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特許7201784形状記憶合金アクチュエータによって制御されるステージ分離を有する多段真空装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】形状記憶合金アクチュエータによって制御されるステージ分離を有する多段真空装置
(51)【国際特許分類】
   F03G 7/06 20060101AFI20221227BHJP
   H01J 37/09 20060101ALI20221227BHJP
   H01J 37/16 20060101ALI20221227BHJP
   H01J 37/18 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
F03G7/06 D
F03G7/06 F
H01J37/09 Z
H01J37/16
H01J37/18
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021500082
(86)(22)【出願日】2019-07-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 IB2019056189
(87)【国際公開番号】W WO2020016843
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】102018000007349
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511020829
【氏名又は名称】サエス・ゲッターズ・エッセ・ピ・ア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・ウルバーノ
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-054843(JP,A)
【文献】特開2009-048799(JP,A)
【文献】特開2011-003426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03G 7/06
H01J 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1ステージおよび第2ステージを備える真空装置であって、前記第1および第2ステージは、分離ステージ(10;20;30;40;50)を通り流体連通し、前記分離ステージ(10;20;30;40;50)は、末端部分に開口を有するチャネル(12;22)を有し、前記チャネル(12;22)の前記開口は、面積Aを有し、前記末端部分は、少なくとも2つの開口を備える有孔シャッター(14;27;35;42;52)と密接に接触し、大きい開口(15;26;36;46;56)が0.9A以上の面積を有し、かつ小さい開口(16;28;37;47;57)が0.00001A~0.01Aの間の面積Arを有し、前記シャッターの開口の少なくとも一方がアクチュエータの作動によって前記チャネル(12;22)の前記開口に対して位置合わせ、かつ中心合わせされる、前記真空装置において、
前記アクチュエータが、少なくとも1つの形状記憶合金部材である、または少なくとも1つの形状記憶合金部材を備え
前記シャッター開口が分離された形状記憶合金部材によって独立して移動される第2のシャッターによって交互に閉じられることを特徴とする、真空装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの形状記憶合金部材が0.01mm~0.50mmの間の直径を有する1または複数の形状記憶合金ワイヤ(13,13’,13”,13’’’)を備える、請求項1に記載の真空装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの形状記憶合金部材が形状記憶合金バネ(24;34;44,45;54,55)である、請求項1に記載の真空装置。
【請求項4】
前記シャッター開口が単一の金属片に形成された孔である、請求項1~3のいずれか一項に記載の真空装置。
【請求項5】
