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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】振動コンベア
(51)【国際特許分類】
   B65G 27/04 20060101AFI20221228BHJP
   B65G 65/44 20060101ALI20221228BHJP
【FI】
B65G27/04
B65G65/44 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018183111
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020050496
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130498
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 禎哉
(72)【発明者】
【氏名】竹本 皓樹
(72)【発明者】
【氏名】安達 健太
(72)【発明者】
【氏名】村岸 恭次
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-237359(JP,A)
【文献】実開昭64-021126(JP,U)
【文献】実開平05-037339(JP,U)
【文献】米国特許第4294693(US,A)
【文献】山沢 新吾、ほか3名,振動コンベアにおける穀粒層の運搬速度の計算,農業施設,1975年5巻1号,[ online ],2011年09月05日,p.23-28,インターネット<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/sasj1971/5/1/5_1_23/_article/-char/ja/>,[令和4年5月13日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 27/00-27/34
B65G 65/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加振源からの振動でトラフを振動させることによって前記トラフ上の搬送対象物である粉粒体を所定の搬送方向に搬送させる振動コンベアであり、
前記トラフを複数段状に設け、これら各トラフ上の粉粒体の層厚を所定値以下に規制する層厚規制部を備え、前記層厚規制部によって前記各トラフ上の粉粒体の層厚が前記各トラフにおける粉粒体の最大搬送量となる最大層厚と一致または前記最大層厚よりも低い層厚となるように構成し
前記層厚規制部は、前記各トラフに対応して設けられ且つ前記トラフの搬送面との間に粉粒体の通過を前記搬送面から所定高さまで許容する開口部を形成する仕切り部を備えたものであり、
多段状の前記トラフのうち相対的に下側のトラフが前記仕切り部によって粉粒体の層厚を規制する層厚規制状態になることで、前記各トラフの供給口に連続する共通の投入口に供給された粉粒体が、層厚規制状態にある前記トラフよりも相対的に上側のトラフの供給口を通じて当該トラフに供給されるように構成していることを特徴とする振動コンベア。
【請求項2】
前記層厚規制部は、
前記各トラフの供給口に連続する共通の投入口に設けられ且つ当該投入口に投入された粉粒体の供給先の前記トラフを選択して前記各トラフへの粉粒体の供給量を調整可能な供給量調整部と、
前記各トラフ上の粉粒体のうち前記仕切り部よりも搬送方向下流側の粉粒体の層厚を判定する判定部とを備え、
前記判定部による判定結果に基づいて前記供給量調整部の作動を制御するものである請求項1に記載の振動コンベア。
【請求項3】
前記仕切り部が、前記トラフの搬送面から所定高さ位置に下端を位置付けた仕切り板である請求項1又は2に記載の振動コンベア。
【請求項4】
前記トラフの段数に応じた複数の排出経路を有するホッパを備え、
前記層厚規制部は、前記排出経路から前記各トラフの供給口に供給する粉粒体の量を調整することによって前記各トラフ上の粉粒体の層厚を規制するものである請求項1に記載の振動コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動によってトラフ上の搬送対象物を振動搬送することが可能な振動コンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、振動によってトラフ上の搬送対象物を振動搬送可能な振動コンベアが知られている(例えば特許文献1)。振動コンベアは、例えば砂糖等の粉粒体である搬送対象物の搬送に用いられる。振動コンベアを用いると、トラフの幅方向一杯に広がった粉粒体はトラフの搬送面上を一様な層厚で搬送されることになる。
