(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】樹脂組成物、プリプレグ、積層板、金属箔張積層板およびプリント配線板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/03 20060101AFI20221227BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20221227BHJP
C08L 79/00 20060101ALI20221227BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20221227BHJP
C08K 3/016 20180101ALI20221227BHJP
C08G 73/12 20060101ALI20221227BHJP
C08G 59/42 20060101ALI20221227BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
H05K1/03 610N
C08L63/00 A
C08L79/00 B
C08K3/013
C08K3/016
C08G73/12
C08G59/42
C08J5/24 CFG
(21)【出願番号】P 2021570970
(86)(22)【出願日】2019-05-31
(86)【国際出願番号】 CN2019089557
(87)【国際公開番号】W WO2020237634
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】517221424
【氏名又は名称】▲広▼▲東▼生益科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENGYI TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】NO. 5 WESTERN INDUSTRY ROAD, SONGSHAN LAKE NATIONAL HIGH‐TECH INDUSTRIAL DEVELOPMENT ZONE, DONGGUAN CITY, GUANGDONG 523808, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲鴻▼杰
(72)【発明者】
【氏名】唐 ▲軍▼旗
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-167268(JP,A)
【文献】特開2010-106150(JP,A)
【文献】特開2010-111758(JP,A)
【文献】国際公開第2015/152427(WO,A1)
【文献】特開2016-60780(JP,A)
【文献】特開2016-60840(JP,A)
【文献】特開2016-60882(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181286(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108219371(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109810467(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/12
C08G 59/42
C08J 5/24
C08K 3/013
C08K 3/016
C08L 63/00
C08L 79/00
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのマレイミド基/分子を有するマレイミド化合物と、少なくとも1つの1級アミン基/分子を有するアミン化合物と、少なくとも2つの1級アミン基/分子を有するアミン化合物とを反応させることにより取得され、分子量分布は、分子量が1000~4500の間にある分子が分子総数の25~60%を占める変性マレイミド樹脂と、
活性エステル樹脂と、
エポキシ樹脂と、
を含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記少なくとも2つのマレイミド基/分子を有するマレイミド化合物は、式(M-1)で示される化合物である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化1】
(ただし、Bは、
【化2】
または
【化3】
であり、
ただし、R
a、R
b、R
c、R
dは、それぞれ独立してメチル基、エチル基、プロピル基、またはイソプロピル基であり、nは1~3の整数である。)
【請求項3】
前記式(M-1)で示される化合物は、2,2-ジ(4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル)プロパン、ジ(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ジ(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、またはジ(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタンである、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの1級アミン基/分子を有するアミン化合物は、式(N-1)で示される化合物である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化4】
(ただし、R
1は、水素原子または炭素数が1~3のアルキル基を表し、R
2は酸性基を表す。)
【請求項5】
前記式(N-1)で示される化合物はp-アミノフェノールである、請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記少なくとも2つの1級アミン基/分子を有するアミン化合物は、式(N-2)で示される化合物である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化5】
(ただし、Rは、炭素数が1~5の脂肪族炭化水素基、
【化6】
または
【化7】
であり、R
3およびR
4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数が1~3のアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシル基、またはスルホン酸基を表し、x、yは、それぞれ独立して0~4の整数である。)
【請求項7】
前記式(N-2)で示される化合物は、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)-フェニル)プロパン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン、または4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルメタンである、請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記活性エステル樹脂は、式(AR-1)もしくは式(AR-2)で示される化合物またはそれらの組み合わせから選ばれる、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化8】
(式(AR-1)において、Xは、ベンゼン環またはナフタレン環であり、R
5、R
6は、それぞれ独立してメチル基または水素原子であり、kは0または1であり、mの当量は0.2~2の間にある。)
【化9】
(式(AR-2)において、Xは、ベンゼン環またはナフタレン環であり、(Y)qにおけるYは、それぞれ独立してメチル基、水素原子、またはエステル基であり、qは1~3の整数であり、nは1~10の整数であり、mは1~10の整数である。)
【請求項9】
前記エポキシ樹脂は、少なくとも2つのエポキシ基を含むエポキシ樹脂から選ばれる、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記エポキシ樹脂は、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、アリーレンエーテル構造を含むエポキシ樹脂、またはそれらの混合物である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記樹脂組成物は、難燃剤、無機フィラー、またはそれらの組み合わせを更に含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記変性マレイミド樹脂、活性エステル樹脂およびエポキシ樹脂の総重量を100重量部として計算すれば、前記変性マレイミド樹脂の量は10~70重量部である、請求項1~11のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記変性マレイミド樹脂、活性エステル樹脂およびエポキシ樹脂の総重量を100重量部として計算すれば、前記活性エステル樹脂の量は5~50重量部である、請求項1~11のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
