカス測定の場合、電源が完全に遮断されると、電磁石は磁力を失い、バネは元の形状に戻り、伸縮可能な部材は内視鏡レンズの外部に完全に伸長し、サンプル平面は対物レンズの焦点面と重なり、オートフォーカスを実現し、ズーム測定を必要とする場合、予め設定された最大電流Imaxより小さい電流Iを印加し、電磁石は磁化可能な金属を吸引し、バネが一定の程度で圧縮されるが、電流が予め設定された最大電流より小さいため、伸縮可能な部材はまだ内視鏡レンズの外部に伸長するが、伸長部分の長さがオートフォーカス状態に比べて短くなり、電流Iを変えることによって、ズームを実現することができ、形状記憶合金の電気加熱温度変化方法を使用する場合、伸縮可能な部材は形状記憶合金からなり、常温下で、形状記憶合金は最短の長さに収縮され、内視鏡レンズの内部に位置し、オートフォーカスを必要とする場合、抵抗線は予め設定された最大温度Tmaxまで電気的に加熱され、形状記憶合金は予め設定された最長の形状を復元し、内視鏡レンズの外部に完全に伸長し、ズームを必要とする場合、抵抗線の加熱パワーを変え、形状記憶合金の温度Tが予め設定された最大温度Tmaxより小さいが常温より大きいまで下げると、伸縮可能な部材が依然として内視鏡レンズの外部に完全に伸長するが、伸長部分の長さがオートフォーカス状態に比べて短くなり、記憶合金温度Tを変えることによって、ズームを実現することができる。
【0037】
光ファイバー束は、光源光ファイバー束201及び収集光ファイバー束202を含み、光源光ファイバー束201の一端は切り替え可能なインターフェース201-1であり、それぞれ白色光光源100、第1のレーザー光源101及び第2のレーザー光源202に接続され、他端が内視鏡レンズ300の対物レンズ301に接続される。
【0038】
収集光ファイバー束202の一端は内視鏡レンズ300の対物レンズ301部分に接続され、他端は切り替え可能なインターフェース202-1であり、このインターフェースの一端が画像センサー400に接続され、他端が複合フィルター500を介してグレーティング600に到達する。
【0039】
光ファイバー束201及び202の両方は挿入管により被覆され、内視鏡レンズの前に湾曲部203を増加し、これにより内視鏡レンズの操舵及び移動操作を実現し、湾曲部を制御することによって内視鏡レンズを移動させ、サンプル平面上でのフォーカス後の光点の位置を変えることができ、前記サンプル平面がサンプルの表面に平行である。
【0040】
具体的に、オートフォーカス又はズーム後に、焦点深さが決定され、湾曲部によって、内視鏡レンズをサンプルの表面に沿って移動させ、それにより、フォーカス後の光点をサンプルの表面に平行である焦点面内で移動させ、この焦点面はサンプル平面であり、湾曲部を制御することによって、サンプル平面上での光点の位置を変えることができる。
【0041】
画像センサー400は白色光光源100と合わせて使用し、反射光信号を受信し、測定対象サンプルの表面の光学顕微鏡画像を取得するために使用される。
【0042】
グレーティング600はレーザー光源101及び102と合わせて使用し、グレーティングの前に複合フィルター500を置き、グレーティングが散乱光信号を受信するために使用され、グレーティングの後に測定対象サンプルのラマンスペクトル信号を受信するための信号収集システムが接続される。
【0043】
複合フィルター500は、第1のフィルター501と第2のフィルター502を含み、機械部材によって切り替え可能であり、切り替え模式図を
図3に示し、第1のフィルター501は、波長がλ
1のレーザー光源101によって励起されたレイリー散乱を排除するために使用され、第2のフィルター502は波長がλ
2のレーザー光源102によって励起されたレイリー散乱を排除するために使用され、フィルターのタイプは、カットオフフィルター又はノッチフィルターを含むが、これらに限定されない。なお、フィルター501及び502の切り替え方法は、
図4で示される例示的な切り替え方法を含むが、これらに限定されない。
【0044】
スペクトル分析モジュールは、検出して得られたラマンスペクトル信号に対して分析処理を行い、ラマンスペクトル信号における蛍光の影響を排除するために使用される。
【0045】
