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特許7201825回折装置、及びワーク内部の結晶方位の均一性の非破壊検査を行う方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】回折装置、及びワーク内部の結晶方位の均一性の非破壊検査を行う方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/207 20180101AFI20221227BHJP
   G01N 23/20008 20180101ALI20221227BHJP
【FI】
G01N23/207
G01N23/20008
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021538426
(86)(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 CN2019123593
(87)【国際公開番号】W WO2020134959
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】201811621809.0
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521285296
【氏名又は名称】中国兵器工業第五九研究所
【氏名又は名称原語表記】THE 59TH INSTITUTE OF CHINA ORDNANCE INDUSTRY
【住所又は居所原語表記】33 Yuzhou Road, Jiulongpo District, Chongqing 400039, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】鄭 林
(72)【発明者】
【氏名】竇 世涛
(72)【発明者】
【氏名】何 長光
(72)【発明者】
【氏名】彭 正坤
(72)【発明者】
【氏名】肖 勇
(72)【発明者】
【氏名】張 倫武
(72)【発明者】
【氏名】張 津
(72)【発明者】
【氏名】封 先河
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101358938(CN,A)
【文献】特表2006-526138(JP,A)
【文献】特開2005-083999(JP,A)
【文献】特開2015-225053(JP,A)
【文献】特開平02-107952(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0314862(US,A1)
【文献】特開2018-115964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
A61B 6/00 - A61B 6/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定結晶材料ワークの強い回折結晶面(hkl)の回折強度の極大値方向(α、β)で、各部位の回折強度分布を測定するために用いられており、被測定サンプルの測定部位にX線を照射するX線照射システムと、X線が被測定サンプルの複数の部位で回折して形成した複数条のX線回折線を同時に検知することにより、被測定サンプルのX線回折強度分布を測定するX線検知システムと、を含む回折装置であって、
検知される前記X線回折線は短波長特徴X線であり、前記X線検知システムは、アレイ検知システムであり、
前記X線照射システムは、重金属陽極ターゲットX線管(1)と、入射コリメータ(2)と、被測定サンプル(4)を装着するサンプル台(3)と、マスターコンピュータ(7)と、高圧発生器(8)と、コントローラ(9)と、遠隔操作端末(10)と、X線遮蔽保護カバー(12)と、前記重金属陽極ターゲットX線管(1)を駆動して回動させるθ角回動機構(13)と、前記アレイ検知システムを駆動して回動させる2θ角回動機構(14)及び前記アレイ検知システムを駆動して回動させるβ角回動機構(15)と、シャーシ(16)と、を含み、前記重金属陽極ターゲットX線管(1)、前記入射コリメータ(2)、前記アレイ検知システムが前記シャーシ(16)に装着され、
前記アレイ検知システムは、受信アレイコリメータ(6)と、前記受信アレイコリメータ(6)にマッチングし、且つ各検知手段が単一光子測定を有するアレイ検知器(5)と、を含み、異なる部位の物質によって回折した短波長特徴X線は、直接に受信アレイコリメータ(6)の対応する各光通過孔により前記アレイ検知器(5)の相応する各検知手段に入射可能になっており、
前記重金属陽極ターゲットX線管(1)及び前記入射コリメータ(2)は前記θ角回動機構(13)に固定され、前記θ角回動機構(13)は、前記重金属陽極ターゲットX線管(1)及び前記入射コリメータ(2)を駆動して前記回折装置の回折計円の円心(21)を円心として回動させるためのものであり、前記アレイ検知システムは前記2θ角回動機構(14)に固定され、前記2θ角回動機構(14)は、前記アレイ検知システムを駆動して前記回折計円の円心(21)を円心として回動させるためのものであり、前記アレイ検知システムは同時に前記2θ角回動機構(14)により前記β角回動機構(15)に固定され、前記β角回動機構(15)は、前記アレイ検知システムを駆動して前記回折計円の円心を通る垂直点線を軸として回動させるためのものであり、入射ビームがβ角回転軸と重なるまで前記重金属陽極ターゲットX線管(1)及び前記入射コリメータ(2)が回動する場合、θ=0°であり、前記受信アレイコリメータ(6)の各光通過孔の方向がβ角回転軸と重なるまたは平行であるまで前記アレイ検知システムが回動する場合、2θ=0°であることを特徴とする回折装置。
【請求項2】
記アレイ検知器(5)の各画素の仕様が0.05mm~0.2mmであることを特徴とする請求項1に記載の回折装置。
【請求項3】