前記有孔シャッター(14;42;52)の位置が複数の形状記憶合金部材の拮抗作動によって制御される、請求項1~4のいずれか一項に記載の真空装置。
【請求項6】
前記有孔シャッター(27;35)の位置が、少なくとも形状記憶合金部材(24;34)が弾性復帰部材(23)に対して作用することによって制御される、請求項1~4のいずれか一項に記載の真空装置。
【請求項7】
前記有孔シャッター(14;27;35;42;52)は、シャッター支持体(17;25;38;41;51)によって移動時に案内かつ支持され、前記シャッター支持体(17;25;38;41;51)には、前記有孔シャッター(14;27;35;42)が摺動的に係合する2つの対向する案内溝が設けられる、または、前記有孔シャッター(52)が旋回するピボット(51c)および前記有孔シャッター(52)が摺動的に係合する対向案内溝が設けられる、請求項1~6のいずれか一項に記載の真空装置。
【請求項8】
前記真空装置が走査型電子顕微鏡、または走査型ヘリウムイオン顕微鏡である、請求項1~7のいずれか一項に記載の真空装置。
【請求項9】
少なくとも第1ステージおよび第2ステージを備える真空装置であって、前記第1および第2ステージは、分離ステージ(10;20;30;40;50)を通り流体連通し、前記分離ステージ(10;20;30;40;50)は、末端部分に開口を有するチャネル(12;22)を有し、前記チャネル(12;22)の前記開口は、面積Aを有し、前記末端部分は、少なくとも2つの開口を備える有孔シャッター(14;27;35;42;52)と密接に接触し、大きい開口(15;26;36;46;56)が0.9A以上の面積を有し、かつ小さい開口(16;28;37;47;57)が0.00001A~0.01Aの間の面積Arを有し、前記シャッターの開口の少なくとも一方がアクチュエータの作動によって前記チャネル(12;22)の前記開口に対して位置合わせ、かつ中心合わせされる、前記真空装置において、
前記アクチュエータが、少なくとも1つの形状記憶合金部材である、または少なくとも1つの形状記憶合金部材を備え
前記有孔シャッター(14;42;52)の位置が複数の形状記憶合金部材の拮抗作動によって制御される、ことを特徴とする、真空装置。
【請求項10】
前記有孔シャッター(14;27;35;42;52)は、シャッター支持体(17;25;38;41;51)によって移動時に案内かつ支持され、前記シャッター支持体(17;25;38;41;51)には、前記有孔シャッター(14;27;35;42)が摺動的に係合する2つの対向する案内溝が設けられる、または、前記有孔シャッター(52)が旋回するピボット(51c)および前記有孔シャッター(52)が摺動的に係合する対向案内溝が設けられる、請求項9に記載の真空装置。
【請求項11】
前記真空装置が走査型電子顕微鏡、または走査型ヘリウムイオン顕微鏡である、請求項9または10に記載の真空装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の真空装置の作動方法であって、形状記憶合金部材の作動が操作フィードバックによって制御および駆動されることを特徴とする、作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段真空装置、好ましくは二段装置に関し、その通常の動作では、異なる圧力を設定し、変化させ、続いて真空装置段階で維持する必要があり、圧力変化は、高圧段階でのプロセスガスの流入を制御する適切なシャッターの動きを介した形状記憶合金(SMA)ワイヤーアクチュエータによって達成することができる。
【背景技術】
【0002】
本発明による最も興味深い真空装置の中には、集束された電子ビームでその表面を走査することによって試料の画像を生成するSEM(走査型電子顕微鏡)などの荷電粒子装置がある。高真空段階と低真空段階の両方で試料が観察され、高真空段階では試料に到達する前に電子ビームの散乱が最小限に抑えられるため、電子銃と一次電子ビーム通路は高真空状態に保たれる。
【0003】