具体的に、直接測定して得られた波長λ1のレーザーによって励起されたスペクトル信号と波長λ2のレーザーによって励起されたスペクトル信号はそれぞれf1(ω1)とf2(ω2)で表され、データに対して標準化処理を行い、次に、波長λ2のレーザーによって励起された混合スペクトル信号f2(ω2)をf2(ω2-1/λ1+1/λ2)に並進処理し、標準化処理されたf1(ω1)と標準化処理されたf2(ω2-1/λ1+1/λ2)の差の結果から分かるように、この場合、正のピークを取ってフィッティングすることによって、波長がλ1のレーザーによって励起された蛍光の影響がない測定対象サンプルのラマンスペクトルR1(ω1)を取得することができ、負のピークを取ってフィッティングすることによって、波長がλ2のレーザーによって励起された蛍光の影響がない測定対象サンプルのラマンスペクトルR2(ω2-1/λ1+1/λ2)を取得することができる。この方法は、蛍光の影響を排除する非常に顕著な効果を奏する。
【0046】
蛍光強度の標準化処理方法は、スペクトル内の最強の信号位置の選択の正規化、励起レーザーのパワー密度に応じた信号強度の修正、及び蛍光エンベロープの最強位置の選択の正規化などを含むが、これらに限定されない。具体的な処理方法について、検出方法部分では詳細に説明し、装置部分では繰り返して説明しない。
【0047】
人工知能病理学的分析モジュールは、蛍光を排除した後のラマンスペクトル信号を様々な病理条件のスペクトル特徴基準と比較し、比較結果に従って測定対象サンプルを判断するために使用される。
【0048】
理解できるものとして、人工知能病理学的分析モジュールは、病理学的検出を実現し、キャプチャー及び測定によって蛍光の影響を排除するラマンスペクトル信号スペクトル特徴基準を取得し、人工知能方法による様々な病理条件のスペクトル特徴基準と比較し、さらに、組織には病変があるかどうかを判断し、病変種類及び程度を判断するために使用される。
【0049】
スペクトル特徴基準の取得方法とは、人工知能方法によって既知の様々な病理条件でのラマンスペクトル情報を学習し、主成分分析などの方法を含むが、これらに限定されない方法を使用し、様々な病理のスペクトル特徴基準をまとめることである。
【0050】
スペクトル特徴基準は、増加又は減少したラマン特徴ピークに基づく病理学的分析、ラマン特徴ピークのピーク強度、ハーフハイト幅、ピーク面積に基づく病理学的分析、複数組の特徴ピークの対ピーク強度比、ピーク面積比に基づく病理学的分析、複数組の特徴ピークの対ピーク強度比及びピーク位置情報の主成分分析に基づく病理学的分析などを含むが、これらに限定されない。
【0051】
従来の商業用内視鏡との組み合わせ方法を考慮し、本発明の実施例において、従来の商業用内視鏡構造と組み合わせて使用(詳細は実施例1を参照)することができ、内視鏡の更なる発展を考慮し、ラマン内視鏡検出によって病理状態を判断することができ、不必要な生検サンプリングを避けて、クランプチャンネルの直径を大幅に縮小する必要のない内視鏡レンズを設計することも可能であり(詳細は実施例2を参照)、実用的な適用価値が高い。
【0052】
実施例1
この実施例において、内視鏡レンズ300の構造は、
図5(a)に示すように、対物レンズ301、信号増強装置302、伸縮可能なサポートフィート303及びクランプチャンネル出口304を備える。従来の商業用内視鏡構造において、対物レンズ301とクランプチャンネル出口304は固有の構造であり、伸縮可能なサポートフィート303は簡単な改善によって内視鏡レンズに埋め込まれることができ、必要に応じて、従来の補助フォーカスリングで取り替えることもできる。設計された信号増強装置302をクランプチャンネル出口304を介して内視鏡レンズに導くだけで、本発明による方法に基づいて、二波長増強型オートフォーカスラマン内視鏡測定を実現することができる。
【0053】
この場合、測定手順は、
1)光ファイバー束に接続される内視鏡レンズ300を測定対象位置000に挿入し、内視鏡レンズ上の3つのサポートフィート303(又は補助フォーカスリング)は完全に伸長して測定対象サンプルの表面000に当接し、内視鏡レンズ300はサンプルの表面へのオートフォーカスを実現することができる。
【0054】
2)白色光光源100を開き、切り替え可能なインターフェース201-1を調整して白色光を接続し、白色光は光源光ファイバー束201を介して内視鏡レンズ300に伝導され、測定対象サンプルの表面000にフォーカスされ、切り替え可能なインターフェース202-1を調整して画像センサー400を接続し、収集光ファイバー束202を介して反射光を画像センサー400に導入し、サンプルの表面光学顕微鏡画像を取得し、内視鏡機能を実現することができる。