【0003】
ここで、トラフに与える振動の振幅や周波数、振動角を一定とした場合、搬送量はトラフ上の粉粒体の層厚によって決まる。したがって、トラフ上の粉粒体の層厚を大きくすることにより振動コンベアによる搬送対象物の搬送量を増大することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-237727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、トラフ上の粉粒体の層厚が一定の厚さ(粉粒体の材料によってこの層厚は異なる)を越えると、粉粒体が加振源によるトラフの振動を吸収してしまい、トラフの振動が粉粒体層の上方まで伝播されず、トラフ上の粉粒体の層厚全体をスムーズに搬送することができないという現象が生じる。したがって、トラフへ供給する粉粒体の層厚を大きくしても搬送量を一定量以上に増大できず、振動コンベアの設置面積当たりの搬送量に限界が生じる。
【0006】
振動コンベアの導入現場からは、振動コンベアの設置面積の増大を回避しつつ、搬送量を増大したいという要求がある。そこで、加振源の加振力を増大することでトラフの単位幅当たりの搬送量増大化を図ることが考えられる。しかし、増大する加振力に耐える構造が振動コンベア全体に要求されることになり、振動コンベア全体の大掛かりな設計変更を招来する。
【0007】
本発明者は、鋭意研究の結果、駆動部の加振力を増大することなく、振動コンベア全体の単位時間当たりの粉粒体搬送量の増大化、及び設置面積当たりの粉粒体搬送量の増大化を実現可能な本発明に係る振動コンベアを想到するに至った。いずれ
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る振動コンベアは、加振源からの振動でトラフを振動させることによってトラフ上の搬送対象物である粉粒体を所定の搬送方向に搬送させる振動機の一種であり、トラフを複数段状に設け、これら各トラフ上の粉粒体の層厚を所定値以下に規制する層厚規制部を備え、層厚規制部によって各トラフ上の粉粒体の層厚が各トラフにおける粉粒体の最大搬送量となる最大層厚と一致または最大層厚よりも低い層厚となるように構成していることを特徴としている。ここで、搬送対象物である粉粒体としては、例えば砂糖等の食品を挙げることができ、その他に、化学、薬品、肥料、ガラス、セメント、タバコなどの原料、さらには鉱石、石炭等を挙げることができる。
【0009】
このような本発明に係る振動コンベアであれば、複数のトラフを高さ方向に段状に設けることで設置面積の増大を回避しつつ、複数段状に設けた各トラフにおける粉粒体の層厚を、層厚規制部によって各トラフにおける粉粒体の最大搬送量となる最大層厚と一致または最大層厚よりも低い層厚となるように構成しているため、トラフ上の粉粒体の層厚が最大層厚を越えた状態で搬送した場合に生じる不具合、つまり、加振源によるトラフの振動を粉粒体が吸収する事象等に起因してトラフの振動が粉粒体層の上方まで伝播されず、トラフ上の粉粒体層全体をスムーズに搬送できないという不具合の発生を防止・抑制することが可能であり、各トラフの単位幅当たりの搬送量増大化を実現することができ、このようなトラフを複数段備えていることで、振動コンベア全体の単位時間当たりの粉粒体搬送量及び振動コンベアの設置面積当たりの粉粒体搬送量を増大することができる。
【0010】
なお、特開平10-025016号公報、特開平05-237359号公報、実公平05-002493号公報には、トラフを多段状に配置した供給装置が開示されているが、当該装置は、各トラフの供給量を均一にすることを目的とするものであり、本発明の根幹である「トラフ上の粉粒体の層厚を規制して搬送量の増大化を図る」という技術的思想については何ら開示されていない。
【0011】
