(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/12 20060101AFI20221227BHJP
E02F 9/24 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
E02F9/12 A
E02F9/24 L
(21)【出願番号】P 2022509820
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2020012951
(87)【国際公開番号】W WO2021192020
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 大介
(72)【発明者】
【氏名】中谷 賢一郎
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-337741(JP,A)
【文献】特開2006-003119(JP,A)
【文献】特開昭52-012702(JP,A)
【文献】特開昭51-101302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/12
E02F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な下部走行体と、
作業装置が設けられ前記下部走行体に旋回可能に搭載された上部旋回体と、
前記下部走行体に回動可能に取付けられ左右方向に延びるブレードと、
前記ブレードに取付けられ上下方向に延びるマストと、
前記ブレードの位置を検出するため前記マストの上端側に設けられたブレード位置検出器と、を備えてなる建設機械において、
前記ブレードに対する前記マストの取付位置を検出するマスト位置検出装置と、
前記マスト位置検出装置によって検出された前記マストの取付位置に応じて前記上部旋回体が旋回可能な旋回範囲を制限させる旋回制限装置と、が設けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記マストは、前記ブレードの左端部と右端部のうちいずれか一方の端部に取付けられており、
前記旋回制限装置は、
前記マスト位置検出装置により、前記マストの取付位置として前記ブレードの左端部が検出されたときには、前記作業装置が前記マストに干渉する位置を基準として、左旋回方向及び右旋回方向に左側旋回制限範囲を設定すると共に、前記上部旋回体の旋回位置が前記左側旋回制限範囲に達したときに前記上部旋回体の旋回動作を停止させ、
前記マスト位置検出装置により、前記マストの取付位置として前記ブレードの右端部が検出されたときには、前記作業装置が前記マストに干渉する位置を基準として、左旋回方向及び右旋回方向に右側旋回制限範囲を設定すると共に、前記上部旋回体の旋回位置が前記右側旋回制限範囲に達したときに前記上部旋回体の旋回動作を停止させる構成としたことを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記上部旋回体の旋回方向を左旋回または右旋回として指示する操作レバー装置を備え、
前記旋回制限装置は、前記操作レバー装置からのパイロット信号に応じて前記上部旋回体の旋回方向を左旋回または右旋回に制御し、前記上部旋回体の旋回範囲を制限するときには、前記操作レバー装置からのパイロット信号を遮断することにより前記上部旋回体の旋回動作を停止させることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項4】
前記マストは、前記ブレードの左端部と右端部のうちいずれか一方の端部に取付けられており、
前記ブレードの左端部と右端部には、それぞれ前記マストを取付けるためのマスト台座が設けられ、
前記マストの下端には前記マスト台座に着脱可能に取付けられる取付フランジが設けられ、
前記マスト位置検出装置は、前記ブレードの左右両端にそれぞれ設けられ前記マストの前記取付フランジの取付けを検出するセンサにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項5】
前記マストは、前記ブレードの左端部と右端部のうちいずれか一方の端部に取付けられており、
前記マスト位置検出装置は、前記マストが前記ブレードの左端部と右端部のうちいずれの端部に取付けられたかに応じて
オペレータによって操作される操作具により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば油圧ショベル等の建設機械に関し、特に、整地作業に用いられるブレードを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例である油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回装置を介して旋回可能に搭載された上部旋回体とを備えている。上部旋回体の前側には、作業装置が設けられている。下部走行体を構成するトラックフレームの前側には、左右方向に延びるブレード(排土板)が設けられ、このブレードを用いて土砂等の排土作業、造成地や道路等の整地作業が行われる。
【0003】
ここで、ブルドーザを用いて整地作業を行う場合に、ブルドーザに搭載されたブレードの位置をレーザ光、GPS等を用いて検出し、施工すべき地面に応じてブレードの動作を制御する土工システムが知られている。この土工システムは、レーザ光からなる基準ビームを送信するレーザ送信機と、ブルドーザのブレードにマストを介して取付けられ、レーザ光を感知するレーザ受信機とを備えている。そして、レーザ受信機が、レーザ光の高さに基づいてブレードの高さ位置を検出することにより、ブレードを用いて施工すべき地面に応じた整地作業を行うことができる(特許文献1参照)。
【0004】
一方、ブレードを備えた油圧ショベルにおいても、施工すべき地面の3次元データに従ってブレードの動作を制御する整地作業システムが知られている。この整地作業システムは、油圧ショベルのブレードにマストを介して取付けられたプリズム等の位置検出器と、ブレードの動作を制御するコントローラとを備えている。そして、作業現場に設置されたトータルステーションと位置検出器との間でレーザ光が送受信されることにより、ブレードの高さ位置が連続的に検出される。これにより、コントローラは、ブレードの位置と施工すべき地面の3次元データとに基づいてブレードの動作を制御し、施工すべき地面に適合した整地作業を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