【0055】
3)増強型ラマンスペクトル測定を行うステップは、さらに、以下のステップに細分化されることができる。
3-1)クランプチャンネル304から信号増強装置302を入れ、増強型ラマンスペクトル測定を実現する。
【0056】
3-2)波長がλ1のレーザー光源101を開き、切り替え可能なインターフェース201-1を調整してレーザー光源101を接続し、波長がλ1のレーザーを光源光ファイバー束201を介して内視鏡レンズ300に伝導し、測定対象サンプルの表面にフォーカスし、収集光ファイバー束202を介して、切り替え可能なインターフェース202-1により散乱光をフィルター501に伝導し通過し、さらにグレーティング600を介して分光し、信号収集システム601に接続することによって、波長がλ1のレーザーによって励起されたサンプルの混合スペクトル信号f1(ω1)を測定して取得することができる。ω1は測定して得られたスペクトルが1/λ1よりもシフトした波数である。
【0057】
3-3)波長がλ2のレーザー光源102を開き、切り替え可能なインターフェース201-1を調整してレーザー光源102を接続し、波長がλ1のレーザーを光源光ファイバー束201を介して内視鏡レンズ300に伝導し、測定対象サンプルの表面にフォーカスし、収集光ファイバー束202を介して、切り替え可能なインターフェース202-1により散乱光をフィルター501に伝導して通過し、さらにグレーティング600を介して分光し、信号収集システム601に接続することによって、波長がλ2のレーザーによって励起されたサンプルの混合スペクトル信号f2(ω2)を測定して取得することができる。ω2は測定して得られたスペクトルが1/λ2よりもシフトした波数である。
【0058】
3-4)スペクトル分析モジュール700を使用して検出されたラマンスペクトルに対して分析処理を行い、2組の表面増強スペクトル信号に対して標準化を行った後に差を計算し、蛍光の影響がないラマンスペクトル信号を取得することができる。
【0059】
4)人工知能病理学的分析モジュール800を使用して測定組織のラマンスペクトル信号を分析し、スペクトル特徴基準をキャプチャーして既知の基準と比較し、病変があるかどうか、及び病変程度を判断し、病理学的検出を完了する。
【0060】
5)サポートフィート303の伸長長さを短くし、焦点がサンプル深さ方向に沿う位置を変え、ステップ3)及びステップ4)を繰り返し、サンプル深さ方向に沿うスキャン病理学的検出を実現する。
【0061】
6)湾曲部203を制御することによって、内視鏡レンズを移動させ、サンプル平面上の光点のフォーカス位置を変え、ステップ3)及びステップ4)を繰り返し、サンプル平面内のスキャン検出を実現する。
【0062】
実施例2
この実施例において、内視鏡レンズ300の構造は、
図5(b)に示すように、対物レンズ301、信号増強装置302、及び伸縮可能なサポートフィート303を備える。サンプリング生検によって病理情報を判断する必要がないため、最初に診察を受ける患者の場合、クランプチャンネル付きの内視鏡レンズを使用しなくてもよい。
図5(a)と比べて分かりやすいように、他の部材のサイズが一致する場合、実施例2で設計された内視鏡の直径は従来の商業用内視鏡の直径と比べて大幅に縮小することができ、これにより、被検査患者の痛みが大幅に軽減される。
【0063】
この場合の測定手順は実施例1と比べて、測定手順3-1)を、
3-1)信号増強装置302を開き、増強型ラマンスペクトル測定を実現するステップに取り替えるだけでよい。具体的な開き方法は、電磁石による電源オン/オフ制御、形状記憶合金の電気加熱温度変化制御などを含むが、これらに限定されない。
【0064】