前記変性マレイミド樹脂、活性エステル樹脂およびエポキシ樹脂の総重量を100重量部として計算すれば、前記エポキシ樹脂活性エステル樹脂の量は10~60重量部である、請求項1~11のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の樹脂組成物を基材に浸漬または塗布して硬化させることにより取得される、プリプレグ。
【請求項16】
少なくとも1枚の請求項15に記載のプリプレグを含む、積層板。
【請求項17】
少なくとも1枚の請求項15に記載のプリプレグおよび前記プリプレグの片側または両側に被覆された金属箔を含む、金属箔張積層板。
【請求項18】
少なくとも1枚の請求項15に記載のプリプレグを含む、プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱硬化樹脂に関し、具体的には、樹脂組成物、それを用いて調製したプリプレグ、積層板、金属箔張積層板およびプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂プリプレグは、プリント配線板で基板材料として使用されることが多い。基板材料は、高周波操作信号に適用するために、低い誘電率および誘電正接が必要となる。配線板の加工および使用の要求を考慮し、基板材料は、良好な耐熱性を有する必要がある。そのため、既にアミノ基を有する変性マレイミド樹脂を用いて樹脂プリプレグを調製した。ここで、スチレン-無水マレイン酸(SMA)を硬化剤として使用することにより、良好な誘電特性を実現する。しかし、SMAは、樹脂プリプレグと金属箔との剥離強度を低減するとともに、基板の吸水率の高まり、脆性の増大、熱膨張率(CTE)の上昇および難燃性の低下という欠点を招く。
【0003】
既に活性エステルを硬化剤として用い、エポキシ樹脂反応に使用する。二次ヒドロキシ基の生成がないため、エポキシ樹脂-活性エステル体系は、吸水性が低く、靭性が良く、誘電特性が良好であるという利点を有する。しかし、エポキシ樹脂-活性エステル体系は、硬化後のガラス転移温度が低い。従って、その耐熱性は高周波応用の要求を満たすことができない。
【0004】
良好な誘電特性と高耐熱性とを同時に有する樹脂組成物および樹脂プリプレグは、依然として需要が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、本開示は、
少なくとも2つのマレイミド基/分子を有するマレイミド化合物(M)と、少なくとも1つの1級アミン基/分子を有するアミン化合物(N1)と、少なくとも2つの1級アミン基/分子を有するアミン化合物(N2)とを反応させることにより取得され、分子量分布は、分子量が1000~4500の間にある分子が分子総数の25~60%を占めることである変性マレイミド樹脂(A)と、
活性エステル樹脂(B)と、
エポキシ樹脂(C)と、
を含む、樹脂組成物を提供する。
【0006】
好ましくは、前記少なくとも2つのマレイミド基/分子を有するマレイミド化合物(M)は、式(M-1)で示される化合物である。
【化1】
(ただし、Bは、
【化2】
または
【化3】
であり、
ただし、R
a、R
b、R
c、R
dは、それぞれ独立してメチル基、エチル基、プロピル基、またはイソプロピル基であり、nは1~3の整数である。)
【0007】
好ましくは、前記式(M-1)で示される化合物は、2,2-ジ(4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル)プロパン、ジ(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ジ(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、またはジ(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタンである。
【0008】
好ましくは、前記少なくとも1つの1級アミン基/分子を有するアミン化合物(N1)は、式(N-1)で示される化合物である。
【化4】
(ただし、R
1は、水素原子または炭素数が1~3のアルキル基を表し、R
2は酸性基を表す。)
【0009】
好ましくは、前記式(N-1)で示される化合物はp-アミノフェノールである。
【0010】
好ましくは、前記少なくとも2つの1級アミン基/分子を有するアミン化合物(N2)は、式(N-2)で示される化合物である。
【化5】
(ただし、Rは、炭素数が1~5の脂肪族炭化水素基、
【化6】
または
【化7】
を表し、R
3およびR
4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数が1~3のアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシル基、またはスルホン酸基を表し、x、yは、それぞれ独立して0~4の整数である。)
【0011】
好ましくは、前記式(N-2)で示される化合物は、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)-フェニル)プロパン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン、または4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルメタンである。
【0012】
好ましくは、前記活性エステル樹脂(B)は、式(AR-1)で示される化合物、式(AR-2)で示される化合物、またはそれらの組み合わせで構成されるグループから選ばれる。
【化8】
(式(AR-1)において、Xは、ベンゼン環またはナフタレン環であり、R
5、R
6は、それぞれ独立してメチル基または水素原子であり、kは0または1であり、mの当量は0.2~2の間にある。)
【化9】
(式(AR-2)において、Xは、ベンゼン環またはナフタレン環であり、(Y)qにおけるYは、それぞれ独立してメチル基、水素原子、またはエステル基であり、qは1~3の整数であり、nは1~10の整数であり、mは1~10の整数である。)
【0013】
好ましくは、前記エポキシ樹脂(C)は、少なくとも2つのエポキシ基を含むエポキシ樹脂から選ばれる。
【0014】
好ましくは、前記エポキシ樹脂(C)は、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、アリーレンエーテル構造を含むエポキシ樹脂、またはそれらの混合物である。
【0015】
好ましくは、前記樹脂組成物は、難燃剤(D)、無機フィラー(E)、またはそれらの組み合わせを更に含む。
【0016】
好ましくは、前記変性マレイミド樹脂(A)、活性エステル樹脂(B)およびエポキシ樹脂(C)の総重量を100重量部として計算すれば、前記変性マレイミド樹脂(A)の量は10~70重量部であり、好ましくは、20~60重量部である。
【0017】
好ましくは、前記変性マレイミド樹脂(A)、活性エステル樹脂(B)およびエポキシ樹脂(C)の総重量を100重量部として計算すれば、前記活性エステル樹脂(B)の量は5~50重量部であり、10~45重量部であることが好ましい。
【0018】
好ましくは、前記変性マレイミド樹脂(A)、活性エステル樹脂(B)およびエポキシ樹脂(C)の総重量を100重量部として計算すれば、前記エポキシ樹脂(C)、活性エステル樹脂(B)の量は10~60重量部であり、20~50重量部であることが好ましい。
【0019】
別の態様において、本開示は、上記樹脂組成物を基材に浸漬または塗布して硬化させることにより取得されるプリプレグを提供する。
【0020】
本開示の他の態様によれば、少なくとも1枚の上記プリプレグを含む積層板を提供する。
【0021】
本開示の更なる態様によれば、少なくとも1枚の上記プリプレグおよび前記プリプレグの片側または両側に被覆された金属箔を含む金属箔張積層板を提供する。
【0022】
本開示の更なる態様によれば、少なくとも1枚の上記プリプレグを含むプリント配線板を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、具体的な実施形態を参照しながら本開示について更に詳細に説明する。他の実施形態を考慮して本開示の範囲または精神から逸脱することがない前提で、これらの他の実施形態を実施することができることが理解できる。そのため、以下の詳細な説明は非限定的なものである。
【0024】
特に断りのない限り、本明細書および請求項で使用される特徴的なサイズ、数量および物理化学特性を表す全ての数字は、全ての場合、いずれも「約」という用語で修飾されるものであると理解されるべきである。そのため、逆となる説明がない限り、上記明細書および添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータはいずれも近似値であり、当業者は、本文に開示される教示内容を利用して得られた必要な特性を求め、これらの近似値を適当に変更することができる。端点で表される数値範囲の使用は、該範囲内の全ての数字および該範囲内の任意の範囲を含み、例えば、1~5は、1、1.1、1.3、1.5、2、2.75、3、3.80、4および5等を含む。
【0025】
本開示は、
少なくとも2つのマレイミド基/分子を有するマレイミド化合物(M)と、少なくとも1つの1級アミン基/分子を有するアミン化合物(N1)と、少なくとも2つの1級アミン基/分子を有するアミン化合物(N2)とを反応させることにより取得され、分子量分布は、分子量が1000~4500の間にある分子が分子総数の25~60%を占めることである変性マレイミド樹脂(A)と、
活性エステル樹脂(B)と、
エポキシ樹脂(C)と、