油圧ショベルのブレードは、左右方向に延びているため、通常、プリズム等の位置検出器は、ブレードの左端部と右端部のうちいずれか一方の端部にマストを介して取付けられる。ここで、ブレードに対するマストの取付位置は、以下の条件を考慮して決定される。即ち、トータルステーションと位置検出器との間に障害物がないこと。トータルステーションを、作業車両の通行を妨げず、かつ振動等の影響を受けない場所に設置した状態で、トータルステーションが位置検出器を追尾できる範囲がより大きいこと。従って、マストは、ブレードの左端部と右端部のうち、上述した条件に適合する端部に立設され、このマストの上端に位置検出器が取付けられる。
【0007】
一方、油圧ショベルのブレードを用いた整地作業の前段階では、整地作業の邪魔となる岩石等の障害物が地面に埋まっている場合がある。この場合には、上部旋回体を旋回させつつ作業装置のバケットを操作し、整地すべき地面から障害物を掘り出して除去する必要がある。従って、ブレードの左端部または右端部にマストが立設された場合には、作業装置がマストに干渉しないように注意しながら上部旋回体を旋回させる必要がある。このため、作業装置を用いて障害物を除去するときの作業性が低下するという問題がある。
【0008】
しかも、ブレードの左端部にマストを立設した場合と、ブレードの右端部にマストを立設した場合とでは、作業装置がマストに干渉する位置が変化する。このため、作業装置がマストに干渉しないように注意しながら上部旋回体を旋回させる作業が煩雑になり、作業装置を用いて障害物を除去するときの作業性がさらに低下するという問題がある。
【0009】
本発明の一実施形態の目的は、ブレードに対するマストの取付位置に関わらず、上部旋回体の旋回動作によって作業装置がマストに干渉するのを防止できるようにした建設機械を提供することにある。
【0010】
本発明の一実施形態は、自走可能な下部走行体と、作業装置が設けられ前記下部走行体に旋回可能に搭載された上部旋回体と、前記下部走行体に回動可能に取付けられ左右方向に延びるブレードと、前記ブレードに取付けられ上下方向に延びるマストと、前記ブレードの位置を検出するため前記マストの上端側に設けられたブレード位置検出器と、を備えてなる建設機械において、前記ブレードに対する前記マストの取付位置を検出するマスト位置検出装置と、前記マスト位置検出装置によって検出された前記マストの取付位置に応じて前記上部旋回体が旋回可能な旋回範囲を制限させる旋回制限装置と、が設けられていることを特徴としている。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、ブレードに対するマストの取付位置に関わらず、上部旋回体の旋回動作によって作業装置がマストに干渉するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態による油圧ショベルを示す左側面図である。
【
図2】ブレード、マスト、左近接センサ等を左後方から見た斜視図である。
【
図3】マスト、プリズムを取外した油圧ショベルを上方から見た平面図である。
【
図4】上部旋回体の左側旋回制限範囲を示す油圧ショベルの平面図である。
【
図5】上部旋回体の右側旋回制限範囲を示す油圧ショベルの平面図である。
【
図6】第1の実施形態による旋回制限装置、操作レバー装置、旋回モータ等を含む油圧回路図である。
【
図7】第2の実施形態による
図6と同様な油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
図1ないし
図6は第1の実施形態を示している。なお、本実施形態では、油圧ショベルの走行方向を前後方向とし、油圧ショベルの走行方向と直交する方向を左右方向として説明する。
【0014】
建設機械の代表例である油圧ショベル1は、前後方向に自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4とを備えている。上部旋回体4の前側には、土砂の掘削作業等を行うスイング式の作業装置5が設けられている。
【0015】
下部走行体2は、ベースとなるトラックフレーム2Aを備え、トラックフレーム2Aは、左右方向で対をなして前後方向に延びる左右のサイドフレーム2Bを有している。左右のサイドフレーム2Bの前後方向の一側には遊動輪2Cが設けられ、前後方向の他側には駆動輪2Dが設けられている。遊動輪2Cと駆動輪2Dには履帯2Eが巻装され、駆動輪2Dによって履帯2Eを駆動することにより下部走行体2が走行する。また、下部走行体2のトラックフレーム2Aには、後述する排土装置18が設けられている。
【0016】
上部旋回体4は、下部走行体2のトラックフレーム2Aに旋回装置3を介して旋回可能に搭載されている。上部旋回体4は、後述の旋回フレーム6、カウンタウエイト7、運転席8、エンジン12、キャノピ16、外装カバー17等を含んで構成されている。
【0017】
作業装置5は、スイングポスト5Aと、ブーム5Bと、アーム5Cと、バケット5Dと、ブームシリンダ5E、アームシリンダ5F、バケットシリンダ5Gとを含んで構成されている。スイングポスト5Aは、旋回フレーム6の前端に左右方向に揺動可能に取付けられている。ブーム5Bは、スイングポスト5Aに俯仰動可能に取付けられている。アーム5Cは、ブーム5Bの先端に回動可能に取付けられ、バケット5Dは、アーム5Cの先端に回動可能に取付けられている。また、旋回フレーム6とスイングポスト5Aとの間には、スイングポスト5Aを左右方向に揺動させるスイングシリンダ5Hが設けられている(
図3参照)。
【0018】
旋回フレーム6は、上部旋回体4のベースを構成している。旋回フレーム6は、旋回装置3を介してトラックフレーム2A上に旋回可能に取付けられている。旋回フレーム6の前端には、前方に突出する支持ブラケット6Aが設けられている。支持ブラケット6Aには、作業装置5のスイングポスト5Aが左右方向に揺動可能に支持されている。旋回フレーム6の後部側にはカウンタウエイト7が設けられ、このカウンタウエイト7によって作業装置5との重量バランスが保たれている。
【0019】
