(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】ロイコノストック・シトレウムWIKIM0104を含む肥満または脂肪肝疾患の予防、改善または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20221227BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20221227BHJP
A23C 9/13 20060101ALI20221227BHJP
A23C 9/127 20060101ALI20221227BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20221227BHJP
A61K 35/744 20150101ALI20221227BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20221227BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20221227BHJP
A23K 10/16 20160101ALI20221227BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221227BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20221227BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
A23L33/135
A23C9/13
A23C9/127
A23L2/00 F
A23L2/52
A61K35/744
A61P1/16
A61P3/04
A23K10/16
A61P29/00
C12N15/11 Z
(21)【出願番号】P 2021550279
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 KR2020002845
(87)【国際公開番号】W WO2020175940
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-08-27
(31)【優先権主張番号】10-2019-0024254
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCCM KCCM12420P
(73)【特許権者】
【識別番号】519359723
【氏名又は名称】コリア フード リサーチ インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,ハク・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】リム,シュル‐キ
【審査官】竹内 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1873193(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0037310(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0000510(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-0872911(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第2016-0108645(KR,A)
【文献】Nutrients, 2018, 10(5):643
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
C12P 1/00-41/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受託番号KCCM12420Pのロイコノストック・シトレウムWiKim0104{Leuconostoc citreum WiKim0104}。
【請求項2】
ロイコノストック・シトレウムWiKim0104(Leuconostoc citreum WiKim0104;受託番号KCCM12420P)、その培養物、その破砕物またはその抽出物を有効成分として含む炎症、肥満または脂肪肝疾患の予防または改善用組成物。
【請求項3】
前記脂肪肝疾患は、単純脂肪肝、非アルコール性脂肪肝炎、肝線維化及び肝硬変
から選択される少なくとも1つである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、食品組成物、食品醗酵用乳酸菌スタータ組成物、飼料または飼料添加剤組成物、または薬学組成物であることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記食品組成物は、健康機能食品、飲料、バーまたは発酵乳である、請求項4に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年2月28日に出願された韓国出願第10-2019-0024254号に基づいた優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された全ての内容は本出願に援用される。本発明は、キムチから分離された新規な菌株及びこれを含む炎症、肥満または脂肪肝疾患の予防、改善または治療用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脂肪肝(fatty liver)は、脂肪の過度な摂取と肝内の蓄積及び合成の増加、排出減少などの原因により正常な脂肪代謝が行われず、肝細胞内に中性脂肪が蓄積される疾患であり、脂肪が全体の肝重さの5%以上を占める時、脂肪肝と分類する。
