(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】複合摩耗部品
(51)【国際特許分類】
B22D 19/00 20060101AFI20221227BHJP
B22D 19/02 20060101ALI20221227BHJP
B22D 19/06 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
B22D19/00 E
B22D19/02
B22D19/06 Z
(21)【出願番号】P 2022503899
(86)(22)【出願日】2021-01-19
(86)【国際出願番号】 EP2021051040
(87)【国際公開番号】W WO2021160381
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-02-14
(32)【優先日】2020-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500425242
【氏名又は名称】マゴット アンテルナショナル エス.アー.
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】マルギリエール, ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】クレルモン, ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】トラン, ミシェル
【審査官】瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-504036(JP,A)
【文献】特表2002-542035(JP,A)
【文献】特開昭62-097758(JP,A)
【文献】特開昭62-252657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 19/00
B22D 19/02
B22D 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透かし加工構造を有する少なくとも一つのセラミック強化材インサート及び鉄合金マトリックスを含む複合摩耗部品であって、セラミック強化材インサートの透かし加工構造が、めくら穴を含み、めくら穴のめくら端が、前記複合摩耗部品のうち、最も多く摩耗にさらされる方の側に配置されており、セラミック強化材インサートが、開口を有する少なくとも二つの隣接する第一領域及び第二領域を含み、開口が、めくら穴及び貫通穴を含み、第一領域が、第二領域よりも多くの応力を受けるように構成されている、複合摩耗部品。
【請求項2】
第一領域が、過半数のめくら穴を含み、第二領域が、過半数の貫通穴を含む、請求項1に記載の複合摩耗部品。
【請求項3】
第一領域中のセラミック強化材インサートのめくら穴のそれぞれの断面積が、第二領域中の貫通穴のそれぞれの断面積より小さい、請求項2に記載の複合摩耗部品。
【請求項4】
第一領域のセラミック強化材インサートの開口の全断面積が、第二領域のセラミック強化材インサートの開口の全断面積より小さい、請求項2に記載の複合摩耗部品。
【請求項5】
セラミック強化材インサートのめくら穴のめくら端を含む側が、第二領域を形成する側とは異なる組成を有するセラミックによって少なくとも部分的に形成されている、請求項2に記載の複合摩耗部品。
【請求項6】
第一領域が、少なくとも一つのセラミック強化材インサートの上に重ねられた第二セラミック強化材構造をさらに含む、請求項2に記載の複合摩耗部品。
【請求項7】
めくら穴が、セラミック強化材インサート中に斜めに配置されている、請求項1に記載の複合摩耗部品。
【請求項8】
めくら穴が、円錐台形状を有する、請求項1に記載の複合摩耗部品。
【請求項9】
セラミック強化材インサートが、アルミナ-ジルコニアを含む、請求項1に記載の複合摩耗部品。
【請求項10】
セラミック強化材インサートが、自己伝播発熱反応によってその場で形成される炭化物を含む、請求項1に記載の複合摩耗部品。
【請求項11】
自己伝播発熱反応によってその場で形成される炭化物が、炭化チタンを含む、請求項10に記載の複合摩耗部品。
