(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】電源装置、半導体集積回路及びリップル抑制方法
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20221228BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20221228BHJP
H05B 45/14 20200101ALI20221228BHJP
H05B 45/345 20200101ALI20221228BHJP
H05B 45/385 20200101ALI20221228BHJP
H05B 47/14 20200101ALI20221228BHJP
【FI】
G05F1/56 310T
H02M3/155 H
H05B45/14
H05B45/345
H05B45/385
H05B47/14
(21)【出願番号】P 2018211614
(22)【出願日】2018-11-09
【審査請求日】2021-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2017252780
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】今出 大佑
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 直人
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0354186(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0070143(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106211484(CN,A)
【文献】特開2017-224586(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0215238(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0318639(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
H02M 3/155
H05B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から直流電圧を生成し、前記直流電圧を一対の出力端子間に出力する電圧変換回路と、
出力電流が流れる第1電流経路上に設けられ、前記第1電流経路の電流を制御する電流制御部と、
前記第1電流経路のうち前記電圧変換回路の高電位側の出力部から前記電流制御部までの経路上に設定された第1電位点の電圧と、前記出力電流の大きさを示す電流検出電圧とに基づいて、前記出力電流に生じるリップルが抑制されるように前記電流制御部を駆動する電流制御回路と、
を備え
、
前記電流制御回路は、
参照電圧を保持する電圧保持部と、
前記参照電圧と前記電流検出電圧との差が小さくなるように前記電流制御部に駆動信号を出力する差動回路と、
前記参照電圧を引下げ可能な引下げ回路と、
前記参照電圧を分圧した第1分圧電圧を生成する第1分圧回路と、
前記第1分圧電圧と前記電流検出電圧とを比較し、前記第1分圧電圧よりも前記電流検出電圧が低い場合に前記引下げ回路に前記参照電圧を引下げさせる第1比較器と、
を有することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記電流制御回路は、前記第1電位点のリップル電圧のボトム電圧が最小の電圧である均衡電圧に収束するように、前記電流制御部を駆動することを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記電流制御回路は、
前記参照電圧を引上げ可能な第1引上げ回路と、
予め定められた基準電圧と記第1電位点の電圧とを比較し、前記基準電圧よりも前記第1電位点の電圧が高い場合に前記第1引上げ回路に前記参照電圧を引上げさせる第2比較器と、
を有することを特徴とする請求項
1又は請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記基準電圧は、前記出力電流のリップルがゼロとなる前記第1電位点の電圧よりも高
く、
前記第1分圧回路の分圧比は、1-(前記出力電流の上端値に対する許容されるリップル電流の大きさの割合)に設定されていることを特徴とする請求項
3記載の電源装置。
【請求項5】
前記第1引上げ回路の電圧の引上げ能力よりも、前記引下げ回路の電圧の引下げ能力が低いことを特徴とする請求項
3又は請求項
4に記載の電源装置。
【請求項6】
前記電流制御回路は、
前記引下げ回路の電圧の引下げ能力よりも低い能力で前記参照電圧を引上げ可能な第2引上げ回路と、
前記電流検出電圧が前記第1分圧電圧を下回らない期間が所定期間を超えた場合に、前記第2引上げ回路に前記参照電圧を引上げさせる論理部と、
を更に備えることを特徴とする請求項
1から請求項
5のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項7】
前記電流制御回路は、
前記引下げ回路の電圧の引下げ能力よりも低い能力で前記参照電圧を引上げ可能な第2引上げ回路と、
前記電流検出電圧が前記第1分圧電圧を下回らない期間が所定期間を超えた場合に、前記第2引上げ回路に前記参照電圧を引上げさせる論理部と、
前記参照電圧を分圧し、前記第1分圧電圧よりも高い第2分圧電圧を生成する第2分圧回路と、
前記第2分圧電圧と前記電流検出電圧とを比較する第3比較器と、
を更に備え、
前記論理部は、
前記第2比較器の比較結果と前記第3比較器の比較結果とに基づき、前記電流検出電圧が前記第2分圧電圧を下回ってから、前記電流検出電圧が前記第1分圧電圧を下回らない期間が所定期間を超えた場合に、前記第2引上げ回路に前記参照電圧を引上げさせることを特徴とする請求項
3記載の電源装置。
【請求項8】
交流電源から直流電圧を生成し、前記直流電圧を一対の出力端子間に出力する電圧変換回路と、
出力電流が流れる第1電流経路上に設けられ、前記第1電流経路の電流を制御する電流制御部と、
前記第1電流経路のうち前記電圧変換回路の高電位側の出力部から前記電流制御部までの経路上に設定された第1電位点の電圧と、前記出力電流の大きさを示す電流検出電圧とに基づいて、前記出力電流に生じるリップルが抑制されるように前記電流制御部を駆動する電流制御回路と、
を備え、
前記電流制御回路は、
参照電圧を保持する電圧保持部と、
前記参照電圧と前記電流検出電圧との差が小さくなるように前記電流制御部に駆動信号を出力する差動回路と、
前記第1電位点の電圧を検出電圧として入力し、異なるタイミングの前記検出電圧の比較に基づいて、前記参照電圧を制御するボトム電圧制御部と、
を有し、
前記第1電位点のリップル電圧のボトム電圧が最小の電圧である均衡電圧に収束するように、前記電流制御部を駆動することを特徴とする電源装置。
【請求項9】
前記電流制御回路は、
前記電圧保持部が保持する参照電圧に変動を加える変動付加部を更に備えることを特徴とする請求項
8記載の電源装置。
【請求項10】
前記一対の出力端子間に照明装置が接続される請求項1から請求項
9のいずれか一項に記載の電源装置。
【請求項11】
交流電源から直流電圧を生成し、前記直流電圧を一対の出力端子間に出力する電圧変換回路を有する電源装置に搭載され、出力電流が流れる電流経路の電流を制御可能な電流制御部を駆動する半導体集積回路であって、
参照電圧と前記出力電流の大きさを示す電流検出電圧との差が小さくなるように前記電流制御部に駆動信号を出力する差動回路と、
前記参照電圧を分圧した第1分圧電圧と前記電流検出電圧とを比較し、前記第1分圧電圧よりも前記電流検出電圧が低い場合に前記参照電圧を降下させる第1比較器と、
前記出力電流が流れる電流経路のうち前記電圧変換回路の高電位側の出力部から前記電流制御部までの経路上に設定された第1電位点の電圧と、予め定められた基準電圧とを比較し、前記基準電圧よりも前記第1電位点の電圧が高い場合に前記参照電圧を上昇させる第2比較器と、
を備えることを特徴とする半導体集積回路。
【請求項12】
交流電源から直流電圧を生成し、前記直流電圧を一対の出力端子間に出力する電圧変換回路を有する電源装置において、出力電流が流れる電流経路の電流を制御可能な電流制御部を駆動し、前記出力電流に生じるリップルを抑制するリップル抑制方法であって、
前記出力電流の大きさを示す電流検出電圧と参照電圧との差が小さくなるように前記電流制御部に駆動信号を出力する一方、
前記参照電圧を分圧した第1分圧電圧と前記電流検出電圧とを比較し、前記第1分圧電圧よりも前記電流検出電圧が低い場合に前記参照電圧を降下させ、
前記出力電流が流れる電流経路のうち前記電圧変換回路の高電位側の出力部から前記電流制御部までの経路上に設定された第1電位点の電圧と、予め定められた基準電圧とを比較し、前記基準電圧よりも前記第1電位点の電圧が高い場合に前記参照電圧を上昇させることを特徴とするリップル抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置、半導体集積回路及びリップル抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオードを用いた省電力の照明機器において高調波抑制の要求が高まっている。交流電源から直流電圧を生成する電源装置において高調波抑制機能を強化すると、出力段に交流電源の周波数に依存したリップルが生じやすくなる。
【0003】
特許文献1には、交流電源から直流電圧を生成して発光ダイオードを点灯させる定電流電源装置が示されている。この定電流電源装置では、発光ダイオードに出力される出力電流の電流経路に、発光ダイオードの点灯と消灯とを切り替える為にオン/オフさせるトランジスタと電流検出抵抗とが直列に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