【0003】
また、最近、高脂肪、高熱量の西欧化された食生活と文明の発達による運動不足などに起因して脂肪肝患者が急増しており、年齢も10代から60代以後まで発病されている。持続的に肝に脂肪が蓄積されると、炎症を伴う脂肪肝性肝炎に進行され、慢性炎症による肝組織怪死、肝の繊維化により肝硬変が発生し得る。さらに症状が悪化する場合、肝臓がんに発展する可能性がある。したがって、脂肪肝は肝炎、肝硬変及び肝臓がんの最大の原因である。
【0004】
現在、市販中で用いられている薬物は、肥満治療を通じた脂肪肝の改善を表すオルリスタット(orlistat)を主原料とするゼニカルTM(Roche)、シブトラミン(sibutramin)を主原料とするリダクチルTM(Abbott)などがあるが、下痢、腹痛、不眠症などの副作用を示し、脂肪肝の治療剤としてはクロフィブラート(clofibrate)で代表されるフィブラート系薬剤などが臨床で使用されているが、肝機能障害などの副作用が報告されている。
【0005】
一方、下記の特許文献1における多様な乳酸菌が脂肪肝の改善効果を示してはいるものの、脂肪肝の根本的な予防または改善効果を有し、前述した副作用が表れない脂肪肝治療剤の開発が切実に必要である。
【0006】
一方、特許文献1では、ビフィドバクテリウム属、ラクトバシラス属などの多様な乳酸菌の脂肪肝の改善効果を開示しているが、未だに脂肪肝に対する根本的な治療効果を有しつつも前述した副作用が表れない治療剤は開発されていない実情である。したがって、脂肪肝の根本的な治療が可能でかつ副作用のない治療剤の開発が切実に必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国特許出願第10-1937365号(2018.08.08.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、脂肪肝疾患の予防または改善効能に優れた新規なロイコノストック・シトレウム属乳酸菌を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者らは、伝統醗酵食品から脂肪肝疾患の予防または改善効果を表す乳酸菌菌株を見つけるために努力した結果、新規なワイセル属乳酸菌菌株であるロイコノストック・シトレウムWiKim0104(Leuconostoc citreum WiKim0104)を分離、同定して本発明を完成するようになった。
【0010】
本発明の一具現例は、ロイコノストック・シトレウムWiKim0104(Leuconostoc citreum WiKim0104)、その培養物、その破砕物またはその抽出物を有効成分として含む炎症、肥満または脂肪肝疾患の予防または改善用組成物を提供する。
【0011】
前記脂肪肝疾患は、単純脂肪肝、非アルコール性脂肪肝炎、肝線維化及び肝硬変からなる群より選択されたいずれか一つ以上であることができる。
【0012】
前記組成物は、食品組成物、食品醗酵用乳酸菌スタータ組成物、飼料または飼料添加剤組成物、または薬学組成物であることができる。
【0013】
前記食品組成物は、健康機能食品、飲料、バーまたは発酵乳を含むことができる。
【0014】
本発明の他の具現例は、ロイコノストック・シトレウムWiKim0104(Leuconostoc citreum WiKim0104)、その培養物、その破砕物またはその抽出物の炎症、肥満または脂肪肝疾患の予防、改善または治療用途を提供する。
【0015】
前記脂肪肝疾患は、単純脂肪肝、非アルコール性脂肪肝炎、肝線維化及び肝硬変からなる群より選択されたいずれか一つ以上を含むことができる。
【0016】
食品組成物、食品醗酵用乳酸菌スタータ組成物、飼料または飼料添加剤組成物、または薬学組成物として使用されることができる。
【0017】
本発明の一具現例は、ロイコノストック・シトレウムWiKim 0104(Leuconostoc citreum WiKim0104)、その培養物、その破砕物またはその抽出物を含む組成物をこれを必要とする個体に投与する段階を含む、炎症、肥満または脂肪肝疾患を予防、改善または治療する方法を提供する。前記個体はヒトを含む動物であることができる。
【0018】
前記脂肪肝疾患は、単純脂肪肝、非アルコール性脂肪肝炎、肝線維化及び肝硬変からなる群より選択されたいずれか一つを含むものである炎症、肥満または脂肪肝疾患を予防、改善または治療する方法を提供する。
【0019】
本発明は、ロイコノストック・シトレウムWiKim0104(Leuconostoc citreum WiKim0104)を提供する。
【0020】