前記アレイ検知器(5)は、CdTeアレイ検知器、またはCdZnTeアレイ検知器であることを特徴とする請求項2に記載の回折装置。
【請求項4】
前記受信アレイコリメータ(6)の各光通過孔の仕様は0.05mm~0.2mmであり、隣り合う光通過孔の中心ピッチは0.02mm~0.2mmであり、各光通過孔は、互いに平行で仕様が同じであることを特徴とする請求項2または3に記載の回折装置。
【請求項5】
前記受信アレイコリメータ(6)の各光通過孔は、前記回折装置の回折計円平面での発散角が0.02°~0.2°であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の回折装置。
【請求項6】
前記X線照射システムは入射コリメータ(2)を含み、前記入射コリメータ(2)及び前記受信アレイコリメータ(6)はともに、原子番号が46より大きな重金属材料から製造されたものであることを特徴とする請求項5に記載の回折装置。
【請求項7】
前記入射コリメータ(2)及び前記受信アレイコリメータ(6)は、金、銀またはタングステンから製造されたものであることを特徴とする請求項6に記載の回折装置。
【請求項8】
前記アレイ検知器(5)の各々の画素はそれぞれ、1つの波高比較器を有することを特徴とする請求項2に記載の回折装置。
【請求項9】
前記アレイ検知器(5)の各々の画素はそれぞれ、少なくとも2つの波高比較器を有することを特徴とする請求項2に記載の回折装置。
【請求項10】
前記回折装置の回折計円の円心(21)から前記重金属陽極ターゲットX線管(1)のウインドウまでの距離は75mm~300mmであり、前記回折計円の円心(21)から前記アレイ検知システムのアレイ検知器(5)までの距離は100mm~300mmであり、
前記入射コリメータ(2)の光通過孔の中心延長線と前記アレイ検知器(5)の中間部分のある検知手段の中心延長線とは、前記回折計円の円心(21)で交わり、
前記重金属陽極ターゲットX線管(1)、前記高圧発生器(8)、及び前記コントローラ(9)が互いに共働して放出するX線をX線源とし、前記重金属陽極ターゲットX線管(1)はW、Au、Ag、UターゲットX線管を含み、且つ前記重金属陽極ターゲットX線管(1)に印加される電圧は、短波長特徴X線を発生する励起電圧の2倍以上であり
前記アレイ検知器(5)の相応する各検知手段が測定した短波長特性X線の回折カウント強度は、信号ケーブルを介して前記マスターコンピュータ(7)の通信インターフェースに入り、
前記コントローラ(9)は、高圧発生器(8)をオンにし、前記高圧発生器(8)が出力した電圧、電流を調節制御するためのものであり、前記X線遮蔽保護カバー(12)の両側の前記マスターコンピュータ(7)と前記遠隔操作端末(10)とは信号ケーブルにより接続され、作業者は、前記遠隔操作端末(10)で前記マスターコンピュータ(7)により前記回折装置を操作、制御することができることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の回折装置。
【請求項11】
前記入射コリメータ(2)の光通過孔は、仕様が0.05~0.2mmであり、回折計円平面での発散角が0.02°~0.2°であることを特徴とする請求項10に記載の回折装置。
【請求項12】
ワーク内部の結晶方位の均一性の非破壊検査を行う方法であって、請求項1~11のいずれか1項に記載の回折装置を採用し、この方法は、
ステップ1:短波長特徴X線を選択して使用し、固定波長λ及び光子エネルギーEを決定することと、
ステップ2:テスト対象サンプルのある部位のマトリックス相に対してテクスチャー分析を行い、被測定サンプルのマトリックス相のある強い回折結晶面(hkl)をテスト対象回折結晶面として選択し、その相応する回折角2θhklを特定し、該テスト対象回折結晶面の回折強度分布の極大値方向、またはその近傍のある方向をテスト対象回折ベクトルQの方向として選択し、テスト対象サンプルの座標系におけるテスト対象回折ベクトルQの方向の方位角α、βを特定することと、
ステップ3:被測定サンプルの厚み中心を前記回折装置の回折計円の円心近傍に置くことと、
ステップ4:アレイ検知システムを前記回折装置の回折角2θhklという箇所及び回折ベクトルQ(α、β)の方向に位置決めることにより、アレイ検知システムが、被測定サンプルにおける層深さに沿う各部位で回折した短波長特徴X線のカウント強度を同時に測定できるようにすることであって、前記被測定サンプルにおける層深さに沿う各部位は、被測定サンプルを通る経路上の入射X線ビームと受信アレイコリメータの各光通過孔の空間延長線とが交わる相応部位を意味していることと、
ステップ5:検査を開始し、被測定サンプルが回折装置に対して固定された場合、回折ベクトルQ(α、β)の方向において、X線入射ビームが被測定サンプルを通る経路上の各部位の物質が2θhkl方向に回折した短波長特徴X線のカウント強度を同時に測定し、被測定サンプルが回折装置に対して移動された場合、固定時間の測定方式を採用してX線入射ビームが走査した被測定サンプル領域の相応部位で回折した短波長特徴X線のカウント強度及びその分布を連続に測定することと、
ステップ6:アレイ検知システムが取得した短波長特徴X線のカウント強度に対して校正処理を行い、被測定サンプルの被測定部位の各座標位置の短波長特徴X線の回折強度及びその分布を得ることと、
ステップ7:得られた短波長特徴X線の回折強度がサンプル空間に沿って分布する差異程度に応じて被測定サンプル内部の結晶方位の均一性を判定することと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記アレイ検知システムは、前記受信アレイコリメータと、各画素が単一光子測定を有するアレイ検知器と、を含み、