負荷に出力される電圧にリップルが生じても、定電流制御を行うことで負荷に出力される電流からリップルを除去することができる。本発明者らは、出力電流の電流経路に電流制御用のトランジスタを設け、このトランジスタのオン抵抗を制御して負荷に流れる電流が所定の電流になるように制限する定電流回路について検討した。この構成によれば、
図1(A)に示すように、高電位側の出力電圧VLED+にリップルが生じても、電流制御用のトランジスタのオン抵抗の変化により、出力電流からリップル成分を除去することができる。すなわち、低電位側の出力電圧VLED-に同位相のリップル成分が付加されることで、一対の出力端子間の電圧が所定の電圧となり、リップルの除去された出力電流を負荷に供給できる。
【0006】
しかし、このような構成では、例えば定電流回路が制限する電流値の設定によっては、
図1(B)に示すように、電流制御用のトランジスタで生じる損失が大きくなるという課題が生じた。
図1(A)の電流値の設定と比べて、
図1(B)の電流値の設定では、電圧降下Vbだけ電流制御用のトランジスタで余分に損失が発生する。一方、
図1(C)のように、定電流回路が制限する電流値の設定が低すぎると、例えば入力段から供給される電力にバラツキが生じたときに、電流制御用のトランジスタでリップル電圧を吸収できずに、出力電流のリップルの抑制が不十分になる恐れがあった。
【0007】
特許文献1の定電流電源装置は、出力電流の電流経路に設けられた電流検出抵抗を用いて検出された信号を、DC/DCコンバータの制御回路にフィードバックして定電流制御を実現している。しかし、このような制御では、高調波抑制機能を強化した場合に、出力電流からリップルを十分に抑制することが難しいという課題があった。
【0008】
本発明は、交流電源を直流電圧に変換して負荷に供給する電源装置において、直流電圧にリップルが付加されても、低い損失で出力電流に生じるリップルを抑制できる電源装置、半導体集積回路及びリップル抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る一態様の電源装置は、
交流電源から直流電圧を生成し、前記直流電圧を一対の出力端子間に出力する電圧変換回路と、
出力電流が流れる第1電流経路上に設けられ、前記第1電流経路の電流を制御する電流制御部と、
前記第1電流経路のうち前記電圧変換回路の高電位側の出力部から前記電流制御部までの経路上に設定された第1電位点の電圧と、前記出力電流の大きさを示す電流検出電圧とに基づいて、前記出力電流に生じるリップルが抑制されるように前記電流制御部を駆動する電流制御回路と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、電圧変換回路が交流電源から生成した直流電圧を一対の出力端子間に出力することで、リップル電圧が含まれる直流電圧が出力されることになる。しかし、出力電流が流れる第1電流経路の電流を制御する電流制御部と、これを駆動する電流制御回路とにより、出力電流に生じるリップルを抑制することができる。さらに、電流制御回路は、出力電流の大きさを示す電流検出電圧と、電圧変換回路の高電位側の出力部から電流制御部までの経路上に設定された第1電位点の電圧とに基づいて、電流制御部を駆動するので、出力電流に生じるリップルを抑制しつつ、電流制御部で生じる損失が大きくならないように電流制御部を駆動することができる。したがって、低い損失でリップルの抑制された出力電流を負荷に供給することができる。
【0011】
ここで、
前記電流制御回路は、前記第1電位点のリップル電圧のボトム電圧が最小の電圧である均衡電圧に収束するように、前記電流制御部を駆動するように構成してもよい。
【0012】
この構成によれば、第1電位点のリップル電圧のボトム電圧を均衡電圧に制御することによって、低い損失でリップルの抑制された出力電流の出力が可能となる。
【0013】
また、前記電流制御回路は、
参照電圧を保持する電圧保持部と、
前記参照電圧と前記電流検出電圧との差が小さくなるように前記電流制御部に駆動信号を出力する差動回路と、
前記参照電圧を引下げ可能な引下げ回路と、
前記参照電圧を分圧した第1分圧電圧を生成する第1分圧回路と、
前記第1分圧電圧と前記電流検出電圧とを比較し、前記第1分圧電圧よりも前記電流検出電圧が低い場合に前記引下げ回路に前記参照電圧を引下げさせる第1比較器と、
を有してもよい。
【0014】
この構成によれば、出力電流のリップルが、第1分圧回路の分圧比から決められる小さいリップルに抑制される。さらに、出力電流に小さなリップルが生じるように出力電流が制御されるので、電流制御部の損失は低くなる。これらの結果、低い損失でリップルの抑制された出力電流の出力が実現される。
【0015】
さらに、前記電流制御回路は、
前記参照電圧を引上げ可能な第1引上げ回路と、
予め定められた基準電圧と記第1電位点の電圧とを比較し、前記基準電圧よりも前記第1電位点の電圧が高い場合に前記第1引上げ回路に前記参照電圧を引上げさせる第2比較器と、
を有してもよい。
【0016】
この構成によれば、第1電位点の電圧が高くなって、電流制御部の損失が大きくなった場合に、参照電圧を上げて、電流制御部の損失を低くすることができる。この制御と、上記のリップルを抑制する制御とが組み合わさることにより、低い損失でリップルの抑制された出力電流の出力が安定的に実現される。
【0017】
さらに、
前記基準電圧は、前記出力電流のリップルがゼロとなる前記第1電位点の電圧よりも高く、
前記第1分圧回路の分圧比は、1-(前記出力電流の上端値に対する許容されるリップル電流の大きさの割合)に設定されていてもよい。このような設定により、出力電流のリップルを許容値以下に抑制することができる。
【0018】
さらに、
前記第1引上げ回路の電圧の引上げ能力よりも、前記引下げ回路の電圧の引下げ能力が低くてもよい。参照電圧が適正値よりも高いほど、電流制御部が流すことのできる電流が大きくなる。このため、電圧変換回路の電流供給能力が、電流制御部が流せる電流量に追いつかなくなると、出力電流に生じるリップルが大きくなる。一方、参照電圧が適正値よりも小さいほど、電流制御部が流すことのできる電流が小さくなるので、電圧変換回路の出力電力が大きいと、電流制御部の損失が高くなる。そこで、上記の第1引上げ回路の電圧の引上げ能力と引下げ回路の電圧の引下げ能力との関係があることで、参照電圧が適正値より小さいときに、速やかに参照電圧を大きくすることができる。そして、徐々に適正値に収束させることができる。これにより、例えば、電圧変換回路の出力電力を大小切り替える際など、回路状態の遷移時に、電流制御部の損失が高い状態が長く続くことが回避できる。
【0019】
さらに、前記電流制御回路は、
前記引下げ回路の電圧の引下げ能力よりも低い能力で前記参照電圧を引上げ可能な第2引上げ回路と、
前記参照電圧を分圧し、前記第1分圧電圧よりも高い第2分圧電圧を生成する第2分圧回路と、
前記電流検出電圧が前記第1分圧電圧を下回らない期間が所定期間を超えた場合に、前記第2引上げ回路に前記参照電圧を引上げさせる論理部と、
を更に有していてもよい。
【0020】
このような構成によれば、出力電流に生じる抑制された大きさのリップルを、第1分圧回路の分圧比で決められる割合に収束させることができる。これにより、何らかの変動要素の影響で、リップルがゼロとなって電流制御部の損失が高い方へ変動してしまうといったことを回避できる。
【0021】
さらに、前記電流制御回路は、
前記引下げ回路の電圧の引下げ能力よりも低い能力で前記参照電圧を引上げ可能な第2引上げ回路と、
前記電流検出電圧が前記第1分圧電圧を下回らない期間が所定期間を超えた場合に、前記第2引上げ回路に前記参照電圧を引上げさせる論理部と、
前記参照電圧を分圧し、前記第1分圧電圧よりも高い第2分圧電圧を生成する第2分圧回路と、
前記第2分圧電圧と前記電流検出電圧とを比較する第3比較器と、
を更に備え、
前記論理部は、
前記第2比較器の比較結果と前記第3比較器の比較結果とに基づき、前記電流検出電圧が前記第2分圧電圧を下回ってから、前記電流検出電圧が前記第1分圧電圧を下回らない期間が所定期間を超えた場合に、前記第2引上げ回路に前記参照電圧を引上げさせてもよい。
【0022】
このような構成によれば、出力電流に生じる抑制された大きさのリップルが、第1分圧回路の分圧比で決められる割合よりも小さい状態が続いていることを安定的に検出できる。そして、この検出に基づき参照電圧を上げて、出力電圧のリップルを上記の割合に収束させることができる。したがって、何らかの変動要素の影響で、電流制御部の損失が高い方へ変動してしまうといったことを安定的に回避できる。
【0023】
また一方で、前記電流制御回路は、
参照電圧を保持する電圧保持部と、
前記参照電圧と前記電流検出電圧との差が小さくなるように前記電流制御部に駆動信号を出力する差動回路と、
前記第1電位点の電圧を検出電圧として入力し、異なるタイミングの前記検出電圧の比較に基づいて、前記参照電圧を制御するボトム電圧制御部と、
を有する構成としてもよい。
【0024】
この構成によれば、ボトム電圧制御部は、検出電圧により電流制御部の損失が大きくなった場合に、これを検出することができる。したがって、この検出に基づいて、電流制御回路は、第1電位点に現れるリップル電圧のボトム電圧を、電流制御部で生じる損失を低減させる均衡電圧に収束させる制御を実現できる。
【0025】
ここで、前記電流制御回路は、前記電圧保持部が保持する参照電圧に変動を加える変動付加部を更に備えてもよい。検出電圧が安定してしまうと、電流回路の損失の増減あるいは出力電流のリップルを検出できないような状態になる恐れがある。そこで、この構成によれば、変動付加部により加えられる変動により、検出電圧が安定してしまうことが回避され、電流回路の損失の増減あるいは出力電流のリップルを検出できない状態になることを抑制できる。したがって、検出電圧に基づいて、カソード側の出力端子に表われるリップル電圧のボトム電圧を、出力電流のリップルが抑制される範囲で、速やかに均衡電圧に収束させる制御が可能となる。
【0026】
さらに、本発明に係る電源装置は、前記一対の出力端子間に照明装置が接続される構成としてもよい。この構成によれば、高調波抑制を図りつつ、照明装置(例えば発光ダイオード、有機EL素子等)のフリッカの発生を、低い損失で抑制できる電源装置を提供できる。