本発明における層厚規制部の一例として、各トラフに対応して設けられ且つトラフの搬送面との間に粉粒体の通過を搬送面から所定高さ位置まで許容する開口部を形成する仕切り部を備えたものを挙げることができる。層厚規制部がこのような仕切り部を用いたものであれば、各トラフ上の粉粒体のうち仕切り部よりも搬送方向下流側の粉粒体の層厚が最大層厚と一致または最大層厚よりも低い層厚となる振動コンベアを比較的簡単な構成で実現できる。「粉粒体の通過を許容する開口部」の形状は、搬送方向に沿って開口部に正対した場合に、四角形または五角形(ホームベース形状)、あるいは三角形等の多角形状であってもよいし、一部に部分円弧状を有する形状(トンネル形状)であってもよい。なお、搬送面上の粉粒体は、トラフからの振動を受けて振動トラフの幅方向全体に亘って広がった状態で搬送され、この粉粒体層の上向き面はフラットな面になる傾向がある。したがって、「粉粒体の通過を許容する開口部」の形状によっては、仕切り部を通過直後の粉粒体層の上向き面がフラットな面でなく、幅方向において高低がある面になる態様もある。しかしながら、仕切り部の通過後も振動搬送されることで粉粒体層の上向き面はやがてフラットな面になる。本発明に係る振動コンベアが備える層厚規制部は、上向き面がフラットな状態にある粉粒体の層厚が、最大層厚と一致または最大層厚よりも低い層厚となるように規制するものである。
【0012】
本発明に係る振動コンベアにおいて、多段状のトラフのうち先ず最下段のトラフ内に粉粒体を供給し、仕切り部によって粉粒体の層厚を規制した状態(層厚規制状態)になることによって当該トラフへの粉粒体の供給量を制限しながら層厚規制状態を維持しつつ、粉粒体を下から2段目のトラフ内に供給し、このトラフに関しても仕切り部によって層厚規制状態になることによって当該トラフへの粉粒体の供給量を制限しながら層厚規制状態を維持しつつ、粉粒体をしたから3段目のトラフ内に供給する、というようなステップを経るように構成すれば、複雑な案内経路を設けずに粉粒体を高さ方向に並ぶ各トラフに順番に供給しながら各トラフの単位幅当たりの搬送量増大化を実現することができる。すなわち、本発明において、層厚規制部を仕切り部で構成した場合には、各トラフの供給口に連続する共通の投入口に供給された粉粒体を多段状のトラフのうち相対的に下側のトラフの供給口から当該トラフに供給し、当該トラフが仕切り部によって粉粒体の層厚を規制する層厚規制状態になることで、投入口に供給された粉粒体が、層厚規制状態にあるトラフよりも相対的に上側のトラフの供給口を通じて当該トラフに供給されるように構成することが好適である。
【0013】
また、本発明における層厚規制部が、各トラフの供給口に連続する共通の投入口に設けられ且つ投入口に投入された粉粒体の供給先のトラフを選択して各トラフへの粉粒体の供給量を調整可能な供給量調整部と、各トラフ上の粉粒体のうち仕切り部よりも搬送方向下流側の粉粒体の層厚を判定する判定部とを備え、判定部による判定結果に基づいて供給量調整部の作動を制御するものであれば、各トラフの層厚規制状態の精度を高めることができ、振動コンベア全体による粉粒体の搬送効率が向上し、粉粒体の搬送量増大化を実現できる。「判定部による判定結果」の具体例としては、センサによって検知した粉粒体の層厚情報に基づく判定結果、あるいは撮像手段によって記録した画像情報に基づく判定結果を挙げることができる。
【0014】
本発明では、層厚規制部の仕切り部として、トラフの搬送面から所定高さ位置に下端を位置付けた仕切り板を適用することで、簡単な構成で仕切り部を形成することができる。
本発明に係る振動コンベアは、トラフの段数に応じた複数の排出経路を有するホッパを備えたものであってもよい。この場合、排出経路から各トラフの供給口に供給する粉粒体の量を調整することによって各トラフ上の粉粒体の層厚を規制する層厚規制部を適用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、トラフを多段状に設け、各トラフ上における粉粒体の層厚を、最大層厚を越えないように規制する層厚規制部を備えた構成により、トラフ上の粉粒体層全体ごとスムーズに搬送することができ、設置面積の大型化を招来することなく、粉粒体の搬送量増大化を実現可能な振動コンベアを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る振動コンベアの模式図。
図2図1の要部拡大模式図。
図3】同実施形態に係る振動コンベアの一変形例を図2に対応して示す図。
図4】同実施形態に係る振動コンベアの一変形例を図1に対応して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る振動コンベアXは、図1及び図2図1は振動コンベアXの模式図であり、図2図1の要部拡大図である)に示すように、搬送対象物である粉粒体Wが供給される供給口T1及び搬送した粉粒体Wを排出する排出口T2を有するトラフTを高さ方向に複数配置したものである。振動コンベアXは、例えば板バネ又はコイルバネ等の弾性復帰可能なパーツを介してトラフTを所定方向に往復振動自在に支持するベース(図示省略)と、ベースに振動を付与する加振源(図示省略)とを備え、加振源が作動することによってベースに付与された振動が板バネやコイルバネを介してトラフTに伝わり、トラフTを往復振動させて、トラフT上の粉粒体Wを供給口T1から排出口T2に向かって振動搬送するものである。