【請求項12】
セラミック強化材インサートが、セラミック金属複合体(CERMET)の粒子を含む、請求項1に記載の複合摩耗部品。
【請求項13】
セラミック強化材インサートが、10~90容量%の範囲のアルミナ及び90~10容量%の範囲のジルコニアの割合のアルミナ-ジルコニアを含む、請求項1に記載の複合摩耗部品。
【請求項14】
ジルコニアが、イットリアで安定化されている、請求項13に記載の複合摩耗部品。
【請求項15】
以下の工程を含む、透かし加工構造を有する少なくとも一つのセラミック強化材インサート及び鉄合金マトリックスを含む複合摩耗部品であって、セラミック強化材インサートの透かし加工構造が、めくら穴を含
み、
セラミック強化材インサートが、開口を有する少なくとも二つの隣接する第一領域及び第二領域を含み、開口が、めくら穴及び貫通穴を含み、第一領域が、第二領域よりも多くの応力を受けるように構成されている、複合摩耗部品を製造するための方法:
- 鉄合金を鋳造することによって複合摩耗部品を製造するための型を与えること;
- 複合摩耗部品の最も多く摩耗にさらされる側にめくら側が配置されるように、型の中にセラミック材料のミリメートルレベルの粒子の凝集体又は浸透性セラミック材料プリカーサーの形のセラミック強化材インサートを配置すること;
- 溶融された鉄合金をセラミック強化材インサートに浸透させること。
【請求項16】
鉄合金が、鋼又は鋳鉄を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
セラミック材料のミリメートルレベルの粒子の凝集体又は浸透性セラミック材料プリカーサーが、以下の組成から選択される、請求項15に記載の方法:
- 90/10~10/90の割合のアルミナ-ジルコニア、又は
- 90/10~10/90の割合のアルミナ-ジルコニア、但しジルコニアは、イットリアで安定化されている。
【請求項18】
セラミック材料のミリメートルレベルの粒子の凝集体又は浸透性セラミック材料プリカーサーが、炭素及びチタン粉末を含むか、又はセラミック材料のミリメートルレベルの粒子の凝集体又は浸透性セラミック材料プリカーサーが、鉄合金の鋳造によって開始される反応のモデレーターとして、鉄粉末を含む炭素及びチタン粉末を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
セラミック材料のミリメートルレベルの粒子の凝集体又は浸透性セラミック材料プリカーサーが、セラミック金属複合体(CERMET)を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
透かし加工構造を有する少なくとも一つのセラミック強化材インサート及び鉄合金マトリックスを含む複合摩耗部品であって、セラミック強化材インサートの透かし加工構造が、複数のめくら穴を含み、複数のめくら穴は、それらの閉じた底が、最も多く摩耗にさらされる複合摩耗部品の面に向くように配向されており、セラミック強化材インサートが、開口を有する少なくとも二つの隣接する第一領域及び第二領域を含み、開口が、複数のめくら穴及び複数の貫通穴を含み、第一領域が、過半数のめくら穴を含み、第二領域が、過半数の貫通穴を含み、第一領域が、第二領域よりも高い耐摩耗性を与えるように構成されている、複合摩耗部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄合金の鋳造によって作られた複合摩耗部品に関する。特に、本発明は、摩耗部品に一体化された三次元セラミック凹状構造、及び摩耗応力に適応された幾何学構造によって強化された摩耗部品に関する。本発明はまた、前記摩耗部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造によって作られた複合摩耗部品は、従来良く知られている。これらは主に、金属マトリックス内に特定の三次元幾何学形状に従って配置された炭化物、窒化物、又は他の金属間元素によって又はアルミナ-ジルコニアタイプのセラミックによって摩耗に最も多くさらされる面の上を選択的に強化された鋳造鉄部品である。
【0003】