本発明のロイコノストック・シトレウムWiKim0104(Leuconostoc citreum WiKim0104)は、キムチ由来のロイコノストック・シトレウム新規菌株である。たとえ本発明におけるロイコノストック・シトレウムWiKim0104をキムチから分離、同定したものの、その入手経路がこれに限定されるものではない。
【0021】
本発明の実施例を通じて分離された乳酸菌菌株は、微生物の同定及び分類のための16S rDNA塩基配列分析の結果、SEQ ID NO:1の核酸配列を有することが表れた。
【0022】
よって、SEQ ID NO:1の16S rDNA塩基配列を有する本発明の微生物をロイコノストック・シトレウムWiKim0104(Leuconostoc citreum WiKim0104)と命名し、韓国微生物保存センターに2018年12月14日付けで寄託した(受託番号KCCM12420P)。
【0023】
本発明のロイコノストック・シトレウムWiKim0104は、グラム陽性菌であり好気的条件と嫌気的条件でいずれも成長が可能な通性嫌気性(facultative anaerobe)であり、胞子を形成せず運動性がなく細胞は桿菌の形態を取っている。
【0024】
下記の実施例において、本発明のロイコノストック・シトレウムWiKim0104が肝細胞(HepG2 cells)でFAS(fatty acid synthase)、SCD(lipogenic-related gene)、COX-2(cyclooxygenase-2)及びNF-K(inflammatory related gene)の発現を阻害することを確認した。これは、ロイコノストック・シトレウムWiKim0104(Leuconostoc citreum WiKim0104)菌株がHepG2細胞の脂肪肝の生成を約30~35%阻害することで、脂肪肝を予防または改善可能なことを確認した。よって、本発明によるロイコノストック・シトレウムWiKim0104は、ヒトまたは動物の脂肪肝疾患の予防、治療または改善用途のために多様に活用されることができる。
【0025】
また、下記実施例で確認できるように、ロイコノストック・シトレウムWiKim0104を有効成分として含む組成物は、肝細胞(HepG2 cells)内の脂肪蓄積及び炎症を阻害し、体重減少の効能及び血中の肝機能数値を改善し、肝組織内の脂肪代謝、炎症及び肝線維化関連因子の遺伝子の発現を減少させることが確認された。したがって、前記組成物は、炎症、肥満、または単純脂肪肝、非アルコール性脂肪肝炎、肝線維化及び肝硬変群から選択される一つ以上の脂肪肝疾患の予防、治療または改善用組成物の有効成分として使用されることができる。
【0026】
本発明は、ロイコノストック・シトレウムWiKim0104、その培養物、その破砕物、またはその抽出物を有効成分として含む炎症、肥満または脂肪肝疾患の予防、改善または治療用組成物を提供する。
【0027】
本発明による組成物に含まれるロイコノストック・シトレウムWiKim0104は、生菌体または死菌体として存在することができ、また乾燥または凍結乾燥された形態で存在することもできる。多様な組成物内に含ませるのに適合な乳酸菌の形態及び製剤化方法は当業者によく知られている。例えば、ロイコノストック・シトレウムWiKim0104は、公知の液体培地または固体培地で培養させて得た培養物であるか、前記菌株と追加成分を共に培養して得た醗酵物であるか、前記菌株を有機溶媒で抽出した抽出物、前記菌株の細胞膜を溶解させるか、破砕または均質化処理した溶解物(または破砕物)などの形態で製剤化することができるが、これに制限されるものではない。
【0028】
一具体例において、前記組成物は、生菌または死菌として存在するロイコノストック・シトレウムWiKim0104菌株を含む組成物であることができる。
【0029】
本発明において、前記脂肪肝疾患は、単純脂肪肝、非アルコール性脂肪肝炎、肝線維化及び肝硬変を含むことができる。
【0030】
本発明において、前記脂肪肝疾患は、アルコール性脂肪肝と非アルコール性脂肪肝をいずれも含むことができ、例えば、高脂肪食餌により誘導される非アルコール性脂肪肝であることができる。前記非アルコール性脂肪肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease、NAFLD)は、原発性と続発性による非アルコール性脂肪肝をいずれも含むことができ、例えば、原発性高脂血症、糖尿または肥満から発生する非アルコール性脂肪肝であることができる。
【0031】
一具体例において、前記組成物は、ロイコノストック・シトレウムWiKim0104菌株の培養物、破砕物、醗酵物または抽出物を含む炎症、肥満または脂肪肝疾患の予防または治療用薬学組成物であることができる。
【0032】
本発明による組成物が薬剤学的組成物として活用される場合、本発明の薬剤学的組成物は、前記ロイコノストック・シトレウムWiKim0104菌株以外に薬剤学的に適合でかつ生理学的に許容される補助剤を使用して製造されることができ、前記補助剤としては、賦形剤、崩解剤、甘味剤、結合剤、被覆剤、膨張剤、潤滑剤、滑沢剤または香味剤などを使用することができる。
【0033】