検出器は、いわゆる「低真空」動作モードでも使用でき、このモードでは、少量のガスがチャンバに漏れ、そこでイオン化して絶縁材料の表面帯電を低減する。この場合、サンプルチャンバーから顕微鏡カラムへのガスの流れを制限する必要があり、これは、対物レンズの開口部(通常は5~10mmの範囲)を、たとえば0.5~1mmまたはそれよりも小さい直径などのはるかに小さい値に減らすことによって実現される。対物レンズの開口部を縮小する1つの方法は、対物レンズの開口部の内側に、主ビーム軸に沿って配置され、元の直径よりもはるかに小さい直径の穴を備えた付属物を導入することである。
【0004】
この解決策では、低真空測定が可能であるが、顕微鏡の視野が狭くなり、顕微鏡カラム内に配置された検出器による後方散乱電子の検出が大幅に制限されるという欠点がある。このため、高真空測定が必要な場合は付属物を外す必要がある。付属物の取り付けと取り外しは、試料チャンバを空気に開放し、チャンバを閉じ、チャンバの長い再調整(空気を送り出す)を待つことを意味する。
【0005】
異なる圧力レジームでの真空装置の動作を可能にするために、開口部材を自動的に取り付けたり取り外したりする動作を実行するチャネル開口および機構を含む真空装置を提供するために、いくつかの解決策が開示されている。例えば、特許文献1は、後端部を有する電子光カラムと、カラムの前端部に接続された試料チャンバと、試料チャンバ内のカラムの前端部に配置された開口部材とを有する装置を開示している。開口部材は、ビームの経路の方向に沿った所与の平面に沿って開口部材を回転させることによって取り付けまたは取り外しができる。
【0006】
特許文献2は、物体を検査するための粒子ビーム経路を定義するように構成された構成を含む荷電粒子装置を開示している。装置は、動作位置において、差圧開口が荷電粒子光学装置の2つの真空ゾーンを分離するように構成され得る差圧開口を有する差圧モジュールをさらに含む。より具体的には、粒子光学装置の真空エンクロージャを貫通して延びる位置決めアームが記載されており、前記アームは、粒子ビーム経路が差圧開口を通過する動作位置に配置されている。
【0007】
特許文献3は、帯電粒子光学系と、帯電粒子光学系を排気するための排気手段を備えた帯電粒子ビームシステムを提供し、これには、真空容器、補助真空ポンプとして真空容器に接続する非蒸発性ゲッターポンプ、真空容器と非蒸発性ゲッターポンプの間に挿入されるバルブが含まれる。この場合、排気方法には、正しい排気を行うためにバルブと粗引きポンプポートが必要である。
【0008】
特許文献4は、2つのポンプの間に配置され、放射熱伝達に完全なシールドを提供できる可動シールド装置を開示している。シールドは、2つの異なる構成を想定できる形状記憶要素を含むシールド金属のセットを設けることによって得られる。この特許では、コンダクタンスは、ゲッターポンプからターボポンプに向かう放射から生じる温度の関数として変化する。この装置は、ビームを遮断しないため、光学システムと互換性がない。
【0009】
特許文献5は、開口直径を少なくとも2つの異なる値のいずれかに設定できる、またはエミッタの頂点から抽出電極までの距離を少なくとも2つの異なる値のいずれかに設定できることを特徴とするガス電界イオン化源について説明している。
【0010】
特許文献6は、一般的に定義された駆動機構を使用して複数のオリフィスを動かし、2つの電子顕微鏡領域間に適切な圧力を設定する電子顕微鏡を記載している。同様に、同じ分野で、特許文献7は、開口絞りを移動させるための一般的な駆動機構を記載している。
【0011】
特許文献8は、電子顕微鏡における試料/サンプルの適切な操作機構の使用について説明し、熱マイクロアクチュエータ、静電マイクロアクチュエータ、スティックスリップ圧電マイクロアクチュエータ、ピエゾバイモルフマイクロアクチュエータ、コームドライブマイクロ電気機械システム(MEMS)アクチュエータ、および形状記憶合金マイクロアクチュエータなどのアクチュエータを備える。
【0012】
特許文献9は、2つの部材の相互位置調整によって達成される可変アパーチャを記載しており、部材を移動させるための手段として、好ましくはピエゾドライブによって駆動される。部材は、例えば、ステッピングモーターによって、部材を動かすことができる熱膨張材料または形状記憶合金によって、またはマイクロメートルスケール内で部材を動かすことができる他の任意の手段によって動かすことができる。
【0013】
特許文献10は、2つのスリット質量分析計を開示しており、1つは固定で、もう1つは一般的に記述されている多くの変形に従って移動可能である。