前記アレイ検知器は一次元アレイ検知器を採用し、前記アレイ検知器の検知手段は、前記受信アレイコリメータの各々の光通過孔に対応する画素を受信し、即ち、第i番目の検知手段が検知したX線の回折カウント強度は、相応する光通過孔に対応する第i番目の画素が検知した短波長特徴X線の回折カウント強度Iであり、或いは、前記アレイ検知器は二次元アレイ検知器を採用し、前記アレイ検知器の第i番目の検知手段は、前記受信アレイコリメータの各々の光通過孔に対応する一列の画素を受信して構成され、第i番目の検知手段が検知した短波長特徴X線の回折カウント強度は、相応する光通過孔に対応する一列の画素が検知したX線の回折カウント強度の和であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アレイ検知システムは、前記受信アレイコリメータと、アレイ検知器と、を含み、前記アレイ検知器の各画素は、エネルギー分解能2Wを有し、且つ前記アレイ検知器の各々の画素はそれぞれ、1つの波高比較器を有し、予め設定された前記波高比較器の波高により各々の画素が検知した光子エネルギー閾値E1=(1-W)Eを決定することで、前記アレイ検知器の第i番目の検知手段は、エネルギーE以上の光子数のみを検知記録し、前記アレイ検知器の第i番目の検知手段が検知記録したエネルギーE以上の光子数は、第i番目の検知手段が検知した短波長特徴X線の回折カウント強度Iであることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記アレイ検知システムは、前記受信アレイコリメータと、アレイ検知器と、を含み、前記アレイ検知器の各画素は、エネルギー分解能2Wを有し、且つ前記アレイ検知器の各々の画素はそれぞれ、少なくとも2つの波高比較器を有し、予め設定された波高により各々の画素が検知した光子エネルギーの閾値E1=(1-W)E及び閾値E2=(1+W)Eを決定して検知することで、前記アレイ検知器の第i番目の検知手段は、エネルギーE1以上の光子数I1及びエネルギーE2以上の光子数I2を同時に検知記録し、検知記録されたエネルギーE1以上の光子数I1からエネルギーE2以上の光子数I2を引いた差は、第i番目の検知手段が検知した短波長特徴X線の回折カウント強度Iであることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2018年12月28日にて中国特許庁に提出され、出願番号が201811621809.0であり、発明名称が「回折装置、及びワーク内部の結晶方位の均一性の非破壊検査を行う方法」である中国特許出願の優先権を主張し、その全ての内容が援用されることで本出願に結合される。
【0002】
本発明は非破壊検査に関し、具体的には、回折装置、及び該回折装置を採用してワーク内部の結晶方位の均一性の非破壊検査を行う方法に関する。
【背景技術】
【0003】
鄭林等が発表された、「精密成形工学」という定期刊行物の文献である「予め引張された厚いアルミ板の内部の残留応力と結晶粒方位の均一性の研究」には以下のことが紹介される。即ち、SWXRD-1000型短波長X線回折計を採用して、厚さ20mm~25mmの予め引張されたアルミ板の異なる層深さ箇所での物質に対してK角走査を行って、K角に沿うWKα回折強度分布を非破壊測定し、予め引張されたアルミ板の厚み全体の内部テクスチャーの均一性を表明する。しかしながら、該短波長X線回折計を採用して検査する場合、1つの層深さ箇所で21つのK角箇所のWKα回折強度を走査測定した後、さらにサンプルのもう1つの層深さ箇所を回折計円の円心箇所に移動する必要があり、11つの層深さ箇所のK角走査測定が完成するまで、該層深さ箇所で21つのK角箇所のWKα1回折強度を走査測定することを繰り返し、各々の層深さ箇所の各々のK角箇所について、WKα1回折強度を測定するのに約0.5分かかる必要があり、合計で約21*11*0.5分=115.5分が必要であり、時間がかかりすぎる。明らかなように、このような方法は、サンチレベルの厚さのサンプル内部の結晶方位の均一性の快速表明に適しなく、生産ラインでの通常材料のワーク内部の結晶方位の均一性及び内部テクスチャーの均一性のオンライン非破壊検査にさらに適しない。なお、従来の他の機器または方法でサンチレベルの厚さのサンプル内部の結晶方位の均一性を検査することには、同様に検査時間が長く、検査効率が低いという課題があり、その検査時間を2分未満に短縮しようとすることはさらに、当分野が直面する1つの技術的難点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の第1つの目的は、回折装置を提供することにあり、本発明の第2つの目的は、該回折装置を採用してワーク内部の結晶方位の均一性の非破壊検査を行う方法を提供することにあり、該方法は、ワーク内部の結晶方位の均一性を快速に検査できる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、以下のように記載される技術案を採用して実現される。
【0006】
被測定サンプルの測定部位にX線を照射するX線照射システムと、X線が被測定サンプルの複数の部位で回折して形成した複数条の回折X線を同時に検知することにより、被測定サンプルのX線回折強度分布を測定するX線検知システムと、を含む回折装置であって、検知される前記X線は短波長特徴X線であり、X線検知システムは、アレイ検知システムである。
【0007】
さらに、アレイ検知システムは、受信アレイコリメータと、受信アレイコリメータにマッチングし、且つ各検知手段が単一光子測定を有するアレイ検知器と、を含む。
【0008】
さらに、前記アレイ検知器の各画素は、単一光子検知を備える。
【0009】
さらに、前記アレイ検知器は、CdTeアレイ検知器、またはCdZnTeアレイ検知器である。
【0010】
さらに、前記アレイ検知器の各々の画素はそれぞれ、1つの波高比較器を有する。
【0011】
さらに、前記アレイ検知器の各々の画素はそれぞれ、少なくとも2つの波高比較器を有する。
【0012】
さらに、前記アレイ検知器の各画素の仕様は0.05mm~0.2mmである。
