(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】プラズマ装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/26 20060101AFI20221227BHJP
【FI】
H05H1/26
(21)【出願番号】P 2021563554
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(86)【国際出願番号】 JP2019048853
(87)【国際公開番号】W WO2021117208
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】池戸 俊之
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-170055(JP,A)
【文献】特開平3-234374(JP,A)
【文献】特開2001-61852(JP,A)
【文献】特開平8-206841(JP,A)
【文献】特開昭63-183778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/26-1/44
B23K 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理ガスを用いてプラズマガスを噴出するプラズマヘッドと、
前記プラズマヘッドに前記処理ガスを供給するガス供給ユニットと、
先端部を前記プラズマヘッドに接続され、基端部を前記ガス供給ユニットに接続され、前記ガス供給ユニットから前記プラズマヘッドへ前記処理ガスを供給するガス供給チューブと、
前記ガス供給チューブに係合する係合爪を有し、前記係合爪を前記ガス供給チューブに係合させることで前記ガス供給チューブを前記プラズマヘッドに対して取り付ける取付部材と、
前記係合爪に係合される位置に比べて前記ガス供給チューブの基端側において、前記ガス供給チューブの回転を規制する回転規制部材と、
を備えるプラズマ装置。
【請求項2】
前記回転規制部材は、
第1規制板と、
前記ガス供給チューブを間に挟んで前記第1規制板と反対側に配置される第2規制板と、
前記第1規制板及び前記第2規制板に挿入され、被螺合部に螺合されることで前記第1規制板と前記第2規制板の間の距離を短くする螺合部材と、
を有する、請求項1に記載のプラズマ装置。
【請求項3】
前記第1規制板及び前記第2規制板のうち、少なくとも一方は、
前記ガス供給チューブの長手方向に沿って形成され、前記ガス供給チューブの一部を収容する収容溝を有する、請求項2に記載のプラズマ装置。
【請求項4】
前記回転規制部材は、
前記第1規制板と前記第2規制板の間の距離を所定距離以上に維持するスペーサを有する、請求項2又は請求項3に記載のプラズマ装置。
【請求項5】
前記ガス供給チューブは、
複数設けられ、
複数の前記ガス供給チューブは、
長手方向と直交する方向に沿って一列に並んで配置され、
前記回転規制部材は、
一列に並ぶ複数の前記ガス供給チューブの回転を規制する、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のプラズマ装置。
【請求項6】
前記プラズマヘッドは、
略箱形形状に形成され、前記ガス供給チューブを接続する接続面と、電力を供給されることで前記処理ガスをプラズマ化する電極と、を有し、
前記接続面の中央部には、前記電極に電力を供給する電力ケーブルが接続され、
複数の前記ガス供給チューブは、
前記接続面の一辺に沿って一列に並んで配置される、請求項5に記載のプラズマ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマヘッドでプラズマガスを発生させるプラズマ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラズマヘッドからワークに向けてプラズマガスを噴出してプラズマ処理するプラズマ装置が種々提案されている。例えば、下記特許文献1のプラズマ装置では、多関節ロボットの先端に取り付けたプラズマヘッドと、電源・ガス供給ユニットとを電力ケーブルやガスチューブで接続している。
図10に示される例では、ガスチューブ等の先端に設けたコネクタをプラズマヘッドに取り付けてガスチューブ等をプラズマヘッドに対して固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第WO2019/150447号(