を含む樹脂組成物を提供する。
【0026】
本開示の樹脂組成物には、特定構造および特定の分子量分布を有する変性マレイミド樹脂(A)が使用される。該変性マレイミド樹脂(A)とエポキシ樹脂(C)と硬化剤としての活性エステル樹脂(B)とを組み合わせて硬化した後の生成物は、良好な誘電特性および耐熱性を有するとともに、低い吸水性、低い熱膨張係数、高い難燃性、および導体との高い接合性を有する。
【0027】
本開示の変性マレイミド樹脂(A)は、少なくとも2つのマレイミド基/分子を有するマレイミド化合物(M)と、少なくとも1つの1級アミン基/分子を有するアミン化合物(N1)と、少なくとも2つの1級アミン基/分子を有するアミン化合物(N2)とを反応させることにより取得される。
【0028】
また、本開示の変性マレイミド樹脂(A)は、具体的に、特定の分子量分布を有する。具体的には、分子量が1000~4500の間にある分子が、分子総数の25~60%を占める。分子量がこの範囲内にある分子の割合が25%よりも低い場合、得られる組成物は、硬化後の剥離強度が悪く、ガラス転移温度が低く、耐湿熱性が不合格で、且つ、作業性が不合格である。分子量がこの範囲内にある分子の割合が60%よりも高い場合、得られる組成物は、熱膨張率が高く、作業性が不合格である。
【0029】
作業性とは、一方で、分子量が1000~4500の間にある分子が分子総数の25%よりも少ない場合、変性マレイミド樹脂(A)は変性後に結晶析出しやすく、樹脂の貯蔵安定性が悪くなり、他方で、分子量が1000~4500の間にある分子が分子総数の60%よりも多い場合、変性マレイミド樹脂(A)は変性後に樹脂粘度が高すぎ、ガラスクロスに十分に浸漬したパフォーマンスが良好なプリプレグを形成しにくいことを意味する。
【0030】
本開示の別の必要な成分は活性エステル樹脂(B)である。活性エステル樹脂(B)とは、分子に1つまたは1つ以上の活性エステル基が含まれる化合物を意味する。活性エステル樹脂は、既に硬化剤としてエポキシ樹脂系に使用されている。しかし、活性エステル樹脂は、典型的に、マレイミド樹脂との相溶性を有せず、マレイミド樹脂の硬化に使用されていない。本開示に記載の相溶性とは、一方で、未変性のマレイミド樹脂と活性エステル樹脂との共硬化を実現しにくく、両者を含む混合物の硬化後のガラス転移温度(Tg)曲線にダブルピークまたはマルチピークが現れ、他方で、変性または未変性のマレイミド樹脂を用いて活性エステル樹脂とブレンドする場合、両者のいずれかの成分が析出して凝集したり、濁った樹脂溶液を形成したりし、均一な系を形成できない現象が現れる。
【0031】
本開示の発明者は、驚くべきことに、前述した特定の変性マレイミド樹脂(A)を選択した場合、エポキシ樹脂(C)および活性エステル樹脂(B)とともに共硬化することができることを発見した。硬化後に得られた生成物は、エポキシ樹脂および活性エステル樹脂のみを使用した硬化生成物と比べ、高いガラス転移温度を有するとともに、低い熱膨張係数、高い耐熱性を有し、且つ優れた誘電特性、剥離強度、耐湿熱性等を有する。
【0032】
本開示に係る少なくとも2つのマレイミド基/分子を有するマレイミド化合物(M)は特に限定されず、分子構造に少なくとも2つのマレイミド基を含む化合物から選ばれる。
【0033】
好ましくは、少なくとも2つのマレイミド基/分子を有するマレイミド化合物(M)は、式(M-1)で示される化合物である。
【0034】
【化10】
(ただし、Bは、
【化11】
(R
a、R
b、R
c、R
dは、それぞれ独立してメチル基、エチル基、プロピル基、またはイソプロピル基である)、
【化12】
または
【化13】
(nは1~3の整数である)である。
ただし、好ましくは、Bは、
【化14】
(R
a、R
b、R
c、R
dは、それぞれ独立してメチル基、エチル基である)、
【化15】
または
【化16】
(nは1~3の整数である)である。)
【0035】
M1の化合物として、例えば、ジ(4-マレイミドフェニル)メタン、ジ(4-マレイミドフェニル)エーテル、ジ(4-マレイミドフェニル)スルホン、ジ(4-マレイミドフェニル)スルフィド、ジ(4-マレイミドフェニル)ケトン、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、1,3-ジ(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ジ(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、2,2-ジ(4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル)プロパン、ジ(4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル)スルホン、ジ(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ジ(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ジ(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド(Polyphenylmethane maleimide)であってもよい。
【0036】
それらは、単独で1種を使用してもよいし、必要に応じて2種以上を併用してもよい。それらのうち、ジ(4-マレイミドフェニル)メタン、ジ(4-マレイミドフェニル)エーテル、ジ(4-マレイミドフェニル)スルホン、1,3-ジ(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ジ(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、2,2-ジ(4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル)プロパン、ジ(4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル)スルホン、ジ(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ジ(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ジ(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド(Polyphenylmethane maleimide)であることが好ましい。より安価であるという観点から、ジ(4-マレイミドフェニル)メタンであることがより好ましい。反応特性および耐熱性が優れるという観点から、ジ(4-マレイミドフェニル)メタン、ジ(4-マレイミドフェニル)エーテル、ジ(4-マレイミドフェニル)スルホン、1,3-ジ(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ジ(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、2,2-ジ(4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル)プロパン、ジ(4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル)スルホン、ポリフェニルメタンマレイミド(Polyphenylmethane maleimide)であることがより好ましい。誘電特性がより優れ、吸水性がより低いという観点から、2,2-ジ(4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル)プロパン、ジ(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ジ(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ジ(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタンであることがより好ましい。
【0037】
本開示に係る少なくとも1つの1級アミン基/分子を有するアミン化合物(N1)は特に限定されず、分子構造に少なくとも1つの1級アミン基を含む化合物から選ばれる。
【0038】
好ましくは、少なくとも1つの1級アミン基/分子を有するアミン化合物(N1)は、式(N-1)で示される化合物である。
【0039】
【化17】
(ただし、R
1は、水素原子または炭素数が1~3のアルキル基を表し、R
2は酸性基を表す。酸性基は、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびスルホン酸基を含んでもよいが、これらに限定されない。ただし、好ましくは、R
1は、H原子または炭素数1~3のアルキル基であり、R
2はヒドロキシ基である。特に好ましくは、R
1はH原子で、且つR
2はヒドロキシ基である。)
【0040】
N-1の化合物として、o-アミノフェノール、m-アミノフェノール、p-アミノフェノール等が挙げられる。それらのうち、変性マレイミドを製造する時の反応収率、樹脂組成物、プリプレグおよび積層板を形成する時の耐熱性の観点から、m-アミノフェノール、p-アミノフェノールであることが好ましい。また、低誘電性の観点から、p-アミノフェノールであることが特に好ましい。
【0041】
本開示に係る少なくとも2つの1級アミン基/分子を有するアミン化合物(N2)は特に限定されず、分子構造に少なくとも2つの1級アミン基を含む化合物から選ばれる。