【0027】
本発明に係る一態様の半導体集積回路は、
交流電源から直流電圧を生成し、前記直流電圧を一対の出力端子間に出力する電圧変換回路を有する電源装置に搭載され、出力電流が流れる電流経路の電流を制御可能な電流制御部を駆動する半導体集積回路であって、
参照電圧と前記出力電流の大きさを示す電流検出電圧との差が小さくなるように前記電流制御部に駆動信号を出力する差動回路と、
前記参照電圧を分圧した第1分圧電圧と前記電流検出電圧とを比較し、前記第1分圧電圧よりも前記電流検出電圧が低い場合に前記参照電圧を降下させる第1比較器と、
前記出力電流が流れる電流経路のうち前記電圧変換回路の高電位側の出力部から前記電流制御部までの経路上に設定された第1電位点の電圧と、予め定められた基準電圧とを比較し、前記基準電圧よりも前記第1電位点の電圧が高い場合に前記参照電圧を上昇させる第2比較器と、
を備えることを特徴とする。
【0028】
本発明に係る別の一態様の半導体集積回路は、
交流電源から直流電圧を生成し、前記直流電圧を一対の出力端子間に出力する電圧変換回路を有する電源装置に搭載され、出力電流が流れる電流経路の電流を制御可能な電流制御部を駆動する半導体集積回路であって、
前記出力電流の大きさを示す電流検出電圧と参照電圧との差が小さくなるように前記電流制御部に駆動信号を出力する差動回路と、
前記出力電流が流れる電流経路のうち前記電圧変換回路の高電位側の出力部から前記電流制御部までの経路上に設定された第1電位点のリップル電圧のボトム電圧が最小の電圧である均衡電圧に収束するように、前記参照電圧を変化させるボトム電圧制御部と、
を備えることを特徴とする。
【0029】
これらの半導体集積回路は、電圧変換回路からリップル電圧を含む直流電圧が一対の出力端子間に出力される電源装置に組み込むことができる。これにより、電源装置の出力電流のリップルを電流制御部の駆動によって抑制しつつ、電流制御部における損失の低減を図ることができる。
【0030】
本発明に係る一態様のリップル抑制方法は、
交流電源から直流電圧を生成し、前記直流電圧を一対の出力端子間に出力する電圧変換回路を有する電源装置において、出力電流が流れる電流経路の電流を制御可能な電流制御部を駆動し、前記出力電流に生じるリップルを抑制するリップル抑制方法であって、
前記出力電流の大きさを示す電流検出電圧と参照電圧との差が小さくなるように前記電流制御部に駆動信号を出力する一方、
前記参照電圧を分圧した第1分圧電圧と前記電流検出電圧とを比較し、前記第1分圧電圧よりも前記電流検出電圧が低い場合に前記参照電圧を降下させ、
前記出力電流が流れる電流経路のうち前記電圧変換回路の高電位側の出力部から前記電流制御部までの経路上に設定された第1電位点の電圧と、予め定められた基準電圧とを比較し、前記基準電圧よりも前記第1電位点の電圧が高い場合に前記参照電圧を上昇させる方法とした。
【0031】
本発明に係る別の一態様のリップル抑制方法は、
交流電源から直流電圧を生成し、前記直流電圧を一対の出力端子間に出力する電圧変換回路を有する電源装置において、出力電流が流れる電流経路の電流を制御可能な電流制御部を駆動し、前記出力電流に生じるリップルを抑制するリップル抑制方法であって、
前記出力電流の大きさを示す電流検出電圧と参照電圧との差が小さくなるように前記電流制御部に駆動信号を出力する一方、
前記出力電流が流れる電流経路のうち前記電圧変換回路の高電位側の出力部から前記電流制御部までの経路上に設定された第1電位点のリップル電圧のボトム電圧が最小の電圧である均衡電圧に収束するように、前記参照電圧を変化させる方法とした。
【0032】
これらの方法によれば、電圧変換回路からリップル電圧を含む直流電圧が一対の出力端子間に出力されても、電流制御部により出力電流のリップルを抑制することができ、かつ、電流制御部で生じる損失を低減できる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、交流電源を直流電圧に変換して負荷に供給する電源装置において、直流電圧にリップルが付加されても、低い損失で出力電流に生じるリップルを抑制できる電源装置、半導体集積回路及びリップル抑制方法を提供できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】出力電流の電流経路に定電流回路を設けた電源装置の出力特性を示す図であり、(A)は理想的な電流設定のときの波形図、(B)は(A)に対して電源装置が制御する電力が増加し、出力電流が増加したときの波形図、(C)は(A)に対して電源装置が制御する電力が減少し、出力電流が減少したときの波形図である。
【
図2】本発明に係る実施形態1の電源装置を示す回路図である。
【
図3】定電流回路の電流値を変化させたときの電源装置の動作を説明する信号波形図である。
【
図4】本発明に係る実施形態2の電源装置を示す回路図である。
【
図5】本発明に係る実施形態3の電源装置を示す回路図である。
【
図6】本発明に係る実施形態4の電源装置を示す回路図である。
【
図7】実施形態4におけるボトム電圧制御の作用を説明する図であり、(A)は一次側からの供給電力の変化、(B)は二次側の電圧変化、(C)はカソード側の出力電圧のボトム電圧の変化、(D)は出力電流の変化をそれぞれ示す。
【
図8】本発明に係る実施形態5の電源装置を示す回路図である。
【
図9】本発明に係る実施形態6の電源装置を示す回路図である。
【
図10】実施形態6の電源装置の制御動作を説明する波形図である。
【
図11】第1比較器の制御動作を説明する信号波形図である。
【
図12】第2比較器の制御動作を説明する信号波形図である。
【
図13】本発明に係る実施形態7の電源装置を示す回路図である。
【
図15】
図14の論理部の動作を説明するタイムチャートである。
【
図17】
図16の論理部の動作を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0036】
(実施形態1)
図2は、本発明の実施形態1に係る電源装置を示す回路図である。実施形態1に係る電源装置1は、交流電源ACの電圧を整流する整流回路2と、整流回路2の出力電圧を受けて直流電圧に変換するDC/DCコンバータ11と、出力電流Ioutの電流経路に設けられ出力電流Ioutを目標電流に制限する定電流回路21と、定電流回路21が制限する電流を制御するボトム電圧制御部31とを備える。電源装置1には、出力端子ta、tb間に負荷として照明用の発光ダイオード61が接続される。
【0037】
上記構成のうち、整流回路2及びDC/DCコンバータ11は、本発明に係る電圧変換回路の一例に相当する。定電流回路21のトランジスタM1は、本発明に係る電流制御部の一例に相当する。ボトム電圧制御部31、並びに、定電流回路21のエラーアンプ22及びコンデンサCrを組み合わせた構成は、本発明に係る電流制御回路の一例に相当する。コンデンサCrは、本発明に係る電圧保持部の一例に相当する。エラーアンプ22は、本発明に係る差動回路の一例に相当する。また、トランジスタM1のドレイン端子(低電位側の出力端子tb)は、本発明に係る第1電位点の一例に相当する。ソース電圧V_MOS_Sは、本発明に係る電流検出電圧の一例に相当する。
【0038】
DC/DCコンバータ11は、例えばフライバック式コンバータであり、整流回路2の出力電圧を直流電圧に変換する。DC/DCコンバータ11は、フライバック形のトランスT0と、電界効果トランジスタなどのスイッチング素子M0と、スイッチング素子M0を駆動する制御回路14と、トランスT0の二次側に接続された整流ダイオードD1と、出力コンデンサCoutとを備える。制御回路14は、トランスT0の二次側に接続された図示しない検出素子から電圧値、電流値又はこれら両方のフィードバックを受けて、これらを所定値に保つようにスイッチング素子M0を制御する。制御回路14によるスイッチング素子M0の制御により、DC/DCコンバータ11は高調波抑制作用を及ぼすように動作する。
【0039】
定電流回路21は、出力電流Ioutの電流経路に設けられ、出力電流Ioutを目標電流に制限する。定電流回路21は、低電位側の出力端子tbから順に直列に接続された電流制御用のトランジスタM1及び電流検出抵抗R1と、電流検出抵抗R1により検出された検出電圧に基づいてトランジスタM1の制御端子(ゲート端子)を制御するエラーアンプ22と、参照電圧を生成するコンデンサCrとを備える。
【0040】
トランジスタM1は、例えばMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)トランジスタであり、出力電流Ioutがソース・ドレイン間に流れるように、出力電流Ioutの電流経路上に設けられている。トランジスタM1は、ゲート電圧が制御されることでソース・ドレイン間のオン抵抗を変化させて、ドレイン電流を制御可能な電流制御素子である。
【0041】
電流検出抵抗R1は、二次側の基準電位(出力コンデンサCoutの低電位側の電位)とトランジスタM1との間に接続される。電流検出抵抗R1は、トランジスタM1との接続点に出力電流Ioutに応じた検出電圧を出力する。言い換えれば、電流検出抵抗R1の両端子間に出力電流Ioutに比例した検出電圧が出力される。
【0042】
コンデンサCrは、参照電圧Vrefを生成し、これをエラーアンプ22の非反転入力端子へ供給する。
【0043】
エラーアンプ22は、電流検出抵抗R1の検出電圧を反転入力端子へ入力し、検出電圧と参照電圧Vrefとの差に応じた電圧をトランジスタM1の制御端子へ出力する。仮に参照電圧Vrefが、目標電流Ia×(抵抗R1の抵抗値)である場合、抵抗R1に流れる電流が目標電流Iaより大きくなると、トランジスタM1のオン抵抗が大きくなるように、トランジスタM1の制御端子に入力されるエラーアンプ22の出力電圧が制御される。これにより、出力電流Ioutが小さくなる。一方、抵抗R1に流れる電流が目標電流Iaより小さくなると、トランジスタM1のオン抵抗が小さくなるように、トランジスタM1の制御端子に入力されるエラーアンプ22の出力電圧が制御される。これにより、出力電流Ioutが大きくなる。このような動作により、出力電流Ioutが目標電流Iaに収束するように制御される。
【0044】