【0013】
さらに、受信アレイコリメータの光通過孔の仕様は0.05mm~0.2mmであり、隣り合う光通過孔の中心ピッチは0.02mm~0.2mmであり、各光通過孔は互いに平行で仕様が同じである。
【0014】
さらに、受信アレイコリメータは、回折装置の回折計円平面での発散度合いが0.02°~0.2°である。
【0015】
好ましくは、受信アレイコリメータは、原子番号が46より大きな重金属材料から製造される。
【0016】
より好ましくは、受信アレイコリメータは、金、銀またはタングステンから製造される。
【0017】
さらに、該回折装置のX線照射システムは、重金属陽極ターゲットX線管と、入射コリメータと、被測定サンプルを装着するサンプル台と、マスターコンピュータと、高圧発生器と、コントローラと、遠隔操作端末と、X線遮蔽保護カバーと、重金属陽極ターゲットX線管を駆動して回動させるθ角回動機構と、アレイ検知システムを駆動して回動させる2θ角回動機構及びアレイ検知システムを駆動して回動させるβ角回動機構と、を含み、重金属陽極ターゲットX線管、入射コリメータ、アレイ検知システムがシャーシに装着され、
回折装置の回折計円の円心から重金属陽極ターゲットX線管のウインドウまでの距離は75mm~300mmであり、回折計円の円心からアレイ検知器までの距離は100mm~300mmであり、
入射コリメータの光通過孔の中心延長線とアレイ検知器の中間部分のある検知手段の中心延長線とは、回折計円の円心で交わり、
X線源は重金属陽極ターゲットX線管、高圧発生器、及びコントローラ等からなってX線を放出し、重金属陽極ターゲットX線管はW、Au、Ag、Uターゲット等X線管を含み、且つ重金属陽極ターゲットX線管に印加される電圧は、短波長特徴X線を発生する励起電圧の2倍以上であり、
異なる部位の物質によって回折した短波長特徴X線は、直接に受信アレイコリメータの対応する光通過孔によりアレイ検知器の相応する各検知手段に入射することができ、
重金属陽極ターゲットX線管及び入射コリメータはθ角回動機構に固定され、θ角回動機構は、重金属陽極ターゲットX線管及び入射コリメータが回折計円の円心を円心として回動するように駆動するためであり、アレイ検知システムは2θ角回動機構に固定され、2θ角回動機構は、アレイ検知システムを駆動して回折計円の円心を円心として回動させるためであり、アレイ検知システムは同時に2θ角回動機構によりβ角回動機構に固定され、β角回動機構は、アレイ検知システムが回折装置の回折計円の円心を通る垂直点線を軸として回動するように駆動するためであり、入射ビームがβ角回転軸と重なるまで重金属陽極ターゲットX線管及び入射コリメータが回動する場合、θ=0°であり、各光通過孔の方向がβ角回転軸と重なるまたは平行であるまでアレイ検知システムが回動する場合、2θ=0°であり、
アレイ検知器の相応する各検知手段が測定した短波長特性X線の回折カウント強度は、信号ケーブルを介してマスターコンピュータの通信インターフェースに入り、
コントローラは、高圧発生器をオンにし、高圧発生器が出力した電圧、電流を調節制御するためであり、X線遮蔽保護カバーの両側のマスターコンピュータと遠隔操作端末とは信号ケーブルにより接続され、作業者は、遠隔操作端末でマスターコンピュータにより回折装置を操作、制御することができる。
【0018】
さらに、入射コリメータの光通過孔の仕様は0.05~0.2mmであり、回折計円平面での発散度合いは0.02°~0.2°である。
【0019】
前述の回折装置を採用し、ステップは、
ステップ1:短波長特徴X線を選択して使用し、固定波長λ及び光子エネルギーEを決定することであって、短波長特徴X線について、WKα1、AuKα1、Agα1、UKα1等を選んでも良いことと、
ステップ2:テスト対象サンプルのある部位のマトリックス相に対してテクスチャー分析を行い、被測定サンプルのマトリックス相のある強い回折結晶面(hkl)をテスト対象回折結晶面として選択し、その相応する回折角2θhklを特定し、該テスト対象回折結晶面の回折強度分布の極大値方向、またはその近傍のある方向をテスト対象回折ベクトルQの方向として選択し、テスト対象サンプルの座標系におけるテスト対象回折ベクトルQの方向の方位角α、βを特定することと、
ステップ3:被測定サンプルの厚み中心を回折装置の回折計円の円心近傍に置くことと、
ステップ4:アレイ検知システムを回折装置の回折角2θhklという箇所及び回折ベクトルQ(α、β)の方向に位置決めることにより、アレイ検知システムが、被測定サンプルにおける層深さに沿う各部位で回折した短波長特徴X線のカウント強度を同時に測定できるようにすることであって、被測定サンプルにおける層深さに沿う各部位は、被測定サンプルを通る経路上の入射X線ビームと受信アレイコリメータの各光孔の空間延長線とが交わる相応部位を意味していることと、
ステップ5:検査を開始し、被測定サンプルが回折装置に対して固定された場合、回折ベクトルQ(α、β)の方向において、入射X線ビームが被測定サンプルを通る経路上の各部位の物質が2θhkl方向に回折した短波長特徴X線のカウント強度を同時に測定し、被測定サンプルが回折装置に対して移動された場合、固定時間の測定方式を採用して入射X線ビームが走査した被測定サンプル領域の相応部位で回折した短波長特徴X線のカウント強度及びその分布を連続に測定することと、
ステップ6:アレイ検知システムが取得した短波長特徴X線のカウント強度に対して吸収強度校正処理を行い、被測定サンプルの被測定部位の各座標位置の短波長特徴X線の回折強度及びその分布を得ることと、
ステップ7:得られた短波長特徴X線の回折強度がサンプル空間に沿って分布する差異程度に応じて被測定サンプル内部の結晶方位の均一性を判定することと、を含むワーク内部の結晶方位の均一性の非破壊検査を行う方法。
【0020】