ここで、カウンタウエイト7の後面7Aは、上部旋回体4が旋回したときに下部走行体2の左右の車幅寸法(左右の履帯2Eの間隔)内に収まるようになっている。これにより、油圧ショベル1は、上部旋回体4の後方小旋回を実現しており、上部旋回体4の旋回時における周囲の障害物との干渉が防止されている。
【0020】
運転席8は、カウンタウエイト7の前側に位置して旋回フレーム6上に設けられている。運転席8は、油圧ショベル1を操縦するオペレータが座るものである。運転席8の左右両側には、旋回装置3および作業装置5等を操作するための操作レバー装置9が配置されている。左側の操作レバー装置9の下側には、ゲートロックレバー10が設けられている。ゲートロックレバー10は、操作レバー装置9に対する操作の有効/無効を切替える。右側の操作レバー装置9の右側には、排土装置18を操作するためのブレード操作レバー(図示せず)が配置されている。右側の操作レバー装置9の前側には、マルチモニタ装置11が設けられている。マルチモニタ装置11は、例えば油圧ショベル1の運転状態、設定、警告等の情報をオペレータに対して表示する。
【0021】
運転席8の下側には、原動機としてのエンジン12が設けられている。エンジン12は、カウンタウエイト7の前側に位置して旋回フレーム6に搭載され、油圧ポンプ13を駆動する。油圧ポンプ13は、作業装置5の各シリンダ5E、5F、5G、5H、下部走行体2の走行モータ(図示せず)、後述する旋回モータ31等の油圧アクチュエータに圧油を供給する。なお、原動機としては、電動モータ、あるいはエンジンと電動モータとを組合せたハイブリッド式の原動機を用いることができる。
【0022】
フロア部材14は、運転席8の前側に設けられている。フロア部材14は平坦な板体からなり、運転席8に座ったオペレータの足場を形成している。フロア部材14には、左,右一対の走行レバーペダル装置15が設けられている。これら左,右の走行レバーペダル装置15を手動操作または足踏み操作することにより、下部走行体2の走行動作が制御される。
【0023】
キャノピ16は、運転席8を上側から覆っている。キャノピ16は、左右の支柱16Aと、ルーフ16Bとを備えた2柱式のキャノピとして構成されている。左右の支柱16Aは、左右方向に間隔をもってカウンタウエイト7の上面に立設されている。ルーフ16Bは、左右の支柱16Aの上端側に設けられている。なお、本実施形態ではキャノピ16を備えたキャノピ仕様の油圧ショベル1を例示しているが、キャノピ16に代えてキャブを備える構成としてもよい。
【0024】
外装カバー17は、運転席8を取り囲むように旋回フレーム6上に設けられている。外装カバー17は、旋回フレーム6に搭載された熱交換器、作動油タンク、燃料タンク等(いずれも図示せず)を覆っている。外装カバー17は、右後カバー17Aと、右前カバー17Bと、左後カバー17Cと、スカートカバー17Dとを含んで構成されている。右後カバー17Aは、エンジン12および熱交換器等を右側および上側から覆っている。右前カバー17Bは、作動油タンクおよび燃料タンク等を右側および上側から覆っている。左後カバー17Cは、エンジン12および油圧ポンプ13等を左側から覆い、スカートカバー17Dは、旋回フレーム6の底板とフロア部材14との間を覆っている。
【0025】
次に、下部走行体2に設けられた排土装置18について説明する。
【0026】
排土装置18は、下部走行体2のトラックフレーム2Aに設けられている。排土装置18は、V字状の昇降アーム19と、ブレード20と、昇降シリンダ21と、アングルシリンダ22と、チルトシリンダ23とを含んで構成されている。昇降アーム19は、基端側がトラックフレーム2Aに回動可能に取付けられ、先端側が上下方向に揺動可能となっている。
【0027】
ブレード20は、昇降アーム19を介して下部走行体2のトラックフレーム2Aに回動可能に取付けられ、左右方向に延びている。ブレード20は、左右方向に延びる長方形の板状体からなり、下部走行体2の左右の履帯2Eの間隔よりも大きな長さ寸法を有している。ブレード20の後面20Aの中央部は、昇降アーム19の先端に自在ピン20Bを介して取付けられている。
【0028】
昇降シリンダ21は、昇降アーム19とトラックフレーム2Aとの間に設けられ、前後方向に延びている。アングルシリンダ22は、昇降アーム19の左側部位とブレード20の後面20Aとの間に設けられ、前後方向に延びている。チルトシリンダ23は、昇降アーム19とブレード20との間に設けられ、ブレード20の後面20Aに沿って左右方向に延びている。
【0029】
アングルシリンダ22は、ブレード20の左右方向(長さ方向)の両端を自在ピン20Bの位置を中心にして前後方向に揺動させる。これにより、ブレード20によって押出される土砂を、下部走行体2の左側方または右側方にまとめて排出することができる。チルトシリンダ23は、ブレード20の左右方向の両端を、自在ピン20Bの位置を中心にして上下方向に揺動させる。これにより、ブレード20によって整地される地面に勾配を形成することができる。これら昇降シリンダ21、チルトシリンダ23は、ブレード20用のコントロールバルブ(図示せず)によって圧油の給排が制御されることにより、ブレード20の高さ位置および姿勢を制御する。
【0030】
ブレード20の左端部20Cには、四角形の板体からなる左マスト台座20Dが固定されている。ブレード20の右端部20Eには、左マスト台座20Dと同一形状の右マスト台座20Fが固定されている。これら左マスト台座20Dおよび右マスト台座20Fには、後述するマスト24の取付フランジ24Aが着脱可能に取付けられる。
【0031】
マスト24は、ブレード20の左端部20Cと右端部20Eのうちいずれか一方の端部に取付けられている。マスト24は、例えばパイプ材を用いて直線状の円筒体として形成されている。マスト24の下端には、四角形の平板状をなす取付フランジ24Aが固定されている。取付フランジ24Aは、ブレード20の左マスト台座20Dまたは右マスト台座20Fにボルト等を用いて着脱可能に取付けられる。これにより、マスト24は、ブレード20の左端部20Cと右端部20Eのうちいずれか一方の端部に取付けられ、鉛直上方に延びている。マスト24の上端24Bには、プリズム25が取付けられている。
【0032】