【0014】
上記の解決策には、対物レンズの口径を自動アーム、または真空モーター、すなわち真空適合電磁モーターまたは圧電モーターの使用を必要とする複雑なシステムによって制御する必要があるため、いくつかの欠点がある。前者のタイプのモーターは、特に高真空の観察において、炭化水素の長鎖で試料を汚染する可能性のある潤滑剤を必要とし、後者のタイプのモーターは、試料上に移動する粒子を生成し、顕微鏡測定を大きく損なう可能性がある。
【0015】
圧電モーターと電磁モーターはどちらもかさばり、特定の分析に必要となる可能性のあるさまざまな検出器を導入したり、最適に配置したりする可能性を低減する。特に、それらは試料と他の検出器の間に介在する可能性があるため、検出器に到達する粒子または光子の部分が制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】米国特許出願公開第2011/0006209号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2950324号明細書
【文献】米国特許第7781743号明細書
【文献】米国特許第6309184号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/087704号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0139986号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0045337号明細書
【文献】米国特許第6967335号明細書
【文献】欧州特許第1526563号明細書
【文献】特開平06-36166号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の目的は、特に真空モーターの使用に関して先行技術の欠点を克服することであり、その第1の態様は、第1ステージおよび第2ステージを含む真空装置からなり、第1および第2ステージがその末端部分に開口を有するチャネルを有する分離ステージを介して流体通信し、前記チャネル開口は、面積Aを有し、前記末端部分は、少なくとも2つの開口を含む有孔シャッターと密接に接触し、1つの開口は、0.9*A以上の面積を有し、1つの開口は、0.00001*Aから0.01*Aの間の面積Arを有し、前記シャッター開口の少なくとも1つは、形状記憶合金要素の作動によって前記チャネル開口に対して位置合わせされ、中心合わせされる。
【0018】
以下の図の助けを借りて、本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】2つの異なる位置に有孔シャッターを備えた、本発明に従って行われた真空装置ステージ分離の第1の実施形態の概略底面斜視図を示す
図1B】2つの異なる位置に有孔シャッターを備えた、本発明に従って行われた真空装置ステージ分離の第1の実施形態の概略底面斜視図を示す。
図2A】本発明の第2の実施形態の図1Aおよび図1Bと同様の図である。
図2B】本発明の第2の実施形態の図1Aおよび図1Bと同様の図である。
図3】本発明の第3の実施形態の概略底面斜視図を示す。
図4】本発明の第4の実施形態の底面分解図を示す。
図5】組み立てられた状態での図4の第4の実施形態の底面斜視図を示す。
図6】2つの異なる位置に有孔シャッターを備えた図5の第4の実施形態の底面図を示す。
図7】2つの異なる位置に有孔シャッターを備えた図5の第4の実施形態の底面図を示す。
図8】本発明の第5の実施形態の底面分解図を示す。
図9】組み立てた状態での図8の第5の実施形態の底面斜視図を示す。
図10】2つの異なる位置に有孔シャッターを備えた図9の第5の実施形態の底面図を示す。
図11】2つの異なる位置に有孔シャッターを備えた図9の第5の実施形態の底面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上記の図では、本発明の理解に不可欠な要素のみが示されているが、電流供給源など、本発明の理解に必要のない補助要素は、技術分野で知られている通常の手段であるため示されていない。さらに、要素の寸法と寸法の比率は、特にSMAワイヤ径に限定されるものではないが、読みやすさを向上させるために変更されている場合がある。