ボトム電圧制御部31は、低電位側の出力端子tbに出力されるリップル電圧のボトム電圧が、均衡電圧VD(
図3を参照)になるように、定電流回路21を制御する。均衡電圧VDとは、出力電流Ioutのリップルが抑制される範囲における上記のボトム電圧のうち最小の電圧を意味する。出力電流Ioutのリップルが抑制される範囲とは、リップルが完全に生じない範囲に限られず、例えばデジタルカメラ等で撮影してもフリッカがとらえられないレベルの少量のリップル電流が含まれる範囲が含まれていてもよい。なお、発光ダイオードに無視できない大きさのリップルが含まれる電流が流れた場合、デジタルカメラで撮影した際に、画像に縞模様が入る現象すなわちフリッカが発生する。ボトム電圧制御部31は、低電位側の出力電圧VLED-を検出電圧として入力し、定電流回路21の参照電圧Vrefの値を昇降制御することで、定電流回路21が制御する電流値を変化させる。
【0045】
ボトム電圧制御部31は、損失検出回路32と、コンパレータ37と、2つの電流源I1、I2と、スイッチSW1とを備える。損失検出回路32は、リップル電圧のボトム電圧を検出するボトム検出部33と、異なるタイミングで検出されたボトム電圧を保持する電圧保持部34、35と、電圧保持部34、35に保持された電圧の差を求める減算器36とを備える。上記の構成のうち、電流源I2が本発明に係る変動付加部の一例に相当する。
【0046】
ボトム検出部33は、ノイズ成分を除いてリップル電圧の極小電圧を検出し、一方の電圧保持部34に保持させる。電圧保持部34は、ボトム検出部33が新たなボトム電圧を検出するたびに、直前に保持していた電圧をもう一方の電圧保持部35にシフトさせる。2つの電圧保持部34は、保持している電圧を減算器36に出力する。減算器36は、電圧保持部34、35の電圧差を算出し、結果をコンパレータ37へ出力する。減算器36は、例えば、検出されたボトム電圧が、時系列に見て、上昇していれば正電圧を出力し、下降していれば負電圧を出力する。なお、ボトム検出部33、電圧保持部34、35及び減算器36は、デジタル値に変換された低電位側の出力電圧VLED-に対して上記処理を行うデジタル回路であってもよいし、アナログに上記処理を行うアナログ回路であってもよい。
【0047】
コンパレータ37は、基準電位と減算器36の出力とを比較し、減算器36から正電圧を入力すればスイッチSW1をオンし、それ以外であればスイッチSW1をオフする。一方の電流源I2は、定電流回路21のコンデンサCrから常に微小電流を引き抜いて、定電流回路21の参照電圧Vrefを徐々に低下させる変動作用を及ぼす。もう一方の電流源I1は、スイッチSW1がオンのときに、定電流回路21のコンデンサCrに微小電流を流し込み、定電流回路21の参照電圧Vrefを上昇させる作用を及ぼす。電流源I2の電流量よりも電流源I1の電流量の方が大きく設定されている。
【0048】
図2の電源装置1において、ボトム電圧制御部31、並びに、定電流回路21のエラーアンプ22及び電流制御用のトランジスタM1は、1チップの半導体集積回路に設けられている。なお、電流制御用のトランジスタM1は、半導体集積回路に含めず、半導体集積回路に外付けされる構成としてもよい。
【0049】
<動作説明>
図2の電源装置1においては、DC/DCコンバータ11において高調波抑制が図られることで、DC/DCコンバータ11により変換された出力電圧VLED+には交流電源ACの周波数に依存したリップル電圧が付加される。一方、電源装置1の出力電流Ioutは定電流回路21により目標電流に制御される。したがって、通常であれば、低電位側の出力電圧VLED-にも同位相及び同じ大きさのリップル電圧が生じ、負荷に流される出力電流Ioutからはリップルが除去される。
【0050】
図3は、ボトム電圧制御部を停止させ、かつ、定電流回路が制御する電流値を変化させたときの電源装置の動作を説明する信号波形図である。
図3において、「VLED-」は低電位側の出力端子tbの出力電圧、「Vref」はエラーアンプ22の参照電圧Vref、”V_MOS_S”はトランジスタM1のソース電圧、”Iout”は出力電流を示す。また、
図3において横軸は時間であり、
図3は定電流回路21の電流が所定の速度で低下したときの波形を示している。
【0051】
先ず、ボトム電圧制御部31の制御を省略し、定電流回路21の参照電圧Vrefを所定の速度で低下させた場合の、電源装置1の各接続点の電圧及び電流について説明する。
【0052】
この場合、
図3の範囲H1に示すように、参照電圧Vrefが電圧VRより高い範囲では、低電位側の出力電圧VLED-に生じるリップルは小さく、かつ、参照電圧Vrefの変化に対する出力電圧VLED-のリップル電圧のボトム電圧の変化の割合は小さくなる。また、範囲H1では、電流制御用のトランジスタM1の動作領域が飽和領域に達する期間Tbが生じるため、トランジスタM1は、リップル電圧の山部の領域で電流を目標電流に制御することができず、出力電流Ioutにリップルが生じている。
【0053】
一方、
図3の範囲H2に示すように、参照電圧Vrefが電圧VRより低い範囲では、参照電圧Vrefの変化に応じて低電位側の出力電圧VLED-に生じるリップルのボトム電圧が比較的に大きな割合で上昇する。このボトム電圧の上昇分は、トランジスタM1で生じる損失分に相当する。また、範囲H2では、電流制御用のトランジスタM1は、全期間、非飽和領域で動作するため電流を目標電流に制御できる。したがって、出力電流Ioutにリップルが生じない。
【0054】
図3に示した特性から、定電流回路21の目標電流のもっとも適した設定は、出力電流Ioutのリップルが生じない範囲H2で、低電位側の出力電圧VLED-に生じるリップルのボトム電圧がもっとも低い均衡電圧VDとなる設定である。ボトム電圧が均衡電圧VDとなる設定では、出力電流Ioutからリップルが除去される範囲でトランジスタM1で生じる損失が最も少なくなる。均衡電圧VDは、目標電流の変化に対するボトム電圧の変化の割合を示す勾配が、比較的に大きな勾配からゼロに近い小さな勾配に変化する境界にある。
【0055】
ボトム電圧制御部31は、
図3の特性を利用して、低電位側の出力電圧VLED-のリップルのボトム電圧を均衡電圧VDに収束させるように、定電流回路21の目標電流を制御する。具体的には、先ず、ボトム電圧制御部31は、電流源I2により定電流回路21の参照電圧Vrefに徐々に電圧が低下する変動を加える。これにより、仮に、参照電圧Vrefの値が、
図3の範囲H2にあるとすると、上記の変動によりボトム電圧に時間的な変化が現れ、減算器36から正出力が得られる。これにより、スイッチSW1がオンされて参照電圧Vrefは上昇し、ボトム電圧は均衡電圧VDに近づく方向に変化する。
【0056】
一方、仮に、参照電圧Vrefの値が、
図3の範囲H1にあるとすると、電流源I2による変動があっても、ボトム電圧に時間的な変化が生じない、あるいは、小さな変化しか生じない。そして、減算器36から正出力が生じない。このため、スイッチSW1がオンされず、参照電圧Vrefは電流源I2の変動により下降し、ボトム電圧は均衡電圧VDに近づく方向に変化する。このような作用により、出力電圧VLED-のリップルのボトム電圧が、均衡電圧VDに収束される。
【0057】
以上のように、実施形態1の電源装置1及びそのリップル抑制方法によれば、高調波を抑制しつつ交流電源ACから直流電圧を生成することで、変換された直流電圧にリップルが生じても、定電流回路21の制御により、負荷に出力される出力電流Ioutのリップルを十分に抑制することができる。これにより、例えば発光ダイオード61の照明光にフリッカが発生してしまうことを抑制できる。
【0058】
また、実施形態1の電源装置1及びそのリップル抑制方法によれば、ボトム電圧制御部31により、低電位側の出力電圧VLED-のボトム電圧が、均衡電圧VDに収束するように制御される。これにより、出力電流Ioutのリップルを抑制しつつ、定電流回路21のトランジスタM1で生じる損失を低減することができる。
【0059】
例えば、比較例として、定電流回路21の目標電流が所定の電流とされる構成において、DC/DCコンバータ11に出力電力が大きくなる方の誤差が生じたとする。この場合、
図1(B)に示すように、定電流回路21のトランジスタM1は電圧降下量が大きくなるように制御されて、定電流回路21の目標電流が維持される。この場合、トランジスタM1では電圧降下Vb分の損失が生じる。しかし、このような誤差が生じた場合でも、実施形態1の電源装置1によれば、ボトム電圧制御部31が、定電流回路21の目標電流を大きくして、出力電圧VLED-のボトム電圧を均衡電圧VDに収束させる。これにより、定電流回路21では、出力電流Ioutが大きくなるようにトランジスタM1のオン抵抗が低く制御され、定電流回路21で生じる損失が低減される。発光ダイオード61の順方向電圧Vfは電流値に応じて僅かに変化するため、出力電流Ioutの増加に伴い、発光ダイオード61で降下する電圧が増大する。このため、トランジスタM1のオン抵抗が低下されることで、
図1(A)に示すような、定電流回路21で生じる損失が少ない動作が実現される。
【0060】
また、比較例として、定電流回路21の目標電流が一定とされる構成において、DC/DCコンバータ11に出力電力が小さくなる方の誤差が生じたとする。この場合、
図1(C)に示すように、一定の目標電流に合わせた制御が行われると、定電流回路21のトランジスタM1が飽和領域で動作する期間Tbが発生し、出力電流Ioutにリップルが生じる。しかし、このような場合でも、実施形態1の電源装置1によれば、ボトム電圧制御部31が、定電流回路21の目標電流を小さくして、出力端子tbの電圧”VLED-”のリップルのボトム電圧を均衡電圧VDに収束させる。これにより、出力電流Ioutが小さくなるように、定電流回路21のトランジスタM1のオン抵抗が高く制御されて、トランジスタM1が飽和領域で動作する期間Tbが削減される。これにより、出力電流Ioutのリップルが完全に除去されるか、デジタルカメラ等で撮影してもフリッカがとらえられないレベルに抑制される。この場合でも、DC/DCコンバータ11の出力電力が、負荷を駆動できないレベルまで低下しなければ、出力電流Ioutのリップルが抑制された状態で、発光ダイオード61を正常に駆動することができる。