図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラズマヘッドにガスチューブを取り付けるコネクタとして、例えば、所謂ワンタッチ継手などを用いた場合、係合爪をガスチューブに係合させてガスチューブをプラズマヘッドに取り付けることができ、ガスチューブの着脱作業を簡素化できる。一方で、ガスチューブは、プラズマヘッドの交換などの度にプラズマヘッドから着脱される。この際に、ガスチューブの取り回しなどを行なうと、係合爪が係合した状態でガスチューブが回転する。また、多関節ロボットによってプラズマヘッドを移動等させた場合にもガスチューブが回転する虞がある。ガスチューブが回転することによって、係合爪が接触する部分が削れ、ガスチューブが損傷する虞がある。
【0005】
本開示は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、ガス供給チューブを係合爪から保護できるプラズマ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本明細書は、処理ガスを用いてプラズマガスを噴出するプラズマヘッドと、前記プラズマヘッドに前記処理ガスを供給するガス供給ユニットと、先端部を前記プラズマヘッドに接続され、基端部を前記ガス供給ユニットに接続され、前記ガス供給ユニットから前記プラズマヘッドへ前記処理ガスを供給するガス供給チューブと、前記ガス供給チューブに係合する係合爪を有し、前記係合爪を前記ガス供給チューブに係合させることで前記ガス供給チューブを前記プラズマヘッドに対して取り付ける取付部材と、前記係合爪に係合される位置に比べて前記ガス供給チューブの基端側において、前記ガス供給チューブの回転を規制する回転規制部材と、を備えるプラズマ装置を開示する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、係合爪を係合させる取付部材によって、プラズマヘッドにガス供給チューブを容易に取り付けることができる。また、係合爪に係合される位置に比べてガス供給チューブの基端側において、回転規制部材が、ガス供給チューブの回転を規制する。これにより、ガス供給チューブは、回転規制部材により回転を規制される位置よりも先端側における回転を規制される。プラズマヘッドの交換時やプラズマヘッドの作業時にガス供給チューブに回転する方向の力が加わっても、係合爪に係合する先端部の回転を回転規制部材により規制できる。係合爪によるガス供給チューブの損傷を低減し、ガス供給チューブを係合爪から保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】電極及び本体側プラズマ通路の位置においてプラズマヘッドを切断した断面図である。
【
図4】第1取付部材及び第2取付部材の斜視図である。
【
図5】第2取付部材に第1取付部材を取り付けた状態であって、4組の取付部及び被取付部のうち、一組の取付部及び被取付部の断面を模式的に示す図である。
【
図6】回転規制部材を取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図8】
図6に示すA-A線で切断した断面図である。
【
図9】別例の回転規制部材の構成を示す断面図である。
【
図10】別例の回転規制部材の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示を実施するための一形態について、図を参照しつつ詳しく説明する。
図1に示すように、本実施形態のプラズマ装置10は、プラズマヘッド11、ロボット13、制御ボックス15を備えている。プラズマヘッド11は、ロボット13の先端部に着脱可能に取り付けられている。ロボット13は、例えば、シリアルリンク型ロボット(多関節型ロボットと呼ぶこともできる)である。プラズマヘッド11は、ロボット13の先端に取り付けられた状態でプラズマガスを照射可能となっている。プラズマヘッド11は、ロボット13の駆動に応じて移動させられ、向きを変更させられる等し、3次元的に移動可能となっている。
【0010】
制御ボックス15は、コンピュータを主体として構成され、プラズマ装置10を統括的に制御する。制御ボックス15は、プラズマヘッド11に電力を供給する電源部15A及びプラズマヘッド11に処理ガスを供給するガス供給部15Bを有している。電源部15Aは、電力ケーブル16や制御ケーブル18を介してプラズマヘッド11と接続されている。電源部15Aは、制御ボックス15の制御に基づいて、プラズマヘッド11の電極33(
図3参照)に印加する電圧を変更する制御や、後述するヒータの温度を制御する。
【0011】
