(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】グリッパ
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20221228BHJP
【FI】
B25J15/08 D
(21)【出願番号】P 2018146088
(22)【出願日】2018-08-02
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】宮本 篤
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-012794(JP,A)
【文献】特開平10-081312(JP,A)
【文献】特表2008-516870(JP,A)
【文献】特開2008-194770(JP,A)
【文献】特開2007-045499(JP,A)
【文献】米国特許第06182534(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に小径のキャップが装着される第1の容器と、相対的に大径のキャップが装着される第2の容器とをそれぞれ把持可能なグリッパであって、
キャップを前記第1または第2の容器とともに把持可能なグリップ爪を有し、互いに接近、離間して容器の把持および解放を行なう複数のグリップ部材と、
これらグリップ部材を開閉させる作動機構とを備え、
前記グリップ部材は、
前記グリップ爪が閉鎖した状態で、前記第1または第2の容器の口部に形成されたフランジ部の下面に係合し、当該フランジ部を把持する係合部と、
前記
係合部によって把持された前記第1または第2の容器のキャップ天面の縁部に当接可能な振れ止め部を有し、
前記振れ止め部が、前記第1および第2の容器に装着されるキャップの前記縁部に対して、それぞれ異なる位置で当接する当接部を有する
ことを特徴とするグリッパ。
【請求項2】
前記当接部が、前記グリップ爪が容器を把持した状態で、下方ほど外方へ広がるように傾斜した傾斜面を有することを特徴とする請求項1に記載のグリッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーサに設けられ、容器を箱詰めするために容器を把持するグリッパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーサにおいて、多数のグリッパが設けられたロボットにより、多数の容器を一括して移載するものが知られている(特許文献1)。この従来装置において、グリッパは各容器の口部に装着されたキャップを、容器とともに把持して移載するように構成されている。またグリッパには、移載動作において容器が慣性力により、グリップ爪を中心として揺動することを防止するため、振れ止め部が設けられている。この振れ止め部は、キャップの側面に当接することにより容器の揺動(振れ)を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、移載される容器が変更になることにより、キャップの径も異なる場合、振れ止め部の位置をキャップの側面に合わせて変えることが必要になる。このため従来装置では、キャップの径が異なるたびに振れ止め部の位置を調整し、あるいはグリッパを交換しなければならなかった。
【0005】
本発明は、移載される容器のキャップの径が変更された場合であっても、交換することなく使用できるグリッパを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るグリッパは、相対的に小径のキャップが装着される第1の容器と、相対的に大径のキャップが装着される第2の容器とをそれぞれ把持可能であり、キャップを第1または第2の容器とともに把持可能なグリップ爪を有し、互いに接近、離間して容器の把持および解放を行なう複数のグリップ部材と、これらグリップ部材を開閉させる作動機構とを備え、グリップ部材は、グリップ爪が閉鎖した状態で、第1または第2の容器の口部に形成されたフランジ部の下面に係合し、フランジ部を把持する係合部と、係合部によって把持された第1または第2の容器のキャップ天面の縁部に当接可能な振れ止め部を有し、振れ止め部が、第1および第2の容器に装着されるキャップの縁部に対して、それぞれ異なる位置で当接する当接部を有することを特徴としている。
【0007】
当接部は、グリップ爪が容器を把持した状態で、下方ほど外方へ広がるように傾斜した傾斜面を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、移載される容器のキャップの径が変更された場合であっても、交換することなく使用できるグリッパを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態であるグリッパを備えたケーサを示す側面図である。
【
図2】グリップ部材と作動機構を示す側面図である。
【
図3】第1および第2の容器を把持するときのグリップ爪を示す側面図である。
【
図4】グリップ爪がキャップに係合する状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示された実施形態を参照して本発明を説明する。
図1は本発明の一実施形態であるグリッパ10を備えたケーサを示す側面図である。このケーサは、物品供給コンベヤ11により搬送されてきた容器Aを、ケースコンベヤ12上に載置されたケースB内に移載するように構成されている。ケースB内には24個の容器Aを収納可能であり、容器Aは4列×6行に整列された状態で、物品供給コンベヤ11からケースBへ移載される。すなわちグリッパ10は4列×6行に配置され、駆動装置13から延びるアーム14の先端に設けられる。駆動装置13は制御装置15により制御され、後述するように、グリッパ10が物品供給コンベヤ11上の容器Aの口部を把持して持ち上げ、ケースB内へ移載する。