【0061】
(実施形態2)
図4は、本発明に係る実施形態2の電源装置を示す回路図である。
【0062】
実施形態2の電源装置1Aは、ボトム電圧制御部131の構成が主に異なり、その他の構成要素は実施形態1と同様である。以下、異なる構成要素のみ詳細に説明する。
【0063】
実施形態2のボトム電圧制御部131は、定電流回路21のトランジスタM1と電流検出抵抗R1との間の接続点の電圧、すなわちトランジスタM1のソース電圧V_MOS_Sを検出電圧として入力する。そして、ボトム電圧制御部131は、検出電圧に基づいて、定電流回路21の参照電圧Vrefの値を昇降し、定電流回路21が流す電流値を変化させて、低電位側の出力電圧VLED-のボトム電圧が、均衡電圧VDになるように制御する。
【0064】
ボトム電圧制御部131は、リップル検出回路132と、コンパレータ137と、2つの電流源I3、I4と、スイッチSW2とを備える。上記の構成のうち、電流源I3が本発明に係る変動付加部の一例に相当する。
【0065】
リップル検出回路132は、出力電流Ioutを電圧変換したソース電圧V_MOS_Sを入力し、出力電流Ioutのリップルの有無を検出する。具体的には、リップル検出回路132は、ソース電圧V_MOS_Sのピーク電圧を検出するピーク検出部133と、ソース電圧V_MOS_Sのボトム電圧を検出するボトム検出部134と、ピーク検出部133とボトム検出部134の検出値を減算する減算器135とを有する。ピーク検出部133及びボトム検出部134は、交流電源ACの周波数に対応する周期ごとに、ソース電圧V_MOS_Sのピーク電圧とボトム電圧とを検出する。ピーク検出部133及びボトム検出部134は、ノイズ成分を除いてソース電圧V_MOS_Sのピーク電圧とボトム電圧とを検出する。減算器135は、ピーク検出部133の検出値からボトム検出部134の検出値を減算して、結果をコンパレータ137に出力する。つまり、出力電流Ioutに所定以上の大きさのリップルが含まれる場合には、減算器135がピーク電圧とボトム電圧との差を正の値として算出し、正電圧を出力する。一方、出力電流Ioutに所定以上の大きさのリップルが含まれていない場合には、ピーク電圧とボトム電圧との差がゼロとなるため、減算器135から正電圧が出力されない。なお、ピーク検出部133、ボトム検出部134及び減算器135は、デジタル値に変換されたソース電圧V_MOS_Sに対して上記処理を行うデジタル回路であってもよい。
【0066】
コンパレータ137は、基準電位と減算器135の出力とを比較し、減算器135から正電圧を入力すればスイッチSW2をオンし、それ以外であればスイッチSW2をオフする。一方の電流源I3は、定電流回路21のコンデンサCrに常に微小電流を流し込み、定電流回路21の参照電圧Vrefを徐々に上昇させる変動作用を及ぼす。もう一方の電流源I4は、スイッチSW2がオンのときに、定電流回路21のコンデンサCrから微小電流を引きぬいて、定電流回路21の参照電圧Vrefを下降させる作用を及ぼす。電流源I3の電流値よりも電流源I4の電流値の方が大きく設定されている。
【0067】
図4の電源装置1Aにおいて、ボトム電圧制御部131、並びに、定電流回路21のエラーアンプ22及び電流制御用のトランジスタM1は、1チップの半導体集積回路に設けられている。なお、電流制御用のトランジスタM1は、半導体集積回路に含めず、半導体集積回路に外付けされる構成としてもよい。
【0068】
<動作説明>
実施形態2の電源装置1Aにおいても、実施形態1と同様に、DC/DCコンバータ11により変換された直流電圧にリップル電圧が付加され、定電流回路21によって目標電流の電流値に制御された出力電流Ioutが発光ダイオード61に出力される。
【0069】
さらに、実施形態2の電源装置1Aにおいても、仮に、ボトム電圧制御部131の作用を停止し、定電流回路21の参照電圧Vrefを一律に変動させると、
図3のように各部の電圧及び電流が変化する。すなわち、参照電圧Vrefが均衡電圧VDに対応する値よりも高い範囲H1では、出力電流Ioutにリップルが生じ、参照電圧Vrefが均衡電圧VDに対応する値よりも低い範囲H2では、定電流回路21のトランジスタM1で生じる損失が増加する。実施形態2に係るボトム電圧制御部131は、
図3に示した特性を利用して、出力電圧VLED-のボトム電圧が均衡電圧VDに収束されるように、定電流回路21の参照電圧Vrefを変化させる。
【0070】
先ず、ボトム電圧制御部131は、一方の電流源I3により定電流回路21の参照電圧Vrefに徐々に電圧が上昇する変動を加える。仮に、参照電圧Vrefが、
図3の範囲H2にあると、出力電流Ioutにリップルが生じていないので、リップル検出回路132のピーク検出部133の検出値とボトム検出部134の検出値とは等しくなり、減算器135からは正の出力が行われない。この場合、コンパレータ137からスイッチSW2を閉じる信号が出力されず、スイッチSW2は開のままとなる。このため、電流源I3の作用により参照電圧Vrefは増加し、ボトム電圧は均衡電圧VDに近づくように作用する。
【0071】
一方、仮に、参照電圧Vrefが、
図3の範囲H1にあると、出力電流Ioutにリップルが生じて、リップル検出回路132のピーク検出部133の検出値がボトム検出部134の検出値より大きくなって、減算器135から正の出力が行われる。この場合、コンパレータ137からスイッチSW2を閉じる信号が出力されて、スイッチSW2が閉となる。このため、電流源I4がコンデンサCrから電流を引き抜き、参照電圧Vrefは低下し、ボトム電圧は均衡電圧VDに近づくように作用する。このような作用により、低電位側の出力電圧VLED-のリップルのボトム電圧が、均衡電圧VDに収束される。
【0072】
以上のように、実施形態2の電源装置1Aによれば、高調波を抑制しつつ交流電源ACから直流電圧を生成することで、変換された直流電圧にリップルが生じても、定電流回路21の制御により、負荷に出力される出力電流Ioutのリップルを十分に抑制することができる。これにより、例えば発光ダイオード61の照明光にフリッカが発生してしまうことを抑制できる。
【0073】
さらに、実施形態2の電源装置1Aによれば、ボトム電圧制御部131により、低電位側の出力電圧VLED-のボトム電圧が、均衡電圧VDに収束するように制御される。これにより、前述の実施形態1で説明したのと同様の作用によって、出力電流Ioutのリップルを抑制しつつ、定電流回路21のトランジスタM1で生じる損失を低減することができる。
【0074】
(実施形態3)
図5は、本発明に係る実施形態3の電源装置を示す回路図である。
【0075】
実施形態3の電源装置1Bは、ボトム電圧制御部231の構成が、実施形態1又は実施形態2と異なり、その他の構成要素は、実施形態1又は実施形態2と同様である。以下、異なる構成要素のみ詳細に説明する。
【0076】
実施形態3の定電流回路21は、参照電圧Vrefを供給する素子として、一端が基準電位に接続されたコンデンサCrbを備える。
【0077】
実施形態3のボトム電圧制御部231は、損失検出回路232、リップル検出回路233、誤差演算器234、電流アンプ235及び電圧源236を備える。
【0078】
損失検出回路232は、実施形態1の損失検出回路32と同様であり、出力電圧VLED-のボトム電圧の変化量に応じた電圧を出力する。
【0079】
リップル検出回路233は、実施形態2のリップル検出回路132と同様であり、出力電流Ioutのリップルの大きさに応じた電圧を出力する。
【0080】
誤差演算器234は、損失検出回路32の出力値からリップル検出回路233の出力値を減算し、その結果に応じた電圧を電流アンプ235の非反転入力端子へ出力する。
【0081】
電流アンプ235は、反転入力端子に電圧源236から所定の正電圧が入力され、非反転入力端子に誤差演算器234から演算結果に応じた電圧が入力され、これらの差に応じた電流をコンデンサCrbに出力する。反転入力端子に入力される正電圧は低い電圧に設定され、誤差演算器234の出力がゼロであるとき、電流アンプ235から微小な負電流が出力され、コンデンサCrbから微小な電流から電流アンプ235へ引き込まれる。そして、定電流回路21の参照電圧Vrefに下降方向の変動が付与される。
【0082】
図5の電源装置1Bにおいて、ボトム電圧制御部231、並びに、定電流回路21のエラーアンプ22及び電流制御用のトランジスタM1は、1チップの半導体集積回路に設けられている。なお、電流制御用のトランジスタM1は、半導体集積回路に含めず、半導体集積回路に外付けされる構成としてもよい。
【0083】
<動作説明>
実施形態3の電源装置1Bにおいても、実施形態2と同様に、DC/DCコンバータ11により変換された直流電圧にリップルが付加される一方、定電流回路21によって目標電流の電流値に制御された出力電流Ioutが発光ダイオード61に出力される。
【0084】
さらに、実施形態3の電源装置1Bにおいても、仮に、ボトム電圧制御部131の作用を停止し、定電流回路21の参照電圧Vrefを一律に変動させると、
図3のように各部の電圧及び電流が変化する。すなわち、参照電圧Vrefが電圧VRよりも高い範囲H1では、出力電流Ioutにリップルが生じ、参照電圧Vrefが電圧VRよりも低い範囲H2では、定電流回路21のトランジスタM1で生じる損失が増加する。実施形態3に係るボトム電圧制御部231は、
図3に示した特性を利用して、出力電圧VLED-のボトム電圧が均衡電圧VDに収束されるように、定電流回路21の参照電圧Vrefを変化させる。
【0085】
先ず、ボトム電圧制御部231は、参照電圧Vrefが
図3の範囲H1にあるとき、リップル検出回路233の出力が正値となり、損失検出回路232の出力が略ゼロとなることで、誤差演算器234から負の出力が行われる。これにより、電流アンプ235から負電流が出力され、コンデンサCrbから電流が引き抜かれて、参照電圧Vrefが低下する。したがって、低電位側の出力電圧VLED-のボトム電圧が均衡電圧VDに近づくように作用する。
【0086】
一方、参照電圧Vrefが