強化構造の特定の配置は、強化粒子又は構造の配置又は幾何学形状に従って強化の差を付けた階層複合体を作ることを可能にする。この方法は、部品の最も多く応力を受ける側の砂型の内側に「詰め物」として配置された、鋳造時に溶融金属による浸透を可能にする隙間を有する中空ハニカム型構造又はミリメートルレベルの粒子凝集体の形のセラミックウエハーを作ることを可能にする。
【0004】
セラミックが鉄の鋳造前に型中に特定の三次元幾何学形状に従って配置される方法によって鋳物で作られる複合部品には、主に二つのタイプがある。一つは、セラミックが鋳造前に形成されるものであり、もう一つは、セラミックが型中に存在する試薬から自己伝播発熱反応によって鋳造時に形成されるものである。
【0005】
従って、複合摩耗部品は、一方では、例えば鋳造前に型中に配置されることができかつその隙間が1500℃前後の鋳造金属によって単純に浸透されている、既に形成された炭化チタンで強化されることができる。他方では、複合摩耗部品は、粉末形態で予め混合されかつ2500℃前後の自己伝播発熱反応(この反応は、鋳造金属によって開始され、鋳造金属は、次に毛管作用によって強化セラミック構造中に引き込まれ、隙間を満たすだろう)によってTiCを形成する、チタンと炭素の試薬からその場で形成される炭化チタンで強化されることができる。
【0006】
文献WO98/15373は、ハニカム形状のアルミナ-ジルコニアベースのセラミック強化材を有する複合摩耗部品を開示する。
【0007】
文献WO03/047791は、溶融された鋳鉄によって開始され、次いでいったん形成されたセラミック構造に浸透する自己伝播発熱反応に従ってその場で形成された、炭化物、窒化物、酸化物セラミック又は金属間元素を有する複合摩耗部品を開示する。
【0008】
文献WO2010/031660、WO2010/031661、WO2010/031663、WO2010/031662は、反応体が粒子として型中に導入される、その場で形成される炭化チタンで強化された階層複合摩耗部品を開示する。この摩耗部品は、しゅんせつ歯、コーン、破砕ハンマーとして示されている。
【0009】
文献WO2018/069006は、摩耗領域が摩耗応力に依存して異なるように強化された粉砕ローラーを開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、改良された幾何学構造を有するセラミック強化インサートを有する複合摩耗部品を提供することであり、そこでは構造及び配置の両方が摩擦応力に適応されている。それは、摩耗部品の最も多く応力を受ける側のセラミック強化材の初期摩耗の後の耐性構造を再作成することを意図される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、透かし加工構造(openwork structure)を有するインサートの形の少なくとも一つのセラミック強化材及び鉄合金マトリックスを含む複合摩耗部品であって、透かし加工構造が、めくら穴を含み、めくら穴のめくら側が、前記複合摩耗部品のうち、最も多く応力を受ける方の側に配置されている、複合摩耗部品を開示する。
【0012】
本発明の好ましい実施形態は、以下の特徴の少なくとも一つの又はいずれかの好適な組み合わせを含む:
- 前記セラミックインサートが、少なくとも二つの領域(A,B)を含み、より多く応力を受ける方の領域(A)が、過半数(majority)のめくら穴を含み、より少なく応力を受ける方の領域(B)が、過半数の貫通穴を含む、
- 前記複合摩耗部品の領域(A)中のセラミックインサートの穴の断面積が、前記複合摩耗部品の領域(B)の穴の断面積より小さい、
- 領域(A)のセラミックインサート(1)の開口の全断面積が、領域(B)のセラミックインサート(1)の開口の全断面積より小さい、
- セラミックインサートのめくら側が、貫通穴を有する領域(B)を形成する側とは異なる組成を有するセラミックによって部分的に又は完全に形成されている、
- 領域(A)中に少なくとも二つの重ねられたセラミック強化構造(D,E)がある、
- めくら穴が、インサート中に斜めに配置されている、
- めくら穴が、円錐台形状を有する、
- セラミックインサートが、アルミナ-ジルコニアを含む、
- セラミックインサートが、自己伝播発熱反応によってその場で形成される炭化物、好ましくは炭化チタンを含む、