【0021】
形状記憶合金は、2つの相の間の遷移によって特徴付けられ、1つは低温で安定な、いわゆるマルテンサイト相であり、もう1つは高温で安定な、いわゆるオーステナイト相である。形状記憶合金は、Mf、Ms、As、Afの4つの温度で特徴付けられ、Mfは、その温度以下では形状記憶合金が完全にマルテンサイト相になる温度、すなわちマルテンサイト構造を有する温度であり、Afは、その温度以上では形状記憶合金が完全にオーステナイト相になる温度、すなわちオーステナイト構造を有する温度であり、Ms、Asは、それぞれマルテンサイト相とオーステナイト相への遷移が始まる温度である。
【0022】
SMAワイヤとしても知られる形状記憶合金で作られたワイヤは、温度がMf未満からAf以上に、またはその逆に変化したときに形状を変化させるようにトレーニングできる。SMAワイヤの処理とトレーニングは、2004年秋のトレーニングセクション「ME559-スマート材料と構造」にさかのぼる「形状記憶合金形状トレーニングチュートリアル」に例示されているように、この分野で広く知られている手順である。
【0023】
本発明による第1の実施形態は、分離ステージ10の概略底面斜視図を示す図1Aおよび図1Bに示されている。特に、円形フレーム11、イオン源を通過させるためのチャネル12を有するビームガイド構造18が示され、その末端部分に面積Aの開口があり、有孔シャッター14が末端部分の真下に配置され、末端部分と密接に接触している。支持体17は、有孔シャッター14を保持し、有孔シャッターは、有孔シャッター14の上面をチャネル12の開口と密接に接触させ続ける支持体17の2つの内部溝に沿ってスライドすることができる。
【0024】
有孔シャッター14は、少なくとも2つの円形開口15および16を備え、前者は、0.9*A以上の面積を有し、後者は、0.0001*A~0.01*Aの間に含まれる面積Arを有する。前記シャッター開口15、16のうちの1つは、形状記憶合金要素の作動によってチャネル12の前記開口に対して位置合わせされ、中心合わせされ、中心にないシャッター開口はチャネル12の外側に移動される。
【0025】
図1Aおよび図1Bに示される第1の実施形態では、有孔シャッター14は、略長方形の形状を有する有孔シャッター14の四隅に配置された固定点および、円形フレーム11に沿った対応する位置にある固定点を有する4本のSMAワイヤ13、13’、13’’、13’’’によって移動される。
【0026】
ビームおよび試料の近くの表面は、望ましくない電界を生成する可能性のある表面における電荷の収集を回避するために導電性材料でできていることが好ましいので、開口15、16は、図1Aおよび1Bに示すように単一の金属片で作ることができる。あるいは、有孔シャッターは、例えば、中央部分と外側部分がコーティングされていないストリップによって分離されるように、金属コーティングで覆われた非導電性セラミック材料で実現することができる。
【0027】
有孔シャッター14を動かして開口を変えるために、SMAワイヤ13、13’、13’’、13’’’は、それらが加熱されて合金が完全にオーステナイト相になる温度に達するように、電流の供給を通して加熱することによって作動される。SMAワイヤは、ペアで交互に作動する。より具体的には、ワイヤ13と13’の同時作動により、有孔シャッター14が右に引っ張られ、小さい開口16(図1B)が位置合わせされ、ワイヤ13’’および13’’’の同時作動により、有孔シャッター14が左に引っ張られ、大きな開口15(図1A)が位置合わせされる。開口15、16の正確な位置合わせは、2対のSMAワイヤによっていずれかの方向に引っ張られた場合に有孔シャッター14が当接するシャッター支持体17上に形成されたエンドストップ(図示せず)によって保証される。
【0028】