【0042】
好ましくは、前記少なくとも2つの1級アミン基/分子を有するアミン化合物(N2)は、式(N-2)で示される化合物である。
【0043】
【化18】
(ただし、Rは、炭素数が1~5の脂肪族炭化水素基(脂肪族炭化水素基は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、エテニレン基等を含む)、
【化19】
または
【化20】
を表し、R
3およびR
4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数が1~3のアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシル基、またはスルホン酸基を表し、x、yは、それぞれ独立して0~4の整数である。)
【0044】
N-2の化合物として、例えば、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシビフェニルジアミン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)-フェニル)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3-ビス(1-4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)-1-メチルエチル)ベンゼン、1,4-ビス(1-4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)-1-メチルエチル)ベンゼン、4,4-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチレン)]ビスアニリン、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチレン)]ビスアニリン、3,3’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチレン)]ビスアニリン、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン等が挙げられる。
【0045】
それらは、単独で1種を使用してもよいし、必要に応じて2種以上を併用してもよい。それらのうち、有機溶剤での溶解性が高く、合成時の反応率が高く、且つ耐熱性を向上させることができるという観点から、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルメタン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)-フェニル)プロパン、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチレン)]ビスアニリン、または4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチレン)]ビスアニリンであることが好ましい。また、溶解性、反応率および耐熱性が優れ、安価であるという観点から、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン、または4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルメタンであることがより好ましい。また、誘電性が優れるという観点から、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)-フェニル)プロパン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン、または4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルメタンであることが特に好ましい。
【0046】
前記変性マレイミド樹脂(A)の変性反応は、有機溶剤で行われることが好ましく、少なくとも2つのマレイミド基/分子を有するマレイミド化合物(M)と少なくとも1つの1級アミン基/分子を有するアミン化合物(N1)と少なくとも2つの1級アミン基/分子を有するアミン化合物(N2)との反応中に使用される有機溶剤は、特に限定されず、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、酢酸メトキシエチル、酢酸エトキシエチル、酢酸ブトキシエチル等のエステル系溶剤、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の芳香族系溶剤、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の窒素原子含有溶剤、ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶剤等が挙げられ、これらの溶剤は1種を使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0047】
そのうち、溶解性の観点から、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドであることが好ましく、毒性が低く、揮発性が高く、且つ残留しにくいという観点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールメチルエーテルであることが特に好ましい。
【0048】
前記少なくとも2つのマレイミド基/分子を有するマレイミド化合物(M)と少なくとも1つの1級アミン基/分子を有するアミン化合物(N1)と少なくとも2つの1級アミン基/分子を有するアミン化合物(N2)との使用割合は特に限定されず、マレイミド化合物(M)のマレイミド基の当量(Em)の、アミン化合物(N1)の1級アミン基の当量(En1)およびアミン化合物(N2)の1級アミン基の当量(En2)に対する当量比Em/(En1+En2)は、1.0<Em/(En1+En2)<10.0の範囲であることが好ましく、該当量比Em/(En1+En2)は、2.0<Em/(En1+En2)<9.0の範囲であることがより好ましい。該当量比Em/(En1+En2)を上記範囲とすることにより、貯蔵安定性、有機溶剤に対する溶解性、銅箔粘着性、誘電特性、粘度および耐熱性が優れている熱硬化性樹脂組成物を取得することができる。
【0049】
前記少なくとも1つの1級アミン基/分子を有するアミン化合物(N1)と少なくとも2つの1級アミン基/分子を有するアミン化合物(N2)との使用割合は特に限定されず、アミン化合物(N1)の1級アミン基の当量(En1)の、アミン化合物(N2)の1級アミン基の当量(En2)に対する当量比En1/En2は、1.0<En1/En2<10.0の範囲であることが好ましい。
【0050】
前記変性マレイミド樹脂(A)の変性反応に使用される有機溶剤の使用量は特に限定されず、マレイミド化合物(M)とアミン化合物(N1)とアミン化合物(N2)との総和100重量部に対し、有機溶剤の使用量は、10~1000重量部であることが好ましく、100~500重量部であることがより好ましく、200~500重量部であることが特に好ましい。機溶剤の使用量を上記範囲とすることにより、溶解性、反応をより十分にさせることができる。
【0051】
前記変性マレイミド樹脂(A)の変性反応の温度および時間は特に限定されず、本開示の分子量分布に対する要求に応じて変性マレイミド樹脂(A)の反応温度および時間を調節することができる。貯蔵安定性およびゲル化制御の観点から、好ましくは、反応温度が50~200℃で、反応時間が0.5~10時間であり、より好ましくは、反応温度が100~160℃で、反応時間が1~8時間の条件で反応を行い、変性マレイミド樹脂(A)を合成する。
【0052】
貯蔵安定性、相溶性および耐熱性の観点から、変性マレイミド樹脂(A)の分子量が1000~4500の分子は、分子総数の30%~50%を占めることが好ましい。本開示の分子量分布は、いずれもゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(標準ポリスチレンで校正する)により測定される値である。
【0053】
前記変性マレイミド樹脂(A)の反応過程において、必要に応じ、任意の反応触媒を使用してもよいし、使用しなくてもよい。反応触媒の例としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン系、メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール系、トリフェニルホスフィン等の有機リン系触媒等が挙げられ、これらは、必要に応じ、1種を使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0054】
前記変性マレイミド樹脂(A)の反応方法は特に限定されず、例えば、撹拌機および還流冷却器付きの反応装置を用いて還流しながら反応させ、変性マレイミド樹脂(A)を作製することができる。
【0055】
前記変性マレイミド樹脂(A)の使用量は特に限定されず、前記変性マレイミド樹脂(A)、活性エステル樹脂(B)およびエポキシ樹脂(C)の総重量を100重量部として計算すれば、変性マレイミド樹脂(A)の量は10~70重量部であることが好ましく、例えば、12重量部、15重量部、21重量部、26重量部、32重量部、37重量部、45重量部、52重量部、63重量部、67重量部であり、20~60重量部であることが更に好ましい。