また、ガス供給部15Bは、複数(本実施形態では4本)のガス供給チューブ19を介してプラズマヘッド11と接続されている。ガス供給部15Bは、制御ボックス15の制御に基づいて、後述する反応ガス、キャリアガス、ヒートガスをプラズマヘッド11へ供給する。制御ボックス15は、ガス供給部15Bを制御し、ガス供給部15Bからプラズマヘッド11へ供給するガスの量などを制御する。そして、プラズマ装置10は、制御ボックス15の制御に基づいてロボット13を動作させ、テーブル17の上に載置された被処理物Wに対してプラズマヘッド11からプラズマガスを照射する。
【0012】
また、制御ボックス15は、タッチパネルや各種スイッチを有する操作部15Cを備えている。制御ボックス15は、各種の設定画面や動作状態(例えば、ガス供給状態など)等を操作部15Cのタッチパネルに表示する。また、制御ボックス15は、操作部15Cに対する操作入力により各種の情報を受け付ける。
【0013】
プラズマヘッド11は、ロボット13の先端に設けられた取付板13Aに対して着脱可能に設けられている。これにより、プラズマヘッド11は、種類の異なるプラズマヘッド11に交換可能となっている。
図2に示すように、プラズマヘッド11は、プラズマ生成部21、ノズル35等を備えている。プラズマ生成部21は、制御ボックス15のガス供給部15B(
図1参照)から供給された処理ガスをプラズマ化して、プラズマガスを生成する。また、プラズマヘッド11は、内部に設けられたヒータ(図示略)によってガス供給部15Bから供給された処理ガスを加熱してヒートガスを生成する。本実施形態のプラズマヘッド11は、プラズマ生成部21において生成したプラズマガスを、加熱したヒートガスとともに、
図1に示す被処理物Wへ噴出する。プラズマヘッド11には、
図2に示す矢印の方向に上流側から下流側へと処理ガスが供給される。なお、プラズマヘッド11は、ヒートガスを加熱するヒータを備えない構成でも良い。即ち、本開示のプラズマ装置は、ヒートガスを用いない構成でも良い。
【0014】
図3に示すように、プラズマ生成部21は、ヘッド本体部31、一対の電極33、ノズル35等を含む。なお、
図3は、一対の電極33及び後述する複数の本体側プラズマ通路71の位置に合わせて切断した断面図である。ヘッド本体部31は、耐熱性の高いセラミックにより成形されており、そのヘッド本体部31の内部には、プラズマガスを発生させる反応室37が形成されている。一対の電極33の各々は、例えば、円柱形状をなしており、その先端部を反応室37に突出させた状態で固定されている。以下の説明では、一対の電極33を、単に電極33と称する場合がある。また、一対の電極33が並ぶ方向をX方向、円柱形状の電極33の軸方向をZ方向、X方向及びZ方向に直交する方向をY方向と称して説明する。
【0015】
電極33の一部の外周部は、セラミックス等の絶縁体で製造された電極カバー53によって覆われている。電極カバー53は、略中空筒状をなし、長手方向の両端部に開口が形成されている。電極カバー53の内周面と電極33の外周面との間の隙間は、ガス通路55として機能する。電極カバー53の下流側の開口は、反応室37に接続されている。電極33の下端は、電極カバー53の下流側の開口から突出している。
【0016】
また、ヘッド本体部31の内部には、反応ガス流路61と、一対のキャリアガス流路63とが形成されている。反応ガス流路61は、ヘッド本体部31の略中央部に設けられ、ガス供給チューブ19(
図1参照)を介してガス供給部15Bと接続され、ガス供給部15Bから供給される反応ガスを反応室37へ流入させる。また、一対のキャリアガス流路63は、X方向において反応ガス流路61を間に挟んだ位置に配置されている。一対のキャリアガス流路63の各々は、ガス供給チューブ19(
図1参照)を介してガス供給部15Bと接続され、ガス供給部15Bからキャリアガスが供給される。キャリアガス流路63は、ガス通路55を介してキャリアガスを反応室37へ流入させる。
【0017】
反応ガス(種ガス)としては、酸素(O2)を採用できる。ガス供給部15Bは、例えば、反応ガス流路61を介して、酸素と窒素(N2)との混合気体(例えば、乾燥空気(Air))を、反応室37の電極33の間に流入させる。以下、この混合気体を、便宜的に反応ガスと呼び、酸素を種ガスと呼ぶ場合がある。キャリアガスとしては、窒素を採用できる。ガス供給部15Bは、ガス通路55の各々から、一対の電極33の各々を取り巻くようにキャリアガスを流入させる。
【0018】
一対の電極33には、制御ボックス15の電源部15Aから交流の電圧が印加される。電圧を印加することによって、例えば、