より複雑な代替の実施形態(図示せず)は、4対のSMA要素によって独立して動かされる2つの有孔シャッターで実現され、第1のシャッターは2つの開口を含み、その2つの開口のうちの1つをビーム軸に沿って中心に合わせるために動かされ、第2のシャッターは、第1のシャッターの中心にない他の開口を閉じるために動かされる。この解決策では、第2のシャッターによって閉じられているため、中心にない開口をチャネル12の外側に移動する必要がないため、シャッターの変位を小さくすることができる。言うまでもなく、作動の均一性と加えられる力の平衡化を確実にするために、形状記憶合金のワイヤ径は本質的に互いに等しくなければならない(±5%の許容範囲内)。
【0029】
第1の実施形態および代替の実施形態の両方に適用可能な別の代替の変形例では、シャッターは、図1A図1Bのように2つの固定点を持つ1対のワイヤではなくシャッターの両側に1つの固定点を有する単一のワイヤを有するために、反対の位置に配置された2つの拮抗ワイヤによって移動することができる。
【0030】
図2Aおよび図2Bに示される第2の実施形態では、分離ステージ20は、円形フレーム21、イオン源を通過させるためのチャネル22を有し、その末端部分に開口を有するビームガイド構造29、および末端部分の真下に配置され密接に接触する有孔シャッター27を含む。支持体25は、有孔シャッター27を保持し、有孔シャッターは、有孔シャッター27の上面をチャネル22の開口と密接に接触させ続ける支持体25の2つの内部溝に沿ってスライドすることができる。有孔シャッター27は、少なくとも2つの円形開口26および28を備え、前記シャッター開口の1つは、形状記憶合金要素の作動によって、前記チャネル開口に対して位置合わせされ、中心合わせされる。
【0031】
この場合、SMA要素はSMAバネ24であるのに対し、要素23は標準バネであり、SMAバネ24が電圧を印加することによって作動し、合金が完全にオーステナイト相になる温度に達すると、SMAバネ24は短くなり、有孔シャッター27を右に引っ張って標準バネ23を延ばし、小さい開口28がビーム軸に位置合わせされる(図2B)。SMAバネ24が非作動時になると、バネ23は有孔シャッター27を左に引き戻し、大きい開口26がビーム軸に位置合わせされる(図2A)。
【0032】
図3に示す第3の実施形態では、分離ステージ30は、バネ23が、格納式ボールペンで使用されるものと同様のプッシュ‐プッシュシステムと同様の機構32に置き換えられているという点で、第2の実施形態の分離ステージ20とは異なる。機構32は、円形フレーム31に取り付けられ、上記のSMAバネ24のように動作するSMAバネ34の反対側の位置で、非伸長性ワイヤ33を介して有孔シャッター37に接続されている。ただし、この場合、SMAバネ34は、SMAバネ34の非作動時にシャッター支持体38に沿った有孔シャッター37の移動を定義する2つの異なるエンドストップ間で、各作動時に交互に動作する機構32内のバネ(図示せず)に作用する。
【0033】
言い換えれば、機構32は、ビーム軸と整列している小さい開口36に対応する第1の安定位置と、ビーム軸と整列している大きい開口35に対応する第2の安定位置とを有する双安定システムを表し、SMAバネ34は、機構32内の位置を変更するためにのみ作動する。これは、シャッターが一方の位置からもう一方の位置に移動した後、SMAバネ34をすぐに非作動化できることを意味する。第2の実施形態では、小さい開口28をビーム軸と位置合わせしたままにするためにSMAバネ24を作動したままにする必要があり、第1の実施形態では、開口15、16の1つをビーム軸と位置合わせしたままにするために、一対のSMAワイヤ(13、13’または13”、13’’’のいずれか)を作動したままにする必要がある。
【0034】
図4は、第4の実施形態の分解底面図を示しており、分離ステージ40が、シャッターのスライド移動を案内し、それをビームチャネルの末端部分と密接に接触させ続けることを目的とした溝を含むシャッター支持体41と、有孔シャッター42と、弧状屈曲部43およびSMAバネ44、45とを含む。図5図7の組み立て図からよりよくわかるように、シャッター支持体41には、有孔シャッター42のスライド方向に対して対角線方向に外側に延びる対向するアーム41a、41bが設けられ、有孔シャッターには、アーム41b、41aに関して分離ステージ40の反対側にそれぞれ配置された同様のアーム42a、42bを備えている。このようにして、第1のSMAバネ44は、分離ステージ40の第1の側「a」のアーム41aと42aの間に接続され、第2のSMAバネ45は、反対側「b」のアーム41bと42bの間に同様に接続されて、SMAバネ44、45は、実質的に有孔シャッター42のスライド方向に沿って延びる。