本発明は内視鏡検出とラマン検出を組み合わせることによって、生物体内組織のラマンスペクトルを直接検出することができ、そして、表面増強又は先端増強方法によって信号増強装置を構成し、測定して得られたラマンスペクトル信号を大幅に増強し、さらに、体内組織非破壊的病理学的分析を効果的に実現する。生物組織測定信号に蛍光干渉が存在するという問題に対して、2種の異なる波長のレーザーを使用して同一の部位の組織信号を検出し、異なる波長のレーザーによって励起されたラマンスペクトル波長が異なるが、蛍光スペクトルの波長が同じであるため、2組の信号の差を計算することによって、蛍光の影響を排除し、ラマン内視鏡の測定信号対雑音比をより向上させることができる。高倍率の対物レンズのレンズで内視鏡のフォーカスが困難であるという問題に対して、オートフォーカス構造の内視鏡レンズを設計し、サポートフィートを内蔵することで、内視鏡レンズの直径を増加することなく、内視鏡のオートフォーカスを実現することができ、さらに、より安定した明確なスペクトル結果を取得することができる。そして、従来の補助フォーカスリングが落ちるリスクを避ける。さらに、人工知能病理学的分析方法を提案し、基準を取得してスペクトルデータを処理する方法を挙げて、非侵襲的病理学的検出を効果的に実現する。従来の商業用内視鏡との組み合わせ方法を考慮して、上記装置は、従来の商業用内視鏡構造では信号増強装置アクセサリーを組み合わせて使用(詳細は実施例1を参照)し、内視鏡の更なる発展を考慮して、ラマン内視鏡検出によって病理状態を判断することができ、不必要な生検サンプリングを避けて、クランプチャンネルの直径を顕著に縮小する必要のない内視鏡レンズ(詳細は実施例2を参照)を設計することも可能であり、実用的な適用価値が高い。以上のように、ラマン測定、内視鏡検出及び病理学的分析を効果的に組み合わせ、そして、信号の効果的な増強、蛍光の排除及びオートフォーカスの方法を提案し、内視鏡サイズを増加することなく、ひいては内視鏡サイズを縮小する前提で、体内その場非破壊的病理診断を実現し、医療検出の分野では幅広い応用の見通しを持つ。
【0065】
本発明は、上記の具体的な実現形態に限定されず、本発明に係る二波長による蛍光の影響の排除に基づく増強型その場ラマンスペクトル測定原理は、本分野及びそれに関連する他の分野で使用することができ、様々な他の具体的な実現形態によって本発明を実施することができる。例えば、以上の方法に基づいて、収集光ファイバー束のレイアウトを調整することによってラマン信号の収集効率などをさらに増強する。
【0066】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施例による二波長増強型ラマン内視鏡的非侵襲的病理の検出方法を説明する。
【0067】
図6は発明の一実施例による二波長増強型ラマン内視鏡的非侵襲的病理の検出方法のフローチャートである。
【0068】
図6に示すように、該二波長増強型ラマン内視鏡的非侵襲的病理の検出方法は、以下のステップを含む。
S1において、光ファイバー束に接続される内視鏡レンズを測定対象位置に挿入し、内視鏡レンズ上のサポートフィートが完全に伸長して測定対象サンプルの表面に当接し、オートフォーカスを実現する。
【0069】
図2を組み合わせ、301は対物レンズであり、302は信号増強装置であり、303は伸縮可能なサポートフィートであり、対物レンズの後に光源光ファイバー束201と収集光ファイバー束202が接続され、光源光ファイバー束は白色光又はレーザーを内視鏡レンズ内の対物レンズに伝導するために使用され、対物レンズは光源光ファイバー束から導入された光を測定対象サンプルの表面にフォーカスして反射光又は散乱光信号を収集するために使用され、収集光ファイバー束は対物レンズによって収集された反射光信号又は散乱光信号をグレーティング又は画像センサーに伝送することができる。
【0070】
内視鏡レンズに3つの伸縮可能なサポートフィートが取り付けられ、3つのサポートフィートは完全に伸長した後の支持点からなる平面は対物レンズ301の焦点面である。具体的に、内視鏡レンズが測定対象の表面に到達して測定を開始する前、及び内視鏡レンズが測定対象の表面から離れ測定を終了した後に、3つの伸縮可能なサポートフィートはすべて内視鏡レンズ内に格納され、レンズに鋭利な突出部分がないことを確保し、突出部分が内視鏡レンズの挿入プロセスと取り出しプロセスへの干渉を避けて、内視鏡レンズは、
図2(a)に示すようなものであり、内視鏡レンズが測定対象の表面に到達した後、伸縮可能なサポートフィートを起動して完全に伸長させ、伸縮原理は、電磁石による電源オン/オフ、形状記憶合金の電気加熱温度変化などを含むが、これらに限定されず、内視鏡レンズは
図2(b)に示すようなものであり、この場合、3つの完全に伸長した伸縮可能なサポートフィートを使用してサンプルの表面に当接し、サンプルの表面000が対物レンズ301の焦点面と重なり、内視鏡レンズはオートフォーカスを実現することができる。