ブレード位置検出器としてのプリズム25は、ブレード20の位置を検出するためにマスト24の上端24Bに設けられている。プリズム25は、排土装置18を用いた整地作業時に、自動追尾式のトータルステーション(図示せず)によって追尾される対象物(ターゲット)である。トータルステーションは、プリズム25を追尾することによりブレード20の位置と高さとを連続的に計測し、この計測結果をブレード20の位置情報として、無線により整地作業用のコントローラ(図示せず)に出力する。
【0033】
整地作業用のコントローラは、トータルステーションから出力されるブレード20の位置情報に基づいて、ブレード20用のコントロールバルブ(図示せず)を制御する。排土装置18を用いた整地作業が行われるときには、排土装置18を構成する昇降シリンダ21、チルトシリンダ23等の動作が、施工すべき地面の3次元データに従って制御される。
【0034】
ここで、ブレード20に対するマスト24の取付位置は、以下の条件を考慮して決定される。即ち、トータルステーションとプリズム25との間に障害物がないこと。トータルステーションを、作業車両の通行を妨げず、かつ振動等の影響を受けない場所に設置した状態で、トータルステーションがプリズム25を追尾できる範囲がより大きいこと。このため、マスト24は、ブレード20の左端部20Cまたは右端部20Eのうち、上述した条件に適合する端部に立設される。そして、マスト24の上端24Bにプリズム25が取付けられる。
【0035】
モニタ装置26は、例えば外装カバー17を構成する右前カバー17Bの後側に設けられている。モニタ装置26は、ブラケット等を用いて旋回フレーム6に取付けられ、運転席8の右側方に配置されている。モニタ装置26は、排土装置18を用いた整地作業が行われるときに、施工すべき地面の3次元データ、計測されたブレード20の位置情報等を表示する。
【0036】
次に、マスト24が、ブレード20の左端部20Cと右端部20Eのうちいずれの端部に取付けられたかを検出するマスト位置検出装置として、本実施形態に用いられる左近接センサ27および右近接センサ28について説明する。
【0037】
左近接センサ27は、左マスト台座20Dに隣接してブレード20に設けられている。左近接センサ27は、左マスト台座20Dにマスト24の取付フランジ24Aが取付けられたときに、この取付フランジ24Aを検出する。そして、左近接センサ27は、ブレード20の左端部20Cにマスト24が取付けられたことを示す信号を、後述するコントローラ40に出力する。
【0038】
右近接センサ28は、右マスト台座20Fに隣接してブレード20に設けられている。右近接センサ28は、左近接センサ27と共にマスト位置検出装置を構成している。右近接センサ28は、右マスト台座20Fにマスト24の取付フランジ24Aが取付けられたときに、この取付フランジ24Aを検出する。そして、右近接センサ28は、ブレード20の右端部20Eにマスト24が取付けられたことを示す信号を、コントローラ40に出力する。このように、マスト24がブレード20の左端部20Cと右端部20Eのいずれに取付けられたかに応じて、左近接センサ27と右近接センサ28のうち一方からコントローラ40に信号が出力される。
【0039】
次に、ブレード20に対するマスト24の取付位置に応じて上部旋回体4が旋回可能な旋回範囲を制限させる旋回制限装置29について、
図6を参照して説明する。
【0040】
旋回制限装置29は、ブレード20にマスト24が取付けられた状態で、このマスト24の取付位置に応じて上部旋回体4の旋回範囲を制限させる。旋回制限装置29は、後述する方向制御弁33、左旋回停止弁38、右旋回停止弁39、コントローラ40を含んで構成されている。
【0041】
油圧ポンプ13およびタンク30は油圧源を構成し、この油圧源と旋回モータ31との間は、主管路32を介して接続されている。方向制御弁33は、油圧源と旋回モータ31との間に位置して主管路32に設けられている。方向制御弁33は、左油圧パイロット部33Aおよび右油圧パイロット部33Bに対するパイロット圧の供給に応じて、旋回モータ31を左旋回と右旋回とに切換える。左油圧パイロット部33Aにパイロット圧が供給されたときには、旋回モータ31は、左旋回方向(上部旋回体4を左旋回させる方向)に回転する。右油圧パイロット部33Bにパイロット圧が供給されたときには、旋回モータ31は、右旋回方向(上部旋回体4を右旋回させる方向)に回転する。
【0042】
パイロット油圧源34は、パイロットポンプ35とタンク30とにより構成されている。操作レバー装置9は、操作レバー9Aを有する減圧弁型のパイロット弁により構成されている。操作レバー装置9と方向制御弁33の左油圧パイロット部33Aとの間は、左旋回用のパイロット管路36を介して接続されている。操作レバー装置9と方向制御弁33の右油圧パイロット部33Bとの間は、右旋回用のパイロット管路37を介して接続されている。パイロットポンプ35からのパイロット圧は、操作レバー装置9に設けられた操作レバー9Aの操作方向および操作量に応じて、方向制御弁33の左油圧パイロット部33Aまたは右油圧パイロット部33Bに供給される。操作レバー装置9の操作レバー9Aが中立位置にあるときには、左油圧パイロット部33Aおよび右油圧パイロット部33Bに対するパイロット圧の供給が停止される。これにより、方向制御弁33は中立位置に戻り、旋回モータ31の回転が停止する。
【0043】
左旋回停止弁38は、左旋回用のパイロット管路36に設けられている。左旋回停止弁38は、電磁パイロット部38Aを有する3ポート2位置の電磁弁により構成されている。電磁パイロット部38Aは、コントローラ40の出力側に接続されている。左旋回停止弁38は、電磁パイロット部38Aにコントローラ40からの制御信号が供給されないときには、連通位置(a)を保持してパイロット管路36を連通させる。
【0044】
操作レバー装置9の操作レバー9Aが矢示L方向に操作されたときには、パイロット管路36を通じて方向制御弁33の左油圧パイロット部33Aにパイロット圧が供給される。これにより、旋回モータ31は左旋回方向に回転し、上部旋回体4は、操作レバー9Aに対する操作量に応じて左旋回を行う。一方、左旋回停止弁38の電磁パイロット部38Aにコントローラ40からの制御信号が供給されたときには、左旋回停止弁38は、遮断位置(b)に切換り、パイロット管路36を遮断する。これにより、旋回モータ31の回転が停止し、上部旋回体4の左旋回動作が停止する。
【0045】