- セラミックインサートが、セラミック金属複合体(CERMET)の粒子を含む、
- セラミック構造が、10~90容量%の範囲のアルミナ及び90~10容量%の範囲のジルコニアの割合のアルミナ-ジルコニアを含み、ジルコニアが、任意選択的にイットリアで安定化されている。
【0013】
本発明はまた、以下の工程を含む、本発明による摩耗部品を製造するための方法を開示する:
- 鉄合金を鋳造することによって摩耗部品を製造するための型を与えること;
- 摩耗部品の最も多く応力を受ける側にめくら側が配置されるように、型の中にセラミック材料のミリメートルレベルの粒子の凝集体又は浸透性セラミック材料プリカーサーの形の本発明によるインサートを配置すること;
- 溶融された鉄合金をインサートに浸透させること。
【0014】
本発明による方法は、以下のように実施されることが好ましい:
- 鉄合金が、鋼又は鋳鉄を含む、
- セラミック材料のミリメートルレベルの粒子の凝集体又は浸透性セラミック材料プリカーサーが、以下の組成から選択される、
- 90/10~10/90の割合のアルミナ-ジルコニア、但しジルコニアは、任意選択的にイットリアで安定化されている;
- 鉄合金の鋳造によって開始される反応のモデレーターとして、鉄粉末を任意選択的に含む炭素及びチタン粉末;
- セラミック金属複合体(CERMET)。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下に述べられる図において、「インサート」は、隙間を有するミリメートルサイズの粒子の多かれ少なかれ多孔質の凝集体(「aggregates」又は「agglomerates」)から形成された浸透性三次元構造として規定される。
【0016】
表現の容易のため、図は、摩耗部品の強化部分に配置されるこれらのインサートの三次元外形のみを示す。
【0017】
【
図1】
図1は、本発明によるめくら穴を有するセラミックインサートの要素を表わす。インサートは、ここではその最も簡単な形で概略的に示されている。かかるインサートは、摩耗に最も多くさらされる面にめくら側を配置されている。かかるインサートは、鋳造中に鉄合金によって浸透されることを意図される多数の隙間又は細孔(図示せず)を有する。
【0018】
【
図2】
図2は、
図1に記載されたものと同じ原理に基づくセラミックインサートを表わすが、より大きいめくら穴を持ち、それは、かかるセラミックインサートにおいてめくら穴を作る異なる可能性を示す。
【0019】
【
図3】
図3は、
図1に記載されたものと同じ原理に基づくめくら穴を有するセラミックインサートを表わすが、インサートは、二つの異なるセラミック層D及びEを有する。
【0020】
【
図4】
図4は、
図3に記載されたものと同じ原理に基づくめくら穴を有するセラミックインサートを表わすが、より深いめくら穴を持ち、それは、第二層E中に貫通する。
【0021】
【
図5】
図5は、
図3に記載されたものと同じ原理に基づくめくら穴を有するセラミックインサートを表わすが、より拡大した穴を有するように作られている。
【0022】
【
図6】
図6は、
図1に記載されたものと同じ原理に基づくめくら穴を有するセラミックインサートを表わすが、より大きい断面積の貫通穴をほぼ等しい割合で組み合わされためくら穴を有する。
【0023】
【
図7】
図7は、
図1に記載されたものと同じ原理に基づくめくら穴を有するセラミックインサートを表わすが、より大きい断面積の貫通穴を少ない割合で組み合わされためくら穴を有する。ここでは、その貫通穴より小さい直径を有するめくら穴は、過半数である。
【0024】
【
図8】
図8は、二つの異なる応力領域A及びBを有するセラミックインサートを表わす。摩耗に対してより多くさらされる領域Aは、主にめくら穴を含む。摩耗に対してより少なくさらされる領域Bは、主に貫通穴を含む。領域Bの貫通穴は、めくら穴より大きい断面積を有する。
【0025】
【
図9】
図9は、
図8と同じ構成を表わすが、領域A及び領域Bに異なるセラミックを有する。
【0026】
【
図10】
図10は、
図8と同じ構成を表わすが、領域A及び領域Bに異なるセラミックを有するだけでなく、領域Aにおいて二つの異なるセラミック層D及びEを有し、領域Aのめくら側により耐摩耗性のセラミックを有する。