【0035】
屈曲部43は、支持体41とシャッター42との間で旋回し、その弧状形状は、シャッター42のスライド面に平行な平面に含まれ、その旋回点の位置は、シャッター移動の両終点においてシャッター42にロック力を提供するように選択される。これは、シャッター42上の移動旋回点が、支持体41上の固定旋回点に対して一方の側から他方の側に移動するためである。この構成では、上記のすべての要素を統合デバイスに事前に組み立てて、対物レンズに取り付けることができる。
【0036】
小さい開口47がビーム軸と位置合わせされている図4から図6に示される位置から開始して、大きい開口46は、短縮されたSMAバネ45を作動させてシャッターアーム42bを支持アーム41b(図6、7では左方向)の方へ引っ張ることによって位置合わせに移動され、一方、SMAバネ44は、シャッターアーム42aが支持アーム41aから離れるように動かされるので延長される。この動作により、有孔シャッター42をスライドさせ、開口を小さい開口47から大きい開口46に変更することができ、SMAバネ44を作動させることによって逆の動きが達成される。
【0037】
図8は、第4の実施形態と概念的に類似しているが、4つの実施形態のようなスライド運動ではなく、回転運動を伴うシャッターに関する第5の実施形態の分解底面図を示す。この場合、分離ステージ50は、シャッターの回転運動を案内し、それをビームチャネルの末端部分と密接に接触させ続けることを目的とした単一の溝を備えるシャッター支持体51と、有孔シャッター52と、弧状屈曲部53と、SMAバネ54、55とを含む。図9図11の組み立て図からよくわかるように、シャッター支持体51には、2つのペグ51a、51bと、案内溝の反対側の位置で下向きに延びるピボット51c(2つのペグ51aの間に配置されたピボット51c)が設けられる一方、有孔シャッター52には、ピボット51cのシート52cに対して対称に配置され、ペグ51a、51bに対して分離ステージ50の同じ側にそれぞれ配置された、半径方向に延びるアーム52a、52bが設けられる。このようにして、第1のSMAバネ54は、分離ステージ50の第1の側「a」でペグ51aとアーム52aとの間に接続され、第2のSMAバネ55は、同様に、反対側「b」でペグ51bとアーム52bとの間に接続される、前記SMAバネ54、55が互いに実質的に垂直に延びる。
【0038】
屈曲部53は、支持体51とシャッター52との間で旋回し、その弧状形状は、シャッター52の回転平面に平行な平面に含まれ、その旋回点の位置は、シャッターの移動の両終点においてシャッター52にロック力を提供するように選択される。これは、シャッター52上の移動旋回点が、支持体51上の固定旋回点に対して一方の側から他方の側に移動するためである。この構成では、上記のすべての要素を統合デバイスに事前に組み立てて、対物レンズに取り付けることができる。
【0039】
大きい開口56がビーム軸と位置合わせされる図8図10に示される位置から開始して、小さい開口57は、短縮されたSMAバネ54を作動させてシャッターアーム52aをペグに向かって引っ張りピボット51cの周りでシャッター52の回転(図10、11では反時計回り)を引き起こすとによって位置合わせに移動され、一方、SMAバネ55は、シャッターアーム52bがペグ51bから離れるように動かされるので、回転および伸長される。この動作により、有孔シャッター52を回転させ、開口を大きい開口56から小さい開口57に変更することができ、SMAバネ55を作動させることによって逆の動きが達成される。
【0040】
試料チャンバから顕微鏡カラムへのガスの流れを制限するため、または高圧観察中の寄生ガスの流れを防ぐために、有孔シャッターとシャッター支持体の間にエラストマーガスケット(図示せず)を導入することが可能である。ガスケットと有孔シャッターの間の摩擦は、SMA要素が作動してシャッターを目的の位置に移動した後、有孔シャッターを固定位置に保つのに役立つ。この場合、ロック力がガスケットの摩擦によって提供されるため、屈曲部は不要であるが、これは、前記摩擦を克服するために高い力を提供しなければならない大径のSMA要素の使用を意味する。