図3に示すように、反応室37内において、一対の電極33の下端の間に、擬似アークAが発生する。この擬似アークAを反応ガスが通過する際に、反応ガスは、プラズマ化される。従って、一対の電極33は、擬似アークAの放電を発生させ、反応ガスをプラズマ化し、プラズマガスを発生させる。
【0019】
また、ヘッド本体部31における反応室37の下流側の部分には、X方向に間隔を隔てて並び、Z方向に伸びて形成された複数(本実施例においては、6本)の本体側プラズマ通路71が形成されている。複数の本体側プラズマ通路71の上流側の端部は、反応室37に開口しており、複数の本体側プラズマ通路71の下流側の端部は、ヘッド本体部31の下端面に開口している。
【0020】
ノズル35は、例えば、耐熱性の高いセラミックにより成形され、Z方向に貫通する複数(本実施例においては、10本)のノズル側プラズマ通路82を有している。ノズル35は、ボルト等により、ヘッド本体部31の下面に固定されている。このため、ノズル35は、ヘッド本体部31に着脱可能とされており、種類の異なるノズルに変更することができる。ノズル35のノズル側プラズマ通路82には、上端面の溝81を介して本体側プラズマ通路71からプラズマガスが供給される。各ノズル側プラズマ通路82に供給されたプラズマガスは、ノズル35の下端の開口82Aから噴出される。尚、
図3に示すノズル35の形状・構造は、一例である。
【0021】
また、プラズマヘッド11は、ガス供給チューブ19を介してガス供給部15Bから供給された加熱用ガス(例えば、空気)をヒータ(図示略)で加熱し、加熱したヒートガスをノズル35に供給する。ヒートガスは、ノズル35に設けられたヒートガス出力通路85に供給される。ヒートガス出力通路85は、ノズル側プラズマ通路82を取り囲むように形成されており、ノズル35の下端の開口85Aからヒートガスを噴出する。このヒートガスは、プラズマガスを保護するシールドガスとして機能するものである。
【0022】
このような構造により、反応室37で発生したプラズマガスは、キャリアガスとともに、本体側プラズマ通路71を経由して溝81の内部に噴出される。そして、プラズマガスは、溝81の内部において拡散し、複数のノズル側プラズマ通路82の各々を経由して開口82Aから噴出される。ヒートガスは、ヒートガス出力通路85を流れ開口85Aからプラズマガスの噴出方向に沿って噴出される。この際、ヒートガスは、開口82Aから噴出されるプラズマガスの周囲を取り巻くように噴出される。加熱したヒートガスをプラズマガスの周囲に噴出することで、プラズマガスの効能(濡れ性など)を高めることができる。
【0023】
次に、ガス供給チューブ19をプラズマヘッド11に取り付ける構造について説明する。
図4は、第1取付部材及び第2取付部材の斜視図を示している。
図2及び
図4に示すように、4本のガス供給チューブ19の先端部には、第1取付部材91が取り付けられている。この4本のガス供給チューブ19は、キャリアガス用の2本のガス供給チューブ19と、反応ガス用の1本のガス供給チューブ19と、ヒートガス(加熱する前のガス)用のガス供給チューブ19である。第1取付部材91は、プラズマヘッド11に設けられた第2取付部材93に取り付けられる。キャリアガス用の2本のガス供給チューブ19は、
図3に示す一対のキャリアガス流路63にそれぞれ接続される。
【0024】
第1取付部材91は、4本のガス供給チューブ19のそれぞれに対応して4つの取付部91Aが設けられている。4つの取付部91Aは、例えば、一方向に長い略円筒形状をなし、軸方向を互いに平行にした状態で配置されている。4つの取付部91Aは、一列に並んで配置され、互いに連結された状態で連結板92(
図2参照)に取り付けられている。
【0025】
連結板92は、例えば、金属製の板を折り曲げて形成されており、折り曲げた内側に第1取付部材91を収容する。連結板92は、第1取付部材91を収容した状態で、後述する回転規制部材101に対して第1取付部材91とともに固定されている。尚、
図2は、回転規制部材101を破線で図示している。
【0026】
各取付部91Aの上流側(
図4における上方側)の面には、ガス供給チューブ19を挿入するための挿入孔91Bが形成されている。各ガス供給チューブ19の先端は、連結板92に設けられた挿入孔を通じて4つの取付部91A(挿入孔91B)のそれぞれに挿入されている。各取付部91Aは、ガス供給チューブ19の先端に固定されている。
【0027】