【0018】
トラフTは、図2に示すように、粉粒体を載置して搬送する搬送面T3と、搬送面T3の両サイドから起立する左右一対の側方起立面T4とによって上方に開口した上向きコ字状(略樋状)をなし、天井面T5によって上方に開口した領域全体または略全体を被覆した構成を有するものである。本実施形態では、少なくとも幅寸法(左右方向の寸法)が同じである2つのトラフTを高さ方向に並べて配置している。以下の説明では、相対的に下側のトラフTを下段トラフTAとし、相対的に上側のトラフTを上段トラフTBとする。本実施形態の振動コンベアXでは、下段トラフTA及び上段トラフTBの長手方向(搬送方向F)中心軸線が相互に一致するように下段トラフTA及び上段トラフTBを配置している。
【0019】
下段トラフTA及び上段トラフTBは、それぞれ天井面T5を有するものであるが、図1及び図2では、下段トラフTAの天井面T5と上段トラフTBの底面(搬送面T3)とを共通の実線で示している。すなわち、天井面T5は、各トラフT(下段トラフTA、上段トラフTB)が有する専用カバーによって形成される面であってもよいし、高さ方向に隣接するトラフTの底面によって形成される面であってもよい。本実施形態では、下段トラフTA及び上段トラフTBの各排出口T2から排出された粉粒体Wが、共通の回収部Gに回収されて、次の処理工程に供されるように構成している。本実施形態の振動コンベアXは、上段トラフTBの排出口T2を下段トラフTAの排出口T2よりも搬送方向F下流側に位置付けて複数のトラフT(下段トラフTA、上段トラフTB)を階段状に配置しているため、各トラフT(下段トラフTA、上段トラフTB)の排出口T2から排出する粉粒体Wを共通の回収部Gに効率良く回収できる。
【0020】
そして、本実施形態に係る振動コンベアXは、これら各トラフT(下段トラフTA、上段トラフTB)上の粉粒体Wの層厚を所定値以下に規制する層厚規制部Cを備えている。層厚規制部Cは、各トラフT上の粉粒体Wの層厚が各トラフTにおける粉粒体Wの最大搬送量となる最大層厚と一致または最大層厚よりも低い層厚となるように粉粒体Wの層厚を規制するものである。ここで、「各トラフTにおける粉粒体の最大搬送量となる最大層厚」は、粉粒体の種類、見掛比重(粉粒体の単位体積当たりの質量)、粒子径、湿潤の程度等の諸条件によって求めることができる。
【0021】
本実施形態の層厚規制部Cは、図2に示すように、各トラフT(下段トラフTA、上段トラフTB)に対応して設けられ且つトラフTの底面である搬送面T3との間に粉粒体Wの通過を許容する開口部Kを形成する仕切り部Pを備えている。本実施形態では、仕切り部Pとして、トラフTの天井面T5から下方に向かって突出する姿勢で配置した仕切り板P1を適用し、仕切り板P1の下端P11をトラフTの搬送面T3から所定高さ位置に位置付けることによって、この仕切り板P1とトラフTの搬送面T3との間に粉粒体Wの通過を搬送面T3から所定高さまで許容する開口部Kを形成している。仕切り板P1の両側縁は、トラフTの側方起立面T4に接触している。本実施形態では、このような仕切り板P1を、各トラフTの供給口T1近傍(供給口T1から数cm乃至数十cm離れた位置に配置している。したがって、各トラフT上の粉粒体Wは、仕切り部Pを通過することで、その層厚が仕切り部Pによって最大層厚と一致する層厚、または最大層厚よりも低い層厚となる。
【0022】
本実施形態の振動コンベアXは、このような直線状の搬送路であるトラフTを高さ方向に複数並べて配置し、加振源の振動がトラフT(下段トラフTA、上段トラフTB)に伝達されることで、各トラフT上の粉粒体Wを搬送方向F下流側に向かって振動搬送させることができる。本実施形態の振動コンベアXは、各トラフTの供給口T1に連続する共通の投入口Sと、投入口Sの上方に設けられ且つ投入口Sに粉粒体Wを投入するホッパHとを備えている。そして、図1に示すように、本実施形態の振動コンベアXは、ホッパHから投入口Sに供給された粉粒体Wを多段状のトラフTのうち下段トラフTAの供給口T1から下段トラフTA内に優先的に供給し(同図(b)参照)、下段トラフTAが仕切り部Pによって粉粒体Wの層厚を規制する層厚規制状態になることで、投入口Sから下段トラフTA内への粉粒体Wの供給量を制限し、投入口S内の粉粒体Wが、層厚規制状態にある下段トラフTAよりも上方のトラフである上段トラフTBの供給口T1を通じて上段トラフTB内に供給されるように構成している(同図(c)参照)。上段トラフTBの供給口T1から上段トラフTB内に供給された粉粒体Wは、下段トラフTA内に供給された粉粒体Wと同様に、上段トラフTBに設けた仕切り部Pによって層厚が規制される。