図3の範囲H1から範囲H2へ移ると、リップル検出回路233の出力は略ゼロとなり、損失検出回路232の出力は正値となることで、誤差演算器234から正の出力が行われる。これにより、電流アンプ235から正電流が出力され、コンデンサCrbに電流が流し込まれて、参照電圧Vrefが上昇する。したがって、低電位側の出力電圧VLED-のボトム電圧が均衡電圧VDに近づくように作用する。このような作用により、出力電圧VLED-のボトム電圧は、均衡電圧VD収束される。
【0087】
また、参照電圧Vrefが
図3の範囲H2の任意の値で安定しそうになった場合でも、電流アンプ235の反転入力端子に入力されている正電圧により、コンデンサCrbの電圧(参照電圧Vref)に変動が与えられる。これにより、参照電圧Vrefが範囲H2の任意の値で長く安定することはなく、上述したように低電位側の出力電圧VLED-のボトム電圧を均衡電圧VDに収束する作用が得られる。
【0088】
以上のように、実施形態3の電源装置1Bによれば、高調波を抑制しつつ交流電源ACから直流電圧を生成することで、変換された直流電圧にリップルが生じても、定電流回路21の制御により、負荷に出力される出力電流Ioutのリップルを十分に抑制することができる。これにより、例えば発光ダイオード61の照明光にフリッカか発生してしまうことを抑制できる。
【0089】
さらに、実施形態3の電源装置1Bによれば、ボトム電圧制御部231により、低電位側の出力電圧VLED-のボトム電圧が、均衡電圧VDに収束するように制御される。これにより、前述の実施形態1で説明したのと同様の作用によって、出力電流Ioutのリップルを抑制しつつ、定電流回路21のトランジスタM1で生じる損失を低減することができる。
【0090】
(実施形態4)
図6は、本発明に係る実施形態4の電源装置を示す回路図である。
【0091】
実施形態4の電源装置1Cは、ボトム電圧制御部331の構成が、実施形態3と異なり、他の構成要素は実施形態3と同様である。以下、異なる構成要素のみ詳細に説明する。
【0092】
実施形態4のボトム電圧制御部331は、予め固定値として設定された均衡電圧VDに収束するように、低電位側の出力電圧VLED-のボトム電圧を制御するように構成されている。均衡電圧VDは、電源装置1Cに接続される負荷の大きさ及び動作環境等を考慮して予め計算され、ボトム電圧制御部331に設定される。ボトム電圧制御部331は、低電位側の出力電圧VLED-のボトム電圧を検出及び保持するボトム電圧検出部332と、基準電圧VDrefを生成する基準回路333と、定電流回路21のコンデンサCrbに電流を挿抜する電流アンプ334とを備える。基準電圧VDrefは、上記計算された均衡電圧VDと等しくなるように設定されている。
【0093】
図6の電源装置1Cにおいて、ボトム電圧制御部331、並びに、定電流回路21のエラーアンプ22及び電流制御用のトランジスタM1は、1チップの半導体集積回路に設けられている。なお、電流制御用のトランジスタM1は、半導体集積回路に含めず、半導体集積回路に外付けされる構成としてもよい。
【0094】
<動作説明>
ボトム電圧制御部331では、ボトム電圧検出部332が出力電圧VLED-のボトム電圧を一周期のリップル波形ごとに検出及び保持する。リップル波形の周期は、例えば交流電源ACの周波数に依存する。電流アンプ334は、保持されたボトム電圧と基準電圧VDrefとの電圧差に応じた電流をコンデンサCrbに出力する。これにより、コンデンサCrbから電流が挿抜されて定電流回路21の参照電圧Vrefが昇降し、出力電流Ioutが増減することで、出力電圧VLED-のボトム電圧が均衡電圧VDに収束する。
【0095】
図7は、実施形態4におけるボトム電圧制御の作用を説明する図であり、(A)は一次側からの供給電力の変化、(B)は二次側の電圧変化、(C)は低電位側の出力電圧のボトム電圧の変化、(D)は出力電流の変化をそれぞれ示す。
【0096】
実施形態4の電源装置1Cによれば、回路の変動誤差として、例えば
図7(A)に示すように、トランスT0の一次側から供給される電力が標準値「TYP」から増加又は減少する方に誤差が生じたとする。この場合、
図7(B)に示すように、トランスT0の二次側に送られる直流電圧の電圧値が同様に増加又は減少する。
【0097】
ここで、ボトム電圧制御部331の制御がなければ、
図7(C)の特性線Aに示すように、高電位側の出力電圧VLED+の変化に合わせて、低電位側の出力電圧VLED-のボトム電圧も増加又は減少する。この場合、出力電流Ioutは定電流制御による所定の電流とされているので、低電位側の出力電圧VLED-が増減することで、
図1(B)、
図1(C)に示したように、トランジスタM1で生じる損失が増えたり(電力が増加した場合)、トランジスタM1でリップルを吸収しきれずに出力電流Ioutにリップルが生じたり(電力が減少した場合)する。
【0098】
しかし、実施形態4の電源装置1Cによれば、ボトム電圧制御部331の制御により、
図7(C)の特性線Bに示すように、低電位側の出力電圧VLED-のボトム電圧が均衡電圧VDに維持される。これにより、
図7(D)に示すように、定電流回路21が制御する電流が増減されて、出力電流Ioutが供給電力の変化に合わせて増加又は減少する。これにより、供給電力の変化に合わせて、負荷である発光ダイオード61に流れる電流が増減する。さらに、定電流回路21が制御する電流が適正化されて、供給電力が増加した場合には、トランジスタM1のオン抵抗が減少されてトランジスタM1で生じる損失が低減され、供給電力が減少した場合には、トランジスタM1のオン抵抗が増加されて出力電流Ioutのリップルが抑制される作用を得ることができる。
【0099】
同様に、DC/DCコンバータ11の出力コンデンサCoutの容量値が経年劣化等により低下し、変換された直流電圧のリップルが大きくなるような変動が生じたとする。このような場合、ボトム電圧制御部331の制御がなく、出力電流Ioutを所定の電流に制御するままだと、出力電流Ioutにリップルが生じる場合がある。しかし、ボトム電圧制御部331がボトム電圧を維持する制御を行うことで、トランジスタM1のオン抵抗が増加されて出力電流Ioutが低減されることで、出力電流Ioutに生じるリップルを抑制することができる。
【0100】
以上のように、実施形態4の電源装置1Cによれば、高調波を抑制しつつ交流電源ACから直流電圧を生成することで、変換された直流電圧にリップルが生じても、定電流回路21の制御により、負荷に出力される出力電流Ioutのリップルを十分に抑制することができる。さらに、ボトム電圧制御部331により、低電位側の出力電圧VLED-のボトム電圧が、均衡電圧VDに維持されるので、出力電流Ioutのリップルを抑制しつつ、定電流回路21のトランジスタM1で生じる損失を低減することができる。
【0101】
(実施形態5)
図8は、本発明に係る実施形態5の電源装置を示す回路図である。
【0102】
実施形態5に係る電源装置1Dは、主に、実施形態2の電源装置1Aに最低電位クランプ回路25を加えた構成である。
【0103】
なお、前述の実施形態2の電源装置1Aでは、2つの電流源I3、I4とスイッチSW2を用いてコンデンサCrの電流を挿抜して参照電圧Vrefを変化させるように構成されている。これに対して、
図8の電源装置1Dでは、電流アンプ137Dの正電流又は負電流の出力によりコンデンサCrbから電流を挿抜して参照電圧Vrefを変化させるように構成されている。これらの構成は異なるが、リップル検出回路132の検出結果に基づく参照電圧Vrefへの作用は同様のものである。
【0104】
最低電位クランプ回路25は、ボトム電圧制御部131によって定電流回路21の参照電圧Vrefが低下するように制御された場合でも、参照電圧Vrefが所定の最低値より低くならないようにクランプする回路である。最低電位クランプ回路25は、ボトム電圧制御部131とともに1つの半導体集積回路に設けられていてもよい。
【0105】
例えばDC/DCコンバータ11の出力コンデンサCoutが経年劣化等により容量値が低下するような場合、変換された直流電圧のリップルが大きくなる。そして、実施形態1~実施形態3の電源装置1~1Bでは、出力電流Ioutのリップルを除去するために、ボトム電圧制御部31、131、231か際限なく定電流回路21の参照電圧Vrefを小さい値に変化させてしまう。すると、トランジスタM1が消費する電力が大きくなって、発熱量が上がってしまう。
【0106】
実施形態5の電源装置1Dは、ボトム電圧制御部131により参照電圧Vrefを低下させる制御がなされても、最低電位クランプ回路25が、所定の電位以下にしないようにクランプする。これにより、例えばトランジスタM1又はその周囲の耐熱温度が低い場合でも、トランジスタM1の発熱量を所定の範囲に抑えて、耐熱温度を超えないようにすることができる。なお、最低電位クランプ回路25は、実施形態1~3の電源装置1~1Bに追加して、同様の効果を奏することができる。
【0107】
(実施形態6)
図9は、本発明に係る実施形態6の電源装置を示す回路図である。実施形態6に係る電源装置1Eは、整流回路2、DC/DCコンバータ11、電流制御部であるトランジスタM1、電流検出抵抗R1、及び電流制御回路50を備える。電源装置1Eには、出力端子ta、tb間に負荷として照明用の発光ダイオード61が接続される。実施形態1と同一の構成要素は、実施形態1と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0108】
電流制御回路50は、参照電圧Vrefとソース電圧V_MOS_S(電流検出電圧)との差が小さくなるようにトランジスタM1を駆動して、出力電流Ioutを制御する。さらに、電流制御回路50は、DC/DCコンバータ11のリップル電圧が含まれる出力電圧VLED-と、出力電流の大きさを示すソース電圧(電流検出電圧)V_MOS_Sとに基づいて、出力電流Ioutのリップルが抑制されつつ、トランジスタM1における損失が低減されるように、参照電圧Vrefを制御する。
【0109】