【0056】
本開示に係る活性エステル樹脂(B)は特に限定されず、分子に1つ以上の活性エステル基が含まれれば良い。
【0057】
好ましくは、活性エステル樹脂(B)は、式(AR-1)で示される化合物、式(AR-2)で示される化合物、またはそれらの組み合わせで構成されるグループから選ばれる。
【0058】
【化21】
(式(AR-1)において、Xは、ベンゼン環またはナフタレン環であり、R
5、R
6は、それぞれ独立してメチル基または水素原子であり、kは0または1であり、mの当量は0.2~2の間にある。)
【0059】
式(AR-1)で示される活性エステルの1つの市販の実例は、DIC株式会社製のHPC-8000-65Tである。
【0060】
【化22】
(式(AR-2)において、Xは、ベンゼン環またはナフタレン環であり、(Y)qにおけるYは、それぞれ独立してメチル基、水素原子、またはエステル基であり、qは1~3の整数であり、nは1~10の整数であり、mは1~10の整数である。)
【0061】
式(AR-2)で示される活性エステルの1つの市販の実例は、DIC株式会社製のHPC-8150-62Tである。
【0062】
前記活性エステル樹脂(B)の使用量は特に限定されず、前記変性マレイミド樹脂(A)、活性エステル樹脂(B)およびエポキシ樹脂(C)の総重量を100重量部として計算すれば、活性エステル樹脂(B)の量は5~50重量部であることが好ましく、例えば、7重量部、13重量部、16重量部、22重量部、25重量部、33重量部、37重量部、45重量部、48重量部であり、10~45重量部であることが更に好ましい。
【0063】
本開示に係るエポキシ樹脂(C)は特に限定されず、少なくとも2つのエポキシ基を含むエポキシ樹脂から選ばれ、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂、ビスフェノールAP型エポキシ樹脂、ビスフェノールTMC型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、三官能フェノール型エポキシ樹脂、四官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノールフタレイン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、分子中にアリーレンエーテル構造を含むエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、多価アルコール型エポキシ樹脂、ケイ素含有エポキシ樹脂、窒素含有エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、グリシジルアミンエポキシ樹脂、グリシジルエステルエポキシ樹脂等から選択できる。樹脂組成物の耐熱性を向上させるために、本開示に係るエポキシ樹脂(C)は、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、分子中にアリーレンエーテル構造を含むエポキシ樹脂のいずれか1種または少なくとも2種の混合物であることが更に好ましい。エポキシ樹脂(C)は、単独で使用してもよいし、必要に応じて少なくとも2種エポキシ樹脂(C)を混合して使用してもよい。
【0064】
前記エポキシ樹脂(C)の使用量は特に限定されず、前記変性マレイミド樹脂(A)、活性エステル樹脂(B)およびエポキシ樹脂(C)の総重量を100重量部として計算すれば、エポキシ樹脂(C)の量は10~60重量部であることが好ましく、例えば、11重量部、13重量部、16重量部、22重量部、25重量部、33重量部、36重量部、44重量部、48重量部、52重量部、57重量部であり、20~50重量部であることが更に好ましい。
【0065】
本開示の樹脂組成物は、難燃剤(D)、無機フィラー(E)、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0066】
本開示に係る難燃剤(D)は特に限定されず、好ましくは、前記難燃剤(D)は臭素系難燃剤または/およびハロゲンフリー難燃剤である。
【0067】
好ましくは、前記臭素系難燃剤は、臭素化ポリカーボネート、臭素化ポリスチレン、ポリ臭素化スチレン、ポリ臭素化アクリレート、デカブロモジフェニルエーテル、エチレンビスペンタブロモジフェニル、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、エチレンジペンタブロモベンゼン、または臭素含有エポキシ樹脂等であってもよい。
【0068】
好ましくは、前記ハロゲンフリー難燃剤はリン系難燃剤であってもよい。
【0069】
好ましくは、前記難燃剤(D)はリン系難燃剤である。リン系難燃剤は、本開示の樹脂組成物の難燃性を効果的に向上させることができる。リン系難燃剤は、反応型リン系難燃剤および非反応型リン系難燃剤を含んでもよい。例えば、芳香族リン酸エステル、モノ置換ホスホン酸ジエステル、二置換ホスフィン酸エステル、二置換ホスフィン酸の金属塩、有機系窒素含有リン化合物、環状有機リン化合物、トリ(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、2,6-ジ(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィノベンゼン、10-フェニル-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、フェノキシホスファゼン化合物、リン酸エステル、ポリリン酸エステル、リン含有フェノール樹脂、リン含有エポキシ樹脂、リン含有ベンゾオキサジン樹脂、リン含有酸無水物樹脂、リン含有活性エステル樹脂等である。そのうち、信頼性の観点から、反応型リン系難燃剤を使用することが好ましく、例えば、反応型のリン含有フェノール樹脂、リン含有エポキシ樹脂、リン含有ベンゾオキサジン樹脂、リン含有酸無水物樹脂、およびリン含有活性エステル樹脂を使用する。低い誘電性の観点から、リン含有活性エステル樹脂を使用することがより好ましい。高い粘着性および相溶性の観点から、以下の式(D-1)で示される反応型リン含有活性エステル難燃剤を使用することがより好ましい。
【0070】
【化23】
(ただし、Acはアセチル基であり、nは1以上の整数である。式(D-1)の難燃剤の1つの市販の実例として、イスラエルICL社製のPolyQuel
TM P100である。)
【0071】
前記難燃剤(D)は、単独で使用してもよいし、必要に応じて少なくとも2種の難燃剤(D)を混合して使用してもよい。
【0072】
前記難燃剤(D)の使用量は特に限定されず、樹脂組成物、プリプレグ、積層板、金属箔張積層板、プリント配線板の難燃要求を満たせば良い。難燃性、耐熱性、吸湿性および誘電特性の観点から、前記変性マレイミド樹脂(A)、活性エステル樹脂(B)、エポキシ樹脂(C)および難燃剤(D)の総重量を100重量部として計算すれば、前記樹脂組成物における全体的なリン含有量は0.1~5.0重量部であることが好ましく、例えば、0.3重量部、0.5重量部、0.8重量部、1.0重量部、1.6重量部、1.8重量部、2.2重量部、2.7重量部、3.3重量部、3.8重量部、4.3重量部、4.7重量部であり、0.5~3.0重量部であることが更に好ましい。
【0073】
本開示に係る無機フィラー(E)は特に限定されず、無機フィラー(E)は、プリプレグ、積層板の分野で知られている無機フィラーであってもよく、本開示の樹脂組成物の性能を大幅に劣化させるものでなければ良い。樹脂組成物に無機フィラー(E)を加えることにより、力学的性能、耐湿熱性、難燃性、誘電特性、熱膨張係数がより優れている樹脂組成物を取得することができる。無機フィラー(E)は、シリカ、金属水和物、酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、クレー、カオリン、タルク、マイカ、複合珪微粉、Eガラスフリット、Dガラスフリット、Lガラスフリット、Mガラスフリット、Sガラスフリット、Tガラスフリット、NEガラスフリット、Qガラスフリット、石英ガラスフリット、チョップドガラス繊維、または中空ガラスから選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の混合物であってもよく、好ましくは、結晶シリカ、溶融シリカ、非晶質シリカ、球状シリカ、中空シリカ、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、クレー、カオリン、タルク、マイカ、複合珪微粉、Eガラスフリット、Dガラスフリット、Lガラスフリット、Mガラスフリット、Sガラスフリット、Tガラスフリット、NEガラスフリット、Qガラスフリット、石英ガラスフリット、チョップドガラス繊維、または中空ガラスのいずれか1種または少なくとも2種の混合物であり、前記混合物は、例えば、結晶シリカと溶融シリカとの混合物、非晶質シリカと球状シリカとの混合物、中空シリカと水酸化アルミニウムとの混合物、ベーマイトと水酸化マグネシウムとの混合物、酸化モリブデンとモリブデン酸亜鉛との混合物、酸化チタンと酸化亜鉛とチタン酸ストロンチウムとチタン酸バリウムとの混合物、硫酸バリウムと窒化ホウ素と窒化アルミニウムとの混合物、炭化ケイ素と酸化アルミニウムとホウ酸亜鉛とスズ酸亜鉛との混合物、複合珪微粉とEガラスフリットとDガラスフリットとLガラスフリットとMガラスフリットとの混合物、SガラスフリットとTガラスフリットとNEガラスフリットと石英ガラスフリットとの混合物、クレーとカオリンとタルクとマイカとの混合物、チョップドガラス繊維と中空ガラスとの混合物であり、更に好ましくは、溶融シリカである。ここで、溶融シリカは、低い熱膨張係数の特性を有するため、好ましいものである。無機フィラー(E)は、球状溶融シリカであることがより好ましく、球状溶融シリカは、低い熱膨張係数および良好な誘電特性等の特性を有するとともに、良好な分散性、流動性を有するため、好ましいものである。