同様に、第2取付部材93は、4つの取付部91Aに対応して4つの被取付部93Aが設けられている。4つの被取付部93Aは、例えば、一方向に長い略円筒形状をなし、軸方向を互いに平行にした状態で配置されている。4つの被取付部93Aは、一列に並んで配置され、互いに連結され一体化されている。
図2に示すように、プラズマヘッド11は、上下方向(上流側から下流側に向かう方向)に長い略直方体形状をなしており、上流側に接続面11Aを有する。接続面11Aは、例えば、略正方形状をなしている。
【0028】
接続面11Aの中央には、電極33(
図3参照)に電力を供給する電力ケーブル16を接続する2つの電力接続部11Bが設けられている。電力ケーブル16には、一対の電極33の各々に接続される一対の電線が被覆されている。電力ケーブル16の一対の電線は、2つの電力接続部11Bの各々を介して一対の電極33のそれぞれに電気的に接続されている。また、接続面11Aの一辺には、第2取付部材93の4つの被取付部93Aが一列に並んで配置されている。4つの被取付部93Aは、一列に並んだ状態で、ネジ等によりプラズマヘッド11に固定されている。各被取付部93Aの上流側の面には、取付部91Aを挿入するための挿入孔93B(
図4参照)がそれぞれ形成されている。
【0029】
また、接続面11Aにおいて、中央の2つの電力接続部11Bを間に挟んで第2取付部材93と反対側には、制御ケーブル18を接続するための制御接続部11Cが設けられている。この制御ケーブル18には、例えば、ヒータに電力を供給するヒータ用電力ケーブル、ヒートガスの加熱温度を検出するための温度センサ(熱電対など)に接続される信号線、アース線等が含まれる。制御ケーブル18に含まれる各ケーブルは、制御接続部11Cを介して各装置に接続される。
【0030】
図5は、第2取付部材93に第1取付部材91を取り付けた状態であって、4組の取付部91A及び被取付部93Aのうち、一組の取付部91A及び被取付部93Aの断面を模式的に示している。第1取付部材91及び第2取付部材93は、例えば、所謂ワンタッチ継手であり、第1取付部材91を第2取付部材93に挿入することで、第1取付部材91を第2取付部材93に対してロックできる。各取付部91Aには、係合爪91Cが内部に取り付けられている。係合爪91Cは、例えば、金属の薄い板を折り曲げて形成されており、円筒形状の取付部91Aの円周上において所定のピッチで複数個配置されている。
【0031】
係合爪91Cは、被取付部93Aの挿入孔93B内の所定位置まで取付部91Aが挿入されると、被取付部93Aによって立ち上げられガス供給チューブ19に係合する。係合爪91Cは、ガス供給チューブ19に係合して第1取付部材91の挿入方向95への移動を規制する。係合爪91Cは、挿入方向95へのガス供給チューブ19の移動を規制するが、回転方向97への規制力が弱い。このため、各ガス供給チューブ19は、第1取付部材91を第2取付部材93に取り付けた状態において、プラズマヘッド11からの抜けを強固に抑制されるが、回転を規制される力が弱い状態となる。
【0032】
このため、プラズマヘッド11を別の種類のものに交換するためにガス供給チューブ19を取り回す際や、プラズマ処理時にロボット13がプラズマヘッド11の向き等を変更した際に、ガス供給チューブ19に回転方向97の力が加わると、金属製の係合爪91Cがガス供給チューブ19に接触したままガス供給チューブ19が回転する虞がある。その結果、ガス供給チューブ19は、係合爪91Cとの摩擦によって削られ、穴が空いて処理ガスが漏れる虞がある。あるいは、ガス供給チューブ19は、係合爪91Cによって削られ、断線する虞がある。そこで、本実施形態のプラズマ装置10は、後述するように、ガス供給チューブ19の回転を規制する回転規制部材101を備えている。
【0033】
尚、一度、取り付けた第1取付部材91(各取付部91A)を第2取付部材93の挿入孔93Bの奥へ(挿入方向95の奥へ)と押し込むことでロックが解除される。係合爪91Cは、取付部91Aが挿入孔93B内に押し込まれることで立ち下がり(倒れ込み)、ガス供給チューブ19から離間した状態となる。これにより、第2取付部材93から第1取付部材91を取り外すことができる。
【0034】
次に、ガス供給チューブ19の回転を規制する回転規制部材101について説明する。
図6及び
図7に示すように、回転規制部材101は、第1規制板103、第2規制板105、螺合部材107、スペーサ109を備えている。第2規制板105は、例えば、薄い板状の金属板であり、ガス供給チューブ19を第1取付部材91に挿入する挿入方向95に長い略長方形状をなしている。
【0035】
第2規制板105の下流側(