【0041】
より小さな直径のワイヤを使用するために、より速い作動/非作動のために、分離ステージはエラストマーガスケットを含まないことが好ましいが、2つの要件を満たすように作られることが好ましい。
- 有孔シャッターとシャッター支持体の間のクリアランスは、寄生ガスの流量が、小さい開口を流れるガスの流量よりもはるかに低く、好ましくは少なくとも1桁低くなるように、十分に小さくする必要がある。
- 有孔シャッターは、作動に向かう小さな力に対抗する必要がある。
【0042】
一般的に言えば、「密接に接触」という用語は、上記の文脈で解釈されるべきである。すなわち、寄生ガスの量が、小さい開口を流れる量よりも少なくとも1桁少ない。
【0043】
上記の原理と詳細は、電子顕微鏡技術(SEM)や荷電粒子ビームだけでなく、走査型ヘリウムイオン顕微鏡(SHIM、HeIM、HIM)にも適用できる。
【0044】
本発明は、特定の形状記憶合金材料に限定されないが、ニチノールの商品名で一般に知られている合金などのNi-Tiベースの合金が好ましく、その基本特性は米国特許第4830262号に記載されている。SAESスマートマテリアルの名前で米国特許第8152941号および米国特許第8430981号に記載されている新しく改良された形状記憶合金も使用することができる。
【0045】
特に、「Ni-Tiベース」の形状記憶合金という用語は、ニッケルとチタンの含有量が圧倒的に多い形状記憶合金(少なくとも60原子パーセント、at%)を含み、追加の元素は、例えば米国特許第4565589号に記載されているNi-Ti-Cu合金の場合に低いヒステリシス、または例えば米国特許第5114504号に記載されているNi-Ti-Hf合金の場合に高い変態温度などの異なる特性を与える可能性がある。
【0046】
SMA要素がワイヤの形をしている場合、その直径は0.01~0.50mmで構成されるが、サンプルの上に配置されたセンサーのスクリーニングを減らすために、直径が0.01~0.15mmで構成されたSMAワイヤで最良の結果が得られる。さらに、ワイヤとバネの両方でSMAアクチュエータの直径が大きくなると、熱慣性が増加するため、アクチュエータの冷却時間が長くなり、2つの位置の切り替えに必要な最小時間に影響する。
【0047】
しかし、前述のように、有孔シャッターとシャッター支持体との間にエラストマーガスケットが配置された実施形態の場合、より大きな直径、好ましくは0.08~0.50mmの間のSMAアクチュエータ(ワイヤまたはバネ)を使用する必要がある。
【0048】
この点で、形状記憶合金ワイヤは実体物であるため、円形断面からの逸脱が有り得、「直径」という用語は最小の囲み円の直径として意図されていることを強調することが重要である。
【0049】
有孔シャッターとシャッター支持体との間のクリアランスと正しい作動は、有孔シャッターとシャッター支持体の適切な機械加工によって達成することができる。特に、係合部分の平均表面粗さ(Ra)は、0.1ミクロン以下であり、有孔シャッターとシャッター支持体の間のクリアランスは、20ミクロン以下、できれば5ミクロン未満である必要がある。最後に、動作中の干渉を防ぐために、有孔シャッターとシャッター支持体の間の最小クリアランスは、有孔シャッターの移動のすべての位置で2ミクロンより大きくする必要がある。
【0050】
さらなる実施形態は、上記の実施形態の特徴の組み合わせを通じて当業者によって容易に得ることができ、例えば、屈曲部は、最初の2つの実施形態(ガスケットがない場合)にも存在することができる。
【0051】
前の実施形態のいずれかによる真空装置を操作するための方法は、形状記憶合金要素の作動が、SMA温度(例えば、電気抵抗を測定することによって)、適切な位置センサー(例えば、光学、抵抗、または磁気センサー)によるシャッターの位置の読み取りなどの操作フィードバックによって制御および駆動されることを提供する。
【符号の説明】
【0052】
10 分離ステージ
11 円形フレーム
12 チャネル
13 SMAワイヤ
14 有孔シャッター
15 シャッター開口
16 シャッター開口
17 支持体
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11