【0074】
無機フィラー(E)の平均粒径(d50)は特に限定されないが、分散性の観点から、平均粒径(d50)は、0.1~10μmであることが好ましく、例えば、0.2μm、0.8μm、1.5μm、2.1μm、2.6μm、3.5μm、4.5μm、5.2μm、5.5μm、6μm、6.5μm、7μm、7.5μm、8μm、8.5μm、9μm、9.5μmであり、0.2~5μmであることがより好ましい。異なるタイプ、異なる粒子サイズ分布、または異なる平均粒径の無機フィラー(E)は、必要に応じて単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0075】
本開示において、無機フィラー(E)の使用量は特に限定されない。前記変性マレイミド樹脂(A)、活性エステル樹脂(B)およびエポキシ樹脂(C)の総重量を100重量部としてまたは前記変性マレイミド樹脂(A)、活性エステル樹脂(B)、エポキシ樹脂(C)および難燃剤(D)の総重量を100重量部として計算すれば、前記無機フィラー(E)の量は、10~200重量部であってもよく、例えば、20重量部、40重量部、60重量部、80重量部、100重量部、120重量部、140重量部、160重量部、180重量部であり、20~150重量部であることが好ましく、30~100重量部であることが更に好ましい。
【0076】
本開示の無機フィラー(E)は、表面処理剤または湿潤剤、分散剤と合わせて使用することができる。表面処理剤は特に限定されず、無機物の表面処理によく使用される表面処理剤から選択できる。具体的には、オルトケイ酸テトラエチル系化合物、有機酸系化合物、アルミネート系化合物、チタネート系化合物、シリコーン低重合体、高分子処理剤、シランカップリング剤等である。シランカップリング剤は特に限定されず、無機物の表面処理によく使用されるシランカップリング剤から選ばれ、具体的には、アミノシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤、ビニルシランカップリング剤、フェニルシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤等であり、アミノシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤、フェニルシランカップリング剤であることが好ましく、アミノシランカップリング剤であることがより好ましい。湿潤剤、分散剤は特に限定されず、塗料によく使用される湿潤剤、分散剤から選ばれる。本開示は、異なるタイプの表面処理剤または湿潤剤、分散剤を必要に応じて単独で使用してもよいし、適当に組み合わせて使用してもよい。
【0077】
本開示の樹脂組成物は、有機フィラー(F)を更に含んでもよい。有機フィラー(F)は特に限定されず、シリコーン、液晶重合体、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、ゴム、またはコアシェルゴムから選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の混合物であってもよい。前記有機フィラー(F)は、粉末または粒子であってもよい。
【0078】
本開示に係る「含む」は、前記成分に加え、他の成分を含んでもよいことを意味し、これらの他の成分は、前記樹脂組成物に異なる特性を付与する。その他、本開示に係る「含む」は、密閉型の「である」または「……で構成される」に置き換えることができる。
【0079】
本開示の樹脂組成物は、樹脂組成物の本来の性能を損傷しない限り、前記変性マレイミド樹脂(A)以外のマレイミド樹脂と合わせて使用してもよく、ジ(4-マレイミドフェニル)メタン、ジ(4-マレイミドフェニル)エーテル、ジ(4-マレイミドフェニル)スルホン、ジ(4-マレイミドフェニル)スルフィド、ジ(4-マレイミドフェニル)ケトン、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、1,3-ジ(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ジ(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、2,2-ジ(4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル)プロパン、ジ(4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル)スルホン、ジ(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ジ(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ジ(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド(Polyphenylmethane maleimide)から選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の混合物であってもよい。これらのマレイミド樹脂は、必要に応じて単独で使用してもよいし、または複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0080】
本開示の樹脂組成物は、樹脂組成物の本来の性能を損傷しない限り、様々な高重合体、ゴム、エラストマーと合わせて使用してもよい。具体的には、例えば、液晶重合体、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、異なる難燃化合物、または添加剤等であってもよい。熱硬化性樹脂は、フェノール樹脂、シアネート樹脂、酸無水物化合物、スチレン-無水マレイン酸共重合樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、シリコーン樹脂、アリル樹脂、アミン系化合物およびジシクロペンタジエン樹脂から選択できる。それらは、必要に応じて単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0081】
本開示の樹脂組成物は、硬化反応の速度を制御するように、必要に応じて硬化促進剤と合わせて使用してもよい。前記硬化促進剤は特に限定されず、マレイミド樹脂、活性エステル樹脂、エポキシ樹脂の硬化の促進によく使用される硬化促進剤から選択でき、具体的には、トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン系、メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール系、およびその誘導体、トリフェニルホスフィン等の有機リン系促進剤等であり、これらは、必要に応じ、1種を使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0082】
また、前記樹脂組成物は、様々な添加剤を含んでもよく、具体的な例として、酸化防止剤、熱安定性、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、潤滑剤等が挙げられる。これらの様々な添加剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0083】
本開示の樹脂組成物の調製方法は具体的に限定されず、本開示の樹脂組成物の1つの調製方法として、前記の変性マレイミド樹脂(A)、活性エステル樹脂(B)およびエポキシ樹脂(C)を公知の方法で配合し、予備重合し、予備反応させ、撹拌し、混合することができる。
【0084】
本開示の樹脂組成物は、樹脂ワニスを形成する時、必要に応じて有機溶剤を使用することができる。有機溶剤は特に限定されず、変性マレイミド樹脂(A)、活性エステル樹脂(B)およびエポキシ樹脂(C)の混合物と相溶する溶剤であれば良く、前記溶剤は、具体的な例として、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル等のアルコール系溶剤、アセトン、ブタノン、メチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、酢酸メトキシエチル、酢酸エトキシエチル、酢酸ブトキシエチル等のエステル系溶剤、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の芳香族系溶剤、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の窒素原子含有溶剤、ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶剤等が挙げられ、これらの溶剤は1種を使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0085】