具体的には、電流制御回路50は、参照電圧Vrefを保持するコンデンサCrと、参照電圧Vrefとソース電圧V_MOS_S(電流検出電圧)との差が小さくなるようにトランジスタM1に駆動信号を出力するエラーアンプ22とを有する。さらに、電流制御回路50は、コンデンサCrに保持される参照電圧Vrefを引上げ可能な第1の電流源I11及びスイッチSW1(第1引上げ回路に相当)と、コンデンサCrに保持される参照電圧Vrefを引下げ可能な第2の電流源I12及びスイッチSW2E(引下げ回路に相当)とを備える。さらに、電流制御回路50は、基準電圧V0の生成回路E51と、バッファ54及び分圧抵抗R51、R52を有する分圧回路53と、第1比較器51と、第2比較器52とを有する。
【0110】
第1比較器51は、分圧回路53が生成した分圧電圧V53と、ソース電圧V_MOS_Sとを比較し、分圧電圧V53よりもソース電圧V_MOS_Sが低いときにスイッチSW2をオンにして参照電圧Vrefを引き下げる。第2比較器52は、基準電圧V0と出力電圧VLED-とを比較し、基準電圧V0よりも出力電圧VLED-が高いときに、スイッチSW1をオンにして参照電圧Vrefを引上げる。
【0111】
分圧回路53は、参照電圧Vrefを所定の分圧比で分圧した分圧電圧V53を生成する。分圧比は、1-(出力電流Ioutの上端値に対する許容されるリップル電流の割合)に設定されている。例えば負荷が照明の場合、照明装置の仕様として10%のリップルを許容する場合、分圧比は90%となる。したがって、出力電流Ioutに含まれるリップル電流が許容される割合を超えた場合に、第1比較器51がスイッチSW2Eをオンするように動作する。
【0112】
基準電圧V0は、出力電流Ioutのリップルがゼロとなるときの出力電圧VLED-よりも高い電圧値に予め設定されている。一方で、基準電圧V0は、或る電圧値よりも小さい値に設定されている。例えば、調光機能によりDC/DCコンバータ11の出力電力が切り替え可能に構成される場合、出力電力が大きく切り替えられた直後には、出力電圧VLED-が上昇する。この場合、基準電圧V0は、この上昇した電圧値よりも小さい値に設定される。このような設定により、例えば調光機能により出力電力が切り替えられたようなときに、第2比較器52がスイッチSW1をオンするように動作する。
【0113】
電流源I11の電圧の引上げ能力は、電流源I12の電圧の引下げ能力よりも高い(例えば2倍以上高い)。すなわち、単位時間当たりの、電流源I11の電流の流し込み量と、電流源I12の電流の引き抜き量とは、前者の方が大きい。これにより、スイッチSW1がオンされたときの参照電圧Vrefの上昇量は大きく、スイッチSW2がオンされたときの参照電圧Vrefの下降量は小さくされる。
【0114】
図9の電源装置1Eにおいて、電流制御回路50、トランジスタM1及び電流検出抵抗R1は、1チップの半導体集積回路に設けられている。なお、電流制御用のトランジスタM1、電流検出抵抗R1、分圧抵抗R51、R52のいずれか又は全部は、半導体集積回路に含めず、半導体集積回路に外付けされる構成としてもよい。
【0115】
<動作説明>
図10は、実施形態6の電源装置の制御動作を説明する波形図である。
図11は、第1比較器の制御動作を説明する信号波形図である。
図12は、第2比較器の制御動作を説明する信号波形図である。
【0116】
実施形態1~4の電源装置1~1Cでは、出力電圧VLED-のボトム電圧の変化を頼りに、
図3の範囲H1と範囲H2との境界に電源装置1~1Dの状態が収束するようにトランジスタM1が制御されていた。一方、実施形態6の電源装置1Eでは、出力電流Ioutの大きさを示すソース電圧V_MOS_Sに、抑制された範囲でリップルが僅かに残っているとき(例えば10%のリップルが残っているとき)に、トランジスタM1の制御を固定させる。これにより、電源装置1Eの状態が、
図3の範囲H1と範囲H2との境界周辺に収束されるように制御される。すなわち、出力電流Ioutのリップルが例えば10%に抑制された範囲で、出力電圧VLED-のボトム電圧が最小の電圧である均衡電圧VDに収束される。
【0117】
電源装置1Eの起動、あるいは調光機能によりDC/DCコンバータ11の出力電力が大きい値に切り替えられたとする。すると、DC/DCコンバータ11の出力能力が、トランジスタM1が流せる電流量(参照電圧Vref)に対して、大きくなることで、出力電圧VLED-が上昇する(期間T51、
図10、
図12)。第2比較器52では、出力電圧VLED-と基準電圧V0とを比較しており、
図12に示すように、期間T51では出力電圧VLED-が基準電圧V0を上回るので、第2比較器52の出力がハイレベルとなる。これにより、第1の電流源I11が参照電圧Vrefを引上げる。この引上げにより、電源装置1Eの状態は、
図3の範囲H2の状態から範囲H1の状態(出力電流Ioutにリップルが生じる状態)に遷移する。第1の電流源I11の能力は高いので、参照電圧Vrefの引上げは速やかに達成される。
【0118】
DC/DCコンバータ11の出力に応じて参照電圧Vrefが大きくなり、トランジスタM1が流せる電流量が、DC/DCコンバータ11の出力能力に対して大きくなると、出力電流Iout及びソース電圧V_MOS_Sにリップルが生じる(期間T52)。
図11に示すように、第1比較器51では、ソース電圧V_MOS_Sと分圧電圧V53とを比較している。分圧電圧V53は、参照電圧Vrefの例えば90%などに設定されており、リップルがソース電圧V_MOS_Sの上端電圧に対して例えば10%以上になると、第1比較器51の出力がハイレベルになる。つまり、第1比較器51は、10%以上のリップルがあることを検出する。この検出により、第2の電流源I12が参照電圧Vrefを徐々に低下させる。
【0119】
参照電圧Vrefが低下すると、トランジスタM1が流せる電流量が、DC/DCコンバータ11の出力能力に釣り合っていき、ソース電圧V_MOS_Sのリップルが小さくなる。すなわち、電源装置1Eの状態が、
図3の範囲H1の左側から範囲H2との境界へ近づいていく。そして、リップルの大きさが10%を下回ると、ソース電圧V_MOS_Sが分圧電圧V53を下回らなくなることから、第1比較器51の出力はローレベルを維持する(期間T53、
図11)。このとき、電源装置1Eの状態は、
図3の範囲H1と範囲H2との境界周辺、出力電流Ioutに抑制された範囲のリップル(僅かなリップル)が含まれた状態となる。
【0120】
そして、この状態において、第1比較器51の出力と第2比較器52の出力とは両方ともローレベルとなり、参照電圧Vrefは固定され、電源装置1Eの状態が維持される。すなわち、出力電流Ioutのリップルが抑制され、かつ、トランジスタM1の損失が最小の状態が維持される。
【0121】
以上のように、実施形態6の電源装置1Eによれば、第2比較器52と、第2比較器52の比較結果に応じて参照電圧Vrefを引き上げる第1の電流源I11及びスイッチSW1を有する。これにより、電源装置1Eの起動時又は調光機能により出力能力が上げられた際に、参照電圧Vrefを上昇させて、電源装置1Eの状態を、出力電流Ioutにリップルが生じる範囲H1(
図3)の状態まで遷移させることができる。さらに、実施形態6の電源装置1Eによれば、参照電圧Vrefの分圧電圧V53とソース電圧V_MOS_Sとを比較する第1比較器51と、第1比較器51の比較結果に応じて参照電圧Vrefを引き下げる第2の電流源I12及びスイッチSW2Eを有する。これにより、出力電流Ioutのリップルが大きくなった場合に、このリップルを抑制された範囲まで収束させることができる。また、第1比較器51は、リップルが少し残っているときに、参照電圧Vrefの引下げを終了するので、リップルがゼロとなりトランジスタM1の損失が大きくなる範囲H2(
図3)まで、電源装置1Eの状態を遷移させない。このような制御動作により、出力電流Ioutのリップルが抑制され、かつ、トランジスタM1の損失を最小にできる。
【0122】
さらに、実施形態6の電源装置1Eによれば、第1の電流源I11の能力が、第2の電流源I12の能力より高く設定されている。これにより、電源装置1Eの起動時又は調光機能により出力能力が上げられた際に、参照電圧Vrefを速やかに上昇させることができる。また、出力電流Ioutのリップルを抑制された範囲に収束させる際に、参照電圧Vrefを徐々に低下させることができ、参照電圧Vrefを適切な値に調整することができる。
【0123】
(実施形態7)
図13は、本発明に係る実施形態7の電源装置を示す回路図である。実施形態7の電源装置1Fは、実施形態6の構成要素に加えて、第2の分圧電圧V59を生成する要素(分圧抵抗R51a、R51b)と、第3比較器57と、論理部58と、第3の電流源I13及びスイッチSW3(第2引上げ回路に相当)とが追加されている。実施形態6と同様の構成要素については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0124】
第3の電流源I13及びスイッチSW3は、コンデンサCrに電流を流し込んで、コンデンサCrに保持される参照電圧Vrefを引上げ可能である。第3の電流源I13の電圧の引上げ能力は、電流源I12の電圧の引下げ能力よりも低い(例えば2倍以上低い)。すなわち、単位時間当たりの、電流源I12の電流の引き抜き量と、電流源I13の電流の流し込み量とは、前者の方が大きい。これにより、スイッチSW3がオンされたときの参照電圧Vrefの上昇量を、スイッチSW2Eがオンされたときの参照電圧Vrefの下降量よりも小さくできる。
【0125】
第2の分圧回路59は、参照電圧Vrefを所定の分圧比で分圧した分圧電圧V59を生成する。第2の分圧電圧V59の分圧比は、第1の分圧電圧V53の分圧比よりも大きく設定されている。例えば、第1の分圧電圧V53の分圧比が90%、第2の分圧電圧V59の分圧比が95%に設定されている。
【0126】
第3比較器57は、分圧電圧V59とソース電圧V_MOS_Sとを比較し、分圧電圧V59よりもソース電圧V_MOS_Sが下回ったときにハイレベルの信号を出力する。
【0127】
図14は、論理部の構成の一例を示す回路図である。
図15は、論理部の動作を説明するタイムチャートである。
【0128】
論理部58は、第1比較器51の出力と第3比較器57の出力とに基づき、第1比較器51の出力が無いまま、リップル周期より大きな所定時間を経過した場合に、絞り過ぎ検出信号を出力してスイッチSW3を所定時間オンさせる。具体的には、