【0027】
【
図11】
図11は、斜めに配置されためくら穴を有する、本発明によるセラミックインサートを表わす。
【0028】
【
図12】
図12は、円錐台形状のめくら穴を有する、本発明によるセラミックインサートを表わす。
【0029】
【
図13】
図13は、縦型回転粉砕機のための粉砕ローラーの形の本発明による摩耗部品の図示例を表わし、摩耗に最も多くさらされる領域Aは、めくら穴を有するセラミックインサートを含む。領域Aは、貫通穴を含む、摩耗により少なくさらされる領域Bに隣接する。
【0030】
【
図14】
図14は、縦型回転粉砕機のテーブル上の粉砕ローラーの使用を概略的に表わす。
【0031】
【
図15】
図15は、めくら穴を有するセラミックインサートを有する粉砕コーンを概略的に表わす。
【発明を実施するための形態】
【0032】
鋳物中に鋳造された摩耗部品は、岩及び鉱石を粉砕するための鉱山業において、又はしゅんせつの分野において極めて一般的である。我々は、例えば岩破砕の場合には、衝撃式破砕機のための複合インパクター、圧縮破砕機のための移動式コーン、又は縦型圧縮粉砕機のためのローラーテーブルを摩耗部品の例として挙げることができるが、これらに限定されない。
【0033】
これらの機械中の摩耗部品が直面する応力は、耐衝撃性及び耐摩耗性の両方である。この理由のため、耐摩耗性であるが耐衝撃性ではないセラミック材料(様々なタイプの炭化物、窒化物、酸化物など)は、通常、鋳鉄又は鋼のような鉄合金と組み合わされる。鉄合金は、衝撃に耐える特定のレベルの延性を与えるが、耐摩耗性に劣る。
【0034】
しかしながら、これらの二つのタイプの材料を組み合わせることは容易でない。なぜならそれらは、極めて異なる膨張率を有し、それは、部品が冷却されるときに微小クラックを生成し、これらの潜在的な欠陥のため、この複合摩耗部品における相乗効果をなくしてしまうからである。
【0035】
追加の困難性は、溶融された鋳鉄によるセラミックインサートの完全な浸透の問題にある。溶融された鋳鉄は、セラミックインサートに接触すると冷却される傾向を有し、従って(自己伝播発熱反応によるその場でのセラミック形成の反応を除いて)満足のいく浸透が妨げられる。
【0036】
セラミックインサートの多くの構成が、産業界によって試験されている。最も人気のあるインサートは、比較的浸透されやすい「ハニカム」形状であり、そこでは高いセラミック濃度の領域が低いセラミック濃度の領域と交互になっている。
【0037】
セラミック強化材は一般的に、予め作られたセラミックインサートとして、又は希望の摩耗部品を鋳造するために型中に再導入される前に溶融された鋳鉄で隙間が既に満たされかつ冷却されたインサートとして導入される。
【0038】
セラミックインサートの製造に関連する多数のノウハウがある。それは、溶融された鋳鉄によって浸透される多孔質構造を持たなければならず、多孔度のレベルは、決定的である。このノウハウは、直径数ミリメートルの詰まった粒子の形の粉末凝集体の製造のための技術全体に関わる。粉末凝集体は、次いで特に浸透されるインサートの厚さ及び型中のその位置に依存して、多かれ少なかれ大きい隙間を有する「詰め物」構造へと集成される。
【0039】
本発明によるインサートを製造するための多くの組成の可能性がある。網羅的でないリストでは、我々は、以下を述べることができる:
- 浸透性構造で凝集体へと集成されたミリメートルレベルの粒子の形の安定化あり又はなしの10/90~90/10の割合のアルミナ-ジルコニア;
- 例えば炭化物、窒化物、ホウ化物又は金属間元素に基づいて粉砕され、次いで浸透性多孔質構造へと凝集されたCERMETからの粒子;
- おそらく隙間を有する凝集されたミリメートルレベルの粒子の形で存在しうる鉄粉末のような反応を調整するための粉末と混合された、炭素及びチタン粉末からの炭化チタンのような自己伝播発熱合成(SHS)によって形成されたセラミック;
- その他。
【0040】
鋳造時に型中にインサートを保持することはまた、多年にわたる当該産業によって取得された特定のノウハウを要求する。
【0041】