本開示の別の目的は、上記樹脂組成物を用いて調製したプリプレグ、積層板、金属箔張積層板およびプリント配線板を提供する。本開示の樹脂組成物を用いて得たプリプレグは良好な硬化性を有する。得られた積層板は、良好なサイズ安定性を有し、耐熱性が優れている。それと同時に、これにより、プリプレグで得られた金属箔張積層板は、優れた誘電特性、高い難燃性、良好な耐熱性、低い吸水性、低い熱膨張係数、および導体との高い接合性の特点を有し、特に、高耐熱、高多層が要求されるプリント配線板用材料とすることに適用される。
【0086】
本開示は、上記樹脂組成物を用いて調製したプリプレグを提供し、前記プリプレグは、基材および浸漬乾燥により基材に付着された上記樹脂組成物を含む。本開示に係る基材は特に限定されず、様々なプリント配線板材料を作製するための既知の基材から選択できる。具体的には、無機繊維(例えば、Eガラス、Dガラス、Lガラス、Mガラス、Sガラス、Tガラス、NEガラス、Qガラス、石英等のガラス繊維)、有機繊維(例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、液晶重合体等)である。基材の形式は、通常、織物、不織布、粗糸、短繊維、繊維紙等である。上記基材において、本開示に係る基材は、ガラスクロスであることが好ましい。
【0087】
本開示に係るプリプレグの調製方法は具体的に限定されず、本開示に係る樹脂組成物と基材とを結合することによりプリプレグを調製する方法であれば良い。
【0088】
本開示は、上記プリプレグを用いて調製した積層板および金属箔張積層板を更に提供する。前記積層板は、少なくとも1枚の上記プリプレグを含み、重ね合わせられたプリプレグ層を積層して硬化すれば、積層板を取得する。前記金属箔張積層板は、少なくとも1枚の上記プリプレグを含み、重ね合わせられたプリプレグの片側または両側に金属箔を被覆し、積層して硬化すれば、金属箔張積層板を取得する。
【0089】
本開示の積層板の調製方式は具体的に限定されず、公知の方法で調製でき、例えば、1枚の上記プリプレグを置くか、あるいは、2枚または2枚以上のプリプレグを積層し、必要に応じ、プリプレグまたは積層されたプリプレグの片側または両側に金属箔を置き、積層して硬化して積層板または金属箔張積層板を取得する。前記金属箔は特に限定されず、プリント配線板材料用の金属箔から選択できる。積層条件は、プリント配線板用の積層板および多層板の汎用積層条件を用いることができる。
【0090】
本開示はプリント配線板を更に提供し、前記プリント配線板は、少なくとも1枚の上記プリプレグを含む。本開示に係るプリント配線板の調製方法は具体的に限定されず、公知の方法で調製することができる。
【0091】
以下、実施例を参照しながら本開示についてより詳細に説明する。なお、これらの説明および実施例は、いずれも本開示を理解しやすいためのものであり、本開示を限定するものではない。本開示の保護範囲は添付の特許請求の範囲に準ずる。
【実施例】
【0092】
合成例1 本開示の変性マレイミド樹脂A1の合成
温度計、撹拌装置および還流冷却管付きの容積1Lの反応容器中に、30.5gの4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、190.0gの3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、10.2gのp-アミノフェノール、180gのN,N-ジメチルホルムアミド、および60gのエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、110℃で5時間反応させ、変性マレイミド樹脂(A1)の溶液を取得した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、標準ポリスチレンを用いる検量線で換算し、分子量が1000~4500の間にある分子が分子総数の38%を占めることを測定した。
【0093】
合成例2 本開示の変性マレイミド樹脂A2の合成
温度計、撹拌装置および還流冷却管付きの容積1Lの反応容器中に、33.5gの4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、190.0gの3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、7.2gのp-アミノフェノール、180gのN,N-ジメチルホルムアミド、および60gのエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、110℃で5時間反応させ、変性マレイミド樹脂(A2)の溶液を取得した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、標準ポリスチレンを用いる検量線で換算し、分子量が1000~4500の間にある分子が分子総数の50%を占めることを測定した。
【0094】
合成例3 本開示の変性マレイミド樹脂A3の合成
温度計、撹拌装置および還流冷却管付きの容積1Lの反応容器中に、30.5gの4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、190.0gの2,2-ジ(4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル)プロパン、10.2gのp-アミノフェノール、180gのN,N-ジメチルホルムアミド、および60gのエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、110℃で5時間反応させ、変性マレイミド樹脂(A3)の溶液を取得した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、標準ポリスチレンを用いる検量線で換算し、分子量が1000~4500の間にある分子が分子総数の38%を占めることを測定した。
【0095】
合成例4 本開示の変性マレイミド樹脂A4の合成
温度計、撹拌装置および還流冷却管付きの容積1Lの反応容器中に、30.5gの4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、190.0gのジ(4-マレイミドフェニル)メタン、10.2gのp-アミノフェノール、180gのN,N-ジメチルホルムアミド、および60gのエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、110℃で5時間反応させ、変性マレイミド樹脂(A4)の溶液を取得した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、標準ポリスチレンを用いる検量線で換算し、分子量が1000~4500の間にある分子が分子総数の36%を占めることを測定した。
【0096】
合成例5 本開示の変性マレイミド樹脂A5の合成
温度計、撹拌装置および還流冷却管付きの容積1Lの反応容器中に、30.5gの4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、190.0gのジ(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、10.2gのp-アミノフェノール、180gのN,N-ジメチルホルムアミド、および60gのエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、110℃で5時間反応させ、変性マレイミド樹脂(A5)の溶液を取得した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、標準ポリスチレンを用いる検量線で換算し、分子量が1000~4500の間にある分子が分子総数の38%を占めることを測定した。
【0097】
合成例6 本開示の変性マレイミド樹脂A6の合成
温度計、撹拌装置および還流冷却管付きの容積1Lの反応容器中に、30.5gの4,4’-ジアミノジフェニルメタン、190.0gの3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、10.2gのp-アミノフェノール、180gのN,N-ジメチルホルムアミド、および60gのエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、110℃で5時間反応させ、変性マレイミド樹脂(A6)の溶液を取得した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、標準ポリスチレンを用いる検量線で換算し、分子量が1000~4500の間にある分子が分子総数の42%を占めることを測定した。
【0098】
合成例7 本開示の変性マレイミド樹脂A7の合成
温度計、撹拌装置および還流冷却管付きの容積1Lの反応容器中に、30.5gの4,4’-ジアミノジフェニルメタン、190.0gの3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、10.2gのm-アミノフェノール、180gのN,N-ジメチルホルムアミド、および60gのエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、110℃で5時間反応させ、変性マレイミド樹脂(A7)の溶液を取得した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、標準ポリスチレンを用いる検量線で換算し、分子量が1000~4500の間にある分子が分子総数の40%を占めることを測定した。