右旋回停止弁39は、右旋回用のパイロット管路37に設けられている。右旋回停止弁39は、電磁パイロット部39Aを有する3ポート2位置の電磁弁により構成されている。電磁パイロット部39Aは、コントローラ40の出力側に接続されている。右旋回停止弁39は、電磁パイロット部39Aにコントローラ40からの制御信号が供給されないときには、連通位置(c)を保持してパイロット管路37を連通させる。
【0046】
操作レバー装置9の操作レバー9Aが矢示R方向に操作されたときには、パイロット管路37を通じて方向制御弁33の右油圧パイロット部33Bにパイロット圧が供給される。これにより、旋回モータ31は右旋回方向に回転し、上部旋回体4は、操作レバー9Aに対する操作量に応じて右旋回を行う。一方、右旋回停止弁39の電磁パイロット部39Aにコントローラ40からの制御信号が供給されたときには、右旋回停止弁39は、遮断位置(d)に切換り、パイロット管路37を遮断する。これにより、旋回モータ31の回転が停止し、上部旋回体4の右旋回動作が停止する。
【0047】
コントローラ40は、上部旋回体4に搭載されている。コントローラ40の入力側には、角度センサ41、左近接センサ27、右近接センサ28、左旋回圧力センサ42、右旋回圧力センサ43等が接続されている。コントローラ40の出力側には、左旋回停止弁38の電磁パイロット部38A、右旋回停止弁39の電磁パイロット部39A等が接続されている。角度センサ41は、例えば旋回装置3に設けられている。角度センサ41は、下部走行体2に対する上部旋回体4の旋回角度(旋回位置)を検出し、この旋回角度に応じた信号をコントローラ40に出力する。左近接センサ27は、マスト24がブレード20の左端部20Cに取付けられたときに、これを示す信号をコントローラ40に出力する。右近接センサ28は、マスト24がブレード20の右端部20Eに取付けられたときに、これを示す信号をコントローラ40に出力する。左旋回圧力センサ42は、例えば左旋回用のパイロット管路36に設けられている。左旋回圧力センサ42は、方向制御弁33の左油圧パイロット部33Aに供給されるパイロット圧を検出し、このパイロット圧に応じた信号をコントローラ40に出力する。右旋回圧力センサ43は、例えば右旋回用のパイロット管路37に設けられている。右旋回圧力センサ43は、方向制御弁33の右油圧パイロット部33Bに供給されるパイロット圧を検出し、このパイロット圧に応じた信号をコントローラ40に出力する。
【0048】
コントローラ40は、左近接センサ27からの信号により、ブレード20の左端部20Cにマスト24が取付けられたと判断した場合には、後述する左側旋回制限範囲αを設定する。そして、コントローラ40は、角度センサ41によって検出される上部旋回体4の旋回角度が左側旋回制限範囲αに達したときに、旋回モータ31を停止させる。具体的には、コントローラ40は、左旋回圧力センサ42および右旋回圧力センサ43からの信号により、上部旋回体4の旋回方向が左旋回であるか右旋回であるかを判断する。そして、コントローラ40は、上部旋回体4の旋回角度が左側旋回制限範囲αに達したときに、上部旋回体4の旋回方向がマスト24に接近する方向である場合には、旋回モータ31を停止させる。一方、コントローラ40は、上部旋回体4の旋回角度が左側旋回制限範囲αに達したときに、上部旋回体4の旋回方向がマスト24から離間する方向である場合には、上部旋回体4の旋回動作を継続させる。
【0049】
また、コントローラ40は、右近接センサ28からの信号により、ブレード20の右端部20Eにマスト24が取付けられたと判断した場合には、後述する右側旋回制限範囲βを設定する。そして、コントローラ40は、角度センサ41によって検出される上部旋回体4の旋回角度が右側旋回制限範囲βに達したときに、旋回モータ31を停止させる。具体的には、コントローラ40は、上部旋回体4の旋回角度が右側旋回制限範囲βに達したときに、上部旋回体4の旋回方向がマスト24に接近する方向である場合には、旋回モータ31を停止させる。一方、コントローラ40は、上部旋回体4の旋回角度が右側旋回制限範囲βに達したときに、上部旋回体4の旋回方向がマスト24から離間する方向である場合には、上部旋回体4の旋回動作を継続させる。
【0050】
ここで、ブレード20の左端部20Cにマスト24が取付けられたときに、コントローラ40が設定する左側旋回制限範囲αについて説明する。本実施形態では、上部旋回体4の旋回中心Aを通って前後方向に延びる仮想線をB-Bとする。そして、作業装置5のブーム5Bが仮想線B-Bと平行に延びた状態(
図1および
図3の状態)から、上部旋回体4が旋回動作を行う場合を例示している。
【0051】
図4に示すように、上部旋回体4の旋回中心Aとブレード20の左端部20Cに取付けられたマスト24の中心Cとを通る仮想線を左基準線D-Dとする。左基準線D-Dは、仮想線B-Bに対し、左旋回方向に角度θだけ傾いている。左基準線D-Dは、上部旋回体4が旋回動作を行うときに、作業装置5がマスト24と干渉する位置である。従って、左基準線D-Dを基準として、上部旋回体4の左旋回方向および右旋回方向にそれぞれ一定の余裕角度(余裕範囲)α1を加えた角度が、左側旋回制限範囲αとなる。コントローラ40は、ブレード20の左端部20Cにマスト24が取付けられたときには、左側旋回制限範囲αを設定する。そして、上部旋回体4の左旋回時または右旋回時において、上部旋回体4の旋回角度が左側旋回制限範囲αに達したときに、コントローラ40は、左旋回停止弁38または右旋回停止弁39によって旋回モータ31を停止させる。
【0052】
次に、ブレード20の右端部20Eにマスト24が取付けられたときに、コントローラ40が設定する右側旋回制限範囲βについて説明する。
【0053】
図5に示すように、上部旋回体4の旋回中心Aとブレード20の右端部20Eに取付けられたマスト24の中心Eとを通る仮想線を右基準線F-Fとする。右基準線F-Fは、仮想線B-Bに対し、右旋回方向に角度θだけ傾いている。右基準線F-Fは、上部旋回体4が旋回動作を行うときに、作業装置5がマスト24と干渉する位置である。従って、右基準線F-Fを基準として、上部旋回体4の左旋回方向および右旋回方向にそれぞれ一定の余裕角度(余裕範囲)β1を加えた角度が、右側旋回制限範囲βとなる。コントローラ40は、ブレード20の右端部20Eにマスト24が取付けられたときには、右側旋回制限範囲βを設定する。そして、上部旋回体4の左旋回時または右旋回時において、上部旋回体4の旋回角度が右側旋回制限範囲βに達したときに、コントローラ40は、左旋回停止弁38または右旋回停止弁39によって旋回モータ31を停止させる。