【0071】
図2の模式図には、伸縮可能なサポートフィートの伸縮は電磁石による電源オン/オフによって実現され、
図2(a)では、電磁石に予め設定された最大電流I
maxを印加する場合、サポートフィートの後端の磁化可能な金属を吸引し、バネが最短の長さに圧縮され、伸縮可能なサポートフィートが最短の長さに圧縮され、完全に内視鏡レンズの内部に入り、
図2(b)では、初めて測定してオートフォーカスを必要とする場合、電源が完全に遮断されると、電磁石は磁力を失い、バネは元の形状に戻り、伸縮可能なサポートフィートが内視鏡レンズの外部に伸長して、測定平面を当接するために使用され、サンプル平面は対物レンズの焦点面と重なり、オートフォーカスを実現する。なお、実施例において、伸縮可能なサポートフィートの実現形態は可能な例示にすぎず、記憶合金、又は固定可能な機械ロックなどの方法によって、安定した伸縮を実現することができ、以上のすべての方法はオートフォーカスの実現形態の点で違いあるが、本発明のオートフォーカス方法の設計に含まれる。
【0072】
S2において、光源光ファイバー束を介して白色光を内視鏡レンズに伝導し、測定対象サンプルの表面にフォーカスし、収集光ファイバー束を介して反射光を画像センサーに導入し、サンプルの表面光学顕微鏡画像を取得し、内視鏡機能を実現する。
【0073】
白色光を使用する場合、このラマン内視鏡は通常の内視鏡として機能することができ、測定対象組織の表面ポグラフィー情報を検出するために使用される。
【0074】
S3において、信号増強装置を開き、それぞれ第1の波長のレーザーと第2の波長のレーザーを光源光ファイバー束を介して内視鏡レンズに伝導し、測定対象サンプルの表面にフォーカスし、収集光ファイバー束を介して散乱光をグレーティングに導入して分光し、次に、信号収集システムに接続し、第1の波長のレーザーによって励起された測定対象サンプルの第1の増強ラマンスペクトル信号と第1の蛍光スペクトル信号、及び第2の波長のレーザーによって励起されたサンプルの第2の増強ラマンスペクトル信号と第2の蛍光スペクトル信号を取得し、2組の表面増強スペクトル信号を標準化した後に差を計算し、蛍光の影響がないラマンスペクトル信号を取得する。
【0075】
さらに、S3は、以下のステップを更に含む。
S31において、信号増強装置を開き、増強型ラマンスペクトルの測定を実現する。
【0076】
装置部分の説明のように、信号増強装置は、表面増強方法を実現する装置と先端増強方法を実現する装置を含むが、これらに限定されず、具体的に、表面増強方法を使用する場合、信号増強装置は水供給ノズルであり、信号増強装置を開くと、水供給ノズルからナノ粒子をサンプルの表面に噴出し、表面増強ラマン散乱測定を実現し、ナノ粒子材料は、金ナノ粒子と銀ナノ粒子を含むが、これらに限定されず、ナノ粒子のサイズが15nmよりも大きくし、先端増強方法を使用する場合、信号増強装置は増強型プローブ先端であり、増強型プローブ先端の表面に粗さが100ナノメートル未満の金属がメッキされており、プローブをサンプルの表面に近づくことによって、先端増強ラマン散乱測定を実現することができ、先端表面金属は金又は銀を含むが、これらに限定されない。
【0077】
信号増強装置は伸縮可能な部材であり、具体的に、内視鏡レンズが測定対象の表面に到達して測定を開始する前、及び内視鏡レンズが測定対象の表面から離れ測定を終了した後に、信号増強装置は内視鏡レンズ内に格納され、レンズに鋭利な突出部分がないことを確保し、突出部分が内視鏡レンズの挿入プロセスと取り出しプロセスへの干渉を避けて、内視鏡レンズが測定対象の表面に到達した後、信号増強装置を起動し、信号増強装置は完全に伸長することができ、伸縮原理は、電磁石による電源オン/オフ、形状記憶合金の電気加熱温度変化などを含むが、これらに限定されない。
【0078】
図2(b)と
図2(c)は信号増強装置の伸縮模式図を示し、この実施例において、選択信号増強装置は増強型プローブ先端であり、増強型プローブ先端の表面に粗さが100ナノメートル未満の金ナノ粒子がメッキされており、プローブをサンプルの表面に近づくことによって、先端増強ラマン散乱測定を実現することができ、伸縮原理として、形状記憶合金の加熱温度変化原理を使用し、具体的に、増強型プローブ全体は、形状記憶合金で製造され、プローブの先端のみに粗さが100nm未満の金ナノ粒子がメッキされており、常温下で、形状記憶合金は最短の長さに収縮され、内視鏡レンズの内部にあり、伸長する必要がある場合、形状記憶合金を抵抗線によって予め設定された最大温度T