【0099】
合成例8 比較用の変性マレイミド樹脂A8の合成
温度計、撹拌装置および還流冷却管付きの容積1Lの反応容器中に、25.5gの4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、190.0gの3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、15.2gのp-アミノフェノール、180gのN,N-ジメチルホルムアミド、および60gのエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、100℃で2時間反応させ、変性マレイミド樹脂(A8)の溶液を取得した。GPCを用い、標準ポリスチレンを用いる検量線で換算し、分子量が1000~4500の間にある分子が分子総数の20%を占めることを測定した。
【0100】
合成例9 比較用の変性マレイミド樹脂A9の合成
温度計、撹拌装置および還流冷却管付きの容積1Lの反応容器中に、38.5gの4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、190.0gの3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、2.2gのp-アミノフェノール、180gのN,N-ジメチルホルムアミド、および60gのエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、120℃で7時間反応させ、変性マレイミド樹脂(A9)の溶液を取得した。GPCを用い、標準ポリスチレンを用いる検量線で換算し、分子量が1000~4500の間にある分子が分子総数の65%を占めることを測定した。
【0101】
合成例10 比較用の変性マレイミド樹脂A10の合成
温度計、撹拌装置および還流冷却管付きの容積1Lの反応容器中に、38.5gの4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、190.0gの3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、180gのN,N-ジメチルホルムアミド、および60gのエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、120℃で7時間反応させ、変性マレイミド樹脂(A10)の溶液を取得した。GPCを用い、標準ポリスチレンを用いる検量線で換算し、分子量が1000~4500の間にある分子が分子総数の70%を占めることを測定した。
【0102】
合成例11 比較用の変性マレイミド樹脂A11の合成
温度計、撹拌装置および還流冷却管付きの容積1Lの反応容器中に190.0gの3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、p-アミノフェノール15.2g、180gのN,N-ジメチルホルムアミド、および60gのエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、120℃で7時間反応させ、変性マレイミド樹脂(A11)の溶液を取得した。GPCを用い、標準ポリスチレンを用いる検量線で換算し、分子量が1000~4500の間にある分子が分子総数の15%を占めることを測定した。
【0103】
以下の表における処方で実施例1~16および比較例1~4の組成物を調製した。
【0104】
A1~A11は、上述のように調製された変性マレイミド樹脂溶液であった。
B1は、活性エステル樹脂HPC-8000-65T(エステル基の当量=230、DIC株式会社製)であった。
B2は、活性エステル樹脂HPC-8150-62T(エステル基の当量=200、DIC株式会社製)であった。
C1は、エポキシ樹脂HP-7200H(ジシクロペンタジエン型、DIC株式会社製)であった。
C2は、エポキシ樹脂NC-3000-H(ビフェニルアラルキル型、日本化薬株式会社製)であった。
C3は、エポキシ樹脂N-690(o-クレゾール型、DIC株式会社製)であった。
D1は、リン含有活性エステルPolyquelTM P100(イスラエルICL社製)であった。
D2は、リン含有フェノール樹脂XZ-92741(米国Olin社製)であった。
E1は、無機フィラーとしての角形シリカDQ1032A(江蘇NOVORAY社製)であった。
E2は、無機フィラーとしての球形シリカSC-2050MB (日本Admatechs社製)であった。
【0105】
組成物を調製した後、直接乾燥してガラス転移温度を試験するための検体とした。また、ガラスクロス2116(0.1mm)に組成物を浸漬し、155℃で5min乾燥し、プリプレグを取得した。更に、8枚の該プリプレグを重ね合わせ、両面に厚さ18μmの反転銅箔(三井金属株式会社製)を重ね合わせ、温度200℃、圧力25kgf/cm2(2.45MPa)で90min加熱加圧して成形させ、厚さ1.0mmの銅張板を作製した。上記銅張板の銅箔をエッチングした後、銅を含まない積層板を形成した。
【0106】
以下の方法で銅張板/銅を含まない積層板の比誘電率、剥離強度、ガラス転移温度、金属箔粘着性、熱膨張性、難燃性および作業性を測定して評価した。評価方法は以下のとおりであった。結果を以下の表に示した。
【0107】
誘電率(Dk)および誘電正接(Df)
平板静電容量法に従い、積層板に対して1GHzでの誘電率および誘電正接を試験した。
【0108】
剥離強度
IPC-TM-650 2.4.8方法に従い、銅張板を測定した。
【0109】
ガラス転移温度(Tg)
粘弾性測定装置(DMA:Rheometric社製の固体粘弾性測定装置RSAII、矩形延伸(Rectangular Tension)法、周波数1Hz、昇温速度5℃/min)を用い、積層板に対して弾性率の変化が最大(tanδの変化率が最大)となる温度を測定し、ガラス転移温度として評価した。
【0110】
熱膨張係数(CTE)
IPC-TM-650 2 .4 .24方法に従い、積層板を測定した。
【0111】
耐湿熱性
積層板を圧力鍋に入れ、120℃、105KPaの条件で3時間処理し、その後、288℃の錫炉に浸漬させた。積層板が分層破裂すると、対応する時間を記録した。錫炉内で5minを超えても銅張板にふくれまたは分層が現れない場合、評価を終了することができた。ふくれおよび分層がないものを合格と記し、ふくれまたは分層があるものを失効と記した。
【0112】
難燃性
UL 94垂直燃焼法に従い、積層板を測定した。
【0113】
作業性
樹脂組成物の成形性、プロセスコントロール性に応じて評価した。作業性を満たすもの、即ち、変性マレイミド樹脂(A)の変性後の貯蔵安定性が良好であるか、または変性マレイミド樹脂(A)の粘度が適度で、パフォーマンスが良好なプリプレグを形成できるものであれば、OKと記した。そうでないものをOKでないと記した。
【0114】
実施例および比較例のデータをそれぞれ以下の表1~3に示した。
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
本開示の実施例1~16における樹脂組成物は、誘電特性、剥離強度、熱膨張率、耐湿熱性、難燃性および作業性の面でいずれもパフォーマンスが良好であった。
【0119】
比較例1および実施例2の区別は、変性マレイミド樹脂の分子量分布が異なることのみであった。比較例1において、分子量が1000~500の間にある分子の割合は低かった。以上の表から見られるように、その剥離強度が悪く、ガラス転移温度が低く、耐湿熱性が不合格で、且つ作業性が不合格であった。
【0120】
比較例2と実施例2との区別は、変性マレイミド樹脂の分子量分布が異なることのみであった。比較例2において、分子量が1000~4500の間にある分子の割合が高かった。以上の表から見られるように、その熱膨張率が高く、且つ作業性が不合格であった。
【0121】
比較例3、4と実施例2との区別は、2つの1級アミンを含むジアミン/1つの1級アミンのみを有するモノアミン変性マレイミドのみを使用する場合、得られた変性マレイミド樹脂の分子量が1000~4500の間にある分子の割合は高かった/低かった。以上の表から見られるように、その誘電特性は悪かったとともに、耐湿熱性は悪かった。
【0122】
本開示の熱硬化性樹脂組成物は、マレイミド樹脂にエポキシ樹脂との反応性が強い基を導入することで、変性マレイミド樹脂(A)を形成する。反応において、特別な溶剤を採用してその分子量分布を制御することにより、マレイミド樹脂と硬化剤活性エステルとの相溶性の問題を解決するとともに、活性エステル硬化エポキシ樹脂の体系の耐熱性が不十分であるという問題を解決する。
【0123】
また、本開示の熱硬化性樹脂組成物は、低い吸水性のリン含有活性エステル樹脂を難燃剤として導入することにより、一般的なリン含有難燃剤の吸水率が高く、樹脂粘着強度が低下し、難燃効率が低く、誘電特性が悪いという欠点を回避する。
【0124】
該熱硬化性樹脂組成物を用いて作製されたプリプレグ、積層板および金属箔張積層板は、高いガラス転移温度、低い誘電率、低い誘電損失、低い吸水率、低い熱膨張係数、高い難燃性、導体との高い接合性という利点を有する。
【0125】
明らかに、当業者は、本開示の精神および範囲から逸脱しない前提で、本開示の実施例に対して様々な変更および変形を行うことができる。これにより、本開示のこれらの修正および変形が本開示の特許請求の範囲およびその均等技術の範囲内に属すれば、本開示もこれらの変更および変形を含むことを意図する。