【0054】
本実施形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、以下、油圧ショベル1の排土装置18を用いて整地作業を行う場合について説明する。
【0055】
整地作業を行う場合には、作業現場に接地されたトータルステーション(図示せず)の位置に応じて、ブレード20の左端部20Cまたは右端部20Eにマスト24が取付けられる。即ち、マスト24は、ブレード20の左端部20Cまたは右端部20Eのうち、トータルステーションとプリズム25との間に障害物がなく、かつトータルステーションがプリズム25を追尾できる範囲がより大きい方の端部に立設される。そして、マスト24の上端24Bには、トータルステーションとの間でレーザ光の送受信を行うプリズム25が取付けられる。
【0056】
油圧ショベル1を用いて整地作業を行う場合には、その前作業として、地面に埋まった岩石等の障害物を、作業装置5のバケット5Dを用いて掘削、除去する必要がある。このため、ブレード20にマスト24が取付けられた状態で上部旋回体4を旋回させることにより、作業装置5がマスト24に干渉する虞がある。従って、オペレータは、作業装置5がマスト24に干渉しないように注意しながら上部旋回体4を旋回させる必要があり、作業装置5を用いて障害物を除去するときの作業性が低下してしまう。
【0057】
これに対し、例えばブレード20の左端部20Cにマスト24が取付けられた場合には、左近接センサ27からコントローラ40に信号が出力される。これにより、コントローラ40は、ブレード20の左端部20Cにマスト24が取付けられたと判断する。そして、コントローラ40は、作業装置5とマスト24との干渉を回避するため、
図4に示す左側旋回制限範囲αを設定する。
【0058】
この状態で、操作レバー装置9の操作レバー9Aが、左旋回方向(
図6中の矢示L方向)に操作された場合には、上部旋回体4は、
図3中の矢示L方向への左旋回を行う。また、操作レバー装置9の操作レバー9Aが、右旋回方向(
図6中の矢示R方向)に操作された場合には、上部旋回体4は、
図3中の矢示R方向への右旋回を行う。
【0059】
ブレード20の左端部20Cにマスト24が取付けられた状態で、操作レバー9Aが左旋回方向に操作された場合には、方向制御弁33の左油圧パイロット部33Aにパイロット圧が供給される。これにより、油圧ポンプ13からの圧油によって旋回モータ31が左旋回方向に回転し、上部旋回体4が左旋回を行う。このとき、左旋回圧力センサ42および右旋回圧力センサ43は、パイロット管路36,37内の圧力に応じた信号をコントローラ40に出力する。これにより、コントローラ40は、上部旋回体4が左旋回を行っていると判断する。一方、角度センサ41によって上部旋回体4の旋回角度(旋回位置)が検出され、この旋回角度を示す信号がコントローラ40に出力される。上部旋回体4の旋回角度が、
図4に示す左側旋回制限範囲αに達した場合には、コントローラ40は、上部旋回体4の左旋回によって作業装置5がマスト24に接近していると判断し、左旋回停止弁38の電磁パイロット部38Aに制御信号を出力する。これにより、左旋回停止弁38が遮断位置(b)に切換り、パイロット管路36が遮断される。従って、旋回モータ31の回転が停止し、上部旋回体4の左旋回動作が停止するので、作業装置5がマスト24に干渉するのを回避することができる。この状態で、操作レバー9Aが右旋回方向に操作されると、方向制御弁33の右油圧パイロット部33Bにパイロット圧が供給される。従って、旋回モータ31が右旋回方向に回転し、上部旋回体4が右旋回動作を行うことにより、作業装置5がマスト24から離れる。
【0060】
一方、ブレード20の左端部20Cにマスト24が取付けられた状態で、操作レバー9Aが右旋回方向に操作された場合には、方向制御弁33の右油圧パイロット部33Bにパイロット圧が供給される。これにより、油圧ポンプ13からの圧油によって旋回モータ31が右旋回方向に回転し、上部旋回体4が右旋回を行う。このとき、コントローラ40は、左旋回圧力センサ42および右旋回圧力センサ43からの信号に基づいて、上部旋回体4が右旋回を行っていると判断する。また、角度センサ41によって上部旋回体4の旋回角度が検出され、この旋回角度を示す信号がコントローラ40に出力される。上部旋回体4の旋回角度が、
図4に示す左側旋回制限範囲αに達した場合には、コントローラ40は、上部旋回体4の右旋回によって作業装置5がマスト24に接近していると判断し、右旋回停止弁39の電磁パイロット部39Aに制御信号を出力する。これにより、右旋回停止弁39が遮断位置(d)に切換り、パイロット管路37が遮断される。従って、旋回モータ31の回転が停止し、上部旋回体4の右旋回動作が停止するので、作業装置5がマスト24に干渉するのを回避することができる。この状態で、操作レバー9Aが左旋回方向に操作されると、方向制御弁33の左油圧パイロット部33Aにパイロット圧が供給される。従って、旋回モータ31が左旋回方向に回転し、上部旋回体4が左旋回動作を行うことにより、作業装置5がマスト24から離れる。
【0061】
このように、ブレード20の左端部20Cにマスト24が取付けられたときには、コントローラ40が左側旋回制限範囲αを設定する。これにより、上部旋回体4が左旋回を行う場合でも、右旋回を行う場合でも、角度センサ41によって検出された上部旋回体4の旋回角度が、左側旋回制限範囲αに達したときに、上部旋回体4の旋回動作が停止される。従って、オペレータは、作業装置5がマスト24に干渉しないように注意しながら上部旋回体4を旋回させる必要がない。この結果、作業装置5を用いて障害物を除去するときの作業性を高めることができる。
【0062】
次に、例えばブレード20の右端部20Eにマスト24が取付けられた場合には、右近接センサ28からコントローラ40に信号が出力される。これにより、コントローラ40は、ブレード20の右端部20Eにマスト24が取付けられたと判断し、作業装置5とマスト24との干渉を回避するため、
図5に示す右側旋回制限範囲βを設定する。
【0063】