maxに電気的に加熱し、形状記憶合金は予め設定された最長の形状に復元して完全に内視鏡レンズの外部に伸長し、先端増強ラマンスペクトル測定を実現する。
【0079】
図7は信号増強装置を使用し、及び信号増強装置を使用せずに測定されたアヒルの食道表面ラマンスペクトル信号の比較模式図である。これから見ると、信号増強装置を使用した後、同じ測定時間及びレーザー強度下で、増強ラマン信号の特徴ピーク強度度は増強されないラマン信号よりも大幅に優れており、これは、内視鏡検出時間を短縮し、体内組織ラマンスペクトル信号の測定精度を高め、さらに、ラマン病理学的分析の精度に対して非常に重要な意味を有する。
【0080】
S32において、波長がλ1のレーザー装置を開き、サンプルの表面増強スペクトル信号を測定する。
【0081】
具体的に、波長がλ1のレーザーを光源光ファイバー束を介して内視鏡レンズに伝導し、測定対象サンプルの表面にフォーカスし、収集光ファイバー束を介して散乱光をグレーティングに導入して分光し、次に、信号収集システムに接続し、波長がλ1のレーザーによって励起されたサンプルの増強ラマンスペクトル信号R1(ω1)と蛍光スペクトル信号F1(ω1)を測定して取得することができ、この混合信号をf1(ω1)として記録する。ω1は測定して得られたスペクトルが1/λ1よりもシフトした波数である。
【0082】
S33において、波長がλ2のレーザー装置を開き、サンプルの表面増強スペクトル信号を測定する。
【0083】
具体的に、波長λ2が波長λ1と等しくなく、波長がλ2のレーザーを光源光ファイバー束を介して内視鏡レンズに伝導し、測定対象サンプルの表面にフォーカスし、収集光ファイバー束を介して散乱光をグレーティングに導入して分光し、次に、信号収集システムに接続し、波長がλ2のレーザーによって励起されたサンプルの増強ラマンスペクトル信号R2(ω2)と混合された蛍光スペクトル信号F2(ω2)を測定して取得することができ、この混合信号をf2(ω2)として記録する。ω2は測定して得られたスペクトルが1/λ2よりもシフトした波数であり、ω2=ω1+1/λ1-1/λ2とする。
【0084】
S34において、2組の表面増強スペクトル信号に対して標準化を行った後に差を計算することによって、蛍光の影響がないラマンスペクトル信号を取得することができる。
【0085】
具体的に、異なる波長によって励起された蛍光スペクトルの絶対波長が同様であると、蛍光強度に対して標準化処理を行った後に、F1(ω1)=F2(ω2-1/λ1+1/λ2)であり、標準化処理されたf1(ω1)と標準化処理されたf2(ω2-1/λ1+1/λ2)の差を計算することによって、蛍光の影響を排除して、R1(ω1)-R2(ω2-1/λ1+1/λ2)を取得することができ、この場合、正のピークを取ってフィッティングすることによって、波長がλ1のレーザーによって励起された蛍光の影響がない測定対象サンプルのラマンスペクトルR1(ω1)を取得することができ、負のピークを取ってフィッティングすることによって、波長がλ2のレーザーによって励起された蛍光の影響がない測定対象サンプルのラマンスペクトルR2(ω2-1/λ1+1/λ2)を取得することができる。
【0086】
蛍光強度の標準化処理方法は、スペクトル内の最強の信号位置の選択の正規化、励起レーザーのパワー密度に応じた信号強度の修正、及び蛍光エンベロープの最強位置の選択の正規化などを含むが、これらに限定されない。
【0087】
この処理プロセスは、
図8に示すようなことである。
図8(a)は直接測定して得られた波長λ
1のレーザーによって励起されたスペクトル信号と波長λ
2のレーザーによって励起されたスペクトル信号であり、
図8(b)は標準化及び並進後のデータであり、標準化方法として、蛍光エンベロープの最強位置を標準として正規化する方法を使用し、波長がλ
2のレーザーによって励起された混合スペクトル信号f
2(ω
2)をf
2(ω
2-1/λ
1+1/λ
2)=f
2(ω
1)に並進処理し、
図8(c)は標準化処理されたf
1(ω
1)と標準化処理されたf
2(ω
2-1/λ
1+1/λ
2)に対して差を計算する結果であり、これから見ると、この場合、正のピークを取ってフィッティングすることによって、波長がλ