【0023】
このように、本実施形態に係る振動コンベアXは、複数のトラフT(下段トラフTA、上段トラフTB)を高さ方向に段状に設けることで振動コンベアX自体の設置面積が増大する事態を回避しつつ、複数段状に設けた各トラフT(下段トラフTA、上段トラフTB)における粉粒体Wの層厚を、層厚規制部Cによって各トラフT(下段トラフTA、上段トラフTB)における粉粒体Wの最大搬送量となる最大層厚と一致または最大層厚よりも低い層厚となるように構成しているため、トラフT上の粉粒体Wの層厚が最大層厚を越えた状態で搬送した場合に生じる不具合、つまり、加振源によるトラフTの振動を粉粒体Wが吸収する事象等に起因してトラフTの振動が粉粒体層の上方まで伝播されず、トラフT上の粉粒体層全体をスムーズに搬送できないという不具合の発生を防止・抑制することが可能であり、各トラフT(下段トラフTA、上段トラフTB)の単位幅当たりの搬送量増大化を実現することができ、このようなトラフT(下段トラフTA、上段トラフTB)を高さ方向に並べて配置することで、振動コンベアX全体の単位時間当たりの粉粒体搬送量及び振動コンベアXの設置面積当たりの粉粒体搬送量を増大することができる。
【0024】
特に、本実施形態に係る振動コンベアXは、各トラフT(下段トラフTA、上段トラフTB)に設けた仕切り部Pによって層厚規制部Cを構成し、各トラフT(下段トラフTA、上段トラフTB)の搬送面T3と仕切り部Pとの間に粉粒体Wの通過を許容する開口部Kを形成しているため、比較的簡単な構成でありながら、各トラフT(下段トラフTA、上段トラフTB)上の粉粒体Wのうち仕切り部Pよりも搬送方向F下流側の粉粒体Wの層厚をトラフTの単位幅当たりの搬送量増大化を実現可能な厚さに規制することができる。
【0025】
加えて、本実施形態に係る振動コンベアXは、各トラフT(下段トラフTA、上段トラフTB)の供給口T1に連続する共通の投入口Sに供給された粉粒体Wを先ず下段トラフTAの供給口T1から下段トラフTA内に供給し、下段トラフTAが仕切り部Pによって粉粒体Wの層厚を規制する層厚規制状態になった後に、層厚規制状態にあるトラフTよりも相対的に上側のトラフTである上段トラフTBの供給口T1を通じて上段トラフTB内に粉粒体Wが供給されるように構成しているため、複雑な案内経路を設けずに粉粒体Wを各トラフT(下段トラフTA、上段トラフTB)に効率良く供給することができる。
【0026】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明における層厚規制部として、図3に示すように、各トラフT(下段トラフTA、上段トラフTB)の供給口T1に連続する共通の投入口Sに設けられ且つ投入口Sに投入された粉粒体Wの供給先のトラフTを選択して各トラフTへの粉粒体Wの供給量を調整可能な供給量調整部Rと、各トラフT上の粉粒体Wのうち仕切り部Pよりも搬送方向F下流側の粉粒体Wの層厚を判定する判定部Jとを備え、判定部Jによる判定結果に基づいて供給量調整部Rの作動を制御するものを適用することができる。供給量調整部Rは、同図に示すように、例えばプレート体を用いて構成することができ、投入口Sに投入された粉粒体を下段トラフTAに供給可能な第1姿勢(実線で示す姿勢R1)と、投入口Sに投入された粉粒体を上段トラフTBに供給可能な第2姿勢(一点鎖線で示す姿勢R2)との間で姿勢変更可能なものである。
【0027】
判定部Jは、センサJ1によって検知した粉粒体Wの層厚情報に基づいて粉粒体Wの層厚を判定するものである。したがって、本実施形態における「判定部Jによる判定結果」は、センサJ1によって検知した粉粒体Wの層厚情報に基づく判定結果である。なお、判定部Jが、カメラ等の撮像手段によって記録した粉粒体Wの層厚に関する画像情報に基づいて粉粒体Wの層厚を判定するものであってもよい。
【0028】