【0011】
図2を参照して、グリッパ10の構成を説明する。本実施形態のグリッパ10は、相対的に小径のキャップC1が装着される第1の容器A1(
図3(a)参照)と、相対的に大径のキャップC2が装着される第2の容器A2(
図3(b)参照)とをそれぞれ把持可能であり、
図2はキャップC1を容器A1とともに把持した状態を示している。
【0012】
グリッパ10は一対のグリップ部材16を備える。各グリップ部材16はキャップC1を容器A1とともに把持可能なグリップ爪17を有し、グリップ爪17はアーム18の背面に固定される。アーム18はグリッパ10のフレーム20に設けられた回転軸19に揺動自在に支持され、後述するように作動機構21により駆動される。
【0013】
作動機構21は、フレーム20の上方に設けられた円筒部材22と、円筒部材22内を上下方向に往復動自在に設けられたピストン23とを有する。ピストン23には、下方に延びて、円筒部材22の下側開口を閉塞する蓋部材33を貫通するロッド29が固定され、ロッド29の下端にはクサビ状プッシャ24が設けられる。プッシャ24は下方へ窄まる形状を有し、アーム18に設けられたローラ25に係合する。ローラ25はアーム18の上端に設けられたローラ支持軸26に回転自在に支持され、各アーム18は、ローラ25と回転軸19の間に固定されたピン27を連結するスプリング28により、常時、ローラ25が接近する方向へ付勢される。
【0014】
プッシャ24が下降すると、スプリング28の弾発力に抗して、各アーム18は回転軸19を中心としてローラ25が離間する方向へ揺動し、各グリップ爪17が接近する方向へ変位する。プッシャ24が上昇すると、スプリング28の弾発力により、各アーム18はローラ25が接近する方向へ揺動し、各グリップ爪17が離間する方向へ変位する。この動作により、一対のグリップ部材16のグリップ爪17が互いに接近、離間して容器A1の把持および解放を行なう。
【0015】
ピストン23とプッシャ24を昇降させるため、円筒部材22内においてピストン23の上側に形成される圧力室30は電磁弁31を介して圧空源32に接続される。一方、蓋部材33とピストン23の間にはスプリング34が設けられる。したがって、圧空源32から圧力室30に高圧空気が供給されると、ピストン23はスプリング34の弾発力に抗して下降し、圧力室30の高圧空気が開放されると、ピストン23はスプリング34の弾発力により上昇する。
【0016】
グリップ爪17は、容器A1の口部に形成されたフランジ部Fに係合する鉤型の係合部35と、グリップ爪17によって把持されたキャップC1の天面の縁部D1に当接可能な振れ止め部36とを有する。グリッパ10は容器A1よりも大径のキャップC2が装着される容器A2に対しても使用することができ、そのための構成を、
図3、4を参照して説明する。
【0017】
グリップ爪17は上方から見ると
図4に示すように円弧状に湾曲し、フランジ部Fを両側から把持する。振れ止め部36はキャップC1、C2が当接する当接部37を有する。当接部37は、グリップ爪17が容器A1、A2を把持した状態で、下方ほど外方へ広がるように傾斜した傾斜面(テーパ面)を有する。グリッパ10が第1の容器A1を把持するとき、
図3(a)に示すようにキャップC1の縁部D1は当接部37の中央付近に当接する。グリッパ10が第2の容器A2を把持するとき、
図3(b)に示すようにキャップC2の縁部D2は当接部37の下端付近、すなわち当接部37と側面38の間の角部近傍に当接する。
【0018】
次に、本実施形態の作用を説明する。
第1または第2の容器A1、A2の口部を把持するとき、グリッパ10は、グリップ部材16が開放した状態でアーム14の作用により下降する。そしてグリップ爪17がキャップC1、C2の側方に位置したとき、作動機構21が作動してプッシャ24が下降し、グリップ爪17が閉鎖される。
【0019】
第1の容器A1の口部を把持するときは、係合部35が容器A1のフランジ部Fに係合し、また当接部37の中央付近がキャップC1の縁部D1に当接する(
図3(a))。これに対して、第2の容器A2の口部を把持するときは、係合部35が容器A2のフランジ部Fに係
合し、また当接部37の下端付近がキャップC2の縁部D2に当接する(
図3(b))。
【0020】
次いでグリッパ10は、グリップ爪17が閉鎖した状態で、アーム14の作用により上昇するとともに、容器C1、C2を例えばケースBの中に収納した後、容器C1、C2を解放する。
【0021】
以上の説明において、グリップ爪17が閉鎖した状態では当接部37がキャップの縁部D1、D2に当接すると記載したが、実際には、容器A1、A2が安定して鉛直状態にあるとき、当接部37とキャップの縁部D1、D2との間に、わずかに隙間が空いている。すなわち、容器が振れると、縁部D1、D2が当接部37に当接し、これにより容器の振れが止められる。
【0022】
以上のように本実施形態によれば、1つのグリッパ10により、容器の振れを防止しつつ、径の異なる容器に対する移載動作を実行することができ、移載される容器のキャップの径が変更された場合であっても、交換する必要がない。
【0023】
なお上記実施形態では、当接部37はテーパ状の傾斜面を有しているが、これに替えて、キャップの縁部D1、D2が当接する部位を凹ませて、断面がジグザグ形状になるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0024】
16 グリップ部材
17 グリップ爪
21 作動機構
36 振れ止め部
37 当接部
A1 第1の容器
A2 第2の容器
C1、C2 キャップ
D1、D2 縁部