1のレーザーによって励起された蛍光の影響がない測定対象サンプルのラマンスペクトルR
1(ω
1)を取得することができ、負のピークを取ってフィッティングすることによって、波長がλ
2のレーザーによって励起された蛍光の影響がない測定対象サンプルのラマンスペクトルR
2(ω
2-1/λ
1+1/λ
2)を取得することができる。この方法は、蛍光の影響を排除する非常に顕著な効果を奏する。
【0088】
S4において、蛍光の影響がないラマンスペクトル信号と様々な病理条件のスペクトル特徴基準を比較して、比較結果に従って測定対象サンプルを判断し、測定された領域組織には病変があるかどうかを判断し、病変種類及び程度を判断する。
【0089】
具体的に、人工知能病理学的分析方法とは、人工知能方法によって既知の様々な病理条件でのラマンスペクトル情報を学習し、異なる病理のスペクトル特徴基準をまとめ、測定して得られたラマンスペクトル情報と比較し、さらに、組織には病変があるかどうかを判断し、病変種類及び程度を判断する方法である。
【0090】
スペクトル特徴基準は、増加又は減少したラマン特徴ピークに基づく病理学的分析、ラマン特徴ピークのピーク強度、ハーフハイト幅、ピーク面積に基づく病理学的分析、複数組の特徴ピークの対ピーク強度比、ピーク面積比に基づく病理学的分析、複数組の特徴ピークの対ピーク強度比及びピーク位置情報の主成分分析に基づく病理学的分析などを含むが、これらに限定されない。
【0091】
人工知能病理学的分析方法の原理は
図9に示すようなことである。
図9(a)は早期癌組織と正常組織のラマンスペクトル信号の比較を示し、人工知能方法によって多数の前期癌変/正常データを処理することにより、このような早期癌が正常組織とは著しく異なるというスペクトル特徴基準を取得することができ、基準違いは、
図9(b)に示すようなものであり、P(ω
1/ω
2)は、2つの対応する位置の特徴ピークの対ピーク強度比を表し、A(ω
1-ω
2)は2つの波数の間の面積積分を表す。測定して得られたラマンスペクトルについて、人工知能病理学的分析プログラムを通じて、スペクトル特徴基準情報をキャプチャーし、既存の基準と比較することによって、測定対象組織には癌変があるかどうかを決定することができる。
【0092】
S5において、サポートフィート303の伸長長さを短くし、内視鏡レンズがオートフォーカス位置よりもサンプルの表面に近づき、深さ方向に沿って焦点の位置を変え、ステップS3及びステップS4を繰り返し、サンプルの深さ方向に沿うスキャン病理学的検出を実現する。
【0093】
具体的に、前記サンプルの深さ方向はサンプルの表面に垂直であり、
図3に示すように、オートフォーカス測定を完了した後に、伸縮可能なサポートフィートの伸長長さを短くし、この場合、対物レンズの焦点はサンプルの内部に入り、伸縮可能なサポートフィートの伸長長さを変えることによって、ズームを実現することができ、ステップS3及びS4を繰り返し、サンプルの深さ方向に沿うスキャン検出を実現することができる。
【0094】
電磁石による電源オン/オフによって伸縮可能なサポートフィートを制御する場合、ズーム測定を必要とする場合に、予め設定された最大電流Imaxより小さい電流Iを印加し、電磁石は磁化可能な金属を吸引し、バネは一定の程度で圧縮されるが、電流が予め設定された最大電流より小さいため、伸縮可能な部材は依然として内視鏡レンズの外部に伸長し、伸長部分の長さがオートフォーカス状態に比べて短くなって、電流Iを変えることによって、ズームを実現することができる。
【0095】
形状記憶合金の電気加熱温度変化の方法を使用する場合、ズーム測定を必要とする場合、抵抗線加熱パワーを変え、形状記憶合金温度Tは予め設定された最大温度Tmaxより小さいが常温より大きいまで降温する場合、伸縮可能な部材は依然として内視鏡レンズの外部に伸長し、伸長部分の長さがオートフォーカス状態に比べて短くなって、記憶合金温度Tを変えることによって、ズームを実現することができる。
【0096】
S6において、湾曲部203を制御することによって内視鏡レンズを移動させ、サンプル平面上での光点の位置を変え、ステップS3及びステップS4を繰り返し、サンプル平面内のスキャン検出を実現する。
【0097】