前記薬剤学的組成物は、投与のために上記の有効成分以外にさらに薬剤学的に許容可能な担体を1種以上含み、薬剤学的組成物として好ましく製剤化することができる。
【0034】
例えば、錠剤またはカプセル剤の形態への製剤化のために、有効成分は、エタノール、グリセロール、水などのような経口、無毒性の薬剤学的に許容可能な不活性担体と結合することができる。また、必要な場合、適合な結合剤、潤滑剤、崩解剤及び発色剤も混合物として含まれることができる。適合な結合剤は、これに制限されるものではないが、デンプン、ゼラチン、グルコースまたはベータ-ラクトースのような天然糖、トウモロコシ甘味剤、アカシア、トラガカントまたはソジウムオレートのような天然及び合成ガム、ソジウムステアレート、マグネシウムステアレート、ソジウムベンゾエート、ソジウムアセテート、ソジウムクロライドなどを含む。崩解剤はこれに制限されるものではないが、デンプン、メチルセルロース、アガー、ベントナイト、キサンタンガムなどを含む。液状溶液として製剤化される組成物において許容可能な薬剤学的担体としては、滅菌及び生体に適合なものであって、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれらの成分のうち1成分以上を混合して使用することができ、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤などの他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤を付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤として製剤化することができる。
【0035】
さらに、当該分野の適切な方法としてRemington’s Pharmaceutical Science、Mack Publishing Company、Easton PAに開示されている方法を利用して、各疾患または成分によって好ましく製剤化することができる。
【0036】
一具体例において、本発明は、ロイコノストック・シトレウムWIKIM0104、その培養物、その破砕物、その醗酵物またはその抽出物を有効成分として含む炎症、肥満または脂肪肝疾患の予防または改善用食品組成物を提供する。前記食品組成物は、健康機能食品または飲料、バーなどの形態を含むことができる。
【0037】
本発明において、前記菌株を有効成分として含む食品組成物は、発酵乳などの飲料を含むことができる。そこで、本発明は、ロイコノストック・シトレウムWIKIM0104またはその培養物からなる醗酵用乳酸菌スタータを提供する。
【0038】
本発明による食品組成物は、前記薬剤学的組成物と同一の方式で製剤化されて機能性食品として利用するか、各種の食品に添加することができる。本発明の組成物を添加することができる食品としては、例えば、飲料類、ビタミン複合剤、健康補助食品類などがある。
【0039】
本発明の食品組成物は、食品製造時に通常添加される成分を含むことができ、例えば、タンパク質、炭水化物、脂肪、栄養素、調味剤及び香味剤を含む。上述した炭水化物の例は、単糖、例えば、ブドウ糖、果糖など;二糖、例えばマルトース、スクロース、オリゴ糖など;及び多糖、例えばデキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖及びキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールである。香味剤として天然香味剤[ソーマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウジオシドA、グリチルリチンなど])及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を使用することができる。例えば、本発明の食品組成物がドリンク剤と飲料類として製造される場合は、クエン酸、液状果糖、砂糖、ブドウ糖、酢酸、リンゴ酸、果汁、及び各種の植物抽出液などをさらに含ませることができる。
【0040】
前記本発明による組成物は、飼料添加剤または飼料として利用されることができる。
【0041】
飼料添加剤として用いられる場合、前記組成物は、20~90%の高濃縮液であるか、粉末または顆粒形態で製造されることができる。前記飼料添加剤は、クエン酸、フマル酸、アジピン酸、乳酸、リンゴ酸などの有機酸やリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、酸性ピロリン酸塩、ポリリン酸共(重合リン酸塩)などのリン酸塩や、ポリフェノール、カテキン、アルファ-トコフェロール、ローズマリー抽出物、ビタミンC、緑茶抽出物、甘草抽出物、キトサン、タンニン酸、フィチン酸などの天然抗酸化剤のうちいずれか一つまたは一つ以上をさらに含むことができる。飼料として用いられる場合、前記組成物は、通常の飼料形態で製剤化されることができ、通常の飼料成分を共に含むことができる。
【0042】
前記飼料添加剤及び飼料は、穀物、例えば粉砕または破砕された小麦、オートムギ、麦、とうもろこし及び米;植物性タンパク質飼料、例えばアブラナ、豆、及びひまわりを主成分とする飼料;動物性タンパク質飼料、例えば血粉、肉粉、骨粉及び魚粉;糖分及び乳製品、例えば各種の粉ミルク及び乳清粉末からなる乾燥成分などをさらに含むことができ、その他にも栄養補充剤、消化及び吸収向上剤、成長促進剤などをさらに含むことができる。