ブレード20の右端部20Eにマスト24が取付けられた状態で、操作レバー装置9の操作レバー9Aが、右旋回方向に操作された場合には、方向制御弁33の右油圧パイロット部33Bにパイロット圧が供給される。これにより、油圧ポンプ13からの圧油によって旋回モータ31が右旋回方向に回転し、上部旋回体4が右旋回を行う。このとき、コントローラ40は、左旋回圧力センサ42および右旋回圧力センサ43からの信号に基づいて、上部旋回体4が右旋回を行っていると判断する。一方、角度センサ41によって上部旋回体4の旋回角度が検出され、この旋回角度を示す信号がコントローラ40に出力される。上部旋回体4の旋回角度が、
図5に示す右側旋回制限範囲βに達した場合には、コントローラ40は、上部旋回体4の右旋回によって作業装置5がマスト24に接近していると判断し、右旋回停止弁39の電磁パイロット部39Aに制御信号を出力する。これにより、右旋回停止弁39が遮断位置(d)に切換り、パイロット管路37が遮断される。従って、旋回モータ31の回転が停止し、上部旋回体4の右旋回動作が停止するので、作業装置5がマスト24に干渉するのを回避することができる。この状態で、操作レバー9Aが左旋回方向に操作されると、方向制御弁33の左油圧パイロット部33Aにパイロット圧が供給される。従って、旋回モータ31が左旋回方向に回転し、上部旋回体4が左旋回動作を行うことにより、作業装置5がマスト24から離れる。
【0064】
一方、ブレード20の右端部20Eにマスト24が取付けられた状態で、操作レバー9Aが左旋回方向に操作された場合には、方向制御弁33の左油圧パイロット部33Aにパイロット圧が供給される。これにより、油圧ポンプ13からの圧油によって旋回モータ31が左旋回方向に回転し、上部旋回体4が左旋回を行う。このとき、コントローラ40は、左旋回圧力センサ42および右旋回圧力センサ43からの信号に基づいて、上部旋回体4が左旋回を行っていると判断する。また、角度センサ41によって上部旋回体4の旋回角度が検出され、この旋回角度を示す信号がコントローラ40に出力される。上部旋回体4の旋回角度が、
図5に示す右側旋回制限範囲βに達した場合には、コントローラ40は、上部旋回体4の左旋回によって作業装置5がマスト24に接近していると判断し、左旋回停止弁38の電磁パイロット部38Aに制御信号を出力する。これにより、左旋回停止弁38が遮断位置(b)に切換り、パイロット管路36が遮断される。従って、旋回モータ31の回転が停止し、上部旋回体4の左旋回動作が停止するので、作業装置5がマスト24に干渉するのを回避することができる。この状態で、操作レバー9Aが右旋回方向に操作されると、方向制御弁33の右油圧パイロット部33Bにパイロット圧が供給される。従って、旋回モータ31が右旋回方向に回転し、上部旋回体4が右旋回動作を行うことにより、作業装置5がマスト24から離れる。
【0065】
このように、ブレード20の右端部20Eにマスト24が取付けられたときには、コントローラ40が右側旋回制限範囲βを設定する。これにより、上部旋回体4が右旋回を行う場合でも、左旋回を行う場合でも、角度センサ41によって検出された上部旋回体4の旋回角度が、右側旋回制限範囲βに達したときに、上部旋回体4の旋回動作が停止される。従って、オペレータは、作業装置5がマスト24に干渉しないように注意しながら上部旋回体4を旋回させる必要がない。この結果、本実施形態による油圧ショベル1は、ブレード20に対するマスト24の取付位置に関わらず、上部旋回体4の旋回動作によって作業装置5がマスト24に干渉するのを防止できる。従って、ブレード20を用いた整地作業の前作業として、作業装置5を用いて障害物を除去するときの作業性を高めることができる。
【0066】
しかも、ブレード20の左端部20Cにマスト24が取付けられたときには、上部旋回体4の旋回動作が、左側旋回制限範囲αだけ制限され、それ以外の範囲では制限されることがない。また、ブレード20の右端部20Eにマスト24が取付けられたときには、上部旋回体4の旋回動作が、右側旋回制限範囲βだけ制限され、それ以外の範囲では制限されることがない。この結果、上部旋回体4が旋回できる範囲を大きく確保することができ、例えばブレード20を用いた整地作業の前作業として、作業装置5を用いて障害物を除去するときの作業性を高めることができる。
【0067】
このようにして、マスト24と作業装置5との干渉を回避しつつ、作業装置5のバケット5Dを用いて地面に埋まった岩石等の障害物を除去した後には、排土装置18(ブレード20)を用いた整地作業が行われる。
【0068】
排土装置18を用いた整地作業時には、ブレード20の下端を地面に接地させた状態で、油圧ショベル1を走行させることにより、地面を均していく。このとき、トータルステーション(図示せず)は、マスト24を介してブレード20に取付けられたプリズム25を追尾する。これにより、トータルステーションは、ブレード20の位置と高さとを連続的に計測し、この計測結果をブレード20の位置情報として、整地作業用のコントローラ(図示せず)に出力する。
【0069】
整地作業用のコントローラは、トータルステーションからの出力等に基づいて、ブレード20用のコントロールバルブ(図示せず)を制御する。これにより、排土装置18(昇降シリンダ21、チルトシリンダ23)の動作が、施工すべき地面の3次元データに従って制御される。この結果、施工すべき地面の3次元データに従ってブレード20の姿勢(高さ、チルト角等)が変化し、施工すべき地面に適合した整地作業を行うことができる。
【0070】
かくして、本実施形態による油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、作業装置5が設けられ下部走行体2に旋回可能に搭載された上部旋回体4と、下部走行体2に回動可能に取付けられ左右方向に延びるブレード20と、ブレード20に取付けられ上下方向に延びるマスト24と、ブレード20の位置を検出するためマスト24の上端側に設けられたプリズム25と、を備えている。そして、ブレード20に対するマスト24の取付位置を検出する左近接センサ27および右近接センサ28と、左近接センサ27および右近接センサ28によって検出されたマスト24の取付位置に応じて上部旋回体4が旋回可能な旋回範囲を制限させる旋回制限装置29と、が設けられている。
【0071】
この構成によれば、左近接センサ27および右近接センサ28により、ブレード20に対するマスト24の取付位置が検出され、このマスト24の取付位置に応じて上部旋回体4の旋回範囲が制限される。この結果、ブレード20に対するマスト24の取付位置に関わらず、上部旋回体4の旋回動作によって作業装置5がマスト24に干渉するのを防止できる。