具体的に、焦点深さが決定された後に、湾曲部によって、内視鏡レンズをサンプルの表面に沿って移動させることで、フォーカス後の光点がサンプルの表面に平行である焦点面内に移動させることができ、この焦点面はサンプル平面であり、湾曲部を制御することによって、サンプル平面上での光点の位置を変えることができ、ステップS3及びS4を繰り返し、サンプル平面内のスキャン検出を実現することができる。
【0098】
ステップS5及びS6を組み合わせることによって、サンプルの三次元スキャン検出を実現することができ、三次元検出は病変のサイズ及び影響深さを決定し、病変の影響範囲を判断するために使用でき、後続の治療で重要な役割を果たす。
【0099】
なお、前述の装置実施例に対する解釈や説明は該実施例の方法にも適用可能であるため、ここで繰り返して説明しない。
【0100】
本発明の実施例による二波長増強型ラマン内視鏡的非侵襲的病理の検出方法によれば、表面増強又は先端増強方法によって、測定して得られたラマンスペクトル信号を大幅に増強し、生物組織測定信号に蛍光干渉が存在するという問題に対して、2種の異なる波長のレーザーを使用して同一の部位の組織信号を検出し、異なる波長のレーザーによって励起されたラマンスペクトル波長が異なるが、蛍光スペクトルの波長が同じであるため、2組の信号の差を計算することによって、蛍光の影響を排除することができ、内視鏡のフォーカスが困難であるという問題に対して、オートフォーカス構造の内視鏡レンズを設計し、サポートフィートを内蔵することで、内視鏡レンズの直径を増加することなく、内視鏡のオートフォーカス及びズームを実現することができ、さらに、より安定した明確なスペクトル結果を取得し、且つ病変への三次元スキャン検出を実現することができる。本発明はラマン測定と内視鏡検出を効果的に組み合わせ、且つ信号の増強、蛍光の排除及びオートフォーカスの方法を提案し、内視鏡サイズを増加することない前提で、体内その場非破壊的病理診断を実現し、医療検出の分野では幅広い応用の見通しを持つ。
【0101】
なお、「第1」、「第2」という用語は、説明の目的でのみ使用され、相対的な重要性を指示したり暗示したり、示された技術的特徴の数を暗黙的に示したりするものとして理解することはできない。それにより、「第1」、「第2」で制限された特徴には、明示的または暗黙的に少なくとも1つの該特徴が含まれる場合がある。本発明の説明では、特に明確に定義されない限り、「複数」の意味は、少なくとも2つ、例えば2つ、3つなどである。
【0102】
本明細書の説明では、「一実施例」、「いくつかの実施例」、「例」、「具体的な例」、又は「いくつかの例」という参照用語などに関する説明は、該実施例又は例を組み合わせて説明した具体的な特徴、構造、材料又は特点が本発明の少なくとも1つの実施例又は例に含まれることを意味する。本明細書では、上記用語の模式的な表現は必ずしも同じ実施形態または例を指すとは限らない。しかも、説明される具体的な特徴、構造、材料又は特点は任意の1つ又は複数の実施例又は例において適切な方法で組み合わせることができる。なお、互いに矛盾がない場合、当業者は、本明細書に記載の異なる実施例又は例及び異なる実施例又は例の特徴を組み合わせ及び結合することができる。
【0103】
以上で本発明の実施例を示して説明したが、理解できるのは、上記の実施例は例示的なものであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではなく、当業者は、本発明の範囲内で上記の実施例に対して変化、修正、置換及び変形を行うことができる。
【符号の説明】
【0104】
λ1-1番目のレーザー装置によって生成されたレーザー波長
λ2-2番目のレーザー装置によって生成されたレーザー波長
000-測定対象サンプル
100-白色光光源
101-波長がλ1であるレーザー光源1
102-波長がλ2であるレーザー光源2
201-光源光ファイバー束
201-1-光源光ファイバー束の切り替え可能なアダプター
202-収集光ファイバー束
202-1-収集光ファイバー束の切り替え可能なアダプター
203-湾曲部
300-内視鏡レンズ
301-対物レンズ
302-信号増強装置
303-伸縮可能なサポートフィート
304-クランプチャンネル出口
400-画像センサー
500-複合フィルター
501-対応する波長λ1のレーザーのカットオフフィルター/ノッチフィルター
502-対応する波長λ2のレーザーのカットオフフィルター/ノッチフィルター
600-グレーティング
601-信号収集システム
700-スペクトル分析モジュール
800-人工知能病理学的分析モジュール