【0043】
前記飼料添加剤は、動物に単独で投与するか食用担体のうち他の飼料添加剤と組み合わせて投与することもできる。また、前記飼料添加剤は、トップドレッシングとして、またはこれらを動物飼料に直接混合するか、または飼料と別途の経口剤形として容易に動物に投与することができる。前記飼料添加剤を動物飼料と別に投与する場合、当該技術分野によく知られているように、薬剤学的に許容可能な食用担体と組み合わせて、直ちに放出または徐放性剤形として製造することができる。かかる食用担体は、固体または液体、例えばとうもろこし澱粉、ラクトース、スクロース、コーンフレーク、ピーナッツ油、オリーブ油、胡麻油及びプロピレングリコールであることができる。固体担体が使用される場合、飼料添加剤は、錠剤、カプセル剤、酸剤、トローチ剤または含糖錠剤または微分酸性形態のトップドレッシングであることができる。液体担体が使用される場合、飼料添加剤は、ゼラチン軟質カプセル剤、またはシロップ剤や懸濁液、エマルジョン剤、または溶液剤の剤形であることができる。
【0044】
また、前記飼料添加剤及び飼料は、補助剤、例えば保存剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、溶液促進剤などを含むことができる。前記飼料添加剤は、針注、噴霧または混合して動物の飼料に添加して利用されることができる。
【0045】
本発明の飼料または飼料添加剤は、哺乳類、家擒及び魚類を含む多数の動物食餌に適用することができる。
【0046】
本発明における動物は、哺乳類を含み、哺乳類として豚、牛、羊、山羊、及び実験用グリレス大目、それだけでなく、ペット(例:犬、猫)などに使用することができ、前記家擒類として、ニワトリ、七面鳥、鴨、が鳥、きじ、及びうずら等にも使用することができ、前記魚類としてマスなどに利用されることができるが、これに限定されるものではない。
【0047】
本発明による組成物に含まれるロイコノストック・シトレウムWiKim0104菌株の量は、1回を基準として約106~1012cfu/gであることができ、例えば107~1011cfu/g、108~1010cfu/gであることができる。菌株を投与する場合には生菌状態で投与することが好ましく、摂取前に死滅させるか減衰(attenuation)状態で投与することができる。また、培養上清液などを使用して製造する場合は、熱処理過程を通じた滅菌化過程を追加的に経ることができる。最小の効能を有するのに必要な菌株量及び一日摂取程度は、摂取者の身体または健康状態によって変わることができるが、一般的に約106~1012cfu/gであることができ、例えば107~1011cfu/g、108~1010cfu/gであることができる。
【0048】
本発明の他の具現例は、ロイコノストック・シトレウムWiKim0104のヒトまたは動物の炎症、肥満または脂肪肝疾患の予防、治療または改善用途として提供されることができる。
【0049】
本発明の他の具現例は、ロイコノストック・シトレウムWiKim0104、その培養物、その破砕物またはその抽出物の炎症、肥満または脂肪肝疾患の予防、改善または治療用途を提供する。
【0050】
本発明の他の具現例は、肥満または脂肪肝疾患の予防、改善または治療のためのロイコノストック・シトレウムWiKim0104、その培養物、その破砕物またはその抽出物を提供する。
【0051】
本発明の一具現例は、ロイコノストック・シトレウムWiKim0104、その培養物、その破砕物またはその抽出物を含む組成物をこれを必要とする個体に投与する段階を含む、炎症、肥満または脂肪肝疾患を予防、改善または治療する方法を提供する。前記個体はヒトを含む動物であり、前記動物の例は、飼料を摂取する上述した動物であればいずれも本発明の範囲に含まれることができる。前記脂肪肝疾患は、単純脂肪肝、非アルコール性脂肪肝炎、肝線維化及び肝硬変からなる群より選択されたいずれか一つを含むことができる。
【0052】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は詳しく後述されている実施例を参照すれば明確になるであろう。しかし、本発明は以下で開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で具現されてよく、単に本実施例は本発明の開示を完全にし、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項の範疇により定義されるだけである。
【発明の効果】
【0053】
本発明によるロイコノストック・シトレウムWiKim0104は、キムチから分離された乳酸菌であり、細胞内の脂肪蓄積の阻害及び脂肪肝関連遺伝子の発現減少による脂肪肝生成の阻害効果を表すため、炎症、肥満または脂肪肝疾患の予防、改善、及び治療用途のために多様に活用されることができる。さらに、醗酵用スタータとして有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】本発明によるWiKim0104菌株処理によるHepG2細胞内の発現程度を測定したグラフである。L-LAB1はLeu.citreum WiKim0104、L-LAB2はLeu.Mesenteroides、L-LAB3及びL-LAB4はそれぞれ実験室で分離されたLeu.citreum stain #2、#3である。