好ましくは、アレイ検知器は、各画素が単一光子測定を有するアレイ検知器であり、一次元アレイ検知器を採用する場合、アレイ検知器の検知手段は、受信アレイコリメータの各々の光通過孔に対応する画素を受信し、即ち、第i番目の検知手段が検知したX線の回折カウント強度は、相応する光通過孔に対応する第i番目の画素が検知した短波長特徴X線の回折カウント強度Iであり、或いは、アレイ検知器は二次元アレイ検知器を採用し、アレイ検知器の第i番目の検知手段は、受信アレイコリメータの各々の光通過孔に対応する一列の画素を受信して構成され、第i番目の検知手段が検知した短波長特徴X線の回折カウント強度は、相応する光通過孔に対応する一列の画素が検知したX線の回折カウント強度の和である。
【0021】
好ましくは、アレイ検知器の各画素は、エネルギー分解能2Wを有し、且つアレイ検知器の各々の画素はそれぞれ、1つの波高比較器を有し、予め設定された波高比較器の波高により各々の画素が検知した光子エネルギー閾値E1=(1-W)Eを決定することで、アレイ検知器の第i番目の検知手段は、エネルギーE以上の光子数のみを検知記録し、アレイ検知器の第i番目の検知手段が検知記録したエネルギーE以上の光子数は、第i番目の検知手段が検知した短波長特徴X線の回折カウント強度Iである。
【0022】
好ましくは、アレイ検知器の各画素は、エネルギー分解能2Wを有し、且つアレイ検知器の各々の画素はそれぞれ、少なくとも2つの波高比較器を有し、予め設定された波高により各々の画素が検知した光子エネルギーの閾値E1=(1-W)E及び閾値E2=(1+W)Eを決定することで、アレイ検知器の第i番目の検知手段は、エネルギーE1以上の光子数I1及びエネルギーE2以上の光子数I2を同時に検知記録し、検知記録されたエネルギーE1以上の光子数I1からエネルギーE2以上の光子数I2を引いた差は、第i番目の検知手段が検知した短波長特徴X線の回折カウント強度Iである。
【0023】
有益な効果:本発明の方法及び装置を採用すれば、複数の層深さ部位を同時に走査検査することができ、各々の層深さ箇所で単独に走査検査する必要がないので、検査効率を大幅に向上して検査時間を節約することができ、本発明は、サンチレベルの厚さのワークのテスト対象部位のその厚み全体での内部の結晶方位の均一性の検査時間を2分間以内に短縮でき、サンチレベルのワーク内部の結晶方位の均一性の検査には時間がかかるという技術の難問題を解決し、本発明は、サンチレベルの厚さのワークがその厚み方向全体における内部の結晶方位の均一性を快速に非破壊検査することができるだけではなく、生産ラインでサンチレベルの厚さのワークの、その運動軌跡の厚み方向全体における内部の結晶方位の均一性のオンライン検査及び表明も実現することができ、従来の検査方法と比較すると、その検査効率は、数十から数百倍向上でき、非破壊、快速、簡単、低コスト、実用及び信頼等の利点を有する。厚さ20~25mmのアルミ板の厚み方向に沿う内部の結晶方位の均一性の検査を例として、背景技術における検査方法を採用すれば、所要時間が約115.5分であり、本発明の方法を採用すれば、約20秒のみが必要であり、比較すれば、検査効率が約346倍向上する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明のワーク内部の結晶方位の均一性の非破壊検査を行う方法の模式図であり、20は装置の回折計円を示し、21は装置の回折計円の円心を示し、2は装置の入射コリメータを示し、5は装置のアレイ検知器を示し、6は装置の受信アレイコリメータを示し、Q(α、β)は、入射X線ビームが被測定サンプルを通る経路上の各部位の物質の回折結晶面(hkl)を同時に測定する法線方向である。
図2】テスト対象ワークの2つのテスト対象回折ベクトルの圧延アルミ板のAl{111}極線図を標示する。
図3】本発明の回折装置模式図である。
図4】本発明の回折装置の入射コリメータの断面図である。
図5図4の1種類の入射コリメータのA矢視図であり、その光通過孔が矩形である。
図6】本発明の回折装置の受信アレイコリメータ及びそのアレイ検知システムが各部位を検知する回折線の模式図である。
図7】本発明のワーク内部の結晶方位の均一性の非破壊検査を行う方法のフローチャートである。
図8】実施例2における厚さ25mmの予め引張アルミ板のAl(111)結晶面の、回折ベクトルQ(0,0)の方向における回折強度の厚みに沿う分布表明である。
図9】実施例3における運動状態での圧延アルミ板の第i層の回折強度の圧延板に沿ってサンプル位置に沿う分布表明である。
図10】実施例3における運動状態での圧延アルミ板の回折強度の、運動位置、サンプル層深さに沿う分布表明である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、具体的な実施例を結合して本発明をさらに説明し、ここでは指摘するように、以下の実施例を、本発明の保護範囲への制限と理解できず、当業者が本発明の内容に応じて行われるいくつかの本質的でない改善及び調整は、いずれも本発明の保護範囲内にある。
【0026】
(実施例1)
本実施例は、本発明の方法に使用される検査機器と回折装置を紹介することを重点とする。
【0027】
図1図3図6に示すように、回折装置である。該装置は、重金属陽極ターゲットX線管1と、入射コリメータ2と、サンプル4を装着するサンプル台3と、各検知手段が単一光子測定を有するアレイ検知器5及びアレイ検知器5の前に固定される受信アレイコリメータ6と、マスターコンピュータ7と、高圧発生器8と、コントローラ9と、遠隔操作端末10と、X線遮蔽保護カバー12と、重金属陽極ターゲットX線管1のθ角回動機構13と、受信アレイコリメータ6とアレイ検知器5からなるアレイ検知システムと、アレイ検知システムの2θ角回動機構14と、アレイ検知システムのβ角回動機構15と、装置のシャーシ16と、を含む。
【0028】
回折計円の円心から重金属陽極ターゲットX線管のウインドウまでの距離は75mm~300mmであり、回折計円の円心からアレイ検知器までの距離は100mm~300mmである。
【0029】