図6における左側)の先端部には、ボルト111を螺合するための被螺合部105Aが2つ形成されている。被螺合部105Aは、例えば、ボルト111をねじ込むためのネジ山(雌ネジ)を形成された貫通孔である。2つのボルト111の各々は、連結板92に形成された挿入孔92Aと、第1取付部材91に設けられた挿入孔91D(
図4参照)に挿入され被螺合部105Aに螺合される。第1取付部材91は、連結板92と第2規制板105に挟まれ、ボルト111の締め付けによって連結板92及び第2規制板105と固定される。これにより、回転規制部材101を、第1取付部材91、連結板92、ガス供給チューブ19に対して固定することができる。
【0036】
第2規制板105の上流側(
図7における右側)には、螺合部材107を螺合するための被螺合部105Bが2つ形成されている。螺合部材107は、例えば、ボルトやネジである。被螺合部105Bは、例えば、螺合部材107をねじ込むためのネジ山(雌ネジ)を形成された貫通孔である。第1規制板103は、ガス供給チューブ19が並ぶ横方向99に長い長方形の板状をなし、横方向99の両側を第2規制板105(ガス供給チューブ19)側に折り曲げられ湾曲した形状をなしている。第1規制板103は、例えば、金属製の板を折り曲げて形成されている。
【0037】
第1規制板103には、2つの螺合部材107を挿入する位置に合せて挿入孔103Aが2つ形成されている。
図8は、
図6に示すA-A線で切断した断面を示している。
図8に示すように、螺合部材107は、挿入孔103A及びスペーサ109に挿入され、第2規制板105の被螺合部105Bに螺合されている。螺合部材107は、被螺合部105Bに螺合されることで第1規制板103と第2規制板105の間の距離L1を短くする。ガス供給チューブ19は、第1規制板103と第2規制板105とに挟まれ回転方向97(
図6参照)の回転を規制される。
【0038】
従って、本実施形態の回転規制部材101は、第1規制板103と、ガス供給チューブ19を間に挟んで第1規制板103と反対側に配置される第2規制板105と、螺合部材107とを有する。螺合部材107は、第1規制板103及び第2規制板105に挿入され、被螺合部105Bに螺合されることで第1規制板103と第2規制板105の間の距離L1を短くする。これによれば、螺合部材107を被螺合部105Bに螺合させ締め付けることで、第1及び第2規制板103,105の間の距離L1を短くし、第1及び第2規制板103,105によってガス供給チューブ19を挟み込んで回転を規制することができる。螺合部材107の締め付け量を調整することで、回転を規制する力を調整できる。
【0039】
また、第1規制板103と第2規制板105との間には、スペーサ109が設けられている。スペーサ109は、例えば、円筒形状の金属部材である。尚、スペーサ109は、円板形状のワッシャを複数重ねたモノでも良い。また、スペーサ109は、バネなどの弾性部材でも良い。スペーサ109は、螺合部材107を挿入され、第1規制板103と第2規制板105に挟まれた状態で配置される。スペーサ109は、第1及び第2規制板103,105の距離L1を所定距離以上に維持する。この所定距離は、例えば、ガス供給チューブ19内に流す処理ガスの流量として所望の流量を確保できるガス供給チューブ19の内径を維持できる距離である。
【0040】
従って、本実施形態の回転規制部材101は、第1及び第2規制板103,105の間の距離L1を所定距離以上に維持するスペーサ109を有する。螺合部材107を締め付け過ぎると、ガス供給チューブ19が潰れ、処理ガス(キャリアガスなど)の流量が所望の流量以下となる虞がある。これに対し、スペーサ109によって第1及び第2規制板103,105の間の距離L1を所定距離以上に維持することで、ガス供給チューブ19が一定量以上潰れることを抑制できる。従って、スペーサ109によってガス供給チューブ19の流路を確保でき、処理ガスの流量や流速を確保できる。
【0041】
また、
図7及び
図8に示すように、第2規制板105には、ガス供給チューブ19の位置に合せて4つの収容溝105Cが形成されている。収容溝105Cは、例えば、第2規制板105を貫通する貫通孔を、ガス供給チューブ19の長手方向(挿入方向95)に沿って長くした形状をなしている。
図8に示すように、各ガス供給チューブ19は、その一部を収容溝105C内に収容した状態で、第1及び第2規制板103,105によって挟まれている。尚、収容溝105Cは、貫通孔に限らず、第2規制板105を凹ました凹部でも良い。
【0042】