このような構成であれば、各トラフTの高さ位置に関係無く、各トラフTの搬送状態を考慮しながら、層厚規制状態になっていないトラフTに粉粒体Wを優先的に供給するように供給量調整部Rを第1姿勢R1と第2姿勢R2の間で切り替えることで、各トラフTにおける層厚規制状態の精度を高めることができ、振動コンベアX全体による粉粒体Wの搬送効率を向上させて粉粒体Wの搬送量増大化を実現できる。また、このような構成であれば、層厚規制状態にあるべきトラフTが、最大層厚を越えて粉粒体Wを搬送している事象を判定部Jによる判定結果に基づいて特定することもでき、最大層厚を越えた層厚で粉粒体Wを搬送しているトラフTへの粉粒体Wの供給を一時停止することによって粉粒体Wの層厚を調整することもできる。
【0029】
本発明では、層厚規制部Cの仕切り部Pとして、トラフTの搬送面T3から所定高さ位置に下端P11を位置付けた仕切り板P1を適用することで、簡単な構成で仕切り部Pを形成することができるが、仕切り板以外のもの(プレート体以外のもの)を用いて仕切り部を形成してもよい。例えば直方体状のブロック体を用いて仕切り部を形成したり、側面視略三角形状のパーツ(三角体)を用いて仕切り部を形成することができる。後者の態様を採用する場合には、側面視三角体を逆三角形状の姿勢でトラフ内に設け、三角体の3つの角のうち下方に突出する向きにある角を頂点として、この頂点(最下端)と搬送面との間に粉粒体の通過を許容する開口部を形成すればよい。
【0030】
本発明における「粉粒体の通過を許容する開口部」の形状は、搬送方向に沿って開口部に正対した場合に、四角形または五角形、あるいは三角形等の多角形状であってもよいし、一部に部分円弧状を有する形状(トンネル形状)であってもよい。さらにはまた、プレート体またはブロック体の一部に下方に開口する切欠を形成し、この切欠を「粉粒体の通過を許容する開口部」に設定した構成を採用することも可能である。
【0031】
また、供給量調整部を備えた層厚規制部を適用する場合には、各トラフに仕切り部を配置せずに、判定部(例えばセンサ、カメラ等)による判定結果に基づいて供給量調整部の作動を制御する構成(図3に示す振動コンベアXのうち仕切り部Pを省いた構成)にすることもできる。
【0032】
さらに、本発明に係る振動コンベアXは、図4に示すように、トラフTの段数に応じた複数の排出経路H1を有するホッパHを備えたものであってもよい。この場合、振動コンベアXが、排出経路H1から各トラフT(下段トラフTA、上段トラフTB)の供給口T1に供給する粉粒体の量を調整することによって各トラフT(下段トラフTA、上段トラフTB)上の粉粒体の層厚を規制する層厚規制部Cを備えた構成であれば、上述の実施形態に係る構成と同様に、各トラフT(下段トラフTA、上段トラフTB)上の粉粒体Wの層厚を規制することができ、各トラフTの単位幅当たりの搬送量増大化、ひいては、振動コンベアX全体の単位時間当たりの粉粒体搬送量及び振動コンベアXの設置面積当たりの粉粒体搬送量を増大することができる。
【0033】
図4に示す構成において、例えば、複数の排出経路H1のうち粉粒体Wを排出する排出経路H1を選択して各トラフTへの粉粒体Wの供給量を調整可能な供給量調整部と、各トラフT上の粉粒体Wの層厚を判定する判定部とを備え、判定部による判定結果に基づいて供給量調整部の作動を制御するものを適用することが可能である。「判定部による判定結果」の具体例としては、センサによって検知した粉粒体の層厚情報に基づく判定結果、あるいは撮像手段によって記録した画像情報に基づく判定結果を挙げることができる。また、本発明では、供給量調整部を排出経路内に個別に設けた構成、あるいは、ホッパのうち各排出経路の排出方向上流端よりも上流側の所定位置に共通の供給量調整部を設けた構成を採用できる。図4に示す構成において、図1等に示す仕切り部を各トラフ内に設けても構わない。
【0034】
本発明の振動コンベアが多段状に備えるトラフの数は、2つに限らず、3以上であってもよい。
【0035】
また、トラフを加振する具体的な構成及び加振方法は特に限定されず、トラフを支持する構成も特定の構成に限定されず、適宜の構成を採用することができる。
【0036】
本発明の振動コンベアで搬送可能な搬送対象物である粉粒体は、食品に限定されない。
【0037】
その他、回動機構等、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0038】
C…層厚規制部
H…ホッパ
H1…排出経路
J…判定部
K…開口部
T(TA、TB)…トラフ(下段トラフ、上段トラフ)
P…仕切り部
P1…仕切り板
R…供給量調整部
S…投入口
X…振動コンベア
図1
図2
図3
図4