入射コリメータ2の中心延長線とアレイ検知器5の中間部分のある検知手段の中心延長線とは、回折計円の円心で交わり、
重金属陽極ターゲットX線管1、高圧発生器8、コントローラ9等ならかるX線を本装置のX線源とし、且つ重金属陽極ターゲットX線管に印加される電圧は、短波長特徴X線を発生する励起電圧の2倍以上であり、
入射コリメータ2は、X線吸収が強く、且つ原子番号が46より大きな重金属材料から製造され、例えば、金、銀、タングステン等であり、その光通過孔は矩形孔、円孔または他の規則的な形状の孔であり、回折計円平面での発散度合いが0.02°より大きくて0.20°より小さく、光通過孔の仕様が0.05mm~0.2mmであり、各光通過孔の仕様が同じであり、前記光通過孔が円孔である場合、円孔径が0.05mm~0.2mmであることを意味しており、前記光通過孔が矩形孔である場合、矩形孔の幅が0.05mm~0.2mmであることを意味しており、前記光通過孔が三角形孔である場合、三角形の底辺幅が0.05mm~0.2mmであることを意味しており、
受信アレイコリメータ6の各光通過孔は互いに平行であり、且つサイズが同様な矩形孔または円孔であり、発散度合いが同様であり、回折計円平面での発散度合いが0.02°より大きくて0.20°より小さく、隣り合う光通過孔の中心線ピッチが0.02mm~0.2mmであり、X線吸収が強い重金属材料、例えば、金、銀、タングステン等から製造され、
アレイ検知器5について、CdTeアレイ検知器を採用し、
受信アレイコリメータ6の各光通過孔は、相応する各検知手段に対向し、アレイ検知器5と受信アレイコリメータ6とにより、短波長X線回折を検知するアレイ検知システムが構成され、回折した短波長X線は、直接に受信アレイコリメータ6の各光通過孔によりアレイ検知器5の相応する各検知手段に入射することができ、
重金属陽極ターゲットX線管1及び入射コリメータ2はθ角回動機構13に固定され、θ角回動機構13は、重金属陽極ターゲットX線管1及び入射コリメータ2を駆動して回折計円の円心を円心として回動させることができ、アレイ検知システムは2θ角回動機構14に固定され、2θ角回動機構14は、アレイ検知システムを駆動して回折計円の円心を円心として回動させることができ、アレイ検知システムは2θ角回動機構14によりβ角回動機構15に固定され、β角回動機構15は、アレイ検知システムを駆動して図3における回折計円の円心を通る垂直点線を軸として回動させることができ、入射ビームがβ角回転軸と重なるまで重金属陽極ターゲットX線管1及び入射コリメータ2が回動する場合、θ=0°であり、各光通過孔の方向がβ角回転軸と重なるまたは平行であるまでアレイ検知システムが回動する場合、2θ=0°であり、
β角回動機構15は、アレイ検知システムを駆動して装置模式図(図3)における回折計円の円心を通る垂直点線を軸として回動させることができ、入射ビームがβ角回転軸と重なるまで重金属陽極ターゲットX線管1及び入射コリメータ2が回動する場合、θ=0°であり、各光通過孔の方向がβ角回転軸と重なるまたは平行であるまでアレイ検知システムが回動する場合、2θ=0°であり、θ角回動機構13の回動及び2θ角回動機構14の回動により、テスト対象回折ベクトルQの方向角αをα=αになるように回転することができ、β角回動機構15の回動により、テスト対象回折ベクトルQの方向角βをβ=βになるように回転することができることにより、回折幾何を満たす条件で、サンプル座標系における、本発明の方法が規定するテスト対象回折ベクトルQ(α、β)の方向において、及び2θ=2θhkl方向において、入射ビームが被測定サンプルを通る経路上の各部位の物質の方向上に回折した短波長特徴X線のカウント強度を同時に測定することを保証し、被測定サンプルの厚み全体での内部の結晶方位の均一性を表明し、
アレイ検知器5の相応する各検知手段が測定した短波長X線の回折カウント強度は、信号ケーブルを介してマスターコンピュータ7の通信インターフェースに入り、サンプル4の深さに沿う短波長X線の回折カウント強度分布を測定し得、被測定材料/ワークの深さ方向における結晶方位の均一性を表明し、サンプル4が装置に対して運動する場合、測定した短波長X線の回折カウント強度分布は、被測定材料/ワーク内部の深さ方向における内部の結晶方位の均一性だけでなく、被測定材料/ワーク内部のサンプル4運動軌跡における内部の結晶方位の均一性も表明し、
高圧コントローラ9は、高圧発生器8をオンにし、高圧発生器8が出力した電圧、電流等を調節制御するためであり、X線遮蔽保護カバー12の両側のマスターコンピュータ7と遠隔操作端末10とは信号ケーブルにより接続され、作業者は、遠隔操作端末10でマスターコンピュータ7により本発明の装置を操作、制御することができ、本装置の重金属陽極ターゲットX線管1、X線源及びその入射コリメータ、アレイ検知システム等は、装置のシャーシ16に装着される。
【0030】
(実施例2)
ワーク内部の結晶方位の均一性の非破壊検査を行う方法であって、冷間圧延された厚さ25mmの2024アルミ板内部の結晶方位の均一性を検査するために、実施例1における回折装置を採用し、図7に示すことを参照し、具体的なステップは以下のようにする。即ち、
ステップ1:WKα1を回折する短波長特徴X線、固定波長λ=0.0209nm、定光子エネルギーをE=59.3kevとして選択することと、
ステップ2:XRDを採用して2024アルミ板の結晶方位の分布を検査分析し、測定された中間層Al{111}極線図及びその分析結果について、図2に示すように、図2の極線図における17が示す点の(極線図の外輪と横方向TD方向との交点)方向を、テスト対象回折ベクトルQの方向として選択し、Q(α,β)=Q(0,0)であり、即ち、方向角(方位角)がα、βであり、WKα1を、採用する短波長特徴X線として選択することを結合すれば、回折角が2θ111=5.12°であることを算出し特定し、