セラミックインサートの構成及び複合摩耗部品内でのその配置は、多くの研究の対象であり、それらの全ては、試験中に得られた摩耗速度の結果が相対的に予測不可能であるという考察に導く。なぜならそれらは、特定の用途(即ち、使用される機械のタイプ及び粉砕される岩のタイプ、又は断続的な使用形態)に依存するからである。
【0042】
摩耗現象中、摩耗部品の幾何学形状が変化し、初めにあまり応力を受けていない領域が摩耗の進展に従って多くの応力を受けるようになるという事態が、状況をさらに複雑にしている。従って、インサートの構造に関する妥協は、短期の摩耗及び長期の摩耗を両立することが要求されることが多く、それらはともに、ケースごとにかなり変化しうる。
【0043】
本発明の発明者は、この妥協に完全に到達するセラミックインサート構造を作った。これは、めくら穴を有する透かし加工構造を含み、めくら側は、使用の初期に高い耐摩耗性を与えるように摩耗部品の最も多く応力を受ける側に配置される。いったんめくら側が(穴の底まで)完全に摩耗されたら、耐衝撃性と耐摩耗性は貫通穴によって与えられる。
【0044】
インサートの構造中に作られた穴は、一般に1~10cm、好ましくは1~8cm、より好ましくは1~4cmの直径を有する。
【0045】
めくら穴の深さは、インサートの全厚さ及び特定の用途に依存し、全厚さの一般に20~85%、好ましくは30~80%、より好ましくは40~70%である。
【0046】
インサートは、複数の重ねられた層(D及びE)又は隣接部分(A及びB)で作られることができる。従って、めくら側は、その上に重ねられるか又はそれに隣接する穴(図参照)を含む側とは異なる組成を有するセラミックから作られてもよい。
【0047】
丸い横断面が穴のためには好ましいが、本発明は、この形状に限定されないことは明らかである。従って、穴は、六角形、四角形又は他のいずれかの形状のようないずれの横断面形状を有してもよい。
【0048】
めくら穴を有する部分的に凹んだインサートもまた、考えられ、そこではめくら穴は、貫通穴に隣接するが、めくら穴の割合は、有意にすべきである(即ち、20%超、好ましくは40%超、より好ましくは60%超)。
【0049】
インサートが二つの隣接領域(即ち、一方が主にめくら穴を含み、他方が主に貫通穴を含む)から形成されるとき、摩耗部品の最も多く応力を受ける領域中のめくら穴は、より少なく応力を受ける領域中の穴より小さい断面積及び/又は開放表面積を有する。
【0050】
本発明の一般的な概念は、最初の摩耗が主に穴がないインサートによって強化された側(この場合にはインサートのめくら側)で起こり、この側がいったん摩耗されたら、摩耗部品のより少なく応力を受ける側の貫通穴の断面積より小さい断面積を有する貫通穴で高い耐摩耗性を与えることにある。
【0051】
本発明は、特定のセラミック組成に限定されないが、型(cermet粒子)に予め配置されるか又は自己伝播発熱反応によってその場で形成される、アルミナ-ジルコニア又は炭化チタンに基づくセラミックが好ましい。10~90容量%のアルミナ及び90~10容量%のジルコニアを含むアルミナ-ジルコニア割合が好ましく、ジルコニアは、任意選択的にイットリアで安定化される。
【実施例】
【0052】
本発明は、縦型回転粉砕機のローラー、及びコーン破砕機の可動部によって示された。これらのローラー及び可動部品は、一方では従来技術による貫通穴を含むインサートで作られており、他方では本発明による本質的にめくら穴を含むインサートで作られていた。
摩耗速度は、以下の条件下で比較された:
機械のタイプ:二次コーン破砕機
摩耗部品のタイプ:可動部品
粉砕材料のタイプ:流紋岩50~150mm
最も多く応力を受ける部分に貫通穴インサートあり又はなしの作動時間:
機械タイプ:縦型粉砕機
摩耗部品のタイプ:ローラー
粉砕材料のタイプ:シリカライム
最も多く応力を受ける部分に貫通穴インサートあり又はなしの作動時間:
【符号の説明】
【0053】
1: セラミックインサート
2: めくら穴
3: 摩耗部品の最も多く応力を受ける面
4: 貫通穴
5: 粉砕ローラー
6: 粉砕ローラー及び粉砕テーブルを有する縦型回転粉砕機の概略図
A: 摩耗部品の最も多く応力を受ける領域
B: 摩耗部品の最も少なく応力を受ける領域
D: セラミックインサートの上部層
E: 摩耗に対して最も多くさらされる側の方に向けられたセラミックインサートの下部層