図15に示すように、論理部58は、第3比較器57の立ち上りからタイマー587の計数を開始し、第1比較器51の立下りがあれば、タイマー587の計数をリセットする。あるいは、タイマー587が所定時間T60を計数したら、タイマー587の計数がリセットされる。そして、タイマー587の計数値がリップル周期より大きな所定時間T60を超えたら、絞り過ぎ検出信号を出力して、スイッチSW3を所定のパルス期間にオンさせる。所定時間T60は、例えばリップルの周期が100Hz又は120Hzであれば、12ms程度の値に設定されてもよい。絞り過ぎとは、出力電流Ioutのリップルの割合(大きさ)が目標の収束値(例えば10%)よりも小さい状態を意味する。
【0129】
論理部58は、一例として、
図14に示すように、第3比較器57の出力の立上りを検出する立上り検出器581と、第1比較器51の出力の立下りを検出する反転器582及び立上り検出器583とを有する。さらに、論理部58は、OR回路584を介して立上り検出器581の出力をセット端子に入力するフリップフロップ586と、フリップフロップ586の出力がハイレベルの期間に計数動作し、所定時間T60を計数するタイマー587とを有する。さらに、論理部58は、タイマー587が所定時間T60を計数したときに所定幅のパルスを出力するワンショット回路588と、遅延器589とを有する。遅延器589は、絞り過ぎ検出信号の出力時に、フリップフロップ586にリセット信号が出力され、リセット後に再びフリップフロップ586にセット信号が出力されるように遅延を及ぼす。立上り検出器583の出力はOR回路585を介してフリップフロップ586のリセット端子に入力され、遅延器589の出力は2つのOR回路584、585に送られる。遅延器589は、タイマー587の動作が不安定にならない程度の遅延(例えば100ns)を及ぼせばよい。このような回路例により、上述した論理部58の動作を実現できる。
【0130】
以上のように、実施形態7の電源装置1Fによれば、実施形態1と同様の動作によって、出力電流Ioutに抑制された範囲のリップル(僅かなリップル)が生じる均衡状態とされる。さらに、実施形態7の電源装置1Fによれば、均衡状態となった後、論理部58による参照電圧Vrefの絞り込み抑制の制御が行われる。出力電流Ioutに僅かなリップルが含まれる均衡状態となった後、何らかの変動要素があると、出力電流Ioutのリップルがより小さくなって、トランジスタM1で損失が大きくなる状態へ遷移する恐れが生じる。しかし、論理部58の制御によって、ソース電圧V_MOS_Sのボトム電圧が第2の分圧電圧V59と第1の分圧電圧V53との間にある時間が長くなると、参照電圧Vrefを上げて出力電流Ioutのリップルを僅かに大きくする。これにより、出力電流Ioutのリップルの大きさは、第1の分圧電圧V53によって設定される割合(例えば10%)から外れていくことが抑制される。このような制御により、出力電流Ioutのリップルが抑制され、かつ、トランジスタM1の損失が最小となる状態を、より安定的に維持することができる。
【0131】
なお、実施形態7の電源装置1Fでは、第2の分圧電圧V59を生成し、これとソース電圧V_MOS_Sとの比較結果を利用して、第1比較器51の出力が無い期間を計数していた。しかし、第2の分圧電圧V59及び第3比較器57は設けずに、第1比較器51の前回のハイレベルの出力から、第1比較器51のハイレベルの出力が無い期間を計数し、この期間に基づき、絞り過ぎの検出を同様に行ってもよい。また、実施形態7の論理部58は、タイマー587を用いて期間を計数する構成を採用したが、タイマー587を用いずに、出力電圧VLED-に含まれるリップルの周期を用いて期間の判別を行うようにしてもよい。これらの構成を採用した具体的な一例が、
図16の変形例である。実施形態7の論理部58は、
図16の論理部58Gに変更してもよい。
図16の変形例を採用する場合、第2の分圧電圧V59を生成する構成と、第3比較器57は不要となる。
【0132】
(変形例)
図16は、論理部の変形例を示す回路図である。
図17は、
図16の論理部の動作を説明するタイムチャートである。
【0133】
変形例の論理部58Gは、期間の判定基準を設けるために、出力電圧VLED-と2つの基準電圧V1、V2とを比較する2つのコンパレータ591、592及び2つのワンショット回路593、594を有する。基準電圧V1、V2は、出力電圧VLED-に生じるリップル電圧のボトム電圧と上端電圧との間の大きさになるように生成回路E61、E62により生成される。これらによって、略リップル周期の2つのトリガ信号Trg1、Trg2を生成することができる。
【0134】
さらに、論理部58Gは、第1比較器51の出力の立上りを検出してトリガ信号Trg3を出力するワンショット回路595と、トリガ信号Trg3をセット端子に入力し、トリガ信号Trg1をリセット端子に入力するフリップフロップ596とを有する。これにより、第1比較器51のハイレベルの出力がある場合に、トリガ信号Trg2と重なるリップル検出信号DR’を、フリップフロップ596から出力することができる。
【0135】
さらに、論理部58Gは、リップル検出信号DR’をD端子に受け、トリガ信号Trg2をクロック端子に受けるDフリップフロップ597を有する。これにより、トリガ信号Trg2をクロック信号として、一回のリップル周期中に、第1比較器51のハイレベル出力が有るか否かの検出結果を、Dフリップフロップ597で維持することができる。これにより、Dフリップフロップ597から、上記の検出結果が維持された(リップル周期の期間維持された)リップル検出ホールド信号DR’_Hと、これを反転したリップル検出ホールド信号DR’_HBが出力される。
【0136】
さらに、論理部58Gは、2つの入力端子に、トリガ信号Trg1と、リップル検出ホールド信号DR’_HBとを受けるAND回路598を有し、AND回路598から絞り過ぎ検出信号を出力する。
【0137】
上記構成の論理部58Gによれば、上述した各部の動作により、
図17に示すように信号が生成され、これにより、ソース電圧V_MOS_Sが、リップル周期の間、第1の分圧電圧V53を下回らない場合に、絞り過ぎ信号が出力される。そして、絞り過ぎ信号により、参照電圧Vrefが僅かに上昇し、出力電流Ioutのリップルが僅かに大きくなる。これにより、出力電流Ioutのリップルの大きさが、第1の分圧電圧V53によって設定される割合(例えば10%)から外れていくことが抑制される。このような制御により、出力電流Ioutのリップルが抑制され、かつ、トランジスタM1の損失が最小となる状態を、より安定的に維持することができる。
【0138】
以上、本発明の各実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、電圧変換回路からリップルを含んだ直流電圧が出力される第1電位点として、低電位側の出力端子tb(トランジスタM1のドレイン電圧)を適用した例を示した。しかし、本発明に係る第1電位点は、電圧変換回路の高電位側の出力部から電流制御部までの出力電流の電流経路上であれば、どこに設定されてもよい。また、上記実施形態では、出力電流の大きさを示す電流検出電圧として、ソース電圧V_MOS_Sを適用した例を示した。しかし、電流検出電圧は、これに限られず、電流検出要素(電流検出抵抗など)が、出力電流経路上の別の箇所に設けられた場合には、そこから電流検出電圧を入力する構成としてもよい。例えば、上記実施形態では、定電流回路が電流検出抵抗R1を有する構成を示した。しかし、定電流回路は、電流検出抵抗R1が省略される一方、出力端子ta、tbに接続される負荷を電流検出抵抗R1の代わりに利用して、電流検出電圧を生成する構成としてもよい。また、上記実施形態では、第1比較器~第3比較器をコンパレータとして説明したが、差動回路又は論理回路を組み合わせて比較を行う構成としてもよい。
【0139】
また、上記実施形態では、発光ダイオードを駆動する電源装置に本発明を適用した例を示したが、本発明に係る電源装置は、照明用の有機EL(Electro Luminescence)素子を駆動する電源装置に適用してもよいし、その他、一定の電流を消費する任意の負荷を駆動する電源装置に適用してもよい。また、DC/DCコンバータとしては、フォワード式のコンバータ又は非絶縁型の昇降圧コンバータなど、様々な変形例を適用できる。その他、電流制御用のトランジスタの種類、電流回路が制御する電流値に変動を加える変動付加部の構成など、実施形態で具体的に示した構成は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0140】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F・・・電源装置、2・・・整流回路、11・・・DC/DCコンバータ、14・・・制御回路、21・・・定電流回路、22・・・エラーアンプ、25・・・最低電位クランプ回路、31,131,231,331・・・ボトム電圧制御部、32,232・・・損失検出回路、33,134・・・ボトム検出部、34,35・・・電圧保持部、36,135・・・減算器、37,137・・・コンパレータ、61・・・発光ダイオード、132,233・・・リップル検出回路、133・・・ピーク検出部、137D,235,334・・・電流アンプ、234・・・誤差演算器、236・・・電圧源、332・・・ボトム電圧検出部、333・・・基準回路、AC・・・交流電源、Cout・・・出力コンデンサ、Cr,Crb・・・コンデンサ、T0・・・トランス、M0・・・スイッチング素子、M1・・・トランジスタ(電流制御部)、R1・・・電流検出抵抗、SW1,SW2・・・スイッチ、ta,tb・・・出力端子、I1~I4,I11~I13・・・電流源、Iout・・・出力電流、Vref・・・参照電圧、VD・・・均衡電圧、VDref・・・基準電圧、VLED+,VLED-・・・出力電圧、V_MOS_S・・・ソース電圧、50・・・電流制御回路、SW1,SW2E,SW3・・・スイッチ、51・・・第1比較器、52・・・第2比較器、57・・・第3比較器、53,59・・・分圧回路、58,58G・・・論理部、587・・・タイマー