ステップ3:2024アルミ板の厚み中心を実施例1における回折装置のサンプル台3上に置いて回折計円の円心近傍までに調整し、回折装置の回折計円の円心からWターゲットX線管1のウインドウまでの距離が200mmであり、回折装置の回折計円の円心からアレイ検知器5までの距離が200mmであり、入射コリメータはタングステン合金から製造され、その光通過孔が矩形孔であり、回折装置の回折計円平面での発散度合いが0.11°より大きく、光通過孔の幅が0.1mmであり、
ステップ4:アレイ検知システムを、回折装置の回折角2θ=2θhklという箇所及び回折ベクトル(α、β)方向に同時に位置決め、具体的には、0°に位置するθ角回動機構13及び2θ角回動機構14をそれぞれ、2.56°対向回動し(θ角回動機構13は時計回りに2.56°回動し、2θ角回動機構14は反時計回りに2.56°回動し)、この場合、アレイ検知システムの回折角2θ111=5.12°であり、テスト対象回折ベクトルQの方向角αをα=0°まで回転するとともに、β角回動機構15の回動により、テスト対象回折ベクトルQの方向角βをβ=0°まで回転することで、アレイ検知システムは、被測定サンプルが厚み方向に沿って回折した短波長特徴X線のカウント強度を取得でき、
ステップ5~6:合計128×256つの検知画素を持つCdTeアレイ検知器5を採用するとともに、該アレイ検知器5のパラメータを設定し、その検知画素の大きさが0.1mm×0.1mmであり、そのアレイ検知器5の各画素は、エネルギー分解能2W(10%より優れる)を有し、且つアレイ検知器5の各々の画素はそれぞれ、少なくとも2つの波高比較器(各々の波高は、検知された光子エネルギーに比例する)を有し、該アレイ検知器5の前に固定される受信アレイコリメータ6は、その各光通過孔が互いに平行であり、且つサイズが同様な矩形孔であり(矩形孔の仕様:幅0.1mm、高さ5mm)、隣り合う光通過孔の中心線ピッチが0.1mmであり、発散度合いが同様であり、且つ回折計円平面での発散度合いが0.11°であり、受信アレイコリメータ6は、タングステン合金を加工してなるものであり、各光通過孔が、50つの画素からなる1つの検知手段と位置合わせ、第i番目の検知手段が検知したWKα1回折カウント強度は、相応する50つの画素が検知したWKα1回折カウント強度の和であり、即ち、第i番目の検知手段が検知したWKα1回折カウント強度Iであり、
予め設定された波高により、各々の画素が検知した光子エネルギーの閾値E1=0.95E及び閾値E2=1.05E(WKα1光子エネルギーE=59.3kev)を決定して検知し、測定する場合、アレイ検知器5の第i番目の検知手段は、エネルギーE1以上の光子数I1、及びエネルギーE2以上の光子数I2を同時に検知記録し、検知記録されたエネルギーE1以上の光子数I1からエネルギーE2以上の光子数I2を引いた差(I1-I2)は、アレイ検知器5の第i番目の検知手段が検知記録したエネルギーE1以上、エネルギーE2以下のWKα光子数であり、即ち、I1-I2は第i番目の検知手段が検知したWKα回折カウント強度I=I1-I2であり、
測定時間=20s、管電圧=200kv、管電流=12mA等のテストパラメータを設定し、
検査を開始し、2024アルミ板の厚み全体の内層ピッチが1.12mmである各部位の物質によって回折したWKα1カウント強度を同時に測定し、20sの時間かかって検査を完成した後、テストデータを保存し、
予め同様な条件で測定された厚さ25mmの非テクスチャーのアルミ粉末板状のサンプルデータを採用し、上記の測定された冷間圧延された厚さ25mmの2024アルミ板のテストデータに対してX線吸収校正処理を行うことで、厚さ座標においてピッチが1.12mmである各部位の物質によって回折したWKα1カウント強度及びその分布を得て、検査結果について、図8に示すようにし、
ステップ7:短波長特徴X線の回折強度がサンプル空間に沿って分布する差異程度に応じて被測定サンプル内部の結晶方位の均一性を判定し、図8により分かるように、該2024アルミ板の異なる部位で回折したWKα1カウント強度の差異が大きく(柱状高さの差異が明らかである)、測定された冷間圧延された厚さ25mmの2024アルミ板内部の結晶方位が不均一であると判定できる。
【0031】
(実施例3)
ワーク内部の結晶方位の均一性の非破壊検査を行う方法であって、直線運動中の冷間圧延された厚さ20mmの7075アルミ板内部の結晶方位の均一性を検査するためである。
【0032】
本実施例において、検査方法、ステップ及び使用する回折装置は、実施例1及び実施例2と同様であり、相違点は、以下のパラメータの選択である。即ち、
図2における18が示す点(横方向TD方向との夾角が68°である方向と極線図の外輪との交点)の方向をテスト対象回折ベクトルQの方向として選択し、即ち、回折ベクトルQ(α、β)=Q(0,68°)であり、
本実施例において、回折装置の回折計円の円心からWターゲットX線管のウインドウまでの距離は150mmであり、入射コリメータはタングステン合金から製造され、その光通過孔が矩形孔であり、回折計円平面での発散度合いが0.15°より大きく、光通過孔の幅が0.08mmであり、
操作する場合、β角回動機構の回動により、テスト対象回折ベクトルQの方向角βをβ=68°に回転し、
本実施例において、合計64×64つの検知画素を持つCdZnTeアレイ検知器を採用し、アレイ検知器の各々の画素はそれぞれ、1つの波高比較器(各々の波高は、検知された光子エネルギーに比例する)を有し、使用される受信アレイコリメータの各光通過孔は幅0.2mm、高さ1mmであり、回折計円平面での発散度合いが0.15°であり、各光通過孔は、2×10つの画素からなる1つの検知手段と位置合わせ、第i番目の検知手段が検知したWKα回折カウント強度は、相応する20つの画素が検知したWKα回折カウント強度の和であり、
予め設定された波高により各々の画素が検知した光子エネルギーの閾値E=0.95Eを決定して検知し、測定する場合、アレイ検知器の第i番目の検知手段が検知記録したエネルギーE1以上の光子数I1は、第i番目の検知手段が検知したWKα1回折カウント強度Iと認定され、