【
図2a】本発明によるWiKim0104菌株摂取による脂肪肝マウスモデルの体重、血中肝機能数値(GPT、GOT)を示したグラフである。*P<0.05、compare to the ND;#P<0.05、compare to the HFD。L-LAB1はLeu.citreum WiKim0104である。
【
図2b】本発明によるWiKim0104菌株摂取による脂肪肝マウスモデルの体重、血中肝機能数値(GPT、GOT)を示したグラフである。*P<0.05、compare to the ND;#P<0.05、compare to the HFD。L-LAB1はLeu.citreum WiKim0104である。
【
図2c】本発明によるWiKim0104菌株摂取による脂肪肝マウスモデルの体重、血中肝機能数値(GPT、GOT)を示したグラフである。*P<0.05、compare to the ND;#P<0.05、compare to the HFD。L-LAB1はLeu.citreum WiKim0104である。
【
図3a】本発明によるWiKim0104菌株摂取による脂肪肝マウスモデルの肝組織関連遺伝子の発現程度を測定したグラフである。*P<0.05、compare to the ND;#P<0.05、compare to the HFD。L-LAB1はLeu.citreum WiKim0104である。
【
図3b】本発明によるWiKim0104菌株摂取による脂肪肝マウスモデルの肝組織関連遺伝子の発現程度を測定したグラフである。*P<0.05、compare to the ND;#P<0.05、compare to the HFD。L-LAB1はLeu.citreum WiKim0104である。
【
図3c】本発明によるWiKim0104菌株摂取による脂肪肝マウスモデルの肝組織関連遺伝子の発現程度を測定したグラフである。*P<0.05、compare to the ND;#P<0.05、compare to the HFD。L-LAB1はLeu.citreum WiKim0104である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明について実施例を通じて詳しく説明する。下記実施例は本発明を例示するものであるだけで、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。
【0056】
実施例1:ロイコノストック・シトレウムWiKim0104の同定
キムチ抽出物の原液をMRS培地に塗抹して得た菌単一群集をループで収去してMRS brothに培養した。DNA抽出は、QIAamp DNA Mini Kit(QIAgen、Germany)を使用して抽出した。抽出されたDNAは、1%アガロースゲルを利用して確認し、16S rDNA geneを増幅するために抽出された遺伝体(genomic)DNAを鋳型にして重合酵素連鎖反応(Polymerase Chain Reaction、PCR)を進行し、PCR条件は変性(denaturation)95℃で1分、結合(annealing)45℃で1分、伸長(extension)72℃で1分30秒と30サイクルを行った。得られたPCR産物はマクロゼン(Seoul、Korea)に依頼して配列を分析した。細菌の同定は、16S rDNA配列をNational Center for Biotechnology Information(NCBI、www.ncbi.nlm.nih.gov)のBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)検索エンジンの誘導分析を通じて行った。
【0057】
本発明の実施例を通じて分離された菌株は、微生物の同定のための16S rDNA塩基配列の分析結果、SEQ ID NO:1の核酸配列を有することが表れた。
【0058】
そこで、本発明の微生物をロイコノストック・シトレウムWiKim0104(Leuconostoc citreum WiKim0104)と命名し、韓国微生物保存センターに2018年12月14日付けで寄託した(KCCM12420P)。
【0059】
実施例2:ロイコノストック・シトレウムWiKim0104の肝細胞(HepG2 cells)内の脂肪蓄積及び炎症阻害効能の確認
人体の腸肝軸(gut-liver axis)に類似するようにトランスウェル(transwell)を利用してin vitro実験法を考案した。
【0060】
ロイコノストック・シトレウムWiKim0104乳酸菌は、MRS培地で30℃、24時間の間培養した。培養が終わった時点で菌体を回収するために6,000rpmで5分間遠心分離し、PBSで洗い残っている培地成分を全て除去して準備した。
【0061】