【0072】
本実施形態では、マスト24は、ブレード20の左端部20Cと右端部20Eのうちいずれか一方の端部に取付けられており、旋回制限装置29は、左近接センサ27および右近接センサ28により、マスト24の取付位置としてブレード20の左端部20Cが検出されたときには、作業装置5がマスト24に干渉する位置(左基準線D-D)を基準として、左旋回方向及び右旋回方向に左側旋回制限範囲αを設定すると共に、上部旋回体4の旋回角度が左側旋回制限範囲αに達したときに上部旋回体4の旋回動作を停止させる構成としている。また、旋回制限装置29は、左近接センサ27および右近接センサ28により、マスト24の取付位置としてブレード20の右端部20Eが検出されたときには、作業装置5がマスト24に干渉する位置(右基準線F-F)を基準として、左旋回方向及び右旋回方向に右側旋回制限範囲βを設定すると共に、上部旋回体4の旋回角度が右側旋回制限範囲βに達したときに上部旋回体4の旋回動作を停止させる構成としている。
【0073】
この構成によれば、ブレード20の左端部20Cにマスト24が取付けられたときには、上部旋回体4の旋回動作が、左側旋回制限範囲αだけ制限され、それ以外の範囲では制限されることがない。また、ブレード20の右端部20Eにマスト24が取付けられたときには、上部旋回体4の旋回動作が、右側旋回制限範囲βだけ制限され、それ以外の範囲では制限されることがない。従って、上部旋回体4が旋回できる範囲を大きく確保することができ、例えばブレード20を用いた整地作業の前作業として、作業装置5を用いて障害物を除去するときの作業性を高めることができる。
【0074】
本実施形態では、上部旋回体4の旋回方向を左旋回または右旋回として指示する操作レバー装置9を備え、旋回制限装置29は、操作レバー装置9からのパイロット信号に応じて上部旋回体4の旋回方向を左旋回または右旋回に制御し、上部旋回体4の旋回範囲を制限するときには、操作レバー装置9からのパイロット信号を遮断することにより上部旋回体4の旋回動作を停止させる構成としている。この構成によれば、操作レバー装置9からのパイロット信号を利用して、上部旋回体4の旋回動作を停止させることにより、上部旋回体4の旋回範囲を制限することができる。
【0075】
本実施形態では、マスト24は、ブレード20の左端部20Cと右端部20Eのうちいずれか一方の端部に取付けられており、ブレード20の左端部20Cには左マスト台座20Dが設けられ、ブレード20の右端部20Eには右マスト台座20Fが設けられている。マスト24の下端には左マスト台座20Dおよび右マスト台座20Fに着脱可能に取付けられる取付フランジ24Aが設けられ、マスト位置検出装置は、ブレード20の左右両端にそれぞれ設けられ、マスト24の取付フランジ24Aの取付けを検出する左近接センサ27および右近接センサ28により構成されている。この構成によれば、ブレード20の左端部20Cにマスト24が取付けられたことを、左近接センサ27によって検出することができる。また、ブレード20の右端部20Eにマスト24が取付けられたことを、右近接センサ28によって検出することができる。
【0076】
次に、
図7は本発明の第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、マスト位置検出装置が、モニタ装置を利用した操作具によって構成されていることにある。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0077】
図7において、コントローラ40の入力側には、角度センサ41と、左旋回圧力センサ42と、右旋回圧力センサ43と、モニタ装置44が接続されている。モニタ装置44は、第1の実施形態による左近接センサ27および右近接センサ28に代えてコントローラ40に接続されている。このモニタ装置44は、ブレード20の左端部20Cと右端部20Eのうちいずれの端部にマスト24が取付けられたかに応じて、例えばオペレータによって操作される操作具を構成している。
【0078】
ここで、モニタ装置44は、第1の実施形態によるモニタ装置26と同様に、運転席8の右側方に配置され、排土装置18を用いた整地作業時に、施工すべき地面の3次元データ、計測されたブレード20の位置情報等を表示する。モニタ装置44には、例えば2個のスイッチ44A、44Bが表示されている。そして、スイッチ44Aが操作されたときには、ブレード20の左端部20Cにマスト24が取付けられたことを示す信号がコントローラ40に出力される。一方、スイッチ44Bが操作されたときには、ブレード20の右端部20Eにマスト24が取付けられたことを示す信号がコントローラ40に出力される。
【0079】
モニタ装置44のスイッチ44Aが操作されたときには、コントローラ40は、ブレード20の左端部20Cにマスト24が取付けられたと判断し、
図4に示す左側旋回制限範囲αを設定する。一方、モニタ装置44のスイッチ44Bが操作されたときには、コントローラ40は、ブレード20の右端部20Eにマスト24が取付けられたと判断し、
図5に示す右側旋回制限範囲βを設定する。これにより、第1の実施形態と同様に、ブレード20に対するマスト24の取付位置に関わらず、上部旋回体4の旋回動作によって作業装置5がマスト24に干渉するのを防止することができる。
【0080】
なお、実施形態では、左旋回停止弁38および右旋回停止弁39が、電磁パイロット式の電磁弁によって構成されている。しかし、本発明はこれに限らず、油圧パイロット式の制御弁を用いる構成としてもよい。
【0081】
また、実施形態では、履帯2Eを備えたクローラ式の油圧ショベル1に適用した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばホイール式の油圧ショベルにも適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
4 上部旋回体
5 作業装置
9 操作レバー装置
20 ブレード
20C 左端部
20D 左マスト台座
20E 右端部
20F 右マスト台座
24 マスト
24A 取付フランジ
25 プリズム(ブレード位置検出器)
27 左近接センサ(マスト位置検出装置)
28 右近接センサ(マスト位置検出装置)
29 旋回制限装置
44 モニタ装置(マスト位置検出装置)