測定時間=10s、管電圧=200kv、管電流=8mA、及び7075アルミ板が図3に示す装置図の紙面に垂直な方向に10mm/sの速度で等速直線運動すること等のテストパラメータを設定し、
検査を開始し、10mm/sの速度で等速直線運動する7075アルミ板を連続に非破壊検査し、10s毎に、長さ100mmのアルミ板の厚み全体での内層ピッチが0.9mmである各部位の物質によって回折したWKαカウント強度及びその分布を測定するとともに、テストデータを保存し、
予め同様な条件で測定された厚さ20mmの非テクスチャーのアルミ粉末板状のサンプルデータを採用し、上記の測定された冷間圧延された厚さ20mmの7075アルミ板のテストデータに対してX線吸収校正処理を行い、10s毎に、全厚さ座標における層深さピッチが0.9mmである各部位の物質によって回折した1つのWKα1カウント強度及びその全アルミ板厚さに沿う分布を得て、検査結果について、図8に示すように直感的に表明し、本実施例において、各々の層について、アルミ板長さ座標におけるピッチが100mmである各部位の物質によって回折したWKα1カウント強度の平均値及びそのアルミ板全長さに沿う分布をさらに得ることができ、検査結果について、図9に示すように直感的に表明し、入射X線ビームが走査した領域の短波長特徴X線の回折強度分布、即ち、短波長特徴X線の回折強度の面分布を得て、図10の方式で直感的に表明することができ、測定された冷間圧延された厚さ20mmの7075アルミ板内部の結晶方位の均一性を判定する。
【0033】
(実施例4)
ワーク内部の結晶方位の均一性の非破壊検査を行う方法であって、冷間圧延された厚さ25mmの7050アルミ板内部の結晶方位の均一性を検査するためである。
【0034】
本実施例において、検査方法、ステップ及び使用する回折装置は、実施例1及び実施例2と同様であり、相違点は、以下のパラメータ選択である。即ち、
図2の極線図における17が示す点(極線図の外輪と横方向TD方向との交点)からその径方向に沿って2.56°移動した点の方向を、テスト対象回折ベクトルQの方向とし、即ち、回折ベクトルQ(α、β)=Q(2.56°、0°)であり、測定が開始する前に、θ=0°、β=0°であり、2θ角回動機構が5.12°までに回動し(即ち、2θ111=5.12°)、この場合、アレイ検知システムの回折角2θ111=5.12°であり、即ち、この場合の入射X線ビームはアルミ板に垂直に入射し、β角回転軸と重なり、
合計64×64つの検知画素を持つCdTeアレイ検知器を採用し、第i番目の検知手段が検知したWKα1回折カウント強度は、相応する50つの画素が検知したカウント強度の和であり、即ち、第i番目の検知手段が検知したWKα回折カウント強度Iiである。得られた結果について、図8に示すように、結晶方位の均一性を直感的に表明し、サンプルの結晶方位の均一性の評価に適用される。
【0035】
(実施例5)
ワーク内部の結晶方位の均一性の非破壊検査を行う方法であって、厚さ6mmのNi基合金GH4169の単結晶直方体サンプルを検査するためであり、その内部の結晶方位の均一性を非破壊検査することが要求され、サンプルの単結晶性への評価に適用される。
【0036】
本実施例において、検査方法、ステップ及び使用する回折装置は、実施例1及び実施例2と同様であり、相違点は、以下のパラメータ選択である。即ち、
本例はまず、XRDを採用してサンプルの厚さ中間層の1つの部位の物質及びその結晶方位を検査分析し、サンプルのNi(200)結晶面を回折結晶面、幅方向をテスト対象回折ベクトル方向として選択し、即ち、回折ベクトルQ(α,β)=Q(0,0)であり、UKαを、採用する短波長特徴X線として選択することを結合すれば、(その波長λ=0.0126nm、その光子エネルギーE0=98.2kev)回折角2θ200=3.086°であることを規定し、
回折装置の回折計円の円心からWターゲットX線管のウインドウまでの距離は300mmであり、装置の回折計円の円心からアレイ検知器までの距離は150mmであり、入射コリメータの光通過孔の幅は0.06mmであり、
0°に位置するθ角回動機構及び2θ角回動機構をそれぞれ、1.543°対向回動し、テスト対象回折ベクトルQの方向角αをα=0°に回転し、この場合、アレイ検知システムの回折角2θ200=3.086°であるとともに、β角回動機構の回動により、テスト対象回折ベクトルQの方向角βをβ=0°に回転し、
測定時間=120s、管電圧=270kv、管電流=5mA等のテストパラメータを設定し、
検査を開始し、厚み全体の内層ピッチが1.1mmである各部位の物質によって回折したWKα1カウント強度を同時に測定し、120sの時間かかって検査を完成した後、テストデータを保存し、厚さ座標におけるピッチが1.1mmである各部位の物質によって回折したUKα1カウント強度及びその板厚み全体に沿う分布を得て、図8に示すように、結晶方位の均一性を直感的に表明し、該サンプルの単結晶性への評価に適用される。
【符号の説明】
【0037】
1 ・・・重金属陽極ターゲットX線管;
2 ・・・入射コリメータ;
3 ・・・サンプル台;
4 ・・・サンプル;
5 ・・・アレイ検知器;
6 ・・・受信アレイコリメータ;
7 ・・・マスターコンピュータ;
8 ・・・高圧発生器;
9 ・・・コントローラ;
10 ・・・遠隔操作端末;
11 ・・・各光通過孔を通過する回折部位及び回折体積;
12 ・・・X線遮蔽保護カバー;
13 ・・・重金属陽極ターゲットX線管1のθ角回動機構;
14 ・・・アレイ検知システムの2θ角回動機構;
15 ・・・アレイ検知システムのβ角回動機構;
16 ・・・装置のシャーシ;
22 ・・・アレイ検知器の画素;
アレイ検知システムは、受信アレイコリメータと、アレイ検知器と、を含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10