従って、本実施形態の第2規制板105は、ガス供給チューブ19の長手方向に沿って形成されガス供給チューブ19の一部を収容する収容溝105Cを有する。これによれば、第2規制板105は、ガス供給チューブ19を収容溝105Cに収容した状態でガス供給チューブ19を挟み込む。これにより、ガス供給チューブ19の一部を収容溝105C内に逃がし、第1及び第2規制板103,105の挟み込みによってガス供給チューブ19が潰れてしまうことを抑制できる。
図8に示すように、例えば、ガス供給チューブ19の一部を収容溝105C内に逃がすことで、収容溝105Cの断面を円形に保つことができる。回転を規制するための挟み込みによってガス供給チューブ19内を流れる処理ガスの流量や流速が低減することを抑制できる。換言すれば、処理ガスの流量や流速の低減を抑制しつつ、第1及び第2規制板103,105の挟み込みによってガス供給チューブ19の回転を良好に規制できる。
【0043】
また、
図8に示すように、複数のガス供給チューブ19は、横方向99に並んだ状態で、第1規制板103と第2規制板105とで両側から挟まれている。換言すれば、第1及び第2規制板103,105は、横方向99に並ぶ複数のガス供給チューブ19をまとめて挟んで回転を規制している。横方向99における外側(両端)の2つのガス供給チューブ19は、第1規制板103を折り曲げた部分の内側にそれぞれ収容されている。また、横方向99における内側の2つのガス供給チューブ19は、外側のガス供給チューブ19と螺合部材107を間に挟んで配置されている。
【0044】
従って、本実施形態の複数のガス供給チューブ19は、長手方向(挿入方向95)と直交する横方向99に沿って一列に並んで配置されている。回転規制部材101は、一列に並ぶ複数のガス供給チューブ19の回転を規制する。これによれば、複数のガス供給チューブ19を一列に並べることで、複数のガス供給チューブ19の各々の回転を、回転規制部材101によりまとめて規制できる。
【0045】
また、
図2に示すように、プラズマヘッド11の接続面11Aの中央部には、電極33(
図3参照)に電力を供給する電力ケーブル16が接続されている。そして、複数のガス供給チューブ19は、接続面11Aの一辺(
図2に示す手前側の一辺)に沿って一列に並んで配置されている。上記したように、ガス供給チューブ19は、第1取付部材91及び第2取付部材93によって、プラズマヘッド11に対してワンタッチで着脱が可能となっている。
【0046】
これによれば、取り外す頻度が少ない電力ケーブル16を接続面11Aの中央に配置し、取り外す頻度が高いガス供給チューブ19を接続面の隅に配置する。ガス供給チューブ19を着脱する際に電力ケーブル16が邪魔にならず、ガス供給チューブ19の着脱作業を容易に行なうことができる。また、接続面11Aの一辺に沿って複数のガス供給チューブ19を集約し複数のガス供給チューブ19が接続面11Aを占める面積を小さくすることで、プラズマヘッド11の小型化を図ることができる。
【0047】
因みに、ガス供給部15Bは、ガス供給ユニットの一例である。第1取付部材91及び第2取付部材93は、取付部材の一例である。
【0048】
以上、上記した本実施形態では、以下の効果を奏する。
本実施例の一態様では、ガス供給チューブ19は、先端部をプラズマヘッド11に接続され、基端部をガス供給部15Bに接続され、ガス供給部15Bからプラズマヘッド11へ処理ガスを供給する。第1取付部材91は、ガス供給チューブ19に係合する係合爪91Cを有し、係合爪91Cをガス供給チューブ19に係合させることでガス供給チューブ19をプラズマヘッド11に対して取り付ける。そして、回転規制部材101は、係合爪91Cに係合される位置に比べてガス供給チューブ19の基端側(上流側)において、ガス供給チューブ19の回転を規制する。
【0049】
これによれば、ガス供給チューブ19は、係合爪91Cを係合させる第1取付部材91によって、プラズマヘッド11に容易に取り付けることができる。また、係合爪91Cに係合される位置に比べてガス供給チューブ19の基端側において、回転規制部材101が、ガス供給チューブの回転を規制する。これにより、ガス供給チューブ19は、回転規制部材101により回転を規制される位置よりも先端側における回転を規制される。プラズマヘッド11の交換時やプラズマヘッド11の作業時にガス供給チューブ19に回転方向97の力が加わっても、係合爪91Cに係合する先端部の回転を回転規制部材101により規制できる。係合爪91Cによるガス供給チューブ19の損傷を低減し、ガス供給チューブ19を係合爪91Cから保護できる。
【0050】
尚、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。