腸細胞(HT-29 cells)と肝細胞(HepG2 cells)の培養のために、ペニシリン/ストレプトマイシン(penicillin/streptomycin)、10%牛胎児血清(fetal bovine serum)を添加したRPMI-1640培地を使用し、6-ウェル(6-well)プレートトランスウェルを利用して共培養を準備した。共培養の前にトランスウェルメンブレン膜(membrane)に腸細胞を分注し、6-ウェル(6-well)プレートには肝細胞を分注して、それぞれ37℃、5%CO2条件で培養して準備した。
【0062】
培養ディッシュ(dish)内で腸細胞(HT-29 cells)と肝細胞(HepG2 cells)が80%程度育った時、培養液はFBS free培地に交替して16時間の間培養した。培養後、準備した乳酸菌1×10
7CFUを腸細胞に処理し、トランスウェルを組立てて乳酸菌、腸細胞、肝細胞の共培養を行い、0.1mMパルミチン酸(palmitic acid)を48時間処理して肝細胞内の脂肪生成を誘導した。0.1mMパルミチン酸と48時間培養した後、ロイコノストック・シトレウムWiKim0104菌株処理による肝細胞内の脂肪代謝、炎症関連遺伝子の発現水準を調べるために、リアルタイムの重合酵素連鎖反応(quantitative real time polymerase chain reaction、qPCR)を実施した。その結果、
図1に示すように、0.1mMパルミチン酸を処理した肝細胞(対照群)に比べて0.1mMパルミチン酸とロイコノストック・シトレウムWiKim0104を共培養した肝細胞で脂肪酸合成酵素(Fatty acid synthase、FAS)、不飽和脂肪酸生合成酵素(Stearoyl-CoA desaturase、SCD)と炎症関連因子COX-2(Cyclooxygenase-2)、NF-κB(Nuclear factor-kappa B)の遺伝子発現が有意的に減少することを確認することができた。
【0063】
実施例3:体重減少効能及び血中肝機能数値改善の確認
5週齢の雄マウス(C57BL/6J)を温度20±2℃、湿度50±5%及び明暗周期(light-dark cycle)12時間単位の条件の飼育室環境下でチャウ食餌療法(chow diet)(CD;Purina、Korea)で1週間適応させた。実験動物は正常食餌(D12450B、Research Diets、New Brunswick、NJ)または総カロリーの45%が脂肪である高脂肪食餌(D12451、Research Diets、New Brunswick、NJ)を摂取させ、1週間の間食餌に適応させた後、実験を行った。実験群は正常食餌摂取群(ND)、高脂肪食餌摂取群(HFD)、高脂肪食餌と共にロイコノストック・シトレウムWiKim0104を2×109CFU/200μl濃度で毎日経口投与した摂取群(HFD+L-LAB1)の総3個のグループで構成し、20週間の間食餌供給を通じて脂肪肝を誘導した。正常食餌摂取群(ND)と高脂肪食餌摂取群(HFD)は、これと同一量のリン酸緩衝食塩水(phosphate buffered saline、PBS)を毎日経口投与した。実験を行ってから20週間後、各実験群の体重を測定した。また、実験群の血中肝機能数値(serum GOT、serum GPT)を測定するために、実験終了16時間前から節食させて腹腔大静脈で採血した後、血清を分離して実験に使用した。
【0064】
血清内GOT、GPTは、自動生化学測定機(FUJI DRI-CHEM 7000i、Fujifilm、Tokyo、Japan)を利用して測定し、
図2a~2cに血中グルタメートオキサロアセテートトランスアミナーゼ(GLUTAMATE-OXALOACETATE TRANSAMINASE、GOT)、グルタメートピルベートトランスアミナーゼ(GLUTAMATE-PYRUVATE TRANSAMINASE、GPT)をグラフで示した。
【0065】
その結果、
図2a~2cに示すように、高脂肪食餌とロイコノストック・シトレウムWiKim0104を共に摂取した場合(HFD+L-LAB1)、高脂肪食餌摂取マウス(HFD)と比べて体重と血中肝機能数値が有意的に減少することを確認することができた。
【0066】
実施例4:肝組織内の脂肪代謝、炎症、肝線維化関連遺伝子の発現水準の確認
ロイコノストック・シトレウムWiKim0104菌株摂取による肝組織内の脂肪代謝、炎症、肝線維化関連遺伝子の発現水準を調べるために、実験終了後に摘出した肝組織を利用してqPCR(quantitative real time polymerase chain reaction)を実施した。
【0067】
その結果、
図3a~3cに示すように、ロイコノストック・シトレウムWiKim0104菌株摂取により脂肪代謝関連因子CD36(Cluster of differentiation 36)、炎症関連因子NF-κB(Nuclear factor-kappa B)、肝線維化関連因子Col1al(Collagen type I alpha 1)遺伝子の発現が減少することを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、新規な菌株を提供する。また、本発明の菌株は、炎症、肥満または脂肪肝疾患の予防、改善または治療用食品、飼料または飼料添加剤、薬学組成物などに利用されることができる。
【0069】
[受託番号]
寄託機関名:韓国微生物保存センター(国外)
受託番号:KCCM12420P
受託日付:20181214
【配列表】