具体的には、例えば、上記実施形態の第1規制板103及び第2規制板105の構成は、一例である。
図9は、別例の回転規制部材101の構成を示している。例えば、上記実施形態では、回転規制部材101は、複数のガス供給チューブ19をまとめて挟んで回転を規制したが、
図9に示すように、1つのガス供給チューブ19を個別に挟む構成でも良い。
図9に示す回転規制部材101は、第2規制板105に金属バンド121を固定してガス供給チューブ19を1本ずつ挟んでいる(
図9には1本のみ図示)。金属バンド121は、ガス供給チューブ19の外周形状に合わせて折り曲げられ、両端のそれぞれを螺合部材107によって固定されている。このように、回転規制部材101は、ガス供給チューブ19を1本ずつ挟み込んで回転を規制しても良い。また、
図9に示すように、本開示の回転規制部材101は、板状の部材以外(上記したバンド状の部材、棒状の部材、紐状の部材など)でガス供給チューブ19の回転を規制しても良い。
また、上記実施形態では、第2規制板105に被螺合部105Bを形成したが、これに限らない。
図9に示すように、ねじ山(雌ネジ)を形成していない貫通孔105Dを第2規制板105に形成しても良い。螺合部材107を、金属バンド121と第2規制板105の貫通孔105Dに挿通させ、先端部にナット123を螺合しても良い。そして、螺合部材107とナット123の締め付けによって金属バンド121と第2規制板105でガス供給チューブ19を挟み込んでも良い。
【0051】
また、上記実施形態では、第2規制板105に収容溝105Cを形成したが、
図9に示すように、収容溝105Cを第2規制板105に設けなくとも良い。この場合、例えば、金属バンド121の内側にゴム等の弾性部材125を設けても良い。これにより、弾性部材125を金属バンド121の内側に詰め込むことで摩擦力を向上させ、ガス供給チューブ19の回転を金属バンド121により良好に規制することができる。尚、摩擦力を向上させる方法は、弾性部材125に限らない。例えば、ガス供給チューブ19の外周面に溝や突部を設け、金属バンド121や上記実施形態の第1規制板103とガス供給チューブ19との摩擦力を向上させても良い。また、上記実施形態において、ガス供給チューブ19のまわりに弾性部材125を設け、第1規制板103と第2規制板105とによって挟み込んでも良い。即ち、収容溝105Cと弾性部材125を併用しても良い。
また、上記実施形態では、第2規制板105に収容溝105Cを設けたが、第1規制板103に収容溝を設けても良い。また、第1及び第2規制板103,105の両方に収容溝を形成しても良い。
また、上記実施形態では、回転規制部材101は、第1及び第2規制板103,105の間の距離L1を確保するスペーサ109を備えたが、
図9に示すように備えなくとも良い。
【0052】
また、上記実施形態では、4つのガス供給チューブ19を横方向99に1列に並べる構成であったが、これに限らない。例えば、
図10に示すように、複数のガス供給チューブ19を積み重ねても良い。
図10に示すように、第1規制板103と、2枚の第2規制板105とを重ね、各規制板の間にガス供給チューブ19を挟み込んでも良い。そして、例えば、第1規制板103と、2枚の第2規制板105に螺合部材107を挿通させ、一番下の第2規制板105に設けた被螺合部105Bに挿通させた螺合部材107を螺合しても良い。これにより、多段構成の規制板によってガス供給チューブ19をまとめて挟み込むことができる。
また、上記実施形態では、制御ボックス15内にガス供給部15Bを設けたが、ガス供給部15Bを、制御ボックス15や電源部15Aとは別の装置にしても良い。
また、上記実施形態では、第1取付部材91に係合爪91Cを設けたが、第2取付部材93に係合爪91Cを設けても良い。
また、
図2に示すプラズマヘッド11における、第2取付部材93、電力接続部11B、制御接続部11C等の位置は、一例である。例えば、第2取付部材93を、接続面11Aの中央に配置しても良く、2つの電力接続部11Bを、接続面11Aの一辺に沿って配置しても良い。
また、上記実施形態におけるガス供給チューブ19で供給する処理ガスの種類は、一例である。例えば、処理ガスとして、酸素、窒素以外の気体を用いても良い。
【符号の説明】
【0053】
10 プラズマ装置、11 プラズマヘッド、11A 接続面、19 ガス供給チューブ、91 第1取付部材、91C 係合爪、93 第2取付部材、99 横方向、101 回転規制部材、103 第1規制板、105 第2規制板、105B 被螺合部、105C 収容溝、109 スペーサ、L1 距離。